JP7164766B2 - 電解鉄箔 - Google Patents
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Description
このうち圧延により20μm未満の鉄箔を製造する場合には、連続生産が困難でありかつ圧延の際に異物や不純物を巻き込みやすく品質的に課題が多いことに加え、加工硬化することにより得られた鉄箔の伸びが得られない可能性がある。一方で電解めっきにより鉄箔を製造することにより、伸びや強度を有し、集電体に適用可能な程度の厚みの鉄箔を製造可能であることが考えられる。
なお、上記(1)の電解鉄箔において、(2)両面における前記(110)面の結晶配向指数が0.2以上であることが好ましい。
また、上記(1)または(2)の電解鉄箔において、(3)少なくともどちらか一方の面において、表面の結晶粒の平均結晶粒径が0.66μm以上であることが好ましい。
また、上記(1)~(3)いずれかの電解鉄箔において、(4)伸びが1.6%以上であることが好ましい。
上記(1)~(4)いずれかの電解鉄箔において、(5)引張強さが130MPa以上であることが好ましい。
また、本発明における電池集電体用の電解鉄箔は、(6)上記(1)~(5)のいずれかの電解鉄箔からなるものであることが好ましい。
さらに、本発明における非水系電池集電体用の電解鉄箔は、(7)上記(1)~(6)のいずれかの電解鉄箔からなるものであることが好ましい。
以下、本発明の電解鉄箔を実施するための実施形態について説明する。
本実施形態の電解鉄箔10は、電池負極の集電体に適用されるほか、電池正極の集電体にも適用され得る。電池の種類としては二次電池であっても一次電池であってもよい。非水系二次電池として、例えばリチウム二次電池、ナトリウム二次電池、マグネシウム二次電池、全固体電池などが挙げられる。
すなわち本実施形態においては、集電体に適用可能な程度の厚みを有し、且つ伸びや強度を有する鉄箔を提供することを目的とする。
一方で電解鉄箔10において少なくともどちらか一方の面における鉄の(110)面の結晶子径を45nm以上に制御することにより、目的とする伸びと強度を有することが可能となる。よって、本実施形態においては電解鉄箔10において上記結晶子径を45nm以上とすることとした。
なお上記結晶子径の上限としては、好ましくは160nm以下、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは120nm以下である。
D=K×λ/(β×cosθ)
D:結晶子径
K:Scherrer定数(K=0.94を使用)
λ:使用X線の波長
β:結晶子の回折X線の半値幅
θ:ブラッグ角
すなわち結晶配向指数としては、十分な伸びを得るという観点から、電解鉄箔における両面において、BCC構造のすべり面である(110)面の結晶配向指数が0.2以上であることが好ましい。なお、伸びを高くするという点においては、少なくともどちらか一方の面における(110)面の結晶配向指数が、0.4以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.7以上である。なお、(110)面の結晶配向指数の上限は特になく、通常3.0以下である。
また、より伸びを高くするという観点から、少なくともどちらか一方の面における(220)面の結晶配向指数が、0.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.3以上、さらにより好ましくは1.5以上である。より伸びを重視する場合には、両面における(220)面の結晶配向指数が1.3以上であることが特に好ましい。なお、(220)面の結晶配向指数の上限は特になく、通常4.0以下である。
回折強度のデータとしては、X線源の管球がCu(Kα)の場合、回折角度(2θ)が20~100°の範囲内で出現されるとされる、(110)面、(200)面、(211)面及び(220)面のものを用いた。
(110)面の結晶配向指数=IF(110)/IFR(110)
上記式中、IF(110)は、(110)面からのX線回折強度比であり、
IFR(110)は、標準鉄(粉末鉄)の理論X線回折強度比である。
IF(110)=I(110)/[I(110)+I(200)+I(211)+I(220)]
IFR(110)=IR(110)/[IR(110)+IR(200)+IR(211)+IR(220)]
上記式中、
I(hkl)は、(hkl)面からのX線回折強度であり、
IR(hkl)は、標準鉄粉末のICDD PDF-2 2014のデータベースの01-080-3816に記載されている(hkl)面からのX線回折強度である。
IF(200)=I(200)/[I(110)+I(200)+I(211)+I(220)]
IFR(200)=IR(200)/[IR(110)+IR(200)+IR(211)+IR(220)]
IF(211)=I(211)/[I(110)+I(200)+I(211)+I(220)]
IFR(211)=IR(211)/[IR(110)+IR(200)+IR(211)+IR(220)]
IF(220)=I(220)/[I(110)+I(200)+I(211)+I(220)]
IFR(220)=IR(220)/[IR(110)+IR(200)+IR(211)+IR(220)]
なお上記結晶子径の上限としては、好ましくは160nm以下、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは120nm以下である。
本実施形態の電解鉄箔10は、純鉄であってもよいし、本発明の課題を解決し得る限りにおいて、副成分として鉄以外の金属を1種又は2種以上含有していてもよいし不可避の不純物を含んでいてもよい。ここで純鉄としては、鉄以外の金属元素の含有率が0.1重量%以下であることを意味するものとする。鉄以外の金属元素の含有率が0.1重量%以下とすることにより、一般的に流通する圧延鉄箔(圧延鋼箔とも称する)と比して、錆の発生が少なくなる。そのため、輸送保管時などの耐食性・防錆性に優れるという利点がある。
また、本発明において鉄箔としては、箔中における鉄の含有率が80重量%以上のものと定義する。鉄の含有率を80重量%以上とし、副成分として鉄以外の金属を含有させることにより、鉄としての特性(強度や伸び)を有しつつ、強度の向上やコスト面の両立という観点から、好ましい。
なお本実施形態においては、電解鉄箔に含まれる全ての金属を100重量%とした場合、鉄とニッケル以外の金属含有率が0.1重量%以下であることが好ましい。
本実施形態において、電解鉄箔に含まれる鉄、及び、鉄以外の金属の含有量を得る方法としては、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法等を挙げることができる。また、得られた各金属の含有量より、金属含有率を算出することが可能である。
なお本実施形態の電解鉄箔の製造時において、電解箔を支持する支持体(基材)に接していた面を基材面と称し、他方の面を電解面と称して以下説明する。
なお、上記した「光沢」又は「無光沢」は、目視外観上の評価に依拠しており厳密な数値での区分けは困難である。さらには後述する浴温などの他のパラメータに依っても光沢度合いが変化し得る。したがって、本実施形態で用いる「光沢」「無光沢」は、あくまでも光沢剤の有無に着目した場合の定義付けとする。
なお本実施形態の電解鉄箔10において、基材面及び電解面におけるSa[μm](算術平均高さ)、Sz[μm](最大高さ)の各値は、以下の値を有することが好ましい。なお本実施形態における三次元表面性状パラメータは、ISO-25178-2:2012(対応JIS B 0681-2:2018)に従って測定された値をいうものとする。
Sa ・・・1.0μm未満、より好ましくは0.6μm未満
Sz ・・・10.0μm未満、より好ましくは8.0μm未満
ここで、Sa、Szの下限値の制限は特にないが、通常、Saは0.1μm以上、Szは0.8μm以上、が適用される。
また、活物質密着性の観点から、本実施形態の電解鉄箔10において、基材面及び電解面の少なくともいずれかの面におけるSdq(二乗平均平方根勾配)、Sdr(展開界面面積率)の各値は、以下の値を有することが好ましい。なお本実施形態における三次元表面性状パラメータは、ISO-25178-2:2012(対応JIS B 0681-2:2018)に従って測定された値をいうものとする。
Sdq・・・0.06以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.20以上
Sdr・・・0.20%以上、より好ましくは0.50%以上、さらに好ましくは1.00%以上
集電体として用いる場合、活物質密着の観点から、めっきの結晶粒によって形成される微細なピッチの凹凸がある方が好ましく、特にSdqおよびSdrの値を上記範囲とすることにより、めっきの結晶粒の凹凸を適した形状とすることができる。特に少なくともいずれかの面におけるSdrを1.00%以上とすることで、より密着性の向上が見込まれる。
Sdqの上限値は特になく、1未満となる。Sdrの上限値は特に制限されないが、極端に大きすぎる場合には、凹凸が高すぎるおそれがあるため、通常50%未満である。
なお、本実施形態の電解鉄箔10における三次元表面性状パラメータSa、Sz、Sdq、Sdrを上記した値の範囲内に制御するためには、後述するようにめっき条件を制御する方法や、支持体の表面を研磨する方法、得られた電解鉄箔の表面をエッチング処理や電解研磨などによって凹凸を制御する方法等を挙げることが可能である。
本実施形態における電解鉄箔10の厚みは20μm未満であることを特徴とする。20μm以上の厚みでは、そもそも薄膜化による高容量化を目指す背景から設計思想に合わず、さらには公知の圧延箔等に対してコスト的なメリットが減退してしまうからである。
なお、本実施形態における電解鉄箔10の厚みの上限に関しては、18μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、12μm以下であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態における電解鉄箔10の厚みの下限に関しては、5μm以上であることがより好ましい。
すなわち金属箔を集電体として製造する工程中において、乾燥温度が200℃以上(400℃以下)に到達する場合があるが、従来集電体材料として用いられている銅箔はこの乾燥温度により強度低下の可能性があった。
鉄の材料特性として上記加熱温度帯による強度低下は低いため、本実施形態の電解鉄箔10を集電体として用いた場合には、上述のような製造時および取扱い時(電池組立時や集電体として使用する際)の加熱における強度低下を抑制できる。
本実施形態の電解鉄箔10が製造される際には、チタン板(Ti基材)或いはステンレス板等からなる支持体上に、電解鉄めっきが形成された後、上記支持体からめっき層を公知の方法により剥離することにより電解鉄箔が得られる。
なお支持体の具体的な材質としては、上記したチタン板或いはステンレス板に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない限度において他の公知の金属材を適用できる。
なお以下において、チタン板をTi基材とも称するものとする。
[高濃度鉄めっき条件]
・浴組成
塩化鉄四水和物:500~1000g/L
・温度:60~110℃
・pH:3.0以下
・撹拌:空気撹拌もしくは噴流撹拌
・電流密度:3~100A/dm2
なお上記pHの調整は、塩酸や硫酸などを用いることが可能である。
・浴組成
塩化鉄四水和物:200~500g/L
塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化ベリリウム、塩化マンガン、塩化カリウム、塩化クロム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化チタンのいずれか又は複数の合計量:20~300g/L
・温度:25~110℃
・pH:5.0以下
・撹拌:空気撹拌もしくは噴流撹拌
・電流密度:3~100A/dm2
・浴組成
塩化鉄四水和物:500~1000g/L
塩化ニッケル六水和物 又は 硫酸ニッケル六水和物:10~400g/L
・温度:60~110℃
・pH:3.0以下
・撹拌:空気撹拌もしくは噴流撹拌
・電流密度:3~100A/dm2
まず、めっき層が形成される支持体に研磨、清拭、水洗、酸洗等の前処理を施した後、支持体を上記に例示しためっき浴に浸漬して、支持体上に電解鉄めっき層を形成させる。形成されためっき層を乾燥させた後剥離して電解鉄箔10を得る。
支持体からの電解鉄箔の剥離前、または剥離後において、電解鉄箔の最表層表面に、本発明の課題を解決できる範囲内において、粗化処理や防錆処理などを施してもよい。また、カーボンコートなどの導電性付与のための公知の処理を施してもよい。
例えば、電解鉄箔の両面にニッケル粗化層や銅粗化層を設けることにより、集電体として用いる際の活物質の密着性能を向上させることができるため好ましい。なお、粗化層については例えば国際公開WO2020/017655号公報等に開示されているため、ここでは詳細な説明は省略する。
以下に、実施例を挙げて本発明について、より具体的に説明する。まず、実施例における測定方法について記載する。
結晶子径の測定のため、X線回折装置(株式会社リガク製、全自動多目的水平型X線回折装置SmartLab)を用いてX線回折を行った。
<装置構成>
・X線源:CuKα
・ゴニオメータ半径:300nm
・光学系:集中法
(入射側スリット系)
・ソーラースリット:5°
・長手制限スリット:5mm
・発散スリット:2/3°
(受光側スリット系)
・散乱スリット:2/3°
・ソーラースリット:5°
・受光スリット:0.3mm
・単色化法:カウンターモノクロメーター法
・検出器:シンチレーションカウンタ
<測定パラメータ>
・管電圧-管電流:45Kv 200mA
・走査軸:2θ/θ
・走査モード:連続
・測定範囲:2θ 20~100°
・走査速度:10°/min
・ステップ:0.05°
なお、鉄の(110)面のピークとして、2θ=43~46度の間に現れるピークを用いた。求めた結晶子径を表2に示した。
D=K×λ/(β×cosθ)
D:結晶子径
K:Scherrer定数(K=0.94を使用)
λ:使用X線の波長
β:結晶子の回折X線の半値幅
θ:ブラッグ角
電解鉄箔の結晶配向指数は、X線回折装置により得られた測定値に対して、WillsonとRogersの方法を用いて算出した。結果を表2~3に示した。
得られた電解箔において、以下のように引張強さと伸びの測定を行った。まず、株式会社ダンベル製のSD型レバー式試料裁断器(型式:SDL-200)により、JIS K6251-4に準じたカッター(型式:SDK-400)を用いて金属片の打ち抜きを行った。次に、この試験片で、金属試験片のJIS規格であるJIS Z 2241に準じた引張試験方法に準拠して引張試験を行った。試験片の模式図を図2に示す。
なお引張試験の装置としては引張試験機(ORIENTEC製 万能材料試験機 テンシロンRTC-1350A)を用いた。また測定条件としては、室温で、引張速度10mm/minの条件で行った。
伸びの算出式は下記の式で行った。
(試験機の移動距離(ストローク))/(原標点間距離)×100
得られた電解箔においてマイクロメーターを用いて厚みの測定を行った。得られた値を表1の「実測厚み」の欄に示した。
得られた電解箔において、支持体に接していた面を基材面、他方の面を電解面とし、それぞれの面の表面形状を測定した。具体的には、オリンパス社製レーザー顕微鏡OLS5000を用いて三次元表面性状パラメータSa[μm](算術平均高さ)の値を計測した。なお本実施形態における上記三次元表面性状パラメータは、ISO-25178-2:2012(対応JIS B 0681-2:2018)に従って測定された値をいうものとする。
測定方法としては、対物レンズ50倍(レンズ名称:MPLAPON50XLEXT)の条件で3視野(1視野258μm×258μm)のスキャンを行い、解析用データを得た。次いで、得られた解析用データについて、解析アプリケーションを用い、自動補正処理であるノイズ除去および傾き補正を行った。その後に、面粗さ計測のアイコンをクリックして解析を行い、面粗さの各種パラメータを得た(表2に記載したSaの値は3視野の平均としている)。なお,解析におけるフィルター条件(F演算、Sフィルター、Lフィルター)は、すべては設定せずに、無しの条件で解析を行った。その結果を表2に示す。
表面の結晶粒径の測定は、以下の装置及び条件により行った。
FIB装置:日本電子株式会社製、集束イオンビーム加工観察装置(FIB)
イオンビーム加速電圧:30kV
エミッション電流:2.0μA
表面の平均結晶粒径の算出は、JIS G 0551に記載の切断法による結晶粒内を横切る試験線の1結晶粒当たりの平均線分長を求める要領にて行った。まずFIBの断面加工により得られた電解鉄箔の断面画像上に結晶粒を横切る長さL(10.0μm~40.0μm)の直線の試験線を平面方向に電解面側および基材面側の表層からそれぞれ0.5μmの位置に引き、直線の試験線が横切った結晶粒数nLを計数した。なお、上記試験線の端において、上記試験線が結晶粒内で終了する場合、結晶粒を1/2個として計数した。さらに、以下の式を用いて平均結晶粒径
を求めた。但し、双晶は無視して一つの結晶粒として計数している。
なお図3に実施例1における平均結晶粒径の求め方の図を示す。実施例1においては、長さL=12.9μm、電解面における結晶粒数nL=15個、基材面における結晶粒数nL=21個であった。よって、電解面側の及び基材面側の結晶粒径は下記式よりそれぞれ0.86μm、0.61μmと算出された。結果を表5に示す。
負極活物質として人造黒鉛(粒径:約10μm)、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用い、負極活物質及び結着剤をそれぞれ97重量%および3重量%とした混合物にN-メチルピロリドン(NMP)を適量加えて粘度を調整した負極合剤ペーストを作製した。この負極合剤ペーストを電解箔の電解面側に塗布して乾燥した。この時、負極活物質及び結着剤の合計の質量が、乾燥後において5mg/cm2となるように塗布した。その後、理研精機株式会社製手動油圧ポンプ(型式:P-1B-041)を用いて1000kg/cm2でプレスすることにより負極板を作製した。
活物質密着性評価は、上記のようにして作製した負極板を、塗布した面を外側にして180°折り曲げ試験を行い、負極活物質の剥離の有無の確認を行った。結果を表5に示す。
折り曲げ部において、
活物質の剥離がない場合をA+
折り曲げ部において目視で基材の露出は確認できないが一部のみ剥離がある場合をA
折り曲げ部において目視で基材の露出を確認できる状態で一部剥離がある場合をB
折り曲げ部およびその周辺において活物質が剥離し基材の露出が目視で確認された場合をCとした。
支持体上に電解鉄めっきを形成した。具体的にはまず、電解鉄箔がその上面に形成される支持体としてTi基材を用い、当該Ti基材の表面に対して研磨を行い、Ti基材の表面粗さSaを表1の値となるようにした。研磨の方向は、Ti基材の長手方向(連続製造の際の進行方向、縦方向)に概ね平行に行った。このTi基材に対して7wt%硫酸を用いて酸洗及び水洗などの公知の前処理を施した。次いで前処理したTi基材を以下に示す鉄めっき浴に含浸・電析し、電解箔として表1に示す厚みの電解鉄めっき層をTi基材上に形成した。
・浴組成
塩化鉄四水和物:725g/L
・温度:90℃
・pH:1.0
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:10A/dm2
上記のように形成しためっき層を充分に乾燥させた後に、Ti基材からこのめっき層を剥離して電解鉄箔を得た。
得られた電解鉄箔に対して、結晶子径の測定、結晶配向指数の測定及び電解面と基材面の相対強度の算出、引張強さおよび伸びの測定、厚みの測定、電解面と基材面の表面形状(Sa)の測定、結晶粒径の測定、活物質との密着性の評価、を行った。
なお、電解鉄箔におけるFeとMnの含有率は、Fe:99.9wt%以上、Mn:0.01wt%未満の純鉄であった。Mn含有率により得られた箔が圧延鉄箔でないことが確認できた(後述の判別方法A参照)。このFeとMnの含有率は、算出することにより得られた数値である。算出するに際して、まず、実施例1の電解鉄箔を溶解させてICP発光分析(測定装置:島津製作所社製、誘導結合プラズマ発光分光分析装置 ICPE-9000)により、Mnの含有量を測定した。このとき、Mn以外の残部をFeとし、Fe含有量を算出した。このFe、Mnの含有量をもとに、ぞれぞれの金属の含有率を算出した。
また、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
厚みを表1のとおりとした以外は、実施例1と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
厚みを表1のとおりとした以外は実施例1と同様にして電解鉄箔を得た。得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
厚みを表1のとおりとし、支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1の値となるようにした他は実施例1と同様にして電解鉄箔を得た。得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
実施例2と同様にして得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は2000倍とした。結果を表1~5に示す。
実施例1と同様に前処理したTi基材を以下に示す鉄めっき浴に含浸・電析し、電解箔として表1に示す厚みの電解鉄めっき層をTi基材上に形成した。
・浴組成
塩化鉄四水和物:725g/L
塩化ニッケル六水和物:75g/L
温度:90℃
・pH:1.0
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:20A/dm2
なお、電解鉄箔におけるFeとNi、Mnの含有率は、Fe:93.1wt%、Ni:6.9wt%、Mn:0.01wt%未満であり、副成分としてニッケルを含有する鉄箔であった。Mn含有率により得られた箔が圧延箔でないことが確認できた(後述の判別方法A参照)。このFe、Ni、Mnの含有率は、算出することにより得られた数値である。算出するに際して、まず、実施例6の電解鉄箔を溶解させてICP発光分析(測定装置:島津製作所社製、誘導結合プラズマ発光分光分析装置 ICPE-9000)により、NiおよびMnの含有量を測定した。このとき、NiおよびMn以外の残部をFeとし、Fe含有量を算出した。このFe、Ni、Mnの含有量をもとに、ぞれぞれの金属の含有率を算出した。
また、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1の値となるようにした他は実施例6と同様にして電解鉄箔を得た。
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
厚みを表1のとおりとした以外は、実施例6と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
実施例8と同様にして得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
実施例1と同様に前処理したTi基材を以下に示す鉄めっき浴に含浸・電析し、電解箔として表1に示す厚みの電解鉄めっき層をTi基材上に形成した。なお支持体であるTi基材の表面粗さSaは表1の値となるようにした。
・浴組成
塩化鉄四水和物:300g/L
塩化アルミニウム六水和物:180g/L
・温度:90℃
・pH:1.0
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:3A/dm2
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
電流密度を表1に示す値とした以外は実施例10と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1の値となるようにした以外は実施例10と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
電流密度と支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1に示す値とした以外は実施例10と同様に行った。結果を表1に示す。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
厚みと電流密度を表1に示す値とした以外は実施例10と同様に行った。結果を表1に示す。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
電流密度、厚み、支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1に示す値とした以外は実施例10と同様に行った。結果を表1に示す。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
実施例1と同様に前処理したTi基材を以下に示す鉄めっき浴に含浸・電析し、電解箔として表1に示す厚みの電解鉄めっき層をTi基材上に形成した。なお支持体であるTi基材の表面粗さSaは表1の値となるようにした。
・浴組成
塩化鉄四水和物:400g/L
塩化カルシウム:180g/L
サッカリンナトリウム:3g/L
ドデシル硫酸ナトリウム:0.1g/L
グルコン酸ナトリウム:2g/L
温度:90℃
・pH:1.5
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:5A/dm2
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
電流密度と支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1に示す値とした以外は実施例16と同様に行った。結果を表1に示す。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1に示す値とした以外は実施例16と同様に行った。結果を表1に示す。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
電流密度と支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1に示す値とした以外は実施例16と同様に行った。結果を表1に示す。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
実施例1と同様に前処理したTi基材を以下に示す鉄めっき浴に含浸・電析し、電解箔として表1に示す厚みの電解鉄めっき層をTi基材上に形成した。
・浴組成
塩化鉄四水和物:1000g/L
・温度:90℃
・pH:1.0以下
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:10A/dm2
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
電流密度と厚みを表1に示す値とした以外は実施例20と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は6000倍とした。結果を表1~5に示す。
厚みを表1に示す値とした以外は実施例20と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
電流密度と厚みを表1に示す値とした以外は実施例20と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
電解めっき中に、表1に示すとおり電流密度を変更し、連続して析出した。すなわち表1で「下5/上15」と示すとおり、5A/dm2で狙い厚み1μmの下層を形成後に15A/dm2で上層を形成し、厚みを表1のとおりとした。それ以外は、実施例20と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は8000倍とした。結果を表1~5に示す。
電解めっき中に、表1に示すとおり実施例24と同様に電流密度を変更し、連続して析出した。すなわち表1で「下5/上15」と示すとおり、5A/dm2で狙い厚み5μmの下層を形成後に5A/dm2で上層を形成し、厚みを表1のとおりとした。それ以外は、実施例20と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
電解めっき中に、表1に示すとおり電流密度を変更し、連続して析出した。すなわち表1で「下15/上5」と示すとおり、15A/dm2で狙い厚み10μmの下層を形成後に5A/dm2で上層を形成し、厚みを表1のとおりとした。それ以外は、実施例20と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
実施例20と同様にして得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は3000倍とした。結果を表1~5に示す。
実施例22と同様にして得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
実施例22と同様にして得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
実施例22と同様にして得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は3000倍とした。結果を表1~5に示す。
実施例1と同様に前処理したTi基材を以下に示す鉄めっき浴に含浸・電析し、電解箔として表1に示す厚みの電解鉄めっき層をTi基材上に形成した。なお支持体であるTi基材の表面粗さSaは表1の値となるようにした。
・浴組成
塩化鉄四水和物:1000g/L
・温度:105℃
・pH:1.0
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:50A/dm2
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
厚みを表1に示す値とした以外は実施例31と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
実施例1と同様に前処理したTi基材を以下に示す鉄めっき浴に含浸・電析し、電解箔として表1に示す厚みの電解鉄めっき層をTi基材上に形成した。
・浴組成
塩化鉄四水和物:500g/L
塩化ニッケル六水和物:200g/L
・温度:100℃
・pH:1.0
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:20A/dm2
なお、電解鉄箔におけるFeとNi、Mnの含有率は、Fe:86.0wt%、Ni:14.0wt%、Mn:0.01wt%未満であった。このFe、Ni、Mnの含有率は、算出することにより得られた数値である。算出するに際して、まず、実施例34の電解鉄箔を溶解させてICP発光分析(測定装置:島津製作所社製、誘導結合プラズマ発光分光分析装置 ICPE-9000)により、NiおよびMnの含有量を測定した。このとき、NiおよびMn以外の残部をFeとし、Fe含有量を算出した。このFe、Ni、Mnの含有量をもとに、ぞれぞれの金属の含有率を算出した。
また、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
実施例34と同様にして得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1に示す値とした以外は実施例1と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
表1に示すとおりの厚みの圧延鉄箔(株式会社ニラコ製、型番:FE-223171)を用いた。
なお、圧延鉄箔におけるFeとMnの含有率は、Fe:99.67wt%、Mn:0.33wt%以上であった。このFeとMnの含有率は、算出することにより得られた数値である。算出するに際して、まず、比較例2の圧延鉄箔を溶解させてICP発光分析(測定装置:島津製作所社製、誘導結合プラズマ発光分光分析装置 ICPE-9000)により、Mnの含有量を測定した。このとき、Mn以外の残部をFeとし、Fe含有量を算出した。このFe、Mnの含有量をもとに、ぞれぞれの金属の含有率を算出した。
また、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
以下のとおりのめっき条件で、電解銅箔をTi基材上に形成した。厚み、Ti基材の表面粗さSaを表1のとおりとした。
・浴組成
硫酸銅五水和物:200g/L
硫酸:45g/L
・温度:35℃
・pH:1.0以下
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:10A/dm2
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
比較例4と同様にして得られた電解銅箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
電解鉄箔と圧延鉄箔における化学組成の観点からの判別方法としては、ICP発光分析による定量分析が挙げられる。すなわち、圧延鉄箔を高炉や電炉から製造した場合にはマンガン(Mn)の混入を一定レベル以下にすることが困難であるため、全元素成分中におけるMnを0.3wt%以上含有している場合には圧延鉄箔と判断できる。一方でMnが0.05wt%未満である場合には、電解鉄箔と判断可能である。なおこのICP発光分析による定量分析は、焼鈍前後の箔のいずれにおいても有効な判別手段である。
電解鉄箔と圧延鉄箔における結晶配向指数の観点からの判別方法としては、X線回折による回折ピークの確認が挙げられる。すなわち、X線回折による回折ピークの強度比より結晶配向指数を算出した場合、圧延鉄箔は(211)面の配向が強く出る傾向にある。また、圧延鉄箔は焼鈍後においても(211)面の影響が電解鉄箔と比較して強く残る。一方で電解鉄箔の場合(110)面の配向が相対的に強いため(211)面の配向は強く出ない傾向にあり、(211)面の配向に基づいて電解鉄箔と圧延鉄箔とを判別可能である。
なお、熱処理後の電解鉄箔と圧延鉄箔をより正確に判別する場合には、上記Aの判別方法と併用することが好ましい。
結晶組織の観点から電解鉄箔と圧延鉄箔を判別することも可能である。すなわち焼鈍前の圧延鉄箔の結晶組織を観察した場合、表面においては圧延方向に伸びたような結晶粒となると共に、断面を観察した場合には板厚方向に複数個の結晶粒で構成され、且つ圧延方向に伸びた結晶粒となる。一方で電解鉄箔の場合には、表面においては圧延方向に伸びたような結晶粒とはならず、断面においては基材面側から電解面側に成長したような組織となる。
なお、上記のような結晶組織は熱処理により変化するため、熱処理条件によっては熱処理後の材料に対しても上記判別方法を適用可能であるものの、基本的には熱処理後の電解鉄箔と圧延鉄箔の判別には、上記AとBの判別方法を併用することが好ましい。
また表面粗さの観点から電解鉄箔と圧延鉄箔を判別することも可能である。すなわちレーザー顕微鏡による三次元表面性状パラメータ(Sdq、Sdr、Sal等)を測定した場合、圧延鉄箔においては両面に圧延加工特有の圧延筋が形成されるため、Sdq、Sdr、Salが本実施形態で好ましい値として示した数値の範囲外となることが多い。一方で電解鉄箔の場合、基材面では基材の粗度を転写しやすいため、圧延鉄箔の表面粗さと類似することが多いものの、電解面においては、電解により析出した特有の結晶成長に伴う表面凹凸を有しており、Sdq、Sdr、Salが本実施形態で好ましい値として示した数値の範囲内となるものである。
なお上記のような表面粗さは、材料表面をエッチングや研磨した場合には数値が変化するため、上記Aの判別方法に加え、上記B又はCの判別方法を併用することが好ましい。
また、上記した実施形態と実施例における電解鉄箔は主として電池用集電体に用いられるものとして説明したがこれに限られるものではなく、例えば放熱材や電磁波シールド材など他の用途にも適用が可能である。
10a 第1面
10b 第2面
Claims (7)
- 電解鉄箔であって、少なくともどちらか一方の面において鉄の(110)面における結晶子径が45nm以上であり、
厚みが20μm未満であることを特徴とする、電解鉄箔。
- 両面における前記(110)面の結晶配向指数が0.2以上である、請求項1に記載の電解鉄箔。
- 少なくともどちらか一方の面において、表面の結晶粒の平均結晶粒径が0.66μm以上である、請求項1又は2に記載の電解鉄箔。
- 伸びが1.6%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電解鉄箔。
- 引張強さが130MPa以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の電解鉄箔。
- 請求項1~5のいずれか一項に記載の電解鉄箔からなる、電池集電体用の電解鉄箔。
- 請求項1~6のいずれか一項に記載の電解鉄箔からなる、非水系電池集電体用の電解鉄箔。
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