特許文献1に記載の第1実施例の感熱製版装置においては、ローラ形状のプラテンが紗を挟み込んだ状態でサーマルヘッドの発熱面と接触することから、プラテンが紗を発熱面に押圧することにより加熱される紗の領域は、極めて狭い領域になる。また、特許文献1に記載の第2実施例の感熱製版装置においては、サーマルヘッドの発熱端部が2つの凸部の間に支持された紗に当接することから、発熱端部が紗に当接することにより加熱される紗の領域は、極めて狭い領域になる。サーマルヘッドと紗枠とは、駆動手段により相対的に移動されることから、この駆動手段の駆動に伴って発生する振動がサーマルヘッドおよび紗枠に伝達される。サーマルヘッドおよび紗枠は、孔版部分を形成している間、駆動手段の駆動に伴って振動することがある。
サーマルヘッドおよび紗枠が振動すると、加熱される紗の領域の広さが変動する。加熱される紗の領域は極めて狭い領域であり、その領域の広さが変動することから、所望画像が形成されるべき紗の部分を充分に加熱することができず、鮮明な孔版部分を形成することができない問題が生ずる。
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、サーマルヘッドの発熱端部と感熱式シートとの接触領域の広さを安定化させることにより、鮮明な孔版部分を形成することができる感熱製版装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明態様は、感熱式シートを張設するシート支持部材と、発熱端部を有するサーマルヘッドと、サーマルヘッドを支持するヘッド支持部材と、シート支持部材により張設された感熱式シートとサーマルヘッドとを所定の製版方向に相対的に移動させるための移動機構と、シート支持部材により張設された感熱式シートを保持するための保持機構と、を備え、保持機構は、所定の製版方向において、サーマルヘッドの発熱端部と接触する感熱式シートの接触位置の上流側および下流側の領域にそれぞれ配置され、ヘッド支持部材、または、ヘッド支持部材に連結される連結支持部材にそれぞれ取り付けられる上流側基準部材および下流側基準部材と、上流側基準部材および下流側基準部材との間で、シート支持部材により張設された感熱式シートを挟持するために、上流側基準部材および下流側基準部材に対して相対的に接離可能にそれぞれ配置される上流側挟持部材および下流側挟持部材と、を含み、上流側基準部材および下流側基準部材は、シート支持部材により張設された感熱式シートと直交する方向における位置関係であってサーマルヘッドの発熱端部に対する一定の位置関係に、それぞれ配置される。
また、請求項1に記載の発明態様では、上流側基準部材および下流側基準部材と、上流側挟持部材および下流側挟持部材とが磁力により吸着するために、上流側基準部材および下流側基準部材は、上流側基準吸着体および下流側基準吸着体をそれぞれ含み、上流側挟持部材および下流側挟持部材は、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体をそれぞれ含む。
本発明態様では、シート支持部材は、供給スプールおよび巻き取りスプールにより、ロール状に巻かれた感熱式シートを張設する構成であってもよいし、矩形状または円形状の枠部材により、感熱式シートを張設する構成であってもよい。
本発明態様では、サーマルヘッドは、所定の製版方向と直交する幅方向において製版画像の1ライン分を同時に製版するラインヘッド形式で構成されてもよいし、所定の製版方向に移動した後に幅方向に製版領域を変更することにより、製版画像の1ライン分を分割して製版する形式で構成されてもよい。
本発明態様では、移動機構は、シート支持部材およびサーマルヘッドのうちの少なくとも一方を移動させる構成であればよい。
本発明態様では、上流側基準部材および下流側基準部材と、上流側挟持部材および下流側挟持部材とが、シート支持部材により張設された感熱式シートを挟持するために、上流側基準部材および下流側基準部材が、上流側挟持部材および下流側挟持部材に対して接離可能に配置される構成であってもよいし、上流側挟持部材および下流側挟持部材が、上流側基準部材および下流側基準部材に対して接離可能に配置される構成であってもよい。
本発明態様では、所定の製版画像が感熱式シートに形成される間において、上流側基準部材および下流側基準部材が、サーマルヘッドの発熱端部に対して一定の位置関係に、それぞれ配置されるのであれば、所定の製版画像の形成前に、上流側基準部材および下流側基準部材に対するサーマルヘッドの発熱端部の相対的な位置が調整される構成であってもよい。
本発明態様では、上流側挟持部材および下流側挟持部材は、上流側基準部材および下流側基準部材とともに、所定の製版方向に移動することができる構成であれば、その構成は限定されない。たとえば、所定の製版方向に上流側挟持部材および下流側挟持部材を移動させる機構と、所定の製版方向に上流側基準部材および下流側基準部材を移動させる機構とが、それぞれ備えられる構成であってもよいし、所定の製版方向に上流側基準部材および下流側基準部材を移動させる機構のみが備えられ、上流側挟持部材および下流側挟持部材が、磁力により上流側基準部材および下流側基準部材に吸着される構成であってもよい。
本発明態様では、製版画像が感熱式シートに形成されている間に、連結支持部材は、サーマルヘッドおよびヘッド支持部材とともに、所定の製版方向に移動されるように、ヘッド支持部材に連結される構成であれば、その構成は限定されない。
本発明態様では、上流側基準部材および下流側基準部材と、上流側基準吸着体および下流側基準吸着体との少なくとも一方が、永久磁石または電磁石などの磁力を発生する構成を有すればよい。
請求項2に記載の具体的態様では、上流側基準部材および下流側基準部材は、シート支持部材により張設された感熱式シートと接触可能な上流側基準面および下流側基準面をそれぞれ有し、サーマルヘッドの発熱端部が、上流側基準面および下流側基準面から上流側挟持部材および下流側挟持部材に向って突出する状態で、上流側基準部材および下流側基準部材はサーマルヘッドの発熱端部に対してそれぞれ配置され、サーマルヘッドの発熱端部が上流側基準面および下流側基準面から突出する突出量が、予め定められた量に設定される。
本具体的態様では、サーマルヘッドの発熱端部が上流側基準面および下流側基準面から突出する突出量は、少なくとも製版画像が感熱式シートに形成される前に設定される構成であれば、その構成は限定されない。サーマルヘッドの発熱端部が上流側基準面および下流側基準面から突出する突出量は、種々の要因に応じて設定される。たとえば、所定の製版方向と直交する方向においてサーマルヘッドの発熱端部の発熱特性が異なることに起因する孔版部分の大きさのバラツキを小さくするために、突出量が予め調整されて設定される。また、サーマルヘッドの発熱端部が上流側基準面および下流側基準面から突出する突出量は、シート支持部材により張設される感熱式シートの剛性に応じて予め設定される。
請求項3に記載の具体的態様では、サーマルヘッドの発熱端部が上流側基準面および下流側基準面から突出する突出量は、所定の製版方向における上流側挟持部材の下流側端部と下流側挟持部材の上流側端部との間の間隔より小さい量に設定される。
本具体的態様では、所定の製版方向における上流側挟持部材の下流側端部と下流側挟持部材の上流側端部との間の間隔は、サーマルヘッドの発熱端部の寸法、および、上流側挟持部材および下流側挟持部材に対するサーマルヘッドの発熱端部の配置姿勢などの要因に応じて変化する。通常、サーマルヘッドの発熱端部と感熱式シートとの接触領域の広さを所定の広さに維持するためには、所定の製版方向における上流側挟持部材の下流側端部と下流側挟持部材の上流側端部との間の間隔が大きくなれば、サーマルヘッドの発熱端部が上流側基準面および下流側基準面から突出する突出量を大きくする必要がある。
請求項4に記載の具体的態様では、上流側基準吸着体および下流側基準吸着体と、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体とは、永久磁石からそれぞれ形成される。
請求項5に記載の具体的態様では、サーマルヘッドと、上流側基準部材および下流側基準部材とは、シート支持部材により張設された感熱式シートより下方に配置され、上流側挟持部材および下流側挟持部材は、シート支持部材により張設された感熱式シートの上に載置される。
請求項6に記載の具体的態様では、サーマルヘッドの発熱端部は、所定の製版方向と直交する幅方向に延び、上流側基準吸着体および下流側基準吸着体の各基準吸着体は、所定の製版方向と直交する幅方向に延びるN極の磁極列と、所定の製版方向と直交する幅方向に延び、所定の製版方向においてN極の磁極列と所定の磁極間隔をあけて形成されるS極の磁極列と、を有し、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体の各挟持吸着体は、各基準吸着体のN極の磁極列に吸着するS極の磁極列と、各基準吸着体のS極の磁極列に吸着するN極の磁極列と、を有する。
本具体的態様では、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体の各挟持吸着体は、S極の磁極列と、N極の磁極列と、を有するのであれば、種々の構成が考えられる。たとえば、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体のうちの一方の挟持吸着体が、さらにS極またはN極の別の磁極列を有する構成、すなわち3列以上の磁極列を有する構成であってもよい。または、一方の挟持吸着体が、別の磁極列に代えて、磁極を有しない材料、たとえば、鉄などの強磁性体、またはアルミニウムなどの弱磁性体で形成される部分を有する構成であってもよい。
請求項7に記載の具体的態様は、所定の製版方向にそれぞれ延びる第1側方基準吸着体、および第2側方基準吸着体と、第1側方基準吸着体、および第2側方基準吸着体に磁力によりそれぞれ吸着する第1側方挟持吸着体、および第2側方挟持吸着体と、を備え、第1側方基準吸着体は、所定の製版方向と直交する幅方向における上流側基準吸着体の両側端部の一方の側端部と、下流側基準吸着体の両側端部の一方の側端部とにそれぞれ近接して配置され、第2側方基準吸着体は、上流側基準吸着体の他方の側端部と、下流側基準吸着体の他方の側端部とにそれぞれ近接して配置され、第1側方挟持吸着体、および第2側方挟持吸着体は、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体が上流側基準吸着体および下流側基準吸着体に磁力によりそれぞれ吸着した状態において、所定の製版方向にそれぞれ延び、第1側方基準吸着体に磁力により吸着した状態における第1側方挟持吸着体は、所定の製版方向と直交する幅方向における上流側挟持吸着体の両側端部の一方の側端部と、下流側挟持吸着体の両側端部の一方の側端部とにそれぞれ近接して配置され、第2側方基準吸着体に磁力により吸着した状態における第2側方挟持吸着体は、上流側挟持吸着体の他方の側端部と、下流側挟持吸着体の他方の側端部とにそれぞれ近接して配置される。
本具体的態様では、第1側方基準吸着体が、上流側基準吸着体の一方の側端部と、下流側基準吸着体の一方の側端部とにそれぞれ近接して配置される配置構成は、第1側方基準吸着体が、上流側基準吸着体の他方の側端部と、下流側基準吸着体の他方の側端部とよりも、上流側基準吸着体の一方の側端部と、下流側基準吸着体の一方の側端部とにそれぞれ近接して配置される配置構成である。第2側方基準吸着体、第1側方挟持吸着体、および第2側方挟持吸着体も、第1側方基準吸着体と同様に、近接して配置される配置構成である。
請求項8に記載の具体的態様では、所定の製版方向と直交する幅方向において所定の製版画像を分割して感熱式シートに形成するために、移動機構は、シート支持部材により張設された感熱式シートとサーマルヘッドとを、所定の製版方向に相対的に移動させるとともに、所定の製版方向と直交する幅方向に相対的に移動させる。
請求項9に記載の具体的態様は、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体が上流側基準吸着体および下流側基準吸着体に磁力によりそれぞれ吸着するとともに、第1側方挟持吸着体および第2側方挟持吸着体が第1側方基準吸着体および第2側方基準吸着体に磁力によりそれぞれ吸着する所定の吸着状態を検出する検出手段と、検出手段が所定の吸着状態を検出したことを作業者に報知する報知手段と、を備える。
本具体的態様では、検出手段は、所定の吸着状態を検出する構成であれば、種々の構成が考えられる。たとえば、検出手段の構成として、各挟持吸着体が各基準吸着体に吸着して所定の吸着状態になったことを、光学的に、または、磁気的に検出する構成が考えられる。
請求項10に記載の具体的態様は、移動機構を駆動する駆動モータと、駆動モータを制御する制御手段と、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体が上流側基準吸着体および下流側基準吸着体に磁力によりそれぞれ吸着するとともに、第1側方挟持吸着体および第2側方挟持吸着体が第1側方基準吸着体および第2側方基準吸着体に磁力によりそれぞれ吸着する所定の吸着状態を検出する検出手段と、を備え、制御手段は、検出手段が所定の吸着状態を検出したときに、駆動モータの駆動を許可し、検出手段が所定の吸着状態を検出しないときに、駆動モータの駆動を禁止する。
請求項11に記載の具体的態様では、上流側基準吸着体および下流側基準吸着体と、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体とは、磁気シートからそれぞれ形成され、シート支持部材により張設された感熱式シートと接触可能な磁気シートの表面は、磁気シートより小さい摩擦係数を有する低摩擦膜により被覆される。
本具体的態様では、磁気シートの表面を低摩擦膜により被覆する構成として、種々の構成が考えられる。たとえば、磁気シートより小さい摩擦係数を有する材料が磁気シートの表面に塗布される構成、または、低摩擦膜を有するテープが磁気シートの表面に貼り付けられる構成が考えられる。
請求項12に記載の具体的態様では、サーマルヘッドは、所定の製版方向と直交する幅方向において第1幅を有するセラミック基体と、セラミック基体に形成される発熱端部と、を含み、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体の各挟持吸着体は、所定の製版方向と直交する幅方向において、第1幅より短い幅を有し、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体の各挟持吸着体は、所定の製版方向と直交する幅方向においてセラミック基板が配置される配置領域内に配置される。
請求項1に記載の発明態様では、上流側基準部材および下流側基準部材は、所定の製版方向において、サーマルヘッドの発熱端部と接触する感熱式シートの接触位置の上流側および下流側の領域にそれぞれ配置され、ヘッド支持部材、または、ヘッド支持部材に連結される連結支持部材にそれぞれ取り付けられる。上流側挟持部材および下流側挟持部材は、上流側基準部材および下流側基準部材との間で、シート支持部材により張設された感熱式シートを挟持するために、上流側基準部材および下流側基準部材に対して相対的に接離可能にそれぞれ配置される。上流側基準部材および下流側基準部材は、シート支持部材により張設された感熱式シートと直交する方向における位置関係であってサーマルヘッドの発熱端部に対する一定の位置関係に、それぞれ配置される。この結果、上流側基準部材および下流側基準部材と上流側挟持部材および下流側挟持部材との間で、感熱式シートが挟持されることにより、サーマルヘッドの発熱端部と感熱式シートとの接触領域の広さを安定化させることにより、鮮明な孔版部分を形成することができる
また、請求項1に記載の発明態様では、上流側基準吸着体および下流側基準吸着体と、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体とが、磁力によりそれぞれ吸着する。この結果、感熱式シートを挟持する挟持力を簡易な構成で発生することができる。
請求項2に記載の具体的態様では、サーマルヘッドの発熱端部が、上流側基準面および下流側基準面から上流側挟持部材および下流側挟持部材に向って突出する。サーマルヘッドの発熱端部が上流側基準面および下流側基準面から突出する突出量が、予め定められた量に設定される。この結果、サーマルヘッドの発熱端部が上流側基準面および下流側基準面から突出する突出量が、予め定められた量に設定されることにより、サーマルヘッドの発熱端部と感熱式シートとの接触領域の広さを一層安定化させることができる。
請求項3に記載の具体的態様では、サーマルヘッドの発熱端部が上流側基準面および下流側基準面から突出する突出量は、所定の製版方向における上流側挟持部材の下流側端部と下流側挟持部材の上流側端部との間の間隔より小さい量に設定される。この結果、サーマルヘッドの発熱端部の突出量が上流側挟持部材の下流側端部と下流側挟持部材の上流側端部との間の間隔より小さいことから、発熱端部が、シート支持部材により張設された感熱式シートに広い範囲で滑らかに接触することができる。
請求項4に記載の具体的態様では、上流側基準吸着体および下流側基準吸着体と、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体とは、永久磁石からそれぞれ形成される。この結果、感熱式シートを挟持する構成を簡易な構成にすることができる。
請求項5に記載の具体的態様では、サーマルヘッドと、上流側基準部材および下流側基準部材とは、シート支持部材により張設された感熱式シートより下方に配置され、上流側挟持部材および下流側挟持部材は、シート支持部材により張設された感熱式シートの上に載置される。この結果、上流側挟持部材および下流側挟持部材が感熱式シートの上に載置されることから、オペレータは、上流側基準部材および下流側基準部材に対して上流側挟持部材および下流側挟持部材を容易に位置決めして吸着させることができる。
請求項6に記載の具体的態様では、サーマルヘッドの発熱端部は、所定の製版方向と直交する幅方向に延びる。各基準吸着体は、所定の製版方向と直交する幅方向に延びるN極の磁極列と、所定の製版方向と直交する幅方向に延び、所定の製版方向においてN極の磁極列と所定の磁極間隔をあけて形成されるS極の磁極列と、を有する。各挟持吸着体は、各基準吸着体のN極の磁極列に吸着するS極の磁極列と、各基準吸着体のS極の磁極列に吸着するN極の磁極列と、を有する。この結果、各基準吸着体のN極の磁極列とS極の磁極列とが、各挟持吸着体のS極の磁極列とN極の磁極列とに所定の位置関係で吸着することから、上流側基準吸着体および下流側基準吸着体に対して上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体を精度よく位置決めすることができる。
請求項7に記載の具体的態様では、第1側方基準吸着体、および第2側方基準吸着体は、所定の製版方向にそれぞれ延びる。第1側方基準吸着体は、所定の製版方向と直交する幅方向における上流側基準吸着体の両側端部の一方の側端部と、下流側基準吸着体の両側端部の一方の側端部とにそれぞれ近接して配置される。第2側方基準吸着体は、上流側基準吸着体の他方の側端部と、下流側基準吸着体の他方の側端部とにそれぞれ近接して配置される。第1側方挟持吸着体、および第2側方挟持吸着体は、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体が上流側基準吸着体および下流側基準吸着体に磁力によりそれぞれ吸着した状態において、所定の製版方向にそれぞれ延びる。第1側方基準吸着体に磁力により吸着した状態における第1側方挟持吸着体は、所定の製版方向と直交する幅方向における上流側挟持吸着体の両側端部の一方の側端部と、下流側挟持吸着体の両側端部の一方の側端部とにそれぞれ近接して配置される。第2側方基準吸着体に磁力により吸着した状態における第2側方挟持吸着体は、上流側挟持吸着体の他方の側端部と、下流側挟持吸着体の他方の側端部とにそれぞれ近接して配置される。この結果、第1側方基準吸着体、および第2側方基準吸着体と、第1側方挟持吸着体、および第2側方挟持吸着体とが吸着することにより、所定の製版方向と直交する幅方向において、上流側基準吸着体および下流側基準吸着体に対して上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体を精度よく位置決めするとともに、一定の位置関係に保持することができる。
請求項8に記載の具体的態様では、所定の製版方向と直交する幅方向において所定の製版画像を分割して感熱式シートに形成するために、移動機構は、シート支持部材により張設された感熱式シートとサーマルヘッドとを、所定の製版方向に相対的に移動させるとともに、所定の製版方向と直交する幅方向に相対的に移動させる。この結果、移動機構が感熱式シートとサーマルヘッドとを所定の製版方向と直交する幅方向に相対的に移動させるときでも、上流側基準吸着体および下流側基準吸着体に対して上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体を一定の位置関係に保持することができる。
請求項9に記載の具体的態様では、検出手段は、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体が上流側基準吸着体および下流側基準吸着体に磁力によりそれぞれ吸着するとともに、第1側方挟持吸着体および第2側方挟持吸着体が第1側方基準吸着体および第2側方基準吸着体に磁力によりそれぞれ吸着する所定の吸着状態を検出する。報知手段は、検出手段が所定の吸着状態を検出したことを作業者に報知する。この結果、報知手段の報知結果に従って、オペレータは所定の吸着状態にあるのか否かを容易に認識することができる。
請求項10に記載の具体的態様では、検出手段は、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体が上流側基準吸着体および下流側基準吸着体に磁力によりそれぞれ吸着するとともに、第1側方挟持吸着体および第2側方挟持吸着体が第1側方基準吸着体および第2側方基準吸着体に磁力によりそれぞれ吸着する所定の吸着状態を検出する。制御手段は、検出手段が所定の吸着状態を検出したときに、移動機構を駆動する駆動モータの駆動を許可し、検出手段が所定の吸着状態を検出しないときに、駆動モータの駆動を禁止する。この結果、検出手段が所定の吸着状態を検出しないときに制御手段が駆動モータの駆動を禁止することから、不鮮明な製版画像が形成されることを防止することができる。
請求項11に記載の具体的態様では、上流側基準吸着体および下流側基準吸着体と、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体とは、磁気シートからそれぞれ形成される。シート支持部材により張設された感熱式シートと接触可能な磁気シートの表面は、磁気シートより小さい摩擦係数を有する低摩擦膜により被覆される。この結果、磁気シートの表面が低摩擦膜により被覆されることから、上流側基準吸着体および下流側基準吸着体と、上流側挟持吸着体および下流側挟持吸着体とは、感熱式シートに滑らかに接触することができる。
請求項12に記載の具体的態様では、サーマルヘッドは、所定の製版方向と直交する幅方向において第1幅を有するセラミック基体と、セラミック基体に形成される発熱端部と、を含む。各挟持吸着体は、所定の製版方向と直交する幅方向において、第1幅より短い幅を有する。各挟持吸着体は、所定の製版方向と直交する幅方向においてセラミック基板が配置される配置領域内に配置される。この結果、セラミック基体の両側端部が感熱式シートを引っ掻いて傷つけることを低減することができる。
[実施形態]
以下に、本発明の一実施形態である感熱製版機を備える製版システムについて、図面を参照して説明する。製版システム1は、感熱製版機2と、シート支持枠3と、情報処理装置4とを備える。感熱製版機2は、シート支持枠3に張設された感熱式シートSHに、所望画像の孔版部分を形成する製版機である。感熱式シートは、縦糸と横糸とを織り上げることにより多数のメッシュが形成される紗などの多孔質支持体と、接着剤により多孔質支持体に接着される熱溶融性フィルムとから構成される。情報処理装置4は、感熱製版機2と通信可能なパーソナルコンピュータから構成され、画像データ、および各種の指令を感熱製版機2に送信する。図1は、感熱製版機2の全体構成を示す。なお、上下方向、左右方向、および、前後方向は、図1に矢印で示す方向であり、図2以降の他の図面でも同様に、各方向を示す。
≪感熱製版機2の機械的構成≫
感熱製版機2は、機体フレーム10と、キャリッジ12と、ヘッドユニット14と、Y軸駆動機構16と、X軸駆動機構18と、シート保持機構20とを備える。図1において、機体フレーム10は、前方パネル30と、後方パネル32と、右方パネル34と、左方パネル36とを含む。枠支持フレーム38と、4つの支持金具40~46とが、シート支持枠3を支持するために備えられる。枠支持フレーム38は、前方梁48と、後方梁50と、右方梁52と、左方梁54とを含む。
図2において、一対の前方支持柱56、58が、前方パネル30から立設され、一対の後方支持柱60、62が、後方パネル32から立設される。前方梁48は、一対の前方支持柱56、58の間で左右方向に水平に架設され、後方梁50は、一対の後方支持柱60、62の間で左右方向に水平に架設される。右方梁52は、前方梁48の右端部と、後方梁50の右端部とに前後方向に水平な状態でそれぞれ固定され、左方梁54は、前方梁48の左端部と、後方梁50の左端部とに前後方向に水平な状態でそれぞれ固定される。
図2において、支持金具40は、前方梁48に近接した一定の位置において、右方梁52の上面に配置される。支持金具40は、前方支持壁40Aと、右方支持壁40Bとを含み、上方に開放される。支持金具42は、前方梁48に近接した一定の位置において、左方梁54の上面に配置される。支持金具42は、前方支持壁42Aと、左方支持壁42Bと、上方支持壁42Cとを含む。支持金具44は、支持金具40から後方に離れた位置において、右方梁52の上面に配置される。支持金具44は、後方支持壁44Aと、右方支持壁44Bと、上方支持壁44Cとを含む。支持金具46は、支持金具42から後方に離れた位置において、左方梁54の上面に配置される。支持金具46は、後方支持壁46Aと、左方支持壁46Bと、上方支持壁46Cとを含む。支持金具44と、支持金具46とは、シート支持枠3の前後方向の寸法に応じて前後方向の配置位置が調整されるように、右方梁52と、左方梁54とに前後方向に摺動可能にそれぞれ取り付けられる。
図3において、シート支持枠3は、四角形状を有し、前方枠部70と、後方枠部72と、右方枠部74と、左方枠部76とを含む。感熱式シートSHは、熱溶融性フィルムが接着されたシート面である感熱面が下方を向く姿勢で、4つの枠部70~76の下面に接着剤により接着される。シート支持枠3は、4つの枠角部80~86を有する。図1において、ユーザは、3つの枠角部82~86を、支持金具42~46にほぼ水平方向から挿入して嵌合させ、枠角部80を、支持金具40に上方から挿入して嵌合させる。これらの枠角部80~86の嵌合により、ユーザは、シート支持枠3を感熱製版機2に装着することができる。ユーザは、所望画像の孔版部分が形成された感熱式シートSHの接着部分に、接着剤を溶かす溶剤を塗布することにより、感熱式シートSHをシート支持枠3から取り外すことができる。
図4において、キャリッジ12は、Y軸キャリッジ90と、X軸キャリッジ92とを含む。Y軸キャリッジ90は、Y軸駆動機構16により、前後方向であるY軸方向に移動される。X軸キャリッジ92と、X軸駆動機構18とは、Y軸キャリッジ90に搭載される。X軸キャリッジ92は、X軸駆動機構18により、左右方向であるX軸方向に移動される。
<Y軸キャリッジ90の詳細な構成>
Y軸キャリッジ90の詳細な構成について、図4乃至図6を参照して説明する。Y軸キャリッジ90は、Y軸基台94と、一対の側壁部96、98と、中間支持台100とを主に備える。Y軸基台94は、図5に示されるように、右方パネル34と左方パネル36との間で左右方向に水平に延びる。中間支持台100は、図4に示されるように、Y軸基台94の上方に配置され、右方パネル34と、左方パネル36との間で左右方向に水平に延びる。一対の側壁部96、98は、図6に示されるように、中間支持台100の左右両端部に、ねじなどの固定手段によりそれぞれ固定される。一対の側壁部96、98は、中間支持台100から上方および下方に垂直にそれぞれ延びる。
<Y軸駆動機構16の詳細な構成>
Y軸駆動機構16の詳細な構成について、図5を参照して説明する。Y軸駆動機構16は、一対のガイド軸と、一対の軸受102、104と、一対の支持板部106、108と、長尺駆動ベルト110と、Y軸駆動モータ112と、駆動軸114と、伝達ベルト116と、伝達プーリ118と、駆動プーリ120と、一対のテンションコロ122、124とを主に備える。一対のガイド軸は、前方パネル30と後方パネル32との間で前後方向に水平に延びる。図5において、一対のガイド軸のうちの右方ガイド軸126のみが図示される。一対の支持板部106、108は、Y軸基台94から立設された状態で、Y軸基台94の上面に、ねじなどの固定手段によりそれぞれ固定される。一対の軸受102、104は、一対の支持板部106、108の側面に、ねじなどの固定手段によりそれぞれ固定される。一対の軸受120、122は、一対のガイド軸に沿って摺動する。一対の支持板部106、108と一対の側壁部96、98との間で一対の軸受102、104を挟んだ状態において、一対の支持板部106、108の上方端部は、中間支持台100の下面に、ねじなどの固定手段によりそれぞれ固定される。
駆動軸114が、図5に示されるように、一対の支持板部106、108の間で、左右方向に水平に延びる。伝達プーリ118と駆動プーリ120とは、駆動軸114にそれぞれ固定される。Y軸駆動モータ112は、Y軸基台94の上面に固定される。Y軸駆動モータ112の回転軸は、伝達ベルト116により伝達プーリ118と連結される。一対のテンションコロ122、124は、支持板部106の左側面に、回転自在にそれぞれ取り付けられる。長尺駆動ベルト110は、前方パネル30と後方パネル32との間で、駆動プーリ120の外周面と一対のテンションコロ122、124の外周面とに巻き付けられた状態において、前方パネル30と後方パネル32との間で張設される。Y軸駆動モータ112が回転すると、Y軸駆動モータ112の回転駆動力は、駆動軸114などを介して駆動プーリ120に伝達される。駆動プーリ120の回転方向および回転量に従って、Y軸キャリッジ90が、前方または後方に、所定量だけ移動される。
<X軸キャリッジ92の詳細な構成>
X軸キャリッジ92の詳細な構成について、図4、図6、および図7を参照して説明する。X軸キャリッジ92は、X軸基台130と、一対の側板部132、134と、ユニット支持板部136とを主に備える。X軸基台130は、四角形状を有し、前後方向および左右方向に広がる平坦面を有する。一対の側板部132、134は、X軸基台130の左右両端部からそれぞれ立設され、前後方向に延びる。ユニット支持板部136は、X軸基台130から起立した状態でX軸基台130の上面に固定され、左右方向に延びる。ユニット支持板部136は、前後方向におけるX軸基台130の中間部分に配置される。
<X軸駆動機構18の詳細な構成>
X軸駆動機構18の詳細な構成について、図6および図7を参照して説明する。X軸駆動機構18は、一対のガイド軸140、142と、ねじ軸144と、3つの軸受146~150と、X軸駆動モータ152と、モータプーリ154と、伝達プーリ156と、伝達ベルト158と、ナット部材160とを主に備える。一対のガイド軸140、142は、一対の側壁部96、98の間で、左右方向に水平に延びる。ねじ軸144は、一対の側壁部96、98の間で、一対のガイド軸140、142に平行に延びる。ねじ軸144の左右両端部は、一対の側壁部96、98により回転自在に支持される。軸受146は、X軸基台130の前端部に近接した位置で、X軸基台130の上面に固定される。2つの軸受148、150は、X軸基台130の後端部に近接した位置で、X軸基台130の上面にそれぞれ固定される。軸受146は、ガイド軸140に沿って摺動し、2つの軸受148、150は、ガイド軸140に沿ってそれぞれ摺動する。
X軸駆動モータ152は、側壁部98に近接した位置で、中間支持台100の上面に固定される。モータプーリ154は、X軸駆動モータ152の回転軸に固定され、伝達プーリ156は、ねじ軸144の左端部に固定される。伝達ベルト158は、モータプーリ154と伝達プーリ156とを連結する。ナット部材160は、円筒部分160Aと、鍔部分160Bとを含む。円筒部分160Aは、ねじ軸144と螺合する。嵌合溝162が、図7に示されるように、右方側板部132に形成され、円形溝部分を有する。円筒部分160Aは、嵌合溝162の円形溝部分に嵌合する。ナット部材144の鍔部分160Bは、ねじなどの固定手段により右方側板部132に固定される。X軸駆動モータ152が回転すると、X軸駆動モータ152の回転駆動力は、モータプーリ154、伝達ベルト158、および伝達プーリ156を介して、ねじ軸144に伝達される。ねじ軸144の回転方向および回転量に従って、ナット部材160、およびY軸キャリッジ92が、右方または左方に、所定量だけ移動される。
ヘッドユニット14が、図7に示されるように、ユニット支持板部136に、ねじ164、166により固定される。ヘッドユニット14がユニット支持板部136に固定される構成については、後述する。
<ヘッドユニット14の詳細な構成>
ヘッドユニット14の詳細な構成について、図7乃至図9を参照して説明する。ヘッドユニット14は、支持ブロック170と、ヘッド載置台172と、サーマルヘッド174とを主に備える。支持ブロック170は、図7に示されるように、ユニット支持板部136に、ねじ164、166により固定される。傾斜面170Aが、図9に示されるように、支持ブロック170の上端部に形成される。傾斜面170Aは、後方に向って下方に傾斜するように形成される。ユニット支持板部136は、図8において2点鎖線で示され、上下方向に長い長孔176と、円形孔178と、一対の開口180、182と、一対の支持片184、186とを有する。ねじ164のねじ軸部分は、長孔176に挿通されて支持ブロック170のねじ孔に捻じ込まれ、ねじ166のねじ軸部分は、円形孔178に挿通されて支持ブロック170のねじ孔に捻じ込まれる。揺動ピン188が、図7および図8に示されるように、ユニット支持板部136の左端部に近接した位置に、ユニット支持板部136から後方に突出した状態で配置される。支持ブロック170は、揺動ピン188が嵌合する嵌合孔を有する。支持ブロック170は、揺動ピン188を中心として、ユニット支持板部136に対して上下方向に揺動することができる。
一対の支持片184、186は、図7および図8に示されるように、ユニット支持板部136の右端部において、上下方向に間隔をあけてそれぞれ形成され、後方に向って水平にそれぞれ延びる。支持ブロック170は、図8に示されるように、延出部190を有する。延出部190は、支持ブロック170の右端部から右方に延び、一対の支持片184、186の間に配置される。調整ねじ192が、支持片184に形成されたねじ孔に螺合される。調整ねじ192の先端部は、延出部190の上面に当接する。コイルばね194が、支持片186と延出部190の下面との間に配置され、延出部190を上方に向って弾性力により付勢する。
ヘッド載置台172は、図9に示されるように、支持ブロック170の傾斜面170Aに載置される。揺動ピン196が、図8および図9に示されるように、延出部190に近接した位置に、傾斜面170Aから上方に突出した状態で配置される。揺動ピン196は、傾斜面170Aに垂直な方向に突出する。ヘッド載置台172は、揺動ピン196が嵌合する嵌合孔を有する。ヘッド載置台172は、揺動ピン196を中心として、支持ブロック170に対して、傾斜面170Aに沿う傾斜方向に揺動することができる。傾斜面170Aに沿う傾斜方向は、前方に向って上方に傾斜する方向であるが、ほぼ前後方向である。
ヘッド載置台172が、図8に示されるように、支持ブロック170に、ねじ198、200により固定される。支持ブロック170は、ねじ198、200のねじ軸部分が挿通される円形孔を有する。図9において、ねじ198のねじ軸部分が挿通される円形孔202のみが、示される。ねじ198、200のねじ軸部分が挿通される円形孔の直径は、ねじ軸部分の直径よりも充分に大きな直径に設定される。
前方支持片204が、図7に示されるように、ユニット支持板部136の右端部から上方に延びて形成される。調整ねじ206が、前方支持片204に形成されたねじ孔に螺合される。調整ねじ206の先端部は、図9に示されるように、ヘッド載置台172の前端部に当接する。後方支持金具208は、下方屈曲部208Aと、上方屈曲部208Bとを有する。下方屈曲部208Aは、支持ブロック170の後面に、ねじなどの固定手段により固定される。調整ねじ210が、上方屈曲部208Bに形成されたねじ孔に螺合される。調整ねじ210の先端部は、図9に示されるように、ヘッド載置台172の後端部に当接する。
サーマルヘッド174は、セラミック基板220と、接続回路222とを主に備える公知の構成を有する。セラミック基板220は、ヘッド載置台172の上面に、接着剤などの固定手段により固定される。図9において、発熱体224は、セラミック基板220の前端部の上方部分に形成され、保護膜により被覆される。接続回路222は、発熱体224に接続される電極に接続するために備えられ、セラミック基板220の後方部分に配置される。セラミック基板220は、図8に示されるように、左右方向に延び、幅L1を有する。本実施形態では、ヘッド載置台172は、サーマルヘッド174からの発熱を放熱する役割も有する。
<シート保持機構20の詳細な構成>
シート保持機構20の詳細な構成について、図6、図9乃至図13を参照して説明する。シート保持機構20は、基準部材ユニット230と、挟持部材ユニット232とを主に備える。シート支持枠3により張設された感熱式シートSHは、基準部材ユニット230と、挟持部材ユニット232とにより上下方向において挟持されて保持される。
(基準部材ユニット230の詳細な構成)
基準部材ユニット230は、基準板部234と、前方基準吸着体236と、後方基準吸着体238と、右方基準吸着体240と、左方基準吸着体242とを含む。基準板部234は、図6に示されるように、四角形の形状に形成され、平坦な上面を有する。基準板部234は、弱磁性体、たとえばアルミニウムにより形成され、図7に示される3つの軸受146~150の上面に、ねじなどの固定手段により固定される。
基準板部234は、図10に示されるように、左右方向に長く延びる開口244を有する。前方基準吸着体236は、開口244の前端縁と前方基準吸着体236の後端縁とが一致する位置において、基準板部234の上面に、接着剤などの固定手段により固定される。後方基準吸着体238は、開口244の後端縁と後方基準吸着体238の前端縁とが一致する位置において、基準板部234の上面に、接着剤などの固定手段により固定される。前方基準吸着体236と、後方基準吸着体238とは、左右方向に延び、同じ幅L2を有する。幅L2は、セラミック基板220の幅L1より小さい幅に設定される。開口244の左右方向の幅は、セラミック基板220の幅L1より大きい幅に設定され、開口244の前後方向の寸法は、寸法L3に設定される。後方基準吸着体238の前後方向の寸法は、前方基準吸着体236の前後方向の寸法より大きな寸法に設定される。図10において、セラミック基板220の右端縁と、前方基準吸着体236の右端縁および後方基準吸着体238の右端縁との間の間隔は、セラミック基板220の左端縁と、前方基準吸着体236の左端縁および後方基準吸着体238の左端縁との間の間隔と同じ間隔に設定され、(L1-L2)/2の間隔である。
右方基準吸着体240は、開口244の右端縁と右方基準吸着体240の左端縁とが一致する位置において、基準板部234の上面に、接着剤などの固定手段により固定される。左方基準吸着体242は、開口244の左端縁と左方基準吸着体242の右端縁とが一致する位置において、基準板部234の上面に、接着剤などの固定手段により固定される。右方基準吸着体240の前方部分と、左方基準吸着体242の前方部分とは、前方基準吸着体236の前端縁より前方に延び、右方基準吸着体240の後方部分と、左方基準吸着体242の後方部分とは、後方基準吸着体238の後端縁より後方に延びる。右方基準吸着体240および左方基準吸着体242は、同じ前後方向の寸法を有するとともに、同じ左右方向の寸法を有する。右方基準吸着体240および左方基準吸着体242の左右方向の寸法は、前方基準吸着体236の前後方向の寸法と同じ寸法に設定される。図10において、右方基準吸着体240の左端縁と、前方基準吸着体236の右端縁および後方基準吸着体238の右端縁との間の間隔は、左方基準吸着体242の右端縁と、前方基準吸着体236の左端縁および後方基準吸着体238の左端縁との間の間隔と同じ間隔に設定され、間隔L4である。図10に示されるように、間隔L4は、(L1-L2)/2より大きな間隔である。
前方基準吸着体236と、後方基準吸着体238と、右方基準吸着体240と、左方基準吸着体242とは、磁気シートによりそれぞれ構成される。前方基準吸着体236は、左右方向に延びるS極の磁極列とN極の磁極列との2つの磁極列を有する。前方基準吸着体236について、N極の磁極列は、前後方向においてS極の磁極列よりも開口244の前端縁に近い位置に配列される。後方基準吸着体238は、左右方向に延びるS極の磁極列とN極の磁極列とS極の磁極列との3つの磁極列を有する。後方基準吸着体238の3つの磁極列のうちで最も前方に配列されるS極の磁極列は、後方基準吸着体238の前端縁の近傍に形成される。右方基準吸着体240は、前後方向に延びるS極の磁極列とN極の磁極列との2つの磁極列を有する。右方基準吸着体240について、S極の磁極列は、左右方向においてN極の磁極列よりも開口244の右端縁に近い位置に配列される。左方基準吸着体242は、前後方向に延びるS極の磁極列とN極の磁極列との2つの磁極列を有する。左方基準吸着体242について、S極の磁極列は、左右方向においてN極の磁極列よりも開口244の左端縁に近い位置に配列される。4つの基準吸着体236~242の各基準吸着体は、隣り合う2つの磁極列の間隔が、ほぼ同じ間隔になるように磁化される。一般に、隣り合う2つの磁極列の間隔は、N極の磁力が最も強い位置と、S極の磁力が最も強い位置との間の間隔により定められる。
前方基準吸着体236と、後方基準吸着体238と、右方基準吸着体240と、左方基準吸着体242とは、シート支持枠3により張設された感熱式シートSHと接触する基準面となる上面を有する。前方基準吸着体236と、後方基準吸着体238と、右方基準吸着体240と、左方基準吸着体242とは、同じ厚さの磁気シートによりそれぞれ構成されることから、4つの基準吸着体236~242の上面は、基準板部234の上面から、同じ高さ位置に配置される。本実施形態では、4つの基準吸着体236~242の上面は、各基準吸着体の上面より摩擦係数が小さく、かつ、耐摩耗性に優れる材料により、被覆される。たとえば、被覆する材料として、スリーエム カンパニー(登録商標)が販売する超高分子量ポリエチレンテープ、または、PTFEテープが使用され、そのテープが各基準吸着体の上面に貼着される。
(挟持部材ユニット232の詳細な構成)
挟持部材ユニット232は、挟持板部254と、前方挟持吸着体256と、後方挟持吸着体258と、右方挟持吸着体260と、左方挟持吸着体262とを含む。挟持板部254は、図11に示されるように、左右方向に延びる長方形の形状に形成され、平坦な下面を有する。挟持板部254は、弱磁性体、たとえばアルミニウムにより形成される。挟持板部254の前後両端部は、上方に湾曲して形成される。
前方挟持吸着体256は、挟持板部254の前端部に近い位置において、挟持板部254の下面に、接着剤などの固定手段により固定される。後方挟持吸着体258は、前方挟持吸着体256より後方の位置において、挟持板部254の下面に、接着剤などの固定手段により固定される。前方挟持吸着体256と、後方挟持吸着体258とは、左右方向に平行に延び、前方基準吸着体236および後方基準吸着体238と同様に、同じ幅L2を有する。後方挟持吸着体258の前後方向の寸法は、前方挟持吸着体256の前後方向の寸法より大きな寸法に設定される。前方挟持吸着体256の前後方向の寸法は、前方基準吸着体236の前後方向の寸法と同じ寸法に設定される。後方挟持吸着体258の前後方向の寸法は、後方基準吸着体238の前後方向の寸法より大きな寸法に設定される。前方挟持吸着体256の後端縁と後方挟持吸着体256の前端縁との間隔は、図12に示されるように、間隔L5に設定される。間隔L5は、開口244の前後方向の寸法L3より小さな間隔に設定される。
右方挟持吸着体260は、前方挟持吸着体256の右端縁および後方挟持吸着体258の右端縁に近い位置において、挟持板部254の下面に、接着剤などの固定手段により固定される。左方挟持吸着体262は、前方挟持吸着体256の左端縁および後方挟持吸着体258の左端縁に近い位置において、挟持板部254の下面に、接着剤などの固定手段により固定される。右方挟持吸着体260の前方部分と、左方挟持吸着体262の前方部分とは、前方挟持吸着体256の前端縁より前方に延び、右方挟持吸着体260の後方部分と、左方挟持吸着体262の後方部分とは、後方挟持吸着体258の後端縁より後方に延びる。右方挟持吸着体260および左方挟持吸着体262は、同じ前後方向の寸法を有するとともに、同じ左右方向の寸法を有する。右方挟持吸着体260および左方挟持吸着体262の左右方向の寸法は、前方挟持吸着体256の前後方向の寸法と同じ寸法に設定される。右方挟持吸着体260および左方挟持吸着体262の前後方向の寸法は、右方基準吸着体240の前後方向の寸法と同じ寸法に設定される。図12において、右方挟持吸着体260の左端縁と、前方挟持吸着体256の右端縁および後方挟持吸着体258の右端縁との間の間隔は、左方挟持吸着体262の右端縁と、前方挟持吸着体256の左端縁および後方挟持吸着体258の左端縁との間の間隔と同じ間隔に設定される。右方挟持吸着体260の左端縁と、前方挟持吸着体256の右端縁および後方挟持吸着体258の右端縁との間の間隔は、右方基準吸着体240の左端縁と、前方基準吸着体236の右端縁および後方基準吸着体238の右端縁との間の間隔と同じ間隔に設定され、間隔L4である。
前方挟持吸着体256と、後方挟持吸着体258と、右方挟持吸着体260と、左方挟持吸着体262とは、磁気シートによりそれぞれ構成される。図12において、前方挟持吸着体256は、左右方向に延びるN極の磁極列とS極の磁極列との2つの磁極列を有する。前方挟持吸着体256について、S極の磁極列は、前後方向においてN極の磁極列よりも後方の位置に配列される。後方挟持吸着体258は、左右方向に延びるN極の磁極列とS極の磁極列とN極の磁極列との3つの磁極列を有する。後方挟持吸着体258の3つの磁極列のうちで最も前方に配列される磁極列は、N極の磁極列である。右方挟持吸着体260は、前後方向に延びるN極の磁極列とS極の磁極列との2つの磁極列を有する。右方挟持吸着体260について、N極の磁極列は、左右方向においてS極の磁極列よりも左方に配列される。左方挟持吸着体262は、前後方向に延びるN極の磁極列とS極の磁極列との2つの磁極列を有する。左方挟持吸着体262について、N極の磁極列は、左右方向においてS極の磁極列よりも右方に配列される。4つの挟持吸着体256~262の各挟持吸着体は、隣り合う2つの磁極列の間隔が同じ間隔になるように磁化される。また、各挟持吸着体の隣り合う2つの磁極列の間隔は、各基準吸着体の隣り合う2つの磁極列の間隔と同じ間隔になるように、設定される。
前方挟持吸着体256と、後方挟持吸着体258と、右方挟持吸着体260と、左方挟持吸着体262とは、シート支持枠3により張設された感熱式シートSHと接触する挟持面となる下面を有する。前方挟持吸着体256と、後方挟持吸着体258と、右方挟持吸着体260と、左方挟持吸着体262とは、同じ厚さの磁気シートによりそれぞれ構成されることから、4つの挟持吸着体256~262の下面は、挟持板部254の下面から、同じ高さ位置に配置される。本実施形態では、4つの挟持吸着体256~262の下面は、各挟持吸着体の下面より摩擦係数が小さく、かつ、耐摩耗性に優れる材料により、被覆される。たとえば、被覆する材料として、スリーエム カンパニー(登録商標)が販売する超高分子量ポリエチレンテープ、または、PTFEテープが使用され、そのテープが各挟持吸着体の下面に貼着される。
<感熱式シートSHの挟持状態>
感熱式シートSHの挟持状態について、図13および図14を参照して説明する。図13は、シート支持枠3により張設された感熱式シートSHが基準部材ユニット230と挟持部材ユニット232とにより挟持された状態を示す右側断面図である。図14は、感熱式シートSHが基準部材ユニット230と挟持部材ユニット232とにより挟持された状態を拡大して模式的に示す。図13および図14に示される挟持状態において、前方基準吸着体236の前後両端縁は、前方挟持吸着体256の前後両端縁と上下方向においてそれぞれ一致する。左方基準吸着体242の前後両端縁は、左方挟持吸着体262の前後両端縁と上下方向においてそれぞれ一致し、右方基準吸着体240の前後両端縁は、右方挟持吸着体260の前後両端縁と上下方向においてそれぞれ一致する。後方挟持吸着体258の前端縁は、後方基準吸着体238の前端縁より前方に配置される。後方基準吸着体238の前端縁より前方に配置される後方挟持吸着体258の前方部分は、シート支持枠3により張設された感熱式シートSHを上方から押圧する。
本実施形態では、セラミック基板220が前方に向って上方に傾斜して配置される。発熱体224は、セラミック基板220の前端部の上方部分に配置される。感熱式シートSHと接触する発熱体224の先端部、すなわち発熱端部は、図14に示されるように、前方基準吸着体236の上面、および後方基準吸着体238の上面から上方に、寸法L6だけ突出する。寸法L6は、前方挟持吸着体256の後端縁と後方挟持吸着体258の前端縁との間隔L5より小さい寸法であり、更には、前方挟持吸着体256の上下方向の厚さ、または後方挟持吸着体258の上下方向の厚さより小さい寸法である。
<各種のセンサの詳細な構成>
各種のセンサの詳細な構成について、図面を参照して説明する。感熱製版機2は、右セットセンサSN1と、左セットセンサSN2と、X軸原点センサSN3と、Y軸原点センサSN4と、X軸限界センサSN5と、Y軸限界センサSN6とを備える。図10に示されるように、右セットセンサSN1は、X軸キャリッジ92の右方側板部132の右側面に固定される。左セットセンサSN2は、X軸キャリッジ92の左方側板部134の左側面に固定される。図11および図12に示されるように、右方永久磁石270が、挟持板部254の右端部に近接した位置に、ねじなどの固定手段により固定され、左方永久磁石272が、挟持板部254の左端部に近接した位置に、ねじなどの固定手段により固定される。右方永久磁石270の前後方向の寸法は、右方挟持吸着体260の前後方向の寸法と同じ寸法に設定される。左方永久磁石272の前後方向の寸法は、左方挟持吸着体262の前後方向の寸法と同じ寸法に設定される。4つの基準吸着体236~242と、4つの挟持吸着体256~262とが吸着した所定の吸着状態において、右セットセンサSN1が、右方永久磁石270の所定の強さの磁力を検出するときに、オン信号を発生する。所定の吸着状態において、左セットセンサSN2が、左方永久磁石272の所定の強さの磁力を検出するときに、オン信号を発生する。
図6に示されるように、X軸原点センサSN3は、Y軸キャリッジ90の右方の側壁部96の左側面に、ねじなどの固定手段により固定される。X軸限界センサSN5は、図示されないが、Y軸キャリッジ90の左方の側壁部98の右側面に、ねじなどの固定手段により固定される。X軸原点遮蔽片280が、X軸キャリッジ92の右方側板部132に、右方側板部132から右方に突出した状態で固定される。X軸限界遮蔽片282が、X軸キャリッジ92の左方側板部134に、左方側板部134から左方に突出した状態で固定される。X軸原点センサSN3は、発光部および受光部を備える光学センサにより構成され、X軸原点遮蔽片280により、発光部からの光が遮蔽されるときに、X軸原点検出信号を発生する。X軸限界センサSN5は、発光部および受光部を備える光学センサにより構成され、X軸限界遮蔽片282により、発光部からの光が遮蔽されるときに、X軸限界検出信号を発生する。
Y軸原点センサSN4およびY軸限界センサSN6は、Y軸キャリッジ90のY軸基台94の上面にそれぞれ固定される。Y軸原点遮蔽片が、機体フレーム10の前方パネル30の後面に、前方パネル30から後方に突出した状態で固定される。Y軸限界遮蔽片284が、機体フレーム10の後方パネル32の前面に、後方パネル32から前方に突出した状態で固定される。Y軸限界センサSN6およびY軸限界遮蔽片284のみが、図5に示される。Y軸原点センサSN4は、発光部および受光部を備える光学センサにより構成され、Y軸原点遮蔽片により、発光部からの光が遮蔽されるときに、Y軸原点検出信号を発生する。Y軸限界センサSN6は、発光部および受光部を備える光学センサにより構成され、Y軸限界遮蔽片284により、発光部からの光が遮蔽されるときに、Y軸限界検出信号を発生する。
≪製版システム1の電気的構成≫
製版システム1の電気的構成について、図15を参照して説明する。図15は、製版システム1の電気的構成を示すブロック図である。図15において、感熱製版機2は、制御処理ユニット300と、プログラムメモリ310と、作業メモリ320と、インターフェース330とを主に備える。制御処理ユニット300は、CPU、およびゲートアレイなどのデータ処理回路を含んで構成される。プログラムメモリ310は、感熱製版機2の全体動作を統括して制御するメイン処理プログラムを含む各種のプログラムと、各種の設定値とを固定記憶する。作業メモリ320は、インターフェース330を通して外部から送られる各種のデータ、および制御処理ユニット300の演算処理結果を一時的に記憶する。
制御処理ユニット300は、インターフェース330、およびLAN340を通して、外部の情報処理装置4に接続される。情報処理装置4は、パーソナルコンピュータから構成され、製版のための各種の画像データを作成して、その画像データを制御処理ユニット300に送信することができる。
制御処理ユニット300は、サーマルヘッド174を駆動するヘッド駆動回路と、X軸駆動モータ152およびY軸駆動モータ112を駆動するモータ駆動回路とを内蔵する。制御処理ユニット300は、6つのセンサSN1~SN6と、X軸駆動モータ152と、Y軸駆動モータ112と、サーマルヘッド174と、操作パネル350とにそれぞれ接続される。ヘッド駆動回路は、制御処理ユニット300内で生成されるヘッド制御指令、および画像データに従って、サーマルヘッド174を発熱させる。モータ駆動回路は、制御処理ユニット200内で生成されるモータ制御指令、および画像データに従って、X軸駆動モータ152およびY軸駆動モータ112を回転させる。操作パネル330は、複数の操作ボタン352と、表示部354とを備える。製版開始ボタンは、複数の操作ボタン352に含まれる。表示部354は、液晶ディスプレイおよびLEDランプなどの表示手段から構成される。表示部354は、感熱製版機2の製版動作中に、4つの基準吸着体236~242と4つの挟持吸着体256~262との吸着状態が所定の吸着状態から変化したときに、挟持部材ユニット232のセット異常を報知するメッセージを表示することができる。
情報処理装置4は、演算処理ユニットと、プログラムメモリと、作業メモリと、画像メモリと、操作部と、表示部とを主に備える。演算処理ユニットは、CPUなどのデータ処理回路を含んで構成される。プログラムメモリは、情報処理装置4の全体動作を統括して制御するメイン処理プログラム、および画像データ生成処理プログラムなどの各種のプログラムと、各種の設定値とを固定記憶する。作業メモリは、演算処理ユニットの演算処理結果を一時的に記憶する。画像メモリは、データの読み書き可能な不揮発性メモリから構成され、画像データ生成処理プログラムにより作成された画像データを含む多種類の画像データを記憶する。操作部は、キーボードなどの操作可能な入力操作手段を含んで構成される。表示部は、液晶ディスプレイなどの表示手段から構成され、画像データを作成するために必要な画面を表示する。
≪実施形態の動作および作用≫
本実施形態の感熱製版機2を備える製版システム1の動作および作用について、図16を主に参照して説明する。製版システム1の動作として、シート保持機構20による感熱式シートSHのシート保持動作と、情報処理装置4から感熱製版機2への画像データの送信動作と、感熱製版機2による製版動作と、サーマルヘッド174の位置調整動作とに分けて説明する。
<シート保持動作>
ユーザは、シート保持動作を行う前に、サーマルヘッド174を原点に復帰させる原点復帰動作を指示するために、原点復帰用の操作ボタンを操作する。この操作により、制御処理ユニット300は、X軸原点センサSN3がX軸原点遮蔽片280により遮蔽されるまで、X軸駆動モータ152の回転方向および回転量を制御するとともに、Y軸原点センサSN4がY軸原点遮蔽片により遮蔽されるまで、Y軸駆動モータ112の回転方向および回転量を制御する。各原点センサが各原点遮蔽片により遮蔽されたときに、X軸キャリッジ92およびY軸キャリッジ90がX軸原点およびY軸原点に位置決めされる。
X軸キャリッジ92およびY軸キャリッジ90がX軸原点およびY軸原点にそれぞれ位置決めされた後に、ユーザは、感熱式シートSHが接着されたシート支持枠3の4つの枠角部80~86を、図1に示されるように、4つの支持金具42~46に嵌合させる。この嵌合の際に、ユーザは、感熱式シートSHが接着されたシート支持枠3の面がサーマルヘッド174に向き合うように、シート支持枠3を装着する。
シート支持枠3が装着された後に、ユーザは、挟持部材ユニット232を、シート支持枠3により張設された感熱式シートSHの上に載置する。この載置の際に、サーマルヘッド174が位置決めされている原点位置、すなわち図1に示される枠角部80に近接した位置において、ユーザは、挟持部材ユニット232を感熱式シートSHの上に載置する。挟持部材ユニット232の4つの挟持吸着体256~262が基準部材ユニット230の4つの基準吸着体236~242に吸着する吸着状態が、所定の吸着状態である場合に、右セットセンサSN1は、挟持部材ユニット232の右方永久磁石270から受ける所定の強さの磁力を検出し、オン信号を制御処理ユニット300に送信する。また、所定の吸着状態である場合に、左セットセンサSN2は、挟持部材ユニット232の左方永久磁石272から受ける所定の強さの磁力を検出し、オン信号を制御処理ユニット300に送信する。制御処理ユニット300は、両セットセンサSN1、SN2からオン信号をそれぞれ受信したときに、4つの挟持吸着体256~262が4つの基準吸着体236~242に吸着する吸着状態が、所定の吸着状態にあると判断し、いずれかのセットセンサからオン信号を受信しないときに、所定の吸着状態にないと判断する。制御処理ユニット300は、所定の吸着状態にあると判断したときに、X軸駆動モータ152、Y軸駆動モータ112、およびサーマルヘッド174の駆動を許可する。制御処理ユニット300は、所定の吸着状態にないと判断したときに、X軸駆動モータ152、Y軸駆動モータ112、およびサーマルヘッド174の駆動を禁止し、挟持部材ユニット232の載置位置が誤っていることを示すメッセージを、表示部354に表示させる。ユーザは、載置位置が誤っていることを示すメッセージを見た場合には、挟持部材ユニット232を載置し直すことにより、基準部材ユニット230に対して挟持部材ユニット232を正しい位置に載置することができる。
<画像データの送信動作>
シート保持動作が完了した後に、ユーザは、情報処理装置4の画像メモリに記憶される画像データの中から、製版を希望する画像データを選択する。希望する画像データが記憶されていない場合には、ユーザは、情報処理装置4の画像データ生成処理プログラムを使用して画像データを予め作成し、画像メモリに記憶させることができる。ユーザは、選択した画像データを感熱製版機2に送信するために表示部および操作部を使用して送信操作を行う。
<製版動作>
感熱製版機2は、情報処理装置4から画像データの全てを受信して作業メモリ320に一時記憶すると、製版動作の準備が完了したことを報知するために表示部354のレディランプを連続点灯させる。ユーザは、レディランプの連続点灯を確認した上で、製版開始ボタンを操作することにより、製版動作を開始させることができる。
本実施形態では、シート支持枠3により張設された感熱式シートSHの上で画定される製版領域は、図16に示されるように、第1製版区画RG1から第4製版区画RG4までの4つの製版区画に分割される。製版始点位置PS1および製版終点位置PE1が、第1製版区画RG1においてそれぞれ予め設定される。同様に、製版始点位置PS2~PS4、および製版終点位置PE2~PE4が、第2製版区画RG2から第4製版区画RG4においてそれぞれ予め設定される。各製版始点位置および各製版終点位置を指示する位置データは、情報処理装置4から送信される画像データに含まれる。図16において、挟持部材ユニット232が、原点位置に位置決めされたサーマルヘッド174に向き合い、所定の吸着状態で載置されている。
製版開始ボタンの操作により、製版動作が開始されると、サーマルヘッド174は原点位置から後方に移動し、製版始点位置PS1に達する。制御処理ユニット300は、所定の吸着状態にあると判断する場合には、X軸駆動モータ152を停止させた状態で、Y軸駆動モータ112の回転方向および回転量を制御しながら、サーマルヘッド174を駆動する。このサーマルヘッド174の駆動により、第1製版区画RG1において、孔版部分が感熱式シートSHに形成される。サーマルヘッド174が製版終点位置PE1に達すると、制御処理ユニット300は、サーマルヘッド174の駆動を停止する。この駆動停止により、第1製版区画RG1における孔版部分の形成が完了する。第1製版区画RG1において孔版部分が形成されている間、挟持部材ユニット232は、感熱式シートSHを挟持するように基準部材ユニット230に吸着し、感熱式シートSHの上面を滑りながら移動する。サーマルヘッド174の発熱体224の先端部は、図14に示されるように、感熱式シートSHにより包まれるように感熱式シートSHと比較的広い面積で接触することから、サーマルヘッド174が後方に移動する際に振動する場合でも、発熱体224の先端部は、孔版部分を形成するために充分な熱を感熱式シートSHに確実に伝達することができる。
第1製版区画RG1における孔版部分の形成が完了した後に、制御処理ユニット300は、サーマルヘッド174の駆動を停止させた状態で、X軸駆動モータ152およびY軸駆動モータ112の回転方向並びに回転量を制御し、サーマルヘッド174を製版終点位置PE1から製版始点位置PS2まで移動させる。サーマルヘッド174が製版始点位置PS2に達すると、制御処理ユニット300は、所定の吸着状態にあると判断する場合には、X軸駆動モータ152を停止させた状態で、Y軸駆動モータ112の回転方向および回転量を制御しながら、サーマルヘッド174を駆動する。このサーマルヘッド174の駆動により、第1製版区画RG1と同様に、第2製版区画RG2において、孔版部分が感熱式シートSHに形成される。サーマルヘッド174が製版終点位置PE1から製版始点位置PS2まで移動する間に、制御処理ユニット300は、所定の吸着状態にないと判断したときに、X軸駆動モータ152、Y軸駆動モータ112、およびサーマルヘッド174の駆動を禁止し、挟持部材ユニット232の載置位置が誤っていることを示すメッセージを、表示部354に表示させる。
第3製版区画RG3および第4製版区画RG4においても、第1製版区画RG1と同様に、孔版部分が感熱式シートSHに形成される。サーマルヘッド174が第4製版区画RG4の製版終点位置PE4に達すると、制御処理ユニット300は、サーマルヘッド174を製版終点位置PE4から原点位置まで移動させる。サーマルヘッド174が原点位置に達すると、製版動作が完了する。
製版動作が完了したときに、ユーザは、基準部材ユニット230に吸着している挟持部材ユニット232を、吸着力に抗して、たとえば図16において左方にずらすことにより、感熱式シートSHから取り外すことができる。
<サーマルヘッド174の位置調整動作>
サーマルヘッド174の位置調整動作として、サーマルヘッド174を上下方向に調整する上下調整動作と、サーマルヘッド174を前後方向に調整する前後調整動作とに分けて説明する。
(上下調整動作)
通常、サーマルヘッドの発熱体の発熱特性は、サーマルヘッドごとに異なる。発熱体224は、図8に示されるサーマルヘッド174の長手方向である左右方向において、異なる発熱特性を有することから、発熱体224の発熱により形成される孔版部分の大きさがばらつくことがある。この孔版部分の大きさのバラツキを低減するために、ユーザは、サーマルヘッド174により形成された感熱式シートSHの孔版部分のバラツキに応じて、調整ねじ192の締め込み量を調整する。また、ユーザは、感熱式シートSHの剛性に応じて、調整ねじ192の締め込み量を調整する。調整ねじ192の締め込み量に応じて、支持ブロック170は、揺動ピン188を中心として、ユニット支持板部136に対して上下方向に揺動する。この支持ブロック170の揺動により、サーマルヘッド170の発熱体224が、シート支持枠3により張設される感熱式シートSHに対して上下方向に変位する。発熱体224の上下方向の変位により、発熱体224の先端部から感熱式シートSHに伝達される加熱量が調整される。
(前後調整動作)
図16において、サーマルヘッド174が、左右方向に対して僅かに傾斜した状態で配置される場合には、第1製版区画RG1の製版始点位置PS1で形成される孔版部分は、左右方向に対して僅かに傾斜した状態になる。第1製版区画RG1と同様に、第2製版区画RG2から第4製版区画RG4までの各製版区画の製版始点位置で形成される孔版部分も、左右方向に対して僅かに傾斜した状態になる。このため、隣り合う2つの製版区画において孔版部分が左右方向に連続して形成されない問題が生ずる。孔版部分が左右方向に連続して形成されるように、ユーザは、サーマルヘッド174により形成された感熱式シートSHの孔版部分の左右方向の傾きに応じて、調整ねじ206および調整ねじ210の締め込み量を調整する。調整ねじ206および調整ねじ210の締め込み量に応じて、ヘッド載置台172は、揺動ピン196を中心として、支持ブロック170に対して、傾斜面170Aに沿う傾斜方向に揺動する。傾斜面170Aに沿う傾斜方向は、前方に向って上方に傾斜する方向であるが、ほぼ前後方向であるので、このヘッド載置台172の揺動により、サーマルヘッド170の発熱体224が、シート支持枠3により張設される感熱式シートSHに対して、ほぼ前後方向に変位する。発熱体224の前後方向の変位により、隣り合う2つの製版区画において形成される孔版部分を、左右方向に連続させることができる。
≪実施形態の効果≫
本実施形態では、図14に示される挟持状態において、感熱式シートSHと接触する発熱体224の発熱端部は、前方基準吸着体236の上面、および後方基準吸着体238の上面から上方に、寸法L6だけ突出する。この結果、発熱体224の発熱端部は、感熱式シートSHにより包まれるように感熱式シートSHと比較的広い面積で接触することから、製版動作のためにサーマルヘッド174が移動する際にサーマルヘッド174およびシート支持枠3が振動する場合でも、発熱体224の発熱端部は、孔版部分を形成するために充分な熱を感熱式シートSHに確実に伝達することができる。発熱端部からの充分な熱を確実に伝達することにより、穿孔割合を、所望画像の孔版部分を形成するための所定割合に精度よく設定することができる。穿孔割合は、感熱式シートにおいて縦糸と横糸とを織り上げることにより形成される多数のメッシュの1つのメッシュの大きさに対する、発熱端部の加熱により1つのメッシュ内において穿孔される孔の大きさの割合である。
本実施形態では、図14に示されるように、サーマルヘッド174の発熱体224の発熱端部が前方基準吸着体236の上面および後方基準吸着体238の上面から上方に突出する突出量である寸法L6が、前方挟持吸着体256の後端縁と後方挟持吸着体238の前端縁との間隔L5より小さい寸法に設定される。この結果、感熱式シートSHは緩やかに湾曲した状態で発熱体224の発熱端部を包むように接触することから、感熱式シートSHに皺を生じさせることなく発熱体224の発熱端部を円滑に移動させることができる。
本実施形態では、感熱式シートSHが接着されたシート支持枠3が感熱製版機2に装着された状態において、サーマルヘッド174と、基準部材ユニット230とは、図13に示されるように、感熱式シートSHよりも下方に配置され、挟持部材ユニット232は感熱式シートSHの上面に載置される。感熱式シートSHは、基準部材ユニット230と挟持部材ユニット232との間で磁力により挟持される。この結果、製版動作のために挟持部材ユニット232を感熱式シートSHに対して移動させる特別の移動機構を備える必要がなく、感熱製版機2の全体構成を簡易かつ小型にすることができる。しかも、ユーザは、障害物のない感熱式シートSHの上方から挟持部材ユニット232を載置することから、挟持部材ユニット232の載置および位置決め作業を容易に行うことができる。
本実施形態では、図10に示されるように、前方基準吸着体236および後方基準吸着体238は、製版方向である前後方向と直交する左右方向に長く延びて配置され、右方基準吸着体240および左方基準吸着体242は、前後方向に長く延びて配置される。図12に示されるように、前方挟持吸着体256および後方挟持吸着体258は、製版方向である前後方向と直交する左右方向に長く延びて配置され、右方挟持吸着体260および左方挟持吸着体262は、前後方向に長く延びて配置される。この結果、シート支持枠3により張設された感熱式シートSHは、4つの基準吸着体236~242と、4つの挟持吸着体256~262とにより挟持されることから、感熱式シートSHが前後方向に移動するときには、基準吸着体236、238と挟持吸着体256、258との間で感熱式シートSHを挟持することにより、サーマルヘッド174と感熱式シートSHとの接触状態を一定に保持することができる。また、感熱式シートSHが左右方向に移動するときには、基準吸着体240、242と挟持吸着体260、262との間で感熱式シートSHを挟持することにより、前方挟持吸着体256および後方挟持吸着体258が前方基準吸着体236および後方基準吸着体238に対して左右方向にずれることを低減し、サーマルヘッド174と感熱式シートSHとの接触状態を一定に保持することができる。
本実施形態では、図10に示されるように、右方基準吸着体240は、前方基準吸着体236の右端縁および後方基準吸着体238の右端縁の右側に、間隔L4をあけて並んで配置され、左方基準吸着体242は、前方基準吸着体236の左端縁および後方基準吸着体238の左端縁の左側に、間隔L4をあけて並んで配置される。図12に示されるように、右方挟持吸着体260は、前方挟持吸着体256の右端縁および後方挟持吸着体258の右端縁の右側に、間隔L4をあけて並んで配置され、左方挟持吸着体262は、前方挟持吸着体256の左端縁および後方挟持吸着体258の左端縁の左側に、間隔L4をあけて並んで配置される。この結果、基準吸着体240、242および挟持吸着体260、262が、基準吸着体236、238および挟持吸着体256、258より前方または後方に離れて配置される構成と比べて、基準部材ユニット230および挟持部材ユニット232を小型化することができる。特に、挟持部材ユニット232を小型化することにより、同じ大きさのシート支持枠3であっても、図16に示される製版区画RG1~RG4からなる製版領域を大きく設定することができる。
本実施形態では、4つの基準吸着体236~242の上面、および4つの挟持吸着体256~262の下面は、各基準吸着体の上面および各挟持吸着体の下面より摩擦係数が小さく、かつ、耐摩耗性に優れる材料により、被覆される。この結果、4つの基準吸着体236~242、および4つの挟持吸着体256~262は、感熱式シートSHに対して円滑に移動することができ、感熱式シートSHに生ずるおそれがある皺を低減することができることから、感熱式シートSHとサーマルヘッド174の発熱端部との接触面積をほぼ一定に保つことができる。
本実施形態では、図14に示されるように、前方基準吸着体236および前方挟持吸着体256は、同じ間隔で形成される2つの異なる磁極列をそれぞれ有する。後方基準吸着体238および後方挟持吸着体258は、同じ間隔で形成される3つの磁極列をそれぞれ有する。この結果、基準部材ユニット230と挟持部材ユニット232とが吸着する際に、前方基準吸着体236および前方挟持吸着体256は前後方向において一定の位置関係で吸着することから、3つの磁極列を有する後方基準吸着体238および後方挟持吸着体258であっても、後方基準吸着体238および後方挟持吸着体258を前後方向において一定の位置関係で吸着させることができる。また、後方基準吸着体238および後方挟持吸着体258は、前方基準吸着体236および前方挟持吸着体256に比べて、より広い挟持面積を有することから、サーマルヘッド174が図14に示されるように傾斜して配置される構成であっても、感熱式シートSHを安定して挟持することができる。
本実施形態では、前方挟持吸着体256および後方挟持吸着体258の長手方向である左右方向の幅L2が、サーマルヘッド174のセラミック基板220の長手方向である左右方向の幅L1より小さい幅に設定される。前方挟持吸着体256および後方挟持吸着体258が、前方基準吸着体236および後方基準吸着体238に吸着した状態において、セラミック基板220が配置される左右方向の配置領域内に配置される。この結果、セラミック基体220の左右方向の両端縁が感熱式シートSHを引っ掻いて傷つけることを低減することができる。
本実施形態では、図12において、右方挟持吸着体260の左端縁と、前方挟持吸着体256の右端縁および後方挟持吸着体258の右端縁との間の間隔は、左方挟持吸着体262の右端縁と、前方挟持吸着体256の左端縁および後方挟持吸着体258の左端縁との間の間隔と同じ間隔に設定される。右方挟持吸着体260の左端縁と、前方挟持吸着体256の右端縁および後方挟持吸着体258の右端縁との間の間隔は、右方基準吸着体240の左端縁と、前方基準吸着体236の右端縁および後方基準吸着体238の右端縁との間の間隔と同じ間隔に設定され、間隔L4である。4つの挟持吸着体256~262が、4つの基準吸着体236~242に吸着した状態において、右方挟持吸着体260および左方挟持吸着体262は、セラミック基板220が配置される左右方向の配置領域の外に配置される。すなわち、右方挟持吸着体260の左端縁は、セラミック基板220の右端縁から、[L4-(L1-L2)/2]の間隔だけ離れて配置され、左方挟持吸着体262の右端縁は、セラミック基板220の左端縁から、[L4-(L1-L2)/2]の間隔だけ離れて配置される。この結果、セラミック基体220の左右方向の両端縁が感熱式シートSHを引っ掻いて傷つけることを低減することができる。
本実施形態では、挟持部材ユニット232の4つの挟持吸着体256~262が基準部材ユニット230の4つの基準吸着体236~242に吸着する吸着状態が、所定の吸着状態である場合に、右セットセンサSN1は、挟持部材ユニット232の右方永久磁石270から受ける所定の強さの磁力を検出し、オン信号を制御処理ユニット300に送信する。また、所定の吸着状態である場合に、左セットセンサSN2は、挟持部材ユニット232の左方永久磁石272から受ける所定の強さの磁力を検出し、オン信号を制御処理ユニット300に送信する。制御処理ユニット300は、両セットセンサSN1、SN2からオン信号をそれぞれ受信したときに、4つの挟持吸着体256~262が4つの基準吸着体236~242に吸着する吸着状態が、所定の吸着状態にあると判断し、いずれかのセットセンサからオン信号を受信しないときに、所定の吸着状態にないと判断する。制御処理ユニット300は、所定の吸着状態にあると判断したときに、X軸駆動モータ152、Y軸駆動モータ112、およびサーマルヘッド174の駆動を許可する。制御処理ユニット300は、所定の吸着状態にないと判断したときに、X軸駆動モータ152、Y軸駆動モータ112、およびサーマルヘッド174の駆動を禁止し、挟持部材ユニット232の載置位置が誤っていることを示すメッセージを、表示部354に表示させる。この結果、4つの挟持吸着体256~262が4つの基準吸着体236~242に吸着する吸着状態が、所定の吸着状態にない場合に、制御処理ユニット300は、サーマルヘッド174の駆動などによる製版動作を禁止し、不鮮明な孔版部分の形成を未然に防止することができる。また、ユーザは、表示部354のメッセージを見て、挟持部材ユニット232を載置し直すことにより、基準部材ユニット230に対して挟持部材ユニット232を正しい位置に速やかに載置することができる。
本実施形態では、調整ねじ192の締め込み量に応じて、支持ブロック170は、揺動ピン188を中心として、ユニット支持板部136に対して上下方向に揺動する。この支持ブロック170の揺動により、サーマルヘッド170の発熱体224が、シート支持枠3により張設される感熱式シートSHに対して上下方向に変位する。この結果、発熱体224の上下方向の変位により、発熱体224の発熱端部から感熱式シートSHに伝達される加熱量を調整することができ、発熱体224の発熱により形成される孔版部分の大きさのバラツキを低減することができる。
本実施形態では、調整ねじ206および調整ねじ210の締め込み量に応じて、ヘッド載置台172は、揺動ピン196を中心として、支持ブロック170に対して、傾斜面170Aに沿う傾斜方向に揺動する。傾斜面170Aに沿う傾斜方向は、ほぼ前後方向であるので、このヘッド載置台172の揺動により、サーマルヘッド170の発熱体224が、シート支持枠3により張設される感熱式シートSHに対して、ほぼ前後方向に変位する。この結果、発熱体224の前後方向の変位により、発熱体224が図16において左右方向に平行になるように位置調整され、図16に示される製版区画RG1~RG4のうちの隣り合う2つの製版区画において形成される孔版部分を、左右方向に連続させることができる。
≪構成の対応関係≫
感熱製版機2は、本発明の感熱製版装置の一例である。感熱式シートSHは、本発明の感熱式シートの一例である。シート支持枠3は、本発明のシート支持部材の一例である。サーマルヘッド174、および、発熱体224の先端部は、本発明のサーマルヘッド、および、発熱端部の一例である。支持ブロック170、および、ヘッド載置台172は、本発明のヘッド支持部材の一例である。Y軸駆動機構16、および、X軸駆動機構18は、本発明の移動機構の一例である。シート保持機構20は、本発明の保持機構の一例である。X軸キャリッジ92、および、3つの軸受146~150は、本発明の「ヘッド支持部材に連結される連結支持部材」の一例である。基準板部234、および、前方基準吸着体236が、本発明の上流側基準部材の一例であり、基準板部234、および、後方基準吸着体238が、本発明の下流側基準部材の一例である。挟持板部254、および、前方挟持吸着体256が、本発明の上流側挟持部材の一例であり、挟持板部254、および、後方挟持吸着体258が、本発明の下流側挟持部材の一例である。前後方向は、本発明の所定の製版方向の一例である。前方基準吸着体236の上面、および、後方基準吸着体238の上面が、本発明の上流側基準面、および、下流側基準面の一例である。図13に示される寸法L6が、本発明の「サーマルヘッドの発熱端部が上流側基準面および下流側基準面から突出する突出量」の一例である。図13に示される間隔L5が、本発明の「所定の製版方向における上流側挟持部材の下流側端部と下流側挟持部材の上流側端部との間の間隔」の一例である。前方基準吸着体236、および、後方基準吸着体238が、本発明の上流側基準吸着体、および、下流側基準吸着体の一例であり、前方挟持吸着体256、および、後方挟持吸着体258が、本発明の上流側挟持吸着体、および、下流側挟持吸着体の一例である。右方基準吸着体240、および、左方基準吸着体242が、本発明の第1側方基準吸着体、および、第2側方基準吸着体の一例であり、右方挟持吸着体260、および、左方挟持吸着体262が、本発明の第1側方挟持吸着体、および、第2側方挟持吸着体の一例である。右セットセンサSN1、および、左セットセンサSN2が、本発明の検出手段の一例である。表示部354が、本発明の報知手段の一例である。X軸駆動モータ152、および、Y軸駆動モータ112が、本発明の駆動モータの一例であり、制御処理ユニット300が、本発明の制御手段の一例である。セラミック基板220が、本発明のセラミック基板の一例である。図10に示される幅L1は、本発明の第1幅の一例であり、図12に示される幅L2が、本発明の「各挟持吸着体の短い幅」の一例である。
[変形例]
本発明は、本実施形態に限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。以下にその変形の一例を述べる。
(1)本実施形態では、サーマルヘッド174と、基準部材ユニット230とが、感熱製版機2に装着されたシート支持枠3の感熱式シートSHより下方に配置され、挟持部材ユニット232が感熱式シートSHの上に載置される構成であるが、この構成に限定されない。たとえば、サーマルヘッド174と、基準部材ユニット230とが、感熱式シートSHより上方に配置され、挟持部材ユニット232が感熱式シートSHの下方から感熱式シートSHを挟持する構成であってもよい。
(2)本実施形態では、挟持部材ユニット232は、基準部材ユニット230との間の磁気的吸着力により、基準部材ユニット230の移動に追従して移動する構成であるが、この構成に限定されない。たとえば、基準部材ユニット230の移動と同期して、または連動して、挟持部材ユニット232を移動させる専用の移動機構を備える構成であってもよい。この変形例では、挟持部材ユニット232を基準部材ユニット230に弱い弾性力により押し付けるスポンジまたはゴムなどの弾性手段が備えられてもよい。
(3)本実施形態では、支持ブロック170は、揺動ピン188を中心として、ユニット支持板部136に対して上下方向に揺動する。ヘッド載置台172は、揺動ピン196を中心として、支持ブロック170に対して、傾斜面170Aに沿う傾斜方向に揺動する。これらの揺動可能な構成に限定されることなく、サーマルヘッド174を上下方向および前後方向に位置調整するための構成を採用することができる。たとえば、ガイドレールなどの直線的な案内部材に沿って支持ブロック170およびヘッド載置台172を移動可能に支持する構成を採用してもよい。
(4)本実施形態では、挟持部材ユニット232は、基準部材ユニット230との間で磁気的吸着力により感熱式シートSHを挟持する構成を備える。この挟持する構成を備える実施形態が、図16において、サーマルヘッド174が製版終点位置から次の製版始点位置まで移動する間に、挟持部材ユニット232と基準部材ユニット230との間の挟持圧を一時的に弱くする、または、一時的に零にする挟持圧制御手段を備えてもよい。
(5)本実施形態では、サーマルヘッド174は、図14に示されるように、基準板部234に対して後方に向って下方に傾斜するように配置されるが、サーマルヘッド174の配置構成は、傾斜した構成に限定されない。たとえば、図17に示されるように、セラミック基板220が基準板部234に垂直になるようにサーマルヘッド174が配置される構成であってもよい。この変形例では、前方基準吸着体236の磁極列、後方基準吸着体238の磁極列、前方挟持吸着体256の磁極列、および後方挟持吸着体258の磁極列を、2つの異なる磁極列に共通させることができる。
(6)本実施形態では、サーマルヘッド174は、図14に示されるように、基準板部234に対して後方に向って下方に傾斜するように配置される。4つの基準吸着体236~242の上下方向の厚さは、4つの挟持吸着体256~262の上下方向の厚さと同じ厚さに設定される。しかし、基準吸着体の厚さと挟持吸着体の厚さとが、同じ厚さに設定される構成に限定されない。たとえば、基準吸着体と挟持吸着体との吸着力が、製版動作中に基準吸着体に対して挟持吸着体がずれることを防止するのに充分に強い吸着力であれば、図18に示されるように、4つの基準吸着体236~242の厚さを、4つの挟持吸着体256~262の厚さより薄くすることができる。この変形例では、後方基準吸着体238の前端縁は、後方挟持吸着体258の前端縁に近づけて配置される。この結果、図14に示される配置に比べて、図18に示される配置では、後方基準吸着体238の前端縁と後方挟持吸着体258の前端縁との間隔L7が小さくなることから、後方挟持吸着体258の前端縁まで磁気的吸着力が作用し、突出量である寸法L6を一定の寸法に確実に設定することができる。また、変形例では、後方挟持吸着体258の前端縁まで磁気的吸着力が作用することから、後方基準吸着体238の磁極列と、後方挟持吸着体258の磁極列とを、2つの異なる磁極列にすることも可能となる。
(7)本実施形態では、感熱式シートSHを挟持するために、4つの基準吸着体236~242と、4つの挟持吸着体256~262とを吸着させる構成であるが、この構成に限定されない。たとえば、基準吸着体236、238と、挟持吸着体256、258との吸着力が、製版動作中に基準吸着体に対して挟持吸着体がずれることを防止するのに充分に強い吸着力であれば、基準吸着体240、242と、挟持吸着体260、262とを省くことができる。
(8)本実施形態では、サーマルヘッド174が原点位置に位置決めされた後に、ユーザは、感熱式シートSHが接着されたシート支持枠3を感熱製版機2に装着する。ユーザは、感熱式シートSHの下方において位置決めされた基準部材ユニット230の位置を推測した上で、支持金具40に嵌合するシート支持枠3の枠角部80に近い位置に挟持部材ユニット232を載置する。しかし、準部材ユニット230に向かい合う位置に挟持部材ユニット232を正確に載置するために、挟持部材ユニット232およびシート支持枠3に、載置用の目印をそれぞれ設ける構成を採用してもよい。
(9)本実施形態では、図16に示されるように、製版領域が4つの製版区画RG1~RG4に分割され、サーマルヘッド174が各製版区画の製版終点位置に達したときに、サーマルヘッド174は、その加熱駆動が停止された状態で隣の製版区画の製版始点位置まで移動する構成であるが、この構成に限定されない。たとえば、サーマルヘッド174が第1製版区画RG1の製版終点位置PE1に達したときに、サーマルヘッド174は第2製版区画RG2の製版終点位置PE2に相当する位置まで移動して、その相当する位置から製版動作を再開する構成であってもよい。この変形例では、図16に示される製版動作に比べて、サーマルヘッド174の加熱駆動が停止される時間が短くなることから、全体の製版動作時間を短くすることができる。
(10)本実施形態では、サーマルヘッド174と、前方基準吸着体236および後方基準吸着体238との前後方向の位置関係は一定の位置関係で固定されているが、この位置関係に限定されない。たとえば、製版方向である前後方向において、サーマルヘッド174の発熱端部と、前方基準吸着体236および後方基準吸着体238との相対的位置を調整する位置調整手段を備える構成を採用してもよい。また、製版方向である前後方向において、前方基準吸着体236と後方基準吸着体238との間の間隔を調整する間隔調整手段を採用してもよい。
(11)本実施形態では、4つの基準吸着体236~242と、4つの挟持吸着体256~262とが、感熱式シートSHを挟持した状態において、図14に示されるように、サーマルヘッド174の発熱体224の発熱端部が前方基準吸着体236の上面および後方基準吸着体238の上面から上方に寸法L6だけ突出する構成であるが、この構成に限定されない。たとえば、感熱式シートSHを挟持した状態において、発熱体224の発熱端部と、前方基準吸着体236の上面および後方基準吸着体238の上面とが、上下方向において一定の位置関係にあれば、図19に示されるように、発熱体224の発熱端部が、前方基準吸着体236の上面および後方基準吸着体238の上面から、寸法L7だけ下方に配置される構成であってもよい。この変形例では、一対の押圧突部400、402が、挟持部材ユニット232の挟持板部254の下面から下方に突出して形成され、両押圧突部400、402が、前方挟持吸着体256の後端縁と発熱端部との間に存在する感熱式シートSHと、後方挟持吸着体258の前端縁と発熱端部との間に存在する感熱式シートSHとを、上方から押圧する。両押圧突部400、402の押圧により、発熱端部は感熱式シートSHにより包まれるように感熱式シートSHと接触することができる。また、この変形例では、発熱体224の発熱端部が前方基準吸着体236の上面および後方基準吸着体238の上面から下方に配置される構成であることから、シート支持枠3が感熱製版機2に装着されていない製版準備状態において、発熱体224の発熱端部が他の部材との衝突などにより損傷することを低減することができる。