以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
(第1実施形態)
本実施形態について、図1~図11を参照して説明する。本実施形態では、本開示のバルブ装置10を、車両に搭載される車両用の制御バルブに適用した例について説明する。図1に示すバルブ装置10は、図示しないが、流体(本例では、冷却水)を走行用動力源およびラジエータ等に循環させる流体循環回路に適用され、流体循環回路を循環する流体が流れる。
バルブ装置10は、流体循環回路のうちバルブ装置10を介した流通経路における流体の流量を増減できるとともに、当該流通経路における流体の流れを遮断することもできる。流体としては、例えばエチレングリコールを含むLLCなどが用いられる。なお、LLCはLong Life Coolantの略称である。
図1および図2に示すように、バルブ装置10は、外殻を形成するハウジング12を有する。バルブ装置10は、流体が流入する入口部121、流体を流出させる第1出口部122、流体を流出させる第2出口部123がハウジング12に設けられた三方弁で構成されている。バルブ装置10は、単に流路切替弁としての機能だけでなく、入口部121から第1出口部122へ流れる流体と、入口部121から第2出口部123へ流れる流体との流量割合を調整する流量調整弁としても機能する。
バルブ装置10は、後述するシャフト20の軸心CL1まわりに円盤状の弁体が回転することで、バルブ開閉動作を行うディスクバルブとして構成されている。なお、本実施形態は、後述するシャフト20の軸心CL1に沿う方向を軸心方向DRaとし、当該軸心方向DRaに直交するとともに軸心方向DRaから放射状に延びる方向を径方向DRrとして各種構成等を説明する。また、本実施形態は、シャフト20の軸心CL1まわりの方向を周方向DRcとして各種構成等を説明する。
図3に示すように、バルブ装置10は、ハウジング12の内側に、固定子14、駆動部16、回転部18、弾性部材26等が収容されている。
ハウジング12は、回転しない非回転部材である。ハウジング12は、例えば樹脂材料によって形成されている。ハウジング12は、軸心方向DRaに沿って延びるハウジング軸心CL2を有する有底筒状の筒状本体部120と筒状本体部120の開口部120aを閉塞する本体カバー部124とを有している。本実施形態において、ハウジング12は、ハウジング軸心CL2およびシャフト20の軸心CL1が同軸上に位置付けられるように形成されている。
筒状本体部120は、図3および図5に示すように、底面を形成する底壁部120bおよびハウジング軸心CL2まわりを囲む側壁部120cを有している。筒状本体部120は、側壁部120cの外側における底壁部120bよりも開口部120aに近い位置に、入口部121が接続されている。また、筒状本体部120は、側壁部120cの外側における開口部120aよりも底壁部120bに近い位置に、第1出口部122および第2出口部123が接続されている。
筒状本体部120は、側壁部120cの内側に、筒状本体部120の内部へ流体を流入させる入口開口部120dおよび筒状本体部120から流体を流出させる出口開口部120eが形成されている。出口開口部120eは、第1出口開口部120fおよび第2出口開口部120gを有し、第1出口開口部120fおよび第2出口開口部120gがハウジング軸心CL2の周方向DRcにそれぞれ90°離れた位置に形成されている。筒状本体部120は、入口開口部120dが入口部121に連通し、第1出口開口部120fが第1出口部122に連通し、第2出口開口部120gが第2出口部123に連通している。第1出口開口部120fおよび第2出口開口部120gは、それぞれの内径が同じ大きさである。
また、筒状本体部120は、筒状本体部120の内部に固定子14を配置するための固定子支持部120hが側壁部120cの内側に形成されている。固定子支持部120hは、側壁部120cの内側からハウジング軸心CL2に近づくように環状に突き出て形成されており、固定子14の後述する開口面140の反対側の面を形成する支持面143を支持可能に形成されている。
また、筒状本体部120には、筒状本体部120の内部に配置された固定子14および回転子22に挿入するためのハウジング挿入部120iが形成されている。ハウジング挿入部120iは、筒状本体部120の内部に流路が流れる空間を形成する仕切部125から軸心方向DRaの一方側に向かって突出して形成されている。
筒状本体部120の内側は、固定子14によって入口側空間120jと出口側空間120kとに仕切られている。入口側空間120jは、ハウジング12の内側にて入口部121に連通する空間である。出口側空間120kは、ハウジング12の内側にて第1出口部122および第2出口部123に連通する空間である。
また、筒状本体部120の内側には、出口側空間120kを第1出口側空間120lと第2出口側空間120mとに仕切る板状の仕切部125が形成されている。仕切部125は、出口側空間120kを径方向DRrに沿って横断するように設けられている。
固定子14は、図3および図4に示すように、軸心方向DRaを厚み方向とする略円盤状の部材で構成されている。固定子14は、外周部分を形成する外周側面部146を有し、筒状本体部120の内部に収容された際に、外周側面部146が側壁部120cの内周部を形成する内周側面部127に対向するように配置される。
また、固定子14は、軸心方向DRaに延びる固定子軸心CL3を有し、固定子14の円盤部分を形成する固定子本体部145と、外周側面部146に形成された後述する嵌合突起32を含んで構成されている。固定子14は、筒状本体部120の内部において、固定子軸心CL3がシャフト20の軸心CL1と同軸上に位置するように配置されている。また、固定子14は、内周側面部127と、外周側面部146とに形成された後述する嵌合構造30によって、周方向DRcへの移動が規制されている。
固定子本体部145は、平面視での形状が円形状であって、外径が側壁部120cの内径に比較して僅かに小さく形成されており、且つ、固定子支持部120hの内径に比較して大きく形成されている。固定子本体部145は、固定子軸心CL3と軸心CL1とが同軸上に位置するように筒状本体部120の内部に収容された際に、外周側面部146と内周側面部127との間に僅かに隙間があいた状態で配置される。
固定子本体部145は、軸心方向DRaの一方側に後述する回転子22が摺動する表面としての開口面140を有し、軸心方向DRaの他方側に固定子支持部120hに支持される支持面143を有する。開口面140は、周縁が円形であって、後述する回転子22の摺動面220に対応するシール面である。また、固定子本体部145は、支持面143の略中心部分に、ハウジング挿入部120iが挿通される固定子挿通孔142が形成されており、筒状本体部120の内部に収容された際に、固定子挿通孔142にハウジング挿入部120iが挿通される。支持面143の周縁は、円形である。なお、本実施形態における固定子軸心CL3は、開口面140の周縁によって規定される図形(本実施形態では円形)の幾何学中心と、支持面143の周縁によって規定される図形(本実施形態では円形)の幾何学中心とを通過する。
固定子14は、ハウジング12の構成材料に比較して、線膨張係数が小さく、且つ、耐摩耗性に優れた材料で形成されていることが望ましい。固定子14は、ハウジング12よりも硬度が高い高硬度材料で構成されている。具体的には、固定子14はセラミックで構成されている。なお、固定子14は、開口面140を形成する部位だけが、ハウジング12の構成材料に比較して、セラミック等の線膨張係数が小さく、且つ、耐摩耗性に優れた材料で形成されていてもよい。また、固定子14は、ハウジング12の構成材料に比較して、線膨張係数が小さく、且つ、耐摩耗性に優れた材料であれば、樹脂で構成されていてもよいし、金属で構成されていてもよい。さらに、固定子14は、複数の構成部品を組み合わせて構成されていてもよい。
また、固定子本体部145は、流体が通過する流路孔141が形成された流路形成部を構成する。図5に示すように、固定子本体部145には、流体が通過する第1流路孔141aおよび第2流路孔141bが形成されており、第1流路孔141aと外周側面部146との間および第2流路孔141bと外周側面部146との間それぞれに薄肉部144を有する。なお、図5および図7に示す薄肉部144には、図面上において薄肉部144の理解をし易くするために斜線のハッチングを付している。
第1流路孔141aおよび第2流路孔141bは、固定子軸心CL3および固定子挿通孔142と重ならないように、固定子本体部145のうち固定子軸心CL3および固定子挿通孔142から離れた位置に形成されている。第1流路孔141aおよび第2流路孔141bは、セクタ状(すなわち、扇形状)の貫通孔であり、第1流路孔141aおよび第2流路孔141bは、入口側空間120jと出口側空間120kとを連通させる連通路として機能する。
具体的には、第1流路孔141aは、第1出口側空間120lに連通するように、固定子本体部145のうち、第1出口側空間120lに対応する部位に設けられている。また、第2流路孔141bは、第2出口側空間120mに連通するように、固定子本体部145のうち、第2出口側空間120mに対応する部位に設けられている。
固定子本体部145は、第1流路孔141aを形成する第1流路曲面部141aaと、第1流路平面部141abと、第1流路平面部141acと、第1流路中心部141adとを有する。また、固定子本体部145は、第2流路孔141bを形成する第2流路曲面部141baと、第2流路平面部141bbと、第2流路平面部141bcと、第2流路中心部141bdとを有する。
第1流路孔141aは、扇形状の円弧部分を形成する第1流路曲面部141aaと、扇形状の直線部分を形成する第1流路平面部141ab、141acと、第1流路平面部141ab、141acに連結される第1流路中心部141adとに囲まれている。
第1流路曲面部141aaは、周方向DRcに沿って曲面状に延びるとともに、周方向DRcの一方側の端部に第1流路平面部141abが連なり、他方側の端部に第1流路平面部141acが連なっている。第1流路平面部141ab、141acは、第1流路曲面部141aaにおける周方向DRcの両端部それぞれから固定子軸心CL3に向かって平面状に延びており、互いの固定子軸心CL3に近い側の端部が第1流路中心部141adに連なっている。第1流路中心部141adは、第1流路平面部141abの固定子軸心CL3に近い側の端部から第1流路平面部141acの固定子軸心CL3に近い側の端部まで周方向DRcに沿って曲面状に延びている。第1流路中心部141adは、固定子本体部145がハウジング挿入部120iに挿通された際に、軸心方向DRaにおいてハウジング挿入部120iに重ならないように、ハウジング挿入部120iから径方向DRrに所定の距離だけ離れた位置に設けられる。
第2流路孔141bは、第1流路孔141aと同じ形状であって、第1流路孔141aが形成されている位置から固定子軸心CL3を基準に周方向DRcに90°回転させた位置に設けられている。第2流路孔141bは、第1流路曲面部141aa、第1流路平面部141ab、141ac、第1流路中心部141adそれぞれに相当する第2流路曲面部141baと、第2流路平面部141bb、141bcと、第2流路中心部141bdとに囲まれている。
第1流路孔141aおよび第2流路孔141bは、平面視において、第1流路曲面部141aa、第1流路平面部141ab、141ac、第1流路中心部141adそれぞれの長さが第2流路曲面部141ba、第2流路平面部141bb、141bc、第2流路中心部141bdの長さに等しい。また、第1流路孔141aおよび第2流路孔141bは、互いの開口面積が等しい。なお、本実施形態において、第1流路曲面部141aaおよびが第2流路曲面部141baが流路曲面部に相当する。
薄肉部144は、固定子本体部145において、第1流路孔141aより固定子軸心CL3の径方向(すなわち、径方向DRr)の外側の部位および第2流路孔141bより固定子軸心CL3の径方向(すなわち、径方向DRr)の部位である。薄肉部144は、周方向DRcに沿って延びるアーチ状であって径方向DRrに厚みを有する板状の部材であって、外周側面部146の一部を構成する。当該薄肉部144における径方向DRrの厚みは、第1流路孔141aおよび第2流路孔141bの開口面積を確保するため、できるだけ小さく、且つ、固定子本体部145の強度を確保できる大きさで形成される。
駆動部16は、回転力を出力するための機器である。駆動部16は、駆動源としてのモータ161と、モータ161の出力をシャフト20に伝達する動力伝達部材としてのギア部162とを有している。
モータ161は、電力供給を受けることにより回転作動する駆動源である。モータ161は、例えば直流モータまたはステッピングモータが採用される。モータ161は、モータ161と電気的に連結したバルブ制御部17からの制御信号に従って回転する。
バルブ制御部17は、非遷移的実体的記憶媒体であるメモリ、およびプロセッサなどを有するコンピュータである。バルブ制御部17は、メモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行するとともに、コンピュータプログラムに従って種々の制御処理を実行する。
ギア部162は、複数の歯車を有している。ギア部162は、複数の歯車の互いの噛み合いにより、モータ161の回転作動を回転部18へ伝達し回転部18を回転させる。具体的には、ギア部162は、モータ161の回転作動を回転部18のシャフト20へ伝達し、回転部18を構成するシャフト20および回転子22を周方向DRcに回転させる。
また、ギア部162は、シャフト20および回転子22に対して充分な回転力を伝達できるように、複数の歯車の構成によって最適な減速比で設定されている。例えば、複数の歯車によって構成されるギア部162の減速比Rは、300≦R≦700で設定されるのが望ましい。さらに言えば、複数の歯車によって構成されるギア部162の減速比Rは、450≦R≦550で設定されるのが望ましい。本実施形態のギア部162は、歯車としてヘリカルギアまたは平歯車を含むギア機構で構成されている。
回転部18は、バルブ装置10において、駆動部16の出力によってシャフト20の軸心CL1を中心に回転する。回転部18は、シャフト20と、弁体としての回転子22と、シャフト20に回転子22を連結する中間子24とを有している。
シャフト20は、駆動部16が出力する回転力によってシャフト20の軸心である所定軸心CL1を中心に回転する回転軸である。シャフト20は軸心方向DRaに沿って延伸する。シャフト20は、軸心方向DRaの一方側に駆動部16から回転力が伝えられる一端側部位20aを有し、一端側部位20aと軸心方向DRaにて反対となる他端側に他端側部位20bを有している。一端側部位20aは、ギア部162に連結されている。他端側部位20bは、中間子24を介して回転子22に相対回転不能に連結されている。
シャフト20は、一端側部位20aが本体カバー部124に設けられた一端側軸受部126によって回転可能に支持されるとともに、他端側部位20bが中間子24によって相対回転不能に支持されている。
回転子22は、シャフト20の回転に伴って所定軸心CL1を中心に回転することで、第1流路孔141aの開度および第2流路孔141bの開度を増減する弁体である。回転子22は、回転子22の回転軸が所定軸心CL1と同軸上に位置するように配置される。なお、第1流路孔141aの開度は、第1流路孔141aが開かれている度合いであり、第1流路孔141aの全開を100%、全閉を0%として表される。第1流路孔141aの全開は、例えば、第1流路孔141aが回転子22に全く塞がれていない状態である。第1流路孔141aの全閉は、例えば、第1流路孔141aの全体が回転子22に塞がれている状態である。第2流路孔141bの開度は、第1流路孔141aの開度と同様である。
回転子22は、平面視での形状が円形状であって、軸心方向DRaを厚み方向とする円盤状の部材で構成されている。回転子22は、軸心方向DRaにおいて固定子14に相対するように入口側空間120jに配置されている。回転子22は、固定子14の開口面140に相対する摺動面220を有し、摺動面220の略中心部分にハウジング挿入部120iが挿通される回転子挿通孔222が形成されている。回転子22は、筒状本体部120の内部に収容された際に、回転子挿通孔222にハウジング挿入部120iが挿通される。
ここで、摺動面220は、円形であって、所定軸心CL1上に位置する摺動面220の中心から摺動面220の外周部分を形成する外縁までの距離が全周に亘って略等しくなるように形成されている。また、摺動面220に摺動する固定子本体部145の開口面140は、円形であって、固定子軸心CL3上に位置する開口面140の中心から開口面140の外周部分を形成する外縁までの距離が全周に亘って略等しくなるように形成されている。摺動面220は、摺動面220の中心から摺動面220の外縁までの距離の最大値が、開口面140の中心から開口面140の外縁までの距離の最小値以下になるように形成されている。
また、回転子22は、円盤状に形成されており、摺動面220の中心から摺動面220の外縁までの距離が所定軸心CL1から回転子22の外周部分までの距離と等しくなるように形成されている。また、固定子本体部145は、円盤状に形成されており、開口面140の中心から開口面140の外縁までの距離が固定子軸心CL3から固定子本体部145の外周部分までの距離と等しくなるように形成されている。すなわち、固定子14は、固定子軸心CL3から固定子本体部145の外周部分までの距離の最小値が、所定軸心CL1から回転子22の外周部分までの距離の最大値以上となるように形成されている。本実施形態において、摺動面220の外径は、固定子本体部145の外径に比較して僅かに小さく形成されている。
回転子22は、ハウジング12の構成材料に比較して、線膨張係数が小さく、且つ、耐摩耗性に優れた材料で形成されていることが望ましい。回転子22は、ハウジング12よりも硬度が高い高硬度材料で構成されている。具体的には、回転子22は、セラミックで構成されている。なお、回転子22は、摺動面220を形成する部位だけが、ハウジング12の構成材料に比較して、セラミック等の線膨張係数が小さく、且つ、耐摩耗性に優れた材料で形成されていてもよい。また、回転子22は、ハウジング12の構成材料に比較して、線膨張係数が小さく、且つ、耐摩耗性に優れた材料であれば、樹脂で構成されていてもよいし、金属で構成されていてもよい。さらに、回転子22は、複数の構成部品を組み合わせて構成されていてもよい。
図5に示すように、回転子22には、シャフト20の軸心CL1に対して偏心した位置に回転子孔221が形成されている。回転子孔221は、軸心方向DRaに貫通する貫通孔である。回転子孔221は、シャフト20のまわりを回転させた際に、回転子22において第1流路孔141aおよび第2流路孔141bと軸心方向DRaに重なり合う部位に形成されている。
バルブ装置10は、回転子孔221が第1流路孔141aと軸心方向DRaに重なり合うように回転子22を回転させると、第1流路孔141aが開放される。また、バルブ装置10は、回転子孔221が第2流路孔141bと軸心方向DRaに重なり合うように回転子22を回転させると、第2流路孔141bが開放される。
回転子22は、第1流路孔141aを通過する流体および第2流路孔141bを通過する流体の流量割合を調整可能に構成されている。すなわち、回転子22は、第1流路孔141aの開度が大きくなるにともなって第2流路孔141bの開度が小さくなるように構成されている。
中間子24は、シャフト20に回転子22を連結する連結構造の一部を構成する。中間子24は、回転子22の自転を防止する自転防止機構としても機能する。中間子24は、他端側部位20bと回転子22との間に隙間が形成されるように回転子22をシャフト20に連結する。中間子24は、回転子22よりも軸心方向DRaにおいて一端側部位20aに近い位置に設けられている。
中間子24は、シャフト20の外周を覆う中間筒状部241および中間筒状部241から回転子22に向けて軸心方向DRaに沿って突き出る2つの中間ピン242を有している。中間筒状部241は、シャフト20と一体に回転可能なように、圧入、嵌合、接着等の連結手段によってシャフト20に対して連結されている。中間ピン242は、シャフト20の回転を回転子22に伝える部材である。それぞれの中間ピン242は、回転子22のうち摺動面220の反対側の表面に形成されたピン受部223に圧入可能に構成されている。
このように構成される中間子24は、中間ピン242をピン受部223に圧入することによって回転子22の自転を防止する構成になっている。なお、回転子22の自転防止機構は、上述のものに限らず、他の手段によって実現されていてもよい。
弾性部材26は、回転子22を流路形成部に対応する固定子14に付勢する部材である。弾性部材26は、図6に示すように、回転子22に圧縮荷重を付与するコイル状の圧縮バネ261で構成されている。圧縮バネ261は、シャフト20の軸心方向DRaに弾性変形するものである。
圧縮バネ261は、シャフト20のまわりに巻かれて形成されている。すなわち、圧縮バネ261の内側にシャフト20が配置されている。圧縮バネ261は、駆動部16と回転子22との間に圧縮された状態で配置されている。
具体的には、圧縮バネ261は、軸心方向DRaの一方側の端部が本体カバー部124に接し、軸心方向DRaの他方側の端部が回転子22に接するようにハウジング12の内側に配置されている。なお、圧縮バネ261は、トーションバネとして機能しないように、回転子22および本体カバー部124の少なくとも一方に対して固定されていない。
圧縮バネ261は、シャフト20の軸心CL1に対して傾斜し難くなるように両端部がクローズエンドとなるバネが採用されている。クローズエンドとなるバネは、バネの据わりをよくするために、バネ端部の巻だけ巻角度を変えて隣の巻にバネ線の端部を付けたものである。なお、圧縮バネ261は、両端部がオープンエンドとなるバネが採用されていてもよい。
圧縮バネ261によって回転子22が固定子14に押し付けられることで、固定子14の開口面140と回転子22の摺動面220との接触状態が維持される。この接触状態は、固定子14の開口面140と回転子22の摺動面220とが面接触した状態である。
続いて、本実施形態の内周側面部127と外周側面部146とに形成される嵌合構造30について、図7~図10を参照して説明する。なお、図7および図8は、嵌合構造30を見やすく図示するために、ハウジング12の内部に収容される固定子14を省略している。
図7に示すように、筒状本体部120は、径方向断面が円筒状であって、側壁部120cの壁の厚さが周方向DRcで略等しく形成されている。すなわち、筒状本体部120は、筒状本体部120の外周部および内周側面部127がハウジング軸心CL2に対して偏心しておらず、筒状本体部120の外周部および内周側面部127のそれぞれの軸心がハウジング軸心CL2と同軸上に形成されている。
また、内周側面部127には、ハウジング軸心CL2から遠ざかるように窪んだ嵌合溝31が1つ形成されている。嵌合溝31は、平面視が略矩形状(すなわち、ハウジング軸心CL2に直交する面の断面形状が略矩形状)である。嵌合溝31は、それぞれが側壁部120cの内側から外側に向かって延びて形成される2つの溝側面部31aと、2つの溝側面部31aのそれぞれの端部に連なって形成される溝周面部31bを有する。
嵌合溝31は、ハウジング軸心CL2の径方向(すなわち、径方向DRr)に沿う方向に窪んでいる。ここで、ハウジング軸心CL2から嵌合溝31に向かう方向(すなわち、嵌合溝31が窪む方向)を第1方向DR1、第1方向DR1およびハウジング軸心CL2に直交する方向を第2方向DR2とする。2つの溝側面部31aのそれぞれは、第1方向DR1に沿って平面状、且つ、互いに平行に延びている。2つの溝側面部31aそれぞれの第1方向DR1の端部のうち、ハウジング軸心CL2から遠い側の端部には、溝周面部31bが連なっている。
溝周面部31bは、一方の溝側面部31aから他方の溝側面部31aまで第2方向DR2に沿って平面状に延びている。溝周面部31bの第2方向DR2の大きさは、2つの溝側面部31aそれぞれの第1方向DR1の大きさよりも大きい。本実施形態では、溝周面部31bの第2方向DR2の大きさは、2つの溝側面部31aそれぞれの第1方向DR1の大きさの約2倍の大きさで形成されている。
嵌合溝31は、溝の深さを形成する溝側面部31aにおける側壁部120cの内側から外側に向かう方向(すなわち、第1方向DR1)の大きさが側壁部120cの壁の厚みの略1/2となるように形成されている。なお、嵌合溝31は、第1方向DR1の大きさが側壁部120cの厚みの1/2より小さくてもよいし、1/2より大きくてもよい。
また、嵌合溝31は、ハウジング軸心CL2の径方向において、ハウジング軸心CL2と出口開口部120eとの間に介在する部位と異なる部位に形成されている。換言すれば、嵌合溝31は、内周側面部127を出口開口部120eが形成されている領域と出口開口部120eが形成されていない領域とに区分けした場合における、出口開口部120eが形成されていない領域に形成される。嵌合溝31の設置位置について、図8を参照して説明する。
内周側面部127は、ハウジング軸心CL2を中心とする円の一部を形成する円弧によって、出口開口部120eが形成されている領域と出口開口部120eが形成されていない領域とに区分けできる。以下、出口開口部120eが形成されている領域を出口領域Ae、出口開口部120eが形成されていない領域を非出口領域Anとも呼ぶ。
例えば、出口領域Aeは、出口開口部120eの周方向DRcにおける中心Cを起点として、内周側面部127上に所定の範囲で定めることができる。具体的に、出口領域Aeは、ハウジング軸心CL2を回転の中心として、出口開口部120eの中心Cから周方向DRcにおける両側にそれぞれ所定の角度だけ離れた点と点の間の範囲として設定できる。
本実施形態において、第1出口開口部120fの周方向DRcにおける中心C1を起点として、ハウジング軸心CL2を回転の中心として中心C1からそれぞれ45°離れた点と点の間を第1出口領域Ae1とする。すなわち、第1出口領域Ae1は、円の中心がハウジング軸心CL2であって、中心角の角度が90°の円弧部分で設定される領域である。また、第1出口領域Ae1は、円弧の中心が第1出口開口部120fの周方向DRcにおける中心C1と重なるように設定される領域である。
また、第2出口開口部120gの周方向DRcにおける中心C2を中心として、ハウジング軸心CL2を回転の中心として中心C2からそれぞれ45°だけ離れた点と点の間を第2出口領域Ae2とする。すなわち、第2出口領域Ae2は、円の中心がハウジング軸心CL2であって、中心角の角度が90°の円弧部分で設定される領域である。また、第2出口領域Ae2は、円弧の中心が第2出口開口部120gの周方向DRcにおける中心C2と重なるように設定される領域である。
ここで、出口領域Aeの範囲を定める際における所定の角度は、流路孔141および出口側空間120kの数量や大きさによって、任意に設定可能である。例えば、所定の角度は、内周側面部127が形成される範囲(すなわち、0℃より大きく、360°より小さい範囲)であれば、出口開口部120eの周方向DRcにおける中心Cから両方向にそれぞれ45°と異なる角度で設定されてもよい。また、所定の角度は、出口開口部120eの周方向DRcにおける中心Cから周方向DRcにおける一方側に設定される角度と、他方側に設定される角度とが、異なる角度で設定されてもよい。
また、本実施形態において、内周側面部127における第1出口領域Ae1および第2出口領域Ae2と異なる領域は、嵌合溝31が形成される領域である。すなわち、本実施形態において、当該領域を非出口領域Anとしたとき、嵌合溝31は、第1出口領域Ae1および第2出口領域Ae2に対向する領域である非出口領域Anに配置される。
また、嵌合溝31は、ハウジング軸心CL2の径方向において、所定軸心CL1と出口開口部120eとの間に介在する部位と異なる部位であって、出口開口部120eが形成されている部位に対向する位置に形成されてもよい。例えば、本実施形態では、嵌合溝31は、非出口領域Anのうち、ハウジング軸心CL2の径方向において、第1出口開口部120fに対向する部位に形成されている。換言すれば、嵌合溝31は、非出口領域Anにおいて、ハウジング軸心CL2を基準に、第1出口開口部120fが形成されている部位の反対側の部位に形成されている。なお、嵌合溝31は、非出口領域Anのうち、ハウジング軸心CL2の径方向において、第2出口開口部120gに対向する部位に形成されてもよい。すなわち、嵌合溝31は、非出口領域Anにおいて、ハウジング軸心CL2を基準に、第2出口開口部120gが形成されている部位の反対側の部位に形成されてもよい。
また、嵌合溝31は、軸心方向DRaに沿って、開口部120aから固定子支持部120hにおける固定子14の支持面143を支持する部位まで延伸して形成されている。嵌合溝31は、筒状本体部120の内部に固定子14を配置する際に、外周側面部146に形成される嵌合突起32を受け入れ可能に形成されている。
続いて、ハウジング12の内部に固定子14が収容された状態について、図9~図11を参照して説明する。図9~図11は、嵌合突起32を見やすく図示するために、ハウジング12の内部に収容される回転部18および弾性部材26を省略している。
図9に示すように、外周側面部146には、固定子軸心CL3から遠ざかるように突出した嵌合突起32が1つ形成されている。嵌合突起32は、固定子14が筒状本体部120に収容された際に、ハウジング軸心CL2の径方向において、嵌合溝31に相対する位置に形成されている。すなわち、嵌合突起32は、ハウジング軸心CL2の径方向において、非出口領域Anに重なる位置に配置されている。換言すれば、嵌合突起32は、第1流路孔141aおよび第2流路孔141bから離れた位置に形成されている。
また、嵌合突起32は、外周側面部146から内周側面部127に向けて固定子軸心CL3の径方向(すなわち、径方向DRr)に沿って突出して形成されている。具体的に、嵌合突起32は、固定子軸心CL3から第1出口開口部120fに向かう方向の反対側の方向に向かって突出して形成されている。なお、当該固定子軸心CL3から第1出口開口部120fに向かう方向の反対側の方向は、第1方向DR1に一致する方向である。嵌合突起32は、平面視が略矩形状(すなわち、固定子軸心CL3に直交する面の断面形状が略矩形状)であって、それぞれの溝側面部31aに相対する2つの突起側面部32aと、溝周面部31bに相対する突起周面部32bを有する。
2つの突起側面部32aのそれぞれは、嵌合突起32が突出する方向である第1方向DR1に沿って平面状、且つ、互いに平行に延びており、自身が対向する溝側面部31aに平行している。2つの突起側面部32aのそれぞれの第1方向DR1の端部のうち、固定子軸心CL3から遠い側の端部には、突起周面部32bが連なっている。
突起周面部32bは、一方の突起側面部32aから他方の突起側面部32aまで第2方向DR2に沿って平面状に延びている。また、突起周面部32bは、溝周面部31bに平行している。そして、図10に示すように、突起周面部32bの第2方向DR2の大きさD1は、2つの突起側面部32aそれぞれの第1方向DR1の大きさD2よりも大きい。本実施形態では、突起周面部32bの第2方向DR2の大きさD1は、2つの突起側面部32aそれぞれの第1方向DR1の大きさD2の約2倍の大きさで形成されている。
また、突起周面部32bの第2方向DR2の大きさD1は、図9に示す第1出口開口部120f、第2出口開口部120gそれぞれの内径D3よりも小さい。そして、突起側面部32aの第1方向DR1の大きさD2は、薄肉部144の径方向DRrの厚みD4と略同じ大きさである。
また、嵌合突起32は、嵌合溝31に嵌め合い可能なように、突起側面部32aにおける側壁部120cの内側から外側に向かう方向(すなわち、第1方向DR1)の大きさが溝側面部31aの第1方向DR1の大きさに比較して小さく形成されている。また、嵌合突起32は、互いに対向する突起側面部32a間の距離が、互いに対向する溝側面部31aの間の距離に比較して小さく形成されている。換言すれば、突起周面部32bの第2方向DR2の大きさは、溝周面部31bの第2方向DR2の大きさより小さい。
そして、嵌合突起32は、突起側面部32aの第1方向DR1の大きさD2が、外周側面部146と内周側面部127との隙間の寸法D5の2倍以上の大きさで形成されている。換言すれば、突起側面部32aの大きさD2は、嵌合溝31が形成されていない部位を通過するとともに径方向DRrに沿って延びる仮想の線L1上においてハウジング軸心CL2を基準に一方側および他方側に形成される2つの隙間の寸法D5の合計以上である。本実施形態では、突起側面部32aの大きさD2は、当該隙間の寸法D5の約3倍の大きさで形成されている。
また、嵌合突起32は、固定子軸心CL3の周方向(すなわち、周方向DRc)の大きさD6が、第1流路孔141aおよび第2流路孔141bいずれの周方向DRcの大きさよりも小さい。具体的に、嵌合突起32は、嵌合突起32の大きさD6が、図9に示す第1流路曲面部141aaおよび第2流路曲面部141baそれぞれの周方向DRcの大きさD7より小さい。
また、嵌合突起32は、軸心方向DRaの大きさが固定子14の軸心方向DRaの大きさとほぼ同じ大きさであって、固定子14の周方向DRcへの移動を規制するために充分な大きさで形成されている。
このように、嵌合構造30は、外周側面部146に形成された嵌合突起32および内周側面部127に形成された嵌合溝31によって構成されている。そして、嵌合構造30は、嵌合突起32が嵌合溝31に嵌め合うことで、回転子22が回転しても、各突起側面部32aの一方が相対する溝側面部31aに接することで、固定子14の周方向DRcへの移動を規制できる。
続いて、ハウジング12の内部に固定子14および回転子22が収容された状態について、図11を参照して説明する。図11は、ハウジング12の内部に収容されるシャフト20と、弾性部材26と、ピン受け部23とを省略している。
図11に示すように、回転子22は、所定軸心CL1およびハウジング軸心CL2が同軸上に位置づけられるように配置される。また、回転子22は、外径が固定子本体部145の外径に比較して小さく形成されている。このため、所定軸心CL1の径方向DRrにおいて、外周側面部146に形成された嵌合突起32は、回転子22の外周を形成する回転子外周部225より所定軸心CL1の径方向外側に配置されている。
次に、本実施形態のバルブ装置10の作動について説明する。バルブ装置10は、図3および図5に示すように、流体は、矢印Fiのように入口部121から入口側空間120jへ流入する。そして、第1流路孔141aが開いている場合には、流体が入口側空間120jから第1流路孔141aを介して第1出口側空間120lへ流れる。第1出口側空間120lへ流れ込んだ流体は、第1出口側空間120lから第1出口部122を介してバルブ装置10の外部へ矢印F1oのように流出する。この場合、第1流路孔141aを通過する流体の流量は、第1流路孔141aの開度に応じて定まる。すなわち、入口部121から第1流路孔141aを介して第1出口部122へ流れる流体の流量は、第1流路孔141aの開度が大きいほど大きくなる。
一方、第2流路孔141bが開いている場合には、流体が入口側空間120jから第2流路孔141bを介して第2出口側空間120mへ流入する。第2出口側空間120mへ流れ込んだ流体は第2出口側空間120mから第2出口部123を介してバルブ装置10の外部へ矢印F2oのように流出する。この場合、第2流路孔141bを通過する流体の流量は、第2流路孔141bの開度に応じて定まる。すなわち、入口部121から第2流路孔141bを介して第2出口部123へ流れる流体の流量は、第2流路孔141bの開度が大きいほど大きくなる。
以上説明した本実施形態のバルブ装置10は、回転子22がシャフト20の回転に伴って所定軸心CL1を中心に回転する際に、固定子14の開口面140に摺動しながら回転する。また、ギア部162は、回転子22に充分な回転力を発生させるために、複数の歯車によって最適な減速比となるように構成されている。このため、回転子22が固定子14に摺動して回転する際に、回転子22を介して固定子14に回転力が伝達し易くなっている。
ここで、バルブ装置10は、回転子22の回転に伴って固定子14が周方向DRcにずれると、流路孔141と回転子孔221との重なり合う範囲がずれる虞がある。また、流路孔141と回転子孔221との重なりがずれる範囲は、所定軸心CL1から離れるにしたがい、大きくなる。
これに対して、本開示のバルブ装置10は、外周側面部146および内周側面部127が嵌合溝31および嵌合突起32を含んで構成される嵌合構造30によって嵌め合い可能であって、固定子14に対する周方向DRcの移動が制限されている。このため、バルブ装置10は、嵌合構造30が外周側面部146より径方向DRrの内側に形成される場合に比較して、所定軸心CL1から嵌合構造30までの距離を大きくすることができる。したがって、バルブ装置10は、固定子14とハウジング12との嵌め合い公差に伴う固定子14の周方向DRcのずれを抑制することができる。
また、バルブ装置10は、固定子14とハウジング12との嵌め合い公差に伴う固定子14の周方向DRcのずれを小さくできるので、外周側面部146への加工精度の影響を抑制することができる。このため、バルブ装置10は、固定子14を製造する際の高精度加工を不要にできる。
また、バルブ装置10は、嵌合突起32が外周側面部146から内周側面部127に対して突出して形成されているので、外周側面部146に嵌合溝31が設けられる場合に比較して、固定子14の中心から嵌合構造30までの距離を大きくできる。このため、バルブ装置10は、外周側面部146に嵌合溝31が形成され、内周側面部127に嵌合突起32が形成される場合に比較して、固定子14とハウジング12との嵌め合い公差に伴う固定子14の周方向DRcのずれを抑制できる。
また、バルブ装置10は、突起側面部32aの大きさD2が、隙間の寸法D5の2倍以上の大きさで形成されている。このため、仮に、回転子22と固定子14との摺動によって、嵌合突起32が嵌合溝31から離れるように固定子軸心CL3が所定軸心CL1に対して偏心しても、突起側面部32aを溝側面部31aに確実に当接させることができる。
ところで、嵌合突起32は、突起側面部32aが溝側面部31aに当接する際に、嵌合突起32に対して周方向DRcのせん断力が発生するため、破損防止の観点から突起周面部32bの大きさD1ができるだけ大きいことが望まれる。本実施形態では、バルブ装置10は、突起周面部32bの大きさD1は、突起側面部32aの大きさD2よりも大きい。このため、突起周面部32bの大きさD1が突起側面部32aの大きさD2より小さい場合に比較して、突起側面部32aが溝側面部31aに当接する際に嵌合突起32に生じるせん断力よって嵌合突起32が破損し難くできる。
また、バルブ装置10は、破損防止の観点から突起周面部32bの大きさD1ができるだけ大きいことが望まれるところ、当該大きさD1を大きく設定するほど、周方向DRcの大きさD6も大きくなる。そして、当該大きさD6が大きくなるほど、嵌合突起32の周方向DRcの大きさの製造誤差が大きくなり易い。これは、第1流路孔141aおよび第2流路孔141bと回転子孔221との重なり合う範囲のずれが大きくなる要因となる。そして、第1流路孔141aおよび第2流路孔141bの周方向DRcの大きさに対する嵌合突起32の周方向DRcの大きさの製造誤差が大きいほど、当該重なり合う範囲のずれが大きくなる。
これに対して、嵌合突起32は、嵌合突起32の大きさD6が、第1流路曲面部141aaおよび第2流路曲面部141baそれぞれの大きさD7より小さい。このため、嵌合突起32の大きさD6が第1流路曲面部141aaおよび第2流路曲面部141baそれぞれの大きさD7より大きい場合に比較して、嵌合突起32の大きさD6の製造誤差を小さくし易い。したがって、嵌合突起32の製造誤差に起因する第1流路孔141aおよび第2流路孔141bと回転子孔221との重なり合う範囲のずれを小さくし、バルブ装置10から流出する流量の誤差を小さくできる。
また、嵌合溝31および嵌合突起32は、互いに確実に嵌合するために、溝側面部31aの第1方向DR1の大きさおよび突起側面部32aの大きさD2を十分に確保する必要がある。しかしながら、突起側面部32aの大きさD2を過度に大きくすると、突起側面部32aに対応する溝側面部31aの第2方向DR2の大きさも大きくする必要があるため、側壁部120cにおける嵌合溝31が形成される部位の壁の厚みの確保が難しくなる。当該壁の厚みが充分に確保できない場合、嵌合突起32が嵌合溝31に当接する際の衝撃による側壁部120cの破損の要因となるため、好ましくない。
これに対して、本実施形態において、嵌合溝31は、溝側面部31aの第1方向DR1の大きさが側壁部120cの壁の厚みの略1/2で形成されている。このため、嵌合溝31は、嵌合突起32を嵌合させるための充分な深さを確保するとともに、嵌合突起32が当接する際の衝撃による破損を防ぐための充分な大きさを確保することができる。
また、仮に、固定子14および嵌合突起32が樹脂で構成される場合、突起側面部32aの大きさD2を大きくするほど、樹脂成形時の収縮に起因するひけが発生し易くなり、嵌合突起32の加工精度が悪化する。
これに対して、本実施形態では、突起側面部32aの大きさD2は、第1流路孔141aおよび第2流路孔141bの開口面積を確保し、且つ、固定子本体部145の強度を確保できる最低限の大きさで形成される薄肉部144の厚みD6と略同じ大きさである。このため、突起側面部32aの大きさD2を過度に大きくすることによる加工精度の悪化を抑制することができる。
また、バルブ装置10は、内周側面部127に嵌合溝31が形成されている。このため、側壁部120cにおける嵌合溝31が形成されている部位の壁の厚みを大きくして、壁の厚さを確保することが考えられる。仮に、嵌合溝31が筒状本体部120における径方向DRrにおいて、所定軸心CL1と出口開口部120eとの間に介在する部位に形成されると、バルブ装置10は、壁の厚みが大きくなることによって、出口開口部120eより下流側の流路長さが延長される。
そして、バルブ装置10は、外周側面部146に嵌合突起32が形成されている。ここで、仮に、嵌合突起32を外周側面部146のうちの薄肉部144を構成する部位に形成する場合、嵌合突起32が嵌合溝31に当接する際の衝撃によって薄肉部144の破損を防ぐため、薄肉部144の径方向DRrの大きさを充分に確保する必要がある。この場合、本実施形態である嵌合突起32を外周側面部146のうちの薄肉部144を構成しない部位に形成する場合に比較して、薄肉部144の径方向DRrの大きさを大きくする必要が生じる。しかし、薄肉部144の径方向DRrの大きさが大きくなることによって、出口開口部120eより下流側の流路長さが延長される。
筒状本体部120の壁の厚みおよび薄肉部144の径方向DRrの大きさが大きくなることによって出口開口部120eより下流側の流路長さが延長されることは、ハウジング12の内部で発生する圧力損失が増加する要因となるため、好ましくない。
これに対して、本実施形態のバルブ装置10は、嵌合溝31が筒状本体部120における径方向DRrにおいて、所定軸心CL1と出口開口部120eとの間に介在する部位と異なる部位に配置される。また、バルブ装置10は、嵌合突起32が外周側面部146における径方向DRrにおいて、所定軸心CL1と第1流路孔141aおよび第2流路孔141bとの間に介在する部位と異なる部位に配置される。このため、バルブ装置10は、内周側面部127に嵌合溝31が設けられ、外周側面部146に嵌合突起32が設けられることによる流路孔141から出口開口部120eまでの流路の延長を回避し、流路の延長による圧力損失の増加を抑制できる。
ところで、嵌合突起32は、固定子14の周方向DRcへの移動を規制する場合、突起側面部32aに溝側面部31aが接する際に、嵌合突起32に対して周方向DRcのせん断力が発生する。すなわち、外周側面部146における嵌合突起32が形成される部位には、周方向DRcのせん断力が発生する。このため、嵌合突起32が、第1流路孔141aおよび第2流路孔141bから近い位置に形成され、固定子本体部145における嵌合突起32が形成される部位の径方向DRrの大きさが小さいと、固定子14が破損する虞がある。
これに対して、本実施形態の固定子14は、嵌合突起32が、第1流路孔141aおよび第2流路孔141bから離れた位置に形成されている。このため、バルブ装置10は、嵌合突起32が固定子14の周方向DRcへの移動を規制する際におけるせん断力によって、固定子14が破損することを抑制することができる。
また、バルブ装置10は、嵌合構造30のうち、それぞれが互いに当接する突起側面部32aおよび溝側面部31aが平面状に形成されている。このため、嵌合突起32が嵌合溝31に当接する際に、互いに当接する部位同士が平面状であるため、当接する部位が平面状でない場合に比較して嵌合突起32と嵌合溝31とが接触する面積を確保し易くなり、固定子14の移動を制限し易くできる。
また、本開示のバルブ装置10は、嵌合突起32が回転子22の回転子外周部225より所定軸心CL1の径方向外側に形成されている。また、本開示のバルブ装置10は、固定子軸心CL3から開口面140の外縁までの距離の最小値が、所定軸心CL1から摺動面220の外縁までの距離の最大値以上となるように形成されている。
このため、バルブ装置10は、摺動面220を開口面140によって覆うことができるので、摺動面220と開口面140との間に流体のシール性の悪化を抑制し、固定子14と回転子22との間の流体漏れを抑制できる。
(第1実施形態の第1の変形例)
上述の第1実施形態では、嵌合構造30が、外周側面部146に1つ形成された嵌合溝31と、内周側面部127に形成された1つの嵌合突起32とで構成されている例について説明したが、これに限定されない。
例えば、嵌合構造30は、内周側面部127に形成された複数の嵌合溝31と、外周側面部146に形成された複数の嵌合突起32とで構成されてもよい。この場合、複数の嵌合溝31のそれぞれは、図12に示すように、ハウジング軸心CL2の径方向において、ハウジング軸心CL2と出口開口部120eとの間に介在する部位と異なる部位に形成されてもよい。
これにより、バルブ装置10は、内周側面部127に複数の嵌合溝31が設けられることによる第1流路孔141aから第1出口開口部120fまでの流路、第2流路孔141bから第2出口開口部120gまでの流路の延長を回避することができる。したがって、流路の延長による圧力損失の増加を抑制できる。
(第1実施形態の第2の変形例)
上述の第1実施形態では、嵌合溝31は、ハウジング軸心CL2の径方向において、ハウジング軸心CL2と出口開口部120eとの間に介在する部位と異なる部位に形成されている例について説明したが、これに限定されない。
例えば、嵌合溝31は、図13に示すように、ハウジング軸心CL2の径方向において、ハウジング軸心CL2と出口開口部120eとの間に介在する部位に1つ形成されていてもよい。また、嵌合溝31が複数形成される場合、複数の嵌合溝31のそれぞれは、図14に示すように、ハウジング軸心CL2の径方向において、ハウジング軸心CL2と出口開口部120eとの間に介在する部位に複数形成されていてもよい。
(第1実施形態の第3の変形例)
上述の第1実施形態では、嵌合溝31は、ハウジング軸心CL2の径方向において、ハウジング軸心CL2と出口開口部120eとの間に介在する部位と異なる部位のみに形成されている例について説明したが、これに限定されない。
例えば、嵌合溝31が複数形成される場合、複数の嵌合溝31のうちのいずれかは、図15に示すように、ハウジング軸心CL2の径方向において、ハウジング軸心CL2と出口開口部120eとの間に介在する部位に形成されてもよい。さらに、複数の嵌合溝31のうちの残りの嵌合溝31は、ハウジング軸心CL2の径方向において、ハウジング軸心CL2と出口開口部120eとの間に介在する部位と異なる部位に形成されてもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図16および図17を参照して説明する。本実施形態では第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
図16および図17に示すように、バルブ装置10は、回転子22を所定軸心CL1の周方向DRcの一方側に付勢する付勢部材29を備える。付勢部材29は、コイル状に形成されたトーションバネで構成されている。付勢部材29は、駆動部16と回転子22との間に配置されている。付勢部材29は、シャフト20の軸心CL1まわりに巻かれて形成されている。付勢部材29は、そのコイル径D2が、圧縮バネ261のコイル径D1よりも大きくなっている。そして、付勢部材29は、その内側に圧縮バネ261が配置されている。
付勢部材29は、圧縮バネ261と異なり、回転子22および本体カバー部124それぞれに対して固定されている。付勢部材29は、軸心方向DRaの一端側が本体カバー部124に相対回転不能に連結され、軸心方向DRaの他端側が回転子22に相対回転不能に連結されている。付勢部材29を回転子22に連結する方法は種々考えられるが、例えば、付勢部材29の端部は、回転子22に固定された固定ピン224に係止されることにより回転子22に連結される。
付勢部材29は、周方向DRcに捩じられて弾性変形を生じた状態で使用される。付勢部材29は、自身の弾性変形によって、回転子22を周方向DRcの一方側へ付勢する付勢力を発生する。付勢部材29は、周方向DRcに捩じられているだけで軸心方向DRaに圧縮されているわけではない。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態のバルブ装置10は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
このように構成されるバルブ装置10は、付勢部材29の付勢力が回転子22を介して固定子14に作用するので、付勢部材29の付勢力によって、固定子14の変位を抑制できる。すなわち、バルブ装置10は、流路孔141と回転子孔221との重なりがずれる範囲を抑制できるので、流路孔141から流出する流量を精度良く制御できる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図18および図19を参照して説明する。本実施形態では第2実施形態と異なる部分について主に説明する。
図18および図19に示すように、本実施形態のギア部162は、複数の歯車に代えて、螺旋状の歯を有するウォーム163aと、そのウォーム163aに噛み合うウォームホイール163bとを有している。すなわち、本実施形態のギア部162は、ウォームギア163で構成されている。なお、図18および図19では、ウォームギア163を分かり易くするため、ハウジング12を省略している。
ウォーム163aは、モータ161の回転軸に設けられており、モータ161の回転軸と相対回転不能に連結されている。ウォームホイール163bは、シャフト20の一端側部位20aに取り付けられており、シャフト20と相対回転不能に連結されている。これにより、例えば、モータ161が回転力を発生すると、そのモータ161の回転力は、ウォーム163a、ウォームホイール163bの順に伝達され、ウォームホイール163bおよびシャフト20を介して回転子22へと伝達される。
また、ギア部162は、ウォームギア163で構成されているため、ウォームホイール163b側からウォーム163a側へ回転力を伝達させようとしてもウォーム163aが回転しない。すなわち、ウォーム163aは、ウォームホイール163bからモータ161への回転力の伝達を阻止するように構成されている。換言すれば、ウォーム163aは、モータ161から回転子22に伝達される回転力の方向に対して逆向きの回転力がモータ161に伝達されることを阻止する逆伝達阻止歯車として構成されている。
その他の構成は、第2実施形態と同様である。本実施形態のバルブ装置10は、第2実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第2実施形態と同様に得ることができる。
このように構成されるバルブ装置10は、ウォーム163aがウォームホイール163b側からモータ161側へ回転力が伝達することを阻止することができる。
ところで、本実施形態でも第2実施形態と同様に、付勢部材29は、周方向DRcの一方側へ回転子22を付勢している。この場合、バルブ装置10は、モータ161が回転子22を回転させていない場合、回転子22の回転位置を保持するために付勢部材29の付勢力に対抗する反力が必要となる。
これに対して、本実施形態のバルブ装置10は、ウォーム163aがウォームホイール163b側から回転力が伝達することを阻止することができるので、付勢部材29により回転子22から発生する回転力に起因してモータ161が回転させられることがない。このため、バルブ装置10は、モータ161に通電することなく回転子22の回転位置を保持することで、固定子14の周方向DRcのずれを抑制することができる。
また、本実施形態のギア部162は、ウォームギア163で構成されているので、回転子22からモータ161への回転力の伝達を阻止する構造としてウォームギア163以外の構成で構成されている場合に比較して、部品点数を少なくすることができる。このため、ギア部162は、構造の簡素化および製造の簡易化を図りやすい。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図20および図21を参照して説明する。本実施形態では第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
図20および図21に示すように、本実施形態のシャフト20は、筒状本体部120に対して偏心して配置されている。すなわち、シャフト20は、筒状本体部120の内部において、所定軸心CL1がハウジング軸心CL2と同軸上に位置付けされないように配置されている。なお、回転子22は、第1実施形態と同じく、回転子22の回転軸が所定軸心CL1と同軸上に位置するように筒状本体部120の内部に配置される。
また、本実施形態の筒状本体部120は、筒状本体部120の外周部に対して内周側面部127が偏心しており、側壁部120cの壁の厚さが周方向DRcで異なって形成されている。具体的に、筒状本体部120は、外周部の軸心がハウジング軸心CL2と同軸上になるように形成されている。また、筒状本体部120は、内周側面部127における嵌合溝31が形成されていない部分を円周とする仮想円の中心VCが所定軸心CL1上に位置付けられるように形成されている。すなわち、本実施形態のハウジング軸心CL2は、筒状本体部120の外周部から等距離にある線であって、内周側面部127から等距離にある線ではない。
固定子14は、筒状本体部120に対して偏心して配置されており、固定子軸心CL3の位置が所定軸心CL1およびハウジング軸心CL2によって定められる領域に設定される。
ここで、筒状本体部120におけるハウジング軸心CL2の径方向において、所定軸心CL1およびハウジング軸心CL2を結ぶ線を第1仮想線VL1とし、第1仮想線VL1に直交するとともに、ハウジング軸心CL2を通過する線を第2仮想線VL2とする。この場合、筒状本体部120は、第2仮想線VL2によって、一方の領域Ar1と他方の領域Ar2との2つの領域に分割することができる。
そして、嵌合突起32が一方の領域Ar1に位置付けられると、固定子14は、固定子軸心CL3が他方の領域Ar2に位置付けられるように、筒状本体部120の内部に配置されている。本実施形態において、固定子14は、第1実施形態と同じく、固定子軸心CL3が所定軸心CL1と同軸上に位置するように筒状本体部120の内部に配置されている。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態のバルブ装置10は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
ところで、側壁部120cは、内周側面部127に嵌合溝31が形成される部分の壁の厚みを充分に確保されることが望ましい。換言すれば、側壁部120cは、嵌合溝31が形成されることによって、嵌合溝31が形成される部位の壁の厚みが、嵌合溝31が形成されていない部位の壁の厚みよりも小さくされないことが望ましい。しかしながら、ハウジング軸心CL2と固定子軸心CL3とが同軸上になるように配置し、嵌合溝31が形成される部分の壁の厚みを大きくすると、筒状本体部120は、嵌合溝31が形成されていない部位の壁の厚みも大きくなるため、外径が大きくなってしまう。
これに対して、本実施形態において、固定子14は、嵌合突起32が位置付けられる一方の領域Ar1と異なる他方の領域Ar2に固定子軸心CL3が位置付けられるように、偏心して配置されている。すなわち、固定子14は、内周側面部127に嵌合溝31が形成される部位を含まない領域側に固定子軸心CL3が位置付けられるように配置されている。このため、バルブ装置10は、嵌合溝31が形成される部位の側壁部120cの壁の厚みを確保し易くできるとともに、ハウジング軸心CL2および固定子軸心CL3が同軸上に配置される場合に比較して、筒状本体部120の外径を小さくできる。
(第4実施形態の変形例)
上述の第4実施形態では、嵌合突起32が外周側面部146に1つ形成されている場合の固定子14の配置位置を示した例について説明したが、これに限定されない。例えば、嵌合突起32が外周側面部146に複数形成されている場合にも、固定子14は、上述のように、筒状本体部120に対して偏心して配置することができる。
この場合、固定子14は、複数の嵌合突起32のうち、少なくとも1つの嵌合突起32が一方の領域Ar1に位置付けられるとともに、固定子軸心CL3が他方の領域Ar2に位置付けられるように、筒状本体部120の内部に配置される。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、図22を参照して説明する。本実施形態では第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
図22に示すように、本実施形態の固定子14は、外周側面部146に固定子軸心CL3から近づくように窪んだ嵌合溝33が形成されている。嵌合溝33は、溝の深さを形成する溝側面部33aにおける外周側面部146から外周側面部146の内側に向かう方向の大きさが固定子本体部145の半径の半分の大きさよりも小さく形成されている。すなわち、嵌合溝33は、固定子軸心CL3の径方向における固定子軸心CL3から溝側面部33aまでの大きさL1が、溝側面部33aから嵌合溝33が形成されていない部分を円周とする仮想円の外周部分までの大きさL2よりも大きく形成されている。
また、図22に示すように、本実施形態の内周側面部127には、ハウジング軸心CL2に近づくように突出した嵌合突起34が形成されている。すなわち、嵌合突起34は、内周側面部127から外周側面部146に向けて突出して形成されている。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態のバルブ装置10は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
このように構成される本実施形態の嵌合構造30は、外周側面部146に形成された嵌合溝33および内周側面部127に形成された嵌合突起34によって構成されている。このため、バルブ装置10は、嵌合溝33が嵌合突起34に嵌め合うことで、回転子22が回転しても、各突起側面部34aの一方が相対する溝側面部33aが接することで、固定子14の周方向DRcの移動が規制できる。
また、側壁部120cは、嵌合構造30を構成する嵌合突起34および嵌合溝33のうち、内周側面部127に嵌合溝33が形成されているので、側壁部120cの壁の厚みを確保するために、側壁部120cの壁の大きさを大きくする必要がない。このため、バルブ装置10は、内周側面部127に嵌合突起34を形成する場合に比較して、筒状本体部120の外径を小さくし易い。
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について、図23および図24を参照して説明する。本実施形態では第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
図23および図24に示すように、本実施形態では、ハウジング12の形状が第1実施形態と異なっており、入口部121が回転子22の回転子孔221に連通するように形成されている。また、本実施形態では、回転子22の形状が第1実施形態と異なっているおり、筒状に形成されている。
回転子22は、天板部22aと、底板部22bと、円筒部22cとを含んで構成されている。天板部22aは、軸心方向DRaを厚み方向とし、且つ所定軸心CL1を中心とした円盤状で形成されている。この天板部22aを構成する板面のうち、軸心方向DRaの一方側の板面には、中間子24と圧縮バネ261の他端側の部位とが連結されている。
底板部22bは、軸心方向DRaを厚み方向とし、且つ所定軸心CL1を中心とした円盤状で形成されている。底板部22bは、軸心方向DRaに貫通する第2回転子孔221bおよびハウジング挿入部120iが挿通される回転子挿通孔222が形成されている。底板部22bは、回転子22を軸心CL1の周方向DRcに回転させた際に、第2回転子孔221bが、第1流路孔141aおよび第2流路孔141bと軸心方向DRaに重なり合うことができるように形成されている。
円筒部22cは、所定軸心CL1に沿って延びる軸心を有する略円筒形状で形成されており、軸心方向DRaの一方側の開口部が天板部22aによって閉塞され、他端側の開口部が底板部22b閉塞されて形成されている。
円筒部22cは、外周部分に第1回転子孔221aを構成する貫通孔が形成されており、第1回転子孔221aが入口部121に連通可能に構成されている。すなわち、円筒部22cは、回転子22を軸心CL1の周方向DRcに回転させた際に、入口開口部120dと径方向DRrに重なり合うように形成されている。このため、円筒部22cは、第1回転子孔221aを介して、バルブ装置10の外側から入口側空間120jを形成する円筒部22cの内側空間に流体を流入可能になっている。
このように構成される回転子22は、シャフト20の回転に伴って回転することで、入口開口部120dに第1回転子孔221aが連通することで、入口部121から流入した流体を入口側空間120jに流入させる。そして、回転子22は、シャフト20の回転に伴って回転することで、流路孔141に第2回転子孔221bが連通することで、入口側空間120jに流入した流体を出口側空間120kに流出させる。
すなわち、回転子22は、シャフト20の回転に伴って所定軸心CL1を中心に回転することで、第2回転子孔221bと、第1流路孔141aと、第2流路孔141bとの開度をそれぞれ増減する弁体として機能できる。
なお、本実施形態のシャフト20および圧縮バネ261は、入口側空間120jに配置されていない。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態のバルブ装置10は、第1実施形態と同様または均等となる構成から奏される作用効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について、図25~図34を参照して説明する。本実施形態では第1実施形態と異なる部分について主に説明する。本実施形態では、第1実施形態で説明したバルブ装置10を図25に示す温度調整装置1に搭載される制御バルブに適用した例について説明する。
温度調整装置1は、走行用の駆動力を電動モータから得る電気自動車に搭載されている。温度調整装置1は、電気自動車において、空調対象空間である車室内への送風空気の温度調整を行うとともに、バッテリBTを含む複数の車載機器の温度調整を行う装置である。温度調整装置1は、車載機器の温度調整機能付きの空調装置として解釈することができる。
図25に示すように、温度調整装置1は、冷凍サイクル装置200、第1流体循環回路300、第2流体循環回路400、室内空調ユニット500、制御装置600等を備えている。
冷凍サイクル装置200は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成する。冷凍サイクル装置200は、圧縮機201、放熱器202、第1膨張弁204、第2膨張弁205、チラー206、室内蒸発器207、蒸発圧力調整弁208等を有している。冷凍サイクル装置200は、後述する各種運転モードに応じて冷媒回路の回路構成を切替可能になっている。
冷凍サイクル装置200は、冷媒としてHFO系冷媒(例えば、R1234yf)が採用されている。冷凍サイクル装置200は、冷媒圧力の最大値が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成する。冷媒には、圧縮機201等の摺動部位を潤滑するための冷凍機油(例えば、PAGオイル)が混入されている。冷凍機油は、その一部が冷媒とともに冷凍サイクル装置200の冷媒回路を循環する。
圧縮機201は、吸入した冷媒を圧縮して吐出する機器である。圧縮機201は、車両前方側の駆動系収容室に配置されている。駆動系収容室は、走行用の駆動源となる電動機等が配置される空間である。駆動系収容室と車室内とは、ファイヤウォールによって隔てられている。
圧縮機201は、冷媒吐出側に放熱器202の冷媒入口側が接続されている。放熱器202は、圧縮機201から吐出された冷媒と第1流体循環回路300を循環する高温熱媒体とを熱交換させることで冷媒を放熱させる熱交換器である。放熱器202は、高温熱媒体を加熱する加熱用熱交換器としても機能する。
冷凍サイクル装置200は、放熱器202として、いわゆるサブクール型の熱交換器が採用されている。すなわち、放熱器202は、凝縮部202a、レシーバ部202b、および過冷却部202cが設けられている。
凝縮部202aは、圧縮機201から吐出された冷媒と高温熱媒体とを熱交換させて、高圧冷媒を凝縮させる凝縮用の熱交換部である。レシーバ部202bは、凝縮部202aから流出した冷媒の気液を分離して分離された液相冷媒を蓄える受液部である。過冷却部202cは、レシーバ部202bから流出した液相冷媒と高温熱媒体とを熱交換させて、液相冷媒を過冷却する過冷却用の熱交換部である。
放熱器202の冷媒出口側には、冷媒分岐部203が接続されている。冷媒分岐部203は、放熱器202から流出した冷媒の流れを分岐する。冷媒分岐部203は、互いに連通する3つの流入出口を有する三方継手である。冷媒分岐部203は、3つの流入出口の内の1つが流入口として用いられ、残りの2つが流出口として用いられている。
冷媒分岐部203の一方の流出口には、第1膨張弁204を介して、チラー206の冷媒入口側が接続されている。冷媒分岐部203の他方の流出口には、第2膨張弁205を介して、室内蒸発器207の冷媒入口側が接続されている。
第1膨張弁204は、冷媒分岐部203の一方の流出口から流出した冷媒を減圧させる減圧部である。第1膨張弁204は、絞り開度を変化させる弁体、および弁体を変位させる電動アクチュエータ(例えば、ステッピングモータ)を有する電気式の可変絞り機構である。第1膨張弁204は、制御装置600から出力される制御パルスによって、その作動が制御される。
第2膨張弁205は、冷媒分岐部203の他方の流出口から流出した冷媒を減圧させる減圧部である。第2膨張弁205の基本的構成は、第1膨張弁204と同様である。
第1膨張弁204および第2膨張弁205は、弁開度を全開にすることで冷媒減圧作用および流量調整作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能を有している。さらに、第1膨張弁204および第2膨張弁205は、弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。
第1膨張弁204および第2膨張弁205は、この全開機能および全閉機能によって、各種運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。したがって、第1膨張弁204および第2膨張弁205は、冷凍サイクル装置200の回路構成を切り替える冷媒回路切替部としての機能を兼ね備えている。
第1膨張弁204の冷媒出口側には、チラー206の冷媒入口側が接続されている。チラー206は、第1膨張弁204にて減圧された低圧冷媒と第2流体循環回路400を循環する低温熱媒体とを熱交換させる熱交換器である。チラー206は、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって低温熱媒体を冷却する蒸発部である。
したがって、第2流体循環回路400におけるチラー206は、低温熱媒体を冷却する冷却機器である。チラー206の冷媒出口側には、冷媒合流部209の一方の流入口側が接続されている。
第2膨張弁205の冷媒出口側には、室内蒸発器207の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器207は、第2膨張弁205にて減圧された低圧冷媒と車室内へ送風される送風空気Wとを熱交換させる熱交換器である。室内蒸発器207は、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって送風空気Wを冷却する冷却用の熱交換部である。室内蒸発器207は、後述する室内空調ユニット500のケーシング501内に配置されている。
室内蒸発器207の冷媒出口側には、蒸発圧力調整弁208の冷媒入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁208は、室内蒸発器207における冷媒蒸発圧力を予め定めた基準圧力以上に維持する蒸発圧力調整部である。
蒸発圧力調整弁208は、室内蒸発器207の冷媒出口側の冷媒圧力の上昇に伴って、弁開度を増加させる機械式の可変絞り機構である。蒸発圧力調整弁208は、室内蒸発器207における冷媒蒸発温度を室内蒸発器207の着霜を抑制可能な着霜抑制温度(例えば、1℃)以上に維持している。蒸発圧力調整弁208の冷媒出口側には、冷媒合流部209の他方の流入口側が接続されている。
冷媒合流部209は、チラー206から流出した冷媒の流れと蒸発圧力調整弁208から流出した冷媒の流れとを合流させる。冷媒合流部209は、冷媒分岐部203と同様の三方継手である。冷媒合流部209は、3つの流入出口のうち2つが流入口として用いられ、残りの1つが流出口として用いられている。冷媒合流部209の流出口には、圧縮機201の冷媒吸入側が接続されている。
次に、第1流体循環回路300について説明する。第1流体循環回路300は、流体である高温熱媒体が循環する流体循環回路である。第1流体循環回路300では、高温熱媒体として、エチレングリコール水溶液が採用されている。第1流体循環回路300には、高温側ポンプ301、放熱器202、高温側ラジエータ303、ヒータコア304、高温側切替弁310等が配置されている。
高温側ポンプ301の吐出口には、放熱器202の熱媒体通路302の入口側が接続されている。高温側ポンプ301は、高温熱媒体を放熱器202の熱媒体通路302へ圧送する。高温側ポンプ301は、制御装置600から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
放熱器202の熱媒体通路302の出口側には、電気ヒータ306が配置されている。電気ヒータ306は、放熱器202の熱媒体通路302から流出した高温熱媒体を加熱する加熱装置である。第1流体循環回路300では、電気ヒータ306として、PTC素子(すなわち、正特性サーミスタ)を有するPTCヒータが採用されている。電気ヒータ306の発熱量は、制御装置600から出力される制御電圧によって制御される。
電気ヒータ306の下流側には、高温側切替弁310の入口部311が接続されている。高温側切替弁310は、高温側ラジエータ303へ流入する高温熱媒体と、ヒータコア304へ流入する高温熱媒体との流量割合を調整する。高温側切替弁310は、本開示のバルブ装置を構成する。高温側切替弁310は、第1実施形態で説明したバルブ装置10と同様に構成されている。
図26に示すように、高温側切替弁310は、高温熱媒体が流入する入口部311、高温側ラジエータ303へ高温熱媒体を流出させる第1出口部312、およびヒータコア304へ高温熱媒体を流出させる第2出口部313を備える。
第1出口部312は、高温側ラジエータ303の流体入口側に接続され、高温側ラジエータ303へ高温熱媒体を流出させる。第1出口部312は第1実施形態のバルブ装置10における第1出口部122に対応している。
第2出口部313は、ヒータコア304の流体入口側に接続され、ヒータコア304へ高温熱媒体を流出させる。第2出口部313は第1実施形態のバルブ装置10における第2出口部123に対応している。
入口部311は、高温側ラジエータ303の流体出口側とヒータコア304の流体出口側に接続され、高温側ラジエータ303およびヒータコア304から高温熱媒体が流入する。入口部311は第1実施形態のバルブ装置10における入口部121に対応している。
高温側切替弁310は、回転子22を回転変位させることで、高温側ラジエータ303を通過する高温熱媒体とヒータコア304を通過する高温熱媒体の流量割合が調整される構成になっている。具体的には、高温側切替弁310は、回転子22によって第1流路孔141aの開度および第2流路孔141bの開度を増減することで、高温側ラジエータ303を通過する高温熱媒体とヒータコア304を通過する高温熱媒体の流量割合が調整される。
高温側切替弁310は、制御装置600から出力される制御パルスによって、その作動が制御される。なお、制御装置600は、第1実施形態で説明したバルブ制御部17としての機能も兼ね備えている。
図25に戻り、高温側ラジエータ303は、放熱器202等で加熱された高温熱媒体と図示しない外気ファンから送風された車室外の空気(すなわち、外気OA)とを熱交換させる室外熱交換器である。
高温側ラジエータ303は、駆動系収容室の前方側に配置されている。車両走行時には、高温側ラジエータ303に、グリルを介して駆動系収容室へ流入した走行風(すなわち、外気OA)を当てることができる。高温側ラジエータ303の流体出口側には、高温側合流部307の一方の流入口側が接続されている。
ヒータコア304は、放熱器202等で加熱された高温熱媒体と室内へ送風される送風空気Wとを熱交換させて、送風空気Wを加熱する室内熱交換器である。ヒータコア304は、室内空調ユニット500のケーシング501内に配置されている。ヒータコア304では、チラー206にて冷媒が吸熱した熱を加熱源として送風空気Wを加熱する。ヒータコア304の流体出口側には、高温側合流部307の他方の流入口側が接続されている。
高温側合流部307は、高温側ラジエータ303から流出した冷媒の流れとヒータコア304から流出した冷媒の流れとを合流させる。高温側合流部307は、冷媒合流部209と同様の三方継手である。高温側合流部307の流体出口側には、高温側リザーブタンク308を介して、高温側ポンプ301の流体吸入側が接続されている。
高温側リザーブタンク308は、第1流体循環回路300で余剰となっている高温熱媒体を貯留する高温熱媒体用の貯留部である。第1流体循環回路300では、高温側リザーブタンク308を配置することで、第1流体循環回路300を循環する高温熱媒体の液量低下が抑制される。高温側リザーブタンク308は、第1流体循環回路300を循環する高温熱媒体の液量が不足した際に高温熱媒体を補給するための熱媒体供給口を有している。
次に、第2流体循環回路400について説明する。第2流体循環回路400は、流体である低温熱媒体が循環する流体循環回路である。第2流体循環回路400では、低温熱媒体として、高温熱媒体と同種の熱媒体を採用している。
第2流体循環回路400には、低温側ポンプ401、チラー206の熱媒体通路402、低温側ラジエータ403、流路切替弁70、バッテリBTの冷却水通路405、車載機器CEの冷却水通路406等が配置されている。
低温側ポンプ401の流体出口側には、低温熱媒体をチラー206の熱媒体通路402の入口側が接続されている。低温側ポンプ401は、低温熱媒体をチラー206の熱媒体通路402へ圧送する圧送部である。低温側ポンプ401の基本的構成は、高温側ポンプ301と同様である。
チラー206の熱媒体通路402の流体出口側には、流路切替弁70の第1入口部700A側が接続されている。流路切替弁70は、第2流体循環回路400の回路構成を切り替える回路切替部である。流路切替弁70には、複数の入口部および複数の出口部が設けられている。これらの入口部および出口部には、バッテリBTの冷却水通路405、低温側ラジエータ403等が接続されている。流路切替弁70の詳細構成は後述する。
バッテリBTは、電動モータ等の電動式の車載機器CEに電力を供給する。バッテリBTは複数の電池セルを電気的に直列的あるいは並列的に接続することによって形成された組電池である。電池セルは、充放電可能な二次電池(例えば、リチウムイオン電池)で構成されている。バッテリBTは、複数の電池セルを略直方体形状となるように積層配置して専用ケースに収容したものである。
この種のバッテリBTは、低温になると化学反応が進行し難く出力が低下し易い。バッテリBTは、充放電時に発熱する。さらに、バッテリBTは、高温になると劣化が進行し易い。このため、バッテリBTの温度は、バッテリBTの充放電容量を充分に活用可能となる適切な温度範囲内(例えば、15℃以上、かつ、55℃以下)に維持されていることが望ましい。
バッテリBTの冷却水通路405は、バッテリBTの専用ケースに形成されている。冷却水通路405は、低温熱媒体とバッテリBTとを熱交換させる熱媒体通路である。より具体的には、冷却水通路405は、バッテリBTの有する熱を低温熱媒体に吸熱させる吸熱用の熱媒体通路である。したがって、バッテリBTは、第2流体循環回路400において低温熱媒体を加熱する加熱機器としても機能する。
バッテリBTの冷却水通路405の通路構成は、専用ケースの内部で複数の通路を並列的に接続した通路構成となっている。これにより、バッテリBTの冷却水通路405は、バッテリBTの全域から均等に吸熱可能に形成されている。換言すると、冷却水通路405は、全ての電池セルの有する熱を均等に吸熱して、全ての電池セルを冷却できるように形成されている。
低温側ラジエータ403は、流路切替弁70の第2出口部700Dから流出した低温熱媒体と外気ファンから送風された外気OAとを熱交換させる室外熱交換器である。低温側ラジエータ403は、駆動系収容室の前方側であって、高温側ラジエータ303の外気流れ下流側に配置されている。したがって、低温側ラジエータ403は、高温側ラジエータ303通過後の外気OAと低温熱媒体とを熱交換させる。低温側ラジエータ403は、高温側ラジエータ303と一体的に形成されていてもよい。
低温側ラジエータ403の熱媒体出口には、低温側リザーブタンク408を介して、低温側合流部407の一方の流入口側が接続されている。
低温側リザーブタンク408は、第2流体循環回路400で余剰となっている低温熱媒体を貯留する低温熱媒体用の貯留部である。低温側リザーブタンク408の基本的構成は、高温側リザーブタンク308と同様である。低温側合流部407は、高温側合流部307等と同様の三方継手である。
低温側合流部407の流体出口側には、低温側ポンプ401の流体吸入側が接続されている。換言すると、低温側ポンプ401は、第2流体循環回路400において、低温側合流部407の流出口からチラー206の熱媒体通路402の流体入口側へ至る流路に配置されている。
また、第2流体循環回路400には、車載機器CEの冷却水通路406が配置された機器用冷却通路410が接続されている。機器用冷却通路410は、低温側リザーブタンク408の下流側であって、かつ、低温側合流部407の上流側の低温熱媒体を、再び低温側ラジエータ403の入口側へ戻すように接続されている。
機器用冷却通路410には、機器用ポンプ411が配置されている。機器用ポンプ411は、低温熱媒体を車載機器CEの冷却水通路406へ圧送する。機器用ポンプ411の基本的構成は、低温側ポンプ401と同様である。
車載機器CEは、作動時に発熱を伴う発熱機器である。具体的には、車載機器CEは、電動モータ、インバータ、先進運転システム用制御装置等である。電動モータは、走行用の駆動力を出力する車載機器である。インバータは、電動モータに電力を供給する車載機器である。先進運転システム用制御装置は、いわゆるADAS用の制御装置である。ADASはAdvanced Driver Assistance Systemの略称である。
車載機器CEを適切に作動させるためには、バッテリBTと同様に、車載機器CEが適切な温度範囲内に維持されていることが望ましい。但し、バッテリBTの適切な温度範囲と車載機器CEの適切な温度範囲は異なっている。本実施形態では、車載機器CEの適切な温度範囲の上限値が、バッテリBTの適切な温度範囲の上限値よりも高くなっている。
車載機器CEの外殻を形成するハウジング部あるいはケースの内部には、低温熱媒体を流通させる冷却水通路406が形成されている。この冷却水通路406は、車載機器CEの有する熱(すなわち、車載機器CEの廃熱)を低温熱媒体に吸熱させる吸熱用の熱媒体通路である。冷却水通路406は、発熱機器である車載機器CEの温度を調整する温調部を構成している。
さらに、第2流体循環回路400には、機器用迂回通路420が接続されている。機器用迂回通路420は、車載機器CEの冷却水通路406から流出した低温熱媒体を、低温側ラジエータ403等を迂回させて再び機器用ポンプ411の流体入口側へ戻す熱媒体通路である。機器用迂回通路420は、室外熱交換器である低温側ラジエータ403をバイパスして低温熱媒体を流すバイパス部を構成する。
機器用冷却通路410のうち、機器用迂回通路420との接続部よりも上流側には、機器用流量調整弁412が配置されている。機器用流量調整弁412は、機器用冷却通路410の通路断面積を変化させる弁体、および弁体を変位させる電動アクチュエータ(例えば、ステッピングモータ)を有する電気式の流量調整弁である。機器用流量調整弁412は、制御装置600から出力される制御パルスによって、その作動が制御される。
また、機器用冷却通路410と機器用迂回通路420との接続部には、低温側切替弁430が配置されている。低温側切替弁430は、低温側ラジエータ403へ流入する低温熱媒体と、機器用迂回通路420へ流入する低温熱媒体との流量割合を調整する。低温側切替弁430は、高温側切替弁310と同様に本開示のバルブ装置を構成する。低温側切替弁430は、第1実施形態で説明したバルブ装置10と同様に構成されている。
図27に示すように、低温側切替弁430は、低温熱媒体が流入する入口部431、低温側ラジエータ403へ低温熱媒体を流出させる第1出口部432、および機器用迂回通路420へ低温熱媒体を流出させる第2出口部433を備える。
第1出口部432は、低温側ラジエータ403の流体入口側に接続され、低温側ラジエータ403へ低温熱媒体を流出させる。第1出口部432は第1実施形態のバルブ装置10における第1出口部122に対応している。
第2出口部433は、機器用迂回通路420の流体入口側に接続され、機器用迂回通路420へ低温熱媒体を流出させる。第2出口部433は第1実施形態のバルブ装置10における第2出口部123に対応している。
入口部431は、温調部である車載機器CEの冷却水通路406の流体出口側に接続され、冷却水通路406を通過した流体が流入する。入口部431は第1実施形態のバルブ装置10における入口部121に対応している。
低温側切替弁430は、回転子22を回転変位させることで、低温側ラジエータ403を通過する低温熱媒体と機器用迂回通路420を通過する低温熱媒体の流量割合が調整される構成になっている。具体的には、低温側切替弁430は、回転子22によって第1流路孔141aの開度および第2流路孔141bの開度を増減することで、低温側ラジエータ403を通過する低温熱媒体と機器用迂回通路420を通過する低温熱媒体の流量割合が調整される。
低温側切替弁430は、制御装置600から出力される制御パルスによって、その作動が制御される。なお、制御装置600は、第1実施形態で説明したバルブ制御部17としての機能も兼ね備えている。
図25に戻り、第2流体循環回路400には、流路切替弁70の第3出口部700Eから流出した低温熱媒体を低温側合流部407の他方の流入口へ導く、短絡用熱媒体通路440が接続されている。
次に、流路切替弁70の詳細構成について図28および図29を参照して説明する。流路切替弁70は、図28の外観斜視図に示すように、有底筒状に形成された樹脂製の本体部701を有している。本体部701は、内部に低温熱媒体を流入させる複数の入口部と、内部から低温熱媒体を流出させる複数の出口部とを有するハウジングである。具体的には、本実施形態の本体部701は、2つの入口部と、3つの出口部とを有している。したがって、流路切替弁70は、5つの出入口を有する五方弁である。
具体的には、流路切替弁70には、第1入口部700Aおよび第2入口部700Cが設けられている。第1入口部700Aは、低温側ポンプ401から圧送された低温熱媒体であって、チラー206の熱媒体通路402を通過した低温熱媒体を流入させる入口部である。第2入口部700Cは、バッテリBTの冷却水通路405から流出した低温熱媒体を流入させる入口部である。
また、流路切替弁70には、第1出口部700B、第2出口部700D、および第3出口部700Eが設けられている。第1出口部700Bは、バッテリBTの冷却水通路405の流体入口側へ低温熱媒体を流出させる出口部である。第2出口部700Dは、低温側ラジエータ403の流体入口側へ低温熱媒体を流出させる出口部である。第3出口部700Eは、チラー206の熱媒体通路402の流体入口側へ(すなわち、短絡用熱媒体通路440へ)低温熱媒体を流出させる出口部である。
ここで、バッテリBTの冷却水通路405は、第1出口部700Bから第2入口部700Cへ至る熱媒体通路に配置されている。換言すると、バッテリBTの冷却水通路405は、第1出口部700Bから第2入口部700Cへ至る熱媒体通路に配置されている。なお、第2入口部700Cは、第1出口部700Bから本体部701の外部へ流出した低温熱媒体を再びに内部に流入させる入口部となる。
流路切替弁70の本体部701は、第1本体部711および第2本体部712に分割されている。第1本体部711および第2本体部712は、いずれも円筒状に形成されて、同軸上に配置されている。第1本体部711の軸心方向DRaの一端側は蓋部によって閉塞されており、他端側は開放されている。第2本体部712の軸心方向DRaの他端側は底部によって閉塞されており、一端側は開放されている。
本体部701の内側には、固定子720が配置される。固定子720は、第1本体部711と第2本体部712との接続部付近に配置されている。本体部701の内側は、固定子720によって複数の空間が形成されている。
具体的には、第1本体部711の内部には、第1入口側空間711aが形成されている。第1入口側空間711aは、第1入口部700Aに連通する略円柱状の空間である。また、第2本体部712の内部には、第1出口側空間712b、第2入口側空間712c、第2出口側空間712d、および第3出口側空間712eが形成されている。より具体的には、第2本体部712の内部には、シャフト740の軸心CLから放射状に広がる複数の仕切板713が配置されている。
仕切板713は、第2本体部712の内部空間を周方向DRcに複数の空間に区画している。また、仕切板713は、略中央部分に、固定子720の後述する固定子保持孔726に挿入される筒状保持部714が形成されている。筒状保持部714は、仕切板713から軸心方向DRaの一方側に向かって突出して形成されている。
第1出口側空間712bは、第1出口部700Bに連通する空間である。第2入口側空間712cは、第2入口部700Cに連通する空間である。第2出口側空間712dは、第2出口部700Dに連通する空間である。第3出口側空間712eは、第3出口部700Eに連通する空間である。
第1出口側空間712b、第2入口側空間712c、第2出口側空間712d、および第3出口側空間712eは、いずれも断面がセクタ状(すなわち、扇状)に形成されて軸心方向DRaに延びる柱状の空間である。第1出口側空間712b、第3出口側空間712e、第2入口側空間712c、第2出口側空間712dは、第1本体部711側から軸心方向DRaに向かって見たときに、この順で時計回りに配置されている。つまり、第2入口側空間712cは、第2出口側空間712dおよび第3出口側空間712eの双方と周方向DRcに隣り合うように配置されている。
また、固定子720は、本体部701の内側を形成する内壁部715に対向する固定子外壁部727に嵌合凸部728が形成されている。嵌合凸部728は、内壁部715に形成された嵌合凹部716に嵌め合可能に形成されている。すなわち、嵌合凸部728および嵌合凹部716は、固定子720の周方向DRcの移動を規制する固定子移動規制部である。
嵌合凸部728は、固定子外壁部727における、流路切替弁70に流体を流入させる流路を形成する部位に近い部位および流路切替弁70に流体を流入させる流路を形成する部位から離れた部位のいずれに形成されるのが望ましい。具体的に、嵌合凸部728は、固定子外壁部727における後述する第2入口側空間712cに連通する後述する第2流路孔723を形成する部位に近い部位および第2流路孔723を形成する部位から離れた部位のいずれに形成されるのが望ましい。
例えば、本実施形態では、嵌合凸部728は、後述する第2流路孔723を形成する部位に近い部位に形成されている。なお、嵌合凸部728は、後述する第2流路孔723を形成する部位から離れた部位に形成されていてもよい。すなわち、嵌合凸部728は、シャフト740の軸心CLの径方向において、第2流路孔723に対向する部位に近い部位に形成されていてもよい。
嵌合凸部728は、第1実施形態のバルブ装置10における嵌合突起32に対応している。また、嵌合凹部716は、第1実施形態のバルブ装置10における嵌合溝31に対応している。すなわち、嵌合凸部728および嵌合凹部716によって構成される構造は、第1実施形態のバルブ装置10の嵌合構造30に対応する部材である。なお、嵌合凸部728および嵌合凹部716は、第1実施形態の嵌合構造30と同様の構造であるため、本実施形態では説明を省略する。
固定子720は、第1実施形態のバルブ装置10の固定子14に対応する部材である。固定子720の構成材料等は、第1実施形態の固定子14と同様に構成されている。
固定子720は、軸心方向DRaを厚み方向とする円盤状の部材で構成されている。固定子720は、後述する回転子750が摺動する表面としての開口面721を有する。開口面721は、後述する回転子750の摺動面751に対応するシール面である。
固定子720は、流体が通過する流路孔が形成された流路形成部を構成する。固定子720には、流体が通過する第1流路孔722、第2流路孔723、第3流路孔724、第4流路孔725が形成されている。
具体的には、第1流路孔722は、第1出口側空間712bに連通するように、固定子720のうち、第1出口側空間712bに対応する部位に設けられている。第2流路孔723は、第2入口側空間712cに連通するように、固定子720のうち、第2入口側空間712cに対応する部位に設けられている。第3流路孔724は、第2出口側空間712dに連通するように、固定子720のうち、第2出口側空間712dに対応する部位に設けられている。第4流路孔725は、第3出口側空間712eに連通するように、固定子720のうち、第3出口側空間712eに対応する部位に設けられている。また、固定子720は、軸心方向DRaの他方側の面の略中心部分に、筒状保持部714が挿通される固定子保持孔726が形成されている。
駆動部は、回転力を出力するための機器である。駆動部は、第1実施形態のバルブ装置10の駆動部16に対応する機器である。本実施形態の駆動部は、第1実施形態の駆動部16と同様に構成されている。
本体部701の内側には、駆動部が出力する回転力によって回転する回転部730および弾性部材770が配置されている。この回転部730は、第1実施形態のバルブ装置10の回転部18に対応する。回転部730は、シャフト740と、弁体としての回転子750、シャフト740に回転子750を連結する中間子760とを有している。
シャフト740は、駆動部が出力する回転力によってシャフト740の軸心である所定軸心CLを中心に回転する回転軸である。シャフト740は軸心方向DRaに沿って延伸する。シャフト740は、軸心方向DRaの一方側に駆動部から回転力が伝えられる一端側部位741を有し、一端側部位741とは軸心方向DRaにて反対となる他端側に他端側部位742を有している。他端側部位742は、中間子760を介して回転子750に相対回転不能に連結されている。
シャフト740と回転子750との連結構造は、第1実施形態のバルブ装置10のシャフト20と回転子22との連結構造と同様に構成されている。すなわち、シャフト740と回転子750との連結構造は、中間子760に形成された圧入ピン761が、回転子750の形成されたピン挿入部755に圧入する構造によって構成されている。なお、本実施形態の連結構造は、第1実施形態の連結構造と同様の構造であるため、説明を省略する。
回転子750は、シャフト740の回転に伴って固定子720に形成された各流路孔722~725の開度を増減する弁体である。なお、回転子750は、第1実施形態のバルブ装置10の回転子22に対応する部材である。回転子750の構成材料等は、第1実施形態の回転子22と同様に構成されている。
回転子750は、軸心方向DRaにおいて固定子720に相対するように第1入口側空間711aに配置されている。回転子750は、固定子720の開口面721に相対する摺動面751を有する。摺動面751は、固定子720の開口面721をシールするシール面である。
回転子750には、シャフト740の軸心CLに対して偏心した位置に回転子孔752が形成されている。回転子孔752は、軸心方向DRaに貫通する貫通孔である。回転子孔752は、回転子750を回転させた際に、回転子750において各流路孔722~725と軸心方向DRaに重なり合う部位に形成されている。
回転子750は、その略中心部分に回転子保持孔753が形成されている。回転子保持孔753は、仕切板713に形成された筒状保持部714が挿通されるための貫通孔である。
中間子760は、シャフト740に回転子750を連結する部材であり、シャフト740に回転子750を連結する連結構造の一部を構成する。中間子760は、第1実施形態のバルブ装置10の中間子24と同様に構成されている。
弾性部材770は、回転子750を流路形成部に対応する固定子720に向けて付勢する部材である。弾性部材770は、第1実施形態のバルブ装置10の弾性部材26と同様に構成されている。
本実施形態の流路切替弁70は、回転子750を回転変位させることで、第1入口側空間711aを、回転子孔752および各流路孔723、724、725の1つを介して、各出口側空間712b、712d、712eのいずれかに連通させることができる。すなわち、流路切替弁70は、回転子750を回転変位させることで、第1入口部700Aから流入した低温熱媒体を、複数の出口部700B、700D、700Eのいずれか1つから流出させることができる。
具体的には、流路切替弁70は、回転子750を回転変位させることによって、第1入口側空間711aを、第1出口側空間712b、第2出口側空間712d、および第3出口側空間712eのいずれか1つと連通させることができる。これにより、第1入口部700Aから流入した低温熱媒体を、第1出口部700Bから流出させる通路構成、第2出口部700Dから流出させる通路構成、および第3出口部700Eから流出させる通路構成のいずれか1つの通路構成に切り替えることができる。
第1入口部700Aから流入した低温熱媒体を第1出口部700Bから流出させる通路構成では、第1入口側空間711aへ流入した低温熱媒体が、本体部701の軸心方向DRaの一方側から他方側へ流れる。このことは、第1入口部700Aから流入した低温熱媒体を第2出口部700Dから流出させる通路構成、および第1入口部700Aから流入した低温熱媒体を第3出口部700Eから流出させる通路構成においても同様である。
ここで、図30に示すように、回転子750の摺動面751には、第2入口側空間712c、第2出口側空間712d、第1出口側空間712b、および第3出口側空間712eのうち、隣り合う空間同士を連通させる連通溝754が形成されている。回転子孔752と連通溝754は、シャフト740の軸心CLに対して、略対称に配置されている。すなわち、回転子孔752と連通溝754は、シャフト740の軸心CLまわりに約180°の角度を開けて配置されている。
このため、回転子750を回転変位させることによって、第2入口側空間712cを、連通溝754を介して、複数の出口側空間のいずれか1つに連通させることができる。本実施形態では、回転子孔752と連通溝754との位置関係を適切に設定しておくことで、第1入口側空間711aを連通させる出口側空間と第2入口側空間712cを連通させる出口側空間が、異なる空間になっている。
換言すると、回転子750を回転変位させることによって、第2入口部700Cから流入した低温熱媒体を、複数の出口部のいずれか1つから流出させる通路構成に切り替えることができる。そして、第2入口部700Cから流入した低温熱媒体を流出させる出口部と第1入口部700Aから流入した低温熱媒体を流出させる出口部が、異なる出口部になる。
本実施形態では、具体的に、回転子750を回転変位させることによって、第2入口側空間712cを、第2出口側空間712dおよび第3出口側空間712eのいずれか1つと連通させることができる。これにより、第2入口部700Cから流入した低温熱媒体を、第2出口部700Dから流出させる通路構成、および第3出口部700Eから流出させる通路構成のいずれか1つの通路構成に切り替えることができる。
第2入口部700Cから流入した低温熱媒体を第2出口部700Dから流出させる通路構成では、第2入口側空間712cへ流入した低温熱媒体のシャフト740の軸心方向DRaの他方側から一方側へと向かう流れが連通溝754にて逆方向に転向する。これにより、第2出口側空間712dでは、低温熱媒体がシャフト740の軸心方向DRaの一方側から他方側へ流れる。このことは、第2入口部700Cから流入した低温熱媒体を第3出口部700Eから流出させる通路構成においても同様である。
ここで、第1入口側空間711aおよび第2入口側空間712cは、回転子750を挟んで互いに反対側に形成されている。このため、回転子750は、第1入口側空間711aの圧力Ps1および第2入口側空間712cの圧力Ps2が互いに逆方向に作用するようにハウジングである本体部701の内側に配置されていることになる。
このように構成される流路切替弁70は、図31の太線および太破線に示すように、第1入口部700Aから内部へ流入した低温熱媒体を、第2出口部700Dから流出させる通路構成と第3出口部700Eから流出させる通路構成とを切り替えることができる。
さらに、流路切替弁70は、図32の太実線で示すように、第1入口部700Aから内部へ流入した低温熱媒体を第1出口部700Bから流出させることができる。この状態では、図32の太線および太破線に示すように、第2入口部700Cから内部へ流入した低温熱媒体を、第2出口部700Dから流出させる通路構成と第3出口部700Eから流出させる通路構成とを切り替えることができる。
次に、室内空調ユニット500について図33を参照して説明する。室内空調ユニット500は、温度調整装置1において、適切に温度調整された送風空気Wを車室内の適切な箇所へ吹き出すためのユニットである。室内空調ユニット500は、車室内最前部の計器盤(すなわち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。
室内空調ユニット500は、送風空気Wの空気通路を形成するケーシング501を有している。ケーシング501内に形成された空気通路には、室内送風機502、室内蒸発器207、ヒータコア304等が配置されている。ケーシング501は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて形成されている。
ケーシング501の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置503が配置されている。内外気切替装置503は、ケーシング501内へ車室内の空気(すなわち、内気)と車室外の空気(すなわち、外気)とを切替導入するものである。内外気切替装置503の駆動用の電動アクチュエータは、制御装置600から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置503の送風空気流れ下流側には、室内送風機502が配置されている。室内送風機502は、内外気切替装置503を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。室内送風機502は、ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。室内送風機502は、制御装置600から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。
室内送風機502の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器207とヒータコア304が、送風空気流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器207は、ヒータコア304よりも、送風空気流れ上流側に配置されている。ケーシング501内には、室内蒸発器207を通過した送風空気Wを、ヒータコア304を迂回させて下流側へ流す冷風バイパス通路505が形成されている。
室内蒸発器207の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア304の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア504が配置されている。エアミックスドア504は、室内蒸発器207を通過後の送風空気Wのうち、ヒータコア304を通過させる風量と冷風バイパス通路505を通過させる風量との風量割合を調整する。エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータは、制御装置600から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
ヒータコア304の送風空気流れ下流側には、ヒータコア304にて加熱された送風空気Wと冷風バイパス通路505を通過してヒータコア304にて加熱されていない送風空気Wとを混合させる混合空間506が設けられている。さらに、ケーシング501の送風空気流れ最下流部には、混合空間506にて混合された空調風を、車室内へ吹き出す図示しない開口穴が配置されている。
したがって、エアミックスドア504がヒータコア304を通過させる風量と冷風バイパス通路505を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間506にて混合される空調風の温度を調整することができる。そして、各開口穴から車室内へ吹き出される送風空気Wの温度を調整することができる。
開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面の窓ガラスの内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
これらの開口穴の上流側には、図示しない吹出モード切替ドアが配置されている。吹出モード切替ドアは、各開口穴を開閉することによって、空調風を吹き出す開口穴を切り替える。吹出モード切替ドア駆動用の電動アクチュエータは、制御装置600から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
次に、温度調整装置1の電気制御部の概要について説明する。制御装置600は、プロセッサ、メモリ等を含むマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。制御装置600は、メモリに記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種機器等の作動を制御する。メモリは、非遷移的実体的記憶媒体である。
制御装置600の入力側には、図25に示すように、制御用のセンサ群610が接続されている。制御用のセンサ群610には、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部、バッテリBTの温度を検出するバッテリ温度検出部、車載機器CEの温度を検出する車載機器温度検出部等が含まれる。
また、制御装置600の入力側には、操作パネル620が接続されている。操作パネル620には、例えば、車室内温度を設定する温度設定部等が設けられている。制御装置600には、センサ群610の検出信号および操作パネル620の操作信号が入力される。
制御装置600は、その出力側に接続された各種機器を制御する制御部が一体的に形成されたものである。つまり、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(すなわちハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。例えば、制御装置600のうち、高温側切替弁310、低温側切替弁430、流路切替弁70の作動を制御する構成が、バルブ制御部600aを構成している。なお、図25では、明確化のために、制御装置600と各種制御対象機器とを接続する信号線および電力線、並びに、制御装置600と各種センサとを接続する信号線等の図示を省略している。
次に、上記構成の温度調整装置1の作動について説明する。本実施形態の温度調整装置1は、車室内の空調、およびバッテリBTの温度調整のために、各種運転モードを切り替えることができる。具体的には、温度調整装置1は、機器冷却モード、外気冷却モード、外気吸熱モードに切り替えることができる。以下、各種運転モードについて説明する。
(A)機器冷却モード
機器冷却モードは、冷凍サイクル装置200を作動させて車室内の空調を行うとともに、冷凍サイクル装置200にて冷却された低温熱媒体によってバッテリBTの冷却を行う運転モードである。
機器冷却モードでは、制御装置600が、第1入口部700Aから流入した低温熱媒体を第1出口部700Bから流出させるとともに、第2入口部700Cから流入した低温熱媒体を第3出口部700Eから流出させるように流路切替弁70の作動を制御する。
このため、機器冷却モードの第2流体循環回路400では、図34に示すように、低温側ポンプ401から吐出された低温熱媒体が、チラー206の熱媒体通路を介して流路切替弁70の第1入口部700Aに流入する。そして、第1入口部700Aに流入した低温熱媒体は、流路切替弁70の第1出口部700Bから流出した後、バッテリBTの冷却水通路405を介して流路切替弁70の第2入口部700Cに流入する。第2入口部700Cに流入した低温熱媒体は、流路切替弁70の第3出口部700Eから流出した後、短絡用熱媒体通路440を介して低温側ポンプ401に再び吸入される。
機器冷却モードの冷凍サイクル装置200では、制御装置600が圧縮機201を作動させると、圧縮機201から吐出された高圧冷媒が、放熱器202へ流入する。制御装置600は、室内蒸発器207にて冷却された送風空気Wの温度が、目標蒸発器温度TEOとなるように圧縮機201の冷媒吐出能力を調整する。
目標蒸発器温度TEOは、制御装置600に接続されたセンサ群610の検出信号に基づいて、予め制御装置600に記憶された制御マップを参照して決定される。この制御マップは、室内蒸発器207の着霜を抑制するために、目標蒸発器温度TEOが着霜抑制温度(例えば、1℃)以上となるように構成されている。
放熱器202へ流入した冷媒は、高温側ポンプ301から圧送されて熱媒体通路302を流通する高温熱媒体に放熱して過冷却液相冷媒となる。これにより、熱媒体通路302を流通する高温熱媒体が加熱される。
放熱器202から流出した冷媒の流れは、冷媒分岐部203にて分岐される。冷媒分岐部203にて分岐された一方の冷媒は、第1膨張弁204にて減圧されてチラー206へ流入する。制御装置600は、チラー206の熱媒体通路402から流出した低温熱媒体の温度が、目標冷却温度TBOに近づくように、第1膨張弁204の絞り開度を調整する。
目標冷却温度TBOは、制御装置600に接続されたセンサ群610の検出信号に基づいて、予め制御装置600に記憶された制御マップを参照して決定される。この制御マップでは、バッテリBTの温度が適切な温度範囲内に維持されるように目標冷却温度TBOを決定する。
チラー206へ流入した冷媒は、熱媒体通路402を流通する低温熱媒体から吸熱して蒸発する。これにより、熱媒体通路402を流通する低温熱媒体が冷却される。チラー206から流出した冷媒は、冷媒合流部209へ流入する。
冷媒分岐部203にて分岐された他方の冷媒は、第2膨張弁205にて減圧されて室内蒸発器207へ流入する。制御装置600は、圧縮機201へ吸入される冷媒が予め定めた基準過熱度KSH(例えば、5℃)に近づくように、第2膨張弁205の絞り開度を調整する。このため、機器冷却モードでは、室内蒸発器207における冷媒蒸発温度とチラー206における冷媒蒸発温度が同等となることもある。
室内蒸発器207へ流入した冷媒は、室内送風機502から送風された送風空気Wから吸熱して蒸発する。これにより、送風空気Wが冷却される。室内蒸発器207から流出した冷媒は、蒸発圧力調整弁208を介して、冷媒合流部209へ流入する。冷媒合流部209は、室内蒸発器207から流出した冷媒の流れとチラー206から流出した冷媒の流れとを合流させて、圧縮機201の吸入側へ流出させる。
第1流体循環回路300では、制御装置600が高温側ポンプ301を作動させると、高温側ポンプ301から圧送された高温熱媒体が、放熱器202の熱媒体通路302へ流入する。熱媒体通路302へ流入した高温熱媒体は、高圧冷媒と熱交換して加熱される。
放熱器202から流出した高温熱媒体は、高温側切替弁310に流入し、高温側ラジエータ303へ流入する流れと、高温側切替弁310からヒータコア304へ流入する流れとに分流される。
制御装置600は、ヒータコア304から流出した高温熱媒体の温度である出口側熱媒体温度THCが予め定めた基準出口側熱媒体温度KTHCに近づくように、高温側切替弁310の作動を制御する。つまり、制御装置600は、出口側熱媒体温度THCが基準出口側熱媒体温度KTHCに近づくように、高温側流量比を調整する。
さらに、制御装置600は、放熱器202からの高温熱媒体の全量がヒータコア304に流れるように高温側切替弁310を制御しても、出口側熱媒体温度THCが基準出口側熱媒体温度KTHCに達しない場合は、電気ヒータ306で高温熱媒体を加熱する。電気ヒータ306の加熱能力は、出口側熱媒体温度THCが基準出口側熱媒体温度KTHCに近づくように調整される。
高温側ラジエータ303へ流入した高温熱媒体は、外気ファンから送風された外気OAと熱交換して放熱する。これにより、高温側ラジエータ303を流通する高温熱媒体が冷却される。高温側ラジエータ303から流出した高温熱媒体は、高温側合流部307へ流入する。
一方、ヒータコア304へ流入した高温熱媒体は、室内蒸発器207を通過した送風空気Wと熱交換して放熱する。これにより、室内蒸発器207にて冷却された送風空気Wが再加熱される。さらに、制御装置600は、車室内へ吹き出される送風空気Wの吹出温度が目標吹出温度TAOに近づくように、エアミックスドア504の開度を調整する。
ヒータコア304から流出した高温熱媒体は、高温側合流部307へ流入する。高温側合流部307は、ヒータコア304から流出した高温熱媒体と高温側ラジエータ303から流出した高温熱媒体を合流させて、高温側ポンプ301の流体吸入側へ流出させる。
第2流体循環回路400では、制御装置600が低温側ポンプ401を作動させると、低温側ポンプ401から圧送された低温熱媒体が、チラー206の熱媒体通路402へ流入する。チラー206へ流入した低温熱媒体は、低圧冷媒と熱交換して冷却される。
チラー206から流出した低温熱媒体は、流路切替弁70の第1入口部700Aから内部へ流入して第1出口部700Bから流出する。第1出口部700Bから流出した低温熱媒体は、バッテリBTの冷却水通路405へ流入する。バッテリBTの冷却水通路405へ流入した熱媒体は、冷却水通路405を流通する際にバッテリBTの廃熱を吸熱する。これにより、バッテリBTが冷却される。
バッテリBTの冷却水通路405から流出した低温熱媒体は、流路切替弁70の第2入口部700Cから内部へ流入して第3出口部700Eから流出する。第3出口部700Eから流出した低温熱媒体は、短絡用熱媒体通路440および低温側合流部407を介して、低温側ポンプ401の吸入側へ導かれる。
機器冷却モードでは、以上の如く作動して、室内蒸発器207にて冷却された送風空気Wをヒータコア304にて再加熱して車室内へ吹き出すことができる。この際、送風空気Wを再加熱するために余剰となる熱を高温側ラジエータ303にて外気へ放熱することができる。したがって、適切な温度に調整された送風空気Wを車室内に吹き出して、快適な空調を実現することができる。さらに、機器冷却モードでは、チラー206にて冷却された低温熱媒体を、バッテリBTの冷却水通路405へ流入させることによって、バッテリBTを冷却することができる
(B)外気冷却モード
外気冷却モードは、冷凍サイクル装置200を作動させて車室内の空調を行うとともに、外気にて冷却された低温熱媒体によってバッテリBTの冷却を行う運転モードである。
外気冷却モードでは、制御装置600が、第1入口部700Aから流入した低温熱媒体を第1出口部700Bから流出させるとともに、第2入口部700Cから流入した低温熱媒体を第2出口部700Dから流出させるように、流路切替弁70の作動を制御する。さらに、制御装置600は、第1膨張弁204を全閉状態とする。
このため、外気冷却モードの第2流体循環回路400では、図35に示すように、低温側ポンプ401から吐出された低温熱媒体が、チラー206の熱媒体通路402を介して流路切替弁70の第1入口部700Aに流入する。流路切替弁70の第1入口部700Aに流入した低温熱媒体は、流路切替弁70の第1出口部700Bから流出した後、バッテリBTの冷却水通路405を介して流路切替弁70の第2入口部700Cに流入する。第2入口部700Cに流入した低温熱媒体は、流路切替弁70の第2出口部700Dから流出した後、低温側ラジエータ403を介して低温側ポンプ401に再び吸入される。
外気冷却モードの冷凍サイクル装置200では、機器冷却モードと同様に、圧縮機201から吐出された高圧冷媒が、放熱器202にて過冷却液相冷媒となるまで冷却される。さらに、放熱器202の熱媒体通路302を流通する高温熱媒体が加熱される。
放熱器202から流出した冷媒は、冷媒分岐部203へ流入する。外気冷却モードでは、第1膨張弁204が全閉状態になっているので、冷媒分岐部203へ流入した冷媒は、第2膨張弁205にて減圧されて、室内蒸発器207へ流入する。制御装置600は、機器冷却モードと同様に、第2膨張弁205の絞り開度を調整する。
室内蒸発器207へ流入した低圧冷媒は、機器冷却モードと同様に、送風空気Wから吸熱して蒸発する。これにより、送風空気Wが冷却される。室内蒸発器207から流出した冷媒は、蒸発圧力調整弁208および冷媒合流部209を介して、圧縮機201に吸入される。
第1流体循環回路300では、制御装置600が、機器冷却モードと同様に、構成機器の作動を制御する。これにより、高温熱媒体の出口側熱媒体温度THCが基準出口側熱媒体温度KTHCに近づく。
第2流体循環回路400では、制御装置600が低温側ポンプ401を作動させると、低温側ポンプ401から圧送された低温熱媒体が、チラー206の熱媒体通路402へ流入する。外気冷却モードでは、第1膨張弁204が全閉状態となっているので、チラー206の熱媒体通路402へ流入した低温熱媒体は、低圧冷媒と熱交換することなく流出する。
チラー206から流出した低温熱媒体は、流路切替弁70の第1入口部700Aから内部へ流入して第1出口部700Bから流出する。第1出口部700Bから流出した低温熱媒体は、バッテリBTの冷却水通路405へ流入する。バッテリBTの冷却水通路405へ流入した熱媒体は、冷却水通路405を流通する際にバッテリBTの廃熱を吸熱する。これにより、バッテリBTが冷却される。
バッテリBTの冷却水通路405から流出した低温熱媒体は、流路切替弁70の第2入口部700Cから内部へ流入して第2出口部700Dから流出する。第2出口部700Dから流出した低温熱媒体は、低温側ラジエータ403へ流入する。
低温側ラジエータ403へ流入した低温熱媒体は、外気ファンから送風されて高温側ラジエータ303通過後の外気OAと熱交換して放熱する。これにより、低温側ラジエータ403を流通する低温熱媒体が冷却される。低温側ラジエータ403から流出した低温熱媒体は、低温側合流部407を介して、低温側ポンプ401の吸入側へ導かれる。
外気冷却モードでは、以上の如く作動して、室内蒸発器207にて冷却された送風空気Wをヒータコア304にて再加熱して車室内へ吹き出すことができる。したがって、機器冷却モードと同様に、適切な温度に調整された送風空気Wを車室内に吹き出して、快適な空調を実現することができる。さらに、外気冷却モードでは、低温側ラジエータ403にて外気と熱交換して冷却された低温熱媒体を、バッテリBTの冷却水通路405へ流入させることによって、バッテリBTを冷却することができる。
ここで、外気冷却モードにおいて、バッテリBTの冷却が必要とされなくなった際には、制御装置600が、第1入口部700Aから流入した低温熱媒体を第3出口部700Eから流出させるようにしてもよい。これによれば、チラー206の熱媒体通路402から流出した低温熱媒体を、短絡用熱媒体通路440および低温側合流部407を介して、低温側ポンプ401の吸入側へ戻すことができる
(C)外気吸熱モード
外気吸熱モードは、バッテリBTの冷却を行わず、冷凍サイクル装置200を作動させて車室内の暖房を行う運転モードである。外気吸熱モードは、低外気温時(例えば、10℃以下となっている時)に実行される運転モードである。
外気吸熱モードでは、制御装置600が、第1入口部700Aから流入した低温熱媒体を第2出口部700Dから流出させるように流路切替弁70の作動を制御する。さらに、制御装置600は、第2膨張弁205を全閉状態とする。さらに、制御装置600は、冷風バイパス通路505を全閉とするように、エアミックスドア504の開度を調整する。
このため、外気冷却モードの第2流体循環回路400では、図36で示すように、低温側ポンプ401から吐出された低温熱媒体が、チラー206の熱媒体通路402を介して流路切替弁70の第1入口部700Aに流入する。流路切替弁70の第1入口部700Aに流入した低温熱媒体は、流路切替弁70の第2出口部700Dから流出した後、低温側ラジエータ403を介して低温側ポンプ401に再び吸入される。
外気冷却モードの冷凍サイクル装置200では、機器冷却モードと同様に、圧縮機201から吐出された高圧冷媒が、放熱器202にて過冷却液相冷媒となるまで冷却される。さらに、放熱器202の熱媒体通路302を流通する高温熱媒体が加熱される。
放熱器202から流出した冷媒は、冷媒分岐部203へ流入する。外気冷却モードでは、第2膨張弁205が全閉状態になっているので、冷媒分岐部203へ流入した冷媒は、第1膨張弁204にて減圧されて、チラー206へ流入する。制御装置600は、チラー206における冷媒蒸発温度が、外気温よりも低くなるように、第1膨張弁204の絞り開度を調整する。
チラー206へ流入した低圧冷媒は、機器冷却モードと同様に、熱媒体通路402を流通する低温熱媒体から吸熱して蒸発する。これにより、低温熱媒体が冷却される。チラー206から流出した冷媒は、冷媒合流部209を介して、圧縮機201に吸入される。
第1流体循環回路300では、制御装置600が、機器冷却モードと同様に、構成機器の作動を制御する。これにより、高温熱媒体の出口側熱媒体温度THCが基準出口側熱媒体温度KTHCに近づく。
第2流体循環回路400では、制御装置600が低温側ポンプ401を作動させると、低温側ポンプ401から圧送された低温熱媒体が、チラー206の熱媒体通路402へ流入する。チラー206へ流入した低温熱媒体は、低圧冷媒と熱交換して外気温よりも低い温度に冷却される。
チラー206から流出した低温熱媒体は、流路切替弁70の第1入口部700Aから内部へ流入して第2出口部700Dから流出する。第2出口部700Dから流出した低温熱媒体は、低温側ラジエータ403へ流入する。
低温側ラジエータ403へ流入した低温熱媒体は、外気ファンから送風されて高温側ラジエータ303通過後の外気OAと熱交換して吸熱する。これにより、低温側ラジエータ403を流通する低温熱媒体の温度が外気温に近づくように上昇する。低温側ラジエータ403から流出した低温熱媒体は、低温側合流部407を介して、低温側ポンプ401の吸入側へ導かれる。
外気吸熱モードでは、以上の如く作動して、ヒータコア304にて加熱された送風空気Wを車室内へ吹き出すことができる。したがって、外気吸熱モードでは、バッテリBTの冷却を行うことなく、車室内の暖房を実現することができる。
(D)車載機器CEの温度制御等
ここで、温度調整装置1は、上述した各種運転モードによらず、車載機器CEの温度が適切な温度範囲内に維持されるように、制御装置600が各種制御対象機器の作動を制御する。具体的には、制御装置600は、上述した各種運転モードによらず、機器用ポンプ411を予め定めた圧送能力を発揮するように作動させる。
そして、車載機器CEの温度が基準上限値以上となった際には、機器用流量調整弁412を適切な開度とし、低温側切替弁430を機器用冷却通路410の低温熱媒体が低温側ラジエータ403に流れる設定に切り替える。例えば、低温側切替弁430は、第1流路孔141aを開放し、且つ、第2流路孔141bを閉塞する位置に回転子22を変位させる。これによると、低温側ラジエータ403にて冷却された低温熱媒体を、車載機器CEの冷却水通路406に流入させることができる。その結果、外気によって冷却された低温熱媒体によって、車載機器CEを冷却することができる。
一方、車載機器CEの温度が基準下限値以下となった際には、機器用流量調整弁412を全閉状態とし、低温側切替弁430を機器用冷却通路410の低温熱媒体が機器用迂回通路420に流れる設定に切り替える。例えば、低温側切替弁430は、第1流路孔141aを閉塞し、且つ、第2流路孔141bを開放する位置に回転子22を変位させる。これによると、車載機器CEの冷却水通路406から流出した低温熱媒体を、機器用迂回通路420を介して、再び冷却水通路406の入口側へ戻すことができる。その結果、車載機器CEの自己発熱によって、車載機器CEを暖機することができる。
ここで、外気温が極低温(例えば、0℃以下)となる場合、低温側ラジエータ403の外表面に霜が付着することがある。低温側ラジエータ403に霜が付着すると外気からの吸熱量が低下するので、温度調整装置1の適切な作動を実現できなくなってしまう。
そこで、温度調整装置1は、低温側ラジエータ403に霜が付着する霜付条件が成立すると、運転モードを除霜モードに切り替える。除霜モードは、低温側ラジエータ403に付着した霜を除去するモードである。霜付条件は、例えば、低温側ラジエータ403前後の低温熱媒体の温度差が所定温度以下となる際に成立する条件である。なお、条件は一例であり、霜付条件は他の条件になっていてもよい。
温度調整装置1は、除霜モード時に、機器用ポンプ411を予め定めた圧送能力を発揮するように作動させる。そして、温度調整装置1は、機器用流量調整弁412を適切な開度とし、低温側切替弁430を機器用冷却通路410の低温熱媒体が低温側ラジエータ403に流れる設定に切り替える。例えば、低温側切替弁430は、第1流路孔141aを開放し、且つ、第2流路孔141bを閉塞する位置に回転子22を変位させる。これにより、車載機器CEの冷却水通路406を通過する際に昇温した低温熱媒体を低温側ラジエータ403に流入させることで、低温側ラジエータ403に付着した霜を除去することができる。
以上説明した温度調整装置1は、各種運転モードを切り替えることによって、車室内の快適な空調を実現できるとともに、バッテリBTおよび車載機器CEを適切な温度に調整することができる。
本実施形態の高温側切替弁310および低温側切替弁430は、第1実施形態で説明したバルブ装置10と同様に構成されている。このため、高温側切替弁310および低温側切替弁430は、第1実施形態で説明したバルブ装置10で奏される作用効果をバルブ装置10と同様に得ることができる。
具体的には、高温側切替弁310は、回転子22によって第1流路孔141aの開度および第2流路孔141bの開度を増減することができる。このため、高温側切替弁310は、高温側ラジエータ303を通過する高温熱媒体とヒータコア304を通過する高温熱媒体との流量割合を適切に調整することができる。
ここで、高温側切替弁310の流量を高精度に制御できないと、高温側ラジエータ303を通過する高温熱媒体とヒータコア304を通過する高温熱媒体の流量割合を適切に調整できず、車室内へ吹き出す吹出空気の温度バラツキが大きくなる。この場合、エアミックスドア504等の作動が増大することで、消費電力が増加して車両における電力消費率が悪化してしまう。
これに対して、本実施形態の高温側切替弁310は、固定子720が周方向DRcにずれることによる流量精度の悪化を抑制することができるので、ヒータコア304を通過する高温熱媒体の流量を微調整することができる。すなわち、本実施形態の高温側切替弁310によれば、上述の課題を解決することができる。
また、低温側切替弁430は、回転子22によって第1流路孔141aの開度および第2流路孔141bの開度を増減することで、低温側ラジエータ403を通過する低温熱媒体と機器用迂回通路420を通過する低温熱媒体の流量割合を適切に調整できる。
例えば、除霜運転時には、車載機器CEで昇温した流体の全量を低温側ラジエータ403に適切に導くことができる。これによると、低温側ラジエータ403の除霜を短時間で実施可能となるので、除霜運転を実施することに伴う車室内空調および機器温調への影響を充分に抑えることができる。
また、流路切替弁70は、複数の開閉弁や三方弁等を組み合わせることによって形成されたものではないので、大型化を招き難い。したがって、流路切替弁70が適用された第2流体循環回路400の大型化を抑制することができる。
特に、流路切替弁70は、第1実施形態のバルブ装置10と同等の構成を備えるとともに、シャフト740と回転子750との連結構造が、バルブ装置10のシャフト20と回転子22との連結構造と同様に構成されている。このため、流路切替弁70は、第1実施形態で説明したバルブ装置10で奏される作用効果をバルブ装置10と同様に得ることができる。すなわち、流路切替弁70は、回転子750によって各流路孔722~725の開度を増減することで、低温熱媒体の最適な分配を実現することができる。
ここで、第2流体循環回路400では、流路切替弁70での低温熱媒体を分配が適切に実施できないと、バッテリBTを構成する各電池の温度バラツキが大きくなってしまう。この場合、バッテリBTの劣化促進されることで、車両の航続距離が低下してしまう。なお、バッテリBTの劣化を考慮して電池を余剰に車載することも考えられるが、この場合、初期コストが大幅に増加してしまう。
これに対して、本実施形態の流路切替弁70は、低温熱媒体の最適な分配を実現することができるので、上述の課題を解決することができる。
また、流路切替弁70は、回転子750が第1入口側空間711aの圧力および第2入口側空間712cの圧力が互いに逆方向に作用する。このため、流路切替弁70では、第1入口部700Aから流入する低温熱媒体および第2入口部700Cから流入する低温熱媒体の一方の圧力が変化すると、回転子750の前後に作用する圧力バランスが変化してしまう。このような圧力バランスの変化は、回転子750と固定子720との密着性を阻害する要因となり得る。
これに対して、本実施形態の流路切替弁70は、弾性部材770によって回転子750が固定子720に向けて押し付けられる構成になっている。このため、各入口部700A、700Cから流入する流体の圧力が変化しても、回転子750の姿勢を固定子720に接する姿勢に維持することができる。
また、流路切替弁70は、第2入口部700Cから流入した低温熱媒体を、第2出口部700Dおよび第3出口部700Eのいずれから流出させる際に、低温熱媒体の流れによって、固定子720がシャフト740の軸心CLの周方向にずれる虞がある。
これに対して、流路切替弁70は、嵌合凸部728が第2流路孔723を形成する部位に近い部位に形成されている。すなわち、流路切替弁70は、低温熱媒体が流入する部位に近い部位に嵌合凸部728が形成されているので、低温熱媒体の流れによる固定子720がシャフト740の軸心CLの周方向にずれることを抑制できる。
(第7実施形態の変形例)
上述の第7実施形態では、高温側切替弁310、低温側切替弁430、および流路切替弁70が本開示のバルブ装置10と同様の構成を備える旨を説明したが、温度調整装置1はこれに限定されない。温度調整装置1は、高温側切替弁310、低温側切替弁430、および流路切替弁70の少なくとも1つが本開示のバルブ装置10と同様の構成を備えていてもよい。また、本開示のバルブ装置10は、第1流体循環回路300および第2流体循環回路400とは異なる流体循環回路(例えば、冷凍サイクル装置200)にも適用可能である。
上述の第7実施形態では、温度調整装置1を電気自動車に適用した例について説明したが、温度調整装置1の適用対象は電気自動車に限定されない。温度調整装置1は、例えば、電気自動車以外の移動体や据置型の機器等にも広く適用可能である。これらのことは、第1~第7実施形態のバルブ装置10においても同様である。
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。なお、以下のバルブ装置10に対する変形例は、第7実施形態で説明した高温側切替弁310、低温側切替弁430、流路切替弁70等にも適用することができる。
上述の実施形態では、嵌合構造30が、内周側面部127および外周側面部146のうち、一方の側面部に1つの嵌合突起32が形成され、他方の側面部に1つの嵌合溝31が形成されている例について説明したが、これに限定されない。
例えば、嵌合構造30は、内周側面部127および外周側面部146のうち、一方の側面部に複数の嵌合突起32が形成され、他方の側面部に複数の嵌合溝31が形成されていてもよい。また、嵌合構造30は、内周側面部127および外周側面部146のうち、一方の側面部に嵌合突起32と嵌合溝31とが形成され、他方の側面部にも嵌合突起32と嵌合溝31とが形成されていてもよい。この場合、嵌合構造30は、一方の側面部に形成された嵌合突起32が他方の側面部に形成された嵌合溝31に嵌め合い、一方の側面部に形成された嵌合溝31が他方の側面部に形成された嵌合突起32に嵌め合い可能に構成される。
上述の実施形態では、嵌合突起32および嵌合溝31の平面視での形状がそれぞれ矩形状に形成されている例について説明したが、これに限定されない。
例えば、嵌合突起32および嵌合溝31は、平面視での形状が三角形状や半円形状など、適宜設計することが可能である。
上述の実施形態では、嵌合溝31が筒状本体部120における径方向DRrにおいて、所定軸心CL1と出口開口部120eとの間に介在する部位と異なる部位に形成されている例について説明したが、これに限定されない。
例えば、嵌合溝31は、筒状本体部120における径方向DRrにおいて、所定軸心CL1と出口開口部120eとの間に介在する部位に形成されていてもよい。
上述の実施形態では、嵌合突起32の固定子軸心CL3の径方向の大きさが、固定子軸心CL3の径方向における外周側面部146と内周側面部127との隙間の寸法の2倍以上である例について説明したが、これに限定されない。
例えば、嵌合突起32の固定子軸心CL3の径方向の大きさは、固定子軸心CL3の径方向における外周側面部146と内周側面部127との隙間の寸法の2倍より小さくてもよい。
上述の実施形態では、突起周面部32bの第1方向DR1の大きさが突起側面部32aの第2方向DR2の大きさより大きく形成されている例について説明したが、これに限定されない。
例えば、突起周面部32bの第1方向DR1の大きさは、突起側面部32aの第2方向DR2の大きさより小さく形成されていてもよい。
上述の実施形態では、嵌合突起32の周方向DRcの大きさが、第1流路曲面部141aaおよび第2流路曲面部141baの周方向DRcの大きさより小さく形成されている例について説明したが、これに限定されない。
たとえば、嵌合突起32の周方向DRcの大きさは、第1流路曲面部141aaおよび第2流路曲面部141baの周方向DRcの大きさより大きく形成されていてもよい。
上述の実施形態では、外周側面部146に形成された嵌合突起32が、所定軸心CL1の径方向DRrにおいて、回転子22の回転子外周部225より所定軸心CL1の径方向外側に配置されている例について説明したが、これに限定されない。
例えば、外周側面部146に形成された嵌合突起32は、所定軸心CL1の径方向DRrにおいて、回転子22の回転子外周部225より所定軸心CL1の径方向内側に配置されていてもよい。
上述の実施形態では、摺動面220の中心から摺動面220の外縁までの距離の最大値が、開口面140の中心から開口面140の外縁までの距離の最小値以下になるように形成されている例について説明したが、これに限定されない。
例えば、摺動面220は、摺動面220の中心から摺動面220の外縁までの距離の最大値が、開口面140の中心から開口面140の外縁までの距離の最小値より大きくなるように形成されていてもよい。
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。