本実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明における「先端側」とは、熱変色性筆記具10の軸方向のうち、後述する先筒22に向かう一方側をいい、「後端側」とは、後述する後筒21に向かう他方側をいう。また、先端側に向かう方向を「前方」とし、その反対方向を「後方」とする。そして、前方への移動を「前進」とし、後方への移動を「後退」とする。
なお、本発明における「変色」とは、上記熱変色性インクを用いて「消色」した場合も含み、また筆記した描線、文字等を消しゴム等の消去部で吸着又は削ぎ落とすことう。したがって、本発明は、筆記した描線を、摩擦部材を用いて消去する任意の筆記具にも適用可能である。
図1は、本実施の形態の熱変色性筆記具10の外観(図1(A)~(E))を示す。また、図2は、本実施の形態の熱変色性筆記具10を、図1(D)におけるII-II断面図で示す。
なお、図1(A)~(C)及び図2においては、熱変色性筆記具10を水平にした状態を示しているが、「正面」、「右側面」、「背面」、「底面」及び「平面」については、熱変色性筆記具10を垂直にした状態での位置関係としている。この位置関係については、以下同様である。
本実施の形態の熱変色性筆記具10は、軸筒20の内部に3本のシャープペンシルリフィル40(図2参照)を収容する。なお、図2においては正面側に位置し断面にて表示されているシャープペンシルリフィル40と、その左側面側に位置するシャープペンシルリフィル40との2本のシャープペンシルリフィル40のみが表示されているが、図示されていない右側面側に位置するシャープペンシルリフィル40も存在する。
なお、熱変色性筆記具10について、シャープペンシルリフィル40の筆記先端が軸筒20の内部にある状態を「退避状態」と称し、また、熱変色性筆記具10について、シャープペンシルリフィル40の筆記先端が軸筒20から突出して筆記可能になっている状態を「突出状態」と称する。
本実施の形態の熱変色性筆記具10の最外部を構成する軸筒20は、軸方向の先端側を構成する先筒22と、軸方向の後端側を構成し、先筒22と分離可能な後筒21と、これら後筒21及び先筒22を連結する中筒23(図2参照)とで構成されている。
後筒21には、3本のシャープペンシルリフィル40の各々に対応した摺動溝21Aが、軸方向に沿って形成されている。また、後筒21の後端には、略釣鐘状のカバー部材11が装着されている。このカバー部材11の先端縁は、ノック棒50の一部であるノックボタン51の後端が当接するノックボタン係止縁11A(図2参照)となっている。一方、先筒22の先端部分はテーパ状に縮径し、その最先端には、シャープペンシルリフィル40の先端が突出可能な先端開口22A(図2参照)が設けられている。
中筒23は、後筒21の内部に挿入され各シャープペンシルリフィル40の移動を誘導する略筒状のガイド部23Aと、その前方に位置し後筒21の内側面と圧着する後方接続部23Dと、さらにその前方に位置し先筒22の内側面と螺合する前方接続部23Eと、これら後方接続部23D及び前方接続部23Eの境界を画すとともに外部から視認可能な部分である中間フランジ部23Fとで構成されている。
また、中筒23の後端には、後述の回転子30を支持するための支持突起23Gが形成されている。回転子30の先端には、この支持突起23Gが遊嵌される支持孔32が形成されている。
中筒23のガイド部23Aには、各シャープペンシルリフィル40が移動可能に挿通されるガイド孔23Bが形成されている。このガイド孔23Bの後端辺縁はノックスプリング先端係止縁23Cとなっている。このノックスプリング先端係止縁23Cと、ノック棒50の一部分であるノックスプリング後端係止縁52Hとの間には、シャープペンシルリフィル40の後端部分に外挿されるノックスプリング(図示せず)が介装されている。ノックスプリング(図示せず)は、中筒23に対してノック棒50を常に後方へ付勢している。
シャープペンシルリフィル40は、外径0.3~1.0mmの筆記芯70を収容する筒状の芯ケース41を有する。この芯ケース41は、筆記芯70を直接収容する内筒41Aと、この内筒41Aを収容する外筒41Bとの二重構造となっている。内筒41A及び外筒41Bは、内部が視認可能な透明ないし半透明の樹脂で形成され、その材質としては、例えば、ポリプロピレンやポリエチレンが用いられる。シャープペンシルリフィル40に各々収容された筆記芯70の紙面に筆記した色相は、少なくとも2つは赤色、橙色であり、赤色は620nm以上750nm未満、橙色は590nm以上620nm未満の波長の光でほぼ近しいこととすることで、赤系のフィルムシートによって筆記した文字等の隠し方を調整することができる。
内筒41Aの先端には筆記芯70を把持する芯把持機構46が接続される。芯把持機構46は、内筒41Aの先端に後端部分が直接圧入される押圧駒46Aと、この押圧駒46Aの先端に固定され筆記芯70の操出に直接関与するチャック46Cと、このチャック46Cの先端部分の外周に外挿される短筒状の締め具46Eとを備える。
押圧駒46Aが内筒41Aに圧入される部分の前方の部分は、フランジ状に拡径したチャックスプリング後端係止縁46Fとなっており、このチャックスプリング後端係止縁46Fの後端側の面に内筒41Aの先端が当接している。
チャック46Cは真鍮等の金属で形成され、その先端部分は略釣鐘状に拡径した拡開部46Dとなっている。この拡開部46Dは、放射状に複数箇所に分割され、外方へ放射状に拡開するように塑性変形されている。その拡開部46Dに締め具46Eが外挿されることで、この拡開部46Dが締め付けられ拡開が阻止される。
外筒41Bの先端には、継手42を介して、芯把持機構46のうち拡開部46D以外の部分を被覆する被覆筒43が接続されている。被覆筒43のほぼ中間部分には、内径が縮径して段部が形成され、この段部がチャックスプリング先端係止縁43Aとなっている。
このチャックスプリング先端係止縁43Aと前記したチャックスプリング後端係止縁46Fとの間には、内筒41Aを常に後方に付勢するチャックスプリング46Bが介装されている。さらにこの被覆筒43の先端には、前方へ段階的に縮径する略筒状の先端部材44が接続されている。
先端部材44のほぼ中間部分の、前記チャック46Cの拡開部46Dよりやや前方の位置には、内径が縮径した段部である先端段部44Aが形成されている。この先端段部44Aの前方の空間は、チャック46Cが前進して拡径可能な拡径室44Bとなっている。
先端部材44においては、この先端段部44Aのさらに前方はさらに段階的に縮径し、その最先端部分は筆記芯70が挿通可能な程度な内径にまで縮径している。この最先端部分の後端側の内部には、筆記芯70を保護するための軟質樹脂製の保護部材45が装着されている。
ノック棒50は、後筒21の摺動溝21Aから外方に突接されるノックボタン51と、外筒41Bを押圧する外筒押圧部52と、内筒41Aを押圧する内筒押圧部53とが組み合わされて構成されている。そして、ノック棒50はシャープペンシルリフィル40の各々の後端に接続されるとともに摺動溝21Aに沿って移動可能とされている。
3組あるノック棒50のうちの1組においては、ノックボタン51がクリップ51Aと一体に形成されている。なお、図2においては、外筒押圧部52から軸心側に突出された摺動突起52Eの断面が視認される。その他のノック棒50の詳細については後述する。
後筒21の内部の後端部分であって、軸筒20の軸心には、回転子30が装着されている。回転子30は略筒状の部材であり、その先端には、前述のとおり前記支持突起23Gが遊嵌される支持孔32が形成されている。回転子30の表面には、各ノック棒50に対応したカム溝31が形成されている。そして、回転子30は、カム溝31によりノック棒50の移動を誘導するとともに、ノック棒50の移動に伴い周方向に回転する。この詳細については後述する。
図3は、ノック棒50の外筒押圧部52を、(A)斜視図、(B)正面図、(C)右側面図、(D)背面図、(E)底面図、(F)平面図及び(G)(E)のIII-III断面図でそれぞれ示したものである。
外筒押圧部52は、前記カム溝31に沿って摺動する摺動部52Aと、前記外筒41Bに圧入される圧入部52Bと、これら摺動部52A及び圧入部52Bを連結する連結部52Cとを有している。外筒押圧部52は、この圧入部52Bによって、外筒41Bの後端に接続される。
摺動部52Aと連結部52Cとは、境目なく連続しており、周方向に沿って円弧状に湾曲した(図3(F)参照)長板形状を呈している。摺動部52Aの両側からは、それぞれ側方へ突出した翼状突起52Fが形成されている。
この翼状突起52Fは、内筒押圧部53に接続された状態で外筒押圧部52の外面側に接するノックボタン51の側面を支持する役割を担っている。また、摺動部52Aの内側面側には、前記カム溝31と直接接触する摺動突起52Eが軸心側に突出している(図3(D)、(F)及び(G)参照)。
連結部52Cと圧入部52Bとの間には、外方に環状に突出したフランジ部52Dが形成されている。このフランジ部52Dの先端側の面は、前記したノックスプリング後端係止縁52Hとなっている。
フランジ部52Dから圧入部52Bにかけての正面側には、内筒押圧部53が挿通する切欠部52Gが形成されている。切欠部52Gの先端部分の外面側は、前方に向かって厚みを減ずるように傾斜した外向傾斜面52Iとなっている(図3(A)、(B)、(E)及び(G)参照)。
図4は、ノック棒50の内筒押圧部53を、(A)斜視図、(B)正面図、(C)右側面図、(D)背面図、(E)底面図、(F)平面図及び(G)(E)のIV-IV断面図でそれぞれ示したものである。
内筒押圧部53は、ノックボタン51との接続に関与する一対の突起状の接続部53Aと、前記切欠部52Gに挿通される挿通部53Bと、挿通部53Bの先端に形成され先端が平坦面となっている当接部53Cとを有している。内筒押圧部53は、接続部53Aの間にノックボタン51の接続突起51B(図2参照)を陥入させるようにして、ノックボタン51と接続される。
圧入部52Bは接続部53Aより幅が狭くなっており、その段差の部分が肩部53Eとなっている。また、接続部53Aの先端側は外方に向かって突出した隆起部53Dとなっている。
挿通部53Bは、ノック動作により前進して挿通部53Bに沿って摺動する部分である。また、当接部53Cは、このノック動作による挿通部53Bの前進により内筒41Aの後端と当接する部分である。挿通部53Bの先端部分の内面側は、当接部53Cに向かって厚みを増すように傾斜した内向傾斜面53Fとなっている(図4(C)、(D)、及び(G)参照)。
図5は、外筒押圧部52と内筒押圧部53とを組み合わせた状態を、(A)斜視図、(B)正面図、(C)右側面図、(D)背面図、(E)底面図、(F)平面図及び(G)(E)のV-V断面図でそれぞれ示したものである。
この図5は、ノック棒50が最も後端にある位置、すなわち図2に示す位置にある状態を示している。この状態においては、内筒押圧部53の内向傾斜面53Fが、外筒押圧部52の外向傾斜面52Iと接している(図5(G)参照)。この状態から、ノック動作により切欠部52Gに挿通される挿通部53Bが前進し、これにより内向傾斜面53Fは外向傾斜面52Iから離間する。これに伴い、内筒押圧部53の肩部53Eはフランジ部52Dに接近する。
図6は、回転子30を、(A)正面図、(B)右側面図、(C)背面図、(D)底面図、(E)平面図及び(F)(D)のVI-VI断面図でそれぞれ示したものである。
回転子30は、成形の都合上、前方に位置する前部材33と、後方に位置する後部材34とが別個に成形される。そして、回転子30は、前部材33と後部材34とを組み合わせて形成され、全体として略円筒形状を呈している。回転子30の先端面には、先述の支持孔32が形成されている。また、回転子30の表面には、ノック棒50の数と同じ、3条のカム溝31が形成されている。
カム溝31は、摺動突起52Eが移動可能な溝幅を有しており、その後端から、後端部31A、中央部31B、先端部31C、解除部31Dと称する。また、カム溝31の両側縁については、図面中で左側を左縁31L、右側を右縁31Rと称する。
後端部31Aは、カム溝31において比較的溝幅の広い部分であって、その右縁31Rに、左縁31L側かつ前方に向かって傾斜した後端傾斜縁31Eが設けられている。この後端傾斜縁31Eは、一の摺動突起52Eが後述する係止位置、かつ他の摺動突起52Eが後端部31Aに位置する待機位置にある場合に、他の摺動突起52Eが前進されたときに、その他の摺動突起52Eが接触する部分である。そして、後端傾斜縁31Eの先端から中央部31Bに至る。
中央部31Bは、カム溝31において比較的溝幅の狭い部分であり、軸方向に沿って延びる左縁31Lと右縁31Rとが対向している。そして、中央部31Bにおいて軸方向に沿って延びる右縁31Rが右方に屈曲した部分(後述の係止縁31G)から先端部31Cに至る。
先端部31Cは、カム溝31において比較的溝幅の広い部分であって、その左縁31Lに、右縁31R側かつ前方に向かって傾斜した先端傾斜縁31Fが設けられている。また、先端部31Cの右縁31Rのうち、先端傾斜縁31Fよりも後方には、中央部31Bにおける右縁31Rの先端から90°よりわずかに小さい鋭角に右方に屈曲して延びる係止縁31Gが設けられている。この係止縁31Gは、摺動突起52Eが係止縁31Gに係止された係止位置に摺動突起52Eを位置させる際に用いられる。そして、先端傾斜縁31Fの先端から解除部31Dに至る。
解除部31Dは、カム溝31において、係止位置から先端傾斜縁31Fよりも前方かつ左縁31L側に、係止位置にある摺動突起52Eを移動可能とする部分である。この解除部31Dは、第1延長縁31Hと、誘導縁31Iと、第2延長縁31Jと、解除傾斜縁31Kと、を含んで構成される。
第1延長縁31Hは、解除部31Dの左縁31Lに設けられた部分であって、先端傾斜縁31Fと連続して軸方向に沿って前方に延びている。
誘導縁31Iは、解除部31Dの左縁31Lに設けられた部分であって、第1延長縁31Hと連続して左縁31L側に延びている。また、誘導縁31Iは、その後端側が右縁31R側に向かって傾斜している。
第2延長縁31Jは、解除部31Dの右縁31Rに設けられた部分であって、係止縁31Gと連続して第1延長縁31Hと対向するように軸方向に沿って延びている。
解除傾斜縁31Kは、解除部31Dの右縁31Rに設けられた部分であって、第2延長縁31Jと連続して左縁31L側かつ前方に向かって傾斜している。そして、解除傾斜縁31Kと誘導縁31Iとは対向している。
また、解除部31Dの先端、すなわち、カム溝31の先端には、摺動突起52Eの幅よりもやや狭い幅に形成された先端幅狭部31Mが設けられている。そして、解除部31Dを前進した摺動突起52Eは、先端幅狭部31Mに至ると、ノックボタン51が摺動溝21Aの先端に当接することで、その前進を停止する。
以下、図2及び図7から図11を用いて、本実施の形態の熱変色性筆記具10におけるノック動作を説明する。なお、図7及び図8並びに図10及び図11においては、カム溝31における摺動突起52Eの位置を、ハッチングを施した領域にて表示している。
そして、以下の説明における初期状態として、熱変色性筆記具10は退避状態となっている(図2参照)。このとき、全てのノック棒50の摺動突起52Eは、カム溝31の後端部31Aにおいて左縁31Lに接しており、待機位置に位置している(図7(A)参照)。
この待機位置から、一のノックボタン51を前進させると、一のノックボタン51に接続されている内筒押圧部53が前進し、内筒41Aの後端に当接する。
このとき、内筒41Aの先端に接続されている押圧駒46Aが、チャックスプリング46Bを介して被覆筒43を前方へ押圧する。この前方への押圧力が、継手42を介して接続されている外筒41Bにも伝わることで、結果として、ノックスプリング(図示せず)を圧縮しつつ、シャープペンシルリフィル40全体が前進する。
このとき、外筒41Bに接続されている外筒押圧部52も同時に前進することで、摺動突起52Eはカム溝31の左縁31Lに沿って、中央部31Bを通って前進する(図7(B)参照)。
中央部31Bを通っている状態から、さらに一のノックボタン51を前進させると、摺動突起52Eは先端傾斜縁31Fへ至る(図7(C)参照)。ここで、摺動突起52Eの前進により生ずる力は、先端傾斜縁31Fを左方へ押圧し、その反作用で摺動突起52Eには右方への力がかかる。しかし、摺動突起52Eが属する摺動部52Aの外側に位置するノックボタン51は、軸筒20(後筒21)の摺動溝21Aに沿って移動するため左右へは移動できない。
さらに、一のノックボタン51は、摺動部52Aの両側の翼状突起52F(図3参照)で左右両方が押さえつけられているため、結果として、摺動突起52Eは右方へは移動できない。よって、先端傾斜縁31Fへの左方への押圧力により、回転子30は右回り(後端から見た回転方向。以下同様)へ回転する。
回転子30が右回りに回転した状態から、さらに一のノックボタン51を前進させると、摺動突起52Eは解除部31Dを通って前進し、解除傾斜縁31Kへ至る。ここで、摺動突起52Eの前進により生ずる力は、解除傾斜縁31Kを右方へ押圧し、その反作用で摺動突起52Eには左方への力がかかる。しかし、前記したとおり、摺動突起52Eは左方へは移動できないため、解除傾斜縁31Kへの右方への押圧力により、回転子30は左回りへ回転する。
回転子30が左回りに回転した状態から、さらに一のノックボタン51を前進させると、摺動突起52Eは先端幅狭部31Mに至り(図7(D)参照)、これに伴いノックボタン51が摺動溝21Aの先端に当接することで、摺動突起52Eの前進が停止する。このとき、熱変色性筆記具10は、シャープペンシルリフィル40が先筒22の先端開口22Aから最も突出した状態を取る。
シャープペンシルリフィル40が先端開口22Aから最も突出した状態から、一のノックボタン51への押圧を解除すると、ノックスプリング(図示せず)の復元力により、シャープペンシルリフィル40全体が後方へ押し戻される。その後、シャープペンシルリフィル40は、摺動突起52Eが係止縁31Gに当接したところで(図7(E)参照)、その後退が停止する。すなわち、摺動突起52Eは、係止位置に位置する。
したがって、摺動突起52Eが係止位置にある熱変色性筆記具10は、シャープペンシルリフィル40の筆記先端が先端開口22Aから最も突出した状態よりやや後退した位置で突出状態を保つこととなる。
係止位置にある摺動突起52Eを有するノックボタン51を前進させると、その摺動突起52Eは、先端幅狭部31Mに至るまで移動する(図7(D)参照)。このとき、内筒押圧部53の当接部53Cにより前方に押圧された内筒41Aが前進し、押圧駒46Aを介してチャックスプリング46Bを圧縮しつつチャック46Cが前方へ押圧される。
そして、チャック46Cの拡開部46Dは、前方の拡径室44Bへと前進し、締め具46Eによる拘束を免れて拡開し、筆記芯70が前方へ繰り出される。
すなわち、カム溝31において、摺動突起52Eが係止縁31Gから先端幅狭部31Mまで移動可能な距離(換言すると、図7(D)において摺動突起52Eの後端から係止縁31Gまでの距離、又は、図7(E)において摺動突起52Eの先端から先端幅狭部31Mまでの距離)が、筆記芯70の操出における1回分のノックストロークであり、ノック動作により摺動突起52Eはこの距離の間を往復移動することとなる。
摺動突起52Eが先端幅狭部31Mに至り、ノックボタン51が摺動溝21Aの先端に当接した状態で、一のノックボタン51への押圧を解除すると、ノックスプリング(図示せず)の復元力により、摺動突起52Eは、誘導縁31Iに沿って右縁31R側かつ後方に移動し、係止縁31Gに当接したところで(図7(E)参照)、その後退が停止する。すなわち、摺動突起52Eは、係止位置に位置する。そして、この際には、同時に、チャック46Cも後退し、拡開部46Dは再び締め具46Eにより拘束される。
このとき、筆記芯70に筆圧がかかると、シャープペンシルリフィル40は、内筒押圧部53の当接部53Cが外筒押圧部52の圧入部52Bの先端に当接する位置まで後退する余地がある。そして、この後退の間に、チャック46Cの拡開部46Dが締め具46Eに対して楔状に入り込むことで、筆圧がチャック46Cの芯保持力に転嫁されることになる。
このため、チャックスプリング46Bのみで芯保持力を担う必要がなくなるため、チャックスプリング46Bの荷重を、締め具46Eがチャック46Cに対して固定され得る程度の大きさ(具体的には約2N)で足りることになる。
そして、一の摺動突起52Eが係止位置にある場合、他の摺動突起52Eは、回転子30が元の位置(すなわち、図7(A)に示す位置)に対して右回りに回転した位置にあるため、カム溝31の後端部31Aにおいて右縁31Rの後端傾斜縁31Eと接している(図8(A)参照)。
一の摺動突起52Eが係止位置にある場合に、他の摺動突起52Eを有するノックボタン51を前進させると、他の摺動突起52Eは後端傾斜縁31Eを押圧する。
ここで、摺動突起52Eの前進により生ずる力は、後端傾斜縁31Eを右方へ押圧し、その反作用で摺動突起52Eには左方への力がかかる。しかし、前記したとおり、摺動突起52Eは左方へは移動できないため、後端傾斜縁31Eへの右方への押圧力により、回転子30は左回りへ回転する(図8(A)参照)。
すると、この回転子30の左回りの回転により、係止位置にある摺動突起52Eは、係止していた係止縁31Gから左縁31L側へ移動し、係止縁31Gとの係止が解除される(図8(B)参照)。
そして、係止縁31Gとの係止が解除された摺動突起52Eは中央部31Bに至り、ノックスプリング(図示せず)の復元力により、中央部31Bを後退する(図8(C)参照)。これに伴い、シャープペンシルリフィル40全体が後退し、筆記先端が先端開口22Aから軸筒20の内部に後退する。
そして、各ノックボタン51は、カバー部材11のノックボタン係止縁11Aに当接するまで後退し、図2に示すような元の待機位置へ各摺動突起52Eが復帰する。
次に、先筒22を後筒21から取り外した状態(図9参照)で全てのノック棒50がノック動作され、全ての摺動突起52Eが係止位置にある状態(以下、「全繰り出し状態」とする)が解除される流れについて説明する。この全繰り出し状態(図9(B)参照)は、先筒22を後筒21から取り外した図9(A)に示す状態において、全てのノック棒50が同時にノック動作された場合や、ノック動作されたノック棒50を指で押さえつつ、他のノック棒50が順番にノック動作された場合に発生する。
全繰り出し状態では、全ての摺動突起52Eが係止位置にあり、係止縁31Gに係止されている(図10(A)及び図11(A)参照)。なお、本実施の形態において摺動突起52Eは3つ存在するが、残り1つの図示は省略している。
この全繰り出し状態から、図10に示す摺動突起52Eを有するノックボタン51を前進させると、摺動突起52Eは解除部31Dを通って前進し、解除傾斜縁31Kへ至る。その後は、上記のように、回転子30が左回りへ回転することにより、図11(A)に示す係止位置にある摺動突起52Eが係止縁31Gから左縁31L側へ移動し、図11(B)に示すように係止縁31Gとの係止が解除される。その後、係止縁31Gとの係止が解除された摺動突起52Eは、中央部31Bに至り、ノックスプリング(図示せず)の復元力により、中央部31Bを後退して(図11(C)参照)後端部31Aに位置し、待機位置へ復帰する。この場合、熱変色性筆記具10は、図9(C)に示すように、一のシャープペンシルリフィル40が最も繰り出され、かつ、他の2つのシャープペンシルリフィル40の繰り出しが解除された状態となる。
一方、上記の図10に示す摺動突起52Eを有するノックボタン51を解除傾斜縁31Kから前進させると、摺動突起52Eは先端幅狭部31Mに至り(図10(B)参照)、これに伴いノックボタン51が摺動溝21Aの先端に当接することで、摺動突起52Eの前進が停止する。そして、摺動突起52Eが先端幅狭部31Mに至り、ノックボタン51が摺動溝21Aの先端に当接した状態で、一のノックボタン51への押圧を解除すると、ノックスプリング(図示せず)の復元力により、摺動突起52Eは、誘導縁31Iに沿って右縁31R側かつ後方に移動し(図10(C)参照)、係止縁31Gに当接したところで、その後退が停止する(図10(D)参照)。すなわち、摺動突起52Eは、係止位置に位置する。
そして、上記の図10に示す摺動突起52Eが係止位置に位置した際には、係止位置にあった図11に示す摺動突起52Eは上記のように待機位置へ復帰しており、全繰り出し状態が解除されている。その後は、上記のように、摺動突起52Eが待機位置にあるノックボタン51を前進させることで、係止位置にある摺動突起52Eを待機位置へ復帰させることができる(図10(E)及び(F)参照)。
以上のように、本実施の形態によれば、全繰り出し状態にある場合でも、摺動突起52Eが係止位置にあるノックボタン51を前進させて、回転子30を左回りへ回転させることにより、全繰り出し状態を解除することができる。
また、本実施の形態では、誘導縁31Iの後端側が右縁31R側に向かって傾斜しているため、摺動突起52Eが先端幅狭部31Mに至り、ノックボタン51が摺動溝21Aの先端に当接した状態で、ノックボタン51への押圧を解除すると、ノックスプリング(図示せず)の復元力により、その摺動突起52Eが係止位置まで後退する。そのため、本実施の形態によれば、全繰り出し状態が解除されて、待機位置へ復帰した摺動突起52Eを有するノックボタン51を前進させることで、係止位置にある摺動突起52Eを待機位置へ復帰させることができる。
筆記芯70は、シャープペンシルリフィル40内に収容される摩擦熱によって変色可能な熱変色性を有する固形芯である。筆記芯70を具体的に説明すると、(a)熱変色性成分と、(b)前記熱変色性成分に伝達される熱量を制御する成分との二つの構成成分を必須とするものである。これらの成分について具体的に説明すると以下の通りである。
(a)熱変色性成分
本発明の実施形態において用いられる熱変色性成分(以下、簡単のために成分(a)とういうことがある)とは、後述する(a1)~(a3)成分を含むものであるが、このような成分(a)のひとつは、下記のような特性を有する、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1~7℃)を有するものである。
(1)所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈する、
(2)常温域では、前記した消色状態および発色状態のうち特定の一方の状態しか存在しない、
(3)加熱により高温側変色点以上の温度となるか、冷却により低温側変色点以下の温度になることによって、もう一方の状態となり、その温度が維持されている間はその状態が維持されるが、前記加熱または冷却の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る。
また、大きなヒステリシス特性(ΔHB=8~50℃)を示す成分(a)も用いることができる。即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t1)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t2~t3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する成分を用いることができる。この成分は、加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)のものであってもよいし、マイクロカプセルに内包されていてもよい。
成分(a)の発消色状態のうち常温域では特定の一方の状態(発色状態)のみ存在させると共に、前記成分(a)による筆跡を摩擦により簡易に変色(消色)させるためには、完全消色温度(t4)が45~95℃であり、且つ、発色開始温度(t2)が-50~10℃であることが好ましい。
ここで、発色状態が常温域で保持でき、且つ、筆跡の摩擦による変色性を容易とするために完全消色温度(t4)が45~95℃、且つ、発色開始温度(t2)が-50~10℃であることが好ましい理由は以下の通り説明できる。発色状態から消色開始温度(t3)を経て完全消色温度(t4)に達しない状態で加温を止めると、再び第一の状態に復する現象を生じること、及び、消色状態から発色開始温度(t2)を経て完全発色温度(t1)に達しない状態で冷却を中止しても発色を生じた状態が維持されることから、完全消色温度(t4)が常温域を越える45℃以上であれば、発色状態は通常の使用状態において維持されることになり、発色開始温度(t2)が常温域を下回る-50~10℃の温度であれば消色状態は通常の使用において維持されるからである。更に、摩擦により筆跡を消去する場合、完全消色温度(t4)が95℃以下であれば、筆記面に形成された筆跡上を摩擦部材による数回の摩擦による摩擦熱で十分に変色できる。
完全消色温度(t4)が95℃を越える温度の場合、摩擦部材による摩擦で得られる摩擦熱が完全消色温度に達し難くなるため、容易に変色し難くなり、摩擦回数が増加したり、或いは、摩擦に荷重をかけ過ぎたりする傾向にあるため、筆記面を傷めてしまう虞がある。前述の完全消色温度(t4)の温度設定において、発色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより高い温度であることが好ましく、しかも、摩擦による摩擦熱が完全消色温度(t4)を越えるようにするためには低い温度であることが好ましい。よって、完全消色温度(t4)は、好ましくは50~90℃、より好ましくは60~80℃である。更に、前述の発色開始温度(t2)の温度設定において、消色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより低い温度であることが好ましく、-50~5℃が好適であり、-50~0℃がより好適である。
筆記芯70のヒステリシス幅(ΔH)は一般に50~100℃の範囲であり、好ましくは60~80℃である。
(a1)成分としては、所謂ロイコ染料を用いることができる。具体的には、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、およびジアザローダミンラクトン類などが挙げられる。より具体的には、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3-〔2-エトキシ-4-(N-エチルアニリノ)フェニル〕-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3,6-ジフェニルアミノフルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、2-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、2-(2-クロロアニリノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、2-(N-メチルアニリノ)-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-クロロ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、2-キシリジノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-ジエチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)フルオラン、1,2-ベンツ-6-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)フルオラン、2-(3-メトキシ-4-ドデコキシスチリル)キノリン、スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1’(3’H)イソベンゾフラン〕-3’-オン、2-(ジエチルアミノ)-8-(ジエチルアミノ)-4-メチル-スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-g)ピリミジン-5,1’(3’H)イソベンゾフラン〕-3-オン、2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(ジ-n-ブチルアミノ)-4-メチル-スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-g)ピリミジン-5,1’(3’H)イソベンゾフラン〕-3-オン、2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(ジエチルアミノ)-4-メチル-スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-g)ピリミジン-5,1’(3’H)イソベンゾフラン〕-3-オン、2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(N-エチル-N-i-アミルアミノ)-4-メチル-スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-g)ピリミジン-5,1’(3’H)イソベンゾフラン〕-3-オン、2-(ジブチルアミノ)-8-(ジペンチルアミノ)-4-メチル-スピロ[5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-g)ピリミジン-5,1’(3’H)-イソベンゾフラン]-3-オン、3-(2-メトキシ-4-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-ペンチル-2-メチルインドール-3-イル)-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、4,5,6,7-テトラクロロ-3-[4-(ジメチルアミノ)-2-メチルフェニル]-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、3´,6´-ビス〔フェニル(2-メチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9´-〔9H〕キサンテン]-3-オン、3´,6´-ビス〔フェニル(3-メチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9´-〔9H〕キサンテン]-3-オン、および3´,6´-ビス〔フェニル(3-エチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9´-〔9H〕キサンテン]-3-オン等を挙げることができる。更には、蛍光性の黄色乃至赤色の発色を発現させるのに有効な、ピリジン系、キナゾリン系、ビスキナゾリン系化合物等を挙げることができ、4-[2,6-ビス(2-エトキシフェニル)-4-ピリジニル]-N,N-ジメチルベンゼンアミンを例示できる。
本発明の実施形態に用いる成分(a2)の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(a1)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群などがある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、フェノール基を一つ有するモノフェノール類だけでなく、複数のフェノール基を有するポリフェノール類がある。また、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、およびフェノール-アルデヒド縮合樹脂などが挙げられる。また、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩を用いることもできる。より具体的には、フェノール、o-クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、および2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナンなどが挙げられる。
また、前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2~5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3-トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物なども用いることができる。
前記成分(a1)および成分(a2)による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の成分(a3)としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、およびエーテル類等を挙げることができる。
前記成分(a3)として好ましくは、色濃度-温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコール又はエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、およびジステアリンなどを用いることができる。
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n-ペンチルアルコール又はn-ヘプチルアルコールと炭素数10~16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17~23の脂肪酸エステル化合物を用いてもよい。具体的には、エステル類としては、酢酸n-ペンタデシル、酪酸n-トリデシル、酪酸n-ペンタデシル、カプロン酸n-ウンデシル、カプロン酸n-トリデシル、カプロン酸n-ペンタデシル、カプリル酸n-ノニル、カプリル酸n-ウンデシル、カプリル酸n-トリデシル、カプリル酸n-ペンタデシル、カプリン酸n-ヘプチル、カプリン酸n-ノニル、カプリン酸n-ウンデシル、カプリン酸n-トリデシル、カプリン酸n-ペンタデシル、ラウリン酸n-ペンチル、ラウリン酸n-ヘプチル、ラウリン酸n-ノニル、ラウリン酸n-ウンデシル、ラウリン酸n-トリデシル、ラウリン酸n-ペンタデシル、ミリスチン酸n-ペンチル、ミリスチン酸n-ヘプチル、ミリスチン酸n-ノニル、ミリスチン酸n-ウンデシル、ミリスチン酸n-トリデシル、ミリスチン酸n-ペンタデシル、パルミチン酸n-ペンチル、パルミチン酸n-ヘプチル、パルミチン酸n-ノニル、パルミチン酸n-ウンデシル、パルミチン酸n-トリデシル、パルミチン酸n-ペンタデシル、ステアリン酸n-ノニル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸n-トリデシル、ステアリン酸n-ペンタデシル、エイコサン酸n-ノニル、エイコサン酸n-ウンデシル、エイコサン酸n-トリデシル、エイコサン酸n-ペンタデシル、ベヘニン酸n-ノニル、ベヘニン酸n-ウンデシル、ベヘニン酸n-トリデシル、およびベヘニン酸n-ペンタデシルなどが挙げられる。
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2-デカノン、3-デカノン、4-デカノン、2-ウンデカノン、3-ウンデカノン、4-ウンデカノン、5-ウンデカノン、2-ドデカノン、3-ドデカノン、4-ドデカノン、5-ドデカノン、2-トリデカノン、3-トリデカノン、2-テトラデカノン、2-ペンタデカノン、8-ペンタデカノン、2-ヘキサデカノン、3-ヘキサデカノン、9-ヘプタデカノン、2-ペンタデカノン、2-オクタデカノン、2-ノナデカノン、10-ノナデカノン、2-エイコサノン、11-エイコサノン、2-ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、およびステアロンなどが挙げられる。
さらに、総炭素数が12~24のアリールアルキルケトン類としては、例えば、n-オクタデカノフェノン、n-ヘプタデカノフェノン、n-ヘキサデカノフェノン、n-ペンタデカノフェノン、n-テトラデカノフェノン、4-n-ドデカアセトフェノン、n-トリデカノフェノン、4-n-ウンデカノアセトフェノン、n-ラウロフェノン、4-n-デカノアセトフェノン、n-ウンデカノフェノン、4-n-ノニルアセトフェノン、n-デカノフェノン、4-n-オクチルアセトフェノン、n-ノナノフェノン、4-n-ヘプチルアセトフェノン、n-オクタノフェノン、4-n-ヘキシルアセトフェノン、4-n-シクロヘキシルアセトフェノン、4-tert-ブチルプロピオフェノン、n-ヘプタフェノン、4-n-ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル-n-ブチルケトン、4-n-ブチルアセトフェノン、n-ヘキサノフェノン、4-イソブチルアセトフェノン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、およびシクロペンチルフェニルケトンなどが挙げられる。
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、およびウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
成分(a)に含まれる(a1)、(a2)、(a3)の3成分の配合比としては、色濃度、変色温度、各成分の種類などにより決まるが、一般的に所望の特性が得られる配合比は、質量比で、成分(a1):成分(a2):成分(a3)=1:0.1~50:1~800であり、好ましくは、成分(a1):成分(a2):成分(a3)=1:0.5~20:5~200である。これらの各成分は、各々二種類以上を混合して用いてもよい。
前記成分(a)は、そのまま筆記芯70に分散等させてもよいが、マイクロカプセルに内包した熱変色性マイクロカプセル顔料(以下、熱変色性マイクロカプセルということがある)として使用されることが好ましい。これは、種々の使用条件において熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
なお、前記マイクロカプセル顔料中に任意の染料や顔料(非熱変色性)を添加して、有色から色の異なる有色への色変化(変色)を呈するものとすることもできる。
前記成分(a)をマイクロカプセル化する方法としては、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与したり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
前記マイクロカプセル顔料の形態は円形断面の形態の他、非円形断面の形態であってもよい。ここで、成分(a)とマイクロカプセル壁膜の質量比は一般に7:1~1:1、好ましくは6:1~1:1の範囲を満たす。成分(a)の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を生じ易く、壁膜の成分(a)に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を生じ易くなる。
前記マイクロカプセル顔料は、平均粒子径が一般に0.1~50μm、好ましくは0.3~30μm、より好ましくは0.5~10μmの範囲が実用性を満たす。前記マイクロカプセルの最大外径の平均値が50μmを越えると分散安定性に欠けることがあり、また、最大外径の平均値が0.1μm未満では高濃度の発色性を示し難くなるので注意が必要である。本発明でいうマイクロカプセルの平均粒子径とは、粒子の外径を測定したときの体積基準で表わしたD50の値で表されるが、ここでは、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-300型(株式会社堀場製作所製;LA-300)を用いて測定してその数値を基に平均粒子径(メジアン径)を算出した値を用いた。
(b) 熱変色性成分に伝達される熱量を制御する成分は、前記した熱変色性成分(a)が、外部から加えられる熱によって変色または消色することにより組成物全体の色が変化する。このとき、成分(a)に加えられる熱量を制御することで、意図しない変色や消色を防ぐことが可能となる。このような成分(a)に伝達される熱量を制御する成分を、以下簡単のために成分(b)ということがある。
成分(b)には、
(1)摩擦などにより発生する熱量そのものを抑制するもの、および
(2)外部から加えられた熱量を吸収して成分(a)への熱量の伝達を抑制するもの
がある。いずれの場合でも成分(a)に加えられる熱量が制御され、成分(a)の意図しない変色や消色を防ぐことができる。
このような機能を有する成分(b)としては、
(bi)ショ糖脂肪酸エステルおよびデキストリン脂肪酸エステルからなる群から選択されるエステル化合物、および(bii)成分(a)と常に非相溶の状態で存在し、かつその融点が、前記成分(a3)の融点より低い吸熱相変化化合物
が挙げられる。これら(bi)および(bii)は、上記の(1)または(2)の少なくとも一方の機能を有するが、(1)または(2)の一方のみの機能を有するものに限定されるものでは無い。例えば成分(bi)は上記(1)の機能を主に発揮するが、(2)の機能も併せ持つものと考えられている。成分(b)のそれぞれについて説明すると以下の通りである。
成分(bi)として ショ糖脂肪酸エステルおよびデキストリン脂肪酸エステルからなる群から選択されるエステル化合物を用いることができる。このような成分を用いることで、成分(a)の意図しない変色または消色を防ぐことができるとともに、筆記性を改良することもできる。すなわち、ショ糖脂肪酸エステルやデキストリン脂肪酸エステルは、比較的低融点であるため、筆記時に軟化して擦過抵抗を吸収すると推測される。そのため、組成物中に添加することで筆記抵抗を低減し発熱が抑制される。例えば、従来の熱変色性筆記芯70を用いて早書きした場合、紙面との摩擦に伴う発熱温度が高くなるために成分(a)が透明化してしまい、先に形成されていた筆跡が消色してしまうことがあった。これに対して本発明の実施形態においては、前記エステル化合物を添加することで、筆記時の紙面との摩擦に伴う発熱を和らげ、高速筆記時に生じる摩擦熱によって筆跡が消色してしまう不具合を抑制することができ、筆記時の早書きが可能となるものと考えられる。
更に、筆跡の重ね塗りが可能となり、紙面への濃淡形成が容易に行えるものとなる。従って、昨今市場において需要が高まっている大人向けの塗り絵等、本格的な塗り絵用途等に有用なものとなる。
上記で用いることができるショ糖脂肪酸エステルとしては、特にC12~C22の脂肪酸を構成脂肪酸とするエステルが好適であり、より好ましくは、パルミチン酸、ステアリン酸が有用である。具体的には、リョートーシュガーエステル(商品名)シリーズ(三菱化学フーズ株式会社製)、およびシュガーワックス(商品名)シリーズ(第一工業製薬株式会社製)等が例示できる。
上記で用いることができるデキストリン脂肪酸エステルとしては、特にC14~C18の脂肪酸を構成脂肪酸とするエステルが好適であり、より好ましくは、パルミチン酸、ミリスチン酸、およびステアリン酸が有用である。具体的には、レオパール(商品名)シリーズ(千葉製粉株式会社製)等が例示できる。
(bii) 成分(a)と常に非相溶の状態で存在し、かつその融点が、前記成分(a3)の融点より低い吸熱相変化化合物として、吸熱相変化化合物を用いることができる。この化合物は、主として熱を吸収して成分(a)に熱が伝達されるのを抑制する効果を有するものである。この化合物は成分(a)とは非相溶の状態で存在し、かつ融点が成分(a3)よりも低いことが必要である。具体的に成分(bii)として用いることができるものは、成分(a3)の融点より低い融点を有するものである。具体的には、アルコール類、カルボン酸類、エステル類、エーテル類、ケトン類、およびアミド類などの有機化合物などが挙げられる。より具体的には、アルコール類としては、ラウリルアルコール、ドデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、ステアリルアルコール、ノナデシルアルコール、エイコシルアルコール、ベヘニルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールなどが挙げられる。カルボン酸類としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、エイコサン酸、およびベヘン酸テトラコサン酸などが挙げられる。エステル類としては、一価の脂肪酸と脂肪族一価アルコール、又は、脂環を有する一価アルコールからなる総炭素数13以上のエステル類として、酢酸ペンタデシル、酪酸n-トリデシル、酪酸n-ペンタデシル、カプリル酸n-ノニル、カプリル酸n-ウンデシル、カプリル酸n-ラウリル、カプリル酸n-トリデシル、カプリル酸n-ペンタデシル、カプリル酸セチル、カプリル酸ステアリル、カプリン酸n-プロピル、カプリン酸n-ヘプチル、カプリン酸n-ウンデシル、カプリン酸n-ラウリル、カプリン酸n-トリデシル、カプリン酸n-ペンタデシル、カプリン酸セチル、カプリン酸ステアリル、カプロン酸n-ウンデシル、カプロン酸n-トリデシル、カプロン酸n-ペンタデシル、カプロン酸n-ノニル、カプロン酸n-ウンデシル、カプロン酸ステアリル、カプリル酸n-ヘキシル、カプリル酸n-ヘプチル、カプリル酸n-オクチル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸n-ヘプチル、ラウリン酸n-ペンチル、ラウリン酸ネオペンチル、ラウリン酸2エチルヘキシル、ラウリン酸n-オクチル、ラウリン酸n-ノニル、ラウリン酸n-デシル、ラウリン酸n-ウンデシル、ラウリン酸ラウリル、ラウリン酸n-トリデシル、ラウリン酸ミリスチル、ラウリン酸n-ペンタデシル、ラウリン酸ステアリル、ラウリン酸シクロヘキシルメチル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸n-ペンチル、ミリスチン酸n-ヘプチル、ミリスチン酸n-ノニル、ミリスチン酸n-デシル、ミリスチン酸n-ウンデシル、ミリスチン酸ラウリル、ミリスチン酸n-トリデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸n-ペンタデシル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ステアリル、ミリスチン酸シクロヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸n-プロピル、パルミチン酸n-ペンチル、パルミチン酸ネオペンチル、パルミチン酸n-ヘプチル、パルミチン酸n-ノニル、パルミチン酸n-デシル、パルミチン酸n-ウンデシル、パルミチン酸ラウリル、パルミチン酸n-トリデシル、パルミチン酸ミリスチルパルミチン酸n-ペンタデシル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸ステアリルパルミチン酸シクロヘキシルメチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸n-アミル、ステアリン酸n-ヘプチル、ステアリン酸ネオペンチル、ステアリン酸n-オクチル、ステアリン酸n-ノニル、ステアリン酸n-デシル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸n-トリデシル、ステアリン酸ミリスチル、ステアリン酸n-ペンタデシル、ステアリン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸エイコシル、ステアリン酸n-ドコシル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、ステアリン酸オレイル、ステアリン酸イソステアリル、ステアリン酸シクロヘキシルメチル、エイコサン酸メチル、エイコサン酸n-アミル、エイコサン酸n-ヘプチル、エイコサン酸n-オクチル、エイコサン酸n-ノニル、エイコサン酸n-デシル、エイコサン酸n-ウンデシル、エイコサン酸n-トリデシル、エイコサン酸n-ペンタデシル、ベヘン酸エチル、ベヘン酸n-アミル、ベヘン酸n-ヘプチル、ベヘン酸ネオペンチル、ベヘン酸n-オクチル、ベヘン酸n-ノニル、ベヘン酸n-デシル、ベヘン酸n-ウンデシル、ベヘン酸n-トリデシル、ベヘン酸ミリスチル、ベヘン酸n-ペンタデシル、ベヘン酸セチル、シクロヘキシル酢酸ステアリル、2-シクロヘキシルプロピオン酸ステアリル、およびオクチル酸ネオペンチルなどが挙げられる。
さらに、脂肪族二価又は多価カルボン酸と脂肪族一価アルコール又は脂環を有する一価アルコールからなる総炭素数18以上のエステル類として、セバシン酸ジn-ブチル、アジピン酸ジn-ヘキシル、シュウ酸ジn-ノニル、シュウ酸ジn-デシル、シュウ酸ジn-ウンデシル、シュウ酸ジラウリル、シュウ酸ジn-トリデシル、シュウ酸ジミリスチル、シュウ酸ジn-ペンタデシル、シュウ酸ジセチル、シュウ酸ジn-ヘプタデシル、シュウ酸ジステアリル、マロン酸ジラウリル、マロン酸ジn-トリデシル、マロン酸ジミリスチル、マロン酸ジn-ペンタデシル、マロン酸ジセチル、マロン酸ジn-ヘプタデシル、マロン酸ジステアリル、コハク酸ジn-ノニル、コハク酸ジn-デシル、コハク酸ジn-ウンデシル、コハク酸ジラウリル、コハク酸ジn-トリデシル、コハク酸ジミリスチル、コハク酸ジn-ペンタデシル、コハク酸ジセチル、コハク酸ジヘプタデシル、コハク酸ジステアリル、グルタル酸ジn-デシル、グルタル酸ジn-ウンデシル、グルタル酸ジラウリル、グルタル酸ジn-トリデシル、グルタル酸ジミリスチル、グルタル酸ジn-ペンタデシル、グルタル酸ジセチル、グルタル酸ジn-ヘプタデシル、グルタル酸ジステアリル、アジピン酸ジn-デシル、アジピン酸ジn-ウンデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジn-トリデシル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジn-ペンタデシル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジn-ヘプタデシル、アジピン酸ジステアリル、アジピン酸ジn-ドコシル、ピメリン酸ジn-デシル、ピメリン酸ジn-ウンデシル、ピメリン酸ジラウリル、ピメリン酸ジn-トリデシル、ピメリン酸ジミリスチル、ピメリン酸ジn-ペンタデシル、ピメリン酸ジセチル、ピメリン酸ジn-ヘプタデシル、ピメリン酸ジステアリル、スベリン酸ジn-デシル、スベリン酸ジn-ウンデシル、スベリン酸ジラウリル、スベリン酸ジn-トリデシル、スベリン酸ジミリスチル、セバシン酸ジn-ノニル、セバシン酸ジn-デシル、セバシン酸ジn-ウンデシル、セバシン酸ジラウリル、セバシン酸ジn-トリデシル、セバシン酸ジミリスチル、セバシン酸ジn-ペンタデシル、セバシン酸ジセチル、セバシン酸ジn-ヘプタデシル、セバシン酸ジステアリル、スベリン酸ジn-ペンタデシル、スベリン酸ジセチル、スベリン酸ジn-ヘプタデシル、スベリン酸ジステアリル、アゼライン酸ジn-デシル、アゼライン酸ジn-ウンデシル、アゼライン酸ジラウリル、アゼライン酸ジn-トリデシル、アゼライン酸ジミリスチル、アゼライン酸ジn-ペンタデシル、アゼライン酸ジセチル、アゼライン酸ジn-ヘプタデシル、アゼライン酸ジステアリル、1,18-オクタデシルメチレンジカルボン酸ジn-オクチル、1,18-オクタデシルメチレンジカルボン酸ジシクロヘキシル、および1,18-オクタデシルメチレンジカルボン酸ジネオペンチル等が挙げられる。
また、脂肪族二価又は多価アルコール又は脂環を有する二価及び多価アルコールと一価の脂肪酸からなる総炭素数18以上のエステル類として、エチレングリコールジカプリル酸エステル、エチレングリコールジカプリン酸エステル、エチレングリコールジウンデカン酸エステル、エチレングリコールジラウリン酸エステル、エチレングリコールジトリデカン酸エステル、エチレングリコールジミリスチン酸エステル、エチレングリコールジペンタデカン酸エステル、エチレングリコールジパルミチン酸エステル、エチレングリコールジヘプタデカン酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル、1,3-プロパンジオールジカプリル酸エステル、1,3-プロパンジオールジカプリン酸エステル、1,3-プロパンジオールジウンデカン酸エステル、1,3-プロパンジオールジラウリン酸エステル、1,3-プロパンジオールジトリデカン酸エステル、1,3-プロパンジオールジミリスチン酸エステル、1,3-プロパンジオールジペンタデカン酸エステル、1,3-プロパンジオールジパルミチン酸エステル、1,3-プロパンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,3-プロパンジオールジステアリン酸エステル、1,4-ブタンジオールジカプリル酸エステル、1,4-ブタンジオールジカプリン酸エステル、1,4-ブタンジオールジウンデカン酸エステル、1,4-ブタンジオールジラウリン酸エステル、1,4-ブタンジオールジトリデカン酸エステル、1,4-ブタンジオールジミリスチン酸エステル、1,4-ブタンジオールジペンタデカン酸エステル、1,4-ブタンジオールジパルミチン酸エステル、1,4-ブタンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,4-ブタンジオールジステアリン酸エステル、1,5-ペンタンジオールジカプリン酸エステル、1,5-ペンタンジオールジウンデカン酸エステル、1,5-ペンタンジオールジラウリン酸エステル、1,5-ペンタンジオールジトリデカン酸エステル、1,5-ペンタンジオールジミリスチン酸エステル、1,5-ペンタンジオールジペンタデカン酸エステル、1,5-ペンタンジオールジパルミチン酸エステル、1,5-ペンタンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,5-ペンタンジオールジステアリン酸エステル、1,6-ヘキサンジオールジカプリン酸エステル、1,6-ヘキサンジオールジウンデカン酸エステル、1,6-ヘキサンジオールジラウリン酸エステル、1,6-ヘキサンジオールジトリデカン酸エステル、1,6-ヘキサンジオールジミリスチン酸エステル、1,6-ヘキサンジオールジペンタデカン酸エステル、1,6-ヘキサンジオールジパルミチン酸エステル、1,6-ヘキサンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,6-ヘキサンジオールジステアリン酸エステル、1,7-ペンタンジオールジカプリン酸エステル、1,7-ペンタンジオールジウンデカン酸エステル、1,7-ペンタンジオールジラウリン酸エステル、1,7-ペンタンジオールジトリデカン酸エステル、1,7-ペンタンジオールジミリスチン酸エステル、1,7-ペンタンジオールジペンタデカン酸エステル、1,7-ペンタンジオールジパルミチン酸エステル、1,7-ペンタンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,7-ペンタンジオールジステアリン酸エステル、1,8-オクタンジオールジカプリン酸エステル、1,8-オクタンジオールジウンデカン酸エステル、1,8-オクタンジオールジラウリン酸エステル、1,8-オクタンジオールジトリデカン酸エステル、1,8-オクタンジオールジミリスチン酸エステル、1,8-オクタンジオールジペンタデカン酸エステル、1,8-オクタンジオールジパルミチン酸エステル、1,8-オクタンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,8-オクタンジオールジステアリン酸エステル、1,9-ノナンジオールジカプリン酸エステル、1,9-ノナンジオールジウンデカン酸エステル、1,9-ノナンジオールジラウリン酸エステル、1,9-ノナンジオールジトリデカン酸エステル、1,9-ノナンジオールジミリスチン酸エステル、1,9-ノナンジオールジペンタデカン酸エステル、1,9-ノナンジオールジパルミチン酸エステル、1,9-ノナンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,9-ノナンジオールジステアリン酸エステル、1,10-デカンジオールジカプリル酸エステル、1,10-デカンジオールジカプリン酸エステル、1,10-デカンジオールジウンデカン酸エステル、1,10-デカンジオールジラウリン酸エステル、1,10-デカンジオールジトリデカン酸エステル、1,10-デカンジオールジミリスチン酸エステル、1,10-デカンジオールジペンタデカン酸エステル、1,10-デカンジオールジパルミチン酸エステル、1,10-デカンジオールジヘプタデカン酸エステル、1,10-デカンジオールジステアリン酸エステル、1,5-ペンタンジオールジステアレート、1,2,6-ヘキサントリオールジミリステート、ペンタエリストールトリミリステート、ペンタエリストールテトララウレート、1,4-シクロヘキサンジオールジミリスチル、1,4-シクロヘキサンジオールジデシル、1,4-シクロヘキサンジオールジミリスチル、1,4-シクロヘキサンジオールジステアリル、1,4-シクロヘキサンジメタノールのジラウリート、および1,4-シクロヘキサンジメタノールのジミリステートなどが挙げられる。
そして、芳香環を有する二価アルコールと一価の脂肪酸からなる総炭素数24以上のエステル類として、キシリレングリコールジカプリル酸エステル、キシリレングリコールジカプリン酸エステル、キシリレングリコールジウンデカン酸エステル、キシリレングリコールジラウリン酸エステル、キシリレングリコールジトリデカン酸エステル、キシリレングリコールジミリスチン酸エステル、キシリレングリコールジペンタデカン酸エステル、キシリレングリコールジパルミチン酸エステル、キシリレングリコールジヘプタデカン酸エステル、およびキシリレングリコールジステアリン酸エステルなどが挙げられる。
さらに、芳香環を有する一価のカルボン酸と脂肪族一価アルコール又は脂環を有する一価アルコールからなる総炭素数15以上のエステル類として、3,5-ジメチル安息香酸ヘキシル、2-メチル安息香酸デシル、2-メチル安息香酸ラウリル、2-メチル安息香酸ミリスチル、2-メチル安息香酸ステアリル、4-tert-ブチル安息香酸セチル、4-シクロヘキシル安息香酸ベヘニル、4-フェニル安息香酸ミリスチル、4-オクチル安息香酸ラウリル、3-エチル安息香酸ステアリル、4-イソプロピル安息香酸デシル、4-ベンゾイル安息香酸ステアリル、4-クロロ安息香酸ステアリル、3-ブロモ安息香酸ミリスチル、2-クロロ-4-ブロモ安息香酸ステアリル、3,4-ジクロロ安息香酸デシル、2,4-ジブロモ安息香酸オクチル、3-ニトロ安息香酸セチル、4-アミノ安息香酸シクロヘキシルメチル、4-ジエチルアミノ安息香酸セチル、4-アニリノ安息香酸ステアリル、4-メトキシ安息香酸デシル、4-メトキシ安息香酸セチル、4-ブトキシ安息香酸オクチル、4-ヒドロキシ安息香酸セチル、p-クロロフェニル酢酸ステアリル、p-クロロフェニル酢酸セチル、サリチル酸ネオペンチル、2-ナフトエ酸ステアリル、ベンジル酸セチル、ベンジル酸ステアリル、3-ベンゾイルプロピオン酸デシル、安息香酸ステアリル、安息香酸ミリスチル、2-ベンゾイルプロピオン酸シクロヘキシルメチル、およびケイ皮酸シクロヘキシルメチルなどが挙げられる。
また、芳香環を有する一価のカルボン酸と芳香環を有する一価アルコールからなる総炭素数14以上のエステル類として、サリチル酸ベンジル、サリチル酸4-メトキシメチルフェニルメチル、安息香酸4-クロロフェニルメチル、ケイ皮酸ベンジル、4-tert-ブチル安息香酸フェニル、2-メチル安息香酸4-クロロベンジル、および安息香酸4-メトキシフェニルメチルなどが挙げられる。
一価の脂肪酸と芳香環を有する一価アルコールからなる総炭素数15以上のエステル類として、カプリル酸4-クロロフェニルメチル、カプリン酸4-クロロフェニルメチル、ラウリン酸4-メトキシフェニルメチル、ミリスチン酸4-メトキシフェニルメチル、ステアリン酸4-ニトロフェニルメチル、カプリン酸4-メチルフェニルメチル、ミリスチン酸2-クロロフェニルメチル、11-ブロモラウリン酸4-クロロフェニル、ステアリン酸4-イソプロピルフェニル、2-ナフトエ酸ステアリル、ベンジル酸セチル、ベンジル酸ステアリル、カプロン酸ベンジル、パルミチン酸ベンジル、ステアリン酸3-フェニルプロピル、および11-ブロモラウリン酸フェニルなどが挙げられる。
二価の脂肪酸と芳香環を有する一価アルコールからなる総炭素数16以上のエステル類として、セバシン酸ジベンジル、および4,4’-ジフェニルジカルボン酸ジネオペンチルなどが挙げられる。
さらに、成分(a3)として挙げたもののなかから、成分(bii)を選択することもできる。すなわち、成分(a3)としてひとつの材料を選択した場合、それよりも融点が低いものであれば、成分(bii)として使用することができる。成分(bii)の融点は成分(a3)の融点よりも低い必要があるが、その融点の差が3~70℃程度であることが好ましい。この範囲より大きいと、消色が始まる温度よりも低い温度から熱エネルギーの吸収が始まる為、成分(bii)の配合割合を多くする場合があり、この範囲より小さいと消色開始温度に達した際に成分(bii)の熱エネルギーの吸収が小さくなり、消色が開始してしまう恐れがある。前記範囲にあると、筆跡の無用な消色を防げるため、好ましい。
さらに、効果をより顕著にするためには、成分(a3)と成分(bii)の配合比を質量比で成分(a3):成分(bii)=1:0.1~3であり、好ましくは、成分(a3):成分(bii)=1:0.3~2である。この範囲より小さいと、成分(bii)が吸収できる熱量が少なくなり、消色を防ぐことができなくなる恐れがあり、この範囲より大きいと成分(a)の割合が少なくなるため、発色濃度が下がる傾向が見られる。この範囲にあると、筆跡の発色濃度が十分であり、意図しない消色を防ぐことができるため好ましい。
成分(bii)を含む場合、それと前記成分(a)とが常に非相溶の状態で存在することが必要であるが、両者を非透過性の材料で隔てることなどにより達成できる。具体的には、成分(a)と成分(bii)を、両者と相溶しない樹脂などにより隔てる。より好ましい方法としては、成分(a)と成分(bii)のどちらか一方を、マイクロカプセルに内包して両者を非相溶の状態にすることが好ましい。さらに好ましくは、成分(a)と成分(bii)のそれぞれをマイクロカプセルに内包して両者を非相溶の状態にすることであり、この状態であると、筆記芯70や筆記用水性インキ組成物とする際に加工しやすくなるため特に好ましい。また、吸熱効果の発現と環境温度による変形の防止の効果を両立させることが可能となる。前記成分(bii)を内包したマイクロカプセル(以下、吸熱性カプセルということがある)は、特に限定されないが平均粒子径が0.5~50μmであることが好ましい。この範囲より小さいと、マイクロカプセルに対する壁膜材の割合が高くなり、成分(bii)の割合が低くなる傾向が見られ、この範囲より大きいとマイクロカプセルの表面積が小さくなることから吸熱効果が損なわれたり、筆記用インキ組成物や筆記芯70に用いる際に、分散安定性や加工性が劣る傾向が見られる。より好ましくは、1~30μmであり、さらに好ましくは、1~20μmである。この範囲にあると、吸熱効果が良好で、分散安定性や加工性がよくなる。なお平均粒子径の測定方法は、前記成分(a)を内包したマイクロカプセルについて用いた方法と同様である。また、成分(bi)および成分(bii)を組み合わせて用いることもできる。これらを組み合わせることで、成分(bi)により摩擦熱の発生を抑制したうえに、成分(bii)が発生した熱を吸熱するために、相乗的に効果が発現することとなる。
その他の添加剤は、その機能に影響を及ぼさない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤、防腐剤、または防黴剤などの各種添加剤を配合することができる。これらは従来知られているものから任意に選択して用いることができる。また、ヒンダードアミン化合物を添加することができる。ヒンダードアミン化合物を添加することにより、筆跡を消去した箇所の残像がいっそう視認され難くなるという特徴がある。このため被筆記面の見栄えを損なうことなく、しかも、再筆記性を満足させることができ、商品性を高めることができるので好ましい。このようなヒンダードアミン化合物の具体例は以下の通りである。ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートとの混合物、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1、2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール及び3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンとの混合エステル化物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール及び1-トリデカノールとの混合エステル化物、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル-メタクリレート、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、N-メチル-3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペレジニル)ピロリジン-2,5-ジオン、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル}イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ})、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールの重合物、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重合物とN,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アミノ)-トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミンとの1対1の反応生成物、ジブチルアミン・1,3-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル(1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシド)とオクタンとの反応生成物、およびシクロヘキサンと過酸化N-ブチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミン-2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジンとの反応生成物と2-アミノエタノールとの反応生成物等を例示することができる。
筆記芯70に用いる熱変色性組成物は、前記筆記芯70全質量に対し、10~70質量%が好ましい。この範囲より小さいと発色濃度が低くなる傾向が見られ、この範囲より大きいと筆記芯70の強度が低下する傾向が見られる。好ましくは、10~50質量%、さらに好ましくは、10~40質量%であり、この範囲にあると、筆記芯70の強度と筆跡濃度を両立することができる。
ここで前記成分(a)は、マイクロカプセルに内包された状態で熱変色性組成物に配合され、筆記芯70に適用されることが加工性などの観点から特に好ましい。また、このような態様は、種々の使用条件において熱変色性組成物の組成が一定に保たれ、同一の作用効果を奏することができる点からも好ましい。
また、筆記芯70は常時固形状態で存在するが、成分(bii)のように比較的低い融点の成分を一定量含む場合、夏季などの比較的高い温度となるような環境では軟化や融解などにより変形などが生じる虞がある。成分(bii)をマイクロカプセル化して用いると、吸熱効果の発現と環境温度による変形の防止の効果を両立させることが可能となるため、特に好ましい。一方、成分(bi)をマイクロカプセルに内包した状態で用いることも可能であるが、この場合には成分(bi)による筆記抵抗低減効果が低下するため、成分(bi)は組成物に直接添加されることが好ましい。
筆記芯70としての強度などの観点から、前記熱変色性組成物を賦形材中に分散して固めたものが好ましい。前記賦形材としては、筆記芯70としての形状を保持するためのもので、例えばワックス、ゲル化剤、粘土などが挙げられる。ワックスとしては、従来公知のものであればいずれを用いてもよく、具体的にはカルナバワックス、木ろう、蜜ろう、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、キャンデリラワックス、低分子量ポリエチレン、パラフィンワックスなどが挙げられる。ゲル化剤としては従来公知のものを用いることができ、例えば12-ヒドロキシステアリン酸、ジベンジリデンソルビトール類、トリベンジリデンソルビトール類、アミノ酸系油、および高級脂肪酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。粘土鉱物としては、ベントナイト、モンモリロナイトなどが挙げられる。上記の材料を単独もしくは組み合わせて用いる。このよう賦形材のうち、入手容易性や取扱い性の観点からポリオレフィンワックスが好ましい。
前記ポリオレフィンワックスとして具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、αオレフィン重合体、エチレン-プロピレン共重合体、およびエチレン-ブテン共重合体等のワックスが挙げられる。
特に、前記ポリオレフィンワックスの軟化点が100℃~130℃の範囲にあるとともに、針入度が0.25以下であるものは、筆記感が高いために有用である。尚、針入度は、JIS K2207に規定されており、ポリオレフィンワックスに規定重量の針を温度25℃,荷重100g、貫入時間5秒にて垂直に進入させ、進入した長さを表したものであって、針入度の値は、0.1mmを針入度1と表す。従って針入度が小さいほど硬く、大きいほど柔らかいポリオレフィンワックスである。前記ポリオレフィンワックスのうち、特に酸変性ポリエチレンワックスが好適である。酸変性ポリエチレンワックスは適度な粘性(弾性)を有するため、筆記時に擦過抵抗を吸収すると推測される。そのため、筆記抵抗が低減され筆記感が向上する。
賦形材としてのポリオレフィンワックスを用いる場合、その配合割合としては、筆記芯70全質量に対し0.2~70質量%であることが好ましい。この範囲より小さいと筆記芯70としての強度が十分に得られない傾向が見られ、この範囲より大きいと十分な筆記濃度が得られにくくなる傾向が見られる。好ましくは、0.5~40質量%であり、この範囲にあると、筆記芯70の強度と筆跡濃度を両立することができる。
筆記芯70は、必要に応じて、各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、体質材、粘度調整剤、防かび剤、防腐剤、抗菌剤、香料などが挙げられる。前記体質材としては、従来公知のものであればいずれも用いることができ、例えばタルク、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、窒化硼素、チタン酸カリウム、ガラスフレーク、およびでんぷんなどが挙げられ、特に成形性の点からタルク、炭酸カルシウムがこのましい。体質材は、本発明の実施形態の筆記芯70の強度の向上や書き味を調整する目的で配合される。なお、前記筆記芯70中に任意の染料や顔料(非熱変色性)を添加して、有色から色の異なる有色への色変化(変色)を呈するものとすることもできる。
また、前記したヒンダードアミン化合物を用いる場合、筆記芯70の全質量を基準として、ヒンダードアミン化合物を0.1~5質量%含有させることが好ましい。より具体的には、前記筆記芯70がクレヨンの場合、筆記芯70全量中、成分(a)を10~60質量%、好ましくは20~50質量%、賦形材を30~70質量%、好ましくは40~70質量%、体質材5~30質量%、ヒンダードアミン化合物を0.1~5質量%含有させることが好ましい。また、前記筆記芯70が鉛筆芯やシャープペンシル用芯の場合、筆記芯70全量中、前記成分(a)を10~60質量%、好ましくは20~50質量%、賦形材を10~40質量%、体質材10~70質量%、好ましくは20~60質量%、ヒンダードアミン化合物を0.1~5質量%含有させることが好ましい。
図12は、本実施の形態の熱変色性筆記具10の後筒21からカバー部材11を取り外した後方からの斜視図である。後筒21の後端には、筒状の取付部21Bが形成されている。取付部21Bの外周面には、カバー部材11と嵌合し着脱を可能とする嵌合部21C、後方に向かって縮径する略逆三角形形状の傾斜部21Dが形成されている。嵌合部21C及び傾斜部21Dは、本実施の形態では3箇所に均等の間隔で形成されている。嵌合部21C及び傾斜部21Dは、少なくとも2箇所以上形成することが好ましい。
取付部21Bの内周面には摩擦部材60が着脱可能に圧入係止されており、摩擦部材60の着脱を容易にするために取付部21B外周面と内周面とを連通するスリット21Eが1箇所形成されている。摩擦部材60を着脱可能とすることで摩擦部材60が筆跡の熱変色によって摩耗しても容易に交換することができ、多様な使い方をすることができる。
カバー部材11は、後筒21の取付部21Bに着脱可能に乗り越えて嵌合されており、カバー部材11と軸筒20の後部である後筒21とを相対回転させることにより、カバー部材11の内面の傾斜面11Dと傾斜部21Dが当接して沿って移動することにより、突起11Cが嵌合部21Cを後方に乗り上げて嵌合のない状態となり、カバー部材11と後筒21とが離間、いわゆる取り外しとすることができる。
カバー部材11の軸筒20からの取り外し力は軸線方向より回転方向の方が小さくすることが好ましい。更にカバー部材11の回転方向の取り外し力は0.02N・m未満とすることがより好ましい。
摩擦部材60は、取付部21Bの内面に圧入係止され、後端面は摩擦熱を筆跡に与えやすいように凸曲面形状に形成されている。摩擦部材60を形成する材料として、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等のゴム材質やスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといったゴム弾性材料、2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物、市販されている消しゴム等が挙げられる。
また、摩擦部材60は、紙面を傷めず且つ印刷文字を掠れさせないように、適度に摩耗するように形成される。具体的には、JIS K7204に規定された摩耗試験(ASTM D1044)荷重9.8N、1000rpm環境下において、テーバー摩耗試験機の摩耗輪CS-17でのテーバー摩耗量が10mg以上であることが好ましい。
さらに摩擦部材60は、未使用時における大気中の埃や紙面表面の繊維等の付着汚れに対し、帯電防止剤を付与することがより好適である。帯電防止剤は、好ましくは、多価アルコールあるいはこれらの重縮合物の脂肪酸エステル、あるいはソルビタン脂肪酸エステル、具体的にはデカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルモノステアレート、ペンタエリスリトールステアレート、ソルビタンモノステアレートあるいはソルビタンモノオレエート等を0.1~10wt%、理想的には0.5~5wt%添加することにより、変色性能を損なうことなく、汚れを防ぐことができる。
図13(A)~(G)はカバー部材11の部品図である。カバー部材11は、断面略三角形状に形成された筒状部11Bに、筒状部11Bの前方にはノックボタン係止縁11Aを有する鍔部11E、後方には天井部11Jで構成されている。筒状部11Bの外周面の曲率の大きな箇所に、リブ状突起11Fが形成されている。リブ状突起11Fを軸線方向に2本以上形成することによって、回転方向に対して指等が引っかかりやすくなるため、カバー部材11を取り外すための回転を助ける効果を奏する。天井部11Jの中心箇所にはカバー部材11の内面と外面とを連通する貫通孔11Gが形成され、仮にカバー部材11を誤飲しても窒息を防ぐことができる。筒状部11Bの内周面には、後筒21の嵌合部21Cと嵌合し、嵌合部21Cと同数に形成された突起11Cと、カバー部材11を回転によって取り外す際に取付部21Bの傾斜部21Dと当接する軸線に対して傾斜している傾斜面11Dと複数の傾斜面11Dの間の一端を前方側で接続する接続面11Iと他端の後方側で接続する凹部11Hが形成されている。凹部11Hと接続面11Iは傾斜部21と同数が形成されている。また、凹部11Hは突起11Cと同一軸線上に形成されている。カバー部材11が軸筒20に嵌合されている際は、突起11Cが嵌合部21Cを前方に乗り上げた状態であり、傾斜面11Dと凹部11Hと傾斜面11Dに囲まれた領域で傾斜部21Dが配置されている。
カバー部材11の材料は、摩擦部材60と異なるかつ摩擦部材より硬質なプラスチック材料である。具体的に説明するとポリプロピレン系樹脂を50質量%以上使用するものである。この特性により、摩擦部材60の汚れを防ぐ効果を得ると共に、熱変色性インクにより形成された筆跡の消去等も好適にすることができる。
用いることができるポリプロピレン系樹脂は、軸の基材となるものであり、例えば、プロピレン単独重合体;プロピレンと他の少量のα-オレフィン(例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、及び4-メチル-1-ペンテン等)との共重合体(ブロック共重合体、及びランダム共重合体を含む。);などを挙げることができる。上記ポリプロピレン系樹脂としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。上記ポリプロピレン系樹脂を軸全量中、50質量%以上使用することにより、本発明の効果を発揮できるものであり、該ポリプロピレン系樹脂が50質量%未満であると、本発明の効果を発揮できない。
上記ポリプロピレン系樹脂以外に用いることができる樹脂としては、例えば、ポリエチレン、アイオノマーなどが挙げられる。これらの樹脂は、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、軸全量中、0.5~30質量%とすることが好ましい。
更に、好ましくは、粘着性を調整し、軽い力でも十分な摩擦熱を発揮せしめる点から、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有させることができる。これらの樹脂の中で、分子量が数百から数千のものが選ばれ、主成分となるポリプロピレン系樹脂の配合系に配合することによって軸に粘着性を付与せしめ、効果を更に発揮せしめることができる。具体的には、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂などの天然樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂などの分子量が好ましくは、500~5000、より好ましくは700~4000の上記各種樹脂が使用できる。
ロジン系樹脂としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、変性ロジンのグリセリン、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられ、テルペン系樹脂としては、α-ピネン系、β-ピネン系、ジペンテン系等のテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、更なる安定性の観点から、重合ロジン、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、芳香族変性水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂が好ましい。
石油系樹脂は、例えば、石油化学工業のナフサの熱分解により、エチレン、プロピレンなどの石油化学基礎原料とともに副生するオレフィンやジオレフィン等の不飽和炭化水素を含む分解油留分を混合物のままフリーデルクラフツ型触媒により重合して得られる。該石油系樹脂としては、ナフサの熱分解によって得られるC5留分を(共)重合して得られる脂肪族系石油樹脂、ナフサの熱分解によって得られるC9留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂、前記C5留分とC9留分を共重合して得られる共重合系石油樹脂、水素添加系,ジシクロペンタジエン系等の脂環式化合物系石油樹脂、スチレン,置換スチレン,スチレンと他のモノマーとの共重合体等のスチレン系樹脂等の石油系樹脂が挙げられる。ナフサの熱分解によって得られるC5留分には、通常1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテン等のオレフィン系炭化水素、2-メチル-1,3-ブタジエン、1,2-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,2-ブタジエンなどのジオレフィン系炭化水素等が含まれる。また、C9留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂とは、ビニルトルエン、インデンを主要なモノマーとする炭素数9の芳香族を重合した樹脂であり、ナフサの熱分解によって得られるC9留分の具体例としては、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、γ-メチルスチレン等のスチレン同族体やインデン、クマロン等のインデン同族体等が挙げられる。商品名としては、三井化学製ペトロジン、ミクニ化学製ペトライト、JX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー、東ソー製ペトコール、ペトロタック等がある。
さらに、前記C9留分からなる石油樹脂を変性した変性石油樹脂が、粘着性、粘着持続性を高度に両立する樹脂として、本発明では、好適に使用される。変性石油樹脂としては、不飽和脂環式化合物で変性したC9系石油樹脂、水酸基を有する化合物で変性したC9系石油樹脂、不飽和カルボン酸化合物で変性したC9系石油樹脂等が挙げられる。好ましい不飽和脂環式化合物としては、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンなど、また、アルキルシクロペンタジエンのディールスアルダー反応生成物として、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン/メチルシクロペンタジエン共二量化物、トリシクロペンタジエン等が挙げられ、ジシクロペンタジエンが特に好ましい。ジシクロペンタジエン変性C9系石油樹脂は、ジシクロペンタジエンおよびC9留分両者の存在下、熱重合等で得ることができる。ジシクロペンタジエン変性C9系石油樹脂としては、例えばJX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー130Sが挙げられる。
また、水酸基を有する化合物としては、アルコール化合物やフェノール化合物が挙げられる。アルコール化合物の具体例としては、例えば、アリルアルコール、2-ブテン-1,4ジオール等の二重結合を有するアルコール化合物が挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、p-t-ブチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール等のアルキルフェノール類を使用できる。これらの水酸基含有化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
水酸基含有C9系石油樹脂は、石油留分とともに(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を熱重合して石油樹脂中にエステル基を導入した後、該エステル基を還元する方法、石油樹脂中に二重結合を残存又は導入した後、当該二重結合を水和する方法、等によっても製造できる。また、水酸基含有C9系石油樹脂として、前記のように各種の方法により得られるものを使用できるが、性能面、製造面から見て、フェノール変性石油樹脂等を使用するのが好ましく、フェノール変性石油樹脂は、C9留分をフェノールの存在下でカチオン重合して得られ、変性が容易であり、低価格である。フェノール変性C9系石油樹脂としては、例えば、JX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー-E-130が挙げられる。
さらに、不飽和カルボン酸化合物で変性したC9系石油樹脂としては、C9系石油樹脂をエチレン性不飽和カルボン酸で変性したものを使用することができる。かかるエチレン性不飽和カルボン酸の代表的なものとして、(無水)マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、テトラヒドロ(無水)フタール酸、(メタ)アクリル酸またはシトラコン酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸変性C9系石油樹脂は、C9系石油樹脂及びエチレン系不飽和カルボン酸を熱重合することで得ることができる。本発明においては、マレイン酸変性C9系石油樹脂が好ましい。
不飽和カルボン酸変性C9系石油樹脂としては、例えば、JX日鉱日石エネルギー製ネオポリマー160が挙げられる。また、ナフサの熱分解によって得られるC5留分とC9留分の共重合樹脂を好適に使用することができる。ここでC9留分としては、特に制限はないが、ナフサの熱分解によって得られたC9留分であることが好ましい。具体的には、SCHILL&SEILACHER社製StruktolシリーズのTS30、TS30-DL、TS35、TS35-DL等が挙げられる。
前記フェノール系樹脂としては、アルキルフェノールホルムアルデヒド系樹脂及びそのロジン変性体、アルキルフェノールアセチレン系樹脂、変性アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂等が挙げられ、具体的にはノボラック型アルキルフェノール樹脂である商品名ヒタノール1502(日立化成工業社製)、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂である商品名コレシン(BASF社製)等が挙げられる。また、石炭系樹脂としては、クマロンインデン樹脂等が挙げられ、キシレン系樹脂としては、キシレンホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。その他ポリブテンも粘着付与性を有する樹脂として使用することができる。これらの樹脂の中で、粘着性、粘着持続性の観点から、C5留分とC9留分の共重合樹脂、C9留分を(共)重合して得られる芳香族系石油樹脂、フェノール系樹脂及びクマロンインデン樹脂が好ましい。
これらの樹脂は、軟化点が200℃(測定法:ASTM E28-58-T)以下であることが好ましく、さらには80~150℃の範囲であることが好ましい。軟化点が200℃を超えると、加工性を悪化させる場合があり、また、80℃未満では粘着性能が劣る場合がある。これらの観点から軟化点は90~120℃の範囲がより好ましい。上記樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
これらの粘着性を調整する目的で用いる上記ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂、フェノール系樹脂、石炭系樹脂、キシレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂の配合量は、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、軸全量中、好ましくは、0.05~20質量%、更に好ましくは、0.05~10質量%とすることが好ましい。
更には、上記ポリプロピレン系樹脂などの他、粘着性を調整する目的で用いる上記樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、所望により、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、離型剤(例えば、ステアリン酸、及びシリコンオイルなど)、ポリエチレンワックス等の滑剤、着色剤、顔料、無機充填剤(例えば、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウァラステナイト、及びクレーなど)、発泡剤(有機系、無機系)、抗菌剤(例えば、イミダゾール系、フェノール系、銀など)及び難燃剤(例えば、水和金属化合物、赤燐、ポリ燐酸アンモニウム、アンチモン化合物、及びシリコンなど)などの任意成分を適宜量含ませることができる。また、軸の材料に対して、更に、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステルを含有させもよい。軸に、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸エステルを含むことによって、更に、紙面を傷めず且つ印刷文字等を掠れさせることなく、筆跡の消去等が可能となる。製造は、上記ポリプロピレン系樹脂などを用いて、例えば、押出成形、射出成形などの方法により製造することができる。
耐久性を付与する場合は、本発明の効果を発揮せしめる点から、引張弾性率(JIS K 7161:2014-1)が70MPa以上とすることが必要であり、好ましくは、80~5000MPaとすることが好ましい。この引張弾性率が70MPa未満であると、本発明の効果を発揮できなくなり、好ましくない。この軸の引張弾性率が70MPa以上とするには、用いるポリプロピレン系樹脂の種類、配合量、その他の樹脂種、その含有量等を好適に組み合わせることにより調整することができる。
更に好ましくは、本発明の効果を更に発揮せしめ、抵抗感を小さくする点から、カバー部材の永久伸び(JIS K6273:2006)を50%以上、特に好ましくは、50~100%とすることが好ましい。本発明で規定する「永久伸び」とは、試験片を2倍に伸長した状態で23℃、6時間保持した後、応力を取り除く。伸びた長さを伸長前の長さで除した値(%)をいう。
本実施の形態では、リフィルをシャープペンシルリフィル40としたが、これに限らず、例えば、リフィルをボールペンリフィルとしてもよい。また、複数のリフィルを、例えば、シャープペンシルリフィル40とボールペンリフィルとを混合させて構成してもよい。また、熱変色性筆記具用リフィルのみならず、非熱変色性筆記具用リフィルとの組合せとしてもよい。
本実施の形態では、3本のシャープペンシルリフィル40が収納されていたが、この本数に限定されるものではなく、物理的に収容可能な本数の複数本であれば、2本又は4本以上であってもよい。