JP7180527B2 - 差厚管の製造方法及び差厚管の製造装置 - Google Patents

差厚管の製造方法及び差厚管の製造装置 Download PDF

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この発明は、差厚管の製造方法と、差厚管の製造装置と、に関する。
自動車の車体を構成する部材として、衝突等により受けた衝突エネルギーを自らが潰れることによって吸収する部分と、潰れずに車体を保護する部分と、を有するものが用いられている。このような部材の一つとして、長手方向に沿って肉厚が異なる差厚管がある。
差厚管の製造方法の一例が、特許文献1に開示されている。
特許文献1の図1には、係止工程としごき加工工程とを有する差厚管の製造方法が開示されている。前記係止工程では、素管をダイス内に配置し、前記素管の長手方向への移動を規制した状態で、前記素管の一端部側よりプラグを押し込んで前記一端部側の外形を拡大させて前記ダイスに係止させる。続く前記しごき加工工程では、前記素管の前記規制を解く一方、前記素管の前記係止は維持したまま、前記プラグをさらに前記素管の他端部側に向かって押し込むことで、前記素管の外形を維持したまま内形を拡げるしごき加工を加えて薄肉部を形成する。
上記特許文献1に記載の製造方法によれば、差厚管を容易に製造できる。
特許第6256668号公報
一方、差厚管を自動車に幅広く適用するためには、素管内外面とダイス及びプラグとの間の摩擦係数や、必要とされるしごき率などの加工条件に幅広く対応できる製造方法や装置が求められていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、幅広い加工条件に応じて柔軟に対応できる、差厚管の製造方法と、差厚管の製造装置との提供を課題とする。
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
(1)本発明の一態様に係る差厚管の製造方法は、中空筒状の素管より差厚管を製造する方法であって、前記素管をダイス内に配置し、前記素管の長手方向への移動を規制した状態で、前記素管の一端側よりプラグ本体をスリーブと共に押し込み、前記一端側の外形を拡大させた拡形部を形成し、前記拡形部を前記ダイスに係止させる係止工程と;前記素管の前記規制を解く一方で前記素管の前記係止は維持してかつ、前記拡形部の内面を、前記スリーブで支えた状態で、前記プラグ本体をさらに前記素管の他端側に向かって押し込み、前記素管の外形を維持したまま内形を拡げるしごき加工を行う、しごき加工工程と;を有する。
(2)上記(1)に記載の差厚管の製造方法において、以下のようにしてもよい:前記係止工程で、前記拡形部に、前記プラグ本体の押し込み方向に向かって外形が先細りとなるテーパー部が形成され;前記しごき加工工程で、少なくとも、前記素管の前記一端側より前記テーパー部の前記押し込み方向に沿った後端位置までの範囲における前記拡形部の内面を、前記スリーブにより支える。
(3)上記(2)に記載の差厚管の製造方法において、前記しごき加工工程で、前記スリーブによって前記拡形部の内面を支える際の前記範囲が、前記後端位置より前記押し込み方向に沿って50mm以下の位置までであってもよい。
(4)上記(1)~(3)の何れか1項に記載の差厚管の製造方法において、前記しごき加工工程で、前記スリーブを、前記ダイスに係止させて位置固定してもよい。
(5)上記(1)~(4)の何れか1項に記載の差厚管の製造方法において、以下のようにしてもよい:前記素管及び前記差厚管が共に円管であり;前記素管の外径寸法をD1(mm)、前記拡形部の外径寸法をD2(mm)として、下記式1で示される拡径量EXが0.1%~50%である。
拡管率(%)=(拡管後の外径-素管外径)/素管外径×100・・・(式1)
(6)上記(5)に記載の差厚管の製造方法において、前記しごき加工工程後の、前記差厚管の減肉部における減肉率が10%~90%の範囲内であってもよい。
(7)上記(1)~(6)の何れか1項に記載の差厚管の製造方法において、前記素管としてシームレス鋼管を用いてもよい。
(8)本発明の一態様に係る差厚管の製造装置は、中空筒状の素管より差厚管を製造する装置であって、前記素管を収容するとともに前記素管の外形よりも大きな拡形凹部を含む収容部を有するダイスと;前記収容部内の前記素管の一端側に対して挿抜されるプラグ本体及びスリーブと;前記プラグ本体及び前記スリーブの挿抜を行う駆動機構と;前記スリーブを前記拡形凹部内に留める留置機構と;を備える。
(9)上記(8)に記載の差厚管の製造装置において、以下のようにしてもよい:前記プラグ本体が、前記プラグ本体の先端部よりも外形の小さい逃げ部を前記先端部よりも後端側の位置に有し;前記逃げ部を被覆可能に、前記スリーブが前記プラグ本体に対して外挿されている。
(10)上記(8)または(9)に記載の差厚管の製造装置において、以下のようにしてもよい:前記拡形凹部の、前記プラグ本体の押し込み方向に沿った先端側に、前記押し込み方向に向かって内形が先細りとなるテーパー凹部が形成され;前記留置機構が、少なくとも、前記素管の前記一端側より前記テーパー凹部の前記押し込み方向に沿った後端位置までを含む範囲に重なる位置に、前記スリーブを留置する。
(11)上記(10)に記載の差厚管の製造装置において、前記素管の前記一端側から前記拡形凹部の前記後端位置までの間と、前記後端位置から前記プラグ本体の押し込み方向に沿った50mm以下の位置までの間とに重なる位置に、前記留置機構が前記スリーブを留置してもよい。
(12)上記(8)~(11)の何れか1項に記載の差厚管の製造装置において、前記留置機構が、前記スリーブに設けられて前記ダイスに係止する係止部であってもよい。
(13)上記(8)~(11)の何れか1項に記載の差厚管の製造装置において、前記留置機構が、前記スリーブの挿抜停止位置を前記駆動機構に指示する制御部であってもよい。
(14)上記(8)~(13)の何れか1項に記載の差厚管の製造装置において、前記プラグ本体の押し込み方向に垂直な断面で見た場合、前記収容部の形状が、円形、楕円形、矩形、線対称形状、のうちの何れかであり、前記プラグ本体の形状が、円形、楕円形、矩形、線対称形状、のうちの何れかであってもよい。
本発明の上記各態様によれば、幅広い加工条件に応じて柔軟に対応できる、差厚管の製造方法及び差厚管の製造装置を提供できる。
本発明の一実施形態に係る差厚管の製造方法の各工程を、(a)~(c)の順に説明する図であって、差厚管の製造装置をその軸線を含む断面で見た断面図である。 同製造方法で用いられるプラグを示す斜視図であって、(a)が係止工程時を示し、(b)がしごき加工工程時を示す。 同製造方法により製造された差厚管を示す図であって、その中心軸線を含む断面で見た場合の断面図である。 同製造方法により製造された他の差厚管を示す図であって、その中心軸線を含む断面で見た場合の断面図である。 同製造方法を説明するために従来の製造方法と対比した部分拡大断面図であって、(a)が従来の製造方法を示し、(b)が本実施形態の製造方法を示す。 従来の製造方法と本実施形態の製造方法とを対比する数値解析における各寸法規定を示す図であって、(a)が本実施形態の製造方法を示す断面図であり、(b)が従来の製造方法を示す断面図である。 同数値解析の結果を示すグラフであり、(a)が従来の製造方法の場合を示し、(b)が本実施形態の製造方法の場合を示す。 同数値解析の結果を示す他のグラフであり、(a)が従来の製造方法の場合を示し、(b)が本実施形態の製造方法の場合を示す。 同製造方法で用いられるプラグの変形例を示す斜視図であって、(a)が係止工程時を示し、(b)がしごき加工工程時を示す。 同製造方法により製造される差厚管の他の例を示す図であって、(a)~(e)は、中間部をその長手方向に直交する断面で見た断面図である。
本発明の一実施形態及びその変形例について、図面を参照しながら以下に説明を行う。
図1に示すように、本実施形態における差厚管の製造方法は、中空円筒形状の素管Wをダイス10内に配置し、素管Wの一端部Waに拡形部を形成した後、素管Wの一端部Waより他端部Wbに向かってプラグ20を押し込むことで絞り加工を行う。
以下に詳細を説明するが、素管Wの長手方向に沿った一端部Wbに向かう方向を先端側と呼び、素管Wの長手方向に沿った他端部Waに向かう方向を後端側と呼ぶ場合がある。
本実施形態における素管Wとしては、引張強度が290MPa以上のものが好適に用いられる。例えば、素管Wとして、引張強度が440MPa又は980MPaのものを用いることができる。また、素管Wの材質としては、鋼に加えて、アルミニウム等の他の金属素材にも適用できる。素管Wは、中空筒状の金属管(鋼管を含む)を例示することができ、特に丸形鋼管が好ましい。丸形鋼管としては、シームレス鋼管、UO管、スパイラル管、電縫鋼管の何れも適用可能である。
図1は、本実施形態に係る差厚管の製造方法の各工程を(a)~(c)の順に説明する図であって、差厚管の製造装置をその軸線を含む断面で見た断面図である。図1中では、プラグ本体30のみ外形を示しており、その他は断面形状を示している。
まず、本実施形態に係る差厚管の製造装置について説明する。
本実施形態の差厚管の製造装置は、中空筒状の素管Wより差厚管Pを製造する装置である。図1(a)に示すように、差厚管の製造装置は、ダイス10と、プラグ20と、プラグ駆動部(駆動機構。不図示)と、制御部(不図示)と、を備える。
ダイス10内には、素管Wの外径d1に対応する内径を有する中空小径部11aと、素管Wの外径d1よりも大きな内径を有する中空大径部11bと、中空小径部11aと中空大径部11bとの間に設けられたテーパー凹部11cとが形成されている。すなわち、ダイス10は、素管Wを収容するとともに素管Wの外形よりも大きな拡形凹部(中空大径部11b及びテーパー凹部11c)を含む収容部を有する。中空小径部11a、中空大径部11b及びテーパー凹部11cは、ダイス10内において同軸かつ互いに連通して配置されている。中空小径部11a、中空大径部11b及びテーパー凹部11cは、軸線CLに垂直な断面形状が円形である。
なお、上記の「素管Wの外径d1に対応する内径」とは、素管Wの外径d1に対し、中空小径部11a内外への素管Wの抜き差しが可能な程度の隙間寸法を加えた内径寸法を示す。
図1及び図2に示すように、プラグ20は、プラグ本体30及びスリーブ40を有する。
プラグ本体30は、素管Wの内径d2よりも小さい外径の先端面31aを有するテーパー先端部31と、素管Wの内径d2よりも大きくてかつダイス10の中空小径部11aの内径よりも小さい外径を有する大径部32と、大径部32の外径よりも小さな外径を有する小径基端部33と、大径部32及び小径基端部33間に設けられたテーパー部34と、を備える。
図2に示すように、テーパー先端部31は、円形の先端面31aを先端とする円錐台形状をなしている。より具体的に言うと、図1(a)に示すように、テーパー先端部31は、プラグ本体30の軸線CLを含む断面で見た場合に、軸線CLに平行な線を基準としてテーパー角度θをなす外周面を有している。テーパー角度θは、1度~40度の範囲内であることが好ましい。テーパー角度θが1度未満であると素管Wの一端部Waを必要十分に拡径させることができない。一方、テーパー角度θが40度超では、しごき加工時にプラグ本体30のテーパー先端部31に生じる局部面圧が過大となり、プラグ本体30の寿命低下を引き起こす可能性がある。
図2に示すように、大径部32は、テーパー先端部31の後端に連なる円柱形状をなしている。より具体的に言うと、大径部32は、テーパー先端部31の後端と同じでかつ軸線CLに沿った各位置で一定の外径寸法を有している。
テーパー部34は、大径部32の後端に連なる円錐台形状をなしている。より具体的に言うと、テーパー部34は、大径部32の後端と同じでかつ軸線CLに沿って大径部32から離れるに従って縮径する円錐台形状をなしている。テーパー部34の先端側は、大径部32の外径寸法と同じ外径寸法を有している。
小径基端部33は、テーパー部34の後端に連なる円柱形状をなしている。より具体的に言うと、小径基端部33は、テーパー部34の後端と同じでかつ軸線CLに沿った各位置で一定の外径寸法を有している。小径基端部33の後端は、前記プラグ駆動部に接続されている。
プラグ本体30の外径寸法を軸線CLに沿って見た場合、前記先端面31aから始まってテーパー先端部31では徐々に拡径し、大径部32では一定外径を有し、テーパー部34では徐々に縮径し、そして小径基端部33では一定外径を有している。図1(a)に示すように、テーパー部34及び小径基端部33は大径部32よりも細くなっており、これらテーパー部34及び小径基端部33の周囲空間が逃げ部35となっている。逃げ部35は、大径部32の後端側に連なる環状の空間である。
図2に示すように、スリーブ40は筒状体である。スリーブ40は、テーパー部34の外周と小径基端部33の外周の一部とを覆うように、プラグ本体30に対して同軸に外挿されている。スリーブ40はプラグ本体30に対して固定されてないため、図2の(a)及び(b)に示すように、スリーブ40に対して同軸状態を保ったまま、プラグ本体30を相対移動させることができる。より具体的に言うと、図2(a)に示すように、プラグ本体30の逃げ部35をスリーブ40で覆うことと、図2(b)に示すように、小径基端部33の、テーパー部34から離間した部位をスリーブ40で覆うこととを行える。すなわち、スリーブ40は、逃げ部35を被覆可能なように、プラグ本体30に対して同軸配置されている。
図2(b)に示すように、スリーブ40の先端には、テーパー部34のテーパー形状に合致するよう、テーパー面41が形成されている。よって、スリーブ40内には、その先端から後方に向かって縮径するテーパー面41と、このテーパー面41に連なってかつ軸方向各位置での内径寸法が一定である円形の内周面42とが形成されている。
スリーブ40の形状寸法としては、例えば自動車用部品への適用を想定した場合、外径として10~200mmφ、より好ましくは50~100mmφを例示することができる。また、スリーブ40の肉厚としては、その外径の3~50%を例示することができる。なお、本実施形態のスリーブ40では、後述する図6(a)に示す符号gに示す隙間寸法が0mmになっている。すなわち、しごき加工工程中は、素管Wの一端部Wa側の内周面に対してスリーブ40の外周面が合致する。
本実施形態は、以上説明のプラグ20の構成と、このプラグ20の用い方とが、特に特徴的となっている。この特徴を説明するために、先ず、本実施形態における差厚管の製造装置による製造方法を以下に説明する。
本実施形態に係る製造方法で差厚管を製造するには、まず、図1(a)に示すように、ダイス10の内部に素管Wを同軸に挿入する。このとき、ダイス10の中空大径部11b内に素管Wの一端部Waが位置するように位置決めする。そして、ダイス10と素管Wはそれぞれ固定させた状態とする。すなわち、ダイス10においては、図示されない基台に固定された状態となっている。また、素管Wにおいては、素管Wの他端部Wbが紙面左側へ奥深く進まないようにせき止められており、これにより、ダイス10に対する素管Wの長手方向の相対位置が固定されている。
そして、図1(b)に示す係止工程として、ダイス10及び素管Wを固定させた状態のまま、素管Wの一端部Wa側から素管Wの内部に向かってプラグ20を押し込んでいく。その際、図1(b)及び図2(a)に示すように、プラグ本体30の逃げ部35をスリーブ40で覆ったまま、プラグ20を前記プラグ駆動部により押し込んでいく。すなわち、プラグ本体30の大径部32の外周面にスリーブ40の外周面が連なった状態で、前記プラグ駆動部により、プラグ本体30及びスリーブ40の双方に、軸線CLに沿った軸力を付与する。その結果、プラグ本体30及びスリーブ40が一体になって素管Wの一端部Waに押し込まれていく。
そして、テーパー先端部31がダイス10のテーパー凹部11cの位置に到達するまで押し込む。このようにしてテーパー先端部31がダイス10のテーパー凹部11cの位置に到達するまでの間、素管Wはダイス10に対する相対位置が固定され続けているので、素管Wがテーパー先端部31によってダイス10から押し出されてしまうことがない。また、スリーブ40もプラグ本体30と共に押し込まれていき、その先端部であるテーパー面41が中空大径部11b内の位置に到達する。
テーパー先端部31がテーパー凹部11cの位置に到達したか否かは、例えば、プラグ本体30の押し込みストローク量、または、プラグ本体30の押し込みに伴って増加する反力を測定し、この測定値を前記制御部で判断することにより管理できる。
図1(a)の時点では、ダイス10の内部に素管Wを配置した際、素管Wの一端部Waがダイス10の中空大径部11b内に位置しているため、ダイス10の中空大径部11bと素管Wの一端部Waとの間に隙間sが生じている。この状態から図1(b)に示すようにプラグ20を押し込むと、素管Wの一端部Waがプラグ本体30のテーパー先端部31及び大径部32によって拡径される。これにより、隙間sが徐々に小さくなり、ついには一端部Wa側の外周面がダイス10のテーパー凹部11cの内周面及び中空大径部11bの内周面に合致する。このようにして素管Wの一端部Waに、直管形状の拡形部1cと、この拡形部1cに連なる係止部1e1とが形成される。係止部1e1は、後述する中間部1eの一部をなし、ダイス10のテーパー凹部11cに密接するテーパー面を外周面とする円錐台形状を有している。
このようにして形成された拡形部1cの拡径量をExとした場合、以下の規定を満たすことが好ましい。すなわち、本実施形態の素管W及び差厚管Pは共に円管であるため、素管Wの外径寸法をD1(mm)、拡径部(拡形部)1cの外径寸法をD2(mm)として、下記式1で示される拡径量EXが、0.1%~50%であることが好ましい。すなわち、拡径量Exが0.1%未満であると、必要最低限な係止が得られず、素管Wの滑りを生じる虞がある。また、拡径量Exが50%を超えると、拡管部1cに割れが発生する不具合を生じる虞がある。
Ex(%)=(D2-D1)/D1×100・・・(式1)
次に、しごき加工工程として、ダイス10の固定は維持する一方、素管Wの固定は解除させた状態で、プラグ本体30を素管Wの他端部Wb側に向けて更に押し込む。すなわち、拡形部1cが形成された後は、素管Wの他端部Wbへのせき止めを解除する。その後、プラグ20を更に押し込む。プラグ20を更に押し込むことで、素管Wが一端部Waから他端部Wb側に向けて押されるが、前記係止工程において素管Wに形成された前記係止部1e1が、ダイス10のテーパー凹部11cに係止されたままとなるので、素管Wは動かない。
プラグ20を押し込むことで、プラグ本体30の大径部32が素管Wの他端部Wb側に向かって押し込まれる。プラグ本体30の大径部32が押し込まれた素管Wの中間部1eでは、元々の素管Wの内径d2がプラグ本体30の大径部32の外径に対応する大きさに拡径される。その一方で、素管Wの中間部1eはダイス10の中空小径部11a内に位置して周囲より外径寸法が規制されているため、中間部1eの外径d1は拡径されない。従って、素管Wの中間部1eは、素管Wの元々の外径d1が維持されたまま内径d2が拡径されて減肉する、しごき加工を受ける。
なお、しごき加工開始の直前に素管Wのせき止めを解除する理由は、しごき加工に伴う素管Wの肉の流れを阻害しないことにある。すなわち、しごき加工によって素管Wの中間部1eが減肉される際、その減肉分の肉の行き先を確保するために、素管Wのせき止めを解除している。これにより、素管Wの紙面左側の部分が座屈することを防いでいる。本実施形態では、しごき加工による素管Wの減肉分が紙面左側に流れるため、素管Wの全長はしごき加工前よりも若干長くなる。
プラグ20の押し込みをさらに進めていくことで、しごき加工の範囲が広がっていく。しかし、このままプラグ20を押し込んでいくと、しごき加工の進展に伴って素管Wの内周面とプラグ20の外周面との接触面積が徐々に増えていくため、プラグ20を押し出す際と引き抜く際との双方において、大きな加工力が必要とされる。
これを避けるため、本実施形態では、図1(c)に示すように軸線CLに沿って見た場合に、スリーブ40の先端位置がテーパー凹部11cの先端位置(縮径の終端位置)から所定距離を超えた時点で、スリーブ40の押し込みを止めて固定する。そして、スリーブ40の軸線CLに沿った位置がテーパー凹部11cと重なるように位置固定して留置したまま、プラグ本体30の押し込みを継続して行う。この動作は、前記制御部が前記プラグ駆動部に指示することで行われる。すなわち、本実施形態の差厚管の製造装置では、前記制御部が、スリーブ40をテーパー凹部11c及び中空大径部11b(拡形凹部)内に留めるために、スリーブ40の挿抜停止位置を指示する留置機構として機能する。
さらにプラグ本体30の押し込みを進めても、素管Wの内周面に接触するのはテーパー先端部31及び大径部32だけであり、前記逃げ部35が有るために小径基端部33は接触しない。よって、プラグ本体30の押し込みを進めていっても前記接触面積は増えないため、加工力を増すことなく、しごき加工を進めることができる。しかも、拡形部1cはその内周面がスリーブ40の外周面によって支えられているため、縮径が禁止されている。そのため、テーパー凹部11cに対する拡形部1cの係止状態が維持されるので、プラグ本体30の押し込みにより素管Wに加わる軸力を受け止め続けることができる。その結果、ダイス10内における素管Wの滑りを生じることなく、図1(c)に示すように差厚管Pを得ることができる。
なお、しごき加工による中間部1eの強度の向上効果を得るためには、しごき加工による素管Wの減肉率が10%以上である必要がある。一方、しごき加工による素管Wの減肉率が90%を超えると、破断や焼き付き等が生じる恐れがある。したがって、しごき加工による素管Wの減肉率は10~90%の範囲内がよい。好ましくは減肉率を20~80%の範囲内とするのがよい。なお、減肉率(%)は、素管Wのしごき加工前の肉厚をd0とし、しごき加工後における中間部1eの肉厚をdとした時に、(d0-d)/d0×100(%)で表される。
ここで、中間部1eでしごき加工された部分の肉厚dが、素管Wの長手方向に沿って見て一様でなく分布がある場合には、最も減肉量が多い箇所で求めた数値を減肉率として採用する。すなわち、しごき加工された部分の中で、その長手方向に沿って見た場合にd0からdを差し引いた差分(相当歪み量)が最も大きい箇所で求めた値を、上述の減肉率として採用する。さらに言うと、しごき加工された部分の周方向に沿って減肉量が一様でなく分布がある場合には、その周方向分布の中で最も減肉量が多い箇所で求めた値を、上述の減肉率として採用する。
なお、減肉率は、プラグ本体30の大径部32の外径とスリーブ40の外径とを変化させることによって調整可能である。
図1(c)に示す例では、プラグ本体30のテーパー先端部31及び大径部32が、素管Wの他端部Wbの手前の位置まで押し込まれる。この図1(c)に示される位置でプラグ本体30の押し込みを停止させると、素管Wの中間部1eよりも他端部Wb側の部分は未加工ままとなる。なお、本明細書で言う「未加工まま」の部分とは、差厚管Pにおいて、母材である加工前の素管Wのものと殆ど同じ強度(引張強度)または硬度を有する部分を言う。
以上説明のように、本実施形態の差厚管の製造方法は、素管Wをダイス10内に配置し、素管Wの長手方向への移動を規制した状態で、素管Wの一端部Wa側よりプラグ本体30をスリーブ40と共に押し込み、一端部Wa側の外形(外径)を拡大させた拡形部(拡径部)1cを形成し、拡形部1cをダイス10に係止させる係止工程と;素管Wの前記規制を解く一方で素管Wの前記係止は維持してかつ、拡形部1cの内面を、スリーブ40で支えた状態で、プラグ本体30をさらに素管Wの他端側に向かって押し込み、素管Wの外形(外径)を維持したまま内形(内径)を拡げるしごき加工を行う、しごき加工工程と;を有する。そして、この、差厚管の製造方法によれば、中空筒状の素管Wより差厚管Pを製造することができる。
図3に、図1(a)~図1(c)に示す工程を経て製造された差厚管Pの断面模式図を示す。なお、以下の説明において、製造後の差厚管Pを加工前及び加工中の素管Wと区別して説明するために、各部に対して新たな符号を割り当てる。また、素管Wの各部との対応関係を明記するために、一部、括弧付きで、素管Wの時点における各部の符合を併記する。
図3に示す差厚管Pは、一端部101a(Wa)側にあって素管Wから拡径された拡径部101c(1c)と、一端部101aと他端部101d(Wb)との間にあってしごき加工を受けた中間部101e(1e)と、中間部101eよりも他端部101d側にあって素管Wのまま加工を受けていない未加工部101fとから構成される。中間部101eは、拡径部101c及び未加工部101fとのそれぞれの境界において、ダイス10のテーパー凹部11c及びプラグ本体30のテーパー先端部31によって加工を受けた部分も含んでいる。すなわち、中間部101eは、一端部101aから他端部101dに向かって見た場合に、内径が一定で外径が先細りとなる係止部101e1(1e1)と、内径及び外径とも一定の直管部101e2と、外径が一定で内径が先細りとなるテーパー部101e3と、を含んでいる。そして、拡径部101cの硬度の平均値をH1、未加工部101fの硬度の平均値をH3、係止部101e1の硬度の平均値をH4、直管部101e2の硬度の平均値をH5、テーパー部101e3の硬度の平均値をH6とした場合に、H5>H6≧H3及びH5>H4>H1の両式を満たす。
差厚管Pの中空部101bは、拡径部101cと中間部101eとにおいて元の素管Wの内径d2よりも拡径され、未加工部101fでは元の素管Wの内径d2のままとなっている。また、差厚管Pの外径は、係止部101e1において素管Wの外径d1から徐々に拡径され、そして拡径部101cにおいては素管Wの外径d1よりも拡径されたまま一定となっている。一方、中間部101eのうちで係止部101e1を除く部分と、未加工部101fは、素管Wの外径d1と等しい外径のままとなっている。これにより、拡径部101c及び未加工部101fにおける肉厚が比較的厚く、中間部101eにおける肉厚が比較的薄い、差厚管Pとなっている。
図3に示す差厚管Pにおいては、拡径部101c及び未加工部101fに対する加工量が小さいので、この部分では加工硬化が生じていないか、生じていたとしても極僅かである。従って、拡径部101c及び未加工部101fの強度が比較的低く、これらの部分に対して曲げ加工等の後加工を行う場合であっても、加工硬化を緩和するための焼鈍処理等が不要になる。
また、差厚管Pの中間部101eに対する加工量が大きいので、中間部101eは加工硬化によって強度が比較的高くなっている。すなわち、差厚管Pの長手方向に沿った硬度分布(ビッカース硬度分布。なお、ビッカース硬度分布の代わりに、引張強度分布によっても判断可能)を見た場合、未加工部101fの硬度が最も低く、拡径部101cの硬度が未加工部101fの硬度よりも若干高く、そして、中間部101eの硬度が拡径部101cの硬度よりも高くなっている。したがって、中間部101eが最も高い硬度を有するため、高い機械強度を求められる部位として好適である。また、相対的に低い硬度を有する未加工部101fと拡径部101cは、曲げ加工などの後加工を求められる部位として好適である。
また、中間部101eの内面は、しごき加工を受けたことにより表面粗度が小さくなっている。表面粗度が小さくなると疲労特性が高まるので、中間部101eは、加工硬化による強度向上に加えて、内面の表面粗度を小さくしたことによる疲労特性向上も得られる。したがって、軽量でありながら高い強度を実現している。このような相乗効果は、単なる切削加工による薄肉化では得られない。
また、図4には、図1(a)~図1(c)に示された工程を経て製造された差厚管Pの別の例を示す。図4に示す差厚管Pは、図1(c)に示したしごき加工工程において、プラグ本体30の大径部32が素管Wの他端部Wbに至るまでプラグ本体30を押し込むことによって製造された差厚管である。
図4に示す差厚管Pは、一端部111a(Wa)側にあって素管Wから拡径された拡径部111c(1c)と、一端部111aと他端部111d(Wb)との間にあってしごき加工を受けた中間部111e(1e)と、中間部111eよりも他端部111d側にあって中間部111eと同様にしごき加工を受けた他端部分111fとから構成される。中間部111eは、拡径部111cとの境界において、ダイス10のテーパー凹部11c及びプラグ本体30のテーパー先端部31によって加工を受けた部分も含んでいる。すなわち、中間部111eは、係止部111e1(1e1)を含んでいる。係止部111e1は、前記係止部101e1と同じ形状を有するので、ここではその重複説明を省略する。
差厚鋼管111の中空部111bは、その長手方向の全部の内径が素管Wの内径d2よりも拡径されている。また、差厚鋼管111の外径は、係止部111e1において素管Wの外径d1から徐々に拡径され、そして拡径部111cにおいては素管Wの外径d1よりも拡径されたまま一定となっている。一方、中間部111eのうちで係止部111e1を除く部分と、他端部分111fとは、素管Wの外径d1と等しい外径のままとなっている。これにより、係止部111e1及び拡径部111cにおける肉厚が比較的厚く、中間部111eのうちの係止部111e1を除いた部分と、他端部分111fとにおける肉厚が比較的薄い差厚管Pとなっている。
図4に示す差厚管Pにおいては、拡径部111cに対する加工量が小さいので、この部分では加工硬化が生じていないか、生じていたとしても極僅かである。従って、拡径部111cの強度が比較的低く、この部分に対して曲げ加工等の後加工を行う場合であっても、加工硬化を緩和するための焼鈍処理等が不要になる。
また、差厚管Pの中間部111eおよび他端部分111fに対する加工量が大きいので、中間部111eおよび他端部分111fは加工硬化により強度が比較的高くなっている。
以上説明の本実施形態の差厚管の製造装置と、これを用いた差厚管の製造法によれば、幅広い加工条件に応じて柔軟に対応することが可能になる。この点について、図5を用いて以下に詳説する。図5は、本実施形態の製造方法を説明するために従来の製造方法と対比した部分拡大断面図であって、(a)が従来の製造方法を示し、(b)が本実施形態の製造方法を示す。また、図5(a)の矢印A1は、素管Wの内周面がプラグ本体30より受ける面圧を示す。さらに、図5(b)の矢印A2は、素管Wの内周面がスリーブ40より受ける面圧を示す。
まず、従来の製造装置及び製造方法の場合、図5(a)に示すように、プラグ本体30に逃げ部35が形成されているものの、スリーブ40で覆われてはいない。もし、この逃げ部35の、軸線CLを含む断面における厚み寸法が大きすぎると、素管Wの内周面と小径基端部33の外周面との間における隙間寸法も大きくなる。その結果、しごき加工工程でプラグ本体30が素管Wに与える軸力に負けて係止部1e1が縮径方向に変形し、テーパー凹部11cとの係止が外れてしまう虞がある。この場合、しごき加工中の素管Wがダイス10内で滑ってしまい、しごき加工を継続できない上に、プラグ本体30の引き抜きも困難になる。
一方、逃げ部35の大きさが小さすぎると、素管Wの内周面が小径基端部33の外周面に摺接するため、素管Wの外周面とダイス10の内周面との間における摩擦力F1と、素管Wの内周面とプラグ本体30の外周面との間における摩擦力F2との力関係によって成形可否が左右される。摩擦力F2は、プラグ本体30に接する素管Wの内周面に対し、これを紙面左側に引きずる力として与えられる。一方、係止部1e1では素管Wの外周面に対し、これを止めるために紙面右側に向かって加わる力として与えられる。したがって、図5(a)に示す従来の場合は、摩擦力F1と摩擦力F2とが互いに逆向きである。
そのため、摩擦力F1と摩擦力F2とのバランスが適切になるように、両者間の摩擦係数差を調整する必要がある。具体的には、素管Wの外周面とダイス10の内周面との間における潤滑剤と、素管Wの内周面とプラグ本体30の外周面との間における潤滑剤とを互いに別物にして、摩擦力F2が摩擦力F1を上回らないようにする。
このように、逃げ部35の大きさや素管W内外と金型との間における摩擦係数差といった成形条件は成形可否を左右するため、幅広い加工条件に応じて柔軟に対応するためには、そのケースごとに適切な成形条件を得ておく必要がある。これに対し、本実施形態では、プラグ20の構成とその用い方とにより、成形条件の制限を大幅に緩めることを可能としている。よって、より簡易な製造方法により、差厚管Pを製造可能としている。
具体的に説明すると、図5(b)に示す本実施形態では、逃げ部35を大きめにしているものの、この逃げ部35がスリーブ40により覆われているため、素管Wの内周面はプラグ本体30ではなくスリーブ40の外周面に対して接している。すなわち、係止部1e1の内周面をスリーブ40の外周面により支えている。この時点では、スリーブ40の軸線CLに沿った位置は固定されており、しごき加工のために、プラグ本体30のみが軸線CLに沿って紙面左側へと進んでいく。
プラグ本体30の進行により、そのテーパー先端部31及び大径部32が素管Wの内周面に対してこれを紙面左側に引きずる力を与える。この力は、スリーブ40に接する素管Wの接触位置にも伝わるが、スリーブ40は既に位置が固定されているので、素管Wが引きずられていくのを引き留める摩擦力F2が生じる。この図5(b)における摩擦力F2は、図5(a)における摩擦力F2とは逆向きになる。このような逆向きの摩擦力F2が素管Wの内周面に与え続けられることにより、ダイス10のテーパー凹部11cに対する係止部1e1の係止状態が維持される。これに加えて、プラグ本体30を進めていっても素管Wの内周面に対する接触領域は増えないため、プラグ本体30を推し進めるための加工力が大幅に増していくこともない。
以上説明のように、本実施形態の差厚管の製造装置は、中空大径部11b(拡形凹部)の、プラグ本体30の押し込み方向に沿った先端側に、押し込み方向に向かって内形が先細りとなるテーパー凹部11cが形成され;前記制御部(留置機構)が、少なくとも、素管Wの一端部Wa側よりテーパー凹部11cの押し込み方向に沿った先端位置までを含む範囲を支える位置に、スリーブ40を留置する構成を採用している。そして、本実施形態の差厚管の製造装置及び製造方法は、係止工程において、拡形部1cに、プラグ本体30の押し込み方向に向かって内形(内径)が先細りとなる係止部1e1(テーパー部)を形成する。また、しごき加工工程において、少なくとも、素管Wの一端部Wa側より係止部1e1の押し込み方向に沿った先端位置までの範囲における内面を、スリーブ40により支えている。これにより、しごき加工中に素管Wがダイス10内で滑りを生じることなく、しかも大きな軸力を必要としない。よって、加圧力の小さな製造装置でも、差厚管Pを製造可能としている。
なお、スリーブ40の適切な固定位置としては、スリーブ40の先端が、図5(b)に示すように、ダイス10のテーパー凹部11cのうちで最も径の大きい後端位置P1に達していることが必須であり、テーパー凹部11cのうちで最も径の小さい先端位置P2に達していることが好ましく、さらには、先端位置P2よりもさらに押し込み方向奥側の位置P3に達していることがより好ましい。ここで、軸線CLに沿って見て後端位置P1を基準(l1=0mm)とし、さらにこの後端位置P1からプラグ本体30の押し込み方向に沿ったスリーブ40の先端の位置をl1(mm)とした場合、このl1(mm)が0mm以上であることが好ましい。また、このl1(mm)の上限値は50mmであり、より好ましくは10mmである。
すなわち、図1(c)に示すように、しごき加工工程では、素管Wの一端部Wa側から係止部1e1の後端位置P1までのl2(mm)の部分と、前記l1(mm)の部分とを合算したLx(mm)の範囲における内周面を、スリーブ40の外周面によって支える。言い換えると、素管Wの一端部Wa側からテーパー凹部11cの後端位置P1までの間であるl2(mm)の部分と、後端位置P1からプラグ本体30の押し込み方向に沿った50mm以下の位置までのl1(mm)の部分との双方に重なる位置に、前記留置機構がスリーブ40を留置する。好ましい場合は、0~50mm、より好ましくは、0~10mmである。
以下、本発明の効果を確認するために、図6(a)に示す発明例と、図6(b)に示す比較例とのそれぞれに対し、数値解析により、素管(鋼管)の滑り有無としごき加工に要した軸力(加工力)とを求めて対比した。なお、「すべり量」は、鋼管のしごき開始位置からの端部移動量(図6(b)の符号s参照)として定義した。また、「工具と鋼管の隙間」は、図6(b)の比較例では、符号gに示すように、小径基端部33の外周面と素管Wの内周面との間の寸法(逃げ部35の寸法に等しい)と規定した。一方、図6(a)の発明例では、符号gに示すように、スリーブ40の外周面と素管Wの内周面との間の寸法(逃げ部35の寸法に等しい)を、「工具と鋼管の隙間」と規定した。
また、「減肉量」は、素管Wの肉厚から減肉部の肉厚を差し引いた寸法(図6の(a)及び(b)に示す符号r)と規定した。
以上の規定の下、下記条件で数値解析を行った。
・使用解析ソフト:Abaqus/Explicit
・軸対称として仮定
・ダイスの内周面と素管の外周面との間の摩擦係数をμDとし、さらにμD=0.25に固定
・プラグの外周面及び素管の内周面間の摩擦係数と、スリーブの外周面及び素管の内周面間の摩擦係数とのそれぞれを、等しくμPと規定
・摩擦係数μPと摩擦係数μD間の摩擦係数差△μを、△μ=μD-μPと規定
・素管素材:440MPa級鋼管
・素管形状:外径60.5mmの円管で肉厚が1.8mm
・差厚管形状:肉厚1.8mmを0.9mmに減肉。拡管部の拡管量は3%とする
解析結果を、図7及び図8に示す。図7は、数値解析の結果を示すグラフであり、(a)が従来の製造方法の場合を示し、(b)が本実施形態の製造方法の場合を示す。図8は、数値解析の結果を示す他のグラフであり、(a)が従来の製造方法の場合を示し、(b)が本実施形態の製造方法の場合を示す。
図7は、横軸が、工具と鋼管の隙間を減肉量で除算した無次元値を示し、縦軸が摩擦係数差△μを示す。また、○印は滑り無し(滑り量がゼロ)、白三角印が滑り量15mm未満、黒三角印が滑り量15mm以上をそれぞれ示す。
図7では、紙面右下に向かうほど条件が厳しくなる傾向にあるが、滑り無く加工できる範囲が、比較例である図7(a)の場合よりも発明例である図7(b)の方が広がっていることが確認された。
図8は、横軸が、工具と鋼管の隙間を減肉量で除算した無次元値であり、縦軸が加工力(kN)を示している。
図8(a)に示す比較例に比べて、図8(b)に示す発明例では、必要とされる加工力が大幅に低減されていることが確認された。また、発明例では、工具と鋼管の隙間を減肉量で除算した無次元値に左右されることなく、加工力が一定であった。
以上に説明した実施形態及び実施例は一例であり、その趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。
例えば上記実施形態では、スリーブ40をダイス10内に固定して留置するための機構として、前記プラグ駆動部を前記制御部により停止させる構成としたが、これに代えて、図9に示すプラグ20Aを採用してもよい。このプラグ20Aのスリーブ40Aは、前記スリーブ40と比べて、唾状の係止部43Aをその後端位置に備えた点のみが異なっている。一方、プラグ本体30は上述の構成と同じである。このプラグ20Aによれば、スリーブ40の軸線CLに沿った位置が適切な停止位置に至ったときに係止部43Aがダイス10に対して係止し、それ以上のスリーブ40の進行を止めるように位置固定することができる。この構成によれば、より簡単な構成でスリーブ40を適切な位置に固定することができる。
上記実施形態では、素管W及び差厚管Pを、内形及び外形ともに円形としたが、円形のみに限らずその他の形状を採用してもよい。例えば、図10(a)~(e)に示す断面形状を採用してもよい。例えば図10(a)では、外形が円形状で内形が略四角形状である。また、図10(b)では、外形が円形状で内形が楕円形状である。また、図10(c)は紙面上下方向に沿った仮想直線を境として線対称形状を有しており、具体的には、外形が円形状で内形が略四角形状でかつ互いに対向する一対の辺のそれぞれに凹所が形成されている。また、図10(d)では、外形が略四角形状でかつ内形が円形状である。また、図10(e)では、外形が楕円形状でかつ内形が円形状である。
ダイス10の収容部の一部である中空小径部11aの断面形状と、プラグ本体30の大径部32の断面形状とを適宜組み合わせることにより、例えば図10(a)~(e)に示したような断面形状を得ることができる。すなわち、プラグ本体30の押し込み方向(軸線CLに沿った方向)に垂直な断面で見た場合、中空小径部11aの断面形状が、円形、楕円形、矩形、線対称形状、のうちの何れかであり、大径部32の断面形状が、円形、楕円形、矩形、線対称形状、のうちの何れかであるとする。そして、中空小径部11aの断面形状と大径部32の断面形状とを適宜組み合わせることにより、様々な断面形状を得ることができる。
上記実施形態では、素管Wの一端部Wa側からのみ、プラグ20を入れてしごき加工を行うものとしたが、この構成に限らない。例えば、素管Wが長尺の場合、その一端部Wa側からプラグ20を入れてしごき加工を行った後、続けて、その他端部Wb側からプラグ20を入れて同様のしごき加工を行ってもよい。
本実施形態の製造方法により製造された差厚管Pの適用例としては、自動車部品ではクロスメンバー、サスペンションメンバー、サスペンションアームなどのフレーム部材、およびペリメーターやサイドインパクトバーなどの衝突対応部品、またはドライブシャフトなどの駆動系パイプ部品が挙げられる。
クロスメンバー、サスペンションアーム、サスペンションメンバーなどのフレーム部材では、他部品の取り付け部分に特に肉厚が要求されるケースが多い為、本発明の各実施形態における差厚管を用いれば、必要な箇所のみを厚肉化した軽量な構造を採用することができる。また、これらの部品において、その厚肉部を所定の形状に成形する後加工の際に、プレス加工や曲げ加工が施される場合がある。この場合、加工が施される部分が厚肉かつ低強度であると加工しやすいため、本発明の各実施形態における差厚管を好適に用いることができる。
サイドインパクトバーは、ドアパネル内に設置され、衝突の際の衝突エネルギーをドアの両サイドに伝達する部材であり、衝突時に折損しないことが望まれる。そのため、本発明の各実施形態における差厚管を用いて中央部を厚肉化すれば、軽量な構造とすることができる。
ペリメーターは、車体前部のフレーム部材であり、前面衝突時の荷重伝達経路となる部材であるが、衝突時に屈曲し易い曲がり形状部などを厚肉部とすることで、より軽量化できる。また、厚肉部を曲げ加工する際には、この厚肉部が低強度であると加工しやすいため、本発明の各実施形態における差厚管を好適に用いることができる。
ドライブシャフトは、管端の差厚部にスプライン加工を行う場合があり、この部分が厚肉かつ低強度であると加工がしやすいため、本発明の各実施形態における差厚管を好適に用いることができる。
1c 拡形部
1e1 テーパー部
10 ダイス
11b 中空大径部(拡形凹部)
11c テーパー凹部
30 プラグ本体
35 逃げ部
40 スリーブ
43A 係止部(留置機構、係止部)
P 差厚管
W 素管
Wa 一端
Wb 他端

Claims (14)

  1. 中空筒状の素管より差厚管を製造する方法であって、
    前記素管をダイス内に配置し、前記素管の長手方向への移動を規制した状態で、前記素管の一端側よりプラグ本体をスリーブと共に押し込み、前記一端側の外形を拡大させた拡形部を形成し、前記拡形部を前記ダイスに係止させる係止工程と;
    前記素管の前記規制を解く一方で前記素管の前記係止は維持してかつ、前記拡形部の内面を、前記スリーブで支えた状態で、
    前記プラグ本体をさらに前記素管の他端側に向かって押し込み、前記素管の外形を維持したまま内形を拡げるしごき加工を行う、しごき加工工程と;
    を有することを特徴とする、差厚管の製造方法。
  2. 前記係止工程で、前記拡形部に、前記プラグ本体の押し込み方向に向かって外形が先細りとなるテーパー部が形成され;
    前記しごき加工工程で、少なくとも、前記素管の前記一端側より前記テーパー部の前記押し込み方向に沿った後端位置までの範囲における前記拡形部の内面を、前記スリーブにより支える;
    ことを特徴とする、請求項1に記載の差厚管の製造方法。
  3. 前記しごき加工工程で、前記スリーブによって前記拡形部の内面を支える際の前記範囲が、前記後端位置より前記押し込み方向に沿って50mm以下の位置までである
    ことを特徴とする、請求項2に記載の差厚管の製造方法。
  4. 前記しごき加工工程で、前記スリーブを、前記ダイスに係止させて位置固定する
    ことを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の差厚管の製造方法。
  5. 前記素管及び前記差厚管が共に円管であり;
    前記素管の外径寸法をD1(mm)、前記拡形部の外径寸法をD2(mm)として、下記式1で示される拡径量EXが0.1%~50%である;
    ことを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の差厚管の製造方法。
    Ex(%)=(D2-D1)/D1×100・・・(式1)
  6. 前記しごき加工工程後の、前記差厚管の減肉部における減肉率が10%~90%の範囲内である
    ことを特徴とする、請求項5に記載の差厚管の製造方法。
  7. 前記素管としてシームレス鋼管を用いることを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載の差厚管の製造方法。
  8. 中空筒状の素管より差厚管を製造する装置であって、
    前記素管を収容するとともに前記素管の外形よりも大きな拡形凹部を含む収容部を有するダイスと;
    前記収容部内の前記素管の一端側に対して挿抜されるプラグ本体及びスリーブと;
    前記プラグ本体及び前記スリーブの挿抜を行う駆動機構と;
    前記スリーブを前記拡形凹部内に留める留置機構と;
    を備えることを特徴とする、差厚管の製造装置。
  9. 前記プラグ本体が、前記プラグ本体の先端部よりも外形の小さい逃げ部を前記先端部よりも後端側の位置に有し;
    前記逃げ部を被覆可能に、前記スリーブが前記プラグ本体に対して外挿されている;
    ことを特徴とする、請求項8に記載の差厚管の製造装置。
  10. 前記拡形凹部の、前記プラグ本体の押し込み方向に沿った先端側に、前記押し込み方向に向かって内形が先細りとなるテーパー凹部が形成され;
    前記留置機構が、少なくとも、前記素管の前記一端側より前記テーパー凹部の前記押し込み方向に沿った後端位置までを含む範囲に重なる位置に、前記スリーブを留置する;
    ことを特徴とする、請求項8または9に記載の差厚管の製造装置。
  11. 前記素管の前記一端側から前記拡形凹部の前記後端位置までの間と、前記後端位置から前記プラグ本体の押し込み方向に沿った50mm以下の位置までの間とに重なる位置に、前記留置機構が前記スリーブを留置する
    ことを特徴とする、請求項10に記載の差厚管の製造装置。
  12. 前記留置機構が、前記スリーブに設けられて前記ダイスに係止する係止部である
    ことを特徴とする、請求項8~11の何れか1項に記載の差厚管の製造装置。
  13. 前記留置機構が、前記スリーブの挿抜停止位置を前記駆動機構に指示する制御部である;
    ことを特徴とする、請求項8~11の何れか1項に記載の差厚管の製造装置。
  14. 前記プラグ本体の押し込み方向に垂直な断面で見た場合、
    前記収容部の形状が、円形、楕円形、矩形、線対称形状、のうちの何れかであり、
    前記プラグ本体の形状が、円形、楕円形、矩形、線対称形状、のうちの何れかである
    ことを特徴とする、請求項8~13の何れか1項に記載の差厚管の製造装置。
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