JP7180044B2 - 焼結での炭材の燃焼促進方法 - Google Patents
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Description
焼結プロセスで使用される炭材については、高炉用コークスの篩下である粉コークスが使用されている。
特許文献1は、焼結鉱の製造方法において、焼結鉱製造用の炭材の配合方法を適正化することにより、焼成時の通気性を確保しつつ、焼結成品歩留を改善することを目的としている。
具体的には、中心部に炭材核としての小塊コークスを有し、その炭材核の周囲を融点を調整した鉄鉱石粉で被覆した擬似粒子を、ペレタイザーを用いて造粒する。該鉄鉱石粉に生石灰を添加して融点を低下させて、焼成時に緻密質の外層を形成させることによって、炭材核の燃焼・消失を防止することとしている。なお、炭材内装擬似粒子は、従来の原料をドラムミキサなどで攪拌し、造粒することで得られる通常の焼結用造粒粒子と合流させて両造粒粒子を混在させて焼結機のサージホッパに搬入して焼成することとしている。
具体的には、コークスをCaO系原料とFeOからなる被覆層で被覆しておき、低温でのコークスと酸素との接触を妨害してコークス燃焼を抑制することとしている。一方、高温領域では被覆層は融点に近づき液相の生成を開始することで流動化して剥離し、本格的なコークスの燃焼が開始されることとなっている。
例えば、固体表面での酸化反応である炭材燃焼については、一般に単位体積当りの表面積(比表面積)が大きい微粉ほど燃焼速度が大きい。また、炭材は、粒度毎造粒操作後の擬似粒子内での賦存状態が異なり、燃焼速度に差があることが知られている(参考文献「肥田ら:鉄と鋼,68(1982),P400」)。
図1中の(a)に示すように、擬似粒子化された造粒物1においては、粒度(平均粒径)が-1mm(1mm以下)の微粉炭材5が、+1mm(1mmより大きい)の粒度の鉱石などの核粒子2に付着し、その核粒子2の外周囲に形成される被覆層3に取り込まれる。この場合、比較的酸素との接触効率が良いため、燃焼速度は速く、燃え尽きも早くなる。
図2に、上述した燃焼のリレーにより形成される、焼結層内の温度履歴(ヒートパターン)の一例を示す。
図2に示すように、(1)焼成の立ち上がりを加速させ、且つ、(2)高温保持時間を維持し、(3)粗粒炭材の燃え切りを速くすることがよい。
特許文献2は、未燃焼の炭材を残留させる炭材内装焼結鉱を製造する技術であり、粗粒炭材の燃え切りを促進することを目的とする本発明とは目的が異なっている。また、炭材内装擬似粒子側の造粒物の外層について、融点の記載があるが、通常の造粒物についての記載や示唆がないので、被覆層の[C/F]が不明である。また、炭材粒度の構成についての記載も示唆もなく、炭材を粒度毎に分割して配合するものでもない。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、石灰石が配合された造粒物Aと造粒物Bとを造粒し、それらを混合して焼結鉱を製造する際に、造粒物Aに配合された粗粒炭材を露出させて燃え切りを促進して、強度および歩留の低下なく焼成速度を向上させて、高生産性で焼結鉱を製造することができる焼結での炭材の燃焼促進方法を提供することを目的とする。
本発明にかかる焼結での炭材の燃焼促進方法は、核粒子の外周囲に被覆層が形成されている焼結原料用の造粒物を用いて、焼結鉱を製造する方法において、ドラムミキサごとに
装入する石灰石の量を変更して配合する「石灰石の傾斜配合」によって造粒される、組成が異なる複数種類の前記焼結原料用の造粒物を用い、前記被覆層の平均成分におけるFe2O3とCaOとの質量比である[CaO(mass%)/Fe2O3(mass%)]が、0.15以上0.25以下とされ且つ、前記石灰石が多く配合されている造粒物Aと、前記被覆層の[CaO/Fe2O3]が、0.10以上0.15未満とされ且つ、前記石灰石が前記造粒物Aより少なく配合されている造粒物Bと、を造り分けておき、前記造粒物Aの炭材粒度構成と前記造粒物Bの炭材粒度構成とに差異をつけて配合するに際して、「篩い分け法による粒径が3mmより大きい粉コークス」を0より大きく86mass%以下含むように、前記造粒物Aに配合し、「篩い分け法による粒径が1mmより大きく3mm以下の粉コークス」を16mass%以上60mass%以下で且つ、「篩い分け法による粒径が1mm以下の粉コークス」を40mass%以上84mass%以下含むように、前記造粒物Bに配合し、前記造粒物Aと前記造粒物Bとを混合し焼結機に装入して、前記焼結鉱を製造する際に、前記造粒物Aの配合原料全体の割合が、前記造粒物Aと前記造粒物Bとの合計に対して、0より大きく55重量%以下となるように混合して、前記焼結鉱の製造することを特徴とする。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。
また、以降の説明において、ドラムミキサ8,9の転動により造粒される焼結用原料1を、擬似粒子又は造粒物と呼ぶこともある。その焼結用原料1の元となる原料を、造粒原料と呼ぶこともある。
図3に、粗粒炭材2aの被覆層3の溶融および剥離の概要を示す。
図3中の(c')と(d)に示すように、粗粒炭材2aの被覆層3について、C/F(=[CaO/Fe2O3])が高い組成にすることで、燃焼過程で被覆層3が溶融・脱離して、核粒子2である粗粒炭材2aの表面が露出することとなり、焼成速度が速くなることが知られている(参考文献:「葛西ら:鉄と鋼,78(1992),P1005」)。
図4に示すように、本発明では、並列造粒設備7において、石灰石4をドラムミキサ8,9毎に異なる量の石灰石4を配合する「石灰石4の傾斜配合(詳細は後述)」ことによって、石灰石4が多く配合された造粒物Aと、その造粒物Aに対して石灰石4が少なく配合された造粒物Bとに作り分ける際に、造粒物Aに粗粒の炭材2bを優先的に配合することとしている。なお、細粒の炭材2aは、造粒物Bに配合される。
焼結プロセスでは、鉄鉱石に対して、石灰石4などの溶剤および炭材(例えば、高炉用コークスの篩下など)を添加して、焼結鉱の原料(焼結用原料1)を造粒した後、その焼結用原料1を焼結機10で焼き固めて、焼結鉱を製造する。
造粒とは、造粒原料(鉄鉱石や石灰石など)に水分を添加して転動作用を与えることで、核となる粒子2(粒径が1mm以上)に、微粉(粒径が1mm以下)を付着させ、被覆層3を有する擬似粒子1(造粒物)を製造することで、粒径を大きくする工程である。
例えば、粉体工学便覧(粉体工学会編,日刊工業新聞社,初版(昭和61年2月28日),P.1)によれば、「粉体は、色々な大きさを持つ多くの粒子からなるが、この構成粒子群の平均的な大きさの概念を粒度と呼び、個々の粒子の大きさの代表寸法を粒子径と呼ぶ。実際の粒子は複雑な形状を有するために、球や直方体などの単純なものに還元した代表寸法が用いられる。」と記載されている。このことから、粒径は、粒子径とも表し、粒子の大きさを指す代表寸法である。
造粒の工程により、擬似粒子化された造粒物1の平均粒径が大きくなり、微粉が減少することで、焼結機10の原料充填層内は空隙が高く、通気性が良い状態に保たれている。
このような製鉄原料における造粒の工程においては、例えば、ドラムミキサやパンペレタイザなどの造粒設備を用いることが一般的である。
並列に配備された造粒設備7の場合、同時に成分の異なる擬似粒子化された造粒物1を造粒することができ、それらの造粒物1を混合した上で、焼結機10に供給することができる。
例えば、成分の異なる複数の造粒物1を造り分けることができれば、直列に配置された造粒機であっても良いし、バッチ式の造粒機で複数の造粒物1を交互に製造するものであっても良い。
ところで、石灰石4の「傾斜配合」とは、並列に配備された造粒設備7(本実施形態では、ドラムミキサ8,9)において、石灰石4の総使用量を一定とした下で(石灰石の全体量を変えずに)、各ドラムミキサ8,9毎に石灰石4の量を変えて配合する方法である。例えば、一方側(A系統)のドラムミキサ8に石灰石を多く配合し、他方側(B系統)のドラムミキサ9に石灰石4を少なく配合する方法である。
なお、以降の説明においては、ドラムミキサ8,9ごとに石灰石4の量を変えて配合することを、石灰石4の「傾斜配合」と呼ぶこととする。
以上より、本発明においては、核粒子2の外周囲に被覆層3が形成されている焼結原料用の造粒物1を用いて、焼結鉱を製造する方法において、ドラムミキサ8,9ごとに装入する石灰石4の量を変更して配合する「石灰石4の傾斜配合」によって造粒される、組成が異なる複数種類の焼結原料用の造粒物1を用いることとしている。
このとき、造粒物1全体が溶融してしまうと、過剰な融液により原料充填層の空隙が閉塞されてしまい、炭材の燃焼を維持して伝播させるために必要な空気が通過しなくなり、不具合が生じる。
すなわち、マクロでは、焼結鉱成分の均一性を保ちつつ、焼成時に溶融する部分と溶融しない部分を作るためのミクロな不均一性を制御する必要がある。
そこで、本発明者は、溶剤である石灰石4を「傾斜配合」する上での適正な配合条件を検討した。
すなわち、造粒時に添加した水分が蒸発するまで100℃以下で推移し(湿潤帯)、乾燥過程(乾燥予熱帯)に入ると急激に温度が上昇し、炭材の燃焼により1200℃~1400℃に到達する(燃焼帯)。この間に、カルシウムフェライト系の融液が生成され、鉄鉱石の粒子間に浸潤して結合を形成する。
図6に、カルシウムフェライト系のCaO-Fe2O3状態図を示す。
図6を参照すると、1200℃~1400℃の焼成温度域で多量の融液を生成させるためには、液相線温度が1400℃以下となるように、被覆層3の平均成分におけるCaOとFe2O3との質量比である[CaO(mass%)/ Fe2O3(mass%)](以下、[C/F]と記載する)を、0.15以上とすることが好ましいことがわかる。
本実験は、大型の焼結鍋試験装置11を用いて実施した(図13参照)。
焼結鍋試験の詳細については、以下の通りである。
・鉱石層厚:500mm
・原料装入量:80kg
・焼成条件:大気吸引(点火時=-1.0kPa、焼成時=-1.6kPa)
・点火時間:90sec
まず、角型で大型の焼結鍋12に、パレットの保護用床敷きとして、粒径が10mm~20mmの焼結鉱を装入する。その焼結鉱の上に鉄鉱石、石灰石等の副原料、凝結材として粉コークスを疑似粒子化した造粒物1を装入した。
次いで、風箱13に接続された排風機14(吸引機)で、吸引圧=-1.0kPaの一定条件下において、点火バーナーで原料充填層の表面に着火した。その後、吸引圧=-1.6kPaの一定条件下で大気吸引して、造粒物1中の粉コークスを燃焼させた。
焼成した焼結ケーキを、落下強度試験装置(JIS M8711:1993)を用いて、床敷きを除いた焼成物全量を2mの高さから4回落下させて、粒径が10mm以上として残留したものを成品とした。
その後、成品中の粒径が10mm~50mmを、更に2mの高さから4回落下させて、落下試験を行った。
また、生産性(t/h/m2)については、以下の式で求めることができる。
・生産性(t/h/m2)={成品重量(kg)÷1000(kg/t)}÷{焼成時間(min)/60(min/hr)}÷焼結鍋の焼成面積(m2)
また、落下強度(%)については、以下の式で求めることができる。
表1に、2系統の並列造粒設備7を模した条件での焼結鍋試験の配合条件を示す。なお、表1の混合割合の単位は(重量%)であり、造粒物1の配合割合の単位は(質量%)である。また、表1は、それぞれ一続きのものであり、見やすくするため、分割して上下に配置している。
図5に示すように、焼結プロセスでは、1200℃以上での高温の時間が数分と短く、完全な平衡状態には到達し得ないものとなっている。その結果、擬似粒子化された造粒物1の表層に位置する被覆層3において、細かく反応しやすい粒子が主に溶融することとなる。
そのため、本実施形態での[CaO/Fe2O3](=[C/F])は、擬似粒子化された造粒物1の被覆層3中の平均成分におけるCaOとFe2O3との質量比を表している。
また、擬似粒子化された造粒物1を乾燥させた後に振動などで崩壊させ、粒径が1mm以下の微粉成分を測定することでも、[C/F]を特定することができる。
本実施形態では、[C/F]を、造粒物1中の1mm以下の各銘柄配合量と成分から計算で求めた値とした。
表1の比較例1は、転炉スラグおよび石灰石4を均等に配合した条件である。本実施形態においては、比較例1をベースの条件としている。
なおこのとき、造粒物Bと造粒物Aの混合比については、65重量%対35重量%とした。
なお、比較例1において造粒物Aの[C/F]が低いことについては、粒径が1mm以下の粒子を多く含む微粉鉱石を配合しているためである。
比較例2~3は、石灰石4の「傾斜配合」を過剰に行い、高石灰側の造粒物Aへ転炉スラグを配合した条件である。
実施例1~4は、石灰石4の「傾斜配合」を適正に行い、高石灰側の造粒物Aへ転炉スラグを配合した条件である。
ここで、使用原料について、述べる。
低石灰側の造粒物Bについては、Ore A:Ore Bを、50:50の比率で混合して使用した。
高石灰側の造粒物Aについては、Ore A:Ore B:Ore Cを、5:50:45の比率で混合して使用した。
表3に、焼結鍋試験の結果を示す。なお、表3の混合割合の単位は(重量%)である。また、表3は、それぞれ一続きのものであり、見やすくするため、分割して上下に配置している。
なお、焼結鉱の生産性は、歩留と焼成速度を掛け合わせた指標である。また、歩留は、成品の回収量を原料の総量で除した値である。焼成速度は、焼成時間の逆数である。
すなわち、焼結鉱の生産性が高いことを示した範囲の[C/F]は、カルシウムフェライト(CF)系融液の主要成分である、CaO・2Fe2O3(以下、CF2とする)組成である0.17に近い。
この理由については、高石灰側の造粒物Aに配合した転炉スラグの近傍に存在する融液の量が増大し、その融液により転炉スラグの溶解を促進した結果、融液の流動性が向上して原料充填層の通気阻害が解消されたためと推察される。なお、このことについては、後ほど詳しく述べる。
したがって、[C/F]を0.25より高くすると、原料充填層の通気性悪化による生産性の低下を招くものと推定される。すなわち、焼成時間が長くなってしまうものと推察される。
以上の結果より、本発明の効果が発現する範囲は、高石灰側の造粒物Aの[C/F]が0.15以上0.25以下と知見した。
つまり、本発明においては、被覆層3の平均成分におけるFe2O3とCaOとの質量比である[CaO(mass%)/Fe2O3(mass%)]が、0.15以上0.25以下とされ且つ、石灰石4が多く配合されている造粒物を「造粒物A」としている。
そこで、本発明者は、歩留低下の原因などを調査するため、被覆層3の成分を模擬したタブレットを作成し、高石灰側の造粒物Aから低石灰側の造粒物Bへの融液の浸潤状態を観察した。
低石灰側の造粒物Bの上に、高石灰側の造粒物Aのタブレットを重ねて拡散対を作成し、焼結プロセスの焼成過程と同等の熱履歴で、電気炉にて焼成した。
冷却後の拡散対を樹脂に埋め込み、中央を切断して研磨した後に浸潤界面を観察し、高石灰側の造粒物Aから低石灰側の造粒物Bへの融液の浸潤範囲を測定した。
・試験装置:高周波加熱炉
・タブレット形状:
・上側:φ10mm×高さ10mm(造粒物Aの被覆層3を模擬)
・下側:φ20mm×高さ10mm(造粒物Bの被覆層3を模擬)
・焼成条件:昇温速度=400℃/min、保持温度=1200℃、保持時間=3min、焼成雰囲気:大気
表4に、タブレット(拡散対)試験の[C/F]の条件を示す。
その上側のタブレット原料(高石灰側の造粒物A)をφ10mmの型に入れ、高さ10mmになるように1tonの荷重をかけて整形した。また、下側のタブレット原料(低石灰側の造粒物B)も同様にφ20mmの型に入れ、高さ10mmになるように1tonの荷重で整形した。
その炉冷した拡散対を樹脂に埋め込み、中央を切断して研磨した後に浸潤界面を観察し、高石灰側の造粒物Aから低石灰側の造粒物Bへの融液の浸潤範囲を測定した。
なお、浸潤により同化した範囲の同化率すなわち、拡散対試験の同化率については、次のように定義した。
また、浸潤している領域については、顕微鏡観察でカルシウムフェライトの生成による反射率の違いで判断した。
図8に示すように、拡散対タブレット試験の結果、造粒物Aへの石灰石の「傾斜配合」の割合が75重量%を超えると、同化率が低下することがわかった。
拡散対の浸潤界面をより精緻に観察し、走査型電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型X線分析装置(EDS)で浸潤形態を特定した。
一方で、低石灰側の造粒物Bの[C/F]が低い拡散対(B)では、浸潤界面が平板状であり、高融点の4元系カルシウムフェライト(SFCA)組成に変化していることを確認した。
このことから、低石灰側の造粒物Bの被覆層3の[C/F](すなわち、石灰石4の配合量)には、下限が存在すると知見した。
なお、[C/F]が0.13以上において、焼結鉱の強度および生産性が低下に転じているのは、高石灰側の造粒物Aの[C/F]低下に伴う融液量の低下によるものと考えられ、低石灰側の造粒物Bの[C/F]の上限を意味するものではない。
ここで、図6に戻って、CaO-Fe2O3状態図より、焼成時に完全に溶融させないためには、液相線温度が1400℃以上となるように、[C/F]を0.15以下とすることが好ましいことがわかる。
なお、図9中の横線は、ベース条件(比較例1)の測定値(生産性=1.56t/h/m2,落下強度=82.0%)を示す。この測定値を閾値として、生産性と落下強度の改善の有無を判断した。
さて、焼結用の炭材(粉コークス)は、高炉用の塊コークスの篩下粉(15mm以下)を、通常ロッドミルなどで粉砕してから使用している。
また、反応時間の短い焼結プロセスでは、未燃焼の炭材を残留させないために、燃焼性の観点から、一般的に粒径が8mm以下の粉コークスを使用する。
そこで、本発明者は、石灰石4を「傾斜配合」した条件下で、造粒物1に形成される被覆層3の成分の違いに着目し、粗粒炭材2aの燃え切り促進が可能な炭材の「分割配合」の条件を見出した。
なお、炭材の「分割配合」は、炭材の粒度によって配合する先を変更することともいえる。
また、細粒炭材2bは、粒径が1mmより大きく3mm以下(以降、(1-3mm)とする)のものである。また、粗粒炭材2aは、粒径が3mmより大きい(以降、(+3mm)とする)のものである。
この表面露出により、粗粒炭材2aは、酸素との接触が改善されて燃焼速度が向上し、焼成後期の燃え切りが早くなる(図3参照)。
本実験は、小型の焼結鍋試験装置15を用いて実施した。なお、その装置構成については、図13に示す大型の焼結鍋試験装置11と同様である。
・試験装置:小型の焼結鍋(焼成面積=φ130mm)
・鉱石層厚:350mm
・原料装入量:8kg
・焼成条件:大気吸引(点火時=-1.0kPa、焼成時=-1.0kPa)
・点火時間:90sec
まず、丸型で小型の焼結鍋16に、パレットの保護用床敷きとして、粒径10mm~20mmの焼結鉱を装入する。その焼結鉱の上に鉄鉱石、石灰石4等の副原料、凝結材として粉コークスを疑似粒子化した造粒物1を装入した。
次いで、風箱17に接続された排風機18(吸引機)で、吸引圧=-1.0kPaの一定条件下において、点火バーナーで原料充填層の表面に着火した。その後、吸引圧=-1.0kPaの一定条件下で大気吸引して、造粒物中1の粉コークスを燃焼させた。
焼成した焼結ケーキを、落下強度試験装置(JIS M8711:1993)を用いて、床敷きを除いた焼成物全量を2mの高さから2回落下させて、粒径が10mm以上として残留したものを成品とした。
なお、焼成時間(min)については、点火バーナでの着火から、焼成終了(排ガス中CO2濃度が0.5%以下)までの時間と定義する。
表6に、低石灰側(造粒物B)の炭材粒度を2つの水準で一定とし、高石灰側(造粒物A)の炭材粒度を変化させた炭材粒度の条件を示す。なお、表6の配合割合の単位は(質量%)である。また、表6は、それぞれ一続きのものであり、見やすくするため、分割して上下に配置している。
なおこのとき、造粒物Bと造粒物Aの混合比については、65重量%対35重量%とした。
また、返鉱とブリーズの配合割合は、その他の原料(新原料と呼ばれるもの)の合計:100%に対する割合(外数)で示している。
実施例8~13は、高石灰側の造粒物Aに、粗粒炭材2a(+3mm)を適正に配合した条件である。
なお、本実験は、上記した小型の焼結鍋試験装置15を用いて実施した。
・生産性(t/h/m2)={成品重量(kg)÷1000(kg/t)}÷{焼成時間(min)/60(min/hr)}÷焼結鍋の焼成面積(m2)
また、落下強度(%)については、以下の式で求めることができる。
・落下強度(%)=10mm以上の成品重量(kg)÷焼結ケーキ重量(kg)×100
なお、小型の焼結鍋試験では、得られる成品量が少ないため、大型の焼結鍋試験とは異なる方法で強度を指標化した。
・造粒物Aの配合比(重量%)=造粒物Aの配合量(kg)/{造粒物Aの配合量(kg)+造粒物Bの配合量(kg)}×100 ・・・(1)
表7に、焼結鍋試験の結果を示す。なお、表7の配合割合の単位は(質量%)である。また、表7は、それぞれ一続きのものであり、見やすくするため、分割して上下に配置している。
すなわち、炭材の「分割配合」による粗粒炭材2aの燃焼促進のコンセプト通り、焼成時間の短縮が認められた。
図10に、高石灰側の造粒物Aに配合された粗粒炭材2aの配合割合における焼成時間(min)と生産性(t/h/m2)の影響を示す。
図10に示すように、粗粒炭材2aの配合量が少ないほど、焼成時間が短縮して生産性が向上した。
一方で、高石灰側の造粒物Aに配合された粗粒炭材2aの配合割合が86mass%を超えると炭材の量が一定下では炭材の粒子数が減少することで、焼結層内の熱源が集中するため、過溶融部が発生して焼成が不安定化したことにより、焼結鉱の強度(歩留)の低下により生産性が低下することとなった。
ただし、図10中の生産性を示すカーブが、ベース条件である比較例7の値となる点は91.8mass%である。
なお、図10中の横線は、新たなベース条件(比較例7)の測定値(生産性=1.47t/h/m2,焼成時間=9.8min)を示す。この測定値を閾値として、生産性と焼成時間の改善の有無を判断した。
表8に、高石灰側(造粒物A)の炭材粒度を2つの水準で一定とし、低石灰側(造粒物B)の炭材粒度を変化させた炭材粒度の条件を示す。なお、表8の配合割合の単位は(質量%)である。また、表8は、それぞれ一続きのものであり、見やすくするため、分割して上下に配置している。
実施例14~21は、低石灰側の造粒物Bに、細粒炭材2b(1-3mm)を適正に配合した条件である。
なお、本実験は、上記した小型の焼結鍋試験装置15を用いて実施した。
・生産性(t/h/m2)={成品重量(kg)÷1000(kg/t)}÷{焼成時間(min)/60(min/hr)}÷焼結鍋の焼成面積(m2)
また、落下強度(%)については、以下の式で求めることができる。
・落下強度(%)=10mm以上の成品重量(kg)÷焼結ケーキ重量(kg)×100
なお、小型の焼結鍋試験では、得られる成品量が少ないため、大型の焼結鍋試験とは異なる方法で強度を指標化した。
・造粒物Aの配合比(重量%)=造粒物Aの配合量(kg)/{造粒物Aの配合量(kg)+造粒物Bの配合量(kg)}×100 ・・・(1)
表9に、焼結鍋試験の結果を示す。なお、表9の配合割合の単位は(質量%)である。また、表9は、それぞれ一続きのものであり、見やすくするため、分割して上下に配置している。
図11に示すように、低石灰側の造粒物Bに配合された細粒炭材2bは、多く配合しすぎても少なすぎても、焼成時間が延長することとなり、生産性が低下した。
細粒炭材2bの配合が多すぎると、相対的に微粉炭材5が少なくなるため、焼成立ち上がりの加速が悪くなる。これを焚き火の燃焼過程で例えてみると、新聞紙が不足して小枝などの着火しないものと同じようなものである。
したがって、低石灰側の造粒物Bに配合された細粒炭材2bと、微粉炭材5との配合には、適正なバランスが存在するものと考えられる。
なお、図11中の横線は、新たなベース条件(比較例7)の測定値(生産性=1.47t/h/m2,焼成時間=9.8min)を示す。この測定値を閾値として、生産性と焼成時間の改善の有無を判断した。
さて、高石灰側の造粒物Aは、融液の供給源であり、焼結鉱を製造する際、適正な造粒物1の配合量であれば、原料充填層内の液相結合や、通気パスの形成を促進させる効果を期待することができる。
そこで、本発明者は、高石灰側の造粒物Aと低石灰側の造粒物Bの適正な配合割合を、焼結鍋試験で検討した。
なお、本実験は、上記した小型の焼結鍋試験装置15を用いて実施した。
比較例5、6は、過剰な割合で高石灰側の造粒物Aを配合した条件である。
ところで、高石灰側の造粒物Aから生成される融液が、低石灰側の造粒物Bへ浸潤して吸収されることで、通気パスが形成される。このことから、造粒物Bに対する造粒物Aの配合量は、等量以下が好ましいと推測される。
また、造粒物Aの配合量の増加に伴い、焼結強度の低下が見られることから、過溶融部の増加によりガス流れが不安定化し、焼成ムラ(過溶融部の直下にガスが流れず、焼成が不十分となる現象)が生じていることが推察される。
つまり、本発明においては、造粒物Aと造粒物Bとを混合し焼結機10に装入して、焼結鉱を製造する際に、造粒物Aの配合原料全体の割合が、造粒物Aと造粒物Bとの合計に対して、0より大きく55重量%以下となるように混合して、焼結鉱の製造することとしている。
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
特に、今回開示された実施形態において、明示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
A 造粒物(高石灰側)
B 造粒物(低石灰側)
2 核粒子
2a 粗粒炭材(粉コークス)
2b 細粒炭材(粉コークス)
3 被覆層
4 石灰石
5 微粉炭材(粉コークス)
6 焼結工場
7 並列造粒設備
8 ドラムミキサA
9 ドラムミキサB
10 焼結機
11 焼結鍋試験装置(大型)
12 焼結鍋(角型)
13 風箱
14 排風機
15 焼結鍋試験装置(小型)
16 焼結鍋(丸型)
17 風箱
18 排風機
Claims (1)
- 核粒子の外周囲に被覆層が形成されている焼結原料用の造粒物を用いて、焼結鉱を製造する方法において、
ドラムミキサごとに装入する石灰石の量を変更して配合する「石灰石の傾斜配合」によって造粒される、組成が異なる複数種類の前記焼結原料用の造粒物を用い、
前記被覆層の平均成分におけるFe2O3とCaOとの質量比である[CaO(mass%)/Fe2O3(mass%)]が、0.15以上0.25以下とされ且つ、前記石灰石が多く配合されている造粒物Aと、
前記被覆層の[CaO/Fe2O3]が、0.10以上0.15未満とされ且つ、前記石灰石が前記造粒物Aより少なく配合されている造粒物Bと、を造り分けておき、
前記造粒物Aの炭材粒度構成と前記造粒物Bの炭材粒度構成とに差異をつけて配合するに際して、
「篩い分け法による粒径が3mmより大きい粉コークス」を0より大きく86mass%以下含むように、前記造粒物Aに配合し、
「篩い分け法による粒径が1mmより大きく3mm以下の粉コークス」を16mass%以上60mass%以下で且つ、「篩い分け法による粒径が1mm以下の粉コークス」を40mass%以上84mass%以下含むように、前記造粒物Bに配合し、
前記造粒物Aと前記造粒物Bとを混合し焼結機に装入して、前記焼結鉱を製造する際に、前記造粒物Aの配合原料全体の割合が、前記造粒物Aと前記造粒物Bとの合計に対して、0より大きく55重量%以下となるように混合して、前記焼結鉱の製造する
ことを特徴とする焼結での炭材の燃焼促進方法。
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