JP7183301B2 - バチルス・コアグランスによる免疫機能のモジュレーション - Google Patents
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Description
本願は、2018年4月30日出願の米国仮出願第62664354号の優先権を主張するPCT出願である。
本発明は、一般に、プロバイオティクスに関する。より具体的には、本発明は、プロバイオティクス菌バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)の熱失活胞子/細胞を調製するための新規な方法、およびマクロファージを活性化することによるその免疫モジュレート機能に関する。
プロバイオティクスは、免疫機能をモジュレートし、それによって多くの疾患の発症からの保護をもたらすことが報告されている。プロバイオティクスが免疫機能をモジュレートする能力は、以下の従来技術の文献に記載されている。
1.Jensen et al. GanedenBC30TM cell wall and metabolites: anti-inflammatory and immune modulating effects in vitro, BMC Immunology 2010, 11:15。
2.Dong et al., Comparative effects of six probiotic strains on immune function in vitro, British Journal of Nutrition (2012), 108, 459-470。
3.Chunqing et al., Immunomodulatory Effects of Different Lactic Acid Bacteria on Allergic Response and Its Relationship with In Vitro Properties, PLoS ONE (2016), 11(10): e0164697。
4.Benson et al., Probiotic metabolites from Bacillus coagulans GanedenBC30TM support maturation of antigen-presenting cells in vitro, World J Gastroenterol 2012; 18(16): 1875-1883。
a)Elhelu M.A., The Role of Macrophages in Immunology, J Natl Med Assoc. 1983; 75(3): 314-317。
b)Hirayama et al., The Phagocytic Function of Macrophage-Enforcing Innate Immunity and Tissue Homeostasis, Int J Mol Sci. 2018; 19(1): 92。
c)Gordon S, The role of the macrophage in immune regulation, Research in Immunology. 1998; 149(7):685-688。
d)Martinez et al., Macrophage activation and polarization. Front Biosci. 2008;13:453-461。
e)Murray et al., Macrophage activation and polarization: nomenclature and experimental guidelines, Immunity. 2014; 41(1): 14-20。
本発明の別の目的は、マクロファージ分極化を誘導することによるプロバイオティクス菌バチルス・コアグランスの熱失活細胞および胞子の免疫モジュレート機能を開示することである。
本願で言及される受入番号MTCC5856を有する生物学的材料であるバチルス・コアグランスの寄託は、Microbial Type Culture Collection & Gene Bank(MTCC)、CSIR-Institute of Microbial Technology、Sector 39-A、インド、チャンディガール-160036において2013年9月19日に行われた。
別の好ましい実施形態では、本発明は、プロバイオティクス菌バチルス・コアグランスの熱失活栄養細胞を含む組成物、およびその組成物を調製するための方法を開示する。
最も好ましいさらに別の実施形態では、本発明は、哺乳動物の免疫機能をモジュレートする方法であって、生存または熱失活胞子および/または細菌の形態の有効濃度のバチルス・コアグランスを、前記哺乳動物に投与して、マクロファージを活性化することによって免疫モジュレーションの効果をもたらすステップを含む、方法を開示する。
本発明または本願は、カラーで示された少なくとも1つの図面を含有する。本発明または本願のカラー図面のコピーは、要求に応じて必要な料金支払いを受けて事務所から提供されよう。
最も好ましい実施形態では、本発明は、プロバイオティクス菌バチルス・コアグランスの熱失活胞子を含む組成物であって、
a)細菌を無菌種培地に接種し、常に振とうしながら37~40℃で22~24時間インキュベートし、顕微鏡技術によって純度を確認することによって、バチルス・コアグランスの純粋培養物を調製するステップと、
b)ステップa)の純粋培養物を適切な培地中で混合し、オルトリン酸で6.5±0.2のpHに調整することによって、種接種菌液を調製するステップと、
c)ステップb)の種培地を、適切に滅菌した発酵培地(ブロス)に接種し、かき混ぜ、適切に通気しながら37~39℃で35~37時間インキュベートするステップと、
d)胞子形成細胞を、顕微鏡技術を使用して特定し、80~100%の胞子形成細胞を含有するブロスを7000~15000rpmで遠心分離することによって、胞子を収集するステップと、
e)10%w/vマルトデキストリンまたは適切な保護剤を、1:1の比で胞子形成細胞のバイオマスに添加し、スラリーを、無菌メッシュを介して濾過するステップと、
f)ステップe)のスラリーを、110±2℃において0.8±0.2バールの圧力で5~8時間熱処理することによって失活させるステップと、
g)熱失活胞子を、入口温度115~150℃および出口温度55~70℃でスプレー乾燥させるステップと、
h)熱失活胞子を含有するスプレー乾燥粉末を、121±2℃において1.5±0.2バールの圧力で15~30分間のさらなる熱処理に晒して、生存胞子数を確実に≦103cfu/gにするステップと、
i)マルトデキストリンまたは適切な保護剤で希釈して、バチルス・コアグランスの熱失活胞子を含む組成物を得るステップと、
j)生細胞、死細胞および生存可能であるが培養不可能な細胞を、フローサイトメトリーによって数え上げるステップと
を含む方法によって調製される、組成物を開示する。
a)細菌を無菌種培地に接種し、常に振とうしながら37~40℃で22~24時間インキュベートし、顕微鏡技術によって純度を確認することによって、バチルス・コアグランスの純粋培養物を調製するステップと、
b)ステップa)の純粋培養物を適切な培地中で混合し、オルトリン酸で6.5±0.2のpHに調整することによって、種接種菌液を調製するステップと、
c)ステップb)の種培地を、適切に滅菌した発酵培地(ブロス)に接種し、かき混ぜ、適切に通気しながら37~39℃で35~37時間インキュベートするステップと、
d)栄養細胞を、顕微鏡技術を使用して特定し、ブロスを7000~15000rpmで遠心分離することによって、細胞を収集するステップと、
e)10%w/vマルトデキストリンまたは適切な保護剤を、1:1の比で栄養細胞のバイオマスに添加し、スラリーを、無菌メッシュを介して濾過するステップと、
f)ステップe)のスラリーを、100±2℃において0.2±0.1バールの圧力で5~8時間熱処理することによって失活させるステップと、
g)熱失活栄養細胞を、入口温度115~150℃および出口温度55~70℃でスプレー乾燥させるステップと、
h)マルトデキストリンまたは適切な保護剤で希釈して、バチルス・コアグランスの熱失活栄養細胞を含む組成物を得るステップと、
i)生細胞、死細胞および生存しているが培養不可能な細胞を、フローサイトメトリーによって数え上げるステップと
を含む方法によって調製される、組成物を開示する。
バチルス・コアグランスの胞子の熱失活は、以下のステップによって行われる。
a)細菌を無菌種培地(MRS、デキストロース培地、トリプシン大豆培地、栄養培地、酵母ペプトン培地、コーンスティープ培地)に接種し、常に振とうしながら37~40℃で22~24時間インキュベートし、顕微鏡技術によって純度を確認することによって、バチルス・コアグランスの純粋培養物を調製するステップと、
b)ステップa)の純粋培養物を適切な培地(MRS、デキストロース培地、トリプシン大豆培地、栄養培地、酵母ペプトン培地、コーンスティープ培地)中で混合し、オルトリン酸で6.5±0.2のpHに調整することによって、種接種菌液を調製するステップと、
c)ステップb)の種培地を、適切に滅菌した発酵培地(デキストロース、コーンスティープ粉末、炭酸カルシウム、硫酸マンガン(II)および硫酸アンモニウムを含むブロス)に接種し、かき混ぜ、適切に通気しながら37~39℃で35~37時間インキュベートするステップと、
d)胞子形成細胞を、顕微鏡技術を使用して特定し、80~100%の胞子形成細胞を含有するブロスを7000~15000rpmで遠心分離することによって、胞子を収集するステップと、
e)10%w/vマルトデキストリンまたは適切な保護剤を、1:1の比で胞子形成細胞のバイオマスに添加し、スラリーを、無菌メッシュを介して濾過するステップと、
f)ステップe)のスラリーを、110±2℃において0.8±0.2バールの圧力で5~8時間熱処理することによって失活させるステップと、
g)熱失活胞子を、入口温度115~150℃および出口温度55~70℃でスプレー乾燥させるステップと、
h)熱失活胞子を含有するスプレー乾燥粉末を、121±2℃において1.5±0.2バールの圧力で15~30分間のさらなる熱処理に晒して、生存胞子数を確実に≦103cfu/gにするステップと、
i)マルトデキストリンまたは適切な保護剤で希釈して、バチルス・コアグランスの熱失活胞子を含む組成物を得るステップと、
j)生細胞、死細胞および生存可能であるが培養不可能な細胞を、フローサイトメトリーによって数え上げるステップ。
a)細菌を無菌種培地(MRS、デキストロース培地、トリプシン大豆培地、栄養培地、酵母ペプトン培地、コーンスティープ培地)に接種し、常に振とうしながら37~40℃で22~24時間インキュベートし、顕微鏡技術によって純度を確認することによって、バチルス・コアグランスの純粋培養物を調製するステップと、
b)ステップa)の純粋培養物を適切な培地(MRS、デキストロース培地、トリプシン大豆培地、栄養培地、酵母ペプトン培地、コーンスティープ培地)中で混合し、オルトリン酸で6.5±0.2のpHに調整することによって、種接種菌液を調製するステップと、
c)ステップb)の種培地を、適切に滅菌した発酵培地(デキストロース、コーンスティープ粉末、炭酸カルシウム、硫酸マンガン(II)および硫酸アンモニウムを含むブロス)に接種し、かき混ぜ、適切に通気しながら37~39℃で35~37時間インキュベートするステップと、
d)栄養細胞を、顕微鏡技術を使用して特定し、ブロスを7000~15000rpmで遠心分離することによって、細胞を収集するステップと、
e)10%w/vマルトデキストリンまたは適切な保護剤を、1:1の比で栄養細胞のバイオマスに添加し、スラリーを、無菌メッシュを介して濾過するステップと、
f)ステップe)のスラリーを、100±2℃において0.2±0.1バールの圧力で5~8時間熱処理することによって失活させるステップと、
g)熱失活栄養細胞を、入口温度115~150℃および出口温度55~70℃でスプレー乾燥させるステップと、
h)マルトデキストリンまたは適切な保護剤で希釈して、バチルス・コアグランスの熱失活栄養細胞を含む組成物を得るステップと、
i)生細胞、死細胞および生存しているが培養不可能な細胞を、フローサイトメトリーによって数え上げるステップ。
実験セクション/材料および方法
試薬
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、LPS(大腸菌(Escherichia coli)055:B5)、およびFITC-デキストラン(40,000Da)は、Sigma Chemical Co.(ミズーリ州、セントルイス)から購入した。細胞を計数するためのキット(Kit-8)、一酸化窒素(NO)、BCAタンパク質、および一酸化窒素合成酵素(iNOS)は、Beyotime Biotechnology(中国、海門)から購入した。抗マウス抗体FITC-CD80、FITC-CD83、APC-CD86、APC-MHCII、FITC-F4/80炎症促進性マーカーは、Beijing 4A Biotech Co.,Ltd(4A Biotech、中国)から購入した。エオシン-メチレンブルー培地(EMB)寒天は、solarbio(solarbio、中国)から得た。ホスホ-ERK1/2、ERK1/2、ホスホ-JNK、JNK、ホスホ-p38、p-38、β-アクチンおよびHRP-コンジュゲート抗マウスIgGは、Cell Signaling Technology(米国、マサチューセッツ州)から得た。
マウス単球/マクロファージ細胞系、Raw264.7を、10%熱失活ウシ胎児血清(Gibco、USA)、100μg/mLのストレプトマイシン、および100U/mLのペニシリン(Sigma-Aldrich、米国)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で増殖させた。細胞を、5%CO2の加湿雰囲気中、37℃で維持した。LactoSpore(登録商標)(米国、Sabinsa Corporationの登録商標)として商業的に公知のB.コアグランスMTCC5856、ならびに熱失活栄養細胞および熱失活胞子を、実験方法のために使用した。
細胞を、96ウェルの培養プレート中細胞2×104個/ウェルで播種し、6時間インキュベートし、次にRAW264.7細胞を、PBS、リポ多糖(LPS、200ng/mL)と共に24時間、またはそれぞれ生細胞(1.5×108cfu/mL)および熱失活胞子(1.5×108cfu/mL)と共に6時間、さらに培養した。M1サブタイプへの機能的分化を確実にするために、各実験にLPS(200ng/ml)による刺激が含まれていた。細胞計数kit-8(Beyotime)を使用して、製造者の使用説明書に従って細胞傷害性を決定した。簡潔には、10μlのCCK-8を各ウェルに添加し、37℃で1~4時間インキュベートした。OD450における光学吸光度を、SpectraMax M5(Molecular Devices、カリフォルニア州、サニーベール)によって測定した。
RAW264.7細胞(6ウェルプレート中1.0×106個の細胞)を、リポ多糖(LPS、200ng/mL)で24時間、または生細胞(1.5×108cfu/mL)、熱失活細胞もしくは熱失活胞子(1.5×108cfu/mL、単独、37℃、5%CO2において6時間)のいずれかで処理した後、マクロファージを溶解させ、全RNAを、Trizol(Sangon Biotech)を使用して抽出した。単離されたRNAの濃度、純度、および質を、NanoDrop One分光光度計(ThermoFisher Scientific)で測定し、全RNA1,000ngを、HiScript(登録商標)IIQ RT SuperMix(Vazyme、R223-01)を使用してcDNAにすぐに逆転写した。iNOS、IL-1β、IL-6、IL-12p40およびTNF-αの相対的な発現レベルを、定量的リアルタイム逆転写PCR(RT-qPCR)によって、ChamQTM SYBR(登録商標)qPCRマスターミックス(Vazyme、Q341-02)およびCFX96リアルタイムPCR系(Bio-Rad)を使用して評価した。RT-qPCRは、95℃で10分間、その後95℃で15秒間の初期ステップ、その後95℃で15秒間および60℃で1分間のサイクル40回を含んでいた。すべてのデータを同じ試料から増幅したβ-アクチン転写物レベルに正規化し、次に未処理対照mRNAに正規化した。データは、2-△△T方法を用いて分析した。遺伝子特異的プライマー配列を以下に記載する。
R:ATCTTTTGGGGTCCGTCAACT
IL-6 F:TAGTCCTTCCTACCCCAATTTCC
R:TTGGTCCTTAGCCACTCCTTC
IL-12p40 F:CCCATTCCTACTTCTCCCTCAA
R:CCTCCTCTGTCTCCTTCATCTT
TNF-α F:CCCTCACACTCAGATCATCTTCT
R:GCTACGACGTGGGCTACAG
iNOS F:CTCACCTACTTCCTGGACATTAC
R:CAATCTCTGCCTATCCGTCTC
β-アクチン F:CGTTGACATCCGTAAAGACC
R:AACAGTCCGCCTAGAAGCAC
12ウェルマイクロプレート中、RAW264.7マクロファージの単層を、10%FBSを補充したDMEM中、最適な湿度下で、5%CO2中37℃で培養した。細胞を、それぞれPBS、リポ多糖(LPS、200ng/mL)と共に24時間、生細胞(1.5×108cfu/mL)および熱失活胞子(1.5×108cfu/mL)と共にインキュベートした。上清中の一酸化窒素および一酸化窒素合成酵素(iNOS、tNOS)を、一酸化窒素および一酸化窒素合成酵素型のアッセイキット(Nj jiancheng、中国)を使用して決定した。
LPSまたは1.5×108cfu/mlのバチルス・コアグランス(生細胞、熱失活胞子)で処理した後にマクロファージによって分泌されたiNOS、NO、IL-1β、IL-6、TNF-αおよびTGF-βの濃度を、ELISA(4A Biotech、中国)によって、製造者の推奨に従ってマクロファージ細胞上清中で決定した。サイトカインレベルを、標準較正曲線と比較することによって決定した。
デキストラン貪食アッセイ
RAW264.7細胞を、12ウェルプレート中、細胞1.0×105個で播種した後、リポ多糖(LPS、200ng/mL)で24時間処理するか、または無血清培地中で1時間飢餓させた後に、5%CO2下37℃で生細胞(1.5×108cfu/mL)もしくは熱失活胞子(1.5×108cfu/mL)で6時間処理した。次に、細胞をPBSで2回反復して洗浄し、FITC-デキストラン(1mg/mL、Sigma、FD40S)と共に5%CO2下37℃で1時間インキュベートした。その後、細胞をPBSで洗浄し、収集した後に遠心分離した(500×g、5分、4℃)。データを、少なくとも10,000のイベント数についてフローサイトメトリー分析(FACS)を使用して処理して、細胞内FITC-デキストランの平均蛍光強度(MFI)を決定した。
フローサイトメトリー分析
RAW264.7細胞を、12ウェルプレート中、細胞1.0×105個で播種した後、リポ多糖(LPS、200ng/mL)で24時間処理するか、または5%CO2下37℃で生細胞(1.5×108cfu/mL)単独もしくは熱失活胞子(1.5×108cfu/mL)で6時間処理した。最終的なインキュベーション後、マクロファージをPBSで洗浄し、0.04%エチレンジアミン四酢酸(EDTA、Sinopharm)で処理し、細胞をFc Block TM(BD Biosciences)と共にインキュベートし、FITC抗マウスCD80、FITC抗マウスCD83、APC抗マウスCD86、APC抗マウスMHCII、FITC抗マウスF4/80およびFITC抗マウスCD16/32抗体(BioLegend)またはアイソタイプ対照のいずれかを用いて、暗室中4℃で30分間染色した。染色された細胞をPBSで2回反復して洗浄した後、少なくとも10,000のイベント数について蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって分析して、平均蛍光強度(MFI)を決定した。
データは、少なくとも3回の独立な実験の平均±SEMとして表される。統計的分析を、SPSS20.0およびOriginProソフトウェアを使用して実施した。統計的有意性は、一元配置分散分析を使用した後、多重比較のためにダネットまたはターキー試験を使用してアセスメントした。P<0.05の値が、統計的に有意とみなされた。
結果
RAW264.7マクロファージ上でのバチルス・コアグランスの生存率分析
マウスマクロファージ細胞系上でのプロバイオティクス株バチルス・コアグランス(生細胞および熱失活細胞)の細胞傷害性を評価するために、RAW264.7細胞を、プロバイオティクスバチルス・コアグランスで6時間にわたって処理し、細胞生存率を、CCK-8アッセイを使用して決定した。このアッセイでは、RAW264.7細胞を様々な濃度(1.5×106~1.5×108cfu/ml)の生細胞または加熱失活胞子で処理した場合、生存率の著しい低下(p>0.05)は観察されなかった(図4)。しかし、細胞を1.5×109cfu/mlのバチルス・コアグランスに曝露した場合、生存率が低下した(P<0.05)。生細胞は、1.5×108cfu/mlにおいて、対照と比較して細胞生存率を上昇することが見出された(P<0.01)。したがって、その後の実験では1.5×108cfu/mlを使用した。
炎症促進性遺伝子(IL-1β、IL-6、IL-12p40、TNF-α)およびiNOSの発現を、RAW264.7を1.5×108cfu/mlのバチルス・コアグランス(生細胞、熱失活細胞および熱失活胞子)で6時間処理した後に評価した。時間を一致させた未処理対照細胞と比較して、生細胞およびLPS処理で処理したRAW264.7においてIL-12p40が劇的に増大した(P<0.01)ことを除き、mRNAレベルによって炎症促進性遺伝子が明らかになった(図5A~5D)。さらに、熱失活胞子は、IL-6(P<0.01)およびTNF-α(P<0.05)の発現を上方制御する(図5C、5B)。プロバイオティクス生細胞は、未処理試料と比較してiNOSの発現を著しく上方制御し(P<0.01)、LPSと比較してより高い効力があることを示した(図6)。それにもかかわらず、バチルス・コアグランスは、iNOSの上方制御を誘導する傾向があり、それによって、生細胞がマクロファージRaw264.7分極化の促進において複雑な役割を有することを示したことは、注目に値する。
結果は、バチルス・コアグランスMTCC5856(生細胞)が、M1表現型に関連する遺伝子発現(TNF-α、MCP-1、IL6、IL1β)を増大することによって、M1表現型を誘導することが見出されたことを示した(図7)。
サイトカインプロファイリングは、RAW264.7マクロファージが炎症促進性表現型を獲得したかどうかを示すことができる。したがって、全分泌TNOS、iNOS、NO、IL-1β、IL-6、TNF-αおよびTGF-βの可溶性メディエーターを、1.5×108cfu/mlのバチルス・コアグランス(生細胞、熱失活胞子)で処理した後、ELISAによって定量した。NOレベルは、対照試料と比較し、特にLPSと比較して著しく上昇し(P<0.01)(図8A~8C)、NO分泌は、生細胞処理でより増大した。LPSは、プロバイオティクス生細胞または熱失活胞子と比較して、サイトカインIL-6(P<0.01)およびIL-1β(P<0.05)分泌を最も強力に誘導した(図8Dおよび8E)。生細胞は、サイトカインTNF-αの誘導において非常に強力であった(P<0.01)(図8F)。一方、分泌TGF-βの量は、対照マクロファージと比較して劇的に低下した(P<0.01)(図8G)。その効果は、バチルス・コアグランスを含むマクロファージ共培養物における分極化遺伝子の発現の増大と関連していた。
バチルス・コアグランスによって処理されたRAW264.7マクロファージによって発現された、M1に関連する特異的サイトカインの遺伝子解析により、RAW264.7マクロファージのM1様の分極化の活性化を示した。バチルス・コアグランスによって誘導された、CD80、CD83、CD86、MHC-II、F4/80およびCD16/32を含めたマクロファージ表面上の受容体の発現を、フローサイトメトリーによって確認した。RAW264.7マクロファージの表面上のCD80およびMHC-II分子の発現は、PBS対照群と比較して、1.5×108cfu/mlのバチルス・コアグランス(生細胞、熱失活胞子)と共に6時間共培養した細胞の方が低かった(図9A)。生菌は、CD86発現を著しく低減しただけでなく、CD83細胞表面マーカー発現を増大した一方、熱失活胞子はCD83およびCD86の発現を増大した(図9A)。成熟マウスマクロファージマーカーF4/80およびM1分極化の代表的受容体CD16/32の発現は、B.コアグランスの存在下でより高い発現を示した。フローサイトメトリーの結果により、生存および熱失活胞子は、Raw264.7マクロファージがM1様のマクロファージになるようにRaw264.7マクロファージを著しく分極化し、Raw264.7マクロファージにおける細胞表面抗原F4/80およびCD16/32発現を促進し得ることが実証された(図9B)。とりわけRaw264.7の活性化および成熟は、陽性LPS処理と比較して、M1マクロファージ分極化のための複雑で多様な表面受容体である。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕プロバイオティクス菌バチルス・コアグランスの熱失活胞子を含む組成物であって、
a)細菌を無菌種培地に接種し、常に振とうしながら37~40℃で22~24時間インキュベートし、顕微鏡技術によって純度を確認することによって、バチルス・コアグランスの純粋培養物を調製するステップと、
b)ステップa)の純粋培養物を適切な培地中で混合し、オルトリン酸で6.5±0.2のpHに調整することによって、種接種菌液を調製するステップと、
c)ステップb)の種培地を、適切に滅菌した発酵培地(ブロス)に接種し、かき混ぜ、適切に通気しながら37~39℃で35~37時間インキュベートするステップと、
d)胞子形成細胞を、顕微鏡技術を使用して特定し、80~100%の胞子形成細胞を含有するブロスを7000~15000rpmで遠心分離することによって、胞子を収集するステップと、
e)10%w/vマルトデキストリンまたは適切な保護剤を、1:1の比で胞子形成細胞のバイオマスに添加し、スラリーを、無菌メッシュを介して濾過するステップと、
f)ステップe)のスラリーを、110±2℃において0.8±0.2バールの圧力で5~8時間熱処理することによって失活させるステップと、
g)熱失活胞子を、入口温度115~150℃および出口温度55~70℃でスプレー乾燥させるステップと、
h)熱失活胞子を含有するスプレー乾燥粉末を、121±2℃において1.5±0.2バールの圧力で15~30分間のさらなる熱処理に晒して、生存胞子数を確実に≦10 3 cfu/gにするステップと、
i)マルトデキストリンまたは適切な賦形剤で希釈して、バチルス・コアグランスの熱失活胞子を含む組成物を得るステップと、
j)生細胞、死細胞および生存可能であるが培養不可能な細胞を、フローサイトメトリーによって数え上げるステップと
を含む方法によって調製される、組成物。
〔2〕バチルス・コアグランス株が、具体的にはバチルス・コアグランスMTCC5856である、前記〔1〕に記載の組成物。
〔3〕ステップa)およびステップb)の培地が、MRS、デキストロース培地、トリプシン大豆培地、栄養培地、酵母ペプトン培地、コーンスティープ培地を含む群から選択される、前記〔1〕に記載の組成物。
〔4〕ステップc)の発酵培地が、MRS、デキストロース培地、トリプシン大豆培地、栄養培地、酵母ペプトン培地、コーンスティープ培地を含む群から選択される、前記〔1〕に記載の組成物。
〔5〕ステップc)の発酵培地が、好ましくは、デキストロース、コーンスティープ粉末、炭酸カルシウム、硫酸マンガン(II)および硫酸アンモニウムを含む、前記〔1〕に記載の組成物。
〔6〕哺乳動物の免疫機能を増大するための栄養補助剤/添加剤として使用される、前記〔1〕に記載の組成物。
〔7〕哺乳動物が、好ましくはヒトである、前記〔1〕に記載の組成物。
〔8〕バチルス・コアグランスの熱失活胞子を含む組成物が、薬学的/栄養補助的に許容される賦形剤、アジュバントを用いて配合され、粉末、乳幼児用配合物、懸濁液、シロップ、エマルション、錠剤、カプセル剤、食用品または咀嚼可能食品の形態で投与される、前記〔1〕に記載の組成物。
〔9〕プロバイオティクス菌バチルス・コアグランスの熱失活栄養細胞を含む組成物であって、
a)細菌を無菌種培地に接種し、常に振とうしながら37~40℃で22~24時間インキュベートし、顕微鏡技術によって純度を確認することによって、バチルス・コアグランスの純粋培養物を調製するステップと、
b)ステップa)の純粋培養物を適切な培地中で混合し、オルトリン酸で6.5±0.2のpHに調整することによって、種接種菌液を調製するステップと、
c)ステップb)の種培地を、適切に滅菌した発酵培地(ブロス)に接種し、かき混ぜ、適切に通気しながら37~39℃で35~37時間インキュベートするステップと、
d)栄養細胞を、顕微鏡技術を使用して特定し、ブロスを7000~15000rpmで遠心分離することによって、細胞を収集するステップと、
e)10%w/vマルトデキストリンまたは適切な保護剤を、1:1の比で栄養細胞のバイオマスに添加し、スラリーを、無菌メッシュを介して濾過するステップと、
f)ステップe)のスラリーを、100±2℃において0.2±0.1バールの圧力で5~8時間熱処理することによって失活させるステップと、
g)熱失活栄養細胞を、入口温度115~150℃および出口温度55~70℃でスプレー乾燥させるステップと、
h)マルトデキストリンまたは適切な賦形剤で希釈して、バチルス・コアグランスの熱失活栄養細胞を含む組成物を得るステップと、
i)生細胞、死細胞および生存可能であるが培養不可能な細胞を、フローサイトメトリーによって数え上げるステップと
を含む方法によって調製される、組成物。
〔10〕バチルス・コアグランス株が、具体的にはバチルス・コアグランスMTCC5856である、前記〔9〕に記載の組成物。
〔11〕ステップa)およびステップb)の培地が、MRS、デキストロース培地、トリプシン大豆培地、栄養培地、酵母ペプトン培地、コーンスティープ培地を含む群から選択される、前記〔9〕に記載の組成物。
〔12〕ステップc)の発酵培地が、MRS、デキストロース培地、トリプシン大豆培地、栄養培地、酵母ペプトン培地、コーンスティープ培地を含む群から選択される、前記〔9〕に記載の組成物。
〔13〕ステップc)の発酵培地が、好ましくは、デキストロース、コーンスティープ粉末、炭酸カルシウム、硫酸マンガン(II)および硫酸アンモニウムを含む、前記〔9〕に記載の組成物。
〔14〕哺乳動物の免疫機能を増大するための栄養補助剤/添加剤として使用される、前記〔9〕に記載の組成物。
〔15〕哺乳動物が、好ましくはヒトである、前記〔9〕に記載の組成物。
〔16〕バチルス・コアグランスの熱失活栄養細胞を含む組成物が、薬学的/栄養補助的に許容される賦形剤、アジュバントを用いて配合され、粉末、乳幼児用配合物、懸濁液、シロップ、エマルション、錠剤、カプセル剤、食用品または咀嚼可能食品の形態で投与される、前記〔9〕に記載の組成物。
〔17〕哺乳動物の免疫機能をモジュレートする方法であって、胞子および/または細菌の形態の有効濃度のバチルス・コアグランスを前記哺乳動物に投与して、マクロファージを分極化することによって免疫モジュレーションの効果をもたらすステップを含む、方法。
〔18〕胞子が、バチルス・コアグランスの生存または熱失活または死滅胞子を含む、前記〔17〕に記載の方法。
〔19〕細菌が、バチルス・コアグランスの生存または熱失活または死滅または溶解栄養細胞を含む、前記〔17〕に記載の方法。
〔20〕バチルス・コアグランス株が、好ましくはバチルス・コアグランスMTCC5856である、前記〔17〕に記載の方法。
〔21〕免疫機能のモジュレーションが、マクロファージをM1型に分極化することによってもたらされる、前記〔17〕に記載の方法。
〔22〕M1型へのマクロファージ分極化が、炎症促進性遺伝子および細胞表面受容体の発現を誘導することによってもたらされる、前記〔17〕に記載の方法。
〔23〕炎症促進性遺伝子が、IL-1β、IL-6、IL-12p40、IL23、TNF-α、TNOSおよびiNOSを含む群から選択される、前記〔17〕に記載の方法。
〔24〕細胞表面受容体が、CD80、CD83、CD86、MHC-II、F4/80およびCD16/32を含む群から選択される、前記〔17〕に記載の方法。
〔25〕哺乳動物が、ヒトである、前記〔17〕に記載の方法。
〔26〕バチルス・コアグランスの熱失活胞子および/または栄養細胞を含む組成物が、薬学的/栄養補助的に許容される賦形剤、アジュバントを用いて配合され、粉末、乳幼児用配合物、懸濁液、シロップ、エマルション、錠剤、カプセル剤、食用品または咀嚼可能食品の形態で投与される、前記〔17〕に記載の方法。
Claims (14)
- プロバイオティクス菌バチルス・コアグランスの熱失活胞子を含む組成物を調製するための方法であって、
a)細菌を無菌種培地に接種し、常に振とうしながら37~40℃で22~24時間インキュベートし、顕微鏡技術によって純度を確認することによって、バチルス・コアグランスの純粋培養物を調製するステップと、
b)ステップa)の純粋培養物を適切な培地中で混合し、オルトリン酸で6.5±0.2のpHに調整することによって、種接種菌液を調製するステップと、
c)ステップb)の種培地を、適切に滅菌した発酵培地(ブロス)に接種し、かき混ぜ、適切に通気しながら37~39℃で35~37時間インキュベートするステップと、
d)胞子形成細胞を、顕微鏡技術を使用して特定し、80~100%の胞子形成細胞を含有するブロスを7000~15000rpmで遠心分離することによって、胞子を収集するステップと、
e)10%w/vマルトデキストリンまたは適切な保護剤を、1:1の比で胞子形成細胞のバイオマスに添加し、スラリーを、無菌メッシュを介して濾過するステップと、
f)ステップe)のスラリーを、110±2℃において0.8±0.2バールの圧力で5~8時間熱処理することによって失活させるステップと、
g)熱失活胞子を、入口温度115~150℃および出口温度55~70℃でスプレー乾燥させるステップと、
h)熱失活胞子を含有するスプレー乾燥粉末を、121±2℃において1.5±0.2バールの圧力で15~30分間のさらなる熱処理に晒して、生存胞子数を確実に≦103cfu/gにするステップと、
i)マルトデキストリンまたは適切な賦形剤で希釈して、バチルス・コアグランスの熱失活胞子を含む組成物を得るステップと、
j)生細胞、死細胞および生存可能であるが培養不可能な細胞を、フローサイトメトリーによって数え上げるステップと
を含み、
バチルス・コアグランス株が、バチルス・コアグランスMTCC5856である、方法。 - ステップa)およびステップb)の培地が、MRS、デキストロース培地、トリプシン大豆培地、栄養培地、酵母ペプトン培地、コーンスティープ培地を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
- ステップc)の発酵培地が、MRS、デキストロース培地、トリプシン大豆培地、栄養培地、酵母ペプトン培地、コーンスティープ培地を含む群から選択される、請求項1に記載の方法。
- ステップc)の発酵培地が、デキストロース、コーンスティープ粉末、炭酸カルシウム、硫酸マンガン(II)および硫酸アンモニウムを含む、請求項1に記載の方法。
- 組成物が、哺乳動物の免疫機能を増大するための栄養補助剤/添加剤として使用される、請求項1に記載の方法。
- 哺乳動物が、ヒトである、請求項5に記載の方法。
- バチルス・コアグランスの熱失活胞子を含む組成物が、薬学的/栄養補助的に許容される賦形剤、アジュバントを用いて配合され、粉末、乳幼児用配合物、懸濁液、シロップ、エマルション、錠剤、カプセル剤、食用品または咀嚼可能食品の形態で投与される、請求項1に記載の方法。
- プロバイオティクス菌バチルス・コアグランスの熱失活栄養細胞を含む組成物を調製するための方法であって、
a)細菌を無菌種培地に接種し、常に振とうしながら37~40℃で22~24時間インキュベートし、顕微鏡技術によって純度を確認することによって、バチルス・コアグランスの純粋培養物を調製するステップと、
b)ステップa)の純粋培養物を適切な培地中で混合し、オルトリン酸で6.5±0.2のpHに調整することによって、種接種菌液を調製するステップと、
c)ステップb)の種培地を、適切に滅菌した発酵培地(ブロス)に接種し、かき混ぜ、適切に通気しながら37~39℃で35~37時間インキュベートするステップと、
d)栄養細胞を、顕微鏡技術を使用して特定し、ブロスを7000~15000rpmで遠心分離することによって、細胞を収集するステップと、
e)10%w/vマルトデキストリンまたは適切な保護剤を、1:1の比で栄養細胞のバイオマスに添加し、スラリーを、無菌メッシュを介して濾過するステップと、
f)ステップe)のスラリーを、100±2℃において0.2±0.1バールの圧力で5~8時間熱処理することによって失活させるステップと、
g)熱失活栄養細胞を、入口温度115~150℃および出口温度55~70℃でスプレー乾燥させるステップと、
h)マルトデキストリンまたは適切な賦形剤で希釈して、バチルス・コアグランスの熱失活栄養細胞を含む組成物を得るステップと、
i)生細胞、死細胞および生存可能であるが培養不可能な細胞を、フローサイトメトリーによって数え上げるステップと
を含み、
バチルス・コアグランス株が、バチルス・コアグランスMTCC5856である、方法。 - ステップa)およびステップb)の培地が、MRS、デキストロース培地、トリプシン大豆培地、栄養培地、酵母ペプトン培地、コーンスティープ培地を含む群から選択される、請求項8に記載の方法。
- ステップc)の発酵培地が、MRS、デキストロース培地、トリプシン大豆培地、栄養培地、酵母ペプトン培地、コーンスティープ培地を含む群から選択される、請求項8に記載の方法。
- ステップc)の発酵培地が、デキストロース、コーンスティープ粉末、炭酸カルシウム、硫酸マンガン(II)および硫酸アンモニウムを含む、請求項8に記載の方法。
- 組成物が、哺乳動物の免疫機能を増大するための栄養補助剤/添加剤として使用される、請求項8に記載の方法。
- 哺乳動物が、ヒトである、請求項12に記載の方法。
- バチルス・コアグランスの熱失活栄養細胞を含む組成物が、薬学的/栄養補助的に許容される賦形剤、アジュバントを用いて配合され、粉末、乳幼児用配合物、懸濁液、シロップ、エマルション、錠剤、カプセル剤、食用品または咀嚼可能食品の形態で投与される、請求項8に記載の方法。
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