JP7166214B2 - 複合酸化物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
そこで本発明は、光活性がさらに抑制されたAl-Si-Ti複合酸化物(以下、単に「複合酸化物」とも記載する。)、およびその製造方法を提供することを目的とする。
[1]
下記要件(1)~(3)を満たす、アルミニウム、ケイ素およびチタンの複合酸化物。
要件(1):アルミニウムの含有量がAl2O3換算で60質量%以上であり、ケイ素の含有量がSiO2換算で1.0~10質量%であり、かつチタンの含有量がTiO2換算で12~30質量%である。
要件(2):紫外線分光分析により測定される吸収ピークの吸収端波長が350nm以下である。
要件(3):下記式を満たす。
ΔLAS=LAS150-LAS250≧190μmol/g
〔式中、LAS150およびLAS250は、ピリジンをプローブ分子として用いて赤外分光法により測定される前記複合酸化物の単位質量あたりのルイス酸点の量であって、測定試料の作製に際し、ピリジン吸着後の排気温度をそれぞれ150℃および250℃とした場合のルイス酸点の量である。〕
X線回折分析によってアナターゼ型チタニア(101)面及びルチル型チタニア(110)面の結晶構造を示す回折ピークが検出されない、前記[1]の複合酸化物。
比表面積が280m2/g以上であり、細孔容積が0.45ml/g以上である、前記[1]または[2]の複合酸化物。
単位比表面積あたりの前記ΔLASの値が、0.50~0.70μmol/m2である、前記[1]~[3]のいずれの複合酸化物。
アルミニウム、ケイ素およびチタンの複合酸化物の製造方法であって、
鉱酸、および前記鉱酸の塩基成分を含むチタニウム鉱酸塩類化合物を含む第一の水溶液と、塩基性アルミニウム塩を含む第二の水溶液とを、ケイ酸イオンの存在下で混合して、pH6.5~9.5の混合液を得ると共に前記複合酸化物の前駆体を析出させる第1工程、および
前記前駆体を、前記混合液から分離し、次いで熱処理して前記複合酸化物を得る第2工程
を含む複合酸化物の製造方法。
前記第一の水溶液において、(チタニウム鉱酸塩類化合物の物質量(チタンの物質量に換算))/(鉱酸の物質量)の値が0.15~0.70である、前記[5]の複合酸化物の製造方法。
前記第一の水溶液が60℃以下で調製される、前記[5]または[6]の複合酸化物の製造方法。
[複合酸化物]
本発明の複合酸化物(本発明において「Al-Si-Ti複合酸化物」とも記載する。)は、アルミニウム、チタンおよびケイ素の複合酸化物であって、かつ以下に説明する要件(1)~(3)を満たす。
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物におけるアルミニウムの含有量(Al-Si-Ti複合酸化物の量を100質量%とする。以下も同様である。)は、Al2O3換算で60質量%以上であり、ケイ素の含有量は、SiO2換算で1.0~10質量%であり、かつチタンの含有量は、TiO2換算で12~30質量%である。
上記のケイ素の含有量は、好ましくは1.5質量%以上であり、より好ましくは2.0質量%以上である。また、Al-Si-Ti複合酸化物が多孔質である場合にその細孔径を均一化する観点からは、上記ケイ素の含有量は、好ましくは7.0質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以下である。
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物粒子における、紫外線分光分析により測定される吸収ピーク(このピークはチタニアに由来する。)の吸収端波長は、350nm以下である。吸収端波長が350nm以下であることは、Al-Si-Ti複合酸化物中のチタニア成分の分散性が良好であることを意味する。このような観点から、吸収端波長は、好ましくは345nm以下である。一方、吸収端波長の下限は特に制限されないが、Al-Si-Ti複合酸化物中のTiの含有量を充分に確保する観点から、例えば320nm以上であってよく、325nm以上であってもよい。
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物は、下記式を満たす。
ΔLAS=LAS150-LAS250≧190μmol/g
式中、LAS150およびLAS250は、ピリジンをプローブ分子として用いて赤外分光法により測定される前記複合酸化物の単位質量あたりのルイス酸点の量であって、測定試料の作製に際し、ピリジン吸着後の排気温度をそれぞれ150℃および250℃とした場合のルイス酸点の量である。
測定雰囲気を500℃で1時間真空排気した後、30℃まで冷却する。その後、再び150℃まで昇温し、バックグラウンドスペクトルを測定する。次いで、測定雰囲気にピリジン蒸気を導入し、排気処理を行い、IRスペクトル(以下「150℃排気スペクトル」と記載する。)を測定する。さらに測定雰囲気を、真空排気下で250℃まで昇温した後、150℃まで冷却し、IRスペクトル(以下「250℃排気スペクトル」と記載する。)を測定する。
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物は、チタニア成分の分散性が良好であり、かつアルミナ以外の成分が均一に分散しているため、光活性が抑制されており、そのため化粧品、樹脂フィラー、表面コート材への添加剤(光学散乱、屈折率調整などを目的とするもの)などへ、好ましく応用することができる。
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物は、アルミニウム、ケイ素およびチタンに加えて、さらに他の元素を含んでいてもよい。他の元素としては、例えば、リン(P)、ホウ素(B)、ジルコニウム(Zr)等が挙げられる。Al-Si-Ti複合酸化物が他の元素を含む場合、Al-Si-Ti複合酸化物中のこれらの含有量は、各元素の酸化物換算で、例えば1.0質量%以上であってよく、20質量%以下であってよい。また、Al-Si-Ti複合酸化物には、その製造方法にもよるが、製造過程のアルカリ金属元素(ナトリウム(Na)、カリウム(K)等)が少量残存していてもよい。
本発明のAl-Si-Ti複合酸化物の構造の一部を化学式で模式的に示せば、以下の通りである。
測定試料を磁性ルツボ(B-2型)に約30ml採取し、110℃で12時間加熱して加熱処理させた後、デシケータに入れて室温まで冷却する。次に、冷却物を乳鉢で15分間粉砕した後、X線回折装置(例:理学電機(株)製、RINT1400)を用いて測定試料の結晶形態を測定する。
本発明に係るAl-Si-Ti複合酸化物の製造方法は、
鉱酸、および前記鉱酸の塩基成分を含むチタニウム鉱酸塩類化合物を含む第一の水溶液と、塩基性アルミニウム塩を含む第二の水溶液とを、ケイ酸イオンの存在下で混合して、pH6.5~9.5の混合液を得ると共に前記Al-Si-Ti複合酸化物の前駆体を析出させる第1工程、および
前記前駆体を、前記混合液から分離し、次いで熱処理して前記Al-Si-Ti複合酸化物を得る第2工程
を含むことを特徴としている。
上述した本発明に係るAl-Si-Ti複合酸化物は、本発明に係るAl-Si-Ti複合酸化物の製造方法により製造することができる。
第1工程で使用される前記第一の水溶液は、通常、酸性の水溶液であり、第二の水溶液は、通常、塩基性の水溶液である。
第一の水溶液に含まれる鉱酸の例としては、塩化水素、硫酸および硝酸が挙げられる。本発明において「鉱酸の塩基成分」とは、鉱酸から水素イオンを除いた成分であり、例えば塩化水素、硫酸および硝酸の塩基成分とは、それぞれ、塩化物イオン、硫酸イオンおよび硝酸イオンである。
第二の水溶液に含まれる塩基性アルミニウム塩としては、例えば、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等が挙げられる。
第2工程は、上記第1工程で得られたAl-Si-Ti複合酸化物の前駆体を、前記混合液から分離し、次いで熱処理してAl-Si-Ti複合酸化物を得る工程である。
Al-Si-Ti複合酸化物の前駆体(以下、単に「前駆体」とも記載する。)は、熱処理に供する前に洗浄してもよく、例えば洗浄により副生塩を除去してもよい。前駆体を洗浄する条件は特に制限されない。前駆体を洗浄するための洗浄液としては、例えば、アンモニア水溶液等が挙げられる。
以上、本発明に係るAl-Si-Ti複合酸化物及びその製造方法について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはない。
[測定方法]
各種測定は以下のように行った。
紫外可視分光光度計(日本分光(株)製、V-660)を用いて、拡散反射測定用の積分球ユニットISV-772を装着し、以下のようにして紫外可視光拡散反射スペクトルを測定した。
測定試料33mgを内径20mmのディスクに充填し、測定装置(日本分光(株)製、FT-IR4600)内に設置した。
測定雰囲気を500℃で1時間真空排気した後、30℃まで冷却した。その後、再び150℃まで昇温し、バックグラウンドスペクトルを測定した。次いで、測定雰囲気にピリジン蒸気を導入し、排気処理を行い、IRスペクトル(以下「150℃排気スペクトル」と記載する。)を測定した。さらに測定雰囲気を、真空排気下で250℃まで昇温した後、150℃まで冷却し、IRスペクトル(以下「250℃排気スペクトル」と記載する。)を測定した。
測定試料を磁性ルツボ(B-2型)に約30ml採取し、110℃で12時間加熱して加熱処理させた後、デシケータに入れて室温まで冷却した。次に、冷却物を乳鉢で15分間粉砕した後、X線回折装置(理学電機(株)製、RINT1400)を用いて結晶形態を測定した。
測定試料を磁製ルツボ(B-2型)に約30mL採取し、300℃の温度で2時間加熱処理後、デシケータに入れて室温まで冷却した。次に、この冷却された試料を1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、試料の比表面積(m2/g)をBET法にて測定した。
水銀圧入法(水銀の接触角:150度、表面張力:480dyn/cm)によって測定した。細孔容積は細孔直径40Å以上の細孔の容積とし、平均細孔径は細孔容積の50 %に相当する細孔直径とした。
<Al-Si-Ti複合酸化物の前駆体aの調製>
容量が100Lのスチームジャケット付きのタンクに、Al2O3換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液(日揮触媒化成(株)製)10.5kgを入れ、イオン交換水51kgで希釈後、SiO2換算で5質量%のケイ酸ナトリウム水溶液(AGCエスアイテック(株)製;SiO2濃度24質量%の製品をイオン交換水で希釈したもの)1.80kgを撹拌しながら添加し、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩を含む第二の水溶液を調製した。
得られた混合液1(前駆体aが析出したスラリー)を60℃で1時間撹拌した後、平板フィルターを用いて脱水し、さらに、0.3質量%アンモニア水溶液150Lで洗浄した。洗浄後のケーキ状態の前駆体aをAl2O3換算で10質量%となるようにイオン交換水で希釈した後、15質量%アンモニア水でpHを10.5に調整した。得られた希釈液を還流機付き熟成タンクに移し、撹拌しながら熟成温度95℃で10時間熟成した。熟成終了後の混合液を脱水し、スチームジャケットを備えた双腕式ニーダーにて練りながら所定の水分量まで濃縮捏和した。得られた捏和物を押出成型機にて直径が1.6mmの円柱形状に成型し、110℃で乾燥した。乾燥した成型品を、電気炉で大気雰囲気下、550℃の温度で3時間焼成し、得られた焼成物を粉砕してSi、Ti及びAlを含むAl-Si-Ti複合酸化物粒子1を得た。
また、複合酸化物粒子1の紫外可視光拡散反射スペクトルを図1に示す。分析結果からAl-Si-Ti複合酸化物粒子1の吸収端波長を算出したところ、339nmであった。
各成分の配合量を表1に記載のとおり変更したこと以外は実施例1と同様の方法により、Al-Si-Ti複合酸化物粒子2~5およびR1~R4製造した。評価結果を表2に示す。
容量が100Lのスチームジャケット付きのタンクに、Al2O3換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液7.00kgを入れ、イオン交換水16.5kgで希釈後、SiO2換算で5質量%のケイ酸ナトリウム溶液1.80kgを撹拌しながら添加し、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩を含む第二の水溶液を調製した。
容量が100Lのスチームジャケット付きのタンクに、Al2O3換算で22質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液8.16kgを入れ、イオン交換水41kgで希釈後、SiO2換算で5質量%のケイ酸ナトリウム溶液1.80kgを撹拌しながら添加し、60℃に加温して、塩基性アルミニウム塩を含む第二の水溶液を調製した。Al2O3換算で7質量%の硫酸アルミニウム水溶液(日揮触媒化成(株)製)7.43kgを13kgのイオン交換水で希釈した溶液と、TiO2換算で33質量%の硫酸チタニル1.82kgを10kgのイオン交換水に溶解した溶液とを混合し、50℃に加温して、チタニウム鉱酸塩及び酸性アルミニウム塩を含む第一の水溶液を調製した。続いて、第二の水溶液が入ったタンクに、ローラーポンプを用いて第一の水溶液をpHが7.2となるまで一定速度で10分間かけて添加し、複合酸化物の前駆体(水和物)が析出した混合液R6(スラリー)を得た。
混合液1を混合液R6に変更したこと以外は実施例1の<Al-Si-Ti複合酸化物粒子1の調製>と同様にして、複合酸化物粒子R6を得た。
Claims (7)
- 下記要件(1)~(3)を満たす、アルミニウム、ケイ素およびチタンの複合酸化物。
要件(1):アルミニウムの含有量がAl2O3換算で60質量%以上であり、ケイ素の含有量がSiO2換算で1.0~10質量%であり、かつチタンの含有量がTiO2換算で12~30質量%である。
要件(2):紫外可視分光分析により測定される吸収ピークの吸収端波長が350nm以下である。
要件(3):下記式を満たす。
ΔLAS=LAS150-LAS250≧190μmol/g
〔式中、LAS150およびLAS250は、ピリジンをプローブ分子として用いて赤外分光法により測定される前記複合酸化物の単位質量あたりのルイス酸点の量であって、測定試料の作製に際し、ピリジン吸着後の排気温度をそれぞれ150℃および250℃とした場合のルイス酸点の量である。〕 - X線回折分析によってアナターゼ型チタニア(101)面及びルチル型チタニア(110)面の結晶構造を示す回折ピークが検出されない、請求項1に記載の複合酸化物。
- 比表面積が280m2/g以上であり、細孔容積が0.45ml/g以上である、請求項1または2に記載の複合酸化物。
- 単位比表面積あたりの前記ΔLASの値が、0.50~0.70μmol/m2である、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合酸化物。
- アルミニウム、ケイ素およびチタンの複合酸化物の製造方法であって、
鉱酸、および前記鉱酸の塩基成分を含むチタニウム鉱酸塩類化合物を含む第一の水溶液と、塩基性アルミニウム塩を含む第二の水溶液とを、ケイ酸イオンの存在下で混合して、pH6.5~9.5の混合液を得ると共に前記複合酸化物の前駆体を析出させる第1工程、および
前記前駆体を、前記混合液から分離し、次いで熱処理して前記複合酸化物を得る第2工程
を含み、かつ
第一の水溶液に含まれるチタニウム鉱酸塩類化合物および鉱酸、第二の水溶液に含まれる塩基性アルミニウム塩、並びに、第一の水溶液及び/又は第二の水溶液に含まれるケイ酸イオンの含有量を、前記複合酸化物のアルミニウムの含有量がAl 2 O 3 換算で60質量%以上、ケイ素の含有量がSiO 2 換算で1.0~10質量%、チタンの含有量がTiO 2 換算で12~30質量%となるように調整する
複合酸化物の製造方法。 - 前記第一の水溶液において、(チタニウム鉱酸塩類化合物の物質量(チタンの物質量に換算))/(鉱酸の物質量)の値が0.15~0.70である、請求項5に記載の複合酸化物の製造方法。
- 前記第一の水溶液が60℃以下で調製される、請求項5または6に記載の複合酸化物の製造方法。
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