JP7192892B2 - 細胞シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、細胞シートを形成するための細胞シートの製造方法関する。
細胞の三次元組織が構築された細胞シートが知られている(特許文献1参照)。また、細胞の三次元組織を構築するには、二次元組織の細胞シートを積層する方法や3Dプリンタによって細胞を積層する方法がある。しかしながら、細胞シートを積層する方法は、細胞シートを積層する作業が煩雑で時間がかかる作業である。また、3Dプリンタを使用する方法は、専用の3Dプリンタなどの装置を必要が必要となる。
特許第5850419号公報
ところで、細胞には、配向性を有しているものがあるが、特許文献1の細胞の細胞外マトリックスによるコーティング方法は、三次元組織を形成することができるものの、配向性を制御することが困難である。
細胞が配向性を有するように三次元組織を構築する方法は、細胞が配向性を有するように構築された二次元組織の細胞シートを積層することである。しかしながら、このような細胞シートを積層する方法は、細胞シートを積層する作業が煩雑で時間がかかる作業である。
本開示の目的は、細胞が配向性を有するような三次元組織を備えた細胞シートを容易に製造することを可能とした細胞シートの製造方法および細胞シートを提供することにある。
本開示の一態様に係る細胞シートの製造方法は、前記細胞シートは、細胞シート形成部材の表面に形成されるものであり、前記表面は、第1方向に延びる形状を有し、かつ、前記表面の全体で前記第1方向と交差する第2方向に並ぶ複数の平坦部と、相互に隣り合う前記平坦部の間を埋める複数の段差構造を備える複数の凹凸部と、を備え、前記段差構造は、凸部と凹部との何れか一方であり、前記製造方法は、前記平坦部および前記凹凸部の何れか一方に対する接着が他方に対する接着よりも優勢である細胞を前記細胞シート形成部材の前記表面に接着させて、前記細胞シート形成部材の表面に、前記第1方向に配向性を有した細胞の三次元組織を備えた細胞シートを形成することを含む。
上記構成によれば、第1方向に配向性を有した細胞の三次元組織を備えた細胞シートを容易に形成することができる。
上記細胞シートの製造方法において、前記細胞シートを形成することは、前記細胞を培養して培養細胞を作製することと、前記培養細胞を、少なくとも1層の被覆膜層からなる接着膜で被覆することと、前記被覆された培養細胞を前記細胞シート形成部材の前記表面に播種することと、前記被覆された培養細胞を培養して前記接着膜によって互いに接着させて、前記配向性を有する前記細胞の三次元組織を形成することと、を含んでいてもよい。
上記細胞シートの製造方法において、前記細胞シートは、細胞の伸長方向が前記第1方向に対して前記第2方向に傾きを有している配向性を有した三次元組織を備えていてもよい。
上記細胞シートの製造方法において、前記細胞シートの前記細胞の間は、当該細胞よりも小さく、かつ、前記第1方向に配向性を有した他の細胞で埋められていてもよい。
上記細胞シートの製造方法において、前記細胞シートは、前記細胞シート形成部材から厚み方向に離れるほど、崩れた層構造を有する細胞で形成されていてもよい。
上記構成によれば、生体に近い状態で細胞を培養可能な細胞シートを製造することができるため、製造された細胞シートの薬剤応答性などが生体に近づくことを期待できる。
上記細胞シートの製造方法において、前記細胞シート形成部材において培養される細胞は、筋芽細胞、線維芽細胞、および、心筋細胞からなる群から選ばれた少なくとも1種であってよい。
上記細胞シートの製造方法において、各凹凸部は、相互に隣り合う前記平坦部の間を埋める複数の前記段差構造を備え、前記段差構造は、100nm以上10μm以下のピッチを有してよい。
上記構成によれば、培養細胞の配向性を向上させることができる。
上記細胞シートの製造方法において、前記平坦部は、凸部の頂面であり、前記凹凸部は、相互に隣り合う前記平坦部に挟まれた凹部と、前記凹部の底面に設けられた複数の凸部とを備えていてよい。
本開示の一態様に係る細胞シートは、互いに接着された細胞を含み、前記細胞が配向性を有し、かつ該細胞の三次元組織が構成されている。
上記細胞シートにおいて、前記細胞は、前記細胞の伸長方向が特定方向である第1方向に対して、前記第1方向に交差する第2方向に傾いた配向性を有していてよい。
上記細胞シートにおいて、前記細胞の間が、当該細胞よりも小さく、かつ、前記第1方向に配向性を有した他の細胞で埋められていてよい。
上記細胞シートにおいて、前記細胞シートは、前記細胞シートの第1面から前記第1面と対向する第2面に近づくほど崩れた層構造を有する細胞で形成されていてよい。
上記構成によれば、生体に近い状態で細胞を培養するため、薬剤応答性などが生体に近づくことを期待できる。
(a)は、細胞シートのための細胞シート形成部材の構造をシャーレと共に示す斜視図であり、(b)は、図1(a)の細胞シート形成部材の表面の一部を拡大して示す斜視図であり、(c)は、図1(b)の細胞シート形成部材の表面の一部を拡大して示す平面図であり、(d)は、図1(b)の細胞シート形成部材の一部を拡大して示す部分断面図である。 図1(a)の細胞シート形成部材の表面を走査電子顕微鏡によって撮影した画像。 図1(a)の細胞シート形成部材の製造方法の一例を説明するための工程図。 (a)~(c)は、細胞シートの製造過程を説明するための模式図。 (a)は、培養細胞を示す図であり、(b)は、図5(a)の培養細胞が接着膜で被覆された状態を示す図、(c)は、図5(b)の培養細胞が三次元組織化された状態を示す図、(d)は、細胞シート形成部材を用いて培養した筋芽細胞の蛍光染色画像。 (a)~(c)は、細胞シートの製造過程を説明するための模式図。 (a)~(c)は、細胞シートの製造過程を説明するための模式図。
以下、細胞シートの製造方法および細胞シートの一実施形態について説明する。まず、細胞シート形成部材の構成を説明し、次いで、細胞シート形成部材の製造方法、細胞シートの製造方法を説明する。
[細胞シート形成部材]
図1(a)に示すように、細胞シート形成部材100は、例えば、シャーレの培養皿110に配置されるシート材である。細胞シート形成部材100は、培養皿110に載置されるものであってもよいし、シャーレを直接加工して設けるものであってもよい。シャーレに直接加工して設ける場合、細胞シート形成部材100は、例えばシャーレを射出成型して賦形される。シャーレは、培養皿110と蓋120とに囲まれた空間に細胞懸濁液を保持する。細胞懸濁液に含まれる細胞の一例は、筋芽細胞、線維芽細胞、心筋細胞である。
図1(b)に示すように、細胞シート形成部材100の表面111は、複数の平坦部130と、複数の凹凸部140とを備える。凹凸部140は、複数の段差構造を備え、複数の段差構造は、相互に隣り合う平坦部130の間を埋める。段差構造は、凸部、または、凹部である。なお、本実施形態における段差構造は、凸部141であり、凹凸部140は、相互に隣り合う平坦部130に挟まれた凹部と、凹部の底面に位置する複数の凸部141とを備える。
図1(c)に示すように、各平坦部130は、1つの方向である第1方向(図1(c)の上下方向)に延びる平坦面である。平坦部130は、表面111の全体において、第1方向と直交する第2方向(図1(c)の左右方向)に並ぶ。平坦部130は、第1方向に延びる凸部(凸条)の頂面に相当する。凹凸部140もまた、第1方向に延び、かつ、表面111の全体において、第2方向に並ぶ。このことは、図2に示すように、細胞シート形成部材100の表面を走査電子顕微鏡によって撮影した画像からも明らかである。
凹凸部140を構成する各凸部141は、表面111と対向する方向から見て、例えば、三角格子の各頂点に位置する。各凹凸部140は、凸部141のこのような配列を、第1方向、および、第2方向に繰り返す。三角格子の各頂点に凸部141が位置する凹凸部140であれば、凸部141を形成するための原盤を、微小な繰り返し構造を形成することに適したマスク、例えば、単粒子膜をマスクとしたエッチング法によって形成することが可能となる。
表面111と対向する方向から見て、各凸部141は、例えば円形状を有する。相互に隣り合う凸部141の中心間の距離の最頻値は、凸部141のピッチである。また、凸部141の平面視形状における凸部の最大幅は、凸部141の直径である。
凸部141のピッチが下記(A)および(B)を満たす構成は、ヒト・マウスなどの動物細胞、特に上述した筋芽細胞、線維芽細胞、および、心筋細胞の伸長方向を第1方向に揃える観点において好適である。すなわち、凸部141のピッチが下記(A)および(B)を満たす構成は、動物細胞、特に上述した筋芽細胞、線維芽細胞、および、心筋細胞などの接着に対する優劣が、平坦部130と凹凸部140との間で明確に区画される観点において好適である。
(A)凸部141のピッチ:100nm以上10μm以下
(B)凸部141の直径:凸部141のピッチの50%以上100%以下
各平坦部130の第2方向(短辺方向)での長さは、平坦部130の幅である。また、相互に隣り合う平坦部130間の第2方向(短辺方向)での長さは、凹凸部140の幅である。
平坦部130の幅、および、凹凸部140の幅は、例えば、培養の対象となる細胞の大きさ(5μm以上100μm以下)の1/10倍以上10倍以下である。平坦部130の幅、および、凹凸部140の幅が下記(C)および(D)を満たす構成は、ヒト・マウスなどの動物細胞、特に上述した筋芽細胞、線維芽細胞、および、心筋細胞の伸長方向を第1方向に揃えることを容易なものとする観点において好適である。
(C)平坦部130の幅:10μm以上50μm以下
(D)凹凸部140の幅:10μm以上50μm以下
図1(d)に示すように、凹凸部140は、相互に隣り合う凸部141、および、平坦部130とそれに隣接する凸部141との間に、凹部142を備えても良い。複数の凸部141が凹凸部140に点在するため、凸部141間の空間である凹部142は、凹凸部140において、第1方向、および、第2方向に連なる。
細胞シート形成部材100の厚み方向において、凹部142の底面と平坦部130との間の長さは、平坦部130の高さである。また、細胞シート形成部材100の厚み方向において、各凸部141の先端面と平坦部130との間の高低差は、境界段差である。凹部142の底面と各凸部141の先端面の高低差は、凸部141の高さである。各凸部141の先端面と平坦部130とが面一である構成では、平坦部130の高さと、凸部141の高さとが、相互に等しい。凸部141の高さに対する凸部141のピッチの比は、凸部141のアスペクト比である。
境界段差が下記(E)を満たす構成は、細胞シートの平坦性を高める観点において好適である。凸部141の高さが下記(F)を満たす構成、また、凸部141のアスペクト比が下記(G)を満たす構成は、凹凸部140の構造上での安定性を高められる観点、また、凹凸部140の形成を容易なものとする観点において好適である。
(E)境界段差:0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下
(F)凸部141の高さ:50nm以上5μm以下
(G)凸部141のアスペクト比:0.1以上10以下
そして、上記(A)および(B)を満たす構成であれば、平坦部130に対する接着が優勢である細胞であれ、凹凸部140に対する接着が優勢である細胞であれ、一方の構造体に対して細胞が優先的に接着し、他方の構造体に対する接着の劣勢と相まって、双方の構造体の延在方向である第1方向に、細胞の伸長方向が揃えられる。結果として、表面111に沿った二次元方向に広がる細胞シートにおいて、細胞の伸長方向を一次元方向に揃えること、すなわち、細胞の配向性を向上させることが可能となる。そして、細胞シートは、培養細胞が一次元方向に揃った状態、すなわち配向性を有する状態で厚さ方向に積み上がって三次元組織を形成する。この際、一次元方向に延在した細胞に重なるように、一次元方向に延在した他の細胞が培養されるため、一次元方向に延在した細胞の大きさと形状は、第1方向のみならず、第2方向、および、第1方向と第2方向とに直交する方向において、区々となる。結果として、三次元組織では、第1方向に延在して第2方向で隣り合う細胞間が、当該細胞と同一種であるが当該細胞よりも小さく、かつ、第1方向に延在した他の細胞で埋められる。
また、上記(E)を満たす構成、特に、各凸部141の先端面と平坦部130とが面一である構成は、凹凸部140と平坦部130とを覆うように形成された細胞シートにおいて、それの平坦性を高めることを可能とする。さらに、上記(F)を満たす構成は、細胞シートの平坦性をより一層に高めることが可能である。
なお、細胞シート形成部材100の表面111が、平坦部130と凹凸部140とを備えるため、平坦部130に対する接着が優勢である細胞と凹凸部140に対する接着が優勢である細胞との両方に、共通する細胞シート形成部材100を適用することが可能ともなる。すなわち、細胞シート形成部材100の汎用性を高めることも可能となる。
[細胞シート形成部材の製造方法]
次に、細胞シート形成部材の製造方法の一例について説明する。なお、以下の説明では、ナノインプリント法を用いて、細胞シート形成部材の表面111を、凹版150の転写によって形成する例を説明する。
図3に示すように、細胞シート形成部材の製造方法は、凹版150を形成する工程と、細胞シート形成部材100の表面111を凹版150の転写によって形成する工程とを含む。
凹版150の下面は、第1方向(紙面と直交する方向)に延びる形状を有し、かつ、第1方向と交差する第2方向(紙面の左右方向)に並ぶ複数の平坦部と、相互に隣り合う平坦部の間を埋める複数の段差構造を有する凹凸部とを備える。凹版150の平坦部は、細胞シート形成部材100の平坦部130を転写によって形成するための部分である。凹版150の凹凸部は、細胞シート形成部材100の凹凸部140を転写によって形成するための部分である。
凹版150の段差構造は、凸部、または、凹部である。なお、本実施形態における凹版150の段差構造は、凸部141を形成するための凹部151であり、凹部151のピッチは、100nm以上10μm以下である。凹版150を形成する工程では、例えば、凹版150を形成するためのシリコン基板に対して、フォトリソグラフィー法、コロイダルリソグラフィー法、陽極酸化法、および、干渉露光法の少なくとも1種を用いて、凹凸部が形成される。また、凹版150自体を原盤からの1回、あるいは複数回の転写によって得てもよい。原盤には、例えば、シリコン基板に対するフォトリソグラフィー法、コロイダルリソグラフィー法、陽極酸化法、および、干渉露光法の少なくとも1種を用いて凹版150の表面形状に対応する形状が作り込まれている。
次に、細胞シート形成部材100を形成するための基材160の表面111に、凹版150の下面を対向させる。基材160の形成材料は、例えば、熱可塑性樹脂や光硬化性樹脂である。そして、基材160が流動性を有する状態で、基材160の表面111に、凹版150の下面を押し付ける。次いで、基材160の流動性を抑えた状態で、凹版150を基材160の表面111から離型する。これによって、基材160の表面111に凹版150の凹部151が転写され、平坦部130と凹凸部140とが形成される。
基材160の形成材料の熱可塑性樹脂や光硬化性樹脂の表面に、細胞の接着性を高めることを目的として、例えば、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ポリーリシン(PDLまたはPLL)、ヒアルロン酸などの細胞外マトリックス、ポリマー、ゲルなどの接着因子を含む有機物が塗布されていてもよい。また、基材160の形成材料として、多糖類やタンパク質などの生体材料を用いてもよい。
また、三次元細胞組織形成後に細胞シートの剥離・回収を容易にするために、刺激応答性材料を塗布しても良い。刺激応答性材料としては、温度変化によって水親和性が変化する温度応答性ポリマーが好ましい。具体的にはポリ-N-イソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)が好ましい。刺激応答性材料は慣用の塗布方法を用いて基材に塗布しても良いし、刺激応答性材料を処理した基材に下記に記載した方法を用いて構造を加工しても良い。また、細胞シートの剥離・回収を容易にするために、細胞シートが形成された培養基材に対して超音波処理を行ってもよい。
[細胞シートの製造方法]
次に、細胞シート形成部材100を用いて製造される細胞シートについて説明する。培養に当たっては、ここでは、細胞外マトリックスによるコーティング方法を用いる。
図4(a)に示すように、細胞シート形成部材100の表面111上に位置する細胞懸濁液は、例えば、平坦部130に接着する培養細胞1を含む。
細胞懸濁液は、細胞接着第1成分を含有する第1溶液と第1成分と相互作用する細胞接着第2成分を含有する第2溶液とを交互にコーティングした培養細胞1を含んでいる。すなわち、図5(a)に示す培養細胞1は、接着膜2で被覆されている。接着膜2は、第1成分を含む第1膜2aと第2成分を含む第2膜2bとで構成されている(図5(b))。第1成分と第2成分との組み合わせは、例えば、インテグリンが結合するアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)配列を含む高分子とRGD配列を含む高分子と相互作用をする高分子との組み合わせである。
第1成分を含むRGD配列を含む高分子は、RGD配列を有するタンパク質でもよいし、RGD配列が化学的に結合されたタンパク質であってもよい。また、RGD配列を有していればよく、タンパク質以外の天然由来高分子であってもよいし、合成高分子であってもよい。タンパク質からなるRGD配列を含む高分子としては、例えば、従来公知の接着性タンパク質が挙げられ、フィブロネクチン(分子量約50万)、ビトロネクチン、ラミニン、カドヘリン、コラーゲンなどである。
第2成分を含むRGD配列を含む高分子と相互作用する高分子としては、RGD配列を含む高分子との相互作用により、両物質が、例えば、結合、接着、吸着、電子の授受が可能な程度近接できる物質であれば特に制限されないが、RGD配列を含む高分子と相互作用するタンパク質、天然由来高分子及び合成高分子の何れか1種である。RGD配列を含む高分子と相互作用するタンパク質としては、例えば、水溶性タンパク質が挙げられ、具体例として、コラーゲン、ゼラチン(一例として分子量10万)、プロテオグリカン、インテグリン、酵素、抗体などの何れかである。RGD配列を含む高分子と相互作用する天然由来高分子としては、例えば、水溶性ポリペプチド、低分子ペプチド、α-ポリリジン,ε-ポリリジン(分子量5千)等のポリアミノ酸、ヘパリンやヘパラン硫酸、デキストラン硫酸(分子量50万)、ヒアルロン酸(分子量100万~)などの糖などである。
第1成分と第2成分との組み合わせは、例えば、フィブロネクチンとゼラチン、フィブロネクチンとヘパリン、フィブロネクチンとデキストラン硫酸、および、ラミニンとコラーゲンの何れかである。
次に、三次元組織を備えた細胞シートの製造方法を説明する。
先ず、培養細胞1を用意し、その表面全体を接着膜2で被覆して被覆細胞を作製する。具体的には、用意した培養細胞1を試験管に入れる。
次いで、第1成分を培養細胞1に接触させる。培養細胞と第1成分との接触方法としては、例えば、第1成分を直接添加する方法、第1成分の含有液に細胞を浸漬する方法、培養細胞1に第1成分の含有液を滴下または噴霧する方法などがある。好ましくは、操作が容易であることから浸漬である。接触の条件は、接触方法や使用する含有液の濃度などによって適宜決定できる。具体的には、接触時間は、例えば、15秒~60分であり、好ましくは15秒~15分、より好ましくは15秒~5分であり、更に好ましくは15秒~1分である。接触温度は、特に制限されないが、例えば、4~60℃であり、好ましくは20~40℃、より好ましくは30~37℃であり、更に好ましくは37℃である。
第1成分の含有液を調製する場合、溶媒としては、水や緩衝液などの水性溶媒が挙げられ、緩衝液としては、例えば、Tris-HCl緩衝液等のTris緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES緩衝液、クエン酸-リン酸緩衝液、グリシルグリシン-水酸化ナトリウム緩衝液、Britton-Robinson緩衝液、GTA緩衝液などが挙げられる。
このようにして培養細胞1を第1成分からなる第1膜2aにより被覆した後、遊離している第1成分を除去する。第1成分を除去する方法としては、上記の溶媒を用いて遠心分離を行い、培養細胞1と第1成分の含有液とを分離して上澄みを取り除くことで、遊離している第1成分を除去する方法が挙げられる。これにより、第1成分からなる第1膜2aで被覆された培養細胞1を得ることができる。
接着膜2として、第1成分の第1膜2aと第2成分からなる第2膜2bとからなる積層膜を形成させる場合、第1成分で被覆された培養細胞1を第2成分と接触させることにより、第2成分からなる第2膜2bで被覆する。第2成分との接触方法は、第1成分と同様な方法で行うことができ、第2成分の含有液を用いて接触させる場合は、第1成分の含有液を調製する方法と同様にして第2成分の含有液を調製することができる。これにより、第1成分からなる第1膜2aと、第2成分からなる第2膜2bとからなる接着膜2で被覆された培養細胞1が得られる。第1成分の第1膜2aと第2成分からなる第2膜2bとからなる積層膜は、繰り返し被覆をすることで、複数の被覆膜層を形成することが可能である。被腹膜層は、例えば1~20層であり、好ましくは1~10層であり、より好ましくは1~5層である。そして、培養細胞1を含む細胞懸濁液は、細胞シート形成部材100の表面111上に滴下され、培養細胞1が播種される。その後、培養細胞1は、培養される。
培養細胞1の三次元細胞シートを完成させるための培養条件は、培養する細胞に応じて適宜決定される。例えば、培養温度が、例えば、4~60℃であり、好ましくは20~40℃、より好ましくは30~37℃であり、培養時間は、例えば、1~168時間であり、好ましくは3~24時間、より好ましくは3~12時間である。これにより、接着膜2を介して、培養細胞1同士を接着させたり、増殖した培養細胞1同士を接着させたりして、三次元組織を有する細胞シート10を製造することができる(図5(c)参照。)。
細胞シート10では、一次元方向に延在した培養細胞に重なるように、一次元方向に延在した他の培養細胞が培養されるため、一次元方向に延在した培養細胞の大きさと形状は、第1方向のみならず、第2方向、および、第1方向と第2方向とに直交する方向において、区々となる。結果として、三次元組織では、第1方向に延在して第2方向で隣り合う培養細胞間が、当該細胞よりも小さく、かつ、第1方向に延在した他の細胞で埋められる。したがって、三次元組織は、表面111に隣接する第1面を構成する1層目やその近い位置では、層構造が認められるが、培養細胞1の大きさや形状などのばらつきによって、表面111(第1面)から離れ、第1面と対向する第2面に近づくほど層構造は崩れ、培養細胞1の間の隙間に別の培養細胞1が入り込むように積み上がって構成される。細胞が配向性を有している三次元組織は、生体に近い状態で細胞を培養することができる。また、図5(d)に示すように、培養細胞1の細胞が有する配向性は、細胞の伸長方向を、例えば、特定方向である第1方向、あるいは、第1方向から第2方向に向かって若干傾いている方向に揃える性質である。すなわち、培養細胞1は、培養細胞1の伸長方向が一次元方向であり、例えば、特定方向である第1方向、あるいは、第1方向に対して前記第2方向に傾きを有する配向性を有する。
図4(a)に示すように、各平坦部130は、凹凸部140の長辺方向(第1方向)に延び、各平坦部130の幅は、一般的な細胞の大きさの1~数倍程度である。そのため、図4(b)に示すように、平坦部130に接着する培養細胞1の位置は、平坦部130の範囲内に優先的に分布し、培養細胞1は、第1方向に細胞の長軸方向が配置されて直線状に連なる。すなわち、培養細胞1の伸長方向は、平坦部130の長辺方向と揃うように制御される。なお、図4(c)に示すように、上記(A)を満たさない細胞シート形成基材では、培養細胞1の配向性が制御されないため、細胞の長軸方向はランダムな方向で配置する。
また、図6(a)に示すように、細胞シート形成部材100の表面111上に位置する細胞懸濁液は、例えば、凹凸部140に接着する培養細胞1を含む。この際、各凹凸部140は、凹凸部140の長辺方向(第1方向)に延び、各凹凸部140の幅は、一般的な細胞の大きさの1~数倍程度である。そのため、図6(b)に示すように、培養細胞1は、凹凸部140の範囲内に優先的に分布し、培養細胞1は、第1方向に細胞の長軸方向が配置されて直線状に連なる。すなわち、培養細胞1の伸長方向は、凹凸部140の長辺方向と揃うように制御される。なお、図6(c)が示すように、上記(A)を満たさない細胞シート形成基材では、培養細胞1の配向性が制御されないため、細胞の長軸方向はランダムな方向で存在する。
一方、上記(A)を満たす細胞シート形成基材では、図7(a)に示すように、細胞シート形成部材100に保持された細胞懸濁液の培養細胞1が、平坦部130に対して優先的に接着する細胞であり、平坦部130よりも劣勢ではあるが、凹凸部140に対する接着を許容された細胞でもある。あるいは、細胞シート形成部材100に保持された細胞懸濁液の培養細胞1が、凹凸部140に対して優先的に接着する細胞であり、凹凸部140よりも劣勢ではあるが、平坦部130に対する接着を許容された細胞でもある。
このような場合、図7(b)に示すように、平坦部130、および、凹凸部140は、第1方向に延び、第2方向に交互に配置される。そのため、細胞シート形成部材の表面111では、例えば、平坦部130に優先的に接着された培養細胞1が有する配向性が、平坦部130の構造、および、それを区画する凹凸部140の構造によって制御される。
そして、相互に隣り合う平坦部130に挟まれた凹凸部140においては、平坦部130よりも劣勢ではあるが、凹凸部140に接着した培養細胞1にて、平坦部130による配向性の制御が反映される。結果として、図7(c)が示すように、細胞の長軸方向が第1方向のような一次元方向に揃うように配向性を制御された培養細胞1が表面111の全体に広がり、これによって、細胞シート10が形成される。
あるいは、凹凸部140に優先的に接着された培養細胞1の配向性が、凹凸部140の構造、および、それを区画する平坦部130の構造によって制御される。そして、相互に隣り合う凹凸部140に挟まれた平坦部130においては、凹凸部140よりも劣勢ではあるが、平坦部130に接着した培養細胞1にて、凹凸部140による配向性の制御が反映される。結果として、細胞の長軸方向が第1方向のような一次元方向に揃うように配向性を制御された培養細胞1が表面111の全体に広がり、これによって、細胞シート10が形成される。
上記実施形態に記載の細胞シート形成部材、細胞シート形成部材の製造方法、および、細胞シートの製造方法における実施例を以下に説明する。
<実施例1>
<細胞シート形成部材の作製>
先ず、細胞シート形成部材100の凹凸部140を転写によって形成するためのニッケル製凹版を作製した。次いで、ニッケル製凹版をスタンパとして用い、ナノインプリント法によって、ポリスチレンシートに凹凸部140を加工し、それによって、実施例1の細胞シート形成部材100を作製した。実施例1の細胞シート形成部材100における平坦部130は、第1方向に延びる形状を有し、かつ、細胞シート形成部材100の表面における全体で、第1方向と交差する第2方向に並び、各平坦部130の幅(第2方向での長さ)は10μmであった。各凹凸部140は、相互に隣り合う平坦部130の間を埋める複数の段差構造を備え、相互に隣り合う平坦部130間の第2方向での長さは10μmであり、凹凸部140における凸部141のピッチは300nmであった。凹凸部140における各凸部の高さはAFMを用いて測定し、凹部の底面から凸部の先端までの高さの平均は、446nmであった。また、凹部の底面から平坦部までの高さの平均は455nmであった。そして、実施例1の細胞シート形成部材100を、直径8.8mmの円形に裁断し、裁断後の細胞シート形成部材100にUV照射を行い、この滅菌処理を行った後に、細胞培養試験に使用した。
<細胞培養試験>
先ず、マウス由来の筋芽細胞(C2C12細胞、DSファーマバイオメディカル社製)を細胞培養用フラスコ(25cm)で培養した。培養条件は、FBS(ウシ胎仔血清)10%添加したDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)を用い、37℃、5%CO雰囲気下で行った。細胞の回収にはトリプシンを用い、定法に従い実施した。回収した細胞について血球計算版を用いて細胞数を計測した。
回収した細胞に、2種類の細胞接着成分をコーティングする操作を、細胞積層キットCellFeuille(登録商標)(住友ベークライト株式会社)を使用し、プロトコールに従って行った。具体的には、細胞懸濁液を遠心(200g)し、上清を除去後、細胞ペレットを溶液A(第1溶液に相当)に懸濁し、細胞表面に成分A(第1成分に相当)をコーティングした。次に、溶液Aの細胞懸濁液を遠心し、溶液Aを除去した。残った細胞ペレットを洗浄液に懸濁し、遠心後、洗浄液を除去した。
次に、細胞ペレットを溶液B(第2溶液に相当)に懸濁し、細胞表面に成分B(第2成分に相当)をコーティングした。次に、溶液Bの細胞懸濁液を遠心し、溶液Bを除去した。残った細胞ペレットを洗浄液に懸濁し、遠心後、洗浄液を除去した。
上記の操作により、細胞表面に成分Aと成分Bを層状にコーティングされた細胞が得られた。続いて上記のコーティング操作を3回行った。最後に溶液Aに懸濁し、遠心にて溶液Aを除去した後、洗浄液に懸濁した。
以上の操作により、細胞表面に成分Aと成分Bが交互にコーティングされた細胞が得られた。血球計算版を用いて細胞数を計測した後、上清を除去し、培地を用いて1×10細胞/mlの細胞濃度になるように細胞懸濁液を調整した。
次いで、細胞培養用マルチウェルプレート(48孔)の底面に、直径8.8mmの円形に裁断した実施例1の細胞シート形成部材100を設置した。細胞シート形成部材100を設置したマルチウェルプレートにキット付属の洗浄液を0.2mlずつ分注した後、洗浄液を除去して、溶液Cを0.2mlずつ分注し、37℃に設定したCOインキュベーター(5%CO)に1hr静置した。なお、溶液Cは、コラーゲンを主成分とした細胞接着を高めるための足場材である。
1hr静置後に溶液Cを除去し、洗浄液0.2mlで洗浄した後に、細胞接着成分をコーティングした筋芽細胞を1mlずつ播種した。COインキュベーターで24時間以上培養した後に培地交換を行い、1日ごとに培地交換を行った。
培養開始3日後に、積層培養した細胞を回収し、観察に用いた。積層培養した細胞を、細胞シート形成部材100に接着した状態で、4%パラホルムアルデヒド(リン酸緩衝生理食塩水)を用い、室温で10分間固定し、固定に用いた溶液を除去後、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄した。
続いて、0.5%トライトンX-100を含むリン酸緩衝生理食塩水を用い、室温で5分間処理し、透過処理を行った。リン酸緩衝生理食塩水で洗浄した後、100nMに希釈したacti-stain488ファロイジン(Cytoskeleton社製)溶液に30分間浸し、染色を行った。染色後の細胞シート形成部材100を、リン酸緩衝食塩水で洗浄した後、封入剤(Antifade mounting medium,Fluka社製)を滴下したスライドガラスに張り合わせ、観察用のスライドガラスを作製した。そして、共焦点レーザー顕微鏡(オリンパス社製)を用いて、細胞の配向性を観察した。結果として、細胞シート形成部材100において、細胞の伸長方向が一次元方向に揃った状態が認められた。図5(d)が筋芽細胞の蛍光染色画像である。筋芽細胞の表面からは、培養細胞1の伸長方向が特定方向である第1方向に対して上記第2方向に傾きを有する配向性が認められる。
積層培養した細胞を、細胞シート形成部材100に接着した状態で、4%パラホルムアルデヒド(リン酸緩衝生理食塩水)を用い、室温で10分間固定し、固定に用いた溶液を除去後、リン酸緩衝生理食塩水で洗浄した。次いで、組織の脱水のため、50%エタノール溶液、70%エタノール溶液、80%エタノール溶液、90%エタノール溶液、95%エタノール溶液、100%エタノール溶液の順に半日ずつ浸漬し、置換し操作を行った。
次に、Technovit7100(Kulzer社)を用いて組織の包埋を行った。具体的には予備置換液を用いて、脱エタノールを行い、置換液とhardenerIIとを、11対1の割合で混合し、積層培養した細胞を、細胞シート形成部材100に接着した状態で包埋した。包埋した組織は、適当な大きさにトリミングした後、ミクロトームを使用して、切片を作製し、組織の断面を観察した。
以上、上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)配向性を有した三次元組織が構成された細胞シート10を製造することができる。
(2)培養細胞1は接着膜2を介して三次元に組織化される。
(3)細胞の伸長方向が第1方向に沿った配向性や、細胞の伸長方向が第1方向から若干の傾きを有した方向に沿った配向性をするように細胞を培養することができる。
(4)三次元組織は、表面111に隣接する1層目やその近い位置では、層構造を有するが、表面111から離れるほど層構造は崩れ、培養細胞1の大きさなどのばらつきによって、培養細胞1の間の隙間に別の培養細胞1が入り込むように積み上がったものとすることができる。
(5)細胞シート形成部材100は、表面111に平坦部130と凹凸部140とを備えるので、平坦部130に対する接着が優勢である細胞と、凹凸部140に対する接着が優勢である細胞との両方に適用することができる。これにより、細胞シート形成部材100の汎用性を高めることができる。
(6)筋芽細胞、線維芽細胞、および、心筋細胞などの配向性を有した三次元組織を備えた細胞シートを製造することができる。
(7)配向性を有した三次元組織は、生体に近い状態で細胞を培養するため、薬剤応答性などが生体に近いことが期待される。したがって、再生医寮における移植用組織においても効果を期待することができる。
(8)二次元組織の細胞シートを積み上げる作業などが不要となる点で細胞シートの汚染リスクを減らすことができる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・筋芽細胞、線維芽細胞、および、心筋細胞などの配向性を有した三次元組織で細胞シート10を製造できるほか、さらに、配向性を有した細胞に、血管内皮細胞等の内皮細胞、腸管上皮細胞等の上皮細胞、iPS細胞や間葉系幹細胞等の幹細胞を混合して播種、あるいは配向性を有する細胞の組織層間に播種して三次元組織を備えた細胞シート10を製造することもできる。
・細胞シート形成部材100の表面111は、細胞の接着性を高めることを目的として、例えば、ラミニン、コラーゲン、ゼラチン、フィブロネクチン、ポリーリシン(PDLまたはPLL)、ヒアルロン酸などの細胞外マトリックス、ポリマー、ゲル等の接着因子を含む有機物が塗布されてもよく、あるいは、金属から構成される面であってもよい。また、細胞シート形成部材100の表面111は、細胞の接着性や細胞シートの平坦性を高めることを目的として、親水性、あるいは、疎水性を有してもよい。
・細胞懸濁液中には、細胞外基質産生促進因子を添加するようにしてもよい。細胞外基質産生促進因子としては、例えば、TGF-β1、TGF-β3、アスコルビン酸、アスコルビン酸2リン酸またはその誘導体あるいはそれらの塩を挙げることができる。コラーゲン産生の観点から、アスコルビン酸、アスコルビン酸2リン酸またはそれらの誘導体およびその塩(例えば、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩など)とすることが好ましい。アスコルビン酸としては、L体であることが好ましい。
[細胞シート形成部材]
・凸部141の有する形状は、円錐や角錐などの錐状、円柱や角柱などの柱状、円錐台や角錐台などの錐台状、および、半球状の何れか1種とすることが可能である。
・凸部141の位置は、四角格子上の各格子点、六角格子上の各格子点、さらには、凹凸部140において不規則とすることも可能である。
・凹凸部140の有する形状は、第1方向に延びる直線状に限らず、第1方向に延びる折れ線状や、第1方向に延びる曲線状に変更することも可能である。
・凹凸部140の底面と平坦部130とを面一に変更すること、すなわち、凸部141の基端部と平坦部130とを面一に変更することも可能である。なお、上述したように、凹凸部140の先端面と平坦部130とを面一とする構成は、細胞シートの平坦性を高める観点において好適である。
・凹凸部140を構成する段差構造を、凹部に変更することも可能であり、凹部と凸部との両方に変更することも可能である。例えば、凹凸部140は、平坦部130に連続する1つの側面を備え、該側面に複数の凹部が形成された構造に変更することも可能である。
・1つの凹凸部140の幅と、他の凹凸部140の幅とは、相互に異なる構成であってもよいし、相互に等しい構成であってもよい。なお、1つの凹凸部140の幅と、他の凹凸部140の幅とが、相互に等しい構成であれば、細胞シートが有する特性について、第2方向での均一性を高めることが可能となる。
・1つの平坦部130の幅と、他の平坦部130の幅とは、相互に異なる構成であってもよいし、相互に等しい構成であってもよい。なお、1つの平坦部130の幅と、他の平坦部130の幅とが、相互に等しい構成であれば、細胞シートが有する特性について、第2方向での均一性を高めることが可能となる。
・平坦部130の幅と、凹凸部140の幅とは、相互に異なる構成であってもよいし、相互に等しい構成であってもよい。例えば、細胞の接着が平坦部130において優勢である場合、平坦部130の幅は、配向性を制御できる範囲であって、かつ、凹凸部140の幅よりも大きいことが好適である。また、細胞の接着が凹凸部140において優勢である場合、凹凸部140の幅は、配向性を制御できる範囲であって、かつ、平坦部130の幅よりも大きいことが好適である。
・平坦部130と凹凸部140とが交互に並ぶ第2方向は、第1方向と直交する方向に限らず、第1方向と交差する方向であれば、例えば、第1方向と形成する角度が45°である方向とすることも可能である。
・細胞シート形成部材は、凹版を用いた転写体に限らず、凸版を用いた転写体であってもよく、さらに、射出成形による成形体とすることも可能である。すなわち、射出成形を用いて細胞シート成形部材を製造することも可能である。
・細胞シート形成部材は、マルチウェルプレート、シャーレ、フラスコ、チェンバースライドなど、細胞懸濁液を保持可能なものであれば、それに適用することができる。
1…培養細胞、2…接着膜、2a…第1膜、2b…第2膜、10…細胞シート、100…細胞シート形成部材、110…培養皿、111…表面、120…蓋、130…平坦部、140…凹凸部、141…凸部、142…凹部、150…凹版、151…凹部、160…基材。

Claims (6)

  1. 細胞シートの製造方法であって、
    前記細胞シートは、細胞シート形成部材の表面に形成されるものであり、
    前記細胞シート形成部材において培養される細胞は、筋芽細胞、線維芽細胞、および、心筋細胞からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、
    前記表面は、第1方向に延びる形状を有し、かつ、前記表面の全体で前記第1方向と交差する第2方向に並ぶ複数の平坦部と、相互に隣り合う前記平坦部の間を埋める複数の段差構造を備える複数の凹凸部と、を備え、
    前記段差構造は、凸部と凹部との何れか一方であり、
    各凹凸部は、相互に隣り合う前記平坦部の間を埋める複数の前記段差構造を備え、前記段差構造は、100nm以上10μm以下のピッチを有し、
    前記製造方法は、前記平坦部および前記凹凸部の何れか一方に対する接着が他方に対する接着よりも優勢である細胞を前記細胞シート形成部材の前記表面に接着させて、前記細胞シート形成部材の表面に、前記第1方向に配向性を有した細胞の三次元組織を備えた細胞シートを形成することを含む、
    細胞シートの製造方法。
  2. 前記細胞シートを形成することは、
    前記細胞を培養して培養細胞を作製することと、
    前記培養細胞を、少なくとも1層の被覆膜層からなる接着膜で被覆することと、
    前記被覆された培養細胞を前記細胞シート形成部材の前記表面に播種することと、
    前記被覆された培養細胞を培養して前記接着膜によって互いに接着させて、前記配向性を有する前記細胞の三次元組織を形成することと、を含む、
    請求項1に記載の細胞シートの製造方法。
  3. 前記細胞シートは、細胞の伸長方向が前記第1方向に対して前記第2方向に傾きを有している配向性を有した三次元組織を更に備える
    請求項2に記載の細胞シートの製造方法。
  4. 前記細胞シートの前記細胞の間は、当該細胞と同一種類であり、当該細胞よりも小さく、かつ、前記第1方向に配向性を有した他の細胞で埋められている
    請求項3に記載の細胞シートの製造方法。
  5. 前記細胞シートは、前記細胞シート形成部材から厚み方向に離れるほど、崩れた層構造を有する細胞で形成されている
    請求項3または4に記載の細胞シートの製造方法。
  6. 前記平坦部は、凸部の頂面であり、
    前記凹凸部は、相互に隣り合う前記平坦部に挟まれた凹部と、前記凹部の底面に設けられた複数の凸部とを備えている
    請求項1ないしのうち何れか1項に記載の細胞シートの製造方法。
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