以下、本発明の実施形態に係る粘着シートについて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。図1に示されるように、本実施形態に係る粘着シート1は、粘着剤層11と、当該粘着剤層11の両面にそれぞれ設けられた2枚の剥離シート12とを備える。また、粘着剤層11は、光拡散微粒子111を含有する。ここで、粘着シート1において剥離シート12は必須の構成要素ではなく、粘着シート1の使用時に剥離・除去されるものである。
1.粘着シートを構成する各部材
(1)粘着剤層
本実施形態における粘着剤層11は、重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルを含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体と、光拡散微粒子111とを含有する粘着剤組成物から形成されたものである。本実施形態に係る粘着シート1では、粘着剤層11が光拡散微粒子111を含有することで、当該粘着剤層11が後述する範囲のヘイズ値を有するものとなる。これにより、本実施形態に係る粘着シート1を用いて製造される防眩性シートでは、ギラツキの発生を良好に抑制することができる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体は、重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルを含有する。(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルを含有する(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該モノマーを含有しない(メタ)アクリル酸エステル重合体と比較して、小さい屈折率を有し易いものとなる。そのため、本実施形態における粘着剤層11では、粘着剤層11の屈折率が比較的低いものとなるとともに、(メタ)アクリル酸エステル重合体と光拡散微粒子との屈折率の差が比較的小さい値(ただし、「0」ではない)となり易くなる。その結果、本実施形態に係る粘着シート1を用いて製造される防眩性シートでは、白茶けの発生が良好に抑制されるものとなる。なお、(メタ)アクリル酸エステル重合体の屈折率の測定方法については、後述する実施例の欄に記載する通りである。
上述した(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルとしては、フルオロ基を分子中に有するものであれば特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,2,3-テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル等が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体の屈折率を比較的小さいものに調整し易いという観点から、アクリル酸2,2,2-トリフルオロエチルおよびアクリル酸2,2,2,3-テトラフルオロプロピルの少なくとも一方を使用することが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルを、5質量%以上含有することが好ましく、特に25質量%以上含有することが好ましく、さらには40質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルを、90質量%以下で含有することが好ましく、特に75質量%以下で含有することが好ましく、さらには60質量%以下で含有することが好ましい。(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルの含有量が5質量%以上であることで、(メタ)アクリル酸エステル重合体の屈折率を低下させ易くなり、それにより、得られる防眩性シートにおける白茶けの発生を効果的に抑制することが可能となる。また、(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルの含有量が90質量%以下であることで、その他のモノマー単位の含有量を十分に確保することができ、所望の特性を有する粘着剤層11を形成し易くなる。
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマーとして、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤は、好ましい粘着性を発現することができる。
アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1~8の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルおよび(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。さらに、これらの中でも、アクリル酸n-ブチルを使用することが好ましい。なお、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、5質量%以上含有することが好ましく、特に15質量%以上含有することが好ましく、さらには30質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを、90質量%以下で含有することが好ましく、特に70質量%以下で含有することが好ましく、さらには50質量%以下で含有することが好ましい。
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体は、重合体を構成するモノマー単位として、反応性の官能基を有するモノマー(反応性官能基含有モノマー)を含有することも好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体が、反応性官能基含有モノマーを含有することで、当該重合体が、後述する架橋剤と反応して架橋構造を形成し易いものとなる。
上記反応性官能基含有モノマーとしては、分子内にカルボキシ基を有するモノマー(カルボキシ基含有モノマー)、分子内にヒドロキシ基を有するモノマー(ヒドロキシ基含有モノマー)、分子内にアミノ基を有するモノマー(アミノ基含有モノマー)などが好ましく挙げられ、中でもカルボキシ基含有モノマーまたはヒドロキシ基含有モノマーが好ましく、カルボキシ基含有モノマーがより好ましい。これらの反応性官能基含有モノマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、得られる(メタ)アクリル酸エステル重合体におけるカルボキシ基の架橋剤との反応性および他の単量体との共重合性の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ヒドロキシ含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマー単位として、反応性官能基含有モノマーを、1質量%以上含有することが好ましく、特に7質量%以上含有することが好ましく、さらには10質量%以上含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、反応性官能基含有モノマーを、30質量%以下で含有することが好ましく、特に20質量%以下で含有することが好ましく、さらには15質量%以下で含有することが好ましい。
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体は、当該重合体を構成するモノマーとして、他のモノマーをさらに含有してもよい。当該他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等の脂環式構造含有(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド等の非架橋性のアクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体の屈折率は、1.47以下であることが好ましく、特に1.46以下であることが好ましく、さらには1.45以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体の屈折率が1.47以下であることで、製造される防眩性シートにおいて白茶けの発生を効果的に抑制することが可能となる。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体の屈折率は、1.42以上であることが好ましく、特に1.43以上であることが好ましく、さらには1.44以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体の屈折率が1.42以上であることで、(メタ)アクリル酸エステル重合体と光拡散微粒子111とが所定の屈折率の差を有し易くなる。これにより、粘着剤層11が所定のヘイズ値を有し易くなり、結果として、製造される防眩性シートにおいてギラツキの発生を効果的に抑制することが可能となる。
本実施形態における(メタ)アクリル酸エステル重合体の重量平均分子量は10万以上であることが好ましく、特に30万以上であることが好ましく、さらには40万以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量は200万以下であることが好ましく、特に140万以下であることが好ましく、さらには90万以下であることが好ましい。重量平均分子量が10万以上であることで、高温条件や温暖湿潤条件に長期間曝された場合であっても、粘着剤層11の端部で浮きなどが効果的に抑制される。一方、重量平均分子量が200万以下であることで、当該重合体を含む塗工液を塗工可能な粘度に調整しやすいうえに、光拡散微粒子111の分散性が優れたものとなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
なお、本実施形態における粘着剤組成物において、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(1-2)光拡散微粒子
本実施形態における光拡散微粒子111としては、粘着剤層11に光拡散性を付与することができる限り特に限定されない。また、光拡散微粒子111は、上述した(メタ)アクリル酸エステル重合体との屈折率の差が比較的小さいものであることが好ましい。
光拡散微粒子111の屈折率は、1.40以上であることが好ましく、特に1.41以上であることが好ましく、さらには1.42以上であることが好ましい。また、当該屈折率は、1.46以下であることが好ましく、特に1.45以下であることが好ましく、さらには1.44以下であることが好ましい。光拡散微粒子111の屈折率が上述した範囲であることで、(メタ)アクリル酸エステル重合体と光拡散微粒子111との屈折率差を比較的小さい値(特に以下に記載する範囲)に調整し易くなる。
前述した(メタ)アクリル酸エステル重合体と光拡散微粒子111との屈折率の差は、0.05以下であることが好ましく、特に0.04以下であることが好ましく、さらには0.03以下であることが好ましい。当該屈折率の差が0.05以下であることで、製造された防眩性シートにおける白茶けの発生を効果的に抑制することが可能となる。また、上述した屈折率の差は、0.01以上であることが好ましく、特に0.02以上であることが好ましい。上述した屈折率の差が0.01以上であることにより、製造された防眩性シートにおけるギラツキの発生を効果的に抑制することが可能となる。
光拡散微粒子111の例としては、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、二酸化チタン等の無機系微粒子;アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂等の有機系の透光性微粒子;無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(例えば、シリコーン樹脂の微粒子であるモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のトスパールシリーズ)などが挙げられる。これらの中でも、無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子は、ギラツキ抑制効果の観点から好ましい。また、当該微粒子は、少量の添加でもその効果を発揮し、粘着成分の粘着性が良好に維持される観点からも好ましい。光拡散微粒子111は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記アクリル樹脂微粒子としては、例えば、メタクリル酸メチルの単独重合体や、メタクリル酸メチルと酢酸ビニル、スチレン、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の単量体との共重合体などからなるものが挙げられる。
光拡散微粒子111の形状としては、球状等の定形であってもよく、または形状が特定されない不定形であってもよいが、光拡散が均一な球状の微粒子が好ましい。
光拡散微粒子111の遠心沈降光透過法による平均粒径は、0.8μm以上であることが好ましく、特に1μm以上であることが好ましく、さらには3μm以上であることが好ましく、さらには4μm以上であることが最も好ましい。また、当該平均粒径は、20μm以下であることが好ましく、特に10μm以下であることが好ましく、さらには8μm以下であることが好ましい。光拡散微粒子111の平均粒径が上記範囲にあることで、粘着シート1のヘイズ値を後述した範囲に設定し易くなり、ギラツキの発生を効果的に抑制することができる。
なお、本明細書における遠心沈降光透過法による平均粒径は、微粒子1.2gとイソプロピルアルコール98.8gとを十分に撹拌したものを測定用試料とし、遠心式自動粒度分布測定装置(堀場製作所社製,製品名「CAPA-700」)を使用して測定したものである。
前述した粘着剤組成物中における光拡散微粒子111の含有量は、前述した(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、特に3質量部以上であることが好ましく、さらには7質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、特に17質量部以下であることが好ましく、さらには12質量部以下であることが好ましい。粘着剤組成物中における光拡散微粒子111の含有量が0.5質量部以上であることで、粘着剤層11のヘイズ値が比較的大きいものとなり、それにより、製造された防眩性シートにおいてギラツキの発生を効果的に抑制することができる。また、粘着剤組成物中における光拡散微粒子111の含有量が30質量部以下であることで、粘着剤組成物から形成される粘着剤の凝集力の低下が抑制され、粘着シート1が所望の粘着力を発揮し易くなる。
(1-3)架橋剤
本実施形態における粘着剤組成物は、架橋剤を含有することが好ましい。前述した(メタ)アクリル酸エステル重合体が、重合体を構成するモノマー単位として、前述した反応性官能基含有モノマーを含む場合には、当該反応性官能基含有モノマーの反応性官能基が、架橋剤と反応することが可能となる。これにより、形成される粘着剤層11中に、架橋剤によって(メタ)アクリル酸エステル重合体が架橋された構造が形成され、粘着剤層11を構成する粘着剤の凝集力が向上するものとなる。
架橋剤としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体が有する反応性官能基と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。なお、架橋剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体が有する反応性官能基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートが好ましい。
粘着剤組成物中における架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、特に1質量部以下であることが好ましく、さらには0.5質量部以下であることが好ましい。
(1-4)活性エネルギー線硬化性成分
本実施形態における粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化性成分を含有してもよい。粘着剤組成物が活性エネルギー線硬化性成分を含有する場合、当該粘着剤組成物を硬化して得られる粘着剤層11は、高い被膜強度を示すものとなる。
活性エネルギー線硬化性成分は、本発明の効果を妨げることなく、活性エネルギー線の照射によって硬化する成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体等との相溶性に優れる多官能アクリレート系モノマーが好ましい。
多官能アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型などが挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル重合体等との相溶性を更に向上させる観点から、分子量1000未満の多官能アクリレート系モノマーを使用することが好ましい。また、耐久性をより向上させる観点から、芳香環や複素環を含有する多官能アクリレート系モノマーを使用することが好ましく、ヌレート環を含有する多官能アクリレート系モノマーを使用することがより好ましく、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートを使用することが特に好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
活性エネルギー線硬化性成分としては、活性エネルギー線硬化型のアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。このアクリレート系オリゴマーは重量平均分子量50,000以下のものが好ましい。このようなアクリレート系オリゴマーの例としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系等が挙げられる。
上記アクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、50,000以下であることが好ましく、特に40,000以下であることが好ましい。また、当該重量平均分子量は、500以上であることが好ましく、特に3,000以上であることが好ましい。これらのアクリレート系オリゴマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、活性エネルギー線硬化性成分としては、(メタ)アクリロイル基を有する基が側鎖に導入されたアダクトアクリレート系ポリマーを用いることもできる。このようなアダクトアクリレート系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルと、分子内に架橋性官能基を有する単量体との共重合体を用い、当該共重合体の架橋性官能基の一部に、(メタ)アクリロイル基および架橋性官能基と反応する基を有する化合物を反応させることにより得ることができる。
上記アダクトアクリレート系ポリマーの重量平均分子量は、5万以上であることが好ましく、特に10万以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量は、90万以下であることが好ましく、特に50万以下であることが好ましい。
活性エネルギー線硬化性成分は、前述した多官能アクリレート系モノマー、アクリレート系オリゴマーおよびアダクトアクリレート系ポリマーの中から、1種を選んで用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできるし、それら以外の活性エネルギー線硬化性成分と組み合わせて用いることもできる。
粘着剤組成物中における活性エネルギー線硬化性成分の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、特に5質量部以上であることが好ましく、さらには7質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、25質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることが特に好ましい。
(1-5)各種添加剤
本実施形態における粘着剤組成物は、所望により、各種添加剤、例えばシランカップリング剤、光重合開始剤、屈折率調整剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤等を含有してもよい。なお、粘着剤組成物は、粘着剤層11中に、そのまま、あるいは反応した状態で、残存する各種成分の混合物を表すものであって、乾燥工程等で除去される成分、例えば、後述の重合溶媒や希釈溶媒は、粘着剤組成物に含まれない。
粘着剤組成物は、得られる粘着剤の粘着力を改善する観点から、シランカップリング剤を含有することも好ましい。シランカップリング剤としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、粘着成分との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
かかるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着剤組成物中におけるシランカップリング剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して、2質量部以下であることが好ましく、特に1質量部以下であることが好ましく、さらには0.5質量部以下であることが好ましい。
また、粘着剤組成物が前述した活性エネルギー線硬化性成分を含有するものであり、当該粘着剤組成物を硬化するための活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、粘着剤組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。このように光重合開始剤を含有することにより、活性エネルギー線硬化性成分を効率良く硬化させることができ、また重合硬化時間および活性エネルギー線の照射量を少なくすることができる。
このような光重合開始剤としては、例えば、ベンソイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着剤組成物中における光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、特に4質量部以上であることが好ましく、さらには8質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、特に20質量部以下であることが好ましく、さらには13質量部以下であることが好ましい。
(1-6)粘着剤組成物の調製方法
本実施形態における粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステル重合体、光拡散微粒子111、ならびに所望により架橋剤、活性エネルギー線硬化性成分、およびその他の添加剤を混合することにより調製することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体は、重合体を構成するモノマー単位の混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法等により行うことができる。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
(メタ)アクリル酸エステル重合体が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体の溶液に、光拡散微粒子111、ならびに所望により架橋剤、活性エネルギー線硬化性成分、その他の添加剤、および希釈溶剤を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着剤組成物(塗布液)を得る。
粘着剤組成物を希釈して塗布液とするための希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
このようにして調製された塗布液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着剤組成物の濃度が10~40質量%となるように希釈する。なお、塗布液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着剤組成物がコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。
(1-7)粘着剤層の物性等
粘着剤層11のヘイズ値は、10%以上、90%以下である。粘着剤層11のヘイズ値が10%未満であると、製造される防眩性シートにおいてギラツキの発生を十分に抑制することができないものとなる。この観点から、粘着剤層11のヘイズ値は、20%以上であることが好ましく、特に30%以上であることが好ましく、さらには50%以上であることが好ましい。また、粘着剤層13のヘイズ値が90%を超えると、製造される防眩性シートにおいて白茶けの発生を十分に抑制することができないものとなる。この観点から、粘着剤層11のヘイズ値は、80%以下であることが好ましく、特に70%以下であることが好ましく、さらには60%以下であることが好ましい。なお、本明細書において、粘着剤層11のヘイズ値とは内部ヘイズ値のことをいい、その測定方法の詳細は後述する試験例に記載の通りである。
粘着剤層11の全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、特に85%以上であることが好ましく、さらには90%以上であることが好ましい。全光線透過率が80%以上であることで、製造される防眩性シートが使用されるディスプレイが良好に画像表示し易いものとなる。なお、粘着剤層11の全光線透過率の上限値については特に限定されず、100%であることが好ましいものの、100%を達成できない場合には、99%以下であることが好ましく、特に95%以下であることが好ましい。なお、粘着剤層11の全光線透過率の測定方法の詳細は後述する試験例に記載の通りである。
粘着剤層11のゲル分率は、40%以上であることが好ましく、特に60%以上であることが好ましく、さらには70%以上であることが好ましい。また、粘着剤層11のゲル分率は、90%以下であることが好ましく、特に85%以下であることが好ましく、さらには80%以下であることが好ましい。粘着剤層11のゲル分率が上述した範囲であることで、粘着剤層11が所望の凝集力を達成し易いものとなる。なお、粘着剤層11のゲル分率の測定方法の詳細は後述する試験例に記載の通りである。
粘着剤層11の厚さは、5μm以上であることが好ましく、特に10μm以上であることが好ましく、さらには15μm以上であることが好ましい。また、粘着剤層11の厚さは、300μm以下であることが好ましく、特に50μm以下であることが好ましく、さらには30μm以下であることが好ましい。粘着剤層11の厚さが5μm以上であることで、製造される防眩性シートがギラツキの発生を抑制し易いものとなるとともに、粘着シート1が所望の粘着力を効果的に発揮することができる。また、粘着剤層11の厚さが300μm以下であることで、製造過程に起因する残留溶剤や気泡の混入が有効に防止され、粘着力の安定性および光学特性に優れたものとすることができる。
(2)剥離シート
本実施形態における粘着シート1では、粘着シート1の使用時まで粘着剤層11を保護する目的で、粘着剤層11の少なくとも一方の面に剥離シート12が積層されていてもよい。剥離シート12は、粘着シート1を使用する際に剥離される。
剥離シート12としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
上記剥離シート12の剥離面(粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。
剥離シート12の厚さについては特に制限はないが、通常20μm以上、150μm以下である。
2.粘着シートの物性
本実施形態における粘着シート1の粘着力は、2N/25mm以上であることが好ましく、特に10N/25mm以上であることが好ましく、さらには15N/25mm以上であることが好ましい。また、当該粘着力は、50N/25mm以下であることが好ましく、特に40N/25mm以下であることが好ましく、さらには30N/25mm以下であることが好ましい。粘着シート1の粘着力が2N/25mm以上であることで、耐久性に優れたものとなる。また、当該粘着力が50N/25mm以下であることで、粘着シート1が優れたリワーク性を有するものとなる。なお、上記粘着力の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
3.粘着シートの製造方法
本実施形態に係る粘着シート1の製造方法の一例としては、前述した粘着剤組成物の塗布液を、一の剥離シート12の剥離面に塗布して塗膜を形成する。続いて、当該塗膜を乾燥させ、さらに硬化させることで、一の剥離シート12上に粘着剤層11を形成する。さらに、当該粘着剤層11における一の剥離シート12とは反対側の面に、他の剥離シート12の剥離面を積層することで、2枚の剥離シート12の間に粘着剤層11が積層されてなる粘着シート1を製造することができる。
上述した塗膜の硬化は、例えば、加熱処理により行うことができる。この場合の加熱温度は、50℃以上であることが好ましく、特に70℃以上であることが好ましい。また、当該加熱温度は、150℃以下であることが好ましく、特に120℃以下であることが好ましい。さらに、加熱時間としては、10秒以上であることが好ましく、特に50秒以上であることが好ましい。また、当該加熱時間は、10分以下であることが好ましく、特に2分以下であることが好ましい。なお、上述した塗膜の乾燥を、このような加熱処理によって行ってもよい。また、加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。
粘着剤組成物が前述した活性エネルギー線硬化性成分を含有する場合には、上述した加熱処理の前もしくは後、または加熱処理と同時に、上述した塗膜に対して活性エネルギー線を照射し、粘着剤組成物を硬化させることが好ましい。
ここで、活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50~1000mW/cm2程度であることが好ましい。また、光量は、50mJ/cm2以上であることが好ましく、特に80mJ/cm2以上であることがより好ましく、さらには200mJ/cm2以上であることが特に好ましい。また、光量は、10000mJ/cm2以下であることが好ましく、特に5000mJ/cm2以下であることが好ましく、さらには2000mJ/cm2以下であることが好ましい。
一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができる。電子線の照射量は、10~1000krad程度が好ましい。
粘着剤組成物の塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
4.粘着シートの使用
本実施形態に係る粘着シート1の使用方法は特に限定されず、従来の粘着シートと同様に使用することができる。しかしながら、本実施形態に係る粘着シート1は粘着剤層11が光拡散性を示すものであるため、そのような光拡散性が求められる用途に使用することが好ましい。特に、本実施形態に係る粘着シート1は、防眩性シートを製造するために使用することが好ましい。
図2には、本実施形態に係る粘着シート1を用いて製造される防眩性シート2の一例の断面図が示される。図2に示される防眩性シート2は、基材22と、当該基材22の一方の面に設けられた防眩性層21と、基材22の他方の面に設けられた粘着剤層11と、当該粘着剤層11における基材22とは反対の面に設けられた剥離シート12とを備える。
上記防眩性シート2は、本実施形態に係る粘着シート1における一の剥離シート12を剥がし、露出した粘着剤層11の露出面を、予め作製しておいた基材22と防眩性層21との積層体における基材22側の面に貼合することで製造することができる。
また、上記防眩性シート2は、防眩性飛散防止シートであってもよい。すなわち、上記防眩性シート2は、ガラスや樹脂板等の表面に貼合され、当該ガラスや樹脂板等が破損した際における、当該ガラスや樹脂板等の破片の飛散を防止するために使用されてもよい。
本実施形態に係る粘着シート1を用いて製造される防眩性シート2では、粘着剤層11が前述した粘着剤組成物から形成されたものであることにより、良好な防眩性を達成しながらも、ギラツキの発生が良好に抑制することができるとともに、白茶けの発生も良好に抑制することができる。
(1)防眩性層
上述した防眩性シート2において、防眩性層21は、図2に示されるように、表面凹凸形成用微粒子211を含むことが好ましい。これにより、防眩性層21における基材22とは反対側の面には、表面凹凸形成用微粒子211に応じた凹凸構造が形成されることになり、所望の防眩性を発揮するものとなる。
防眩性層21を構成する表面凹凸形成用微粒子211以外の材料については、上記凹凸構造を形成可能であり、光透過性を有するものであれば、従来使用される材料を使用することができる。また、防眩性層21は、防眩性シート2が発揮する防眩性を損なわない限り、その他の機能を奏する層であってもよい。例えば、防眩性層21は、ハードコート層であってもよく、または傷修復層であってもよい。特に、防眩性層21は、ハードコート層であることが好ましい。
防眩性層21は、例えば、表面凹凸形成用微粒子211を含有する防眩性組成物から形成することができる。当該防眩性組成物は、表面凹凸形成用微粒子211の他に、マトリックス成分を含有することが好ましい。
(1-1)表面凹凸形成用微粒子
表面凹凸形成用微粒子211は、無機微粒子であってもよく、有機微粒子であってもよく、また、無機と有機との中間的な構造を有する微粒子であってもよいが、形成される防眩性層21の白茶け抑制性の観点から有機微粒子が好ましい。有機微粒子の例としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂等の透光性樹脂からなる微粒子であることが好ましく、アクリル樹脂からなるものであることがより好ましい。なお、アクリル樹脂の例としては、メタクリル酸メチルの単独重合体や、メタクリル酸メチルと酢酸ビニル、スチレン、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の単量体との共重合体などからなるものが挙げられる。なお、微粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
表面凹凸形成用微粒子211の形状は、球状等の定形であってもよく、または形状が特定されない不定形であってもよいが、白茶け抑制により優れるという観点から定形の方が好ましく、球状であることがより好ましい。
表面凹凸形成用微粒子211の遠心沈降光透過法による平均粒径は、0.8μm以上であることが好ましく、特に1.0μm以上であることが好ましく、さらには1.5μm以上であることが好ましい。また、当該平均粒径は、10μm以下であることが好ましく、特に8μm以下であることが好ましく、さらには5μm以下であることが好ましい。表面凹凸形成用微粒子211の平均粒径が上記範囲内であることにより、後述のヘイズ値や表面粗さを有する防眩性層が得られ易くなる。
防眩性層21(防眩性組成物)中の表面凹凸形成用微粒子211の含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、特に1質量%以上であることが好ましく、さらには2質量%以上であることが好ましい。また、防眩性層21中の表面凹凸形成用微粒子211の含有量は、30質量%以下であることが好ましく、特に25質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。防眩性層21中の表面凹凸形成用微粒子211の含有量が上述した範囲であることで、防眩性シート2が効果的に防眩性を発揮することができる。
(1-2)マトリックス成分
マトリックス成分としては、従来使用される光透過性を有する樹脂等を使用することができる。例えば、当該樹脂として、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチロール系樹脂、ABS系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ケイ素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン等を使用することができる。
防眩性層21としてハードコート層を形成する場合、防眩性組成物は、マトリックス成分として、硬化性のアクリル系樹脂、特に多官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。なお、多官能(メタ)アクリレートとしては、公知のものを適宜使用することができる。
(1-3)その他の成分
本実施形態における防眩性組成物は、上記の成分以外に、各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、光重合開始剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、レベリング剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、屈折率調整剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、消泡剤、有機系充填材、濡れ性改良剤、塗面改良剤等が挙げられる。
(1-4)防眩性層の形成方法
防眩性層21は、例えば、上述したような防眩性組成物を使用して形成することができる。
防眩性組成物は、マトリックス成分と、表面凹凸形成用微粒子211と、所望により添加剤とを混合することにより調製することができる。
防眩性組成物を希釈して塗布溶液とするための希釈溶剤としては、マトリックス成分等が溶解するものであれば、特に限定なく使用できる。溶剤を使用することで、塗工性の改良、粘度調整、固形分濃度の調整等が可能となる。
溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソロブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソロブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソロブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類などが挙げられる。
上記のように防眩性組成物を調製した後、当該防眩性組成物の塗布溶液を、例えば基材22の一方の面に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させ、さらに硬化させることで、基材22上に防眩性層21を形成することができる。なお、防眩性層21としてハードコート層を形成する場合には、マトリックスとして上述した多官能(メタ)アクリレートが好ましく使用され、所望によりレベリング剤等が防眩性組成物に配合されてもよい。
防眩性組成物の塗工液の塗布は、常法によって行えばよく、例えば、粘着剤組成物の塗布溶液を塗布するための方法として例示した上述の方法により行うことができる。防眩性組成物の塗工液を塗布したら、塗膜を40℃以上、120℃以下で30秒以上、5分以下程度乾燥させることが好ましい。
塗膜の硬化は、使用するマトリックス成分に応じて行うことができ、例えば加熱処理または活性エネルギー線の照射により行うことができる。特に、マトリックス成分として上述した多官能(メタ)アクリレートを使用する場合、防眩性組成物の硬化は、窒素雰囲気下において、コーティング組成物の塗膜に対して紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射することによって行うことが好ましい。紫外線照射および電子線照射の照射条件については、前述した条件と同様のものを使用することができる。
(1-5)防眩性層の物性等
防眩性層21のヘイズ値は、1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、特に12%以上であることが好ましく、さらには18%以上であることが好ましい。また、防眩性層21のヘイズ値は、50%以下であることが好ましく、特に40%以下であることが好ましく、さらには30%以下であることが好ましい。防眩性層21のヘイズ値が1%以上であることで、粘着剤層11との組合せにより、ギラツキの発生を効果的に抑制することができる。一方、防眩性層21のヘイズ値が50%以下であることで、粘着剤層11との組合せにより、白茶けの発生を効果的に抑制することができる。
防眩性層21の厚さは、1μm以上であることが好ましく、特に2μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、15μm以下であることが好ましく、特に10μm以下であることが好ましい。防眩性層21の厚さが上記の範囲にあることで、防眩性とカール防止性とを効果的に両立することができる。
防眩性層21の基材22とは反対側の面における算術平均表面粗さ(Ra)は、0.001μm以上であることが好ましく、特に0.01μm以上であることが好ましく、さらには0.1μm以上であることが好ましい。また、当該算術平均表面粗さ(Ra)は、10μm以下であることが好ましく、特に1μm以下であることが好ましく、さらには0.5μm以下であることが好ましい。算術平均表面粗さ(Ra)が上記の範囲にあることで、防眩性層21は、優れた防眩性を発揮し易いものとなる。
防眩性層21の基材22とは反対側の面における最大高さ粗さ(Rz)は、0.1μm以上であることが好ましく、特に0.5μm以上であることが好ましく、さらには1μm以上であることが好ましい。また、当該最大高さ粗さ(Rz)は、20μm以下であることが好ましく、特に10μm以下であることが好ましく、さらには4μm以下であることが好ましい。最大高さ粗さ(Rz)が上記の範囲にあることで、防眩性層21は、ギラツキを抑制しながら優れた防眩性を発揮しやすいものとなる。
防眩性層21の基材22とは反対側の面における二乗平均平方根高さ(Rq)は、0.005μm以上であることが好ましく、特に0.01μm以上であることが好ましく、さらには0.1μm以上であることが好ましい。また、当該二乗平均平方根高さ(Rq)は、10μm以下であることが好ましく、特に5μm以下であることが好ましく、さらには1μm以下であることが好ましい。二乗平均平方根高さ(Rq)が上記の範囲にあることで、ギラツキを抑制しながら優れた防眩性を発揮しやすいものとなる。
防眩性層21の基材22とは反対側の面における最大断面高さ(Rt)は、0.1μm以上であることが好ましく、特に0.5μm以上であることが好ましく、さらには1.0μm以上であることが好ましい。また、当該最大断面高さ(Rt)は、20μm以下であることが好ましく、特に15μm以下であることが好ましく、さらには10μm以下であることが好ましい。最大断面高さ(Rt)が上記の範囲にあることで、ギラツキを抑制しながら優れた防眩性を発揮しやすいものとなる。
なお、上述した算術平均表面粗さ(Ra)、最大高さ粗さ(Rz)、二乗平均平方根高さ(Rq)および最大断面高さ(Rt)の測定方法の詳細は、後述する実施例の欄に記載の通りである。
(2)基材
基材22としては、所望の光透過性を達成できる材料からなるものであることが好ましい。また、防眩性シート2を防眩性飛散防止シートとして使用する場合には、基材22が、ガラスや樹脂板等の破片の飛散を防止できる程度の強度を有する材料からなることが好ましい。通常、基材22は、プラスチックフィルムからなる。
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、トリアセチルセルロース等のセルロースフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。プラスチックフィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものでもよい。
基材22の厚さは、通常10μm以上、500μm以下に設定されるが、50μm以上であることが好ましく、特に80μm以上であることが好ましい。また、基材22の厚さは、300μm以下であることが好ましく、特に150μm以下であることが好ましい。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
アクリル酸n-ブチル40質量部、アクリル酸10質量部およびアクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル50質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。また、この(メタ)アクリル酸エステル重合体の屈折率を後述する方法で測定したところ、1.45であった。
ここで、上述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
また、上述した(メタ)アクリル酸エステル重合体の屈折率は、JIS K7142:2014に準じて、アッベ屈折計(アタゴ社製,製品名「アッベ屈折計4T」)を用いて以下の条件で測定したものである。
<測定条件>
・Na光源
・波長:約590nm
2.粘着剤組成物の調製
得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、光拡散微粒子としての、無機と有機との中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール145」,平均粒径:4.5μm,屈折率:1.43)10.0質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート0.5質量部と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.2質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着剤組成物の塗布液を得た。
3.粘着シートの製造
得られた粘着剤組成物の塗布液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布したのち、得られた塗膜を90℃で1分間加熱処理することで、厚さ25μmの粘着剤層を形成した。その後、当該粘着剤層における重剥離型剥離シートとは反対側の面に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382120」)の剥離処理面を積層した。これにより、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:25μm)/軽剥離型剥離シートの層構成を有する粘着シートを得た。
〔実施例2〕
1.粘着剤組成物の調製
実施例1の工程1と同様に得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部と、光拡散微粒子としての、無機と有機との中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール145」,平均粒径:4.5μm,屈折率:1.43)7.5質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート0.5質量部と、活性エネルギー線硬化性成分としてのトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート10質量部と、光重合開始剤としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン1.0質量部と、シランカップリング剤としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.2質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着剤組成物の塗布液を得た。
2.粘着シートの製造
得られた粘着剤組成物の塗布液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布したのち、得られた塗膜を90℃で1分間加熱処理した。その後、当該塗膜における重剥離型剥離シートとは反対側の面に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382120」)の剥離処理面を積層することで、重剥離型剥離シート/塗膜/軽剥離型剥離シートの層構成を有する積層体を得た。
続いて、得られた積層体における上記塗膜に対し、上記剥離シート越しに以下の条件で紫外線を照射して、上記塗膜を硬化させて厚さ25μmの粘着剤層とした。これにより、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:25μm)/軽剥離型剥離シートの層構成を有する粘着シートを得た。
<紫外線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度300mW/cm2,光量300mJ/cm2
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
〔実施例3~7および比較例1〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体を構成するモノマーの種類および含有量、ならびに光拡散微粒子の種類および含有量を表1に示すように変更する以外、実施例2と同様にして粘着シートを製造した。
〔参考例〕
光拡散微粒子を添加することなく得た粘着剤組成物の塗布液を用いた以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
〔製造例1〕
多官能(メタ)アクリレートを含有するアクリル系樹脂(荒川化学製,製品名「ビームセット575CB」)と、表面凹凸形成用微粒子としての、平均粒径2.5μmのアクリル樹脂粒子とを混合し、防眩性組成物を得た。当該防眩性組成物中のアクリル樹脂粒子の含有量は、2質量%であった。さらに、当該防眩性組成物を、プロピレングリコールモノメチルエーテルで希釈することで、防眩性組成物の塗布液を得た。
その後、基材としての易接着層付きポリエステルフィルム(東洋紡社製,コスモシャインA4300,厚さ:125μm)の易接着層側の面に、上記防眩性組成物の塗布液をワイヤーバー#10で塗布し、70℃で1分間乾燥させた。
次いで、窒素雰囲気下、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製,UVPF-A1)により下記の条件で紫外線を照射して、基材上に厚さ2.0μmの防眩性層としてのハードコート層を形成した。これにより、基材と防眩性層との積層体(以下、「積層体A」とする。)を得た。なお、当該積層体Aによれば、良好な防眩性を発揮できることが確認された。
<紫外線照射条件>
・光源:高圧水銀灯
・ランプ電力:2kW
・コンベアスピード:4.23m/min
・照度:240mW/cm2
・光量:307mJ/cm2
表2には、上記積層体Aについての構成や物性等をまとめた。なお、表2中におけるヘイズ値(%)は、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH2000」)を用いて、JIS K7136:2000、JIS K7361-1:1997およびASTM D 1003に準じて測定したものである。また、表2中における各種表面粗さ(算術平均表面粗さRa、二乗平均平方根高さRq、最大高さ粗さRzおよび最大断面高さRt;それぞれ単位はnm)は、上記積層体Aにおける防眩性層側の面について、JIS B0601:2013に準拠して、光干渉顕微鏡(Veeco社製,製品名「表面形状測定装置WYKO NT110」)を用いて測定したものである。なお、表面粗さの測定の際には、測定条件PSI、倍率50倍とし、測定ポイント5箇所の平均値を表面粗さの値とした。
〔製造例2〕
多官能(メタ)アクリレートを含有するアクリル系樹脂(荒川化学製,製品名「ビームセット575CB」)と、表面凹凸形成用微粒子としての、平均粒径3.5μmのアクリル樹脂粒子とを混合し、防眩性組成物を得た。当該防眩性組成物中の不定形シリカ粒子の含有量は、15質量%であった。さらに、当該防眩性組成物を、トルエンで希釈することで、防眩性組成物の塗布液を得た。
その後、基材としてのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ社製,製品名「KC8UYW」,厚さ:80μm)の一方の面に、上記防眩性組成物の塗布液をワイヤーバー#10で塗布し、70℃で1分間乾燥させた。
次いで、製造例1における紫外線照射と同様の条件にて紫外線を照射して、基材上に厚さ3.0μmの防眩性層としてのハードコート層を形成した。これにより、基材と防眩性層との積層体(以下、「積層体B」とする。)を得た。なお、当該積層体Bによれば、良好な防眩性を発揮できることが確認された。
表2には、上記積層体Bについての構成や物性等をまとめた。なお、表2中におけるヘイズ値は、製造例1と同様の方法にて測定したものである。また、表2中における各種表面粗さは、上記積層体Bにおける防眩性層側の面について、製造例1と同様の方法にて測定したものである。
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
実施例、比較例および参考例で得られた粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表3に示す。
〔試験例2〕(粘着力の測定)
実施例、比較例および参考例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。その積層体を、幅25mm、長さ100mmに裁断し、これをサンプルとした。当該サンプルから重剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、ソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付した。
その後、常圧、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロン」)を用い、JIS Z0237:2009に準じて、剥離速度300mm/min、剥離角度180°の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。結果を表3に示す。
〔試験例3〕(粘着剤層のヘイズ値の測定)
実施例、比較例および参考例で得られた粘着シートについて、両面の剥離シートが貼付された状態で、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH2000」)を用いて、JIS K7136:2000、JIS K7361-1:1997およびASTM D 1003に準じてヘイズ値(%)を測定し、両面の剥離シートのヘイズ値を差し引くことにより粘着剤層のヘイズ値(内部ヘイズ値)を算出した。この結果を、粘着剤層のヘイズ値(%)として表3に示す。
〔試験例4〕(粘着剤層の全光線透過率の測定)
実施例、比較例および参考例で得られた粘着シートの全光線透過率(%)を、ヘイズメーター(日本電色工業製,製品名「NDH2000」)を使用し、JIS K7361-1:1997に準拠して測定した。測定結果を、粘着剤層の全光線透過率(%)として、表3に示す。
〔試験例5〕(ギラツキの評価)
実施例、比較例および参考例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、製造例1で製造した積層体Aにおける基材側の面に貼合することで、防眩性シートを得た。
得られた防眩性シートから重剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層の露出面をタブレット端末(アップル社製,製品名「iPad(登録商標)」,表示面の精細度:264dpi)の表示面に貼付した。そして、タブレット端末の表示面を緑一色の発光となるように調整し、防眩性シートによるギラツキを抑制する効果を目視にて確認した。
そして、高頻度にギラツキが確認される場合を「1」とするとともに、全くギラツキが確認されない場合を「5」として、ギラツキの程度が低下するに従って「1」から「5」に向けて数値が増大する5段階の基準を設け、当該基準に基づいて、ギラツキについて評価した。評価結果を表3に示す。
また、上述した積層体Aの代わりに、製造例2で製造した積層体Bを使用して防眩性シートを作製し、当該防眩性シートについても、上記と同様に、5段階の基準にてギラツキについて評価した。この結果も表3に示す。
〔試験例6〕(白茶けの評価)
実施例、比較例および参考例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、製造例1で製造した積層体Aにおける基材側の面に貼合することで、防眩性シートを得た。
得られた防眩性シートから重剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層の露出面を黒色のアクリル板上に貼付した。そして、目視により、粘着シートの白っぽさの程度を確認した。
そして、明確に白っぽさが認識される場合を「1」とするとともに、全く白っぽさが認識されない場合を「5」として、白っぽさの程度が低下するに従って「1」から「5」に向けて数値が増大する5段階の基準を設け、当該基準に基づいて、白茶けについて評価した。評価結果を表3に示す。
また、上述した積層体Aの代わりに、製造例2で製造した積層体Bを使用して防眩性シートを作製し、当該防眩性シートについても、上記と同様に、5段階の基準にて白茶けについて評価した。この結果も表3に示す。
〔試験例7〕(耐久性の評価)
実施例、比較例および参考例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、製造例1で製造した積層体Aにおける基材側の面に貼合することで、防眩性シートを得た。
得られた防眩性シートから重剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層の露出面をソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付した。このようにして得られた積層体を、オートクレーブ(栗原製作所社製)にて0.5MPa、50℃で、30分加圧した後、室温にて一晩放置した。
続いて、上記積層体を、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて72時間保管した。その後、粘着剤層とソーダライムガラスとの界面における状態を目視により確認し、以下の基準により耐久性を評価した。その結果を表3に示す。
○…気泡や浮き・剥がれが全くなかった。
△…微小な気泡が発生したが、浮き・剥がれはなかった。
×…気泡や浮き・剥がれが発生した。
〔試験例8〕(飛散防止効果の評価)
実施例、比較例および参考例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、製造例1で製造した積層体Aにおける基材側の面に貼合することで、防眩性飛散防止シートを得た。
次に、防眩性飛散防止シートの重剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層をガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラス イーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚さ0.5mm)と貼り合わせ、評価サンプルとした。
平滑な台の上に、2枚のステンレススチール板(厚さ:2cm)を50mmの間隔にて互いに平行になるように配置した。そして、上記評価サンプルを、ガラス板側が上となるように、かつ、評価サンプルの縦方向の両端部20mmにて評価サンプルの防眩性飛散防止シート側が上記ステンレススチール板に接するように配置した。
次いで、130gのステンレス鋼球を高さ60cmから上記評価サンプルの中心部分に落下させた。そして、ガラス板が破損してなるガラス片の飛散の状態を確認し、以下の基準により、飛散防止効果を評価した。その結果を表3に示す。
〇…全てのガラス片が防眩性飛散防止シートにより保持され、ガラス片の飛散は生じなかった。
×…少なくとも一部のガラス片の飛散が生じた。
なお、表1および表2に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[モノマー]
BA:アクリル酸n-ブチル
AA:アクリル酸
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
V-3F:アクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル
V-4F:アクリル酸2,2,2,3-テトラフルオロプロピル
[光拡散微粒子]
トスパール145:無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール145」,平均粒径:4.5μm,屈折率:1.43)
トスパール200B:無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなる微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール200B」,平均粒径:6.0μm,屈折率:1.43)
[基材]
PET:易接着層付きポリエステルフィルム(東洋紡社製,コスモシャインA4300,厚さ:125μm)
TAC:トリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ社製,製品名「KC8UYW」,厚さ:80μm)
表3からわかるように、実施例に係る粘着シートでは、ギラツキの発生を抑制しながらも、白茶けを良好に抑制することができた。一方、比較例に係る粘着シートでは、ギラツキの発生を抑制することはできたものの、白茶けの発生を十分に抑制することができなかった。また、参考例に係る粘着シートでは、白茶けの発生は十分に抑制されたものの、ギラツキの発生を抑制することができなかった。