JP7187284B2 - 太陽電池付き建材 - Google Patents
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Description
特許文献1に開示された窓用太陽電池モジュールでは、光を透過可能な太陽電池パネルと、透光性板材とが別途独立したものとなっており、間に空間が形成された状態となるように間隔を空けて並列している。このことから、太陽電池パネルと透光性部材の間で熱が伝熱する際、必ずこれらの間の空間を通過することとなり、熱が伝熱し難く、断熱効果の高いものとなっている。
つまり、本実施形態の太陽電池付き建材1は、立板状であり、直立した姿勢で使用されることを想定したものであって、建築物や構造物の内外を仕切る部材として使用されることを想定したものである。
すなわち、太陽電池付き建材1は、薄膜太陽電池を内蔵する構造となっている。
この第一透明基板10は、上記したように窓として使用する際、室外側に位置する(建築物や構造物の外部空間に面する)基板となっている。
この第二透明基板11は、上記したように窓として使用する際、室内側に位置する(建築物や構造物の室内空間に面する)基板となっている。
なお、第二透明基板11の厚さは、第一透明基板10の厚さと合わせて10mm以上の厚さとなることが好ましい。本実施形態では、第二透明基板11の厚さは、第一透明基板10の厚さの150パーセント程度の厚さとなっている。
具体的には、このスペーサ部材12は、第一透明基板10、第二透明基板11それぞれの内側面に対し、ブチルゴム系の粘着剤等を介して一体に取り付けられている。
つまり、各スペーサ部材12は、第一透明基板10、第二透明基板11の四辺となる縁端部分のそれぞれに沿って延びている。そして、各スペーサ部材12における長手方向の両端部分は、隣接配置される他のスペーサ部材12と連続した状態となっており、詳細には、一方端と他方端のそれぞれが異なるスペーサ部材12と連続した状態となっている。
また、図3で示されるように、スペーサ部材12のうち、内部空間16に面する部分には、複数の連通孔18が形成されている。なお、作図の都合上、一部の連通孔18にのみ符号を付し、他への符号を省略する。
第一導電層25の構成材料としては、例えば、ITO(インジウム酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、SnO2(酸化錫)、ZnO(酸化亜鉛)、AZO(アルミニウム亜鉛酸化物)等の透明導電性酸化物を採用できる。この他、これらの透明導電性酸化物にドーピング材を添加したものが採用できる。
この第一導電層25は、内部空間16の外側よりの部分(第一透明基板10よりの部分)で電極層(透明電極層)を形成する部分である。
第二導電層27の構成材料としては、例えば、銀、アルミ、銅、モリブデン等の金属や、これらを主成分とする金属が好適に採用できる。本実施形態では、構成材料として銀を採用している。
この第二導電層27は、第一透明基板10から内側に離れた位置で電極層(裏面電極層)を形成する部分である。
これら第一分離溝33、第二分離溝34は、縦方向と直交する方向(以下、横方向とも称す)で離れた位置にそれぞれ形成されている。
そして、第一分離溝33には、半導体層26の一部が進入し、第一透明基板10と接触している。その一方で、第二分離溝34には、第二導電層27の一部が進入し、第一導電層25と接触している。これらのことから、第一導電層25、半導体層26は、物理的に複数の小片に分離されている。
素子分離溝37と透光開口溝38は、それぞれ第一透明基板10の厚さ方向(図4(a)の上下方向)で重なる半導体層26の一部と第二導電層27の一部を除去して形成される溝である。つまり、太陽電池素子13の内部側最表面(図4(a)の上面)から外側(第一透明基板10側)へ向かって、第一導電層25に至るまでの部分を除去して形成される溝である。
なお、透光開口溝38は、素子分離溝37に比べて溝幅が大きい溝となっている。
セル領域αは、第一導電層25、半導体層26、第二導電層27からなる複数層が重なる部分の内部側最表面である。すなわち、独立した太陽電池セル(光起電力セル)となる部分の内部側最表面である。
余剰領域βは、接続領域γを含んで広がる部分であり、第一小片部13aの内部側最表面からセル領域αを除いた部分である。
接続領域γは、第二分離溝34と重なる部分の内部側最表面であり、詳細には、太陽電池付き建材1の部材厚方向を視線方向とする平面視において、第二分離溝34と重なる部分である。
なお、「太陽電池付き建材1の部材厚方向」とは、第一透明基板10の両主面や、第二透明基板11の両主面と直交する方向であり、図3、図5における上下方向である。また、以下の説明において、「平面視」とは、特に断りのない限り「太陽電池付き建材1の部材厚方向」を視線方向とする平面視とする。
すなわち、電極接続部は、一の第一小片部13aの第二導電層27と、他の第一小片部13aの第一導電層25を電気的に接続する。このことにより、横方向で並列配置される2つの第一小片部13aが電気的に直列接続された状態となっている。
したがって、横方向に並列配置される複数の第一小片部13aでは、横方向における一端側から他端側に向かって電流が流れることとなる。
その一方で、最も横方向の他端側に位置する第一小片部13aの第二導電層27と、最も横方向の他端側に位置する第二小片部13bの第二導電層27とが、第一導電層25を介して電気的に接続された状態となっている。
つまり、図4(a)で示されるように、太陽電池素子13の全体は、素子分離溝37及び透光開口溝38によって格子状に分割されている。そして、太陽電池素子13の横方向における一端側と他端側のそれぞれでは、複数の第二小片部13bが縦方向に沿って間隔を空けて並列配置された状態となっている。
具体的には、裸電線部43aを複数の第二小片部13bに対して取り付けた状態で、これらを第二透明基板11側(図3における上側)から絶縁性樹脂48(樹脂)で覆った状態としている。
この絶縁性樹脂48は、特に限定されるものではないが、例えば、EVA(酢酸ビニル共重合体)、オレフィン、アイオノマー等の樹脂が好適に採用できる。また、絶縁性樹脂48は、透光性を有することが好ましい。
このことから、図6で示されるように、太陽電池付き建材1の厚さ方向(第一透明基板10の厚さ方向)で離間対向する太陽電池素子13の内部側最表面と、第二透明基板11の内側面との間に気体層50が形成されている。
すなわち、気体層50の厚さは、第一透明基板10の厚さ及び第二透明基板11の厚さよりも厚いものとなっている。
この対面率は、30パーセント以上95パーセント以下となることが好ましく、40パーセント以上80パーセント以下となることがより好ましく、60パーセント以上70パーセント以下となることがさらに好ましい。なお、本実施形態では、対面率を70パーセント程度としている。
すなわち、太陽電池素子13は、第二導電層27を除いて透光性を有するものとなっており、第一透明基板10側から入光された光(太陽光)は、大部分が半導体層26で光電変換され、電気エネルギーに変換される。その一方で、残りの部分は、素子分離溝37、透光開口溝38の内部を経由して、太陽電池付き建材1の部材厚方向に透過する。
ここで、透過光が通過する素子分離溝37及び透光開口溝38は、第二透明基板11の内側面と離間対向しており、平面視において第二透明基板11の内側面と重なる。
言い換えると、図7(b)で示されるように、第二透明基板11の内側面の一部(図7(b)の黒塗り部分)は、平面視において、透過光が通過する素子分離溝37及び透光開口溝38と重なる重畳部分58(開口重畳部分)となる。つまり、重畳部分58は、素子分離溝37及び透光開口溝38を太陽電池付き建材1の部材厚方向で第二透明基板11の内側面に投影した際に、投影面となる部分である。
ここで、本実施形態の太陽電池付き建材1では、上記した対面率を開口率よりも大きくしている。このように対面率を開口率よりも大きくすることが、太陽電池付き建材1により高い断熱効果を発揮させる上で好ましい。
例えば、開口率が10パーセント以上40パーセント以下となる場合、対面率は、60パーセント以上90パーセント以下とすることが好ましい。
例えば、第二小片部13bの内側最表面の一部のみを絶縁性樹脂48によって覆う構造としてもよい。この場合、第二小片部13bの内側最表面の他部は、他部材を介さずに第二透明基板11の内側面と対面した状態となるので、上記した対面部分55の面積をより大きくするという観点から、好ましい。
例えば、第二導電層に上記した各種透明導電膜を採用し、太陽電池付き建材を両面受光型の建材としてもよい。
例えば、内部空間16を実質的な真空空間としてもよい。すなわち、気体層50に替わって真空層を形成してもよい。なお、ここでいう「実質的な真空空間」とは、真空と近似する空間であり、具体的には真空度が100Pa以下の空間をいう。
このように太陽電池付き建材1を形成した場合、長期使用において不具合が発生する可能性が考えられる。すなわち、第一小片部13aの角部分が第一導電層25、半導体層26、第二導電層27の積層状態を維持する上で弱い部分となるので、長期使用するうちに、この角部分から第二導電層27を形成する膜が剥がれてしまう可能性がある。
以下、この第2実施形態に係る太陽電池付き建材の内部構造について詳細に説明するが、上記した実施形態と同様の部分については、同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
そして、保護樹脂層65を形成する際には、構成材料となる樹脂を素子分離溝37と透光開口溝38の大部分に充填させ、これらの各溝内と、各溝及びその周辺部分の第二透明基板11側に構成材料となる樹脂が配された状態とする。そして、構成材料となる樹脂を感光させて硬化させることで保護樹脂層65を形成する。
なお、ここでいう2つの小片部は、当然のことながら、2つの第一小片部13a、2つの第二小片部13b、又は、1つの第一小片部13a及び1つの第二小片部13bのいずれかとなる。
つまり、小片部の角部分は、内側最表面と、内側最表面と連続する側壁部分(素子分離溝37又は透光開口溝38の溝壁を形成する部分)を有しており、これらが保護樹脂層65によって覆われた状態となる。
また、間に素子分離溝37又は透光開口溝38を介して隣接する2つの小片部の縁端部分同士が、保護樹脂層65を介して一体に連続した状態となる。
このことから、長期使用においても各小片部の第二導電層27を剥がれにくい状態とすることができる。
実施例1として、上記した第1実施形態に準じる太陽電池付き建材を作製した。
第一透明基板10は、ガラス基板とし、幅998mm×長さ1200mm×厚さ4mmのものとした。第二透明基板11は、ガラス基板とし、幅と長さは、第一透明基板10と同様とし、厚さが6mmのものとした。
気体層50は、内部空間16に空気を充填して形成した。また、気体層50の厚さは、12mmとした。
比較例1として、図9(a)で示されるような複層ガラス100を形成した。
複層ガラス100は、第一ガラス板101と第二ガラス板102が金属部材103(スペーサ)を介して一体に取り付けられ、これらの間に外部に対して液密に封止された空気層105が形成されるものとした。
第一ガラス板101は、幅998mm×長さ1200mm×厚さ4mmのものとした。
第二ガラス板102は、幅998mm×長さ1200mm×厚さ6mmのものとした。
空気層105の厚さは、12mmとした。
比較例2として、図9(b)で示されるような、Lоw-E複層ガラス200を形成した。
Lоw-E複層ガラス200は、第一ガラス板201と第二ガラス板202とが金属部材203(スペーサ)を介して一体に取り付けられ、これらの間に外部に対して液密に封止された空気層205が形成されるものとした。
第一ガラス板201は、幅998mm×長さ1200mm×厚さ4mmのものとした。また、第一ガラス板201の内側面に全域に亘って銀を蒸着し、金属層206を形成した。金属層206の厚さは、200nmとした。
第二ガラス板202は、幅998mm×長さ1200mm×厚さ6mmのものとした。
空気層205の厚さは、12mmとした。
比較例3として、図9(c)で示されるような、建材300を形成した。
建材300は、太陽電池モジュール301とガラス板302とが金属部材303(スペーサ)を介して一体に取り付けられ、これらの間に外部に対して液密に封止された空気層305が形成されるものとした。
太陽電池モジュール301は、公知のシースルー型薄膜太陽電池モジュールであり、幅998mm×長さ1200mm×厚さ11mmのものを採用した。
つまり、この太陽電池モジュール301は、表面側から裏面側を視認可能であり、裏面側から表面側を視認可能であって、内部に薄膜太陽電池を内蔵するものとした。
また、この太陽電池モジュール301は、従来のものと同様、表面側の第一ガラス基板301aと、裏面側の第二ガラス基板301bとが封止材301cによって接着されたものした。すなわち、第一ガラス基板301aと第二ガラス基板301bの間に空間に封止材301cが充填され、太陽電池素子が封止されたものとした。
ガラス板302は、幅998mm×長さ1200mm×厚さ6mmのものとした。
空気層305の厚さは、12mmとした。
比較例1の熱貫流率は、2.8W/(m2・K)であった。
比較例2の熱貫流率は、1.6W/(m2・K)であった。
比較例3の熱貫流率は、2.8W/(m2・K)であった。
10 第一透明基板(第1基板)
11 第二透明基板(第2基板)
12 スペーサ部材(スペーサ)
12a スペーサ内空間(内部空間)
13 太陽電池素子
16 内部空間
18 連通孔
25 第一導電層(透明導電層)
26 半導体層
27 第二導電層(導電層)
37 素子分離溝(開口溝、分離溝)
38 透光開口溝(開口溝、分離溝)
43 集電用リード線
48 絶縁性樹脂(樹脂)
55 対面部分
58 重畳部分(開口重畳部分)
Claims (4)
- 第1基板と、第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に位置する太陽電池素子とを備え、
前記太陽電池素子は、金属又は透明導電性酸化物によって形成される導電層を含み、
前記太陽電池素子が、支持基板となる前記第1基板上に形成され、封止基板となる前記第2基板によって覆われる太陽電池付き建材において、
前記第2基板は、前記導電層から離れた位置に配され、
前記第2基板は、前記第2基板を平面視したとき、前記導電層と他部材を介さずに対面する部分である対面部分を有し、
前記平面視において、前記第2基板の全面積に占める前記対面部分の面積の割合である対面率が30パーセント以上であり、
前記第1基板と前記第2基板とが共に透光性を有し、且つ、全体として透光性を有するものであり、
前記太陽電池素子は、前記第1基板側から透明導電層と、半導体層と、前記導電層とを含む積層体であり、且つ、前記積層体の一部に開口溝を有し、
前記開口溝は、前記積層体の前記半導体層の一部と前記導電層の一部とが除去された部分であり、
格子状をなす複数の前記開口溝によって前記太陽電池素子が分割されて複数の小片部が形成され、
前記小片部の角部分を保護する保護樹脂層を有し、
前記保護樹脂層は、透光性及び絶縁性を有し、平面視した形状が格子状となるように形成され、前記小片部の角部分を前記第2基板側から覆っている、太陽電池付き建材。 - 前記第1基板と前記第2基板とが共に透光性を有し、且つ、全体として透光性を有するものであり、
前記太陽電池素子は、前記第1基板側から透明導電層と、半導体層と、前記導電層とを含む積層体であり、且つ、前記積層体の一部に開口溝を有し、
前記開口溝は、前記積層体の前記半導体層の一部と前記導電層の一部とが除去された部分であり、
前記第2基板は、前記第2基板を平面視したとき、前記開口溝と重なる部分である開口重畳部分を有し、
前記平面視において、前記第2基板の全面積に占める前記開口重畳部分の面積の割合を開口率としたとき、前記対面率が前記開口率よりも大きくなる、請求項1に記載の太陽電池付き建材。 - 前記太陽電池素子は、前記第1基板側から透明導電層と、半導体層と、前記導電層とを含む積層体であり、且つ、前記積層体を複数のセルに分割する分離溝を有し、
複数の前記セルは互いに電気的に直列接続されて形成されるものであり、
集電用リード線を有し、
前記集電用リード線は、複数の前記セルの電気の流れ方向における一端側及び他端側に一体に取り付けられ、且つ、前記第1基板と前記第2基板との間に形成される内部空間から外部まで延設されており、
前記内部空間では、前記集電用リード線の前記第2基板側の部分が絶縁性の樹脂で覆われている、請求項1又は2に記載の太陽電池付き建材。 - 前記第1基板と前記第2基板とがスペーサを介して配置されることで、前記第1基板と前記第2基板とが隔置されるものであり、
前記スペーサは、内部に乾燥剤が配される中空の部材であって、且つ、連通孔を有し、
前記連通孔は、前記第1基板と前記第2基板との間に形成される内部空間に向かって開口し、前記内部空間と前記スペーサの内部を連通する孔であり、且つ、自然状態における前記乾燥剤が通過不能となるように形成されており、
前記内部空間の気体を前記乾燥剤によって乾燥可能である、請求項1乃至3のいずれかに記載の太陽電池付き建材。
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