JP7164766B2 - 電解鉄箔 - Google Patents

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Description

本発明は、二次電池などの集電体に特に好適に使用される電解箔に関し、特に電解鉄箔に関する。
従来使用されているリチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の電池の高容量化には、集電体の薄膜化が有効である。二次電池用の電解箔としては電解銅箔等が広く知られている。
例えば特許文献1では、リチウムイオン二次電池用負極電極用の電解銅箔において、箔切れやシワ等が生じにくくすることを目的とした電解銅箔が開示されている。
特開2017-014608号公報
特許文献1に記載のような銅箔が電池用集電体に用いられる際には、製造時の加熱温度によっては、強度低下の可能性があることが問題視されていた。発明者らは上記課題に鑑み、電極製造時における加熱によっても強度低下を抑制できる金属材料を検討した結果、集電体製造時の加熱温度域での強度低下が少なく、且つ元来強度や伸びに優れた材料として知られている鉄(Fe)に着目した。また、鉄は資源が豊富であること、及びコスト的な観点においても利点を有する。
集電体材料として鉄や鉄の含有量が多い金属材料を用いる場合に、考慮すべき材料特性としては以下のとおりである。
すなわち集電体材料として鉄の含有量が多い金属を使用する場合、水系の電池用途としては電解液と反応してしまう可能性がある。しかしながら非水系の電池用途であれば、鉄の含有量が多い集電体材料も適用し得る。
また、集電体に適用可能な程度の厚みの鉄箔を製造する場合、圧延により製造する方法と電解めっきにより製造する方法とが考えられる。
このうち圧延により20μm未満の鉄箔を製造する場合には、連続生産が困難でありかつ圧延の際に異物や不純物を巻き込みやすく品質的に課題が多いことに加え、加工硬化することにより得られた鉄箔の伸びが得られない可能性がある。一方で電解めっきにより鉄箔を製造することにより、伸びや強度を有し、集電体に適用可能な程度の厚みの鉄箔を製造可能であることが考えられる。
例えば特開昭58-73787号公報や特開平8-60392号公報には、電池用集電体用途ではないものの電解鉄箔が開示されている。しかしながらこれらの電解鉄箔は、高容量の電池用の集電体に適用可能な厚みを有するものではなく、取り扱い時等の破れや千切れ等に関しては触れられていない。また、本発明者らの所望するような伸びや強度を有するものではなかった。
本発明者らは上記の課題等に鑑みて鋭意検討を繰り返し本発明に至ったものである。すなわち本発明は、薄さを有すると共に伸びや強度を備え、取り扱い時等の破れや千切れを抑制することができる電解鉄箔を提供することを目的とする。
すなわち本発明の電解鉄箔は、(1)少なくともどちらか一方の面において鉄の(110)面における結晶子径が45nm以上であり、厚みが20μm未満であることを特徴とする。
なお、上記(1)の電解鉄箔において、(2)両面における前記(110)面の結晶配向指数が0.2以上であることが好ましい。
また、上記(1)または(2)の電解鉄箔において、(3)少なくともどちらか一方の面において、表面の結晶粒の平均結晶粒径が0.66μm以上であることが好ましい。
また、上記(1)~(3)いずれかの電解鉄箔において、(4)伸びが1.6%以上であることが好ましい。
上記(1)~(4)いずれかの電解鉄箔において、(5)引張強さが130MPa以上であることが好ましい。
また、本発明における電池集電体用の電解鉄箔は、(6)上記(1)~(5)のいずれかの電解鉄箔からなるものであることが好ましい。
さらに、本発明における非水系電池集電体用の電解鉄箔は、(7)上記(1)~(6)のいずれかの電解鉄箔からなるものであることが好ましい。
本発明によれば、薄い電解鉄箔であって、取り扱い時の破れや千切れを抑制可能な電解鉄箔を提供することが可能となる。また、二次電池の集電体として使用した際にも、充放電の繰り返しに耐えうる十分な伸びや強度を備えた電解鉄箔を提供することが可能となる。
本実施形態における電解鉄箔10の断面図を示す模式図である。 本実施形態において、電解鉄箔10の引張強さおよび伸びを測定するために用いる試験片の模式図である。 実施例において、集束イオンビーム加工観察装置(FIB)を用いた、表面の結晶粒径の測定方法を示す図である。
≪電解鉄箔≫
以下、本発明の電解鉄箔を実施するための実施形態について説明する。
本実施形態の電解鉄箔10は、電池負極の集電体に適用されるほか、電池正極の集電体にも適用され得る。電池の種類としては二次電池であっても一次電池であってもよい。非水系二次電池として、例えばリチウム二次電池、ナトリウム二次電池、マグネシウム二次電池、全固体電池などが挙げられる。
本実施形態の電解鉄箔10は、少なくともどちらか一方の面においてX線回折で測定した鉄の(110)面における結晶子径が45nm(450Å)以上であることを特徴とする。一般に、一個の鉄結晶粒は複数の結晶子の集合体である。結晶子とは、微結晶の単結晶と見なせる最大の集まりを言う。
本発明者らは本実施形態の電解鉄箔10において、電解鉄箔を製造する際の電解めっき条件や、その後の熱処理条件等を諸々変化させて試行錯誤した。その結果、結晶子径を所定の大きさにした場合、二次電池の集電体に適用しても充放電の繰り返しに耐えうる十分な伸びを備えた電解鉄箔が得られることを見出した。
本実施形態において、含まれる鉄の(110)面の結晶子径を45nm以上とすることとした理由は以下のとおりである。
すなわち本実施形態においては、集電体に適用可能な程度の厚みを有し、且つ伸びや強度を有する鉄箔を提供することを目的とする。
ここで仮に鉄箔を圧延により製造した場合、加工ひずみにより結晶子径は小さくなり、伸びを有する鉄箔を得ることが困難である。
一方で電解鉄箔10において少なくともどちらか一方の面における鉄の(110)面の結晶子径を45nm以上に制御することにより、目的とする伸びと強度を有することが可能となる。よって、本実施形態においては電解鉄箔10において上記結晶子径を45nm以上とすることとした。
なお上記結晶子径の上限としては、好ましくは160nm以下、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは120nm以下である。
なお、より伸びを高くするという点においては、上記結晶子径は50nm以上が好ましく、より好ましくは58nm以上、さらに好ましくは60nm以上、さらにより好ましくは80nm以上である。一方で、強度を重視する場合には、上記結晶子径は60nm未満が好ましく、より好ましくは58nm未満である。また、強度と伸びの両方をバランスよく両立させたい場合には、上記結晶子径は50nm~80nmが好ましく、より好ましくは58nm~75nmである。
本実施形態の電解鉄箔10において、鉄の(110)面における結晶子径を規定することとした。その理由としては、鉄は体心立方構造を有しており、主すべり面である(110)面の結晶子径を制御することにより、電解鉄箔全体としての伸びを的確に制御することが可能となるからである。
本実施形態の電解鉄箔10において鉄の(110)面の結晶子径は、以下の式を用いてX線回折によるピーク半値幅より求められる。X線回折の測定は、例えば公知のX線回折装置を用いて行われる。結晶子径の算出は2θ=43~46度に現れる鉄の(110)面のピークを用いる。
D=K×λ/(β×cosθ)
D:結晶子径
K:Scherrer定数(K=0.94を使用)
λ:使用X線の波長
β:結晶子の回折X線の半値幅
θ:ブラッグ角
本実施形態の電解鉄箔10においては、鉄の(110)面の結晶配向指数を制御することにより、伸びや強度を備える電解鉄箔とすることが可能である。具体的には以下のとおりである。
すなわち結晶配向指数としては、十分な伸びを得るという観点から、電解鉄箔における両面において、BCC構造のすべり面である(110)面の結晶配向指数が0.2以上であることが好ましい。なお、伸びを高くするという点においては、少なくともどちらか一方の面における(110)面の結晶配向指数が、0.4以上であることがより好ましく、さらに好ましくは0.7以上である。なお、(110)面の結晶配向指数の上限は特になく、通常3.0以下である。
また、より伸びを高くするという観点から、少なくともどちらか一方の面における(220)面の結晶配向指数が、0.5以上であることが好ましく、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.3以上、さらにより好ましくは1.5以上である。より伸びを重視する場合には、両面における(220)面の結晶配向指数が1.3以上であることが特に好ましい。なお、(220)面の結晶配向指数の上限は特になく、通常4.0以下である。
鉄箔の結晶配向指数は、X線回折装置により表面における各結晶面の回折強度を測定した後、得られた鉄皮膜の回折ピークと標準粉末の回折ピークを利用して、WillsonとRogersの方法「文献K. S. Willson and J. A. Rogers; Tech. Proceeding Amer. Electroplaters Soc., 51, 92 (1964)」にて、以下のようにして算出できる。
回折強度のデータとしては、X線源の管球がCu(Kα)の場合、回折角度(2θ)が20~100°の範囲内で出現されるとされる、(110)面、(200)面、(211)面及び(220)面のものを用いた。
(110)面の結晶配向指数=IF(110)/IFR(110)
上記式中、IF(110)は、(110)面からのX線回折強度比であり、
IFR(110)は、標準鉄(粉末鉄)の理論X線回折強度比である。
IF(110)=I(110)/[I(110)+I(200)+I(211)+I(220)]
IFR(110)=IR(110)/[IR(110)+IR(200)+IR(211)+IR(220)]
上記式中、
I(hkl)は、(hkl)面からのX線回折強度であり、
IR(hkl)は、標準鉄粉末のICDD PDF-2 2014のデータベースの01-080-3816に記載されている(hkl)面からのX線回折強度である。
(200)面、(211)面及び(220)面の結晶配向指数も同様に算出することができる。
(200)面の結晶配向指数=IF(200)/IFR(200)
IF(200)=I(200)/[I(110)+I(200)+I(211)+I(220)]
IFR(200)=IR(200)/[IR(110)+IR(200)+IR(211)+IR(220)]
(211)面の結晶配向指数=IF(211)/IFR(211)
IF(211)=I(211)/[I(110)+I(200)+I(211)+I(220)]
IFR(211)=IR(211)/[IR(110)+IR(200)+IR(211)+IR(220)]
(220)面の結晶配向指数=IF(220)/IFR(220)
IF(220)=I(220)/[I(110)+I(200)+I(211)+I(220)]
IFR(220)=IR(220)/[IR(110)+IR(200)+IR(211)+IR(220)]
なお、得られる(110)面、(200)面、(211)面、(220)面のX線回折強度のうち、回折強度が最大値となるものを100とし、他の面の回折強度をその回折強度値で除算して得られる相対強度も同じデータから算出できる。
なお、本実施形態において、少なくともどちらか一方の面においてX線回折を用いて測定した鉄の(110)面の結晶子径が45nm以上であればよい。電解鉄箔においては、製造時における基材面側と電解面側を有するが、基材面側においては電析開始時の影響を受け、結晶子がやや小さくなることが分かった。しかしながら、電解面側で45nm以上の十分な結晶子径を有することができれば、他方面、つまり基材面での結晶子径が45nm以下であっても、伸びに優れることを確認した。
なお、少なくともどちらか一方の面においてX線回折で測定した際に鉄の(110)面の結晶子径が45nm以上を有する場合、より伸びを高くするという観点から、他方の面側から測定する鉄の(110)面の結晶子径は25nm以上が好ましく、より好ましくは35nm以上、さらに好ましくは38nm以上、さらにより好ましくは45nm以上、特に好ましくは70nm以上である。一方、強度をより重視する場合には、60nm未満が好ましく、より好ましくは45nm未満である。また、より高い伸びと強度を両立させたい場合には、上記結晶子径は35nm~70nmが好ましく、より好ましくは38nm~70nm、さらにより好ましくは35nm~1nmである。
なお上記結晶子径の上限としては、好ましくは160nm以下、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは120nm以下である。
本実施形態の電解鉄箔10において、結晶子径の大きさを制御する方法としては、具体的には、電解鉄箔を製造する際のめっき条件を制御する方法が挙げられる。また得られた電解鉄箔に熱処理をする場合においては、当該熱処理条件を制御する方法によっても結晶子径の大きさを制御することが可能である。これらの詳細な方法については後述する。
本実施形態の電解鉄箔10は、図1に示されるように、第1面10aと第2面10bを有する。なお、以下説明のため便宜的に、電解鉄箔10の製造時において電解箔を支持する支持体(基材)に接していた面(基材面)を第1面10aとし、他方の面(電解面)を第2面10bとして説明する。なお以下において、第1面(10a)を単に基材面、第2面10bを単に電解面とも称するものとする。
本実施形態の電解鉄箔10は、純鉄であってもよいし、本発明の課題を解決し得る限りにおいて、副成分として鉄以外の金属を1種又は2種以上含有していてもよいし不可避の不純物を含んでいてもよい。ここで純鉄としては、鉄以外の金属元素の含有率が0.1重量%以下であることを意味するものとする。鉄以外の金属元素の含有率が0.1重量%以下とすることにより、一般的に流通する圧延鉄箔(圧延鋼箔とも称する)と比して、錆の発生が少なくなる。そのため、輸送保管時などの耐食性・防錆性に優れるという利点がある。
また、本発明において鉄箔としては、箔中における鉄の含有率が80重量%以上のものと定義する。鉄の含有率を80重量%以上とし、副成分として鉄以外の金属を含有させることにより、鉄としての特性(強度や伸び)を有しつつ、強度の向上やコスト面の両立という観点から、好ましい。
本実施形態において電解鉄箔10が鉄以外の金属を含有する場合、当該鉄以外の金属としては、例えばニッケル、コバルト、モリブデン、リン、ホウ素、等を挙げることができる。鉄としての特性(強度や伸び)を有しつつ、より強度の向上を図るという観点から、当該鉄以外の金属としてはニッケルを含有していることが好ましい。なおその場合、箔中におけるニッケルの含有率としては、好ましくは3重量%以上20重量%未満、より好ましくは3重量%以上18重量%未満、さらに好ましくは5重量%以上16重量%未満であることが好ましい。
なお本実施形態においては、電解鉄箔に含まれる全ての金属を100重量%とした場合、鉄とニッケル以外の金属含有率が0.1重量%以下であることが好ましい。
本実施形態において、電解鉄箔に含まれる鉄、及び、鉄以外の金属の含有量を得る方法としては、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法等を挙げることができる。また、得られた各金属の含有量より、金属含有率を算出することが可能である。
本実施形態の電解鉄箔10は、電解めっきにより形成される。具体的には、鉄イオンを含む電解めっき浴を用いて電解鉄箔を形成することが可能である。
なお本実施形態の電解鉄箔の製造時において、電解箔を支持する支持体(基材)に接していた面を基材面と称し、他方の面を電解面と称して以下説明する。
本実施形態の電解鉄箔10は、上述した電解めっき浴中に光沢剤を添加しないめっき層(便宜的に「無光沢鉄めっき層」とも称する)であってもよいし、光沢剤(半光沢用の光沢剤も含む)を添加する「光沢鉄めっき層」であってもよい。
なお、上記した「光沢」又は「無光沢」は、目視外観上の評価に依拠しており厳密な数値での区分けは困難である。さらには後述する浴温などの他のパラメータに依っても光沢度合いが変化し得る。したがって、本実施形態で用いる「光沢」「無光沢」は、あくまでも光沢剤の有無に着目した場合の定義付けとする。
本実施形態の電解鉄箔10は、その表面基材面及び電解面の少なくとも片面において、三次元表面性状パラメータSaの値が1.0μm未満であることが好ましく、0.6μm未満であることがより好ましく、0.45μm以下であることがさらに好ましい。
本発明者らが検討した結果、薄膜化に伴って懸念される製造時および取扱い時(電池組立時も含む)の破れや千切れを抑制でき、さらには、二次電池における充放電の繰り返しの際に体積変化の大きい活物質を使用した場合においても、シワや破れが抑制可能な電解箔を製造するためには、本発明の特徴である結晶子径を所定の大きさにすることに加え、上述の三次元表面性状パラメータSaの値を所定の値以下とすることがさらに好ましいことを見出した。
その理由としては以下のとおりと考えられる。すなわち、金属箔の表面において、凹凸が大きすぎる場合、表裏の凹凸の組み合わせにより局所的に薄い箇所が形成される可能性があり、箔全体の千切れや割れが発生しやすくなる可能性がある。よって、結晶子径の制御で得られる箔本来の強度および伸びを得るために、Saの値を所定の値とすることが好ましい。
なお、本実施形態の電解鉄箔10における三次元表面性状パラメータSaは、公知の非接触式の三次元表面粗さ測定装置等により求めることができる。
なお本実施形態の電解鉄箔10において、基材面及び電解面におけるSa[μm](算術平均高さ)、Sz[μm](最大高さ)の各値は、以下の値を有することが好ましい。なお本実施形態における三次元表面性状パラメータは、ISO-25178-2:2012(対応JIS B 0681-2:2018)に従って測定された値をいうものとする。
Sa ・・・1.0μm未満、より好ましくは0.6μm未満
Sz ・・・10.0μm未満、より好ましくは8.0μm未満
ここで、Sa、Szの下限値の制限は特にないが、通常、Saは0.1μm以上、Szは0.8μm以上、が適用される。
また、活物質密着性の観点から、本実施形態の電解鉄箔10において、基材面及び電解面の少なくともいずれかの面におけるSdq(二乗平均平方根勾配)、Sdr(展開界面面積率)の各値は、以下の値を有することが好ましい。なお本実施形態における三次元表面性状パラメータは、ISO-25178-2:2012(対応JIS B 0681-2:2018)に従って測定された値をいうものとする。
Sdq・・・0.06以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.20以上
Sdr・・・0.20%以上、より好ましくは0.50%以上、さらに好ましくは1.00%以上
集電体として用いる場合、活物質密着の観点から、めっきの結晶粒によって形成される微細なピッチの凹凸がある方が好ましく、特にSdqおよびSdrの値を上記範囲とすることにより、めっきの結晶粒の凹凸を適した形状とすることができる。特に少なくともいずれかの面におけるSdrを1.00%以上とすることで、より密着性の向上が見込まれる。
Sdqの上限値は特になく、1未満となる。Sdrの上限値は特に制限されないが、極端に大きすぎる場合には、凹凸が高すぎるおそれがあるため、通常50%未満である。
なお、本実施形態の電解鉄箔10における三次元表面性状パラメータSa、Sz、Sdq、Sdrを上記した値の範囲内に制御するためには、後述するようにめっき条件を制御する方法や、支持体の表面を研磨する方法、得られた電解鉄箔の表面をエッチング処理や電解研磨などによって凹凸を制御する方法等を挙げることが可能である。
次に、本実施形態における電解鉄箔10の厚みについて説明する。
本実施形態における電解鉄箔10の厚みは20μm未満であることを特徴とする。20μm以上の厚みでは、そもそも薄膜化による高容量化を目指す背景から設計思想に合わず、さらには公知の圧延箔等に対してコスト的なメリットが減退してしまうからである。
なお、本実施形態における電解鉄箔10の厚みの上限に関しては、18μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、12μm以下であることがさらに好ましい。
本実施形態における電解鉄箔10の厚みの下限は特に限定されるものではないが、例えば1.5μmであることが好ましい。その理由としては、充放電に伴う影響に対する強度の観点や、電池の製造時や取扱い時等に発生する可能性のある破れや千切れ・シワ等の観点等が挙げられる。
なお、本実施形態における電解鉄箔10の厚みの下限に関しては、5μm以上であることがより好ましい。
なお、本実施形態における「電解鉄箔の厚み」は、マイクロメーターでの厚み測定や重量法による厚み測定により取得することが可能である。
なお本実施形態の電解鉄箔10の引張強さとしては、130MPa以上であることが好ましい。引張強さが130MPa未満である場合、電池製造時の箔の千切れや破れなどが発生する可能性があり、ハンドリング性(取り扱い性)が低下するため好ましくない。また、二次電池の集電体に適用した際に、充放電の繰り返しによる体積変化に耐えられず破れを発生する可能性があるため好ましくない。
なお、より強度を重視するという点においては、引張強さの下限に関しては、180MPa以上であることがより好ましく、350MPa以上であることがさらに好ましい。一方で、伸びを重視する場合には、引張強さが550MPa以下であることが好ましく、450MPa以下であることがより好ましい。引張強さの上限としては、800MPa以下であることが好ましく、700MPa以下であることがより好ましい。
なお本実施形態において電解鉄箔10の引張強さは、例えば以下のように測定を行うことが可能である。株式会社ダンベル製のSD型レバー式試料裁断器(型式:SDL-200)により、JIS K6251に準じたカッター(型式:SDK-400)を用いて図2に示すJIS K6251のダンベル4号形の金属片の打ち抜きを行う。そしてこの試験片で、金属試験片のJIS規格であるJIS Z 2241に準じた引張試験方法に準拠して引張試験を行うことが可能である。
本実施形態の電解鉄箔10における伸びは1.6%~15%であることが好ましく、1.8%~15%であることがより好ましく、2.0%~15%であることがさらに好ましい。伸びが1.6%未満である場合、得られた電解鉄箔を二次電池の集電体に適用した場合、充放電の繰り返しに対応できない可能性があるため好ましくない。なお本実施形態における電解鉄箔10の伸びは、JIS Z2241(金属材料引張試験方法)に従って測定された値をいうものとする。
本実施形態の電解鉄箔10は、上述のような構成を備えているため、以下のような効果を奏するものである。
すなわち金属箔を集電体として製造する工程中において、乾燥温度が200℃以上(400℃以下)に到達する場合があるが、従来集電体材料として用いられている銅箔はこの乾燥温度により強度低下の可能性があった。
鉄の材料特性として上記加熱温度帯による強度低下は低いため、本実施形態の電解鉄箔10を集電体として用いた場合には、上述のような製造時および取扱い時(電池組立時や集電体として使用する際)の加熱における強度低下を抑制できる。
なお、本実施形態の電解鉄箔10において、より軟質化させて活物質との密着性を高くするという観点から、電解面又は基材面の少なくともどちらか一方の面における表面の結晶粒の大きさ(表面の平均結晶粒径)が、0.66μm以上であることが好ましい。特に、強い密着性を求める場合には、より好ましくは3.20μm以上である。一方、活物質との密着性を有しつつ、強度をより重視する場合には、1.50μm未満が好ましく、より好ましくは1.30μm未満である。また、活物質との密着性を有しつつ、強度と伸びの両方をバランスよく両立させたい場合には、0.80μm~3.20μmが好ましく、より好ましくは1.00μm~3.20μm、さらに好ましくは1.30μm~3.20μmである。
また、電解面又は基材面の少なくともどちらか一方の面における表面の平均結晶粒径が0.66μm以上である場合、他方の面においても、軟質化して活物質との密着性を十分に有するという観点から、他方の面における表面の平均結晶粒径は0.45μm以上が好ましく、より好ましくは0.50μm以上、さらに好ましくは0.70μm以上、さらにより好ましくは1.00μm以上、特に好ましくは2.00μm以上である。一方、活物質との密着性を有しつつ、強度をより重視する場合には、1.00μm未満が好ましく、より好ましくは0.70μm未満である。また、活物質との密着性を有しつつ、より高い伸びと強度を両立させたい場合には、0.50μm~2.00μmが好ましく、より好ましくは0.70μm~2.00μm、さらに好ましくは1.00μm~2.00μmである。
なお本実施形態において、「表面の平均結晶粒径」とは、表面側(電解面側または基材面側)から厚み方向に0.5μmの位置の結晶粒から算出する平均結晶粒径であり、JIS G 0551に準拠して求められる平均線分長に相当する。
本実施形態の電解鉄箔10において、上述の結晶粒径の値を所定の値で制御することにより、集電体として用いた際の活物質との密着性を向上させるという観点から、好ましい。
≪電解鉄箔の製造方法≫
本実施形態の電解鉄箔10が製造される際には、チタン板(Ti基材)或いはステンレス板等からなる支持体上に、電解鉄めっきが形成された後、上記支持体からめっき層を公知の方法により剥離することにより電解鉄箔が得られる。
なお支持体の具体的な材質としては、上記したチタン板或いはステンレス板に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない限度において他の公知の金属材を適用できる。
なお以下において、チタン板をTi基材とも称するものとする。
電解鉄めっき浴としては、以下のような条件を挙げることができる。
[高濃度鉄めっき条件]
・浴組成
塩化鉄四水和物:500~1000g/L
・温度:60~110℃
・pH:3.0以下
・撹拌:空気撹拌もしくは噴流撹拌
・電流密度:3~100A/dm
なお上記pHの調整は、塩酸や硫酸などを用いることが可能である。
なお、上記高濃度鉄めっきの浴の温度に関して、60℃未満の場合には層の析出ができない可能性やめっき時の応力増加に伴う支持体からの剥離の可能性があること、また結晶子径が小さくなるため好ましくない。生産効率の向上や安定的に所定の大きさの結晶子径を得られるという観点から、85℃以上とすることがより好ましい。一方で、浴温度の上限は特にないが、110℃を超えた場合には、めっき浴の蒸発が激しくなり生産性に劣るため好ましくない。
なお、上記高濃度鉄めっきの浴の電流密度に関して、pHが1.0以下の場合には、鉄の溶解速度と鉄の析出速度との関係から、電流密度を5A/dm以上とすることがより好ましい。
[低濃度鉄めっき条件]
・浴組成
塩化鉄四水和物:200~500g/L
塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化ベリリウム、塩化マンガン、塩化カリウム、塩化クロム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化チタンのいずれか又は複数の合計量:20~300g/L
・温度:25~110℃
・pH:5.0以下
・撹拌:空気撹拌もしくは噴流撹拌
・電流密度:3~100A/dm
上記低濃度鉄めっきの電流密度に関して、3A/dm未満の場合には、箔を作製できない可能性があることや、生産効率が低下するおそれがあり好ましくない。生産効率の向上という観点から10A/dm以上とすることがより好ましい。一方で、100A/dmを超えた場合には、めっきやけが生じるおそれやめっき時の応力増加に伴う支持体からの剥離の可能性があるため好ましくない。めっきやけの抑制や生産効率の向上という観点から、80A/dm以下とすることがより好ましい。また、ピット防止剤を適量添加してもよい。
なお、上記低濃度鉄めっきの浴組成に関して、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化ベリリウム、塩化マンガン、塩化カリウム、塩化クロム、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化チタンはいずれか一つを単独で添加してもよいし、複数を組み合わせて添加してもよい。
本実施形態の電解鉄箔10を形成する際のめっき浴中には、上述したようにニッケルを含んでいてもよい。浴中にニッケルを添加することにより、箔の強度や耐食性を向上させることが可能となる。また、浴中にニッケルを添加することによりめっき条件における電流密度を高くすることができ、生産性が向上する利点もある。
ニッケルを含んだ場合のめっき浴としては、以下のような条件を挙げることができる。
・浴組成
塩化鉄四水和物:500~1000g/L
塩化ニッケル六水和物 又は 硫酸ニッケル六水和物:10~400g/L
・温度:60~110℃
・pH:3.0以下
・撹拌:空気撹拌もしくは噴流撹拌
・電流密度:3~100A/dm
本実施形態の電解鉄箔10の製造方法としては、概ね以下のような工程を挙げることができる。
まず、めっき層が形成される支持体に研磨、清拭、水洗、酸洗等の前処理を施した後、支持体を上記に例示しためっき浴に浸漬して、支持体上に電解鉄めっき層を形成させる。形成されためっき層を乾燥させた後剥離して電解鉄箔10を得る。
上記工程において、支持体に施す前処理のうちの研磨について説明する。本実施形態の電解鉄箔10を製造する際、めっき層を形成する支持体の表面形状は、めっき層に概ね転写されて電解鉄箔の一方の面(基材面)となる。また、電解鉄箔の面(電解面)の形状も、電解鉄箔の厚みが薄ければ薄いほど、支持体の表面形状に影響される可能性が高い。
具体的には、製造時において支持体から剥離が困難となる場合や、箔を製造する際におけるピンホールの発生が起こるなどの課題を抑制するという観点から、支持体の表面粗さSaは0.25μm以下であることが好ましく、0.20μm以下であることがより好ましく、0.18μm以下であることがさらに好ましい。また、電解鉄箔を形成する際のめっき浴中にニッケルを含んでいる場合、支持体の表面粗さSaは0.16μm以下であることが特に好ましい。また、支持体の表面粗さSaの下限としては、特に縛られるものではないが、好ましくは0.01μm以上であることが好ましい。
支持体の表面粗さSaを上記値とするためには、例えば、公知の手段を用いて支持体表面を研磨することにより達成可能である。ここで研磨方向は特に制限があるものではなく、支持体の巾方向又は長手方向等の特定の方向に研磨してもよいし、ランダムに研磨してもよい。
支持体からの電解鉄箔の剥離前、または剥離後において、電解鉄箔に対して熱処理を施す場合には、本発明の課題を解決できる範囲内における熱処理条件であることが好ましい。例えば、電解鉄箔10が純鉄である場合、熱処理条件としては、温度が150℃~850℃であることが好ましく、より好ましくは200℃~700℃、さらに好ましくは250℃~600℃である。また、電解鉄箔10が副成分として鉄以外の金属(ニッケルなど)を1種以上含有する場合、熱処理条件としては、温度が150℃~600℃であることが好ましく、より好ましくは200℃~500℃、さらに好ましくは250℃~400℃であることが好ましい。なお、上述した温度の範囲内で熱処理する場合、熱処理の時間としては特に縛られるものではないが、好ましくは均熱時間が1.5時間~20時間の範囲内(加熱、均熱および冷却時間を合わせた合計時間が4時間~80時間の範囲内)であることが好ましい。上記熱処理の範囲とすることで、本開示の特徴である鉄の(110)面における結晶子径の観点や、課題とする薄さ、伸び、及び強度を兼ね備えるという観点から好ましい。
支持体からの電解鉄箔の剥離前、または剥離後において、電解鉄箔の最表層表面に、本発明の課題を解決できる範囲内において、粗化処理や防錆処理などを施してもよい。また、カーボンコートなどの導電性付与のための公知の処理を施してもよい。
例えば、電解鉄箔の両面にニッケル粗化層や銅粗化層を設けることにより、集電体として用いる際の活物質の密着性能を向上させることができるため好ましい。なお、粗化層については例えば国際公開WO2020/017655号公報等に開示されているため、ここでは詳細な説明は省略する。
本実施形態においては、電解鉄箔の表面粗さ(三次元表面性状)を制御する方法として、上述のようにめっき条件を制御する方法や支持体表面を研磨する方法を挙げて説明したが、これに限られるものではない。例えば、電解鉄箔そのものの表面をエッチング処理や電解研磨などによって平滑化する方法により、所望の三次元表面性状を得ることも可能である。
なお、本実施形態では、支持体を用いて連続製造する方式(たとえばドラム式やロールtoロール方式)で電解鉄箔を製造する例について説明したが、本発明はこの態様に限られず、例えば切り板を用いたバッチ式での製造も可能である。
本実施形態における電解鉄箔10は、基材面と電解面の少なくとも一方の面上に、少なくとも一層の金属層を有する積層電解箔とすることも可能である。この場合、上記金属層としてはCu、Ni、Co、Zn、Sn、Crおよびこれらの合金等が挙げられる。特に、上記金属層をニッケル-鉄合金層とし、本実施形態の電解鉄箔10とニッケル-鉄合金層との積層電解箔としてもよい。
≪実施例≫
以下に、実施例を挙げて本発明について、より具体的に説明する。まず、実施例における測定方法について記載する。
[結晶子径の測定]
結晶子径の測定のため、X線回折装置(株式会社リガク製、全自動多目的水平型X線回折装置SmartLab)を用いてX線回折を行った。
<装置構成>
・X線源:CuKα
・ゴニオメータ半径:300nm
・光学系:集中法
(入射側スリット系)
・ソーラースリット:5°
・長手制限スリット:5mm
・発散スリット:2/3°
(受光側スリット系)
・散乱スリット:2/3°
・ソーラースリット:5°
・受光スリット:0.3mm
・単色化法:カウンターモノクロメーター法
・検出器:シンチレーションカウンタ
<測定パラメータ>
・管電圧-管電流:45Kv 200mA
・走査軸:2θ/θ
・走査モード:連続
・測定範囲:2θ 20~100°
・走査速度:10°/min
・ステップ:0.05°
得られた電解鉄箔から試験片を切り出し、試験片を測定用試料台に載せた。電解面及び基材面それぞれの面において、X線回折角2θ=20~100°の範囲を反射法にてX線回折測定した。その後、得られた測定値に対し、株式会社リガク製 統合粉末X線解析ソフトウェア PDXLを用いてバックグラウンド除去を行い、結晶子径を下記式に基づき算出した。
なお、鉄の(110)面のピークとして、2θ=43~46度の間に現れるピークを用いた。求めた結晶子径を表2に示した。
D=K×λ/(β×cosθ)
D:結晶子径
K:Scherrer定数(K=0.94を使用)
λ:使用X線の波長
β:結晶子の回折X線の半値幅
θ:ブラッグ角
[結晶配向指数の測定]
電解鉄箔の結晶配向指数は、X線回折装置により得られた測定値に対して、WillsonとRogersの方法を用いて算出した。結果を表2~3に示した。
[引張強さおよび伸びの測定]
得られた電解箔において、以下のように引張強さと伸びの測定を行った。まず、株式会社ダンベル製のSD型レバー式試料裁断器(型式:SDL-200)により、JIS K6251-4に準じたカッター(型式:SDK-400)を用いて金属片の打ち抜きを行った。次に、この試験片で、金属試験片のJIS規格であるJIS Z 2241に準じた引張試験方法に準拠して引張試験を行った。試験片の模式図を図2に示す。
なお引張試験の装置としては引張試験機(ORIENTEC製 万能材料試験機 テンシロンRTC-1350A)を用いた。また測定条件としては、室温で、引張速度10mm/minの条件で行った。
伸びの算出式は下記の式で行った。
(試験機の移動距離(ストローク))/(原標点間距離)×100
[厚みの測定]
得られた電解箔においてマイクロメーターを用いて厚みの測定を行った。得られた値を表1の「実測厚み」の欄に示した。
[表面形状の測定]
得られた電解箔において、支持体に接していた面を基材面、他方の面を電解面とし、それぞれの面の表面形状を測定した。具体的には、オリンパス社製レーザー顕微鏡OLS5000を用いて三次元表面性状パラメータSa[μm](算術平均高さ)の値を計測した。なお本実施形態における上記三次元表面性状パラメータは、ISO-25178-2:2012(対応JIS B 0681-2:2018)に従って測定された値をいうものとする。
測定方法としては、対物レンズ50倍(レンズ名称:MPLAPON50XLEXT)の条件で3視野(1視野258μm×258μm)のスキャンを行い、解析用データを得た。次いで、得られた解析用データについて、解析アプリケーションを用い、自動補正処理であるノイズ除去および傾き補正を行った。その後に、面粗さ計測のアイコンをクリックして解析を行い、面粗さの各種パラメータを得た(表2に記載したSaの値は3視野の平均としている)。なお,解析におけるフィルター条件(F演算、Sフィルター、Lフィルター)は、すべては設定せずに、無しの条件で解析を行った。その結果を表2に示す。
[表面の結晶粒径の測定]
表面の結晶粒径の測定は、以下の装置及び条件により行った。
FIB装置:日本電子株式会社製、集束イオンビーム加工観察装置(FIB)
イオンビーム加速電圧:30kV
エミッション電流:2.0μA
FIB操作方法として、電解鉄箔から試験片を切り出し、試験片を電解面側が上部となるように測定用試料台に載せた。加工倍率2000とし、試料表面をデポジッション加工によるカーボンコーティングを行った。その後、上記を加工条件として長方形状に加工した。加工後、試料台を30度傾斜させ、電解鉄箔の断面画像(倍率3000~10000)を得た。
表面の平均結晶粒径の算出は、JIS G 0551に記載の切断法による結晶粒内を横切る試験線の1結晶粒当たりの平均線分長を求める要領にて行った。まずFIBの断面加工により得られた電解鉄箔の断面画像上に結晶粒を横切る長さL(10.0μm~40.0μm)の直線の試験線を平面方向に電解面側および基材面側の表層からそれぞれ0.5μmの位置に引き、直線の試験線が横切った結晶粒数nLを計数した。なお、上記試験線の端において、上記試験線が結晶粒内で終了する場合、結晶粒を1/2個として計数した。さらに、以下の式を用いて平均結晶粒径
Figure 0007164766000001
を求めた。但し、双晶は無視して一つの結晶粒として計数している。
なお図3に実施例1における平均結晶粒径の求め方の図を示す。実施例1においては、長さL=12.9μm、電解面における結晶粒数nL=15個、基材面における結晶粒数nL=21個であった。よって、電解面側の及び基材面側の結晶粒径は下記式よりそれぞれ0.86μm、0.61μmと算出された。結果を表5に示す。
Figure 0007164766000002
[負極板の製造および活物質密着性評価]
負極活物質として人造黒鉛(粒径:約10μm)、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)を用い、負極活物質及び結着剤をそれぞれ97重量%および3重量%とした混合物にN-メチルピロリドン(NMP)を適量加えて粘度を調整した負極合剤ペーストを作製した。この負極合剤ペーストを電解箔の電解面側に塗布して乾燥した。この時、負極活物質及び結着剤の合計の質量が、乾燥後において5mg/cmとなるように塗布した。その後、理研精機株式会社製手動油圧ポンプ(型式:P-1B-041)を用いて1000kg/cmでプレスすることにより負極板を作製した。
活物質密着性評価は、上記のようにして作製した負極板を、塗布した面を外側にして180°折り曲げ試験を行い、負極活物質の剥離の有無の確認を行った。結果を表5に示す。
折り曲げ部において、
活物質の剥離がない場合をA+
折り曲げ部において目視で基材の露出は確認できないが一部のみ剥離がある場合をA
折り曲げ部において目視で基材の露出を確認できる状態で一部剥離がある場合をB
折り曲げ部およびその周辺において活物質が剥離し基材の露出が目視で確認された場合をCとした。
<実施例1>
支持体上に電解鉄めっきを形成した。具体的にはまず、電解鉄箔がその上面に形成される支持体としてTi基材を用い、当該Ti基材の表面に対して研磨を行い、Ti基材の表面粗さSaを表1の値となるようにした。研磨の方向は、Ti基材の長手方向(連続製造の際の進行方向、縦方向)に概ね平行に行った。このTi基材に対して7wt%硫酸を用いて酸洗及び水洗などの公知の前処理を施した。次いで前処理したTi基材を以下に示す鉄めっき浴に含浸・電析し、電解箔として表1に示す厚みの電解鉄めっき層をTi基材上に形成した。
[鉄めっき条件]
・浴組成
塩化鉄四水和物:725g/L
・温度:90℃
・pH:1.0
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:10A/dm
上記のように形成しためっき層を充分に乾燥させた後に、Ti基材からこのめっき層を剥離して電解鉄箔を得た。
得られた電解鉄箔に対して、結晶子径の測定、結晶配向指数の測定及び電解面と基材面の相対強度の算出、引張強さおよび伸びの測定、厚みの測定、電解面と基材面の表面形状(Sa)の測定、結晶粒径の測定、活物質との密着性の評価、を行った。
なお、電解鉄箔におけるFeとMnの含有率は、Fe:99.9wt%以上、Mn:0.01wt%未満の純鉄であった。Mn含有率により得られた箔が圧延鉄箔でないことが確認できた(後述の判別方法A参照)。このFeとMnの含有率は、算出することにより得られた数値である。算出するに際して、まず、実施例1の電解鉄箔を溶解させてICP発光分析(測定装置:島津製作所社製、誘導結合プラズマ発光分光分析装置 ICPE-9000)により、Mnの含有量を測定した。このとき、Mn以外の残部をFeとし、Fe含有量を算出した。このFe、Mnの含有量をもとに、ぞれぞれの金属の含有率を算出した。
また、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例2>
厚みを表1のとおりとした以外は、実施例1と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例3>
厚みを表1のとおりとした以外は実施例1と同様にして電解鉄箔を得た。得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例4>
厚みを表1のとおりとし、支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1の値となるようにした他は実施例1と同様にして電解鉄箔を得た。得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例5>
実施例2と同様にして得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は2000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例6>
実施例1と同様に前処理したTi基材を以下に示す鉄めっき浴に含浸・電析し、電解箔として表1に示す厚みの電解鉄めっき層をTi基材上に形成した。
・浴組成
塩化鉄四水和物:725g/L
塩化ニッケル六水和物:75g/L
温度:90℃
・pH:1.0
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:20A/dm
なお、電解鉄箔におけるFeとNi、Mnの含有率は、Fe:93.1wt%、Ni:6.9wt%、Mn:0.01wt%未満であり、副成分としてニッケルを含有する鉄箔であった。Mn含有率により得られた箔が圧延箔でないことが確認できた(後述の判別方法A参照)。このFe、Ni、Mnの含有率は、算出することにより得られた数値である。算出するに際して、まず、実施例6の電解鉄箔を溶解させてICP発光分析(測定装置:島津製作所社製、誘導結合プラズマ発光分光分析装置 ICPE-9000)により、NiおよびMnの含有量を測定した。このとき、NiおよびMn以外の残部をFeとし、Fe含有量を算出した。このFe、Ni、Mnの含有量をもとに、ぞれぞれの金属の含有率を算出した。
また、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例7>
支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1の値となるようにした他は実施例6と同様にして電解鉄箔を得た。
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例8>
厚みを表1のとおりとした以外は、実施例6と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例9>
実施例8と同様にして得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例10>
実施例1と同様に前処理したTi基材を以下に示す鉄めっき浴に含浸・電析し、電解箔として表1に示す厚みの電解鉄めっき層をTi基材上に形成した。なお支持体であるTi基材の表面粗さSaは表1の値となるようにした。
・浴組成
塩化鉄四水和物:300g/L
塩化アルミニウム六水和物:180g/L
・温度:90℃
・pH:1.0
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:3A/dm
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例11>
電流密度を表1に示す値とした以外は実施例10と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例12>
支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1の値となるようにした以外は実施例10と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例13>
電流密度と支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1に示す値とした以外は実施例10と同様に行った。結果を表1に示す。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例14>
厚みと電流密度を表1に示す値とした以外は実施例10と同様に行った。結果を表1に示す。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例15>
電流密度、厚み、支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1に示す値とした以外は実施例10と同様に行った。結果を表1に示す。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例16>
実施例1と同様に前処理したTi基材を以下に示す鉄めっき浴に含浸・電析し、電解箔として表1に示す厚みの電解鉄めっき層をTi基材上に形成した。なお支持体であるTi基材の表面粗さSaは表1の値となるようにした。
・浴組成
塩化鉄四水和物:400g/L
塩化カルシウム:180g/L
サッカリンナトリウム:3g/L
ドデシル硫酸ナトリウム:0.1g/L
グルコン酸ナトリウム:2g/L
温度:90℃
・pH:1.5
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:5A/dm
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例17>
電流密度と支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1に示す値とした以外は実施例16と同様に行った。結果を表1に示す。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例18>
支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1に示す値とした以外は実施例16と同様に行った。結果を表1に示す。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例19>
電流密度と支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1に示す値とした以外は実施例16と同様に行った。結果を表1に示す。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例20>
実施例1と同様に前処理したTi基材を以下に示す鉄めっき浴に含浸・電析し、電解箔として表1に示す厚みの電解鉄めっき層をTi基材上に形成した。
・浴組成
塩化鉄四水和物:1000g/L
・温度:90℃
・pH:1.0以下
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:10A/dm
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例21>
電流密度と厚みを表1に示す値とした以外は実施例20と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は6000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例22>
厚みを表1に示す値とした以外は実施例20と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例23>
電流密度と厚みを表1に示す値とした以外は実施例20と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例24>
電解めっき中に、表1に示すとおり電流密度を変更し、連続して析出した。すなわち表1で「下5/上15」と示すとおり、5A/dmで狙い厚み1μmの下層を形成後に15A/dmで上層を形成し、厚みを表1のとおりとした。それ以外は、実施例20と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は8000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例25>
電解めっき中に、表1に示すとおり実施例24と同様に電流密度を変更し、連続して析出した。すなわち表1で「下5/上15」と示すとおり、5A/dmで狙い厚み5μmの下層を形成後に5A/dmで上層を形成し、厚みを表1のとおりとした。それ以外は、実施例20と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例26>
電解めっき中に、表1に示すとおり電流密度を変更し、連続して析出した。すなわち表1で「下15/上5」と示すとおり、15A/dmで狙い厚み10μmの下層を形成後に5A/dmで上層を形成し、厚みを表1のとおりとした。それ以外は、実施例20と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例27>
実施例20と同様にして得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は3000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例28>
実施例22と同様にして得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例29>
実施例22と同様にして得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例30>
実施例22と同様にして得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は3000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例31>
実施例1と同様に前処理したTi基材を以下に示す鉄めっき浴に含浸・電析し、電解箔として表1に示す厚みの電解鉄めっき層をTi基材上に形成した。なお支持体であるTi基材の表面粗さSaは表1の値となるようにした。
・浴組成
塩化鉄四水和物:1000g/L
・温度:105℃
・pH:1.0
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:50A/dm
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例32~33>
厚みを表1に示す値とした以外は実施例31と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は7000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例34>
実施例1と同様に前処理したTi基材を以下に示す鉄めっき浴に含浸・電析し、電解箔として表1に示す厚みの電解鉄めっき層をTi基材上に形成した。
・浴組成
塩化鉄四水和物:500g/L
塩化ニッケル六水和物:200g/L
・温度:100℃
・pH:1.0
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:20A/dm
なお、電解鉄箔におけるFeとNi、Mnの含有率は、Fe:86.0wt%、Ni:14.0wt%、Mn:0.01wt%未満であった。このFe、Ni、Mnの含有率は、算出することにより得られた数値である。算出するに際して、まず、実施例34の電解鉄箔を溶解させてICP発光分析(測定装置:島津製作所社製、誘導結合プラズマ発光分光分析装置 ICPE-9000)により、NiおよびMnの含有量を測定した。このとき、NiおよびMn以外の残部をFeとし、Fe含有量を算出した。このFe、Ni、Mnの含有量をもとに、ぞれぞれの金属の含有率を算出した。
また、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<実施例35>
実施例34と同様にして得られた電解鉄箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<比較例1>
支持体であるTi基材の表面粗さSaを表1に示す値とした以外は実施例1と同様に行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<比較例2>
表1に示すとおりの厚みの圧延鉄箔(株式会社ニラコ製、型番:FE-223171)を用いた。
なお、圧延鉄箔におけるFeとMnの含有率は、Fe:99.67wt%、Mn:0.33wt%以上であった。このFeとMnの含有率は、算出することにより得られた数値である。算出するに際して、まず、比較例2の圧延鉄箔を溶解させてICP発光分析(測定装置:島津製作所社製、誘導結合プラズマ発光分光分析装置 ICPE-9000)により、Mnの含有量を測定した。このとき、Mn以外の残部をFeとし、Fe含有量を算出した。このFe、Mnの含有量をもとに、ぞれぞれの金属の含有率を算出した。
また、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<比較例3>
以下のとおりのめっき条件で、電解銅箔をTi基材上に形成した。厚み、Ti基材の表面粗さSaを表1のとおりとした。
・浴組成
硫酸銅五水和物:200g/L
硫酸:45g/L
・温度:35℃
・pH:1.0以下
・撹拌:空気撹拌
・電流密度:10A/dm
なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
<比較例4>
比較例4と同様にして得られた電解銅箔に対して、箱型焼鈍により表1に示すとおりの温度・時間の焼鈍を行った。なお、表面の結晶粒径測定の際の観察倍率は10000倍とした。結果を表1~5に示す。
Figure 0007164766000003
Figure 0007164766000004
Figure 0007164766000005
Figure 0007164766000006
Figure 0007164766000007
各実施例は、好ましい引張強さ及び伸び等の特性を備えていることが確認された。一方で比較例においては、引張強さ又は伸びの観点において目的を達成することができなかったことが確認された。
より詳細には、実施例1は一方の面において鉄の(110)面結晶子径が45nm以上のため、引張強さや伸びなど好ましい特性を備えている。一方で比較例1は両方の面において鉄の(110)面結晶子径が45nm未満であるために、鉄の本来の特性である伸びが充分に発現されないことが分かった。
実施例1と同条件で作成した電解鉄箔を600℃で焼鈍した実施例3とを比較した場合、焼鈍により引張強さは低下するものの一定以上の強度(引張強さ130MPa以上)を有しており、さらに伸びを著しく向上させることができていることから箔の破れや千切れを抑制することが可能であるといえる。なお、600℃で焼鈍した実施例3は既に高温で焼鈍が施されているため、電池製造工程で加熱されたとしてもさらなる引張強さの低下はほとんどないものと考えられる。
圧延鉄箔である比較例2について考察すると、鉄である故の好ましい引張強さを有してはいるものの、結晶子径が45nm未満であるために、伸びが十分に発現されず、 集電体として用いた場合に充放電の繰り返しによる体積変化に耐えられず破れを発生する可能性があるといえる。
実施例22と同条件で作製した電解鉄箔に350℃の温度で4時間の焼鈍を施した場合(実施例28)、引張強さが若干下がるものの、十分な引張強さを保持しつつ、かつ伸びが約24%向上することが分かった。
一方で銅箔のサンプルである比較例3と比較例4とを比較すると、銅箔は350℃の熱がかかった場合、著しく軟化し引張強さが119MPaまで低下してしまうことから、電池製造工程での加熱で引張強さが低下し強度が不十分 となるおそれがあることが分かる。
また、他の各実施例においても、少なくとも一方の面において鉄の(110)面結晶子径が45nm以上とすることで、各特性を好ましい範囲とすることができた。
また各実施例は、少なくともどちらか一方の面(第1面または第2面)において、活物質との密着性を備えていることが確認された。一方で、比較例に示す鉄箔においては、上記特性を備えるものではないことが確認された。
より詳細には、実施例1~35においては、少なくともどちらか一方の面における結晶粒径が0.66μm以上で十分であり、活物質との密着性に優れていることが確認された。また、実施例2、3、5、10~33、35においては、少なくともどちらか一方の面における結晶粒径が1.00μm以上であり、より活物質との密着性が優れていることを確認した。なお、実施例1~6、8~34においては、両面における結晶粒径が0.45μm以上であり、両面共に活物質との密着性を十分に有していることを確認した。
一方、実施例7、35、比較例1、3においては、少なくともどちらか一方の面における結晶粒径が0.45μm以上であり活物質との密着性を有するものの、他方の面における結晶粒径が0.45μm未満である場合、活物質との密着性の向上が見られないことを確認した。また、比較例2においては、圧延集合組織となっており、活物質との密着性が見られないことを確認した。
なお、実施例に示す電解鉄箔と比較例2に示す圧延鉄箔の判別方法については種々の方法が存在するが、主な判別方法について以下に記載する。
<判別方法A>
電解鉄箔と圧延鉄箔における化学組成の観点からの判別方法としては、ICP発光分析による定量分析が挙げられる。すなわち、圧延鉄箔を高炉や電炉から製造した場合にはマンガン(Mn)の混入を一定レベル以下にすることが困難であるため、全元素成分中におけるMnを0.3wt%以上含有している場合には圧延鉄箔と判断できる。一方でMnが0.05wt%未満である場合には、電解鉄箔と判断可能である。なおこのICP発光分析による定量分析は、焼鈍前後の箔のいずれにおいても有効な判別手段である。
<判別方法B>
電解鉄箔と圧延鉄箔における結晶配向指数の観点からの判別方法としては、X線回折による回折ピークの確認が挙げられる。すなわち、X線回折による回折ピークの強度比より結晶配向指数を算出した場合、圧延鉄箔は(211)面の配向が強く出る傾向にある。また、圧延鉄箔は焼鈍後においても(211)面の影響が電解鉄箔と比較して強く残る。一方で電解鉄箔の場合(110)面の配向が相対的に強いため(211)面の配向は強く出ない傾向にあり、(211)面の配向に基づいて電解鉄箔と圧延鉄箔とを判別可能である。
なお、熱処理後の電解鉄箔と圧延鉄箔をより正確に判別する場合には、上記Aの判別方法と併用することが好ましい。
<判別方法C>
結晶組織の観点から電解鉄箔と圧延鉄箔を判別することも可能である。すなわち焼鈍前の圧延鉄箔の結晶組織を観察した場合、表面においては圧延方向に伸びたような結晶粒となると共に、断面を観察した場合には板厚方向に複数個の結晶粒で構成され、且つ圧延方向に伸びた結晶粒となる。一方で電解鉄箔の場合には、表面においては圧延方向に伸びたような結晶粒とはならず、断面においては基材面側から電解面側に成長したような組織となる。
なお、上記のような結晶組織は熱処理により変化するため、熱処理条件によっては熱処理後の材料に対しても上記判別方法を適用可能であるものの、基本的には熱処理後の電解鉄箔と圧延鉄箔の判別には、上記AとBの判別方法を併用することが好ましい。
<判別方法D>
また表面粗さの観点から電解鉄箔と圧延鉄箔を判別することも可能である。すなわちレーザー顕微鏡による三次元表面性状パラメータ(Sdq、Sdr、Sal等)を測定した場合、圧延鉄箔においては両面に圧延加工特有の圧延筋が形成されるため、Sdq、Sdr、Salが本実施形態で好ましい値として示した数値の範囲外となることが多い。一方で電解鉄箔の場合、基材面では基材の粗度を転写しやすいため、圧延鉄箔の表面粗さと類似することが多いものの、電解面においては、電解により析出した特有の結晶成長に伴う表面凹凸を有しており、Sdq、Sdr、Salが本実施形態で好ましい値として示した数値の範囲内となるものである。
なお上記のような表面粗さは、材料表面をエッチングや研磨した場合には数値が変化するため、上記Aの判別方法に加え、上記B又はCの判別方法を併用することが好ましい。
なお上記した実施形態と各実施例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
また、上記した実施形態と実施例における電解鉄箔は主として電池用集電体に用いられるものとして説明したがこれに限られるものではなく、例えば放熱材や電磁波シールド材など他の用途にも適用が可能である。
以上説明したように、本発明の電解鉄箔 、電池用集電体および電池は、自動車や電子機器など広い分野の産業への適用が可能である。
10 電解鉄箔
10a 第1面
10b 第2面

Claims (7)

  1. 電解鉄箔であって、少なくともどちらか一方の面において鉄の(110)面における結晶子径が45nm以上であり、
    厚みが20μm未満であることを特徴とする、電解鉄箔。
  2. 両面における前記(110)面の結晶配向指数が0.2以上である、請求項1に記載の電解鉄箔。
  3. 少なくともどちらか一方の面において、表面の結晶粒の平均結晶粒径が0.66μm以上である、請求項1又は2に記載の電解鉄箔。
  4. 伸びが1.6%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電解鉄箔。
  5. 引張強さが130MPa以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の電解鉄箔。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載の電解鉄箔からなる、電池集電体用の電解鉄箔。
  7. 請求項1~6のいずれか一項に記載の電解鉄箔からなる、非水系電池集電体用の電解鉄箔。
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