JP7188822B2 - ジルコニア微粒子材料、ガス処理用触媒及びその製造方法 - Google Patents

ジルコニア微粒子材料、ガス処理用触媒及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、触媒担体等に利用されるジルコニア微粒子材料及びその製造方法に関する。
従来、ジルコニウム酸化物(以下、「ジルコニア」と言うこともある)及びその粉末は、高強度材料、電子素子、燃料電池材料、機能性セラミックス、触媒材料等の分野で使用されている。最近は、自動車排ガス浄化触媒等のガス処理用触媒の担体としての利用が重要となっており、微粒化された純粋なジルコニア材料等が必要となっている。
ジルコニアの製造方法としては、純度、粒径の微細化及び均一化、さらには量産性の点から、主として沈殿法が広く用いられている。また、ジルコニアはそのままでは相転移を起こすことから希土類元素を添加した状態で利用されていることが多い。さらには、特に近年の極微粒化の要請もあり、ジルコニア微粒子として安定化されて且つナノ粒子状態であることは困難であることから開発が行われており、以下に述べるような種々の手法が提案されている。
特許文献1には、ジルコニウム塩とイットリウム塩等とを加水分解した後にろ過膜を通過させて高純度のジルコニア系コロイドゾルを製造する方法が開示されている。
特許文献2には、ジルコニウム塩とカルシウム塩等の塩基とを加熱熟成することにより、正方晶または立方晶のジルコニアゾルの製造方法が開示されている。
特許文献3には、アルカリ土類金属酸化物をジルコニアに固溶してなるナノ粒子を、原料塩混合物水溶液のpHを7以上として沈殿物を生成させ、400℃以上に加熱し、前記アルカリ土類金属酸化物ドープジルコニア正方晶ナノ粒子を製造する方法が開示されている。
特許文献4には、Sc、Y及びYbのいずれかを添加し、平均粒子径が10nm以下の安定化ジルコニア微粒子であって、安定化ジルコニアの結晶相が正方晶である微粒子を、亜臨界ないし超臨界状態の水を媒体として生成する製造方法が開示されている。
これらの方法及びジルコニア微粒子では、正方晶とするために他の元素添加が共通に利用されており、他の元素を添加しない単結晶状のジルコニアナノ粒子(以下、「無添加ジルコニアナノ粒子」と言うこともある)は得られていない。ところで、無添加ジルコニアナノ粒子は、900℃以下で単斜晶が安定であり、このような無添加ジルコニアナノ粒子を得る方法としては、以下に示すようないくつかの手法が開発されている。
特許文献5には、溶媒の中に一次粒子の平均粒径が1nm~30nmの無機微粒子が凝集した状態で存在し、金属アルコキシドを含む混合溶液を、分散装置の分散容器に供給し、前記分散容器で15μm~30μmのビーズを用いて攪拌すると同時に超音波を前記分散容器に印加して、前記無機微粒子を分散処理することを特徴とする無機微粒子分散溶液の製造方法が開示されている。
特許文献6には、表面修飾した単斜晶ジルコニア粒子が開示され、250~400℃での水熱条件により製造できる技術が開発されている。実施例によれば正方晶ジルコニアになる場合には粒子径が著しく増加してナノ粒子状態を保持せず利用に適さないとされている。
特許文献7には、金属塩水和物と酸と溶媒とを含む原料液を、加圧下、前記溶媒が分解して生成するヒドロキシル基を含む化合物の臨界温度以下で加熱する工程を含むジルコニアナノ粒子の製造方法が開示されており、その結晶相はXRD図形から単斜晶であった。
これらの技術によれば、ナノ粒子の状態で単斜晶ジルコニアは比較的得られやすいが、正方晶ジルコニアは得られにくいことがわかる。正方晶ジルコニアについては以下のような技術が開発されている。
特許文献8には、ジルコニア粒子と分散媒とを含有してなるジルコニア透明分散液であって、ジルコニア粒子は分散粒径が1nm~20nmの正方晶ジルコニア粒子であることを特徴とするジルコニア透明分散液、及び該正方晶ジルコニア粒子を樹脂中に分散してなることを特徴とする透明複合体を開示している。透明分散液の製造方法については実施例でしか開示がなく、オキシ塩化ジルコニウム塩溶液にアンモニア水を攪拌しながら加えスラリーを調整し、硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加えたのち、混合物を、乾燥器を用いて、大気中130℃で乾燥させ、固形物を得て、次いで、この固形物を自動乳鉢等により粉砕した後、電気炉を用いて大気中500℃にて1時間焼成し、この焼成物を純水中に投入し攪拌してスラリー状とした後、遠心分離器を用いて洗浄を行い、添加した硫酸ナトリウムを十分に除去した後、乾燥させ、ジルコニア粒子を作製し、次いで、このジルコニア粒子に、トルエン、市販の分散剤を加え分散処理を行い、ジルコニア透明分散液を作製している。
特許文献9には、2種以上の被覆剤により被覆された正方晶の酸化ジルコニウムを含む酸化ジルコニウムナノ粒子とその酸化ジルコニウムナノ粒子を含有する塗料組成物等を開示している。例えば、酸化ジルコニウムの製造法では、少なくとも酸化ジルコニウム前駆体と特定の被覆剤から被覆剤-ジルコニウム複合体をあらかじめ調製することで、1MPaG未満という比較的温和な条件の水熱反応で酸化ジルコニウムナノ粒子を合成できることが開示されている。
特公平3-55413号公報 特公平4-72768号公報 特許第5760301号 特許第5467255号 特許第5679640号 特許第5445140号 特開2017-165616号公報 特許第5011695号 特許第5030694号
上記の特許文献からジルコニアに要求される特性である微結晶の状態、均一性等を保持する材料やその製造方法を目指した幾多の技術が記載されている。しかし、開発の成果が開示されているにもかかわらず、微粒子が、他の金属元素酸化物を固溶せずに、正方晶ジルコニア単結晶であり、さらにはそれ自体が独立した粒子の形態を確実に示しているナノ材料とコロイド液の作製については依然困難がある。すなわち、他の元素が無添加で、ジルコニア単独で結晶系が正方晶である単結晶状のジルコニアナノ粒子を得る方法は以下のように難点があるためその利用は促進されていない。
正方晶の無添加ジルコニアが得られること自体は知られており、ジルコニアは低温で単斜晶、温度の上昇とともに正方晶又は立方晶に相変態する。そのため、正方晶は、1200℃付近では安定である。一方、正方晶は準安定相として沈殿法等による微粒子の凝集体としてその凝集が強い場合に拘束され生成するとされ、加熱等による粒子の粗大化とともに安定な単斜晶に変態することが報告されている。また、ゾルゲル法等の微粒子合成時の固化体内にナノ粒子が拘束されたり、結晶化時に強く凝集した多結晶粒子として、さらにはそれらの低温で焼成した塊状物に存在する。すなわち、単独のナノ粒子の結晶として正方晶ジルコニアは生成しがたいと考えらえる。
例えば、特許文献8では、この生成の困難に対するため複雑で多段階の処理工程を必要とする製造法を開示している。その中に、添加剤除去のためにやむをえず500℃の焼成工程があるが、これによって焼結現象が起こり、すべてのジルコニアがナノ粒子状態で得られにくいことが考えられる。実施例では7nmの分散粒径が得られたとされているが、記載と同様にして作製したナノ粒子の焼成後粉末を市販分散剤とともに溶媒に混合する処理によっては、一部の粒子しか溶媒内に分散せずに多くが凝集したままとなりジルコニアナノ粒子を得る収率は低い。さらには、それらの粒子が単結晶状であるかについては、焼成時の凝集のため単結晶を維持することが困難であることが容易に推定される。
特許文献9には、水熱法を用いた方法が開示されている。しかしながらその処理温度は180℃以下とされているものの、実施例では180℃まで加熱されているように、高温加熱を必要としている。また、ジルコニア粒子の沈殿物除去のため、濾過で粗大粒子を除去する工程を有しているため、このような微粒子の選別に多大な時間と設備を要する。
すなわち、正方晶ジルコニアナノ粒子は、単斜晶ジルコニアナノ粒子よりもナノ粒子の生成が困難であるため、その製造には多段、複雑な工程を要しており、広い応用に向けた素材となっていない問題があった。
一方、背景技術で示したようなナノレベルの大きさの微粒子については、非常に小さいため、その形態に関する知見が不明である。最近の研究では、特異形態がもたらす効果が注目されており、ロッドやナノシート等の形態、花弁状等の複雑な形状等の生成に関心が払われている。しかしながら、上記のような開発においては、複雑で特異な形状は開発されておらず、微粒子の触媒や吸着剤、また担体としての利用には限界があった。
微粒子がもつ形態の制御する技術には依然困難がある。すなわち、ジルコニア単独で複雑形状、シート状等である形態、状態のジルコニアナノ粒子及びその製造法は、これまで知られていないため、ジルコニアの有効性の範囲が限られ、ナノ粒子の利用は促進されていない。
単斜晶の無添加ジルコニアが得られること自体は知られており、ジルコニアは低温で単斜晶、温度の上昇とともに正方晶又は立方晶に相変態する。沈殿法等による微粒子の凝集体としてその凝集が強い場合に加熱等による粒子の粗大化とともに塊状の粒子に変化する。薄膜の形成に適するとされるゾルゲル法等合成時でも、前駆体の結晶化をともなう熱変化が必要なため、3nm以下の厚みのナノ粒子を形成、維持することは困難であり、多くは結晶化時に強く凝集した多結晶粒子として塊状物となる。すなわち、単独のナノ粒子の結晶として複雑形状あるいはナノシート状のジルコニアは生成しがたく、いまだにそのような例を見ない。
純粋な正方晶ジルコニア単結晶微粒子やその分散液は、ガス処理に有効な触媒担体やセラミックス前駆体として有用であるにもかかわらず、ナノレベルの単結晶状粒子として得られにくいため、これらの応用に関する正方晶ジルコニアの利用を妨げられていた。単分散で単結晶のナノサイズの正方晶ジルコニア粒子は、デバイス用に配列可能な原料として、また、ネックでのロスがなくすべてが表面として露出している吸着材や触媒材料として、さらに成形体の充填剤としてなど、広い範囲で応用可能な素材として期待される。一方、純粋なジルコニア微粒子及びその分散液は、ガス処理に有効な触媒担体やセラミックス前駆体として有用であるにもかかわらず、ナノレベルの粒子として得られにくい。さらには、1つの粒子が複雑形状を有する場合には、活性部位が特異的に現れ、さらにはナノシート形状となるとそれ自体が異方性による特異性をもつことが予想される。さらには、基板上にナノシートを設置すれば極薄膜材の利用が広がる。このような特異な形状を有するジルコニア粒子を製造することができれば、デバイス用に配列可能な原料として応用可能な素材として期待される。
また、一般の従来の技術では強く凝集した状態として得られたので、その表面の性質を十全には利用できない材料となっていた。特に高活性をもたらそうとする触媒材料の開発ではその効果が粒子表面すべてにわたっては元来期待できなかった。また、その改善のための技術にあっても、上記のようにナノ粒子状態を得るのに複雑で多段の工程を有し、さ らにはそのナノ粒子が単結晶状である状態と確定する技術はこれまで知られていない。また、特異表面として露出している吸着材や触媒材料として、さらに成形体の充填剤として等、広い範囲があるにもかかわらず、その状態を確定する技術はこれまで知られていない。
本発明は、このような単結晶状の正方晶の無添加ジルコニアナノ粒子、およびその簡便な製造方法、その触媒材としての利用法を提供することを課題とする。本発明は、さらに、単独のナノ粒子の結晶として複雑形状あるいはナノシート状のジルコニア微粒子、及びその簡便な製造方法、その触媒材としての利用法を提供することも課題とする。
本発明者は、鋭意努力した結果、含有する単斜晶ジルコニア結晶相の割合が10%以下であり、平均粒子径が20nm以下であり、単結晶の割合が90%以上であるジルコニア微粒子材料を得ることに成功した。このジルコニア微粒子材料は、例えば、ジルコニウム塩を含む水溶液を中和して沈殿物を得てさらに温和な条件で水熱反応を行う簡略な処理をほどこすことにより、正方晶ジルコニアが単結晶状ナノ粒子として得られ、さらには性能に優れた高い触媒用担体としても利用できる技術を開発し、上記課題が解決しうることを見出した。一方、本発明者は、全結晶相を100%として含有する正方晶の割合が20%以下であり、粒径が5~30nmの粒子の割合が60%以上である、単斜晶ジルコニア微粒子材料を得ることに成功した。このジルコニア微粒子材料は、例えば、ジルコニウム塩を含む水溶液を中和して沈殿物を得てさらに温和な条件で水熱反応を行う簡略な処理をほどこすことにより、単斜晶ジルコニアが特異形状のナノ粒子として得られ、さらには性能に優れた高い触媒用担体としても利用できる技術を開発し、上記課題が解決しうることを見出した。すなわち、本発明によれば、以下のジルコニア微粒子材料、ガス処理用触媒、水溶液若しくはコロイド溶液及びこれらの製造方法を包含する。
項1.ジルコニア微粒子材料であって、以下の(1)又は(2):
(1)全結晶相を100%として含有する単斜晶の割合が10%以下であり、
平均粒子径が20nm以下であり、且つ、
全結晶を100%として含有する単結晶の割合が90%以上である正方晶ジルコニア微粒子材料であるか、又は
(2)全結晶相を100%として含有する正方晶の割合が20%以下であり、
平均粒子径が5~30nmである単斜晶ジルコニア微粒子材料である、
のいずれかを満たす、ジルコニア微粒子材料。
項2.前記(1)を満たす、項1に記載のジルコニア微粒子材料。
項3.全結晶相を100%として含有する単斜晶の割合が5%以下である、項2に記載のジルコニア微粒子材料。
項4.平均粒子径が0.1~10nmである、項2又は3に記載のジルコニア微粒子材料。
項5.平均粒子径が0.2~5nmである、項2~4のいずれか1項に記載のジルコニア微粒子材料。
項6.含有する単結晶の割合が95%以上である、項2~5のいずれか1項に記載のジルコニア微粒子材料。
項7.前記(2)を満たす、項1に記載のジルコニア微粒子材料。
項8.全粒子数を100%として、厚みが3nm以下であるシート状材料の割合が50%以上である、項7に記載のジルコニア微粒子材料。
項9.全粒子数を100%として、不定形な形状を有する粒子の割合が60%以上である、項7又は8に記載の単斜晶ジルコニア微粒子材料。
項10.全粒子数を100%として、不規則な方向に複数の突起が伸びる形状を有する粒子の割合が50%以上である、項7~9のいずれか1項に記載のジルコニア微粒子材料。
項11.項1~10のいずれか1項に記載のジルコニア微粒子材料を含むガス処理用触媒。
項12.前記ジルコニア微粒子材料にPt、Pd、Rh、Au、Cu、Fe、Ni、Ag及びCeから選択された金属、前記金属を含む合金、並びに前記金属の酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の微粒子を担持する、項11に記載のガス処理用触媒。
項13.項1~10のいずれか1項に記載の正方晶ジルコニア微粒子材料、又は項11若しくは12に記載のガス処理用触媒を含有する、水溶液又はコロイド溶液。
項14.項7~10のいずれか1項に記載のジルコニア微粒子材料、又は項11若しくは12に記載のガス処理用触媒を含有する、ジルコニアナノシート材料。
項15.項2~6のいずれか1項に記載のジルコニア微粒子材料、項11若しくは12に記載のガス処理用触媒、又は項13に記載の水溶液又はコロイド溶液の製造方法であって、
水溶性ジルコニウム塩及び水溶性界面活性剤を含む水溶液をアルカリ性として沈殿物含有水溶液を得る第1工程と、
前記沈殿物含有水溶液を90℃~170℃で加熱する第2工程と、
を備える、製造方法。
項16.前記第2工程における加熱保持時間が10分以上24時間以下である、項15に記載の製造方法。
項17.項7~10のいずれか1項に記載の単斜晶ジルコニア微粒子材料、項11若しくは12に記載のガス処理用触媒、項13に記載の水溶液若しくはコロイド溶液、又は項14に記載のジルコニアナノシート材料の製造方法であって、
水溶性ジルコニウム塩及び水溶性界面活性剤を含む水溶液をアルカリ性として沈殿物含有水溶液を得る第1工程と、
前記沈殿物含有水溶液を180℃~600℃で12時間以上加熱する第2工程と、
を備える、製造方法。
項18.前記第2工程の後、
該水溶液内の固形分を分離後、有機溶媒に分散させることで前記コロイド溶液を得る第3工程
を備える、項15~17のいずれか1項に記載の製造方法。
項19.前記第2工程又は第3工程の後、溶液の溶媒を除去することで前記ジルコニア微粒子材料又は前記ガス処理用触媒を得る、項15~18のいずれか1項に記載の製造方法。
項20.前記第2工程又は第3工程の後、溶液を基板上に添加又は溶液内に基板を浸漬し取り出すことで前記ジルコニアナノシート材料を得る、項15~18のいずれか1項に記載の製造方法。
本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料は、単結晶状の正方晶の無添加ジルコニアナノ粒子であり、特に高活性をもたらそうとする触媒材料の開発、ガス処理に有効な触媒担体やセラミックス原料として有用であり、正方晶ナノ粒子ジルコニアの応用に関する範囲を大幅に広げることができる。また、本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料は、全結晶相を100%として含有する正方晶の割合が20%以下であり、粒径が5~30nmの粒子の割合が60%以上である。この本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料は、厚みが3nm以下のシート状材料とすることも、不定形な形状を有する粒子とすることも可能である。この単斜晶ジルコニア微粒子材料は、特に高活性をもたらそうとする触媒材料の開発、ガス処理に有効な触媒担体やセラミックス原料として有用であり、特異形態のナノ粒子ジルコニアの応用に関する範囲を大幅に広げることができる。
本発明(実施例1)の正方晶ジルコニア微粒子材料(100℃)の固体状態における透過電子顕微鏡像である。 本発明(実施例1)の正方晶ジルコニア微粒子材料(100℃)の固体状態における粒径分布である。 本発明(実施例4)の正方晶ジルコニア微粒子材料(160℃)の固体状態における透過電子顕微鏡像である。 本発明(実施例4)の正方晶ジルコニア微粒子材料(160℃)の固体状態における粒径分布である。 実施例1~4及び比較例1のジルコニア微粒子材料のX線回折図形である。 実施例1~4及び比較例1のジルコニア微粒子材料(600℃焼成後)のX線回折図形である。 本発明(実施例12及び13)の単斜晶ジルコニア微粒子材料(200℃)のX線回折図形である。 本発明(実施例13)の単斜晶ジルコニア微粒子材料(200℃48時間)の固体状態における透過電子顕微鏡像である。 本発明(実施例13)の単斜晶ジルコニア微粒子材料(200℃48時間)の固体状態における粒径分布である 本発明(実施例14)のジルコニアナノ粒子材料(200℃48時間)のSi単結晶板上に担持した後の固体状態における原子間力顕微鏡像と高さ計測結果である。
本明細書において、「含有」は、「含む(comprise)」、「実質的にのみからなる(consist essentially of)」、及び「のみからなる(consist of)」のいずれも包含する概念である。また、本明細書において、数値範囲を「A~B」で示す場合、A以上B以下を意味する。
本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
本発明のジルコニア微粒子材料は、以下の(1)又は(2):
(1)全結晶相を100%として含有する単斜晶の割合が10%以下であり、
平均粒子径が20nm以下であり、且つ、
全結晶を100%として含有する単結晶の割合が90%以上である正方晶ジルコニア微粒子材料であるか、又は
(2)全結晶相を100%として含有する正方晶の割合が20%以下であり、
平均粒子径が5~30nmである単斜晶ジルコニア微粒子材料である、
のいずれかを満たす。
1.正方晶ジルコニア微粒子材料、並びにその水溶液及びコロイド溶液
本発明は、第一に、正方晶ジルコニア微粒子材料であって、全結晶相を100%として含有する単斜晶の割合が10%以下であり、平均粒子径が20nm以下であり、全結晶を100%として単結晶の割合が90%以上である、正方晶ジルコニア微粒子材料である。
本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料は、他の元素(ジルコニウム及び酸素以外の元素)を積極的に添加しない状態で正方晶をもつジルコニア微粒子とすることができる。本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料で正方晶ならびに正方晶内に原子の変位を異なる状態を持つ結晶や、さらには欠陥を有しその欠陥は無秩序あるいは秩序をもって分布するかは問わない。本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料は、平均粒子径が20nm以下という特に小さい結晶であるため、いわゆる従来の大型単結晶や焼成したセラミックスでの温度と相の関係が成立しないことが予想される。
なお、ジルコニア(ZrO)には次のような構造相転移があることが知られている。すなわち、室温で安定な単斜晶から約1170℃で正方晶に、さらには約2200℃で立方晶に変化する。また、室温で準安定相として正方晶があるときには、応力等で誘起された無拡散型の相転移により単斜晶に変化するとされている。これまでに室温付近で比較的な純粋なZrOで立方晶が生成したという例はないと考えられる。X線回折(XRD)で十分な解析を行わず、見掛けの回折線パターンのみで立方晶として説明されている場合であっても、ラマン分光法によらなければ正方晶と立方晶の区別がつかず、さらには、XRDでの判別が困難であることに配慮しない誤った研究報告がみられ、査読付き研究論文に記載があるとの理由で先行例があるとする判断にはしばしば注意を要するものである。本来、正方晶と立方晶の区別は、その構造上のc軸、a軸方向の単位胞の(001)面間隔(c)、(100)面間隔(a)から、c/aが1のとき立方晶、1より大きいとき正方晶とするのが正確な表現となる。また、酸素の変位のみを考慮する正方晶も考えらえる。しかし、各回折線が幅広でその回折角度(面間隔)の測定誤差が、c/a比の相による違いの値を超える場合には、このような測定法が適応できない。本発明では、その粒径が従来知られていない程度にきわめて小さい材料となっており、c/aの測定がさらに困難であったのが実情である。一方、単斜晶との区別は比較的容易であり、その残部がブロードな立方晶又は正方晶類似の回折線を示すと判断されることから、単斜晶量が少ないことをもって準安定な正方晶の存在量とすることができる。したがって、本発明での正方晶との記述において立方晶の混在を拒むものではない。しかしながら、2200℃以上という極めて高温で安定な相が、室温付近及び本発明で説明される温和な条件で存在するとは推察できない。すでに知られている室温付近及び温和な条件での正方晶と単斜晶の混在の事実をもって、すなわち技術的には既知の知識の援用により、本発明においては、単斜晶の残部を正方晶として記載している。
本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料は、全結晶相を100%として単斜晶の存在割合が10%以下(0~10%)、好ましくは5%以下(0~5%)である。単斜晶の存在割合が10%をこえると十分な触媒活性が得られない。このため、本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料において、正方晶の存在割合は、全結晶相を100%として90%以上(90~100%)が好ましく、95%以上(95~100%)がより好ましい。単斜晶の存在割合が10%以下であることは、該正方晶ジルコニア微粒子材料のなかで,室温付近で安定な構造の相が非常に少ない材料であることを指している。異なる結晶相(特に正方晶)のジルコニアが共存することはX線回折図形において説明される。具体的には、X線回折図形において明確に示されるピークから検出される結晶相のうち、単斜晶の存在割合は10%以下(特に5%以下)が好ましく、正方晶の存在割合は90%以上(特に95%以上)が好ましい。
本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料は、平均粒子径が20nm以下、好ましくは0.1~10nm、より好ましくは0.2~5nmである。平均粒子径が20nmをこえると、十分に微細化することができず十分な触媒活性が得られない。また、同様に、本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料は、粒子径が10nm以下の存在割合が90%以上(90~100%)であることが好ましく、粒子径が5nm以下の存在割合が95%以上(95~100%)であることが好ましい。本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料は、全結晶を100%として含有する単結晶の割合が90%以上(90~100%)、好ましくは95%以上(95~100%)である。単結晶の割合が90%未満では、単結晶の割合が少なく十分な触媒活性が得られない。また、平均粒子径が20nm以下であり、単結晶の存在割合が90%以上である微粒子材料であることは、固体状態においては、透過型電子顕微鏡法によって粒子の大きさを調べることによって直接的に判別する。粒子は1つ1つが独立した状態で存在して、その粒径を計測すれば、単結晶であることを判別することができる。場合により、X線回折で測定される結晶子径が参照されるが、電子顕微鏡法での粒子が独立した大きさにおいて結晶子径と一致するようであれば、これらの独立粒子が単結晶であると認識してよい。さらに、溶液中のコロイドにあっては、マルバーン製ゼータサイザーナノSを用いた動的光散乱法により、その分散状態を判別し、平均粒子径を算出する。なお、本発明において、平均粒子径とは、固体状態においては電子顕微鏡像において、imageJを用いて個々の粒子の円相当径から算出した面積長さ平均径を意味し、溶液中のコロイドにあっては動的光散乱法により算出する拡散係数相当径であり、散乱光強度基準により測定される平均粒子径を意味する。なお、粒子形状は電子顕微鏡によってのみ明らかに観察され、平均粒子径の測定方法による多少の違いはやむを得ない。
本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料は、後述の製造方法であれば、別の元素(ジルコニウム及び酸素以外の元素)を含まない状態で得ることができる。つまり、本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料は、他の元素を含まない無添加ジルコニアナノ粒子とすることもできる。
一方、本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料には、不純物元素を含むこともできる。具体的には、本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料があらかじめジルコニア以外の金属、例えば白金、ロジウム、パラジウム、金、銀等の貴金属;Cu、Fe、Ni等の遷移金属;希土類元素;アルカリ土類金属等の1種又は2種以上の金属を含んでいてもよい。希土類金属としては、イットリウム、スカンジウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等が挙げられる。なかでも、触媒活性の観点からは、貴金属や、遷移金属、さらにはランタン(La)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、イットリウム(Y)等を単独もしくは混合状態で、ジルコニア粒子と共存して含むことがより好ましい。これらは、混合状態であって結晶相に影響するいわゆる固溶状態ではないことが好ましいが、固溶が少ない場合には性能上で問題はない。このような不純物元素を含む場合、その含有量は、本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料の総量を100質量%として、2質量%以下が好ましい。
上記した本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料の形態は特に制限はなく、粉末状態でもよいが、水溶液又はコロイド溶液とすることもできる。具体的には、後述の製造方法において、水熱反応直後は水溶液として得ることができ、その後有機溶媒に分散させた場合にはコロイド溶液として得ることができる。
コロイド溶液を採用する場合に使用できる有機溶媒は、非極性溶媒が好ましく、トルエン、ベンゼン、石油エーテル、シクロヘキサン、ヘプタン、ドデカン、シクロヘキセン、メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)、エチルベンゼン、ジュレン(1,2,4,5-テトラメチルベンゼン)、ジエチルエーテル等が挙げられる。また、テトラクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等も使用することができる。また、極性溶媒を使用こともでき、プロパノール、エタノール等アルコール類、アセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランやジメチルホルムアミド等を使用してもよい。
上記した本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料を水溶液又はコロイド溶液とする場合、本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料の濃度は特に制限されず、例えば、0.0001~40質量%、特に0.01~10質量%とすることができる。
2.単斜晶ジルコニア微粒子材料、並びにその水溶液、コロイド溶液及びジルコニアナノシート材料
本発明は、第二に、単斜晶ジルコニア微粒子材料であって、全結晶相を100%として含有する正方晶の割合が20%以下であり、平均粒子径が5~30nmである、単斜晶ジルコニア微粒子材料である。
本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料は、他の元素(ジルコニウム及び酸素以外の元素)を積極的に添加しない状態で単斜晶をもつジルコニア微粒子とすることができ、シート形状を有することも特異形状を有することもできる。
本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料は、全結晶相を100%として正方晶の存在割合が20%以下(0~20%)、好ましくは10%以下(0~10%)である。正方晶の存在割合が20%をこえると、触媒担体として高活性が期待されるシート形状や特異形状を有するジルコニア微粒子を得ることができない。このため、本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料において、単斜晶の存在割合は、全結晶相を100%として80%以上(80~100%)が好ましく、90%以上(90~100%)がより好ましい。正方晶の存在割合が20%以下であることは、該単斜晶ジルコニア微粒子材料のなかで,室温付近で安定な構造の相が多い材料であることを指している。異なる結晶相(特に正方晶)のジルコニアが共存することはX線回折図形において説明される。具体的には、X線回折図形において明確に示されるピークから検出される結晶相のうち、正方晶の存在割合は20%以下(特に10%以下)が好ましく、単斜晶の存在割合は80%以上(特に90%以上)が好ましい。
本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料は、平均粒子径が5~30nm、好ましくは10~25nmである。平均粒子径が30nmをこえると、十分に微細化することができず十分な触媒活性が得られない。また、平均粒子径が5nm未満の単斜晶ジルコニア微粒子材料を得ることは困難である。また、平均粒子径が5~30nmであることは、固体状態においては、透過型電子顕微鏡法によって粒子の大きさを調べることによって直接的に判別する。粒子は1つ1つが独立した状態で存在して、その粒径を計測すれば判別することができる。場合により、X線回折で測定される結晶子径が参照されるが、電子顕微鏡法での粒子が独立した大きさにおいて結晶子径と一致するようであれば、これらの独立粒子が単結晶であると認識してよい。さらに、溶液中のコロイドにあっては、マルバーン製ゼータサイザーナノSを用いた動的光散乱法により、その分散状態を判別し、平均粒子径を算出する。本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料は、平均粒子径が5~30nmという特に小さい結晶であるため、いわゆる従来の大型単結晶や焼成したセラミックスでの温度と相の関係が成立しないことが予想される。なお、本発明において、平均粒子径とは、固体状態においては電子顕微鏡像において、imageJを用いて個々の粒子の円相当径から算出した面積長さ平均径を意味し、溶液中のコロイドにあっては動的光散乱法により算出する拡散係数相当径であり、散乱光強度基準により測定される平均粒子径を意味する。なお、粒子形状は電子顕微鏡によってのみ明らかに観察され、平均粒子径の測定方法による多少の違いはやむを得ない。
本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料は、粒子径が5~30nmの存在割合は60%以上(60~100%)が好ましく、70%以上(70~100%)がより好ましい。粒子径が5~30nmの存在割合が60%以上とすることで、十分に微細化しやすく、十分な触媒活性が得られやすい。また、粒子径が5~30nmの存在割合が60%以上である微粒子材料であることは、透過型電子顕微鏡法によって粒子の大きさを調べることによって直接的に判別する。粒子は1つ1つが独立した状態で存在して、その粒径を計測すれば判別することができる。場合により、X線回折で測定される結晶子径が参照されるが、電子顕微鏡法での粒子が独立した大きさにおいて結晶子径と一致するようであれば、これらの独立粒子が単結晶であると認識してよい。さらに、溶液中のコロイドにあっては、マルバーン製ゼータサイザーナノSを用いた動的光散乱法により、その分散状態を判別し、粒子径が5~30nmの存在割合が60%以上であることを確認する。
次に、本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料はシート類似形状とすることができ、厚みが3nm以下であるシート状材料の割合を50%以上(50~100%)とすることができ、厚みが2.5nm以下であるシート状材料の割合を70%以上(70~100%)とすることが好ましい。このような構成を採用する場合には、異方性による特異性を有し、極薄膜材としてのデバイス用に配列可能な原料として有用である。この本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料の厚みについては、原子間力顕微鏡によって評価する。
本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料は、一般に、不定形の形状を有する粒子の割合が60%以上(特に70%以上)であることが好ましい。すなわち、繊維状や、板状や、粒状の形状ではなく、不規則な形状を有する粒子の割合が50%以上(特に60%以上)であることが好ましい。具体的には、不規則な方向に複数の突起が延びる形状を有する粒子の割合が50%以上(特に60%以上)であることが好ましく、隣り合う突起の先端と単斜晶ジルコニア微粒子材料の中心を結ぶ直線がなす角度が180度未満である粒子の割合が50%以上(特に60%以上)であることが好ましい。なお、突起は、必ずしも1つの形状ではなく、2以上の形状であってもよい。また、突起は、必ずしも細長い形状である必要はない。より好ましくは、不規則な方向に複数の突起を分岐として、分岐数が3以上である粒子の割合が40%以上(特に45%以上)であることが好ましい。すなわち、アメーバ状の形状や、ジグソーパズルのピースのような形状を有しているものであることが好ましい。
本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料は、後述の製造方法であれば、別の元素(ジルコニウム及び酸素以外の元素)を含まない状態で得ることができる。つまり、本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料は、他の元素を含まない無添加ジルコニアナノ粒子とすることもできる。
一方、本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料には、不純物元素を含むこともできる。具体的には、本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料があらかじめジルコニア以外の金属、例えば白金、ロジウム、パラジウム、金、銀等の貴金属;Cu、Fe、Ni等の遷移金属;希土類元素;アルカリ土類金属等の1種又は2種以上の金属を含んでいてもよい。希土類金属としては、イットリウム、スカンジウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム等が挙げられる。なかでも、触媒活性の観点からは、貴金属や、遷移金属、さらにはランタン(La)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、イットリウム(Y)等を単独もしくは混合状態で、ジルコニア粒子と共存して含むことがより好ましい。これらは、混合状態であって結晶相に影響するいわゆる固溶状態ではないことが好ましいが、固溶が少ない場合には性能上で問題はない。このような不純物元素を含む場合、その含有量は、本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料の総量を100質量%として、2質量%以下が好ましい。
上記した本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料の形態は特に制限はなく、粉末状態でもよいが、水溶液又はコロイド溶液とすることもできる。具体的には、後述の製造方法において、水熱反応直後は水溶液として得ることができ、その後有機溶媒に分散させた場合にはコロイド溶液として得ることができる。
コロイド溶液を採用する場合に使用できる有機溶媒は、非極性溶媒が好ましく、トルエン、ベンゼン、石油エーテル、シクロヘキサン、ヘプタン、ドデカン、シクロヘキセン、メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)、エチルベンゼン、ジュレン(1,2,4,5-テトラメチルベンゼン)、ジエチルエーテル等が挙げられる。また、テトラクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等も使用することができる。また、極性溶媒を使用こともでき、プロパノール、エタノール等アルコール類、アセトン等のケトン類、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランやジメチルホルムアミド等を使用してもよい。
上記した本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料を水溶液又はコロイド溶液とする場合、本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料の濃度は特に制限されず、例えば、0.0001~40質量%、特に0.01~10質量%とすることができる。
また、上記した本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料の水溶液又はコロイド溶液を基板上に添加もしくは溶液内に基板を浸漬し取り出すことによってジルコニアナノシート材料とすることもできる。本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料は上記のように、厚みが3nm以下であるシート状材料の割合を50%以上とすることができるため、全体として厚みの薄いナノシート材料とすることが可能である。この際、本発明のジルコニアナノシート材料の厚みは、0.5~50nm(±0.3nm)が好ましく、0.5~5nm(±0.3nm)がより好ましい。
3.ガス処理用触媒
本発明は、第三に、上記載の正方晶ジルコニア微粒子材料又は単斜晶ジルコニア微粒子材料を含むガス処理用触媒である。
ジルコニアの主要な用途として、触媒担体、特に自動車等排ガス浄化触媒材料があり、本発明のジルコニア微粒子材料を担体として含むガス処理用触媒が、とくにその有効性を発揮する。なお、本発明のジルコニア微粒子材料を使用する態様は、触媒担体として使用する場合に限定されない。例えば、公知の触媒担体(ジルコニア、希土類等が添加されたジルコニア、アルミナ、チタニア、セリア、ジルコニア含有セリア、セリア添加ジルコニア、セリアジルコニア固溶体等)を本発明のジルコニア微粒子材料で被覆することや付着させることもできる。この場合、本発明のジルコニア微粒子材料は、ガス処理用触媒の担体を被覆、付着するための添加剤又はコーティング剤として機能する。
本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料を使用する場合、正方晶ジルコニアは単斜晶ジルコニアに比べ結晶構造の特徴から原子レベルで平坦な表面構造を維持しやすく電子的相互作用がしやすく金属触媒に対して良好な担体として働く。一方、本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料を使用する場合、ジルコニアがナノ粒子で、複雑形状をもつ場合はその表面に特異的に活性な部位が発現し得る。また、ナノシート状粒子にあっては、その上に金属クラスター等の特に活性な材料を一様に担持でき、有効に利用できる担体となる。結晶構造の特徴から原子レベルで平坦な表面構造を維持しやすく電子的相互作用がしやすく金属触媒対して良好な担体として働く。さらには、単斜晶は安定な構造であり、各種の応用に対してもその経時的な変化をおこしにくい。
本発明のジルコニア微粒子材料を使用する場合、さらに、前記ジルコニア微粒子材料に対して、Pt、Pd、Rh、Au、Cu、Fe、Ni、Ag、Ce等の金属、これら金属を含む合金、これら金属の酸化物等の1種又は2種以上を担持するガス処理用触媒は、その金属状態維持に対して反応性の低いジルコニア質が有効に利用できる。特に自動車等排ガス浄化に多用されるジルコニア上担持ロジウム金属触媒による窒素酸化物浄化に関して高性能である。
4.製造方法(その1)
次に、本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料や本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料を含む水溶液又はコロイド溶液および微粒子の製造方法について説明する。本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料は、上述したように正方晶ジルコニア粒子であり、本発明の製造方法によれば、それらが有機物等と複合化され微粒子が分散しているコロイド溶液として得ることもできる。
このような本発明の製造方法は、水溶性ジルコニウム塩及び水溶性界面活性剤を含む水溶液をアルカリ性として沈殿物含有水溶液を得る第1工程と、前記沈殿物含有水溶液を90℃~170℃で加熱する第2工程とを備える。
水溶性ジルコニウム塩及び水溶性界面活性剤を含む水溶液をアルカリ性としてその沈殿物含有水溶液を得る第1工程において、その原料となるジルコニウム塩水溶液の作製方法そのものについては特に制限されることなく公知の方法を用いることができる。本発明で推奨する方法を述べれば、水溶性ジルコニウム塩と水溶性界面活性剤との混合水溶液を塩基で中和すると、沈殿したジルコニアが水中でゲル状とすることができる。
水溶性ジルコニウム塩としては、例えば、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム塩化物等を例示することができる。更に本発明でアルカリ性とするために用い得る塩基としては、例えば、アンモニア、尿素、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を例示することができる。このようなジルコニアゲルの作製方法は知られており、中和して沈殿が生成するときにジルコニウムが共存していれば塩基にジルコニウム塩水溶液を加えても、またジルコニウム塩水溶液に塩基を加えてもよい。また、中和時の温度や中和時の混合時間、添加速度を変更することでその性状を変化させることもできるが、いずれの場合でも本発明に使用できる。例えば、添加する塩基の量は水溶性ジルコニム1モルに対して1~100モルとすることができ、中和時の温度は0~99℃とすることができ、中和時の混合時間は1分~100時間とすることができ、添加速度は0.001~100mL/秒とすることができる。
前記ジルコニウム塩を含む水溶液と塩基とを混合する前に、前記ジルコニウム塩と水溶性有機剤とを混合することが好ましく、水溶性有機剤としていわゆる界面活性剤を利用することが好ましい。界面活性剤としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、ルウリン酸等の不飽和脂肪酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩);その他のカルボン酸として、飽和脂肪酸、メチルタウリン酸、スルホコハク酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩);アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩);αオレフィンスルホン酸(テトラデセンスルホン酸等)及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩);アルキル硫酸エステル酸、アルキルエーテル硫酸エステル塩、フェニルエーテル硫酸エステル塩、エーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、エーテルスルホン酸塩等が挙げられ、分子内に親水性と疎水性の官能基をもつ有機剤であれば広く利用できる。これらは、沈殿する無機成分に吸着している状態を具現すればよいため、ミセルを形成する必要はなく、臨界ミセル濃度等、有機剤の添加濃度の制限がない。正方晶ジルコニア微粒子材料、水溶液及びコロイド溶液の製造に使用するジルコニウムの含量を原子数であらわすとき添加する有機分子数との比が0.001から1000の広い範囲が適用可能である。
第2工程では、第1工程を経た沈殿物を含む水溶液を水熱条件に置くことに特徴を有するが90℃~170℃の条件で、特に100℃~160℃で、が好ましい。保持時間は特に制限されるわけではないが、10分以上が好ましく、1時間以上がより好ましく、6時間以上がさらに好ましい。また、保持時間は24時間以下が好ましい。容器は自然的に発生する圧力と温度に耐える状態の材質と形状が好ましいが、容器の耐久性の観点からテフロン(登録商標)等の耐腐食性材を内容器に用いることが適当である。この第2工程を経ることで、上記した本発明の水溶液を得ることができる。
次に、第3工程として、第2工程で得られた水溶液内の固形分を分離後、有機溶媒に分散させることもできる。これにより、上記した本発明のコロイド溶液を得ることができる。第2工程で得られた水溶液内の固形分を分離する手法は特に制限しないが、遠心分離法後にろ過する方法、通常の室温から100℃程度で乾燥する操作、凍結して真空条件に置く操作、他の媒体と置換する操作等を行い固形物とすることができる。このときにいかなる態様でも見かけ上固形物となっていれば、個々のナノ粒子の独立した結晶の状態は保持される。
次に、該固形物を有機溶媒に分散させる。有機溶媒は、非極性溶媒が好ましく、トルエン、ベンゼン、石油エーテル、シクロヘキサン、ヘプタン、ドデカン、シクロヘキセン、メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)、エチルベンゼン、ジュレン(1,2,4,5-テトラメチルベンゼン)等が挙げられる。また、テトラクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等も使用することができる。
なお、前記第2工程以後の溶液(第2工程で得られた水溶液又は第3工程で得られたコロイド溶液)の溶媒を除去すれば本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料及びそれを用いたガス処理用触媒を製造できる。また、第3工程の後に、溶媒を除去すると、本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料の独立した結晶の状態は保持されジルコニア微粒子の製造法としてさらに好ましい。
5.製造方法
次に、本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料や本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料を含む水溶液又はコロイド溶液、本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料を含むナノシート材料、並びに本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料の製造方法について説明する。本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料は、上述したように単斜晶ジルコニア粒子であり、本発明の製造方法によれば、それらが有機物等と複合化され微粒子が分散しているコロイド溶液として得ることもできる。
このような本発明の製造方法は、水溶性ジルコニウム塩及び水溶性界面活性剤を含む水溶液をアルカリ性として沈殿物含有水溶液を得る第1工程と、前記沈殿物含有水溶液を180℃~600℃で12時間以上加熱する第2工程と、を備える。
水溶性ジルコニウム塩及び水溶性界面活性剤を含む水溶液をアルカリ性として沈殿物含有水溶液を得る第1工程において、その原料となるジルコニウム塩水溶液の作製方法そのものについては特に制限されることなく公知の方法を用いることができる。本発明で推奨する方法を述べれば、水溶性ジルコニウム塩と水溶性界面活性剤との混合水溶液を塩基で中和すると、ジルコニアが沈殿して水中でゲル状とすることができる。
水溶性ジルコニウム塩としては、例えば、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、硝酸酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウム塩化物等を例示することができる。更に本発明でアルカリ性とするために用い得る塩基としては、例えば、アンモニア、尿素、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を例示することができる。この共沈法によるジルコニアゲルの作製方法は知られており、中和して沈殿が生成するときにジルコニウムが共存していれば塩基にジルコニウム塩水溶液を加えても、またジルコニウム塩水溶液に塩基を加えてもよい。また、中和時の温度や中和時の混合時間、添加速度を変更することでその性状を変化させることもできるが、いずれの場合でも本発明に使用できる。例えば、添加する塩基の量は水溶性ジルコニム1モルに対して1~100モルとすることができ、中和時の温度は0~99℃とすることができ、中和時の混合時間は1分~100時間とすることができ、添加速度は0.001~100mL/秒とすることができる。
前記ジルコニウム塩を含む水溶液と塩基とを混合する前に、前記ジルコニウム塩と水溶性有機剤とを混合することが好ましく、水溶性有機剤としていわゆる界面活性剤を利用することが好ましい。界面活性剤としては、例えば、オレイン酸、リノール酸、ルウリン酸等の不飽和脂肪酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩);その他のカルボン酸として、飽和脂肪酸、メチルタウリン酸、スルホコハク酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩);アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩);αオレフィンスルホン酸(テトラデセンスルホン酸等)及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩);アルキル硫酸エステル酸、アルキルエーテル硫酸エステル塩、フェニルエーテル硫酸エステル塩、エーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、エーテルスルホン酸塩等が挙げられ、分子内に親水性と疎水性の官能基をもつ有機剤であれば広く利用できる。これらは、沈殿する無機成分に吸着している状態を具現すればよいため、ミセルを形成する必要はなく、臨界ミセル濃度など、有機剤の添加濃度の制限がない。単斜晶ジルコニア微粒子材料、水溶液、コロイド溶液及びナノシート材料の製造に使用するジルコニウムの含量を原子数であらわすとき添加する有機分子数との比が0.001から1000の広い範囲が適用可能である。
第2工程では、第1工程を経た沈殿物を含む水溶液を水熱条件に置くことに特徴を有するが180℃~600℃の条件、特に200℃~500℃が好ましい。保持時間は12時間以上であればよく、好ましくは18時間以上、より好ましくは24時間以上であることである。保持時間については、経済的に許す範囲で長時間の保持が好ましく、上限値は特に制限はないが、通常1000時間以下が好ましい。容器は自然的に発生する圧力と温度に耐える状態の材質と形状が好ましいが、容器の耐久性の観点からテフロン(登録商標)等の耐腐食性材を内容器に用いることが適当である。この第2工程を経ることで、上記した本発明の水溶液を得ることができる。
次に、第3工程として、第2工程で得られた水溶液内の固形分を分離後、有機溶媒に分散させることもできる。これにより、上記した本発明のコロイド溶液を得ることができる。第2工程で得られた水溶液内の固形分を分離する手法は特に制限しないが、遠心分離法後にろ過する方法、通常の室温から100℃程度で乾燥する操作、あるいは凍結して真空条件に置く操作、他の媒体と置換する操作等を行い固形物とすることができる。このときにいかなる態様でも見かけ上固形物となっていれば、個々のナノ粒子の独立した結晶の状態は保持される。
次に、該固形物を有機溶媒に分散させる。有機溶媒は、非極性溶媒が好ましく、トルエン、ベンゼン、石油エーテル、シクロヘキサン、ヘプタン、ドデカン、シクロヘキセン、メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン)、エチルベンゼン、ジュレン(1,2,4,5-テトラメチルベンゼン)等が挙げられる。また、テトラクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等も使用することができる。
なお、前記第2工程以後の溶液(第2工程で得られた水溶液又は第3工程で得られたコロイド溶液)の溶媒を除去すればジルコニア微粒子を製造できる。また、第3工程の後に、溶媒を除去すると、本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料の独立した結晶の状態は保持されジルコニア微粒子の製造法としてさらに好ましい。さらに、前記第2工程以後の溶液(第2工程で得られた水溶液又は第3工程で得られたコロイド溶液)を基板上に添加もしくは溶液内に基板を浸漬し取り出すことによってジルコニアナノシート材料とすることもできる。
以下、この発明を更に説明するために実施例を示すが、この発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
試薬特級の硝酸酸化ジルコニウム(富士フイルム和光純薬(株))及びオレイン酸カリウム(富士フイルム和光純薬(株))を所定量秤量して、それぞれ30mLの蒸留水に溶解しジルコニウム塩7mmol/L水溶液及び7mmol/Lオレイン酸塩水溶液を調製した。室温でジルコニウム塩水溶液中にオレイン酸塩水溶液を強く攪拌しながら加え、さらに25質量%のアンモニア水を10mL添加して中和することで沈殿を生成させた。次に、この混合溶液を入れたテフロン(登録商標)容器をステンレス製の加圧容器内に入れ、500rpmで攪拌しながら100℃で24時間の水熱処理を行った。その後、室温まで自然冷却し、試料を回収し、反応後の溶液を3000rpmで30分間で遠心分離し、内容物を試料管の下部に濃縮させて上澄みを蒸留水で洗浄する操作を行った後、沈殿物を90℃で24時間、大気中で乾燥後、トルエン中に分散させた。これをSi無反射試料台に滴下して粒子を固定させ、波長0.15418nmのCu-Kα線を出力40mA、40kVで用いて、X線回折(XRD; MiniFlex II, (株)リガク)分析を行った。粒子形態観察には透過型電子顕微鏡(TEM; JEM2100, 日本電子(株))を200kVで用いた。粒子を含むトルエン溶液を室温でカーボン支持膜上に滴下乾燥して作製した。このとき、また、マルバーン製ゼータサイザーナノSにて溶液内分散粒子の粒径を測定した。
図1に、本実施例1で作製した粒子の固体状態における透過型電子顕微鏡像を示す。この観察において、それぞれの粒子が独立して、互いに連結することがないことがわかる。それぞれの組成について5観察視野の計100個の粒子観察において計数したところ、連結した粒子群の数は2個以内であった。また、連結していてもその中の粒子数は2以内であり、その粒径は5ナノメートルを超えることがなかった。すなわち、95%以上の粒子は独立した状態で存在しており、単結晶の存在割合が95%以上であることが理解できる。また、高分解能の観察によって格子像が見られ、粒子全体にわたって区切られることなく格子像が観測され粒子全体が1つの結晶であることがわかった。
図2に、図1の視野から求めた粒径の分布図を示す。平均粒子径は、2nmで、95%以上の粒子が5nm以下にあった。
(実施例2~4)
水熱処理温度を120℃(実施例2)、140℃(実施例3)、160℃(実施例4)とするほか、実施例1と同様の操作で実施例2~4の試料を作製した。
図3に、本実施例4の160℃で作製した粒子の固体状態における透過型電子顕微鏡像を示す。この観察において、それぞれの粒子が独立して、互いに連結することがないことがわかる。それぞれの組成について、5観察視野の計100個の粒子観察において計数したところ、連結した粒子群の数は5個以内であった。また、連結していてもその粒子数は2個以内であり、その粒径は10ナノメートルを超えることがなかった。すなわち、95%以上の粒子は独立した状態で存在ししており、単結晶の存在割合が95%以上であることが理解できる。また、高分解能の観察によって格子像が見られ、粒子全体にわたって区切られることなく格子像が観測され粒子全体が1つの結晶であることがわかった。
図4に、図3の視野から求めた粒子径の分布図を示す。平均粒径は、2nmで、95%以上の粒子が5nm以下にあった。
図5に、実施例1~4において100℃、120℃、140℃、160℃で作製した粒子の粉末X線回折図形を後述する比較例1の試料(200℃)とともに示す。実施例1~4の100℃~160℃の条件ではいずれも正方晶ZrO2の回折図形を示し、単斜晶がこれらの試料には見られなかった。なお、X線回折図形は、実施例1~4の水熱処理後に水溶液を乾燥した状態の試料で測定しても同様であった。
結晶測定としてしばしば利用されるシェラーの式で見積もった結晶子径は組成により実施例1~4のいずれも約2nmであり極微小結晶は測定できないことから数値は信頼できるとは限らないが微小結晶の存在を示した。
実施例1でのトルエン溶液についてマルバーン製ゼータサイザーナノSにて液中における平均粒子径を測定したところ3nmの平均粒子径であることを示した。すなわち、上記でのナノ結晶は個々に分散して溶液中にあり、ジルコニア単結晶が20nm以下の粒径で分散したコロイド溶液となっていることが理解できる。このコロイド溶液は2か月を経てもその特性に変化はなかった。
(実施例5~7)
界面活性剤をオレイン酸カリウムではなく、リノール酸(実施例5)、メチルタウリン酸(実施例6)又はテトラデセンスルホン酸ナトリウム(αオレフィンスルホン酸)(実施例7)とするほか、120℃で実施例2と同様の操作で試料を作製した。いずれの作製試料の粉末X線回折図形からも、正方晶ZrO2のみの回折図形がみられた。なお、X線回折図形で水熱処理後に水溶液を乾燥した状態の試料を再度600℃加熱後で測定しても正方晶ZrO2のみであった。
(実施例8~11)
水熱処理温度を24時間ではなく、12時間とするほか、100℃(実施例8)、120℃(実施例9)、140℃(実施例10)又は160℃(実施例11)で、実施例1~4と同様の操作で試料を作製した。粉末X線回折図形からいずれの作製試料も正方晶ZrO2のみの回折図形を示し、単斜晶の生成は見られなかった。なお、X線回折図形で水熱処理後に水溶液を乾燥した状態の試料を再度600℃で加熱して試料を測定しても正方晶ZrO2のみであった。
(比較例1)
水熱処理温度を200℃とするほか、実施例1と同様の操作で比較例1の試料を作製した。図5にこの試料の粉末X線回折図形を実施例1~4とともに示す。単斜晶ZrO2の回折図形を示し、正方晶ZrO2の回折図形は見られなかったことから、この条件で作製したジルコニアでは正方晶として得られなかった。
また、図6に実施例1~4及び比較例1のジルコニア微粒子材料を大気中600℃、3時間加熱したのちの粉末X線回折図形を示す。これらの図形は結晶相が熱処理前後で変わらないことを示しており、正方晶ジルコニアが加熱処理後そのまま利用できることを示している。
(試験例1:触媒試験1)
本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料の触媒特性を評価するため、実施例2(120℃)及び比較例1(200℃)と同じ操作で作製した微粒子を100℃大気中で一夜乾燥後400℃大気中で3時間熱処理したのち、それぞれ硝酸ロジウム水溶液(田中貴金属工業(株)製)を用いてロジウム0.4重量%を含浸担持し、600℃大気中で3時間で熱処理して、ロジウム担持触媒A(実施例2から)及びB(比較例1から)を作製した。試料の排ガス浄化性能を評価するため、固定床流通触媒試験装置により排気モデルガスを流通させ触媒浄化性能を評価した。測定操作は、試料0.1グラムを秤量しペレット状にした後に粗破砕し石英試験管に入れ、排ガスを模擬したガス組成の混合ガスを500ml/minで流し、昇温速度10℃/minで600℃まで昇温し、600℃で1時間保持を行った後、冷却し、再び同条件で昇温し、その昇温時のガス組成を測定して、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)の浄化特性(ライトオフ特性)を評価した。使用した混合ガス組成(体積%)は、C3H6 0.04%、NO 0.1%、CO 0.3%、O2 0.33%、H2 0.1%、H2O 2%でその他はN2とした。
(試験例2:触媒試験2)
触媒の作製時の最終の熱処理温度を600℃ではなく800℃とするほか、試験例1と同様の操作により、ロジウム担持触媒C(実施例2から)及びD(比較例1から)を作製し、評価試験を行った。
表1に、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)の浄化率が80%となる温度をまとめて比較した。温度が低いほど低温で浄化できる、すなわち触媒が高い活性をもつことを示している。AとBを比較すると、正方晶ジルコニアを担体として用いた触媒のほうが高活性であった。また、同様に、CとDを比較すると、正方晶ジルコニアを担体として用いた触媒のほうが高活性であった。このときのCとDの触媒の比表面積に差はなく、また、Cの比表面積はDに比べて低く、これらの活性の違いは異なる結晶相のジルコニア上でのロジウムの状態によるものであると推察される。
Figure 0007188822000001
これらの触媒試料の粉末X線回折図形を調べたところ、AとCでは正方晶、BとDでは単斜晶であり、ジルコニア各相が安定に存在する触媒であった。このような活性な金属を担持する性能は結晶構造からくる表面構造と相互作用に依存するので、他の貴金属ならびに活性金属でも同様な正方晶相の効果が期待できる。
(実施例12~13)
試薬特級の硝酸酸化ジルコニウム(富士フイルム和光純薬(株))及びオレイン酸カリウム(富士フイルム和光純薬(株))を所定量秤量して、それぞれ30mLの蒸留水に溶解しジルコニウム塩7mmol/L水溶液及び7mmol/Lオレイン酸塩水溶液を調製した。室温でジルコニウム塩水溶液中にオレイン酸塩水溶液を強く攪拌しながら加え、さらに25質量%のアンモニア水を10mL添加して中和することで沈殿を生成させた。次に、この混合溶液を入れたテフロン(登録商標)容器をステンレス製の加圧容器内に入れ、500rpmで攪拌しながら200℃で12時間(実施例12)又は48時間(実施例13)の水熱処理を行った。その後、室温まで自然冷却し、試料を回収し、反応後の溶液を3000rpmで30分間で遠心分離し、内容物を試料管の下部に濃縮させて上澄みを蒸留水で洗浄する操作を行った後、沈殿物を90℃で24時間、大気中で乾燥後、トルエン中に分散させた。
これをSi無反射試料台に滴下して粒子を固定させ、波長0.15418nmのCu-Kα線を出力40mA、40kVで用いて、X線回折(XRD; MiniFlex II, (株)リガク)分析を行った。粒子形態観察には透過型電子顕微鏡(TEM; JEM2100, 日本電子(株))を200kVで用いた。粒子を含むトルエン溶液を室温でカーボン支持膜上に滴下乾燥して作製した。このとき、また、マルバーン製ゼータサイザーナノSにて溶液内分散粒子の粒径を測定した。
図7に、実施例12(12時間)及び13(48時間)において200℃で作製した粒子の粉末X線回折図形を示す。いずれも単斜晶ZrO2の回折図形を示した。なお、X線回折図形は、水熱処理後に水溶液を乾燥した状態の試料で測定しても同様であった。
図8に、本実施例13(48時間)で作製した粒子の固体状態における透過型電子顕微鏡像を示す。この観察において、全ての粒子が、一般的な形状を示さず、分岐があることに特徴を有する材料であった。計50個の粒子観察において観察したところ、不規則な方向に複数の突起が伸びる形状を有する粒子の数が全体の85%を占めており、分岐が3つ以上ある粒子の数が全体の60%を占めていた。その粒径は5ナノメートル以下の粒子も存在していた。また、高分解能の観察によって格子像が見られ、粒子全体にわたって区切られることなく格子像が観測され粒子全体が1つの結晶である場合や、分岐した領域ごとに別の結晶である場合もあった。実施例12(12時間)の試料についても同様に測定したところ、全ての粒子が、一般的な形状を示さず、分岐があることに特徴を有する材料であり、不規則な方向に複数の突起が伸びる形状を有する粒子の数が全体の75%を占めており、分岐が3つ以上ある粒子の数が全体の55%を占めていた。図8から得られた粒子の平均粒子径を算出したところ、13.2nmであった。なお、平均粒子径とは、固体状態においては電子顕微鏡像において、imageJを用いて個々の粒子の円相当径から算出した面積長さ平均径を意味する。
図9に、図8の視野から求めた粒子径の分布図を示す。この結果、粒径が5~30nmの粒子の割合が80%以上であるジルコニア微粒子材料であった。また、トルエン溶液についてマルバーン製ゼータサイザーナノSにて平均粒子径を測定したところ約12nmであることを示した。すなわち、上記でのナノ結晶は個々に分散して溶液中にあり、分散したコロイド溶液となっている。この液は2か月を経てもその特性に変化はなかった。実施例12(12時間)の試料についても同様に測定したところ、固体状態において、粒径が5~30nmの粒子の割合は75%であり、トルエン溶液についてマルバーン製ゼータサイザーナノSにて平均粒子径を測定したところ約10nmであった。なお、平均粒子径とは、溶液中のコロイドにあっては動的光散乱法により算出する拡散係数相当径であり、散乱光強度基準により測定される平均粒子径を意味する。
(実施例14)
実施例13で作製したトルエン分散液(水熱条件、200℃、48時間で作製)を用いてSi単結晶板上にジルコニアナノ粒子を担持した。100℃一夜大気中で乾燥後、(株)島津製作所製SPM9700原子間力顕微鏡によって固体状態の表面形態を観察した。同時に、同機により基板から粒子表面までの厚さを計測した。図10に、本実施例14の観察像を示す。この観察において、厚みが平均で1±0.3nmであるそれぞれの粒子が観察され、また基板上では部分的に連結して膜状となっていた。特異的に堆積した小さい粒子の場所を除いて、粒子は基板に沿って存在し、その厚みを計測したところ、この視野内ではすべて3nm以下であった。さらに、A-B間で示される膜形態で、厚み2±0.3nmで300nmの距離にわたって基板上を覆ったナノシート材料が形成されていた。すなわち、この粒子はシート類似形状を特徴として、全ての粒子の厚みが3nm以下であるシート状材料である。また、溶液を基板上に添加もしくは溶液内に基板を浸漬し取り出すことによるジルコニアナノシート材料の形成が実現した。実施例12(12時間)の試料についても同様に測定したところ、厚みが平均で1±0.3nmである粒子が観察され、また、厚みが2±0.3nmであるナノシート材料が形成されていた。
(実施例15~17)
界面活性剤をオレイン酸カリウムではなく、リノール酸(実施例15)、メチルタウリン酸(実施例16)又はテトラデセンスルホン酸ナトリウム(αオレフィンスルホン酸)(実施例17)とするほか、200℃、48時間で作製条件、実施例12~14と同様の操作で試料を作製した。いずれの作製試料の粉末X線回折図形からも、単斜晶ZrO2の回折図形がみられた。
実施例15では、全ての粒子が、一般的な形状を示さず、分岐があることに特徴を有する材料であり、不規則な方向に複数の突起が伸びる形状を有する粒子の数が全体の80%を占めており、分岐が3つ以上ある粒子の数が全体の50%を占めており、粒径が5~30nmの粒子の割合は80%であり、トルエン溶液についてマルバーン製ゼータサイザーナノSにて粒径を測定したところ平均粒子径約12nmであった。また、厚みが平均で1±0.3nmである粒子が観察され、また、厚みが2±0.3nmであるナノシート材料も形成された。なお、平均粒子径とは、溶液中のコロイドにあっては動的光散乱法により算出する拡散係数相当径であり、散乱光強度基準により測定される平均粒子径を意味する。
実施例16では、全ての粒子が、一般的な形状を示さず、分岐があることに特徴を有する材料であり、不規則な方向に複数の突起が伸びる形状を有する粒子の数が全体の75%を占めており、分岐が3つ以上ある粒子の数が全体の45%を占めており、粒径が5~30nmの粒子の割合は80%であり、トルエン溶液についてマルバーン製ゼータサイザーナノSにて粒径を測定したところ平均粒子径約14nmであった。また、厚みが平均で1±0.3nmである粒子が観察され、また、厚みが2±0.3nmであるナノシート材料も形成された。なお、平均粒子径とは、溶液中のコロイドにあっては動的光散乱法により算出する拡散係数相当径であり、散乱光強度基準により測定される平均粒子径を意味する。
実施例17では、全ての粒子が、一般的な形状を示さず、分岐があることに特徴を有する材料であり、不規則な方向に複数の突起が伸びる形状を有する粒子の数が全体の70%を占めており、分岐が3つ以上ある粒子の数が全体の45%を占めており、粒径が5~30nmの粒子の割合は80%であり、トルエン溶液についてマルバーン製ゼータサイザーナノSにて粒径を測定したところ平均粒子径約14nmであった。また、厚みが平均で1±0.3nmである粒子が観察され、また、厚みが2±0.3nmであるナノシート材料も形成された。なお、平均粒子径とは、溶液中のコロイドにあっては動的光散乱法により算出する拡散係数相当径であり、散乱光強度基準により測定される平均粒子径を意味する。
(実施例18)
水熱処理温度を200℃、72時間とするほか、実施例12~14と同様の操作で試料を作製した。作製試料の粉末X線回折図形から単斜晶ZrO2であり、さらには分岐の粒子材料が形成された。全ての粒子が、一般的な形状を示さず、分岐があることに特徴を有する材料であり、不規則な方向に複数の突起が伸びる形状を有する粒子の数が全体の70%を占めており、分岐が3つ以上ある粒子の数が全体の60%を占めており、粒径が5~30nmの粒子の割合は80%であり、トルエン溶液についてマルバーン製ゼータサイザーナノSにて粒径を測定したところ平均粒子径約16nmであった。また、厚みが平均で1±0.3nmである粒子が観察され、また、厚みが2±0.3nmであるナノシート材料も形成された。なお、平均粒子径とは、溶液中のコロイドにあっては動的光散乱法により算出する拡散係数相当径であり、散乱光強度基準により測定される平均粒子径を意味する。
(試験例3)
本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料の触媒担体として特性を評価するため、200℃で加熱し48時間保持して作製した実施例13の微粒子材と、特許文献4を参考にしてオキシ塩化ジルコニウム塩溶液にアンモニア水を加え混合物を加熱乾燥後、固形物を粉砕して大気中500℃1時間焼成することにより正方晶ジルコニアを作製して比較材(比較例2)とした。これらの試料を600℃、3時間大気中で焼成して単斜晶(実施例13)と正方晶(比較例2)の粉末を得た。これらそれぞれ硝酸ロジウム水溶液(田中貴金属製)を用いてロジウム0.4重量%を含浸担持し、再度600℃大気中で3時間で熱処理して、ロジウム担持触媒A(実施例13から)及びB(比較例2から)を作製した。He希釈水素5体積%ガスを流通させ400℃で30分処理したのち室温まで冷やし、さらにHeに切り替え後COガスをパルス状に導入し触媒上へのCO吸着量を調べ、CO/Rh原子比率(分散度)を計算した。比較例2からの触媒では、分散度が0.2、実施例13からの試料では0.55であった。実施例13の材料は、Rh触媒の分散性向上に優れていた。これは、特異形状の単斜晶ジルコニア粒子であることのよるものと考えられる。金属成分の分散性能は、触媒の活性向上に効果があることが知られ、結晶構造と形状からくる表面構造に依存する相互作用の影響であるので、他の貴金属及び活性金属でも同様な本材の効果が期待できる。
(試験例4)
本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料の触媒担体として特性を評価するため、実施例12の微粒子溶液を洗浄、乾燥後に、600℃、3時間大気中で焼成して粉末を得た。市販の酸化セリウムゾル(日産化学製)を600℃、3時間大気中で焼成して作製した粉末を比較材(比較例3)とした。これらそれぞれに硝酸パラジウム水溶液(田中貴金属製)を用いてパラジウム1重量%を含浸担持し、再度600℃大気中で3時間で熱処理して、パラジウム担持触媒E(実施例12から)及びF(比較例3から)を作製した。試験例1と同様の操作により、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)の浄化率が80%となる温度を測定した結果を表2に比較した。温度が低いほど低温で浄化できる、すなわち触媒が高い活性をもつことを示している。CとDを比較すると、本発明のジルコニアを担体として用いた触媒のほうが、一般的に高活性とされる酸化セリウムゾル材を用いたよりも、NOとHCの浄化に対して高活性であった。また、アルミナゾルから作製した粉末を用いた触媒の活性はこれらよりもはるかに低かった。したがって、本発明のジルコニアは有用である。
Figure 0007188822000002
本発明の正方晶ジルコニア微粒子材料及びその製造方法では、従来法に比べて工程が少なく、操作は容易であり該材料が簡易に得られる。また、低温でも良好な排ガス浄化特性を有する金属担持触媒の担体や添加剤として、正方晶ナノ粒子特性を利用し、環境浄化材に利用することができる。さらに、コロイド溶液自体は長期間保存しても安定であり、充填剤としてナノ粒子を利用する際、その原料として利用できる。ジルコニアを含む各種材料の化学的、光学的、物理的性質を利用した添加剤として種々の成分としてナノ粒子が応用できる。
本発明の単斜晶ジルコニア微粒子材料は、全結晶相を100%として含有する正方晶の割合が20%以下であり、平均粒子径が5~30nmである材料であり、そのコロイド溶液自体は長期間保存しても安定である。充填剤や吸着剤としてナノ粒子を利用する際にはその原料として利用でき、またジルコニアを含む各種材料の化学的、光学的、電気磁気的、物理的、機械的性質を利用した材料であり、種々の成分とともに、ナノ粒子材の応用が可能である。さらには、その金属担持触媒の担体や添加剤としてナノ粒子及び膜特性を利用して、環境浄化材や機能材料に利用することができる。その製造方法は簡易であり、広く応用できる汎用性を有する。

Claims (22)

  1. ジルコニア微粒子材料であって、以下の(1)~(3):
    (1)全結晶相を100%として含有する単斜晶の割合が10%以下であり、
    平均粒子径が3nm以下であり、且つ、
    全結晶を100%として含有する単結晶の割合が90%以上である正方晶ジルコニア微粒子材料であるか、又は
    (2)全結晶相を100%として含有する正方晶の割合が20%以下であり、
    平均粒子径が5~30nmである単斜晶ジルコニア微粒子材料であり、
    全粒子数を100%として、厚みが3nm以下であるシート状材料の割合が50%以上である、
    (3)全結晶相を100%として含有する正方晶の割合が20%以下であり、
    平均粒子径が5~30nmである単斜晶ジルコニア微粒子材料であり、
    全粒子数を100%として、不規則な方向に複数の突起が伸びる形状を有する粒子の割合が50%以上である、
    のいずれかを満たす、ジルコニア微粒子材料。
  2. 前記(1)を満たす、請求項1に記載のジルコニア微粒子材料。
  3. 全結晶相を100%として含有する単斜晶の割合が5%以下である、請求項2に記載のジルコニア微粒子材料。
  4. 平均粒子径が0.1~3nmである、請求項2又は3に記載のジルコニア微粒子材料。
  5. 平均粒子径が0.2~3nmである、請求項2~4のいずれか1項に記載のジルコニア微粒子材料。
  6. 含有する単結晶の割合が95%以上である、請求項2~5のいずれか1項に記載のジルコニア微粒子材料。
  7. 前記(2)を満たす、請求項1に記載のジルコニア微粒子材料。
  8. 全粒子数を100%として、不規則な方向に複数の突起が伸びる形状を有する粒子の割合が50%以上である、請求項7に記載のジルコニア微粒子材料。
  9. 前記(3)を満たす、請求項1に記載のジルコニア微粒子材料。
  10. 請求項1~9のいずれか1項に記載のジルコニア微粒子材料を含むガス処理用触媒。
  11. 前記ジルコニア微粒子材料にPt、Pd、Rh、Au、Cu、Fe、Ni、Ag及びCeから選択された金属、前記金属を含む合金、並びに前記金属の酸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の微粒子を担持する、請求項10に記載のガス処理用触媒。
  12. 請求項1~9のいずれか1項に記載の正方晶ジルコニア微粒子材料、又は請求項10若しくは11に記載のガス処理用触媒を含有する、水溶液又はコロイド溶液。
  13. 全結晶相を100%として含有する正方晶の割合が20%以下であり、平均粒子径が5~30nmである単斜晶ジルコニア微粒子材料を含有する、ジルコニアナノシート材料。
  14. 請求項7~9のいずれか1項に記載のジルコニア微粒子材料、又は請求項10若しくは11に記載のガス処理用触媒を含有する、ジルコニアナノシート材料。
  15. 請求項2~6のいずれか1項に記載のジルコニア微粒子材料、請求項10若しくは11に記載のガス処理用触媒、又は請求項12に記載の水溶液又はコロイド溶液の製造方法であって、
    水溶性ジルコニウム塩及び水溶性界面活性剤を含む水溶液をアルカリ性として沈殿物含有水溶液を得る第1工程と、
    前記沈殿物含有水溶液を90℃~170℃で加熱する第2工程と、
    を備える、製造方法。
  16. 前記第2工程における加熱保持時間が10分以上24時間以下である、請求項15に記載の製造方法。
  17. 請求項7~9のいずれか1項に記載の単斜晶ジルコニア微粒子材料、請求項10若しくは11に記載のガス処理用触媒、請求項12に記載の水溶液若しくはコロイド溶液、又は請求項13若しくは14に記載のジルコニアナノシート材料の製造方法であって、
    水溶性ジルコニウム塩及び水溶性界面活性剤を含む水溶液をアルカリ性として沈殿物含有水溶液を得る第1工程と、
    前記沈殿物含有水溶液を180℃~600℃で12時間以上加熱する第2工程と、
    を備える、製造方法。
  18. 前記第2工程の後、
    該水溶液内の固形分を分離後、有機溶媒に分散させることで前記コロイド溶液を得る第3工程
    を備える、請求項15~17のいずれか1項に記載の製造方法。
  19. 前記第2工程の後、溶液の溶媒を除去することで請求項2~9のいずれか1項に記載のジルコニア微粒子材料又は請求項10若しくは11に記載のガス処理用触媒を得る、請求項15~17のいずれか1項に記載の製造方法。
  20. 前記第3工程の後、溶液の溶媒を除去することで請求項2~9のいずれか1項に記載のジルコニア微粒子材料又は請求項10若しくは11に記載のガス処理用触媒を得る、請求項18に記載の製造方法。
  21. 前記第2工程の後、溶液を基板上に添加又は溶液内に基板を浸漬し取り出すことで請求項13又は14に記載のジルコニアナノシート材料を得る、請求項17に記載の製造方法。
  22. 請求項13又は14に記載のジルコニアナノシート材料の製造方法であって、
    水溶性ジルコニウム塩及び水溶性界面活性剤を含む水溶液をアルカリ性として沈殿物含有水溶液を得る第1工程と、
    前記沈殿物含有水溶液を180℃~600℃で12時間以上加熱する第2工程と、
    前記第2工程の後、該水溶液内の固形分を分離後、有機溶媒に分散させることでコロイド溶液を得る第3工程と
    を備え、前記第3工程の後、溶液を基板上に添加又は溶液内に基板を浸漬し取り出すことで前記ジルコニアナノシート材料を得る、製造方法。
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