JP7198123B2 - ウエットシート及びこのウエットシートを用いた防油性塗膜の形成方法 - Google Patents
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Description
本実施形態のシート母材に含浸される液組成物(以下、単に液組成物という。)は、上記式(1)又は式(2)に示されるフッ素系化合物、ポリアクリル酸、炭素数1~3の範囲にある1種又は2種以上のアルコール及び水を混合して調製される。前述したように、このフッ素系化合物は形成した膜に親水撥油性を付与するために用いられ、ポリアクリル酸は上記液組成物で膜を形成するための造膜剤として用いられる。アルコールと水はフッ素系化合物及びポリアクリル酸をそれぞれ溶液化するために用いられる。
本実施形態の液組成物は、ポリアクリル酸の水溶液と水とアルコールを所定量秤量した後、これらを混合して混合液を作り、この混合液にフッ素系化合物を添加し混合して調製する。
本実施形態のウエットシートは、シート母材である不織布に上記液組成物を含浸して構成される。このシート母材は30~100g/m2の目付を有し、1~200cm3/cm2/secの通気度を有する不織布からなる。好ましい目付は、40~80g/m2であり、好ましい通気度は、10~180cm3/cm2/secである。この不織布の目付が30g/m2未満では強度が不足し、ウエットシートで基材表面に沿って移動したときに、不織布が破れ易くなる。この目付が100g/m2を超えると、不織布が分厚過ぎ、取扱いにくくなる。不織布の目付は、不織布を100mm×100mmのサイズに裁断し、裁断した不織布の温度25℃及び湿度50%における水分平衡状態(以下、単に水分平衡状態という。)の質量を測定し、1m2当りの目付質量に換算して求める。
シート母材である不織布を所定のサイズに裁断する。次いで液組成物を不織布に接触させる。第一の方法は、一枚の不織布又は複数枚を重ね合わせた不織布積層体(以下、単に不織布という。)をパッド又は広口の容器に貯えた上記液組成物中に所定時間浸漬した後、液組成物から引上げ、脱液する。第二の方法は、不織布等に上記液組成物を所定量スプレーノズルから噴霧する。液組成物の液分を水分平衡状態の不織布に対して1.0~50g/m2の割合で不織布に含有させる。
防油性塗膜は、上記ウエットシートで基材表面に沿って移動して基材表面に上記液組成物を塗布する。基材としては、防油処理を必要とする金属材、プラスチック材、セラミック材、ガラス材、表面加工した木材、加工紙等が挙げられる。基材表面に塗布した液組成物を塗布後室温で放置して自然乾燥することにより、基材表面に防油性の塗膜を形成する。
実施例1~7及び比較例1~6のウエットシート用液組成物中のフッ素系化合物、ポリアクリル酸、アルコール及び水の組成割合を表1に示す。実施例1、7及び比較例1~4、6では、上述した式(17)で表されるフッ素系化合物を、実施例2では、上述した式(18)で表されるフッ素系化合物を、実施例3では、上述した式(19)で表されるフッ素系化合物を、実施例4では、上述した式(20)で表されるフッ素系化合物を、実施例5では、上述した式(21)で表されるフッ素系化合物を、実施例6では、上述した式(22)で表されるフッ素系化合物を、それぞれ用いた。比較例5では、特許文献1に示される下記の式(23)で表される含窒素フッ素系化合物を用いた。表1において、「混合アルコール」はエタノール85質量%、1-プロパノール10質量%、2-プロパノール5質量%の工業用アルコールである。
固形分45質量%のポリアクリル酸((株)日本触媒社製、商品名:アクアリックHL-415、重量平均分子量10,000、pH2)の水溶液0.11g(固形分ポリアクリル酸0.05g)と、蒸留水4.85gと、エタノール5.0gとを秤量し、これらを十分に混合した後、この混合液に上述した式(17)で表されるフッ素系化合物を0.04g添加し混合して、液組成物を調製した。
表1に示すようにフッ素系化合物の種類と添加量を変え、ポリアクリル酸の種類と添加量を変え、アルコールの種類と添加量を変え、水の添加量を変えた以外、実施例1と同様にして、実施例2~7及び比較例1~6の各ウエットシート用の液組成物を調製した。比較例5では、ポリアクリル酸を添加しなかった。
試験例1~11及び比較試験例1~9の20種類のウエットシートを構成する液組成物、母材シートである不織布及び不織布に液組成物を含浸した後の処理の詳細を表2に示す。
試験例1のウエットシートでは、先ず100mm×100mmに裁断した目付60g/m2、厚さ0.3mm、通気度150cm3/cm2/secのPET繊維とパルプ繊維を混合した不織布(水分含有率:0.1%未満)を用意した。実施例1の液組成物をパッドに貯え、そこに前記不織布を30秒間浸漬した。次いでパッドから不織布を引き上げ、吊り下げて脱液して、目的物を得た。不織布の液含侵前の質量と液含侵後の不織布の質量差から液組成物の液分含有量を算出したところ、40g/m2であったため、液組成より、フッ素系化合物の含有量を算出したところ8.00mg/m2であった。
試験例2~11及び比較試実施例1~9のウエットシートでは、表2に示す目付と通気度と材質を有する母材シートをそれぞれ用意した。表2に示すように、実施例1~7及び比較例1~6の液組成物を実施例1と同一のパッドに貯え、そこに前記不織布を30秒間浸漬した。次いでパッドから不織布を引き上げて、目的物を得た。表2に液分含有量とフッ素系化合物量の結果を示した。
試験例1~11及び比較試験例1~9の20種類のウエットシートを手に持って、厚さ1mm、たて150mm、よこ70mmのSUS304基板を垂直に立てた状態にしてから、SUS304基板の表面全体に沿って移動し、温度25℃で乾燥して基板表面に塗膜を形成した。上記20種類の塗膜の外観と塗膜形成直後の塗膜表面の防油性を調べた。また調理の際に発生する油蒸気を導くレンジフードに沿って移動した後の油の付着量とその油汚れを水を含ませた布で払拭したときの清掃性について調べた。これらの結果を表3に示す。
得られた塗膜を目視により、塗膜に筋が発生しているか否か、また塗膜全体にわたって虹色の干渉縞が発生しているか否か、更に塗膜に粉吹きがあるか否かを調べた。塗膜に筋、干渉縞及び粉吹きが発生していないものは「優秀」とし、塗膜に筋、干渉縞又は粉吹きのいずれかがごく一部に発生している場合を「良好」とし、塗膜に筋、干渉縞又は粉吹きのいずれかがまだらに発生しているものを「やや不良」とし、塗膜に筋、干渉縞又は粉吹きのいずれかが全面的に発生しているものを「不良」とした。
協和界面科学製ドロップマスターDM-700を用いて、シリンジに22℃±1℃のイオン交換水を準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するSUS304基板上の塗膜をこの液滴に近づけて塗膜に液滴を付着させる。この付着した水の接触角を測定した。静止状態で水が膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値を水の接触角とし、塗膜表面の水濡れ性(親水性)を評価した。
協和界面科学製ドロップマスターDM-700を用いて、シリンジに22℃±1℃のn-ヘキサデカン(以下、油という。)を準備し、シリンジの針の先端から2μLの液滴を飛び出した状態にする。次いで評価するSUS304基板上の塗膜をこの液滴に近づけて塗膜に液滴を付着させる。この付着した油の接触角を測定した。静止状態で油が塗膜表面に触れた1秒後の接触角をθ/2法により解析した値を油の接触角とし、塗膜表面の撥油性を評価した。
20種類のウエットシートを手に持って、厨房の清浄なレンジフード内面に沿って移動し、室温で自然乾燥し、防油性の塗膜を形成した。なお、比較のために、一部分を塗布しない箇所にした。レンジフードの下方で毎日0.5時間油蒸気を発生させ、30日経過後のレンジフード内面における油の付着状況を目視で調べた。未塗布箇所と比較し、明らかに油付着量が少ない場合を「極少量」とした。塗膜にべとつき感がある場合を「少量」とした。塗膜に明らかにべとつきがある場合を「多量」とした。油が付着している箇所と付着していない箇所がまだらの状態で一部にべとつきがある場合を「一部箇所多量」とした。
上記(4)で、30日経過後のレンジフード内面に付着した油汚れを水を含ませた布で払拭したときに、その油汚れが落ちるか否かの清掃性を調べた。水を含ませた布で払拭したときに、油汚れ試験前と同程度の清浄度を有する場合を「良好」と判定し、清掃後も油のべとつき感がある場合を「やや不良」とし、明らかにべとつきがある場合を「不良」とした。
Claims (3)
- 液組成物をシート母材に含浸したウエットシートにおいて、
前記液組成物が、親水撥油剤と、造膜剤と、溶媒とを含み、
前記親水撥油剤が、下記式(1)又は式(2)で表されるフッ素系化合物であり、前記造膜剤がポリアクリル酸であり、かつ前記溶媒が炭素数1~3の範囲にある1種又は2種以上のアルコール及び水であり、
前記フッ素系化合物と前記ポリアクリル酸と前記アルコールと前記水との質量比が、フッ素系化合物:ポリアクリル酸:アルコール:水=(0.001~0.1):(0.1~4):(25~55):(40~75)であり、
前記シート母材が30~100g/m2の目付と1~250cm3/cm2/secの通気度を有する不織布からなり、前記不織布の単位面積当り前記液組成物中のフッ素系化合物を0.01~50mg/m2の割合で含み、水分平衡状態の前記不織布に対して水分又は水とアルコールを併せた液分を1~50g/m2の割合で含有することを特徴とするウエットシート。
- 前記不織布がポリプロピレン(PP)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、パルプ繊維及びガラス繊維からなる群より選ばれた1種又は2種以上を混合した繊維からなり、前記不織布が複数枚積層されてなる請求項1記載のウエットシート。
- 請求項1又は2記載のウエットシートを基材表面に沿って移動して前記基材表面に前記液組成物を塗布し、前記塗布した液組成物を乾燥することにより、前記基材表面に防油性の塗膜を形成する防油性塗膜の形成方法。
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