JP7174972B2 - 抽出用シート材および抽出用バッグ - Google Patents
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Description
しかし、PETやポリ乳酸等の合成樹脂は、その多くが疎水性であることから、このような疎水性の合成樹脂製の抽出用シート材については、そのままの状態では、水や湯が、抽出用シート材の表面で弾かれてしまって、抽出用シート材の一面側から他面側に透過するのに時間がかかるという問題、即ち、瞬時透水性が低いという問題があった。
特に、疎水性の合成樹脂製の抽出用シートを用いて形成した袋体に、抽出材料を封入して作成した抽出用バッグは、飲料を抽出するために水や湯に投入した際に、しばらく水や湯の表面に浮いた状態となり、水や湯の中に沈むのに数秒間もかかってしまい、飲料を短時間で抽出することが困難な場合があった。
例えば、下記の特許文献1(特許第3939326号公報)には、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、またはポリ乳酸等の生分解性繊維の不織布からなる長繊維不織布に、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、又はショ糖脂肪酸エステル等の界面活性剤の水溶液を付着させることで、長繊維不織布の透水性を高めることができる旨が記載されている。
このような親水剤の付着ムラが生じた抽出用シート材については、それを用いて形成した袋体に抽出材料を封入した抽出用バッグを製造した場合に、その抽出用バッグを使用して飲料を抽出するために、抽出用バッグの袋体を水や湯に漬ける際、袋体の最初に水や湯に接触する部分に親水剤が付着していなかった場合には、透水化処理をしていない場合と同様に、抽出用バッグの袋体がしばらく水や湯の表面に浮いた状態となり、飲料を短時間で抽出できないことがあるという問題があった。
さらに、本発明は、速やかに湯中に沈み、短時間で飲料を抽出できる抽出用バッグを提供することを課題とする。
該抽出用シート材には親水剤が均一に付着し、該親水剤の付着量は0.0001~1.0wt%であり、上記抽出用シート材の通気性は153~2953cc/cm2・secであり、さらに、上記抽出用シート材の表裏両面の表面抵抗値はいずれも9.51×10 12 Ω以下であることを特徴とする抽出用シート材。
上記〔1〕に記載の抽出用シート材は、親水剤が均一に付着しているので、その抽出用シート材を用いて形成した抽出用バッグの袋体には、親水剤が付着していない部分は略存在しない。そのため、かかる抽出用バッグを使用して飲料を抽出するために、その抽出用バッグの袋体を水や湯に漬けた際には、その袋体のどの部分が最初に水や湯に接触しても、袋体は速やかに水や湯の中に沈む。したがって、上記抽出用バッグは、水や湯がその袋体内に素早く浸入して、上記抽出材料から飲料を短時間で抽出することができるものである。
本発明の抽出用シート材は、スパンボンド不織布または合成樹脂製長繊維からなる織物もしくは編物である第1層と、メルトブロー不織布である第2層とを備えるものである。
上記第1層を構成するスパンボンド不織布、合成樹脂製長繊維からなる織物・編物、および上記第2層を構成するメルトブロー不織布は、いずれも公知の方法によって作成することができる。
これらの親水剤を抽出用シート材に付着させるには、例えば、親水剤を水やエチルアルコールやこれらの混合液などに分散させて親水剤分散液とし、この親水剤分散液を、上記第1層と上記第2層を備える多層シート材に、グラビアロール方式、キスロール方式、浸漬方式、またはスプレー方式などの公知の方法によって付着させて乾燥させればよい。
上記抽出用シート材に付着している親水剤の量が0.0001wt%以上であれば、親水剤を抽出用シート材の全体に均一に付着させることができるため、抽出用シート材に十分な瞬時透水性を付与することができる。
さらに、上記抽出用シート材に付着している親水剤の量が1.0wt%以下であれば、この抽出用シート材を用いて抽出用バッグを製造する工程で超音波シールを行う場合に、上記抽出用シート材に付着した親水剤が溶着の妨げになることはなく、十分なシール強度を得ることができる。
上記抽出用シート材を形成する第1層のスパンボンド不織布、合成樹脂製長繊維からなる織物と編物、および第2層のメルトブロー不織布は、いずれも合成樹脂製であり絶縁体であるため、電気を通さず、また通すとしても僅かである。しかし、抽出用シート材に親水剤を付着させると電気を通すようになり、特に、親水剤を抽出用シート材の全体に均一に付着させた場合には、親水剤がネットワーク的に繋がった状態となり、抽出用シート材の表裏両面の表面抵抗値が、いずれも9.51×10 12 Ω以下となって電気を通し易くなる。
本発明の抽出用バッグは、上記抽出用シート材を用いて形成した袋体に抽出材料を封入してなるものであり、例えば、袋体に乾燥茶葉を封入したティーバッグなどが相当する。抽出材料としては、例えば、茶葉、レギュラーコーヒー粉末、ハーブ、煮干し、鰹節などが代表例である
かかる抽出用バックを使用する場合は、例えば、カップに注いだ熱湯に抽出用バッグの袋体を数秒から数分間浸漬し、袋体内の抽出材料を湯戻しして飲料成分を溶出させるようにする。
上記抽出用シート材は、その表裏両面の全体に均一に親水剤が付着しているので、上記抽出用シート材を用いて抽出用バッグを製造する場合には、上記抽出用シート材の上記第1層側と第2層側のいずれの面を抽出用バッグの外側または内側に配置することも可能である。但し、第1層側を外側に、第2層側を内側に配置すると、袋体を作成する際の溶着が容易であり、また、繊維が細く弱い第2層を保護できるため望ましい。
まず、本発明における各指標の測定方法を説明する。
JIS L 1906に準拠し、試験対象の不織布から10cm四方の試験片を採取して質量を測定して算出した。
光学顕微鏡を用いて目視により、試験対象の不織布の繊維について10箇所の直径を測定し、その平均値を求めた。
通気性試験機KES-F8-AP1(カトーテック株式会社製)を用いて通気抵抗値[R](kPa・秒/m)を測定し、以下の換算式(1)により求めた値を、通気度[Q](cc/cm2・sec)とした。
[Q]=12.45/[R]
抽出用シート材に付着している親水剤の量の測定は、ソックスレー抽出器を使用し、JIS L 1095 9.28に規定する測定方法において使用される測定溶剤のジエチルエーテルに代えて、石油エーテルを使用した以外は、同測定方法に準拠して行った。
抽出用シート材の表面抵抗値の測定は、高抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、Hiresta-UP MCP-HT450)を使用し、JIS K 6911 5.13に準拠して測定した。プローブは、d1(中心電極の直径)=0.59cm、d2(リング電極の内直径)=1.1cm、d3(リング電極の外直径)=1.8cmのURSプローブを使用した。測定時は気温20℃、相対湿度(RH)40%であった。
加熱して溶融させたポリエチレンテレフタレートを、紡糸ノズルから押出して繊維状とし、その繊維状の樹脂を、エジェクターを用いて紡糸速度5000m/分で延伸しつつ冷却して長繊維を形成し、その長繊維を一定速度で移動するベルトコンベア上に集積していくことでウェブを形成した。次に、得られたウェブを80℃に加熱したエンボスロールで加圧してスパンボンド不織布(第1層)を形成した。
得られた多層シート材は、メルトブロー不織布の繊維径が10.5μm、目付が6g/m2であり、多層シート材の目付が18/m2、通気度が415cc/cm2・secであった。
得られた抽出用シート材は、親水剤の付着量が0.1wt%であり、第2層側の表面抵抗値は4.03×1010 Ωであった。
加熱して溶融させた上記実施例1-1と同じポリエチレンテレフタレートを、紡糸ノズルから押出して繊維状とし、その繊維状の樹脂を、エジェクターを用いて紡糸速度5000m/分で延伸しつつ冷却して長繊維を形成し、その長繊維を一定速度で移動するベルトコンベア上に集積していくことでスパンボンド不織布(第1層)を形成した。
得られた多層シート材は、メルトブロー不織布の繊維径が10.5μm、目付が6g/m2であり、多層シート材の目付が18/m2、通気度が432cc/cm2・secであった。
得られた抽出用シート材は、親水剤の付着量が0.1wt%であり、第2層側の表面抵抗値は4.03×1010 Ωであった。
上記実施例1-1の抽出用シート材を、製袋・充填装置(椿本興業株式会社製TWINKLE、充填能力200袋/分)にセットし、所定箇所を超音波シールにより線溶着して、テトラ形(一片50mm)の袋体を形成しつつ、緑茶の乾燥茶葉(株式会社伊藤園製おーいお茶プレミアムティーバッグ用乾燥茶葉)1.8gを封入することで、抽出用バッグを製造した。
また、得られた抽出用バッグのタグを持って、その袋体を、カップに入った200mLの約95℃の熱湯の湯面に静かに下ろしたところ、袋体は湯中に速やかに沈降した。その後約30秒間で、袋体内の乾燥茶葉が十分に膨潤して拡がり、風味の良い緑茶を抽出することができた。
上記実施例1-2の抽出用シート材を用い、上記の実施例2-1と同じ方法で抽出用バッグを製造した。
また、得られた抽出用バッグのタグを持って、その袋体を、カップに入った200mLの約95℃の熱湯の湯面にゆっくり下ろしたところ、袋体は湯中に速やかに沈降した。その後約30秒間で、袋体内の乾燥茶葉が十分に膨潤して拡がり、風味の良い緑茶を抽出することができた。
≪1. 多層シート材と長繊維シート材のサンプル作成≫
試験に用いる多層シート材として、以下に示す「多層シート材A1」~「多層シート材A13」を用意した。また、比較例のために、以下に示す「長繊維シート材a1」および「長繊維シート材a2」を用意した。
多層シート材A2: 上記実施例1-1に準じた方法で作成し、メルトブロー不織布の繊維径が8.1μm、目付が6g/m2であり、多層シート材の目付が20g/m2、通気性が141cc/cm2・secであった。
多層シート材A4: 上記実施例1-1に準じた方法で作成し、メルトブロー不織布の繊維径が9.7μm、目付が6g/m2であり、多層シート材の目付が19g/m2、通気性が279cc/cm2・secであった。
多層シート材A5~A9: 上記実施例1-1に準じた方法で作成し、メルトブロー不織布の繊維径が10.5μm、目付が6g/m2であり、多層シート材の目付が18/m2、通気性が415cc/cm2・secであった。
多層シート材A10: 上記実施例1-1に準じた方法で作成し、メルトブロー不織布の繊維径が10.3μm、目付が3g/m2であり、多層シート材の目付が13g/m2、通気性が720cc/cm2・secであった。
上記の「多層シート材A1」~「多層シート材A13」、「長繊維シート材a1」および「長繊維シート材a2」に、噴霧装置によって親水剤(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)の分散液を噴霧した後に乾燥させて、それぞれ「抽出用シート材B1」~「抽出用シート材B13」、「抽出用シート材b1」および「抽出用シート材b2」を作成した。
表1に示す表面抵抗値は、各サンプルの抽出用シート材の、その製造工程において親水剤を噴霧した側の面について測定したものである。
なお、「抽出用シート材B8」は、実施例1-1の抽出用シート材と同等の物であり、また「抽出用シート材B11」は、実施例1-2の抽出用シート材と同等の物である。
上記の「抽出用シート材B1」~「抽出用シート材B13」、「抽出用シート材b1」および「抽出用シート材b2」を、製袋・充填装置(椿本興業株式会社製TWINKLE、充填能力200袋/分)にセットし、所定箇所を超音波シールにより線溶着してテトラ形(一片50mm)の袋体を形成しつつ、緑茶の乾燥茶葉(株式会社伊藤園製おーいお茶プレミアムティーバッグ用乾燥茶葉)1.8gを封入することで、それぞれ「抽出用バッグC1」~「抽出用バッグC13」、「抽出用バッグc1」および「抽出用バッグc2」を作成した。
なお、「抽出用バッグC8」は、実施例2-1の抽出用バッグと同等の物であり、また「抽出用バッグC11」は、実施例2-2の抽出用バッグと同等の物である。
「抽出用バッグC1」~「抽出用バッグC13」、「抽出用バッグc1」および「抽出用バッグc2」のサンプルを、各10個ずつ用意し、これらの各抽出用バッグのサンプルについて、それらのタグを持って、袋体を、カップに入った200mLの約95℃の熱湯の湯面にゆっくり下し、各抽出用バッグの袋体の湯中への沈降状態を観察した。
x:10個の全てのサンプルについて、袋体を最初に湯面に下した際に、湯中に速やかに沈降した。
y:10個のサンプル中に、袋体を最初に湯面に下した際に湯中に速やかに沈降せず、数秒間湯面上に浮いた状態になり、その後ゆっくりと湯中に沈降したサンプルが1個以上存在した。
本試験の結果は、表1の「評価:沈降性」欄に示すとおりである。
Claims (2)
- スパンボンド不織布または合成樹脂製長繊維からなる織物もしくは編物である第1層と、メルトブロー不織布である第2層とを備える抽出用シート材であって、
該抽出用シート材には親水剤が均一に付着し、該親水剤の付着量は0.0001~1.0wt%であり、上記抽出用シート材の通気性は153~2953cc/cm2・secであり、さらに、上記抽出用シート材の表裏両面の表面抵抗値はいずれも9.51×10 12 Ω以下であることを特徴とする抽出用シート材。 - 請求項1に記載の抽出用シート材を用いて形成した袋体に、抽出材料を封入してなること特徴とする抽出用バッグ。
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