JP7189833B2 - 車両用荷室のスライド脱着構造 - Google Patents

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本発明は、軽トラック等の車両の荷台に車幅方向の左右双方から荷室を積み下ろしでき、積み込んだ荷室を走行時の揺れや遠心力に対して適切に保持できる車両用荷室のスライド脱着構造に関する。
軽トラック等の車両の荷台に荷室(コンテナ)を積み下ろしする発明として、コンテナの前部及び後部に夫々正面視で門構え形状となるように装着された4本の支持脚を備え、各支持脚がコンテナに直立姿勢と傾斜姿勢とに回動自在に装着された積み下ろし自在コンテナが知られている(特許文献1参照)。
かかるコンテナを軽トラックの荷台に積み込む際には、先ず、支持脚を直立姿勢とした状態で、支持脚の下端に取り付けられたキャスターによって、コンテナを軽トラックの荷台の後方から支持脚が荷台を跨ぐ位置に移動させる。このとき、コンテナの底面は、軽トラックの荷台の上面よりも上方の位置となっている。その後、支持脚を傾斜姿勢とすることで、コンテナの底面の高さを下げ、コンテナの底面を軽トラックの荷台に着床させ、コンテナを積み込む。コンテナを荷台から下ろす作業は、逆の手順となる。
また、別の発明として、トラックの荷台の上面に車長方向に敷設された一対のレールと、コンテナの底面に設けられたレール用車輪と、コンテナをトラックの荷台の後方から荷台に引き寄せるためコンテナに接続したワイヤを巻き取るウインチとを備えた貨物自動車が知られている(特許文献2参照)。この貨物自動車によれば、コンテナをトラックの後方から荷台に積み込むことができる。
また、貨物列車の荷台に車幅方向からコンテナを積み込むようにした発明が知られている(特許文献3参照)。
特開2014-54893号公報 特開昭54-33417号公報 特開昭59-194938号公報
ところで、文献1に記載された発明は、コンテナを軽トラックの荷台に車長方向の後方から積み込むものであり、積み込みの際、軽トラックの荷台の左右の煽り戸がガイドとして利用されている。左右の煽り戸は、積み込まれたコンテナが軽トラックの走行時に車幅方向に移動することを押さえるストッパとしても機能する。しかし、この煽り戸が邪魔になるため、コンテナの左右側面に開閉扉を設けることができず、物の出し入れはコンテナの後部に設けられた開閉扉からのみ行われることになる。このため、コンテナの奧の荷物が取り出し難い。
また、文献1に記載された発明は、コンテナの軽トラックの荷台への積み込み及び積み降ろしに焦点が当てられており、積み込んだコンテナを荷台にどのように固定するかについては詳細に記載されておらず、チェーンで固定するとの記載(文献1の段落0013)があるのみである。これでは、コンテナと煽り戸との隙間においてコンテナのガタ付きが避けられず、コンテナを走行時の揺れや遠心力に対して適切に保持することが困難である。
文献2に記載された発明は、車輪付きコンテナをトラックの荷台の後方からウインチで引き寄せて荷台に移載するものであり、荷室を車両の荷台に車幅方向の左右双方から積み下ろしする本発明とは技術的な前提が相違する。
文献3に記載された発明は、コンテナを貨物列車の荷台に車幅方向から積み込むようにしたコンテナ移載装置が開示されているが、積み込まれたコンテナをどのようにして列車の荷台に固定するかについては記載されていない。
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、軽トラック等の車両の荷台に車幅方向の左右双方から荷室を容易に積み下ろしでき、積み込んだ荷室を走行時の揺れや遠心力に対して適切に保持できる車両用荷室のスライド脱着構造を提供することにある。
上述した目的を達成すべく創案された本発明によれば、車両用の荷室が固定されるアッパープレートと、アッパープレートの下面に、車幅方向の左右に位置して取り付けられ、車幅方向外方が開口したU字状のアッパーU型ブラケットと、車両の荷台またはフレームに固定されるロアープレートと、ロアープレートの上面に、このロアープレートにアッパープレートを重ねたときアッパーU型ブラケットと符合する位置に取り付けられ、車幅方向外方が開口したU字状のロアーU型ブラケットと、アッパープレートを車両の側方からロアープレートに重ねるように載置する際、アッパープレートを車幅方向に案内するガイドと、ロアープレートにアッパープレートを重ねたとき、ロアーU型ブラケット及びそれに重なったアッパーU型ブラケットによって形成される空洞部に、車幅方向外方から差し込まれる脱着ブロックと、脱着ブロックとアッパーU型ブラケットとを串刺しするように、脱着ブロックに形成された孔とアッパーU型ブラケットに形成された孔に挿抜自在に差し込まれたアッパー固定ピンと、脱着ブロックとロアーU型ブラケットとを串刺しするように、脱着ブロックに形成された孔とロアーU型ブラケットに形成された孔に挿抜自在に差し込まれたロアー固定ピンと、を備えたことを特徴とする車両用荷室のスライド着脱構造が提供される。
本発明に係る車両用荷室のスライド着脱構造においては、ロアープレートの上面に、車幅方向に沿って設けられたベアリングと、ロアープレートにアッパープレートが重ねられたとき、アッパープレートの下面に、ベアリングの位置に合わせて車幅方向に沿って設けられたスライド用レールと、を備えていてもよい。
本発明に係る車両用荷室のスライド着脱構造においては、上記ベアリングが、ロアープレートの上面に車幅方向に沿って設けられたベアリング基部と、ベアリング基部に車幅方向に間隔を隔てて複数配設されたベアリングボールと、ベアリング基部にエア圧が供給されたときベアリングボールがベアリング基部の頂面からリフトし、エア圧が供給されないときベアリングボールがベアリング基部の頂面の下方にダウンするエアリフト機構と、を備えていてもよい。
本発明に係る車両用荷室のスライド着脱構造においては ロアープレートの上面に、車幅方向および車長方向に間隔を隔てて複数取り付けられたロアー台座と、ロアープレートにアッパープレートが重ねられたとき、アッパープレートの下面に、ロアー台座の位置に合わせて複数取り付けられたアッパー台座と、を備えていてもよい。
本発明に係る車両用荷室のスライド脱着構造によれば、軽トラック等の車両の荷台に車幅方向の左右双方から荷室を容易に積み下ろしでき、積み込んだ荷室を走行時の揺れや遠心力に対して適切に保持できる。
本発明の一実施形態に係る車両用荷室のスライド着脱構造が適用された荷室が、軽トラックの荷台に車幅方向から積み込まれる様子を示す斜視図である。 上記実施形態に係る車両用荷室のスライド着脱構造の概要を示す斜視図である (a)は、上記車両用荷室のスライド着脱構造のロアープレート及びそれに組み付けられた部品(以下ロアープレートアセンブリと言う)を示す斜視図、(b)は、上記スライド着脱構造のアッパープレート及びそれに組み付けられた部品(以下アッパープレートアセンブリと言う)を上下反転して示す斜視図である。 上記スライド着脱構造のアッパーU型ブラケット、ロアーU型ブラケット、脱着ブロック、アッパー固定ピン、ロアー固定ピンを示す斜視図である。 (a)は、図5のアッパーU型ブラケット、ロアーU型ブラケット、脱着ブロック、アッパー固定ピン、ロアー固定ピンを組み付けた様子を示す斜視図、(b)は(a)のb-b線断面図である。 (a)は、ロアープレートアセンブリにアッパープレートアセンブリを矢印方向から積み込むに先立って、積込方向前方のロアーU型ブラケットに脱着ブロックを組み付けた様子を示す斜視図であり、(b)は(a)のb部拡大図、(c)は(a)のc部拡大図である。 図6のロアープレートアセンブリにアッパープレートアセンブリを矢印方向から積み込んだ後、積込方向後方のアッパーU型ブラケットおよびロアーU型ブラケットの空洞部に脱着ブロックを装着する様子を示す斜視図である。 ロアープレートアセンブリの変形例を上下反転して示す斜視図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。係る実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(車両による宅配事業)
高齢化、過疎化、ネット販売の増加、環境対策等の問題が取り上げられる中、宅配の荷物を運搬する宅配車として、小回りが効く軽トラックの利用が進んでいくと考えられる。軽トラックを用いた配達業務においては、中大型トラックと比べて荷物の積載量が多いとはいえないため、頻繁に集配センターに戻って荷積みを行う必要があり、業務の効率化のため、集配センターに車を待機させる時間を削減することが求められる。
これを実現するために、本発明者は、軽トラックに載せられる荷室を複数台準備し、そのうちの1台を積んだ軽トラックによって配送業務を行っている間、集配センターに待機している残りの荷室に荷物を収容しておき、軽トラックが集配センターに戻ると同時に空となった荷室を軽トラックから降ろし、荷物が収容された荷室を軽トラックに積み込むことで待機時間を削減し、実効配送時間を稼ぐシステムを創案中である。このシステムにおいては、空となった荷室を軽トラックから降ろす時間、荷物が収容された荷室を軽トラックに積み込む時間を短縮することで、待機時間の短縮化を推進できる。
荷室の軽トラックの荷台への積み下ろし時間を短縮するには、積み込み時にシンプルで特殊な工具を使わずに容易に荷室を荷台に移動して固定でき、荷下ろし時にも同様に特殊な工具を使わず荷室の荷台への固定を解除できることが望ましい。また、集配センターにおける作業スペースの要請から、荷室を車両の荷台に車幅方向の左右双方から積み下ろしでき、また、安全性の要請から、積み込んだ荷室を走行時の揺れや遠心力に対して適切に保持できるものが要望される。これを実現すべく本発明者が創案した車両用荷室のスライド脱着構造について以下に述べる。
(車両用荷室のスライド脱着構造4の概要)
図1に示すように、本発明は、軽トラック1の荷台2の側方に置かれた荷室(コンテナ)3を、矢印Aに示すように車幅方向(BL方向)に移動させ、荷台2の上に固定する作業を短時間で行え、そのまま走行が可能となる車両用荷室のスライド着脱構造に関するものである。荷室3は、車幅方向の反対側からも同様に荷台に積み込むことができ、積み込んだ荷室3は、車幅方向の左右どちらからでも荷下ろしできる。
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る車両用荷室のスライド着脱構造4は、上面に車両1(軽トラック)用の荷室3が固定されるアッパープレートアセンブリ5、下面が車両1の荷台2またはフレームに固定されるロアープレートアセンブリ6、アッパープレートアセンブリ5とロアープレートアセンブリ6とを位置決めして連結する脱着ブロック7、脱着ブロック7とアッパープレートアセンブリ5とを結合するアッパー固定ピン8、脱着ブロック7とロアープレートアセンブリ6とを結合するロアー固定ピン9を備えている。以下、各構成要素について説明する。
(ロアープレートアセンブリ6)
図3(a)に示すように、ロアープレートアセンブリ6は、下面が車両1の荷台2またはフレームに固定されるロアープレート10と、ロアープレート10の上面に、車幅方向の左右両端に位置して取り付けられ、車幅方向外方が開口したU字状のロアーU型ブラケット11と、ロアープレート10に車両の側方からアッパープレートアセンブリアセンブリ5を重ねる際、アッパープレートアセンブリ5を車幅方向に案内するガイド12とを備えている。ロアープレート10は、荷台2のサイズおよび形状に合わせて長方形状に形成されている。ロアーU型ブラケット11は、ロアープレート10の車幅方向の左右端部に、車長方向(TL方向)に間隔を隔てて2個ずつ、計4個設けられている。ガイド12は、ロアープレート10の車長方向の前後端部に、車幅方向に沿って設けられたL型材からなる。
図3(a)に示すように、ロアープレート10の上面には、車幅方向に沿ってベアリング13が設けられている。ベアリング13は、ロアープレート10の上面に車幅方向に沿って設けられた細長い直方体状のベアリング基部13aと、ベアリング基部13aに車幅方向に間隔を隔てて複数配設されたベアリングボール13bと、ベアリング基部13aにエア圧が供給されたときベアリングボール13bがベアリング基部13aの頂面からリフトし、エア圧が供給されないときベアリングボール13bがベアリング基部13aの頂面の下方にダウンするエアリフト機構とを備えている。ベアリング基部13aの高さは、ロアーU型ブラケット11の高さに合わせられている。
図3(a)に示すように、ロアープレート10の上面には、車幅方向および車長方向に間隔を隔てて複数のロアー台座14が配設されている。ロアー台座14の高さは、ベアリング基部13aの高さに合わせられている。ロアー台座14は、ロアープレートアセンブリ6にアッパープレートアセンブリ5を重ねたとき、アッパープレートアセンブリ5の上面に取り付けられた荷室3およびその内部に収容された荷物の重量(上下方向(WL方向)の力)を支持する機能を有する。上述したロアープレートアセンブリ6を構成する各構成要素の材質は、軽トラック1の積載重量(350kg)は決まっていることから、出来る限り軽量で強度を有する材質、例えばアルミ合金等が好ましい。
(アッパープレートアセンブリ5)
図3(b)にアッパープレートアセンブリ5を上下反転した斜視図を示す。アッパープレートアセンブリ5は、上面(図3(b)においては下面)に車両1用の荷室3が固定されるアッパープレート15と、アッパープレート15の下面(図3(b)においては上面)に、車幅方向の左右両端に位置して取り付けられ、車幅方向外方が開口したU字状のアッパーU型ブラケット16とを備えている。アッパープレート15は、ロアープレート10のサイズおよび形状に合わせて長方形状に形成されている。アッパーU型ブラケット16は、ロアープレートアセンブリ6にアッパープレートアッセンブリ5を重ねたとき、ロアーU型ブラケット14と符合する位置に取り付けられている。
図3(b)に示すように、アッパープレート15の下面(図3(b)においては上面)には、車幅方向に沿ってスライド用レール17が設けられている。スライド用レール17の高さは、アッパーU型ブラケット16の高さに合わせられている。スライド用レール17は、アッパープレートアセンブリ5をロアープレートアセンブリ6に重ねたとき、ロアープレートアセンブリ6のベアリング13の位置に合わせて配設されている。この構成によれば、アッパープレートアセンブリ5をロアープレートアセンブリ6上において車幅方向に移動するとき、ベアリング13のベアリングボール13bをエアリフト機構によってベアリング基部13aの頂面からリフトさせることで、スライド用レール17がベアリングボール13bと点接触する状態となり、摩擦抵抗が軽減される。
図3(b)に示すように、アッパープレート15の下面(図3(b)においては上面)には、車幅方向および車長方向に間隔を隔てて複数のアッパー台座18が配設されている。アッパー台座18は、アッパープレートアセンブリ5をロアープレートアセンブリ6に重ねたとき、ロアープレートアセンブリ6のロアー台座14の位置に合わせて配設されている。アッパー台座18の高さは、スライド用レール17の高さに合わせられている。アッパー台座18は、アッパープレートアセンブリ5をロアープレートアセンブリ6に重ねたとき、アッパープレートアセンブリ5の上面(図3(b)においては下面)に取り付けられた荷室3およびその内部に収容された荷物の重量を支持する。上述したアッパープレートアセンブリ5を構成する各構成要素は、電蝕を避けるため、ロアープレートアセンブリ6の各構成要素を同材質(アルミ合金等)であることが望ましい。
(脱着ブロック7)
図4に示すように、脱着ブロック7は、ロアープレートアセンブリ6にアッパープレートアセンブリ5を重ねたとき、ロアーU型ブラケット11及びそれに重なったアッパーU型ブラケット16によって形成される空洞部19(図2参照)に、車幅方向外方から差し込まれるものである。脱着ブロック7は、空洞部19に差し込まれる差込部7aと、差込部7aの差込方向後端に形成されたフランジ部7bとを備えている。差込部7aを空洞部19に容易に挿入できるようにするため、差込部7aの高さはロアーU型ブラケット11にアッパーU型ブラケット16を重ねた高さよりも僅かに低くすることが望ましい。フランジ部7bは、差込部7aが空洞部19に差し込まれたとき、ロアーU型ブラケット11の車幅方向外側端面11aおよびアッパーU型ブラケット16の車幅方向外側端面16aに当接する(図5(a)参照)。
図4に示すように、脱着ブロック7の差込部7aには、アッパー固定ピン8が差し込まれる孔20と、ロアー固定ピン9が差し込まれる孔21とが、夫々車長方向に沿って形成されている。図5(a)に示すように、ロアーU型ブラケット11及びこれに重ねられたアッパーU型ブラケット16によって形成された空洞部19に脱着ブロック7が差し込まれたとき、図4に示すように、アッパーU型ブラケット16には、アッパー固定ピン8が差し込まれる孔22が、脱着ブロック7の孔20と同一軸芯となるように形成され、ロアーU型ブラケット11には、ロアー固定ピン9が差し込まれる孔23が、脱着ブロック7の孔21と同一軸芯となるように形成されている。
(アッパー固定ピン8、ロアー固定ピン9)
図4、図5(a)に示すように、ロアーU型ブラケット11及びこれに重ねられたアッパーU型ブラケット16によって形成された空洞部19に脱着ブロック7が差し込まれたとき、脱着ブロック7とアッパーU型ブラケット16とを串刺しするように、脱着ブロック7に形成された孔20とアッパーU型ブラケット16に形成された孔22にアッパー固定ピン8が差し込まれ、脱着ブロック7とロアーU型ブラケット11とを串刺しするように、脱着ブロック7に形成された孔21とロアーU型ブラケット11に形成された孔23にロアー固定ピン9が差し込まれる。
図5(a)のb-b線断面図である図5(b)に示すように、アッパー固定ピン8は、孔20および孔22に差し込まれる軸部8aと、孔22から突出する突出部8bと、突出部8bの端部に設けられたボタン8cと、軸部8aの先端側部に設けられた出没ピン8dとを備え、ボタン8cを操作することで出没ピン8dが軸部8aから側方に出没するようになっている。一方、脱着ブロック7に形成された孔20は、止めネジ(イモネジ)24によって脱着ブロック7に着脱可能に装着されたブッシュ25の内部に形成されており、アッパー固定ピン8の軸部8a直径に合わせて形成された小孔20aと、それよりも大きな大孔20bとから構成されている。
この構成によれば、図5(b)に示すように、アッパー固定ピン8を孔20に差し込んだ状態でボタン8cをプッシュすると、出没ピン8dが突出して大孔20bと小孔20aとの段差部に引っ掛かり、アッパー固定ピン8が抜け止めされる。ボタン8cを再びプッシュすると、出没ピン8dが没入し、アッパー固定ピン8を孔20から引き抜くことができる。出没ピン8dのストッパとなる段差部が経年使用によって摩耗した場合、止めネジ24を緩めることで摩耗したブッシュ25を取り外し、新品のブッシュ25に交換できる。
以上、アッパー固定ピン8及びそれが差し込まれる孔20、22について説明したが、ロアー固定ピン9及びそれが差し込まれる孔21、23についても同様の構成(同一部品)となっているため、ロアー固定ピン9及びそれが差し込まれる孔21、23に関する説明は省略する。
図4、図5(a)に示すように、アッパー固定ピン8が差し込まれる孔22は、ロアー固定ピン9が差し込まれる孔23に対して車幅方向にずらされており、アッパー固定ピン8、ロアー固定ピン9を各孔22、23に抜き差しする際に互いに干渉しないようになっている。
(荷積み作業)
図1に示す軽トラック1の荷台2に荷室3を矢印A方向から積み込む作業、即ち、図6(a)に示すロアープレートアセンブリ6に、矢印A方向から、図3(b)に示すアッパープレートアセンブリ5を上下反転させた状態で図7に示すように積み込む作業について説明する。
図6(a)に示すロアープレートアセンブリ6の下面は、図1に示す軽トラック1の荷台2に固定され、図3(b)に示すアッパープレートアセンブリ5の上面(図3(b)においては下面)には、図1に示す荷室(コンテナ)3が固定されている。このアッパープレートアセンブリ5は、図3(b)の姿勢から上下反転された状態で、図6(a)において、積込方向を表す矢印Aの後方側(投入側)に配置された図示しない搬送台に載せられている。搬送台の高さは、軽トラック1の荷台2に固定されたロアープレートアセンブリ6の高さに合わせられている。
積み込みに先立って、図6(c)に示すように、積込方向を表す矢印Aの前方側(突当側)のロアーU型ブラケット11に脱着ブロック7を差し入れ、ロアー固定ピン9で固定しておく。このとき、図6(a)に示すように、矢印A方向の後方である投入側のロアーU型ブラケット11には、脱着ブロック7が差し入れられていない。そして、図6(a)に示すベアリング基部13aにエア圧を供給し、ベアリングボール13bをベアリング基部13aの頂面からリフトさせ、ベアリングボール13bの頂部がロアー台座14の上面よりも高い状態とする。
この状態で、図6(a)に示すロアープレートアセンブリ6の車幅方向側方に配置されたアッパープレートアセンブリ5(図6(a)では省略)を、作業員またはシリンダ等の押圧機械によって、矢印Aで示すように車幅方向に動かしてロアープレートアセンブリ6の上に移動させる。アッパープレートアセンブリ5の移動は、ロアープレートアセンブリ6のガイド12によって案内され、図7に示すように、突当側において、アッパープレートアッセンブリ5のアッパーU側ブラケット16がロアープレートアッセンブリ6のロアーU型ブラケット11に装着された脱着ブロック7に当接するまで行われる。移動完了後、ベアリング基部13aへのエア圧の供給を終了する。
その後、突当側において、アッパーU型ブラケット16と脱着ブロック7とをアッパー固定ピン8で固定し(図5(a)参照)、投入側において、図7に示すように、ロアーU型ブラケット11およびアッパーU型ブラケット16によって形成された空洞部19に脱着ブロック7を差し込み、アッパー固定ピン8およびロアー固定ピン9で固定する(図5(a)参照)。これにより、積み込み作業が終了となる。なお、アッパープレートアセンブリ5を車幅方向の反対側から積み込む場合は、上述した手順と車幅方向の左右で逆の手順となる。
(荷下ろし作業)
上述のようにして、図1に示す軽トラック1の荷台2に載せられた荷室3を車幅方向に下ろす作業、即ち、図1に示す荷室3が取り付けられた図7に示すアッパープレートアセンブリ5を、荷台2に取り付けられたロアープレートアッセンブリ6から下ろす作業について説明する。
先ず、図7に示すアッパープレートアセンブリ5をロアープレートアセンブリ6から排出する側(車幅方向左右の何れか一方)において、図5(a)に示すアッパー固定ピン8およびロアー固定ピン9を抜き取り、排出側の脱着ブロック7を取り去る(図2参照)。更に、排出側と反対側(車幅方向左右の他方)のアッパープレートアセンブリ5のアッパー固定ピン8を抜き取る。
その後、図6(a)に示すベアリング基部13aにエア圧を供給し、ベアリングボール13bの頂部をベアリング基部13aの頂面よりもリフトさせ、ベアリングボール13bによって図3(b)に示すアッパープレートアセンブリ5のスライド用レール17を押し上げ、アッパー台座18の下面がロアー台座14の上面から浮上した状態とする。
この状態で、図7に示すアッパープレートアセンブリ5を、作業員またはシリンダ等の押圧機械によって押して車幅方向左右の何れか一方(排出方向)に動かし、図示しない搬送台の上に移動させる。これにより、荷下ろし作業が終了となる。なお、アッパープレートアセンブリ5を車幅方向の反対側に下ろす場合は、上述した手順と車幅方向の左右で逆の手順となる。
(作用・効果)
本実施形態に係る車両用荷室のスライド脱着構造4によれば、図6(c)に示すように、車幅方向左右の何れか一方のロアーU型ブラケット11に脱着ブロック7を装着し、図7に示すように、車幅方向の他方からアッパープレートアセンブリ5を積み込むことで、車幅方向の左右のどちら側からでも荷室3を軽トラック1に積み込むことができる。
その後、図2に示すように、車幅方向左右の何れか一方のアッパー固定ピン8およびロアー固定ピン9を抜き取って脱着ブロック7を取り去り、車幅方向他方のアッパー固定ピン8を抜き取ってアッパープレートアセンブリ5を車幅方向左右の一方に移動させることで、積み込んだ荷室3を軽トラック1から車幅方向の左右のどちら側にでも下ろすことができる。
軽トラック1に対する荷室3の固定及び解除は、図4に示すように、アッパー固定ピン8をアッパーU型ブラケット16に抜き差しし、ロアー固定ピン9をロアーU型ブラケット11に抜き差しし、ロアーU型ブラケット11及びそれに重なったアッパーU型ブラケット16によって形成される空洞部19に脱着ブロック7を抜き差しすることで行えるので、工具(ドライバー、レンチ等)を使用することなく、容易に行うことができる。
荷室3を積み込んだ状態で軽トラック1を走行させると、加速減速時の揺れや遠心力等によって、アッパープレートアセンブリ5とロアープレートアセンブリ6との連結部分である、脱着ブロック7、アッパーU型ブラケット16、ロアーU型ブラケット11、アッパー固定ピン8およびロアー固定ピン9に、車幅方向、車長方向、上下方向の力が加わる。
車長方向の力は、図4、図5(a)、図5(b)に示すように、脱着ブロック7の差込部7aの側面がロアーU型ブラケット11およびアッパーU型ブラケット16の空洞部19の側面に当接することで受けることができる。車幅方向の力は、脱着ブロック7の差込部7aの先端面が空洞部19の奧面に当接し、脱着ブロック7のフランジ部7bがロアーU型ブラケット11の車幅方向外側端面11aおよびアッパーU型ブラケット16の車幅方向外側端面16aに当接することで受けることができる。上下方向の力は、脱着ブロック7の上面がアッパープレート15の下面に当接し、脱着ブロック7の下面がロアープレート10の上面に当接することで受けることができる。
詳しくは、ロアーU型ブラケット11及びそれに重なったアッパーU型ブラケット16によって形成される空洞部19と脱着ブロック7の差込部7aとの間には、差込部7aを空洞部19にスムーズに挿抜するためのクリアランスが設けられているため、そのクリアランスの範囲で脱着ブロック7が、車幅方向、車長方向、上下方向に移動する。車幅方向の移動によって、アッパー固定ピン8およびロアー固定ピン9に剪断力が加わるところ、アッパー固定ピン8およびロアー固定ピン9は一つの空洞部19について4本、車両全体では16本設けられているので、1本当たりの負荷が減り、走行中にアッパー固定ピン8およびロアー固定ピン9が破損することはない。
同様に、上下方向の移動によって、アッパー固定ピン8およびロアー固定ピン9に剪断力が加わるところ、アッパー固定ピン8およびロアー固定ピン9は一つの空洞部19について4本、車両全体では16本設けられているので、1本当たりの負荷が減り、走行中にアッパー固定ピン8およびロアー固定ピン9が破損することはない。また、車長方向の移動は、アッパー固定ピン8をアッパーU型ブラケット16の孔22に抜き差しし、ロアー固定ピン9をロアーU型ブラケット11の孔23に抜き差しする方向となるので、アッパー固定ピン8およびロアー固定ピン9に剪断力が生じることはない。
なお、車幅方向左右の双方において、図5(b)に示すアッパー固定ピン8とアッパーU型ブラケット16の孔22とのクリアランス(ガタ)を、図4に示すロアーU型ブラケット11及びそれに重なったアッパーU型ブラケット16によって形成される空洞部19と脱着ブロック7の差込部7aとの間の車幅方向および上下方向のクリアランス(脱着ブロック7の先端面と空洞部19の奧面とのクリアランス、脱着ブロック7の上面とアッパープレート15の下面とのクリアランス、脱着ブロック7の下面とロアープレート15の上面とのクリアランス)よりも大きくしておけば、脱着ブロック7の差込部7aが空洞部19内で車幅方向および上下方向に動いても、アッパー固定ピン8にそれを破損させる剪断力が加わることはない。
同様に、図4に示すロアー固定ピン9とロアーU型ブラケット11の孔23とのクリアランスを、ロアーU型ブラケット11及びそれに重なったアッパーU型ブラケット16によって形成される空洞部19と脱着ブロック7の差込部7aとの間の車幅方向および上下方向のクリアランスよりも大きくしておけば、脱着ブロック7の差込部7aが空洞部19内で車幅方向および上下方向に動いても、ロアー固定ピン9にそれを破損させる剪断力が加わることはない。
上述したように、本実施形態に係る車両用荷室のスライド脱着構造4によれば、軽トラック1等の車両に荷室3を車幅方向の左右双方から容易に積み下ろしでき、且つ積み込んだ荷室3を走行時の揺れや遠心力等に対して適切に保持できる。
本実施形態においては、図3(a)に示すようにロアープレート10にベアリング13が設けられ、図3(b)に示すようにアッパープレート15にスライド用レール17が設けられているので、荷室3を軽トラック1に積み下ろすべく車幅方向に移動する際、ベアリング13上をスライド用レール17が移動することで移動抵抗を低減でき、作業効率が向上する。なお、図3(a)に示すベアリング13は、ロアープレート10の車幅方向の全長に亘って設けられていてもよい。
図3(a)に示すベアリング13がエアリフト機構を備えているので、ベアリング基部13aにエア圧を供給してベアリングボール13bを上方に突出させることで、アッパープレート15が持ち上げられ、アッパー台座18がロアー台座14から離間した状態となり、荷室3を車幅方向に移動する際の移動抵抗を削減できる。その後、エア圧の供給を終了してベアリングボール13bを没入させることで、アッパープレート15がダウンし、アッパー台座18がロアー台座14に着床するため、荷室3の重量を適切に支持できる。
また、軽トラック1に載せられる荷室3を複数台準備し、そのうちの1台を積んだ軽トラック1によって配送業務を行っている間、集配センターにおいて残りの荷室3に荷物を収容しておき、軽トラック1が集配センターに戻ると同時に空となった荷室(空荷)3を軽トラック1から降ろし、荷物が収容された荷室(実荷)3を軽トラック1に積み込むことができる。これにより、軽トラック1が集配センターに戻ってきてから個々の荷物を一つずつ荷室3に詰め込む作業がなくなるため、軽トラック1の待機時間を削減でき、実効配送時間を稼ぐことができる。
工具(ドライバー、レンチ等)を用いることなく容易に荷室3を軽トラック1に対して固定および解除できるので、空荷の荷室3と実荷の荷室3との交換時間を短縮できる。よって、集配センターにおける軽トラック1の待機時間の削減を推進できる。
軽トラック1の廃車時に、荷室3を他の車両(軽トラック1)に転用できるので、荷室3が軽トラック1に溶接されている場合のように荷室3を車両1と一体的に廃棄する必要がない。また、荷室3の左右両側面および後面に開閉扉を設けることができるので、効率的であり、荷室3の奧の荷物を取り出し易い。
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
例えば、図8に示すように、ロアープレート10に、ベアリング13の代わりに滑りレール13xを設けてもよい。
本発明は、軽トラック等の車両の荷台に車幅方向の左右双方から荷室を容易に積み下ろしでき、積み込んだ荷室を走行時の揺れや遠心力に対して適切に保持できる車両用荷室のスライド着脱構造に利用できる。
1 車両(軽トラック)
2 荷台
3 荷室(コンテナ)
4 車両用荷室のスライド脱着構造
5 アッパープレートアセンブリ
6 ロアープレートアセンブリ
7 脱着ブロック
8 アッパー固定ピン
9 ロアー固定ピン
10 ロアープレート
11 ロアーU型ブラケット
12 ガイド
13 ベアリング
13a ベアリング基部
13b ベアリングボール
14 ロアー台座
15 アッパープレート
16 アッパーU型ブラケット
17 スライド用レール
18 アッパー台座
19 空洞部
20 脱着ブロックに形成された孔
21 脱着ブロックに形成された孔
22 アッパーU型ブラケットに形成された孔
23 ロアーU型ブラケットに形成された孔

Claims (4)

  1. 車両用の荷室が固定されるアッパープレートと、
    該アッパープレートの下面に、車幅方向の左右に位置して取り付けられ、車幅方向外方が開口したU字状のアッパーU型ブラケットと、
    車両の荷台またはフレームに固定されるロアープレートと、
    該ロアープレートの上面に、このロアープレートに前記アッパープレートを重ねたとき前記アッパーU型ブラケットと符合する位置に取り付けられ、車幅方向外方が開口したU字状のロアーU型ブラケットと、
    前記アッパープレートを車両の側方から前記ロアープレートに重ねるように載置する際、前記アッパープレートを車幅方向に案内するガイドと、
    前記ロアープレートに前記アッパープレートを重ねたとき、前記ロアーU型ブラケット及びそれに重なった前記アッパーU型ブラケットによって形成される空洞部に、車幅方向外方から差し込まれる脱着ブロックと、
    該脱着ブロックと前記アッパーU型ブラケットとを串刺しするように、前記脱着ブロックに形成された孔と前記アッパーU型ブラケットに形成された孔に挿抜自在に差し込まれたアッパー固定ピンと、
    前記脱着ブロックと前記ロアーU型ブラケットとを串刺しするように、前記脱着ブロックに形成された孔と前記ロアーU型ブラケットに形成された孔に挿抜自在に差し込まれたロアー固定ピンと、を備えたことを特徴とする車両用荷室のスライド着脱構造。
  2. 前記ロアープレートの上面に、車幅方向に沿って設けられたベアリングと、
    前記ロアープレートに前記アッパープレートが重ねられたとき、前記アッパープレートの下面に、前記ベアリングの位置に合わせて車幅方向に沿って設けられたスライド用レールと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両用荷室のスライド着脱構造。
  3. 前記ベアリングが、
    前記ロアープレートの上面に車幅方向に沿って設けられたベアリング基部と、
    該ベアリング基部に車幅方向に間隔を隔てて複数配設されたベアリングボールと、
    該ベアリング基部にエア圧が供給されたとき前記ベアリングボールが前記ベアリング基部の頂面からリフトし、エア圧が供給されないとき前記ベアリングボールが前記ベアリング基部の頂面の下方にダウンするエアリフト機構と、を備えている、ことを特徴とする請求項2に記載の車両用荷室のスライド着脱構造。
  4. 前記ロアープレートの上面に、車幅方向および車長方向に間隔を隔てて複数取り付けられたロアー台座と、
    前記ロアープレートに前記アッパープレートが重ねられたとき、前記アッパープレートの下面に、前記ロアー台座の位置に合わせて複数取り付けられたアッパー台座と、を備えたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の車両用荷室のスライド着脱構造。
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