JP7186328B1 - 保護領域における獣害防止構造 - Google Patents
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Abstract
Description
緑化工としては吹付工が広く知られている。吹付工では、土壌、堆肥、植物種子等の混合物からなる緑化基材を傾斜地等に層状に吹付け、芝、クローバー、ヨモギ等の在来種の植物を植生している。
緑化基材を構築するにあたり、緑化基材の内部または上面に菱形金網等の網状物を敷設して傾斜面を安定化している。
食害を放置すると自然景観の再生が困難となり、野生動物による踏み荒らしは、土壌が流出して斜面崩壊の原因となる。
特許文献1には、硬質の補強材と柔らかい金網とを組み合わせて形成したアーチ体で被覆することが開示され、特許文献2には傾斜地に井桁状の枠体を敷設し、この枠体の上面に金網を張ることで、傾斜地から離間した状態で金網を敷設することが開示され、特許文献3には、帯状ネットをアーチ状に屈曲して成形した複数のネット材を使用し、各ネット材の相対向する両辺を固定ピンで固定して傾斜地を覆うことが開示されている。
特許文献4には、支柱の間にネットを張設した柵本体の一部に、複数の裸電線を追加設置した侵入防止柵が開示されている。
<1>保護領域を各種の網状物で被覆することで、ある程度の食害防止効果を期待できるものの、野生動物の侵入を確実に抑制することができない。
食害防止効果を高めるには、保護領域の周囲に侵入防止柵を別途に設ける必要がある。
そのため、大規模な施設となって建設コストが高くなる。
<2>従来の網状物は地面から浮かして配置しているが、網状物が撓み変形や弾性変形を許容する構造である。
そのため、網状物の上に野生動物が載ると、網状物が沈み込んでしまうため、植物が根元近くまで食い荒らされてしまい、防食効果を十分に発揮できない。
<1>侵入防止柵は、多数の支柱と大面積の網状物を構成資材とするため、侵入防止柵の設置に多くの時間と労力を要するだけでなく、建設コストが非常に高くつく。
<2>侵入防止柵は柵の高さのみで野生動物の侵入を防止する構造であるため、柵高が十分でない場合や、シカ等の跳躍力の高い野生動物が柵を飛び越えて侵入する。
そのため、野生動物に対する侵入防止効果が限定的である。
<3>山岳地帯に設置した場合、雪塊の滑落により侵入防止柵が破壊され易く、融雪後における柵の補修に多くの手間とコストがかかる。
本発明の他の形態において、傾斜した保護領域の外周縁部を複数組のスノコパネルが四角枠状に囲繞し、保護領域の左辺部と右辺部には複数の縦リブを露出させたスノコパネルを傾斜方向に沿って敷設し、保護領域の上辺部と下辺部には傾斜方向に沿った複数の交差リブを露出させた別途のスノコパネルを傾斜方向と直交する方向に沿って敷設した。
本発明の他の形態において、前記縦リブと交差リブの交差部に上下に貫通して形成した複数の開口と、前記スノコパネルが隣り合う縦リブの間に縦リブの長手方向に沿って連続した形成した保護溝とが連通している。
本発明の他の形態において、前記縦リブはその上端面が平坦面であり下端面が波形面である。
本発明の他の形態において、前記スノコパネルは合成樹脂で一体的に成形されている。
本発明の他の形態において、前記保護領域の全面に亘って植生マットまたは植生シートが敷設してある。
<1>表面側に複数の縦リブを露出して形成すると共に、スノコパネルの表面側に縦リブと交差して複数の交差リブを形成したスノコパネルの表裏面を使い分けすることで、保護領域の外周縁部を同一構造のスノコパネルで囲繞して敷設することができる。
<2>保護領域の外周縁部に複数組のスノコパネルを敷設することで、保護領域に対する野生動物の侵入防止作用と、野生動物による食害防止作用を発揮することができる。
したがって、従来の野生動物の侵入防止柵を追加して設置する必要がなくなる。
<3>獣害防止装置を設置した保護領域において、野生動物の侵入を防止できるだけでなく、スノコパネルの全高分だけ植物の生育長を確実に保護することができる。
したがって、従来の食害防止技術と比べて、食害防止面積が広くなって、保護領域のほぼ全域において食害を防止できる。
<4>スノコパネルが防護機能を発揮して地面を保護するので、野生動物による地面の踏み荒らしを効果的に防止することができる。
<5>獣害防止装置のスノコパネルが雪塊の誘導作用を発揮して、雪塊によるスノコパネルの下方への潜り込みを抑止するので、融雪時に獣害防止装置の変形や破損の心配がなく、融雪後に特別な補修やメンテナンスを必要としない。
<6>スノコパネルが通気性を有する格子構造体である。
そのため、作業中にスノコパネルが風の影響を受け難く施工性に優れるうえに、敷設後においてはスノコパネルが風により捲れ難くいため、固定ピンの使用本数が少なくて済む。
図1を参照して説明する。本発明で使用する獣害防止装置10は、保護領域50内への野生動物の侵入を防止しつつ、保護領域50内の植物40を野生動物の食害から保護するための装置である。
スノコパネル20は表面20aと裏面20bを有する帯状を呈する合成樹脂製の格子構造体であり、通気性を有する。
本発明で使用するスノコパネル20は、後述するように裏返して使用可能なように、表面20aだけでなく裏面20bも含めて野生動物が歩行困難なように滑り易い面として形成してある。
板状を呈する縦リブ21は、上下端面21a,21bを縦向きで使用し、複数の縦リブ21がスノコパネル20の長手方向Yに沿って並行に配列してある。
縦リブ21を縦向きにして使用するのは、植物の育成高さを確保するためと、野生動物の着地面積を少なくして歩行をし難くするためである。
実用的には縦リブ21の全高hは例えば5~30mm程度が望ましい。
縦リブ21の板厚tは、例えば0.5~7mm程度とするのが望ましい。
本例では、縦リブ21は高さ方向の板幅を不均一にする形態として、縦リブ21の下端面20b側を波形面として形成した形態を示す。
縦リブ21に撓み性を持たせることで、スノコパネル20をロール状に巻き取ることが可能となるだけでなく、スノコパネル20を敷設する際に敷設面の起伏に追従させることが可能となる。
交差リブ22は縦リブ21の間隔保持機能と、野生動物の脚を滑り易くして歩行をし難くする滑落機能を併有する。
縦リブ21の下端面20b側には突部と凹部が交互に形成してあり、隣り合う縦リブ21の突部の間を交差リブ22が横架する。
スノコパネル20は、両リブ21,22で画成した複数の開口23を有する。
植物40の植生空間として機能する開口23の大きさは、野生動物の足(または蹄)が入り込まない寸法とする。
開口23の大きさは、縦リブ21の間隔l1と交差リブ22の間隔l2により求められ、例えば縦横何れかの一辺が5~60mm程度とするのが望ましい。
隣り合う各縦リブ21の側面21c,21cの間には、連続した保護溝24を有する。
複数の保護溝24は開口23と連通していて、植物40の植生空間として機能する。
保護溝24の溝幅は、例えば5~60mmとするのが望ましい。
保護溝24の溝幅が5mmより狭いと、野生動物に対する嫌気作用が減少し、60mmを越えると野生動物の歩行を可能にするとと共に、保護溝24内に繁茂した植物40が食べ尽くされるといった問題が起きる。
縦リブ21の間隔と交差リブ22の間隔は、例えばシカ、イノシシ、クマ等の野生動物の何れか一種の足(または蹄)または口先が入り込まない寸法とする。
獣害防止装置10の設置方法について説明する。
保護領域50は、斜面等に繁茂させた草花等の植物を野生動物の食害から護るため等の目的で特定領域内へ野生動物の侵入を規制する領域を意味する。
以降に本例で使用する植生マット30について説明する。
図1,3に例示した植生マット30は、上下面を有するマット基材31と、マット基材31の上面に間隔を隔てて列設した複数の植生袋32と、複数の植生袋32に投入した緑化基材33とを備える。
マット基材31は長尺の帯状体で、ロール状に巻回が可能である。
マット基材31と植生袋32の素材には、公知のポリエチレン等化学繊維またはジュート繊維、椰子繊維、藁等の生分解性の天然繊維が使用可能である。
植生袋32は独立した細長い筒状の袋体であり、マット基材31の長手方向に対して直行方向(横断方向)に向けて配置する。
マット基材31の長手方向に沿った植生袋32の設置間隔は、適宜選択が可能である。
緑化基材32は、土壌、植物種子、肥料を少なくとも含み、必要に応じて保水材、土壌改良資材等を追加して含む。緑化基材32は少なくとも植物種子を含んでいればよい。
これらの混合物を予め植生袋32に収容して封入しておく。
本例ではスノコパネル20と植生マット30を分離して使用する形態について説明するが、スノコパネル20と植生マット30は予めリングや紐材等の連結材を用いて一体化してもよい。
斜面Gには、例えば長方形を呈する保護領域50が形成してある。
本発明では、保護領域50の全域をスノコパネル20で覆う必要はない。
本発明では、保護領域50の外周縁部(左辺部50a、右辺部50b、上辺部50c、下辺部50d)を囲繞するように、複数組のスノコパネル20を四角枠状に敷設する。
各スノコパネル20は上方から固定ピン25を打設して、スノコパネル20と植生マット30を地面Gに固定する。
スノコパネル20の敷設幅(横断幅)は、野生動物が容易に飛び越えられぬ寸法を有する。スノコパネル20の敷設幅(横断幅)は、スノコパネル20の並列数を選択することで適宜調節できる。
保護領域50の外周縁部にスノコパネル20を敷設するに際し、保護領域50の全周に亘ってスノコパネル20の表面20aまたは裏面20bの何れか一面のみを露出して敷設してもよいし、保護領域50の全周に亘ってスノコパネル20の表面20aと裏面20bの両面を露出して敷設してもよい。
本例では、スノコパネル20の表面20aと裏面20bの両面を露出して敷設する形態について説明する。
保護領域50の左辺部50aと右辺部50bでは、スノコパネル20の表面20aを上向きにしつつ、スノコパネル20を保護領域50の傾斜方向に沿って縦向きに敷設する。
保護領域50の左辺部50aと右辺部50bと平行にスノコパネル20を縦向きに敷設することで、スノコパネル20の表面20aに複数の縦リブ21が傾斜方向に沿って露出する。
保護領域50の上辺部50cと下辺部50dでは、スノコパネル20の裏面20bを上向きにしつつ、スノコパネル20を保護領域50の傾斜方向と直交方向の横向きに沿って敷設する。
保護領域50の上辺部50cと下辺部50dと平行にスノコパネル20を横向きに敷設することで、スノコパネル20の裏面20bに複数の交差リブ22が傾斜方向に沿って露出する。
例えば、表面20aのみに複数の縦リブ21を形成したスノコパネル20を使用した場合、保護領域50の左辺部50aと右辺部50bには複数の縦リブ21を傾斜方向に沿ってスノコパネル20を敷設できる。
同様に、保護領域50の上辺部50cと下辺部50dに沿ってスノコパネル20を敷設すると、複数の縦リブ21が傾斜の横断方向に向いてしまい、野生動物の歩行を可能にする。
保護領域50の上辺部50cと下辺部50dにおいて、複数の縦リブ21を傾斜方向に沿うようにするには、短い寸法に切断した複数のスノコパネル20を縦向きに並べる必要があるため、保護領域50の上辺部50cと下辺部50dにおける施工性が非常に悪くなる。
保護領域50の上、下辺部50c,50dにスノコパネル20を横向きにして敷設するにあたり、スノコパネル20を短く切断したり、短く切断したスノコパネル20を敷き並べたりする必要がなくなり、簡易に施工することができる。
しかも、スノコパネル20が通気性を有するため、スノコパネル20が風の影響を受け難く、施工性に優れるうえに、敷設後においてはスノコパネル20が風により捲れ難くいため、固定ピン25の使用本数が少なくて済む。
図4~7等を参照して獣害防止装置10の作用について説明する。
保護領域50の外周縁部に敷設したスノコパネル20の表側面には、複数の細幅の縦リブ21と交差リブ22が露出している。
そのため、野生動物がスノコパネル20に載ろうとすると、脚裏に細幅の縦リブ21または交差リブ22が食い込んで違和感を与える。
野生動物が有蹄類の場合は、蹄の主蹄や副蹄の間に縦リブ21または交差リブ22が挟まると脚裏に不快感を与えて、保護領域内への侵入を困難にする。
そのため、野生動物が傾斜地を乗り越えることが困難となる。
植生マット30等から発芽した植物40は、生育を続けてスノコパネル20の開口23を経て保護溝24内に伸びる。
スノコパネル20の縦リブ21が植物40の保護部材として機能するため、野生動物は保護溝24内にある植物40を食べることができない。
スノコパネル20は、野生動物の侵入防止作用を発揮しながら防食作用も発揮する。
本発明の獣害防止装置10は、防食作用と野生動物の侵入防止作用を併有するため、野生動物の草食対象となるのは、保護領域50の外周縁部だけであり、保護領域50の大半の植物は獣害防止装置10が隠れるまで植物40が生育可能である。
さらに、保護領域50の外周縁部において、スノコパネル20の高さを越えて成長した植物40が野生動物に食べられたとしても、植物40は根元から食べられずに、スノコパネル20の高さ分だけは残存する。植物40の根元が残っていれば、植物40の再生は可能である。
したがって、保護領域50の全域をスノコパネル20で覆うことなく、保護領域50の外周縁部にスノコパネル20を敷設するだけで、保護領域50の全域における食害を防止できる。
獣害防止装置10を山岳地帯に設置した場合、冬季において、獣害防止装置10が積雪に埋設される。
獣害防止装置10は地面Gに沿って低い位置に敷設してあるだけであるから、獣害防止装置10に対して斜面谷側へ向けた大きな積雪荷重(または雪圧)が加わらない。
そのため、獣害防止装置10は地面Gに敷設した状態を保持できる耐久性を有しているので、積雪荷重によって獣害防止装置10が圧潰する心配がない。
斜面から浮かした状態で網状物を配置した従来の防食技術にあっては、雪塊が網状物の下面に潜り込んで網状物を剥離して破壊する。
そのため、雪塊の滑落によってスノコパネル20が地面Gから剥がれて変形したり破損したりする心配がなくなる。
獣害防止装置10は、融雪後に特別な補修やメンテナンスを必要としない。
保護領域50の左辺部50aと右辺部50bに敷設したスノコパネル20に降雨があると、雨水が開口23を通じてスノコパネル20を透過する一方で、透過しきれなかった雨水の一部が縦リブ21の上端面21aと側面21cに沿って流下する。
そのため、植生マット30の素材が紫外線劣化等により破損しても緑化基材33や地面Gの侵食を効果的に抑制できるので、獣害防止装置10の支持地盤を失うことなく、獣害防止作用を長期間に亘って持続することが可能となる。
20・・・・スノコパネル
20a・・・スノコパネルの表面
20b・・・スノコパネルの裏面
21・・・・縦リブ
21a・・・縦リブの上端面
21b・・・縦リブの下端面
21c・・・縦リブの側面
22・・・・交差リブ
23・・・・開口
24・・・・保護溝
30・・・・緑化マット
31・・・・マット基材
32・・・・植生袋
33・・・・緑化基材
40・・・・植物
50・・・・保護領域
50a・・・保護領域の左辺部
50b・・・保護領域の右辺部
50c・・・保護領域の上辺部
50d・・・保護領域の下辺部
Claims (6)
- 表面および裏面を有する帯状を呈するスノコパネルを使用し、該スノコパネルを保護領域の外周縁部に沿って敷設することで保護領域内への野生動物の侵入を防止しつつ、保護領域内の植物を保護する獣害防止構造であって、
前記スノコパネルはパネルの長手方向に沿って並列した板状を呈する複数の縦リブと、該縦リブと交差して並列した棒状を呈する複数の交差リブとを具備した通気性を有する格子構造体であり、
前記複数の縦リブはスノコパネルの表面側に露出して形成すると共に、前記複数の交差リブはスノコパネルの裏面側に露出して形成してあり、
前記複数の縦リブと複数の交差リブとが同一方向に揃って露出するように、交差して隣り合うスノコパネルの表面と裏面を異なる組み合わせにして保護領域の外周縁部に沿って複数のスノコパネルを敷設したことを特徴とする、
保護領域における獣害防止構造。 - 傾斜した保護領域の外周縁部を複数組のスノコパネルが四角枠状に囲繞し、保護領域の左辺部と右辺部には複数の縦リブを露出させたスノコパネルを傾斜方向に沿って敷設し、保護領域の上辺部と下辺部には傾斜方向に沿った複数の交差リブを露出させた別途のスノコパネルを傾斜方向と直交する方向に沿って敷設したことを特徴とする、請求項1に記載の保護領域における獣害防止構造。
- 前記縦リブと交差リブの交差部に上下に貫通して形成した複数の開口と、前記スノコパネルが隣り合う縦リブの間に縦リブの長手方向に沿って連続した形成した保護溝とが連通していることを特徴とする、請求項1に記載の保護領域における獣害防止構造。
- 前記縦リブはその上端面が平坦面であり下端面が波形面であることを特徴とする、請求項1に記載の保護領域における獣害防止構造。
- 前記スノコパネルは合成樹脂で一体的に成形されていることを特徴とする、請求項1に記載の保護領域における獣害防止構造。
- 前記保護領域の全面に亘って植生マットまたは植生シートが敷設してあることを特徴とする、請求項1に記載の保護領域における獣害防止構造。
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JP2019146488A (ja) * | 2018-02-26 | 2019-09-05 | 秀基 西田 | 獣忌避構造体及び獣忌避構造体を用いた獣忌避装置 |
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2022
- 2022-09-06 JP JP2022141345A patent/JP7186328B1/ja active Active
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