以下に図面を参照して、本発明にかかる設計支援プログラム、設計支援方法および情報処理装置の実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態)
図1は、実施の形態にかかる設計支援方法の一実施例を示す説明図である。図1において、情報処理装置101は、建築図面の設計を支援するコンピュータである。建築図面は、例えば、建物の各フロアの平面図である。建築図面には、例えば、部屋の間取りや柱などが示される。
建築設計においては、各種法規に定められた条件に従って設備が配置されているか否かのチェックが行われる。設備としては、例えば、消火設備、空調設備、照明設備などがある。例えば、消防法では、消火器の配置位置から消火器を利用する者までの歩行距離の上限が条件として定められている。
消火器の配置位置をチェックする場合、フロア内の各部屋の広さ、部屋や通路の位置関係などを考慮して、消火器の配置位置から消火器を利用する者までの最長歩行距離を求めることになる。ところが、既存の建築設備CAD(Computer-Aided Design)では、最長歩行距離を自動計測することはできない。
すなわち、既存の建築設備CADでは、各種法規に定められた条件に従って設備が配置されているか否かのチェックを自動で行うことはできない。一方で、各種法規に定められた条件に従って設備が配置されているかを人手でチェックするとなると、手間や時間がかかる。
例えば、設計者が、図面データをプリントアウトし、紙面上で最長歩行距離を測定して、条件を満たしているかをチェックすることが考えられる。しかし、建物の各フロアの全設備について、一つ一つ手作業で確認するには多くの手間や時間がかかるとともに、チェック漏れが生じるおそれがある。
また、人手によるチェック作業には、経験やスキルが要求されるため、経験が浅くスキルレベルが低い設計者の場合、チェックミスやチェック漏れが生じる可能性が高くなる。また、建物の要件が変更されると、その都度チェックを行うことになるため、作業負荷や作業時間が増大する。
そこで、本実施の形態では、図面データに表された空間に配置される設備の位置が、設備に関する法規情報から特定される配置位置に関する条件を満たすか否かを判定することで、設備の配置位置の適正チェックを自動化して作業負荷を削減する設計支援方法について説明する。以下、情報処理装置101の処理例について説明する。
(1)情報処理装置101は、図面データに表された空間に配置される対象設備の位置の指定を受け付ける。ここで、図面データは、設計対象の建築図面を電子化したものであり、例えば、建物の各フロアの平面図のCADデータである。空間は、例えば、フロア内の部屋や廊下(通路)である。
対象設備は、配置位置に関する条件を満たすか否かを判定する対象の設備である。例えば、対象設備は、設備から設備を取り扱う者までの歩行距離の上限が定められているものである。より具体的には、例えば、対象設備は、消火器、感知器(煙感知器、炎感知器等)、発信機(火災報知器)などの消火設備である。
図1の例では、図面データ110に表された空間111~114のうち空間114に配置される対象設備の位置Pの指定を受け付けた場合を想定する。空間111~113は、部屋である。空間114は、廊下である。また、図面データ110には、建具115~117が表されている。建具115は、空間111と空間114とを仕切る扉(ドア)である。建具116は、空間112と空間114とを仕切る扉である。建具117は、空間113と空間114とを仕切る扉である。
(2)情報処理装置101は、記憶部120を参照して、対象設備に対応する法規情報に基づいて、対象設備が満たすべき配置位置に関する条件を特定する。記憶部120は、設備と、設備に関する法規情報と、を対応付けて記憶する。ここで、法規情報は、設備を設置するにあたり法律や規則で義務付けられたルールを示す情報であり、設備が満たすべき配置位置に関する条件を含む。
例えば、消防法では、火災発生時にすぐ利用できるように、消火器は、各防火対象物から歩行距離が20m以下となるように設置することが義務付けられている。このため、消火器に関する法規情報には、例えば、消火器の配置位置から消火器を取り扱う者までの歩行距離の上限「20m」が条件として含まれる。
図1の例では、対象設備を「消火器」とし、対象設備が満たすべき配置位置に関する条件として、対象設備の配置位置から対象設備を取り扱う者までの歩行距離の上限「20m」が特定された場合を想定する。
(3)情報処理装置101は、図面データに表された空間に関する空間情報と、図面データに表された空間を仕切る壁または建具に関する仕切り情報とに基づいて、指定された対象設備の位置が、特定した条件を満たすか否かを判定する。ここで、空間情報は、図面データに表された空間の範囲を特定する情報を含む。
空間の範囲を特定する情報は、例えば、空間の各頂点の座標や、空間を仕切る部分(例えば、壁)を特定する情報などである。空間の範囲を特定する情報には、空間内の障害物の位置を特定する情報が含まれていてもよい。障害物は、例えば、柱、ロッカー、空調機などの固定的に配置される物体である。
仕切り情報は、例えば、図面に表された空間を仕切る壁に設けられた開口部の位置と、開口部を介して仕切られた空間の隣接関係を特定する情報を含むものであってもよい。開口部は、人が出入りするために設けられる。また、仕切り情報は、例えば、図面に表された空間を仕切る建具の位置と、建具を介して仕切られた空間の隣接関係とを特定する情報を含むものであってもよい。建具は、空間内と外部とを仕切るために、空間の開口部に設けられる開閉可能なものであり、例えば、扉(ドア)、障子、襖(ふすま)などである。
図1の例では、空間情報130は、図面データ110に表された空間111~114の範囲を特定する情報を含む。仕切り情報140は、建具115~117の位置と、建具115~117を介して仕切られた空間の隣接関係とを特定する情報を含む。例えば、仕切り情報140は、建具115を介して仕切られた空間111,114の隣接関係を特定する情報を含む。
この場合、情報処理装置101は、空間情報130と仕切り情報140とに基づいて、指定された対象設備の位置Pが、特定した条件(歩行距離の上限「20m」)を満たすか否かを判定する。ここで、空間111~114のうちの空間111,112を例に挙げて、対象設備の位置Pが条件(歩行距離の上限「20m」)を満たすか否かを判定する場合について説明する。
この場合、情報処理装置101は、空間111について、空間111,114の範囲と、建具115の位置と、建具115を介して仕切られた空間111,114の隣接関係とに基づいて、歩行ルート151の歩行距離Xを算出する。歩行ルート151は、空間111内の端から対象設備の位置Pまで最短で移動する経路である。空間111内の端は、空間111において建具115から最も離れた位置である。すなわち、情報処理装置101は、対象設備を利用する者が、空間111内の建具115から最も離れた位置にいる場合を想定して、歩行距離Xを算出する。
同様に、情報処理装置101は、空間112について、空間112,114の範囲と、建具116の位置と、建具116を介して仕切られた空間112,114の隣接関係とに基づいて、歩行ルート152の歩行距離Yを算出する。歩行ルート152は、空間112内の端から対象設備の位置Pまで最短で移動する経路である。
そして、情報処理装置101は、算出した歩行距離Xが歩行距離の上限である20m以下であるか否かを判断する。ここで、歩行距離Xが20m以下の場合、情報処理装置101は、空間111について、対象設備の位置Pが条件を満たすと判定する。一方、歩行距離Xが20mより大きい場合、情報処理装置101は、空間111について、対象設備の位置Pが条件を満たさないと判定する。
同様に、情報処理装置101は、算出した歩行距離Yが歩行距離の上限である20m以下であるか否かを判断する。ここで、歩行距離Yが20m以下の場合、情報処理装置101は、空間112について、対象設備の位置Pが条件を満たすと判定する。一方、歩行距離Yが20mより大きい場合、情報処理装置101は、空間112について、対象設備の位置Pが条件を満たさないと判定する。
ここでは、空間111について、対象設備の位置Pが条件を満たさないと判定され、空間112について、対象設備の位置Pが条件を満たすと判定された場合を想定する。
(4)情報処理装置101は、判定した判定結果を出力する。具体的には、例えば、情報処理装置101は、図面データに表された空間それぞれについて、対象設備の位置が条件を満たすか否かを示す判定結果を出力してもよい。また、情報処理装置101は、図面データに表された空間のうち、対象設備の位置が条件を満たさないと判定された空間についての判定結果のみ出力してもよい。
また、情報処理装置101は、図面データに表された空間のうち少なくともいずれかの空間について、対象設備の位置が条件を満たさないと判定した場合、図面データについて、対象設備が満たすべき配置位置に関する条件を満たさないことを示す判定結果を出力してもよい。
図1の例では、情報処理装置101は、図面データ110に表された空間111について、対象設備の位置Pが条件を満たさないことを示す判定結果150を出力する。
このように、情報処理装置101によれば、図面データに表された空間に配置される対象設備の位置が、対象設備に関する法規情報から特定される配置位置に関する条件を満たすか否かを判定することができる。これにより、図面データにおいて、法規に定められた条件に従って対象設備が配置されているか否かのチェックを自動化して、チェック作業にかかる作業時間や作業負荷を削減することができる。また、人手によるチェック作業に比べて、チェックミスやチェック漏れを防ぐことができる。
図1の例では、図面データ110において、消防法に定められた条件に従って対象設備(消火器)が配置されているか否かをチェックすることができる。設計者は、判定結果150を参照することで、図面データ110に表された空間111について、対象設備の位置Pが条件を満たさないことを把握することができる。これにより、設計者は、図面データ110について、対象設備を追加で配置したり、配置済みの対象設備の位置Pを変更したりする必要があると判断することができる。
(情報処理装置101のハードウェア構成例)
図2は、情報処理装置101のハードウェア構成例を示すブロック図である。図2において、情報処理装置101は、CPU(Central Processing Unit)201と、メモリ202と、ディスクドライブ203と、ディスク204と、I/F(Interface)205と、ディスプレイ206と、入力装置207と、可搬型記録媒体I/F208と、可搬型記録媒体209と、を有する。また、各構成部はバス200によってそれぞれ接続される。
ここで、CPU201は、情報処理装置101の全体の制御を司る。CPU201は、複数のコアを有していてもよい。メモリ202は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびフラッシュROMなどを有する記憶部である。具体的には、例えば、フラッシュROMやROMが各種プログラムを記憶し、RAMがCPU201のワークエリアとして使用される。メモリ202に記憶されるプログラムは、CPU201にロードされることで、コーディングされている処理をCPU201に実行させる。
ディスクドライブ203は、CPU201の制御に従ってディスク204に対するデータのリード/ライトを制御する。ディスク204は、ディスクドライブ203の制御で書き込まれたデータを記憶する。ディスク204としては、例えば、磁気ディスク、光ディスクなどが挙げられる。
I/F205は、通信回線を通じてネットワーク210に接続され、ネットワーク210を介して外部装置に接続される。そして、I/F205は、ネットワーク210と自装置内部とのインターフェースを司り、外部装置からのデータの入出力を制御する。ネットワーク210は、例えば、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などである。
ディスプレイ206は、カーソル、アイコンあるいはツールボックスをはじめ、文書、画像、機能情報などのデータを表示する表示装置である。ディスプレイ206としては、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイなどを採用することができる。
入力装置207は、文字、数字、各種指示などの入力のためのキーを有し、データの入力を行う。入力装置207は、キーボードやマウスなどであってもよく、また、タッチパネル式の入力パッドやテンキーなどであってもよい。
可搬型記録媒体I/F208は、CPU201の制御に従って可搬型記録媒体209に対するデータのリード/ライトを制御する。可搬型記録媒体209は、可搬型記録媒体I/F208の制御で書き込まれたデータを記憶する。可搬型記録媒体209としては、例えば、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disk)、USB(Universal Serial Bus)メモリなどが挙げられる。
なお、情報処理装置101は、上述した構成部のうち、例えば、ディスクドライブ203、ディスク204などを有さないことにしてもよい。また、情報処理装置101は、上述した構成部のほかに、例えば、SSD(Solid State Drive)、スキャナ、プリンタなどを有することにしてもよい。
(図面データの具体例)
つぎに、情報処理装置101が用いる図面データの具体例について説明する。
図3は、図面データの具体例を示す説明図である。図3において、図面データ300は、設計対象の建築図面の図面データである。図面データ300には、フロアF1内の部屋R1~R9が表されている。部屋R1~R9は、フロアF1を仕切った空間を表す。部屋R1~R8は、事務所、ロッカー室、会議室等の部屋である。部屋R9は、廊下(通路)である。
扉D1~D9は、部屋を仕切る建具を表す。設備E1~E4は、図面データ300上に配置された対象設備を表す。対象設備は、配置位置に関する条件を満たすか否かの判定対象の設備である。すなわち、設備E1~E4は、設計者によって指定された位置に配置された対象設備を示す。
なお、図面データ300は、図面データ300に表された各部屋R1~R9の範囲と、図面データ300に表された部屋を仕切る各扉D1~D9の位置と、各扉D1~D9を介して仕切られた部屋の隣接関係とを特定する情報を含む。各部屋R1~R9の範囲を特定する情報は、例えば、各部屋R1~R9の各頂点の座標、各部屋R1~R9の高さ、各部屋R1~R9を仕切る部分(壁)を特定する情報、各部屋R1~R9内の障害物の範囲(位置、大きさ)を特定する情報などである。各部屋R1~R9を仕切る部分(壁)を特定する情報は、例えば、壁を形成する頂点の組み合わせである。また、図面データ300には、例えば、各部屋R1~R9の用途や、各扉D1~D9の開口サイズを特定する情報が含まれる。
(空間情報の具体例)
つぎに、情報処理装置101が用いる空間情報の具体例について説明する。ここでは、図3に示した図面データ300に対応する空間情報を例に挙げて説明する。
図4は、空間情報の具体例を示す説明図である。図4において、空間情報400は、部屋ID、扉ID、用途、頂点IDおよび座標のフィールドを有し、各フィールドに情報を設定することで、部屋情報(例えば、部屋情報400-1,400-2)を記憶する。
ここで、部屋IDは、図面データに表された部屋(空間)を一意に識別する識別子である。扉IDは、図面データに表された空間を仕切る扉(建具)を一意に識別する識別子である。用途は、部屋の用途である。頂点IDは、部屋の頂点、すなわち、部屋の範囲を形成する頂点を一意に識別する識別子である。座標は、図面データ上の頂点の位置を示す。
例えば、部屋情報400-1は、部屋R1の部屋ID「R1」、部屋R1に設けられた扉D1の扉ID「D1」、部屋R1の用途「事務所」、および、部屋R1の各頂点p1,p2,p6,p7の座標を示す。なお、部屋情報には、例えば、各部屋を仕切る部分(壁)を特定する情報や、各部屋の高さを示す情報が含まれる。ただし、各部屋を仕切る部分は、各頂点をID順につなげることで特定されることにしてもよい。
(建具情報の具体例)
つぎに、情報処理装置101が用いる建具情報の具体例について説明する。ここでは、図3に示した図面データ300に対応する建具情報を例に挙げて説明する。建具情報は、図1で説明した仕切り情報の一例である。
図5は、建具情報の具体例を示す説明図である。図5において、建具情報500は、扉ID、座標、リンク情報、開口幅および開口高さのフィールドを有し、各フィールドに情報を設定することで、扉情報(例えば、扉情報500-1,500-2)を記憶する。
ここで、扉IDは、扉を一意に識別する識別子である。座標は、図面データ上の扉の位置を示す。リンク情報は、扉を介して仕切られた部屋同士の隣接関係を示す。開口幅は、扉の開口部の幅である(単位:cm)。開口高さは、扉の開口部の高さである(単位:cm)。扉の開口部とは、扉が設けられた部屋の開口部に相当する。
例えば、扉情報500-1は、扉D1の扉ID「D1」、座標「(dx1,dy1)」、リンク情報「R1-R9」、開口幅「100cm」および開口高さ「180cm」を示す。リンク情報「R1-R9」は、扉D1を介して仕切られた部屋R1と部屋R9との隣接関係を示す。
(配置位置テーブル600の記憶内容)
つぎに、情報処理装置101が有する配置位置テーブル600の記憶内容について説明する。配置位置テーブル600は、例えば、図2に示したメモリ202、ディスク204などの記憶装置により実現される。
図6は、配置位置テーブル600の具体例を示す説明図である。図6において、配置位置テーブル600は、部屋ID、設備ID、設備種別および座標のフィールドを有し、各フィールドに情報を設定することで、対象設備情報600-1~600-4をレコードとして記憶する。
ここで、部屋IDは、部屋(空間)を一意に識別する識別子である。設備IDは、部屋に配置された設備を一意に識別する識別子である。設備種別は、設備の種別である。設備種別としては、例えば、消火器、大型消火器、排煙口、感知器、発信機などがある。座標は、図面データ上の設備の位置を示す。
例えば、対象設備情報600-1は、部屋R9に配置された設備E1の設備種別「大型消火器」および座標「(ex1,ey1)」を示す。
(法規情報テーブル700の記憶内容)
つぎに、情報処理装置101が有する法規情報テーブル700の記憶内容について説明する。法規情報テーブル700は、例えば、図2に示したメモリ202、ディスク204などの記憶装置により実現される。図1に示した記憶部120は、例えば、法規情報テーブル700に対応する。
図7は、法規情報テーブル700の記憶内容の一例を示す説明図である。図7において、法規情報テーブル700は、設備種別、上限歩行距離、検査箇所および歩行距離チェック対象のフィールドを有し、各フィールドに情報を設定することで、法規情報700-1~700-9をレコードとして記憶する。
ここで、設備種別は、対象設備の種別である。上限歩行距離は、対象設備から対象設備を取り扱う者までの歩行距離の上限である。上限歩行距離は、対象設備の配置位置に関する条件に相当する。ここでは、対象設備を各種の消防設備として、消防法で定められた対象設備の上限歩行距離が設定されている。
検査箇所は、対象設備の配置位置に関する条件(上限歩行距離)を適用する箇所を示す。例えば、検査箇所「フロア全体」の場合、フロア単位で対象設備の配置位置に関する条件を満たしているか否かをチェックする。検査箇所「全部屋」の場合、部屋単位で対象設備の配置位置に関する条件を満たしているか否かをチェックする。検査箇所「特定の部屋」の場合、特定の部屋についてのみ対象設備の配置位置に関する条件を満たしているか否かをチェックする。
歩行距離チェック対象は、歩行距離をチェックする部屋についての情報を示す。例えば、歩行距離チェック対象「特定の部屋は除外」は、特定の部屋(例えば、用途「廊下」の部屋)以外をチェックすることを示す。歩行距離チェック対象「廊下」は、用途「廊下」の部屋のみをチェックすることを示す。
例えば、法規情報700-1は、対象設備の設備種別「消火器」、上限歩行距離「20m」および検査箇所「フロア全体」を示す。
(情報処理装置101の機能的構成例)
図8は、情報処理装置101の機能的構成例を示すブロック図である。図8において、情報処理装置101は、取得部801と、受付部802と、特定部803と、判定部804と、出力部805と、記憶部810と、を含む。取得部801~出力部805は、具体的には、例えば、図2に示したメモリ202、ディスク204などの記憶装置に記憶されたプログラムをCPU201に実行させることにより、または、I/F205により、その機能を実現する。各機能部の処理結果は、例えば、メモリ202、ディスク204などの記憶装置に記憶される。記憶部810は、メモリ202、ディスク204などの記憶装置により実現される。具体的には、例えば、記憶部810は、図7に示した法規情報テーブル700を記憶する。
取得部801は、設計対象の図面データを取得する。また、取得部801は、設計対象の図面データに表された空間に関する空間情報と、図面データに表された空間を仕切る壁または建具に関する仕切り情報とを取得する。ここで、図面データは、設計対象の建築図面を電子化したものである。
空間情報は、図面データに表された空間の範囲を特定する情報を含む。空間は、例えば、フロア内の部屋や廊下(通路)である。また、仕切り情報は、例えば、図面データに表された空間を仕切る建具の位置と、建具を介して仕切られた空間の隣接関係とを特定する情報を含む建具情報である。建具は、例えば、扉(ドア)、障子、襖などである。
以下の説明では、図面データに表された空間を「部屋R」と表記し、図面データに表された空間を仕切る建具を「扉D」と表記する場合がある。
具体的には、例えば、取得部801は、図2に示した入力装置207を用いたユーザの操作入力により、図面データ300(図3参照)を取得する。そして、取得部801は、取得した図面データ300から、空間情報400(図4参照)および建具情報500(図5参照)を取得する。建具情報500は、仕切り情報の一例である。
より詳細に説明すると、例えば、取得部801は、図面データ300から、各部屋R1~R9の範囲を特定する情報を抽出することにより、当該情報を含む空間情報400を取得する。また、取得部801は、図面データ300から、各扉D1~D9の位置と、各扉D1~D9を介して仕切られた部屋Rの隣接関係とを特定する情報を抽出することにより、当該情報を含む建具情報500を取得する。
また、取得部801は、入力装置207を用いたユーザの操作入力により、空間情報400および建具情報500を取得することにしてもよい。すなわち、空間情報400および建具情報500を、図面データ300から取得するのではなく、予め作成された入力データとして情報処理装置101に与えることにしてもよい。
受付部802は、設計対象の図面データに表された部屋Rに配置される対象設備の位置の指定を受け付ける。対象設備は、例えば、消防設備である。具体的には、例えば、受付部802は、入力装置207を用いたユーザの操作入力により、図面データ300に表された部屋Rに配置される対象設備の位置の指定を受け付ける。
より詳細に説明すると、例えば、情報処理装置101は、図2に示したディスプレイ206に図面データ300を表示する。ただし、表示される図面データ300は、設備E1~E4が配置される前の状態である。この場合、受付部802は、表示した図面データ300において、入力装置207を用いたユーザの操作入力により、対象設備の位置の指定を受け付けることにしてもよい。
また、受付部802は、設備E1~E4が配置された図面データ300から、各設備E1~E4に関する情報(例えば、図6に示したような対象設備情報600-1~600-4)を抽出することにより、対象設備の位置の指定を受け付けることにしてもよい。
指定された対象設備の位置を示す情報は、例えば、部屋ID、設備IDおよび設備種別と対応付けて、図6に示した配置位置テーブル600に記憶される。対象設備の位置を示す情報は、図面データ300上での座標である。部屋IDは、対象設備が配置された部屋Rの部屋IDである。設備IDは、対象設備の設備IDである。設備種別は、対象設備の設備種別である。
特定部803は、設備と設備に関する法規情報とを対応付けて記憶する記憶部810を参照して、対象設備に対応する法規情報に基づいて、対象設備が満たすべき配置位置に関する条件を特定する。ここで、対象設備が満たすべき配置位置に関する条件は、例えば、対象設備を取り扱う者から対象設備に至るまでの歩行距離の上限である。
以下の説明では、対象設備が満たすべき配置位置に関する条件を「対象設備の配置位置条件」と表記する場合がある。
具体的には、例えば、特定部803は、図6に示した配置位置テーブル600を参照して、対象設備の設備種別を特定する。つぎに、特定部803は、図7に示した法規情報テーブル700を参照して、特定した設備種別に対応する法規情報を特定する。そして、特定部803は、特定した法規情報に基づいて、対象設備の配置位置条件を特定する。
一例として、対象設備の設備種別を「大型消火器」とする。この場合、特定部803は、法規情報テーブル700を参照して、特定した設備種別「大型消火器」に対応する法規情報700-2を特定する。そして、特定部803は、特定した法規情報700-2の上限歩行距離「30m」を、対象設備の配置位置条件として特定する。
判定部804は、取得された空間情報と仕切り情報とに基づいて、指定された対象設備の位置が、特定した対象設備の配置位置条件を満たすか否かを判定する。具体的には、例えば、判定部804は、空間情報400と建具情報500とに基づいて、図面データに表された第1の部屋Rについて、対象設備の位置までの歩行距離を算出する。なお、第1の部屋Rは、図面データに表された部屋Rのうち、処理対象として選択された部屋Rである。
より具体的には、例えば、まず、判定部804は、第1の部屋R内に、指定された対象設備の位置が含まれるか否かを判断する。ここで、第1の部屋R内に対象設備の位置が含まれる場合、判定部804は、対象設備の位置から第1の部屋Rの端までの歩行ルートの歩行距離を算出する。ただし、歩行ルートは、対象設備の位置から第1の部屋Rの端まで最短で移動する歩行ルートとする。
また、第1の部屋Rの端は、対象設備の位置から最も離れた位置としてもよい。すなわち、判定部804は、第1の部屋R内の各部分から対象設備に至るまでの歩行距離のうち最長の歩行距離を算出する。なお、歩行ルートを探索するにあたり、対象設備の位置、または、第1の部屋Rの端のいずれを始点としてもよい。
また、部屋R内には障害物が配置されている場合がある。障害物は、例えば、柱、ロッカー、空調機などの固定的に配置される物体である。この場合、判定部804は、例えば、障害物を迂回しつつ、対象設備の位置から第1の部屋Rの端までの歩行ルートを探索し、探索した歩行ルートの歩行距離を算出する。
障害物の範囲(位置、大きさ)を特定する情報は、例えば、空間情報に含まれる。例えば、障害物の範囲を特定する情報は、図面データ上での障害物の頂点の座標を含む。また、障害物の範囲は、図面データから直接特定されてもよく、図面データに対応する障害物情報から特定されてもよい。障害物情報は、図面データとは別に情報処理装置101に入力される情報であり、図面データ上の障害物の範囲や種別などを示す。
一方、第1の部屋R内に対象設備の位置が含まれない場合、判定部804は、図面データに表された各部屋Rの範囲と、各扉Dの位置と、各扉Dを介して仕切られた部屋Rの隣接関係とに基づいて、第1の部屋Rから対象設備の位置までの歩行ルートを探索する。そして、判定部804は、探索した歩行ルートの歩行距離を算出する。
より詳細に説明すると、例えば、判定部804は、第1の部屋R内の端から、第1の部屋Rに設けられた扉Dを通過して、対象設備の位置まで最短で移動する歩行ルートの歩行距離を算出する。この際、第1の部屋Rの端は、第1の部屋Rに設けられた扉Dから最も離れた位置としてもよい。なお、対象設備の位置までの歩行距離の算出例については、図9~図14を用いて後述する。また、歩行距離を算出する際の具体的な処理手順例については、図21および図22を用いて後述する。
そして、判定部804は、第1の部屋Rについて、算出した歩行距離に基づいて、対象設備の配置位置条件を満たすか否かを判定する。具体的には、例えば、判定部804は、算出した歩行距離が、特定した上限歩行距離以下の場合、対象設備の配置位置条件を満たすと判定する。一方、歩行距離が上限歩行距離よりも大きい場合、判定部804は、対象設備の配置位置条件を満たさないと判定する。
また、各種法規において、各場所から対象設備に至るまでに通過する扉Dについて、開口部に関する基準が定められている場合がある。開口部は、扉Dが設けられた部屋Rの開口部であり、人が通過する部分である。
このため、判定部804は、歩行ルートを探索するにあたり、開口部の幅・高さが閾値以上の扉Dのみを通過する歩行ルートを探索することにしてもよい。閾値は、任意に設定可能であり、例えば、幅)75cm、高さ)180cm程度の値に設定される。扉Dの開口部の幅・高さに関する閾値は、例えば、法規情報テーブル700に記憶されている。
これにより、第1の部屋Rから対象設備に至るまでの歩行ルートとして、消防法に定められた基準を満たす扉Dのみを通過する歩行ルートを探索することができる。
なお、第1の部屋R内に対象設備の位置が含まれない場合に、歩行ルートの歩行距離を算出するのは、検査箇所が「フロア全体」の場合である。検査箇所は、例えば、対象設備の設備種別に対応する法規情報から特定される。検査箇所が「全部屋」の場合に、第1の部屋R内に対象設備の位置が含まれなければ、判定部804は、対象設備の配置位置条件を満たさないと判定する。
また、検査箇所が「特定の部屋」の場合に、第1の部屋Rが特定の部屋であり、かつ、第1の部屋R内に対象設備の位置が含まれなければ、判定部804は、対象設備の配置位置条件を満たさないと判定する。第1の部屋Rが特定の部屋ではない場合には、判定部804は、第1の部屋Rについて、対象設備の配置位置条件を満たすか否かの判定は行わない。第1の部屋Rが特定の部屋であるか否かは、例えば、対象設備の設備種別に対応する法規情報から特定される。
出力部805は、判定された判定結果を出力する。具体的には、例えば、出力部805は、第1の部屋Rについて対象設備の配置位置条件を満たさないと判定された場合、第1の部屋Rに対応する箇所にマークを付した図面データを出力することにしてもよい。ここで、マークは、対象設備の配置位置条件を満たさないことを示すものである。マークは、任意に設定可能であり、例えば、矢印マークやビックリマークなどであってもよく、また、「エラー」といったメッセージを含むものであってもよい。
また、出力部805は、第1の部屋Rについて、探索された歩行ルートを示す図面データを出力することにしてもよい。歩行ルートは、例えば、第1の部屋Rから対象設備に至るまでの最短の歩行ルートである。より具体的には、例えば、出力部805は、第1の部屋Rについて対象設備の配置位置条件を満たさないと判定された場合、第1の部屋Rに対応する箇所にマークを付すとともに、第1の部屋Rから対象設備までの歩行ルートを示した図面データを出力する。ただし、出力部805は、第1の部屋Rについて対象設備の配置位置条件を満たすと判定された場合であっても、図面データ上に第1の部屋Rから対象設備までの歩行ルートを示すことにしてもよい。
また、出力部805は、図面データに表された部屋Rそれぞれについて、対象設備の配置位置条件を満たすか否かの判定結果をリスト化して出力することにしてもよい。出力部805の出力形式としては、例えば、メモリ202、ディスク204などの記憶装置への記憶、I/F205による他のコンピュータへの送信、ディスプレイ206への表示、不図示のプリンタへの印刷出力などがある。
なお、判定結果の出力例については、図16および図17を用いて後述する。
(歩行距離の算出例)
つぎに、図9~図14を用いて、図面データに表された第1の部屋Rについて、対象設備の位置までの歩行距離の算出例について説明する。まず、対象設備の位置までの歩行距離を算出するために用いる各種距離の算出例について説明する。各種距離は、図面データに表された部屋Rごとに算出される。
図9は、図面データ上の各種距離の算出例を示す説明図である。図9の(9-1)において、扉Da,Dbが設けられた部屋Rが示されている。判定部804は、各扉Da,Dbから部屋Rの各頂点pa,pb,pc,pdまでの距離のうちの最長距離を算出する。ここでは、扉Daについての最長距離は、扉Daから頂点paまでの距離となる。また、扉Dbについての最長距離は、扉Dbから頂点pbまでの距離となる。
算出された最長距離は、例えば、図10に示すような第1の中間テーブル1000に記憶される。第1の中間テーブル1000は、例えば、メモリ202、ディスク204などの記憶装置により実現される。
図10は、第1の中間テーブル1000の記憶内容の一例を示す説明図である。図10において、第1の中間テーブル1000は、部屋ID、扉IDおよび最長距離のフィールドを有し、各フィールドに情報を設定することで、中間データ(例えば、中間データ1000-1,1000-2)をレコードとして記憶する。
ここで、部屋IDは、部屋Rを一意に識別する識別子である。扉IDは、部屋Rに設けられた扉Dを一意に識別する識別子である。最長距離は、扉Dから部屋Rの頂点までの最長距離である。例えば、中間データ1000-1は、部屋R1の扉D1から部屋R1の頂点までの最長距離「17800mm」を示す。
なお、ここでは、部屋Rの外形が、矩形の場合を例に挙げて説明したが、矩形ではない場合(例えば、コの字型)がある。部屋Rの外形が矩形ではない場合の、扉Dから部屋Rの頂点までの最長距離の算出処理例については、図15を用いて後述する。
図9の説明に戻り、(9-2)において、対象設備Ea,Ebが配置された部屋Rが示されている。判定部804は、対象設備Ea(または、対象設備Eb)から部屋Rの端までの最長距離を算出する。具体的には、例えば、判定部804は、距離901,902のうちの長い距離を、対象設備Eaから部屋Rの端までの最長距離として算出する。
距離901は、対象設備Eaから部屋Rの各頂点pa,pb,pc,pdまでの距離のうちの最長距離である。距離902は、対象設備Eaから点903までの距離である。点903は、対象設備Ea,Ebの位置をつなぐ線分の中点を通り、当該線分に直交する直線と、部屋Rの端との交点である。
なお、部屋R内に存在する対象設備が1つの場合、判定部804は、対象設備から部屋Rの各頂点pa,pb,pc,pdまでの距離のうちの最長距離を、対象設備から部屋Rの端までの最長距離として算出する。
算出された最長距離は、例えば、図11に示すような第2の中間テーブル1100に記憶される。第2の中間テーブル1100は、例えば、メモリ202、ディスク204などの記憶装置により実現される。
図11は、第2の中間テーブル1100の記憶内容の一例を示す説明図である。図11において、第2の中間テーブル1100は、部屋IDおよび最長距離のフィールドを有し、各フィールドに情報を設定することで、中間データ(例えば、中間データ1100-1,1100-2)をレコードとして記憶する。
ここで、部屋IDは、部屋Rを一意に識別する識別子である。最長距離は、部屋R内の対象設備から部屋Rの頂点までの最長距離である。例えば、中間データ1100-1は、部屋R7内の対象設備から部屋R7の頂点までの最長距離「15000mm」を示す。
図9の説明に戻り、(9-3)において、扉Da,Dbが設けられ、かつ、対象設備Ea,Ebが配置された部屋Rが示されている。判定部804は、各扉Da,Dbから対象設備Ea,Ebへの最短距離を算出する。例えば、扉Daから対象設備Ebへの最短距離と、扉Dbから対象設備Eaへの最短距離とが算出される。
算出された最短距離は、例えば、図12に示すような第3の中間テーブル1200に記憶される。第3の中間テーブル1200は、例えば、メモリ202、ディスク204などの記憶装置により実現される。
図12は、第3の中間テーブル1200の記憶内容の一例を示す説明図である。図12において、第3の中間テーブル1200は、部屋ID、扉ID、設備IDおよび最短距離のフィールドを有し、各フィールドに情報を設定することで、中間データ(例えば、中間データ1200-1~1200-9)をレコードとして記憶する。
ここで、部屋IDは、部屋Rを一意に識別する識別子である。扉IDは、部屋Rに設けられた扉Dを一意に識別する識別子である。設備IDは、部屋Rに配置された対象設備を一意に識別する識別子である。最短距離は、扉Dから対象設備までの最短距離である。例えば、中間データ1200-1は、部屋R7の扉D8から、部屋R7に配置された対象設備(設備E4)までの最短距離「14914mm」を示す。
図9の説明に戻り、(9-4)において、扉Da,Db,Dcが設けられた部屋Rが示されている。判定部804は、部屋Rに扉Dが2つ以上存在する場合、扉同士の最短距離を算出する。ここでは、扉Da,Db間の最短距離、扉Da,Dc間の最短距離、および、扉Db,Dc間の最短距離が算出される。
算出された最短距離は、例えば、図13に示すような第4の中間テーブル1300に記憶される。第4の中間テーブル1300は、例えば、メモリ202、ディスク204などの記憶装置により実現される。
図13は、第4の中間テーブル1300の記憶内容の一例を示す説明図である。図13において、第4の中間テーブル1300は、部屋ID、扉IDおよび最短距離のフィールドを有し、各フィールドに情報を設定することで、中間データ(例えば、中間データ1300-1,1300-2)をレコードとして記憶する。
ここで、部屋IDは、部屋Rを一意に識別する識別子である。扉IDは、部屋Rに設けられた扉Dを一意に識別する識別子である。最短距離は、扉同士の最短距離である。例えば、中間データ1300-1は、部屋R3に設けられた扉D3,D5間の最短距離「8471mm」を示す。
判定部804は、図10~図13に示した第1、第2、第3、第4の中間テーブル1000,1100,1200,1300を参照して、第1の部屋Rから対象設備の位置までの歩行ルートの歩行距離を算出する。より詳細に説明すると、例えば、判定部804は、第1の部屋R内に対象設備の位置が含まれる場合、第2の中間テーブル1100を参照して、第1の部屋Rの端から対象設備の位置までの歩行ルートの歩行距離を算出(特定)する。
また、判定部804は、第1の部屋R内に対象設備の位置が含まれない場合、第1、第3、第4の中間テーブル1000,1200,1300を参照して、第1の部屋Rから対象設備の位置までの歩行ルートの歩行距離を算出する。例えば、部屋Rの扉Dから部屋Rの頂点までの最長距離を「X1」とし、部屋Rの扉Dから、部屋Rに配置された対象設備までの最短距離を「X2」とし、部屋Rの扉同士の最短距離を「X3」とする。また、第1の部屋Rから対象設備に至るまでに通過した扉Dの数(部屋Rをまたいだ数)を「n」とする。この場合、歩行ルートの歩行距離は、「X1+X2+n・X3」となる。
ここで、図14を用いて、図3に示した図面データ300に表された部屋Rについて、対象設備の位置までの歩行距離の算出例について説明する。
図14は、対象設備の位置までの歩行距離の算出例を示す説明図である。図14において、一例として歩行ルート1401~1403が示されている。歩行ルート1401は、部屋R1の端から扉D1を通過して、対象設備E1に至るまでの経路である。歩行ルート1401の歩行距離は、部屋R1の扉D1から部屋R1の頂点までの最長距離と、扉D1から対象設備E1までの最短距離との合計になる。
部屋R1の扉D1から部屋R1の頂点までの最長距離は、例えば、図10に示した第1の中間テーブル1000から特定される。扉D1から対象設備E1までの最短距離は、例えば、図12に示した第3の中間テーブル1200から特定される。
また、歩行ルート1402は、部屋R7の端から、部屋R7内の対象設備E4までの経路である。歩行ルート1402の歩行距離は、例えば、図11に示した第2の中間テーブル1100から特定される。
また、歩行ルート1403は、部屋R3の端から扉D5を経由して部屋R4に移動し、扉D4を通過して対象設備E2に至るまでの経路である。歩行ルート1403の歩行距離は、部屋R3の端から扉D5までの最長距離と、扉D4,D5間の最短距離と、扉D4から対象設備E2までの最短距離との合計になる。
部屋R3の端から扉D5までの最長距離は、図10に示した第1の中間テーブル1000から特定される。扉D4,D5間の最短距離は、図13に示した第4の中間テーブル1300から特定される。扉D4から対象設備E2までの最短距離は、図12に示した第3の中間テーブル1200から特定される。
(扉Dから部屋Rの頂点までの最長距離の算出処理例)
つぎに、図15を用いて、部屋Rの外形が矩形ではない場合の、扉Dから部屋Rの頂点までの最長距離の算出処理例について説明する。
図15は、扉Dから部屋Rの頂点までの最長距離の算出処理例を示す説明図である。図15において、部屋1500は、外形(領域の形状)がコの字型の部屋Rである。部屋1500には、扉1510が設けられている。以下、扉1510から、部屋1500の頂点までの最長距離を算出する処理例について説明する。
まず、判定部804は、部屋1500の頂点1501~1508の座標を取得する。つぎに、判定部804は、取得した各頂点1501~1508の座標に基づいて、扉1510から各頂点1501~1508への線分を特定する。そして、判定部804は、特定した線分のうち、部屋1500の領域から飛び出している線分を除外する。
つぎに、判定部804は、取得した各頂点1501~1508の座標に基づいて、部屋1500の頂点同士を結ぶ線分を特定する。そして、判定部804は、特定した頂点同士を結ぶ線分のうち、部屋1500の領域から飛び出している線分を除外する。
つぎに、判定部804は、既存のダイクストラ法などを用いて、残余の線分に基づいて、扉1510から各頂点1501~1508までの最短距離を算出する。そして、判定部804は、算出した各頂点1501~1508までの最短距離のうちの最長距離を、扉1510から部屋1500の頂点までの最長距離として特定する。
図15の例では、扉1510から頂点1505,1504を経由して頂点1502に至るまでの歩行ルート1520の距離が、扉1510から部屋1500の頂点までの最長距離として特定される。
(チェック結果画面の画面例)
つぎに、図16および図17を用いて、ディスプレイ206に表示されるチェック結果画面の画面例について説明する。以下の説明では、操作画面に表示されている情報をユーザが選択する操作としてクリック操作を行う場合を例に挙げて説明する。
図16は、チェック結果画面の画面例を示す説明図(その1)である。図16において、チェック結果画面1600は、図3に示した図面データ300に表された部屋R1~R9について、対象設備の配置位置条件を満たすか否かの判定結果を示す操作画面である。チェック結果画面1600は、部屋R1~R9のうち、対象設備の配置位置条件を満たさないと判定された部屋R2,R5に対応する箇所にマーク1601,1602が付された図面データ300を含む。
チェック結果画面1600によれば、設計者は、部屋R2,R5について、対象設備(大型消火器)の配置位置条件を満たしていないことを直感的に把握することができる。また、設計者は、例えば、全ての部屋R1~R9が配置位置条件を満たすように、図面データ300上に追加して配置すべき対象設備の位置を判断しやすくなる。
また、チェック結果画面1600において、図2に示した入力装置207を用いたユーザの操作入力により、マーク1601,1602をクリックすると、各部屋R2,R5の判定結果の内容をポップアップ表示することができる。例えば、マーク1601をクリックすると、後述の図17に示すような判定結果1710-1をポップアップ表示することができる。
また、チェック結果画面1600には、例えば、各部屋R2,R5から対象設備に至るまでの最短の歩行ルートを表示することにしてもよい。これにより、設計者は、どのような歩行ルートで、法規で定められた上限歩行距離を超えたのかを把握することができる。また、設計者は、例えば、対象設備を追加で配置すればよいのか、あるいは、配置済みの対象設備の位置を変更すればよいのかといった判断を行いやすくなる。
図17は、チェック結果画面の画面例を示す説明図(その2)である。図17において、チェック結果画面1700は、図面データ300に表された部屋R1~R9について、対象設備の配置位置条件を満たすか否かの判定結果を示す操作画面である。チェック結果画面1700は、部屋R1~R9のうち、対象設備の配置位置条件を満たさないと判定された部屋Rについての判定結果をリスト化して表す判定結果一覧1710を含む。
判定結果一覧1710は、マーク表示と、設備グループと、チェック項目と、対象部材と、問題点と、座標と、を対応付けて表す判定結果1710-1~1710-5を含む。マーク表示は、図面データ上にマークを表示するか否かを設定する。マークは、対象設備の配置位置情報を満たさないことを示すマークであり、例えば、図16に示したマーク1601,1602である。
設備グループは、チェック項目の分類を示す。設備グループには、例えば、法規名が設定される。チェック項目は、エラーとなった項目を示す。対象部材は、対象設備の配置位置条件を満たさないと判定された部屋Rを示す。問題点は、部屋Rの問題点を示す。問題点には、例えば、対象設備までの距離が示される。
座標は、対象部材の座標を示す。座標には、例えば、部屋Rのいずれかの頂点の座標や部屋Rの中心点の座標が設定される。なお、各判定結果には、例えば、対象部材を一意に識別する識別子、例えば、GUID(Globally Unique Identifier)が含まれていてもよい。
チェック結果画面1700によれば、設計者は、図面データ300に表された部屋R1~R9のうち、消防法に定められた対象設備(大型消火器、発信機、感知器、通路誘導灯)の配置位置条件を満たしていない部屋Rを把握することができる。また、設計者は、対象設備の配置位置条件を満たしていない部屋Rについて、対象設備からどれだけの距離離れているのかを把握することができる。
(情報処理装置101の設計支援処理手順)
つぎに、情報処理装置101の設計支援処理手順について説明する。
図18は、情報処理装置101の設計支援処理手順の一例を示すフローチャートである。図18のフローチャートにおいて、まず、情報処理装置101は、設計対象の図面データに表された部屋Rに配置される対象設備の位置の指定を受け付ける(ステップS1801)。
つぎに、情報処理装置101は、設計対象の図面データから、図面データに表された部屋Rに関する空間情報と、図面データに表された部屋を仕切る扉Dに関する建具情報とを取得する(ステップS1802)。建具情報は、図面データに表された部屋を仕切る壁または建具に関する仕切り情報の一例である。
そして、情報処理装置101は、指定された対象設備の位置、取得した空間情報および建具情報に基づいて、中間データ生成処理を実行する(ステップS1803)。中間データ生成処理は、図面データに表された部屋Rについて、対象設備までの歩行距離を算出するために用いる各種距離を算出する処理である。中間データ生成処理の具体的な処理手順については、図19を用いて後述する。
つぎに、情報処理装置101は、生成した中間データに基づいて、配置位置条件判定処理を実行する(ステップS1804)。配置位置条件判定処理は、図面データに表された部屋Rについて、対象設備の配置位置条件を満たすか否かを判定する処理である。配置位置条件判定処理の具体的な処理手順については、図21を用いて後述する。
そして、情報処理装置101は、後述の図20に示すチェック結果テーブル2000を参照して、判定した判定結果を出力し(ステップS1805)、本フローチャートによる一連の処理を終了する。これにより、設計対象の図面データにおいて、法規に定められた条件に従って対象設備が配置されているか否かのチェックを自動化することができる。
つぎに、図19を用いて、図18に示したステップS1803の中間データ生成処理の具体的な処理手順について説明する。
図19は、中間データ生成処理の具体的処理手順の一例を示すフローチャートである。図19のフローチャートにおいて、まず、情報処理装置101は、図面データに表された部屋Rのうち選択されていない未選択の部屋Rを選択する(ステップS1901)。
そして、情報処理装置101は、選択した部屋Rに設けられた各扉Dから部屋Rの頂点までの最長距離を算出する(ステップS1902)。算出された最長距離は、図10に示した第1の中間テーブル1000に記憶される。つぎに、情報処理装置101は、選択した部屋Rに対象設備が配置されているか否かを判断する(ステップS1903)。
ここで、対象設備が配置されていない場合(ステップS1903:No)、情報処理装置101は、ステップS1906に移行する。一方、対象設備が配置されている場合(ステップS1903:Yes)、情報処理装置101は、対象設備から部屋Rの端までの最長距離を算出する(ステップS1904)。算出された最長距離は、図11に示した第2の中間テーブル1100に記憶される。
つぎに、情報処理装置101は、選択した部屋Rに設けられた各扉Dから対象設備までの最短距離を算出する(ステップS1905)。算出された最短距離は、図12に示した第3の中間テーブル1200に記憶される。
つぎに、情報処理装置101は、選択した部屋Rに設けられた扉同士の最短距離を算出する(ステップS1906)。算出された最短距離は、例えば、図13に示した第4の中間テーブル1300に記憶される。なお、部屋Rに扉Dが1つしか存在しない場合は、情報処理装置101は、ステップS1906をスキップする。
そして、情報処理装置101は、図面データに表された部屋Rのうち選択されていない未選択の部屋Rがあるか否かを判断する(ステップS1907)。ここで、未選択の部屋Rがある場合(ステップS1907:Yes)、情報処理装置101は、ステップS1901に戻る。
一方、未選択の部屋Rがない場合(ステップS1907:No)、情報処理装置101は、中間データ生成処理を呼び出したステップに戻る。これにより、図面データに表された部屋Rについて、対象設備までの歩行距離を算出するために用いる各種距離を算出することができる。
つぎに、図18に示したステップS1804の配置位置条件判定処理の具体的な処理手順について説明する。まず、配置位置条件判定処理において、情報処理装置101が用いるチェック結果テーブル2000の記憶内容について説明する。ここでは、図面データ300に表された部屋R1~R9について、設備種別「大型消火器」の対象設備の配置位置条件を満たすか否かを判定する場合を例に挙げて説明する。この場合、検査箇所は「フロア全体」となる(図7参照)。
図20は、チェック結果テーブル2000の記憶内容の一例を示す説明図である。図20において、チェック結果テーブル2000は、部屋ID、設備種別およびエラーフラグのフィールドを有し、各フィールドに情報を設定することで、チェック結果2000-1~2000-9をレコードとして記憶する。
ここで、部屋IDは、部屋Rを一意に識別する識別子である。設備種別は、対象設備の種別である。エラーフラグは、対象設備の配置位置条件を満たすか否かを示すフラグである。エラーフラグ「0」は、配置位置条件を満たすことを示す。エラーフラグ「1」は、配置位置条件を満たさないことを示す。初期状態では、エラーフラグは「0」である。
図21は、配置位置条件判定処理の具体的処理手順の一例を示すフローチャートである。図21のフローチャートにおいて、まず、情報処理装置101は、法規情報テーブル700を参照して、対象設備の設備種別に対応する法規情報の上限歩行距離を特定する(ステップS2101)。
そして、情報処理装置101は、図面データに表された部屋Rのうち選択されていない未選択の部屋Rを選択する(ステップS2102)。つぎに、情報処理装置101は、選択した部屋Rに対象設備が配置されているか否かを判断する(ステップS2103)。
ここで、対象設備が配置されている場合(ステップS2103:Yes)、情報処理装置101は、第2の中間テーブル1100を参照して、選択した部屋Rに対応する最長距離が、特定した上限歩行距離以下であるか否かを判断する(ステップS2104)。ここで、上限歩行距離以下の場合(ステップS2104:Yes)、情報処理装置101は、ステップS2109に移行する。
一方、上限歩行距離より大きい場合(ステップS2104:No)、情報処理装置101は、図20に示したチェック結果テーブル2000内の選択した部屋Rに対応するエラーフラグに「1」を設定して(ステップS2105)、ステップS2109に移行する。
また、ステップS2103において、対象設備が配置されていない場合(ステップS2103:No)、情報処理装置101は、選択した部屋Rに基準を満たす扉Dがあるか否かを判断する(ステップS2106)。基準を満たす扉Dとは、例えば、開口部の幅が75cm以上、かつ、開口部の高さが180cm以上の扉Dである。
ここで、基準を満たす扉Dがない場合(ステップS2106:No)、情報処理装置101は、ステップS2105に移行する。一方、基準を満たす扉Dがある場合(ステップS2106:Yes)、情報処理装置101は、選択した部屋Rの対象設備までの歩行距離を算出する歩行距離算出処理を実行する(ステップS2107)。歩行距離算出処理の具体的な処理手順については、図22を用いて後述する。
そして、情報処理装置101は、算出した歩行距離が、特定した上限歩行距離以下であるか否かを判断する(ステップS2108)。ここで、上限歩行距離より大きい場合(ステップS2108:No)、情報処理装置101は、ステップS2105に移行する。一方、上限歩行距離以下の場合(ステップS2108:Yes)、情報処理装置101は、図面データに表された部屋Rのうち選択されていない未選択の部屋Rがあるか否かを判断する(ステップS2109)。
ここで、未選択の部屋Rがある場合(ステップS2109:Yes)、情報処理装置101は、ステップS2102に戻る。一方、未選択の部屋Rがない場合(ステップS2109:No)、情報処理装置101は、配置位置条件判定処理を呼び出したステップに戻る。
これにより、図面データに表された部屋Rごとに、対象設備の配置位置条件を満たすか否かを判定することができる。
つぎに、図22を用いて、図21に示したステップS2107の歩行距離算出処理の具体的な処理手順について説明する。
図22は、歩行距離算出処理の具体的処理手順の一例を示すフローチャートである。図22のフローチャートにおいて、まず、情報処理装置101は、図面データに表された部屋Rのうち、選択した部屋Rにチェック済みフラグを立てる(ステップS2201)。選択した部屋Rとは、図21に示したステップS2102において選択された部屋R、または、後述のステップS2212において選択された部屋Rである。
つぎに、情報処理装置101は、選択した部屋Rに設けられた扉Dのうち、基準を満たす未選択の扉Dを選択する(ステップS2202)。そして、情報処理装置101は、取得した建具情報を参照して、選択した扉Dの扉越しの部屋Rを特定する(ステップS2203)。
つぎに、情報処理装置101は、特定した部屋Rがチェック済みであるか否かを判断する(ステップS2204)。なお、情報処理装置101は、特定した部屋Rのチェック済みフラグが立っていれば、特定した部屋Rがチェック済みであると判断する。ここで、チェック済みの場合(ステップS2204:Yes)、情報処理装置101は、ステップS2202に戻る。
一方、チェック済みではない場合(ステップS2204:No)、情報処理装置101は、特定した部屋Rに対象設備が配置されているか否かを判断する(ステップS2205)。ここで、対象設備が配置されていない場合(ステップS2205:No)、情報処理装置101は、特定した部屋Rをストックして(ステップS2206)、ステップS2210に移行する。
一方、対象設備が配置されている場合(ステップS2205:Yes)、情報処理装置101は、第1、第3および第4の中間テーブル1000,1200,1300を参照して、図21に示したステップS2102において選択された部屋Rから対象設備までの最短距離を算出する(ステップS2207)。すなわち、情報処理装置101は、選択された部屋Rから、ステップS2202において選択された扉Dを通過して、対象設備の位置まで最短で移動する歩行ルートを探索し、探索した歩行ルートの歩行距離(最短距離)を算出する。この際、情報処理装置101は、障害物が配置されていれば、障害物を迂回しつつ、対象設備の位置まで最短で移動する歩行ルートを探索する。
そして、情報処理装置101は、算出した最短距離を、ステップS2102において選択された部屋Rの対象設備までの歩行距離として記録する(ステップS2208)。ただし、記録済みの歩行距離が、算出した最短距離未満の場合は、情報処理装置101は、ステップS2208をスキップする。
つぎに、情報処理装置101は、算出した最短距離が、図21に示したステップS2101において特定した上限歩行距離以下であるか否かを判断する(ステップS2209)。ここで、上限歩行距離以下の場合(ステップS2209:Yes)、情報処理装置101は、歩行距離算出処理を呼び出したステップに戻る。
一方、上限歩行距離より大きい場合(ステップS2209:No)、情報処理装置101は、選択した部屋Rに設けられた扉Dのうち、基準を満たす未選択の扉Dがあるか否かを判断する(ステップS2210)。ここで、未選択の扉Dがある場合(ステップS2210:Yes)、情報処理装置101は、ステップS2202に戻る。
一方、未選択の扉Dがない場合(ステップS2210:No)、情報処理装置101は、ストックした部屋Rのうち選択されていない未選択の部屋Rがあるか否かを判断する(ステップS2211)。ここで、未選択の部屋Rがある場合(ステップS2211:Yes)、情報処理装置101は、ストックした部屋Rのうち選択されていない未選択の部屋Rを選択して(ステップS2212)、ステップS2201に戻る。
一方、未選択の部屋Rがない場合(ステップS2211:No)、情報処理装置101は、歩行距離算出処理を呼び出したステップに戻る。これにより、部屋R(部屋Rの端)から対象設備に至るまでの歩行ルートの歩行距離を算出することができる。
以上説明したように、実施の形態にかかる情報処理装置101によれば、図面データに表された部屋Rに配置される対象設備の位置の指定を受け付け、設備と設備に関する法規情報とを対応付けて記憶する記憶部810を参照して、対象設備に対応する法規情報に基づいて、対象設備の配置位置条件を特定することができる。そして、情報処理装置101によれば、図面データに表された部屋Rに関する空間情報と、図面データに表された部屋を仕切る扉Dに関する建具情報とに基づいて、指定された対象設備の位置が、特定した配置位置条件を満たすか否かを判定し、判定した判定結果を出力することができる。
これにより、設計対象の図面データにおいて、法規に定められた条件に従って対象設備が配置されているか否かをチェックすることができる。このため、チェック作業にかかる負荷を削減することができる。また、人手によるチェック作業に比べて、チェックミスやチェック漏れを防ぐことができる。
また、情報処理装置101によれば、対象設備を消防設備とし、対象設備の配置位置条件を、対象設備を取り扱う者から対象設備に至るまでの歩行距離の上限とすることができる。これにより、消防法に定められた条件(上限歩行距離)に従って、消火器、発信機、非常警報設備等の消防設備が配置されているか否かをチェックすることができる。
また、情報処理装置101によれば、図面データから、部屋Rの範囲を特定する情報を含む空間情報、および、扉Dの位置と扉Dを介して仕切られた部屋Rの隣接関係とを特定する情報を含む建具情報を取得することができる。これにより、図面データに表された部屋Rの範囲と、部屋を仕切る扉Dの位置とを特定することができる。また、図面データに表された、扉Dを介して仕切られた部屋Rの隣接関係をトレースすることができる。
また、情報処理装置101によれば、図面データに表された第1の部屋Rについて、第1の部屋R内に対象設備の位置が含まれない場合、部屋Rの範囲と、扉Dの位置と、扉Dを介して仕切られた部屋Rの隣接関係とに基づいて、第1の部屋Rから対象設備の位置までの歩行ルートの歩行距離を算出することができる。そして、情報処理装置101によれば、第1の部屋Rについて、算出した歩行距離に基づいて、対象設備の位置が配置位置条件を満たすか否かを判定することができる。
これにより、第1の部屋Rに対象設備が配置されていない場合、扉Dを介した部屋の隣接関係を利用して、第1の部屋Rから他の部屋Rに配置された対象設備までの歩行ルートを探索し、その歩行距離が上限歩行距離以下であるか否かを判定することができる。
また、情報処理装置101によれば、第1の部屋R内に対象設備の位置が含まれる場合には、対象設備の位置から第1の部屋Rの端までの歩行ルートの歩行距離を算出し、算出した歩行距離に基づいて、対象設備の位置が配置位置条件を満たすか否かを判定することができる。
これにより、第1の部屋Rに対象設備が配置されている場合には、第1の部屋R内において対象設備から最も離れた位置から対象設備に至るまでの歩行距離が上限歩行距離以下であるか否かを判定することができる。すなわち、対象設備を取り扱う者が第1の部屋R内のどこにいても、対象設備に至るまでの歩行距離が上限歩行距離以下となるかをチェックすることができる。
また、情報処理装置101によれば、第1の部屋Rについて対象設備の位置が配置位置条件を満たさないと判定した場合、第1の部屋Rに対応する箇所にマークを付した図面データを出力することができる。これにより、図面データにおいて、対象設備の配置位置条件を満たしていない部屋Rを直感的に把握可能な情報を提供することができる。
これらのことから、情報処理装置101によれば、設計対象の図面データにおいて、法規に定められた条件に従って対象設備が配置されているか否かのチェックを自動化し、チェック作業にかかる作業時間および作業負荷を削減することができる。例えば、建物のフロアごとに、対象設備それぞれについて、全ての部屋Rが法規に定められた条件を満たすかを人手でチェックする場合に比べて、作業時間および作業負荷を大幅に削減することができる。また、建物の要件が変更された場合であっても、その都度、自動チェックを実施すればよいため、作業時間や作業負荷の増大を抑制することができる。
なお、本実施の形態で説明した設計支援方法は、予め用意されたプログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することにより実現することができる。本設計支援プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD、USBメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また、本設計支援プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布してもよい。
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)図面データに表された空間に配置される対象設備の位置の指定を受け付け、
設備と前記設備に関する法規情報とを対応付けて記憶する記憶部を参照して、前記対象設備に対応する法規情報に基づいて、前記対象設備が満たすべき配置位置に関する条件を特定し、
前記図面データに表された空間に関する空間情報と、前記図面データに表された空間を仕切る壁または建具に関する仕切り情報とに基づいて、指定された前記対象設備の位置が、特定した前記条件を満たすか否かを判定し、
判定した判定結果を出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする設計支援プログラム。
(付記2)前記対象設備は、消防設備であり、
前記条件は、前記対象設備を取り扱う者から前記対象設備に至るまでの歩行距離の上限である、ことを特徴とする付記1に記載の設計支援プログラム。
(付記3)前記図面データは、前記図面データに表された空間の範囲と、前記図面データに表された空間を仕切る建具の位置と、前記建具を介して仕切られた空間の隣接関係とを特定する情報を含み、
前記図面データから、前記空間の範囲を特定する情報を含む空間情報、および、前記建具の位置と前記建具を介して仕切られた空間の隣接関係とを特定する情報を含む仕切り情報を取得する、処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とする付記1または2に記載の設計支援プログラム。
(付記4)前記判定する処理は、
前記図面データに表された第1の空間について、前記第1の空間内に前記対象設備の位置が含まれない場合、前記空間の範囲と、前記建具の位置と、前記建具を介して仕切られた空間の隣接関係とに基づいて、前記第1の空間から前記対象設備の位置までの歩行ルートの歩行距離を算出し、
前記第1の空間について、算出した前記歩行距離に基づいて、前記対象設備の位置が前記条件を満たすか否かを判定する、
ことを特徴とする付記3に記載の設計支援プログラム。
(付記5)前記判定する処理は、
前記第1の空間内に前記対象設備の位置が含まれる場合には、前記対象設備の位置から前記第1の空間の端までの歩行ルートの歩行距離を算出する、ことを特徴とする付記4に記載の設計支援プログラム。
(付記6)前記出力する処理は、
前記第1の空間について前記対象設備の位置が前記条件を満たさないと判定した場合、前記第1の空間に対応する箇所にマークを付した前記図面データを出力する、
ことを特徴とする付記4または5に記載の設計支援プログラム。
(付記7)前記空間は、フロア内の部屋または廊下である、ことを特徴とする付記1~6のいずれか一つに記載の設計支援プログラム。
(付記8)前記建具は、開口部の幅が閾値以上の建具である、ことを特徴とする付記1~7のいずれか一つに記載の設計支援プログラム。
(付記9)図面データに表された空間に配置される対象設備の位置の指定を受け付け、
設備と前記設備に関する法規情報とを対応付けて記憶する記憶部を参照して、前記対象設備に対応する法規情報に基づいて、前記対象設備が満たすべき配置位置に関する条件を特定し、
前記図面データに表された空間に関する空間情報と、前記図面データに表された空間を仕切る壁または建具に関する仕切り情報とに基づいて、指定された前記対象設備の位置が、特定した前記条件を満たすか否かを判定し、
判定した判定結果を出力する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする設計支援方法。
(付記10)図面データに表された空間に配置される対象設備の位置の指定を受け付ける受付部と、
設備と前記設備に関する法規情報とを対応付けて記憶する記憶部を参照して、前記対象設備に対応する法規情報に基づいて、前記対象設備が満たすべき配置位置に関する条件を特定する特定部と、
前記図面データに表された空間に関する空間情報と、前記図面データに表された空間を仕切る壁または建具に関する仕切り情報とに基づいて、前記受付部によって指定を受け付けた前記対象設備の位置が、前記特定部によって特定された前記条件を満たすか否かを判定する判定部と、
前記判定部によって判定された判定結果を出力する出力部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。