JP7188242B2 - 内燃機関の制御装置および制御方法 - Google Patents
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Description
ここに開示する技術は、内燃機関の制御装置及び制御方法に関する。
特許文献1には、8°燃焼割合に基づいて点火時期を制御する火花点火式エンジンが記載されている。尚、特許文献1では、8°燃焼割合を、「燃焼室において燃焼した総ての燃料のうちピストンに対する仕事に寄与した燃料の総量に対する、圧縮上死点後8°までに同燃焼室において燃焼した燃料のうちピストンに対する仕事に寄与した燃料の積算量の割合」と定義している。
ところで、本願出願人は、SI(Spark Ignition)燃焼とCI(Compression Ignition)燃焼とを組み合わせたSPCCI(SPark Controlled Compression Ignition)燃焼を提案している。SI燃焼は、燃焼室の中の混合気に強制的に点火を行うことにより開始する火炎伝播を伴う燃焼である。CI燃焼は、燃焼室の中の混合気が自己着火することにより開始する燃焼である。SPCCI燃焼は、燃焼室の中の混合気に強制的に点火を行って、火炎伝播による燃焼を開始させると、SI燃焼の発熱及び火炎伝播による圧力上昇によって、燃焼室の中の未燃混合気が自己着火により燃焼する形態である。SPCCI燃焼は、CI燃焼を含んでいるため、「自己着火による燃焼」の一形態である。
SPCCI燃焼のような部分自己着火燃焼において、点火時期から自己着火を開始するまでのクランク角期間は、筒内状態量に応じて変化する。部分自己着火燃焼は、点火時期が同じであっても筒内の平均圧力が異なることで、発生するトルクが変化する場合がある。本願発明者らは、部分自己着火燃焼は、点火時期とトルクとの相関が低いが、質量燃焼割合が所定値となる特定クランク角度とトルクとの相関は高いことを見出した。そこで、部分自己着火燃焼を行う内縁機関においてトルクの調節を行うに当たり、質量燃焼割合が所定値となる特定クランク角度を指標として点火時期を調節することが考えられる。
尚、質量燃焼割合が所定値となるクランク角度は、所定値を表す数字と組み合わせて、例えばmfb50(Mass Fraction Burned 50)と表記されることが一般的である。mfb50は、総噴射量の50%の燃料が燃焼するクランク角度を意味している。
具体的に、部分自己着火燃焼を行う内燃機関の制御部は、例えばmfb50の目標値を内燃機関の運転状態に応じて定めると共に、mfb50の目標値を満足するようなタイミングで、混合気に強制的に点火する。こうすることで、制御部は、内燃機関のトルクを適切に調節することができる。
ところで、点火時期が遅くなりすぎると、部分自己着火燃焼の燃焼変動が大きくなって燃焼が不安定になってしまう。燃焼が不安定になると、内燃機関から排出されるガスの性状が悪化したり、内燃機関の燃費が悪化したりする恐れがある。
例えばSDI(Standard Deviation of IMEP(Indicated Mean Effective Pressure))及び/又はLNV(Lowest Normalized Value)といった燃焼変動を表す指標に基づいて、内燃機関の運転点毎に、mfb50の遅角限界を定めることができる。部分自己着火燃焼を行う内燃機関の制御部は、mfb50が遅角限界を超えないよう、mfb50の目標値を定めて点火を行わなければならない。
燃焼変動は、mfb50のばらつき度合いに関連する。本願発明者等の検討によると、mfb50のばらつき度合いは、内燃機関毎に個体差があると共に、経年によって、mfb50のばらつき度合いも変化することがわかった。従って、mfb50のばらつき度合いを正確に把握しないと、mfb50の遅角限界を適切に設定することができない。
ここに開示する技術は、部分自己着火燃焼を行う内燃機関において、遅角限界を適切に設定することにより、燃焼が不安定になることを抑制する。
ここに開示する技術は、筒内の混合気に強制点火した後、一部の未燃混合気が自己着火により燃焼する内燃機関の制御方法に関する。この制御方法は、
制御部が、質量燃焼割合が所定値となる特定クランク角度のばらつき度合いに関係する燃焼変動の指標に基づいて、前記特定クランク角度の遅角限界を定めるステップと、
前記制御部が、前記遅角限界に基づいて、前記遅角限界を超えないように特定クランク角度の目標値を設定するステップと、
前記制御部が、設定した目標値を満足するようなタイミングで点火部に強制点火をさせることにより、前記筒内の混合気の一部を自己着火により燃焼させるステップと、
前記制御部が、燃焼時の前記筒内の状態量と予め設定したモデルとに基づいて、質量燃焼割合が前記所定値となる前記特定クランク角度を推定するステップと、
前記制御部が、燃焼時に筒内圧センサが出力した信号に基づき、質量燃焼割合が前記所定値となる前記特定クランク角度を計測するステップと、
前記制御部が、前記推定した特定クランク角度と、前記計測した特定クランク角度との差に基づいて、前記特定クランク角度のばらつき度合いを更新するステップと、
前記制御部が、更新したばらつき度合いに基づき、前記特定クランク角度の遅角限界を更新するステップと、
を備えている。
制御部が、質量燃焼割合が所定値となる特定クランク角度のばらつき度合いに関係する燃焼変動の指標に基づいて、前記特定クランク角度の遅角限界を定めるステップと、
前記制御部が、前記遅角限界に基づいて、前記遅角限界を超えないように特定クランク角度の目標値を設定するステップと、
前記制御部が、設定した目標値を満足するようなタイミングで点火部に強制点火をさせることにより、前記筒内の混合気の一部を自己着火により燃焼させるステップと、
前記制御部が、燃焼時の前記筒内の状態量と予め設定したモデルとに基づいて、質量燃焼割合が前記所定値となる前記特定クランク角度を推定するステップと、
前記制御部が、燃焼時に筒内圧センサが出力した信号に基づき、質量燃焼割合が前記所定値となる前記特定クランク角度を計測するステップと、
前記制御部が、前記推定した特定クランク角度と、前記計測した特定クランク角度との差に基づいて、前記特定クランク角度のばらつき度合いを更新するステップと、
前記制御部が、更新したばらつき度合いに基づき、前記特定クランク角度の遅角限界を更新するステップと、
を備えている。
この構成によると、制御部が、筒内の状態量とモデルとから推定した特定クランク角度と、筒内圧センサの信号に基づき計測した特定クランク角度とに基づいて、特定クランク角度のばらつき度合いを更新するから、個体差があっても、また、経年で変化しても、制御部は、現時点の当該内燃機関における特定クランク角度のばらつき度合いを正確に把握することができる。
そして、制御部は、更新した特定クランク角度のばらつき度合いに基づき、特定クランク角度の遅角限界を更新し、更新した遅角限界に基づいて、特定クランク角度の目標値を設定し、点火部による強制点火を行う。遅角限界が正確なばらつき度合いに基づいて設定されているため、点火時期を適切な時期に設定することができ、燃焼が不安定になることが抑制される。内燃機関から排出されるガス性状が悪化することが抑制されると共に、燃費性能が低下することが抑制される。
前記制御方法は、前記制御部が、前記内燃機関の運転状態に応じて設定した目標トルクに基づき、前記特定クランク角度の目標値を設定するステップを備え、前記制御部は、トルクダウン要求があった場合に、前記特定クランク角度の遅角限界に基づいて、前記特定クランク角度の目標値を設定する、としてもよい。
点火時期を遅角させると燃焼時期が遅角するから、トルクが低下する。トルクダウン要求時に点火時期を遅角すると、トルクを速やかに低下させることができる。しかしながら、点火時期を遅くし過ぎて特定クランク角度が遅角限界を超えてしまうと、燃焼が不安定になる。
トルクダウン要求時に、制御部が、遅角限界に基づいて特定クランク角度の目標値を設定することにより、燃焼が不安定になることを回避しながら、トルクを、速やかに低下させることができる。
トルクダウン要求が無い場合に、制御部が、目標トルクに基づいて特定クランク角度の目標値を設定することにより、内燃機関の運転状態に対応したトルクが発生する。
前記制御部は、混合気のEGR率が高い場合に、前記特定クランク角度の目標値を、EGR率が低い場合よりも進角させる、としてもよい。
混合気のEGR率が高いと燃焼期間が長くなるため、特定クランク角度のばらつき度合いが大きくなる。また、EGR率が高い場合は、EGR率が低い場合よりも遅角限界が進角する。制御部が、遅角限界に基づいて特定クランク角度の目標値を設定する際に、特定クランク角度のばらつき度合いを考慮することにより、EGR率が高い場合の特定クランク角度の目標値は、相対的に進角する。
ここに開示する技術は、筒内の混合気に強制点火した後、一部の未燃混合気が自己着火により燃焼する内燃機関の制御装置に関係する。この制御装置は、
前記内燃機関に取り付けられた点火部と、
前記点火部に接続されかつ、質量燃焼割合が所定値となる特定クランク角度の目標値に基づいて前記点火部に点火信号を出力する制御部と、
前記制御部に接続されると共に、前記筒内の圧力に対応する信号を前記制御部へ出力する筒内圧センサと、を備え、
前記制御部は、
前記特定クランク角度のばらつき度合いに関係する燃焼変動の指標に基づいて、前記特定クランク角度の遅角限界を定める遅角限界設定部と、
前記特定クランク角度の遅角限界に基づいて、前記遅角限界を超えないように特定クランク角度の目標値を設定する目標値設定部と、
設定した目標値を満足するようなタイミングで前記点火部に強制点火をさせることにより、前記筒内の混合気の一部を自己着火により燃焼させる点火調節部と、
燃焼時の前記筒内の状態量と予め設定したモデルとに基づいて、質量燃焼割合が前記所定値となる前記特定クランク角度を推定する推定部と、
燃焼時に筒内圧センサが出力した信号に基づき、質量燃焼割合が前記所定値となる前記特定クランク角度を計測する計測部と、
前記推定した特定クランク角度と、前記計測した特定クランク角度との差に基づいて、前記特定クランク角度のばらつき度合いを更新する更新部と、を有し、
前記遅角限界設定部は、更新したばらつき度合いに基づき、前記特定クランク角度の遅角限界を更新する。
前記内燃機関に取り付けられた点火部と、
前記点火部に接続されかつ、質量燃焼割合が所定値となる特定クランク角度の目標値に基づいて前記点火部に点火信号を出力する制御部と、
前記制御部に接続されると共に、前記筒内の圧力に対応する信号を前記制御部へ出力する筒内圧センサと、を備え、
前記制御部は、
前記特定クランク角度のばらつき度合いに関係する燃焼変動の指標に基づいて、前記特定クランク角度の遅角限界を定める遅角限界設定部と、
前記特定クランク角度の遅角限界に基づいて、前記遅角限界を超えないように特定クランク角度の目標値を設定する目標値設定部と、
設定した目標値を満足するようなタイミングで前記点火部に強制点火をさせることにより、前記筒内の混合気の一部を自己着火により燃焼させる点火調節部と、
燃焼時の前記筒内の状態量と予め設定したモデルとに基づいて、質量燃焼割合が前記所定値となる前記特定クランク角度を推定する推定部と、
燃焼時に筒内圧センサが出力した信号に基づき、質量燃焼割合が前記所定値となる前記特定クランク角度を計測する計測部と、
前記推定した特定クランク角度と、前記計測した特定クランク角度との差に基づいて、前記特定クランク角度のばらつき度合いを更新する更新部と、を有し、
前記遅角限界設定部は、更新したばらつき度合いに基づき、前記特定クランク角度の遅角限界を更新する。
前記目標値設定部は、前記内燃機関の運転状態に応じて設定した目標トルクに基づき、前記特定クランク角度の目標値を設定し、前記制御部は、トルクダウン要求があった場合に、前記特定クランク角度の遅角限界に基づいて、前記特定クランク角度の目標値を設定する、としてもよい。
前記目標値設定部は、前記筒内の混合気のEGR率が高い場合に、前記特定クランク角度の目標値を、EGR率が低い場合よりも進角させる、としてもよい。
以上説明したように、前記の内燃機関の制御装置及び制御方法は、部分自己着火燃焼を行う内燃機関において、遅角限界を適切に設定することにより、燃焼が不安定にならないように点火時期を調節することができる。
以下、内燃機関の制御装置に関する実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明は、内燃機関としてのエンジン、及び、エンジンの制御装置の一例である。
図1は、エンジンシステムの構成を例示する図である。図2は、エンジンの燃焼室の構成を例示する図である。尚、図1における吸気側は紙面左側であり、排気側は紙面右側である。図2における吸気側は紙面右側であり、排気側は紙面左側である。図3は、エンジンの制御装置の構成を例示するブロック図である。
エンジン1は、燃焼室17が吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程を繰り返すことにより運転する4ストロークエンジンである。エンジン1は、四輪の自動車に搭載されている。エンジン1が運転することによって、自動車は走行する。エンジン1の燃料は、この構成例においてはガソリンである。燃料は、少なくともガソリンを含む液体燃料であればよい。燃料は、例えばバイオエタノール等を含むガソリンであってもよい。
(エンジンの構成)
エンジン1は、シリンダブロック12と、その上に載置されるシリンダヘッド13とを備えている。シリンダブロック12の内部に複数のシリンダ11が形成されている。図1及び図2では、一つのシリンダ11のみを示す。エンジン1は、多気筒エンジンである。
エンジン1は、シリンダブロック12と、その上に載置されるシリンダヘッド13とを備えている。シリンダブロック12の内部に複数のシリンダ11が形成されている。図1及び図2では、一つのシリンダ11のみを示す。エンジン1は、多気筒エンジンである。
各シリンダ11内には、ピストン3が摺動自在に内挿されている。ピストン3は、コネクティングロッド14を介してクランクシャフト15に連結されている。ピストン3は、シリンダ11及びシリンダヘッド13と共に燃焼室17を区画する。尚、「燃焼室」は広義で用いる場合がある。つまり、「燃焼室」は、ピストン3の位置に関わらず、ピストン3、シリンダ11及びシリンダヘッド13によって形成される空間を意味する場合がある。
シリンダヘッド13の下面、つまり、燃焼室17の天井面は、図2の下図に示すように、傾斜面1311と、傾斜面1312とによって構成されている。傾斜面1311は、吸気側から、後述するインジェクタ6の噴射軸心X2に向かって上り勾配となっている。傾斜面1312は、排気側から噴射軸心X2に向かって上り勾配となっている。燃焼室17の天井面は、いわゆるペントルーフ形状である。
ピストン3の上面は燃焼室17の天井面に向かって隆起している。ピストン3の上面には、キャビティ31が形成されている。キャビティ31は、ピストン3の上面から凹陥している。キャビティ31は、この構成例では、浅皿形状を有している。キャビティ31の中心は、シリンダ11の中心軸X1よりも排気側にずれている。
エンジン1の幾何学的圧縮比は、10以上30以下に設定されている。後述するようにエンジン1は、一部の運転領域において、SI燃焼とCI燃焼とを組み合わせたSPCCI燃焼を行う。SPCCI燃焼は、SI燃焼による発熱と圧力上昇とを利用して、CI燃焼をコントロールする。エンジン1は、圧縮着火式である。このエンジン1は、ピストン3が圧縮上死点に至った時の燃焼室17の温度(つまり、圧縮端温度)を高くする必要がない。エンジン1は、幾何学的圧縮比を、比較的低く設定することが可能である。幾何学的圧縮比を低くすると、冷却損失の低減、及び、機械損失の低減に有利になる。エンジン1の幾何学的圧縮比は、レギュラー仕様(燃料のオクタン価が91程度の低オクタン価燃料)においては、14~17とし、ハイオク仕様(燃料のオクタン価が96程度の高オクタン価燃料)においては、15~18としてもよい。
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、吸気ポート18が形成されている。吸気ポート18は、図示は省略するが、第1吸気ポート及び第2吸気ポートを有している。吸気ポート18は、燃焼室17に連通している。吸気ポート18は、詳細な図示は省略するが、いわゆるタンブルポートである。つまり、吸気ポート18は、燃焼室17の中にタンブル流が形成されるような形状を有している。
吸気ポート18には、吸気弁21が配設されている。吸気弁21は、燃焼室17と吸気ポート18との間を開閉する。吸気弁21は動弁機構によって、所定のタイミングで開閉する。動弁機構は、バルブタイミング及び/又はバルブリフトを可変にする可変動弁機構とすればよい。この構成例では、図3に示すように、可変動弁機構は、吸気電動S-VT(Sequential-Valve Timing)23を有している。吸気電動S-VT23は、吸気カムシャフトの回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更する。吸気弁21の開弁タイミング及び閉弁タイミングは、連続的に変化する。尚、吸気動弁機構は、電動S-VTに代えて、油圧式のS-VTを有していてもよい。
シリンダヘッド13にはまた、シリンダ11毎に、排気ポート19が形成されている。排気ポート19も、第1排気ポート及び第2排気ポートを有している。排気ポート19は、燃焼室17に連通している。
排気ポート19には、排気弁22が配設されている。排気弁22は、燃焼室17と排気ポート19との間を開閉する。排気弁22は動弁機構によって、所定のタイミングで開閉する。この動弁機構は、バルブタイミング及び/又はバルブリフトを可変にする可変動弁機構とすればよい。この構成例では、図3に示すように、可変動弁機構は、排気電動S-VT24を有している。排気電動S-VT24は、排気カムシャフトの回転位相を所定の角度範囲内で連続的に変更する。排気弁22の開弁タイミング及び閉弁タイミングは、連続的に変化する。尚、排気動弁機構は、電動S-VTに代えて、油圧式のS-VTを有していてもよい。
吸気電動S-VT23及び排気電動S-VT24は、吸気弁21と排気弁22との両方が開弁するオーバーラップ期間の長さを調節する。オーバーラップ期間の長さを長くすると、燃焼室17の中の残留ガスを掃気することができる。また、オーバーラップ期間の長さを調節することによって、内部EGR(Exhaust Gas Recirculation)ガスを燃焼室17の中に導入することができる。吸気電動S-VT23及び排気電動S-VT24は、内部EGRシステムを構成している。尚、内部EGRシステムは、S-VTによって構成されるものに限らない。
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、インジェクタ6が取り付けられている。インジェクタ6は、燃焼室17の中に燃料を直接噴射する。インジェクタ6は、燃料供給部の一例である。インジェクタ6は、傾斜面1311と傾斜面1312とが交差するペントルーフの谷部に配設されている。図2に示すように、インジェクタ6の噴射軸心X2は、シリンダ11の中心軸X1よりも排気側に位置している。インジェクタ6の噴射軸心X2は、中心軸X1に平行である。インジェクタ6の噴射軸心X2とキャビティ31の中心とは一致している。インジェクタ6は、キャビティ31に対向している。尚、インジェクタ6の噴射軸心X2は、シリンダ11の中心軸X1と一致していてもよい。その構成の場合に、インジェクタ6の噴射軸心X2と、キャビティ31の中心とは一致していてもよい。
インジェクタ6は、詳細な図示は省略するが、複数の噴口を有する多噴口型の燃料噴射弁によって構成されている。インジェクタ6は、図2に二点鎖線で示すように、燃料噴霧が、燃焼室17の中央から放射状に広がるように燃料を噴射する。インジェクタ6は、本構成例においては、十個の噴孔を有しており、噴孔は、周方向に等角度に配置されている。
インジェクタ6には、燃料供給システム61が接続されている。燃料供給システム61は、燃料を貯留するよう構成された燃料タンク63と、燃料タンク63とインジェクタ6とを互いに連結する燃料供給路62とを備えている。燃料供給路62には、燃料ポンプ65とコモンレール64とが介設している。燃料ポンプ65は、コモンレール64に燃料を送る。燃料ポンプ65は、この構成例においては、クランクシャフト15によって駆動されるプランジャー式のポンプである。コモンレール64は、燃料ポンプ65から送られた燃料を、高い燃料圧力で蓄える。インジェクタ6が開弁すると、コモンレール64に蓄えられていた燃料が、インジェクタ6の噴口から燃焼室17の中に噴射される。燃料供給システム61は、30MPa以上の高い圧力の燃料を、インジェクタ6に供給することが可能である。インジェクタ6に供給する燃料の圧力は、エンジン1の運転状態に応じて変更してもよい。尚、燃料供給システム61の構成は、前記の構成に限定されない。
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、点火プラグ25が取り付けられている。点火プラグ25は、燃焼室17の中の混合気に強制的に点火をする。点火プラグ25は、この構成例では、シリンダ11の中心軸X1よりも吸気側に配設されている。点火プラグ25は、2つの吸気ポート18の間に位置している。点火プラグ25は、上方から下方に向かって、燃焼室17の中央に近づく方向に傾いて、シリンダヘッド13に取り付けられている。点火プラグ25の電極は、図2に示すように、燃焼室17の中に臨んでかつ、燃焼室17の天井面の付近に位置している。尚、点火プラグ25を、シリンダ11の中心軸X1よりも排気側に配置してもよい。また、点火プラグ25をシリンダ11の中心軸X1上に配置してもよい。
エンジン1の一側面には吸気通路40が接続されている。吸気通路40は、各シリンダ11の吸気ポート18に連通している。燃焼室17に導入するガスは、吸気通路40を流れる。吸気通路40の上流端部には、エアクリーナー41が配設されている。エアクリーナー41は、新気を濾過する。吸気通路40の下流端近傍には、サージタンク42が配設されている。サージタンク42よりも下流の吸気通路40は、シリンダ11毎に分岐する独立通路を構成している。独立通路の下流端が、各シリンダ11の吸気ポート18に接続されている。
吸気通路40におけるエアクリーナー41とサージタンク42との間には、スロットル弁43が配設されている。スロットル弁43は、弁の開度を調節することによって、燃焼室17の中への新気の導入量を調節する。
吸気通路40にはまた、スロットル弁43の下流に、過給機44が配設されている。過給機44は、燃焼室17に導入するガスを過給する。この構成例において、過給機44は、エンジン1によって駆動される機械式の過給機である。機械式の過給機44は、ルーツ式、リショルム式、ベーン式、又は遠心式であってもよい。
過給機44とエンジン1との間には、電磁クラッチ45が介設している。電磁クラッチ45は、過給機44とエンジン1との間で、エンジン1から過給機44へ駆動力を伝達したり、駆動力の伝達を遮断したりする。後述するように、ECU10が電磁クラッチ45の接続及び遮断を切り替えることによって、過給機44はオンとオフとが切り替わる。
吸気通路40における過給機44の下流には、インタークーラー46が配設されている。インタークーラー46は、過給機44において圧縮されたガスを冷却する。インタークーラー46は、例えば水冷式又は油冷式に構成してもよい。
吸気通路40には、バイパス通路47が接続されている。バイパス通路47は、過給機44及びインタークーラー46をバイパスするよう、吸気通路40における過給機44の上流部とインタークーラー46の下流部とを互いに接続する。バイパス通路47には、エアバイパス弁48が配設されている。エアバイパス弁48は、バイパス通路47を流れるガスの流量を調節する。
ECU10は、過給機44をオフにしたとき(つまり、電磁クラッチ45を遮断したとき)に、エアバイパス弁48を全開にする。吸気通路40を流れるガスは、過給機44をバイパスして、エンジン1の燃焼室17に導入される。エンジン1は、非過給、つまり自然吸気の状態で運転する。
過給機44をオンにすると、エンジン1は過給状態で運転する。ECU10は、過給機44をオンにしたとき(つまり、電磁クラッチ45を接続したとき)に、エアバイパス弁48の開度を調節する。過給機44を通過したガスの一部は、バイパス通路47を通って過給機44の上流に逆流する。ECU10がエアバイパス弁48の開度を調節すると、燃焼室17に導入するガスの過給圧が変わる。尚、過給時とは、サージタンク42内の圧力が大気圧を超える時をいい、非過給時とは、サージタンク42内の圧力が大気圧以下になる時をいう、と定義してもよい。
この構成例においては、過給機44とバイパス通路47とエアバイパス弁48とによって、過給システム49が構成されている。
エンジン1は、燃焼室17内に、スワール流を発生させるスワール発生部を有している。スワール流は、図2に白抜きの矢印で示すように流れる。スワール発生部は、吸気通路40に取り付けられたスワールコントロール弁56を有している。スワールコントロール弁56は、詳細な図示は省略するが、二つの吸気ポート18のうちの一方の吸気ポート18につながるプライマリ通路と、他方の吸気ポート18につながるセカンダリ通路との内の、セカンダリ通路に配設されている。スワールコントロール弁56は、セカンダリ通路の断面を絞ることができる開度調節弁である。スワールコントロール弁56の開度が小さいと、一方の吸気ポート18から燃焼室17に入る吸気流量が相対的に多くかつ、他方の吸気ポート18から燃焼室17に入る吸気流量が相対的に少ないから、燃焼室17内のスワール流が強くなる。スワールコントロール弁56の開度が大きいと、二つの吸気ポート18のそれぞれから燃焼室17に入る吸気流量が略均等になるから、燃焼室17内のスワール流が弱くなる。スワールコントロール弁56を全開にすると、スワール流が発生しない。
エンジン1の他側面には、排気通路50が接続されている。排気通路50は、各シリンダ11の排気ポート19に連通している。排気通路50は、燃焼室17から排出された排気ガスが流れる通路である。排気通路50の上流部分は、詳細な図示は省略するが、シリンダ11毎に分岐する独立通路を構成している。独立通路の上流端が、各シリンダ11の排気ポート19に接続されている。
排気通路50には、複数の触媒コンバーターを有する排気ガス浄化システムが配設されている。上流の触媒コンバーターは、図示は省略するが、エンジンルーム内に配設されている。上流の触媒コンバーターは、三元触媒511と、GPF(Gasoline Particulate Filter)512とを有している。下流の触媒コンバーターは、エンジンルーム外に配設されている。下流の触媒コンバーターは、三元触媒513を有している。尚、排気ガス浄化システムは、図例の構成に限定されるものではない。例えば、GPFは省略してもよい。また、触媒コンバーターは、三元触媒を有するものに限定されない。さらに、三元触媒及びGPFの並び順は、適宜変更してもよい。
吸気通路40と排気通路50との間には、外部EGRシステムを構成するEGR通路52が接続されている。EGR通路52は、排気ガスの一部を吸気通路40に還流させるための通路である。EGR通路52の上流端は、排気通路50における上流の触媒コンバーターと下流の触媒コンバーターとの間に接続されている。EGR通路52の下流端は、吸気通路40における過給機44の上流部に接続されている。EGR通路52を流れるEGRガスは、バイパス通路47のエアバイパス弁48を通らずに、吸気通路40における過給機44の上流部に入る。
EGR通路52には、水冷式のEGRクーラー53が配設されている。EGRクーラー53は、排気ガスを冷却する。EGR通路52にはまた、EGR弁54が配設されている。EGR弁54は、EGR通路52を流れる排気ガスの流量を調節する。EGR弁54の開度を調節することによって、冷却した排気ガス、つまり外部EGRガスの還流量を調節することができる。
この構成例において、EGRシステム55は、外部EGRシステムと、内部EGRシステムとによって構成されている。外部EGRシステムは、内部EGRシステムよりも低温の排気ガスを、燃焼室17に供給することができる。
図1及び図3において、符号57は、クランクシャフト15に連結されたオルタネータ57である。オルタネータ57は、エンジン1によって駆動される。
内燃機関の制御装置は、エンジン1を運転するためのECU(Engine Control Unit)10を備えている。ECU10は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラーであって、図3に示すように、プログラムを実行する中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)101と、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)により構成されてプログラム及びデータを格納するメモリ102と、電気信号の入出力をする入出力バス103と、を備えている。ECU10は、制御部の一例である。
ECU10には、図1及び図3に示すように、各種のセンサSW1~SW17が接続されている。センサSW1~SW17は、信号をECU10に出力する。センサには、以下のセンサが含まれる。
エアフローセンサSW1:吸気通路40におけるエアクリーナー41の下流に配置されかつ、吸気通路40を流れる新気の流量を計測する
第1吸気温度センサSW2:吸気通路40におけるエアクリーナー41の下流に配置されかつ、吸気通路40を流れる新気の温度を計測する
第1圧力センサSW3:吸気通路40におけるEGR通路52の接続位置よりも下流でかつ、過給機44の上流に配置されかつ、過給機44に流入するガスの圧力を計測する
第2吸気温度センサSW4:吸気通路40における過給機44の下流でかつ、バイパス通路47の接続位置よりも上流に配置されかつ、過給機44から流出したガスの温度を計測する
第2圧力センサSW5:サージタンク42に取り付けられかつ、過給機44の下流のガスの圧力を計測する
筒内圧センサSW6:各シリンダ11に対応してシリンダヘッド13に取り付けられかつ、各燃焼室17内の圧力を計測する
NOxセンサSW7:排気通路50における三元触媒513の下流に配置されかつ、三元触媒513を通過した排気ガス中のNOx濃度を計測する
リニアO2センサSW8:排気通路50における上流の触媒コンバーターよりも上流に配置されかつ、排気ガス中の酸素濃度を計測する
ラムダO2センサSW9:上流の触媒コンバーターにおける三元触媒511の下流に配置されかつ、排気ガス中の酸素濃度を計測する
水温センサSW10:エンジン1に取り付けられかつ、冷却水の温度を計測する
クランク角センサSW11:エンジン1に取り付けられかつ、クランクシャフト15の回転角を計測する
アクセル開度センサSW12:アクセルペダル機構に取り付けられかつ、アクセルペダルの操作量に対応したアクセル開度を計測する
吸気カム角センサSW13:エンジン1に取り付けられかつ、吸気カムシャフトの回転角を計測する
排気カム角センサSW14:エンジン1に取り付けられかつ、排気カムシャフトの回転角を計測する
EGR差圧センサSW15:EGR通路52に配置されかつ、EGR弁54の上流及び下流の差圧を計測する
燃圧センサSW16:燃料供給システム61のコモンレール64に取り付けられかつ、インジェクタ6に供給する燃料の圧力を計測する
第3吸気温度センサSW17:サージタンク42に取り付けられかつ、サージタンク42内のガスの温度、換言すると燃焼室17に導入される吸気の温度を計測する。
第1吸気温度センサSW2:吸気通路40におけるエアクリーナー41の下流に配置されかつ、吸気通路40を流れる新気の温度を計測する
第1圧力センサSW3:吸気通路40におけるEGR通路52の接続位置よりも下流でかつ、過給機44の上流に配置されかつ、過給機44に流入するガスの圧力を計測する
第2吸気温度センサSW4:吸気通路40における過給機44の下流でかつ、バイパス通路47の接続位置よりも上流に配置されかつ、過給機44から流出したガスの温度を計測する
第2圧力センサSW5:サージタンク42に取り付けられかつ、過給機44の下流のガスの圧力を計測する
筒内圧センサSW6:各シリンダ11に対応してシリンダヘッド13に取り付けられかつ、各燃焼室17内の圧力を計測する
NOxセンサSW7:排気通路50における三元触媒513の下流に配置されかつ、三元触媒513を通過した排気ガス中のNOx濃度を計測する
リニアO2センサSW8:排気通路50における上流の触媒コンバーターよりも上流に配置されかつ、排気ガス中の酸素濃度を計測する
ラムダO2センサSW9:上流の触媒コンバーターにおける三元触媒511の下流に配置されかつ、排気ガス中の酸素濃度を計測する
水温センサSW10:エンジン1に取り付けられかつ、冷却水の温度を計測する
クランク角センサSW11:エンジン1に取り付けられかつ、クランクシャフト15の回転角を計測する
アクセル開度センサSW12:アクセルペダル機構に取り付けられかつ、アクセルペダルの操作量に対応したアクセル開度を計測する
吸気カム角センサSW13:エンジン1に取り付けられかつ、吸気カムシャフトの回転角を計測する
排気カム角センサSW14:エンジン1に取り付けられかつ、排気カムシャフトの回転角を計測する
EGR差圧センサSW15:EGR通路52に配置されかつ、EGR弁54の上流及び下流の差圧を計測する
燃圧センサSW16:燃料供給システム61のコモンレール64に取り付けられかつ、インジェクタ6に供給する燃料の圧力を計測する
第3吸気温度センサSW17:サージタンク42に取り付けられかつ、サージタンク42内のガスの温度、換言すると燃焼室17に導入される吸気の温度を計測する。
ECU10は、これらのセンサSW1~SW17の信号に基づいて、エンジン1の運転状態を判断すると共に、予め定められている制御ロジックに従って、各デバイスの制御量を演算する。制御ロジックは、メモリ102に記憶されている。制御ロジックは、メモリ102に記憶しているマップを用いて、目標量及び/又は制御量を演算することを含む。
ECU100は、演算をした制御量に係る電気信号を、インジェクタ6、点火プラグ25、吸気電動S-VT23、排気電動S-VT24、燃料供給システム61、スロットル弁43、EGR弁54、過給機44の電磁クラッチ45、エアバイパス弁48、スワールコントロール弁56、及び、オルタネータ57に出力する。
例えば、ECU10は、アクセル開度センサSW12の信号とマップとに基づいて、エンジン1の目標トルクを設定すると共に、目標過給圧を決定する。そして、ECU10は、目標過給圧と、第1圧力センサSW3及び第2圧力センサSW5の信号から得られる過給機44の前後差圧とに基づいて、エアバイパス弁48の開度を調節するフィードバック制御を行うことにより、過給圧が目標過給圧となるようにする。
また、ECU10は、エンジン1の運転状態とマップとに基づいて目標EGR率を設定する。EGR率は、燃焼室17の中の全ガスに対するEGRガスの比である。ECU10は、目標EGR率とアクセル開度センサSW12の信号に基づく吸入空気量とに基づき目標EGRガス量を決定すると共に、EGR差圧センサSW15の信号から得られるEGR弁54の前後差圧に基づいてEGR弁54の開度を調節するフィードバック制御を行うことにより、燃焼室17の中に導入する外部EGRガス量が目標EGRガス量となるようにする。
さらに、ECU10は、所定の制御条件が成立している場合に空燃比フィードバック制御を実行する。具体的にECU10は、リニアO2センサSW8、及び、ラムダO2センサSW9が計測した排気中の酸素濃度に基づいて、混合気の空燃比が所望の値となるように、インジェクタ6の燃料噴射量を調節する。
尚、その他のECU10によるエンジン1の制御の詳細は、後述する。
(SPCCI燃焼のコンセプト)
エンジン1は、燃費の向上及び排出ガス性能の向上を主目的として、所定の運転状態にある場合に圧縮自己着火による燃焼を行う。自己着火による燃焼は、圧縮開始前の燃焼室17の中の温度がばらつくと、自己着火のタイミングが大きく変化する。そこで、エンジン1は、SI燃焼とCI燃焼とを組み合わせたSPCCI燃焼を行う。
エンジン1は、燃費の向上及び排出ガス性能の向上を主目的として、所定の運転状態にある場合に圧縮自己着火による燃焼を行う。自己着火による燃焼は、圧縮開始前の燃焼室17の中の温度がばらつくと、自己着火のタイミングが大きく変化する。そこで、エンジン1は、SI燃焼とCI燃焼とを組み合わせたSPCCI燃焼を行う。
SPCCI燃焼は、点火プラグ25が、燃焼室17の中の混合気に強制的に点火をすることによって、混合気が火炎伝播によりSI燃焼をすると共に、SI燃焼の発熱により燃焼室17の中の温度が高くなりかつ、火炎伝播により燃焼室17の中の圧力が上昇することによって、未燃混合気が自己着火によるCI燃焼をする形態である。
SI燃焼の発熱量を調節することによって、圧縮開始前の燃焼室17の中の温度のばらつきを吸収することができる。ECU10が点火時期を調節することによって、混合気を目標のタイミングで自己着火させることができる。
SPCCI燃焼において、SI燃焼時の熱発生は、CI燃焼時の熱発生よりも穏やかである。図4は、SPCCI燃焼における熱発生率の波形801を例示している。SPCCI燃焼における熱発生率の波形801は、立ち上がりの傾きが、CI燃焼の波形における立ち上がりの傾きよりも小さくなる。また、燃焼室17の中における圧力変動(dp/dθ)も、SI燃焼時は、CI燃焼時よりも穏やかになる。
SI燃焼の開始後、未燃混合気が自己着火すると、自己着火のタイミングで、熱発生率の波形の傾きが、小から大へと変化する場合がある。熱発生率の波形は、CI燃焼が開始するタイミングθciで、変曲点Xを有する場合がある。
CI燃焼の開始後は、SI燃焼とCI燃焼とが並行して行われる。CI燃焼は、SI燃焼よりも熱発生が大きいため、熱発生率は相対的に大きくなる。しかし、CI燃焼は、圧縮上死点後に行われるため、熱発生率の波形の傾きが大きくなりすぎることが回避される。CI燃焼時の圧力変動(dp/dθ)も、比較的穏やかになる。
圧力変動(dp/dθ)は、燃焼騒音を表す指標として用いることができる。前述の通りSPCCI燃焼は、圧力変動(dp/dθ)を小さくすることができるため、燃焼騒音が大きくなりすぎることを回避することが可能になる。エンジン1の燃焼騒音は、許容レベル以下に抑えられる。
CI燃焼が終了することによって、SPCCI燃焼が終了する。CI燃焼は、SI燃焼に比べて、燃焼期間が短い。SPCCI燃焼は、SI燃焼よりも、燃焼終了時期が早まる。
SPCCI燃焼の熱発生率波形は、SI燃焼によって形成された第1熱発生率部QSIと、CI燃焼によって形成された第2熱発生部QCIと、が、この順番に連続するように形成されている。
(エンジンの運転領域)
図5は、エンジン1の制御に係る運転マップを例示している。運転マップは、ECU10のメモリ102に記憶されている。図5に例示する運転マップ501は、エンジン1の半暖機時の運転マップであり、502は、エンジン1の温間時の運転マップである。ECU10は、燃焼室17の壁温及び吸気の温度それぞれの高低に応じて運転マップ501又は運転マップ502を選択する。ECU10は、選択した運転マップを用いてエンジン1を制御する。
図5は、エンジン1の制御に係る運転マップを例示している。運転マップは、ECU10のメモリ102に記憶されている。図5に例示する運転マップ501は、エンジン1の半暖機時の運転マップであり、502は、エンジン1の温間時の運転マップである。ECU10は、燃焼室17の壁温及び吸気の温度それぞれの高低に応じて運転マップ501又は運転マップ502を選択する。ECU10は、選択した運転マップを用いてエンジン1を制御する。
各運転マップ501、502は、エンジン1の負荷及び回転数によって規定されている。運転マップ501は、回転数の高低に対し二つの領域に分かれる。具体的に運転マップ501は、回転数N3以上である高回転の領域A1と、低回転及び中回転の領域に広がる領域A2とに分かれる。運転マップ502は、三つの領域に分かれる。具体的に運転マップ502は、前述した高回転の領域A1と、低回転及び中回転の領域A2と、領域A2内における、N1からN2の所定回転数範囲でかつ、L1からL2の所定負荷範囲の領域A3とに分かれる。
ここで、低回転領域、中回転領域、及び、高回転領域はそれぞれ、エンジン1の全運転領域を回転数方向に、低回転領域、中回転領域及び高回転領域の略三等分にした場合の、低回転領域、中回転領域、及び、高回転領域としてもよい。
図5の運転マップ501、502は、各領域における混合気の状態及び燃焼形態を示している。エンジン1は、領域A1においてSI燃焼を行う。エンジン1はまた、領域A2及びA3においてSPCCI燃焼を行う。以下、図5の運転マップ501、502の各領域におけるエンジン1の運転について詳細に説明をする。
(領域A3におけるエンジンの運転)
エンジン1が領域A3において運転している場合に、エンジン1は、SPCCI燃焼を行う。
エンジン1が領域A3において運転している場合に、エンジン1は、SPCCI燃焼を行う。
エンジン1の燃費性能を向上させるために、EGRシステム55は、燃焼室17の中にEGRガスを導入する。具体的に、吸気電動S-VT23及び排気電動S-VT24は、排気上死点付近において、吸気弁21及び排気弁22の両方を開弁するポジティブオーバーラップ期間を設ける。
混合気の空燃比(A/F)は、燃焼室17の全体において理論空燃比よりもリーンである(つまり、空気過剰率λ>1)。より詳細に、燃焼室17の全体において混合気のA/Fは25以上31以下である。こうすることで、RawNOxの発生を抑制することができ、排出ガス性能を向上させることができる。スロットル弁43は、全開である。
インジェクタ6が燃料噴射を終了した後、点火プラグ25は、燃焼室17の混合気に点火をする。領域A3でエンジン1は、リーン燃焼運転を行う。
(領域A2におけるエンジンの運転)
エンジン1が領域A2において運転している場合に、エンジン1は、SPCCI燃焼を行う。
エンジン1が領域A2において運転している場合に、エンジン1は、SPCCI燃焼を行う。
EGRシステム55は、燃焼室17の中にEGRガスを導入する。具体的に、吸気電動S-VT23及び排気電動S-VT24は、排気上死点付近において、吸気弁21及び排気弁22の両方を開弁するポジティブオーバーラップ期間を設ける。内部EGRガスが、燃焼室17の中に導入される。また、EGRシステム55は、領域A2の少なくとも一部の領域において、EGRクーラー53によって冷却した排気ガスを、EGR通路52を通じて燃焼室17の中に導入する。つまり、内部EGRガスに比べて温度が低い外部EGRガスが、燃焼室17の中に導入される。外部EGRガスは、燃焼室17の中の温度を、適切な温度に調節する。EGRシステム55は、エンジン1の負荷が高まるに従いEGRガスの量を減らす。EGRシステム55は、全開負荷において、内部EGRガス及び外部EGRガスを含むEGRガスを、ゼロにしてもよい。
混合気の空燃比(A/F)は、燃焼室17の全体において理論空燃比(A/F≒14.7)である。三元触媒511、513が、燃焼室17から排出された排出ガスを浄化することによって、エンジン1の排出ガス性能は良好になる。混合気のA/Fは、三元触媒の浄化ウインドウの中に収まるようにすればよい。混合気の空気過剰率λは、1.0±0.2としてもよい。尚、エンジン1が、全開負荷(つまり、最高負荷)において運転している場合には、混合気のA/Fは、燃焼室17の全体において理論空燃比又は理論空燃比よりもリッチにしてもよい(つまり、混合気の空気過剰率λは、λ≦1)。スロットル弁43は、全開又は中間開度に調節される。
燃焼室17内にEGRガスを導入しているため、燃焼室17の中の全ガスと燃料との重量比であるG/Fは理論空燃比よりもリーンになる。混合気のG/Fは18以上にしてもよい。こうすることで、いわゆるノッキングの発生を抑制することができる。G/Fは18以上30以下において設定してもよい。また、G/Fは18以上50以下において設定してもよい。
点火プラグ25は、インジェクタ6が燃料の噴射を行った後、圧縮上死点付近の所定のタイミングで混合気に点火をする。領域A2においてエンジン1は、ストイキ燃焼運転を行う。
(領域A1におけるエンジンの運転)
エンジン1の回転数が高いと、クランク角が1°変化するのに要する時間が短くなる。エンジン1の回転数が高くなると、SPCCI燃焼を行うことが困難になる。
エンジン1の回転数が高いと、クランク角が1°変化するのに要する時間が短くなる。エンジン1の回転数が高くなると、SPCCI燃焼を行うことが困難になる。
そこで、エンジン1が領域A1において運転している場合に、エンジン1は、SPCCI燃焼ではなく、SI燃焼を行う。
EGRシステム55は、燃焼室17の中にEGRガスを導入する。EGRシステム55は、負荷が高まるに従いEGRガスの量を減らす。EGRシステム55は、全開負荷では、EGRガスをゼロにしてもよい。
混合気の空燃比(A/F)は、基本的には、燃焼室17の全体において理論空燃比(A/F≒14.7)である。混合気の空気過剰率λは、1.0±0.2とすればよい。尚、エンジン1が全開負荷の付近において運転している場合には、混合気の空気過剰率λは1未満であってもよい。スロットル弁43は、全開又は中間開度に調節される。
点火プラグ25は、インジェクタ6が燃料の噴射を終了した後、圧縮上死点付近の適宜のタイミングで、混合気に点火を行う。
(エンジンの点火制御)
SPCCI燃焼において、点火時期から自己着火を開始するまでの期間は、筒内状態量に応じて変化する。SPCCI燃焼は、点火時期が同じであっても筒内の平均圧力が異なることで、発生するトルクが変化する場合がある。SPCCI燃焼は、点火時期とトルクとの相関が相対的に低い。
SPCCI燃焼において、点火時期から自己着火を開始するまでの期間は、筒内状態量に応じて変化する。SPCCI燃焼は、点火時期が同じであっても筒内の平均圧力が異なることで、発生するトルクが変化する場合がある。SPCCI燃焼は、点火時期とトルクとの相関が相対的に低い。
これに対し、図6の上図601は、SPCCI燃焼を行うときの、mfb50とエンジン1の熱効率(換言すれば、エンジン1のトルク)との関係を示している。ここでの熱効率は、1サイクルにおける筒内平均圧力を燃料噴射量で割った値としている。mfb50は、総噴射量の50%の燃料が燃焼するクランク角度を意味する。つまり、mfb50は、質量燃焼割合が所定値となる特定クランク角度に相当する。上図601の右に進むほどmfb50がリタードし、左に進むほどmfb50がアドバンスする。上図601からわかるように、mfb50が所定値のときに、トルクが最大になり、mfb50がリタードするほど、トルクは次第に低下する。以下の説明では、便宜上、上図601の曲線を、トルクカーブ603と呼ぶ。
トルクカーブは、筒内状態量に応じて変化する。上図601の点線で示すトルクカーブ604は、実線で示すトルクカーブ603よりも、混合気のEGR率が高い場合のトルクカーブの一例である。混合気のEGR率が高いと、mfb50が同じであってもトルクが低下する。
SPCCI燃焼では、mfb50とトルクとの相関が高い。そこで、ECU10は、mfb50を指標として点火時期を調節するよう構成されている。ECU10は、エンジン1の運転状態に応じてmfb50の目標値を定め、目標の点火時期を、mfb50の目標値に基づいて設定する。つまり、ECU10は、mfb50の目標値を満足するようなタイミングで、点火プラグ25が強制点火をするように目標の点火時期を定める。
図6の下図602は、SPCCI燃焼を行うときの、mfb50と燃焼期間との関係を示している。ここでの燃焼期間は、mfb10からmfb50までのクランク角期間を意味している。下図602に実線605で示すように、mfb50がリタードするほど、燃焼期間は長くなる。また、下図602に破線606で示すように、混合気のEGR率が高い場合には、低い場合よりも燃焼期間が長くなる。
下図602の一点鎖線は、SPCCI燃焼の燃焼期間の変動幅を例示している。つまり、同一の条件でSPCCI燃焼を行っても、燃焼期間の長さには、ばらつきが発生する。燃焼期間の変動幅は、燃焼期間が長くなるほど大きくなる。燃焼期間がばらつくため、mfb50も、ばらつく。
上図601に例示するように、mfb50のばらつきは、正規分布又はほぼ正規分布となる。SPCCI燃焼のmfb50が、ばらつくことによって、エンジン1のトルクも変動することになる。
mfb50のばらつき度合い、つまりSPCCI燃焼の燃焼変動の大きさは、SDIとLNVとの2つの指標によって表すことができる。SDIは、筒内圧力の平均値からのばらつきの大きさを表した値であり、標準偏差に相当する。
LNVは、1サイクルの筒内平均圧力Pmiの最小値が、平均値からどれだけ離れているかを表した値である。
燃焼変動の指標SDIとLNVとトルクカーブとから、エンジン1の運転点毎に、mfb50の遅角限界を定めることができる。遅角限界は、mfb50が当該遅角限界よりもリタードすると、燃焼が不安定になってトルクの変動が大きくかつ、失火に至る恐れがある、最もリタード側のクランク角度と定義することができる。
ECU10は、mfb50の目標値を定める際に、遅角限界を考慮する。具体的にECU10は、mfb50が遅角限界を超えないよう、mfb50の目標値を遅角限界よりも進角した値に定める。
エンジン1の負荷及び回転数から定まる運転点毎に遅角限界を定めるために、ECU10のメモリ102は、運転点毎に、mfb50のばらつき度合いの情報を記憶している。
本願発明者等の検討によると、mfb50のばらつき度合いは、個体差があると共に、経年によって変化をすることがわかった。前述したように、遅角限界を、mfb50のばらつき度合いに関係するSDI及びLNVにより定めるため、mfb50のばらつき度合いを正確に把握することが、SPCCI燃焼を実行するエンジン1の点火時期の制御に重要である。
そこで、このエンジン1のECU10は、目標の点火時期を設定する際に必要となる、mfb50のばらつき度合いを、随時更新して記憶するよう構成されている。
図7は、点火時期の設定に関する制御を実行するECU10の機能ブロックを例示している。ECU10は、遅角限界設定部104と、目標mfb50設定部105と、点火調節部106と、mfb50推定部107と、mfb50計測部108と、更新部109とを有している。遅角限界設定部104、目標mfb50設定部105、及び点火調節部106は、点火時期の調節に関係する。mfb50推定部107、mfb50計測部108、及び更新部109は、mfb50のばらつき度合いの更新に関係する。
遅角限界設定部104は、前述したように、mfb50のばらつき度合いに関係するSDI及びLNVと、図6に例示する、筒内状態量に対応したトルクカーブとにより遅角限界を設定する。
目標mfb50設定部105は、前述したように、遅角限界設定部104が設定した遅角限界に基づいて、mfb50が遅角限界を超えないよう、mfb50の目標値を定める。より詳細に、目標mfb50設定部105は、トルクダウン要求があった場合に、遅角限界に基づいてmfb50の目標値を定める。トルクダウン要求は、例えば自動変速機を搭載した自動車では、自動変速機のシフトアップ時に、エンジン1に対しトルクを低下させる要求である。また、トルクダウン要求は、運転者がアクセル開度をゼロにした場合に、エンジン1のトルクを低下させる要求である。さらに、トルクダウン要求は、運転者のステアリング操作等に反応し、自動車の走行安定性のために、自動車に作用する加速度を変化させるべくエンジン1のトルクを低下させる要求である。
トルクダウン要求があった場合に、mfb50を遅角させることによって、エンジン1のトルクを速やかに低下させることが可能になる。これは特に、エンジン1が領域A3で運転していてスロットル弁43を全開にしている場合に有効である。つまり、mfb50が遅角するように点火時期を遅角することは、スロットル弁43の開度調節によって空気量を減らしてトルクを低下させるよりも迅速に、トルクを下げることができる。
具体的に目標mfb50設定部105は、mfb50の標準偏差σと、遅角限界とに基づいて、遅角限界がmfb50の3σとなるように、mfb50の目標値を定める(図6の上図601の、遅角限界及び目標mfb50参照)。
ここで、図6の上図601に示すように、燃焼室17内のEGR率が高い場合は、低い場合よりもmfb50の目標値が進角する。これは、EGR率が高い場合は、低い場合よりも遅角限界が進角すると共に、mfb50のばらつきが大きくなるためである。
目標mfb50設定部105は、トルクダウン要求が無い場合は、エンジン1の運転状態に応じて設定される目標トルクに応じて、当該目標トルクを実現することができるように、mfb50の目標値を定める。
点火調節部106は、目標mfb50設定部105が設定したmfb50の目標値に基づいて、当該目標値を満足するようなタイミングで点火プラグ25に強制点火をさせる。これにより、燃焼室17内の混合気のSPCCI燃焼又はSI燃焼する。
mfb50推定部107は、燃焼時の筒内状態量と予め設定したモデルとに基づいて、mfb50を推定する。モデルは、図6の下図602に示す実線605又は破線606で表される。モデルは、メモリ102に記憶されている。つまり、mfb50推定部107は、筒内状態量に基づいて燃焼期間を推定すると共に、推定した燃焼期間とモデル(実線605、破線606等)とから、mfb50を推定する。mfb50推定部107は、mfb50の推定の際にベイズ推定を利用してもよい。エンジン1の運転状態は刻一刻と変化し、同じ運転状態が継続することは少ないが、ベイズ推定を利用すれば、少ないサンプル数からmfb50を精度良く推定することができる。
mfb50計測部108は、燃焼時に筒内圧センサSW6が出力した信号に基づき、1サイクルにおける筒内圧力の変化に基づいて、実際のmfb50を計測する。
更新部109は、mfb50推定部107が推定したmfb50の推定値と、mfb50計測部108が計測したmfb50の計測値との比較し、mfb50のばらつき度合い(例えば標準偏差)を更新する。更新したmfb50のばらつき度合いの情報は、メモリ102に記憶される。
mfb50のばらつき度合いを随時更新することによって、ECU10は、mfb50のばらつき度合いの正確な情報に基づいて、遅角限界を定めることができる。そして、ECU10は、その遅角限界とmfb50のばらつき度合いとに基づいて、mfb50の目標値を定めることができる。トルクダウン要求時に点火時期を大きく遅角させる場合であっても、燃焼が不安定になることを回避しながら、トルクを低下させることができる。これにより、エンジン1は、排出ガスの性状が悪化したり、燃費が悪化したりすることを抑制することができる。
次に、図8のフローチャートを参照しながら、ECU10が実行するエンジン1の制御について説明する。図8のフローチャートは、エンジン1の点火制御に係る。尚、図8のフローチャートにおける各ステップの順番は入れ替えることも可能である。このフローチャートのステップS2~S5は、mfb50のばらつき度合いの更新に関するステップであり、ステップS6~S10は、点火時期の調節に関するステップである。
ステップS1において、ECU10は、各センサSW1~SW17の信号を読み込む。続くステップS2において、ECU10のmfb50推定部107は、前述したように、筒内状態量と、メモリ102に記憶しているモデル(図6の下図602参照)とによって、mfb50を推定する。次のステップS3において、ECU10のmfb50計測部108は、筒内圧センサSW6の信号に基づいてmfb50を計測する。
ステップS4において、ECU10の更新部109は、ステップS2で推定したmfb50の推定値と、ステップS3で計測したmfb50の計測値とに基づいて、mfb50の標準偏差を更新し、メモリ102に記憶させる。
また、遅角限界設定部104は、ステップS5において、更新されたmfb50の標準偏差に基づいて遅角限界を設定(又は更新)する。
ステップS6においてECU10の目標mfb50設定部105は、トルクダウン要求があるか否かを判断する。トルクダウン要求がある場合、プロセスはステップS7に進み、トルクダウン要求が無い場合、プロセスはステップS8に進む。
ステップS7において目標mfb50設定部は、ステップS5で設定した遅角限界に基づいて、mfb50が遅角限界を超えないようmfb50の目標値を設定する(図6の上図601参照)。ステップS7において設定されるmfb50の目標値は、相対的に遅角側である。一方、ステップS8において目標mfb50設定部は、エンジン1の運転状態に基づき設定した目標トルクに応じてmfb50の目標値を設定する。ステップS8において設定されるmfb50の目標値は、遅角限界に基づかないため、相対的に進角側である。
mfb50の目標値を設定した後、ステップS9においてECU10の点火調節部105は、mfb50の目標値を満足するように点火プラグ25の点火時期を設定し、点火調節部105は、次のステップS10において、設定した点火時期に、点火プラグ25に点火を指示する信号を出力する。燃焼室17内において、混合気がSPCCI燃焼又はSI燃焼する。
尚、前記の構成例においてECU10は、mfb50を指標として、点火時期を設定しているが、指標はmfb50に限らない。トルク及び燃焼期間との相関があれば、50%以外の質量燃焼割合のクランク角度を用いてもよい。
また、ここに開示する技術は、前述した構成のエンジン1に適用することに限定されない。エンジン1の構成は、様々な構成を採用することが可能である。
1 エンジン(内燃機関)
10 ECU(制御部)
104 遅角限界設定部
105 目標mfb50設定部(目標値設定部)
106 点火調節部
107 mfb50推定部
108 mfb50計測部
109 更新部
25 点火プラグ(点火部)
SW6 筒内圧センサ
10 ECU(制御部)
104 遅角限界設定部
105 目標mfb50設定部(目標値設定部)
106 点火調節部
107 mfb50推定部
108 mfb50計測部
109 更新部
25 点火プラグ(点火部)
SW6 筒内圧センサ
Claims (6)
- 筒内の混合気に強制点火した後、一部の未燃混合気が自己着火により燃焼する内燃機関の制御方法であって、
制御部が、質量燃焼割合が所定値となる特定クランク角度のばらつき度合いに関係する燃焼変動の指標に基づいて、前記特定クランク角度の遅角限界を定めるステップと、
前記制御部が、前記遅角限界に基づいて、前記遅角限界を超えないように特定クランク角度の目標値を設定するステップと、
前記制御部が、設定した目標値を満足するようなタイミングで点火部に強制点火をさせることにより、前記筒内の混合気の一部を自己着火により燃焼させるステップと、
前記制御部が、燃焼時の前記筒内の状態量と予め設定したモデルとに基づいて、質量燃焼割合が前記所定値となる前記特定クランク角度を推定するステップと、
前記制御部が、燃焼時に筒内圧センサが出力した信号に基づき、質量燃焼割合が前記所定値となる前記特定クランク角度を計測するステップと、
前記制御部が、前記推定した特定クランク角度と、前記計測した特定クランク角度との差に基づいて、前記特定クランク角度のばらつき度合いを更新するステップと、
前記制御部が、更新したばらつき度合いに基づき、前記特定クランク角度の遅角限界を更新するステップと、
を備えている内燃機関の制御方法。 - 請求項1に記載の内燃機関の制御方法において、
前記制御部が、前記内燃機関の運転状態に応じて設定した目標トルクに基づき、前記特定クランク角度の目標値を設定するステップを備え、
前記制御部は、トルクダウン要求があった場合に、前記特定クランク角度の遅角限界に基づいて、前記特定クランク角度の目標値を設定する内燃機関の制御方法。 - 請求項1又は2に記載の内燃機関の制御方法において、
前記制御部は、混合気のEGR率が高い場合に、前記特定クランク角度の目標値を、EGR率が低い場合よりも進角させる内燃機関の制御方法。 - 筒内の混合気に強制点火した後、一部の未燃混合気が自己着火により燃焼する内燃機関の制御装置であって、
前記内燃機関に取り付けられた点火部と、
前記点火部に接続されかつ、質量燃焼割合が所定値となる特定クランク角度の目標値に基づいて前記点火部に点火信号を出力する制御部と、
前記制御部に接続されると共に、前記筒内の圧力に対応する信号を前記制御部へ出力する筒内圧センサと、を備え、
前記制御部は、
前記特定クランク角度のばらつき度合いに関係する燃焼変動の指標に基づいて、前記特定クランク角度の遅角限界を定める遅角限界設定部と、
前記特定クランク角度の遅角限界に基づいて、前記遅角限界を超えないように特定クランク角度の目標値を設定する目標値設定部と、
設定した目標値を満足するようなタイミングで前記点火部に強制点火をさせることにより、前記筒内の混合気の一部を自己着火により燃焼させる点火調節部と、
燃焼時の前記筒内の状態量と予め設定したモデルとに基づいて、質量燃焼割合が前記所定値となる前記特定クランク角度を推定する推定部と、
燃焼時に筒内圧センサが出力した信号に基づき、質量燃焼割合が前記所定値となる前記特定クランク角度を計測する計測部と、
前記推定した特定クランク角度と、前記計測した特定クランク角度との差に基づいて、前記特定クランク角度のばらつき度合いを更新する更新部と、を有し、
前記遅角限界設定部は、更新したばらつき度合いに基づき、前記特定クランク角度の遅角限界を更新する内燃機関の制御装置。 - 請求項4に記載の内燃機関の制御装置において、
前記目標値設定部は、前記内燃機関の運転状態に応じて設定した目標トルクに基づき、前記特定クランク角度の目標値を設定し、
前記制御部は、トルクダウン要求があった場合に、前記特定クランク角度の遅角限界に基づいて、前記特定クランク角度の目標値を設定する内燃機関の制御装置。 - 請求項4又は5に記載の内燃機関の制御装置において、
前記目標値設定部は、前記筒内の混合気のEGR率が高い場合に、前記特定クランク角度の目標値を、EGR率が低い場合よりも進角させる内燃機関の制御装置。
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