JP7193810B1 - 疾患リスク評価のための腸内細菌叢のタイプ分類方法 - Google Patents

疾患リスク評価のための腸内細菌叢のタイプ分類方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7193810B1
JP7193810B1 JP2021106050A JP2021106050A JP7193810B1 JP 7193810 B1 JP7193810 B1 JP 7193810B1 JP 2021106050 A JP2021106050 A JP 2021106050A JP 2021106050 A JP2021106050 A JP 2021106050A JP 7193810 B1 JP7193810 B1 JP 7193810B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
disease
types
risk
evaluation
intestinal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2021106050A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2023004411A (ja
Inventor
裕二 内藤
智久 高木
亮 井上
洋 坂爪
彬 大島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
KYOTO PREFECTURAL UNIVERSITY OF MEDICINE
Josho Gakuen Educational Foundation
Original Assignee
KYOTO PREFECTURAL UNIVERSITY OF MEDICINE
Josho Gakuen Educational Foundation
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by KYOTO PREFECTURAL UNIVERSITY OF MEDICINE, Josho Gakuen Educational Foundation filed Critical KYOTO PREFECTURAL UNIVERSITY OF MEDICINE
Priority to JP2021106050A priority Critical patent/JP7193810B1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7193810B1 publication Critical patent/JP7193810B1/ja
Publication of JP2023004411A publication Critical patent/JP2023004411A/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02ATECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
    • Y02A90/00Technologies having an indirect contribution to adaptation to climate change
    • Y02A90/10Information and communication technologies [ICT] supporting adaptation to climate change, e.g. for weather forecasting or climate simulation

Landscapes

  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

【課題】モンゴロイド、特に日本人の腸内細菌叢に関する網羅的な解析に基づいて、腸内細菌叢と疾患リスクの関係を明らかにし、腸内細菌叢の情報から疾患リスクを推定する方法を開発し、提供することを課題とする。【解決手段】被験試料から得られた腸内細菌の存在比率をもとに、被験試料が属する腸内細菌叢のタイプを分類し、腸内細菌叢のタイプと疾患リスクの相関情報に基づき、被験試料が由来する被験者の疾患リスクを評価する。【選択図】なし

Description

特許法第30条第2項適用 刊行物名:「知」の集積と活用の場による革新的技術創造促進事業(うち「知」の集積と活用の場による研究開発モデル事業)研究成果報告書 公開日:令和3年6月24日
本願発明は、疾患リスク評価のための腸内細菌叢のタイプ分類方法及びそれを用いた疾患リスクの評価方法に関する。
現在の日本では、食生活の欧米化や急速に進む高齢化によって、生活習慣病によるQOLの低下や医療及び介護費用の増加等が社会問題になっている。この問題を解決するためには生活習慣病をはじめとする疾患を早期に発見し、発症以前又は病態の進行以前の早期に予防的に介入することが重要である。そのため、疾患の早期発見には、日常生活に密着した検体を使用した検査及びその検査結果に基づいて疾患リスクを評価する評価指標の開発が必要となる。しかしながら、日常的に実施可能な、侵襲性及び実施難度が低い検査方法と評価指標はいまだ確立されていない。
近年、分子生物学的手法を駆使した腸内細菌叢解析の発達により、腸内細菌叢に関する知見が多く得られている。また、世界的には、腸内細菌叢と疾患との関係が示唆され、様々な疾患の発症及び進展に腸内細菌叢が大きな役割を果たしている可能性が報告されている(非特許文献1)。ただ、腸内細菌叢は人種や食生活等に大きく影響されるために、腸内細菌叢に関する知見は一般化が難しいという問題がある。さらに、腸内細菌叢は個人差も大きいため、知見を得るためには網羅的な調査が不可欠である。特定の集団における疾患と腸内細菌叢の関係を見出すためには、人種や食生活等が統一された被験者に対する網羅的な調査が必要だが、その困難性から、モンゴロイド、特に日本人を対象とした腸内細菌叢に関する網羅的な解析は行われておらず、腸内細菌叢と疾患の関係も、従来、利用可能な精度では明らかになっていなかった。
Atarashi K, et al., Cell, 2015, 163: 367-380
本発明の課題は、モンゴロイド、特に日本人の腸内細菌叢に関する網羅的な解析に基づいて、腸内細菌叢の情報から疾患リスクを推定する方法を開発し、提供することである。
上記課題を解決するために、本発明者らは、これまでの研究で得られた日本人における膨大な腸内細菌叢解析の結果を基にメタ解析を行い、腸内細菌叢と疾患の関係に関する網羅的な解析を行った。その結果、腸内細菌叢のパターンがいくつかのタイプに分類されること、及び前記各タイプが特定の疾患リスクと関連することを見出した。本発明は、以上の新規知見に基づくものであり、以下を提供する。
[1]疾患リスク評価のための腸内細菌叢のタイプ分類方法であって、
被験試料から核酸を抽出する核酸抽出工程、
前記核酸の配列情報に基づき、全核酸に対する特定の細菌由来の核酸の存在比率を測定する測定工程、及び
5タイプ、10タイプ及び15タイプからなる評価グループ群から選択される評価グループを選択する選択工程、
前記存在比率と、予め定められた基準値に基づいて、前記被検試料の腸内細菌叢のタイプを分類する分類工程
を含み、
前記特定の細菌は、Actinomyces、Alistipes、Anaerostipes、Anaerotruncus、Bacteroides、Bifidobacterium、Bilophila、Blautia、Butyricicoccus、Butyricimonas、Clostridium、Collinsella、Coprobacillus、Coprococcus、Dialister、Dorea、Eggerthella、[Eubacterium]、Faecalibacterium、Gemmiger、Granulicatella、Holdemania、Lachnospira、Lactobacillus、Odoribacter、Oscillospira、Parabacteroides、Phascolarctobacterium、Prevotella、Roseburia、Ruminococcus、[Ruminococcus]、Streptococcus、Sutterella、Turicibacter、及びVeillonellaであり、
前記予め定められた基準値は、前記選択された評価グループにおいて前記特定の細菌ごとに定められる、
前記タイプ分類方法。
[2]前記被験試料が糞便である、[1]に記載のタイプ分類方法。
[3]前記配列情報は16S rRNAの配列情報である、[1]又は[2]に記載のタイプ分類方法。
[4]Actinomyces、Alistipes、Anaerostipes、Anaerotruncus、Bacteroides、Bifidobacterium、Bilophila、Blautia、Butyricicoccus、Butyricimonas、Clostridium、Collinsella、Coprobacillus、Coprococcus、Dialister、Dorea、Eggerthella、[Eubacterium]、Faecalibacterium、Gemmiger、Granulicatella、Holdemania、Lachnospira、Lactobacillus、Odoribacter、Oscillospira、Parabacteroides、Phascolarctobacterium、Prevotella、Roseburia、Ruminococcus、[Ruminococcus]、Streptococcus、Sutterella、Turicibacter、及びVeillonella由来の核酸が、それぞれ配列番号1~36で示される、[3]に記載のタイプ分類方法。
[5]前記予め定められた基準値が表1~3で示される値である、[4]に記載のタイプ分類方法。
[6]腸内細菌叢に基づく疾患リスクの評価方法であって、
被験者から得られた被験試料から核酸を抽出する核酸抽出工程、
前記核酸の配列情報に基づき、全核酸に対する特定の細菌由来の核酸の存在比率を測定する測定工程、
5タイプ、10タイプ及び15タイプからなる評価グループ群から選択される評価グループを選択する選択工程、
前記存在比率と、予め定められた基準値に基づいて、前記被検試料の腸内細菌叢のタイプを分類する分類工程、及び
前記腸内細菌叢のタイプに基づいて、各評価グループのタイプと疾患リスクの相関情報により、前記被験者の疾患リスクを評価する評価工程
を含み、
前記特定の細菌は、Actinomyces、Alistipes、Anaerostipes、Anaerotruncus、Bacteroides、Bifidobacterium、Bilophila、Blautia、Butyricicoccus、Butyricimonas、Clostridium、Collinsella、Coprobacillus、Coprococcus、Dialister、Dorea、Eggerthella、[Eubacterium]、Faecalibacterium、Gemmiger、Granulicatella、Holdemania、Lachnospira、Lactobacillus、Odoribacter、Oscillospira、Parabacteroides、Phascolarctobacterium、Prevotella、Roseburia、Ruminococcus、[Ruminococcus]、Streptococcus、Sutterella、Turicibacter、及びVeillonellaであり、
前記予め定められた基準値は、前記選択された評価グループにおいて前記特定の細菌ごとに定められる、
前記評価方法。
[7]前記被験者が日本人である、[6]に記載の評価方法。
[8]前記5タイプからなる評価グループにおいて、前記相関情報が表5で示され、
表中、空欄はリスクがないことを示し、Aは最もリスクが高いことを示し、Cは最もリスクが低いことを示し、BはA及びCに属さないことを示す、
[6]又は[7]に記載の評価方法。
[9]前記10タイプからなる評価グループにおいて、前記相関情報が表7で示され、
表中、空欄はリスクがないことを示し、Aは最もリスクが高いことを示し、Cは最もリスクが低いことを示し、BはA及びCに属さないことを示す、
[6]又は[7]に記載の評価方法。
[10]前記15タイプからなる評価グループにおいて、前記相関情報が表9で示され、
表中、空欄はリスクがないことを示し、Aは最もリスクが高いことを示し、Cは最もリスクが低いことを示し、BはA及びCに属さないことを示す、[6]又は[7]に記載の評価方法。
[11]腸内細菌叢に基づく健常体判定方法であって、
被験者から得られた被験試料から核酸を抽出する核酸抽出工程、
前記核酸の配列情報に基づき、全核酸に対するPrevotella細菌由来の核酸の存在比率を測定する測定工程、及び
前記存在比率が予め定められた基準値以上の場合に、前記被験者を健常体であると判定する判定工程
を含む、前記判定方法。
本発明のタイプ分類方法によれば、被験試料から得られた腸内細菌叢の情報に基づいて、被験試料が属する腸内細菌叢のタイプを特定することができる。また、本発明の疾患リスクの評価方法によれば、腸内細菌叢のタイプと疾患リスクの相関情報に基づき、被験試料が由来する被験者の疾患リスクを評価することができる。さらに、本発明の健常体判定方法によれば、被験試料中の単一の属の腸内細菌の存在比率から、被験試料が由来する被験者が健常体であるか判定することができる。
5タイプからなる評価グループの各タイプにおける腸内細菌の存在比率パターンを示す図である。各タイプに存在し、存在比率の高い腸内細菌をA~Iで示す。図中、Aは半分未満の被験試料でしか検出されなかった腸内細菌をまとめた「その他」、BはStreptococcus属、CはRuminococcus属、DはRoseburia属、EはPrevotella属、FはFaecalibacterium属、GはBlautia属、HはBifidobacterium属、及びIはBacteroides属を示す。 10タイプからなる評価グループの各タイプにおける腸内細菌の存在比率パターンを示す図である。各タイプに存在し、存在比率の高い腸内細菌をA~Iで示す。図中、Aは半分未満の被験試料でしか検出されなかった腸内細菌をまとめた「その他」、BはStreptococcus、CはRuminococcus属、DはRoseburia属、EはPrevotella属、FはFaecalibacterium属、GはBlautia属、HはBifidobacterium属、及びIはBacteroides属を示す。 15タイプからなる評価グループの各タイプにおける腸内細菌の存在比率パターンを示す図である。各タイプに存在し、存在比率の高い腸内細菌をA~Iで示す。図中、Aは半分未満の被験試料でしか検出されなかった腸内細菌をまとめた「その他」、BはStreptococcus属、CはRuminococcus属、DはRoseburia属、EはPrevotella属、FはFaecalibacterium属、GはBlautia属、HはBifidobacterium属、及びIはBacteroides属を示す。
1.腸内細菌叢のタイプ分類方法
1-1.概要
本発明の第1の態様は疾患リスク評価のための腸内細菌叢のタイプ分類方法である。本発明のタイプ分類方法は、核酸抽出工程、測定工程、選択工程、及び分類工程を必須工程として含む。本発明のタイプ分類方法によれば、被験試料に含まれる核酸に基づき、それが由来する腸内細菌叢をタイプ分類することができる。
1-2.定義
本明細書で使用する用語について、以下で定義する。
本明細書において、「腸」とは、ヒトの十二指腸以降の消化管を指す。具体的には、十二指腸、空腸、及び回腸を含む小腸、並びに盲腸、虫垂、結腸、及び直腸を含む大腸等が挙げられる。
本明細書において、「腸内細菌叢」とは、ヒトの腸管内部に生息する様々な細菌又は微生物の集合体やその微生物相の生態系をいう。個体、年齢、及び食生活によりその構成は大きく異なるものの、腸管内で一定のバランスが保たれている。腸内細菌叢は、腸管内の食物の消化や吸収、及び抗体産生を促進するだけでなく、外来微生物の定着や増殖の抑制、宿主の代謝及び免疫にも寄与することが知られている。本明細書において「腸内細菌」とは、腸内細菌叢を構成する各種細菌を指す。ヒトの腸内細菌は100兆単位で存在するといわれ、種類としては1000種以上にも上るとされている。
ヒトの腸内細菌は、主にアクチノバクテリア門、バクテロイデス門、プロテオバクテリア門、フィルミクテス門に分けられる。また、宿主に及ぼす影響から「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類に分類されることもある。
乳酸菌、ビフィズス菌(Bifidobacterium)等を含むアクチノバクテリア門は、多くの善玉菌を含み、主に食物繊維を分解し、乳酸や酢酸を分泌して、消化吸収をよくしたり、腸内免疫細胞を刺激して宿主の免疫力を活発化している。
大腸菌等を含むプロテオバクテリア門の多くの細菌は、アンモニアやアミン等の毒素を分泌して消化吸収を妨げるため、悪玉菌に分類される。
腸内細菌叢の大部分を占めるバクテロイデス門とフィルミクテス門は日和見菌であり、普段は宿主個体にほとんど影響を与えないが、宿主個体の体調等の諸条件により、善玉菌、悪玉菌のいずれかの性質に変化することが知られている。日和見菌のうち、バクテロイデス(Bacteroides)属やプリボテラ(Prevotella)属を含むバクテロイデス門の細菌の多くは、善玉菌が優勢の場合に善玉菌としての効果を発揮する傾向にある。一方、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)属、ルミノコッカス(Ruminococcus)属、ブラウティア(Blautia)属、ロゼブリア(Roseburia)属及びレンサ球菌(Streptococcus)属を含むフィルミクテス門は、悪玉菌が優勢となると悪玉菌としての効果を発揮する傾向にある。しかし、上述した悪玉菌、善玉菌という分類は一面的なものであり、腸内細菌叢においてこれらの菌がバランスよく共存していることが重要とされている。
本明細書において「被験者」とは、本発明のタイプ分類方法、疾患リスクの評価方法、又は健常体判定方法の対象となるヒト個体を指す。
本明細書において「被験試料」とは、本発明のタイプ分類方法、疾患リスクの評価方法、又は健常体判定方法に供されるヒトの腸由来の試料を指す。例えば、糞便又は腸粘膜の組織等が挙げられる。好ましくは採取が容易で侵襲性の低い糞便である。
本明細書において「糞便」とは、腸内容物を広く指す。例えば、体外に排出された後の糞便及び排出前の腸内容物のいずれも含む。糞便が由来する腸の領域は特に限定しない。具体的には、例えば、十二指腸、空腸及び回腸を含む小腸、並びに盲腸、虫垂、結腸及び直腸を含む大腸等が挙げられる。好ましくは大腸に由来の糞便である。糞便が大腸に由来する場合、いずれの領域に由来してもよく、例えば、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S字結腸、上部直腸又は下部直腸に由来することができる。
本明細書において「核酸」とは、被験試料に含まれるポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドであり、原則として天然核酸を指す。具体的には、DNAやRNAを含む。本明細書においてRNAの種類は問わないが、好ましくはrRNAである。「rRNA(リボソームRNA)」とは、リボソームを構成するRNAを指す。細菌が有するrRNAとしては、例えば、23S rRNA、16S rRNA及び5S rRNAが挙げられる。
本明細書において「存在比率」とは、全体量の中で目的物の量が占める割合を指す。特に、「核酸の存在比率」とは、被験試料中の全核酸量中で目的とする腸内細菌に由来する核酸の量が占める割合を指す。本明細書では、特に被験試料に由来する全核酸量における特定の腸内細菌属に由来する核酸量が占める割合をいう。
本明細書において「腸内細菌叢のタイプ」とは、腸内細菌の属ごとの存在比率パターンに基づく分類を指す。例えば、図1においては、各棒グラフがそれぞれ腸内細菌叢のタイプにおける腸内細菌の属ごとの存在比率パターンである。
本明細書において「評価グループ」とは、腸内細菌叢のタイプの一連のセットを指す。例えば、図1においては、腸内細菌叢のタイプが5つセットとなった、図1全体が一つの評価グループである。本明細書の評価グループは、腸内細菌の属ごとの存在比率パターンが表10~12のいずれかにおいて示される数値である評価グループである。
本明細書において「疾患」とは、細胞、組織、又は器官の正常な機能に損害を与えるか又は正常な機能を妨害する任意の状態又は障害を指す。
本明細書において「疾患リスク」とは、疾患の罹患可能性を指す。本明細書における疾患リスクには、具体的な疾患の罹患可能性だけでなく、例えば、疾患発症の予備的な指標となる健康状態(体重や身長等の身体的特徴、食事、運動及び睡眠等)の悪化の可能も含む。
本明細書において「相関情報」とは、第1の事象と第2の事象の相関性を示す情報を指す。例えば、本明細書において「腸内細菌叢のタイプと疾患リスクの相関情報」とは、腸内細菌叢のタイプとそのタイプに属する被験者の疾患リスクの相関性を示す情報を指す。具体的には、例えば、5つのタイプからなる評価グループの場合、相関情報は、例えば表5で示される。この例においては、例えば被験者の腸内細菌叢のタイプがタイプ2である場合、表5の相関情報によって、炎症性腸疾患のリスクがCであるとわかる。
本明細書において「心疾患」とは、心臓機能の障害を指す。心疾患に含まれる疾患は特に限定しないが、例えば、虚血性心疾患(ischemic heart disease:IHD)、心不全(heart failure)、血栓塞栓症、心筋症、肥大型心筋症、拡張型心筋症、アテローム性動脈硬化、冠動脈疾患、虚血性心疾患、心筋炎、高血圧性心疾患、弁膜疾患、先天性心疾患、心筋梗塞、鬱血性心不全、不整脈等が含まれる。虚血性心疾患とは、心筋に栄養する冠動脈が、動脈硬化等の原因で狭くなったり、閉塞する等して、心筋に血液が行かなくなること(心筋虚血)によって起こる疾患をいう。虚血性心疾患には、狭心症、心筋梗塞、虚血性心不全等が含まれる。心不全は、心臓の収縮期及び/又は拡張期の機能不全を指す。心不全には、急性心不全及び慢性心不全等が含まれる。
本明細書において「肝疾患」とは、肝臓の損傷又は疾患による肝機能の障害を指す。肝疾患に含まれる疾患は特に限定しないが、例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)、アルコール性肝疾患(alcoholic liver disease:ALD)、ウイルス性肝障害(viral liver disease:VLD)、肝線維症、及び肝硬変等を含む。非アルコール性脂肪性肝疾患は、脂肪肝のうち、個体が肝臓機能障害をもたらす量のアルコールを摂取しておらず、かつ、他の肝疾患の症状を呈さない疾患の総称である。アルコール性肝疾患は、長期にわたる過剰量の常習的な飲酒により肝臓に損傷が起きる疾患の総称である。ウイルス性肝障害は、ウイルス感染によって起こる疾患の総称である。本明細書においてウイルス性肝障害はウイルス性肝炎と同義で使用される。ウイルス性肝障害を起こすウイルスとして、例えば、A型、B型、C型、D型、E型、G型及びH型の肝炎ウイルスが挙げられる。
本明細書において「消化器系疾患」とは消化器系における疾患を指す。消化器系に含まれる具体的な臓器としては、例えば、食道、胃、腸、及び肛門が挙げられる。消化器系疾患に含まれる疾患は特に限定しないが、例えば、機能性胃腸症(Functional Dyspepsia:FD)、過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、食道炎及び胃炎等が挙げられる。機能性胃腸症とは、胃において、もたれや痛みを感じる症状を呈する疾患のうち、内視鏡検査等で、胃に潰瘍や癌等が認められない疾患の総称である。本明細書において機能性胃腸症は、胃下垂、胃アトニー、胃無力症、胃けいれん、神経性胃炎、慢性胃炎等と同義で使用される。過敏性腸症候群とは、再発性又は慢性の便通の異常や腹部における不快感等の症状を呈する疾患のうち、腸に異常が見られない疾患の総称である。
本明細書において「内分泌疾患」とは、内分泌系における疾患を指す。主として、内分泌腺の分泌過少、内分泌腺の分泌過多、及び腫瘍等を原因とする。内分泌疾患に含まれる疾患は特に限定しないが、例えば、甲状腺障害(thyroid failure:TF)、低血糖症、下垂体機能低下症、性腺機能低下症、副甲状腺障害、アジソン病、コーン症候群、及びクッシング症候群等が挙げられる。甲状腺障害とは、甲状腺における異常を伴う疾患を指し、例えば、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症及び甲状腺炎等が含まれる。
本明細書において「神経疾患」とは、脳や脊髄等を含む神経系における構造的、生化学的又は電気的な異常を伴う疾患を指す。神経疾患に含まれる疾患は特に限定しないが、例えば、具体的には、パーキンソン病、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、多発性硬化症、多系統萎縮症、筋委縮性側索硬化症、前頭側頭葉変性症、ハンチントン病、アレキサンダー病、脳血管障害、脳損傷、脳機能不全、脊髄障害、末梢神経障害、脳神経障害及び自律神経系障害等が挙げられる。パーキンソン病とは、ドーパミン産生神経細胞の減少を特徴として有する慢性疾患であり、本明細書においては、孤発性及び家族性のいずれも含む。
本明細書中において「精神疾患」とは、精神及び行動の障害を伴う疾患形態を指す。精神疾患に含まれる疾患は特に限定しないが、例えば、双極性障害、認知症、統合失調症、統合失調症型障害及び精神遅滞等が挙げられる。双極性障害とは、気分の極端な変化を特徴的な症状として呈する障害を指し、本明細書においては、双極I型及びII型のいずれも含む。認知症とは、脳の障害又は精神的な要因による認知機能の低下を特徴とする疾患である。本明細書において認知症は、血管認知症、虚血性血管認知症、前頭側頭骨認知症及びレーヴィ小体認知症等を含む。
本明細書において「自己免疫性疾患」とは、自己の細胞又は組織を標的とした免疫系の亢進を伴う疾患を指す。自己免疫性疾患に含まれる疾患は特に限定しないが、例えば、リウマチ、関節炎、喘息、乾癬、皮膚炎、蕁麻疹、湿疹、全身性エリテマトーデス、アジソン病、多発性筋炎、シェーグレン症候群、強皮症及び多糸球体腎炎等が挙げられる。リウマチとは、免疫の異常による滑膜における炎症を伴う疾患であり、しばしば、さらに骨や軟骨の破壊を伴う。本明細書においてリウマチは、関節リウマチ及び非関節リウマチのいずれも含む。
本明細書において「炎症性腸疾患」とは、疾患を指す。炎症性腸疾患に含まれる疾患は特に限定しないが、例えば、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)、クローン病、コラーゲン蓄積大腸炎、リンパ球性大腸炎、虚血性大腸炎、空置性大腸炎、ベーチェット病及び不確定大腸炎等が挙げられる。潰瘍性大腸炎とは、大腸の粘膜における慢性的なびらんや潰瘍に特徴づけられる疾患である。本明細書において潰瘍性大腸炎は、直腸炎型、左側結腸炎型、全大腸炎型及び右側結腸炎型等のいずれも含む。クローン病とは、大腸及び小腸の粘膜における慢性の炎症又は潰瘍を伴う原因不明の疾患の総称である。本明細書においては、炎症又は潰瘍が起きる消化管の部位は特に限定しない。
本明細書において「癌」とは、制御されていない細胞増殖を特徴とする疾患を指す。本明細書においては、癌は、例えば、悪性の腫瘍を指す。本明細書において、癌の種類(癌種)は特に限定しないが、具体的には、例えば、肺癌、食道癌、胃癌、十二指腸癌、大腸癌、肝癌、胆のう癌、膵臓癌、肝細胞癌、乳癌、直腸癌、前立腺癌、子宮頸癌及び膀胱癌等が挙げられる。
本明細書において「生活習慣病」とは、食習慣、運動習慣、休養、喫煙又は飲酒等の生活習慣がその発症及び進行に関与する疾患を指す。例えば、高血圧、高脂血症、高尿酸血症、肥満、栄養失調症、拒食症、痛風、動脈硬化症、腎臓結石、腎臓病、骨粗しょう症、歯周囲炎、肺気腫、歯周病、動脈瘤及び不眠症等が挙げられる。高血圧とは、収縮期血圧が140mmHg以上、又は拡張期血圧が90mmHg以上の状態を指す。高脂血症とは、空腹時の血清中において、LDLコレステロールが140mg/dL以上、トリグリセリドが150mg/dL以上、又はHDLコレステロールが40mg/dL未満である状態を指す。本明細書において、高脂血症は、高コレステロール血症及び脂質異常症と同義で使用される。高尿酸血症とは、血清尿酸値が、7.0mg/dLを超えている状態を指す。また、高BMIは、BMI(body mass index)が30以上の状態を指し、それ自体は疾患ではないものの、多くの生活習慣病との関連が指摘されている。
本明細書において「配列情報」とは、核酸の塩基配列の情報を指す。特に分類等の目的と共に使用される場合には、全配列情報のうち、その目的を達成するために参照される一部分を指す。
本明細書において「塩基同一性」とは、二つのポリヌクレオチドの塩基配列を整列(アラインメント)し、必要に応じて、いずれかの塩基配列にギャップを導入して、両者の塩基一致度が最も高くなるようにしたときの、一方のポリヌクレオチドの全塩基数に対する他方のポリヌクレオチドの同一塩基の割合(%)をいう。%同一性は、相同性検索プログラムBLAST(Basic local alignment search tool;Altschul, S. F. et al,J. Mol. Biol., 215, 403-410, 1990)検索等の公知のプログラムを用いて容易に決定できる。
本明細書において、「有意」とは、統計学的に有意であることをいう。統計学的に有意とは、被験対象の測定値と対照値の差異を統計学的に処理したときに、両者間に有意差があることをいう。例えば、得られた値の有意水準が小さい場合、具体的には5%より小さい場合(p<0.05)、1%より小さい場合(p<0.01)、0.1%より小さい場合(p<0.001)が挙げられる。ここに示す「p(値)」は、統計学的検定において、帰無仮説に基づいた分布の中で、検定統計量が偶然その値になる確率を示す。したがって「p」が小さいほど、検定統計量がその値となる確率は低く、帰無仮説が棄却されやすいことを意味する。統計学的処理の検定方法は、優位性の有無を判断可能な公知の検定方法を適宜使用すればよく、特に限定しない。例えば、スチューデントt検定法、共変量分散分析等を用いることができる。
1-3.方法
本態様の方法は、核酸抽出工程、測定工程、選択工程、及び分類工程を必須工程として含む。以下、各工程について具体的に説明をする。
1-3-1.核酸抽出工程
「核酸抽出工程」は、被験試料から核酸を抽出する工程である。
核酸抽出工程は、通常、前処理ステップ、溶菌ステップ、及び粗核酸回収ステップを含み、任意選択で、さらに、核酸精製ステップを含む。以下、各ステップについて説明する。
前処理ステップにおいては、被験試料は、溶菌処理が可能なように液体中に懸濁される。使用される液体は特に限定しないが、例えば、PBS又はTris-HCl等の適当なバッファーに懸濁することができる。必要に応じて、懸濁液の全部又は一部を次述の溶菌ステップ前にさらに遠心分離及び/又は濾過等で処理し、未消化物等の夾雑物を除去してもよい。
溶菌ステップにおいては、前処理ステップで得られた懸濁液の一部に細胞溶解液を添加し、一定の温度で溶菌を促進する。使用される細胞溶解液は特に限定しない。当技術分野において公知の細胞溶解液を使用することができる。具体的には、例えば、消化酵素(例えば、タンパク分解酵素、多糖類分解酵素等)、変性剤(例えば、グアニジウム塩)、界面活性剤(例えば、SDS、Triton x100等)、キレート剤(例えば、EDTA等)及びバッファー(例えば、Tris-HCl等)が含まれる。さらに、細胞溶解液には、例えば、細胞を物理的に破砕するためのビーズを含んでもよい。本ステップで使用されるビーズの材質は特に限定しないが、例えば、ガラス、グアニジウム、ガーネット、ジルコニウム、シリカ、又はこれらを組合せたものを使用することができる。ビーズによる破砕を行う場合、通常、溶菌処理の間、又は前後に、さらに破砕処理を行う。破砕処理は、例えば、振とうや振動の付与等の物理的刺激を与えることにより実施することができる。溶菌に使用される条件は、当技術分野において公知である。したがって、使用する細胞溶解液の組成や被験試料の種類、抽出する核酸の種類等の諸条件に応じて適宜決定することができる。溶菌処理の具体的な温度は、例えば、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上又は95℃以上であればよい。溶菌処理の具体的な時間は特に限定しない。例えば、5分以上、10分以上、15分以上、20分以上、25分以上、30分以上、40分以上、50分以上又は60分以上行えばよい。
粗核酸抽出ステップにおいては、溶菌処理後の溶解液から、核酸を含有する画分を分離する。使用される抽出方法としては、当技術分野に公知の抽出方法を使用することができる。具体的な抽出方法としては、例えば、核酸以外の成分を変性除去する方法(例えば、フェノール-クロロホルム法及びヨウ化ナトリウム法等)、シリカメンブレンや磁気ガラス粒子等に核酸を吸着させる方法(例えば、スピンカラム法等)、及びこれらの組合せによる方法等が挙げられる。市販の核酸抽出キットを用いてもよい。
任意選択で実施される精製ステップにおいては、前記粗核酸抽出ステップで得られた粗核酸から核酸をさらに精製する。本ステップで使用される方法は特に限定せず、当技術分野に公知の精製方法を使用することができる。具体的な精製方法としては、例えば、全ての核酸の純度を上げる方法(例えば、アルコール法及び磁気ビーズ法等)、特定の種類の核酸のみの純度を上げる方法(例えば、RNase又はDNaseを使用する方法等)、及びこれらの組合せによる方法等が挙げられる。この精製ステップは、他の各ステップと別に実施される必要はなく、実施される時期は時に限定しない。
本工程において使用される被験試料の形態は特に限定しない。被験試料は例えば、液体であっても固体であってもよい。
例えば、被験試料が糞便の場合、被験者から得られた固形状糞便を、そのままの固体状態で用いてもよいし、溶液等に溶解して均一化した後に、その一部を液体状態で使用することもできる。
被験試料が由来する個体は、ヒトであれば特に限定しない。好ましくは、米を主食の一つとする文化圏のヒトである。例えば、東アジア、中央アジア、南アジア、東南アジア、及び西アジアの住人等が含まれる。また、被験試料が由来する個体は、好ましくはモンゴロイドである。例えば、南方系モンゴロイド、北部モンゴロイド、中部モンゴロイド、南部モンゴロイド、エスキモー人種、及びアメリンド等を含む。具体的には、例えば、日本人、韓国人、中国人、台湾人、モンゴル人、チベット民族、インドシナ人種、及びアメリカ先住民等が含まれる。好ましくは日本人である。
被験試料が由来する個体の数は特に限定しない。個体が複数の場合は、各個体が全ての要素に関して均質である必要はない。例えば、食文化、人種、年齢、性別又は病歴等の少なくともいずれかの要素が多岐にわたる多様性に富んだ集団を使用してもよい。この場合、例えば、その集団の平均的な腸内細菌叢について知見を得ることができる。また、各個体の健康状態は特に限定しない。
被験試料は本工程で使用されるまで保存されてもよい。保存条件は特に限定しないが、例えば、冷凍保存、凍結乾燥保存、冷蔵保存、室温保存、乾燥保存又はそれらの組合せにより保存することができる。冷凍保存の具体的な方法としては、例えば、ドライアイス、超低温冷蔵庫又は液体窒素等を用いて極低温で保存してもよいし、通常の家庭用冷凍庫等を用いて保存することもできる。凍結乾燥保存の具体的な方法としては、例えば、凍結乾燥器を用いた方法等が挙げられる。冷蔵保存の具体的な方法としては、例えば、被験試料を10℃以下の温度において(例えば、家庭用冷蔵庫の中で)保存する方法等が挙げられる。室温保存の場合は、雑菌のコンタミネーションやその繁殖を抑える方法で保存することが好ましい。具体的には、例えば、グアニジン等の雑菌の繁殖を抑制する成分を含む保存溶液を使用する方法や乾燥保存方法と組合せる方法等が挙げられる。乾燥保存の具体的な方法としては、例えば、乾燥剤を用いる方法、及び乾燥器(例えば、加熱乾燥器等を含む)を使用する方法等が挙げられる。
保存期間は特に限定しない。具体的な保存期間は、例えば、1日、2日、3日、5日、1週間、2週間、3週間、1月、2月、3月、4月、5月又は6月とすることができる。また、保存期間中に、上述した前処理ステップの少なくとも一部が完了していてもよい。
本工程の各ステップは、例えば、市販されている単一のキットを用いて一連のステップとして実施されてもよい。
1-3-2.測定工程
「測定工程」は、前記核酸抽出工程から得られた核酸の配列情報に基づき、全核酸に対する特定の細菌由来の核酸の存在比率を測定する工程である。本工程は前記後述する分類工程よりも前に、又はそれと同時に実施することができる。
本工程において使用される測定方法は、前記核酸抽出工程から得られた核酸から、特定の細菌由来の核酸の存在比率を測定可能な方法であれば特に限定しない。本工程で使用することができる測定方法としては、例えば、検出対象の細菌の属ごとに異なるプライマーやプローブを用いる方法(例えば、特異的定量的PCR法、T-RFLP(Terminal-Restriction Fragment Length Polymorphism)法、FISH(Fluorescence in situ hybridization)法及びマイクロアレイを用いる方法等)、及び検出対象の細菌の属の一部又は全部に共通のプライマーを用いる方法(クローンライブラリー法、DGGE/TGGE(Denaturing/Temperature Gradient Gel Electrophoresis)法及びメタゲノム解析法等)等が挙げられる。これらの方法の具体的手順や条件については、基本的には当該分野で周知の方法に従えばよい。例えば、服部正平編「NGSアプリケーション 今すぐ始める! メタゲノム解析 実験プロトコール ヒト常在細菌叢から環境メタゲノムまでサンプル調製と解析のコツ」、2016年、羊土社等に記載されている方法を用いることができる。
検出対象の細菌の属ごとに異なるプライマーやプローブを用いる方法を使用する場合、例えば、特異的定量的PCR法やT-RFLP法のように、細菌の属に特異的なプライマーを用いたPCR法等により核酸を増幅して、増幅反応中に、又は増幅反応後に核酸の量を測定することができる。または、FISH法やマイクロアレイを用いる方法のように、核酸増幅をせずに、細菌の属に特異的なプローブ等を用いて核酸の検出をすることができる。この際使用されるプライマー及びプローブは、各属の核酸上の対応する領域を標的とするものでもよいし、異なる領域を標的とするものでもよい。具体的には、例えば、16S rRNA配列を使用する場合、例えば、9つある可変領域の一部又は全部を標的とすることができる。
検出対象の細菌の属の一部又は全部に共通のプライマーを用いる方法には、通常、シーケンサーを用いられる。シーケンシングの前に核酸に対して行う処理は、具体的な方法によって異なる。例えば、クローンライブラリー法では、抽出された核酸から細菌の属に特異的な配列部分を増幅して、その増幅産物は、シーケンシングのためにプラスミドに挿入される。また、DGGE/TGGE法では、同様に増幅された増幅産物は、電気泳動によって核酸鎖の配列に応じて分離された後、ゲルから抽出され、シーケンシングされる。メタゲノム解析では、核酸を断片化、又は増幅し、その産物は直接シーケンシングされる。増幅及びシーケンシングに使用されるプライマーは、同一のプライマーであっても、異なるプライマーであってもよい。例えば、16S rRNA配列を使用する場合、例えば、可変領域の間に位置する保存領域にハイブリダイズ可能なプライマーを使用することができる。具体的なプライマーとしては、16S rRNA遺伝子の可変領域V3-V4を増幅可能な領域特異的プライマー341F及び806R(2021年6月24日現在)を使用することができる。シーケンシングには、サンガー法の原理を利用したシーケンサーや次世代シーケンサーを使用することができる。シーケンシングの具体的な方法は、当技術分野に公知の任意の方法を使用することができる。具体的なシーケンシング方法としては、例えば、マルチプレックス法、シングルリード法及びペアエンド法等が挙げられる。
特定の細菌は、Actinomyces、Alistipes、Anaerostipes、Anaerotruncus、Bacteroides、Bifidobacterium、Bilophila、Blautia、Butyricicoccus、Butyricimonas、Clostridium、Collinsella、Coprobacillus、Coprococcus、Dialister、Dorea、Eggerthella、[Eubacterium]、Faecalibacterium、Gemmiger、Granulicatella、Holdemania、Lachnospira、Lactobacillus、Odoribacter、Oscillospira、Parabacteroides、Phascolarctobacterium、Prevotella、Roseburia、Ruminococcus、[Ruminococcus]、Streptococcus、Sutterella、Turicibacter、及びVeillonellaの36属を含む。ここで、[Eubacterium]及び[Ruminococcus]はNCBIにおける標記に準ずる。つまり、再分類された、又は再分類予定の細菌の再分類前の属名を示す。例えば、[Eubacterium]には、[Eubacterium] biforme(現Holdemanela biformis)等が含まれ、[Ruminococcus]には、[Ruminococcus] gnavus(現Ruminococcus gnavus;再分類予定)等が含まれる。通常は、これらに該当しない配列情報を有する核酸は、全て「その他」に区分されるが、これらに加えてさらなる細菌の属に関して属の同定が行われてもよい。
細菌の同定に使用する配列情報は特に限定しない。例えば、5S rRNA又は16S rRNA等のrRNAの配列情報又はその組合せを使用することができる。各細菌の同定に使用される具体的な配列情報は特に限定しない。例えば、各細菌に関して複数の配列情報を使用してもよいし、例えば、16S rRNAの配列を使用する場合、16S rRNAの全体又は一部の配列情報を使用してもよい。具体的には、例えば、V1~V9の可変領域の一部又は全部を検出することができる。
上述した36種類の属の代表的な16S rRNAの配列情報として、例えば、Actinomyces属は配列番号1、Alistipes属は配列番号2、Anaerostipes属は配列番号3、Anaerotruncus属は配列番号4、Bacteroides属は配列番号5、Bifidobacterium属は配列番号6、Bilophila属は配列番号7、Blautia属は配列番号8、Butyricicoccus属は配列番号9、Butyricimonas属は配列番号10、Clostridium属は配列番号11、Collinsella属は配列番号12、Coprobacillus属は配列番号13、Coprococcus属は配列番号14、Dialister属は配列番号15、Dorea属は配列番号16、Eggerthella属は配列番号17、[Eubacterium] 属は配列番号18、Faecalibacterium属は配列番号19、Gemmiger属は配列番号20、Granulicatella属は配列番号21、Holdemania属は配列番号22、Lachnospira属は配列番号23、Lactobacillus属は配列番号24、Odoribacter属は配列番号25、Oscillospira属は配列番号26、Parabacteroides属は配列番号27、Phascolarctobacterium属は配列番号28、Prevotella属は配列番号29、Roseburia属は配列番号30、Ruminococcus属は配列番号31、[Ruminococcus] 属は配列番号32、Streptococcus属は配列番号33、Sutterella属は配列番号34、Turicibacter属は配列番号35、及びVeillonella属は配列番号36に示される配列が挙げられる。
シーケンシングされた配列情報から細菌の属を同定する方法は特に限定しない。例えば、解析ソフトウェアやデータベース等を利用する当技術分野に公知の解析方法を利用することができる。データベースを利用する場合であれば、例えば、蓄積された細菌の塩基配列に対して配列同一性検索を行うことにより、細菌を同定することができる。データベースの具体例としては、GenBank、ENA、DDBJ等が挙げられる。また、16S rRNA配列に特化したデータベースであるGREENGENES database(http://greengenes.secondgenome.com)等を利用することもできる。
上記各細菌の16SrRNA遺伝子として同定された配列のコピー数を、その各細菌の菌体数とみなしてもよい。上述の配列番号で示す塩基配列情報やデータベースに蓄積された配列情報以外の配列情報を使用する場合、例えば、得られた核酸の配列と上述の配列情報を比較してその塩基同一性を算出し、一定以上の塩基同一性を有する属が存在したときに、最も塩基同一性が高い細菌属を得られた核酸の由来する細菌の属とみなすことができる。例えば、核酸の塩基配列が特定の細菌の属の同定に使用される配列情報に対して90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.5%以上、99.9%以上、又は100%の塩基同一性を有する場合、その核酸はその属に属する可能性がある。通常、特定の属に属する細菌由来の核酸の量はその属に属する細菌の量を直接反映するものとして扱う。直接反映するとは、例えば、菌体の量と核酸の量が1対1であること、又は菌体の量に一定の倍数をかけた値と核酸の量が1対1であることをいう。
各細菌の存在比率の算出方法は、特に限定しない。例えば、統計的手法の基づき、標本誤差を補正した算出方法を使用してもよく、又は(各細菌由来の核酸の量)/(全ての核酸の量)の計算式で算出されてもよい。好ましくは、上記36属以外の核酸の存在比率は、「その他」に区分される細菌由来の核酸の存在比率として算出される。
また、一つの被験試料から1つの存在比率が算出される必要はない。例えば、複数測定の結果を標準化した存在比率を使用することもできる。また複数回の測定の結果から得られた各回の存在比率を個別のデータとして使用して、後述する分類工程に供してもよい。
核酸抽出工程及び本工程は、例えば、市販されている単一のキットを用いて一連の工程として実施されてもよい。
1-3-3.選択工程
「選択工程」は、5タイプ、10タイプ及び15タイプからなる3つの評価グループ群から評価グループを選択する工程である。
本工程は必須工程であるが、本発明のタイプ分類方法のフローにおける順序は特に限定しない。例えば、核酸抽出工程と同時又はそれ以前に実施してもよく、後述する分類工程よりも前に、又はそれと同時に実施してもよい。例えば、選択工程を分類工程と同時に行う場合には、全ての評価グループについてタイプ分類を行う場合が含まれる。
5タイプ、10タイプ及び15タイプからなる評価グループにおける腸内細菌の存在比率は、それぞれ表10~12に示される。
いずれの評価グループを採用するかは、例えば、疾患リスクを調べたい疾患、又は存在比率を測定した細菌の属等の目的に応じて適宜選択することができる。あるいは、測定によって得られたデータから統計学的に算出した最適の分類数に最も近い評価グループを選択することもできる。具体的な分類数決定法としては、例えば、シルエット法、Jain-Dubes法、x-means法、Upper Tail法、凸集合の推測に基づく方法、尤度比検定、移動平均品質管理規則、Wolfのテスト及びMarriotのテスト等が挙げられる。
1-3-4.分類工程
「分類工程」は、前記測定工程で得られた存在比率と、予め定められた基準値に基づいて、前記被検試料の腸内細菌叢のタイプを分類する工程である。ここで、予め定められた基準値は、前記選択された評価グループにおいて前記特定の細菌ごとに定められる。本工程は上述の測定工程後に、又はそれと同時に実施することができる。
本工程では、通常、個々の被験試料について、各細菌の属に由来する核酸の存在比率を、ある腸内細菌叢のタイプに関して予め定められた基準値と照合し、存在比率の全ての値が予め定められた基準値の条件と合致していた場合、その被験試料がその腸内細菌叢のタイプに属すると判断する。具体的な手順は、被験試料の数や、測定した細菌の属数等の諸条件に基づいて適宜決定することができる。分類方法としては、例えば、目視照合による方法と、ソフトウェアを用いる方法等が挙げられる。目視照合には、例えば、基準値との逐次的な照合による厳密な分類法、及び図1~3に示される腸内細菌叢の存在比率パターンのグラフと被験試料の存在比率パターンのグラフとを比較対比する方法等が挙げられる。ソフトウェアを用いる方法には、例えば、エクセル等の計算ソフトを用いた方法、計算ソフトの自動処理による方法、及び基準値に基づく振り分けが可能な公知のソフトウェアを使用する方法等が挙げられる。
本工程で使用される「予め定められた基準値」は、本明細書において記載される腸内細菌叢タイプに分類することが可能であれば、特に限定しない。使用した被験試料、核酸、配列情報、又は選択した評価グループ等の情報に基づいて適宜決定することができる。具体的には、例えば、第3態様で詳述するカットオフ値を決定する方法や、決定木分析方法を使用することができる。決定木分析の具体的な方法は、例えば、データの不純度として、ジニ係数、エントロピー又はカイ二乗統計量等の基準尺度を使用する方法を使用することができる。データの不純度としてジニ係数を使用するアルゴリズムとしては、例えば、CART(Classification And Regression Trees)等が挙げられる。また、エントロピーを用いるアルゴリズムとしては、例えば、ID3(Iterative Dichotomiser 3)、C4.5、C5.0及びSee5等が挙げられる。カイ二乗統計量を用いるアルゴリズムとしては、例えば、CHAID(Chi-squared Automatic Interaction Detection)等が挙げられる。また、使用するソフトウェアは特に限定せず、例えば、統計解析ソフトRやJMP等を使用することができる。
例えば、基準値として、表1~3の値を使用することができる。ここでは、半分未満の被験試料でしか検出されなかった腸内細菌由来の核酸の存在比率をまとめて「Other」、GREENGENES databaseに基づいて分類できなかった腸内細菌由来の核酸の存在比率をまとめて「Unknown」、OtherとUnknownをまとめて「Others」とした。具体的には、5タイプからなる評価グループが選択された場合には表1の基準値を使用することができる。
Figure 0007193810000001
Figure 0007193810000002
Figure 0007193810000003
Figure 0007193810000004
Figure 0007193810000005
Figure 0007193810000006
Figure 0007193810000007
Figure 0007193810000008
Figure 0007193810000009
Figure 0007193810000010
Figure 0007193810000011
Figure 0007193810000012
Figure 0007193810000013
また、例えば、10タイプからなる評価グループが選択された場合には、表2の基準値を使用することができる。
Figure 0007193810000014
Figure 0007193810000015
Figure 0007193810000016
Figure 0007193810000017
Figure 0007193810000018
Figure 0007193810000019
Figure 0007193810000020
Figure 0007193810000021
Figure 0007193810000022
Figure 0007193810000023
Figure 0007193810000024
Figure 0007193810000025
Figure 0007193810000026
Figure 0007193810000027
Figure 0007193810000028
Figure 0007193810000029
Figure 0007193810000030
Figure 0007193810000031
Figure 0007193810000032
Figure 0007193810000033
Figure 0007193810000034
Figure 0007193810000035
また、例えば、15タイプからなる評価グループが選択された場合に表3の基準値を使用することができる。
Figure 0007193810000036
Figure 0007193810000037
Figure 0007193810000038
Figure 0007193810000039
Figure 0007193810000040
Figure 0007193810000041
Figure 0007193810000042
Figure 0007193810000043
Figure 0007193810000044
Figure 0007193810000045
Figure 0007193810000046
Figure 0007193810000047
Figure 0007193810000048
Figure 0007193810000049
Figure 0007193810000050
Figure 0007193810000051
Figure 0007193810000052
Figure 0007193810000053
Figure 0007193810000054
Figure 0007193810000055
Figure 0007193810000056
Figure 0007193810000057
Figure 0007193810000058
Figure 0007193810000059
Figure 0007193810000060
Figure 0007193810000061
Figure 0007193810000062
Figure 0007193810000063
Figure 0007193810000064
Figure 0007193810000065
例えば、新たな基準値を設定するために、表1~3の基準値に基づいた本方法を使用することができる。具体的には、例えば、ある被験試料において、まず、表1~3の基準値に基づいた本方法を使用して腸内細菌叢のタイプ分類を行い、このタイプ分類と高い一致率でタイプ分類が可能な基準値を新たに設定することができる。この場合、それ以降のタイプ分類においては、表1~3の基準値を使用することも、新たに設定された基準値を使用することもできる。新たな基準値は、はじめのタイプ分類とは異なる核酸又は配列情報等を使用して設定してもよいし、測定条件等を変更せずに設定してもよい。
2.疾患リスクの評価方法
2-1.概要
本発明の第1の態様は疾患リスク評価のための腸内細菌叢に基づく疾患リスクの評価方法である。本発明の評価方法は、核酸抽出工程、測定工程、選択工程、分類工程、及び評価工程を必須工程として含む。本発明の評価方法によれば、被験者の腸内細菌叢の情報に基づき、被験者の疾患リスクを評価することができる。
2-2.方法
本態様の方法は、核酸抽出工程、測定工程、選択工程、及び分類工程を必須工程として含む。以下、各工程について具体的に説明をする。
2-2-1.核酸抽出工程
「核酸抽出工程」は、被験者から得られた被験試料から核酸を抽出する工程である。本工程の基本的操作は、第1態様に記載の核酸抽出工程に準ずる。したがって、ここでは、相違点についてのみ説明する。
本態様の方法は、疾患リスク評価を目的とするため、被験試料が由来する被験者と被験試料の対応関係が明らかであることが好ましい。前記対応関係は、1対1対応である必要はなく、例えば、一群の被験試料が一群の被験者と対応していることがわかっていればよい。また、被験者のその他の情報(例えば、被験者の年齢、性別、氏名又は病歴等)が明確である必要はない。
2-2-2.測定工程
「測定工程」は、前記核酸抽出工程から得られた核酸の配列情報に基づき、全核酸に対する特定の細菌由来の核酸の存在比率を測定する工程である。本工程は上述の核酸抽出工程よりも後に、又はそれと同時に実施することができる。本工程の基本的操作は、第1態様に記載の測定工程に準ずる。したがって、ここでの具体的な説明は省略する。
2-2-3.選択工程
「選択工程」は、5タイプ、10タイプ及び15タイプからなる評価グループ群から選択される評価グループを選択する工程である。本工程は必須工程であるが、本発明のタイプ分類方法のフローにおける順序は問わない。例えば、核酸抽出工程と同時又はそれ以前に実施してもよく、後述する分類工程よりも前に、又はそれと同時に実施することができる。本工程の基本的操作は、第1態様に記載の選択工程に準ずる。したがって、ここでの具体的な説明は省略する。
2-2-4.分類工程
「分類工程」は、前記測定工程で得られた存在比率と、予め定められた基準値に基づいて、前記被検試料の腸内細菌叢のタイプを分類する工程である。ここで、予め定められた基準値は、前記選択された評価グループにおいて前記特定の細菌ごとに定められる。本工程は上述の測定工程よりも後に、又はそれと同時に実施することができる。本工程の基本的操作は、第1態様に記載の分類工程に準ずる。したがって、ここでの具体的な説明は省略する。
2-2-5.評価工程
「評価工程」は、前記分類工程によって被験試料が分類された腸内細菌叢のタイプに基づいて、各評価グループのタイプと疾患リスクの相関情報により、前記被験者の疾患リスクを評価する工程である。本態様の評価方法に特有の工程である。本工程は上述の分類工程よりも後に、又はそれと同時に実施することができる。
本工程においては、上述の分類工程において得られた分類を、タイプと疾患リスクの相関情報と照合し、被験試料が由来する被験者の疾患リスクを評価する。具体的な方法と手順は、被験試料の数や等の諸条件に基づいて適宜決定することができる。具体的な評価方法としては、例えば、被験者が属する腸内細菌叢のタイプと相関情報の照合を人力により行う方法と、ソフトウェアを用いて行う方法等が挙げられる。目視照合としては、例えば、相関情報を示す表と被験者が属するタイプとの逐次的な照合による分類法等が挙げられる。ソフトウェアを用いる方法としては、例えば、エクセル等の計算ソフトの関数を用いた方法、それら計算ソフトの処理の自動化に基づく方法、及び相関情報に基づく振り分けが可能な公知のソフトウェアを使用する方法等が挙げられる。評価は、分類のみに基づいて評価が行われなくてもよい。例えば、他の情報と組合せて疾患リスクを評価してもよい。例えば、腸内細菌叢の存在比率パターンが類似した腸内細菌叢のタイプを参照して評価してもよいし、被験者のその他の情報を用いて評価されてもよい。
タイプと疾患リスクの相関情報の具体的な内容は特に限定しない。相関情報は使用する評価グループにおいて予め定められていることが好ましい。例えば、疾患の罹患個体群において第1態様のタイプ分類方法を適用することによって、タイプと疾患リスクの相関情報を設定することができる。
特定の疾患に関する疾患リスクの設定方法は特に限定しない。例えば、経験的に又は客観的指標に基づいて、評価することができる。客観的指標に基づいた評価は、例えば、各タイプごとの特定の疾患の罹患個体の割合に基づいて行うことができる。例えば、罹患個体の割合のそのままの値に基づいて、最も疾患リスクの低い腸内細菌叢のタイプにおける罹患個体の割合を基準とした、各タイプにおける罹患個体の割合の倍数、若しくは各タイプにおける罹患個体の割合の統計的な有意差に基づいて、又はこれらの組合せによって設定することができる。いずれの方法においても、算出された値(例えば、罹患個体の割合、倍数値、又はp値)をそのまま疾患リスクを示す値として使用してもよいし、その値に対する閾値に基づいて疾患リスクをいくつかの段階に分けて設定してもよい。組合せによる疾患リスクの具体的な設定方法としては、例えば、最も疾患リスクの低い腸内細菌叢のタイプと比較して罹患個体の割合が統計学的に有意に異なる場合において、各タイプにおける罹患個体の割合の倍数を算出する方法が挙げられる。
また、疾患の分類方法も特に限定しない。例えば、個々の具体的な病名を疾患名として使用してもよいし、より広い疾患分類名を疾患名として使用してもよい。
具体的なタイプと疾患リスクの相関情報として、例えば、評価グループが5タイプからなる場合、表4に示す情報を使用することができる。ここでは、タイプ5と比較して有意差がない場合には「リスクがない(表中、空欄で示す)」、倍数値が10未満の場合を「最もリスクが低い(表中、Cで示す)」、倍数値が10以上15未満の場合を「中間リスク(表中、Bで示す)」、そして倍数値が15以上の場合を「最もリスクが高い(表中、Aで示す)」、とした。なお、表4中で、NAFLDは非アルコール性脂肪性肝疾患、ALDはアルコール性肝疾患、VLDはウイルス性肝障害、FDは機能性胃腸症、IBSは過敏性腸症候群、UCは潰瘍性大腸炎を示す。
Figure 0007193810000066
さらに、疾患名としてより広い疾患分類名を使用した例として、例えば、評価グループが5タイプからなる場合、表5に示す情報を使用することができる。ここでは、タイプ5と比較して有意差がない場合には「リスクがない(表中、空欄で示す)」、倍数値が10未満の場合を「最もリスクが低い(表中、Cで示す)」、倍数値が10以上15未満の場合を「中間リスク(表中、Bで示す)」、そして倍数値が15以上の場合を「最もリスクが高い(表中、Aで示す)」、とした。
Figure 0007193810000067
具体的なタイプと疾患リスクの相関情報として、例えば、評価グループが10タイプからなる場合、表6に示す情報を使用することができる。ここでは、タイプ6と比較して有意差がない場合には「リスクがない(表中、空欄で示す)」、倍数値が10未満の場合を「最もリスクが低い(表中、Cで示す)」、倍数値が10以上20未満の場合を「中間リスク(表中、Bで示す)」、そして倍数値が20以上の場合を「最もリスクが高い(表中、Aで示す)」、とした。なお、表6中で、NAFLDは非アルコール性脂肪性肝疾患、ALDはアルコール性肝疾患、VLDはウイルス性肝障害、FDは機能性胃腸症、IBSは過敏性腸症候群、UCは潰瘍性大腸炎を示す。
Figure 0007193810000068
Figure 0007193810000069
さらに、疾患名としてより広い疾患分類名を使用した例として、例えば、評価グループが10タイプからなる場合、表7に示す情報を使用することができる。ここでは、タイプ6と比較して有意差がない場合には「リスクがない(表中、空欄で示す)」、倍数値が10未満の場合を「最もリスクが低い(表中、Cで示す)」、倍数値が10以上20未満の場合を「中間リスク(表中、Bで示す)」、そして倍数値が20以上の場合を「最もリスクが高い(表中、Aで示す)」、とした。
Figure 0007193810000070
具体的なタイプと疾患リスクの相関情報として、例えば、評価グループが15タイプからなる場合、表8に示す情報を使用することができる。ここでは、タイプ10と比較して有意差がない場合には「リスクがない(表中、空欄で示す)」、倍数値が10未満の場合を「最もリスクが低い(表中、Cで示す)」、倍数値が10以上20未満の場合を「中間リスク(表中、Bで示す)」、そして倍数値が20以上の場合を「最もリスクが高い(表中、Aで示す)」、とした。表8中で、NAFLDは非アルコール性脂肪性肝疾患、ALDはアルコール性肝疾患、VLDはウイルス性肝障害、FDは機能性胃腸症、IBSは過敏性腸症候群、UCは潰瘍性大腸炎を示す。
Figure 0007193810000071
Figure 0007193810000072
Figure 0007193810000073
さらに、疾患名としてより広い疾患分類名を使用した例として、例えば、評価グループが15タイプからなる場合、表9に示す情報を使用することができる。ここでは、タイプ10と比較して有意差がない場合には「リスクがない(表中、空欄で示す)」、倍数値が10未満の場合を「最もリスクが低い(表中、Cで示す)」、倍数値が10以上20未満の場合を「中間リスク(表中、Bで示す)」、そして倍数値が20以上の場合を「最もリスクが高い(表中、Aで示す)」、とした。
Figure 0007193810000074
本態様の方法と第1態様の方法は、互いに排他的な関係にはなく、同一の被験試料に対し、同時に、別々に又は組合せて実施してもよい。
3.健常体判定方法
3-1.概要
本発明の第3の態様は腸内細菌叢に基づく健常体判定方法である。本発明の判定方法は、核酸抽出工程、測定工程、及び判定工程を必須工程として含む。本発明の判定方法によれば、被験者のPrevotella属細菌由来の核酸の存在比率に基づき、被験者が健常体であるか否かを判定することができる。
3-2.方法
本態様の方法は、核酸抽出工程、測定工程、及び判定工程を必須工程として含む。以下、各工程について具体的に説明をする。
3-2-1.核酸抽出工程
「核酸抽出工程」は、被験者から得られた被験試料から核酸を抽出する工程である。本工程は後述する測定工程よりも前に実施することができる。本工程の基本的操作は、第1態様及び第2態様に記載の核酸抽出工程に準ずる。したがって、ここでの具体的な説明は省略する。
3-2-2.測定工程
「測定工程」は、前記核酸抽出工程から得られた核酸の配列情報に基づき、全核酸に対するPrevotella属細菌由来の核酸の存在比率を測定する工程である。本工程は上述の核酸抽出工程よりも後に、又はそれと同時に実施することができる。本工程の基本的操作は、第1態様に記載の測定工程に準ずる。したがって、ここでは相違点のみを説明する。
本態様における測定工程では、Prevotella属一つについてのみ同定と存在比率の測定が行われればよい。したがって、例えば、第1態様に記載の測定工程と同様に複数の属について同定を行い、Prevotella属の存在比率のみを用いてもよいし、Prevotella属のみについて属の同定と存在比率の測定を行ってもよい。
同定方法は第1態様に記載の測定工程と同様に特に限定しない。例えば、配列番号29の配列に対する塩基同一性が一定以上であったときにPrevotella属であると同定することができる。
3-2-3.判定工程
「判定工程」は、前記測定工程から得られた存在比率が予め定められた基準値以上の場合に、前記被験者を健常体であると判定する工程である。本工程は上述の測定工程よりも後に、又はそれと同時に実施することができる。本工程で使用される判定方法として、第1態様の分類工程において記載されている分類方法を使用することができる。
本工程の予め定められた基準値としては、経験的な基準及び客観的な基準を使用することができる。客観的な基準としては、例えば、カットオフ値を使用することができる。
本明細書において「カットオフ値」とは、その値を基準として疾患リスクの有無を判定し得る値を指す。好ましくは、カットオフ値によって、感度及び特異度の両方が十分に高い値を示す。一般に、比較する対照群と疾患群との直接の比較に基づいて描かれたROC曲線から公知の方法を用いて導かれるが、これに限定しない。例えば、ROC曲線を用いずにカットオフ値を設定してもよい。
「ROC曲線(Receiver Operating Characteristic curve、受信者動作特性曲線)」とは、縦軸を真の陽性率(TPF: True Position Fraction)、すなわち感度、横軸を偽陽性率(FPF: False Position Fraction)、すなわち(1-特異度)とし、検査結果のどの値を所見ありと判断するかの閾値、つまりカットオフポイント(cutoff point)を媒介変数として変化させてプロットしていくことで作成される。ここで特異度とは、陰性者を正確に陰性と判断する率である。
具体的なカットオフ値としては、例えば、0.0000262以上の値を使用することができる。
本方法は健常体であると判定する方法であるが、予め定められた基準値を逆に用いて、Prevotella属の存在比率が基準値未満である場合に、何らかの疾患リスクがあると判断する実施形態も本態様に包含される。
本態様の方法と第1態様及び第2態様の方法は、互いに排他的な関係にはなく、同一の被験者又は被験試料に対し、同時に、別々に又は組合せて実施してもよい。
<実施例1:腸内細菌叢の測定>
(目的)
日本人被験者から得た被験試料を用いて、腸内細菌叢に含まれる細菌の存在比率を網羅的に測定する。
(方法)
1.被験者
下記臨床試験に参加し、データの2次利用に関して同意を得た被験者1,803名の腸内細菌叢及び問診、服薬状況、生理学的検査、血液学的検査、生化学的検査、尿検査等のデータを使用した。
・的確医療(precision medicine)に向けた糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患/非アルコール性脂肪肝炎、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、神経免疫疾患に対する腸内細菌の解析
・免疫チェックポイント阻害剤の効果・有害事象と腸内細菌叢との関連に関する研究
・グアーガム分解物の調整細菌叢を通した軟便改善に関する臨床研究
・大腸癌診断における便中コリバクチン測定の有用性に関する検討
・カロテノイド類の生体調節機能に着目した抗メタボ食品提供技術の開発とその効果の実証研究
・ケール「TCL-499」に含まれるカロテノイド類の生体調節機能に着目した抗メタボ食品提供技術の開発とその効果の実証研究
・「京くれない」ニンジンに含まれるカロテノイド類の生体調整機能に着目した抗メタボ食品提供技術の開発とその効果の実証研究
・ケール「こいあおな」に含まれるカロテノイド類やグルコシノレート類の生体調整機能に着目したプラセボ対照ランダム化比較試験(パイロットスタディ)
・カロテノイド摂取に伴う腸内細菌叢変容に関する検証
・ケール「こいあおな」の12週間連続摂取による血清尿酸値調整作用の検証試験(プラセボ対照ランダム化比較試験)
・京丹後長寿コホート研究
・慢性便秘症患者における大建中湯、桂枝加芍薬湯の合方処方の有効性に関する検証
2.被験試料からの核酸抽出
核酸保存液の入ったブラシ型ロング採便キット(テクノスルガラボ社)を用いて被験者が採便を行い、室温で保存した。
採取後約7日以内に、0.2~0.5gの便から核酸の抽出及び精製を以下の要領で行った。
核酸保存液に入った糞便からNucleospin microbial DNA kit(MACHEREY-NAGEL社)を用いて核酸を抽出した。まず、微量遠沈管にキット付属の溶出バッファー(BE)を100μL加え、さらに糞便を含んだ核酸保存液を約500μL添加して混合した。セラミックビーズが入ったNucleospin beadsチューブ(MACHEREY-NAGEL社)にプロテアーゼKと共に混合液を添加し、ビーズにより細菌体を破砕した。その後の操作はキットの説明書の通りに実施した。
3.被験試料からの得られた核酸の配列決定
次世代シーケンサーを用いて、以下の要領で、得られた核酸の16S rRNA遺伝子(V3-V4領域)の配列を決定した。
まず、PCR反応により抽出した核酸中の16S rRNA遺伝子のV3-V4領域を増幅した。プライマーは、フォワードプライマーとして、ターゲット領域特異的プライマー(341F)を、リバースプライマーとして、ターゲット領域特異的プライマー(806R)を使用した。
次にPCR産物を元に再度PCR反応を行い、シーケンサー用のアダプター配列を付加した。プライマーは以下を用いた。
フォワードプライマー:イルミナ社 MiSeq 用オーバーハングアダプター(配列番号37;5'-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGCCTACGGGNGGCWGCAG-3')が5'末端側に連結した341Fプライマー
リバースプライマー:イルミナ社 MiSeq 用オーバーハングアダプター(配列番号38;5'-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGGGA CTACHVGGGTWTCTAAT-3')が5'末端側に連結した806Rプライマー
得られた全てのサンプルを等濃度で混合してライブラリーを調製し、MiSeq(illumina社)を用いたシーケンス解析を行った。概略は以下の通りである。
ライブラリーの調整後、Illumina Experiment Manager(IEM)を用いてサンプルシートを作成し、クラスター形成及びMiSeqによるシーケンス解析を行った。解析結果をさらにMiSeq Reporterによって解析した。これらの解析にはデフォルトパラメータを使用した。
4.核酸が由来する細菌の属の同定
MiSeq(illumina社)を用いて、核酸が由来する細菌の属を以下の要領で決定した。
得られた塩基配列データに基づいて、最適な腸内細菌の属の同定及び存在比率の算出を行った。解析には、QIIME2ソフトウェアを搭載した機器(OSはUbuntu Linux 18.04.5 LTS)を用いた。解析にはデフォルトパラメータを使用し、細菌の16S rRNAの配列としては、GREENGENES(バージョン13_8)の配列情報を使用した。細菌属の同定の際のconfidence levelの基準値は0.7とした。
<実施例2:腸内細菌叢のタイプ分類>
(目的)
測定された腸内細菌叢をクラスタリング解析により、タイプに分類する。
(方法)
1.分類するタイプの数の決定
実施例1において得られた被験者の腸内細菌叢のデータに基づいて、最適なクラスター(分類)数を統計ソフトRを搭載したMacintoshPC(OSはCatalina)を用いて決定した。分類方法としてPartitioning Around Medoids(PAM)法を選択した場合の最適な分類数は、シルエット法により算出した。また、分類方法としてDirichlet Multinomial Mixtures(DMM)法を選択した場合の最適な分類数は、DMMモデルへのフィッティングにより算出した。いずれの方法においても最大のクラスター数を20に設定し、元となるデータとしては、半分以上の被験試料で検出された細菌属のデータのみを使用した。そのほかのパラメータはデフォルトのまま使用した。
2.クラスタリング解析
統計ソフトRを搭載したMacintoshPC(OSはCatalina)を用いて、クラスタリング解析を行った。
最適分類数がPAM法では5、DMM法では15となったため、15及び5つのクラスターに分類するクラスタリング解析を行うこととした。これに加え、DMM法では分類数が10の場合にモデルフィットの値が十分に下がったため、10つのクラスターに分類するクラスタリング解析も行うこととした。
5つの分類は、デフォルトパラメータを用いたPAM法によるパーティショニングによって行った。また、10つ及び15つの分類は、デフォルトパラメータを用いたDMM法により行った。
(結果)
結果を表10~12及び図1~3に示す。
Figure 0007193810000075
Figure 0007193810000076
Figure 0007193810000077
Figure 0007193810000078
Figure 0007193810000079
Figure 0007193810000080
5タイプからなる評価グループにおける、各タイプの腸内細菌叢の存在比率パターンは表10及び図1の通りである。Bacteroides属に属する細菌の比率がタイプ1~3において最も多かったのはBacteroides属に属する細菌であった。特にタイプ2においては、5つのタイプのうちで最もBacteroides属の存在比率が多く、25%を超えた。また、タイプ4においてはBifidobacterium属の存在比率が最も多く、約22%であった。タイプ5においては、Prevotella属が約26%を占め、最も多かった。
10タイプからなる評価グループにおける、各タイプの腸内細菌叢の存在比率パターンは表11及び図2の通りである。10タイプからなる評価グループでは、5タイプにおける主要な属の他に、各タイプ間でRuminococcus属、Faecalibacterium属及びStreptococcus属の存在比率にも違いが見られた。特にPrevotella属の存在比率はタイプによって大きく異なり、最もPrevotella属の存在比率が多かったタイプ6においては約23%を占めたのに対し、2番目に多かったタイプ7では、その存在比率は約7%であった。
15タイプからなる評価グループにおける、各タイプの腸内細菌叢の存在比率パターンは表12及び図3の通りである。15タイプからなる評価グループでは、上記5つの細菌の属の存在比率がタイプごとに大きく異なっていた。Prevotella属の存在比率は、タイプ10及びタイプ3において多かった(それぞれ約23%及び約18%)。
<実施例3:タイプ分類と疾患リスクの相関情報の取得>
(目的)
各タイプにおける疾患の罹患状況の比率を算出し、タイプ分類と疾患リスクの相関情報を取得する。
(方法)
各評価グループに関して、各タイプに分類された被験者のデータから各種疾患の罹患状況のデータを集計した。
いずれの疾患分類においても、他の全てのタイプの罹患個体の割合より低いタイプを特定して対照とした。各タイプの各疾患の罹患個体の割合に関し、オッズ比オプションを用いたwald法により対照タイプとの統計学的な比較を行った。有意な差が見られたタイプ及び疾患において、対照タイプの罹患個体の割合に対する、罹患個体の割合の倍率を算出した。
(結果)
結果を表13~15に示す。
Figure 0007193810000081
Figure 0007193810000082
Figure 0007193810000083
Figure 0007193810000084
Figure 0007193810000085
Figure 0007193810000086
5タイプからなる評価グループにおける、健常体率と各タイプの罹患個体の割合の倍数値は表13の通りであった。5タイプからなる評価グループにおいては、対照タイプであるタイプ5の健常者率が35.8%と最も高かった。
10タイプからなる評価グループにおける、健常体率と各タイプの罹患個体の割合の倍数値は表14の通りであった。10タイプからなる評価グループにおいては、対照タイプであるタイプ6の健常者率が36.8%と最も高かった。
15タイプからなる評価グループにおける、健常体率と各タイプの罹患個体の割合の倍数値は表15の通りであった。15タイプからなる評価グループにおいては、対照タイプであるタイプ10の健常者率が42.2%と最も高かった。
<実施例4:Prevotella属の存在比率による健常体検出のためのカットオフ値の算出>
(目的)
Prevotella属の存在比率に基づいて健常体を判定するためのカットオフ値を算出する。
(方法)
以下の要領に従って、カットオフ値の算出を行った。
統計ソフトウェアJMPバージョン14(SAS社;;を搭載したWindowsPCを使用し、分析タブにあるモデルのあてはめの算出機能を使用して名義ロジスティックを算出後、ROC曲線を出力し、カットオフ値を算出した。
(結果)
健常体の検出のためのPrevotella属の存在比率のカットオフ値は2.62×10-5となった。この時のAUCは0.61、感度は0.48、特異度は0.70であった。
<実施例5:各細菌の存在比率による腸内細菌叢のタイプ分類のための基準値の算出>
(目的)
各細菌の存在比率に基づいて腸内細菌叢のタイプ分類するための基準値を算出する。
(方法)
統計ソフトJMP(SAS社)を用いた尤度比カイ二乗に基づく対話的パーティショニングによって、決定木の作成と各分岐における基準値の算出を行った。R2値を0.8とする条件において解析を行った。この際、パラメータはデフォルトのものを使用した。
解析は、データベース上の全ての細菌の属についての存在比率を利用した場合と、Actinomyces、Alistipes、Anaerostipes、Anaerotruncus、Bacteroides、Bifidobacterium、Bilophila、Blautia、Butyricicoccus、Butyricimonas、Clostridium、Collinsella、Coprobacillus、Coprococcus、Dialister、Dorea、Eggerthella、[Eubacterium]、Faecalibacterium、Gemmiger、Granulicatella、Holdemania、Lachnospira、Lactobacillus、Odoribacter、Oscillospira、Parabacteroides、Phascolarctobacterium、Prevotella、Roseburia、Ruminococcus、[Ruminococcus]、Streptococcus、Sutterella、Turicibacter、及びVeillonellaの36属に属する細菌由来の核酸以外の合計をその他と分類した場合の2通りを、各評価グループに関して行った。
個々の被験者につき、各腸内細菌の存在比率データを用いて、算出した基準値に基づいてタイプ分類を行い、実施例2におけるクラスタリング解析の結果との一致率を算出した。
(結果)
結果を表16に示す。
Figure 0007193810000087
いずれの評価グループにおいても、一致率は70%を超えた。利用する属の種類を36種類に限定した場合でも、一致率が大きく下がることはなく、特に10タイプからなる評価グループの場合は一致率が大きく増加した。
このことから、いずれの評価グループにおいても、36属を存在比率のみを利用した場合と全ての属を利用した場合のいずれの場合においても、算出された基準値に基づいて高い一致率でタイプ分類が可能であることがわかった。
36種類の属に限定した場合に算出された具体的な基準値は表1~3に示す。

Claims (7)

  1. 疾患リスク評価のための腸内細菌叢のタイプ分類方法であって、
    被験試料から核酸を抽出する核酸抽出工程、
    前記核酸の配列情報に基づき、全核酸に対する特定の細菌由来の核酸の存在比率を測定する測定工程、及び
    5タイプ、10タイプ及び15タイプからなる評価グループ群から選択される評価グループを選択する選択工程、
    前記存在比率と、予め定められた基準値に基づいて、前記被検試料の腸内細菌叢のタイプを分類する分類工程
    を含み、
    前記疾患が、虚血性心疾患、心不全、NAFLD、ALD、VLD、FD、IBS、慢性便秘、甲状腺障害、パーキンソン病、双極性障害、認知症、UC、クローン病、UC及びクローン病からなる炎症性疾患、リウマチ、胃癌、肝癌、十二指腸癌、食道癌、大腸癌、胆のう癌、肺癌、膵臓癌、高血圧、高脂血症、高尿酸血症、糖尿病、高BMI、並びに高血圧、高脂血症、高尿酸血症、糖尿病及び高BMIからなる生活習慣病からなる群から選択される一以上の疾患であり、
    前記特定の細菌は、Actinomyces、Alistipes、Anaerostipes、Anaerotruncus、Bacteroides、Bifidobacterium、Bilophila、Blautia、Butyricicoccus、Butyricimonas、Clostridium、Collinsella、Coprobacillus、Coprococcus、Dialister、Dorea、Eggerthella、[Eubacterium]、Faecalibacterium、Gemmiger、Granulicatella、Holdemania、Lachnospira、Lactobacillus、Odoribacter、Oscillospira、Parabacteroides、Phascolarctobacterium、Prevotella、Roseburia、Ruminococcus、[Ruminococcus]、Streptococcus、Sutterella、Turicibacter、及びVeillonellaであり、
    前記5タイプ、10タイプ及び15タイプからなる評価グループ群における腸内細菌の存在比率は、それぞれ表1~3に示され、
    前記5タイプ、10タイプ及び15タイプからなる評価グループにおける、タイプと前記疾患のリスクの相関情報は、それぞれ表4~6で示され、
    表4~6中、空欄はリスクがないことを示し、Aは最もリスクが高いことを示し、Cは最もリスクが低いことを示し、BはA及びCに属さないことを示し、
    前記予め定められた基準値は、前記選択された評価グループにおいて前記特定の細菌ごとに定められ
    前記[Eubacterium]はHoldemanelaである、
    前記タイプ分類方法。
    Figure 0007193810000088

    Figure 0007193810000089

    Figure 0007193810000090

    Figure 0007193810000091

    Figure 0007193810000092

    Figure 0007193810000093

    Figure 0007193810000094

    Figure 0007193810000095

    Figure 0007193810000096

    Figure 0007193810000097

    Figure 0007193810000098

    Figure 0007193810000099
  2. 前記被験試料が糞便である、請求項1に記載のタイプ分類方法。
  3. 前記配列情報は16S rRNAの配列情報である、請求項1又は2に記載のタイプ分類方法。
  4. Actinomyces、Alistipes、Anaerostipes、Anaerotruncus、Bacteroides、Bifidobacterium、Bilophila、Blautia、Butyricicoccus、Butyricimonas、Clostridium、Collinsella、Coprobacillus、Coprococcus、Dialister、Dorea、Eggerthella、[Eubacterium]、Faecalibacterium、Gemmiger、Granulicatella、Holdemania、Lachnospira、Lactobacillus、Odoribacter、Oscillospira、Parabacteroides、Phascolarctobacterium、Prevotella、Roseburia、Ruminococcus、[Ruminococcus]、Streptococcus、Sutterella、Turicibacter、及びVeillonella由来の核酸が、それぞれ配列番号1~36で示される、請求項3に記載のタイプ分類方法。
  5. 前記予め定められた基準値が表で示される値である、請求項4に記載のタイプ分類方法。
    Figure 0007193810000100

    Figure 0007193810000101

    Figure 0007193810000102

    Figure 0007193810000103

    Figure 0007193810000104

    Figure 0007193810000105

    Figure 0007193810000106

    Figure 0007193810000107

    Figure 0007193810000108

    Figure 0007193810000109

    Figure 0007193810000110

    Figure 0007193810000111

    Figure 0007193810000112

    Figure 0007193810000113

    Figure 0007193810000114

    Figure 0007193810000115

    Figure 0007193810000116

    Figure 0007193810000117

    Figure 0007193810000118

    Figure 0007193810000119

    Figure 0007193810000120

    Figure 0007193810000121

    Figure 0007193810000122

    Figure 0007193810000123

    Figure 0007193810000124

    Figure 0007193810000125

    Figure 0007193810000126

    Figure 0007193810000127

    Figure 0007193810000128

    Figure 0007193810000129

    Figure 0007193810000130

    Figure 0007193810000131

    Figure 0007193810000132

    Figure 0007193810000133

    Figure 0007193810000134

    Figure 0007193810000135

    Figure 0007193810000136

    Figure 0007193810000137

    Figure 0007193810000138

    Figure 0007193810000139

    Figure 0007193810000140

    Figure 0007193810000141

    Figure 0007193810000142

    Figure 0007193810000143

    Figure 0007193810000144

    Figure 0007193810000145

    Figure 0007193810000146

    Figure 0007193810000147

    Figure 0007193810000148

    Figure 0007193810000149

    Figure 0007193810000150

    Figure 0007193810000151

    Figure 0007193810000152

    Figure 0007193810000153

    Figure 0007193810000154

    Figure 0007193810000155

    Figure 0007193810000156

    Figure 0007193810000157

    Figure 0007193810000158

    Figure 0007193810000159

    Figure 0007193810000160

    Figure 0007193810000161

    Figure 0007193810000162

    Figure 0007193810000163

    Figure 0007193810000164
  6. 腸内細菌叢に基づく疾患リスクの評価方法であって、
    被験者から得られた被験試料から核酸を抽出する核酸抽出工程、
    前記核酸の配列情報に基づき、全核酸に対する特定の細菌由来の核酸の存在比率を測定する測定工程、
    5タイプ、10タイプ及び15タイプからなる評価グループ群から選択される評価グループを選択する選択工程、
    前記存在比率と、予め定められた基準値に基づいて、前記被検試料の腸内細菌叢のタイプを分類する分類工程、及び
    前記腸内細菌叢のタイプに基づいて、各評価グループのタイプと疾患リスクの相関情報により、前記被験者の疾患リスクを評価する評価工程
    を含み、
    前記疾患が、虚血性心疾患、心不全、NAFLD、ALD、VLD、FD、IBS、慢性便秘、甲状腺障害、パーキンソン病、双極性障害、認知症、UC、クローン病、UC及びクローン病からなる炎症性疾患、リウマチ、胃癌、肝癌、十二指腸癌、食道癌、大腸癌、胆のう癌、肺癌、膵臓癌、高血圧、高脂血症、高尿酸血症、糖尿病、高BMI、並びに高血圧、高脂血症、高尿酸血症、糖尿病及び高BMIからなる生活習慣病からなる群から選択される一以上の疾患であり、
    前記特定の細菌は、Actinomyces、Alistipes、Anaerostipes、Anaerotruncus、Bacteroides、Bifidobacterium、Bilophila、Blautia、Butyricicoccus、Butyricimonas、Clostridium、Collinsella、Coprobacillus、Coprococcus、Dialister、Dorea、Eggerthella、[Eubacterium]、Faecalibacterium、Gemmiger、Granulicatella、Holdemania、Lachnospira、Lactobacillus、Odoribacter、Oscillospira、Parabacteroides、Phascolarctobacterium、Prevotella、Roseburia、Ruminococcus、[Ruminococcus]、Streptococcus、Sutterella、Turicibacter、及びVeillonellaであり、
    前記5タイプ、10タイプ及び15タイプからなる評価グループ群における腸内細菌の存在比率は、それぞれ表10~12に示され、
    前記5タイプ、10タイプ及び15タイプからなる評価グループにおける、タイプと前記疾患のリスクの前記相関情報は、それぞれ表13~15で示され、
    表13~15中、空欄はリスクがないことを示し、Aは最もリスクが高いことを示し、Cは最もリスクが低いことを示し、BはA及びCに属さないことを示し、
    前記予め定められた基準値は、前記選択された評価グループにおいて前記特定の細菌ごとに定められ
    前記[Eubacterium]はHoldemanelaである、
    前記評価方法。
    Figure 0007193810000165

    Figure 0007193810000166

    Figure 0007193810000167

    Figure 0007193810000168

    Figure 0007193810000169

    Figure 0007193810000170

    Figure 0007193810000171

    Figure 0007193810000172

    Figure 0007193810000173

    Figure 0007193810000174

    Figure 0007193810000175

    Figure 0007193810000176
  7. 前記被験者が日本人である、請求項6に記載の評価方法。
JP2021106050A 2021-06-25 2021-06-25 疾患リスク評価のための腸内細菌叢のタイプ分類方法 Active JP7193810B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021106050A JP7193810B1 (ja) 2021-06-25 2021-06-25 疾患リスク評価のための腸内細菌叢のタイプ分類方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021106050A JP7193810B1 (ja) 2021-06-25 2021-06-25 疾患リスク評価のための腸内細菌叢のタイプ分類方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP7193810B1 true JP7193810B1 (ja) 2022-12-21
JP2023004411A JP2023004411A (ja) 2023-01-17

Family

ID=84534701

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2021106050A Active JP7193810B1 (ja) 2021-06-25 2021-06-25 疾患リスク評価のための腸内細菌叢のタイプ分類方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7193810B1 (ja)

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016214111A (ja) 2015-05-15 2016-12-22 森永乳業株式会社 腸内状態の判定方法、および腸内状態の判定装置
JP2020030662A (ja) 2018-08-23 2020-02-27 一般社団法人日本農業フロンティア開発機構 疾病評価指標算出方法、装置、システム、及び、プログラム、並びに、疾病評価指標を算出するためのモデル作成方法。

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016214111A (ja) 2015-05-15 2016-12-22 森永乳業株式会社 腸内状態の判定方法、および腸内状態の判定装置
JP2020030662A (ja) 2018-08-23 2020-02-27 一般社団法人日本農業フロンティア開発機構 疾病評価指標算出方法、装置、システム、及び、プログラム、並びに、疾病評価指標を算出するためのモデル作成方法。

Also Published As

Publication number Publication date
JP2023004411A (ja) 2023-01-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Chen et al. Parasutterella, in association with irritable bowel syndrome and intestinal chronic inflammation
Fieten et al. Fecal microbiome and food allergy in pediatric atopic dermatitis: a cross-sectional pilot study
Liu et al. Comparison of the gut microbe profiles and numbers between patients with liver cirrhosis and healthy individuals
Li et al. Molecular-phylogenetic characterization of the microbiota in ulcerated and non-ulcerated regions in the patients with Crohn's disease
WO2017118924A1 (en) Method for evaluating the state of health of an individual
JP6884323B2 (ja) 精神疾患バイオマーカー
EP3472611B1 (en) Metagenomic method for in vitro diagnosis of gut dysbiosis
US20150267249A1 (en) Determination of reduced gut bacterial diversity
CN112458193B (zh) 基于pcr-量子点荧光法的肠道菌群核酸检测试剂盒及检测方法
CN109913525B (zh) 丁酸弧菌属在鉴别和/或区分高原地区汉族人群和藏族人群中的应用
CN113025730B (zh) 一种与肝硬化相关的肝内菌群标志物及其应用
Ezzy et al. Storage and handling of human faecal samples affect the gut microbiome composition: a feasibility study
EP3870550A1 (en) Universal method for extracting nucleic acid molecules from a diverse population of microbes
CN113403409A (zh) 基于细菌16S rRNA基因序列的细菌“种”水平检测和分析方法
JP7193810B1 (ja) 疾患リスク評価のための腸内細菌叢のタイプ分類方法
CN110637093B (zh) 帕金森病的判定标志物和判定方法
WO2014060537A1 (en) Prognostic of diet impact on obesity-related co-morbidities
WO2020150717A1 (en) Monitoring tools and diagnostic methods for determining a canid&#39;s microbiome age status
CN109652570A (zh) 微生物在鉴别和/或区分不同种族个体中的应用
CN109652493B (zh) 颤杆菌克属在鉴别和/或区分不同民族个体中的应用
CN109825561B (zh) 拟普雷沃菌属在鉴别和/或区分不同种族个体中的应用
CN111108199B (zh) 用于动脉粥样硬化性心血管疾病的生物标志物
CN109735598B (zh) 琥珀酸弧菌属在鉴别和/或区分不同民族个体中的应用
Sintsova et al. Genetically diverse uropathogenic Escherichia coli adopt a common transcriptional program in patients with urinary tract infections
CN117106893A (zh) 用于粪菌移植的肠易激综合征肠道微生物标志物及其应用

Legal Events

Date Code Title Description
A80 Written request to apply exceptions to lack of novelty of invention

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A80

Effective date: 20210715

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20220427

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20220427

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220524

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20220719

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220922

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20221115

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20221201

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7193810

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150