以下に、図面を参照しながら、本発明に係る画像処理装置、画像処理方法およびプログラム実施形態を詳細に説明する。また、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
[第1の実施形態]
(画像処理装置の要部構成)
図1は、第1の実施形態に係る画像処理装置の要部構成の一例を示す図である。図1を参照しながら、本実施形態に係る画像処理装置1の要部構成について説明する。
図1に示すように、画像処理装置1は、画像処理部10と、記憶装置20と、コントローラ30と、画像形成部40と、測色計50と、を備えている。
画像処理部10は、CPU(Central Processing Unit)等の制御装置と、RAM(Random Access Memory)等のメモリを備えており、起動時に、記憶装置20に記憶されているプログラムを、主記憶となるRAM(Random Access Memory)に展開することにより、以下に説明する各機能部の機能を実現する。また、RAMは、画像処理装置1の各部の演算結果等の各種データを一時記憶するためのワークエリアとしても使用される。
画像処理部10は、画像形成部40が印刷する補正用カラーチャート60の出力データの生成、および、記憶装置20に記憶されるICCプロファイル等のカラープロファイルである出力プロファイル21の補正を行う機能部である。画像処理部10は、補正制御点設定部11と、カラーチャート生成部12と、補正パラメータ生成部13と、プロファイル補正部14と、を有する。
補正制御点設定部11は、カラーチャート生成部12による補正用カラーチャート60の生成の際、および補正パラメータ生成部13における補正パラメータの生成の際に用いる補正制御点を設定する機能部である。補正制御点については、後述の図3で詳述する。
カラーチャート生成部12は、補正制御点設定部11により設定された補正制御点に基づき、補正用カラーチャート60を生成する機能部である。カラーチャート生成部12の構成および動作については、後述の図4~図7で詳述する。
補正パラメータ生成部13は、補正制御点、補正用カラーチャート60のパッチ構成、補正用カラーチャート60の測色値、および出力プロファイル21等を用いて出力プロファイル21の補正用の補正パラメータを生成する機能部である。補正パラメータ生成部13の処理については、後述の図8~図10で詳述する。
プロファイル補正部14は、補正パラメータ生成部13が生成した補正パラメータを用いて、出力プロファイル21の補正を行う機能部である。プロファイル補正部14の処理については、後述の図11で詳述する。
なお、図1に示す画像処理部10の補正制御点設定部11、カラーチャート生成部12、補正パラメータ生成部13およびプロファイル補正部14は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、図1に示す画像処理部10で独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、図1に示す画像処理部10で1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成するものとしてもよい。
記憶装置20は、出力プロファイル21、補正制御点のデータ、各種のプログラム、および、出力プロファイル21の補正処理に用いる種々のパラメータ等の各種のデータ等を記憶する装置である。記憶装置20は、例えば、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non-Volatile RAM)、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等によって構成される。
コントローラ30は、画像処理装置1の全体を制御する制御装置であり、接続された各デバイスを制御する。コントローラ30の一部またはすべては、例えば、CPU等の演算装置にソフトウェアであるプログラムを実行させることにより実現されてもよく、IC(Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよく、または、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現されてもよい。なお、コントローラ30の一部を、画像処理部10としてもよい。
画像形成部40は、コントローラ30により制御され、コントローラ30から受け付けた印刷データを用いて、記録媒体に画像を印刷するプリンタエンジン部である。また、画像形成部40は、カラーチャート生成部12により生成された補正用カラーチャート60の印刷データをコントローラ30を介して受信し、当該補正用カラーチャート60を印刷する。
なお、画像形成部40の画像形成方式は、特に限定されるものではなく、例えば、電子写真方式であってもよく、またはインクジェット方式であってもよい。画像形成部40は、例えば、CMYK(シアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、イエロー(Yellow)、ブラック(キー・プレート:Key Plate)の各色のトナーまたはインクを用いて、記録媒体に画像を印刷する。
測色計50は、コントローラ30により制御され、画像形成部40により印刷された補正用カラーチャート60の各パッチの測色を行う装置である。測色計50による測色値は、例えば、L*a*b*値であるものとする。
(画像処理装置が実行する処理)
図2は、第1の実施形態に係る画像処理装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。図2を参照しながら、本実施形態に係る画像処理装置1が実行する処理の流れについて説明する。
まず、画像処理部10の補正制御点設定部11は、デバイス依存の第1色空間(例えばCMYK色空間)における補正制御点を設定する(ステップS11)。
次に、画像処理部10のカラーチャート生成部12は、補正制御点設定部11により設定された補正制御点に基いて、補正用カラーチャート60を生成し(ステップS12)、補正用カラーチャート60のデータをコントローラ30へ出力する。この補正用カラーチャート60の生成処理(カラーチャート生成処理)については、後述の図5~図7で詳述する。
次に、画像形成部40は、コントローラ30から受信した補正用カラーチャート60のデータに基づいて、補正用カラーチャート60を印刷出力する(ステップS13)。
次いで、測色計50は、画像形成部40により印刷出力された補正用カラーチャート60の画像について測色する(ステップS14)。
次いで、画像処理部10の補正パラメータ生成部13は、補正制御点設定部11により設定された補正制御点、カラーチャート生成部12により生成された補正用カラーチャート60のパッチ構成、測色計50により測色された補正用カラーチャート60の測色値、および出力プロファイル21に基づいて、出力プロファイル21を補正するための補正パラメータを生成する(ステップS15)。この補正パラメータの生成処理(補正パラメータ生成処理)については、後述の図8~図10で詳述する。
次いで、画像処理部10のプロファイル補正部14は、補正パラメータ生成部13により生成された補正パラメータを用いて、出力プロファイル21を補正する(ステップS16)。
以上のステップS11~S16の流れで、画像処理装置1による処理が実行される。
(補正制御点について)
図3は、補正制御点の一例を示す図である。図3を参照しながら、本実施形態に係る画像処理装置1の補正制御点設定部11により設定される補正制御点について説明する。
出力プロファイル21の補正のために補正制御点設定部11が設定する補正制御点は、任意の色相において階調値を段階的に変えた形で設定される。補正制御点は、主にCMYのような一次色、RGBのような二次色、グレーのような三次色等、代表的な色相に対して設定される。
図3では、CMYK値のCMY値に対して設定された補正制御点(ID0~IDn)の一例を示している。このうち、例えば、ID0~ID4は、Y色相の色を補正するための補正制御点に相当し、C色相およびM色相の階調値を一律とすると共に、Y色相の階調値を0、64、128、192、255と変化させて設定したものである。
(カラーチャート生成部の機能ブロックの構成および動作)
図4は、第1の実施形態に係る画像処理装置のカラーチャート生成部の機能ブロックの構成の一例を示す図である。まず、図4を参照しながら、画像処理装置1のカラーチャート生成部12の機能ブロックの構成について説明する。
図4に示すように、画像処理部10のカラーチャート生成部12は、第1色変換部121と、色値変位処理部122と、第2色変換部123と、パッチ配置部124と、を有する。
第1色変換部121は、デバイス依存の第1色値であるCMYK値のうちCMY値を、デバイス依存の第2色値であるHSL値(色相(Hue)、彩度(Saturation)、輝度(Lightness))に変換する機能部である。
色値変位処理部122は、第1色変換部121により変換された第2色値であるHSL値を、所定の変位量で変位させる機能部である。
第2色変換部123は、色値変位処理部122により変位されたHSL値を、CMY値に逆変換する機能部である。
パッチ配置部124は、色値変位処理部122により変位される前の色値、および変位された後の色値で作成したパッチを記録媒体のページ内に配置して補正用カラーチャート60を生成する機能部である。
なお、図4に示すカラーチャート生成部12の第1色変換部121、色値変位処理部122、第2色変換部123およびパッチ配置部124は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、図4に示すカラーチャート生成部12で独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、図4に示すカラーチャート生成部12で1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成するものとしてもよい。
図5は、第1の実施形態に係る画像処理装置のカラーチャート生成処理の一例を示すフローチャートである。図6は、1つの補正制御点に対する補正パッチ群の一例を示す図である。図7は、補正用カラーチャートの一例を示す図である。図5~図7を参照しながら、カラーチャート生成部12によるカラーチャート生成処理の流れについて説明する。
カラーチャート生成処理では、まず、第1色変換部121が、補正制御点設定部11により設定された補正制御点のデバイス依存の第1色値であるCMYK値のうちCMY値を、デバイス依存の第2色値であるHSL値に変換する(ステップS21)。第1色変換部121によるCMY値からHSL値への変換は、下記の式(1)~(14)により実行される。なお、式(1)~(14)におけるC、M、Yの各値は、0~255の値をとる
。
次いで、色値変位処理部122は、第1色変換部121によって上述の式(1)~(14)を用いて変換された第2色値であるHSL値を、所定の変位量で変位させる(ステップS22)。ここで、所定の変位量は、補正対象となる出力プロファイル21を使用するプリンタの最大の変動幅から、それを超える範囲で設定するものであればよい。
例えば、図6に示すように、1つの補正制御点に対して、複数のパッチ(以下、補正用パッチ群と称する)が生成されるものとする。ここでは、1つの補正制御点に対応して、それぞれ5つのパッチからなる補正用パッチ群が生成される。図6に示すパッチNo.0~No.4の各パッチが、上述の5つのパッチからなる補正用パッチ群に対応し、HSLKの各値は、ある補正制御点に対応して出力される補正用パッチ群のHSL空間における色値を示している。上述のステップS21において、第1色変換部121により補正制御点のCMY値がHSL値に変換され、このときの変換されたHSL値が、図6におけるパッチNo.0のHSL値であるH0、S0、L0に対応する。また、第1色変換部121による変換される前の補正制御点のCMYK値のうちのK値を、パッチNo.0に対応するK値としてK0で示している。
そして、色値変位処理部122は、第1色変換部121により変換された各値(H0,S0,L0)に基づいて、色相H方向の負方向に所定の変位率α[%]で変位させたものを、パッチNo.1に対応するHSL値(H0-α,S0,L0)として求める。同じく、色値変位処理部122は、(H0,S0,L0)に基づいて、色相H方向の正方向に所定の変位率α[%]で変位させたものを、パッチNo.2に対応するHSL値(H0+α,S0,L0)として求める。同じく、色値変位処理部122は、(H0,S0,L0)に基づいて、彩度S方向の正方向に所定の変位率β[%]で変位させたものを、パッチNo.3に対応するHSL値(H0,S0+β,L0)として求める。同じく、色値変位処理部122は、(H0,S0,L0)に基づいて、彩度S方向の負方向に所定の変位率β[%]で変位させたものを、パッチNo.4に対応するHSL値(H0,S0-β,L0)として求める。
次いで、第2色変換部123は、色値変位処理部122により変位されたHSL値を、CMY値に逆変換する(ステップS23)。第2色変換部123によるHSL値からCMY値への変換は、下記の式(15)~(30)により実行される。なお、Kの値については、元の値をそのまま用いればよい。
これにより、図6に示す各HSL値をCMY値に逆変換した値と、元のK値とからなるパッチNo.0~No.4の5つのパッチが生成される。この5つのパッチが1の補正制御点に対応する1の補正用パッチ群となる。
次いで、パッチ配置部124は、色値変位処理部122により変位される前の色値、および変位された後の色値で作成したパッチを記録媒体のページ内に配置して補正用カラーチャート60を生成する(ステップS24)。補正用カラーチャート60は、図7に示すように、各補正制御点(ID0~IDn)にそれぞれ対応する補正用パッチ群(パッチNo.0~No.4)によって生成される。本実施形態では、1の補正制御点に対応する補正用パッチ群は、CMY値からHSL値に変換後、色相Hおよび彩度Sの値を変位させた後に逆変換した値からなる4つのパッチ、および変位させていないパッチの5つのパッチからなるため、補正用カラーチャート60には、補正制御点数×5のパッチが配置されることになる。
(補正パラメータ生成部による補正パラメータ生成処理)
図8は、第1の実施形態に係る画像処理装置の補正パラメータ生成処理の一例を示すフローチャートである。図9は、第1の実施形態に係る画像処理装置の補正パラメータ生成処理を説明する図である。図10は、補正パラメータの一例を示す図である。図8~図10を参照しながら、補正パラメータ生成部13による補正パラメータ生成処理の流れについて説明する。
補正パラメータ生成処理では、まず、補正パラメータ生成部13が、測色計50により補正用カラーチャート60の画像に対して測色された結果である、ある1の補正制御点に対応する補正用パッチ群の測色値を、コントローラ30を介して取得する(ステップS31)。また、補正パラメータ生成部13は、補正制御点のデバイス依存の第1色値であるCMYK値を取得する(ステップS32)。
次いで、補正パラメータ生成部13は、記憶装置20に記憶されている出力プロファイル21を読み出し、補正制御点のCMYK値を、デバイス非依存の色値であるL*a*b*値に変換する(ステップS33)。
次いで、補正パラメータ生成部13は、変換した値(L*a*b*値)と、補正用パッチ群の測色値(L*a*b*値)で形成される平面との距離を求め、当該距離が最小となる点(距離最小点)(L*a*b*値)であるか否かの判定を行う(ステップS34)。以下に、距離最小点の探索について、図9を参照しながら説明する。
図9においては、距離最小点CP1とそれを囲む補正用パッチ群の測色値を示す点m1、m2、m4の拡大図を併せて示している。図9(a)において、点P1~P5は、図3に示した補正制御点のうちの5つの補正制御点のCMYK値を出力プロファイル21を用いてL*a*b*値に変換した点を表している。また、点m1~m4は、図9に示す例において、点P4の補正制御点に対応した補正用パッチ群の測色値を表している。また、図9に示す例では、点P4の補正制御点の彩度Sが最大値となっているため、彩度Sについて正方向に振ったパッチ(図6の例におけるNo.3のパッチ)は除いた4つのパッチの測色値(例えばNo.0、1、2、4)に対応するパッチの測色値)である。なお、点m1~m4は、輝度を維持したまま変位した場合に対応する測色値であるため、明度も近い値となり、点m1~m4で形成される面は、明度軸(L*軸)に対しては、垂直に近い平面となっている。
ここでは、まず、補正パラメータ生成部13は、補正用パッチ群の測色値を示す点m1~m4で形成される平面の式を求める。三次元の平面の式は、3点が決まれば一意に決定される。また、3点の組み合わせは、元のパッチ(No.0のパッチ)の測色値は固定し、色相Hを変位させたパッチ(No.1、2のパッチ)のうちいずれかのパッチを1つと、彩度Sを変位させたパッチ(No.3、4のパッチ)のうちいずれかのパッチ1つを選択して構成する。
補正用パッチ群は、色相Hを正負の双方向、彩度Sを正負の双方向に振っているため、通常、2×2の4通りの平面が形成されるが、図9に示す例では、彩度Sは負方向のみに振ったものであるため、平面は、(m1,m2,m4)および(m1,m3,m4)の2通りの組み合わせで形成される。
次いで、点P4から点P5に向かってCMYK値を動かしながら、出力プロファイル21を用いて色変換を行い、L*a*b*値を求める。このとき、各L*a*b*値と、平面との距離を都度算出し、当該距離が最小となる点(距離最小点CP1)を求める。
ここで、図8に戻って説明を続ける。距離最小点でない場合は(ステップS34:No)、デバイス依存の第1色値であるCMYK値の調整をする(ステップS35)。具体的には、補正用パッチ群の測色値の平面よりも明度が高い場合はCMYK値が大きくなる方(すなわち明度が下がる方向)に調整し、補正用パッチ群の測色値の平面よりも明度が低い場合はCMYK値が小さくなる方(すなわち明度が上がる方向)に調整する。ステップS35の調整処理後は、ステップS33に戻る。ステップS33~S35の処理は、距離最小点が見つかるまで繰り返される。
距離最小点を探索した場合は(ステップS34:Yes)、補正パラメータ生成部13は、補正用パッチ群の測色値(L*a*b*値)と、距離最小点(L*a*b*値)とに基づいて、補正用パッチ群のCMYK値の補間用の重みを算出する(ステップS36)。
図9に示す例では、補正パラメータ生成部13は、距離最小点CP1を求めたら、図9(b)に示すように、距離最小点CP1のL*a*b*値と、距離最小点CP1を囲むパッチの測色値(ここでは、点m1、m2、m4に対応する測色値)のL*a*b*値とを取得する。そして、図9(b)に示すように、距離最小点CP1から点m1、m2、m4が示す各パッチの測色値に補助線を引き、距離最小点CP1と点m2と点m4とで囲まれる領域、距離最小点CP1と点m1と点m4とで囲まれる領域、距離最小点CP1と点m1と点m2とで囲まれる領域の3つの領域に分割する。次いで、補正パラメータ生成部13は、この分割された領域の面積w1、w2、w3を求め、これを補間演算の重みとする。
次いで、補正パラメータ生成部13は、測色した補正用パッチ群のデバイス依存の第1色値であるCMYK値を取得する(ステップS37)。図9に示す例では、補正パラメータ生成部13は、距離最小点CP1を囲む補正用パッチ群を示す点m1、m2、m4についてのCMY値(C1,M1,Y1)、(C2,M2,Y2)、(C3,M3,Y3)を取得する。
そして、補正パラメータ生成部13は、取得した補正用パッチ群のCMYK値を、ステップS36で算出した重みを用いて補間し、補正パラメータの出力値を求める(ステップS38)。具体的には、補正パラメータ生成部13は、ステップS36で算出した重みw1、w2、w3を用いて、下記の式(31)~(33)により補間演算を行う。
次いで、補正パラメータ生成部13は、調整後の補正制御点のCMYK値を入力値とし、補正用パッチ群の補間結果のCMYK値を出力値として、補正パラメータに設定する(ステップS39)。なお、K値については、各パッチで色値を変位させていないため、元の値がそのまま出力値となる。
次いで、補正パラメータ生成部13は、すべての補正制御点について、補正パラメータの入出力値を設定したか否かを判定する(ステップS40)。未設定の補正制御点がある場合(ステップS40:No)、次の補正制御点についての処理を行うため、ステップS31へ戻る。一方、すべての補正制御点に対し設定済みである場合(ステップS40:Yes)、補正パラメータ生成処理を終了する。
以上説明した補正パラメータ生成処理で生成される補正パラメータの一例を図10に示す。図10示す補正パラメータは、各補正制御点(ID0~IDn)に対応する入力値(INPUT)と出力値(OUTPUT)とを並記して示している。なお、入力値が図3に示した値から変化しているのは、距離最小点CP1の探索において、CMYK値を調整しているためである(図8のステップS35、図9参照)。
(プロファイル補正部によるプロファイル補正処理)
図11は、第1の実施形態に係る画像処理装置のプロファイル補正処理を説明する図である。図11を参照しながら、プロファイル補正部14によるプロファイル補正処理について説明する。
図11では、x軸にC、y軸にM、z軸にYの色値を取った色空間の模式的に示されてる。このため、図中左下の原点が白色(W)、右上がCMYベタのグレー(Gray)に相当する。
CMYのような一次色、RGBのような二次色、グレーのような三次色等の代表的な色相に対して補正制御点が設定された場合、図11の太線で表されたWから、C、M、Y、R、G、Bの各頂点を通ってGrayに向かう6つのラインと、WからGrayへの対角線(以下、W-Grayラインと称する)の位置に補正パラメータが存在する。
プロファイル補正処理では、まず、プロファイル補正部14は、補正対象の出力プロファイル21のLUTから各格子点のCMYK値を取得する。なお、ICCプロファイル等一部のプロファイルではLUTの前段または後段に、ガンマ変換、マトリクス変換等を付加することが可能となっている。このため、ガンマ変換、マトリクス変換等がなされる場合は、最終出力が合うように逆変換を施しておくことが必要となる。
次いで、プロファイル補正部14は、取得したCMYK値のうちCMY値を用い、その大小関係からCMY色空間のどの領域に含まれるか判定を行い、それに基づき補正に用いる補正パラメータを決定する。例えば、図11に示す格子点IPの場合、C>M>Yとなっており、C色相とG色相、W-Grayラインの補正パラメータが使用される。
この3つの補正パラメータを用いて以下の手順で補正値が求められる。まず、プロファイル補正部14は、CMY値をHSL値に変換する。次いで、プロファイル補正部14は、変換したHSL値について、彩度Sを1に補正した後、色相HをCの色相の値、およびGの色相の値にそれぞれ補正する。
プロファイル補正部14は、補正後のHSL値を、CMY値に逆変換して補正パラメータを適用する。補正パラメータを用いた補正は、対象制御ラインの補正パラメータの入力値から補正対象のCMY値を挟む値を探索する。
そして、プロファイル補正部14は、対応するOUTPUT値を取得し、線形補間、プライン補間等種々の補間方法を用いて補正後のCMY値を出力する。
また、プロファイル補正部14は、C色相の値と、G色相の値のそれぞれで得られた補正後のCMY値を、以下の式(34)~(36)により、元の色相HとC色相、G色相の色相Hc、Hgとの差の比率によって重みづけ補間する。なお、Cg、Mg、Ygは、それぞれG色相の補正で得られたCMY値であり、Cc、Mc、Ycは、それぞれC色相の補正で得られたCMY値である。
さらに、プロファイル補正部14は、彩度Sを1に補正したのち、同様にW-Grayラインの補正パラメータで補正を行い、CS=0、MS=0、YS=0を得る。最後に、プロファイル補正部14は、下記の式(37)~(39)により、CS=1、MS=1、YS=1、CS=0、MS=0、YS=0を彩度Sで補間し、最終的な補正値CMYを得る。
なお、K値については補正元のKの値がそのまま使用される。以上説明したプロファイル補正処理がLUTの全格子点に対して実行される。
以上のように、画像処理部10では、出力プロファイルの補正において、出力デバイスのデバイス依存の第1色空間(例えばCMYK色空間)の色値(CMYK値)を、出力デバイスのデバイス依存の第2色空間(例えば、輝度、彩度、色相で表されるHSL色空間)の色値(HSL値)に変換した後、デバイス依存の第2色空間において各色値を所定の値変位させたカラーパッチを作成して出力し、その測色値とデバイス非依存の目標色値(L*a*b*値)から補間によりデバイス依存の目標色値を求めている。これにより、出力プロファイルの補正精度を向上させることができる。すなわち、CMYKに比べて等明度性が維持できる色空間で変位させたパッチを生成することができ、明度方向の補間精度を向上した出力プロファイルを作成することが可能となる。
(測色計の機能ブロックの構成および動作)
図12は、第1の実施形態に係る画像処理装置の測色計の機能ブロックの構成の一例を示す図である。図13は、マスキング係数の算出方法を説明する図である。図14は、広域色相検出について説明する図である。図15は、色相分割マスキング色変換の色相分割を説明する図である。図16は、4つの設定色についてのスキャナベクタとプリンタベクタとの対応を説明する図である。図17は、スキャナベクタおよびプリンタベクタを説明する図である。図12~図17を参照しながら、画像処理装置1の測色計50の機能ブロックの構成について説明する。
図12に示すように、画像処理装置1の測色計50は、スキャナ補正部51(取得部の一例)と、CMYKパターン情報記憶部52と、色カテゴリ判定部53と、白色予測部54(予測部)と、CMYKパターン色変換部55(変換部)と、白色補正部56(補正部)と、を有する。なお、上述の各機能部は、コントローラ30の一部であってもよい。
測色計50は、画像処理装置1の画像形成部40の出力画像(内部パターン)を装置内のインラインセンサまたはカラースキャナの読取値であるRGB値を高精度に、CIEXYZ色空間(以下、単にXYZ色空間と称する)とすることで、上述の入力色であるL*a*b*色空間に標準定義式を用いて変換することが可能である。記録媒体の紙白情報と、記録媒体に画像形成したプロセス(CMYK)カラーの単色および混色テスト階調パターンを用いて、画像処理装置1の色変換パラメータを補正する際、スキャナ(読取部の一例)またはインラインセンサ(読取部の一例)の読取値を色変換して出力γ変換テーブルまたは3D-LUTを調整することで、長時間使用による画像処理装置1の画像出力濃度に変化があっても、適切な狙いの出力濃度に補正することができ、出力画像の色再現性が保持される。
画像処理装置1(測色計50)内のインラインセンサは、上述のプロセス(CMYK)カラーで画像形成された内部パターンを読み取ることにより得られる原稿の濃淡情報に基づき、RGBのデジタル画像データを出力する。インラインセンサは、LED(Light Emitting Diode)光源と光電変換素子とで構成されるCIS(コンタクトイメージセンサー)、Å/Dコンバータ、および、それら駆動させる駆動回路を備え、原稿の濃淡情報から、RGB値の各8ビットのデジタル画像データを生成して出力する。この際、デジタル画像データに対し、シェーディング等、読取り装置(インラインセンサまたはスキャナ)の機構上(照度歪み等)発生する読取りムラ等を補正する。測色計50の処理部分は、階調パターンに対するRGB値のデジタル画像データ(読取値)に対し、出力される読取値(読取領域内のRGB各値の画素値の平均)を取得する。このように得られたRGB値を図16に示すような各機能ブロックの処理により、上述のCIEXYZ色空間(CIE三刺激値)に色変換する。例えば、色カテゴリ判定部53は、CMYKパターン情報記憶部52からのプロセスCMYKデータに応じて、紙白を含むスキャナ補正部51からのRGB値を、例えば、以下のような16の色カテゴリに分類する。そして、CMYKパターン色変換部55は、デバイス依存のRGB値からXYZ値(CIE三刺激値)への色変換を行う。
(色カテゴリ0) 紙白:C=M=Y=K=0
(色カテゴリ1) 1次色:C単色
(色カテゴリ2) 1次色:M単色
(色カテゴリ3) 1次色:Y単色
(色カテゴリ4) 1次色:K単色
(色カテゴリ5) 2次色:CM混色
(色カテゴリ6) 2次色:MY混色
(色カテゴリ7) 2次色:YC混色
(色カテゴリ8) 2次色:CK混色
(色カテゴリ9) 2次色:MK混色
(色カテゴリ10) 2次色:YK混色
(色カテゴリ11) 3次色:CMY混色
(色カテゴリ12) 3次色:CMK混色
(色カテゴリ13) 3次色:MYK混色
(色カテゴリ14) 3次色:YCK混色
(色カテゴリ15) 4次色:CMYK混色
ここで、上述の色カテゴリ15については、色カテゴリ判定部53は、以下のようにCMYK混色の混合比に応じてさらに色カテゴリを分割して、CMYKパターン色変換部55は、色変換パラメータのセットを切換えて色変換してもよい。
MIN(CMY)/K > 1.0 (色カテゴリ15-1)
1.0 ≧ MIN(CMY)/K > 0.75 (色カテゴリ15-2)
0.75 ≧ MIN(CMY)/K > 0.5 (色カテゴリ15-3)
0.5 ≧ MIN(CMY)/K > 0.25 (色カテゴリ15-4)
MIN(CMY)/K ≦ 0.25 (色カテゴリ15-5)
上述の色カテゴリ0として定義した紙白の読取値に対する色変換については、白色予測部54により、以下の変換式である式(40)~(42)に基づいて独立に算出することで、任意の記録紙(記録媒体)(紙白)に対する色予測が行われる。
上記の式(40)~(42)において、入力値であるWRinは読取デバイスのR出力(紙白のR成分読取値)であり、WGinは読取デバイスのG出力(紙白のG成分読取値)であり、WBinは読取デバイスのB出力(紙白のB成分読取値)である。また、出力値であるWXoutはX出力(紙白のXYZ色空間のX予測値)であり、WYoutはY出力(紙白のXYZ色空間のY予測値)であり、WZoutはZ出力(紙白のXYZ色空間のZ予測値)である。これらWXout、WYout、WZoutは、デバイス非依存の絶対色値に相当する。また、coef[wHue]は色相領域wHueにおける紙白変換用マスキング係数であり、const[wHue]は色相領域wHueにおける紙白変換用定数である。
本実施形態において、白色予測部54は、紙白のRGB読取値に基づいて、色相領域判定を行い、マスキング係数を切換えて色変換(紙白の色予測)する。上述のRGB読取値に対する色相の分割は、図13に示すように3次元のRGB色空間に対し、無彩色軸(Dr=Dg=Db)を中心として放射状に拡がる平面で分割を行う。上述の無彩色軸の定義としては、例えば、予め定めた標準記録紙(基準記録媒体の一例)とK(ブラック)で形成した出力パッチのRGB読取値および分光測色計による実測値から、D測色計50等の標準光源下でのL*a*b*色空間におけるa*=b*=0のグレー軸がR=G=Bになるように近似して、図12に示すスキャナ補正部51によるスキャナ補正で1次元ルックアップテーブル変換によるγ補正を実施することで調整する。さらに、白色予測部54による紙白に対する色予測に適用する場合は、図13における設定色を、以下のように設定する。
色1:基準白色(例えば、予め定めたD測色計50標準光源下におけるL*=95で、a*=b*=0となる白色点)
色2:紙白の最低明度(例えば、予め定めた紙白として扱う最低明度L*=85で、a*=b*=0となる無彩色)
色3:紙種A(例えば標準記録紙)の紙白
色4:紙種B(例えば蛍光増白紙)の紙白
具体的な色相領域判定は、画像信号(snpr,snpg,snpb)を色相信号(HUE)に変換して色相境界値(HUE00~11)と比較し、その結果により色相領域を判定して色相領域信号(Huejo)を出力することで実現する。本実施形態では、12分割する場合について記載する。
そして、画像信号(snpr,snpg,snpb)の差分(例えば、G成分-R成分とB成分-G成分)から色差信号(X,Y)を生成する。次いで、色差信号(X,Y)から、広域色相信号(HUEH)を生成する。広域色相信号(HUEH)は、図14に示すように、X-Y信号平面を8分割した時の位置を示す。
次いで、広域色相信号(HUEH)に応じて色差信号(XA,YA)を生成する。色差信号(XA,YA)はX-Y信号平面を回転して、「hueh=0」の領域に移動させた時の座標とする。そして、色差信号(XA,YA)から狭域色相信号(HUEL)を生成する。狭域色相信号(HUEL)は色差信号平面の座標の傾き(HUEL/32 = YA/XA)である。
次いで、色相境界レジスタの色相境界信号(HUE00~HUE11:8ビット)を色相信号(HUEHL{HUEH,HUEL})との大小関係を比較して、色相領域(HUE)を生成する。
色相領域判定された色相に基づき、色相に応じたマスキング演算を行う。本実施形態においては、RGB読取値からXYZ値へのマスキング演算が行われる。ここで、12の色相分割の線形マスキングの積和演算を行う場合、RGBの各色毎に独立に処理される。色相領域判定により算出された色相判定信号HUEに基づいて、色補正係数と色補正定数とを選択し演算する。上述の色相毎のマスキング係数は、無彩色軸上の2点および両境界平面状の2点の合計4点の(Dr,Dg,Db)と(Dc,Dm,Dy,Dk)との対応関係が判れば決定できる。ここでは、入力色をRGB(スキャナベクタ)、出力色(対応色)をCMYK(プリンタベクタ)と定義して説明しているが、入出力データの属性は任意に設定できるため、汎用的な色変換が可能で、スキャナによるRGB読取値からXYZ値またはsRGB値等へのマスキング演算が可能である。
図13において、4点の(Dr,Dg,Db)⇔(Dc,Dm,Dy,Dk)の対応が図16に示すような対応である場合、これらをまとめた行列式の対応を結び付けるマスキング係数は、色1~色4の右辺をまとめた行列の逆行列と左辺をまとめた行列との積を演算することで算出できる。
このように無彩色軸上の2点(白、黒)と両境界平面状の2点との合計4点の関係が決まれば、マスキング係数が求まる。このため、色変換のパラメータ設計としては、入出力データの属性に関わらず、図16の右辺をスキャナベクタ、左辺をプリンタベクタとして定義し、各分割点のスキャナベクタ、プリンタベクタを求めることになる。
色相分割マスキング色変換の一例としては、図15に示すように、色空間の分割点を1次色(C,M,Y)および2次色(R,G,B)に対し、それぞれ2点の計12点で分割を行っている。したがって、図17に示すように、無彩色軸上の白点および黒点と、色校正テストパターンで用いるCMY単色とを含めた14点の最終的なスキャナベクタおよびプリンタベクタを設定後、色相領域毎にマスキング係数を製造工程において読取デバイス毎に算出することができる。また、この場合、各色相領域の境界における連続性は保たれる。
なお、本実施形態のように、白色予測部54が紙白のXYZ値を予測する場合、上述の有彩色のプリンタベクタとして、代表的な記録用紙の測色値(XYZ値)を上述のプリンタベクタ、有彩色のスキャナベクタとして、センサのRGB読取値(紙白のエリア平均)に置き換えることで、白色予測部54で用いるマスキング係数を求めることができる。また、共通で用いる無彩色(白、黒)としては、基準白色(例えば、予め定めたD50標準光源下におけるL*=95で、a*=b*=0となる白色点)と記録紙として定義する紙白の最低明度(例えば、予め定めた紙白として扱う最低明度L*=85で、a*=b*=0となる無彩色)を設定する。
上述した画像処理装置1で使うプロセスカラー(本実施形態では、以下に示す予め設定したCMYKデータが0でない版)のCMYKデータに応じた色カテゴリへの分類を行う際、画像形成部40のγ特性補正後の出力レベルで混合比の演算を実施する。なお、本実施形態では、上述の階調パターンを用いた混色キャリブレーション(色度補正)について説明する。
色安定化制御用テストチャートは、カラーバランスを取る上で最重要色であるグレーの階調パッチパターンであり、ブラック(K)のみのグレー階調パッチと、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)を混色したプロセスグレー階調パッチで構成される。画像処理装置1の画像処理部10において色度が同じであるブラック(K)のみのグレー階調パッチとプロセスグレー階調パッチとが対をなして並んでいる。このパッチの色度を、カラーセンサで検知し、対をなすブラック(K)のみのグレー階調パッチとプロセスグレー階調パッチとの色差が無くなるように、キャリブレーションテーブルへフィードバックをする。インラインセンサの読取値であるRGB値をデバイス非依存のXYZ値やsRGB値へ変換する際には、上述したCMYKパターン情報記憶部52のCMYK値の組合せに基づく色カテゴリ毎にマスキング係数を切り換えて、線形変換を実施する。
本実施形態の画像処理装置1における測色計50では、離散的なCMYK値の内部パターンについて色変換を行うため、各色カテゴリの境界での連続性は考慮しなくてもよい。したがって、予め定めた基準となる記録紙に画像形成したCMYKの評価パターンであって、スキャナまたはインラインセンサの読取位置毎の読取特性(ばらつき特性)を検出するためのパターンについて、各色カテゴリ毎にRGB読取値とXYZ等の測色値を用いた最小二乗法等で、マスキング係数を求めることが可能である。
上記の式(43)~(45)において、入力値であるRinは読取デバイスのR出力(評価パッチのR成分読取の領域平均値)であり、Ginは読取デバイスのG出力(評価パッチのG成分読取の領域平均値)であり、Binは読取デバイスのB出力(評価パッチのB成分読取の領域平均値)である。また、出力値であるXoutはX出力(標準X成分:CIEXYZ_X)であり、YoutはY出力(標準Y成分:CIEXYZ_Y)であり、ZoutはZ出力(標準Z成分:CIEXYZ_Z)である。また、色変換パラメータであるcoef[Hue_x]は色カテゴリHue_xにおける色変換用マスキング係数であり、const[Hue_x]は色カテゴリHue_xにおける定数である。また、WXout、WYout、WZoutは、上述の式(40)~(42)で算出された紙白のXYZ色空間の予測値である。また、WXdefは、基準記録紙のXYZ色空間でのX値であり、WYdefは、基準記録紙のXYZ色空間でのY値であり、WZdefは、基準記録紙のXYZ色空間でのZ値である。
上述のように、白色予測部54による紙白領域のXYZ予測値は、上述の内部パターンC=M=Y=K=0の紙白部(色カテゴリ0)に対する上述の式(40)~(42)で算出される紙白予測値であり、予め求めた基準記録紙のXYZ値との比を色変換結果に乗じることで、任意の記録紙(紙白)の絶対色に補正することができる。また、上述した色カテゴリ11(3次色:CMY混色)については、各色成分の比率に応じて色相が大きく変化するため、上述した色相分割マスキング色変換を実施することで、高精度な色予測が可能となる。
インラインセンサまたはスキャナ(以下、単にセンサと称する)のRGB出力の分光感度と、国際照明委員会が定めるXYZ色度とが完全に線形な関係ではないことの影響を少しでも低減するため、プロセスグレーについては、線形マスキングの代わりにセンサのRGB出力の3次の項まで用いる式を使用することも可能である。センサのRGB出力を変換して求めたXYZ値と、国際照明委員会が定める分光反射率より求めるXYZ値の間に生じた色度値の差の平均値である。両方のXYZ値を国際照明委員会が定める定義通りにL*a*b*値へ変換した後に色差ΔEとして算出する。測定したパッチがK(ブラック)のみのグレー階調パッチか、またはプロセスグレー階調パッチかという、使用している色材の種類というパッチの属性毎に行列を変えた方が、センサのRGB出力を変換して求めたXYZ値と国際照明委員会が定める分光反射率より求めるXYZ値の間に生じた色差ΔEを小さくできたことを示している。これは、センサのRGB出力の分光感度と国際照明委員会が定めるXYZ値の等色関数における非線形性の影響度を、パッチの属性毎に行列を変えることにより低減できたことによる。したがって、行列をパッチの属性毎に設定する色変換方法を採用することで、センサのRGB出力を変換して求めるXYZ値と国際照明委員会が定める分光反射率より求めるXYZ値の間に生じる色差を低減できることが分かる。なお、本方法はCMYKパッチの混合比率がパッチ検知時に判定できることが前提となる。上述のセンサを搭載した画像処理装置1においては、画像形成順にパッチを検知するため、センサで検知したパッチの属性の判断ができるので、本方式を適用することができる。また、ここではセンサのRGB出力からXYZ値へ変換する場合について説明したもので、二つの異なる色空間の等色関数に非線形性がある場合に本実施形態で説明した方法が有効である。
さらに、ここではブラック(K)のみのグレー階調パッチとイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)を混色したプロセスグレー階調パッチの2種の属性に分類したものの、属性の分類方法はここに示した色材の組合せに限られることはない。
また、センサのRGB出力をXYZ値に変換する方法は行列による一次変換の方式の他、多項式変換、ニューラルネットワークを使用する方法、ルックアップテーブルを使用する方法がある。いずれの方法においてもパッチの属性を判断することができれば、パッチの属性毎にニューラルネットワークで使用するニューロン間の接続の重みを変えること、または使用するルックアップテーブルを変えることによって、センサのRGB出力を変換して求めるXYZ値と国際照明委員会が定める分光反射率より求めるXYZ値の間に生じる差を低減もできる。
以上説明したように、センサのRGB出力をXYZ値に変換する際に使用する各種パラメータを、パッチの属性毎に変えることにより、センサのRGB出力を変換して求めるXYZ値と国際照明委員会が定める分光反射率より求めるXYZ値の間に生じる差を低減することができ、そのXYZ値を使用する色安定化制御の精度を向上させることが可能となる。
以上のような本実施形態に係る画像処理装置1の構成を備えることによって、分光測色計を用いずに異なる記録媒体に対応したカラー画像の画像形成に対する色校正を行うことができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る画像処理装置について、第1の実施形態に係る画像処理装置1と相違する点を中心に説明する。第1の実施形態では、補正制御点に対応するデバイス依存の第2色値(HSL値)に対して所定の変位量で変位させる動作について説明した。この場合、グレー付近の色はHSL値の変更に対する感度が鈍いため、適切な範囲でパッチを振って出力することが難しいという問題がある。そこで、本実施形態では、無彩色領域においてはCMYK値でパッチを変位させることにより、さらに適切な補正パラメータを得られるようにする動作について説明する。なお、本実施形態に係る画像処理装置(本実施形態においても画像処理装置1と称するものとする)は、上述の図1に示した構成のうち、カラーチャート生成部12の機能ブロック構成が異なるカラーチャート生成部12aを有する。
(カラーチャート生成部の機能ブロックの構成および動作)
図18は、第2の実施形態に係る画像処理装置のカラーチャート生成部の機能ブロックの構成の一例を示す図である。まず、図18を参照しながら、画像処理装置1のカラーチャート生成部12aの機能ブロックの構成について説明する。
図18に示すように、カラーチャート生成部12aは、第1色変換部121aと、色値変位処理部122aと、第2色変換部123aと、パッチ配置部124aと、色領域判定部125と、を有する。
第1色変換部121aは、デバイス依存の第1色値であるCMYK値のうちCMY値を、デバイス依存の第2色値であるHSL値に変換する機能部である。
色領域判定部125は、第1色変換部121aにより変換されたHSL値について、有彩色領域か無彩色領域かの判定を行う機能部である。
色値変位処理部122aは、色領域判定部125の判定結果に応じて、判定結果が有彩色領域の場合は、HSL値をそれぞれに対応した所定の値で変位させ、無彩色領域の場合は、CMYK値をそれぞれに対応した所定の値で変位させる機能部である。
第2色変換部123aは、色値変位処理部122aにより変位されたHSL値を、CMY値に逆変換する機能部である。
パッチ配置部124aは、色値変位処理部122aにより変位される前の色値、および変位された後の色値で作成したパッチを記録媒体のページ内に配置して補正用カラーチャート60を生成する機能部である。
なお、図18に示すカラーチャート生成部12aの第1色変換部121a、色値変位処理部122a、第2色変換部123a、パッチ配置部124aおよび色領域判定部125は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、図18に示すカラーチャート生成部12aで独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、図18に示すカラーチャート生成部12aで1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成するものとしてもよい。
図19は、第2の実施形態に係る画像処理装置のカラーチャート生成処理の一例を示すフローチャートである。図20は、1つの補正制御点に対する補正パッチ群の一例を示す図である。図19および図20を参照しながら、カラーチャート生成部12aによるカラーチャート生成処理の流れについて説明する。
本実施形態におけるカラーチャート生成処理では、先ず、第1色変換部121aが、補正制御点設定部11により設定された補正制御点のデバイス依存の第1色値であるCMY値を、デバイス依存の第2色値であるHSL値に変換する(ステップS41)。第1色変換部121aによるCMY値からHSL値への変換は、上述の式(1)~(14)により実行される。
次いで、色領域判定部125は、第1色変換部121aにより変換されたHSL値の彩度Sの値が所定の閾値(彩度閾値)より大きいか否かを判定する(ステップS42)。所定の閾値には、色値変位処理部122aによるHSL値に対する変位において、パッチがうまく振れない領域が選択されるように、例えば、S=0.1等小さい値を設定する。
ステップS42における判定の結果、彩度Sが所定の閾値以下の場合(ステップS42:No)、すなわち、有彩色領域である場合は、色値変位処理部122aは、上述の第1の実施形態と同様に、変換されたHSL値を所定の値で変位する(ステップS43)。
次いで、第2色変換部123aは、ステップS43で変位されたHSL値を、CMY値に逆変換する(ステップS44)。HSL値からCMY値への変換は、上述の式(15)~(30)により実行される。なお、Kの値については、元の値をそのまま用いればよい。
一方、ステップS42における判定の結果、彩度Sが所定の閾値より大きい場合(ステップS42:Yes)、すなわち、無彩色領域である場合は、第2色変換部123aは、ステップS41で変換されたHSL値を、CMY値に逆変換する(ステップS45)。HSL値からCMY値への変換は、上述の式(15)~(30)により実行される。
次いで、色値変位処理部122aは、第2色変換部123aにより変換されたCMY値を所定の値で変位する(ステップS46)。なお、Kの値については、元の値をそのまま用いればよい。
例えば、図20では、無彩色領域における1の補正制御点に対して、形成される複数のパッチ(補正用パッチ群)の一例を示している。ここでは、1つの補正制御点に対応して、それぞれ9つのパッチからなる補正用パッチ群が生成される。図20に示すパッチNo.0~No.8の各値は、上述の9つのパッチからなる補正用パッチ群に対応し、CMYKの各値は、ある補正制御点(ID0~IDnのうちの1つ)に対応して出力される補正用パッチ群のCMYK空間における色値を示している。No.0の欄に示す値は、ステップS45の処理で逆変換されたCMYの変換結果(C0,M0,Y0)である。K0は元のKの値である。
そして、色値変位処理部122aは、各補正制御点のC0、M0、Y0。K0のM成分およびY成分に対して所定の変位量α(1~255)で正負の方向に変位させる。図20に示す例では、M成分およびY成分を変位量αで正負の方向に変位させたものの組み合わせ(N0.1~No.8)と、元の値(No.0)とに相当する計9つのパッチが生成され、この9つのパッチが無彩色領域における1の補正制御点に対応する1の補正用パッチ群となる。
ステップS44およびステップS46の処理の後、パッチ配置部124aは、色値変位処理部122aで変位させた前後の色値で作成したパッチを記録媒体のページ内に配置し、補正用カラーチャート60を生成する(ステップS47)。
(補正パラメータ生成部による補正パラメータ生成処理)
図21は、第2の実施形態に係る画像処理装置の補正パラメータ生成処理を説明する図である。図21を参照しながら、補正パラメータ生成部13による無彩色領域における補正パラメータ生成処理の流れについて説明する。
図21においては、距離最小点CP2とそれを囲む補正用パッチ群の測色値を示す点m10、m11、m12の拡大図を併せて示している。図21(a)において、点P11~P15は、図3に示した補正制御点のうちの5つの補正制御点のCMYK値を出力プロファイル21を用いてL*a*b*値に変換した点を表している。また、点m10~m18は、図21に示す例において、点P13の補正制御点に対応した補正用パッチ群の測色値を表している。補正パラメータの入力値および出力値の求め方はHSL値で変位させた場合と同様で、測色値から3点(点m10、m11、m12)を選択して三次元の平面を形成する。
次いで、点P13から点P14に向かってCMYK値を動かしながら、出力プロファイル21を用いて色変換を行い、L*a*b*値を求める。このとき、各L*a*b*値と、平面との距離を都度算出し、当該距離が最小となる点(距離最小点CP2)を求める。補正パラメータ生成部13は、距離が最小となったときのCMYK値を、補正パラメータの入力値に設定する。
距離最小点CP2を求めたら、補正パラメータ生成部13は、図21(b)に示すように、距離最小点CP2のL*a*b*値と、距離最小点CP2を囲むパッチの測色値(ここでは、点m10、m11、m12に対応する測色値)のL*a*b*値とを取得する。そして、図21(b)に示すように、距離最小点CP2から点m10、m11、m12が各パッチの測色値に補助線を引き、距離最小点CP2と点m11と点m12とで囲まれる領域、距離最小点CP2と点m10と点m12で囲まれる領域、距離最小点CP2と点m10と点m11で囲まれる領域の3つの領域に分割する。次いで、補正パラメータ生成部13は、この分割された領域の面積w11、w12、w13を求め、これを補間演算の重みとする。
次いで、補正パラメータ生成部13は、距離最小点CP2を囲む補正パッチ群を示す点m10、m11、m12についてのCMY値を取得する。そして、補正パラメータ生成部13は、算出した重みw11、w12、w13を用いて、上述の式(31)~(33)と同様に、補間演算を行い、補正パラメータの出力値(CMY)を求める。なお、K値については、各パッチで色値を変位させていないため、元の値がそのまま出力値となる。
以上説明した第2の実施形態に係る画像処理装置1では、無彩色領域においてはCMYK値で変位させたパッチ群、有彩色領域においてはHSL値で変位させたパッチ群を用いることで、無彩色領域においても適切な範囲で色値を振ったパッチを生成することができ、より適切な補正パラメータを得ることができる。さらに、上述の第1の実施形態における効果も奏することは言うまでもない。
なお、上述の各実施形態において、画像処理装置1の画像処理部10および測色計50の各機能部の少なくともいずれかがプログラムの実行によって実現される場合、そのプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。また、上述の各実施形態において、画像処理装置1の画像処理部10および測色計50で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Compact Disk-Recordable)、またはDVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。また、上述の各実施形態において、画像処理装置1の画像処理部10および測色計50で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上述の各実施形態において、画像処理装置1の画像処理部10および測色計50で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、上述の各実施形態において、画像処理装置1の画像処理部10および測色計50で実行されるプログラムは、上述した各機能部のうち少なくともいずれかを含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが上述の記憶装置からプログラムを読み出して実行することにより、上述の各機能部が主記憶装置上にロードされて生成されるようになっている。