JP7176781B2 - 腐植酸含有発酵肥料 - Google Patents

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Description

本発明は、腐植酸含有発酵肥料に関する。より詳細には、腐植酸含有発酵肥料、腐植酸含有発酵肥料を製造する方法および発酵肥料における腐植酸の含有量を増加する方法に関する。
従来より、作物の活力を向上させる手段として有機・無機肥料等のいわゆる、普通肥料が使用されている。特に近年、園芸ブームにともない液状肥料なども多く活用されており、さらには、土壌の菌相に着目した植物の活力を向上させる製品としてEM菌などのバイオ製剤も上市されている。さらにまた、植物に寄生する菌がもたらす様々な病気に対しては、殺菌剤を中心とした農薬等が使用されている。また線虫などのような土壌有害微生物駆除のために土壌燻蒸などの方法も採用されている。
一方で、上記の他、土壌の改質により作物の活力を向上する手段として、土壌改良剤の開発が検討されている。中でも、土壌改良効果が期待される物質としては腐植酸が知られている。例えば、腐葉土などは、木、草、落ち葉および蓄糞などからなる有機物原料を長期間の菌による発酵を行うことにより腐植酸含有量が増加した特殊堆肥としても知られている。
腐葉土をはじめとする特殊堆肥は、土壌に必要な腐植酸を作り出す堆肥であり、手入れを十分に行えば効果が期待出来うるものであるが、発酵管理などに対しては熟練と発酵に供する十分な時間が必要である。したがって、効率化に伴い化学肥料などによる施肥主体の農耕が通常行われている。しかしながら、化学肥料による農耕は硫酸痕など好ましくない副作用をもたらすことがある。
このような技術状況の下、作物の生育に有益でありかつ安全な土壌改良剤または堆肥技術が従来検討されている。例えば、極強酸性の有機酸である木酢液または竹酢液に木材チップに漬け込み、得られたフルボ酸またはフミン酸と木材チップを爆砕処理して得られる土壌改良剤が報告されている(特許文献1)。また、硫酸第一鉄、硫酸マグネシウムを主成分として塩化第二鉄を添加することにより腐植酸を生成する方法が報告されている(特許文献2)。また、家畜排せつ物を主体とした動植物系資材について報告されている(非特許文献1)。
しかしながら、堆肥中の腐植酸を安定かつ効率的に増加させる技術的手段は何ら報告されていない。
特許第6322689号 特許公開2000-61427
金田ら、日本土壌肥料学会雑誌第82巻第6号556-566頁
本発明者らは、今般、鋭意検討した結果、風化炭を含有する有機物含有資材をコンポスト化すると、有機物含有資材中の腐植酸含有量と比較して、発酵肥料中の腐植酸含有量を安定かつ効率的に増加することを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
本発明は、発酵肥料中の腐植酸含有量を安定かつ効率的に増加させる新たな手段を提供することを一つの目的としている。
本発明の一実施態様によれば、風化炭を含有する有機物含有資材をコンポスト化することにより得られる、腐植酸含有発酵肥料が提供される。
本発明の別の実施態様によれば、風化炭を含有する有機物含有資材をコンポスト化する工程を含んでなる、腐植酸含有発酵肥料を製造する方法が提供される。
本発明のさらに別の実施態様によれば、風化炭を含有する有機物含有資材をコンポスト化する工程を含んでなる、発酵肥料における腐植酸の含有量を増加する方法が提供される。
本発明によれば、発酵肥料中の腐植酸含有量を安定かつ効率的に増加させることができる。
発明の具体的説明
本発明の一実施態様によれば、腐植酸含有発酵肥料は、風化炭を含有する有機物含有資材をコンポスト化することにより得られるものである。「風化炭」とは、風化または酸化した石炭類を「風化炭」という。有機物含有資材のコンポスト化処理中に風化炭が腐植酸の含有量を増加させることは当業者にとって意外な事実である。理論に拘束されるものでないが、後述の実施例に示される通り、風化炭を使用することにより、仕込み量と比較して発酵肥料中の腐植酸の総量が顕著に増加することから、風化炭はコンポスト化処理反応中に腐植酸を増加させる触媒としての機能を果たしていると考えられる。
本発明の一実施態様によれば、上記発酵肥料の原料となる有機物含有資材は、有機廃棄物を主原料として含有する。有機廃棄物は通常、生分解性有機物である。より具体的には、有機廃棄物は、好ましくは動植物由来の有機廃棄物(牛糞、豚糞、鶏糞、魚粕、菜種粕、汚泥等)であり、より好ましくは牛糞、豚糞、鶏糞、魚粕または菜種粕である。
有機物含有資材における有機廃棄物の含有量は、特に限定されないが、例えば、50~99.99質量%としてもよいが、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、より一層好ましくは90~99.9質量%である。
また、上記有機物含有資材における風化炭の含有量は、所望の腐植酸の含有量を勘案して当業者が適宜調整してよいが、通常0.01質量%以上であり、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.1~3質量%である。
風化炭の種類は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、本発明の一実施態様によれば、風化炭は、石炭原料を常圧100℃以下で空気酸化することにより得られるものである。より具体的には、風化炭は、野外で自然風化したものであってもよく、通常石炭原料を大気圧下で50℃以下、好ましくは-20~50℃、より一層好ましくは-10~50℃、さらに好ましくは0~50℃、さらに好ましくは0~30℃、さらに好ましくは常温(15~25℃)で空気酸化することにより得ることができる。空気酸化の期間は、通常野外で30日以上、好ましくは30~1800日、好ましくは180日~1000日、より好ましくは360~1000日である。
風化炭の原料は、例えば、亜炭、褐炭または石炭等が挙げられるが、好ましくは褐炭または石炭である。
本発明の一実施態様によれば、有機物含有資材における有機廃棄物と風化炭との質量比(有機廃棄物:風化炭)は、所望の腐植酸の含有量を勘案して当業者が適宜調整してよいが、例えば、1000:1~1000:10、好ましくは1000:1~1000:5である。
風化炭の有機物含有資材中への添加方法は特に制限がなく、例えば、牛・豚・鶏・魚等の動物の餌に混ぜて動物に摂食させることにより添加してもよいが、簡便性を考慮すれば、コンポスト化直前に有機物含有資材添加することが好ましい。
発酵肥料における腐植酸の含有量は、特に限定されないが、通常10質量%未満であり、好ましくは0.1~10質量%である。
本発明の一実施態様によれば、上記有機物含有資材のコンポスト化は、公知のコンポスト化処理方法、すなわち、有機物(特に有機廃棄物)を微生物の作用により処理する工程を適用してよい。コンポスト化は、好ましくは、適当な通風および攪拌条件下に有機物含有資材を或る期間貯留して、好気性発酵させることにより実施することができる。コンポスト化処理法としては、例えば、特開平3-80174号、特開平5-105564号等が開示されている。
コンポスト化処理される有機物含有資材における水分量は特に限定されないが、効率的なコンポスト化の観点からは水分を含有していることが好ましい。本発明の一実施態様によれば、コンポスト化処理される有機物含有資材における水分含有量は、通常30質量%以上であり、好ましくは30~80質量%以上であり、より好ましくは40~70質量%以上であり、より一層好ましくは40~60質量%以上である。水分量は、肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法)の記載に準じて加熱減量法により測定することができる。
本発明の一実施態様によれば、有機物含有資材におけるpHは、特に限定されないが、例えば、5~8であり、好ましくは5.5~7.5であり、より好ましくは6~7である。pHは、肥料分析法(農林水産省農業環境技術研究所法)の記載に準じてpH計(JIS Z8802)を用いて測定することができる。
有機物含有資材のコンポスト化処理期間は、有機物含有資材の種類等に応じて適宜設定してよいが、例えば、牛糞の場合30~360日、好ましくは60~180日である。
また、有機物含有資材のコンポスト処理温度は、処理時間を考慮して適宜設定してもよいが、好ましくは60℃以上、より好ましくは65~80℃程度である。
本発明の一実施態様によれば、発酵肥料における腐植酸の含有量は、有機物含有資材における腐植酸の含有量よりも増加している。発酵肥料における腐植酸の含有量は、有機物含有資材における腐植酸の含有量よりも、通常3質量%以上、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上高い。発酵肥料における腐植酸の含有量と有機物含有資材における腐植酸の含有量との差は、通常3~20質量%であり、好ましくは3~18質量%であり、より好ましくは5~18質量%であり、より一層好ましくは7~15質量%である。腐植酸の含有量は地力増進法土壌改良資材品質表示基準に準じて測定することができる。
発酵肥料における腐植酸の含有量は、通常9質量%以上であり、好ましくは10~30質量%であり、より好ましくは12~30質量%であり、より好ましくは14~25質量%であり、より一層好ましくは14~22質量%である。
本発明の一実施態様によれば、発酵肥料は、有機物含有資材の一部として風化炭を含有していることから、有機物含有資材と同様に風化炭を含有していてもよい。発酵肥料における風化炭の含有量は、通常0.01質量%以上であり、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.1~3質量%である。
本発明の一実施態様によれば、有機物含有資材と同様に、発酵肥料は水分を含んでいてもよい。発酵肥料における水分含有量は、通常30質量%以上であり、好ましくは30~80質量%以上であり、より好ましくは40~70質量%以上であり、より一層好ましくは40~60質量%以上である。
本発明の一実施態様によれば、発酵肥料は固形物または半固形物の形態であってもよい。また、発酵肥料は乾燥物の形態で提供されてもよく、本発明にはかかる態様も包含される。
また、本発明の別の態様によれば、風化炭を含有する有機物含有資材をコンポスト化する工程を含んでなる、腐植酸含有発酵肥料を製造する方法が提供される。
また、本発明のさらに別の態様によれば、風化炭を含有する有機物含有資材をコンポスト化する工程を含んでなる、発酵肥料における腐植酸の含有量を増加する方法が提供される。
また、本発明のさらに別の態様によれば、風化炭を含んでなる、発酵肥料における腐植酸含有量の増加剤が提供される。
なお、腐植酸含有発酵肥料を製造する方法、発酵肥料における腐植酸の含有量を増加する方法、および発酵肥料における腐植酸含有量の増加剤は、腐植酸含有発酵肥料の記載に準じて当業者は実施することができる。
また、本発明の一実施態様によれば、以下が提供される。
[1]風化炭を含有する有機物含有資材をコンポスト化することにより得られる、腐植酸含有発酵肥料。
[2]上記発酵肥料における腐植酸の含有量が9質量%以上である、[1]に記載の発酵肥料。
[3]上記発酵肥料における腐植酸の含有量が、上記有機物含有資材における腐植酸の含有量よりも3質量%以上高い、[1]または[2]に記載の発酵肥料。
[4]上記発酵肥料における風化炭の含有量が0.01質量%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の発酵肥料。
[5]上記有機物含有資材における風化炭の含有量が0.01質量%以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の発酵肥料。
[6]上記風化炭が、石炭原料を常圧100℃以下で空気酸化することにより得られるものである、[1]~[5]のいずれかに記載の発酵肥料。
[7]上記石炭原料が、亜炭、褐炭または石炭である、[1]~[6]のいずれかに記載の発酵肥料。
[8]
上記有機物含有資材が有機廃棄物を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の発酵肥料。
[9]上記有機廃棄物が、牛糞、豚糞、鶏糞、魚粕および菜種粕から選択される少なくとも一つのものである、[1]~[8]のいずれかに記載の発酵肥料。
[10]上記有機物含有資材における有機廃棄物の含有量が90質量%以上である、[1]~[9]のいずれかに記載の発酵肥料。
[11]上記発酵肥料における水分含有量が30質量%以上である、[1]~[10]のいずれかに記載の発酵肥料。
[12]上記有機物含有資材における水分含有量が30質量%以上である、[1]~[11]のいずれかに記載の発酵肥料。
[13]固形物または半固形物である、[1]~[12]のいずれかに記載の発酵肥料。
[14]風化炭を含有する有機物含有資材をコンポスト化する工程を含んでなる、腐植酸含有発酵肥料を製造する方法。
[15]風化炭を含有する有機物含有資材をコンポスト化する工程を含んでなる、発酵肥料における腐植酸の含有量を増加する方法。
以下、実施例により、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、なお、特に記載しない限り、本発明で用いられる全ての比率は質量による。また、特に記載しない限り、本明細書に記載の単位および測定方法は日本工業規格(JIS)による。
例1
牛糞1トンに対し風化炭粉砕物3kgを添加し、30日間発酵させることによりコンポスト化し、発酵肥料を得た。具体的には、縦型発酵槽で通気攪拌しながら1次発酵を行った後、堆積場で通気堆積する2次発酵を行った。なお、風化炭は、野外で50℃以下にて約30日以上空気酸化することにより得られたものを用いた。
例2
例1と同様の手順により、豚糞1トンに対し風化炭粉砕物3kgを添加し、30日間発酵させることによりコンポスト化し、発酵肥料を得た。
例3
例1と同様の手順により、菜種粕1トンに対し風化炭粉砕物3kgを添加し、30日間発酵させることによりコンポスト化し、発酵肥料を得た。
参考例
牛例1と同様の手順により、糞1トンに対し石炭粉砕物3kgを添加し、30日間発酵させることによりコンポスト化し、発酵肥料を得た。
各々の分析結果は下表のとおりであった。腐植酸の測定方法は地力増進法土壌改良資材品質表示基準に準じた。
Figure 0007176781000001

Claims (15)

  1. 有機廃棄物および風化炭を含有する有機物含有資材をコンポスト化する工程を含んでなる、腐植酸含有発酵肥料を製造する方法であって、
    前記発酵肥料における腐植酸の含有量は9質量%以上であり、
    前記有機物含有資材における有機廃棄物と風化炭との質量比(有機廃棄物:風化炭)は、1000:1~1000:10であり、
    前記コンポスト化の処理期間は30~360日であり、
    前記コンポスト化の処理温度は60℃以上である、方法。
  2. 有機廃棄物および風化炭を含有する有機物含有資材をコンポスト化する工程を含んでなる、発酵肥料における腐植酸の含有量を増加する方法あって、
    前記発酵肥料における腐植酸の含有量は9質量%以上であり、
    前記有機物含有資材における有機廃棄物と風化炭との質量比(有機廃棄物:風化炭)は、1000:1~1000:10であり、
    前記コンポスト化の処理期間は30~360日であり、
    前記コンポスト化の処理温度は60℃以上である、方法。
  3. 前記発酵肥料における腐植酸の含有量が、前記有機物含有資材における腐植酸の含有量よりも3質量%以上高い、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記発酵肥料における風化炭の含有量が0.01質量%以上である、請求項1または2
    に記載の方法。
  5. 前記有機物含有資材における風化炭の含有量が0.01質量%以上である、請求項1ま
    たは2に記載の方法。
  6. 前記風化炭が、石炭原料を常圧100℃以下で空気酸化することにより得られるものである、請求項1または2に記載の方法。
  7. 前記石炭原料が、亜炭、褐炭または石炭である、請求項1または2に記載の方法。
  8. 前記有機廃棄物が、牛糞、豚糞、鶏糞、魚粕および菜種粕から選択される少なくとも一つのものである、請求項1または2に記載の方法。
  9. 前記有機廃棄物が菜種粕である、請求項1または2に記載の方法。
  10. 前記有機物含有資材における有機廃棄物の含有量が90質量%以上である、請求項1ま
    たは2に記載の方法。
  11. 前記発酵肥料における水分含有量が30質量%以上である、請求項1または2に記載の
    方法。
  12. 前記有機物含有資材における水分含有量が30質量%以上である、請求項1または2に
    記載の方法。
  13. 前記発酵肥料が固形物または半固形物である、請求項1または2に記載の方法。
  14. 前記コンポスト化の処理期間が60~180日である、請求項1または2に記載の方法。
  15. 前記コンポスト化の処理温度が65~80℃である、請求項1または2に記載の方法。
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