以下、いわゆる縦軸型の洗濯機に適用したいくつかの実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、複数の実施形態間で、同一部分には同一符号を付して新たな図示や繰り返しの説明を省略する。
(1)第1の実施形態
図1から図10を参照して第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る洗濯機1の内部構成を概略的に示しており、まず、洗濯機1の全体構成について述べる。ここで、洗濯機1は、例えば鋼板から全体として矩形箱状に構成された外箱2の上部に、合成樹脂製のトップカバー3を備えている。
前記外箱2内には、洗濯水を溜めることが可能な水槽4が、周知構成の弾性吊持機構5により弾性的に吊り下げ支持されて設けられている。前記水槽4の底部には、排水口6が形成されている。この排水口6には、電子制御式の排水弁7を備えた排水路8が接続されている。排水弁7などから排水機構が構成されている。排水路8には排水ホース等が接続され、外部への排水が行われる。尚、詳しく図示はしないが、水槽4の底部にはエアトラップが設けられ、このエアトラップに接続されたエアチューブを介して、水槽4(洗濯槽10)内の水位を検出する水位センサ9(図2参照)が設けられている。
前記水槽4内には、脱水槽を兼用する縦軸型の洗濯槽10が回転可能に設けられている。この洗濯槽10は、有底円筒状をなし、その周壁部には、多数個の脱水孔10aが形成されている。この洗濯槽10の上端部には、例えば液体封入形の回転バランサ11が取付けられている。また、洗濯槽10の内底部には、撹拌体としてのパルセータ12が配設されている。洗濯槽10内には、図示しない衣類が収容されるようになっており、衣類の洗い、すすぎ、脱水等の行程からなる洗濯運転が行われる。
前記水槽4の上部には、水槽カバー13が装着されている。この水槽カバー13には、ほぼ中央部に洗濯物出し入れ用の開口部13aが設けられていると共に、その開口部13aを開閉する内蓋14が取付けられている。更に、水槽カバー13の後部寄り部分には、後述する給水機構により、水槽4内に給水を行うための給水口20が設けられている。尚、前記水槽4の背壁部の上部には、洗濯槽10の最高水位よりも高い位置に、溢水口4aが設けられている。水槽4の外側には、溢水口4aに連続し該溢水口4aから溢れた水を排出するための溢水ホース22が設けられている。詳しく図示はしないが、溢水ホース22の先端部は、前記排水路8に接続されている。
そして、前記水槽4の外底部には、周知構成の駆動機構15が配設されている。詳しい図示及び説明は省略するが、この駆動機構15は、例えばアウタロータ形のDC三相ブラシレスモータからなる洗濯機モータ16(図2参照)、中空の槽軸18、該槽軸18を貫通する撹拌軸19、前記洗濯機モータ16の回転駆動力をそれら軸18、19に選択的に伝達するクラッチ機構17(図2参照)等を備えている。前記槽軸18の上端には、前記洗濯槽10が連結されており、前記撹拌軸19の上端には、前記パルセータ12が連結されている。尚、図2にのみ示すように、駆動機構15には、前記洗濯機モータ16の回転位置(ひいては回転数)を検知する回転センサ31や、洗濯機モータ16に流れる電流を検知する電流センサ32も設けられている。
前記クラッチ機構17は、例えばソレノイドを駆動源とした周知構成を備えており、コンピュータを主体として構成された制御装置21により切替え制御される。周知のように、クラッチ機構17は、洗濯槽10を回転自在にして、洗濯機モータ16の回転力を前記槽軸18及び撹拌軸19の双方に伝達する状態と、洗濯槽10を水槽4に対し固定状態にロックして、洗濯機モータ16の回転力を撹拌軸19のみに伝達する状態とを切替える。このとき、洗濯機モータ16は洗濯槽10(及びパルセータ12)をダイレクトに駆動し、洗濯機モータ16の回転数が洗濯槽10の回転数と等しくなる。尚、洗濯槽10を固定状態にロック・ロック解除する機構は、歯部同士のかみ合いにより連結・切離しを行うように構成されている。
これにて、駆動機構15は、クラッチ機構17により、洗い時及びすすぎ時(洗い行程)には洗濯槽10の固定(停止)状態で、洗濯機モータ16の駆動力を、撹拌軸19を介してパルセータ12に伝達してパルセータ12を直接正逆回転駆動する。また、駆動機構15は、脱水時(脱水行程)等には、クラッチ機構17により、槽軸18と撹拌軸19との連結状態で、洗濯機モータ16の駆動力を槽軸18を介して洗濯槽10に伝達し、洗濯槽10(及びパルセータ12)を一方向に高速で直接回転駆動するようになっている。尚、前記制御装置21(電子ユニット)は、外箱2内の後壁下部に設けられている。
前記トップカバー3は、下面が開口すると共に、その上面が前方に向けて下降傾斜するような薄形の中空箱状をなすと共に、その中央部には、前記洗濯槽10の上方(水槽カバー13の開口部13aの上方)に位置して、ほぼ円形の洗濯物の出入口3aが形成されている。トップカバー3の上面には、全体として矩形パネル状をなし、前記出入口3aを開閉するための蓋23が設けられている。
また、このトップカバー3の上面の前辺部には、横長形状の操作パネル24が設けられている。詳しく図示はしないが、この操作パネル24は、ユーザが洗濯機1に対する電源の入り切りや各種の設定・指示等を行うための操作部や、必要な表示を行う表示部24a(図2、図10参照)を備えて構成されている。このとき、洗濯機1には、標準コースの他に、つけおきコース、スピードコース、念入りコース、毛布コースなどの複数の自動運転のコースが設けられており、ユーザは操作パネル24を操作して実行したい洗濯コースを設定することが可能となっている。
前記トップカバー3の後部には、給水源この場合水道から供給される水を、給水経路を通して水槽4(洗濯槽10)内に給水するための給水機構25が設けられている。この給水機構25は、接続口26、給水弁27、注水ケース28、給水ホース29等を備える。そのうち接続口26は、図示しない水道の蛇口に接続された接続ホースの先端部が接続される。前記給水弁27は、電磁的に開閉動作する開閉弁からなり、前記制御装置21により制御される。また、給水ホース29の先端部が前記水槽カバー13の給水口20に接続されている。
これにて、給水弁27が開放されることにより、水が注水ケース28及び給水ホース29を順に通って、給水口20から水槽4内に供給される。尚、図示はしないが、注水ケース28内には引出し式の洗剤収容部等が設けられ、洗剤収容部に洗剤が収容されている場合には、その洗剤を溶かしながら給水が行われる。
図2は、上記した制御装置21を中心とした、洗濯機1の電気的構成を概略的に示している。制御装置21は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを主体として構成され、洗濯機1全体を制御して洗濯運転の各行程を実行する。この制御装置21は、前記操作パネル24からの操作信号が入力されると共に、操作パネル24の表示部24aの表示を制御する。また、制御装置21には、前記水位センサ9の検知した洗濯槽10内の水位検知信号が入力されると共に、前記回転センサ31、電流センサ32からの検知信号が入力される。
制御装置21は、前記洗濯機モータ16、クラッチ機構17、給水弁27、排水弁7等からなる洗濯機構を制御する。以上の構成により、制御装置21は、操作パネル24におけるユーザの洗濯コースの設定操作等に応じて、各センサからの入力信号や予め記憶された制御プログラムに基づいて、洗濯機1の洗濯機構を制御して洗濯運転を行う。例えば周知の自動運転の標準コースにあっては、洗い、すすぎ、脱水の各行程からなる洗濯運転を実行する。この場合、すすぎ行程では、例えば脱水すすぎ動作とためすすぎ動作とが順に実行される。
尚、洗濯運転を実行するにあたっては、制御装置21は、運転開始時に、洗濯槽10内の衣類の布量(重量)検知動作、及び、衣類の布質判定動作を実行する。布質判定動作は、衣類が主として綿製品からなっているか、化繊製品からなっているかを判別する。そして、それら布量検知動作及び布質判定動作の結果に基づいて、洗いやためすすぎ時の水位が複数段階(例えば15、20、30、40、50、60リットルの6段階)で設定されると共に、各行程の実行時間(洗濯運転時間)、水流の強さ(機械力)等が自動設定される。洗濯槽10内への給水制御は、水位センサ9の水位検知に基づいて行われる。これにより、洗いに要する水量が検出可能となっている。
このとき、前記布量検知動作は、周知のように、水槽4に対する給水前の状態で、駆動機構15によりパルセータ12を短時間だけ回転駆動し、その時に洗濯機モータ16に流れる電流を電流センサ32により検出することに基づいて行われる。また、前記布質判定動作は、水槽4内に布質検知水位まで給水を行った状態で、駆動機構15によりパルセータ12を短時間だけ回転駆動し、回転センサ31により洗濯機モータ16の回転速度を検出し、判定テーブルと比較することに基づいて行われる。従って、制御装置21、電流センサ32、回転センサ31等から、布量検知手段及び布質検知手段が構成され、特徴量検出装置の一部として機能する。洗濯運転における、洗濯運転時間、給水水量、水流の強さ等をユーザが手動設定することも可能である。
さて、本実施形態では、図2に示すように、制御装置21には、水槽4内に給水された水の温度を検出する水温センサ33、給水される水の硬度を検出する硬度センサ34、水槽4内の洗濯水の汚れ度(光の透過度)を検出する汚れ度センサ35、外気温を検出する外気温センサ36が接続され、それらからの検出信号が入力されるようになっている。これら各センサ33~36が、上記した布量検知手段及び布質検知手段等と併せて、洗濯運転における洗剤の効果が出る要因を特徴付ける特徴量を洗濯運転時に検出する特徴量検出装置としての機能を備えている。
本実施形態では、特徴量には、水温、衣類の布質、水の硬度、洗濯運転時間、洗いに要する水量、衣類の汚れ度合い、衣類に作用する機械力、衣類の重量、外気温の各種があり、制御装置21はそれら特徴量のうち一つ以上の特徴量を、主として洗い行程において検出する構成となっている。更に、制御装置21には、洗剤情報記憶装置37が接続されている。この洗剤情報記憶装置37には、洗濯に用いられる複数種類の洗剤、即ち市販されている洗剤において、各特徴量に対する洗剤効果の情報を各洗剤毎に記憶している。
図4、図5は、洗剤情報記憶装置37に記憶される洗剤効果の情報の一例を示している。図4は、ある一つの洗剤Diの、特徴量としての水温の値(計測値)と洗剤効果との関係を示し、水温センサ33により検出される水温Tを横軸とし、それに対する洗剤効果ET を縦軸に示している。図5は、やはり洗剤Diの、特徴量としての水の硬度の値(計測値)と洗剤効果との関係を示しており、硬度センサ34により検出される水の硬度Hを横軸とし、それに対する洗剤効果EH を縦軸に示している。この場合、洗剤効果Eは、0(洗濯の効果がない)から1(最大の効果)までの数値で表される。尚、この洗剤効果の情報については、例えば、洗剤メーカや洗濯機のメーカ、或いは公的機関等により予め実験が行われ、そのデータに基づいて作成される。
そして、本実施形態では、次の動作説明(図3のフローチャート説明)で詳述するように、制御装置21は、主としてそのソフトウエア構成により、今回の洗濯運転時に各特徴量検出装置の検出した特徴量と、洗剤情報記憶装置37に記憶されている各洗剤の特徴量に対する洗剤効果の情報とに基づいて、洗濯運転における各洗剤の適性、この場合、今回の洗濯運転においてはどの洗剤種類が適していたかを判定する。従って、制御装置21が、判定装置としての機能を備える。尚、水温については、例えば、洗剤の溶けやすさ等からやや高めの温度の方が、洗剤効果が高くなると考えられ、また、水の硬度についても、やはり洗剤の溶けやすさ等から中程度の硬度が洗剤効果が高くなると考えられる。
より具体的には、本実施形態では、図6等に、水温に対する洗剤効果ET をX軸、水の硬度に対する洗剤効果EH をY軸として示すように、制御装置21は、水温に対する洗剤効果ET と、水の硬度に対する洗剤効果EH とを要素とした二次元の特徴ベクトルFVを設定し、各洗剤種類における特徴ベクトルFVの大きさを比較することにより、適性を判定するように構成されている。また、制御装置21は、例えば洗濯運転終了時に、上記判定結果を操作パネル24の表示部24a表示部に表示する。このとき、本実施形態では、特徴ベクトルの大きさ(洗剤効果)の大きい順に順位を付与して表示を行う。
次に、上記構成の洗濯機1の動作について、主として図3~図10を参照して述べる。尚、本実施形態では、上記したように、特徴量のうち、水温と水の硬度との2種類の特徴量に対する、洗剤の適性を判定する場合を具体例としている。また、図9に示すように、洗剤情報記憶装置37に記憶されている洗剤の種類が、洗剤Di、洗剤Dj、洗剤Dk、洗剤Dl、洗剤Dm、洗剤Dnの6種類の場合を例として説明する。
図3のフローチャートは、洗濯運転時或いは洗濯運転終了時に制御装置21が実行する、洗剤の適性判定の処理手順を示している。即ち、洗濯運転中の主として洗い行程においては、各種の特徴量(水温T及び水の硬度H)が計測されている。まず、ステップS1では、1種類の洗剤に関して、洗剤情報記憶装置37に記憶されている洗剤情報から、今回の洗濯運転時に計測された特徴量に対する洗剤効果が求められ、特徴ベクトルが求められる。ステップS2では、求められた特徴ベクトルの大きさが計算される。
具体例を挙げると、図4に示すように、洗剤Diに関して、特徴量としての水温の計測値がTiであったとすると、洗剤効果はET (Ti)となる。また、図5に示すように、洗剤Diに関して、特徴量としての水の硬度Hの計測値がHiであったとすると、洗剤効果はEH (Hi)となる。これにより、図6に示すように、洗剤Diの特徴ベクトルFViは、水温による洗剤効果ET (Ti)と、水の硬度による洗剤効果EH (Hi)とを要素とするベクトルとなる。
そして、図8に示すように、特徴ベクトルFViの大きさ|FVi|は、次の(1)式で求めることができる。
図3に戻って、次のステップS3では、全ての洗剤種類に関して、特徴ベクトルFVの大きさを計算したかどうかが判断される。まだ未計算の洗剤種類が残っている場合には(ステップS3にてYes)、ステップS1からの処理が繰返される。この場合6種類の全ての洗剤種類に関して特徴ベクトルFVの大きさの計算が完了した場合には(ステップS3にてNo)、ステップS4に進む。図7は、3種類の洗剤、この場合洗剤Di、洗剤Dj、洗剤Dkについて、特徴ベクトルFVi、FVj、FVkを求めた例を示している。このように、洗剤の種類に応じて、水温による洗剤効果ET 、水の硬度による洗剤効果EH は相違するものとなる。
また、図9には、各洗剤種類Di~Dnに関する、水温による洗剤効果ET 、水の硬度による洗剤効果EH 、特徴ベクトルFVの大きさ|FV|の具体例の一覧を示している。ここで、特徴ベクトルFVの大きさ|FV|が大きいということは、今回の洗濯運転における洗剤効果が出る要因となる2種類の特徴量、この場合水温及び水の硬度に対して、総合的にみて、概ね洗剤効果が高い、つまり適性に優れた洗剤であると評価することができる。これに対し、特徴ベクトルFVの大きさが小さい場合には、今回の洗濯運転の実際の水温や水の硬度の条件では、さほどの洗剤効果が出ない、つまり適性に劣る洗剤であると評価することができる。
図3に戻って、ステップS4では、特徴ベクトルの大きさが大きい順に洗剤種類がソートされ、ステップS5にて、ソートされた洗剤種類のうち、所定の閾値以上、例えば1.0以上の洗剤名が、順位と共に表示部24aに表示される。図10は、表示部24aに表示される、適性判定結果の表示例を示している。この表示は、例えば洗濯運転終了時に行われ、ユーザは、この表示を見て、今回の洗濯運転において最も洗剤効果を発揮したであろうと考えられる洗剤の種類を知ることができる。
このように本実施形態によれば、次のような作用・効果を得ることができる。即ち、洗剤情報記憶装置37には、洗濯に用いられる複数種類の洗剤において、その洗剤が効果の出る要因を特徴付ける特徴量の情報が各洗剤毎に記憶されており、今回の洗濯運転時には、特徴量検出装置により複数の特徴量、この場合水温及び水の硬度が検出される。すると、検出した特徴量と、洗剤情報記憶装置37に記憶された各洗剤の当該特徴量に対する洗剤効果とに基づいて、制御装置21により、洗濯運転におけるそれら各洗剤の適性を判定することができる。
従って、この第1の実施形態によれば、実際に洗濯運転を行った際の、水温や水の硬度といった、洗剤の効果を特徴づける要因となる複数の特徴量の観点から、今回の洗濯運転に適した洗剤種類の候補が何であったかを判定することができる。この結果、ユーザに対して各洗剤の適性の評価を提示することができる。ユーザは、既存の市販の複数種類の洗剤のうち、自己の洗濯運転に用いるに適した洗剤が何であったかを知ることができ、ひいては、洗剤を購入する際の大きな参考とすることができる。
また、特に本実施形態においては、制御装置21は、各洗剤種類に対するし、適正の評価の高低に応じた順位を付して表示部24aに表示するように構成されている。これにより、ユーザに対し、既存の市販の複数種類の洗剤のうち、自己の洗濯運転に用いるに適したもの及びその順位をも提示することができ、より有用な情報とすることができる。ユーザは、自己の洗濯運転に用いるに最も適したもの、2番目に適したもの等を知ることができる。
(2)第2の実施形態
次に、第2の実施形態について、図11~図20を参照して述べる。この第2の実施形態が上記第1の実施形態と異なる点は、制御装置21が実行する、洗剤の適性判定の手法にある。本実施形態では、洗剤情報記憶装置37に記憶される洗剤効果の情報として、各洗剤種類における各特徴量に関して、優良な洗剤効果が得られるこの場合最大の洗剤効果が得られる特徴量の情報が記憶されている。本実施形態でも、特徴量のうち、水温と水の硬度との2種類の特徴量に対する、洗剤の適性を判定する場合を具体例とする。
図12は、洗剤Diの、特徴量としての水温の値T(計測値)と洗剤効果との関係を示しており、水温による洗剤効果ET の最大値ET (Timax)が得られる水温Tは、Timaxとなっている。同様に、図13は、洗剤Diの、特徴量としての水の硬度H(計測値)と洗剤効果との関係を示しており、水の硬度による洗剤効果EH の最大値EH (Himax)が得られる硬度Hは、Himaxとなっている。このような、優良な洗剤効果が得られる特徴量の情報が洗剤情報記憶装置37に記憶されている。図19(a)には、6種類の洗剤Di~Dnについての、最大の洗剤効果が得られる水温Tmax (℃)、最大の洗剤効果が得られる水の硬度Hmax(アメリカ硬度)の具体例を示している。図中、()内は標準化値を示しており、この標準化値は、(計測値-平均)/分散で計算される。
そして本実施形態では、判定装置としての制御装置21は、今回の洗濯運転時(洗い行程)に各特徴量検出装置の検出した特徴量と、洗剤情報記憶装置37に記憶されている各洗剤の特徴量に対する洗剤効果の情報とに基づいて、洗濯運転における各洗剤の適性を判断する、このとき、本実施形態では、次の動作説明(図11のフローチャート説明)で詳述するように、制御装置21は、各洗剤に関して優良な(最大の)洗剤効果が得られる特徴量を要素とする第1の特徴ベクトルと、特徴量検出装置の検出した特徴量を要素とする第2の特徴ベクトルとの類似度を算出して、各洗剤の適性を判定する。
図11のフローチャートは、洗濯運転時或いは洗濯運転終了時に制御装置21が実行する、洗剤の適性判定の処理手順を示している。即ち、洗濯運転中の主として洗い行程においては、各種の特徴量(水温T及び水の硬度H)が計測されている。例えば、水温Tが22℃、水の硬度H(例えばアメリカ硬度)が90等と計測される。ステップS11では、1種類の洗剤に関して、洗剤情報記憶装置37に記憶されている洗剤情報から、第1の特徴ベクトルが求められる。図12、図13の具体例の場合、図14に示すように、第1の特徴ベクトルFV1iは、水温による洗剤効果ET の最大値ET (Timax)が得られる水温Timax(図12参照)と、水の硬度による洗剤効果EH の最大値EH (Himax)が得られる硬度Himax(図13参照)とを要素とする二次元のベクトルとなる。
次のステップS12では、今回の洗濯運転時に計測された特徴量を要素とする第2の特徴ベクトルが求められ、その第2の特徴ベクトルと上記第1の特徴ベクトルとの類似度が計算される。ここで、図15、図16に示すように、計測された特徴量として、水温の計測値がTm(図15参照)、水の硬度の計測値がHm(図16参照)であったとすると、図17に示すように、第2の特徴ベクトルFV2 は、水温Tmと、水の硬度Hmとを要素とする二次元のベクトルとなる。
第2の特徴ベクトルFV2 と第1の特徴ベクトルFV1iとの類似度を求めるにあたっては、図18に示すように、第2の特徴ベクトルFV2 と第1の特徴ベクトルFV1iとのなす角度θの余弦cosθと、第2の特徴ベクトルFV2 と第1の特徴ベクトルFV1iとの距離Niが用いられる。
2つのベクトルのなす角度θのcosθは、次の(2)式で求めることができる。
2つのベクトルの距離Niは、次の(3)式で求めることができる。
そして、類似度Siは、次の(4)式で求めることができる。
この場合、類似度Siは、-1≦Si≦1の範囲で求められ、両ベクトルが全く同じ場合には、角度θが0で、距離Niが0であるため、類似度Siは1となる。類似度Siが大きいほど、当該洗剤Diを用いることが、より高い洗剤効果が発揮される、即ち、適性に優れるということができる。
図11に戻って、ステップS13では、全ての洗剤種類に関して、類似度Siの大きさを計算したかどうかが判断される。まだ未計算の洗剤種類が残っている場合には(ステップS13にてYes)、ステップS11からの処理が繰返される。この場合6種類の全ての洗剤種類Di~Dnに関して類似度Siの計算が完了した場合には(ステップS13にてNo)、ステップS14に進む。
ステップS14では、類似度Siの大きさが大きい順に洗剤種類がソートされ、ステップS15にて、ソートされた洗剤種類のうち、類似度Siが所定の閾値以上、例えば0以上の洗剤種類名が、順位と共に表示部24aに表示される。図20は、表示部24aに表示される、適性判定結果の表示例を示している。この表示は、例えば洗濯運転終了時に行われ、ユーザは、この表示を見て、今回の洗濯運転において最も適性の高かった洗剤の種類を知ることができる。
ここで、図19は、6種類の洗剤Di~Dnについての、例えば、水温Tの計測値が22℃、水の硬度Hの計測値が90であった場合の、類似度Siの具体例を示している。それら計測値から第2の特徴ベクトルFV2 が求められ、上記した図19(a)の数値から、第1の特徴ベクトルFV1iを求めることができる。図19(b)には、それらから計算された両ベクトルのなす角度cosθ、両ベクトル間の距離e-Ni 、類似度Siの値を示している。この結果、図20に示すように、今回の洗濯運転に適性の最も高い洗剤が洗剤Dl、2番目が洗剤Dn、3番目が洗剤Dmと表示される。
このような第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、実際に洗濯運転を行った際の、水温や水の硬度といった、洗剤の効果を特徴づける要因となる複数の特徴量の観点から、今回の洗濯運転に適した洗剤種類の候補が何であったかを判定することができる。この結果、ユーザに対して各洗剤の適性の評価を提示することができる。ユーザは、既存の市販の複数種類の洗剤のうち、自己の洗濯運転に用いるに適した洗剤が何であったか更にその順位を知ることができ、ひいては、洗剤を購入する際の大きな参考とすることができる。
特に本実施形態では、各洗剤に関して優良な洗剤効果が得られる特徴量を要素とする第1の特徴ベクトルと、特徴量検出装置の検出した特徴量を要素とする第2の特徴ベクトルとの類似度を算出して、各洗剤の適性を判定するようにした。このとき、第1の特徴ベクトルと第2の特徴ベクトルとの類似度は、計測された特徴量が各洗剤に関する優良な(理想的な)洗剤効果が得られる特徴量に対してどれだけ近いかを表すものであるから、求められた類似度から、各洗剤が、今回の洗濯運転において使用するに適切であったかどうかの適性、ひいては適切な洗剤の種類を、十分な正しさで判定することが可能となる。
(3)第3の実施形態
図21~図25は、第3の実施形態を示すものである。この第3の実施形態においても、上記第1の実施形態と同様に、制御装置21は、計測された水温Tに対する洗剤効果ET と、計測された水の硬度Hに対する洗剤効果EH とを要素とした二次元の特徴ベクトルを求める。そして、本実施形態では、制御装置21は、特徴ベクトルを求めるにあたって、洗剤効果を発揮するにあたっての当該特徴量の重要性及び/又は希少性に応じた重み付けを行い、各洗剤種類における重み付け後の特徴ベクトルの大きさを比較することにより、適性を判定する。このとき、洗剤情報記憶装置37には、各洗剤Di~Dnにおける、各特徴量と洗剤効果との関係の情報に加えて、各特徴量の重要性及び各特徴量の希少性のデータが予め記憶されている。
図21のフローチャートは、洗濯運転時或いは洗濯運転終了時に制御装置21が実行する、洗剤の適性判定の処理手順を示している。即ち、上記第1の実施形態と同様に、洗濯運転中には水温T及び水の硬度Hが計測され、ステップS1では、特徴ベクトルが求められる。このステップS1で求められる特徴ベクトルは、水温Tによる洗剤効果ET (T)と、水の硬度Hによる洗剤効果EH (H)とを要素とするベクトルとなる。次のステップS21では、その特徴ベクトルに対し、重要性TF及び希少性IDFについての重み付けがなされた特徴ベクトルFV´が求められる。ステップS3では、重み付けがなされた特徴ベクトルFV´の大きさが求められる。
ここで、重要性TFは、各洗剤Di~Dnの各特徴量に対する重要度n(図22参照)から、次の(5)式で求められる。但し、Nは、各洗剤の重要度の総和である。
重要性:TF=n/N …(5)
この場合、重要性TFの数値が大きいほど、その特徴量に対する洗濯の仕上り具合に影響が大きくなることを意味している。
また、希少性IDFは、各洗剤Di~Dnの各特徴量に対する希少度d(図23参照)から、次の(6)式で求められる。但し、Dは、各洗剤の希少度の総和である。
希少性:IDF=-log(d/D)+1 …(6)
この場合、希少性IDFの数値が大きくなるほど、その特徴量に対して他の洗剤では得られない優れた効果が得られることを意味している。
図22には、各洗剤Di~Dnの水温の重要度及び水の硬度の重要度を示している。重要度とは、当該特徴量が、その洗剤にとって洗剤効果を発揮するのにどれほど重要かを、例えば0~5の数値で示すものである。この例では、水温に関しては、洗剤Diにおいては洗剤効果を発揮するために水温がかなり重要である(重要度5)が、洗剤Dmにおいては、水温は洗剤効果に影響がない(重要度0)ものとなっている。また、水の硬度に関しては、洗剤Dnにおいて洗剤効果を発揮するために水の硬度がかなり重要である(重要度5)が、洗剤Dj、洗剤Dlについては、水の硬度は洗剤効果に影響がない(重要度0)ものとなっている。
図23には、各洗剤Di~Dnの水温の希少度及び水の硬度の希少度を示している。希少度とは、当該特徴量が、その洗剤にとって洗剤効果を発揮する要因となるかどうかを示すものであり、発揮する場合には希少度が1、発揮しない場合には0とされる。この例では、水温に関しては、洗剤Dmについては水温が洗剤効果を発揮する要因とならず(希少度0)、他の洗剤においては水温が洗剤効果を発揮する要因となる(希少度1)。水の硬度に関しては、洗剤Dj、洗剤Dlについては水の硬度が洗剤効果を発揮する要因とならず(希少度0)、他の洗剤においては水の硬度が洗剤効果を発揮する要因となる(希少度1)。
そして、特徴ベクトルに重み付けを行うにあたっては、ステップS1にて求められたベクトルの各要素、つまり、水温Tによる洗剤効果E
T (T)と、水の硬度Hによる洗剤効果E
H (H)との各要素に、重要性と希少性とが夫々乗算される。特徴ベクトルFV´は、その結果を新たな要素としたベクトルとして、次の(7)式で計算される。
図24には、6種類の各洗剤Di~Dnに関して、重み付けを行った特徴ベクトルFV´の各要素の具体例を示している。併せて、各特徴ベクトルFV´の大きさも示している。図21に戻って、ステップS4では、特徴ベクトルFV´の大きさが大きい順に洗剤種類がソートされ、ステップS5にて、ソートされた洗剤種類のうち、所定の閾値以上、例えば0.6以上の洗剤名が、順位と共に表示部24aに表示される。図25は、表示部24aに表示される、適性判定結果の表示例を示している。
このような第3の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、実際に洗濯運転を行った際の、水温や水の硬度といった、洗剤の効果を特徴づける要因となる複数の特徴量の観点から、今回の洗濯運転に適した洗剤種類の候補が何であったかを判定することができる。この結果、ユーザに対して各洗剤の適性の評価を提示することができる。ユーザは、既存の市販の複数種類の洗剤のうち、自己の洗濯運転に用いるに適した洗剤が何であったか更にその順位を知ることができ、ひいては、洗剤を購入する際の大きな参考とすることができる。
特に本実施形態では、各洗剤における複数の特徴量に関し、洗剤効果を発揮するにあたっての当該特徴量の重要性及び希少性に応じた重み付けを行い、特徴ベクトルFV´を求めるように構成した。これにより、洗剤の適性を判定するにあたり、重要性及び希少性を考慮して、洗剤効果を発揮するためのより効果的な洗剤種類の判定、表示を行うことができる。尚、この第3の実施形態では、重要性及び希少性の双方に関して重み付けを行うようにしたが、重要性と希少性とのどちらか一方に基づいて、重み付けを行うように構成しても良い。
(4)第4の実施形態
図26~図28は、第4の実施形態を示すものである。この第4の実施形態が、上記第1の実施形態と異なる点は、制御装置21は、複数回の洗濯運転における、適性の情報を累積して各洗剤の総合的な適性を判定する構成にある。本実施形態では、各洗剤の総合的な適性の判定に、過去m回の洗濯運転時の特徴ベクトルFVの大きさの平均値を用いるようにしている。即ち、図26のフローチャートは、洗濯運転時或いは洗濯運転終了時に制御装置21が実行する、洗剤の適性判定の処理手順を示している。ステップS1~ステップS3の処理は、上記第1の実施形態(図3のフローチャート)と同様に行われる。
次のステップS31では、各洗剤に関し、m回の洗濯運転の特徴ベクトルの大きさの平均値が、洗剤情報記憶装置37に記憶される。そして、ステップS32では、過去に記憶された特徴ベクトルの大きさの平均値が洗剤情報記憶装置37から読み出され、平均値が大きい順に洗剤種類がソートされ、各洗剤の累積した適性の順位が表示部24aに表示される。図27は、6種類の各洗剤Di~Dnに関して、過去m回の洗濯運転における特徴ベクトルの大きさの平均値と、平均順位との具体例を示している。この場合、図28に例示するように、表示部24aには、総合的(平均的)に洗濯運転に適している洗剤の種類を順位と共に表示している。
この第4の実施形態によれば、上記第1の実施形態などと同様に、実際に洗濯運転を行った際の、水温や水の硬度といった、洗剤の効果を特徴づける要因となる複数の特徴量の観点から、今回の洗濯運転に適した洗剤種類の候補が何であったかを判定することができる。この結果、ユーザに対して各洗剤の適性の評価を順位と共に提示することができる。このとき、制御装置21により、複数回の洗濯運転を実行してきた際の、長期間にわたる洗濯運転内容に合致した適切な洗剤を表示することが可能となり、より有用性を高めることができる。
(5)第5の実施形態
図29は、第5の実施形態を示すものであり、上記第2の実施形態とは次の点で異なっている。即ち、複数の特徴量間に相関関係があると考えられる場合、この第5の実施形態では、第2の特徴ベクトルと第1の特徴ベクトルとの類似度を算出する際に、通常の距離に代えて、統計学で用いられるマハラノビス距離を用いるようにしている。具体的には、特徴量としての、水温Tと気温Aとは、水温Tが高いときには気温Aも高いことが想像され、両者に相関関係があると想定される。
このとき、洗剤情報記憶装置37には、6種類の各洗剤Di~Dnについての、最大の洗剤効果が得られる水温Timaxと、最大の洗剤効果が得られる気温Aimaxとの情報が記憶されており、これらから第1の特徴ベクトルFV1iを求めることができる。そして、制御装置21は、実際に計測された水温Tmと、気温Amとを要素とした第2の特徴ベクトルFV2 が求められ、それらの角度θと、マハラノビス距離Niとから類似度Siを算出して、各洗剤の適性が求められる。
第2の特徴ベクトルFV2 と第1の特徴ベクトルFV1iとの間のマハラノビス距離Niは、次の(8)式で求めることができる。
このとき、分散共分散行列Σ、相関係数ρは、次のように定義され、Σ
-1は、次の(9)式で求められる。
このような第5の実施形態によれば、複数の特徴量間、例えば水温Tと気温Aといったように、相関関係がある場合に、第2の特徴ベクトルFV2 と第1の特徴ベクトルFV1iとの間の類似度Siを算出するにあたって、両ベクトルの距離Niに相関関係を織り込んだマハラノビス距離が採用される。これにより、複数の特徴量間の相関関係を織り込んだより正確な類似度Siを求めることができ、それら特徴量に関してより適切な洗剤を表示することが可能となる。
(6)第6の実施形態
図30~図33は、第6の実施形態を示すものであり、上記第1の実施形態と異なるところは、次の点にある。この第6の実施形態では、ユーザが期待する洗剤の効果の種類を予め指定(選択)することにより、今回の洗濯運転における、その種類の洗剤効果を得るに適した洗剤の種類を判定し表示する構成とされている。ここで、洗剤効果の種類としては、図31に示すように、部屋干し効果(部屋干ししても匂いが残らない効果)、消臭効果、除菌効果、汗汚れ除去効果、花粉除去効果がある。
この場合、図32に示すように、洗濯運転の開始時或いは終了時に、操作パネル24の表示部24aに洗濯効果の種類の選択画面が表示され、ユーザが、5つの効果のうち期待するものを選択するようになっている。ここで、各洗剤においては、上記した洗剤効果を得るために良い結果が表れるつまり影響の大きい(重要な)特徴量と、その洗剤効果にほとんど関係がなく重要でない特徴量とがある。図31には、洗剤効果とそれに影響の大きい特徴量の組合せとの関係の一覧を示しており、丸が付された特徴量の組合せがその洗剤効果に対して重要な特徴量である。例えば「部屋干し効果」の場合、水温、水の硬度、洗い時間、水量、衣類の重量、気温の6つの特徴量が影響が大きく、また「消臭効果」の場合には、衣類の布質、水の硬度、汚れ量、気温の4つの特徴量が影響が大きい。
本実施形態では、洗剤情報記憶装置37には、各洗剤Di~Dnにおける、9つの各特徴量と洗剤効果との関係の情報に加えて、上記した洗剤効果とそれに影響の大きい特徴量との関係の情報が記憶されている。そして、制御装置21は、ユーザが選択した洗濯効果の種類に関して、図31の表に丸が付された特徴量の組合せを用いて、洗濯運転時の特徴量を計測し、各洗剤種類における特徴ベクトルを求める。そして、それら特徴ベクトルの大きさを比較することにより、各洗剤が、その洗剤効果を得るに適しているかどうかを判定するようになっている。
図30のフローチャートは、洗濯運転時或いは洗濯運転終了時に制御装置21が実行する、洗剤の適性判定の処理手順を示している。本実施形態では、上記したように予めユーザにより期待する洗剤効果の種類が選択されており、洗濯運転中の主として洗い行程においては、選択された洗剤効果に対応した種類の特徴量が計測されている。例えばユーザにより「消臭効果」が選択されていた場合には、衣類の布質、水の硬度、汚れ量、気温の4つの特徴量が計測されている。
ステップS41では、1種類の洗剤に関して、洗剤情報記憶装置37に記憶されている洗剤情報から、今回の洗濯運転時に計測された特徴量に対する洗剤効果が求められ、特徴ベクトルが求められる。この場合、4つの特徴量の組合せの場合、4つの各特徴量に対する4つの洗剤効果を要素とした4次元の特徴ベクトルが求められる。次のステップS42では、求められた特徴ベクトルの大きさが計算される。次のステップS43では、全ての洗剤種類に関して、特徴ベクトルの大きさを計算したかどうかが判断され、未計算の洗剤種類が残っている場合には(ステップS43にてYes)、ステップS41からの処理が繰返される。
6種類の全ての洗剤種類に関して特徴ベクトルの大きさの計算が完了した場合には(ステップS43にてNo)、ステップS44に進む。ステップS44では、特徴ベクトルの大きさが大きい順に洗剤種類がソートされ、ステップS45にて、ソートされた洗剤種類のうち、所定の閾値以上の洗剤名が、順位と共に表示部24aに表示される。図33は、表示部24aに表示される、適性判定結果の表示例を示している。ここでは、今回の洗濯運転において、消臭効果の面で最も洗剤効果を発揮したと考えられる洗剤の種類が順位と共に表示される。
このような第6の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、実際に洗濯運転を行った際の、洗剤の効果を特徴づける要因となる複数の特徴量の観点から、今回の洗濯運転に適した洗剤種類の候補が何であったかを判定し、ユーザに対して各洗剤の適性の評価を提示することができる。特に本実施形態では、ユーザが期待する洗剤効果の種類を指定することに基づき、洗剤効果の種類毎に設定される特徴量を用いて、各洗剤の特徴ベクトルが求められ、それに基づいて適性が判定されるので、各洗剤効果に関してより適切な洗剤を表示することが可能となり、ユーザは洗剤を購入する際の大きな参考とすることができる。
(7)第7の実施形態
図34~図37は、第7の実施形態を示すものであり、上記第6の実施形態と異なるところは次の点にある。即ち、第6の実施形態における、ユーザが期待する洗剤の効果の種類を予め選択することに基づき、今回の洗濯運転におけるその種類の洗剤効果を得るに適した洗剤の種類を判定し表示することに代えて、本実施形態では、洗濯運転開始時にユーザが選択設定する洗濯コースに基づいて、その洗濯コースに応じた汚れ落ち等の洗濯の仕上り状態を得るに適した洗剤の種類を判定し表示するようにしている。
この場合、図36に示すように、洗濯運転開始時にユーザが選択設定する洗濯コースには、デフォルトである標準コースの他に、スピードコース、つけおきコース等様々なコースがあり、夫々の洗濯コース毎に、期待される洗濯の仕上り状態はやや異なってくる。ここで、各洗剤においては、洗濯コースに応じた洗濯の仕上りを良好とする要因となる重要な特徴量と、洗濯コース毎の洗濯の仕上りにほとんど関係がない特徴量とがある。図35には、洗濯コースとそれに影響の大きい特徴量の組合せとの関係の一覧を示しており、丸が付された特徴量の組合せがその洗濯コースに対して重要な特徴量である。例えば「標準コース」の場合、水温、衣類の布質、水の硬度、水量、汚れ量、気温の6つの特徴量が影響が大きい。
本実施形態では、洗剤情報記憶装置37には、各洗剤Di~Dnにおける、9つの各特徴量と洗剤効果との関係の情報に加えて、上記した洗濯コースとそれに影響の大きい特徴量との関係の情報が記憶されている。そして、制御装置21は、ユーザが選択した洗濯効果の種類に関して、図35の表に丸が付された特徴量の組合せを用いて、洗濯運転時の特徴量を計測し、各洗剤種類における特徴ベクトルを求める。そして、それら特徴ベクトルの大きさを比較することにより、各洗剤が、その洗濯コースに適しているかどうかを判定するようになっている。
図34のフローチャートは、洗濯運転時或いは洗濯運転終了時に制御装置21が実行する、洗剤の適性判定の処理手順を示している。本実施形態では、洗濯運転開始時に、ユーザは、図36に示したような表示部24aの選択画面で、洗濯コースを設定する。洗濯運転中の主として洗い行程において、上記したようにユーザにより設定された洗濯コースに対応した特徴量が計測される。例えば、ユーザにより「標準コース」が選択されていた場合には、水温、衣類の布質、水の硬度、水量、汚れ量、気温の6つの特徴量が計測されている。
ステップS51では、1種類の洗剤に関して、洗剤情報記憶装置37に記憶されている洗剤情報から、今回の洗濯運転時に計測された特徴量に対する洗剤効果が求められ、特徴ベクトルが求められる。この場合、6つの特徴量の組合せの場合、6つの各特徴量に対する6つの洗剤効果を要素とした6次元の特徴ベクトルが求められる。次のステップS42では、求められた特徴ベクトルの大きさが計算される。次のステップS43では、全ての洗剤種類に関して、特徴ベクトルの大きさを計算したかどうかが判断され、未計算の洗剤種類が残っている場合には(ステップS43にてYes)、ステップS41からの処理が繰返される。
6種類の全ての洗剤種類に関して特徴ベクトルの大きさの計算が完了した場合(ステップS43にてNo)、ステップS44にて、特徴ベクトルの大きさが大きい順に洗剤種類がソートされる。ステップS45では、ソートされた洗剤種類のうち、所定の閾値以上の洗剤名が、順位と共に表示部24aに表示される。図37は、表示部24aに表示される、適性判定結果の表示例を示している。ここでは、今回の洗濯運転において、標準コースにおいて最も洗剤効果を発揮したと考えられる洗剤の種類が順位と共に表示される。
このような第7の実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様に、実際に洗濯運転を行った際の、洗剤の効果を特徴づける要因となる複数の特徴量の観点から、今回の洗濯運転に適した洗剤種類の候補が何であったかを判定し、ユーザに対して各洗剤の適性の評価を提示することができる。特に本実施形態では、ユーザが設定した洗濯コース毎に設定される特徴量を用いて、各洗剤の特徴ベクトルが求められ、それに基づいて適性が判定されるので、実行した洗濯コースに関してより適切な洗剤を表示することが可能となり、ユーザは洗剤を購入する際の大きな参考とすることができる。
(8)第8の実施形態
図38、図39は、第8の実施形態を示すものである。図8に示すように、本実施形態にかかる洗濯機41は、上記第1の実施形態の洗濯機1と同様の洗濯機構等のハードウエア構成に加えて、インターネットを介してサーバ42と通信接続が可能な接続装置を備えている。この接続装置は、制御装置21により制御されるようになっている。前記サーバ42は、例えば洗濯機41のメーカが管理するもので、各洗剤メーカから発売される新製品の洗剤に関する、特徴量に対する洗剤効果の情報等を収集し、各洗濯機41に配信するように構成されている。洗濯機41の制御装置21は、サーバ42との間の通信により、洗剤情報記憶装置37の情報を更新するアップデート装置としての機能も有する。
図39のフローチャートは、洗濯機41の制御装置21が実行する、洗剤の適性判定の処理手順を示している。本実施形態では、ステップS61にて、サーバ42から、新たな洗剤に関する洗剤効果の情報を取得し、洗剤情報記憶装置37の情報を更新する。その後のステップS1~ステップS5は、実際の洗濯運転時の処理で、説明は省略するが、第1の実施形態等と同様にして行われる。ステップS62では、サーバ42に対し、洗濯運転時に計測した各特徴量等のデータを、洗濯機41の機種や設置場所(地域の住所)の情報と共に送信する。サーバ42は、そのような実際の洗濯機41で計測された特徴量や、算出された特徴ベクトルの情報等を収集する。
このような第8の実施形態によれば、各種の洗剤に関して各特徴量に対する洗剤効果の情報の、最新の情報を容易に取得することができ、洗剤情報記憶装置37には、洗剤効果に関する最新の情報を常に記憶させておくことができる。従って、新製品の洗剤に関しても容易に対応することが可能となる。尚、サーバから取得する洗剤の各特徴量に対する洗剤効果の情報としては、上記第2の実施形態のような、優良な洗剤効果が得られる特徴量の情報、つまり第1の特徴ベクトルの情報であっても良い。これにより、第2の実施形態と同様にベクトルの類似度の算出に基づく判定を実施することができる。
(9)第9の実施形態
図40は、第9の実施形態を示している。この実施形態では、サーバ42は、多数台の洗濯機41とインターネットなどを介して接続されており、それら多数台の洗濯機41において、複数回の洗濯運転において計測された特徴量や特徴ベクトル等の情報を収集して蓄積記憶するようになっている。これと共に、サーバ42は、収集した多数台の洗濯機41の複数回の洗濯運転の情報を、洗濯機41に配信するようになっている。そして、洗濯機41の制御装置21は、サーバ41から取得した情報に基づいて、複数回の洗濯運転における適性の情報を累積して各洗剤の総合的な適性を判定する。
この第9の実施形態によれば、サーバ42が収集した多数の洗濯運転の情報を取得した上で、その多数の情報を利用して複数回の洗濯運転を分析し、洗剤の適性を総合的に判定することができる。尚、このとき、サーバ42においては、収集した情報を統計学的に処理することにより、例えば地域毎や洗濯機の機種毎に、適性の高い洗剤の情報等を得ることができる。そして、その情報を、該当する洗濯機に配信したり、更には、洗濯機や洗剤のメーカの研究、開発等に利用したりすることが可能となる。
(10)第10の実施形態、その他の実施形態
図41は、第10の実施形態を示している。この実施形態においても、サーバ42は、多数台の洗濯機41とインターネットなどを介して接続されている。このとき、洗濯機41は、複数の使用地域、この場合地域A、地域B、地域C等に分けられる。サーバ42は、水道局等から、地域毎の水道の水質情報、例えば水の硬度や水温などの情報を収集し、その情報を該当する地域で使用される洗濯機41に配信する。
これによれば、洗濯機41の制御装置21は、サーバ42から、使用する地域毎の水道の水質情報を取得し、特徴量としての水の硬度や水温などの情報を、毎回の洗濯運転における計測によることなく、簡易に得ることが可能となる。その分、センサを省略する等の構成の簡単化を図ることができる。
尚、図示はしないが、第11の実施形態として、次のように構成することができる。即ち、洗剤を自動で投入する周知の自動投入装置を備えると共に、該自動投入装置における洗剤の残量を判定する残量判定装置を備える洗濯機にあっては、残量判定装置により洗剤残量が所定より少なくなったと判定されたときに、洗剤の補充を行うべき旨をユーザに通知すると共に、例えば第4の実施形態で判定された推奨する洗剤種類を、表示部24aの表示等によりユーザに報知するように構成することができる。これによれば、ユーザが、洗剤の買い替え(補充)を考えるに適したタイミングで、適切な洗剤をユーザに提示することが可能となり、ユーザにとって利便性の高いものとなる。
尚、上記各実施形態では、制御装置21による洗剤の適性の判定結果を、操作パネル24の表示部24aに表示するようにしたが、例えばユーザの所持するスマートフォンなどの外部情報端末に判定結果を送信して表示させるように構成しても良い。表示の仕方についても、順位を付けるのではなく、閾値以上と判定された洗剤種類を全て並列に表示したり、最も適していると判定された1種類の洗剤種類のみを表示したりすることも可能である。判定のために採用する特徴量についても、複数の組合せが可能であることは勿論であり、1種類の特徴量のみで判定を行うようにしても良い。
その他、上記各実施形態で説明した具体的な数値等は、あくまでも一例を示したものに過ぎず、適宜変更して実施し得る。更には、縦軸型の洗濯機に限らず、ドラム式の洗濯機に適用することもできる等、洗濯機の各機構のハードウエア構成などについても、様々な変更が可能である。上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。