JP7198302B2 - Pd-1を介した免疫チェックポイント阻害剤の生物活性試験法 - Google Patents
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<1> PD-1(Programmed cell Death-1)を介した免疫チェックポイント阻害剤の生物活性をin vitroで試験する方法であって、
(i) PD-1発現遺伝子導入用レンチウイルスで感染させたナチュラルキラー(NK)活性を有するエフェクター細胞にさらに、IL-2発現遺伝子導入用レンチウイルスで感染させたNK活性を有するエフェクター細胞、
及び、
(ii)PD-L1(Programmed cell Death 1- Ligand 1)発現遺伝子導入用のレンチウイルスで感染させたNK-感受性標的がん細胞、
を用い、
免疫チェックポイント阻害剤のPD-1/PD-L1シグナル阻害による細胞傷害活性の増強を測定することを特徴とする、免疫チェックポイント阻害剤の生物活性試験方法。
<2> 前記エフェクター細胞が、配列番号1で表される配列を有する遺伝子を挿入したPD-1発現遺伝子導入用レンチウイルスで感染させたNK活性を有するエフェクター細胞にさらに、配列番号3で表される配列を有する遺伝子を挿入したIL-2発現遺伝子導入用レンチウイルスで感染させたNK活性を有するエフェクター細胞であることを特徴とする、<1>項に記載の方法。
<3> 前記NK-感受性標的がん細胞が、配列番号2で表される配列を有する遺伝子を挿入したPD-L1発現遺伝子導入用レンチウイルスで感染させたNK-感受性標的がん細胞であることを特徴とする、<1>項に記載の方法、
である。
PD-L1発現遺伝子導入用のレンチウイルスで感染させたNK-感受性標的がん細胞、
を用い、免疫チェックポイント阻害剤のPD-1/PD-L1シグナル阻害による細胞傷害活性の増強を測定することを特徴とする、免疫チェックポイント阻害剤の生物活性試験方法であり、
下記(1)~(6)の工程を有することを特徴とする。
即ち、
(1)配列番号1で表される配列を有する遺伝子を挿入したPD-1発現遺伝子導入用レンチウイルスで感染させたNK活性を有するエフェクター細胞にさらに、配列番号3で表される配列を有する遺伝子を挿入したIL-2発現遺伝子導入用レンチウイルスで感染させたNK活性を有するエフェクター細胞を提供する工程、
(2)工程(1)の培養液に被験物質を添加する工程、
(3)配列番号2で表される配列を有する遺伝子を挿入したPD-L1発現遺伝子導入用のレンチウイルスで感染させたNK-感受性標的がん細胞を提供する工程、
(4)前記工程(3)のNK-感受性標的がん細胞をCr-51標識し、前記工程(2)の培養液に添加し、細胞を培養する工程、
(5)培養後、Cr-51量を測定する工程、
(6)細胞傷害活性を算出する工程、
からなる。
本発明の方法において、エフェクター細胞及び標的細胞を用いるが、例えば、以下の通りである。
PD-1発現ナチュラルキラー(NK) 細胞の作製には、KHYG-1細胞株(以下、KHYG-1とする。JCRB0156、JCRB細胞バンク、大阪、日本)を宿主細胞として用いる。
PD-L1発現細胞の作製には、NK感受性のK562細胞株(以下、K562とする。RCB0027、理研BRC細胞バンク、茨城、日本)を宿主細胞として用いる。
KHYG-1細胞株の培養用培地には、非働化ウシ血清(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、マサチューセッツ州、米国)及びIL-2(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、マサチューセッツ州、米国)を含むRPMI1640培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、マサチューセッツ州、米国)を用い、K562細胞株の培養用培地には、非働化ウシ血清を含むRPMI1640培地を用いる。各細胞は37℃、5% CO2雰囲気下で維持するものとする。
また、標的細胞としては、RPMI18226(JCRB0034)、HL-60(JCRB0085)、HT29(ATCC, HTB-38)等をはじめとするNK感受性の細胞が用いられ得るが、これらに限定されるものではない。
PD-1発現確認用の抗体として、例えば、PE標識されたマウス抗ヒトCD279(PD-1)(BDバイオサイエンス社、ニュージャージー州、米国)を用いる。
PD-L1発現確認用の抗体として、例えば、FITC標識されたマウス抗ヒト CD274(PD-L1)(BDバイオサイエンス社、♯558065)を用いる。
作製した細胞を回収(遠心:4℃、300×g、5分)し、PBSで1回洗浄(遠心:4℃、300×g、5分)する。洗浄後、1×107細胞/mLとなるように1% BSA含有PBSに懸濁させ、マイクロチューブに50μLずつ添加する。その後、抗体を10μLずつ添加混合し、4℃、1時間反応させる。反応後、0.5mLのPBSで2回洗浄(遠心:4℃、300×g、5分)した後、0.5mLのPBSに懸濁し、フローサイトメーターにて蛍光強度を測定するものとする。
上記のPD-1/IL-2発現KHYG-1(PICK-1)を、24時間培養し、遠心分離(4℃、300×g、5分)した後の培養上清を、IL-2産生量測定用のサンプルとする。IL-2産生量の確認は、Human simple step ELISAキット(アブカム(Abcam)社製、ab174444)を用いて、キットの定める方法に従い実施する。
当該抗PD-1抗体として、例えば、ニボルマブ(一般名)、ペムブロリズマブ(一般名)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。当該抗PD-L1抗体として、例えば、アテゾリズマブ(一般名)、アベルマブ(一般名)、デュルバルマブ(一般名)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アイソタイプコントロールとしてヒトIgG(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、マサチューセッツ州、米国)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
一方、抗PD-L1抗体による細胞傷害活性の増強の測定用として、例えば、治療用抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブ(10mg/mL)を、培地を用いて希釈し、20μg/mL溶液を調製し、以下、公比10で5濃度調製する。
細胞障害性測定における細胞が100%死滅対照区(Max release)用として、10%トリトン(Triton)X-100/PBSを培地に懸濁させ、0.4%溶液を調製する。
上述のPD-L1発現遺伝子導入用のレンチウイルスで感染させたNK-感受性標的がん細胞を、遠心分離(300×g、4分)し、上清を除去して1×106の細胞を回収する。その後、それぞれ100μLの培地に懸濁し、Cr-51クロム酸ナトリウム(51Cr)を添加(50μCi)した後、1時間培養してCr-51標識する。
PICK-1を、回収し、培地で1回洗浄後細胞数をカウントし、1×106細胞/mLに調製し、96ウェルU底プレートに50μL/ウェルを添加(5×104細胞/ウェル)する。
その後、Cr-51標識したPD-L1発現遺伝子導入用のレンチウイルスで感染させたNK-感受性標的がん細胞を、1mLの培地で4回洗浄(遠心:300g×3分)した後、培地に懸濁させ細胞濃度を測定して1×105細胞/mLに調製する。その後細胞懸濁液を96ウェルプレートに50μL/ウェル添加(5×103細胞/ウェル、E/T=10)し、前述の抗体調製液を終濃度で、10ng/mL~100000ng/mLになるように100 μL/ウェル添加し、混合する。
上記以外に、細胞傷害活性の算出用に、Spontaneous release(PD-L1発現遺伝子導入用のレンチウイルスで感染させたNK-感受性標的がん細胞の自発的Cr-51放出量)、Max release(PD-L1発現遺伝子導入用のレンチウイルスで感染させたNK-感受性標的がん細胞が全て死滅した時のCr-51放出量)測定区を設定する。Spontaneous release測定ウェルには、培地を150μL/ウェル添加する。Max release測定ウェルには、培地を100μL/ウェルと0.4%トリトン溶液を50μL/ウェル添加し混合する。
37℃で4時間培養後、上清50μLを測定用チューブに採取し、ガンマカウンター(2480 WIZARD2オートガンマカウンター、パーキンエルマー社製)を用いて測定する。
それに対し、アイソタイプコントロールであるヒトIgGを加えた系では、細胞傷害活性が認められず、EC50は算出されなかった(図4)。
なお、PD-1強制発現KHYG-1にはIL-2非存在下でも培養できるように、2次改変としてさらにIL-2を強制発現させた。
PD-1及びPD-L1の発現確認をフローサイトメトリーにて行った結果、PD-1強制発現KHYG-1の細胞表面には強いPD-1発現が認められ、PD-L1/K562の細胞表面にも同様に強いPD-L1の発現が確認できた。
IL-2の産生確認は、ELISAを用いて行い、通常のKHYG-1ではIL-2不含培地では増殖せず、24時間培養後のIL-2産生が確認できなかったが、IL-2を強制発現させたPD-1強制発現KHYG-1はIL-2不含培地でも増殖し、24時間培養後の、培地中IL-2産生量(pg/mL)は59.7±16.4であり、IL-2産生が確認され、IL-2不含の培地においても増殖可能となった。
PD-1及びIL-2を強制発現させたKHYG-1をPICK-1と名づけ、PICK-1をエフェクターとし、PD-L1/K562をターゲットとしたNK活性測定系を構築し、NK活性を指標とした治療用抗PD-1抗体(ニボルマブ)及び治療用抗PD-L1抗体(アテゾリズマブ)の細胞傷害活性の増強作用を測定した。アイソタイプコントロールは、ヒトIgGを用いたが、アイソタイプコントロールでは細胞傷害活性の増強は認められなかった(図4)。一方で、PICK-1-PD-L1/K562のNK活性測定系に抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体を添加したところ、NK活性の増強が認められ、EC50値(ng/mL)はそれぞれ423±83及び30±7と算出された。
抗体
抗PD-1抗体としてニボルマブ(一般名)(小野薬品工業株式会社、大阪、日本)を用いた。抗PD-L1抗体としてアテゾリズマブ(一般名)(Selleckchem.com, テキサス州、米国)を用いた。アイソタイプコントロールとしてヒトIgG(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、マサチューセッツ州、米国)を用いた。
PD-1発現ナチュラルキラー(NK) 細胞の作製には、KHYG-1細胞株(以下、KHYG-1とする。JCRB0156、JCRB細胞バンク、大阪、日本)を宿主細胞として用いた。
PD-L1発現細胞の作製には、NK感受性のK562細胞株(以下、K562とする。RCB0027、理研BRC細胞バンク、茨城、日本)を宿主細胞として用いた。
KHYG-1細胞株の培養用培地には、非働化ウシ血清(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、マサチューセッツ州、米国)及びIL-2(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、マサチューセッツ州、米国)を含むRPMI1640培地(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、マサチューセッツ州、米国)を用い、K562細胞株の培養用培地には、非働化ウシ血清を含むRPMI1640培地を用いた。
各細胞は37℃、5% CO2雰囲気下で維持した。
PD-1及びPD-L1安定発現細胞株作製
(1) PD-1発現遺伝子導入用のレンチウイルスベクターを作製するために、配列番号1に示した配列の遺伝子を、ピューロマイシン(Puromycin)耐性遺伝子を含むpLVSIN(タカラバイオ株式会社、滋賀、日本)に挿入し、pLVSIN-PD-1-Purを作製した。
PD-1及びPD-L1の発現確認
(1) PD-1発現確認用の抗体として、PE標識されたマウス抗ヒトCD279 (PD-1)(BDバイオサイエンス社、ニュージャージー州、米国)を用いた。
実施例2(1)のPD-1発現確認用の抗体に代えてアイソタイプコントロールとして、PE標識されたマウス IgG1、κ アイソタイプコントロール(BDバイオサイエンス社、ニュージャージー州、米国)を用い、実施例2(3)の操作を行った。
実施例2(2)のPD-L1発現確認用の抗体に代えてアイソタイプコントロールとして、FITC標識された マウスIgG1、 κ アイソタイプコントロール(BDバイオサイエンス社、ニュージャージー州、米国)を用い、実施例2(3)の操作を行った。
IL-2産生確認
実施例1(5)のPD-1/IL-2発現KHYG-1(PICK-1)を、24時間培養し、遠心分離(4℃、300×g、5分)した後の培養上清を、IL-2産生量測定用のサンプルとした。IL-2産生量の確認は、Human simple step ELISAキット(アブカム(Abcam)社製、ab174444)を用いて、キットの定める方法に従い実施した。
PD-1/IL-2発現KHYG-1(PICK-1)に代えてIL-2不含の培地で野生型(WT)KHYG-1細胞を用いる以外は実施例3と同様の操作を行い、IL-2産生量測定を行った。
PD-1/PD-L1シグナルの阻害による細胞傷害活性の増強の測定
(1) 抗PD-1抗体による細胞傷害活性の増強を測定用として、治療用抗PD-1抗体であるニボルマブ(10mg/mL)を、培地を用いて希釈し、200μg/mL溶液を調製し、以下、公比10で5濃度調製した。
実施例1(5)のPICK-1を、回収し、培地で1回洗浄後細胞数をカウントし、1×106細胞/mLに調製し、96ウェル U底プレートに50μL/ウェルを添加(5×104細胞/ウェル)した。
その後、51Cr標識したPD-L1/K562を、1mLの培地で4回洗浄(遠心:300g×3分)した後、培地に懸濁させ細胞濃度を測定して1×105細胞/mLに調製した。その後細胞懸濁液を96ウェルプレートに50μL/ウェル添加(5×103細胞/ウェル、E/T=10)し、前述の抗体調製液を終濃度で、10ng/mL~100000ng/mLになるように100 μL/ウェル添加し、混合した。
上記以外に、細胞傷害活性の算出用に、Spontaneous release(PD-L1/K562の自発的51Cr放出量)、Max release(PD-L1/K562が全て死滅した時の51Cr放出量)測定区を設定した。Spontaneous release測定ウェルには、培地を150μL/ウェル添加した。Max release測定ウェルには、培地を100μL/ウェルと0.4%トリトン溶液を50μL/ウェル添加し混合した。
37℃で4時間培養後、上清50μLを測定用チューブに採取し、ガンマカウンター(2480 WIZARD2オートガンマカウンター、パーキンエルマー社製)を用いて測定した。
実施例4のアイソタイプコントロールとして、ヒトIgGを用い、PD-1/PD-L1抗体と同じ方法で希釈調製し、実施例4(4)の操作を行った。
データ解析
次式から細胞傷害活性を算出した。
PD-1及びPD-L1安定発現細胞株作製
実施例2のフローサイトメトリーにより、PICK-1のPD-1発現と、PD-L1/K562のPD-L1の発現を確認した。フローサイトメトリーの結果、PICK-1の細胞表面にPD-1の発現が確認でき、PD-L1/K562の細胞表面にPD-L1の発現を確認した。(図1及び図2)。
実施例3において、KHYG-1は、IL-2不含の培地では増殖できず、24時間培養後の培地中IL-2の濃度は定量下限以下であった。一方、PICK-1はIL-2不含培地でも増殖し、24時間培養後の、培地中IL-2産生量(pg/mL)は、59.7±16.4であり、IL-2産生が確認された。(図3)
実施例4において、エフェクター細胞にPICK-1を用い、ターゲット細胞にPD-L1/K562を用いたNK活性測定系にニボルマブを添加した系では、細胞傷害活性の増強が認められ、EC50(ng/mL)は、423±83と算出された(表1、図4)。同NK活性測定系にアテゾリズマブを添加した系においても、細胞傷害活性の増強が認められ、EC50(ng/mL)は、30±7と算出された(表1、図4)。
それに対し、アイソタイプコントロールであるヒトIgGを加えた系では、細胞傷害活性が認められず、EC50は算出されなかった(図4)。
Claims (3)
- PD-1(Programmed cell Death-1)を介した免疫チェックポイント阻害剤の生物活性をin vitroで試験する方法であって、
(i) PD-1発現遺伝子導入用レンチウイルスで感染させたナチュラルキラー(NK)活性を有するエフェクター細胞にさらに、IL-2発現遺伝子導入用レンチウイルスで感染させたNK活性を有するエフェクター細胞、
及び、
(ii)PD-L1(Programmed cell Death 1- Ligand 1)発現遺伝子導入用のレンチウイルスで感染させたNK-感受性標的がん細胞、
を用い、
免疫チェックポイント阻害剤のPD-1/PD-L1シグナル阻害による細胞傷害活性の増強を測定することを特徴とする、免疫チェックポイント阻害剤の生物活性試験方法。 - 前記エフェクター細胞が、配列番号1で表される配列を有する遺伝子を挿入したPD-1発現遺伝子導入用レンチウイルスで感染させたNK活性を有するエフェクター細胞にさらに、配列番号3で表される配列を有する遺伝子を挿入したIL-2発現遺伝子導入用レンチウイルスで感染させたNK活性を有するエフェクター細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
- 前記NK-感受性標的がん細胞が、配列番号2で表される配列を有する遺伝子を挿入したPD-L1発現遺伝子導入用レンチウイルスで感染させたNK-感受性標的がん細胞であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
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