図1は、撮像装置1の構成を示す図である。撮像装置1は、撮像レンズ300と撮像装置の本体部であるカメラ100を備える。撮像レンズ300は、カメラ100に対して着脱可能である。なお、本実施形態では、撮像レンズ300がカメラ100に対して着脱可能な撮像装置の例を説明するが、撮像レンズ300とカメラ100が一体になっている撮像装置であってもよい。
まず、カメラ100について説明する。カメラ100は、カメラマウント106、コネクタ122、メインミラー130、サブミラー131、光学ファインダ104、焦点検出部105、シャッタ12、撮像素子14、A/D変換器16、タイミング発生部18を備える。さらにカメラ100は、画像処理部20、メモリ制御部22、D/A変換器26、画像表示部28、画像表示メモリ24、メモリ30、圧縮伸長部32、インタフェース90、コネクタ92を備える。さらにカメラ100は、システム制御部50、メモリ52、表示部54、不揮発性メモリ56、モードダイアル60、シャッタスイッチ62、シャッタスイッチ64、画像表示オン/オフスイッチ66、クイックレビューオン/オフスイッチ68を備える。さらにカメラ100は、操作部70、記録媒体着脱検知部98、LEDランプ49、シャッタ制御部36、AF部42、測光部46、カメラインタフェース部38、フラッシュ48、電源制御部80、コネクタ82、焦点検出部105を備える。
撮像レンズ300に入射して、撮像レンズ300内の撮像光学系を通過した光束は、レンズマウント306およびカメラマウント106を通過し、メインミラー130により上方へ反射されて光学ファインダ104に入射する。ユーザは、光学ファインダ104により被写体像を観察しながら撮像を行うことができる。光学ファインダ104内には、後述する表示部54の一部の機能、例えば、焦点検出領域、合焦状態、手振れ警告、絞り値および露出補正値等が表示される。
メインミラー130の一部は、ハーフミラーを備える。撮像光路内に配置されたメインミラー130に入射した光束の一部はメインミラー130を通過し、サブミラー131により下方へ反射されて焦点検出部105に入射する。
焦点検出部105は、2次結像光学系と光電変換素子とを備え、位相差検出方式による焦点検出を行う。焦点検出部105は、2次結像光学系により形成された一対の被写体像を、ラインセンサ等の光電変換素子により一対の電気信号である焦点検出信号に変換してAF部42に出力する。AF部42は、位相差検出演算を行い焦点検出信号間のずれ量である位相差を算出する。システム制御部50は、AF部42で算出された位相差から焦点検出結果としてのデフォーカス量および方向を算出する。システム制御部50は、この算出結果に基づいて、撮像レンズ300のフォーカス制御部342に対してフォーカスレンズ311の駆動制御を行う。焦点検出手段は、焦点検出部105とAF部42とを含む。なお、本実施形態では、撮像光学系内のフォーカスレンズ311を移動させて焦点調節を行う例を説明するが、撮像素子14を移動させて焦点調節を行うことも可能である。
撮像レンズ300の焦点調節処理が終了して静止画撮像を行う場合、電子ファインダ画像の表示を行う場合、動画の撮像を行う場合等には、不図示のクイックリターン機構によりメインミラー130およびサブミラー131を光路外に退避させる。メインミラー130等を光路外に退避させることにより、撮像レンズ300からの光束は、シャッタ12を介して撮像素子14に入射する。撮像が終了すると、メインミラー130およびサブミラー131は光路内に戻される。
シャッタ12は、露光量を制御する。撮像素子14は、複数の光電変換部を有し、撮像レンズ300からの入射光に対して光電変換を行って電気信号に変換する。撮像素子14の例として、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等がある。
撮像素子14での光電変換により生成された電気信号はA/D変換器16に出力され、A/D変換器16にてデジタル信号(画像データ)に変換される。タイミング発生部18は、メモリ制御部22およびシステム制御部50により制御され、撮像素子14、A/D変換器16およびD/A変換器26にクロック信号や制御信号を供給する。画像処理部20は、A/D変換器16またはメモリ制御部22からの画像データに対して画素補間処理や色変換処理等の画像処理を行う。
撮像素子14は、その全画素または一部の画素が焦点検出可能な焦点検出領域として構成されており、位相差検出方式による焦点検出を行うことができる。焦点検出領域の画素は、複数の光電変換部を備えており、位相差検出方式の焦点検出に用いる一対の電気信号(焦点検出信号)を出力可能である。したがって、メインミラー130およびサブミラー131が光路外に退避し、焦点検出部105に光が入射しない場合であって、撮像素子14の出力を用いた位相差検出方式による焦点検出を行うことが可能である。
画像処理部20は、生成した画像データのうち焦点検出領域に対応する部分画像データを、焦点検出データに変換する。焦点検出データは、システム制御部50を介してAF部42に出力される。AF部42は、位相差検出演算を行い焦点検出信号間のずれ量である位相差を算出する。システム制御部50は、AF部42で算出された位相差から焦点検出結果としてのデフォーカス量および方向を算出する。システム制御部50は、この算出結果に基づいて、撮像レンズ300のフォーカス制御部342に対してフォーカスレンズ311の駆動制御を行う。
また、本実施形態の撮像装置1は、コントラスト検出方式によるAFを行うことも可能である。システム制御部50は、画像処理部20により生成された画像データからコントラスト状態を示すコントラスト評価値を生成することができる。そして、システム制御部50は、フォーカス制御部342を通じてコントラスト評価値がピークを示す位置にフォーカスレンズ311を駆動制御する。
したがって、本実施形態の撮像装置1では、位相差検出方式の焦点検出とコントラスト検出方式の焦点検出の両方を行うことが可能である。具体的には、メインミラー130とサブミラー131が光路内に配置された状態では、焦点検出部105による位相差検出方式での焦点検出(位相差AF)が行われる。一方、メインミラー130とサブミラー131が光束外へ退避した状態では、撮像素子14による位相差検出方式でのAF(撮像面位相差AF)とコントラスト検出方式でのAF(コントラストAF)が行われる。このように、撮像装置1は、静止画撮像時、動画撮像時、ライブビュー表示時のどの状態においても焦点検出が可能である。
メモリ制御部22は、A/D変換器16、タイミング発生部18、画像処理部20、画像表示メモリ24、D/A変換器26、メモリ30および圧縮伸長部32を制御する。A/D変換器16もしくは画像処理部20から出力された画像データは、メモリ制御部22を介して、画像表示メモリ24またはメモリ30に書き込まれる。
画像表示部28は、LCD(液晶表示装置)等の表示デバイスを有し、画像を表示する。画像表示メモリ24に書き込まれた表示用画像データは、D/A変換器26を介して画像表示部28により表示される。また、撮像により順次得られる画像データ(フレーム画像)を画像表示部28に順次表示することで、ライブビュー画像を表示することができる。
メモリ30は、撮像により生成された静止画像や動画像を記憶する。また、メモリ30は、システム制御部50の作業領域としても使用される。圧縮伸長部32は、適応離散コサイン変換(ADCT)等により画像データを圧縮伸長する機能を有し、メモリ30に記憶された画像データを読み込んで圧縮処理または伸長処理を行う。圧縮伸長部32は、圧縮処理または伸長処理を終えた画像データを、再びメモリ30に書き込む。
シャッタ制御部36は、測光部46からの測光情報に基づいて、撮像レンズ300の絞り312を駆動する絞り制御部344と連携しながら、シャッタ12を制御する。カメラインタフェース部38は、コネクタ122、コネクタ322およびレンズインタフェース部338を介して、カメラ100と撮像レンズ300との間での制御信号、状態信号および各種データ等の通信を行う。また、カメラインタフェース部38は、カメラ100から撮像レンズ300への電源供給も可能とする。
測光部46は、AE処理を行う。撮像レンズ300を通過した光束をメインミラー130および不図示の測光用レンズを介して測光部46に入射させることにより、測光部46において被写体像の輝度を測定することができる。また、測光部46は、フラッシュ48と連携して調光処理を行う。フラッシュ48は、フラッシュ調光機能およびAF補助光の投光機能を有する。フラッシュ48は、被写体に向けて光を発する発光手段として、静止画撮像時にフラッシュ発光(閃光発光)して被写体を明るく照明する(第1の発光手段)。さらに、フラッシュ48は、焦点検出時に間欠発光して被写体に間欠的にAF補助光を投光して被写体を照明する。なお、測光部46に代わり、システム制御部50が、画像処理部20により生成された画像データから輝度を演算した結果に基づいて、シャッタ制御部36と撮像レンズ300内の絞り制御部344に対してAE制御を行うことも可能である。
LEDランプ49は、被写体を照明する光源として、常時発光(連続発光)が可能な発光手段(第2の発光手段)である。LEDランプ49が発するLED光は、AF補助光であるLED補助光として機能する以外に、いわゆる赤目現象を軽減する機能や、セルフタイマー撮像時の撮像タイミングの指標として使用することも可能である。
システム制御部50は、撮像装置1全体の動作を制御する。システム制御部50は、CPU(Central Processing Unit)を備え、メモリ52などに記憶されているプログラムを実行することで、撮像装置1の機能が実現される。メモリ52は、システム制御部50の動作に用いられる定数、変数、プログラム等を記憶する。
表示部54は、液晶表示パネルやLED等の表示デバイスにより構成され、文字、画像および音声等を用いて動作状態やメッセージ等を表示する。具体的には、撮像済画像数、残撮像可能画像数等の撮像画像数に関する情報、シャッタスピード、絞り値、露出補正およびフラッシュ発光の有無等の撮像条件に関する情報、電池残量や日付・時刻等を表示する。前述したように表示部54で表示される情報の一部は、光学ファインダ104で表示されてもよい。また、表示部54と画像表示部28が同一の表示デバイスで表示を行ってもよい。
不揮発性メモリ56は、電気的に記録および消去可能なメモリであり、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等により構成される。モードダイアル60、シャッタスイッチ62、シャッタスイッチ64、画像表示オン/オフスイッチ66、クイックレビューオン/オフスイッチ68および操作部70は、システム制御部50に対して各種動作指示を入力するためにユーザにより操作される。操作部70は、スイッチ、ダイアル、タッチパネル、視線検知によるポインティングデバイス、音声認識デバイス等を含む。
電源制御部80は、コネクタ82およびコネクタ84を介して、電源部86を制御する。電池検出部、DC/DCコンバータおよび通電するブロックを切り替えるスイッチ部を含む。電源制御部80は、電池検出部を通じて電池の装着の有無、電池の種類および電池残量を検出し、検出結果およびシステム制御部50からの指示に応じてDC/DCコンバータを制御し、必要な電圧を必要な期間、記録媒体を含む各部に供給する。電源部86は、例えば、アルカリ電池やリチウム電池等の一次電池やNiCd電池やNiMH電池、リチウムイオン電池等の二次電池、ACアダプタ等の電源である。
インタフェース90は、コネクタ92を介して、記録媒体94とカメラ100を接続する。記録媒体94は、メモリカードやハードディスク等の記録媒体である。記録媒体着脱検知部98は、コネクタ92に記録媒体94が接続されているか否かを検知する。
次に、撮像レンズ300の構成について説明する。撮像レンズ300は、ズームレンズ310、フォーカスレンズ311および絞り312等を含む撮像光学系を備える。また、撮像レンズ300は、ズーム制御部340、フォーカス制御部342、絞り制御部344、レンズ制御部346、不揮発性メモリ348、レンズマウント306およびコネクタ322を備える。
ズーム制御部340は、ズームレンズ310を光軸方向に移動させて変倍を行う。焦点調節手段としてのフォーカス制御部342は、フォーカスレンズ311を光軸方向に移動させて焦点調節を行う。フォーカス制御部342は、例えば、デフォーカス量が小さくなるようにフォーカスレンズ311を駆動する。絞り制御部344は、測光部46およびシステム制御部50からの測光情報に基づいて絞り312を駆動する。
レンズ制御部346は、例えばCPUとプログラム等を記憶したメモリを備え、撮像レンズ300全体の動作を制御する。不揮発性メモリ348は、撮像レンズ300に固有の製造番号等の識別情報や、開放絞り値、最小絞り値および焦点距離等の光学情報や、現在または過去の各種設定値等を記憶する。また、不揮発性メモリ348には、撮像レンズ300の状態に応じた枠情報やデフォーカス関連情報も記憶されている。
枠情報は、撮像レンズ(撮像光学系)300を通過する光束の径を決定する枠に関する情報である。具体的には、撮像素子14から枠までの距離と、枠の光束通過開口の半径を示す情報である。枠の1つは絞り312であり、他にも撮像光学系を構成するレンズを保持するレンズ保持部材の開口が枠に相当する。枠は、ズームレンズ310の位置(ズーム位置)やフォーカスレンズ311の位置(フォーカス位置)に応じて異なるため、ズーム位置ごとおよびフォーカス位置ごとに用意されている。焦点検出を行う際には、ズーム位置とフォーカス位置に応じた最適な枠情報が選択され、枠情報がレンズ制御部346からシステム制御部50に送られる。デフォーカス関連情報は、被写体距離ごとの無限遠端および至近端までのデフォーカス量の情報であり、フォーカス位置に対応付けられた被写体距離ごとに分割されて記憶されている。
カメラ100のカメラマウント106には、撮像レンズ300のレンズマウント306が機械的および電気的に着脱可能に装着される。カメラマウント106およびレンズマウント306には、撮像レンズ300をカメラ100と電気的に接続する電気接点部としてのコネクタ122およびコネクタ322が設けられている。
次に、撮像素子14の構成について図2(A)、図2(B)および図3を用いて説明する。図2(A)は、撮像素子14が有する焦点検出に用いる信号を出力可能な画素200の構成を示す図である。画素200は、一対の光電変換部としての2つの光電変換部201aおよび光電変換部201bを備える。光電変換部201aおよび光電変換部201bは、例えば、フォトダイオードである。なお、本実施形態では、2つの光電変換部を備える例を説明するが、これに限られるものではなく、例えば4つなど複数の光電変換部を備えていてもよい。
画素200は、さらに、転送スイッチ202a、転送スイッチ202b、リセットスイッチ205および選択スイッチ206を備える。各スイッチは、例えば、MOSトランジスタ等により構成される。また、画素200は、フローティングディフュージョン領域203および増幅部204を備える。以下の説明では、各スイッチが、N型MOSトランジスタにより構成されている例を説明するが、各スイッチはP型MOSトランジスタにより構成されていてもよく、さらに他のスイッチング素子により構成されていてもよい。
図2(B)は、撮像素子14の画素配列を模式的に示した図である。撮像素子14には、複数の画素が、水平n画素×垂直m画素の2次元の配列で配置されている。各画素にはマイクロレンズ201cが設けられ、光電変換部201aおよび光電変換部201bは、1つのマイクロレンズ201cを共有する。すなわち、光電変換部201aおよび光電変換部201bはそれぞれ、同一のマイクロレンズ201cを通過した光を受光して光電変換し、その受光量に応じた電荷を発生する。以下の説明において、光電変換部201aで発生した電荷により得られる信号をA信号、光電変換部201bで発生した電荷により得られる信号をB信号とする。
転送スイッチ202aは、光電変換部201aとフローティングディフュージョン領域203との間に接続される。転送スイッチ202bは、光電変換部201bとフローティングディフュージョン領域203との間に接続される。転送スイッチ202aは、光電変換部201aで発生した電荷を共通のフローティングディフュージョン領域203に転送する。転送スイッチ202bは、光電変換部201bで発生した電荷を共通のフローティングディフュージョン領域203に転送する。転送スイッチ202aおよび転送スイッチ202bはそれぞれ、制御信号TX_A,TX_Bによって制御される。
フローティングディフュージョン領域203は、光電変換部201aおよび光電変換部201bから転送された電荷を一時的に保持するとともに、保持した電荷を電圧信号に変換する。増幅部204は、例えば、ソースフォロワMOSトランジスタである。増幅部204のゲートは、フローティングディフュージョン領域203に接続され、増幅部204のドレインは電源電位VDDを供給する共通電源208に接続される。増幅部204は、フローティングディフュージョン領域203に保持された電荷により得られる電圧信号を増幅して出力する。
リセットスイッチ205は、フローティングディフュージョン領域203と共通電源208との間に接続される。リセットスイッチ205は、制御信号RESによって制御され、フローティングディフュージョン領域203の電位を電源電位VDDにリセットする。選択スイッチ206は、増幅部204のソースと垂直出力線207の間に接続される。選択スイッチ206は、制御信号SELによって制御され、増幅部204で増幅された電圧信号を垂直出力線207に出力する。
図3は、撮像素子14の構成を示す図である。撮像素子14は、画素アレイ234、垂直走査回路209、電流源負荷210、読み出し回路235、共通出力線228、共通出力線229、水平走査回路232およびデータ出力部233を備える。
画素アレイ234は、行列状に配置された複数の画素200を有する。図3では説明を簡略化するために、水平方向n画素×垂直方向4画素を示している。また、各画素200には、複数色のカラーフィルタのうちいずれか1つが設けられている。カラーフィルタの色は、例えば、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)である。これらのカラーフィルタが設けられたn×m画素は、例えば、ベイヤー配列に従って配置される。また、画素アレイ234の一部が遮光層で遮光され、オプティカルブラック(OB)領域を形成する。
垂直走査回路209は、画素行ごとに設けられた駆動信号線236を介して、各画素行の画素200に各種の制御信号を出力する。なお、図3では駆動信号線236は画素行ごとに1本ずつ示されているが、実際には画素行ごとに複数の駆動信号線が接続されている。
画素アレイ234の画素200は、画素列ごとに共通の垂直出力線207に接続される。各画素200から出力される信号は、垂直出力線207を介して読み出し回路235に入力され、読み出し回路235で処理される。電流源負荷210は、各画素列の垂直出力線207に接続される。
水平走査回路232は、それぞれ1つの読み出し回路235に対応する制御信号hsr(0)~hsr(n-1)を出力する。水平走査回路232は、複数の読み出し回路235の中から信号を出力させる読み出し回路を制御信号hsrで順次選択する。選択された読み出し回路235は、共通出力線228および共通出力線229を介して、データ出力部233に信号を出力する。
読み出し回路235の具体的な構成を説明する。読み出し回路235は、クランプ容量211、フィードバック容量214~216、オペアンプ213、基準電圧源212およびスイッチ217~220を有する。また、読み出し回路235は、比較器221、Latch_N222、Latch_S223、スイッチ226およびスイッチ227を有する。
垂直出力線207を介して読み出し回路235に入力される信号は、クランプ容量211を介してオペアンプ213の反転入力端子に入力される。オペアンプ213の非反転入力端子には、基準電圧源212から基準電圧Vrefが供給される。フィードバック容量214~216は、オペアンプ213の反転入力端子と出力端子の間に接続される。スイッチ217は、オペアンプ213の反転入力端子と出力端子の間に接続され、フィードバック容量214~216の両端をショートさせる機能を有する。スイッチ217は、制御信号RES_Cにより制御される。また、スイッチ218~220は、システム制御部50からの制御信号GAIN0~GAIN2で制御される。
比較器221には、オペアンプ213の出力端子と、ランプ信号発生器230から出力されるランプ信号224が接続される。比較器221には、オペアンプ213の出力信号と、ランプ信号224が入力される。Latch_N222は、ノイズレベル(N信号)を保持するための記憶素子である。Latch_S223は、A信号と、A信号およびB信号が加算されたAB信号の信号レベル(S信号)を保持するための記憶素子である。
比較器221の出力(比較結果を表す値)とカウンタ231の出力であるカウンタ値225が、Latch_N222とLatch_S223にそれぞれ入力される。Latch_N222とLatch_S223の動作は、それぞれLATEN_N、LATEN_Sで制御される。Latch_N222の出力端子は、スイッチ226を介して共通出力線228に接続される。Latch_N222で保持したノイズレベルは、スイッチ226を介して共通出力線228に出力される。Latch_S223の出力端子は、スイッチ227を介して共通出力線229に接続される。Latch_S223で保持した信号レベルは、スイッチ227を介して共通出力線229に出力される。
スイッチ226およびスイッチ227は、水平走査回路232からの制御信号hsr(h)により制御される。ここで、hは制御信号線が接続されている読み出し回路235の列番号を示す。各読み出し回路235のLatch_N222およびLatch_S223に保持された信号レベルは、共通出力線238、共通出力線229を介して順次データ出力部233へ出力され、データ出力部233から外部へ出力される。この読み出し回路235で保持された信号レベルを順次外部に出力する動作を水平転送と呼ぶ。
なお、読み出し回路に入力される制御信号(hsr()を除く)や、垂直走査回路209、水平走査回路232、ランプ信号発生器230、カウンタ231の制御信号は、タイミング発生部18やシステム制御部50から供給される。
本実施例では、撮像素子14は、第1の読み出しモードと第2の読み出しモードとを有する。第1の読み出しモードは全画素読み出しモードであり、第2の読み出しモードは間引き読み出しモードである。
第1の読み出しモードである全画素読み出しモードでは、記録用の高精細の静止画を撮像するために、全画素から出力信号が読み出される。第2の読み出しモードである間引き読み出しモードでは、記録用の静止画よりも画素数が少ないライブビュー画像や記録用の動画の表示を行うために、全画素のうち一部の画素からの出力信号のみが読み出される。ライブビュー画像や動画の生成に必要な画素数は全画素数よりも少ないため、撮像素子14から水平方向および垂直方向ともに所定比率で間引いた数の画素から出力信号を読み出す。間引き読み出しモードでは、全画素モードに比べて読み出す出力信号が少ないため、信号処理負荷を軽減するとともに、消費電力の低減にも寄与する。
なお、第1の読み出しモードおよび第2の読み出しモードのいずれにおいても、各画素に設けられた各光電変換部からの出力信号は独立して読み出しされるため、いずれの読み出しモードでも一対の位相差像信号の生成が可能である。なお、「間引き」は読み出し自体を行わないことだけでなく、読み出しされた信号を棄てる(無視する)構成や、読み出した複数の信号から1つの信号を生成する構成も含む。例えば、隣接する複数の画素から読み出した信号を平均して1つの信号を生成することで、S/Nを改善することができる。
図4(A)は、撮像レンズ300の射出瞳面と、撮像素子14の像高0付近、すなわち像面の中央近傍に配置された画素200(以下、中央画素という)の一対の光電変換部である光電変換部201aと光電変換部201bとの共役関係を説明する図である。撮像レンズ300の射出瞳面と光電変換部201aおよび光電変換部201bとは、マイクロレンズ201cによって共役関係となるように設定されている。
撮像レンズ300の射出瞳は、一般的に、絞り312が配置された面に位置する。一方、本実施形態の撮像レンズ300は変倍機能(ズーム機能)を有し、変倍によって像面からの射出瞳までの距離(射出瞳距離)が変化する。図4(A)は、焦点距離が広角端と望遠端との間の中間ズーム状態にある場合を示している。中間ズーム状態における射出瞳距離を、標準的な射出瞳距離Zepと仮定し、マイクロレンズ201cの形状や、像高(画面中心からの距離、または、XY座標)に応じた偏心パラメータが最適化される。
撮像レンズ300は、第1レンズ群301、第1レンズ群を保持する鏡筒部材301b、フォーカスレンズ311、およびフォーカスレンズ311を保持する鏡筒部材311bを備える。第1レンズ群301は、最も被写体側に配置されたレンズ群である。また、撮像レンズ300は、絞り312の開放口径を決める開口を有する開口板312aおよびは絞り込み開口径を調節するための絞り羽根312bを備える。なお、図4(A)では、撮像レンズ300を通過する光束を制限する部材として作用する鏡筒部材301b、開口板312a、絞り羽根312b、鏡筒部材311bは、像面側から観察した場合の光学的な虚像として示している。また、絞り312の近傍における合成開口を撮像レンズ300の射出瞳(以下、レンズ射出瞳という)と定義し、像面からの距離を射出瞳距離Zepとする。光束Lは、撮像レンズ300を通過する光束であり、図4(A)ではその外縁を直線で示している。光束Lは、絞り312の開口板312aによって制限されている。
画素200の最下層には、一対の光電変換部である光電変換部201aおよび光電変換部201bが配置される。光電変換部201aおよび光電変換部201bの上層には、下から順に、配線層201e~201g、カラーフィルタ201hおよびマイクロレンズ201cが設けられている。光電変換部201aおよび光電変換部201bは、マイクロレンズ201cによってレンズ射出瞳面上にそれぞれ像EP1aおよび像EP1bとして逆投影される。言い換えれば、レンズ射出瞳のうち互いに異なる瞳領域(以下、焦点検出瞳という)である焦点検出瞳EP1aおよび焦点検出瞳EP1bが、マイクロレンズ201cを介して、それぞれ光電変換部201aおよび光電変換部201bの表面に投影される。
図4(B)は、撮像レンズ300の射出瞳面上における、光電変換部201aおよび光電変換部201bの逆投影像である像EP1aおよび像EP1bを示す図である。図4(B)は、光軸方向から見た場合を示している。撮像素子14は、2つの光電変換部201aおよび光電変換部201bのうち一方からの信号を出力することができるとともに、これらの両方からの信号を加算して出力できる画素を有する。加算して出力された信号は、焦点検出瞳EP1aおよび焦点検出瞳EP1bを通過した全ての光束を光電変換して得られた信号である。
円TLは、絞り312の開口板312aで規定される、画素200への光束Lの最大入射範囲を射出瞳面に示したものである。円TLは開口板312aで規定されるため、図では円TLを312aとも記載している。図4(B)は中央画素を示しているため、光束のケラレは光軸(図4(A)に一点鎖線で示す)に対して対称となり、光電変換部201aおよび光電変換部201bは同じ大きさの瞳領域を通過した光束を受光する。そして、円TLには、像EP1aおよび像EP1bの大部分が含まれるため、光束のケラレはほぼ発生しない。従って、光電変換部201aおよび光電変換部201bで光電変換された信号を加算した場合、円TL、すなわち射出瞳領域のほぼ全体を通過した光束を光電変換した結果が得られる。
このように、本実施形態の撮像素子14は、被写体像を撮像する機能だけではなく、レンズ射出瞳における互いに異なる焦点検出瞳からの光束を個別に受光して撮像面位相差検出方式の焦点検出を行う機能も有する。なお、本実施形態では、1つの画素200が一対の光電変換部を有する場合について説明するが、互いに異なる一部が遮光された2つの焦点検出専用画素を一対の光電変換部として用いてもよい。
図5は、画素200と瞳分割との対応関係を説明する図である。図5において、光電変換部201aは重心が-x方向に偏心し、光電変換部201bは重心が+x方向に偏心している。第1瞳部分領域501は、光電変換部201aの受光面と、マイクロレンズ201cによって概ね共役関係になっており、光電変換部201aで受光可能な瞳領域を表している。第1瞳部分領域501は、瞳面上で+X側に重心が偏心している。第2瞳部分領域502は、光電変換部202の受光面と、マイクロレンズによって概ね共役関係になっており、光電変換部201bで受光可能な瞳領域を表している。第2瞳部分領域502は、瞳面上で-X側に重心が偏心している。
瞳領域500は、光電変換部201aと光電変換部201bを合わせた際の画素200全体で受光可能な瞳領域である。撮像素子14を用いた撮像面位相差AFでは、撮像素子14の各画素のマイクロレンズ201cを利用して瞳分割するため回折の影響を受ける。撮像素子14の瞳面までの瞳距離が数10mmであるのに対し、マイクロレンズ201cの直径は数μmである。そのため、マイクロレンズ201cの絞り値が数万となり、数10mmレベルの回折ボケが生じる。よって、光電変換部の受光面の像は、明瞭な瞳領域や瞳部分領域とはならずに、受光感度特性(受光率の入射角分布)となる。
図6は、撮像素子14と瞳分割との対応関係を説明する図である。撮像面800に撮像素子14が配置されている。第1瞳部分領域501と第2瞳部分領域502の異なる瞳部分領域を通過した光束は、撮像素子14の各画素にそれぞれ異なる角度で入射し、2×1分割された一対の光電変換部201aおよび光電変換部201bでそれぞれ受光される。本実施形態では、瞳領域が水平方向に2つに瞳分割されている例を説明するが、垂直方向に瞳分割を行ってもよい。
撮像素子14には、一対の光電変換部201aおよび光電変換部201bを有する画素200が複数配列されている。本実施形態では全画素が一対の光電変換部201aおよび光電変換部201bを有している例を説明するが、これに限られるものではなく、一対の光電変換部201aおよび光電変換部201bを有する画素を部分的に配置する構成でもよい。光電変換部201aは、撮像レンズ300の第1瞳部分領域を通過する光束を受光する。光電変換部201bは、第1瞳部分領域と異なる撮像レンズ300の第2瞳部分領域を通過する光束を受光する。また、画素200は、撮像レンズ300の第1瞳部分領域と第2瞳部分領域を合わせた瞳領域を通過する光束を受光する。
撮像素子14の各画素の光電変換部201aの受光信号を集めて第1焦点信号を生成し、各画素の光電変換部201bの受光信号を集めて第2焦点信号を生成して、焦点検出を行う。また、画素200ごとに、光電変換部201aの信号(A信号)と光電変換部201bの信号(B信号)を加算することで、有効画素数Nの解像度の撮像信号(撮像画像、AB信号)を生成する。なお、各信号の生成方法は、これに限られるものではなく、例えば、光電変換部201bの焦点検出信号は、撮像信号と光電変換部201aの信号の差分から生成してもよい。
次に、光電変換部201aの信号から生成される第1焦点検出信号と光電変換部201bの信号から生成される第2焦点検出信号のデフォーカス量と像ずれ量の関係について説明する。図7は、第1焦点検出信号と第2焦点検出信号のデフォーカス量および像ずれ量を説明する図である。
撮像面800に撮像素子14が配置され、図5、図6と同様に、撮像素子14の瞳面が、第1瞳部分領域501と第2瞳部分領域502に2分割される。デフォーカス量dは、被写体の結像位置から撮像面800までの距離を大きさ|d|で表される。被写体の結像位置が撮像面800より被写体側にある前ピン状態を負符号(d<0)として定義する。また、被写体の結像位置が撮像面800より被写体の反対側にある後ピン状態を正符号(d>0)として定義する。被写体の結像位置が撮像面800にある合焦状態はd=0である。
図7において、被写体801は合焦状態(d=0)の例を示している。被写体802は前ピン状態(d<0)の例を示している。前ピン状態(d<0)と後ピン状態(d>0)を合わせて、デフォーカス状態(|d|>0)とする。前ピン状態(d<0)では、被写体802からの光束のうち第1瞳部分領域501を通過した光束は、一度、集光した後、光束の重心位置G1を中心として幅Γ1に広がり、撮像面800でボケた像となる。ボケた像は、撮像素子14に配列された各画素を構成する光電変換部201aからなる第1焦点検出画素により受光され、第1焦点検出信号が生成される。また、前ピン状態(d<0)では、被写体802からの光束のうち第2瞳部分領域502を通過した光束は、一度、集光した後、光束の重心位置G2を中心として幅Γ2に広がり、撮像面800でボケた像となる。ボケた像は、撮像素子14に配列された各画素を構成する光電変換部201bからなる第2焦点検出画素により受光され、第2焦点検出信号が生成される。
第1焦点検出信号には、被写体802が、撮像面800上の重心位置G1に幅Γ1にボケた被写体像として記録される。また、第2焦点検出信号には、被写体802が、撮像面800上の重心位置G2に幅Γ2にボケた被写体像として記録される。被写体像のボケ幅Γ1(Γ2)は、デフォーカス量dの大きさ|d|が増加するのに伴い、概ね、比例して増加していく。
同様に、第1焦点検出信号と第2焦点検出信号間の被写体像の像ずれ量p(=光束の重心位置の差G1-G2)の大きさ|p|も、デフォーカス量dの大きさ|d|が増加するのに伴い、概ね、比例して増加していく。なお、後ピン状態(d>0)でも、第1焦点検出信号と第2焦点検出信号間の被写体像の像ずれ方向が前ピン状態と反対となるが、同様である。このように、第1焦点検出信号と第2焦点検出信号、もしくは、第1焦点検出信号と第2焦点検出信号を加算した撮像信号のデフォーカス量の大きさが増加するのに伴い、第1焦点検出信号と第2焦点検出信号間の像ずれ量の大きさが増加する。
次に、位相差方式の焦点検出について説明する。位相差方式の焦点検出では、第1焦点検出信号と第2焦点検出信号を相対的にシフトさせて信号の一致度を表す相関量を計算し、相関(信号の一致度)が高くなるシフト量から像ずれ量を検出する。撮像信号のデフォーカス量の大きさが増加するのに伴い、第1焦点検出信号と第2焦点検出信号間の像ずれ量の大きさが増加する関係性から、像ずれ量を変換係数により検出デフォーカス量に変換して焦点検出を行う。
図8は、焦点検出領域を説明する図である。撮像素子14の撮像範囲4000内に焦点検出領域4001が設けられている。本実施形態では、3つの焦点検出領域4001で撮像面位相差検出方式の焦点検出を行う例を説明するが、焦点検出領域4001数はこれに限られるものではなく、1つであってもよいし複数であってもよい。焦点検出領域4001内では、水平方向のコントラスト差を用いて位相差を検出する。
図9は、一対の位相差像信号を説明する図である。一対の位相差像信号430aおよび位相差像信号430bは、撮像素子14における焦点検出領域4001内の複数の画素200から得られたA信号同士およびB信号同士をそれぞれ連結し、さらに画像処理部20よる各種画像処理が行われた信号である。一対の位相差像信号430aおよび位相差像信号430bは、AF部42に送られる。
図9において、横軸は互いに連結された信号(A信号またはB信号)の画素配列方向を示し、縦軸は該信号の強度を示す。一対の位相差像信号430aおよび位相差像信号430bは、撮像レンズ300が被写体に対してデフォーカスした状態(非合焦状態)で撮像された信号である。合焦状態に比べて、位相差像信号430aは左側にずれ、位相差像信号430bは右側にずれている。AF部42は、一対の位相差像信号430aおよび位相差像信号430bのずれ量(位相差)を相関演算を用いて算出し、該位相差に基づいて撮像レンズ300の被写体に対するデフォーカス量を求める。
システム制御部50は、レンズ制御部346から送信されたフォーカス敏感度(フォーカスレンズ311の単位移動量に対する像面移動量)の情報およびAF部42から得られたたデフォーカス量とから、フォーカスレンズ311の駆動量を算出する。さらに、システム制御部50は、レンズ制御部346から送信されたフォーカス位置の情報とフォーカスレンズ311の駆動量から、フォーカスレンズ311を移動させる目標位置の情報を求めて、レンズ制御部346に送信する。レンズ制御部346は、フォーカス制御部342を通じてフォーカスレンズ311を目標位置に移動させる。以上により、撮像面位相差AFによる焦点調節が行われる。
次に、カメラ100における撮像制御処理(制御方法)について説明する。図10は、ライブビュー画像を表示する状態から静止画撮像を行う場合の撮像制御処理を示すフローチャートである。システム制御部50が、制御プログラムに従って本処理を実行する。
ステップS1001において、システム制御部50は、ライブビュー画像を生成するための撮像素子14による撮像を開始させ、撮像信号を取得する。そして、取得した撮像信号を画像処理部20に入力させる。ステップS1002において、システム制御部50は、画像処理部20に撮像信号からライブビュー画像データおよび焦点検出データを生成させる。
ステップS1003において、システム制御部50は、生成されたライブビュー画像データに基づいてライブビュー画像を画像表示部28に表示する。ユーザは、このライブビュー画像を見ることで撮像構図を決定することができる。ライブビュー画像は、ユーザが撮像範囲や撮像条件を確認するために用いられ、所定時間間隔、例えば33.3ms(30fps)や16.6ms(60fps)で更新される。
なお、システム制御部50は、後述するAF補助光の発光時には画像表示部28にライブビュー画像を表示しないように制御してもよい。例えば、AF補助光が閃光発光を用いたAF補助光(以下、閃光補助光という)の場合は、被写体の一部が輝度飽和する等して高質の画像を取得できないおそれがある。そのため、閃光補助光の発光時にはライブビュー画像の表示を停止して、その後表示を再開すればよい。閃光発光を行う場合でも、輝度飽和する領域が限定的であったり閃光発光量が小さかったりする場合は、ライブビュー画像の表示を継続してもよい。一方、AF補助光がLEDから発光されるAF補助光(以下、LED補助光という)の場合は、常時発光が可能であり、測光部46により表示画像を適正露出状態に保つことができるため、ライブビュー画像の表示を停止する必要はない。
ステップS1004において、システム制御部50は、AF部42による焦点検出処理を行わせる。AF部42は、図8に示した3つの焦点検出領域4001における焦点検出データを用いて焦点検出処理を行う。AF部42は、図9に示した一対の位相差像信号の位相差からデフォーカス量を算出するまでの焦点検出処理を行う。焦点検出処理の詳細については、図11を用いて後述する。
ステップS1005において、システム制御部50は、撮像準備開始指示としてのスイッチSW1(シャッタスイッチ62)のオン/オフを検出する。スイッチSW1は、例えば、シャッタスイッチの半押し操作によりオンになる。スイッチSW1がオンである場合は、ステップS1006に進む。一方、スイッチSW1がオフである場合は、ステップS1010に進む。
ステップS1006において、システム制御部50は、焦点検出領域モードを取得する。焦点検出領域モードは、任意選択モード、自動選択モードおよび被写体検出モードを含む。任意選択モードは、ユーザが指定した1または複数の焦点検出領域を設定するモードである。自動選択モードは、システム制御部50が1または複数の焦点検出領域を設定するモードである。被写体検出モードは、人物の顔等の特定の被写体を検出して1または複数の焦点検出領域を設定するモードである。被写体検出モードの場合、システム制御部50は、人物の顔等の特定の被写体の情報である被写体検出情報を取得し、焦点検出領域の位置、配置および数を設定する。
ステップS1007において、システム制御部50は、AF部42による焦点調節処理を行わせる。AF部42は、ステップS1006において取得された焦点検出領域モードに応じて設定された焦点検出領域4001で焦点調節処理を行う。焦点調節処理の詳細については、図16を用いて後述する。
ステップS1008において、システム制御部50は、撮像開始指示としてのスイッチSW2(シャッタスイッチ64)のオン/オフを検出する。スイッチSW2は、例えば、シャッタスイッチの全押し操作によりオンになる。システム制御部50は、スイッチSW2がオンになるまで待機し、スイッチSW2がオンになるとステップS1009に進む。
ステップS1009において、システム制御部50は、撮像処理を行う。撮像処理の詳細については、図19を用いて後述する。ステップS1010において、システム制御部50は、メイン(電源)スイッチがオフされたか否かを判定する。メインスイッチがオフされていない場合、ステップS1002に戻る。一方、メインスイッチがオフされた場合、本フローを終了する。
次に、図10のステップS1004の焦点検出処理の詳細について説明する。図11は、焦点検出処理を示すフローチャートである。
ステップS1101において、AF部42は、撮像素子14の有効画素領域の中から焦点調節を行う対象となる焦点検出領域を設定する。ステップS1102において、AF部42は、撮像素子14から、焦点検出領域の画素の光電変換部201aの受光信号から第1焦点検出信号(A信号)を取得し、光電変換部201bの受光信号から第2焦点検出信号(B信号)を取得する。
ステップS1103において、AF部42は、第1焦点検出信号と第2焦点検出信号それぞれに、シェーディング補正処理(光学補正処理)を行う。位相差検出方式の焦点検出では、第1焦点検出信号と第2焦点検出信号との相関(信号の一致度)に基づいて、ピント(焦点状態)を検出する。シェーディングが生じると、第1焦点検出信号と第2焦点検出信号との相関が低下する場合がある。そのため、第1焦点検出信号と第2焦点検出信号との相関を改善して焦点検出を良好に行うため、シェーディング補正処理を行うことが好ましい。
ステップS1104において、AF部42は、第1焦点検出信号と第2焦点検出信号とのそれぞれに対してフィルタ処理を行う。一般的に、位相差検出方式の焦点検出では、大デフォーカス状態での焦点検出を行うため、フィルタ処理の通過帯域は低周波帯域を含むように構成される。ただし、必要に応じて、大デフォーカス状態から小デフォーカス状態まで焦点調節を行う際に、デフォーカス状態に応じて、焦点検出の際のフィルタ処理の通過帯域を高周波帯域側に調整してもよい。
ステップS1105において、AF部42は、フィルタ処理後の第1焦点検出信号と第2焦点検出信号とに対して、相関演算を行い、信号の一致度を表す相関値(第1焦点検出信号と第2焦点検出信号との相関演算結果)を算出する。ステップS1106において、AF部42は、ステップS1105にて算出された相関値に基づいて、像ずれ量を算出する。具体的には、AF部42は、サブピクセル演算により、相関値が最小値となるシフト量に基づいて像ずれ量Xを算出する。
ステップS1107において、AF部42は、ステップS1106にて算出した像ずれ量をデフォーカス量へ変換する変換係数Kを算出する(変換係数算出)。なお、変換係数算出の詳細については、図14を用いて後述する。ステップS1108において、AF部42は、デフォーカス量を算出する。具体的には、AF部42は、ステップS1106において算出された像ずれ量Xと、ステップS1107において算出された変換係数Kに基づいて、式(1)にてデフォーカス量を算出する。
以上で、焦点検出に関する本フローは終了する。
次に、レンズの枠ケラレに関して説明する。図12(A)および図12(B)は、枠ケラレを説明する図である。光電変換部201aの第1瞳部分領域501、光電変換部201bの第2瞳部分領域502、撮像レンズ300の絞り312(第3の開口情報)、下線枠401(第1の開口情報)、上線枠402(第2の開口情報)の関係を模式的に示している。なお、下線枠401は、例えば、図4で説明したフォーカスレンズ311を保持する鏡筒部材311bによる枠である。上線枠402は、例えば、第1レンズ群を保持する鏡筒部材301bによる枠である。
図12(A)は、ステップS1101で設定する焦点検出領域が中央像高((x,y)=(0,0))に設定されたときの枠ケラレの状態を示している。焦点検出領域が中央像高の場合、枠ケラレは絞り312により生じ、基線長(焦点検出瞳間の重心間隔)はBL1の長さとなる。図12(B)は、ステップS1101で設定する焦点検出領域が周辺像高((x,y)=(-10,0))に設定されたときの枠ケラレの状態を示している。焦点検出領域が周辺像高の場合、枠ケラレは絞り312、下線枠401および上線枠402により生じ、基線長はBL2の長さとなる。
周辺像高では、複数のレンズ枠によりケラレているため、周辺像高の基線長BL2は、中央像高の基線長BL1よりも短い。また、周辺像高では、複数のレンズ枠および絞り枠によりケラレるため、開口形状は円形ではない複雑な形状となる。そのため、周辺像高で基線長を算出する場合には、絞り312、下線枠401、上線枠402の情報を用いて、複雑な開口形状を考慮して算出する必要がある。
図13(A)~(C)は、各像高におけるレンズの枠ケラレを説明する図である。図13(D)は、像高を説明する図である。図13(A)は、ステップS1101で設定する焦点検出領域が像高901((x,y)=(-10,0))に設定されたときの枠ケラレの状態を示している。図13(B)は、ステップS1101で設定する焦点検出領域が像高902((x,y)=(-3.2,3.2))に設定されたときの枠ケラレの状態を示している。図13(C)は、ステップS1101で設定する焦点検出領域が像高903((x,y)=(0,10))に設定されたときの枠ケラレの状態を示している。図13(A)~(C)のいずれの像高も中心像高からの距離rが10となる位置である。
図13(D)の距離900は、中心像高からの距離が10となる像高位置を示している。像高901(Y=0、X<0の像高)を基準とすると、像高902は像高901に対してθ1回転した位置であり、像高903は像高901に対してθ2回転した位置である。撮像素子14の瞳面では、距離900上の像高に対する開口形状は同一形状で回転角θ回転した状態となる。そのため、図13(B)は図13(A)に対して回転角θ1回転した状態となっている。同様に、図13(C)は、図13(A)に対して回転角θ2回転した状態となっている。
図13(A)~(C)では、いずれにおいても枠ケラレは絞り312、下線枠401、上線枠402により生じ、開口形状は同じであるが、回転角が異なる。そのため、図13(A)の基線長はBL2、図13(B)の基線長はBL3、図13(C)の基線長はBL4の長さとなり、それぞれ異なる。このように、基線長は、撮像素子の瞳面における、レンズの枠ケラレ形状(第1の開口情報、第2の開口情報、第3の開口情報)と回転角により決定される。
次に、図11のステップS1107の変換係数算出について説明する。図14は、変換係数算出処理を示すフローチャートである。図14の各ステップは、主にシステム制御部50およびレンズ制御部346により実行される。ステップS1401において、システム制御部50は、焦点検出時の像高距離r、絞り値、瞳距離の情報をレンズ制御部346に送信する。像高距離rは、図11のステップS1101で設定した焦点検出領域に対応する情報であり、式(2)にて算出される。
ステップS1402において、レンズ制御部346は、現在のズームステート、フォーカスステートを取得する。ステップS1403において、レンズ制御部346は、撮像レンズ300の下線枠401(第1の開口情報)、上線枠402(第2の開口情報)、絞り312(第3の開口情報)の情報を取得する。レンズ制御部346は、下線枠401(第1の開口情報)、上線枠402(第2の開口情報)、絞り312(第3の開口情報)の情報をステップS1401で取得した像高距離r、絞り値、ステップS1402で取得したズームステート、フォーカスステートに基づいて取得する。
ステップS1404において、レンズ制御部346は、撮像素子14の瞳距離における各開口情報の中心位置と大きさを算出する。レンズ制御部346は、ステップS1403で取得した下線枠401(第1の開口情報)、上線枠402(第2の開口情報)、絞り312(第3の開口情報)の情報から、撮像素子14の瞳距離における各開口情報の中心位置と大きさを算出する。
各開口情報の中心位置と大きさについて、図15を用いて説明する。図15は、撮像素子14の瞳距離における各開口情報の中心位置と大きさを説明する図である。下線枠401(第1の開口情報)、上線枠402(第2の開口情報)、絞り312(第3の開口情報)の中心位置は、それぞれc1、c2、c3で表される。下線枠401(第1の開口情報)、上線枠402(第2の開口情報)、絞り312(第3の開口情報)の大きさは、それぞれr1、r2、r3で表される。本実施形態では、例えば、c1、r1、c2、r2、c3は像高距離毎に不揮発性メモリ348に予め記憶しておき、r3はステップS1401で取得した絞り値から計算にて算出するがこの限りではない。
図14の説明に戻る。ステップS1405において、レンズ制御部346は、ステップS1404で算出した、下線枠401(第1の開口情報)、上線枠402(第2の開口情報)、絞り312(第3の開口情報)の中心位置と大きさを、システム制御部50に送信する。ステップS1406において、システム制御部50は、図11のステップS1101で設定した焦点検出領域の像高座標(x,y)に応じて、回転角θを式(3)にて算出する。
ステップS2007において、システム制御部50は、ステップS1405で取得した、撮像素子14の瞳距離における各開口情報の中心位置と大きさから、ケラレ割合を算出する。算出するケラレ割合は、絞り312の下線枠401によるケラレ割合b1、絞り312の上線枠402によるケラレ割合b2である。ケラレ割合b1は、下線枠401(第1の開口情報)を、絞り312(第3の開口情報)の中心位置との距離に関する情報で表現したものに相当する。ケラレ割合b2は、下線枠402(第2の開口情報)を、絞り312(第3の開口情報)の中心位置との距離に関する情報で表現したものに相当する。ケラレ割合b1を式(4)、ケラレ割合b2を式(5)にて算出する。
ステップS1408において、システム制御部50は、ステップS1405で取得した、絞り312(第3の開口情報)の中心位置と大きさに応じた、変換係数算出に用いるθ、b1、b2に関する関数の係数を取得する。θ、b1、b2に関する関数の係数は、例えば、不揮発性メモリ348に記憶されている。係数は、θを複数範囲に分割して、分割範囲毎に保持している。本実施形態では、関数をθ、b1、b2に対する2次の関数としたときの、係数を取得するが、2次の関数に限定されるものではなく、1次の関数や3以上の関数であってもよい。また、変化の小さい変数に対する次数を小さくし、大きい変数の次数を大きくして、変数ごとに次数を異ならせてもよい。
ステップS1409において、システム制御部50は、変換係数を算出する。システム制御部50は、ステップS1406で算出した回転角θ、ステップS1407で算出したケラレ割合b1およびケラレ割合b2、ステップS1408で取得したθ、b1、b2に対する2次の関数の係数から、式(6)、式(7)にて変換係数を算出する。式(6)および式(7)においてBLは基線長である。式(6)において、m000、m001、m002、m020、m011、m002、m100、m101、m102、m120、m111、m102、m200、m201、m202、m220、m211、m202はステップS1408で取得した係数である。
以上の変換係数算出処理により、焦点検出信号間の像ずれ量からデフォーカス量への換算に必要な変換係数を開口状態に応じて算出することができ、焦点検出性能を向上することが可能となる。なお、基線長を関数で保持するのではなく、パラメータごとに直接保持し、パラメータ間の値は線形補間等にて算出してもよい。変換係数はレンズ関連情報である射出瞳距離や絞り枠や開口情報等によって変化するため、変換係数自体もレンズ関連情報である。レンズ関連情報は、撮像レンズ300の撮像光学系に関する情報である。レンズ関連情報には、像ずれ量のデフォーカス量への変換係数、射出瞳距離、絞り、開口情報、焦点距離、射出瞳距離情報、フォーカスステート、撮像光学系によるケラレに関する情報、周辺光量落ち特性に関する情報等が含まれる。
次に、図10のステップS1007の焦点調節処理について説明する。図16は、焦点調節処理を示すフローチャートである。ステップS1601において、システム制御部50は、ステップS1004で行われた焦点検出の結果としてのデフォーカス量を取得する。
ステップS1602において、システム制御部50は、取得したデフォーカス量の信頼性が焦点検出領域モードに応じて設定された全ての焦点検出領域で高いか否かを判定する。システム制御部50は、一対の位相差像信号の相関量の極小値と、相関演算において相関量が極小値を示すシフト量の近傍での相関量の差分の大きさとを用いてデフォーカス量の信頼性を判定する。
相関量は、一対の位相差像信号の相関度合いを示し、相関が高いほど小さい値となる。言い換えれば、相関量の極小値が小さいほど信頼性が高くなる。本実施形態では、相関量の極小値が閾値Thr1より小さければ信頼性が高いと判定する。理想的には、相関量の極小値は、一対の位相差像信号が完全に同一形状である場合に0となる。しかし、実際の一対の位相差像信号は、被写体からの光の拡散特性や光量調節誤差や画素ごとに個別に生じるノイズの影響等の影響によって互いに形状が異なる。このため、相関量の極小値は正の値となるのが一般的である。一方、一対の位相差像信号の形状の差が大きいほど、極小値の検出精度が低下し、結果的には焦点検出の精度が低下する。
また、相関量が極小値を示すシフト量近傍で得られた相関量の差分が大きいほど、シフト量を高精度に算出することができる。これは、相関量が誤差によりばらついた場合でも、相関量の差分が大きければシフト量の検出に与える影響が小さいためである。このことから、相関量の差分が閾値Thr2より大きい場合に信頼性が高いと判定する。
全ての焦点検出領域で信頼性が高いデフォーカス量が検出できた場合は、ステップS1603に進む。一方、全ての焦点検出領域で信頼性が高いデフォーカス量が検出できなかった場合は、ステップS1606に進む。ステップS1602において設定された全ての焦点検出領域で信頼性が高い場合にのみステップS1603に進むのは、焦点検出領域のいくつかがAF補助光の発光によって信頼性が高くなる可能性があるためである。システム制御部50は、信頼性が低い焦点検出領域が存在する場合にはAF補助光を用いた焦点検出を試みる。したがって、ステップS1602では、デフォーカス量の信頼性を判定することにより、AF補助光が必要か否かを判定している。
なお、本実施形態ではステップS1602において全ての焦点検出領域でデフォーカス量の信頼性が高いか否か判定したが、これに限られるものではない。例えば、焦点検出領域の数が多い場合などには、所定の割合以上の焦点検出領域で信頼性の高いデフォーカス量を取得できている場合には、AF補助光を使用する必要がないと判定するようにしてもよい。また、複数の焦点検出領域のうち像高が中央近傍の焦点検出領域におけるデフォーカス量の信頼性が高い場合には、AF補助光を使用する必要がないと判定するようにしてもよい。
ステップS1603において、システム制御部50は、ステップS1006で設定された焦点検出領域において、合焦状態であるか否か判定する。システム制御部50は、検出デフォーカス量が所定デフォーカス量以下となる場合、合焦状態であると判定する。本実施形態では、焦点検出領域モードに応じて設定された焦点検出領域に応じた所定のアルゴリズムにしたがって、1つの焦点検出領域を選択し、検出デフォーカス量を所定のデフォーカス量と比較する。合焦状態であると判定した場合は、ステップS1605に進む。一方、非合焦状態であると判定した場合は、ステップS1604に進む。
ステップS1604において、システム制御部50は、検出デフォーカス量に基づいてフォーカス制御部342を介してフォーカスレンズ311を駆動する。
ステップS1605において、システム制御部50は、画像表示部28に合焦状態を示す合焦表示を行う。合焦表示は、例えば、合焦状態が得られた焦点検出領域を示す枠を特定色で表示したり、合焦状態が得られたことを示す音を出力したりする。
ステップS1606において、システム制御部50は、AF補助光の発光要否判定の処理を行う。発光要否判定処理の詳細については、図20を用いて後述する。
ステップS1607において、システム制御部50は、ステップS1606での判定処理の結果が、LED補助光または閃光補助光としてのAF補助光が必要であることを示すか否かを判定する。AF補助光が不要である場合には、ステップS1608に進む。一方、AF補助光が必要である場合には、ステップS1612に進む。
ステップS1608において、システム制御部50は、フォーカスレンズ311の移動、すなわちサーチ駆動を行いながらの焦点検出処理を行う。ステップS1608で行う焦点検出処理は、図10のS1004で行った焦点検出処理と同様である。ステップS1609において、システム制御部50は、サーチ駆動と焦点検出を行った結果、焦点検出が可能であるか否か判定する。焦点検出が可能であると判定した場合は、ステップS1603に進む。一方、焦点検出が不可能であると判定した場合は、ステップS1610に進む。
ステップS1610において、システム制御部50は、フォーカスレンズ311が光軸方向における可動範囲端(望遠端または至近端)に位置しているか否かを判定する。フォーカスレンズ311が可動範囲端に到達していない場合には、ステップS1608に戻ってサーチ駆動と焦点検出処理とを継続する。一方、フォーカスレンズ311が可動範囲端に到達している場合には、ステップS1611に進む。ステップS1611において、システム制御部50は、フォーカスレンズ311の移動によって合焦可能な被写体がフォーカスレンズ311の可動範囲内で合焦する位置に存在しないものとして焦点検出を中断する。そして、システム制御部50は、画像表示部28に合焦状態が得られないことを示す非合焦判定表示を行わせる。
ステップS1607でAF補助光が必要と判定したシステム制御部50は、ステップS1612に進む。ステップS1612において、システム制御部50は、フォーカスレンズ311の初期位置(以下、フォーカス初期位置という)を算出する。フォーカス初期位置は、至近端を含むなるべく広い被写体距離範囲をカバーできるフォーカス位置であり、言い換えると、信頼性の高いデフォーカス量を算出できるデフォーカス範囲がなるべく広いフォーカス位置である。
図17は、フォーカス初期位置を説明する図である。横軸は、合焦する被写体距離と対応するフォーカス位置を示している。矢印は、算出された検出可能デフォーカス量の範囲(以下、デフォーカス量検出可能範囲という)を示している。フォーカスレンズ311の可動範囲端である至近端を含むデフォーカス量検出可能範囲内において、至近端よりも遠距離側にデフォーカス量検出可能範囲が広がるように、フォーカス初期位置が設定されている。
AF補助光が到達して焦点検出が可能になる被写体が近距離の被写体であるため、本実施形態では、フォーカス初期位置を、至近端を含むデフォーカス量検出可能範囲内に設定する例を説明したが、これに限られるものではない。例えば、被写体が存在する確率が高い距離として、焦点距離の定数倍や1m等の被写体距離を予め設定し、その被写体距離を含むようにフォーカス初期位置を算出してもよい。至近端ではなく、焦点距離の定数倍や1m等の被写体距離を設定した場合は、より至近側の被写体に対する焦点検出ができない恐れが生じるが、遠距離側の被写体距離の範囲を焦点検出可能な範囲とすることができる。また、AF補助光としての閃光補助光の到達距離を設定し、その到達距離を遠距離側の端としてフォーカス初期位置を設定してもよい。これにより、焦点検出を行う被写体距離を限定することができるため、より適切でマージンのあるフォーカス初期位置を設定することができる。
フォーカス初期位置の算出のため、システム制御部50は、まず、後述する焦点検出情報を取得する。システム制御部50は、焦点検出情報を用いて焦点検出が可能と想定される検出可能デフォーカス量を算出する。そして、システム制御部50は、検出可能デフォーカス量と撮像レンズ300の至近端での被写体距離の情報から、フォーカス初期位置を算出する。
焦点検出情報とは、検出可能デフォーカス量を概算するための焦点検出に関する情報である。具体的には、焦点検出情報は、撮像レンズ300のF値、枠情報、焦点検出を行う焦点検出領域の像高、位相差像信号のコントラストのうちの少なくとも1つに関する情報である。
撮像レンズ300のF値、枠情報および焦点検出領域の像高の情報などから、焦点検出を行う一対の光電変換部間の基線長やAF光束径(焦点検出瞳において位相差像を形成している光束が通過する範囲)が算出される。基線長が長いほど単位デフォーカス量あたりの一対の位相差像信号間のずれ量が大きくなるため、より精度が良い焦点検出を行うことができる。また、AF光束径が小さいほど、デフォーカスによって位相差像信号がぼけにくくなり、大きくデフォーカスした状態でも一対の位相差像信号間のずれ量の検出が可能になる。なお、AF光束径が大きいほど基線長は長くなる。
検出可能デフォーカス量は、被写体のコントラストや空間周波数特性等によって異なる。高い空間周波数の情報を多く有し、コントラストが高い被写体に対しては、大きくデフォーカスした状態でも焦点検出が可能となる。被写体のコントラストの情報としては、例えば、位相差像信号における互いに隣接する画素信号の出力差の二乗和を用いればよい。
システム制御部50は、焦点検出情報と対応する検出可能デフォーカス量の情報をテーブル化して記憶している。図18は、検出可能デフォーカス量のテーブルの一例を示す図である。検出可能デフォーカス量のテーブルには、AF光束径と被写体のコントラストに対応する検出可能デフォーカス量が保持されている。システム制御部50は、焦点検出情報として、例えば、AF光束径と被写体のコントラストを算出し、図18に示すテーブルから検出可能デフォーカス量を取得する。なお、フォーカス初期位置を閃光補助光の到達距離に応じて設定する場合、閃光補助光の到達距離をAF光束径に応じて変更してもよい。AF光束径が小さいほど閃光補助光の到達距離は短くなる。これにより、より適切にフォーカス初期位置を設定することができる。
ステップS1613において、システム制御部50は、フォーカスレンズ311をステップS1612で算出したフォーカス初期位置に移動させる。
ステップS1614において、システム制御部50は、LED補助光のみの発光が許可されているか否かを判定する。本実施形態では、システム制御部50が、AF補助光の発光手段としてのフラッシュ48とLEDランプ49の発光を制御する。LED補助光のみが発光許可されている場合(閃光補助光の発光が禁止されている場合)は、ステップS1615に進む。一方、閃光補助光の発光が許可されている場合には、ステップS1616に進む。
ステップS1615において、システム制御部50は、LEDランプ49のみからLED補助光を発光させて焦点調節処理(以下、LED焦点調節処理という)を行う。LED焦点調節処理の詳細は、図22を用いて後述する。ステップS1616において、システム制御部50は、LED補助光または閃光補助光を発光させて焦点調節処理(以下、LED/閃光焦点調節処理という)を行う。LED/閃光焦点調節処理の詳細は、図23を用いて後述する。ステップS1615でのLED焦点調節処理、または、ステップS1616でのLED/閃光焦点調節処理を終えたシステム制御部50は、焦点調節処理を終了する。
次に、図19を用いて、図10のステップS1009で行われる撮像処理について説明する。図19は、撮像処理を示すフローチャートである。ステップS1901において、システム制御部50は、光量調節のために絞り312を駆動し、露光時間を制御するシャッタ12を駆動する。フラッシュ48を閃光発光させて撮像を行う場合には、システム制御部50は、その発光のタイミングに合わせてシャッタ12を駆動する。
ステップS1902において、システム制御部50は、撮像素子14から静止画撮像のための全画素読み出しを行う。ステップS1903において、システム制御部50または画像処理部20は、撮像素子14から読み出した撮像信号に対して、事前に記憶された欠陥画素の位置情報に基づく欠陥画素補間を行う。欠陥画素には、画素間の出力オフセットやゲインのばらつきが大きい画素や、撮像に使用されなかった画素(前述した焦点検出専用画素等)が含まれる。
ステップS1904において、システム制御部50または画像処理部20は、撮像信号に対して、γ補正、色変換、エッジ強調等の画像処理を行って撮像画像データ(静止画データ)を生成する。ステップS1905において、システム制御部50は、撮像画像データをメモリ30に記録する。
ステップS1906において、システム制御部50は、ステップS1905にて記録した撮像画像データに対応付けて、カメラ100の特性情報をメモリ30およびシステム制御部50内のメモリに記録する。カメラ100の特性情報とは、例えば、露光時間、現像時の画像処理、撮像素子14の画素の受光感度分布およびカメラ100内での撮像光束のケラレに関する情報である。画素の受光感度分布は、マイクロレンズ201c、光電変換部201aおよび光電変換部201bにより決定される。そのため、画素の構造に関する情報(例えば、光電変換部201aおよび光電変換部201bの大きさやピッチ、マイクロレンズ201cとの距離等)を画素の受光感度分布の代わりに記録してもよい。また、カメラ100の特性情報には、カメラ100と撮像レンズ300との取り付け面から撮像素子14までの距離や、製造誤差に関する情報も含まれる。
ステップS1907において、システム制御部50は、ステップS1905にて記録した撮像画像データに対応付けて、撮像レンズ300の特性情報をメモリ30とシステム制御部50内のメモリに記録する。撮像レンズ300の特性情報とは、例えば、射出瞳、枠情報、撮像時の焦点距離やFナンバー、撮像光学系の収差および製造誤差に関する情報である。
ステップS1908において、システム制御部50は、ステップS1905にて記録した撮像画像データに関する画像関連情報を、撮像画像データに対応付けて、メモリ30およびシステム制御部50内のメモリに記録する。画像関連情報とは、例えば、撮像前の焦点検出動作に関する情報、被写体の移動、焦点検出動作の精度に関する情報である。ステップS1907の処理を終了したシステム制御部50は、撮像処理を終了し、図10のステップS1010に進む。
次に、図20のフローチャートを用いて、図16のステップS1606で行われるAF補助光の発光要否判定について説明する。図20は、発光要否判定処理を示すフローチャートである。ステップS2001において、システム制御部50は、焦点検出領域に関する情報を取得する。具体的には、システム制御部50は、図10のS1006において設定された焦点検出領域の配置、位置および画素数等の情報を取得する。ステップS2002において、システム制御部50は、焦点検出領域の測光情報を取得する。具体的には、システム制御部50は、焦点検出領域ごとの測光値と、全ての焦点検出領域を包含する領域の測光値の両方を取得する。
ステップS2003において、システム制御部50は、LED補助光と閃光補助光を発光する際の輝度の閾値(以下、発光閾値という)を設定する。発光閾値の設定の詳細については、図21を用いて後述する。
ステップS2004において、システム制御部50は、ステップS2002で得られた測光情報が示す測光値とステップS2003で設定したLED補助光の発光閾値とを比較する。比較に用いる測光値は、全ての焦点検出領域を包含する領域の測光値と各焦点検出領域の測光値である。いずれか1つの測光値がLED補助光の発光閾値より小さい場合は、ステップS2005に進む。一方、すべての測光値がLED補助光の発光閾値以上である場合には、ステップS2006に進む。ステップS2005において、システム制御部50は、LED発光判定をオン(LED発光許可)に設定する。ステップS2006において、システム制御部50は、LED発光判定をオフ(LED発光禁止)に設定する。
ステップS2007において、システム制御部50は、ステップS2002で得られた測光値とステップS2003で設定した閃光補助光の発光閾値とを比較する。比較に用いる測光値は、ステップS2004と同様に、全ての焦点検出領域を包含する領域の測光値と各焦点検出領域の測光値である。いずれか1つの測光値が閃光補助光の発光閾値より小さい場合は、ステップS2008に進む。一方、すべての測光値が閃光補助光の発光閾値以上である場合は、ステップS2009に進む。ステップS2008において、システム制御部50は、閃光発光判定をオン(閃光発光許可)に設定する。ステップS2009において、システム制御部50は、閃光発光判定をオフ(閃光発光禁止)に設定する。ステップS2008またはステップS2009を終えたシステム制御部50は、本処理を終了する。
次に、図21を用いて、図20のステップS2003の発光閾値設定について説明する。図21は、発光閾値設定処理を示すフローチャートである。発光閾値設定処理では、LED補助光および閃光補助光の発光閾値を設定する。LED補助光は、撮像範囲に占める照射範囲は狭いが、常時発光が可能であるために発光しながらの焦点検出を行いやすい。一方、閃光補助光は、照射範囲は広いものの、間欠発光するため焦点検出において多数回発光すると、画像記録用の撮像時の発光量を確保できなくなる恐れがある。そのため、発光閾値設定処理では、システム制御部50は、LED補助光は発光しやすいが、閃光補助光は発光しにくくなるように発光閾値を設定する。ただし、LED補助光が単色光である場合の焦点検出誤差や、LEDランプ49が撮像レンズ300の近くに配置されることによる撮像レンズ300によるLED補助光のケラレを考慮し、閃光補助光の方が発光しやすくなるように発光閾値を設定してもよい。
ステップS2101において、システム制御部50は、レンズ関連情報である絞り値情報をレンズ制御部346から取得する。システム制御部50は、さらに、絞り値に関連する情報である周辺光量落ち特性に関する情報を取得する。ステップS2102において、システム制御部50は、レンズ関連情報である焦点距離をレンズ制御部346から取得する。ステップS2103において、システム制御部50は、レンズ関連情報である現在のフォーカス位置であるフォーカスステートをレンズ制御部346から取得する。ステップS2104において、システム制御部50は、レンズ関連情報である撮像レンズの射出瞳距離情報をレンズ制御部346から取得する。
ステップS2105において、システム制御部50は、ステップS2101~ステップS2104で取得した情報に基づいて、レンズ関連情報である中央像高の変換係数K0を取得する。ステップS2106において、システム制御部50は、レンズ関連情報である焦点検出領域の像高の変換係数K1を取得する。焦点検出領域が周辺像高の場合には、変換係数K1は開口情報から算出された変換係数となる。ステップS2107において、システム制御部50は、焦点検出領域の変換係数K1と中央像高の変換係数K0の比(K1/K0)を算出する。
ステップS2108において、システム制御部50は、予めF値ごとに設定された中央像高の発光閾値T0を取得する。内蔵LEDと閃光補助光で発光閾値が異なる場合には、システム制御部50はそれぞれの発光閾値を取得する。閃光補助光によるAF補助光は、閃光補助光なしでは焦点検出が不可能な被写体輝度でのみ発光するのが理想的である。また、閃光補助光は発光時間が短いため、閃光補助光使用時は撮像素子14のフレームレートを高速フレームレート(例えば60fps)に設定され、撮像素子14が受光する外光の光量は減少する。そのため、外光の影響が少ない発光輝度でのみ閃光補助光を発光させる必要がある。一方、内蔵LEDは常時発光のため、蓄積時間を増加させることで内蔵LEDによる光量をより多く受光できるため、外光の影響がある被写体輝度で発光してもよい。以上から、閃光補助光の発光閾値は、内蔵LEDの発光閾値より小さい値にするとよい。また、撮像レンズ300の近くに配置されるLED補助光のケラレを考慮して、中央像高または像高を限定した範囲でLED補助光の発光閾値を算出してもよい。なお、決められた発光方式の発光閾値のみを取得するようにしてもよい。
ステップS2109において、焦点検出領域の発光閾値T1を下記の式(8)で算出する。
T1=T0+log2(K1/K0)・・・(8)
システム制御部50は、式(8)により計算された値を焦点検出領域の発光閾値に設定し、本フローチャートの処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態ではレンズ関連情報である変換係数を用いて発光閾値を設定する。変換係数は、像ずれ量をデフォーカス量へ変換する係数であり、変換係数が大きい(基線長が短い)ほどデフォーカス量の誤差が大きくなり、焦点検出精度が低下する。特に周辺像高ではレンズ枠ケラレにより開口形状が変形するため、基線長が短くなり、結果として変換係数が中央に対して大きくなり、焦点検出精度が低下する。本実施形態では焦点検出精度と相関がある変換係数を用いて発光閾値を設定することで、特に周辺像高の発光閾値を適切に設定することが可能となる。
一般に、焦点検出精度が確保できる範囲で、焦点検出が可能となるよう焦点検出処理を行うため、変換係数が大きく焦点検出精度が低下する周辺像高においては、中央像高に対して焦点検出が可能となる範囲が狭くなる。また、焦点検出が可能となる範囲は、被写体のコントラストや明るさなどによって変化する。補助光を発光しない場合、中央像高の方がより暗い環境で輝度の低い被写体の焦点検出が可能となる。
中央像高における焦点検出に合わせて補助光の発光輝度を決定した場合、基線長の差や被写体の明るさ、周辺の光量落ちにより、周辺像高において補助光が必要であるのに、補助光が発光しない場合が生じる。本実施形態では、想定される焦点検出精度に応じて、発光を行う輝度範囲を変更することにより、補助光を用いずに焦点検出を行う範囲と補助光を用いて焦点検出を行う範囲を適切に設定することが可能である。
次に、図22のフローチャートを用いて、図16のステップS1615のLED焦点調節処理について説明する。図22は、LED焦点調節処理を示すフローチャートである。ステップS2201において、システム制御部50は、LED補助光を発光させる。LED補助光の発光は、少なくとも後述するステップS2204にて合焦状態が得られたと判定されるまでは継続させる。
ステップS2202~ステップS2206の処理は、それぞれ図16のステップS1601~ステップS1605の処理と同様である。また、ステップS2207~ステップS2210の処理は、それぞれ図16のステップS1608~ステップS1611の処理と同様である。
次に、図23のフローチャートを用いて、図16のステップS1616のLED/閃光焦点調節処理について説明する。図23は、LED/閃光焦点調節処理を示すフローチャートである。ステップS2301において、システム制御部50は、事前に行われた発光要否判定において閃光補助光のみが発光許可されたか否かを判定する。LED補助光が許可されず、閃光補助光のみが発光許可された場合は、ステップS2305に進む。一方、LED補助光および閃光補助光の両方が発光許可されている場合は、ステップS2302に進む。
ステップS2302において、システム制御部50は、被写体有無の判定処理を行う。LED補助光は常時発光が可能な反面、照射範囲が狭いことや撮像レンズ300によるケラレが生じやすいという欠点がある。そのため、被写体の位置がLED補助光の到達範囲外である場合、撮像レンズ300のケラレによりLED補助光が被写体に照射されない場合等、LED補助光を活用できない場合がある。被写体有無の判定処理において、システム制御部50は、LED補助光が有効に機能する被写体が存在するか否かを判定する。この被写体有無の判定処理の詳細については、図24を用いて後述する。
ステップS2303において、システム制御部50は、ステップS2302においてLED補助光が有効に機能する被写体が存在すると判定されたか否かを判定する。LED補助光が有効に機能する被写体が存在する場合は、ステップS2304進む。一方、LED補助光が有効に機能する被写体が存在しない場合は、ステップS2305に進む。
ステップS2304において、システム制御部50は、図16のステップS1615と同様のLED補助光焦点調節処理を行う。ステップS2305において、システム制御部50は、閃光焦点調節処理を行う。閃光焦点調節処理の詳細については、図16を用いて後述する。ステップS2304またはステップS2305の処理を終えたシステム制御部50は、LED/閃光焦点調節処理を終了する。
次に、図24のフローチャートを用いて、図23のステップS2302の被写体有無判定処理について説明する。図24は、被写体有無判定処理を示すフローチャートである。ステップS2401において、システム制御部50は、焦点検出領域の測光情報を取得する。ここでは、図10のステップS1006で設定された焦点検出領域に対応する測光値を取得する。
ステップS2402において、システム制御部50は、LEDランプ49を制御してLED補助光を発光させる。ステップS2403において、システム制御部50は、再度、焦点検出領域に対応する測光値を取得する。ステップS2404において、システム制御部50は、LEDランプ49を消灯し、LED補助光の発光を停止する。
ステップS2405において、システム制御部50は、LED補助光の発光前後の測光値の変化量を算出する。具体的には、システム制御部50は、ステップS2401で得られたLED補助光の発光前の測光値から、ステップS2403で得られたLED発光中の測光値への変化量を算出する。LED補助光により照明可能な被写体が存在する場合には、LED補助光の発光前後で測光値に変化が生ずる。そのため、測光値の変化量を算出することにより、LED補助光が有効に機能する被写体が存在するか否かを判定する。例えば、測光値の変化量が所定の値以上である場合、LED補助光が有効に機能する被写体が存在すると判定する。
また、被写体有無判定の方法として、LED補助光の発光中に焦点検出を行い、焦点検出が可能であれば被写体が存在すると判定する方法も考えられる。しかし、この方法では、被写体に対して大きくデフォーカスしている場合に焦点検出が不可能になり、被写体が存在するにもかかわらず存在しないと判定するおそれがある。したがって、LED補助光の発光前後の測光情報の変化量を用いて被写体有無判定を行うことにより、デフォーカス状態によらず適切な被写体有無判定を行うことができる。
次に、図25および図26を用いて、図23のステップS2305の閃光焦点調節処理について説明する。図25は、閃光補助光の発光時における典型的なフォーカスレンズ311の駆動方法と閃光補助光の発光タイミングを説明する図である。横軸は時間を、縦軸はフォーカス(レンズ)位置を示す。図25は、焦点調節の開始位置から合焦位置までフォーカスレンズ311を駆動した際のフォーカス位置の変化を示している。黒丸は、閃光補助光を発光したタイミングを示している。
システム制御部50は、焦点調節の開始位置にフォーカスレンズ311を停止させた状態で、閃光補助光を発光させる(F1)。これは、焦点調節を開始するに当たってデフォーカス量を得るための発光である。フォーカスレンズ311を停止させた状態で行う閃光補助光の発光(間欠発光)を、以下の説明においてステップ閃光発光という。また、ステップ閃光発光を伴う焦点検出は、第1の焦点検出処理に相当する。また、本実施形態では、ステップ閃光発光において2回の発光を行う例を説明したが、発光回数はこれに限られるものではない。
F1の閃光補助光の発光によってデフォーカス量が検出されると、システム制御部50は、フォーカスレンズ駆動を開始する(時刻T1)。フォーカスレンズ駆動の開始後、フォーカスレンズ311が合焦位置が近づいてきた場合に、システム制御部50はフォーカスレンズ駆動を継続したまま閃光補助光を発光させる(M1)。フォーカスレンズ駆動中、常に閃光補助光を発光させると、必要な電力が大きくなる。このため、システム制御部50は、フォーカスレンズ駆動前に得られたデフォーカス量に基づいて、合焦位置に近い位置にフォーカスレンズ311が到達することに応じて発光を開始する。フォーカスレンズ駆動中に行う閃光補助光の発光(間欠発光)を、以下の説明では、レンズ駆動中閃光発光という。また、レンズ駆動中閃光発光を伴って行われる焦点検出は、第2の焦点検出処理に相当する。
システム制御部50は、レンズ駆動中閃光発光を伴う焦点検出により得られたデフォーカス量に基づく合焦位置にてフォーカスレンズ311を停止させる。その後、システム制御部50は、再度ステップ閃光発光を行い(F2)、所定の合焦範囲内に停止しているか否かを確認する。以上により、閃光焦点調節処理が終了する。
図26は、閃光焦点調節処理を示すフローチャートである。ステップS2601において、システム制御部50は、ステップ閃光発光の回数のカウント値を初期化(0に設定)する。本実施例では、ステップ閃光発光の回数に上限を設け、不要に電力を消費することを防ぐ。
ステップS2602では、システム制御部50は、ステップ閃光発光を行いながら焦点検出(第1の焦点検出処理)を行う。さらに、システム制御部50は、焦点検出を行いながら、レンズ駆動中閃光発光の光量を設定するための調光を並行して行う。また、システム制御部50は、後に焦点検出を行う焦点検出領域を選択する。ステップS2602の詳細については、図27を用いて後述する。
ステップS2603では、システム制御部50は、ステップS2602で信頼性が高い焦点検出結果が得られたか否かを判定する。システム制御部50は、焦点検出結果が所定の信頼性より高いか否か判定することで、信頼性が高い焦点検出結果が得られたか否かを判定する。信頼性が高い焦点検出結果が得られなかった場合は、ステップS2604に進む。一方、信頼性が高い焦点検出結果が得られた場合は、ステップS2606に進む。
ステップS2604において、システム制御部50は、所定の全てのフォーカス位置でステップ閃光発光を伴う焦点検出を終えたか否かを判定する。本実施形態では、閃光発光を行うために、フォーカスレンズ311をフォーカス初期位置に移動させる。そして、システム制御部50は、フォーカス初期位置での焦点検出が不可能な場合に、無限遠側にフォーカスレンズ311を移動させて停止し、再びステップ閃光発光を伴う焦点検出を行う。ステップ閃光発光を伴う焦点検出の試行回数は任意であり、例えば、デフォーカス量検出可能範囲ごとにステップ閃光発光を行ってもよい。この場合は、ステップ閃光発光回数は2回より多くなる。また、フォーカス初期位置で発光した後、フォーカスレンズ311の無限端位置からデフォーカス量検出可能範囲分だけ至近側でステップ閃光発光を行ってもよい。この場合は、焦点検出が不可能な場合のステップ閃光発光回数は最大2回となり、より高速に焦点調節の可否を判断することができる。
ステップS2604において所定の全てのフォーカス位置でステップ閃光発光を伴う焦点検出を終えた場合は、ステップS2620に進む。ステップS2620において、システム制御部50は、焦点調節が不可能と判定して、ステップS2110と同様に非合焦判定表示を行う。一方、所定の全フォーカス位置でステップ閃光発光を伴う焦点検出を終えていない場合は、ステップS2605に進む。ステップS2605において、システム制御部50は、次のフォーカス位置にフォーカスレンズ駆動を行う。そして、ステップS2602に戻る。
ステップS2606において、システム制御部50は、レンズ駆動中閃光発光の条件を設定する。レンズ駆動中閃光発光の条件とは、発光を開始するデフォーカス量やフォーカス位置(発光開始フォーカス位置)、さらにフォーカスレンズ311の駆動速度等である。ステップS2606の詳細については、図28を用いて後述する。
ステップS2607において、システム制御部50は、ステップS2606で設定した条件に従ってフォーカスレンズ311の駆動を開始する。ステップS2608において、システム制御部50は、フォーカスレンズ311がステップS2606で設定した発光開始フォーカス位置を通過したか否かを判定する。フォーカスレンズ311が発光開始フォーカス位置をまだ通過していない場合は、システム制御部50は、フォーカスレンズ駆動を継続した状態でステップS2608の判定を繰り返す。一方、フォーカスレンズ311が発光開始フォーカス位置を通過した場合には、ステップS2609に進む。
ステップS2609において、システム制御部50は、レンズ駆動中閃光発光を伴う焦点検出(第2の焦点検出処理)を行う。この際、システム制御部50は、画像データ生成のフレームレートに同期して閃光発光を行わせ、ステップS2602で選択された焦点検出領域から得られる一対の位相差像信号を用いた焦点検出を繰り返し行う。ステップS2609の詳細については、図29を用いて後述する。
ステップS2610において、システム制御部50は、レンズ駆動中閃光発光の回数が所定回数以下か否かを判定する。レンズ駆動中閃光発光の回数が所定回数より多くなった場合は、ステップS2620に進み、システム制御部50は、焦点検出を中断して、非合焦判定表示を行う。発光の回数が所定回数より多くなった場合に焦点検出を中断するのは、フォーカスレンズ311の駆動の開始前に検出した被写体を、被写体の移動やユーザのフレーミング等によって見失ったとみなし、不要な発光を防ぐためである。一方、レンズ駆動中閃光発光の回数が所定回数以下である場合は、ステップS2611に進む。
ステップS2611において、システム制御部50は、得られた検出デフォーカス量が所定デフォーカス量以下であるか否かを判定する。検出デフォーカス量が所定デフォーカス量より大きい場合は、ステップS2609に戻って、処理を継続する。一方、検出デフォーカス量が所定デフォーカス量以下である場合は、ステップS2612に進む。ステップS2612において、システム制御部50は、フォーカスレンズ311の駆動を停止させる。
ステップS2613において、システム制御部50は、ステップS2602と同様に、ステップ閃光発光を行いながら(すなわち、フォーカスレンズ311の駆動を停止させた状態で間欠発光を行いながら)焦点検出と調光を行う。ステップS2613において合焦位置の近傍で、再度、調光を行うのは、デフォーカス状態の変化によって飽和した一対の位相差像信号を用いて焦点検出を行うことを回避するためである。特に被写体が細い線を含むような場合に、ボケ状態から合焦状態になるにしたがってボケが小さくなり、一対の位相差像信号の輝度レベルが上がって飽和することがある。飽和した一対の位相差像信号は焦点検出誤差を招くので、合焦位置近傍での調光を行う。
ステップS2614において、システム制御部50は、焦点検出の結果、合焦しているか否か判定する。合焦判定では、システム制御部50は、検出デフォーカス量が合焦判定用閾値より小さいか否かを判定する。検出デフォーカス量が合焦判定用閾値より小さい場合は、合焦していると判定し、ステップS2515に進む。ステップS2615において、システム制御部50は、ステップS1605と同様に合焦表示を行って本処理を終了する。検出デフォーカス量が合焦判定用閾値以上である場合は、非合焦であると判定し、ステップS2616に進む。
ステップS2616において、システム制御部50は、検出デフォーカス量に基づいてフォーカスレンズ311の駆動を行う。駆動が終了し、フォーカスレンズ311が停止すると、ステップS2617に進む。
ステップS2617において、システム制御部50は、ステップ閃光発光の回数が所定回数以下であるか否かを判定する。ステップ閃光発光はフォーカスレンズ駆動の開始前にも行っているため、ここではフォーカスレンズ駆動の開始前からの合計回数で判定する。ステップ閃光発光回数が所定回数を超えた場合には、システム制御部50はステップS2620に進む。ステップS2620において、システム制御部50は、焦点検出を中断して非合焦判定表示を行う。一方、ステップ閃光発光回数が所定回数以下である場合には、ステップS2618に進む。
ステップS2618において、システム制御部50は、事前の調光結果に基づいて発光量を設定した閃光補助光の発光と焦点検出を行う。なお、ステップS2618では、ステップS2613からのデフォーカス状態の変化が小さいことが想定されるため、システム制御部50は改めて調光を行わずに、ステップS2613で得られた調光結果を用いて焦点検出を行う。これにより、不要な発光を行わずに精度の高い焦点検出を実現することができる。ただし、ステップS2613で得られたデフォーカス量が大きく、ステップS2618と大きくデフォーカス状態が異なる場合は、ステップS2618において改めてステップS2613と同様の処理を行ってもよい。ステップS2619において、システム制御部50は、ステップ閃光発光回数をインクリメントしてステップS2614に戻る。
次に、図27を用いて、図26のステップS2602で行われる閃光発光を伴う焦点検出と調光処理について説明する。図27は、閃光発光を伴う焦点検出と調光処理を示すフローチャートである。ステップS2701において、システム制御部50は、閃光発光を行わない状態での焦点検出結果を取得する。具体的には、システム制御部50は、閃光発光を行わない状態で事前に設定された1つ以上の焦点検出領域で焦点検出および焦点検出結果の信頼性判定を行い、信頼性が高い焦点検出結果を記憶する。
ステップS2702において、システム制御部50は、第1の発光量での閃光発光による焦点検出を行い、焦点検出を取得する。具体的には、システム制御部50は、第1の発光量で閃光発光を行わせ、これに同期して撮像素子14から取得した一対の位相差像信号を用いて焦点検出および焦点検出結果の信頼性判定を行う。そして、システム制御部50は、信頼性が高い焦点検出結果を選択して記憶する。
ステップS2703では、システム制御部50は、第2の発光量での閃光発光による焦点検出を行い、焦点検出を取得する。第2の発光量は、第1の発光量より大きい発光量である。システム制御部50は、第2の発光量で閃光発光を行わせ、これに同期して撮像素子14から取得した一対の位相差像信号を用いて焦点検出および焦点検出結果の信頼性判定を行う。そして、システム制御部50は、信頼性が高い焦点検出結果を選択して記憶する。
ステップS2704において、システム制御部50は、ステップS2701~ステップS2703で得られた焦点検出結果を用いて、複数の焦点検出領域から焦点調節に用いる焦点検出領域を設定する。具体的には、例えば、最も至近側の被写体の存在を示す焦点検出領域を焦点調節に用いる焦点検出領域として設定する。これは、ユーザが撮像を意図する主被写体は近距離側に存在する可能性が高いためである。ただし、焦点調節に用いる焦点検出領域の選択方法はこれに限らない。例えば、閃光発光量が互いに異なる複数回の焦点検出結果に対して平均化処理を行い、平均化された焦点検出結果を用いて焦点調節に用いる焦点検出領域を設定してもよい。なお、一般に、一対の位相差像信号のコントラストが高い方がデフォーカス量の検出精度が高いが、前述したように一対の位相差像信号が飽和している場合はその限りではない。このため、ステップS2702およびステップS2703で得られた一対の位相差像信号の飽和を検出して、飽和した信号から得られた焦点検出結果は用いないようにしてもよい。
ステップS2705において、システム制御部50は、調光処理を行い、調光結果を取得する。なお、ステップS2704で設定した焦点検出領域がステップS2701で選択した焦点検出結果に対応する焦点検出領域である場合には、システム制御部50は調光処理を行わない。そして、以後の焦点検出の際には、システム制御部50はAF補助光を発光させずに焦点検出を行う。一方、ステップS2704で選択した焦点検出領域が、ステップS2702もしくはステップS2703で選択した焦点検出結果に対応する焦点検出領域である場合には、システム制御部50は調光処理を行う。
さらにシステム制御部50は、選択した焦点検出領域での閃光発光を行わない状態における測光情報と、選択した焦点検出結果が得られた閃光発光の発光量(第1または第2の発光量)に対応する、選択した焦点検出領域の測光情報とを取得する。そして、これら2つの測光情報の差分から焦点検出を行うのに必要十分な発光量を算出する。
閃光発光を行わない状態における測光値をBV_nとし、閃光発光時の測光値をBV_afとし、焦点検出を行うのに必要十分な目標測光値をBV_Tとする。この場合、基準となる発光量、すなわち選択した焦点検出結果が得られた閃光発光量に対するゲインGは、下記の式(9)で算出される。
G=(BV_T‐BV_n)/(BV_af‐BV_n) ・・・(9)
式(9)では、測光値がリニアスケールの場合を示しているが、測光情報は対数スケールである場合も多い。この場合、リニアスケールと対数スケールとの間の変換を行ってゲインGを算出すればよい。システム制御部50は、得られたゲインGと基準となる発光量とから、以後の閃光補助光の発光量を設定する。これにより、適切な発光量を設定することができ、不要な電力消費を抑えたり、一対の位相差像信号が飽和したりすることによる焦点検出精度の低下を抑制したりすることができる。目標測光値BV_Tは、F値ごとや撮像素子のISO感度、撮像レンズの周辺光量落ち情報を用いて像高ごとに変更してもよい。
ステップS2706において、システム制御部50は、ステップ閃光発光回数をインクリメントして、図10のステップS2603に進む。
次に、図28を用いて、図26のステップS2606で行われるレンズ駆動中閃光発光の条件設定処理について説明する。図28は、レンズ駆動中閃光発光の条件設定処理を示すフローチャートである。ステップS2801において、システム制御部50は、フォーカスレンズ駆動中に閃光発光を開始するデフォーカス量を設定する。図25を用いて説明したように、消費電力を低減するために、システム制御部50は、フォーカスレンズ311が合焦位置に近づいてから閃光発光を開始する。その際に、検出可能デフォーカス量の情報を用いる。一対の位相差像信号は、デフォーカス量が大きくなると、ボケによって形状の類似度が低下して焦点検出誤差が発生する。このため、検出可能デフォーカス量の範囲内であっても、デフォーカス量が小さい状態で得た焦点検出結果の方が高精度である。
本実施形態では、検出可能デフォーカス量に対して係数α(例えば、0.5)を乗じた値を、閃光発光を開始するデフォーカス量を示す発光開始デフォーカス量(第1の所定デフォーカス量)として設定する。この際、システム制御部50は、焦点調節後の画像記録用撮像時の発光量を確保するため、レンズ駆動中閃光発光の開始前からの閃光発光の発光回数が多いほど発光開始デフォーカス量を小さくする。発光開始デフォーカス量は、現在のフォーカス位置情報と合わせて、発光開始フォーカス位置に変換される。
ステップS2802において、システム制御部50は、フォーカスレンズ駆動速度(移動速度)を設定する。具体的には、システム制御部50は、ステップS2801で設定した発光開始デフォーカス量の範囲で所定回数の閃光発光を行うためのフォーカスレンズ駆動速度を設定する。例えば、一対の位相差像信号のサンプリングレートが60fpsで、発光開始デフォーカス量D(mm)の範囲内で5回の閃光発光を行うためには、フォーカスレンズ駆動速度をD/5×60(mm/s)に設定する。この方法により、発光開始デフォーカス量と位相差像信号のサンプリングレートに応じて適切にフォーカスレンズ駆動速度を設定することができる。
ステップS2803において、システム制御部50は、事前のステップ閃光発光での調光結果を用いて、レンズ駆動中閃光発光における発光量の調整(設定)または撮像信号に対するゲインの設定を行う。発光量調整とゲイン設定はいずれも一対の位相差像信号に必要なコントラストを発生させるために有効であるが、被写体としての人や動物等の閃光に対する眩しさ、消費電力、一対の位相差像信号のS/Nを考慮して、適切に発光量調整またはゲイン設定を行う。例えば、一対の位相差像信号により大きいコントラストを生じさせるために、被写体が人の場合はゲイン設定で対応し、人ではない場合は発光量で対応する。
具体的には、システム制御部50は、フラッシュ48を互いに異なる発光量でステップ閃光発光させながら複数回の焦点検出を行わせるか、撮像素子から得られる信号に対して互いに異なる複数のゲインを設定することにより複数の焦点検出結果を得る。そして、その後の焦点検出における発光量またはゲインを設定する。また、複数の焦点検出結果に加えて、フラッシュ48を発光させずに得られた焦点検出結果を用いて発光量またはゲインを設定してもよい。ステップS2803を終えたシステム制御部50は、本処理を終了する。
次に、図29を用いて、図26のステップS2609で行われるレンズ駆動中閃光発光および焦点検出について説明する。図29は、レンズ駆動中閃光発光および焦点検出処理を示すフローチャートである。ステップS2901において、システム制御部50は、撮像素子14を駆動するフレームレートを高速フレームレートに設定する。例えば、低速フレームレートである30fpsから高速フレームレートの60fpsにする。閃光発光は、発光時間が非常に短いため、撮像素子14の露光時間を長くする必要がない。撮像素子14の全画素行が露光されているタイミングに同期して閃光発光を行えばよい。これにより、閃光発光の照射範囲が十分に広ければ、撮像素子14の全画素領域から得られる一対の位相差像信号のコントラストを確保することができる。
一方、AF補助光を使用しない場合やLED補助光を使用する場合には、撮像素子14の露光時間が長いほど一対の位相差像信号のコントラストを確保することができる。このため、本実施形態では、AF補助光を使用しない場合やLED補助光を使用する場合のフレームレートに対して、閃光補助光を使用する場合のフレームレートを高速に設定する。これにより、閃光補助光を使用する場合の焦点調節の高速化を実現することができる。
また本実施形態では、フレームレートの高速化をレンズ駆動中閃光発光時のみ行う。すなわち、レンズ駆動中閃光発光時には高速フレームレートを用い、ステップ閃光発光時には低速フレームレートを用いる。ステップ閃光発光時の焦点検出は、上述したように閃光発光を行わない場合の焦点検出結果も用いる。このため、ステップ閃光発光時にフレームレートを高速化すると、閃光発光の前後でフレームレートを変更する必要が生じて3回の焦点検出間のタイムラグが拡大してしまう。本実施形態では、閃光発光を使用しない場合と第1の発光量および第2の発光量での閃光発光を使用する場合の焦点検出結果を比較して選択するため、なるべく同じ条件で焦点検出を行うことが望ましい。このため、本実施形態では、フォーカスレンズ駆動中の閃光発光時のみフレームレートを高速化する。ただし、フレームレートの切り替えに必要な時間が短い場合にはこれに限られず、閃光発光を使用しない場合と閃光発光を使用する場合とで適宜フレームレートを切り替えて、ステップ閃光発光を伴う焦点検出を行うようにしてもよい。
また、レンズ駆動中閃光発光時には、信頼性が高い焦点検出結果が得られていることが前提である。得られたデフォーカス量から算出されるフォーカスレンズ駆動量が小さいと、焦点調節の高速化の効果が低いため、フレームレートの高速化は省略してもよい。また、レンズ駆動中閃光発光時に焦点検出領域が絞り込まれておらず、閃光発光を使用する場合と閃光発光を使用しない場合の両方で信頼性が高い焦点検出結果が得られる場合には、フレームレートを高速化しなくてもよい。これにより、閃光補助光が到達しない遠距離被写体と閃光補助光が到達する近距離被写体とが混在するような撮像シーンでも、適切に焦点調節を行うことができる。
ステップS2902において、システム制御部50は、閃光発光および焦点検出を行う。ここでは、事前に設定された発光量での閃光発光を伴う焦点検出により得られた一対の位相差像信号を用いてデフォーカス量を算出する。
ステップS2903において、システム制御部50は、算出したデフォーカス量に基づいてフォーカスレンズ駆動量を更新する。レンズ駆動中の閃光発光および焦点検出では、検出されるデフォーカス量が小さいほど検出誤差が小さい。このため、フォーカスレンズ駆動量、言い換えればフォーカスレンズ駆動の目標位置を更新することにより、高精度な焦点調節を行うことができる。ステップS2903の処理が終了すると、システム制御部50は、図26のステップS2610に進む。
本実施形態では、フォーカスレンズを停止させた状態で間欠発光する閃光補助光を用いて行う焦点検出処理と、フォーカスレンズ駆動を行いながら上記閃光補助光を用いて行う焦点検出処理とを、信頼性が高い焦点検出結果が得られているか否かによって切り替える。これにより、信頼性が高い焦点検出結果が得られていない場合での不要な閃光補助光の発光を抑制しつつ、高速な焦点調節を実現することができる。
本実施形態では、ステップS2609で取得する焦点検出結果を信頼して焦点調節を行う場合について説明した。しかし、フォーカスレンズ駆動中のあるフォーカス位置(第1の位置)での検出デフォーカス量と、推定デフォーカス量との乖離から信頼性を判定してもよい。推定デフォーカス量は、ステップ閃光発光を伴う焦点検出の結果を用いて、焦点検出をしたフォーカスレンズ位置から第1の位置にフォーカスレンズ駆動した状態に対して推定(算出)される。2つのデフォーカス量の乖離が大きい場合には、フォーカスレンズ駆動の開始前と開始後とで、被写体が大きく移動したり、カメラ100の向きが大きく変化したりした可能性が考えられる。この場合には、フォーカスレンズ駆動および焦点検出を中断してもよい。これにより、信頼性が保証されていない焦点検出結果を用いた焦点調節を早期に完了させることができる。ユーザは、必要に応じて、再度、焦点調節処理を開始させることで、撮像を意図する被写体に対する焦点調節に要する時間を短縮することができる。
また、ステップS2610で説明したフォーカスレンズ駆動中の閃光発光の許容回数は、事前のステップ閃光発光回数に応じて可変としてもよい。ステップ閃光発光回数は、消費電力を削減したり焦点調節後の画像記録用撮像時の発光量を確保したりする観点から、フォーカスレンズ駆動中の閃光発光回数を適切に設定すればよい。また、閃光発光回数を多くする場合には、発光開始デフォーカス量を大きくすることにより、フォーカスレンズ駆動中の被写体移動の影響を低減して、より確実に焦点検出を行うことができる。
本実施形態では、予め互いに異なるように決められた発光量で閃光発光を行い、そこで得られた一対の位相差像信号を用いて焦点検出領域の選択やデフォーカス量の算出を行う。また、選択した焦点検出結果が得られた発光量を基準として、それ以後の発光量を調整する調光処理を行う。これにより、焦点検出を行う前に、調光処理を行う必要がないため、迅速な焦点調節を行うことができる。また、ステップ閃光発光時に調光を行うことにより、1回の閃光発光で信頼性が高い焦点検出結果を得ることができる。このため、レンズ駆動中閃光発光やこれ以後のステップ閃光発光の回数を低減することが可能である。
また、本実施形態では、位相差像信号のコントラストの調整を、主として発光量を調整することにより実現する。しかし、これに限られるものではなく、撮像素子14から読み出す撮像信号のゲイン調整により実現してもよい。発光量による調整では、被写体の反射率や距離等により、より近くて反射率が高い被写体のコントラストの調整に効果が大きく、位相差像信号のS/N比が改善される。一方、ゲイン調整によるコントラストの調整では、焦点検出信号のS/N比は改善されないが、被写体の距離や反射率によらず、より容易にコントラストの調整を行うことができる。
また、本実施形態では、レンズ駆動中閃光発光を行う前に焦点検出領域が決定している場合について説明した。ただし、上述した自動選択モード等、信頼性が高い焦点検出結果が得られたものの焦点検出領域を絞り込まないモードでは、個々の焦点検出領域に対応した発光量の調整は行えない。このため、第1の発光量、第2の発光量および発光無しのいずれかから選択すればよい。例えば、より多くの信頼性が高い焦点検出結果やより近距離の近い被写体の存在を示す焦点検出結果に対応する発光量を選択すればよい。
以上のように、本実施形態によれば、レンズ関連情報を用いて、像高に応じた発光手段の制御を行う撮像装置を提供することができる。
(その他の実施例)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。