JP7164942B2 - 吸水剤の製造方法及び吸水剤 - Google Patents

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Description

本発明は、吸水剤の製造方法及び吸水剤に関する。
吸水性樹脂は、紙おむつ及び生理用品等の衛生材料、保水剤及び土壌改良剤等の農園芸材料、止水剤及び結露防止剤等の工業資材等の種々の分野で広く使用されている。特に吸水性樹脂は、紙おむつ、生理用品及び簡易トイレ等の衛生材料に使用されることが多い。
近年、環境保全の観点から、使用済み衛生材料(例えば、紙おむつ)に含まれる再生資源(例えば、パルプ)を回収し、これを再利用する試みがなされている。衛生材料から再生資源を回収するには、まず再生資源を吸水性樹脂から分離させる必要がある。しかしながら、一般的に、水を吸収してゲル状となった吸水性樹脂(以下、「使用済み吸水性樹脂」と称する)は再生資源と分離し難く、それ故、衛生材料から使用済み吸水性樹脂を除いて再生資源だけを回収することが困難である。
このような問題を解決するため、使用済み吸水性樹脂を分解してから再生資源を回収する方法が検討されている。例えば、特許文献1及び2に開示の技術では、使用済み紙おむつを破断した後に、ポリマー分解剤を混ぜた水で紙おむつに含まれる使用済み吸水性樹脂をモノマーに分解してから、再生資源であるパルプ成分を分離回収している。
特開2000-084533号公報 特開2006-289154号公報
しかしながら、特許文献1及び2に開示の技術では、使用済み吸水性樹脂の分解にポリマー分解剤が必要であるため、再生資源の回収作業が煩雑であるだけでなく、ポリマー分解剤を常に保管しなければならないという問題がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、優れた吸水性能を有し且つ再生資源を回収する際に容易に再生資源と分離可能な吸水剤の製造方法、及び、該吸水剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、吸水後において優れた自己分解特性を示す吸水性樹脂を用いれば、ポリマー分解剤などの外的手段に依ることなく、使用済み吸水剤と再生資源を容易に分離可能であることを見出し、鋭意研究の結果、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明者らは、従来の吸水剤と同等以上の優れた吸水性能を有し、且つ、吸水後において優れた自己分解特性を有する吸水性樹脂について研究を重ね、その結果、特定組成の水性溶媒で膨潤した吸水性樹脂を凍結乾燥することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の発明を包含する。
項1
アルコール及び水を含有する水性溶媒で膨潤した吸水性樹脂を凍結乾燥する工程を含む、吸水剤の製造方法。
項2
前記水性溶媒が、アルコールを1~25質量%含有する、項1に記載の吸水剤の製造方法。
項3
前記アルコールが、炭素数5以下の低級アルコールである、項1又は2に記載の吸水剤の製造方法。
項4
前記アルコールが、第2級アルコール又は第3級アルコールである、項1乃至3のいずれか1項に記載の吸水剤の製造方法。
項5
前記アルコールが、炭素数5以下の第3級アルコールである、項1又は2に記載の吸水剤の製造方法。
項6
多孔質構造を有しており、
下記式(1)で表されるゲル劣化指数が0.75以下である、吸水剤。
ゲル劣化指数=B/A (1)
(ここで、Aは初期のゲル強度(Pa)、Bは3日後のゲル強度(Pa)である)
項7
生理食塩水に対する、保水能が35~50g/g以上であり、加圧下吸水能が24~30ml/gであり、吸水速度が35~42秒である、請求項6に記載の吸水剤。
本発明の吸水剤の製造方法によれば、従来の吸水剤と同等以上の優れた吸水性能を有しつつ、容易に再生資源と分離可能な吸水剤を製造することができる。
本発明の吸水剤は、優れた吸水性能を維持しつつ、吸水後の分解が速い。
加圧下吸水能を測定するための装置の概略構成を示す模式図である。 各実施例及び比較例で得られた吸水剤を、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率200倍で観察した画像を示す。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、本明細書中において、「~」で結ばれる数値範囲は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「~」で結ぶことで特定の数値範囲を得ることができるものとする。
また、本明細書では、凍結乾燥される前後の吸水性樹脂を区別するため、凍結乾燥された吸水性樹脂を「吸水剤」と称する。
1.吸水剤の製造方法
本発明の吸水剤の製造方法は、アルコール及び水を含有する水性溶媒で膨潤した吸水性樹脂を凍結乾燥する工程(以下、「凍結乾燥工程」と略記する場合がある)を含む。
以下、本発明で用いられる吸水性樹脂について説明した後、凍結乾燥工程について説明する。
<吸水性樹脂>
本発明で用いられる吸水性樹脂の種類は特に限定されない。例えば、公知の吸水性樹脂を広く使用され得る。例えば、吸水性樹脂は、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉-アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリル酸重合体部分中和塩架橋物等が挙げられる。これらのなかでは、生産量及び製造コスト等の観点から、アクリル酸重合体部分中和塩架橋物が好ましい。
吸水性樹脂の形状は特に限定されず、例えば、球状、粉砕状、顆粒状、楕円球状、鱗片状、棒状、塊状等の種々の形状であってもよい。
吸水性樹脂の中位粒子径も特に限定されず、公知の吸水性樹脂と同様の範囲とすることができる。例えば、中位粒子径は、100~800μm、好ましくは200~600μm、より好ましくは250~550μm、特に好ましくは300~500μmとすることができる。
本発明の製造方法では、例えば、市販の吸水性樹脂を使用することができる。あるいは、本発明の製造方法では、吸水性樹脂を別途、製造することもできる。つまり、本発明の製造方法は、凍結乾燥工程に先立って、吸水性樹脂を製造する工程を具備することもできる。
吸水性樹脂の製造方法としては例えば、逆相懸濁重合法、水溶液重合法等を挙げることができる。中でも製造工程の簡便さ及び優れた吸水性能等を有する吸水性樹脂を得やすい点で、逆相懸濁重合法が好ましい。逆相懸濁重合とは、分散媒中、分散安定剤の存在下、前記分散媒に難溶性の重合性単量体を懸濁させて重合させる方法である。
重合反応は、分散媒中で行うことができる。分散媒は、炭化水素分散媒を用いることができる。炭化水素分散媒は、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、リグロイン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;並びに、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができる。これらの分散媒のなかでも、工業的に入手が容易であり、品質が安定しており、さらに安価であるため、n-ヘキサン、n-ヘプタン、及びシクロヘキサンが好適に用いられる。これらの分散媒は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。分散媒として、例えば、混合溶剤として知られる、Exxsol Heptane(エクソンモービル社製:ヘプタン及び異性体の炭化水素)やNappar6(エクソンモービル社製:シクロヘキサン及び異性体の炭化水素)などが使用できる。
重合性単量体としては、例えば、水溶性エチレン性不飽和単量体が用いられる。水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体;並びに、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体又はその4級化物等を挙げることができる。水溶性エチレン性不飽和単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水溶性エチレン性不飽和単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミドが好ましく用いられる。
なお、本明細書では「(メタ)アクリル」とは「アクリルもしくはメタクリル」を意味する。つまり、例えば、「(メタ)アクリル酸」との記載は「アクリル酸もしくはメタクリル酸」との記載と同義である。
水溶性エチレン性不飽和単量体として、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等の酸基を有する単量体を用いる場合、その酸基を予めアルカリ性中和剤によって中和してもよい。このようなアルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物、およびアンモニア等が挙げられ、水溶液の状態にして用いてもよい。中和度も特に限定されず、例えば、公知の逆相懸濁重合と同様とすることができる。
使用する水溶性エチレン性不飽和単量体は、水溶液とすることもできる。この水溶液の濃度は、特に限定はされないが、通常20質量%以上飽和濃度以下とすればよく、25~70質量%が好ましく、30~55質量%がより好ましい。
重合反応では必要に応じて増粘剤も使用することができる。増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸(部分)中和物、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等を用いることができる。
重合反応で使用する分散安定剤としては、例えば、界面活性剤を用いることができる。界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N-アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等を用いることができる。なかでも、単量体の分散安定性の面から、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が好ましい。これらの界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の使用量は、炭化水素分散媒中における、単量体の分散状態を良好に保ち、かつ使用量に見合う分散効果を得るため、重合反応で使用する水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.3~20質量部とされる。
また分散安定剤として、界面活性剤とともに高分子系分散剤を併用してもよい。使用できる高分子系分散剤としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。なかでも、単量体の分散安定性の面から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体等が好ましい。これらの高分子系分散剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
高分子系分散剤の使用量は、炭化水素分散媒中における、単量体の分散状態を良好に保ち、かつ使用量に見合う分散効果を得るため、重合反応で使用する水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは0.3~20質量部とされる。
重合反応では、例えば、公知の重合開始剤を広く使用することができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、過酸化水素等の過酸化物類;並びに、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス〔2-(N-フェニルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’-アゾビス〔2-(N-アリルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ化合物等を挙げることができる。
ラジカル重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、過硫酸カリウム等の過硫酸塩類と、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ化合物を併用することができる。
ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤とすることもできる。
重合反応で使用するラジカル重合開始剤の使用量は、例えば、使用する水溶性エチレン性不飽和単量体の総量に対して0.005~1モル%とすることができる。この場合、急激な重合反応が起こりにくく、また、反応時間も必要以上に長くなりにくい。
重合反応では、必要に応じて連鎖移動剤も使用できる。連鎖移動剤としては、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が例示される。
重合反応では、必要に応じて架橋剤を使用することができる。
重合反応で用いられる架橋剤としては、重合性不飽和基を2個以上有する化合物が挙げられる。架橋剤の具体例として、ポリオールのジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリオールとマレイン酸、フマール酸等の不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビスアクリルアミド;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル;トリレンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル;その他、アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N”-トリアリルイソシアヌレート、並びに、ジビニルベンゼン等が挙げられる。ポリオールのジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステルにおけるポリオールとしては、(ポリ)エチレングリコール[本明細書において、例えば、「ポリエチレングリコール」と「エチレングリコール」を合わせて「(ポリ)エチレングリコール」と表記する]、(ポリ)プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、(ポリ)グリセリン等が例示される。
また、架橋剤として、前記重合性不飽和基を2個以上有する化合物の他、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のグリシジル基含有化合物、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等も例示される。
架橋剤の使用量は、使用する水溶性エチレン性不飽和単量体の総量に対して1モル%以下とすることができ、好ましくは0.5モル%以下であり、より好ましくは0.001~0.25モル%である。架橋剤の使用量がこの範囲であれば、得られる吸水性樹脂の吸水性能が高まりやすい。
重合反応の温度は、ラジカル重合開始剤の種類及び使用量等に応じて適宜設定することができ、例えば、20~110℃とすればよく、好ましくは40~90℃とすることができる。反応時間は、例えば、0.1時間以上4時間以下で設定できる。
例えば、高分子分散安定剤が溶解した分散媒中に、必要に応じて中和処理した水溶性エチレン性不飽和単量体、増粘剤、ラジカル重合開始剤及び架橋剤が添加された水を加え、次いで、界面活性剤を加えることで重合反応を行うことができる。なお、各原料の添加する順序はこれに限定されない。
水溶性エチレン性不飽和単量体が重合して重合体が1次粒子として生成する。この工程では、例えば、水溶性エチレン性不飽和単量体の重合体が分散したスラリーが得られる。
逆相懸濁重合は、1段で行ってもよく、或いは、2段以上の多段で行っても良い。その段数は生産性を高める観点から、2~3段であることが好ましい。
2段以上の逆相懸濁重合を行う場合には、上記した方法で1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物に水溶性エチレン性不飽和単量体を添加して混合し、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行うことができる。
2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、水溶性エチレン性不飽和単量体の他に、ラジカル重合開始剤と、必要に応じて添加する架橋剤を、2段目以降の各段における逆相懸濁重合の際に添加する水溶性エチレン性不飽和単量体の量を基準として、前述した水溶性エチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して、上記した方法と同様の条件で逆相懸濁重合を行えばよい。
上記重合反応により吸水性樹脂を得ることができる。
重合反応の後、架橋剤を用いて吸水性樹脂を、いわゆる後架橋する工程(後架橋工程)を備えることもできる。なお、後架橋するための架橋剤を「後架橋剤」と称する。吸水性樹脂が、後架橋剤によって後架橋されることで、吸水性樹脂の表面近傍がさらに架橋されて、内部よりも表面近傍の架橋密度が高くなる。これにより、吸水性樹脂の強度及び吸水性能が特に高くなり得る。
後架橋剤は、例えば、重合反応の終了後、水溶性エチレン性不飽和単量体の重合体が分散した反応液に添加することができる。後架橋剤の添加時期は特に限定されず、例えば、公知の逆相懸濁重合法と同様の条件とすることができる。
後架橋剤は、反応性官能基を2個以上有する化合物を使用することができる。後架橋剤の具体例としては、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロール(ポリ)グリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のジグリシジル基含有化合物、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルが特に好ましい。後架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
後架橋剤の使用量は、その種類により異なるので一概には決定することができないが、通常、重合反応に使用した水溶性エチレン性不飽和単量体の総量1モルに対して、0.00001~0.01モル、好ましくは0.00005~0.005モル、さらに好ましくは、0.0001~0.002モルである。吸水性樹脂の表面架橋密度を十分に高め、吸水性樹脂のゲル強度を高める観点から、後架橋剤の使用量は0.00001モル以上が好ましく、吸水性樹脂の保水能を高くする観点から0.01モル以下が好ましい。
後架橋剤の添加時期は、重合終了後である。後架橋剤は、重合体が、重合体を構成する水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対し1~400質量部の範囲の水分を含んだ状態で添加することが好ましく、5~200質量部の範囲の水分を含んだ状態で添加することがより好ましく、10~100質量部の範囲の水分を含んだ状態で添加するのが特に好ましい。なお、水分の量は、重合反応系に含まれる水分と後架橋剤を添加する際に必要に応じて用いられる水分との合計量である。
後架橋反応の反応温度は、例えば、50~250℃とすることができ、60~180℃であることが好ましく、60~140℃であることがより好ましく、70~120℃であることが特に好ましい。反応時間は、反応温度、後架橋剤の種類及び使用量等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、1~300分間、好ましくは5~200分間である。
上記重合反応の後、又は、上記後架橋反応の後において、得られた吸水性樹脂を乾燥させる乾燥工程を実施してもよい。乾燥工程では、反応系に熱等のエネルギーを外部から加えることにより、反応系から水、炭化水素分散媒等を蒸留により除去する。乾燥工程は常圧下でも減圧下で行ってもよく、乾燥効率を高めるため、窒素等の気流下で行ってもよい。乾燥工程が常圧の場合、乾燥温度は70~250℃が好ましく、80~180℃がより好ましく、80~140℃が更に好ましく、90~130℃が特に好ましい。減圧下の場合においては、乾燥温度は40~160℃が好ましく、50~120℃がより好ましい。なお、前述の後架橋工程と乾燥工程は同時に実施することもできる。
乾燥して得られた吸水性樹脂は、適宜、篩等を使用した分級処理により、粒度調節を行うこともできる。
なお、重合反応以降、吸水性樹脂に諸性能を付与するために、目的に応じた各種添加剤を配合してもよい。このような添加剤としては、無機粉末、界面活性剤、酸化剤、還元剤、金属キレート剤、ラジカル連鎖禁止剤、酸化防止剤、抗菌剤、消臭剤等が挙げられる。例えば、吸水性樹脂100質量部に対し、無機粉末として0.05~5質量部の非晶質シリカを添加することで、吸水性樹脂の流動性を向上させることができる。
<凍結乾燥工程>
上述した吸水性樹脂をアルコール及び水を含有する水性溶媒で凍結乾燥することにより吸水剤を製造することができる。このようにして得られた吸水剤は、優れた吸水性能を有し、且つ、吸水後の分解も速い(即ち、自己分解特性に優れる)。
(水性溶媒)
凍結乾燥工程で使用される水性溶媒は、アルコール及び水を必須の成分として含有する。水性溶媒に含まれる水の割合は好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。水性溶媒は、界面活性剤などの添加剤や水以外の溶媒を含んでいてもよいが、実質的にアルコール及び水のみを含有することが好ましい。「実質的にアルコール及び水のみを含有する」とは、水性溶媒がアルコール及び水のみからなる場合だけでなく、水性溶媒が微量に添加剤及び/又は水以外の溶媒を含有する場合を含んでおり、具体的には、添加剤及び/又は水以外の溶媒を、0を超え1質量%以下含有する場合を含み、好ましくは添加剤及び/又は水以外の溶媒を、0を超え0.5質量%以下含有する場合を含む。
水性溶媒におけるアルコール含有量の下限値は、好ましくは1質量%であり、より好ましくは3質量%であり、さらに好ましくは5質量%である。また、その上限値は、好ましくは25質量%であり、より好ましくは20質量%であり、さらに好ましくは18質量%である。
このような水性溶媒を凍結乾燥工程で用いて得られる吸水剤は、吸水性能及び自己分解特性に優れる。
本発明で用いられるアルコールは、吸水剤に自己分解特性を付与できるものであれば、従来公知のアルコールを用いることができる。
この点、本発明の製造方法で得られる吸水剤が自己分解特性に優れる理由は明白ではないが、本発明者らは以下のように推測している。
吸水性樹脂をアルコール及び水を含有する水性溶媒で膨潤させた後、これを凍結乾燥させることにより、微小な孔を複数有する多孔質構造の吸水剤が得られ、この多孔質構造に起因して吸水剤が吸水後に分解し易くなると考えられる。特に、水性溶媒に含まれるアルコールは、吸水性樹脂を凍結させた際、その内部で大きな氷晶が形成されるのを阻害すると考えられる。そのため、本発明では、水だけを用いて吸水性樹脂を凍結乾燥した場合に比べ、より微小な孔を有する多孔質構造の吸水剤が得られると考えられ、その結果、本発明の製造方法で得られる吸水剤は、自己分解特性に優れると推測される。
本発明で用いられるアルコールは、炭素数が6以上の高級アルコールであってもよく、炭素数が5以下の低級アルコールであってもよい。また、アルコールは、水酸基を2つ以上有する多価アルコールであってもよく、水酸基を1つ有する1価のアルコールでもよい。
これらのなかでも、(1)水への溶解度が高い(2)蒸気圧が高い、という2つの条件のうち一方の条件を満たすアルコールを用いることが好ましく、2つの条件を全て満たすアルコールを用いることがより好ましい。水への溶解度が高いアルコールは、吸水性樹脂内で大きな氷晶の形成を阻害し易く、蒸気圧の高いアルコールは、吸水性樹脂を凍結乾燥させる際に昇華し易い。そのため、(1)及び/又は(2)の条件を満たすアルコールを用いることでより微小な孔を有する多孔質構造の吸水剤が得られると考えられる。
上記(1)の観点から、アルコールは、炭素数が5以下の低級アルコールであることが好ましい。炭素数が5以下の低級アルコールは、疎水成分が少なくなるため、水への溶解度が高い。また、アルコールの価数が小さくなるほど(水酸基が少ないほど)、沸点が降下する(蒸気圧が高くなる)。同様に、アルコールの級数が大きくなるほど、立体障害により水素結合が劣勢に働くため、沸点が降下する。そのため、上記(2)の観点から、アルコールは、1価のアルコールであることが好ましく、1価のアルコールのなかでも、特に、第3級又は第2級アルコールが好ましく、第3級アルコールがさらに好ましい。
これらの条件を総合的に考慮すると、アルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、プロパン-2-オール、2-ブタノール、tert-ブチルアルコール、n-ブタノール、n-ペンタノール、イソペンタノール等の炭素数5以下の1価アルコールであることが好ましく、プロパン-2-オール、ブタン-2-オール、tert-ブチルアルコール、2-ペンタノールなどの炭素数5以下の第2級又は第3級アルコールであることがより好ましく、tert-ブチルアルコール、2-メチル-2-ブタノール等の炭素数5以下の第3級アルコールが特に好ましい。
特に、tert-ブチルアルコールが特に好ましく用いられる。tert-ブチルアルコールを用いることにより、優れた吸水性能と優れた自己分解特性を兼備する吸水剤を得ることができる。
アルコールは1種単独で使用してもよいし、異なる2種以上の混合物を使用してもよい。
(膨潤方法)
吸水性樹脂に水性溶媒を吸水させる(即ち、吸水性樹脂を水性溶媒で膨潤させる)ことにより、水性溶媒によって体積が膨張した吸水性樹脂が得られる。吸水性樹脂を水性溶媒で膨潤させる方法は特に限定されず、例えば、公知の方法を広く採用することができる。
例えば、水性溶媒中と吸水性樹脂とを混合することで、吸水性樹脂を水性溶媒で膨潤させることができる。具体的には、水性溶媒中で吸水性樹脂を撹拌することで、吸水性樹脂を水性溶媒で膨潤させることができる。
吸水性樹脂を水性溶媒に吸水させた際において、吸水性樹脂の膨潤倍率は、使用する水性溶媒の種類や吸水性樹脂の種類に合せて適宜設定することができる。例えば、膨潤倍率の下限値は、1.5倍であり、好ましくは2倍であり、より好ましくは3倍である。また、膨潤倍率の上限値は、例えば、1000倍であり、好ましくは100倍であり、より好ましくは10倍である。なお、膨潤倍率は、膨潤処理に使用する水性溶媒及び吸水性樹脂の全質量を、吸水性樹脂の使用質量で除することで算出することができる。
(凍結乾燥)
凍結乾燥工程では、上述のようにアルコール及び水を含有する水性溶媒で膨潤した吸水性樹脂を凍結乾燥させる。「凍結乾燥」とは、水性溶媒で膨潤した吸水性樹脂を凍結し、この凍結した吸水性樹脂から実質的に全ての水性溶媒を昇華させることである。
膨潤した吸水性樹脂を凍結させる方法は、特に限定されず、膨潤した吸水性樹脂を所定時間、内部が低温雰囲気に維持された冷凍機内に静置して凍結させることが好ましい。
冷凍機内の温度は、使用する水性溶媒の凝固点よりも低温であればよく、例えば、その上限値は-10℃以下であり、好ましくは-20℃以下であり、より好ましくは-30℃以下である。また、その下限値は、例えば、-100℃であり、好ましくは-80℃である。
凍結した吸水性樹脂を乾燥させる方法(凍結した水性溶媒を実質的に全て昇華させる方法)は特に限定されず、凍結した吸水性樹脂を、所定時間、内部が減圧雰囲気下に維持された乾燥機内に静置することが好ましい。
乾燥機内の気圧は、大気圧よりも低ければよく、その上限値は、例えば、100Paであることが好ましく、50Paであることがより好ましく、20Paであることがさらに好ましい。また、その下限値は、1Paであることが好ましく、5Paであることがより好ましい。
乾燥機内の温度は、水性溶媒の凝固点よりも高温であればよく、例えば-20℃~10℃であり、好ましくは-10℃~0℃である。なお、乾燥機内の温度は、一定であってもよいし、段階的に昇温させることも可能である。具体的には、最初に凍結した吸水性樹脂を一次乾燥させ、次いで、一次乾燥よりも高い温度で二次乾燥を行うことができる。
なお、冷凍機と乾燥機は別の装置であってもよいが、冷凍機能と乾燥機能とを兼ね備えた1つの装置を用いることもできる。このような装置としては、後記するドライチャンバーを例示できる。
なお、本明細書において、「凍結乾燥(凍結させた吸水性樹脂から実質的に全ての水性溶媒を昇華させる)」とは、凍結させた吸水性樹脂に含まれる水性溶媒を完全に昇華させる場合だけでなく、僅かに水性溶媒が吸水剤に残留する場合を含んでおり、具体的には、乾燥済み吸水剤の全質量を基準として、水性溶媒が10質量%以下残留する場合を含み、好ましくは5質量%以下残留する場合を含み、より好ましくは1質量%以下残留する場合を含む。
本発明の製造方法で得られる吸水剤の中位粒子径は、100~2000μm、好ましくは200~1500μm、より好ましくは250~1200μm、特に好ましくは300~1000μmとすることができる。
本発明の製造方法で得られる吸水剤は、従来よりも微小な孔が形成された多孔質構造を有することから、優れた吸水性能を有しつつ、吸水後の吸水性樹脂の分解も速やかに進行し、自己分解特性に優れる。
2.吸水剤
次に、本発明の吸水剤について説明する。本発明の吸水剤は、下記式(1)
ゲル劣化指数=B/A (1)
(ここで、Aは初期のゲル強度(Pa)、Bは3日後のゲル強度(Pa)である)
により表されるゲル劣化指数が0.75以下である。
吸水剤の初期のゲル強度は700Pa以上であることが好ましい。初期のゲル強度が700Pa以上である場合、吸水剤は十分なゲル強度を有するため、各種用途への適用が容易になる。吸水剤を用いて作製した吸収体および吸収性物品に優れた使用感と吸収性能を付与し易いため、吸水剤の初期のゲル強度は800Pa以上がより好ましく、900Pa以上がさらに好ましい。
前記ゲル劣化指数が0.75以下であることで、吸水剤は、吸水後の分解が速く、自己分解特性にも優れる。このような吸水剤を含む吸収性物品等は、リサイクル及び廃棄等がしやすく、エコフレンドリーの観点から有利である。前記ゲル劣化指数は、0.7以下であることがより好ましい。また、前記ゲル劣化指数の下限値は、例えば、0.3とすることができる。
また、吸収体又は吸収性物品がより良い吸収性能を得やすい観点から、吸水剤の生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液)に対する保水能は35~50g/gが好ましく、生理食塩水に対する加圧下吸水能は24~30ml/gが好ましく、生理食塩水に対する吸水速度は35~42秒が好ましい。
本発明の吸水剤は、多孔質構造を有しており、前記ゲル劣化指数が0.75以下を満たす限りは、その製造方法は特に限定されない。例えば、前述のように、逆相懸濁重合によって吸水性樹脂を合成し、得られた吸水性樹脂を、前記凍結乾燥工程と同様の条件で凍結乾燥させることで、前記ゲル劣化指数が0.75以下を満たす多孔質構造の吸水剤を製造できる。
吸水剤のその他の構成、例えば、形状及び中位粒子径等は、前述の吸水剤の製造方法の項で説明した吸水剤とすべて同様とすることができる。
3.吸収性物品
本発明の製造方法で得られた吸水剤又は本発明の吸水剤を用いて、各種吸収性物品を形成することができる。吸収性物品は、吸水剤を含む吸収体を備える。具体的には、吸水剤と、親水性繊維とで吸収性物品を形成することができる。
親水性繊維は、例えば、セルロース繊維、人工セルロース繊維等が挙げられる。なお、親水性繊維には、本発明の目的が阻害されない範囲内であれば、疎水性を有する合成繊維が含有されていてもよい。
吸収体における吸水剤の含有量は、尿等の体液を十分に吸収し、快適な装着感を付与する観点から、通常40質量%程度以上とすればよく、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。また、吸収体における吸水剤の含有量は、得られる吸収体の形態保持性を高めるために、親水性繊維等を適量含有させることを考慮して、通常98質量%程度以下とすればよく、好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。
吸収体の構造は特に限定されず、例えば、公知と同様の構造とすることができる。吸収体を、例えば、液体透過性シートと、液体不透過性シートとの間に保持することにより、吸収性物品とすることができる。
液体透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の繊維からなる、エアスルー型、スパンボンド型、ケミカルボンド型、ニードルパンチ型等の不織布等が挙げられる。
液体不透過性シートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂からなる合成樹脂フィルム等が挙げられる。
吸収性物品の種類は、特に限定されない。例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パッド等の衛生材料、ペット用の尿吸収材料等をはじめ、パッキング材等の土木建築用資材、ドリップ吸収剤、保冷剤等の食品鮮度保持用材料、土壌用保水材等の農園芸用物品、止水材等を挙げることができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
(製造例1;吸水性樹脂の製造)
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径110mmで2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてn-ヘプタン300gをとり、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.74g、及び、界面活性剤としてHLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370)0.74gを添加し、攪拌しつつ加温溶解した後、55℃まで冷却した。
一方、500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)をとり、外部より冷却しつつ、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液102.2gを滴下して75モル%の中和を行った。そこへ、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HEC AW-15F)、アゾ系化合物として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.055g(0.204ミリモル)、過硫酸塩として過硫酸カリウム0.009g(0.034ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.006g(0.037ミリモル)及びイオン交換水48.0gを加えて溶解し、モノマー水溶液を調製した。
該モノマー水溶液を、高分子系分散剤及び界面活性剤が溶解した炭化水素分散媒が投入されている前記セパラブルフラスコに添加した。セパラブルフラスコ内を攪拌しながら、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を10分間行うことで第1段目の反応混合物を得た。
一方、別の500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液143.1gを滴下して75モル%の中和を行った。そこへ、アゾ系化合物として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.077g(0.285ミリモル)、過酸化物として過硫酸カリウム0.013g(0.048ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.009g(0.052ミリモル)とイオン交換水12.5gを加えて溶解し、第2段目の重合反応用のモノマー水溶液を調製した。
前記の第1段目の反応混合物を25℃に冷却した後、前記第2段目のモノマー水溶液の全量を、第1段目の反応混合物に添加して、系内を窒素で十分に置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第2段目の重合反応を5分間行うことで第2段目の反応混合物を得た。
第2段目の重合後、125℃の油浴で反応液を昇温し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら274gの水を系外へ抜き出した。その後、キレート剤としてジエチレントリアミン五酢酸・五ナトリウム塩の4.5%水溶液5.89g(0.53ミリモル)、及び後架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液4.42g(0.51ミリモル)を添加し、80℃で2時間保持した後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥させた。得られた重合物を目開き850μmの篩に通過させ、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂231.2gを得た。吸水性樹脂の中位粒子径は320μm、水分率は7.3%であった。取得した吸水性樹脂に対して0.2質量%の非晶質シリカ(エボニックデグサジャパン株式会社製、カープレックス#80)を混合し、以下の実施例及び比較例に用いた。
(実施例1)
回転子入り300mLビーカーに、水76gとtert-ブチルアルコール4gとを入れ、80gの水性溶媒を調製した後、マグネチックスターラー(小池精密機器製作所社製 M-20G)(スターラーチップ:8mm×30mm、リング無し)にて600rpmで攪拌しながら、25℃にて、製造例1で製造した吸水性樹脂20gを、水性溶媒(80g)に投入した。渦が消えて液面が水平になる直前に水性溶媒の攪拌を止めて内容物を取り出し、水性溶媒で5倍に膨潤した吸水性樹脂100gを得た。この際、吸水性樹脂が水性溶媒を完全に吸水するまでに12秒要した。この吸水性樹脂を次のように凍結乾燥した。
まず、膨潤した吸水性樹脂をSUSバット(24cm×24cm)に均一に敷き詰め、-40℃のドライチャンバー(EYERA社「DRC-1000」)内で20分間凍結した。その後、真空ポンプ(ULVAC社「OMC-200」)を用い、ドライチャンバー内を10Pa以下とした後、ドライチャンバーを-10℃に設定した。
ドライチャンバー内の吸水性樹脂の温度が-10℃に到達して1時間後、ドライチャンバー内を20℃とし、二次乾燥を5時間行った。これにより、多孔質構造を有する吸水剤20gを得た。
(実施例2)
水性溶媒を水72gとtert-ブチルアルコール8g使用して調製したこと以外は、実施例1と同様に多孔質構造を有する吸水剤20gを得た。
(実施例3)
水性溶媒を水68gとtert-ブチルアルコール12g使用して調製したこと以外は、実施例1と同様に多孔質構造を有する吸水剤20gを得た。
(実施例4)
水性溶媒を水64gとtert-ブチルアルコール16g使用して調製したこと以外は、実施例1と同様に多孔質構造を有する吸水剤20gを得た。なお、実施例4で得られた吸水剤のゲル強度は、ネオカードメーターの測定限界値を下回ったため測定不能であった。そのため、吸水剤のゲル強度は500Pa未満と推定し、ゲル劣化指数もこの推定値に基づいて算出した。
(比較例1)
製造例1で得られた吸水性樹脂100gを、膨潤及び凍結乾燥をせずに、そのまま使用した。
(比較例2)
tert-ブチルアルコールを使用せずに水性溶媒を水80gのみとしたこと以外は、実施例1と同様に多孔質構造を有する吸水剤20gを得た。
(比較例3)
水性溶媒を水72gとジオキサン8g使用して調製したこと以外は、実施例1と同様に多孔質構造を有する吸水剤20gを得た。
(評価方法)
各実施例及び比較例で得られた吸水剤について、ゲル強度(初期、1日後及び3日後)、保水能、加圧下吸水能、吸水速度及び中位粒子径の測定を、以下のように行った。
[ゲル強度測定とゲル劣化指数の算出]
100mlビーカーに0.02%ビタミンC入りの生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水溶液)49gを投入し、マグネチックスターラー(小池精密機器製作所社製 M-20G)(スターラーチップ:8mm×30mm、リング無し)を使用し600rpmで攪拌する。この攪拌により生じる渦中に吸水剤1.00gを投入した後、渦が消えて液面が水平になるまで攪拌させた。このように作製した5倍膨潤ゲルを、室温(25℃)で1時間(初期値)、並びに恒温恒湿器(ESPEC社製 LHU-113)(温度:40℃、湿度:60%)で3日間(72時間)放置後、ネオカードメーター(アイテクノエンジニアリング社製 ME-303)によりゲル強度測定を行った。室温(25℃)で1時間放置したゲルのゲル強度が前記式(1)のA(初期のゲル強度(Pa))に相当し、恒温恒湿器で3日間放置したゲルのゲル強度が前記式(1)のB(3日後のゲル強度(Pa))に相当する。この測定結果に基づいて上述した式(1)からゲル劣化指数を算出した。
なお、前記ネオカードメーターは直径16mmの感圧軸を用いる。ネオカードメーターにより、400gの荷重をゲルにかけながら1inch/21secの速度で粘調性質を測定することで、ゲル強度を計測することができる。
[保水能測定]
評価用の吸水剤2.00gを綿袋内に入れた後、生理食塩水500gを綿袋内に流し込むと同時に全体を浸漬させた。綿袋の上部を輪ゴムで縛り、30分間浸漬後、遠心分離機(コクサン社製 H-122)(167G)で1分間脱水し、重量Wを測定した。また、綿袋内に試料を入れないで同様の操作を実施して、綿袋の空重量Wを測定した。そして、以下の式より保水能を算出した。
保水能(g/g)=(W-W)/2
[加圧下吸水能測定]
図1は、吸水剤の加圧下吸水能測定に使用した測定装置の模式図である。図1に示す測定装置Yを用いて測定した。図1に示す測定装置Yは、ビュレット部1と導管2、測定台3、及び、測定台3上に置かれた測定部4からなる。ビュレット部1は、ビュレット10の上部にゴム栓14、下部に空気導入管11とコック12が連結されており、さらに、空気導入管11は先端にコック13を有している。ビュレット部1と測定台3の間には、導管2が取り付けられている。導管2の内径は6mmである。測定台3の中央部には、直径2mmの穴があいており、導管2が連結されている。測定部4は、円筒40(プレキシグラス製)と、この円筒40の底部に接着されたナイロンメッシュ41と、重り42とを有している。円筒40の内径は、20mmである。ナイロンメッシュ41の目開きは、75μm(200メッシュ)である。そして、測定時にはナイロンメッシュ41上に吸水剤5が均一に撒布されている。重り42は、直径19mm、質量119.6gである。この重り42は、吸水剤5上に置かれ、吸水剤5に対して4.14kPaの荷重を加えることができるようになっている。
このような構成の測定装置Yでは、まずビュレット部1のコック12とコック13を閉め、25℃に調節された生理食塩水をビュレット10上部から入れ、ゴム栓14でビュレット上部の栓をした後、ビュレット部1のコック12、コック13を開ける。次に、測定台3中心部における導管2の先端と空気導入管11の空気導入口とが同じ高さになるように測定台3の高さの調整を行う。
一方、円筒40のナイロンメッシュ41上に0.10gの吸水剤5を均一に撒布して、この吸水剤5上に重り42を置く。測定部4は、その中心部が測定台3中心部の導管口に一致するようにして置く。
吸水剤5が吸水し始めた時点から継続的に、ビュレット10内の生理食塩水の減少量(吸水剤5が吸水した生理食塩水量)W(mL)を読み取る。吸水開始から60分間経過後における吸水量を吸水剤5の加圧下での生理食塩水に対する吸水能として、次式により求めた。
加圧下吸水能(mL/g)=W/0.1
[吸水速度測定(Vortex法)]
回転子(8mm×30mm、リング無し)入り100mlビ-カ-に、生理食塩水50gを加え、恒温槽内で25℃にて保持した。次いで、評価用の吸水剤2.00gを、600rpmで攪拌した生理食塩水の渦中に投入し、同時にストップウォッチによる計測を開始した。渦が消えて液面が水平になった時点を終点として、それまでの時間(秒)を吸水速度とした。
[粒径測定]
評価用の吸水剤5.00gをロボットシフター(セイシン企業社製「RPS-205」)(周波数80Hz、2分)を用いて測定した。使用したふるいは、850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、180μm及び75μmとした。
Figure 0007164942000001
表1は、各実施例及び比較例で得られた吸水剤の評価結果である。表1中、TBAはtert-ブチルアルコール、DOはジオキサンを表す。
[評価]
表1に示すように、実施例1乃至4で得られた吸水剤は、凍結乾燥前の吸水性樹脂(比較例1)と同等以上の優れた吸水性能を有し且つ優れた自己分解特性を有する。
また、図2(a)及び(c)はそれぞれ、実施例3及び比較例2で得られた吸水剤を倍率200倍で観察したSEM画像を示し、図2(b)は、比較例1で得られた吸水性樹脂を倍率200倍で観察したSEM画像を示す。これらの図から、実施例3の吸水剤は、微小なサイズの孔を有する多孔質構造であることが分かる。
Y 測定装置
1 ビュレット部
2 導管
3 測定台
4 測定部
5 吸水剤
10 ビュレット
11 空気導入管
12 コック
13 コック
14 ゴム栓
40 円筒
41 ナイロンメッシュ
42 重り

Claims (8)

  1. 吸水性樹脂を水性溶媒で吸水させることにより膨潤させ、膨潤した吸水性樹脂を凍結乾燥することで前記水性溶媒を昇華させ、下記式(1)で表されるゲル劣化指数を0.75以下とする工程を含み、
    前記水性溶媒が、1~25質量%のアルコール及び前記アルコールの溶媒である水を60質量%以上含み、
    前記吸水性樹脂が、アクリル酸重合体部分中和塩架橋物である、吸水剤の製造方法。
    ゲル劣化指数=B/A (1)
    (ここで、Aは初期のゲル強度(Pa)、Bは3日後のゲル強度(Pa)である)
  2. 吸水性樹脂を水性溶媒で吸水させることにより膨潤させ、膨潤した吸水性樹脂を凍結乾燥することで前記水性溶媒を昇華させる工程を含み、
    前記吸水性樹脂が、アクリル酸重合体部分中和塩架橋物であり、
    前記水性溶媒が、1~25質量%のアルコール及び前記アルコールの溶媒である水を60質量%以上含み、
    前記水性溶媒が、アルコールを1~25質量%含有する、吸水剤の製造方法。
  3. 前記アルコールが、炭素数5以下の低級アルコールである、請求項1又は2に記載の吸水剤の製造方法。
  4. 前記アルコールが、第2級アルコール又は第3級アルコールである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の吸水剤の製造方法。
  5. 前記アルコールが、炭素数5以下の第3級アルコールである、請求項1又は2に記載の吸水剤の製造方法。
  6. アクリル酸重合体部分中和塩架橋物である吸水性樹脂を含み、
    下記式(1)で表されるゲル劣化指数が0.75以下を満たす多孔質構造を有し、生理食塩水に対する保水能が35~38g/gであり、加圧下吸水能が24~30ml/gであり、吸水速度が35~55秒である、吸水剤。
    ゲル劣化指数=B/A (1)
    (ここで、Aは初期のゲル強度(Pa)、Bは3日後のゲル強度(Pa)である)
  7. アクリル酸重合体部分中和塩架橋物である吸水性樹脂を含み、
    下記式(1)で表されるゲル劣化指数が0.75以下を満たす多孔質構造を有し、
    生理食塩水に対する保水能が35~50g/gであり、加圧下吸水能が24~30ml/gであり、吸水速度が35~55秒であり、中位粒子径が420~480μmである、吸水剤。
    ゲル劣化指数=B/A (1)
    (ここで、Aは初期のゲル強度(Pa)、Bは3日後のゲル強度(Pa)である)
  8. アクリル酸重合体部分中和塩架橋物である吸水性樹脂(但し、発泡剤、親油性界面活性剤、及びポリエトキシル化親水性界面活性剤を含む粒状高吸収性ポリマーを除く)を含み、
    下記式(1)で表されるゲル劣化指数が0.75以下を満たす多孔質構造を有し、
    生理食塩水に対する保水能が35~50g/gであり、加圧下吸水能が24~30ml/gであり、吸水速度が35~55秒である、吸水剤。
    ゲル劣化指数=B/A (1)
    (ここで、Aは初期のゲル強度(Pa)、Bは3日後のゲル強度(Pa)である)
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