(1)第1実施形態
(1-1)本発明の第1実施形態の電力検出装置を備える発電システムの全体構成
本実施形態では、図1に示すように、風力発電装置や太陽光発電装置などの有効電力源13で発電した電力を、電力系統30を介して交流電圧源35(無限大母線とする)に供給する発電システム100に用いる場合を例として、本発明の電力検出装置1を説明する。発電システム100は、有効電力源13と、単相の電力変換装置10と、連系インピーダンスと、電力検出装置1とを備えている。発電システム100は、電力変換装置10が連系点としての端子LP1、LP2で単相の電力系統30に接続されている。連系インピーダンスは、電力変換装置10の変換器11を電力系統30に連系するために、変換器11と電力系統30の間に挿入されるインピーダンスである。本実施形態では、連系インピーダンスは、リアクトル17であり、変換器11と端子LP1の間に挿入されている。
発電システム100は、有効電力源13と電力変換装置10の間を直流配線で接続し、該直流配線の直流電圧を、電力変換装置10で単相の交流電圧に変換し、リアクトル17を介して、電力系統30に連系する。なお、本実施形態では、交流電圧の周波数が50Hzの交流電圧源35及び電力系統30を想定して説明する。また、電力系統30は、電線などで構成されているため、実際にはインピーダンス成分を有している。そのため、図1では、電力系統30のインピーダンス成分33を、抵抗成分31とリアクタンス成分32として示している。なお、本実施形態では抵抗成分31の値をR、リアクタンス成分32の値をXとする。
(1-2)本発明の第1実施形態の電力検出装置を備える電力変換装置の全体構成
電力変換装置10は、変換器11と、変換器11を制御する制御部12と、電力検出装置1とを備える。電力変換装置10は、例えば、有効電力源13が変換器11の正側入力端子Pと負側入力端子Nとに接続されて、有効電力源13で発電された電力が正側入力端子Pと負側入力端子Nを介して変換器11に供給される。
変換器11は、正側入力端子Pと、負側入力端子Nと、R側変換部21Rと、S側変換部21Sと、コンデンサ20とを備えている。コンデンサ20は、正側入力端子Pと負側入力端子Nとに接続されており、有効電力源13から供給された直流電力によって充電される。R側変換部21R、S側変換部21Sは、コンデンサ20のコンデンサ電圧(例えば、V1)を、交流電圧に変換し、出力端子23R及び出力端子23Sから出力する。なお、コンデンサ20は、系統電圧のピーク値よりも高い定格電圧のコンデンサを用いている。
R側変換部21Rは、ハイサイドスイッチ22Hとローサイドスイッチ22Lと、出力端子23Pとを備えている。R側変換部21Rでは、ハイサイドスイッチ22Hとローサイドスイッチ22Lとが直列に接続され、ハイサイドスイッチ22Hとローサイドスイッチ22Lとの間の接続点に出力端子23Rが設けられている。R側変換部21Rのハイサイドスイッチ22H側が正側入力端子Pに接続され、R側変換部21Rのローサイドスイッチ22L側が負側入力端子Nに接続されている。出力端子23Rは、リアクトル17を介して端子LP1に接続されている。
S側変換部21Sは、同様に、ハイサイドスイッチ22Hとローサイドスイッチ22Lと、出力端子23Nとを備えている。S側変換部21Sでは、ハイサイドスイッチ22Hとローサイドスイッチ22Lとが直列に接続され、ハイサイドスイッチ22Hとローサイドスイッチ22Lとの間の接続点に出力端子23Sが設けられている。S側変換部21Sのハイサイドスイッチ22H側が正側入力端子Pに接続され、S側変換部21Sのローサイドスイッチ22L側が負側入力端子Nに接続されている。出力端子23Sは、端子LP2に接続されている。そして、変換器11は、R側変換部21R、S側変換部21S及びコンデンサ20が並列に接続されており、フルブリッジ回路構成をしている。なお、変換器11の構成は、入力された電力を交流電圧に変換して電力系統に出力できれば特に限定されず、所定の3レベルの電圧を出力できる3レベル変換器であってもよい。
そのため、変換器11は、R側変換部21Rのハイサイドスイッチ22Hがオンでローサイドスイッチ22Lがオフであり、S側変換部21Sのハイサイドスイッチ22Hがオフでローサイドスイッチ22Lがオンであるとき、端子LP1と端子LP2との間に、正のコンデンサ電圧+V1を出力できる。変換器11は、R側変換部21Rのハイサイドスイッチ22Hがオフでローサイドスイッチ22Lがオンであり、S側変換部21Sのハイサイドスイッチ22Hがオンでローサイドスイッチ22Lがオフであるとき、端子LP1と端子LP2との間に、負のコンデンサ電圧-V1を出力する。このように、変換器11は、R側変換部21R、S側変換部21Sのハイサイドスイッチ22H及びローサイドスイッチ22Lのオンとオフを切り替えることで、直流電圧を交流電圧に変換する。
ハイサイドスイッチ22H、ローサイドスイッチ22Lは、例えば、IGBTなどでなるスイッチング素子と、還流ダイオードとで構成してもよい。ハイサイドスイッチ22H、ローサイドスイッチ22Lは、スイッチング素子の正側(IGBTのコレクタ)と還流ダイオードの負側とが接続され、スイッチング素子の負側(IGBTのエミッタ)と還流ダイオードの正側とが接続された、スイッチング素子及び還流ダイオードが逆並列に接続された構成である。
このように、ハイサイドスイッチ22H、ローサイドスイッチ22Lは、スイッチング素子及び還流ダイオードを逆並列に接続することで、ハイサイドスイッチ22H及びローサイドスイッチ22Lの負側から正側に電圧が印加されたとき、還流ダイオードに電流が流れるようにし、スイッチング素子であるIGBTのエミッタからコレクタに電流が流れることを防止して、IGBTを保護できる。
制御部12は、出力電圧指令生成部15と、ゲートパルス生成部16とを備えている。出力電圧指令生成部15は、変換器11が電力系統30に出力する交流電圧を算出する。算出方法は従来の公知の方法を用いることができ、例えば、検出した系統電圧と、系統電圧から算出した系統電圧の位相などに基づいて算出する。また後述の手法によっても、制御部12は、変換器11を制御することができる。なお、系統電圧の位相検出は、PLL(Phase Locked Loop)やDFT(Discrete Fourier transform)を用いた位相検出処理など、公知の方法で行うことができる。
出力電圧指令生成部15は、変換器11が出力する電流の指令値である出力電流指令値を算出し、出力電流指令値をベクトル制御するなどして電圧指令値を算出し、算出した電圧指令値を規格化し、変換器11から交流電圧を出力するための制御信号である、Pulse Width Modulation(PWM:パルス幅変調)用の出力電圧指令値Vrefを生成し、ゲートパルス生成部16に送出する。但し、必ずしも電流指令値を介して、出力電圧指令値を送出する必要はない。電力制御などから出力電圧指令値を作成、送出してもよい。ゲートパルス生成部16は、出力電圧指令値Vrefに応じてR側変換部21R及びS側変換部21Sのハイサイドスイッチ22H及びローサイドスイッチ22L(より具体的にはIGBTのゲート)をオン・オフ制御するためのゲートパルスをスイッチ毎に生成する。ゲートパルスは、出力電圧指令値Vrefを変調波として、公知のパルス幅変調(PWM)により生成される。
ゲートパルス生成部16は、R側変換部21R及びS側変換部21Sのハイサイドスイッチ22H及びローサイドスイッチ22Lに図示しない配線で接続されており、生成したゲートパルスを、対応するR側変換部21R及びS側変換部21Sのハイサイドスイッチ22H及びローサイドスイッチ22Lに出力する。変換器11は、ゲートパルスによりハイサイドスイッチ22H及びローサイドスイッチ22Lのオンの時間を制御し、コンデンサ20のコンデンサ電圧を、出力電圧指令値に応じた交流電圧に変換する。このように、制御部12は、変換器11を制御する。
(1-3)本発明の第1実施形態の電力検出装置の全体構成
図1に示すように、電力検出装置1は、有効電力及び無効電力を検出する検出処理部2と、電力系統30の電圧として連系点の電圧(瞬時値)を検出する電源電圧検出器5と、電力変換装置10と電力系統30との間を流れる電流(瞬時値)を検出する電流検出器6と、検出した有効電力と無効電力の値を表示する表示部7とを備えている。
なお、本実施形態の電力検出装置1で検出する有効電力Pwは、Vを電力系統30の電圧(後述の連系点電圧)、Iを電力変換装置10と電力系統30の間を流れる電流(後述の連系電流)、θをVとIの位相差とすると、Pw=|V||I|cosθ(|V|及び|I|は系統電圧及び電流の実効値を表す。)で表される一般的な有効電力である。また、実施形態で検出する無効電力Qwは、Qw=|V||I|sinθで表される一般的な無効電力である。本実施形態の電力検出装置1は、有効電力Pw及び無効電力Qwの直流量を検出できる。
電源電圧検出器5は、連系点の端子LP1と端子LP2の間に設けられ、電力系統30の電圧として、端子LP1と端子LP2の間の電圧(以下、連系点電圧Vともいう。)を検出する。連系点電圧Vは、端子LP1と端子LP2の間の電位差であり、端子LP1の電位が端子LP2の電位より高い場合を正の電圧としている。電源電圧検出器5は、検出処理部2の一時データ保持部3及び演算部4と、制御部12の出力電圧指令生成部15とに配線を介して接続されており、検出した連系点電圧Vをこれらの接続先に送出する。
電流検出器6は、端子LP1とリアクトル17の間に設けられており、電力変換装置10と電力系統30との間を流れる電流(以下、連系電流Iともいう。)を検出する。本実施形態では、電流検出器6は、電力系統30からリアクトル17を介して電力変換装置10に流れる方向の連系電流Iを、正の電流として検出する。電流検出器6は、検出処理部2の一時データ保持部3及び演算部4に配線を介して接続されており、検出した連系電流Iをこれらの接続先に送出する。
一時データ保持部3は、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ及びハードディスクドライブなどの公知のメモリを備えており、検出した連系点電圧V及び連系電流Iを受け取ると、連系点電圧V及び連系電流Iの値をメモリに格納する。その後、一時データ保持部3は、メモリに格納した連系点電圧Vの検出値を、連系点電圧V(又は連系電流I)の1/4周期後(50Hzの場合は5ms後)に、過去電圧として出力し、連系電流Iの検出値を、連系点電圧V(又は連系電流I)の1/4周期後に、過去電流として出力する。すなわち、一時データ保持部3は、連系点電圧V及び連系電流Iの1/4周期前の過去値として、検出した連系点電圧Vの1/4周期前の過去電圧と、検出した連系点電圧Vの1/4周期前の過去電流とを出力する。以上述べたように、一時データ保持部3は、受け取った連系点電圧V及び連系電流Iを順次メモリに記憶していき、1/4周期前にメモリに記憶した連系点電圧V及び連系電流Iを過去電圧及び過去電流としてメモリから読み出して順次出力する。
また、一時データ保持部3は、遅延回路であってもよく、受け取った連系点電圧V及び連系電流Iの値を連系点電圧Vの1/4周期の期間遅らせて、1/4周期前に検出した過去電圧及び過去電流として出力する。この場合、本実施形態の電力系統30が周波数50Hzの系統であるので、一時データ保持部3は、受け取った連系点電圧V及び連系電流Iの検出信号を5ms遅らせる。電力系統30の周波数が50Hzの場合、連系点電圧V(系統電圧)の1周期は20msであるので、5msの期間は、連系点電圧の1/4周期の期間に相当する。そのため、連系点電圧V及び連系電流Iの検出信号を5ms遅らせることで、一時データ保持部3は、現在、一時データ保持部3に入力されている連系点電圧Vから1/4周期前の過去電圧と、現在、一時データ保持部3に入力されている連系電流Iから1/4周期前の過去電流を出力できる。
なお、電力系統(交流電圧源)の周波数が60Hzの場合は1周期が約16.7msであるので、一時データ保持部3は、メモリで構成されている場合、連系点電圧及び連系電流の検出値を約4.2ms間メモリに格納した後に、遅延回路で構成されている場合、連系点電圧及び連系電流の検出値を約4.2ms間遅らせて、1/4周期前に検出した過去電圧及び過去電流として出力する。このように、一時データ保持部3におけるメモリでの格納時間又は遅れ時間は、電力系統の周波数に応じて変わる。
演算部4は、電源電圧検出器5が検出した連系点電圧Vの検出値と、電流検出器6が検出した連系電流Iの検出値と、連系点電圧Vの1/4周期前の過去電圧と及び過去電流とを受け取る。演算部4は、連系点電圧Vの現在値と、連系電流Iの現在値と、過去電圧と、過去電流とに基づいて、有効電力又は無効電力の少なくとも1つ以上を演算する。具体的には、演算部4は、下記の式(1)を用いて電力変換装置10の出力する有効電力を算出し、下記の式(2)を用いて電力変換装置10の出力する無効電力を算出する。式(1)により算出する有効電力Pwと、式(2)により算出する無効電力Qwとは、直流量(算出時点に、電力変換装置10が出力した有効電力及び無効電力の値)である。なお、連系点電圧Vの現在値及び連系電流Iの現在値は、現在、演算部4が受け取った連系点電圧Vの検出値と連系電流Iの検出値を意味し、過去電圧及び過去電流は、当該連系点電圧Vの1/4周期前の連系点電圧V及び連系電流Iの検出値である。
有効電力Pw=(Vp×Ip+Vb×Ib)/2・・・(1)
無効電力Qw=(Vp×Ib-Vb×Ip)/2・・・(2)
ここで、Vpは連系点電圧Vの現在値(検出値)、Ipは連系電流Iの現在値(検出値)、Vbは過去電圧、Ibは過去電流である。このように、演算部4は、連系点電圧Vの現在値Vpと連系電流Iの現在値Ipとの積と、過去電圧Vbと過去電流Ibとの積とを加算して2で除算することで、有効電力Pwを算出する。また、演算部4は、連系点電圧Vの現在値Vpと過去電流Ibとの積から、過去電圧Vbと連系電流Iの現在値Ipとの積を減算して2で除算することで、無効電力Qwを算出する。本実施形態では、演算部4は、有効電力と無効電力の両方を算出している。なお、VbはVpから位相が90度遅れ、IbはIpから位相が90度遅れている。なお、本明細書では「2で除算する」という語句には、2で除算することに加えて、1/2を乗算する、0.5を乗算する又は減算結果を2倍してから4で除算するなど、2で除算することと同じ結果となる計算処理方法も含むものとする。
このように、電力検出装置1は、検出した連系点電圧Vの現在値Vp、検出した連系電流Iの現在値Ip、過去電圧Vb及び過去電流Ibから簡単な四則演算で、電力変換装置10が出力する有効電力Pw又は無効電力Qwの少なくとも1つ以上を直流量として算出することができるので、電力変換装置10の出力を1周期分積分したり、系統電圧の位相の検出や座標変換をしたりする必要がなく、有効電力Pw又は無効電力Qwの少なくとも1つ以上を直流量として1周期の期間待つことなく検出できる。演算部4は、算出した有効電力Pw及び無効電力Qwを、演算部4に接続された例えば液晶モニターなどの表示部7に表示させ、作業者に電力変換装置10が出力している有効電力Pw及び無効電力Qwを確認させる。また、本実施形態の場合、演算部4は、電力変換装置10の制御部12の出力電圧指令生成部15にも接続されており、出力電圧指令生成部15に算出した有効電力Pw及び無効電力Qwを送出する。
制御部12は、検出した有効電力及び無効電力を用いて、電力変換装置10が出力する有効電力及び無効電力をフィードバック制御することができる。例えば、制御部12が、出力電圧指令生成部15に、有効電力指令値及び無効電力指令値に基づいて出力電圧指令値を生成させて電力変換装置10を制御しているとする。この場合、制御部12は、電力検出装置1が検出した有効電力及び無効電力を有効電力指令値及び無効電力指令値にフィードバックし、電力変換装置10が出力する有効電力及び無効電力をフィードバック制御できる。具体的には、出力電圧指令生成部15が、有効電力指令値と有効電力の検出値との偏差及び無効電力指令値と無効電力の検出値との偏差に基づいて出力電圧指令値を生成するようにする。このようにすることで、これらの偏差がそれぞれ小さくなるように電力変換装置10の出力を制御することができる。なお、有効電力のみフィードバック制御してもよく、無効電力のみフィードバック制御をしてもよい。
また、有効電力及び無効電力を直流量として検出できるため、検出した有効電力及び無効電力を積分制御に用い、目標値(有効電力指令値及び無効電力指令値)と実際の出力値(検出した有効電力及び無効電力)の偏差を小さくすることができる。例えば、上記の有効電力及び無効電力のフィードバック制御に対して積分制御を加えることができる。具体的には、出力電圧指令生成部15が、有効電力指令値と有効電力の検出値との偏差を積分した値と、無効電力指令値と無効電力の検出値との偏差を積分した値とに基づいて出力電圧指令値を生成するようにする。このようにすることで、有効電力指令値と実際の有効電力の出力値(有効電力の検出値)の偏差及び無効電力指令値と実際の無効電力の出力値(無効電力の検出値)の偏差を小さくすることができる。なお、有効電力指令値及び無効電力指令値は、制御部12が生成してもよく、発電システム100が接続された電力系統30の指令所など、電力システムの上位の存在から受け取ってもよい。
(1-4)本発明の第1実施形態の電力検出装置が検出した有効電力及び無効電力を用いた系統電圧の変動抑制方法
まず、電力系統30へ流入する有効電力が増加することで、電力系統30の電圧(連系点電圧)が変動することについて、図1を用いて説明する。有効電力源13での発電量が増加し、電力変換装置10に流入する有効電力が増加すると、変換器11のコンデンサ20の電圧が上昇してしまう。コンデンサ20の電圧上昇が許容値を超えると、コンデンサ20やハイサイドスイッチ22Hとローサイドスイッチ22Lに用いるIGBTなどが故障する可能性がある。ここで、連系電流Iは、電力変換装置10の変換器11が出力する有効電力に関連する有効電流成分Ieと、出力する無効電力に関連する無効電流成分Iqからなるとする。コンデンサ20の電圧上昇を防ぐには、電力変換装置10から電力系統30へ出力する有効電力を増加し、有効電力源13から入力する有効電力とバランスさせる必要がある。電力系統30に出力する有効電力が増加すると、連系電流Iのうち、有効電流成分Ieも増加する。ここで、有効電力の増加に伴う有効電流成分Ieの上昇量をΔIeとする。このように、有効電流成分Ieが上昇すると、電力系統30の抵抗成分31で、上昇量ΔIeに応じて電圧ΔVeが生じ、ΔVeの分だけ連系点電圧Vが上昇する。
このように、電力系統30に流入する有効電力が増加すると、有効電流成分Ieが上昇し、電力系統30の連系点電圧Vが上昇する。ここで、上昇量ΔVeは、電力系統30を流れる有効電流成分Ieに、電力系統30の抵抗成分31の値Rを乗算することで算出できる(ΔVe=ΔIe×R)。
有効電力源13が出力する有効電力によって、連系点電圧Vが変動することは、無限大母線である交流電圧源35と電力変換装置10との間を接続する電力系統30にとって好ましくない。交流電圧源35の電圧は一定なので、電力変換装置10が有効電力を出力すると連系点電圧Vが上昇する。連系点電圧Vの上昇は、電力変換装置10から連系点電圧Vの上昇量ΔVeに応じた無効電力を出力することで、より具体的には変換器11にリアクトルを模擬した動作を加えることで、抑制することができる。ΔVeに応じて電力変換装置10が出力する無効電力を増加させると、連系電流Iの内、有効電流成分Ieより位相が90度ずれた無効電流成分Iqが上昇する。この無効電流成分Iqの上昇量をΔIqとすると、ΔIqによって、電力系統30のリアクタンス成分32で電圧ΔVrが生じる。
このとき、電圧ΔVrは、無効電流成分Iqより位相が90度進んでおり、有効電流成分Ieと同位相である。そして、有効電流成分Ieは、連系点電圧Vとは180度位相がずれているので、抵抗成分31で生じた電圧ΔVeとも180度位相がずれている。よって、電圧ΔVrと電圧ΔVeとが逆符号であるので、電圧ΔVrによって電圧ΔVeを補償できる。よって、電力変換装置10からの無効電力の出力量を増加させることで、電力変換装置10から出力される有効電力の増加によって生じる連系点電圧Vの上昇を補償することができる。無効電力に関しては、人によって、定義表現が異なり誤解を生むことが多いので、念のために別な表現法にて説明する。すなわち、変換器11に有効電力出力だけでなく、リアクトル動作も合わせて行う。リアクトル動作は、位相を変えずに出力電圧を下げることとほぼ同義なため、有効電力出力による電圧上昇を相殺できる。なお、電力系統30の電圧(連系点電圧V)の低下は、電力系統30から電力変換装置10へ無効電力を引き込む(上記の例では、電圧の補償のために電力変換装置10が出力すべき無効電力の符号を逆符号にする)ことで、同様に補償することができる。
連系点電圧Vが上昇した場合を例として、より具体的に補償方法を説明する。制御部12が、電力変換装置10が出力すべき無効電力を下記式(3)により算出し、当該算出結果に基づく無効電力を電力変換装置10から出力するように制御する。
Qr=Pw×X/R・・・(3)
Qrは連系点電圧Vを補償するために電力変換装置10が出力すべき無効電力(以下、補償無効電力ともいう。)の値、Pwは検出した有効電力の値、Xは電力系統30のリアクタンス成分32の値、Rは電力系統30の抵抗成分31の値である。
なお、X/Rが未知の場合は、下記の式(4)により制御する。
Qr=Pw×((dQw/dt)/(dPw/dt))/(dV/dt)・・・(4)
ここで、dQw/dtは検出した無効電力Qwの微分、dPw/dtは検出した有効電力Pwの微分、dV/dtは連系点電圧Vの微分である。なお、式(4)は公知の情報である。但し、極短い時間の微分を算出すると、パワー半導体のリプルを拾ってしまうので、PWMのキャリア周期又はパワー半導体のスイッチング周波数より十分長い一次遅れフィルタを介した上で微分を行うのが好ましい。例えば、それらの5倍以上の時間が好ましい。
(1-5)第1の実施形態の作用及び効果
以上の構成において、図1に示すように、電力検出装置1は、電力系統30の連系点電圧V(電圧)及び電力変換装置10と電力系統30との間を流れる連系電流I(電流)と、連系点電圧Vの1/4周期前の過去電圧(過去値)と、検出した連系電流Iの1/4周期前の過去電流(過去値)とに基づいて、有効電力又は無効電力の少なくとも1つ以上を算出する演算部4を備え、電力系統30に接続された電力変換装置10が出力する有効電力又は無効電力の少なくとも1つ以上を検出するように構成した。
よって、電力検出装置1は、連系点電圧V及び連系電流Iと、連系点電圧V及び連系電流Iの1/4周期前の過去値(過去電圧及び過去電流)を用いて有効電力又は無効電力の少なくとも1つ以上を直流量として算出するので、1周期分の期間を待つことなく有効電力又は無効電力の少なくとも1つ以上を直流量として検出できる。
また、電力変換装置10は、電力検出装置1と、電力系統30に交流電圧を出力する変換器11と、変換器11を制御する制御部12を備えるようにすることで、電力変換装置10が出力する有効電力及び無効電力を直流量として1周期分の期間を待つことなく検出できる。さらに電力変換装置10は、検出した有効電力を用いて、出力する有効電力を積分制御することで、有効電力指令値と実際の有効電力の出力値(有効電力の検出値)の偏差を小さくすることができ、検出した無効電力を用いて出力する無効電力を制御することで無効電力指令値と実際の無効電力の出力値(無効電力の検出値)の偏差を小さくすることができる。
(2)第2実施形態
(2-1)本発明の第2実施形態の電力検出装置を備える発電システムの全体構成
第1実施形態の電力変換装置10は単相であったが、以下で説明する第2実施形態では電力変換装置が三相である。本実施形態では、図2に示すように、風力発電装置や太陽光発電装置などの有効電力源13で発電した電力を、電力系統70を介して交流電圧源75(無限大母線とする)に供給する発電システム101に用いる場合を例として、本発明の電力検出装置41を説明する。発電システム101は、有効電力源13と、三相交流電圧を出力する電力変換装置50と、連系インピーダンスと、電力変換装置50が出力する各相の有効電力及び無効電力をそれぞれ相毎に検出する電力検出装置41とを備えている。発電システム101は、電力変換装置50が、R相端子LPRで三相交流の電力系統70のR相に接続され、S相端子LPSで三相交流の電力系統70のS相に接続され、T相端子LPTで三相交流の電力系統70のT相に接続されている。発電システム101は、連系点としてのR相端子LPR、S相端子LPS、T相端子LPTで電力系統70に連系されている。
本実施形態では、連系インピーダンスは、リアクトル17R、17S、17Tであり、変換器51とR相端子LPR、S相端子LPS、T相端子LPTの間に挿入されている。発電システム101は、有効電力源13と電力変換装置50の間を直流配線で接続し、該直流配線の直流電圧を、電力変換装置50で三相の交流電圧に変換し、リアクトル17R、17S、17Tを介して、電力系統70に連系する。なお、本実施形態では、交流電圧の周波数が50Hzの交流電圧源75及び電力系統70を想定して説明する。また、電力系統70は、電線などで構成されているため、実際には各相がインピーダンス成分33R、33S、33Tを有している。そこで、図2では、電力系統70の各相のインピーダンス成分33R、33S、33Tを、抵抗成分31R、31S、31Tとリアクタンス成分32R、32S、32Tとして示している。
(2-2)本発明の第2実施形態の電力検出装置を備える電力変換装置の全体構成
図2に示すように、電力変換装置50は、変換器51と、変換器51の動作を制御する制御部52と、電力検出装置41とを備える。電力変換装置50は、有効電力源13が変換器51の正側入力端子Pと負側入力端子Nとに接続されて、有効電力源13で発電された電力が正側入力端子Pと負側入力端子Nを介して供給される。
変換器51は、正側入力端子Pと、負側入力端子Nと、R相変換部61Rと、S相変換部61Sと、T相変換部61Tと、コンデンサ60とを備えており、R相変換部61R、S相変換部61S、T相変換部61T及びコンデンサ60が並列に接続されている。コンデンサ60は、正側入力端子Pと負側入力端子Nとに接続されており、有効電力源13から供給された直流電力によって充電される。R相変換部61R、S相変換部61S及びT相変換部61Tは、コンデンサ60のコンデンサ電圧(例えば、V1)を、R相、S相、T相毎に交流電圧に変換し、出力端子63R、63S、63Tから出力する。なお、コンデンサ60として、電力系統70の電圧のピーク値よりも高い定格電圧のコンデンサを用いる。
R相変換部61Rは、ハイサイドスイッチ62Hとローサイドスイッチ62Lと、出力端子63Rとを備えている。R相変換部61Rでは、ハイサイドスイッチ62Hとローサイドスイッチ62Lとが直列に接続され、ハイサイドスイッチ62Hとローサイドスイッチ62Lとの間の接続点に出力端子63Rが設けられている。R相変換部61Rのハイサイドスイッチ22H側が正側入力端子Pに接続され、R相変換部61Rのローサイドスイッチ62L側が負側入力端子Nに接続されている。出力端子63Rは、リアクトル17Rを介してR相端子LPRに接続されている。
S相変換部61Sは、同様に、ハイサイドスイッチ62Hとローサイドスイッチ62Lと、出力端子63Sとを備えている。S相変換部61Sでは、ハイサイドスイッチ62Hとローサイドスイッチ62Lとが直列に接続され、ハイサイドスイッチ62Hとローサイドスイッチ62Lとの間の接続点に出力端子63Sが設けられている。S相変換部61Sのハイサイドスイッチ62H側が正側入力端子Pに接続され、S相変換部61Sのローサイドスイッチ62L側が負側入力端子Nに接続されている。出力端子63Sは、リアクトル17Sを介してS相端子LPSに接続されている。
T相変換部61Tは、同様に、ハイサイドスイッチ62Hとローサイドスイッチ62Lと、出力端子63Tとを備えている。T相変換部61Tでは、ハイサイドスイッチ62Hとローサイドスイッチ62Lとが直列に接続され、ハイサイドスイッチ62Hとローサイドスイッチ62Lとの間の接続点に出力端子63Tが設けられている。T相変換部61Tのハイサイドスイッチ62H側が正側入力端子Pに接続され、T相変換部61Tのローサイドスイッチ62L側が負側入力端子Nに接続されている。出力端子63Tは、リアクトル17Tを介してT相端子LPTに接続されている。そして、変換器51は、R相変換部61R、S相変換部61S、T相変換部61T及びコンデンサ60が並列に接続されており、三相フルブリッジ回路構成をしている。
そのため、変換器51は、R相変換部61Rのハイサイドスイッチ62Hがオンでローサイドスイッチ62Lがオフであるとき、R相端子LPRに、正のコンデンサ電圧+V1を出力できる。変換器51は、R相変換部61Rのハイサイドスイッチ62Hがオフでローサイドスイッチ62Lがオンであるとき、R相端子LPRに、負のコンデンサ電圧-V1を出力できる。このように、変換器51は、R相変換部61Rのハイサイドスイッチ62H及びローサイドスイッチ62Lのオンとオフを切り替えることで、コンデンサ60の直流電圧を交流電圧に変換し、電力系統70のR相に交流電圧を出力できる。
同様に、変換器51は、S相変換部61Sのハイサイドスイッチ62H及びローサイドスイッチ62Lのオンとオフを切り替えることで、コンデンサ60の直流電圧を交流電圧に変換し、電力系統70のS相に交流電圧を出力でき、T相変換部61Tのハイサイドスイッチ62H及びローサイドスイッチ62Lのオンとオフを切り替えることで、コンデンサ60の直流電圧を交流電圧に変換し、電力系統70のT相に交流電圧を出力できる。このように、変換器51は、電力系統70の各相に交流電圧を出力し、三相交流電圧を出力できる。なお、変換器51の構成は、入力された電力を三相の交流電圧に変換して電力系統に出力できれば特に限定されず、所定の3レベルの電圧を出力できる3レベル変換器、特に、いわゆるNPC3レベル変換器であってもよい。
ハイサイドスイッチ62H及びローサイドスイッチ62Lは、ハイサイドスイッチ22Hの構成と同様であるので、説明を省略する。
制御部52は、出力電圧指令生成部55と、ゲートパルス生成部56とを備えている。
出力電圧指令生成部55は、変換器51が電力系統70の各相(R相、S相、T相)に出力すべき交流電圧を算出する。出力電圧指令生成部55は、R相、S相及びT相の交流電圧をそれぞれ算出する点で出力電圧指令生成部15と異なるが、交流電圧の算出方法は出力電圧指令生成部15と同様である。交流電圧の算出は、従来の公知の方法を用いることができ、例えば、検出した各相の系統電圧としての連系点電圧Vと、各相の連系点電圧Vから算出した各相の系統電圧の位相などに基づいて算出する。系統電圧の位相検出は、PLL(Phase Locked Loop)やDFT(Discrete Fourier transform)を用いた位相検出処理など、公知の方法で行うことができる。制御部52は、上記の制御部12に適用した交流電圧の制御方法を、三相交流の各相へ出力する交流電圧の制御に適用することもでき、他の制御方法を用いることもできる。
出力電圧指令生成部55は、変換器51の各相が出力する電流の指令値であるR相、S相及びT相の出力電流指令値を算出し、出力電流指令値をベクトル制御するなどして各相の電圧指令値を算出し、算出した各相の電圧指令値を規格化し、変換器51から電力系統70のR相、S相及びT相に交流電圧を出力するための制御信号である、PWM用のR相出力電圧指令値VrefR、S相出力電圧指令値VrefS、T相出力電圧指令値VrefTを生成し、ゲートパルス生成部56に送出する。ゲートパルス生成部56は、R相出力電圧指令値VrefRに応じてR相変換部61Rのハイサイドスイッチ62H及びローサイドスイッチ62Lをオン・オフ制御するためのゲートパルスをスイッチ毎に生成する。同様に、ゲートパルス生成部56は、S相出力電圧指令値VrefSに応じてS相変換部61Sのハイサイドスイッチ62H及びローサイドスイッチ62Lのゲートパルスを生成し、T相出力電圧指令値VrefTに応じてT相変換部61Tのハイサイドスイッチ62H及びローサイドスイッチ62Lのゲートパルスを生成する。各ゲートパルスは、R相出力電圧指令値VrefR、S相出力電圧指令値VrefS、T相出力電圧指令値VrefTを変調波として、公知のパルス幅変調により生成される。
ゲートパルス生成部56は、R相変換部61R、S相変換部61S、T相変換部61Tのハイサイドスイッチ62H及びローサイドスイッチ62Lに図示しない配線で接続されており、生成したゲートパルスを各ハイサイドスイッチ62H及びローサイドスイッチ62Lに出力する。変換器51は、ゲートパルスによりハイサイドスイッチ62H及びローサイドスイッチ62Lのオンの時間を制御し、コンデンサ60のコンデンサ電圧を、各相の出力電圧指令値(R相出力電圧指令値VrefR、S相出力電圧指令値VrefS、T相出力電圧指令値VrefT)に応じた交流電圧に変換する。このように、制御部52は、変換器51を制御する。
(2-3)本発明の第2実施形態の電力検出装置の全体構成
図2に示すように、電力検出装置41は、有効電力及び無効電力を検出する検出処理部42と、電力系統70の電圧として連系点(R相端子LPR、S相端子LPS、T相端子LPT)の相電圧を検出する電源電圧検出器45と、電力変換装置50と電力系統70との間を流れる電流を検出する電流検出器46と、検出した有効電力と無効電力の値を表示する表示部7とを備えている。
なお、本実施形態では、電力検出装置41は、電力系統70のR相、S相、T相に電力変換装置50が出力する有効電力及び無効電力を相毎に個別に検出する。電力検出装置41が検出するR相の有効電力Pwrは、電力系統70のR相の連系点の相電圧をVr、電力変換装置50と電力系統70のR相間を流れる電流をIr、VrとIrの位相差をθrとすると、Pwr=|Vr||Ir|cosθr(|Vr|及び|Ir|は連系点の相電圧及び連系電流の実効値を表す。)で表される一般的な有効電力である。また、電力検出装置41が検出するR相の無効電力Qwrは、Qwr=|Vr||Ir|sinθrで表される一般的な無効電力である。S相及びT相についても同様であり、電力検出装置41が検出する有効電力及び無効電力は各相の一般的な有効電力及び無効電力である。後述するように、電力検出装置41は、各相の有効電力及び無効電力を、直流量として検出する。
電源電圧検出器45は、電圧センサ45R、45S、45Tを備えており、電圧センサ45RがR相端子LPRに配置され、電圧センサ45Sが連系点のS相端子LPSに配置され、電圧センサ45TがT相端子LPTに配置されている。電源電圧検出器45は、電圧センサ45R、45S、45Tが、電力系統70の電圧として、連系点としてのR相端子LPR、S相端子LPS、T相端子LPTの相電圧である連系点電圧V(以下、R相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs、T相連系点電圧Vtともいう。)を検出する。R相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs、T相連系点電圧Vtは、交流中性点を基準とした相電圧である。零相電圧としての高調波電圧が重畳するが、変換器51の負側入力端子Nと正側入力端子Pの平均電位を基準とした相電圧で連系点(R相端子LPR、S相端子LPS、T相端子LPT)の電位を代用することも可能である。電源電圧検出器5は、検出処理部42の一時データ保持部43及び演算部44と、制御部52の出力電圧指令生成部55とに配線を介して接続されており、検出したR相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs、T相連系点電圧Vtをこれらの接続先に送出する。
電流検出器46は、電流センサ46R、46S、46Tを備えており、電流センサ46RがR相端子LPRとリアクトル17Rの間に配置され、電流センサ46SがS相端子LPSとリアクトル17Sの間に配置され、電流センサ46TがT相端子LPTとリアクトル17Tの間に配置されている。電流検出器46は、電流センサ46R、46S、46Tが、電力変換装置50と電力系統70との間を流れる電流である連系電流I(リアクトル17R、17S、17Tを流れる電流。以下、それぞれ、R相連系電流Ir、S相連系電流Is、T相連系電流Itともいう。)を検出する。電流検出器46は、電力系統70からリアクトル17R、17S、17Tを介して電力変換装置50に流れる方向のR相連系電流Ir、S相連系電流Is、T相連系電流Itを、正の電流として検出する。電流検出器46は、検出処理部42の一時データ保持部43及び演算部44に配線を介して接続されており、検出したR相連系電流Ir、S相連系電流Is、T相連系電流Itをこれらの接続先に送出する。
一時データ保持部43は、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ及びハードディスクドライブなどの公知のメモリを備えており、R相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs及びT相連系点電圧Vtと、R相連系電流Ir、S相連系電流Is及びT相連系電流Itとを受け取ると、R相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs及びT相連系点電圧Vtの値と、R相連系電流Ir、S相連系電流Is及びT相連系電流Itの値とをメモリに格納する。その後、一時データ保持部43は、メモリに格納したこれらの値を、例えば、R相連系点電圧Vr(Vs、Vt、Ir、Is、Itであってもよく、各相の連系点電圧を用いてもよい)の1/4周期後に、過去値としてのR相過去電圧、S相過去電圧及びT相過去電圧と、R相過去電流、S相過去電流及びT相過去電流とを出力する。一時データ保持部43の動作は、R相、S相、T相の各相で同じであるので、ここでは、R相を代表して説明する。一時データ保持部43は、R相連系点電圧Vr及びR相連系電流Irを受け取ると、R相連系点電圧VrとR相連系電流Irを、R相連系点電圧Vrの1/4周期に相当する期間メモリに格納し、メモリに格納したR相連系点電圧Vrを1/4周期後に、R相過去電圧として出力し、メモリに格納したR相連系電流Irを、R相連系電流Irの1/4周期後に、R相過去電流として出力する。すなわち、一時データ保持部43は、検出したR相連系点電圧Vrの1/4周期前のR相過去電圧と、検出したR相連系電流Irの1/4周期前のR相過去電流とを出力する。一時データ保持部43の他の構成については、一時データ保持部3と同様であるので、説明を省略する。また、一時データ保持部43は、一時データ保持部3と同様に遅延回路であってもよい。
演算部44は、電源電圧検出器45が検出したR相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs及びT相連系点電圧Vtと、電流検出器46が検出したR相連系電流Ir、S相連系電流Is及びT相連系電流Itと、検出したR相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs及びT相連系点電圧Vtのそれぞれ1/4周期前のR相過去電圧、S相過去電圧及びT相過去電圧と、検出したR相連系電流Ir、S相連系電流Is及びT相連系電流Itの1/4周期前のR相過去電流、S相過去電流及びT相過去電流とを受け取る。
演算部44は、受け取ったこれらの値に基づいて、相毎に有効電力と無効電力を演算する。例えば、演算部44は、R相連系点電圧Vrの現在値と、R相連系電流Irの現在値と、R相過去電圧と、R相過去電流とに基づいて、R相の有効電力又はR相の無効電力の少なくとも1つ以上を直流量として算出する。R相の有効電力及びR相の無効電力の算出方法は、演算部4と同様であるので、説明は省略する。同様に、演算部44は、S相連系点電圧Vsの現在値と、S相連系電流Isの現在値と、S相過去電圧と、S相過去電流とに基づいて、S相の有効電力又はS相の無効電力の少なくとも1つ以上を直流量として算出し、T相連系点電圧Vtの現在値と、T相連系電流Itの現在値と、T相過去電圧と、T相過去電流とに基づいて、T相の有効電力又はT相の無効電力の少なくとも1つ以上を直流量として算出する。なお、演算部44は、すべての相の有効電力又は無効電力の少なくとも1つ以上を算出してもよく、いずれか1つの相又はいずれか2つの相の有効電力又は無効電力の少なくとも1つ以上を算出してもよい。
なお、電力検出装置41は、各相の連系点電圧、連系電流の現在値、過去電圧及び過去電流を用いて各相の無効電力を算出できるので、電圧やインピーダンスが不平衡であっても無効電力Qwを相毎に算出できる。
このように、電力検出装置41は、各相の連系点電圧及び連系電流と各相の過去電圧及び過去電流とから簡単な四則演算で、電力変換装置50が出力した各相の有効電力又は無効電力の少なくとも1つ以上を相毎に直流量として算出することができるので、電力変換装置50の出力を1周期分積分したり、系統電圧の位相を検出したりする必要がなく、電力変換装置50が出力する各相の有効電力又は無効電力の少なくとも1つ以上を1周期分の期間待つことなく、相毎に直流量として検出できる。演算部44は、算出した有効電力及び無効電力を、演算部44に接続された例えば液晶モニターなどの表示部7に表示させ、作業者に電力変換装置50が出力している各相の有効電力及び無効電力を確認させる。また、本実施形態の場合、演算部44は、電力変換装置50の制御部52の出力電圧指令生成部55にも接続されており、出力電圧指令生成部55に算出した有効電力及び無効電力を送出して、フィードバック制御に活用できる。
制御部52は、検出した各相の有効電力及び無効電力を用いて、電力変換装置50が各相に出力する有効電力及び無効電力を相毎にフィードバック制御することができる。以下では、R相を例にして説明するが、S相、T相も同様である。例えば、制御部52が、出力電圧指令生成部55に、有効電力指令値及び無効電力指令値に基づいて出力電圧指令値を生成させて電力変換装置50を制御しているとする。この場合、制御部52は、電力検出装置41が検出したR相の有効電力及び無効電力をR相の有効電力指令値及び無効電力指令値にフィードバックし、電力変換装置50がR相に出力する有効電力及び無効電力をフィードバック制御できる。具体的には、出力電圧指令生成部55が、R相の有効電力指令値とR相の有効電力の検出値との偏差及びR相の無効電力指令値とR相の無効電力の検出値との偏差に基づいてR相の出力電圧指令値を生成するようにする。このようにすることで、これらの偏差がそれぞれ小さくなるように電力変換装置50の出力を制御することができる。なお、有効電力のみフィードバック制御してもよく、無効電力のみフィードバック制御をしてもよい。
また、電力検出装置41が検出した有効電力及び無効電力が直流量であるため、検出した有効電力及び無効電力を積分制御に用い、目標値(各相の有効電力指令値及び無効電力指令値)と実際の出力値(検出した各相の有効電力及び無効電力)の偏差を小さくすることができる。例えば、上記の有効電力及び無効電力のフィードバック制御に対して積分制御を加えることができる。具体的には、出力電圧指令生成部55が、R相の有効電力指令値とR相の有効電力の検出値との偏差を積分した値と、R相の無効電力指令値とR相の無効電力の検出値との偏差を積分した値とに基づいてR相の出力電圧指令値を生成するようにする。このようにすることで、R相の有効電力指令値と実際のR相への有効電力の出力値(有効電力の検出値)の偏差及びR相の無効電力指令値と実際のR相への無効電力の出力値(無効電力の検出値)の偏差を小さくすることができる。なお、R相の有効電力指令値及び無効電力指令値は、制御部52が生成してもよく、発電システム101が接続された電力系統70の指令所など、電力システムの上位の存在から受け取ってもよい。
(2-4)本発明の第2実施形態の電力検出装置が検出した有効電力及び無効電力を用いた系統電圧の変動抑制方法
上述のように電力検出装置41は、電力変換装置50が各相に出力する有効電力及び無効電力を相毎に検出できる。そのため、発電システム101は、相毎に補償無効電力Qrを算出し、算出した各相の補償無効電力Qrを各相に出力するように制御部52が電力変換装置50を制御することで、電力系統70の各相の系統電圧(連系点電圧V)の変動を個別に補償することができる。また、電力変換装置50は、電力系統70のインピーダンスが相毎に異なるときや、各相に接続されている負荷が異なっているときであっても、電力検出装置41によって相毎に無効電力を検出できるので、制御部52が相毎に異なる無効電力を出力するように制御でき、出力する交流電圧をより正確に制御できる。
各相が出力すべき補償無効電力Qrの算出方法は、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
(2-5)第2の実施形態の作用及び効果
以上の構成において、電力検出装置41は、三相交流の電力系統70のR相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs及びT相連系点電圧Vt(電圧)及び電力変換装置50と電力系統70との間を流れるR相連系電流Ir、S相連系電流Is及びT相連系電流It(電流)と、検出したR相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs及びT相連系点電圧Vtの1/4周期前のR相過去電圧、S相過去電圧及びT相過去電圧(過去値)と、検出したR相連系電流Ir、S相連系電流Is及びT相連系電流Itの1/4周期前のR相過去電流、S相過去電流及びT相過去電流(過去値)とに基づいて、有効電力又は無効電力の少なくとも1つ以上を相毎に算出する演算部44を備え、電力系統70に接続された電力変換装置50が出力する有効電力又は無効電力の少なくとも1つ以上を検出するように構成した。
よって、電力検出装置41は、R相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs及びT相連系点電圧Vtと、R相連系電流Ir、S相連系電流Is及びT相連系電流Itと、R相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs及びT相連系点電圧VtとR相連系電流Ir、S相連系電流Is及びT相連系電流Itとの1/4周期前の過去値(R相過去電圧、S相過去電圧及びT相過去電圧並びにR相過去電流、S相過去電流及びT相過去電流と)を用いて、電力変換装置50が出力する三相交流の各相の有効電力又は無効電力の少なくとも1つ以上を直流量として算出するので、1周期分の期間を待つことなく、有効電力又は無効電力の少なくとも1つ以上を直流量として相毎に検出できる。
また、電力変換装置50は、電力検出装置41と、三相交流の電力系統70に交流電圧を出力する変換器51と、変換器51を制御する制御部52を備えるようにすることで、電力変換装置50が出力する三相交流の各相の有効電力及び無効電力を1周期分の期間を待つことなく検出できる。さらに電力変換装置50は、検出した有効電力及び無効電力を用いて、出力する有効電力を積分制御することで、有効電力指令値と実際の有効電力の出力値(有効電力の検出値)の偏差を小さくすることができ、出力する無効電力を制御することで無効電力指令値と実際の無効電力の出力値(無効電力の検出値)の偏差を小さくすることができる。なお、相間の電力のやりとりは含まない。
(3)変形例
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
(変形例1)
例えば、第1実施形態では、式(1)を用いて、演算部4が、連系点電圧Vの現在値Vpと連系電流Iの現在値Ipとの積と、一時データ保持部3から受け取った過去電圧Vbと過去電流Ibとの積とを加算することで、有効電力Pwを算出した場合について説明したが本発明はこれに限られない。図3に示す電力検出装置1aにより、演算部4aが、瞬時電力の現在値MPp(現在瞬時電力ともいう)と瞬時電力の過去値MPb(過去瞬時電力ともいう)を用いて、下記に示す式(5)により有効電力Pwを直流量として算出することもできる。
有効電力Pw=(MPp+MPb)/2・・・(5)
ここで、現在瞬時電力MPpは、連系点電圧Vの現在値Vpと、連系電流Iの現在値Ipとを乗算して算出され、MPp=(Vp×Ip)である。一方、過去瞬時電力MPbは、現在瞬時電力MPpの連系点電圧Vの1/4周期前の瞬時電力である。すなわち、過去瞬時電力MPbは、連系点電圧Vの1/4周期前に、連系点電圧Vの検出値と連系電流Iの検出値の乗算により算出された瞬時電力である。
発電システム100aの電力検出装置1aは、検出処理部2aが瞬時電力算出部18を備えている点で第1実施形態と異なり、過去瞬時電力を用いるので、一時データ保持部3a及び演算部4aの構成が第1実施形態と異なる。
瞬時電力算出部18は、電源電圧検出器5及び電流検出器6と接続されており、電源電圧検出器5から連系点電圧Vの検出値を受け取り、電流検出器6から連系電流Iの検出値を受け取る。瞬時電力算出部18は、連系点電圧Vの検出値と連系電流Iの検出値を乗算して、瞬時電力を算出できる。瞬時電力算出部18は、例えば、乗算器などによって構成できる。瞬時電力算出部18は、算出した瞬時電力を一時データ保持部3a及び演算部4aに送出する。なお、本実施形態では演算部4aが受け取った瞬時電力を現在瞬時電力としている。
一時データ保持部3aは、瞬時電力算出部18から瞬時電力を受け取ると、連系点電圧Vや連系電流Iと同様に、瞬時電力の値を、メモリに連系点電圧の1/4周期に相当する時間格納し、連系点電圧Vの1/4周期後に、瞬時電力の過去値として過去瞬時電力を出力する。一時データ保持部3aは、過去電圧と過去電流と共に、連系点電圧Vの1/4周期前の瞬時電力の過去値も演算部4aに送出する。
演算部4aは、瞬時電力算出部18から瞬時電力を受け取り、一時データ保持部3aから過去瞬時電力を受け取ると、受け取った瞬時電力を現在瞬時電力とし、現在瞬時電力と過去瞬時電力とを加算し、2で除算することで、有効電力Pwを算出する。
なお、電力検出装置が有効電力Pwのみを検出する場合、第1実施形態の方式は、電流値と電圧値のそれぞれを一時データ保持部3のメモリに保存する必要があったが、変形例1の方式は、瞬時電力値のみを一時データ保持部3aに保存すればよいので、一時データ保持部に必要なメモリの数を半減できるというメリットがある。他の構成は第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
(変形例2)
変形例1では、単相について述べたが、図4に示す発電システム101aのように、三相交流用の電力変換装置50が各相に出力する有効電力も、式(5)を用いて算出することもできる。電力検出装置41aでは、検出処理部42aが瞬時電力算出部38を備えており、一時データ保持部43a及び演算部44aの構成が第2実施形態と異なる。
瞬時電力算出部38は、電源電圧検出器45及び電流検出器46と接続されており、電源電圧検出器45から各相の連系点電圧Vの検出値を受け取り、電流検出器6から各相の連系電流Iの検出値を受け取る。瞬時電力算出部38は、連系点電圧Vの検出値と連系電流Iの検出値を相毎に乗算して、瞬時電力の値を相毎に算出する。瞬時電力算出部38は、例えば、3つの乗算器などによって構成できる。瞬時電力算出部38は、算出した各相の瞬時電力の値を一時データ保持部43a及び演算部44aに送出する。
一時データ保持部43aは、瞬時電力算出部38から各相の瞬時電力の値を受け取ると、各相の瞬時電力の値を、例えばR相連系点電圧Vrの1/4周期に相当する期間格納し、R相連系点電圧Vrの1/4周期後に、瞬時電力の過去値として過去瞬時電力を出力する。一時データ保持部43aは、各相の過去電圧と過去電流と共に、連系点電圧Vの1/4周期前の瞬時電力の過去値も演算部44aに送出する。
演算部44aは、瞬時電力算出部38から各相の瞬時電力の値を受け取り、一時データ保持部43aから各相の過去瞬時電力を受け取ると、受け取った各相の瞬時電力を現在瞬時電力とし、各相の現在瞬時電力と各相の過去瞬時電力とを相毎に加算し、2で除算することで、有効電力Pwを相毎に算出できる。他の構成は第2実施形態と同様であるので説明は省略する。なお、各相の有効電力をこのように算出してもよく、各相の内の1つ又は2つの相の有効電力のみをこの方法により算出してもよい。
(変形例3)
また、第1実施形態、第2実施形態、変形例1及び変形例2では、連系点電圧Vの1/4周期未来電圧Vfと、連系電流Iの1/4周期未来電流Ifと、連系点電圧Vの検出値と、連系電流Iの検出値とを用いて有効電力Pw及び無効電力Qwを直流量として算出することもできる。この場合、連系点電圧Vの1/4周期未来電圧Vf及び連系電流Iの1/4周期未来電流Ifは、連系点電圧Vの1/4周期未来を基準とすると、上記式(1)、(2)の現在値Vp及び現在値Ipに相当する。また、連系点電圧Vの検出値は、1/4周期未来電圧Vfより連系点電圧Vの1/4周期過去の過去値であるので、過去電圧Vbに相当し、連系電流Iの検出値は、1/4周期未来電流Ifより連系点電圧Vの1/4周期過去の過去値であるので、過去電流Ibに相当する。よって、連系点電圧Vの1/4周期未来電圧VfをVpとし、連系電流Iの1/4周期未来電流IfをIpとし、連系点電圧Vの検出値を過去電圧Vbとし、連系電流Iの検出値を過去電流Ibとすることで、上記式(1)、(2)により、有効電力Pw及び無効電力Qwを算出することができる。なお、算出した未来電圧Vf及び未来電流Ifを一時データ保持部3(43、3a、43a)に入力し、算出した未来電圧VfをVpとし、未来電流IfをIpとし、一時データ保持部3(43、3a、43a)の出力を過去電流Vb及びIbとして、有効電力Pw及び無効電力Qwを算出することもできる。また、未来電圧Vfと未来電流Ifとは、多少の誤差を含んでいても、理想値±10%程度の範囲内であれば、1/4周期未来(1/4周期後)の未来電圧Vf及び未来電流Ifとして有効に活用できる。後述する算出した過去電圧及び過去電流についても同様である。
ここで、連系点電圧Vの1/4周期未来電圧Vfと、連系電流Iの1/4周期未来電流Ifの算出方法について、図1に示す第1実施形態を例として説明する。連系インピーダンス(リアクトル17)に印加された連系インピーダンス電圧Vzは、連系点電圧Vの検出値より位相が1/4周期進んでいる。そして、1/4周期未来電流Ifは、1/4周期未来値である連系インピーダンス電圧Vzに比例するので、連系インピーダンス電圧Vzに(1/連系インピーダンスのインピーダンス値)を乗算することで算出できる。第1実施形態では連系インピーダンスがリアクトル17であるので、連系インピーダンス電圧Vzに(1/ωL)を乗算することで、1/4周期未来電流Ifを算出できる。ωは、連系点電圧の角周波数、Lはリアクトル17の値である。連系インピーダンス電圧Vzは、後述の連系インピーダンス電圧検出器8などにより、測定することができる。
1/4周期未来電圧Vfは、電力変換装置10の出力指令値に基づいて算出できる。具体的には、1/4周期未来電圧Vfは、変換器11の電圧指令値の1/4周期未来値と、変換器11の出力電流指令値及び連系インピーダンスの値の積との差分から算出する。
(変形例4)
上記の実施形態では、連系点電圧V及び連系電流の現在値と1/4周期前の過去値とを用いて有効電力及び無効電力を直流量として算出できることを利用して、有効電力及び無効電力を検出すること、検出した有効電力及び無効電力をフィードバック制御したり、積分制御に利用したりすることについて説明したが、本発明はこれに限られない。
例えば、直流量としての連系点電圧Vのピーク値及び連系電流Iのピーク値を、連系点電圧V及び連系電流の現在値と1/4周期前の過去値とを用いて算出できる。このことを利用して、連系点電圧Vのピーク値及び連系電流Iのピーク値を検出すること、検出した連系点電圧Vのピーク値及び連系電流Iのピーク値をフィードバック制御したり、積分制御に利用したりすることもできる。
この場合、連系点電圧Vのピーク値及び連系電流Iのピーク値は、下記の式(6)、式(7)により算出することができる。
連系点電圧Vのピーク値
Vpeak=((Vp2+(Vp2)b))0.5・・・(6)
連系電流Iのピーク値
Ipeak=((Ip2+(Ip2)b))0.5・・・(7)
ここで、Vp2は連系点電圧Vの現在値の2乗値、Ip2は連系電流Iの現在値の2乗値である。(Vp2)b及び(Ip2)bは、それぞれ、連系点電圧Vの現在値の2乗値Vp2及び連系電流Iの現在値の2乗値Ip2の過去値(連系点電圧Vの1/4周期前の値)である。すなわち、(Vp2)b及び(Ip2)bは、連系点電圧Vの1/4周期前に、連系点電圧Vの検出値と連系電流Iの検出値とからそれぞれ算出した2乗値である。
なお、連系点電圧V及び連系電流Iの実効値Vrms、Irmsは、算出した連系点電圧V及び連系電流Iのピーク値に20.5(2の平方根)を乗算することで、容易に算出できる。このように、連系点電圧Vのピーク値Vpeak及び実効値Vrmsと、連系電流Iのピーク値Ipeak及び実効値Irmsとを、四則演算とルート演算とにより算出し、位相検出や座標変換することなく、1周期の期間待つことなく算出できる。また、((Ip2+(Ip2)b))0.5が連系電流Iのピーク値Ipeakであるので、ルート演算する前の(Ip2+(Ip2)b)は、連系電流Iのピーク値Ipeakの2乗値であり、直流量である。そのため、連系電流Iのピーク値Ipeakの2乗値を用いて積分制御をすることも可能である。この場合、四則演算で直流量を算出するので、1周期の期間待つことなく直流量を算出できる。連系点電圧Vについても同様である。なお、連系点電圧V及び連系電流Iの現在値は、ピーク値を算出する制御部が受け取った連系点電圧V及び連系電流Iの検出値を、それぞれ、連系点電圧Vの現在値Vp及び連系電流Iの現在値Ipとする。
さらに、三相交流の場合は、各相の連系点電圧(R相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs、T相連系点電圧Vt)と連系電流(R相連系電流Ir、S相連系電流Is、T相連系電流It)とを用いて上記式(6)式(7)により、R相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs、T相連系点電圧Vtのピーク値及びR相連系電流Ir、S相連系電流Is、T相連系電流Itのピーク値を相毎に算出することができる。
(変形例5)
このように連系点電圧V及び連系電流Iのピーク値を用いて、出力電圧を制御する電力変換装置について説明する。以下では、連系電流Iのピーク値Ipeakを用い、単相の電力変換装置の出力電圧を制御する場合を例として説明する。また、下記では、第1実施形態の発電システム100の電力変換装置10の制御部12に適用した場合を例として説明するが、電力検出装置1を有さない発電システムの電力変換装置に適用することもできるし、三相交流用の発電システム101の電力変換装置50(第2実施形態)にも適用することができる。
図5に示すように、発電システム105では、制御部12aの出力電圧指令生成部15aが、電源電圧検出器5及び電流検出器6から、検出値をそれぞれ受け取れるようになっている。変形例5では、発電システム105が電力検出装置1を備えているので、出力電圧指令生成部15aは、電力検出装置1から、検出した有効電力及び無効電力を受け取れるようになっている。図1の発電システム100とは、制御部12aの出力電圧指令生成部15aの構成が異なる。
図6は図5の出力電圧指令生成部15aの詳細を示す。図6に示すように、出力電圧指令生成部15aは、出力電流指令生成部201と、交流電流制御部202と、出力電圧指令算出部203とを備えている。出力電流指令生成部201は、電力変換装置10が出力する電流(連系電流Iに等しい)の目標値である出力電流指令値を生成する。出力電流指令生成部201は、例えば、検出した連系点電圧Vに基づいて出力電流指令値を生成する。変形例5のように電力検出装置1を有している場合は、検出した有効電力及び無効電力に基づいて、出力電流指令値を生成してもよい。また、出力電流指令生成部201は、制御部12aが電力系統30の指令所から受け取った指令に基づいて、出力電流指令値を生成してもよい。出力電流指令生成部201は、生成した出力電流指令値を交流電流制御部202に送出する。
図7は図6の交流電流制御部202の詳細を示す。図7に示すように、交流電流制御部202は、ピーク値演算部300と、積分制御部302と、電流比例制御部303と、乗算器322とを備えている。ピーク値演算部300は、連系電流Iの検出値から連系電流Iのピーク値Ipeakを算出する連系電流ピーク値算出部301と、出力電流指令値から出力電流指令値のピーク値を抽出するピーク値抽出部323とを備えている。連系電流ピーク値算出部301は、2乗演算部310と、一時データ保持部311と、加算器312と、ルート演算部314とを備えている。
2乗演算部310は、連系電流Iの現在値Ipを受け取ると、受け取った連系電流Iの現在値Ipの2乗値Ip2を算出し、算出結果を一時データ保持部311と加算器312とに送出する。変形例5では、2乗演算部310は、電流検出器6(図5参照)からの信号線から分岐された2つの信号線が乗算器324に接続された構成をしている。乗算器324は、一の信号線から受け取った連系電流Iの検出値と、他の信号線から受け取った連系電流Iの検出値とを乗算し、検出値の2乗値、すなわち、現在値Ipの2乗値Ip2を算出する。
一時データ保持部311は、上述の一時データ保持部3と同様の機能を有し、現在値Ipの2乗値Ip2を受け取ると、現在値Ipの2乗値Ip2を例えば連系点電圧Vの1/4周期に相当する期間メモリに格納し、連系点電圧Vの1/4周期後に、2乗値Ip2の過去値(Ip2)bとして出力する。すなわち、一時データ保持部311は、現在値Ipの2乗値Ip2より、1/4周期前に算出した過去値(Ip2)bを出力する。一時データ保持部311は、過去値(Ip2)bを加算器312に送出する。加算器312は、現在値Ipの2乗値Ip2と、2乗値Ip2の1/4周期前の過去値(Ip2)bとを加算し、加算結果(Ip2+(Ip2)b)をルート演算部314に送出する。ルート演算部314は、加算結果(Ip2+(Ip2)b)を受け取ると、当該乗算結果の平方根を算出し、算出結果(Ip2+(Ip2)b)0.5を積分制御部302の減算器317に送出する。このように連系電流ピーク値算出部301は、四則演算とルート演算とにより、直流量である連系電流Iのピーク値Ipeakを算出する。
連系電流ピーク値算出部301は、連系電流Iの検出値から、直流量であるピーク値Ipeakを算出する。このように、連系電流ピーク値算出部301を備える電力変換装置10は、連系電流Iの1/4周期前の値を用いて連系電流Iのピーク値Ipeakを算出するので、1周期分の期間を待つこと直流量であるピーク値Ipeakを検出できる。変形例5では、一時データ保持部311でIp2を1/4周期遅らせることで、Ip2の過去値(Ip2)bを算出しているが、一時データ保持部311でIpを1/4周期遅らせ、1/4周期前の過去電流Ibを2乗演算することで、Ip2の過去値(Ip2)b=Ib2を算出するようにしてもよい。また、一時データ保持部311のかわりに、電力検出装置1の一時データ保持部3を用いるようにしてもよい。
ピーク値抽出部323は、交流量である出力電流指令値のピーク値を抽出する。検出値のピーク値ではなく、出力電流指令値のピーク値なので通常は既知の値であることが多い。制御部12aで出力電流指令値を生成している場合は、制御部12aから出力電流指令値のピーク値を抽出できる。出力電流指令値の瞬時値のみが上位制御(例えば、電力系統30の指令所)から送られてくる場合など、ピーク値が未知の場合は、電流検出値のピーク値Ipeakの演算方法と同様の手法で出力電流指令値のピーク値を演算する。ピーク値抽出部323は、出力電流指令値のピーク値を積分制御部302に送出する。このように、ピーク値演算部300は、連系電流Iのピーク値Ipeakを算出し、出力電流指令値のピーク値を抽出し、これらのピーク値を積分制御部302に送出する。
積分制御部302は、減算器317と、積分器318と、乗算器319と、定数出力部320と、加算器321とを備えている。減算器317は、連系電流Iのピーク値Ipeakと出力電流指令値のピーク値とを受け取ると、出力電流指令値のピーク値から連系電流Iのピーク値Ipeakを減算し、直流量である差分値を算出する。このように、出力電流指令値から算出されたピーク値から連系電流Iのピーク値Ipeakを減算することで、連系電流Iが出力電圧指令値にフィードバックされる。減算器317は、算出した差分値を積分器318に送出する。
積分器318は、減算器317から受け取った差分値を積分し、積分結果を乗算器319に送出する。乗算器319は、積分結果を受け取ると、積分結果を所定の積分ゲイン倍する。このように、積分制御部302は、差分値を、積分器318で積分し、乗算器319で所定倍して、積分制御する。乗算器319は、乗算結果を加算器321に送出する。加算器321は、乗算器319から乗算結果を受け取り、常に定数「1」を出力する定数出力部320から定数1を受け取ると、乗算結果に定数1を加算し、加算結果を積分制御による交流電圧指令補正値として乗算器322に送出する。また、積分制御部302は、積分器318を2つ以上直列にして2次以上の系とすることもできる。積分ゲインは、制御応答の時定数が、比例制御の制御応答の時定数や、1/4周期に相当する期間よりも十分長くなるように設定するのが好ましい。例えば、それらの5倍程度にすることが好ました。
ここで、加算器321で積分結果に1を加算する理由を説明する。変形例5では、積分制御による交流電圧指令補正値がゼロであっても、電流比例制御部303の比例制御の出力を交流電圧指令値として出力させるために、積分結果に1を加算している。
電流比例制御部303は、減算器315と、減算器315の出力を所定の比例ゲイン倍する乗算器316とを備え、比例ゲインによるフィードバック制御を行う。電流比例制御部303は、出力電流指令値から連系電流Iの検出値を減算することで、出力電流指令値に連系電流Iをフィードバックするフィードバック制御をし、減算結果を比例ゲイン倍することで比例制御を行う。電流比例制御部303は、乗算器316の出力を交流量である交流電圧指令値として、乗算器322へ送出する。
乗算器322は、電流比例制御部303による交流電圧指令値と、積分制御部302による交流電圧指令補正値を受け取ると、交流電圧指令値に、積分制御による交流電圧指令補正値を乗算し、交流電圧指令値を補正する。乗算器322は、補正された交流電圧指令値を出力電圧指令算出部203に送出する。このように、交流電流制御部202が、交流電流(連系電流I)のピーク値(Ipeak、直流量)を用いて積分制御することで、出力電流指令値と、電力変換装置10が出力する電流(電流検出値)の偏差を小さくできる。出力電圧指令算出部203は、補正された交流電圧指令値を受け取ると、補正された交流電圧指令値を正規化し、出力電圧指令値を生成する。出力電圧指令値は、出力電圧指令算出部203からゲートパルス生成部16に送出される。他の構成は、同様であるので、説明は省略する。なお、連系電流Iのピーク値Ipeakのかわりに、直流量として、連系電流Iの実効値Irmsやその2乗値を用いても同様に、積分制御により偏差を小さくすることができる。直流量として連系電流Iのピーク値Ipeakの2乗値を用いても同様である。
このように、制御部12aを有する電力変換装置10aは、電力変換装置10aと電力系統30との間を流れる連系電流Iと、連系電流Iの1/4周期前の過去値とを用いて連系電流Iのピーク値Ipeak(直流量)を算出するので、1周期分の期間を待つことなく連系電流Iのピーク値Ipeakを検出できる。さらに電力変換装置10は、直流量である連系電流Iのピーク値Ipeakを用いて積分制御することができ、指令値(出力電流指令値)と実際の電力変換装置の出力(出力電流)との偏差を小さくできる。
(変形例6)
変形例6では、変形例5の交流電流制御部202の乗算器322の出力(補正された交流電圧指令値、交流量である)に、交流量である連系点電圧Vをフィードフォワードして、連系点電圧をフィードフォワードされた交流電圧指令値を出力するようにしている。この場合、図8に示す変形例6の交流電流制御部202aのように、乗算器322に加算器330を接続し、加算器330の入力の一方に乗算器322の出力を入力し、加算器330の入力の他方に連系点電圧Vの検出値(図8中では、電圧検出値と表記)を入力する。加算器330は、乗算器322の出力と連系点電圧Vの検出値とを加算することで、連系点電圧Vを交流電圧指令値にフィードフォワードする。このように、交流電流制御部202aが、補正された交流電圧指令値に連系点電圧Vをフィードフォワードすることで、連系点電圧Vの変動などの外乱に対してロバスト性の高いシステムにすることができる。他の構成は、同様であるので、説明は省略する。
(変形例7)
変形例7では、変形例5の交流電流制御部202の乗算器322の出力(補正された交流電圧指令値)に、電力変換装置10が任意の電流を出力するのに必要とする連系インピーダンスの電圧を連系点電圧Vと共にフィードフォワードするようにしている。この場合、図9に示すように、変形例7の交流電流制御部202bは、フィードフォワード制御部340を備えている。フィードフォワード制御部340は、1/4周期未来電流指令抽出部341と、抵抗成分電圧算出部342と、リアクトル成分電圧算出部343と、加算器344と、加算器345とを備えている。フィードフォワード制御部340は、交流量である出力電流指令値が入力されると、1/4周期未来電流指令抽出部341と、抵抗成分電圧算出部342とに出力電流指令値を入力する。
1/4周期未来電流指令抽出部341は、入力された出力電流指令値の1/4周期未来の予定値(交流量)を抽出する。通常、指令値に関して未来値は既知であるので、それを抽出する。もし、電流指令値が上位制御などから供給されて、未来値が不明な場合は、例えば、(1)1/4周期遅れ値で代用して-1との積をとる、(2)出力電流指令値の積分値を用いる、(3)出力電流指令値の微分値で代用して-1との積をとる等の方法により、予定値を算出する。1/4周期未来電流指令抽出部341は、抽出した予定値を、リアクトル成分電圧算出部343に送出する。リアクトル成分電圧算出部343は、受け取った予定値にωLを乗算し、連系インピーダンスのリアクトル部の電圧を算出する。ここで、ωは、連系点電圧Vの角周波数であり、Lは、リアクトル部の値である。ωLリアクトル部では、電流が電圧より位相が90度(1/4周期)遅れているので、予定値とリアクトル部の電圧とが同位相である。リアクトル部の電圧は、リアクトルを流れる電流(予定値)に比例するので、ωLに、予定値を乗算することで、リアクトル部の電圧値を算出できる。変形例7の場合、変形例5の電力変換装置10aの連系インピーダンスがリアクトル17であるので、Lはリアクトル17の値である。リアクトル成分電圧算出部343は、算出した電圧値を加算器344に送出する。
抵抗成分電圧算出部342は、出力電流指令値を受け取ると、出力電流指令値にRを乗算して、連系インピーダンスの抵抗部の電圧を算出する。ここで、Rは、抵抗部の値である。変形例7の場合、連系インピーダンスがリアクトル17であるので、抵抗部の値は理想的にはゼロである。抵抗成分電圧算出部342は、算出した電圧値を加算器344に送出する。加算器344は、抵抗部の電圧値と、リアクトル部の電圧値とを受け取ると、抵抗部の電圧値と、リアクトル部の電圧値とを加算し、所定の電流を出力するのに必要な連系インピーダンスの電圧を算出する。加算器344は、算出した電圧値を加算器345に送出する。加算器345は、電源電圧検出器5と加算器330との間に配置されており、連系点電圧Vの検出値と、連系インピーダンスの電圧値(予想電圧値)とを加算し、加算器330に送出する。加算器330は、乗算器322の出力と、加算器345の出力とを加算して連系インピーダンスの電圧値と連系点電圧Vとを補正された交流電圧指令値にフィードフォワードする。このようにすることで、外乱が生じても必要な電流を出力しやすくなる。他の構成は、同様であるので、説明は省略する。
(変形例8)
上記の実施形態及び変形例1~7では、一時データ保持部3や一時データ保持部311で電流1/4周期を遅らせて、有効電力、無効電力及び連系電流Iのピーク値などの直流量を算出する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、連系インピーダンスの電圧検出値を用いることでも1/4周期遅れた電流の瞬時値を算出できる。この場合、例えば、図10に示す変形例8の発電システム106のように、制御部12bが、連系インピーダンス(リアクトル17)の電圧を測定する連系インピーダンス電圧検出器8を備え、制御部12bの出力電圧指令生成部15bが、電源電圧検出器5、電流検出器6及び連系インピーダンス電圧検出器8から、検出値をそれぞれ受け取れるようになっている。変形例8の場合、発電システム106が電力検出装置1を備えているので、出力電圧指令生成部15bは、電力検出装置1から、検出した有効電力及び無効電力を受け取れるようになっている。
ここで、変形例8では、連系インピーダンスがリアクトル17であるので、連系インピーダンスに印加される電圧(連系インピーダンス電圧)Vzは、連系電流Iより位相が90度進んでいる。そのため、-Vzは、Vzとは位相が180度ずれており、連系電流Iに対しては位相が90度遅れている。よって、連系電流Iより1/4周期遅れている過去電流Ibは、Ib=-Vz/ωL(ωは連系点電圧Vの角周波数、Lはリアクトル17の値)で算出できる。過去電流Ibは、連系インピーダンス電圧Vzを測定するで、容易に算出できる。
図11に示すように、出力電圧指令生成部15bは、出力電流指令生成部201と、交流電流制御部202cと、出力電圧指令算出部203とを備えている。出力電流指令生成部201及び出力電圧指令算出部203の構成は、出力電圧指令生成部15aと同じであるので、説明を省略する。
図12に示すように、交流電流制御部202cは、ピーク値演算部300aと、積分制御部302と、電流比例制御部303と、乗算器322とを備えている。積分制御部302と、電流比例制御部303と、乗算器322の構成は、交流電流制御部202と同じである。ピーク値演算部300aは、連系インピーダンスに印加された連系インピーダンス電圧Vzの検出値(交流量)から連系電流Iのピーク値Ipeak(直流量)を算出する連系電流ピーク値算出部301aと、出力電流指令値(交流量)から出力電流指令値のピーク値(直流量)を抽出するピーク値抽出部323とを備えている。連系電流ピーク値算出部301aは、過去電流算出部350と、2乗演算部351と、一時データ保持部311と、加算器312と、ルート演算部314とを備えている。
過去電流算出部350は、連系インピーダンスに印加された連系インピーダンス電圧Vzの検出値を受け取ると、受け取った連系インピーダンス電圧Vzの検出値に(1/-ωL)を乗算し、過去電流Ibを算出する。過去電流算出部350は、検出値を-ωLで除算してもよく、(1/-ωL)をあらかじめ計算しておき、計算結果を検出値に乗算するようにしてもよい。2乗演算部351は、過去電流Ibを受け取ると、受け取った過去電流Ibの2乗値Ib2を算出し、算出結果を一時データ保持部311と加算器312とに送出する。変形例8では、2乗演算部351は、過去電流算出部350からの信号線から分岐された2つの信号線が乗算器352に接続された構成をしている。乗算器324は、一の信号線から受け取った過去電流Ibの値と、他の信号線から受け取った過去電流Ibの値とを乗算し、検出値の2乗値Ib2を算出する。
一時データ保持部311は、上述の一時データ保持部3と同様の機能を有し、過去電流Ibの2乗値Ib2を受け取ると、過去電流Ibの2乗値Ib2を、メモリに連系点電圧Vの1/4周期の期間格納し、1/4周期後に、過去値(Ib2)bとして出力する。すなわち、一時データ保持部311は、2乗値Ib2の1/4周期前の過去値(Ib2)bを出力する。一時データ保持部311は、過去値(Ib2)bを加算器312に送出する。加算器312は、過去電流の2乗値Ib2と、2乗値Ib2の1/4周期前の過去値(Ib2)bとを加算し、加算結果(Ib2+(Ib2)b)をルート演算部314に送出する。ルート演算部314は、加算結果(Ib2+(Ib2)b)を受け取ると、当該乗算結果の平方根を算出し、算出結果(Ib2+(Ib2)b))0.5を積分制御部302の減算器317に送出する。このように、連系電流ピーク値算出部301aは、四則演算とルート演算により直流量としての連系電流Iのピーク値Ipeakを算出する。
変形例8では、算出した過去電流Ibを式(7)の現在値Ipとし、算出した過去電流Ibの1/4周期前の電流を式(7)の過去電流Ibとして、連系電流Iのピーク値Ipeakを算出している。ピーク値抽出部323の構成は、変形例5と同じである。よって、変形例8の交流電流制御部202cを有する電力変換装置10aは、1周期分の期間を待つことなく連系電流Iのピーク値Ipeakを検出できる。さらに、この電力変換装置は、直流量である連系電流Iのピーク値Ipeakを用いて積分制御することができ、指令値(出力電流指令値)と実際の電力変換装置の出力(出力電流)との偏差を小さくできる。なお、過去電流算出部350で算出した過去電流Ib(1/-ωL)の2乗値は、後述する1/4周期未来電流If(1/ωL)の2乗値と同値である。よって、この電力変換装置は、検出した連系電流Iの過去電流を用いて演算した電流ピーク値よりも、新しい電流ピーク値情報、将来見込み値をえることができる。2乗値Ib2の1/4周期前の過去値(Ib2)bは、過去電流Ibを一時データ保持部311で1/4周期の期間保持し、一時データ保持部311から出力された過去電流Ibを2乗することで算出するようにしてもよい。
(変形例9)
さらに、第1実施形態(図1参照)及び第2実施形態(図2参照)の電力検出装置1、41に、連系インピーダンスの電圧を測定する連系インピーダンス電圧検出器を設け、変形例8で示した手法により、連系インピーダンス電圧Vzから算出した過去電流Ibを用いて、上記の式(1)、(2)により、有効電力Pw及び無効電力Qwを算出するようにしてもよい。すなわち、第1実施形態及び第2実施形態で用いた過去電流Ibを、連系インピーダンス電圧Vzから算出した過去電流Ibで代用することができる。
(変形例10)
また、変形例10では、連系電流Iの現在値Ip(検出値)と、連系インピーダンス電圧Vzから算出した過去電流Ibとに基づいて、連系電流Iのピーク値Ipeakを算出している。この場合、図13に示すように、変形例10の交流電流制御部202dのピーク値演算部300bは、連系電流Iの検出値と、連系インピーダンス電圧Vzの検出値とから連系電流Iのピーク値Ipeakを算出する連系電流ピーク値算出部301bを備えている。連系電流ピーク値算出部301bは、2乗演算部310、351と、過去電流算出部350、加算器312と、ルート演算部314とを備えている。
2乗演算部310は、連系電流Iの検出値を受け取ると、受け取った連系電流Iの検出値を、連系電流Iの現在値Ipとして、現在値Ipの2乗値Ip2を算出し、算出結果を加算器312に送出する。過去電流算出部350は、連系インピーダンス電圧Vzの検出値を受け取ると、受け取った連系インピーダンス電圧Vzの検出値に(1/-ωL)を乗算し、過去電流Ibを算出する。2乗演算部351は、過去電流Ibを受け取ると、受け取った過去電流Ibの2乗値Ib2を算出し、算出結果を加算器312に送出する。
よって、連系電流ピーク値算出部301は、現在値Ipの2乗値Ip2と、過去電流Ibの2乗値Ib2とを加算器312で加算し、加算結果(Ip2+Ib2)をルート演算部314で算出することで、連系電流Iのピーク値Ipeakを算出できる。このように、連系電流ピーク値算出部301bは、四則演算とルート演算により直流量としての連系電流Iのピーク値Ipeakを算出する。連系電流ピーク値算出部301bを備える電力変換装置10は、連系電流Iの1/4周期前の値を用いて連系電流Iのピーク値Ipeakを算出するので、1周期分の期間を待つことなく直流量であるピーク値Ipeakを検出できる。他の構成は交流電流制御部202cと同じなので、説明を省略する。
このように、連系電流Iの現在値Ipと、連系インピーダンス電圧Vzから算出した過去電流Ibとに基づいて、連系電流Iのピーク値Ipeakを算出することで、一時データ保持部311を省略することができ、制御部12bの構成を簡略化できる。また、連系電流Iの現在値Ipやその2乗値をメモリに格納することが不要となるので、より制御を簡略化できる。なお、過去電流算出部350で算出した過去電流Ib(1/-ωL)の2乗値は、後述する1/4周期未来電流If(1/ωL)の2乗値と同値である。よって、変形例10の交流電流制御部202dを備える電力変換装置は、検出した連系電流Iの過去電流を用いて演算した電流ピーク値よりも、新しい電流ピーク値情報、将来見込み値をえることができる。
(変形例11)
また、上記の変形例5~8、10では、ルート演算部314を用いてルート演算を行ったが、上記の通り、ルート演算前の加算器312の出力が連系電流Iのピーク値Ipeakの2乗値であり、直流量であるので、ルート演算部314を除去しても同様に積分制御により偏差を小さくすることができる。この場合、連系電流ピーク値算出部301、301a、301bの他の構成要素より比較的に演算負荷が大きなルート演算がないので、処理速度を向上できる。
(変形例12)
また、上記の変形例5~8、10では、連系電流Iのピーク値Ipeakを用いて電力変換装置が出力する交流電圧を制御することを説明したが、ピーク値Ipeakのかわりに、連系電流Iの実効値Irms、連系点電圧Vのピーク値Vpeak並びにその2乗値及び連系点電圧Vの実効値Vrmsを制御に用いてもよい。
(変形例13)
変形例13では、変形例8の交流電流制御部202c(図12参照)を1/4周期未来電流を算出できるように変更し、1/4周期未来電流とその1/4周期前の過去値とから、連系電流Iのピーク値Ipeakを算出するようにしている。
変形例8の交流電流制御部202cは、過去電流算出部350で、連系インピーダンス電圧Vzの検出値に(1/-ωL)を乗算し、過去電流Ibを算出している。変形例3で説明したように、1/4周期未来電流Ifは、連系インピーダンス電圧Vzに(1/ωL)を乗算することで算出できる。よって、変形例8の交流電流制御部202cの過去電流算出部350の出力に-1を乗算するか、過去電流算出部350で連系インピーダンス電圧Vzに乗算する値を(1/ωL)に変えることで、交流電流制御部202cを1/4周期未来電流Ifを算出できるように容易に変更できる。
具体的に、変形例13の交流電流制御部(不図示)は、図12に示す交流電流制御部202cの過去電流算出部350を、連系インピーダンス電圧Vzに(1/ωL)を乗算する未来電流算出部(図12には不図示)に変えることで、1/4周期未来電流Ifを算出できるようしている。そして、変形例13の交流電流制御部は、算出した1/4周期未来電流If(及びその2乗値)を現在値Ip(及びその2乗値)とし、一時データ保持部311から出力された1/4周期未来電流Ifの1/4周期前の過去値を、現在値Ipから1/4周期前の過去電流Ib(及びその2乗値)として、連系電流Iのピーク値Ipeakを算出する。
このような変形例13の交流電流制御部を有する電力変換装置は、連系インピーダンス(リアクトル17)に印加された電圧(連系インピーダンス電圧Vz)に基づいて連系電流Iを算出し、連系電流Iの算出値(過去電流Ib又は1/4周期未来電流)の2乗値と、連系電流Iの算出値の1/4周期前の過去値(過去電流Ib又は1/4周期未来電流の1/4周期前の電流値)の2乗値とに基づいて、連系電流Iのピーク値Ipeakを算出する。よって、当該電力変換装置は、1周期分の期間を待つことなく連系電流Iのピーク値Ipeakを検出できる。さらに、この電力変換装置は、直流量である連系電流Iのピーク値Ipeakを用いて積分制御することができ、指令値(出力電流指令値)と実際の電力変換装置の出力(出力電流)との偏差を小さくできる。加えて、この電力変換装置は、検出した連系電流Iの過去電流を用いて演算した電流ピーク値よりも、新しい電流ピーク値情報、将来見込み値をえることができる。
(変形例14)
変形例14では、変形例10の交流電流制御部202d(図13参照)を1/4周期未来電流を算出できるように変更し、1/4周期未来電流とその1/4周期前の過去値とから、連系電流Iのピーク値Ipeakを算出するようにしている。
変形例10の交流電流制御部202d(図13参照)は、変形例13と同様に、変形例10の交流電流制御部202dの過去電流算出部350の出力に-1を乗算するか、過去電流算出部350で連系インピーダンス電圧Vzに乗算する値を(1/ωL)に変えることで、交流電流制御部202dを1/4周期未来電流Ifを算出できるように容易に変更できる。
具体的に、変形例14の交流電流制御部(不図示)は、図13に示す交流電流制御部202dの過去電流算出部350を、連系インピーダンス電圧Vzに(1/ωL)を乗算する未来電流算出部(図13には不図示)に変えることで、1/4周期未来電流Ifを算出できるようしている。そして、変形例14の交流電流制御部は、1/4周期未来電流If(及びその2乗値)を連系電流Iの現在値Ip(及びその2乗値)とし、連系電流Iの検出値を現在値Ip(1/4周期未来電流If)から1/4周期前の過去電流b(及びその2乗値)として、連系電流Iのピーク値Ipeakを算出する。
このような変形例14の交流電流制御部を有する電力変換装置は、連系インピーダンス(リアクトル17)に印加された電圧(連系インピーダンス電圧Vz)に基づいて連系電流Iを算出し、連系電流Iの算出値(1/4周期未来電流If)の2乗値と、連系電流Iの検出値の2乗値とに基づいて、連系電流Iのピーク値Ipeakを算出している。よって、当該電力変換装置は、1周期分の期間を待つことなく連系電流Iのピーク値Ipeakを検出できる。さらに、この電力変換装置は、直流量である連系電流Iのピーク値Ipeakを用いて積分制御することができ、指令値(出力電流指令値)と実際の電力変換装置の出力(出力電流)との偏差を小さくできる。加えて、この電力変換装置は、検出した連系電流Iの過去電流を用いて演算した電流ピーク値よりも、新しい電流ピーク値情報、将来見込み値をえることができる。
(変形例15)
また、上記の変形例5~8、10、13、14で説明した連系電流Iのピーク値Ipeakの2乗値を用いて電力変換装置が出力する交流電圧を制御する手法を、第2実施形態及び変形例2の三相交流用の電力変換装置50に適用することもできる。この場合、三相交流の相毎に、連系電流Iのピーク値Ipeakの2乗値を算出し、当該2乗値に基づいて、相毎に出力する交流電圧を制御する。
(変形例16)
上記の実施形態及び変形例では、リアクトル17を介して電力変換装置10の変換器11を電力系統30に接続した場合(例えば、図1参照)と、リアクトル17R、17S、17Tを介して電力変換装置50の変換器51を電力系統70に接続した場合(例えば、図2参照)とについて説明したが、本発明はこれに限られず、例えば、変圧器を介して変換器11(変換器51)を電力系統30(電力系統70)に接続するようにしてもよい。
(変形例17)
上記の第1実施形態、変形例5~8、10、13、14では、一時データ保持部3、311が1/4周期前の連系点電圧V又は連系電流Iの少なくとも1つ以上を過去電圧又は過去電流として出力する場合について説明したが、本発明はこれに限られない。一時データ保持部3、311が、例えば、5/4周期前や9/4周期前の連系点電圧V及び連系電流Iを過去電圧及び過去電流として出力してもよい。すなわち、一時データ保持部3、311は、(1/4+n)周期(nは0以上の正の整数)前の連系点電圧V及び連系電流Iを過去電圧及び過去電流として出力するようにしてもよい。なお、一時データ保持部3、311が出力する過去電圧及び過去電流は、遅延時間が大きくなると、系統電圧の変動などの状況が現時点と大きく変わってしまうため、1/4周期前の連系点電圧V及び連系電流Iであるのが望ましい。周期は、(1/4+n)周期(nは0以上の正の整数)と厳密に一致している必要はない。このことは、変形例1の一時データ保持部3a(が出力する過去瞬時電力)にも適用できる。
同様に、第2実施形態の一時データ保持部43(図2参照)が、(1/4+n)周期(nは0以上の正の整数)前のR相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs及びT相連系点電圧VtをR相過去電圧、S相過去電圧及びT相過去電圧として出力し、(1/4+n)周期(nは0以上の正の整数)前のR相連系電流Ir、S相連系電流Is及びT相連系電流Itを過去電流として出力するようにしてもよい。このことは、変形例2の一時データ保持部43a(が出力する過去瞬時電力)にも適用できる。
(変形例18)
また、上記の実施形態では、連系点電圧Vの検出遅れにより、演算部4(演算部44)での有効電力及び無効電力の算出に用いる連系点電圧V(R相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs及びT相連系点電圧Vt)と、実際の連系点電圧V(実際のR相連系点電圧Vr、S相連系点電圧Vs及びT相連系点電圧Vt)との間にフェーザのずれ(位相のずれ)が生じる場合がある。そのため、電力検出装置1(電力検出装置41)は、演算部4(演算部44)が上記の位相のずれも補償するようにしてもよい。このようにすることで、電力検出装置1(電力検出装置41)は、より現在値に近い有効電力及び無効電力を検出できる。但し、電力値の時間変化が小さいシステムでは、検出値と過去値の時間差が1/4に近い方がより正しい電力値を演算できる。このことは、変形例1の演算部4a、変形例2の演算部44aにも適用できる。さらに、変形例3、8、10、13、14での連系インピーダンス電圧Vzの検出にも適用できる。
同様に、上記の実施形態では、連系電流Iの検出遅れにより、演算部4(演算部44)での有効電力及び無効電力の算出に用いる連系電流I(R相連系電流Ir、S相連系電流Is及びT相連系電流It)と、実際の連系電流I(R相連系電流Ir、S相連系電流Is及びT相連系電流It)との間にフェーザのずれ(位相のずれ)が生じる場合がある。そのため、電力検出装置1(電力検出装置41)は、演算部4(演算部44)が上記の位相のずれも制御するようにしてもよい。このようにすることで、電力検出装置1(電力検出装置41)は、より安定して有効電力及び無効電力を検出できる。例えば、過去電流(R相過去電流、S相過去電流及びT相過去電流)の一時データ保持部3(一時データ保持部43)での遅れ時間を検出遅れ分だけ短くする方がこのましい。さらに、より正しい電力値(有効電力及び無効電力)を得るには、連系電流Iと連系点電圧Vの検出遅れ時間が同じである方が好ましい。この場合、検出遅れが短い方の現在値と過去値を、それぞれ検出遅れが長い方の遅れ時間とそろえるように、メモリに一定時間格納する方がより好ましい。このことは、すべての変形例の連系電流Iの検出遅れの補正にも適用できる。
(変形例19)
上記の実施形態では、発電システム100(発電システム101、101a)に電力検出装置1(電力検出装置41)を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、上記の発電システム100(発電システム101)の有効電力源13の代わりに供給側電力系統を接続し、供給側電力系統から電力系統30(電力系統70)(以下、需要側電力系統という。)へ電力を授受する電力授受システムに、電力検出装置1(電力検出装置41)を用いるようにしてもよい。電力授受システムでは、例えば、電力検出装置1(電力検出装置41)が、電力変換装置10(電力変換装置50)が出力する有効電力(R相、S相及びT相の有効電力)又は無効電力(R相、S相及びT相の無効電力)の少なくとも1つ以上を検出することで、供給側電力系統と需要側電力系統との間で授受する有効電力(R相、S相及びT相の有効電力)又は無効電力(R相、S相及びT相の無効電力)の少なくとも1つ以上を測定できる。
このとき、電力授受システムでは、発電システム100(発電システム101)と同様に、検出した有効電力(R相、S相及びT相の有効電力)又は無効電力(R相、S相及びT相の無効電力)の少なくとも1つ以上を用いて、需要側電力系統に生じた電圧変動を抑制するように、電力変換装置10(電力変換装置50)を制御するようにしてもよい。また、電力授受システムでは、検出した有効電力(無効電力)を用いて、例えば上述のフィードバック制御などにより、電力変換装置10(電力変換装置50)が授受する有効電力(R相、S相及びT相の有効電力)(無効電力(R相、S相及びT相の無効電力))を制御することもできる。同様に、電力授受システムは、有効電力と無効電力の両方をフィードバック制御することもできる。このことは、変形例1、2の電力検出装置についても同様である。
また、変形例5~8、10、13、14の交流電圧制御部を備える電力変換装置を、上述の電力授受システムに適用してもよい。
(変形例20)
上記の実施形態では、発電システム100(発電システム101)に電力検出装置1(電力検出装置41)を用いる場合について説明したが、本発明はこれに限られない。電力検出装置1(電力検出装置41)を、例えば、負荷システムに用いることもできる。負荷システムは、例えば、上記の発電システム100(発電システム101)の有効電力源13の代わりに、例えば、有効電力を消費する負荷や有効電力を出し入れする蓄電池などの電力貯蔵システムが接続される。負荷システムでは、電力検出装置1(電力検出装置41)が、電力変換装置10(電力変換装置50)が出力する有効電力(R相、S相及びT相の有効電力)又は無効電力(R相、S相及びT相の無効電力)の少なくとも1つ以上を検出することで、電力貯蔵システムと電力系統30(電力系統70)との間で授受する有効電力(R相、S相及びT相の有効電力)又は無効電力(R相、S相及びT相の無効電力)の少なくとも1つ以上を測定できる。
このとき、負荷システムでは、発電システム100(発電システム101)と同様に、検出した有効電力(R相、S相及びT相の有効電力)又は無効電力(R相、S相及びT相の無効電力)の少なくとも1つ以上を用いて、電力系統30(電力系統70)に生じた電圧変動を抑制するように、電力変換装置10(電力変換装置50)を制御するようにしてもよい。また、負荷システムでは、検出した有効電力(無効電力)を用いて、例えばフィードバック制御などにより、電力変換装置10(電力変換装置50)が授受する有効電力(R相、S相及びT相の有効電力)(無効電力(R相、S相及びT相の無効電力))を制御することもできる。同様に、負荷システムは、有効電力と無効電力の両方を制御することもできる。このことは、変形例1、2の電力検出装置についても同様である。
また、変形例5~8、10、13、14の交流電圧制御部を備える電力変換装置を、上述の負荷システムに適用してもよい。
(変形例21)
また、上記で説明した、電力検出装置1、41や電力変換装置10、10a、10b、50、発電システム100、100a、101、101a、105、106、電力授受システム、負荷システムなどが電線を介して接続され、発電した電力を、種々の需要家に供給する送配電システムを構築することもできる。
(変形例22)
上記の実施形態及び変形例では、ハイサイドスイッチ22H、62Hローサイドスイッチ22L、62Lを、IGBTなどでなるスイッチング素子と、還流ダイオードとで構成した場合について説明したが、本発明はこれに限られず、スイッチング素子として、例えば、GCT、SiCで形成されたMOS-FETやGaNで形成されたFET、MOS-FETなどを用いることができる。なお、双方向導通可能なFETやMOS-FETを用い、所謂同期整流をすれば、還流ダイオードを省略できる。
(変形例23)
上記実施形態及び変形例では、交流電圧源35(交流電圧源75)に電力系統30(電力系統70)を介して電力変換装置10、10a、10b、50を接続した場合を例として説明してきたが、本発明は、これに限られず、交流電圧源として、負荷に接続された発電機などの単相の交流電圧源や三相の交流電圧源を用いてもよい。
なお、上記のすべての実施形態及び変形例では、連系点電圧V又は連系電流I(検出値又は算出値)の少なくとも1つ以上と、当該連系点電圧V又は連系電流Iの(1/4+n)周期前(特に1/4周期前)の過去値の少なくとも1つ以上とを用いて直流量(有効電力Pw、無効電力Qw、連系点電圧のピーク値Vpeak、連系電流Iのピーク値Ipeak)を算出する場合について説明したが、本発明はこれに限られない。連系点電圧V又は連系電流Iの略(1/4+n)周期前の過去値の少なくとも1つ以上を用いて直流量を算出してもよい。すなわち、(1/4+n)周期から周期が多少ずれていてもよい。周期がずれた分だけ、算出した直流量に誤差を含むことになる。連系電流Iや連系点電圧Vの位相により誤差は異なるが、周期が約10%ずれても算出した直流量を有効活用できることが多い。そのため、連系点電圧V又は連系電流Iの(1/4+n)±10%周期前、すなわち、(0.225+n)周期~(0.275+n)周期前の過去値を用いても算出した直流量を有効活用できる。連系点電圧V又は連系電流Iの(1/4+n)周期前の過去値を用いるのがより好ましく、変形例17でも説明したが、連系点電圧V又は連系電流Iの1/4周期前の過去値を用いるのがさらに好ましい。
さらに、第1実施形態、第2実施形態、変形例1~3では、有効電力Pwや無効電力Qwの演算において、2で除する演算を含む場合について説明したが、本発明はこれに限られない。2で除算するのが最も好ましいが、2以外の値で除算してもよい。2以外の値で除算すると、除算に用いた値と2との差分に応じて有効電力Pw及び無効電力Qwの値に演算誤差が生じるのが、2±10%の範囲内の値で除算すれば、演算誤差が生じていても、算出した有効電力Pw及び無効電力Qwを有効活用できることが多い。したがって、2以外の値で除算する場合は、2±10%の範囲内の値、すなわち、1.8~2.2の範囲の値で除算しても有効活用できることが多い。なお、2で除算する場合と同様に、1.8~2.2の範囲の値で除算するということには、例えば、0.45~0.56の範囲の値を乗算するなど1.8~2.2の範囲の値で除算した場合と同様の結果となる種々の計算処理方法を含むものとする。
(4)検証実験
まず、検証実験として、図1に示す発電システム100を用いて回路シミュレーションし、有効電力及び無効電力を算出した。このとき、電圧・電流それぞれの実効値を1p.u.とした。すなわ、電圧・電流の振幅値は√2である。よって、電力系統30の電圧(連系点電圧)VはV=√2・sin(ωT)とし、連系電流Iは、I=√2・sin(ωT+θ)としている。すなわち、連系電流Iは、連系点電圧Vより位相がθ進んでいる。ここで、ωは、連系点電圧Vの角周波数であり、ω=2π×50としている。θは連系点電圧Vと連系電流Iの位相差である。本検証実験では、位相差θを変えて、有効電力及び無効電力を算出した。
図14Aは、位相差が0度のときの有効電力の算出結果を示し、図14Bは、位相差が60度のときの有効電力の算出結果を示し、図14Cは、位相差が90度のときの有効電力の算出結果を示し、図14Dは、位相差が150度のときの有効電力の算出結果を示し、図14Eは、位相差が180度のときの有効電力の算出結果を示している。各グラフは、横軸が時間[ms]で、縦軸が電力[p.u.]である。各図中の501は、Vp×Ipの算出結果であり、各図中の502は、Vb×Ibの算出結果であり、各図中の503は、Vp×Ip+Vb×Ibの算出結果である。有効電力は、503を1/2倍した値となる。
一時データ保持部3がVb及びIbの値を出力し始める0.005msまでは、502の値はゼロで、501と503が等しい値となる。図14Aに示すように、位相差が0度のときは、有効電力の値は、1p.u.である。ここで、|V|、|I|を電圧と電流の実効値とすると、式Pw=|V||I|cosθを用いて従来の方法で有効電力を計算すると、Pw=1×1×cos0°=1p.u.となり、第1実施形態で説明した方法で算出した有効電力と一致する。
図14Bに示すように、位相差が60度のときの有効電力は0.5p.u.である。同様に従来の方法で有効電力Pwを計算すると、Pw=1×1×cos60°=0.5p.u.となり、第1実施形態で説明した方法で算出した有効電力と一致する。
図14Cに示すように、位相差が90度のときの有効電力は0p.u.である。同様に従来の方法で有効電力Pwを計算すると、Pw=1×1×cos90°=0p.u.となり、第1実施形態で説明した方法で算出した有効電力と一致する。
図14Dに示すように、位相差が150度のときの有効電力は-0.5p.u.である。同様に従来の方法で有効電力Pwを計算すると、Pw=1×1×cos120°=-0.5p.u.となり、第1実施形態で説明した方法で算出した有効電力と一致する。
図14Eに示すように、位相差が180度のときの有効電力は-1p.u.である。同様に従来の方法で有効電力Pwを計算すると、Pw=1×1×cos180°=-1p.u.となり、第1実施形態で説明した方法で算出した有効電力と一致する。このように、本発明の方法により、有効電力を算出できることが確認できた。
図15Aは、位相差が-90度のときの無効電力の算出結果を示し、図15Bは、位相差が-30度のときの無効電力の算出結果を示し、図15Cは、位相差が0度のときの無効電力の算出結果を示し、図15Dは、位相差が30度のときの無効電力の算出結果を示し、図15Eは、位相差が90度のときの無効電力の算出結果を示している。各グラフは、横軸が時間[ms]で、縦軸が電力[p.u.]である。各図中の504は、Vp×Ibの算出結果であり、各図中の505は、Vb×Ipの算出結果であり、各図中の506は、Vp×Ib-Vb×Ipの算出結果である。無効電力は、506を1/2倍した値となる。
一時データ保持部3がVb及びIbの値を出力し始める0.005msまでは、504、505の値はゼロで、506が0となる。図15Aに示すように、位相差が0度のときは、無効電力の値は、-1p.u.である。ここで、式Qw=|V||I|sinθを用いて従来の方法で無効電力を計算すると、Qw=1×1×sin(-90°)=-1p.u.となり、第1実施形態で説明した方法で算出した無効電力と一致する。
図15Bに示すように、位相差が-30度のときの無効電力は-0.5p.u.である。同様に従来の方法で無効電力Qwを計算すると、Qw=1×1×sin(-30°)=-0.5p.u.となり、第1実施形態で説明した方法で算出した無効電力と一致する。
図15Cに示すように、位相差が0度のときの無効電力は0p.u.である。同様に従来の方法で無効電力Qwを計算すると、Qw=1×1×sin0°=0p.u.となり、第1実施形態で説明した方法で算出した無効電力と一致する。
図15Dに示すように、位相差が30度のときの無効電力は0.5p.u.である。同様に従来の方法で無効電力Qwを計算すると、Qw=1×1×sin30°=0.5p.u.となり、第1実施形態で説明した方法で算出した無効電力と一致する。
図15Eに示すように、位相差が90度のときの無効電力は1p.u.である。同様に従来の方法で無効電力Qwを計算すると、Qw=1×1×sin90°=1p.u.となり、第1実施形態で説明したで算出した無効電力と一致する。このように、本発明の方法により、無効電力を算出できることが確認できた。
次に、検証実験として、図5に示す発電システム105を用いて回路シミュレーションをし、交流電流制御部202による積分制御の効果を確認した。シミュレーションでは、所定の出力電流指令値を制御部12aに与え、電力変換装置10から出力される連系電流Iを検出し、出力電流指令値と連系電流Iの偏差を調べた。比較のために、発電システム105のシミュレーションモデルから、交流電流制御部202のピーク値演算部300及び積分制御部302を除去した系を用い、同様に出力電圧指令値と連系電流Iの偏差を調べた。シミュレーションでは、シミュレーション開始から0.1秒後に積分制御を開始し、シミュレーション開始から0.3秒後に、出力電流指令値の大きさを変えている。その結果を図16A、図16B及び図16Cに示す。
図16Aは、積分制御なしの系での出力電流指令値及び連系電流Iを示しており、図16Bは、積分制御ありの系での出力電流指令値及び連系電流Iを示しており、図16Cは、積分制御なしの系での連系電流Iと出力電流指令値との偏差と、積分制御ありの系での連系電流Iと出力電流指令値との偏差を示している。図16A、16B、16Cの横軸は時間[s]であり、縦軸は電流[mA]である。図16A、図16Bの511が連系電流Iで、512が出力電流指令値である。図16Cの514は、積分制御なしの系の偏差であり、515は、積分制御有りの系の偏差である。
図16Cを見ると、積分制御有りの系では、積分制御開始直後から、連系電流Iと出力電流指令値の偏差が小さくなっており、出力電圧指令値の大きさを変化させても、当該偏差が小さくなっていることが確認できる。よって、交流電流制御部202による積分制御によって、すなわち、直流量である連系電流Iのピーク値Ipeakを算出し、ピーク値Ipeakを用いて積分制御することで、連系電流Iと出力電流指令値の偏差を小さくできることが確認できた。