JP7197012B2 - レーザー光走査装置及びレーザー光走査方法 - Google Patents
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Description
本願発明は、金属等の加工や塗料の除去等を行うためにレーザー光を走査するレーザー光走査装置に関する。
レーザー加工装置は、金属や樹脂などの切断、溶接、印字など幅広く用いられており、最近では屋外で金属の錆を取り除く、いわゆる除錆や、金属に塗装された塗料を取り除くなど、構造物の保守用途へと利用範囲が拡大している。例えば、除錆作業にレーザー加工装置を用いれば、騒音の抑制、金属の細かな凹凸部の除錆や飛散物の回収が容易になるなどの利点がある(特許文献1、非特許文献1、2参照)。
除錆用途のレーザー加工装置はレーザー光源と加工用のヘッドから構成されており、ヘッド内のプリズムなどの光学部品を高速で回転させる機構により、除錆対象物上でレーザー光を、円形を例として2次元走査するなど、除錆に最適な条件を実現するためのエネルギー密度や走査範囲、走査速度などが最適化されているほか、単位時間あたりの除錆作業が完了する面積を大きくするための工夫がなされている(特許文献1参照)。
ここで、除錆作業に限らずレーザー光を2次元走査して金属等を加工するレーザー加工装置においても、同様に光学部品を回転させたり、あるいはミラー数枚を高速に動作させて2次元走査を行っており、この2次元走査を行うためには、特許文献2に示すように、少なくとも2つの機械駆動機構が必要となるのが一般的である。
「レーザークリーニング工法 可搬型レーザーによる塗膜及びサビの除去工法」、静岡県交通基板部技術管理課、新技術・新工法情報データベース、登録番号1624,[平成30年8月23日検索]、インターネット<URL:http://www2.pref.shizuoka.jp/all/new_technique.nsf/7BFBD8898312FB56492581930029788E/$FILE/1624gaiyou.pdf>
Koichiro Nakamura, Jun Miyazu, Yuzo Sasaki, Tadayuki Imai, Masahiro Sasaura, and Kazuo Fujiura, "Space-charge-controlled electro-optic effect: Optical beam deflection by electro-optic effect and space-charge-controlled electrical conduction", Journal of Applied Physics 104, 013105 _2008_
「Methods for Computer Design of Diffractive Optical Elements」, WILLEY INTER-SCIENCE, P120-121, December 14, 2001
ここで、非特許文献3のように、2次元走査を必要とせずに所望の光強度分布を成形する回折光学素子を用いることも可能である。回折光学素子を用いることによって装置の構成部品を減らすことが可能であり、小型化や軽量化を図ることが可能である。しかしながら、非特許文献3における回折像の焦点深度は、回折光学素子に入射するビーム径と、結像される位置によって、一義的に決まってしまうため、回折光学素子と加工対象物との距離の誤差が焦点深度内に収まるように制御しないと、作業効率が低下するという問題がある。
これを防ぐ方法として、回折光学素子の開口数を小さくして焦点深度を長くする方法があるが、回折像の形状によっては、焦点深度の範囲内であっても回折光が干渉して、所望の回折像が得られない場合がある。一方、開口数を大きくして、焦点深度を短くすることにより回折光の干渉を防ぐことができる場合もあるが、焦点深度が短いため、加工対象物と、回折光学素子間の距離を精密に制御する必要がある。
本願発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、回折光学素子の開口数に依存することなく、所望の焦点深度を得ることができるレーザー光走査装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本願発明のレーザー光走査装置は、光源から放射されたレーザー光から平行光を生成する光学系と、前記光学系からの平行光に対して1次元の偏向を行う光偏向器と、前記光偏向器からの偏向光を回折する回折光学素子とを備え、前記回折光学素子は、前記光偏向器から前記回折光学素子に向かう所定の軸に沿って回折光が結像され、前記偏向光の入射位置に応じて、前記回折光が結像される前記所定の軸上の位置が異なるように構成される。
上記課題を解決するために、本願発明のレーザー光走査方法は、光偏向器と回折光学素子とを備えたレーザー光走査装置におけるレーザー光走査方法であって、光源から放射されたレーザー光から平行光を生成するステップと、前記平行光に対して1次元の偏向を行うステップと、前記偏向された偏向光を回折するステップとを含み、前記回折するステップでは、前記光偏向器から前記回折光学素子に向かう所定の軸に沿って回折光が結像され、前記偏向光の入射位置に応じて、前記回折光が結像される前記所定の軸上の位置が異なるように前記偏向光が回折される。
本願発明によれば、回折光学素子の開口数に依存することなく、所望の焦点深度を得ることができるレーザー光走査装置を提供することが可能となる。
以下、本願発明の実施の形態について図面を用いて説明する。本願発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に説明する本願発明の実施の形態に限定されるものではない。
<レーザー光走査装置の構成>
図1A、図1Bを用いて、本願発明の実施の形態に係るレーザー光走査装置の構成を説明する。レーザー光走査装置10は、光源30から出射され、光ファイバ31により伝搬されたレーザー光を処理対象の表面に照射するためのヘッド部20とを備え、ヘッド部20は、平行光生成光学系21、光偏向器23および透過型回折光学素子25(図1A)、あるいは反射型回折光学素子26(図1B)とを備える。
図1A、図1Bを用いて、本願発明の実施の形態に係るレーザー光走査装置の構成を説明する。レーザー光走査装置10は、光源30から出射され、光ファイバ31により伝搬されたレーザー光を処理対象の表面に照射するためのヘッド部20とを備え、ヘッド部20は、平行光生成光学系21、光偏向器23および透過型回折光学素子25(図1A)、あるいは反射型回折光学素子26(図1B)とを備える。
光源30から放射されたレーザー光は、光ファイバ31により伝搬され、ヘッド部20に入射し、平行光生成光学系21により平行光22とされる。平行光22は、光偏向器23により偏向され、偏向光24は、透過型回折光学素子25または反射型回折光学素子26により回折され、回折光27が処理対象の表面に結像される。
光偏向器23により偏向された平行光22は、透過型回折光学素子25を通過し、または反射型回折素子26で反射し、所望の光強度分布つまり回折像40に成形される。透過型回折光学素子25、または反射型回折光学素子26によって回折光27の結像距離を変化させることにより所望の焦点深度を走査し、回折像40により処理対象物の表面に所定の加工等を施すことができる。
<回折光学素子>
回折光学素子とは、回折光学素子に入射したレーザー光を、所定の形状の光強度分布に成形することができる光学素子である。図2のような光の強度分布、プロファイルを有するレーザー光を回折することで、四角形等の所定の形状の光強度分布をもつ回折像40を成形することができる。回折光学素子としては、図3Aのように、入射した偏向光24が透過して結像する透過型回折光学素子25と、図3Bのように、入射した偏向光24が反射して結像する反射型回折光学素子26がある。本願発明の実施の形態では、これらの透過型、反射型回折光学素子のいずれも用いることができる。これらの回折光学素子25、26は、ヘッド部20への脱着が可能であり、レーザ走査装置の用途に応じて回折光学素子を交換することで所望の光強度分布をもつ回折像40を得ることができる。
回折光学素子とは、回折光学素子に入射したレーザー光を、所定の形状の光強度分布に成形することができる光学素子である。図2のような光の強度分布、プロファイルを有するレーザー光を回折することで、四角形等の所定の形状の光強度分布をもつ回折像40を成形することができる。回折光学素子としては、図3Aのように、入射した偏向光24が透過して結像する透過型回折光学素子25と、図3Bのように、入射した偏向光24が反射して結像する反射型回折光学素子26がある。本願発明の実施の形態では、これらの透過型、反射型回折光学素子のいずれも用いることができる。これらの回折光学素子25、26は、ヘッド部20への脱着が可能であり、レーザ走査装置の用途に応じて回折光学素子を交換することで所望の光強度分布をもつ回折像40を得ることができる。
<第1の実施の形態>
本実施の形態では、図4Aに示すように、機械駆動を用いた1次元の偏向動作を行う光偏向器23と所定の加工が施された回折光学素子25とを組み合わせて、回折光学素子の開口数に依存することなく、所望の焦点深度を得ることのできるビーム走査を実現する。光偏向器23としてはビームの1次元の偏向動作ができるものであれば、どのような機械駆動機構を使用しても構わない。
本実施の形態では、図4Aに示すように、機械駆動を用いた1次元の偏向動作を行う光偏向器23と所定の加工が施された回折光学素子25とを組み合わせて、回折光学素子の開口数に依存することなく、所望の焦点深度を得ることのできるビーム走査を実現する。光偏向器23としてはビームの1次元の偏向動作ができるものであれば、どのような機械駆動機構を使用しても構わない。
図4Aの回折光学素子25は、光偏向器23のビーム走査方向に沿って、複数の区間に分割されており、それぞれの区間における回折像40の結像距離が異なるように、区間毎に異なる微細構造が施されている。図4Aでは、所定の軸上、例えば、光偏向器23から回折光学素子25に向かう方向に平行な軸上に、回折光が結像されるように構成されている。図4Aでは、光偏向器23への入射光の方向は、図のZ軸に平行であり、このZ軸上に回折光が結像されるように構成されている。
この回折光が結像される軸は、上記の例に限られず、所望のビーム走査の形状等に応じて、回折光学素子に所定の加工を施すことにより、所定の軸上に回折光を結像することができる。本実施の形態によれば、1次元の偏向動作を行う光偏向器と所定の加工が施された回折光学素子とを組み合わせて、回折光学素子の開口数に依存することなく、所望の焦点深度を得ることのできるビーム走査を実現する。
回折光学素子25は、複数の区間のそれぞれにおける回折像40の結像距離が異なるように、区間毎に異なる微細構造が施されているので、偏向された偏向光24の回折光学素子25における入射位置を時間的に変化させることで、光偏向器23の1次元のビームの偏向動作により、所定の軸上における所望の焦点深度に回折像を結像させるようにビーム走査を行うことができる。
図4Bは、光偏向器23の偏向動作の一例であり、偏向されたビームの回折光学素子25における入射位置(A~D)の時間的な変化を示したものである。図4Bでは、時刻0において、偏向されたビームは、区間Aに照射される。時間の経過と共に図4Aの右方向にビームが走査されて各区間を通過する際に、光偏向器23への入射光の方向、すなわち図のZ軸に平行な方向における回折像40の結像位置が変化し、位相がπ/2になったときには、図4Aの区間Bに照射され、所定の軸上の最も遠い焦点位置に回折像40が結像される。
その後、ビームは図4Aの左方向に走査されていき、位相が3π/2となったときに区間Dに到達し、再び最も遠い焦点位置に回折像40が結像される。ここで、区間Dに到達したときに、区間Bに対応する結像距離と同じ距離に結像するようにしても良いし、区間Bに対応する結像距離よりも遠方に結像されるようにしても良い。
図4Aの区間Aより左に行くほど、区間Bに対応する結像距離より、遠方に結像するように回折光学素子25を設計することにより、より長い焦点深度が実現できる。また、所望の焦点深度に応じて、回折光学素子25の区間の数を増減させたり、あるいは光偏向器23の偏向角を増減させることによって、所望の焦点深度が得られるように構成してもよい。
このように、本実施の形態によれば、機械駆動を用いた1次元の偏向動作を行う光偏向器23と所定の加工が施された回折光学素子25とを組み合わせることにより、回折光学素子の開口数に依存することなく、所望の焦点深度を得ることができるレーザー光走査装置を提供することが可能となる。
<レーザー光走査装置(機械駆動)の具体例>
図4Aの構成において、鏡を機械駆動することによって500Hzでビームを偏向し、焦点深度を制御するレーザー光走査装置を作製した。このとき、光偏向器23に入射する光のエネルギー密度は8mJ/mm2であり、使用した透過型回折光学素子25のエネルギー変換効率、すなわち、回折像のエネルギーを入射光のエネルギーで割った値は0.9であった。
図4Aの構成において、鏡を機械駆動することによって500Hzでビームを偏向し、焦点深度を制御するレーザー光走査装置を作製した。このとき、光偏向器23に入射する光のエネルギー密度は8mJ/mm2であり、使用した透過型回折光学素子25のエネルギー変換効率、すなわち、回折像のエネルギーを入射光のエネルギーで割った値は0.9であった。
上記エネルギー変換効率を有し、回折光学素子の入射光と同じエネルギー密度となるように正方形の回折像40を成形可能な透過型回折光学素子25を用い、焦点深度を制御しながら金属加工を行った。回折光学素子25と加工対象物との距離を精密に制御する機構を不要とし、エネルギー密度を変化させることなく所望の光強度分布を維持し、焦点深度を制御しながら金属加工を行うことができた。
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態では、光偏向器23として機械駆動機構を用いたが、機械駆動機構を必要としない電気光学効果を利用した光偏向器23を使用してもよい。電気光学効果を利用した光偏向器23として、ニオブ酸チタン酸カリウム(KTa1-xNbxO3:KTN)単結晶を用いたものが挙げられる。KTN単結晶では、非特許文献2に記載されているように、電圧の印加によってレーザー光を偏向することが可能である。
第1の実施の形態では、光偏向器23として機械駆動機構を用いたが、機械駆動機構を必要としない電気光学効果を利用した光偏向器23を使用してもよい。電気光学効果を利用した光偏向器23として、ニオブ酸チタン酸カリウム(KTa1-xNbxO3:KTN)単結晶を用いたものが挙げられる。KTN単結晶では、非特許文献2に記載されているように、電圧の印加によってレーザー光を偏向することが可能である。
さらに、KTN単結晶を用いた光偏向器23は、500kHz程度まで高速にビーム走査することが可能であり、機械駆動機構の光偏向器23を用いた場合よりも作業効率を改善することが可能である。
<レーザー光走査装置の具体例>
図4Aの構成において、電気光学効果を利用するKTN単結晶光偏向器によってビームを500kHzで走査する装置を作製した。このとき、光偏向器23に入射する光のエネルギー密度は8mJ/mm2であり、使用した回折光学素子25のエネルギー変換効率、すなわち、回折像のエネルギーを入射光のエネルギーで割った値は0.9であった。
図4Aの構成において、電気光学効果を利用するKTN単結晶光偏向器によってビームを500kHzで走査する装置を作製した。このとき、光偏向器23に入射する光のエネルギー密度は8mJ/mm2であり、使用した回折光学素子25のエネルギー変換効率、すなわち、回折像のエネルギーを入射光のエネルギーで割った値は0.9であった。
上記エネルギー変換効率を有し、回折光学素子の入射光と同じエネルギー密度となるように輪形状の回折像40を成形可能な透過型回折光学素子25を用いて、焦点深度を制御しながら光軸方向の金属加工を行った。回折光学素子25と加工対象物との距離を精密に制御する機構を不要とし、エネルギー密度を変化させることなく所望の光強度分布を維持し、焦点深度を制御しながら金属加工を行うことができた。また、KTN単結晶光偏向器を利用したことにより、機械駆動機構を用いた光偏向器を用いた場合と比較して作業時間を1000分の1程度まで短縮することができた。
本願発明は、金属等の加工や塗料の除去等を行うためにレーザー光を走査するレーザー光走査装置に利用することができる。
10…レーザー光走査装置、20…ヘッド部、21…平行光生成光学系、22…平行光、23…光偏向器、24…偏向光、25…透過型回折素子、26…反射型回折素子、27…回折光、30…光源、31…光ファイバ、40…回折像。
Claims (8)
- 光源から放射されたレーザー光から平行光を生成する光学系と、
前記光学系からの平行光に対して1次元の偏向を行う光偏向器と、
前記光偏向器からの偏向光を回折する回折光学素子とを備え、
前記回折光学素子は、前記光偏向器から前記回折光学素子に向かう所定の軸に沿って回折光が結像され、前記偏向光の入射位置に応じて、前記回折光が結像される前記所定の軸上の位置が異なるように構成される
レーザー光走査装置。 - 前記回折光学素子は、前記光偏向器から前記回折光学素子に向かう方向に平行な軸上に、前記回折光が結像されるように構成される
請求項1に記載のレーザー光走査装置。 - 前記回折光学素子は、複数の区分に分割されており、前記複数の区分のそれぞれに照射された光が、それぞれ異なる位置に結像されるように加工されている
請求項1または2に記載のレーザー光走査装置。 - 前記光偏向器は、電気光学効果を利用する光偏向器である
請求項1~3のいずれか1項に記載のレーザー光走査装置。 - 前記電気光学効果を利用する光偏向器は、KTN単結晶を用いた光偏向器である
請求項4に記載のレーザー光走査装置。 - 前記回折光学素子は、脱着可能に構成されている
請求項1~5のいずれか1項に記載のレーザー光走査装置。 - 前記回折光学素子は、結像される回折光のエネルギー密度が、前記回折光学素子に入射するレーザー光のエネルギー密度と等しくなるように構成されている
請求項1~6のいずれか1項に記載のレーザー光走査装置。 - 光偏向器と回折光学素子とを備えたレーザー光走査装置におけるレーザー光走査方法であって、
光源から放射されたレーザー光から平行光を生成するステップと、
前記平行光に対して1次元の偏向を行うステップと、
前記偏向された偏向光を回折するステップとを含み、
前記回折するステップでは、前記光偏向器から前記回折光学素子に向かう所定の軸に沿って回折光が結像され、前記偏向光の入射位置に応じて、前記回折光が結像される前記所定の軸上の位置が異なるように前記偏向光が回折される
レーザー光走査方法。
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