JP7176219B2 - 金属粉末材料および金属粉末材料の製造方法 - Google Patents

金属粉末材料および金属粉末材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属粉末材料および金属粉末材料の製造方法に関し、さらに詳しくは、流動性に優れた金属粉末材料、およびそのような金属粉末材料の製造方法に関する。
金属粉末材料は、粉末冶金の原料をはじめ、種々の用途に用いられる。例えば、三次元造形物を製造する付加製造技術の一種である積層造形法の原料として、金属粉末材料が用いられる。
金属粉末材料を、積層造形法をはじめ、種々の用途に用いる際に、取り扱い性の向上や、機器における閉塞等の問題の回避の観点から、金属粉末材料が高い流動性を有することが求められる。金属粉末材料の流動性を高めるためには、金属粒子同士の凝集を抑制することが重要となる。
金属粉末材料において、金属粒子の凝集を抑制する方法として、金属粒子の表面を保護基で修飾する方法が知られている。例えば、特許文献1には、磁石粉末を特定の反応性オルガノポリシロキサンによって表面処理することが開示されている。また、粉末材料の凝集を抑制し、流動性を高める別の方法として、シリカ等のナノ粒子を粉末材料に混合する方法が知られている。例えば、特許文献2に、特定の有機官能基によって表面処理したナノサイズのシリカ粒子を、シリカ粒子の一次粒子よりも体積平均粒径が大きい無機酸化物粒子の表面に付着させることが開示されている。付着したシリカ粒子が無機酸化物粒子の間に介在して無機酸化物粒子の流動特性が向上するとされている。
特開2004-52086号公報 特開2015-13787号公報
金属粉末材料において、凝集を抑制し、流動性を高めるための方法として、上記特許文献1に記載されるように、保護基を用いて金属粉末材料を表面処理する方法を用いる場合には、シリコン原子や有機官能基等、金属以外の材料が含まれることで、金属粉末材料において、不純物として作用する可能性がある。特に、積層造形法等において、金属粉末材料を溶融、焼結等させた際に、気泡欠陥の形成等、不純物の影響が問題となりやすい。
一方、特許文献2に開示されるように、シリカ等のナノ粒子を混合することで、金属粉末材料の流動性を高めることも考えられるが、この場合には、ナノ粒子自体の凝集を防ぐために、シリカ等よりなるナノ粒子の表面を有機官能基で処理する必要がある。この際に用いられる有機材料も、金属粉末材料を溶融、焼結等させた際に、気泡欠陥の形成等の原因となる可能性がある。
本発明が解決しようとする課題は、有機不純物の影響を抑えながら、流動性の高い金属粉末材料、およびそのような金属粉末材料の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明にかかる金属粉末材料は、平均粒径が500nm以上であり、金属よりなる内部領域と、絶縁性無機金属化合物よりなり、前記内部領域の表面を被覆する、厚さ15nm以上の被覆層と、を有する粒子よりなるものである。
ここで、前記被覆層が、前記内部領域を構成する金属種の少なくとも1種を含有する絶縁性無機金属化合物よりなるとよい。また、前記被覆層が、前記内部領域を構成する金属種の少なくとも1種を含有する金属酸化物よりなるとよい。
前記粒子の円形度が、0.80以上であるとよい。また、前記粒子間の剪断付着力が、予圧密応力を9kPaとして、0.6kPa以下であるとよい。そして、内部摩擦角が、23°以下であるとよい。
前記内部領域が、チタン合金よりなるとよい。
本発明にかかる金属粉末材料の製造方法は、アトマイズ法にて原料金属粒子を作成する工程と、前記原料金属粒子に対して解粒を行い、前記原料金属粒子の凝集を解消する工程と、解粒を経た金属粒子の表層部に、絶縁性無機金属化合物よりなる厚さ15nm以上の被覆層を形成する工程と、をこの順に実行する、というものである。
ここで、解粒を経た前記金属粒子を、酸素を含む雰囲気中で熱処理して、前記金属粒子の表層部に、前記被覆層として、厚さ15nm以上の酸化膜を形成するとよい。
上記発明にかかる金属粉末材料を構成する粒子においては、金属よりなる内部領域の表面が、絶縁性無機金属化合物よりなる被覆層によって被覆されている。粒子の表面が絶縁性無機金属化合物によって被覆されていることで、粒子の表面に金属が露出している場合よりも、粒子間に働くファンデルワールス力が低減され、粒子間の凝集が抑制される。その結果、金属粉末材料において、高い流動性が得られる。絶縁性無機金属化合物よりなる被覆層の厚さが15nm以上であることで、金属粉末材料の流動性が、十分に向上される。
また、絶縁性無機金属化合物は、有機材料よりなる保護基と比較して、金属表面に強固に結合した状態を安定に維持しやすい。さらに、溶融や焼結等を経ても、被覆層は、実質的に、有機不純物による欠陥形成等の影響を生じない。
ここで、被覆層が、内部領域を構成する金属種の少なくとも1種を含有する絶縁性無機金属化合物よりなる場合には、内部領域を構成する金属の粒子を原料として、内部領域に対する密着性の高い被覆層を簡便に形成することができるとともに、内部領域を形成する以外の金属種が不純物として作用することが防止できる。
また、被覆層が、内部領域を構成する金属種の少なくとも1種を含有する金属酸化物よりなる場合には、内部領域を形成する金属の粒子を原料として、表面の酸化によって、被覆層を特に簡便に形成することができる。
粒子の円形度が、0.80以上である場合には、その円形度の高さにより、金属粉末材料の流動性が、十分に高くなりやすい。
また、粒子間の剪断付着力が、予圧密応力を9kPaとして、0.6kPa以下である場合には、粒子間に働く引力が小さく抑えられることで、粒子間の凝集を抑制し、金属粉末材料の流動性を十分に高めやすい。
そして、内部摩擦角が、23°以下である場合には、金属粉末材料の集合体が崩れやすくなり、金属粉末材料の流動性を十分に高めやすい。
内部領域が、チタン合金よりなる場合には、チタン合金の表面には、チタン酸化物またはチタン合金の酸化物よりなる被覆層を形成しやすく、被覆層による金属粉末材料の流動性の向上を、効果的に達成することができる。また、チタン合金粉末は、積層造形法をはじめ、種々の用途に用いられており、チタン合金粉末を、流動性を高めた状態で、それらの用途に好適に利用することができる。
上記発明にかかる金属粉末材料の製造方法においては、解粒によって、金属粒子の円形度を高めることで、金属粉末材料の流動性を高めることができる。そして、金属粒子の表面に、絶縁性無機金属化合物よりなる厚さ15nm以上の被覆層を形成することで、さらに金属粉末材料の流動性を高め、その流動性の高い状態を安定に維持することができる。
ここで、解粒を経た金属粒子を、酸素を含む雰囲気中で熱処理して、金属粒子の表層部に、被覆層として、厚さ15nm以上の酸化膜を形成する場合には、金属粒子の酸化によって被覆層を形成するので、被覆層を簡便に形成できるうえ、得られる金属粉末材料における不純物の影響を小さく抑えることができる。
本発明の一実施形態にかかる金属粉末材料を構成する粒子を説明する断面図である。 本発明の一実施形態にかかる金属粉末材料の製造方法を説明する断面図であり、(a)は処理前の原料金属粒子、(b)は解粒後の状態、(c)は被覆層形成後の状態を示している。 金属粉末材料を構成する粒子を観察したSEM像であり、(a)は処理前の状態、(b)は解粒後の状態、(c)は酸化被膜形成後の状態を示している。 オージェ電子分光による元素の深さ分布を示す図であり、(a)は処理前の状態、(b)は解粒後の状態、(c)は酸化被膜形成後の状態を示している。 解粒および被覆層形成による特性の変化を示す図であり、(a)は円形度、(b)は剪断付着力、(c)は内部摩擦角を示している。 酸化被膜の厚さと総酸素量の関係を示す図である。 酸化被膜の厚さと剪断付着力の関係を示す図である。
以下に、本発明の実施形態にかかる金属粉末材料および金属粉末材料の製造方法について詳細に説明する。
[金属粉末材料の構成]
まず、本発明の一実施形態にかかる金属粉末材料の構成について説明する。
本発明の一実施形態にかかる金属粉末材料は、図1に示すような粒子1の集合体として構成される。粒子1は、金属よりなる内部領域2と、内部領域2の表面を被覆する被覆層3とを有している。粒子1がこのような構造を有することで、金属粉末材料は、高い流動性を示す。
金属粉末材料を構成する粒子1は、サブミクロンからミクロンオーダーの粒径を有している。具体的には、平均粒径(d50)が500nm以上であることが好ましい。500nm以上の粒径を有することで、図1のような、金属よりなる内部領域2と、所定の厚みを有する被覆層3とを有する粒子1の構造を、安定に形成することができる。また、金属粉末材料を、積層造形法の原料等の用途に、好適に用いることができる。一方、平均粒径は、100μm以下であることが好ましい。
内部領域2は、金属よりなっている。内部領域2を構成する金属は、単体金属であっても、合金であってもよく、具体的な金属種も特に限定されない。金属粉末材料の用途等に応じて、必要な成分組成を適宜選択すればよい。
内部領域2を構成する金属の好適な例として、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、鉄合金を例示することができる。これらの金属の表面には、緻密な酸化被膜や窒化被膜よりなる被覆層3を形成しやすい。また、これらの合金、特にチタン合金は、積層造形法の原料等として、需要が大きい。チタン合金としては、Ti-6Al-4V合金に代表されるTi-Al系合金等を例示することができる。ニッケル合金としては、インコネル(登録商標)等を例示することができる。また、鉄合金としては、種々の工具鋼を例示することができる。
被覆層3は、セラミックス材料、つまり絶縁性の無機金属化合物よりなっている。また、被覆層3の厚さは、15nm以上となっている。
被覆層3を構成するセラミックス材料の化合物種としては、金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、炭窒化物、ホウ化物、シリケート、アルミネート、チタネート、ジルコネート等を例示することができる。金属粉末材料の流動性向上の観点、また、緻密で厚い被覆層3を簡便に形成する観点から、被覆層3が金属酸化物または金属窒化物である場合、特に金属酸化物である場合が好適である。
また、被覆層3を構成する金属種は特に限定されるものではなく、内部領域2を構成する金属種と同じであっても、異なっていてもよい。しかし、粒子1の構成の簡素性、および製造の簡便性の観点から、被覆層3は、内部領域2を構成する金属種の少なくとも1種を含有するセラミックス材料よりなることが好ましい。この場合には、内部領域2を構成する金属よりなる原料金属粒子に対して所定の処理を行うことで、被覆層3を形成することができ、内部領域2に対して強固に密着した被覆層3を、簡便に形成できる。また、内部領域2を構成する以外の金属種が被覆層3に含有されないことで、他の金属種が含有されて、不純物等として粒子1の特性等に影響を与えることが、なくなる。ここで、「内部領域2を構成する金属種の少なくとも1種を含有する」とは、内部領域2が合金よりなる場合に、被覆層3が、金属成分に関して、内部領域2と同じ組成を有している場合も、内部領域2を構成する複数の金属種の一部のみを含有する場合も、含むものである。
特に、被覆層3が内部領域2を構成する金属種の少なくとも1種を含有する金属酸化物または金属窒化物よりなる場合、中でも金属酸化物よりなる場合には、後に詳しく説明するように、厚く緻密な被覆層3を、簡便に形成することができる。
被覆層3は、化合物種および/または金属種の異なる複数のセラミックス材料よりなってもよい。複数のセラミックス材料は、単一の層内で、混合または複合されていても、複数の層として積層されていてもよい。しかし、構成の簡素性の観点からは、被覆層3は、単独のセラミックス材料よりなることが好ましい。また、金属粉末材料は、単一種の粒子1よりなっても、内部領域2および/または被覆層3の組成や粒径等の異なる複数種の粒子1を混合したものであってもよい。
本実施形態にかかる金属粉末材料においては、構成粒子1において、金属よりなる内部領域2が、セラミックス材料よりなる被覆層3で被覆されていることにより、下記のように、粒子間に働くファンデルワールス力が低減される。すると、粒子間の引力相互作用が低減され、粒子1の凝集が抑制されることになる。その結果、金属粉末材料の流動性が高められる。
ミクロンオーダーの粒径を有する粒子において、粒子間の引力として、ファンデルワールス力の寄与が大きい。球形に近似される粒子の間のファンデルワールス力Fは、以下の式(1)によって表現される。
Figure 0007176219000001
ここで、D1,D2は2つの粒子の直径、dは粒子間距離、Hはハマカー(Hamaker)定数である。ハマカー定数Hが大きいほど、粒子間に働くファンデルワールス力が大きくなる。粒子のハマカー定数は、主に、粒子の表層部を構成する材料によって定まる。
金属酸化物や金属窒化物をはじめ、セラミックス材料は、金属よりも小さいハマカー定数を与える。よって、金属粉末材料を構成する粒子1において、内部領域2の表面が絶縁性無機金属化合物よるなる被覆層3で覆われていることで、金属よりなる内部領域2が露出されている場合よりも、粒子間に作用するファンデルワールス力が小さくなる。
金属よりなる内部領域2が粒子1の表面の電子状態に影響を与えるのを避け、セラミックス材料によるハマカー定数低減の効果によって、ファンデルワールス力を十分に小さくする観点から、被覆層3の厚さは、15nm以上とされる。なお、ミクロンオーダーの粒径を有する金属粒子の表面に形成される自然酸化膜の厚さは、15nm未満、典型的には5nm前後であり、粒子1の表面に設けられる被覆層3が金属酸化物よりなる場合に、少なくとも厚さの点で、自然酸化膜とは区別される。被覆層3の厚さに上限は特に設けられないが、金属よりなる内部領域2を十分に確保する観点から、ミクロンオーダーの粒子1において、おおむね500nm以下であるとよい。
一般に、ミクロンオーダーの粒径を有する粒子において、粒子間の引力としては、上記ファンデルワールス力、また液架橋力が支配的である。特許文献1に記載されるように、有機基を有する化合物によって金属粒子の表面を修飾することや、特許文献2に記載されるように、ナノ粒子を金属粒子に混合して、粒子間距離(式(1)のd)を大きくすることで、ファンデルワールス力を低減する方法も考えられるが、それらの場合には、表面修飾膜やナノ粒子の成分、特に有機成分が、金属材料の溶融や焼結を経た際に、不純物として、また組織に欠陥等を形成する要因として、影響を与える可能性がある。また、そのような表面修飾膜やナノ粒子は、金属粒子の表面における保持の安定性が低い場合もあり、特に、金属粉末材料の長期の貯蔵や機械的処理を経た際に、ファンデルワールス力が十分に低減された状態を維持するのが難しくなる場合がある。
これらに対し、本実施形態のように、金属よりなる内部領域2の表面にセラミックス材料よりなる被覆層3を形成する場合には、金属粉末材料に対して溶融、焼結等を行った場合にも、不純物混入や欠陥形成等の影響を、小さく抑えることができる。絶縁性無機金属化合物は、有機基を含む化合物とは異なり、焼結時等に加熱を受けても、欠陥を生じにくい。また、特に、被覆層が、酸化物や窒化物、炭化物、酸窒化物、炭化物等の無機金属化合物よりなる場合には、酸素や窒素、炭素が大気中に多く含まれていることから、被覆層3を有さないとしても、金属よりなる内部領域2の表面に、上記の無機金属化合物が形成されることは、不可避であることが多く、被覆層3を設けることが、新たな不純物種を生じる原因とはなりにくい。さらに、絶縁性無機金属化合物よりなる被覆層3は、有機基を含む表面修飾膜とは異なり、ファンデルワールス力が小さい状態を、安定に維持することができる。これらの効果は、被覆層3が、内部領域2を構成する金属元素の少なくとも1種の酸化物または窒化物よりなる場合に、特に大きくなる。なお、セラミックス材料よりなる被覆層3によるファンデルワールス力低減をさらに補助するために、被覆層3を有する粒子1に対して、さらに表面修飾膜で被覆すること、またナノ粒子を混合することを妨げるものではない。
[金属粉末材料の特性]
本実施形態にかかる金属粉末材料は、下記のような特性を有することが好ましい。
粉末材料の流動性を表す指標として、粒子間に働く剪断付着力を用いることができる。剪断付着力は、粒子の凝集体を剪断によって分散させるのに要する力であり、その値が大きいほど、ファンデルワールス力等の引力相互作用によって、粒子間に働く引力が、大きいことを示す。剪断付着力が大きいと、粒子の集合状態が解消されにくくなり、例えば、底部に開口を有するホッパーから落下させて粉末材料を供給する際に、粒子同士の間に凝集が生じることで、粉末材料がホッパーから落下しにくくなる。剪断付着力(τ)は、例えば、JIS Z8835に準拠して測定することができ、粉末材料に圧力(σ)を印加した際に発生する剪断応力(τ)を計測し、σを横軸に、τを縦軸にプロットした際の縦軸切片として求めればよい(τ=τ(σ=0))。
本実施形態にかかる金属粉末材料においては、十分に高い流動性を得る観点から、剪断付着力は、予圧密応力を9kPaとして(以下同様)、0.6kPa以下であることが好ましい。剪断付着力は、0.55kPa以下、また0.45kPa以下であると、さらに好ましい。剪断付着力は小さいほど好ましく、下限は特に設けられない。なお、底部に開口を有するホッパーから金属粉末材料を安定して連続的に排出するためには、おおむね、剪断付着力が0.55kPa以下であればよい。
粉末材料の流動性を表すもう1つの指標として、内部摩擦角を挙げることができる。内部摩擦角は、粉末材料に圧力を印加した際にその圧力に交差する方向に生じる剪断応力の、印加圧力に対する比例係数を、摩擦角で表現したものであり、その値が小さいほど、粉末材料の集合体が崩れやすく、また広がりやすいことを示す。例えば、内部摩擦角が小さいほど、底部に開口を有するホッパーから落下させて粉末材料を供給する際に、既に粉末材料が落下してホッパー内に生じた空隙に向かって、残りの粉末材料が崩れやすく、粉末材料が安定して連続的に落下しやすいことになる。また、粉末材料を平滑に敷き詰める場合に、内部摩擦角が小さいほど、粉末材料の集合体を崩して、敷き詰めを行いやすくなる。内部摩擦角(φ)は、例えば、上記剪断付着力(τ)を計測する際と同様に、粉末材料に圧力(σ)を印加した際に発生する剪断応力(τ)を計測し、σを横軸に、τを縦軸にプロットして、横軸に対する近似直線の角度として求めればよい(tanφ=τ/σ)。
本実施形態にかかる金属粉末材料においては、十分に高い流動性を得る観点から、内部摩擦角は、例えば、23°以下、さらには21°以下であることが好ましい。なお、内部摩擦角は、安息角で代用することもできる。内部摩擦角も、小さいほど好ましく、下限は特に設けられない。
金属粉末材料を構成する粒子1の形状も、金属粉末材料の流動性に大きな影響を与える。粒子1が、対称性の高い、球体に近い形状を有する方が、その形状の効果により、金属粉末材料における内部摩擦角が小さくなる。すると、金属粉末材料の集合体の崩れやすさが向上し、金属粉末材料の流動性が高くなる。
粒子の円形度は、粒子の立体形状を平面上に投影した二次元図形(投影図形)の、真円へ近接度を示す指標である。粒子の円形度は、[投影図形と同じ面積を有する円の周長]/[投影図形の輪郭の総長]、として算出することができる。粒子が真球、つまり投影図形が真円の場合には、円形度が1となる。円形度の解析は、光学顕微鏡、電子顕微鏡(SEM)等の顕微鏡像に基づいて行えばよい。
流動性向上の効果を十分に得る観点から、粒子1の円形度は、0.80以上であることが好ましい。円形度は、0.85以上であると、さらに好ましい。流動性向上の観点からは、円形度が高いほど好ましく、円形度に特に上限は設けられないが、金属粉末材料を平滑に敷き詰める際等における粒子1の充填率向上の観点から、円形度を0.95以下とすることが好ましい。なお、本明細書においては、特記しない限り、粒子1の円形度として、平均粒径付近の値、例えば平均粒径の89%~112%の粒径における個数平均値を採用する。
さらに、粒子1の円形度が高くなっていることで、円形度の高さそのものによる内部摩擦角低減の効果に加え、水の吸着量の低減を通しても、金属粉末材料の流動性の向上に寄与する。円形度が高いほど、粒子1の比表面積が小さくなり、水が吸着可能な面積が相対的に小さくなるからである。すると、水を介した液架橋によって粒子間に働く引力を低減することができ、粒子間の剪断付着力を低減できる。
[金属粉末材料の製造方法]
上記実施形態にかかる金属粉末材料は、以下のような製造方法によって、好適に製造することができる。図2に、製造方法の各段階における粒子の状態を模式的に示す。
本製造方法においては、まず、金属粉末材料を構成する粒子1の原料となる原料金属粒子10を形成する。原料金属粒子10は、製造される粒子1の内部領域2を構成するのと同じ成分組成の金属材料よりなるものとする。原料金属粒子10の形成は、ミクロンオーダーの粒径を有する金属粒子を製造することができれば、いかなる方法によって行ってもよいが、ここでは、アトマイズ法によって行うことが好ましい。なお、図2(a)に示すように、金属粒子10A,10Bの一部は、相互に引力によって凝集し、凝集体(二次粒子)を構成していてもよい。この場合、一次粒子たる金属粒子10A,10Bが、ミクロンオーダーの粒径、例えば、10μm以上の平均粒径を有する粒子を主成分としてなっているとよい。また、原料金属粒子10の表面には、薄い自然酸化膜12や自然窒化膜が形成されていてもよい。
アトマイズ法は、合金溶湯を微小な液滴とした状態で凝固させることで、金属微粒子を得るものである。具体的には、合金溶湯を真空中に噴射し、噴射された合金溶湯に不活性ガスを吹き付けることによって、微小な液滴を生成するガスアトマイズ法や、高速回転するディスクに液滴を滴下して、遠心力によって微小な液滴を生成するディスクアトマイズ法を適用することができる。アトマイズ法においては、ミクロンオーダーの粒径を有する金属粒子10A,10Bよりなる原料金属粒子10を効率的に得ることができる。また、アトマイズ法は、種々の合金組成に対して適用することができる。特に、ガスアトマイズ法が、原料金属粒子10の製造効率や簡便性等の観点で好適である。アトマイズ法によって得られた原料金属粒子10に対して、適宜、分級を行っておいてもよい。
次に、得られた原料金属粒子10に対して、解粒を行う。アトマイズ法によって得られる原料金属粒子10は、図2(a)に示すように、凝集を起こしている場合も多い。そこで、解粒工程を実施し、原料金属粒子10における一次粒子10A,10Bの凝集を、力学的に解消する。つまり、固体物質や流体物質等によって、凝集体に物理的刺激を印加することで、図2(a)のよう、相互に凝集している金属粒子10A,10Bを分離し、図2(b)のように、独立した金属粒子11(11A,11B)とする。
解粒工程の詳細は、原料金属粒子10における金属粒子10A,10Bの凝集を十分に解消しつつ、一次粒子たる金属粒子10A,10B自体への影響、つまり金属粒子10A,10B自体の粉砕や損傷等が、凝集の解消に対して無視できる程度に抑制できるものであれば、特に限定されるものではない。解粒方法の例として、気流分級機等を用いた気流による凝集体の剪断と、ジェットミル粉砕機等を用いた衝突体への衝突による凝集体の粉砕を挙げることができる。いずれの方法を用いる場合にも、簡便性等の観点から、解粒は、室温にて、Ar等、不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
アトマイズ法によって得られる原料金属粒子10においては、一次粒子としての金属粒子10A,10Bの円形度は、比較的高くなっている。しかし、凝集構造を含んだ原料金属粒子10の集合よりなる原料体全体としての円形度は、低くなってしまっている。そこで、アトマイズ法によって得られた原料金属粒子10に対して、解粒工程を実施することで、凝集を解消し、金属粒子11の集合としての原料体全体において、円形度を高めることができる。円形度を高めることで、原料体の内部摩擦角が低くなる。円形度の向上および内部摩擦角の低減により、金属粒子11よりなる粉末材料の流動性を高めることができる。
例えば、解粒によって、原料体全体としての金属粒子11の円形度を、解粒前の値を基準として、10%以上、さらには15%以上向上させることができる。また、内部摩擦角を、解粒前の値を基準として、10%以上、さらには12%以上低減することができる。
解粒工程を経た金属粒子11よりなる原料体に対しては、分級を行うことが好ましい。これにより、次の被覆層3の形成工程を経て、所望の粒径を有する粒子1よりなる金属粉末材料を得ることができる。アトマイズ法によって得られた原料金属粒子10においては、図2(a)に示したように、また図3(a)のSEM写真でも確認されるように、比較的大径の主粒子10Aに、比較的小径のサテライト粒子10Bが付着していることが多く、このような複合体に解粒を施すことで、大径金属粒子11Aと小径金属粒子11Bの混合体が得られるが、分級により、これらのうち、小径金属粒子11Bを除去しておくことが好ましい。また、解粒工程において、凝集体のまま十分な解粒を受けずに残った原料金属粒子10等、径が大きすぎる粒子も除いておくことが好ましい。上記のように、解粒工程は、気流による剪断や、衝突による粉砕によって行うことができるが、気流による剪断によって行う場合には、解粒装置として気流分級機等を用いることで、解粒装置を分級装置としての用途と共用できる。この場合には、解粒と同時に、あるいはその後に、分級を行えばよい。
最後に、解粒を経た金属粒子11に対して、被覆層3の形成を行い、図2(c)に示すように、金属よりなる内部領域2の表面が、セラミック材料よりなる被覆層3によって被覆された粒子1よりなる金属粉末材料を得ることができる。被覆層3の形成は、被覆層3を構成するセラミック材料の種類に応じた方法で行えばよい。例えば、被覆層3として、内部領域2を構成する金属の酸化物または窒化物の層を形成する場合には、それぞれ酸化ガス雰囲気中、または窒化ガス雰囲気中で、金属粒子11を熱処理すればよい。
ここでは、被覆層3として、内部領域2を構成する金属の酸化物の層を形成する場合を例に説明する。この場合には、上記のように、酸化ガスを含む雰囲気中で、解粒によって得られた金属粒子11を熱処理し、金属粒子11の表層部に、酸化被膜3を形成すればよい。酸化ガスとしては、酸素を用いることが最も簡便であり、酸素を含む雰囲気として、大気を用いることができる。
酸化ガス中での熱処理により、金属粒子11は、表面から順次、酸化を受け、酸化被膜3が形成される。後の実施例に示すように、酸化被膜3の厚さは、熱処理温度および/または熱処理時間を調整することで制御することができ、それらのパラメータの調整により、15nm以上となるようにすればよい。
酸化被膜3の形成が、粒子表層部での酸素の拡散を律速とする反応によって起こると考えると、アレニウスの式より、酸化被膜3の厚さPを、以下のように表現することができる。
Figure 0007176219000002
ここで、tは熱処理時間、Dは拡散係数、Qは活性化エネルギー、Rは気体定数、Tは熱処理温度である。
上記式(2)より、熱処理時間を長くするほど、また熱処理温度を高くするほど、酸化被膜3が厚くなる。式(2)に基づき、熱処理時間と熱処理温度を適切に設定することで、所望の膜厚を有する酸化被膜3を形成することができる。熱処理温度は、必要十分な厚さの酸化被膜3を形成する観点から、400℃以上、650℃以下の範囲で選択することが好ましい。例えば、酸化被膜3の状態や厚さに顕著な空間分布が生じないように、ある程度の長さの熱処理時間を確保したうえで、熱処理温度を調整することで、所望の膜厚を有する均一性の高い酸化被膜3を形成することができる。
上にも述べたとおり、図2(a)に示すように、アトマイズ法等によって得られる原料金属粒子10の表面には、自然酸化膜12が形成されているが、その膜厚は、15nm未満、典型的には5nm前後である。このような原料金属粒子10、あるいはそれを解粒した金属粒子11に対して酸化処理を行うことで、酸化物層の厚さを増大させ、15nm以上の厚さを有する酸化被膜3を形成することができる。
酸化被膜3の形成により、粒子1の表面のハマカー定数が低減され、ファンデルワールス力の低減によって、粒子間の付着力が低減される。特に、アトマイズ法によって得られた原料金属粒子10に対して解粒を行い、金属粒子10A,10Bの凝集を解消した場合には、原料金属粒子10において、金属粒子10A,10Bが相互に接していた部位に、金属が露出した金属面13が生じることになる。このような金属面13は、大きなハマカー定数を与える金属材料の露出により、ファンデルワールス力を上昇させる原因となる。このように、金属面13は、解粒によって得られた金属粒子11において、粒子間の剪断付着力を上昇させるものとなる。しかし、熱処理によって、金属粒子11の表面全体に酸化被膜3を形成することで、金属面13を消失させることができる。これによって、粒子間の剪断付着力が低減され、金属粉末材料の流動性を高めることができる。
例えば、酸化被膜3の形成によって、剪断付着力を、解粒後、酸化被膜形成前の値を基準として、20%以上、さらには30%以上低減することができる。なお、解粒によって高められた円形度は、酸化被膜3の形成を経ても、高い状態に維持される。その結果、解粒によって低減された内部摩擦角も、酸化被膜3の形成を経ても、小さい状態に維持される。
以上のように、解粒によって円形度を高め、内部摩擦角を低減したうえでさらに、酸化被膜3の形成を行って、剪断付着力を低減させることで、解粒と酸化被膜形成にのそれぞれによる効果が重畳され、金属粉末材料の流動性を、効果的に向上させることができる。アトマイズ法等で製造された原料金属粒子10に対して、解粒を経ずに、酸化被膜3を形成する場合にも、酸化被膜3によってもたらされる、剪断付着力の低減による流動性向上の効果を得ることができる。ただし、その場合には、円形度の向上および内部摩擦角の低減による効果が得られないため、酸化被膜3の形成による流動性向上の効果は、解粒を経てから酸化被膜3を形成する場合の方が、大きくなる。また、解粒を行ってから、酸化被膜3を形成する場合の方が、金属面13の消失による剪断付着力の上昇が起こるため、酸化被膜3の形成前後で比較した剪断付着力低減の程度が、大きくなる。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。実施例においては、粒子の状態および製造条件と、特性との相関について調査した。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
[試料の作製]
Ti-6Al-4V合金(6質量%のAlと4質量%のVを含有し、残部がTiと不可避的不純物よりなる合金)よりなる金属粒子を、Arガスを用いたガスアトマイズ法にて作成した。そして、気流分級機を用いて、室温、Ar雰囲気中にて、解粒を行った。さらに、同じ気流分級機を用いて、分級を行った。分級の条件は、+15/-45μm、または+45/-105μmとした。
その後、得られた金属粒子に対して、大気中にて熱処理を行った。熱処理温度(250~650℃)および熱処理時間を変化させることで、試料ごとに、酸化皮膜の厚さを変化させた。
なお、試料1,11については、解粒と分級を行った後、熱処理を行っていない。また、試料10については、解粒も熱処理も行わず、ガスアトマイズ法にて作製した原料金属粒子に対して、分級のみを行った。
[評価方法]
まず、各試料について、走査電子顕微鏡(SEM)観察により、粒子の形状を確認した。さらに、SEMを用いたオージェ電子分光(AES)によって、元素濃度の深さ分布を分析した。その結果に基づき、酸素濃度が最表面の半分となる厚さを見積もり、酸化被膜の厚さとした。この際、酸化被膜の厚さは、参照試料としてのSiOの厚さに換算しても見積もった。また、酸素濃度の分布から、全深さ領域における総酸素量、つまり粒子全体における酸素の含有量を見積もった。
そして、JIS Z 8835に準拠し、剪断付着力および内部摩擦角を計測した。測定に際しては、JIS Z 8835に準拠し、回転セル型の剪断試験装置を用いて、粉末材料に圧力(σ)を印加した際に発生する剪断応力(τ)を計測した。そして、σを横軸に、τを縦軸にプロットした際の縦軸切片として、剪断付着力(τ)を求めた。また、近似直線の傾きをtanφとして、内部摩擦角(φ)を算出した。計測に際し、予圧密応力は、9kPaとした。
さらに、試料10(処理前)、試料11(解粒のみ)、試料19(酸化被膜形成後)については、粒子画像分析装置を用いて、円形度を評価した。
[試験結果]
表1に、各試料について、製造時の条件とともに、評価結果をまとめる。また、図3~5に、試料10(処理前)、試料11(解粒のみ)、試料19(酸化被膜形成後)について、状態および特性の評価の結果を比較して示す。なお、図5において、試料10(処理前)および試料11(解粒のみ)については、それぞれ6試料、3試料に対して特性評価を行った平均値を掲載している。さらに、図6,7に、酸化被膜の厚さと総酸素量の関係、および酸化被膜厚さと剪断付着力との関係を示す。
Figure 0007176219000003
(粒子の形状)
図3のSEM像に基づき、各状態における粒子の形状を比較する。図3(a)の、解粒も酸化被膜の形成も行っていない処理前の状態(試料10)においては、大径の粒子の表面に、小径のサテライト粒子が複数凝集している。これに対して解粒を行った、図3(b)の状態(試料11)においては、サテライト粒子が除去され、球形に近い粒子形状となっている。さらに、熱処理によって酸化被膜を形成した、図3(c)の状態(試料19)においても、その球形に近い粒子形状が維持されている。
このSEMで見られた粒子形状の変化は、図5(a)に示した円形度の比較によって、一層明らかになる。処理前の状態から、解粒を経て、円形度が20%向上している。さらに、熱処理による酸化被膜の形成を経ても、円形度の高い状態が維持され、0.80以上の高い円形度が得られている。この値は、処理前の状態を基準として、19%向上したものに相当する。
(酸化被膜の状態)
次に、図4に示した、オージェ電子分光による元素濃度の深さ分布に基づき、粒子表面の酸化物層の状態を比較する。なお、図4(a),(b)においては、全含有元素の分布を掲載しているが、図4(c)においては、酸素の分布のみを拡大して掲載している。
図4(a)の処理前の状態(試料10)と、図4(b)の解粒のみを行った状態(試料11)では、酸素濃度の分布が同様の挙動を示しており、表面からの深さが10nm以内の領域において、酸素濃度が急激に減少している。そのような挙動を反映して、表1に示されるように、いずれの試料においても、酸化被膜の厚さが6nmと小さくなっている。
一方、図4(c)に示した、熱処理による酸化被膜形成を経た状態(試料19)においては、深さ数10nmの領域にわたって、酸素濃度が、緩やかに減少する挙動が見られている。このことは、10nmオーダーの厚さを有する酸化被膜が形成されていることを意味している。実際に、表1に示されるように、酸化被膜の厚さは、26nmと見積もられる。
このように、自然酸化膜12の厚さは、10nmに満たないのに対し、酸素含有雰囲気中での熱処理を経ることで、厚さ15nm以上の酸化被膜を形成することができる。表1によると、2つの分級条件のいずれにおいても、熱処理を行うことで、厚さ15nm以上の酸化被膜を形成することが可能となっている。
(剪断付着力および内部摩擦角)
次に、図5(b)に示した、剪断付着力の計測結果を比較する。処理前の状態から、解粒を行うと、剪断付着力が増大して、0.6kPaを超えている。これは、解粒による金属面の露出に対応付けることができる。
しかし、さらに熱処理による酸化被膜の形成を行うと、剪断付着力が低減され、0.6kPaを大きく下回っている。剪断付着力の低減量は、酸化被膜形成前の値を基準として、34%であり、解粒前の水準に復帰している。これは、形成された酸化被膜によって、解粒で生じた金属面が被覆され、粒子間のファンデルワールス力が低減されたことによると解釈される。
さらに、図7に、表1の各試料について、酸化被膜の厚さと剪断付着力の関係を示す。これによると、概ね、酸化被膜が厚くなるほど、剪断付着力が小さくなる傾向が見られている。つまり、少なくとも、膜厚100nm程度までであれば、厚い酸化被膜を形成するほど、粒子の凝集を抑制し、金属粉末材料の流動性を高めることができる。
次に、図5(c)に示した内部摩擦角を比較する。これによると、処理前の状態から、解粒によって、内部摩擦角が16%低減されている。さらに熱処理による酸化被膜の形成を経ても、内部摩擦角が小さい状態が維持されている。酸化被膜形成後の内部摩擦角は、23°を下回っており、処理前の状態を基準として、14%小さい値となっている。解粒と酸化被膜形成を経た際の、このような内部摩擦角低減にかかる挙動は、図5(a)に示した円形度向上にかかる挙動とよく対応しており、内部摩擦角と円形度の相関性が確認される。
(熱処理条件による酸化被膜の状態および特性への影響)
最後に、酸化被膜の状態と、金属粉末材料の特性との相関に関して検討する。
図6に、酸化被膜の厚さと、総酸素量の関係を示す。これによると、酸化被膜の厚さと総酸素量の間に、比例関係が見て取れる。つまり、酸化被膜を厚くするほど、その酸化被膜に含まれる酸素原子の量も、比例的に増大している。このことは、酸化被膜が、厚さ方向に均一性の高い組成をもって形成されていることを示しており、金属よりなる内部領域を、均一性の高い膜状の酸化物によって緻密に包囲できていると考えられる。
また、図7によると、酸化被膜が厚くなるほど、剪断付着力が小さくなっている。このことは、酸化被膜が厚くなるほど、ハマカー定数の低減によって、粒子間に働くファンデルワールス力を低減できることを示している。一方、図示は省略するが、内部摩擦角は、酸化被膜の厚さとの間に明確な相関を有しておらず、酸化被膜の厚さとは無関係に、粒子の円形度と高い相関を有して規定されるパラメータであると言える。
以上、本発明の実施形態および実施例について説明した。本発明は、これらの実施形態および実施例に特に限定されることなく、種々の改変を行うことが可能である。
1 粒子
2 内部領域
3 被覆層(酸化被膜)
10 原料金属粒子
11 (解粒後の)金属粒子
12 自然酸化膜
13 金属面

Claims (5)

  1. 平均粒径が500nm以上であり、
    チタン合金よりなる内部領域と、
    チタン酸化物またはチタン合金の酸化物よりなり、前記内部領域の表面を被覆する、厚さ15nm以上の被覆層と、を有する粒子よりなり、
    前記粒子の円形度が、平均粒径の89%~112%の粒径における個数平均値で、0.80以上であり、
    内部摩擦角が、23°以下であることを特徴とする金属粉末材料。
  2. 平均粒径が500nm以上であり、
    チタン合金よりなる内部領域と、
    チタン酸化物またはチタン合金の酸化物よりなり、前記内部領域の表面を被覆する、厚さ15nm以上の被覆層と、を有する粒子よりなり、
    前記粒子の円形度が、平均粒径の89%~112%の粒径における個数平均値で、0.80以上であり、
    アトマイズ法にて製造されて解粒を経た金属粒子に対して、酸素を含む雰囲気中で熱処理を行って製造されることを特徴とする、金属粉末材料。
  3. 前記粒子間の剪断付着力が、予圧密応力を9kPaとして、0.6kPa以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属粉末材料。
  4. アトマイズ法にて原料金属粒子を作成する工程と、
    前記原料金属粒子に対して解粒を行い、前記原料金属粒子の凝集を解消する工程と、
    解粒を経た金属粒子の表層部に、前記被覆層を形成する工程と、をこの順に実行し、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の金属粉末材料を製造することを特徴とする金属粉末材料の製造方法。
  5. 解粒を経た前記金属粒子を、酸素を含む雰囲気中で熱処理して、前記金属粒子の表層部に、前記被覆層として、厚さ15nm以上の酸化膜を形成することを特徴とする請求項4に記載の金属粉末材料の製造方法。
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