以下、図面を参照しながら本発明の例示的な実施形態について説明する。
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本実施形態に係る撮像装置の構成について説明する。図1は、撮像装置10(レンズ交換式カメラシステム)のブロック図である。撮像装置10は、カメラ本体200(撮像装置本体)と、カメラ本体200に着脱可能なレンズ装置100(交換レンズ)とを備えて構成されている。レンズ装置100は、電気接点ユニットを有する不図示のマウント部を介して、カメラ本体200に着脱可能(交換可能)に取り付けられている。なお本実施形態は、レンズ装置とカメラ本体とが一体的に構成された撮像装置にも適用可能である。
レンズ装置100は、撮影レンズ101と、絞り及びシャッター102と、フォーカスレンズ103と、モータ104と、レンズコントローラ105とを備える。撮影レンズ101は、ズーム機構を含む。絞り及びシャッター102は、光量を制御する。フォーカスレンズ103は、後述する撮像素子201上に焦点を合わせるためのレンズである。モータ104は、フォーカスレンズ103を駆動する。レンズコントローラ105は、レンズ装置100の全体を制御し、通信バス106を介してカメラ本体200と接続する。
カメラ本体200は、撮像素子201と、A/D変換部202と、画像処理部203と、AF信号処理部204と、フォーマット変換部205とを備える。撮像素子201は、被写体からの反射光を電気信号に変換する受光手段(光電変換手段)として機能する。A/D変換部202は、撮像素子201の出力ノイズを除去するCDS回路やA/D変換前に行う非線形増幅回路を含む。本実施形態において、AF信号処理部204は、取得手段204aおよび算出手段204bを有する。また、カメラ本体200は、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの高速な内蔵メモリ(DRAM)206を備え、一時的な画像記憶手段としての高速バッファとして、または、画像の圧縮伸張における作業用メモリとして用いる。
さらに、カメラ本体200は、画像記録部207と、システム制御部209と、レンズ通信部210と、AE処理部211と、画像表示用メモリ(VRAM)212と、画像表示部213とを備える。画像記録部207は、メモリーカードなどの記録媒体とそのインターフェースとを備えて構成される。システム制御部209は、撮影シーケンスなどシステムを制御する。レンズ通信部210は、通信バス106を介してレンズコントローラ105と接続されることで、カメラ本体200とレンズ装置100との通信を行う。画像表示部213は、画像の表示、操作補助のための表示、およびカメラ状態の表示に加え、撮影の際に撮影画面および焦点検出領域を表示する。
また、カメラ本体200は、カメラ本体200をユーザが操作するための操作部214を備え、撮像装置10の撮影機能や画像再生の際の設定などの各種設定を行うメニュースイッチ、および撮影モードと再生モードの動作モード切換えスイッチなどを含む。撮影モードスイッチ215は、マクロモードやスポーツモードなどの撮影モードを選択するためのスイッチである。メインスイッチ216は、システム(撮像装置10)に電源を投入するためのスイッチである。スイッチ(SW1)217は、自動焦点調節(AF)や自動露出(AE)などの撮影スタンバイ動作を行うためのスイッチであり、スイッチ(SW2)218は、スイッチSW1の操作後に撮影を行うためのスイッチである。
撮像素子201は、CCDセンサやCMOSセンサなどを備え、レンズ装置100の撮像光学系を介して形成された被写体像(光学像)を光電変換して画素信号(画像データ)を出力する。すなわち、撮像光学系から入射した光束は、撮像素子201の受光面上に結像し、撮像素子201において配列された画素(フォトダイオード)により、入射光量に応じた信号電荷に変換される。各フォトダイオードに蓄積された信号電荷は、システム制御部209の指令に従い、タイミングジェネレータ208から出力される駆動パルスに基づいて、信号電荷に応じた電圧信号として撮像素子201から順次読み出される。
本実施形態で用いられる撮像素子201の各画素は、2つ(一対)のフォトダイオードA、Bとこれら一対のフォトダイオードA、Bに対して設けられた(フォトダイオードA、Bを共有する)1つのマイクロレンズとを備えて構成されている。すなわち、撮像素子201は、1つのマイクロレンズに対し一対のフォトダイオード(第1光電変換部および第2光電変換部)を有し、複数のマイクロレンズが2次元状に配列されている。各画素は、入射する光をマイクロレンズで分割して一対のフォトダイオードA、B上に一対の光学像を形成し、この一対のフォトダイオードA、Bから後述するAF用信号に用いられる一対の画素信号(A像信号およびB像信号)を出力する。また、一対のフォトダイオードA、Bの出力を加算することにより、撮像用信号(A+B像信号)を得ることができる。
そして、複数の画素から出力された複数のA像信号と複数のB像信号とをそれぞれ合成することにより、撮像面位相差検出方式によるAF(撮像面位相差AF)に用いられるAF用信号(焦点検出用信号)としての一対の像信号が得られる。後述するAF信号処理部204は、一対の像信号に対する相関演算を行って、一対の像信号のずれ量である位相差(像ずれ量)を算出し、さらに像ずれ量から撮像光学系のデフォーカス量(およびデフォーカス方向)を算出する。
このように、撮像素子201は、レンズ装置100の撮像光学系を通過した光束を受光して形成された光学像を電気信号に光電変換して画像データ(像信号)を出力する。本実施形態の撮像素子201は、1つのマイクロレンズに対して2つのフォトダイオードが設けられており、撮像面位相差AF方式による焦点検出に用いる像信号を生成可能である。なお、1つのマイクロレンズに対して4つのフォトダイオードを設けるなど、1つのマイクロレンズを共有するフォトダイオードの個数を変更してもよい。
次に、図2(A)は、撮像面位相差AF方式に対応していない画素の構成例を模式的に示し、図2(B)は、撮像面位相差AF方式に対応した画素の構成例を模式的に示している。図2(A)、(B)のいずれの画素構成でも、ベイヤー配列が用いられており、Rは赤のカラーフィルタを、Bは青のカラーフィルタを、Gr、Gbは緑のカラーフィルタをそれぞれ示している。撮像面位相差AFに対応する図2(B)の画素構成では、図2(A)に示される撮像面位相差AF方式に非対応の画素構成における1画素(実線で示される画素)内に、図2(B)の水平方向に2分割された2つのフォトダイオードA、Bが設けられている。フォトダイオードA、B(第1光電変換部、第2光電変換部)は、撮像光学系の互いに異なる瞳領域を通過した光束を受光する。
このように、フォトダイオードAとフォトダイオードBは、撮影光学系の射出瞳の異なる領域を通過した光束を受光するため、B像信号はA像信号に対して視差を有している。また、上述の撮像用信号(A+B像信号)と一対の視差画像信号のうち、一方の像信号(A像又はB像信号)も視差を有する。なお、図2(B)に示される画素の分割方法は一例であり、図2(B)の垂直方向に分割した構成や、水平方向および垂直方向に2分割ずつ(合計4分割)した構成などの他の構成を採用してもよい。また、同じ撮像素子内において互いに異なる分割方法で分割された複数種類の画素が含まれてもよい。
なお、本実施形態では、1つのマイクロレンズに対して複数の光電変換部が配置され、瞳分割された光束が各光電変換部に入射される構成を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、焦点検出用画素の構成は、マイクロレンズ下に1つのフォトダイオードを有し、遮光層により左右または上下を遮光することで瞳分割を行う構成でもよい。また、複数の撮像用画素の配列の中に一対の焦点検出用画素を離散的に配置し、その一対の焦点検出用画素から一対の像信号を取得する構成でもよい。
撮像素子201から読み出された撮像用信号およびAF用信号は、A/D変換部202に入力される。A/D変換部202は、撮像用信号およびAF用信号に対して、リセットノイズを除去するための相関二重サンプリング、ゲインの調節、およびデジタル化を行う。A/D変換部202は、撮像用信号を画像処理部203に出力し、AF用信号をAF信号処理部204に出力する。
AF信号処理部204(取得手段204a)は、A/D変換部202から出力されたAF用信号(一対の像信号としての第1信号(A像信号)および第2信号(B像信号))を取得する。またAF信号処理部204(算出手段204b)は、AF用信号に基づいて相関演算を行って像ずれ量を算出し、像ずれ量に基づいてデフォーカス量を算出する。また、AF信号処理部204(算出手段204b)は、AF用信号の信頼性情報(2像の一致度、2像の急峻度、コントラスト情報、飽和情報、およびキズ情報など)により信頼度をランク付けする。AF信号処理部204により算出されたデフォーカス量および信頼性情報(信頼度)は、システム制御部209へ出力される。なお、AF信号処理部204による相関演算の詳細については後述する。
次に、図3を参照して、本実施形態における撮像装置10の動作について説明する。図3は、撮像装置10の動作を示すフローチャートである。図3の各ステップは、主にシステム制御部209の指令に基づいて各部により実行される。
まず、ステップS301において、システム制御部209は、画像処理部203の出力信号に対してAE処理を行うようにAE処理部211を制御する。次に、ステップS302において、システム制御部209は、スイッチ217(SW1)がオンであるか否かを判定する。スイッチ217(SW1)がオンの場合(Yes)、ステップS303へ進む。一方、スイッチ217(SW1)がオフの場合(No)、ステップS301へ戻る。
次に、ステップS303において、システム制御部209は、AF動作を行う。なお、AF動作の詳細については後述する。次に、ステップS304において、システム制御部209は、スイッチ217(SW1)がオンであるか否かを判定する。スイッチ217(SW1)がオンの場合(Yes)、ステップS305へ進む。一方、スイッチ217(SW1)がオフの場合(No)、ステップS301へ戻る。
次に、ステップS305において、システム制御部209は、スイッチ218(SW2)がオンであるか否かを判定する。スイッチ218(SW2)がオフの場合(No)、ステップS304へ戻る。一方、スイッチ218(SW2)がオンの場合(Yes)、ステップS306へ進む。ステップS306において、システム制御部209は撮影動作を行う。その後、ステップS301へ戻る。
次に、図4及び図5を参照して、本実施形態におけるAF動作(図3のステップS303)について詳述する。図4及び図5は、AF動作を示すフローチャートである。図4及び図5の各ステップは、主に、AF信号処理部204およびシステム制御部209により実行される。
まず、ステップS401において、システム制御部209は、画像処理部203の出力信号に対してAE処理を行うようにAE処理部211を制御する。次に、ステップS402において、AF信号処理部204は、一対の像信号を用いて焦点検出処理を行い、デフォーカス量および信頼度を算出する。なお、焦点検出処理の詳細については後述する。
次に、ステップS403において、システム制御部209は、ステップS402にて算出された信頼度(焦点検出結果の信頼度)が予め設定されている第2信頼度閾値よりも高いか否かを判定する。信頼度が第2信頼度閾値よりも高い場合(Yes)、ステップS404へ進む。一方、信頼度が第2信頼度閾値未満である場合(No)、ステップS413へ進む。なお、第2信頼度閾値は、信頼度が第2信頼度閾値よりも高い値であれば、被写体の合焦位置方向は保証できる値に設定される。
次に、ステップS404において、システム制御部209は、ステップS402にて算出したデフォーカス量(検出デフォーカス量)が予め設定されている第2Def量閾値以下であるか否かを判定する。検出デフォーカス量が第2Def量閾値以下である場合(Yes)、ステップS405へ進む。一方、検出デフォーカス量が第2Def量閾値よりも大きい場合(No)、ステップS412へ進む。第2Def量閾値は、デフォーカス量が第2Def量閾値以下の場合、その後、該デフォーカス量だけレンズ駆動を所定回数(例えば3回)以内で焦点深度内にフォーカスレンズ103を移動するように制御可能な値(例えば焦点深度の5倍の量)に設定される。
次に、ステップS405において、システム制御部209は、フォーカスレンズ103が停止状態(停止中)であるか否かを判定する。フォーカスレンズ103が停止中である場合(Yes)、ステップS406へ進む。一方、フォーカスレンズ103が停止中でない場合(No)、ステップS410へ進む。
次に、ステップS406において、システム制御部209は、ステップS402にて算出された信頼度(焦点検出結果の信頼度)が予め設定されている第1信頼度閾値よりも高いか否かを判定する。信頼度が第1信頼度閾値よりも高い場合(Yes)、ステップS407へ進む。一方、信頼度が第1信頼度閾値未満である場合(No)、ステップS410へ進む。なお、第1信頼度閾値は、信頼度が第1信頼度閾値以上であれば、デフォーカス量の精度ばらつきが所定の範囲内(例えば、焦点深度内)となるように設定される。
次に、ステップS407において、システム制御部209は、ステップS402にて算出したデフォーカス量(検出デフォーカス量)が予め設定されている第1Def量閾値以下であるか否かを判定する。検出デフォーカス量が第1Def量閾値以下である場合(Yes)、ステップS408へ進む。一方、検出デフォーカス量が第1Def量閾値よりも大きい場合(No)、ステップS409へ進む。なお、第1Def量閾値は、検出デフォーカス量が第1Def量閾値以下であれば、焦点深度内にフォーカスレンズ103が制御されている値となるように設定される。
次に、ステップS408において、システム制御部209は、焦点状態が合焦状態であると判定し、本フローを終了する。一方、ステップS409において、システム制御部209は、ステップS402にて算出したデフォーカス量(検出デフォーカス量)だけフォーカスレンズ103を駆動させ、その後、ステップS402へ戻る。再度、ステップS405~S409の一連の動作を行うことにより、ステップS402にて算出した信頼度が第1信頼度閾値よりも高い場合、システム制御部209は、フォーカスレンズ103を停止した状態で再度デフォーカス量を算出することができる。
次に、ステップS410において、システム制御部209は、ステップS402にて検出したデフォーカス量に対して所定割合だけフォーカスレンズ103を駆動する。次に、ステップS411において、システム制御部209は、フォーカスレンズ103の停止を指示して、ステップS402へ戻る。次に、ステップS412において、システム制御部209は、ステップS402にて検出したデフォーカス量に対してフォーカスレンズ103を駆動し、ステップS402へ戻る。
次に、ステップS413において、システム制御部209は、非合焦条件を満たしたか否かを判定する。非合焦条件を満たした場合(Yes)、ステップS414へ進む。一方、非合焦条件を満たしていない場合(No)、ステップS415へ進む。ここで、非合焦条件とは、システム制御部209が合焦すべき被写体がないと判定する条件である。非合焦条件として、例えば、フォーカスレンズ103の可動範囲の全てにおいてレンズ駆動が完了した場合、すなわちフォーカスレンズ103が遠側および近側の両方のレンズ端を検出して初期位置に戻った場合という条件が設定される。
次に、ステップS414において、システム制御部209は、焦点状態が非合焦状態であると判定し、本フローを終了する。一方、ステップS415において、システム制御部209は、フォーカスレンズ103が遠側または近側のレンズ端に到達したか否かを判定する。フォーカスレンズ103がレンズ端に到達した場合(Yes)、ステップS416へ進み、一方、フォーカスレンズ103がレンズ端に到達していない場合(No)、ステップS417へ進む。
次に、ステップS416において、システム制御部209は、フォーカスレンズ103の駆動方向(レンズ駆動方向)を反転し、ステップS402へ戻る。次に、ステップS417において、システム制御部209は、フォーカスレンズ103を所定方向に駆動し、ステップS402へ戻る。フォーカスレンズ103の駆動速度(フォーカスレンズ速度)は、例えば、デフォーカス量が検出できるようになった時点でピント位置を通り過ぎることのないようなレンズ速度の範囲内で最も速い速度に設定される。
次に、図6を参照して、焦点検出処理(図4のステップS402)について詳述する。図6は、焦点検出処理を示すフローチャートである。図6の各ステップは、主に、システム制御部209、または、システム制御部209の指令に基づいてAF信号処理部204により実行される。
まず、ステップS501において、AF信号処理部204(システム制御部209)は、撮像素子201内の任意の範囲の焦点検出領域を設定する。次に、ステップS502において、AF信号処理部204は、ステップS501にて設定した焦点検出領域に関し、撮像素子201から焦点検出用の一対の像信号(A像信号およびB像信号)を取得する。次に、ステップS503において、AF信号処理部204は、ステップS502にて取得した一対の像信号に対して、垂直方向に行加算平均処理を行う。行加算平均処理により、像信号のノイズの影響を軽減することができる。次に、ステップS504において、AF信号処理部204は、ステップS503にて行加算平均処理を行った一対の像信号から、所定の周波数帯域の信号成分を取り出すフィルタ処理を行う。
次に、ステップS505において、AF信号処理部204は、ステップS504にてフィルタ処理後の一対の像信号に基づいて相関量を算出する。次に、ステップS506において、AF信号処理部204は、ステップS505にて算出した相関量に基づいて相関変化量を算出する。次に、ステップS507において、AF信号処理部204は、ステップS505にて算出した相関変化量に基づいて像ずれ量を算出する。次に、ステップS508において、AF信号処理部204は、ステップS507にて算出した像ずれ量の信頼度を算出する。次に、ステップS509において、AF信号処理部204は、像ずれ量をデフォーカス量に変換する。
次に、ステップS510において、システム制御部209は、ステップS504にて行われたフィルタ処理に関し、フィルタの種類分だけ演算したか否かを判定する。フィルタの種類分だけフィルタ処理の演算が完了している場合(Yes)、ステップS511へ進む。一方、フィルタの種類分だけフィルタ処理の演算が完了していない場合(No)、ステップS504へ戻る。本実施形態において、ステップS504のフィルタ処理では、例えば、行加算平均処理を行った一対の像信号に対して、帯域の異なる3つの周波数帯域(低域、中域、高域)のバンドパスフィルタを用いた処理(フィルタ処理)を水平方向に行う。但し、低域フィルタ、中域フィルタ、高域フィルタとは、各フィルタが取り出す周波数成分の相対的な高低を示すものであり、絶対的な高低を示すものではない。ステップS510において、システム制御部209は、ステップS504~S509の一連の処理を3つの周波数帯域の全てに関して行ったか否かを判定する。
次に、ステップS511において、システム制御部209は、合焦判定を行うフィルタを用いて算出されたデフォーカス量を選択する。すなわち、システム制御部209(決定手段)は、ステップS504~S509の一連の処理により算出された3つのデフォーカス量と信頼度との組み合わせのうち、いずれのデフォーカス量と信頼度との組み合わせを用いるかを選択(決定)する。本実施形態において、低域フィルタを用いて算出されたデフォーカス量を大Def、中域フィルタを用いて算出されたデフォーカス量を中Def、高域フィルタを用いて算出されたデフォーカス量を小Defと表現する。なお、デフォーカス量の選択については後述する。
次に、図7を参照して、図6のステップS501にて設定された焦点検出領域(AF領域)について詳述する。図7は、撮像素子201の画素アレイ601上での焦点検出領域602の説明図である。焦点検出領域602の両側のシフト領域603は、相関演算に必要な領域である。このため、焦点検出領域602とシフト領域603とを合わせた領域604が相関演算に必要な画素領域である。図7中のp、q、s、tはそれぞれ、水平方向(x軸方向)での座標であり、pとqはそれぞれ領域604(画素領域)の始点と終点のx座標、sとtはそれぞれ焦点検出領域602の始点と終点のx座標をそれぞれ示している。
図8は、図7の焦点検出領域602に含まれる複数の画素から取得したAF用信号(一対の像信号)の説明図である。図8において、実線701は、一対の像信号のうちの一方(A像信号)、破線702は、一対の像信号のうち他方(B像信号)である。図8(A)はシフト前のA像信号およびB像信号を示し、図8(B)、(C)はそれぞれ、A像信号およびB像信号を図8(A)の状態からプラス方向およびマイナス方向にシフトした状態を示している。一対の像信号(実線701で示されるA像信号、破線702で示されるB像信号)の相関量を算出する際には、A像信号およびB像信号の両方を矢印の方向に1ビットずつシフトする。
次に、相関量の算出方法について説明する。まず、図8(B)、(C)に示されるように、A像信号およびB像信号をそれぞれ1ビットずつシフトして、A像信号とB像信号との差の絶対値の和を算出する。相関量COR[i]は、以下の式(1)を用いて算出することができる。
式(1)において、iはシフト量、p-sはマイナス方向の最大シフト量、q-tはプラス方向の最大シフト量、xは焦点検出領域602の開始座標、yは焦点検出領域602の終了座標である。
ここで、図9を参照して、シフト量と相関量CORとの関係について説明する。図9(A)、(B)は、シフト量と相関量CORとの関係の説明図である。図9(B)は図9(A)の領域802の拡大図である。図9(A)において、横軸はシフト量、縦軸は相関量CORをそれぞれ示している。シフト量とともに変化する相関量801における極値付近の領域802、803のうち、より小さい相関量に対応するシフト量において一対の像信号(A像信号、B像信号)の一致度が最も高くなる。
次に、相関変化量の算出方法について説明する。本実施形態では、図9(A)に示される相関量801の波形における1シフトおきの相関量の差を相関変化量として算出する。相関変化量ΔCOR[i]は、以下の式(2)を用いて算出することができる。
ここで、図10を参照して、シフト量と相関変化量ΔCORとの関係について説明する。図10(A)、(B)は、シフト量と相関変化量ΔCORとの関係の説明図である。図10(B)は図10(A)の領域902の拡大図である。図10(A)において、横軸はシフト量、縦軸は相関変化量ΔCORをそれぞれ示している。シフト量とともに変化する相関変化量901は、領域902、903においてプラスからマイナスになる。相関変化量が0となる状態をゼロクロスと呼び、一対の像信号(A像信号、B像信号)の一致度が最も高くなる。このため、ゼロクロスを与えるシフト量が像ずれ量となる。
図10(B)において、904は相関変化量901の一部である。図10(B)を参照して、像ずれ量PRDの算出方法について説明する。ゼロクロスを与えるシフト量(k-1+α)は、整数部分β(=k-1)と小数部分αとに分けられる。小数部分αは、図10(B)中の三角形ABCと三角形ADEとの相似の関係から、以下の式(3)を用いて算出することができる。
ここで、整数部分βは、図10(B)より、以下の式(4)を用いて算出することができる。
すなわち、小数部分αと整数部分βとの和から像ずれ量PRDを算出することができる。図10(A)に示されるように、相関変化量ΔCORのゼロクロスが複数存在する場合、その付近での相関変化量ΔCORの変化の急峻性がより大きい方を第1のゼロクロスとする。この急峻性はAFの行い易さを示す指標であり、その値が大きいほど高精度なAFを行い易い点であることを示す。急峻性maxderは、以下の式(5)を用いて算出することができる。
本実施形態では、相関変化量のゼロクロスが複数存在する場合、その急峻性に基づいて第1のゼロクロスを決定し、第1のゼロクロスを与えるシフト量を像ずれ量とする。
次に、像ずれ量の信頼性情報(信頼度)の算出方法について説明する。像ずれ量の信頼度は、一対の像信号(A像信号、B像信号)の一致度(2像の一致度)fnclvlと、前述の相関変化量ΔCORの急峻性とにより定義することができ、いずれの値から信頼度を取得してもよい。2像の一致度は、像ずれ量の精度を表す指標であり、ここではその値が小さいほど精度が良いことを意味する。図9(B)において、804は相関量801の一部である。2像の一致度fnclvlは、以下の式(6)を用いて算出することができる。
次に、図11を参照して、デフォーカス量の選択(図6のステップS511)について説明する。図11は、デフォーカス量の選択を示すフローチャートである。図11の各ステップは、主にシステム制御部209により実行される。
まず、ステップS1001において、システム制御部209は、後述する大Def(第1デフォーカス量)から中Def(第2デフォーカス量)への引き継ぎ判定を行う。次に、ステップS1002において、システム制御部209は、大Defから中Defへの引き継ぎを行うことができたか否かを判定する。大Defから中Defへの引き継ぎを行うことができた場合(Yes)、ステップS1003へ進む。一方、大Defから中Defへの引き継ぎを行うことができなかった場合(No)、ステップS1007へ進む。
次に、ステップS1003において、システム制御部209は、後述する中def(第2デフォーカス量)から小def(第3デフォーカス量)への引き継ぎ判定を行う。次に、ステップS1004において、システム制御部209は、中Defから小Defへの引き継ぎを行うことができたか否かを判定する。中Defから小Defへの引き継ぎを行うことができた場合(Yes)、ステップS1005へ進む。一方、中Defから小Defへの引き継ぎを行うことができなかった場合(No)、ステップS1006へ進む。
ステップS1005において、システム制御部209は、フォーカスレンズ103の駆動(フォーカス制御)に用いるデフォーカス量として小defを選択し、本フローを終了する。また、ステップS1006において、システム制御部209は、フォーカス制御に用いるデフォーカス量として中Defを選択し、本フローを終了する。また、ステップS1007において、システム制御部209は、フォーカス制御に用いるデフォーカス量とし大Defを選択し、本フローを終了する。
次に、図12を参照して、大Defから中Defへの引き継ぎ判定(図11のステップS1001)について説明する。図12の各ステップは、主にシステム制御部209により実行される。
まず、ステップS1101において、システム制御部209は、大Defと中Defのデフォーカス量の差が予め設定した第1深度閾値(第1閾値)以下であるか否かを判定する。大Defと中Defのデフォーカス量の差が第1深度閾値以下である場合(Yes)、ステップS1102へ進む。一方、この差が第1深度閾値よりも大きい場合(No)、ステップS1104へ進む。なお、第1深度閾値は、大Defから中Defへ適切に引き継ぐことができるように、例えば、焦点深度の9倍の量に設定される。また、第1深度閾値を、焦点深度を基準として設定する(焦点深度よりも大きくする)ことにより、F値や焦点検出領域が変化しても一律の閾値を設定することができる。
次に、ステップS1102において、システム制御部209は、中Defの信頼度(第2信頼度)が大Defの信頼度(第1信頼度)以上で、かつ中Defの信頼度が第2信頼度閾値(図4のステップS403の判定で用いる閾値)よりも高いか否かを判定する。これらの両方の条件を満たす場合(Yes)、ステップS1103へ進む。一方、少なくとも一方の条件を満たさない場合(No)、ステップS1104へ進む。
ステップS1103において、システム制御部209は、大Defから中Defへの引き継ぎを行うことができると判定し、本フローを終了する。一方、ステップS1104において、システム制御部209は、大Defから中Defへの引き継ぎを行うことができないと判定し、本フローを終了する。これにより、大ボケ状態から小ボケ状態へフォーカスレンズ103を移動させる過程において、大Defと中Defのデフォーカス量の差とそれぞれの信頼度とに基づいて、大Defから中Defへの引き継ぎを行うことが可能か否かを判定することができる。
次に、図13を参照して、中Defから小Defへの引き継ぎ判定(図11のステップS1003)について説明する。図13の各ステップは、主にシステム制御部209により実行される。まず、ステップS1201において、システム制御部209は、中Defが予め設定した第1のデフォーカス量閾値より大きいか否かを判断する。中Defが大きい場合(Yes)、ステップS1202へ進む。一方、中Defが小さい場合(No)、ステップS1203に進む。
なお、第1のデフォーカス量閾値は、中Defの大幅なずれ(誤測距)を検出できるように、例えば、焦点深度に設定される。これにより、特に合焦位置近傍での中Defの精度が低い場合を検出できる。また、第1のデフォーカス量閾値を、焦点深度を基準として設定することにより、F値や焦点検出領域が変化しても一律の閾値を設定することができる。
次に、ステップS1202において、システム制御部209は、中Defの信頼度を1ランク低くする処理を行い、ステップS1203へ進む。これにより、後述するステップS1204において判定される、中Defから小Defへの引き継ぎ条件を満たしやすくなり、小Defへの引き継ぎがされやすくなる。すなわち、中Defの信頼度を下げる処理(S1202)を入れることにより、中Defと小Defの選択に優先順位が付加され、合焦位置近傍で精度の低い中Defを選ばれにくくすることができる。
次に、ステップS1203において、システム制御部209は、中Defと小Defのデフォーカス量の差が予め設定した第2深度閾値(第2閾値)以下であるか否かを判定する。中Defと小Defのデフォーカス量の差が第2深度閾値以下である場合(Yes)、ステップS1204へ進む。一方、この差が第2深度閾値よりも大きい場合(No)、ステップS1206へ進む。
なお、第2深度閾値は、中Defから小Defへ適切に引き継ぐことができるように、例えば、焦点深度の3倍の量に設定される。また、第2深度閾値を、焦点深度を基準として設定する(焦点深度よりも大きくする)ことにより、F値や焦点検出領域が変化しても一律の閾値を設定することができる。また、第2深度閾値は、図12のステップS1101の判定にて用いられる第1深度閾値よりも小さい値に設定される。これは、小Def→中Def→大Defと変化するにつれて、デフォーカス量の検出ばらつきが大きくなる結果、小Defと中Defの差よりも中Defと大Defの差の方が大きくなるためである。
次に、ステップS1204において、システム制御部209は、小Defの信頼度が中Defの信頼度以上であり、かつ小Defの信頼度および中Defの信頼度の両方がそれぞれ第2信頼度閾値よりも高いか否かを判定する。これらの条件を全て満たす場合(Yes)、ステップS1205へ進む。一方、少なくとも一つの条件を満たさない場合(No)、ステップS1206へ進む。
次に、ステップS1205において、システム制御部209は、中Defから小Defへの引き継ぎを行うことができると判定し、本フローを終了する。一方、ステップS1206において、システム制御部209は、中Defから小Defへの引き継ぎを行うことができないと判定し、本フローを終了する。これにより、小ボケ状態から合焦位置へフォーカスレンズ103を移動させる過程において、中Defと小Defのデフォーカス量の差とそれぞれの信頼度とに基づいて、中Defから小Defへの引き継ぎを行うことが可能であるか否かを判定することができる。
本実施形態では、低域フィルタ、中域フィルタ、高域フィルタを用いる場合について説明したが、フィルタの種類や数は限定されない。また、中Defと小Defの引き継ぎ判定時に、その選択に優先度を付加したが、その他の引き継ぎ判定時に優先度を付加してもよい。さらに、中Defの信頼度を低くすることで優先順位を付加したが、中Defと小Defの引き継ぎの閾値にヒステリシスを持たせることで、優先度を付加してもよい。
以上、本実施形態によれば、中Defが誤測距しているにも関わらず、信頼度が小Def信頼度と同等以上と算出された場合、中Def信頼度を1ランク下げた優先度を付加することで、選ばれにくくでき、安定した引き継ぎ判定ができる。つまり、コントラストの低い被写体で、低帯域フィルタの演算結果の信頼度が高帯域フィルタの信頼度と同等以上になった場合でも、その引き継ぎ判定時に、帯域に応じて優先度を付加することで、安定して高帯域フィルタに引き継ぐことができる。そして、レンズの反転を抑制し、合焦率を改善できる。
(第2実施形態)
次に、図14を参照して、本実施形態における自動選択時のAF動作について説明する。図14は、撮像装置の自動選択時の焦点検出処理を示すフローチャートである。この動作に関する制御プログラムは、AF信号処理部204によって実行される。AF信号処理部204は、AF動作を開始すると、まず、ステップS1301において、被写体に対する焦点調節を行うための焦点検出領域141を設定する。このステップS1301の処理では、図15に示すように縦横7×7の合計49個の焦点検出枠142が設定される。
次に、ステップS1302において、各焦点検出枠で、焦点検出に必要なAF用信号を取得する。具体的には、撮像素子201で露光を行った後、撮像面位相差AF用の焦点検出枠142の領域内の焦点検出用画素の像信号を取得する。次に、ステップS1303において、撮像面位相差AF用の各焦点検出枠について、得られた一対の像信号のずれ量からデフォーカス量を算出する。本実施形態では、算出されるデフォーカス量の信頼度も判定する。デフォーカス量と信頼度は、上述の第1実施形態と同様に算出できる。すなわち、デフォーカス量は、図6の焦点検出処理を行うことで得られ、信頼度は、AF用信号の信頼性情報(2像の一致度、2像の急峻度、コントラスト情報、飽和情報、およびキズ情報など)により算出できる。
本実施形態では、低域フィルタと高域フィルタを用いた場合について説明する。以下、低域フィルタを用いて算出したデフォーカス量まで引き継がれた焦点検出枠を低域フィルタ枠、高域フィルタ用いて算出したデフォーカス量まで引き継がれた焦点検出枠を高域フィルタ枠と表現する。また、算出されたデフォーカス量が所定の信頼度を有する場合に「デフォーカス量が算出された」と表現し、デフォーカス量が何らかの理由で算出できない、または、算出されたデフォーカス量の信頼度が低い場合に「デフォーカス量が算出できない」と表現する。
次に、ステップS1304において、ステップS1301で設定した複数の焦点検出枠142の中から最も撮影者がピントを合わせたい被写体を選択する枠選択処理を行う。基本的には、最も至近側の被写体を示すデフォーカス量の焦点検出枠を選択するが、一般に、撮影者がピントを合わせたい被写体は、至近側に存在することが多いためである。この枠選択処理についての詳細は後述する。次に、ステップS1305において、枠選択された焦点検出枠142で算出されたデフォーカス量に基づきフォーカスレンズ103の駆動を行う(合焦制御)。
次に、ステップS1306において、レンズ駆動に用いたデフォーカス量が算出された焦点検出枠に関して、表示部213に合焦表示を行い、焦点検出処理を終了する。合焦表示処理においては、選択した枠のみを表示してもよいし、選択した焦点検出枠とデフォーカス量の差分が所定内である焦点検出枠を全てもしくは一部を表示するようにしてもよい。
以下、ステップS1304で行う枠選択処理の詳細について図16を用いて説明する。まず、ステップS1501において、デフォーカス量が算出された焦点検出枠の中で、高域フィルタ枠の信頼度が予め設定した第3信頼度閾値以上の枠が存在するか否かを判定する。存在する場合(Yes)、信頼度が第3信頼度閾値以上の焦点検出枠を候補枠として設定し、ステップS1503へ進む。一方、存在しない場合(No)、ステップS1502へ進む。
次に、ステップS1502において、デフォーカス量が算出された焦点検出枠の中で、低域フィルタ枠の信頼度が予め設定した第3信頼度閾値以上の枠が存在するか否かを判定する。存在する場合(Yes)、信頼度が第3信頼度閾値以上の焦点検出枠を候補枠として設定し、ステップS1503へ進む。一方、存在しない場合(No)、ステップS1505へ進み、選択枠「なし」と判定し、本フローを終了する。
このように、まず、高域フィルタ枠で信頼度の判定をして、条件を満たさなければ低域フィルタの枠の信頼度を判定する。これにより、高域フィルタ枠と低域フィルタ枠の選択に優先度が付加され、合焦位置近傍で精度の低い低帯域フィルタを用いて算出されたデフォーカス量を選ばれにくくすることができる。
次に、ステップS1503において、ステップS1501~ステップS1502で候補枠として設定された枠の中で、最も至近の枠を選択枠として設定し、本フローを終了する。
選択枠が「なし」となった場合では、図14のステップS1305においては、フォーカスレンズ103の駆動を行うことはせずに非合焦と判断し、表示部213に非合焦表示する処理を行ってもよい。また、信頼性の高い枠が選択されるまでフォーカスレンズ103を所定の方向へ駆動させ続けるサーチ駆動を行ってもよい。
なお、本実施形態では、低域フィルタと高域フィルタを用いる場合について説明したが、フィルタの種類や数は限定されない。また、より低域のフィルタをより選ばれにくくすることで効果が得られるため、すべてのフィルタに優先度を付加してもよいし、少なくともひとつのフィルタに優先度を付加してもよい。
以上、本実施形態によれば、高帯域フィルタ枠と低帯域フィルタ枠の双方で選択枠に選ばれる条件を満たす焦点検出枠が存在した場合でも、高帯域フィルタ枠の判定から実施することで優先度を付加する。そして、より精度の高い高帯域フィルタを用いて算出したデフォーカス量を選択できる。つまり、自動選択モードにおいて、焦点検出領域141内にコントラストの低い被写体を含む場合でも、その枠選択時に、帯域に応じて優先度を付加する。これにより、より正確に撮影者が焦点調節を行いたいコントラストの高い被写体の焦点検出枠を選択でき、ボケ合焦を抑制できる。
このように、上述の実施形態では、フィルタ帯域引き継ぎや焦点検出枠の選択時に、バンドパスフィルタの周波数帯域に応じて優先度をつけることで、コントラストの低い被写体を含む場合の合焦率を改善できる。このことから、焦点検出時に、コントラストの低い被写体を含む場合であっても、非合焦やボケ合焦を軽減できる撮像装置を提供することができる。
また、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。