図1は、基板液処理装置の一例としてのめっき処理装置の構成を示す概略図である。
図1に示すように、めっき処理装置1は、めっき処理ユニット2と、めっき処理ユニット2の動作を制御する制御部3と、を備えている。
めっき処理ユニット2は、基板W(ウエハ)に対する各種処理を行う。めっき処理ユニット2が行う各種処理については後述する。
制御部3は、例えばコンピュータであり、動作制御部と記憶部とを有している。動作制御部は、例えばCPU(Central Processing Unit)で構成されており、記憶部に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、めっき処理ユニット2の動作を制御する。記憶部は、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク等の記憶デバイスで構成されており、めっき処理ユニット2において実行される各種処理を制御するプログラムを記憶する。なお、プログラムは、コンピュータにより読み取り可能な記録媒体31に記録されたものであってもよいし、その記録媒体31から記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータにより読み取り可能な記録媒体31としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカード等が挙げられる。記録媒体31には、例えば、めっき処理装置1の動作を制御するためのコンピュータにより実行されたときに、コンピュータがめっき処理装置1を制御して後述するめっき処理方法を実行させるプログラムが記録される。
めっき処理ユニット2は、搬入出ステーション21と、搬入出ステーション21に隣接して設けられた処理ステーション22と、を有している。
搬入出ステーション21は、載置部211と、載置部211に隣接して設けられた搬送部212と、を含んでいる。
載置部211には、複数枚の基板Wを水平状態で収容する複数の搬送容器(以下「キャリアC」という。)が載置される。
搬送部212は、搬送機構213と受渡部214とを含んでいる。搬送機構213は、基板Wを保持する保持機構を含み、水平方向及び鉛直方向への移動並びに鉛直軸を中心とする旋回が可能となるように構成されている。
処理ステーション22は、めっき処理部5を含んでいる。本実施の形態において、処理ステーション22が有するめっき処理部5の個数は2つ以上であるが、1つであってもよい。めっき処理部5は、所定方向に延在する搬送路221の両側(後述する搬送機構222の移動方向に直交する方向における両側)に配列されている。
搬送路221には、搬送機構222が設けられている。搬送機構222は、基板Wを保持する保持機構を含み、水平方向及び鉛直方向への移動並びに鉛直軸を中心とする旋回が可能となるように構成されている。
めっき処理ユニット2において、搬入出ステーション21の搬送機構213は、キャリアCと受渡部214との間で基板Wの搬送を行う。具体的には、搬送機構213は、載置部211に載置されたキャリアCから基板Wを取り出し、取り出した基板Wを受渡部214に載置する。また、搬送機構213は、処理ステーション22の搬送機構222により受渡部214に載置された基板Wを取り出し、載置部211のキャリアCへ収容する。
めっき処理ユニット2において、処理ステーション22の搬送機構222は、受渡部214とめっき処理部5との間、めっき処理部5と受渡部214との間で基板Wの搬送を行う。具体的には、搬送機構222は、受渡部214に載置された基板Wを取り出し、取り出した基板Wをめっき処理部5へ搬入する。また、搬送機構222は、めっき処理部5から基板Wを取り出し、取り出した基板Wを受渡部214に載置する。
次に図2を参照して、めっき処理部5の構成を説明する。図2は、めっき処理部5の構成を示す概略断面図である。
めっき処理部5は、無電解めっき処理を含む液処理を行う。めっき処理部5は、チャンバ51と、チャンバ51内に配置され基板Wを水平に保持する基板保持部52と、基板保持部52により保持されている基板Wの上面(処理面)Swにめっき液L1を供給するめっき液供給部53とを備える。本実施の形態では、基板保持部52は、基板Wの下面(裏面)を真空吸着するチャック部材521を有する。この基板保持部52はいわゆるバキュームチャックタイプであるが、基板保持部52はこれに限られず、例えばチャック機構等によって基板Wの外縁部を把持するメカニカルチャックタイプであってもよい。
基板保持部52には、回転シャフト522を介して回転モータ523(回転駆動部)が連結されている。回転モータ523が駆動されると、基板保持部52は基板Wとともに回転する。回転モータ523はチャンバ51に固定されたベース524に支持されている。
めっき液供給部53は、回転可能に設けられている基板保持部52に保持された基板Wにめっき液L1を吐出(供給)するめっき液ノズル531と、めっき液ノズル531にめっき液L1を供給するめっき液供給源532と、を有する。めっき液供給源532は、所定の温度に加熱ないし温調されためっき液L1をめっき液ノズル531に供給する。めっき液ノズル531から吐出されるときのめっき液L1の温度は、例えば55℃以上75℃以下であり、より好ましくは60℃以上70℃以下である。めっき液ノズル531は、ノズルアーム56に保持されて、移動可能に構成されている。
めっき液L1は、自己触媒型(還元型)無電解めっき用のめっき液である。めっき液L1は、例えば、コバルト(Co)イオン、ニッケル(Ni)イオン、タングステン(W)イオン、銅(Cu)イオン、パラジウム(Pd)イオン、金(Au)イオン等の金属イオンと、次亜リン酸、ジメチルアミンボラン等の還元剤とを含有する。めっき液L1は、添加剤等を含有していてもよい。めっき液L1を使用しためっき処理により形成されるめっき膜(金属膜)としては、例えば、CoWB、CoB、CoWP、CoWBP、NiWB、NiB、NiWP、NiWBP等が挙げられる。
本実施の形態によるめっき処理部5は、他の処理液供給部として、基板保持部52に保持された基板Wの上面Swに洗浄液L2を供給する洗浄液供給部54と、当該基板Wの上面Swにリンス液L3を供給するリンス液供給部55と、を更に備える。
洗浄液供給部54は、基板保持部52に保持された基板Wに洗浄液L2を吐出する洗浄液ノズル541と、洗浄液ノズル541に洗浄液L2を供給する洗浄液供給源542と、を有する。洗浄液L2としては、例えば、ギ酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、マロン酸等の有機酸、基板Wの被めっき面を腐食させない程度の濃度に希釈されたフッ化水素酸(DHF)(フッ化水素の水溶液)等を使用することができる。洗浄液ノズル541は、ノズルアーム56に保持されて、めっき液ノズル531とともに移動可能になっている。
リンス液供給部55は、基板保持部52に保持された基板Wにリンス液L3を吐出するリンス液ノズル551と、リンス液ノズル551にリンス液L3を供給するリンス液供給源552と、を有する。このうちリンス液ノズル551は、ノズルアーム56に保持されて、めっき液ノズル531及び洗浄液ノズル541とともに移動可能になっている。リンス液L3としては、例えば、純水などを使用することができる。
上述しためっき液ノズル531、洗浄液ノズル541、及びリンス液ノズル551を保持するノズルアーム56に、図示しないノズル移動機構が連結されている。このノズル移動機構は、ノズルアーム56を水平方向及び上下方向に移動させる。より具体的には、ノズル移動機構によって、ノズルアーム56は、基板Wに処理液(めっき液L1、洗浄液L2又はリンス液L3)を吐出する吐出位置と、吐出位置から退避した退避位置との間で移動可能になっている。吐出位置は、基板Wの上面Swのうちの任意の位置に処理液を供給可能であれば特に限られない。例えば、基板Wの中心に処理液を供給可能な位置を吐出位置とすることが好適である。基板Wにめっき液L1を供給する場合、洗浄液L2を供給する場合、リンス液L3を供給する場合とで、ノズルアーム56の吐出位置は異なってもよい。退避位置は、チャンバ51内のうち、上方から見た場合に基板Wに重ならない位置であって、吐出位置から離れた位置である。ノズルアーム56が退避位置に位置づけられている場合、移動する蓋体6がノズルアーム56と干渉することが回避される。
基板保持部52の周囲には、カップ571が設けられている。このカップ571は、上方から見た場合にリング状に形成されており、基板Wの回転時に、基板Wから飛散した処理液を受け止めて、後述するドレンダクト581に案内する。カップ571の外周側には、雰囲気遮断カバー572が設けられており、基板Wの周囲の雰囲気がチャンバ51内に拡散することを抑制している。この雰囲気遮断カバー572は、上下方向に延びるように円筒状に形成されており、上端が開口している。雰囲気遮断カバー572内に、後述する蓋体6が上方から挿入可能になっている。
カップ571の下方には、ドレンダクト581が設けられている。このドレンダクト581は、上方から見た場合にリング状に形成されており、カップ571によって受け止められて下降した処理液や、基板Wの周囲から直接的に下降した処理液を受けて排出する。ドレンダクト581の内周側には、内側カバー582が設けられている。
基板保持部52に保持されている基板Wの上面Swは、蓋体6によって覆われる。この蓋体6は、水平方向に延びる天井部61と、天井部61から下方に延びる側壁部62と、を有する。天井部61は、蓋体6が後述の下方位置に位置づけられた場合に、基板保持部52に保持された基板Wの上方に配置されて、基板Wに対して比較的小さな間隔で対向する。
天井部61は、第1天井板611と、第1天井板611上に設けられた第2天井板612と、を含む。第1天井板611と第2天井板612との間にはヒータ63(加熱部)が介在し、ヒータ63を挟むようにして設けられる第1面状体及び第2面状体として第1天井板611及び第2天井板612が設けられている。第1天井板611及び第2天井板612は、ヒータ63を密封し、ヒータ63がめっき液L1などの処理液に触れないように構成されている。より具体的には、第1天井板611と第2天井板612との間であってヒータ63の外周側にシールリング613が設けられており、このシールリング613によってヒータ63が密封されている。第1天井板611及び第2天井板612は、めっき液L1などの処理液に対する耐腐食性を有することが好適であり、例えば、アルミニウム合金によって形成されていてもよい。更に耐腐食性を高めるために、第1天井板611、第2天井板612及び側壁部62は、テフロン(登録商標)でコーティングされていてもよい。
蓋体6には、蓋体アーム71を介して蓋体移動機構7が連結されている。蓋体移動機構7は、蓋体6を水平方向及び上下方向に移動させる。より具体的には、蓋体移動機構7は、蓋体6を水平方向に移動させる旋回モータ72と、蓋体6を上下方向に移動させるシリンダ73(間隔調節部)と、を有する。このうち旋回モータ72は、シリンダ73に対して上下方向に移動可能に設けられた支持プレート74上に取り付けられている。シリンダ73の代替として、モータとボールねじとを含むアクチュエータ(図示せず)を用いてもよい。
蓋体移動機構7の旋回モータ72は、蓋体6を、基板保持部52に保持された基板Wの上方に配置された上方位置と、上方位置から退避した退避位置との間で移動させる。上方位置は、基板保持部52に保持された基板Wに対して比較的大きな間隔で対向する位置であって、上方から見た場合に基板Wに重なる位置である。退避位置は、チャンバ51内のうち、上方から見た場合に基板Wに重ならない位置である。蓋体6が退避位置に位置づけられている場合、移動するノズルアーム56が蓋体6と干渉することが回避される。旋回モータ72の回転軸線は、上下方向に延びており、蓋体6は、上方位置と退避位置との間で、水平方向に旋回移動可能になっている。
蓋体移動機構7のシリンダ73は、蓋体6を上下方向に移動させて、上面Sw上にめっき液L1が盛られた基板Wと天井部61の第1天井板611との間隔を調節する。より具体的には、シリンダ73は、蓋体6を下方位置(図2において実線で示す位置)と、上方位置(図2において二点鎖線で示す位置)とに位置づける。
蓋体6が下方位置に配置される場合、第1天井板611が基板Wに近接する。この場合、めっき液L1の汚損やめっき液L1内での気泡発生を防止するために、第1天井板611が基板W上のめっき液L1に触れないように下方位置を設定することが好適である。
上方位置は、蓋体6を水平方向に旋回移動させる際に、カップ571や、雰囲気遮断カバー572等の周囲の構造物に蓋体6が干渉することを回避可能な高さ位置になっている。
本実施の形態では、ヒータ63が駆動されて発熱し、上述した下方位置に蓋体6が位置づけられた場合に、基板W上のめっき液L1がヒータ63によって加熱されるように構成されている。
蓋体6の側壁部62は、天井部61の第1天井板611の周縁部から下方に延びており、基板W上のめっき液L1を加熱する際(すなわち下方位置に蓋体6が位置づけられた場合)に基板Wの外周側に配置される。蓋体6が下方位置に位置づけられた場合、側壁部62の下端は、基板Wよりも低い位置に位置づけられてもよい。
本実施の形態においては、蓋体6の内側に、不活性ガス供給部66によって不活性ガス(例えば、窒素(N2)ガス)が供給される。この不活性ガス供給部66は、蓋体6の内側に不活性ガスを吐出するガスノズル661と、ガスノズル661に不活性ガスを供給する不活性ガス供給源662と、を有する。ガスノズル661は、蓋体6の天井部61に設けられており、蓋体6が基板Wを覆う状態で基板Wに向かって不活性ガスを吐出する。
蓋体6の天井部61及び側壁部62は、蓋体カバー64により覆われている。この蓋体カバー64は、蓋体6の第2天井板612上に、支持部65を介して載置されている。すなわち、第2天井板612上に、第2天井板612の上面から上方に突出する複数の支持部65が設けられており、この支持部65に蓋体カバー64が載置されている。蓋体カバー64は、蓋体6とともに水平方向及び上下方向に移動可能になっている。また、蓋体カバー64は、蓋体6内の熱が周囲に逃げることを抑制するために、天井部61及び側壁部62よりも高い断熱性を有することが好ましい。例えば、蓋体カバー64は、樹脂材料により形成されていることが好適であり、その樹脂材料が耐熱性を有することがより一層好適である。
チャンバ51の上部に、蓋体6の周囲に清浄な空気(気体)を供給するファンフィルターユニット59(気体供給部)が設けられている。ファンフィルターユニット59は、チャンバ51内(とりわけ、雰囲気遮断カバー572内)に空気を供給し、供給された空気は、後述する排気管81に向かって流れる。蓋体6の周囲には、この空気が下向きに流れるダウンフローが形成され、めっき液L1などの処理液から気化したガスは、このダウンフローによって排気管81に向かって流れる。このようにして、処理液から気化したガスが上昇してチャンバ51内に拡散することを防止している。
上述したファンフィルターユニット59から供給された気体は、排気機構8によって排出されるようになっている。この排気機構8は、カップ571の下方に設けられた2つの排気管81と、ドレンダクト581の下方に設けられた排気ダクト82と、を有する。このうち2つの排気管81は、ドレンダクト581の底部を貫通し、排気ダクト82にそれぞれつながっている。排気ダクト82は、上方から見た場合に実質的に半円リング状に形成されている。本実施の形態では、ドレンダクト581の下方に1つの排気ダクト82が設けられており、この排気ダクト82に2つの排気管81が連通している。
[陽極及び陰極]
上述のようにめっき処理装置1(特にめっき処理部5)は、基板保持部52によって保持されている基板Wの上面Swにめっき液供給部53からめっき液L1(無電解めっき液)を供給することで、基板Wの無電解めっき処理を行う。特に、無電解めっき処理の間、基板Wの上面Sw上のめっき液L1を蓋体6によって非接触状態で覆いつつ、ヒータ63を使ってめっき液L1の温調を行うことにより、処理の安定化及び効率化が促進されている。さらに本実施の形態のめっき処理装置1では、以下に詳述するように、陽極(アノード:第1電極)及び陰極(カソード:第2電極)を使って基板W上のめっき液L1に電場を作用させることで、無電解めっき処理の更なる安定化及び効率化が促進されている。
無電解めっきは様々な手法で実施可能であり、例えば、基板処理面に形成されたシード層をベースとしてめっき金属を堆積させる方法、及びビアホールの底部に埋め込まれた金属をベースとしてめっき金属を堆積させる方法が知られている。シード層を利用する方法において、めっき金属の堆積方向はシード層表面の向きに基本的に対応するため、トレンチやビアホールの構造特性上、シームやボイドなどのめっき不良が生じやすい。またシード層を利用する方法及び埋め込み金属を利用する方法のいずれにおいても、基板のトレンチ及びビアホールが深くなるほど、十分量の金属イオンを底部側に継続的に供給することが難しくなり、めっき速度が鈍化する傾向がある。
一方、本実施の形態の基板液処理装置及び基板液処理方法によれば、陽極及び陰極を使って基板W上のめっき液L1に電場を作用させて、めっき液L1中の金属イオンが基板Wの周辺に集められる。これにより、基板Wの上面Swの周辺に十分量の金属イオンを継続的に存在させて、上面Sw上にめっき金属を高速に堆積させることができる。これはトレンチ及びビアホールが深い場合にも有効であり、めっき速度の鈍化やめっき不良の発生を効果的に防ぐことができる。特に、トレンチ及びビアホールの底部側に十分量の銅イオンが集中的に集まるようにめっき液L1に電場を作用させることによって、底部側から上方に向けてめっき金属の成長を促すことができ、シームやボイドの発生を効果的に防ぐことができる。
以下では、めっき液L1として銅イオンを含む無電解めっき液を使用し、銅配線として機能する金属銅を無電解めっきにより基板W上に堆積させる基板液処理装置及び基板液処理方法を例示する。ただし、以下に説明する基板液処理装置及び基板液処理方法は、銅イオン以外の金属イオンを含む無電解めっき液を用いて、銅以外の金属を基板上に堆積させる場合にも同様に応用可能である。
図3は、陽極11及び陰極12の配置例を示す概略断面図である。図3には、下方位置に配置されている状態の蓋体6が示されている。また図3では、図1及び図2に示された要素の一部が簡略化して示され或いは省略されている。
めっき処理部5は、基板Wの上面Sw側に配置される陽極11と、基板Wの下面Lw側に配置される陰極12と、を備える。陽極11及び陰極12は、水平方向(すなわち重力が作用する鉛直方向と直角を成す方向)に延在するプレート形状を有し、それぞれ基板保持部52に保持されている基板W(特に上面Sw)を上方及び下方から覆う。陽極11は電源13の正極に接続され、陰極12は電源13の負極に接続されている。陽極11及び陰極12は、お互いの間に基板Wの上面Swを介在させ、上下方向(すなわち鉛直方向と平行な方向)に関して基板W及び基板W上の処理液(めっき液L1等)から離れた位置に配置される。
本実施の形態の陽極11は蓋体6に設けられており、蓋体6及び陽極11は一体的に移動する。図示の例では、絶縁材料を含む第2天井板612により、陽極11は被覆されている。ヒータ63から基板W上のめっき液L1への伝熱を阻害しないように、図示の陽極11はヒータ63よりも上方に位置する。すなわち陽極11は、ヒータ63と基板W(特に上面Sw)との間には配置されないように設けられている。ただし陽極11は、ヒータ63よりも下方に位置し、ヒータ63と基板W(特に上面Sw)との間に配置されていてもよい。この場合、陽極11は伝熱性に優れた材料により構成されることが好ましい。
本実施の形態の陰極12は、基板保持部52に対して固定的に取り付けられ、基板保持部52と一体的に回転可能に設けられており、絶縁材料を含む陰極被覆体14によって被覆されている。図示の陰極12は、基板保持部52のチャック部材521に対して取り付けられているが、陰極12は回転シャフト522(図2参照)に対して取り付けられていてもよい。
基板Wの上面Swの全体にわたって金属銅の堆積を促す観点から、陽極11及び陰極12は基板Wの上面Swの全体を覆うように水平方向へ延在することが好ましい。ただし、必ずしも上面Swの全部が陽極11及び陰極12により覆われていなくてもよく、上面Swの一部領域が陽極11及び/又は陰極12により覆われていなくてもよい。例えば、基板Wの上面Swのうち基板Wの回転軸線(すなわち基板保持部52の回転軸線)が通過する中央領域が、陽極11及び/又は陰極12により覆われていなくてもよい。
なお図3に示す陽極11及び陰極12は一例に過ぎず、他の位置に配置されていてもよいし、他の形態で配置されていてもよい。例えば、陽極11は、蓋体カバー64(図2参照)の上面又は第2天井板612の上面に取り付けられていてもよいし、蓋体6及び蓋体カバー64から離れた位置に設けられていてもよい。陰極12は、回転しないように設けられていてもよく、基板保持部52及び基板Wの回転にかかわらず静止していてもよい。また陰極12は、基板保持部52(例えばチャック部材521(後述の図6参照))に内蔵されていてもよいし、基板保持部52から離れた位置に設けられていてもよい。また基板保持部52(特に基板Wと直接的に接触する部材(図示の例ではチャック部材521))自体が、陰極12として働いてもよい。なお図3に示す例では、基板Wがグラウンド(GND)に接続されている。
電源13は、制御部3(図1参照)によってオン及びオフが制御される。本実施の形態の制御部3は、蓋体6が下方位置に配置されて基板Wの上面Sw上のめっき液L1が陽極11及び陰極12により挟まれた状態で、電源13をオン状態からオフ状態に切り替え、その後、電源13をオフ状態からオン状態に切り替える。このように電源13のオン及びオフを繰り返して陽極11と陰極12との間で間欠的に電圧を印加して電流を流すことで、めっき液L1中の銅イオンを効果的に撹拌することができる。これにより、めっき液L1における銅イオンの滞留を防いで、基板Wの上面Swの周辺への、特にトレンチ及びビアホールの底部の周辺への、銅イオンの移動を促進し、金属銅の析出及び堆積の速度の鈍化を防ぐことができる。
図4A~図4Cは、陽極11及び陰極12によって作り出される電場と、銅イオン(Cu2+)の挙動との関係を説明するための図である。図4Aは、陽極11及び陰極12に電圧が印加されていない状態を示す。図4Bは、陽極11及び陰極12に電圧が印加されている状態(特に基板Wの上面Sw上に金属銅(Cu)が析出する前の状態)を示す。図4Cは、陽極11及び陰極12に電圧が印加されている状態(特に基板Wの上面Sw上に金属銅(Cu)が析出している状態)を示す。
図4A~図4Cには、一例として有底のビアホール40の近傍における銅イオンの状態が概念的に示されているが、トレンチや貫通したビアホールにおいても、銅イオンは基本的に同様の挙動を示す。また図4A~図4Cは簡略化されており、例えば図示しないシード層が基板Wの上面Swに形成されている。
上述のように、本実施の形態のめっき処理部5によって実施される無電解めっき処理方法(基板液処理方法)によれば、基板保持部52によって支持されている基板Wの上面Swにめっき液ノズル531を介してめっき液L1が供給される。めっき液L1が基板W上に供給された直後、及び/又は、陽極11及び陰極12によって作り出される電場が基板W上のめっき液L1に作用していない間は、銅イオンはめっき液L1中において概ね均等に分散している(図4A参照)。
そして電源13が制御部3により制御され、基板Wの上面Sw上のめっき液L1が陽極11と陰極12との間に配置された状態で、陽極11及び陰極12により作り出される電場を陽極11と陰極12との間にかける。これにより、基板W上のめっき液L1に対して陽極11及び陰極12が作り出す電場が作用し、めっき液L1中の銅イオンが下方に引き寄せられる。すなわちめっき液L1中の銅イオンは、基板Wよりも下方に存在する陰極12に向かって引き寄せられ、基板Wの上面Swの周辺に集まる(図4B参照)。特に、ビアホール40やトレンチ(図示省略)などの基板Wの上面Swにおける局所的な凹部においても銅イオンは下方に向かって引き寄せられ、当該凹部の底部に集まる。
このようにして基板Wの上面Swの周辺に集められた銅イオンが消費され、基板W上には金属銅が徐々に析出し、上面Swは金属銅によってめっきされる(図4C参照)。この際、陽極11及び陰極12によって作り出される電場の影響で、めっき液L1中の銅イオンは継続的に陰極12に向かって(すなわち下方に向かって)引き寄せられる。そのため基板Wの上面Sw周辺の銅イオンが消費されても、新たな銅イオンが上面Sw周辺に補給される。したがって基板Wの上面Swの周辺には十分量の銅イオンを継続的に存在させることができ、めっき処理の鈍化を防ぐことができる。
このように本実施の形態の基板液処理装置及び基板液処理方法によれば、無電解めっき処理の間、継続的に、基板Wの周辺に十分量の銅イオンを存在させることができ、基板W上への金属銅の堆積を効果的に促すことができる。特に、基板W上のビアホール40等の局所的凹部では底部側に銅イオンを集中的に存在させることができる。そのため、基板W上において下方から上方に向けて徐々に金属銅を析出及び成長させることができ、シームやボイドなどのめっき不良の発生を効果的に防ぐことができる。
なお陽極11と陰極12との間に電場を作り出すために、電源13がオフ状態からオン状態に切り替えられるタイミングは、基板Wの上面Sw上へのめっき液L1の供給開始前であってもよいし、供給中であってもよいし、供給後であってもよい。また基板Wの上面Sw上にめっき液L1が存在している状態で、制御部3(図1参照)の制御下で電源13のオン状態及びオフ状態を切り替えて、めっき液L1中の銅イオンの撹拌を促してもよい。
[めっき処理方法]
図5は、めっき処理方法の一例を示すフローチャートである。なお、以下に説明するめっき処理方法は一例に過ぎず、下記以外の工程が行われてもよい。また以下に説明するめっき処理部5の動作は制御部3によって制御されている。下記の処理が行われている間、ファンフィルターユニット59からは清浄な空気がチャンバ51内に供給され、チャンバ51内の空気は排気管81に向かって流れる。
まず、めっき処理部5に基板Wが搬入され、基板Wが基板保持部52によって水平に保持される(図5に示すS1)。次に、基板保持部52に保持された基板Wの洗浄処理が行われる(S2)。この洗浄処理では、まず回転モータ523が駆動されて基板Wが所定の回転数で回転し、続いて、退避位置に位置づけられていたノズルアーム56が吐出位置に移動し、回転する基板Wの上面Swに洗浄液ノズル541から洗浄液L2が供給される。洗浄液L2はドレンダクト581に排出される。
続いて、回転する基板Wにリンス液ノズル551からリンス液L3が供給されることでリンス処理が行われる(S3)。基板W上に残存する洗浄液L2がリンス液L3によって洗い流され、リンス液L3はドレンダクト581に排出される。次に、基板保持部52により保持されている基板Wの上面Swにめっき液L1を供給し、基板Wの上面Sw上にめっき液L1のパドルを形成するめっき液盛り付け工程が行われる(S4)。めっき液L1は表面張力によって上面Swに留まってパドルを形成するが、上面Swから流出しためっき液L1はドレンダクト581を介して排出される。所定量のめっき液L1がめっき液ノズル531から吐出された後、めっき液L1の吐出が停止される。その後、めっき液ノズル531は、ノズルアーム56とともに退避位置に位置づけられる。
次に、めっき液加熱処理工程として、基板W上に盛り付けられためっき液L1が加熱される。このめっき液加熱処理工程は、蓋体6が基板Wを覆う工程(S5)と、不活性ガスを供給する工程(S6)と、蓋体6を下方位置に配置してめっき液L1を加熱する加熱工程(S7)と、蓋体6を基板W上から退避する工程(S8)とを有する。次に、基板Wのリンス処理が行われ(S9)、回転する基板Wにリンス液ノズル551からリンス液L3が供給されて、基板W上に残存するめっき液L1が洗い流される。続いて、基板Wの乾燥処理が行われ(S10)、基板Wを高速で回転させることで基板W上に残存するリンス液L3を除去し、めっき膜が形成された基板Wが得られる。その後、基板Wが基板保持部52から取り出されて、めっき処理部5から搬出される(S11)。
上述の陽極11及び陰極12によって作り出される電場の適用(図4A~図4C参照)は、少なくともめっき液加熱処理工程(S4~S8)において、特に少なくとも加熱工程(S7)において、行われる。なお陽極11及び陰極12によって作り出される電場の適用は、必ずしも継続的に行われなくてもよい。例えば、制御部3が電源13のオン及びオフを繰り返すことで、そのような電場を基板W上のめっき液L1に断続的に作用させることも可能である。また陽極11及び陰極12によって作り出される電場の適用は、めっき液加熱処理工程(S4~S8)の前から継続的に行われてもよいし、無電解めっき処理の全体(S1~S11)を通じて継続的に行われてもよい。
以上説明したように本実施の形態の基板液処理装置及び基板液処理方法によれば、陽極11及び陰極12によって作り出される電場を基板W上のめっき液L1に作用させることで、基板Wの上面Swの近傍に金属イオンを偏在させることできる。これにより、めっき金属の堆積を高速化することができ、基板Wの局所的凹部(ビアホール40やトレンチなど)に対する金属配線の埋め込み性を向上させることができる。特に、基板Wの局所的凹部が深くても、めっき液L1中の金属イオンは局所的凹部の底部に向けて引き寄せられるため、シームやボイドなどのめっき不良の発生を効果的に抑えることができる。
[第1の変形例]
陽極11及び陰極12のうちの少なくともいずれか一方は、昇降可能に設けられていてもよい。そして、基板Wの上面Sw上のめっき液L1(無電解めっき液)が陽極11及び陰極12により挟まれた状態で、陽極11及び陰極12のうちの少なくともいずれか一方が昇降させられて陽極11と陰極12との間の距離が変えられてもよい。すなわち制御部3の制御下で、上面Sw上のめっき液L1に対し、陽極11及び陰極12により作り出される電場が作用している状態で、陽極11及び陰極12のうちの少なくともいずれか一方が昇降させられて陽極11と陰極12との間の距離が変えられてもよい。
例えば、図3に示すように陽極11が蓋体6と一体的に移動可能に設けられている場合、制御部3が蓋体6とともに陽極11を昇降させることによって、陽極11と陰極12との間の距離を変えることが可能である。また図示は省略するが、陰極12を昇降させる陰極昇降機構を設置し、制御部3が当該陰極昇降機構を制御することによっても、陽極11と陰極12との間の距離を変えることが可能である。
陽極11と陰極12との間の距離に応じて、基板W上のめっき液L1に作用する電場(すなわち陽極11及び陰極12によって作り出される電場)の強さを変えることができる。そのため陽極11及び陰極12により電場が作り出されている状態で陽極11と陰極12との間の距離を小さくしたり大きくしたりすることによって、めっき液L1中の金属イオンの撹拌を促すことができる。
[第2の変形例]
陽極11及び陰極12の各々は複数のゾーンを含み、陽極11及び陰極12の複数のゾーンは、それぞれ基板Wの上面Swの複数の領域を挟んでいてもよい。すなわち、陽極11の一部のゾーン及び陰極12の一部のゾーンによって構成されるゾーンペアが2以上設けられ、それらの2以上のゾーンペアが、基板Wの上面Swのお互いに異なる2以上の領域に対してそれぞれ割り当てられていてもよい。
この場合、陽極11と陰極12との間に形成される電場は、ゾーン単位で変えられてもよい。すなわち制御部3の制御下で、陽極11及び陰極12のあるゾーンペアに対しては相対的に高い電圧を印加し、他のゾーンペアに対しては相対的に低い電圧を印加してもよい。これにより基板Wの上面Swのある領域に対しては相対的に強い電界強度の電場を作用させつつ、基板Wの上面Swの他の領域に対しては相対的に弱い電界強度の電場を作用させることができる。このようにゾーン単位で電場の強さを調整することによって、ゾーン単位でめっき速度をコントロールすることが可能である。なお陽極11及び陰極12の各々において、お互いに隣接するゾーン間には電気的な絶縁構造が設けられており、隣接ゾーンはお互いに電気的に絶縁されている。
例えば、基板Wの中央部(すなわち回転軸線が通過する領域)及び/又は基板Wの外周部におけるめっき速度が、当該中央部と当該外周部との間の基板Wの中間部におけるめっき速度に比べ、遅い場合がある。この場合、基板Wの中央部及び/又は外周部に割り当てられる陽極11及び陰極12のゾーンペアに印加する電圧を、他のゾーンペアに印加する電圧よりも高くすることによって、中央部及び/又は外周部におけるめっき速度の局所的な低下を抑制することができる。
陽極11及び陰極12の各々におけるそのような複数のゾーンの具体的な形態は限定されない。例えば、陽極11及び陰極12の各々において同心円状に複数のゾーンが設けられていてもよく、陽極11及び陰極12の各々は、基板Wの中央部を覆う円盤状ゾーン及び当該円盤状ゾーンを囲む1以上の円環状ゾーンを含んでいてもよい。
[第3の変形例]
めっき処理装置1(特にめっき処理部5)は、電場を制限するシールドを備えていてもよい。そのようなシールドは、既知の電磁シールドによって構成可能であり、例えば板金、金属網或いは発泡金属等により構成されていてもよい。例えば、第1陽極及び第2陽極を含む複数の陽極11と、第1陰極及び第2陰極を含む複数の陰極12とが設けられる場合に、お互いにペアを形成しない陽極11と陰極12との間にそのようなシールドを配置してもよい。例えば、第1陽極と第1陰極との間に第1基板が配置され且つ第2陽極と第2陰極との間に第2基板が配置されつつ、第1陽極と第2陰極との間にシールドが配置され且つ第2陽極と第1陰極との間にシールドが配置されてもよい。この場合、意図していない陽極11と陰極12との間に電場が作り出されることを防ぐことができる。
図6は、めっき処理装置1の一例を示す概略断面図である。図6に示すめっき処理装置1は、上下に配置された第1めっき処理部5A及び第2めっき処理部5Bを含む。第1めっき処理部5A及び第2めっき処理部5Bの各々は、基本的に図3に示すめっき処理部5と同様の構成を有するが、第1めっき処理部5A及び第2めっき処理部5Bの各々が有するチャック部材521は、基板Wの全体を覆うように水平方向に延在する。そして図6に示す陰極12(すなわち第1陰極12A及び第2陰極12B)は、チャック部材521の内側においてチャック部材521と一体的に設けられ、基板Wの全体を覆うように水平方向に延在する。
図6に示すめっき処理装置1において、第1めっき処理部5Aと第2めっき処理部5Bとの間には、シールド20が設置されている。これにより、第1めっき処理部5Aの第1陽極11Aと第2めっき処理部5Bの第2陰極12Bとの間に、意図しない電場が形成されることを防ぐことができる。また第1めっき処理部5Aの第1陰極12Aと第2めっき処理部5Bの第2陽極11Bとの間に、意図しない電場が形成されることを防ぐことができる。
[他の変形例]
本開示は上記実施の形態及び変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態及び変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の装置及び方法を形成できる。実施の形態及び変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態及び変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、基板液処理装置の動作を制御するためのコンピュータにより実行された際に、コンピュータが基板液処理装置を制御して上述の基板液処理方法を実行させるプログラムを記録した記録媒体(例えば記録媒体31)として、本開示が具体化されてもよい。