本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、ファスナ60の打ち出し方向(図1に示す下方向)を下方、その反対方向(図1に示す上方向)を上方として説明する。また、ファスナ60の送り方向(図1に示す左方向)を前方、その反対方向(図1に示す右方向)を後方として説明する。
本実施形態に係る打ち込み工具10は、バネ力で駆動するバネ駆動式の打ち込み工具10である。なお、本実施形態においてはバネ駆動式の打ち込み工具10を例に挙げているが、打ち込み工具10としてはバネ駆動式に限らず、圧縮空気式やガス燃焼式などの他の方式の打ち込み工具10であってもよい。
本実施形態に係る打ち込み工具10は、図1に示すように、ハウジングの内部にモータ17を備えており、モータ17によって駆動して工具先端のノーズ部15に設けられた射出口からファスナ60を打ち出すように構成されている。
この打ち込み工具10は、図1に示すように、内部に駆動機構20を収容した出力部11と、出力部11の下端側において出力部11に直交するように接続されたマガジン12と、出力部11の上端側において出力部11に直交するように接続されたグリップ13と、マガジン12の内側に沿って配置されたモータ収容部18と、を備える。
出力部11の下端には、被打込材に押し付けられるノーズ部15が設けられており、マガジン12に装填された先頭のファスナ60は、プッシャ36によってこのノーズ部15へと供給される。ノーズ部15へと供給されたファスナ60は、ドライバ31によってノーズ部15の先端に設けられた射出口から打ち出される。
なお、ノーズ部15には、安全装置としてのコンタクトアーム35が設けられている。コンタクトアーム35は、ノーズ部15に対して摺動可能に設けられて被打込み材に押し付け可能となっている。このコンタクトアーム35は、ノーズ部15の先端から突出するように設けられており、アーム付勢部材39によって常時突出方向に付勢されている。作業者が打ち込み作業を行う際には、このコンタクトアーム35を被打ち込み材に押し付けて摺動させることで、コンタクトアーム35がオン状態となり、電気的または機械的に操作部14の操作が有効となるように構成されている。言い換えると、コンタクトアーム35が摺動していない状態(オフ状態)では打ち込み作業が行われないように構成されている。
ノーズ部15の内部には、図2に示すように、ファスナ60を射出口へと案内する射出経路15aが形成されている。この射出経路15aの出口が射出口となっている。
出力部11の内部には、ファスナ60を打ち出すために射出経路15aを往復動可能なドライバ31、ドライバ31が連結されたプランジャ32、プランジャ32を射出口に向けて付勢するプランジャ付勢部材33、プランジャ32を作動させるための駆動機構20、プランジャ32の位置を検知するためのブレーキスイッチ41、などが配置されている。
本実施形態に係るドライバ31は、図3に示すように、ファスナ60を打撃するためのプレートである。このドライバ31は、上端側にプランジャ32と一体的に連結するためのプランジャ接続部31aを備えており、下端側に射出経路15a内を摺動するためのストレート部31bを備えている。このドライバ31は、プランジャ接続部31aを介してプランジャ32と連結されており、プランジャ32と一体的に摺動する。すなわち、プランジャ付勢部材33の付勢力によってプランジャ32が作動したときに射出口に向けて摺動し、これによってストレート部31bの先端で射出経路15a内のファスナ60を打ち出すように構成されている。
プランジャ32は、ガイド部材によって上下に摺動可能にガイドされており、圧縮バネからなるプランジャ付勢部材33によって常時射出口に向けて付勢されている。
このプランジャ32は、後述する駆動機構20に隣接して配置されており、駆動機構20に臨む面に被係合部を備えている。
駆動機構20は、上記したプランジャ32をプランジャ付勢部材33の付勢力に抗して押し上げる機構である。この駆動機構20は、モータ17を動力源にプランジャ32を移動させて、プランジャ付勢部材33に付勢力を蓄積させるとともに、この付勢力を一気に開放することでプランジャ32を瞬間的に摺動させて打ち込み動作を実行させるようになっている。
例えば、この駆動機構20は、モータ17の駆動力によって回転するギアを備えて構成される。そして、このギアの側面には、プランジャ32の被係合部に係合可能な係合部が形成されている。駆動機構20は、ギアにプランジャ32を係合させた状態でギアを回転させ、これによってプランジャ32を上方へと押し上げる。そして、プランジャ32(ドライバ31)が上死点に移動したタイミングでギアとプランジャ32との係合が解除されるようになっている。ギアとプランジャ32との係合が解除されると、プランジャ付勢部材33の付勢力によってプランジャ32が下方へと移動するため、プランジャ32に連結されたドライバ31が射出口の方向に摺動してファスナ60を打ち出すようになっている。
ブレーキスイッチ41は、図5に示すように、プランジャ32が上死点位置にきたときにプランジャ32に押下される位置に配置されている。このブレーキスイッチ41が押下されると、制御装置にブレーキ信号が出力されるようになっている。制御装置は、このブレーキ信号をトリガにしてモータ17の駆動を停止する制御を行う。
マガジン12は、上記したドライバ31によって打ち出されるファスナ60を装填するためのものである。このマガジン12は、ノーズ部15の後方に接続されている。本実施形態に係る工具においては、複数のファスナ60を並べて連結した連結ファスナがマガジン12に装填されている。本実施形態に係るファスナ60は、コ字形のステープルである。
また、このマガジン12の内部には、図2等に示すように、マガジン12に装填されたファスナ60を射出経路15aの方向に押圧するためのプッシャ36が設けられている。このプッシャ36は、図4に示すような断面コ字形の部材であり、ファスナ60(ステープル)の両脚部を押圧するための押圧部36aを両側に備えている。この押圧部36aは互いに平行に形成されており、この押圧部36aの先端36bがファスナ60の両脚部を前方へと押圧するようになっている。このプッシャ36は、プッシャ付勢部材38によって常に前方へと付勢されている。このため、マガジン12に装填されたファスナ60はプッシャ36によって常に前方へと押し付けられている。
グリップ13は、打ち込み工具10を使用する作業者が把持するための部位である。このグリップ13は、作業者が把持しやすいように棒状に形成されている。また、作業者がグリップ13を握ったときに作業者の人差し指がかかる位置には、人差し指で引き操作可能な操作部14が設けられている。この操作部14が操作されると、グリップ13の内部に配置されたトリガスイッチ40がオンになり、制御装置に操作信号が出力されるようになっている。制御装置は、この操作信号をトリガにしてモータ17の駆動を開始する制御を行う。
また、このグリップ13の後端部(出力部11とは反対側の端部)には、バッテリ55を装着するためのバッテリ装着部13aが形成されている。本実施形態に係る打ち込み工具10は、このバッテリ装着部13aに装着されたバッテリ55から供給された電力で駆動するようになっている。バッテリ55は、二次電池を内蔵しており、打ち込み工具10から取り外して充電可能となっている。また、このバッテリ装着部13aの内部には、CPUやRAM等の部品を実装した基板50が配置されている。この基板50に実装されたCPUやRAMは、打ち込み工具10の作動を制御するための制御装置を構成している。
モータ収容部18は、モータ17を収容するための部位である。本実施形態に係るモータ収容部18は、マガジン12のグリップ13側にグリップ13と対向するように配置されている。
上記したような打ち込み工具10の動作は、制御装置によって制御される。制御装置は、CPUを中心に構成され、ROM、RAM、I/O等を備えている。そして、CPUがROMに記憶されたプログラムを読み込むことで、各種の入力装置及び出力装置を制御するように構成されている。
例えば、制御装置は、操作部14が操作されたことを契機としてモータ17を駆動させる制御を行い、ブレーキスイッチ41の状態変化を契機としてモータ17を停止させる制御を行う。
具体的には、図1に示す待機状態において、コンタクトアーム35がオン状態となり、かつ、トリガスイッチ40がオン状態となると、打ち込みが開始される。すなわち、制御装置によってモータ17の駆動が開始される。モータ17が回転すると、駆動機構20が作動してプランジャ32を徐々に上方に持ち上げる。
そして、図5に示すように、プランジャ32が上死点位置まで移動すると、プランジャ32がブレーキスイッチ41を押下する。その直後、駆動機構20とプランジャ32との係合が外れ、プランジャ付勢部材33に蓄積された付勢力によってプランジャ32及びドライバ31が射出口の方向へ瞬間的に移動する。これにより、図7に示すように、プランジャ32が下死点位置まで移動することでファスナ60が打ち出される。
その後、図9に示す待機状態に戻るまでモータ17が回転したら、制御装置がモータ17を停止させる。このとき、モータ17を停止させるタイミングは、ブレーキスイッチ41が図5に示す状態でオンになった後に、再びオフになってから所定時間を計測することで計られる。例えば、制御装置は、ブレーキスイッチ41がオフになってから0.5秒を計測し、0.5秒後にモータ17を停止させる。このように、ブレーキスイッチ41がオフになってから(ファスナ60が打ち込まれてから)所定時間経過後にモータ17を停止させることにより、プランジャ付勢部材33に所定の付勢力が蓄積される中間位置までプランジャ32を移動させて停止させることができる。このように、本実施形態においては、打ち込み前のドライバ31が上死点と下死点との間の中間位置で待機するようにしている。この中間位置は、ドライバ31の下端がファスナ60の上面よりも下方となるような位置である(図2参照)。このような中間位置でドライバ31を待機させることで、何らかの不具合でドライバ31が作動(下降)してもファスナ60が打ち出されないので、安全性を確保することができる。
ここで、本実施形態に係る打ち込み工具10は、ファスナ60がなくなったときに工具を作動させないようにするための空打防止機構を備えている。具体的には、プッシャ36の動きに連動する空打ち防止アーム37を備えており、プッシャ36が所定位置まで移動すると空打ち防止アーム37がコンタクトアーム35と干渉する位置に移動することでコンタクトアーム35の動きを妨げるようにしている。
空打ち防止アーム37は、図4に示すように、射出経路15aの方向(プッシャ36の前方)に突出するようにプッシャ36に固定されている。この空打ち防止アーム37は、プッシャ36に連動して射出経路15aの方向に移動するようになっている。例えば、図2に示すように、ファスナ60が残り少なくなってプッシャ36が前進したときに、この空打ち防止アーム37は、ノーズ部15に形成された貫通孔15bを貫通してコンタクトアーム35に接触可能な位置まで進入できるようになっている。
また、コンタクトアーム35には、図2に示すように、空打ち防止アーム37に係合させるためのアーム係合部35aが形成されている。このアーム係合部35aは、空打ち防止アーム37の先端を挿入可能な穴であり、コンタクトアーム35がオフ状態のときに空打ち防止アーム37の延長線上となる位置に形成されている。このため、ファスナ60が無くなると、図10に示すように、射出経路15aから見てプッシャ36の反対側で空打ち防止アーム37とのアーム係合部35aとが係合するようになっている。そして、空打ち防止アーム37がアーム係合部35aに係合すると、コンタクトアーム35が摺動できないようにロックされるように構成されている。
また、ドライバ31のストレート部31bには、図3に示すように、両側部に溝31cが形成されている。溝31cが両側に形成されることで、ストレート部31bの断面は図3(c)に示すようなハット形状となっており、溝31cの間には突出した凸部31dが形成されている。この溝31cは、図11(b)に示すように、プッシャ36の押圧部36aの先端36bに臨むように形成されている。この溝31cを設けることで、中間位置でドライバ31を待機させる打ち込み工具10であっても、コンタクトロック方式の空打防止機構を採用できるようにしている。
すなわち、図2および図11に示すように、ファスナ60が残り1本の状態では、射出経路15aの前方の壁に対して、ドライバ31と1本のファスナ60とがプッシャ36によって押し付けられている。このときのプッシャ36の位置では、空打ち防止アーム37がコンタクトアーム35に届かない(空打ち防止アーム37がアーム係合部35aに係合せず、コンタクトアーム35をロックしない)ように設定されている。
この状態で打ち込みが開始すると、図6に示すように、まずドライバ31が上死点位置に移動する。これにより、ドライバ31がファスナ60よりも上方に移動するので、空いた射出経路15aに残り1本のファスナ60が送られる。これにより、ドライバ31の厚み分だけファスナ60とプッシャ36が前進する。このときのプッシャ36の位置では、空打ち防止アーム37がコンタクトアーム35に届かない(空打ち防止アーム37がアーム係合部35aに係合せず、コンタクトアーム35をロックしない)ように設定されている。
その後、ドライバ31が上死点位置から下降し、図8に示すように下死点位置まで移動する。これにより、ファスナ60の打ち込みが実行される。その後、図10に示すようにドライバ31が中間位置にくるまでモータ17が作動し、ドライバ31が中間位置に来たらモータ17が停止する。これにより、ドライバ31が中間位置で待機する初期状態に戻る。
このとき、図12に示すように、マガジン12にはファスナ60が無いので、プッシャ36はドライバ31に接触する位置まで前進する。ドライバ31には、プッシャ36の先端36bと相対する位置に溝31cが形成されているため、プッシャ36の先端36bが溝31cに進入することになる。このため、図6に示す最後のファスナ60の打ち込み途中の状態(プッシャ36とコンタクトアーム35との間にファスナ60が1本だけあり、ドライバ31がない状態)と、図10に示す打ち込み後の状態(プッシャ36とコンタクトアーム35との間にドライバ31だけがあり、ファスナ60が無い状態)とでプッシャ36の位置を比較すると、前者から後者に状態が遷移することで「(ファスナ60の厚さ)-(ドライバ31の厚さ)+(溝31cの深さ)」の分だけプッシャ36が前進するようになっている。このような態様によれば、「ファスナ60の厚さ」と「ドライバ31の厚さ」とがほぼ同じだとしても、ファスナ60の打ち込み途中と打ち込み後とで「溝31cの深さ」の分だけプッシャ36の位置が前進することになる。そして、このようにプッシャ36が前進することで、空打ち防止アーム37がアーム係合部35aに係合して、コンタクトアーム35をロックするようになっている。
このように、溝31cの分だけ移動するプッシャ36の位置を利用してコンタクトロックするか否かを切り替えるようにすれば、シビアな寸法設定をしなくても、最後の1本のファスナ60を打込む途中の状態(ドライバ31が上死点)で空打ち防止アーム37とコンタクトアーム35が接触せず、打ち込み後の状態(ドライバ31が中間位置)で空打ち防止アーム37とコンタクトアーム35が干渉するように構成することができる。
なお、上記したドライバ31に溝31cがない場合、図13に示すように、ファスナ60が残り1本の状態では、空打ち防止アーム37がコンタクトアーム35に届かない(空打ち防止アーム37がアーム係合部35aに係合せず、コンタクトアーム35をロックしない)ように設定することは可能である。
しかしながら、図14に示すように、打ち込みの完了後にはプッシャ36を十分に前進させることができず、コンタクトアーム35をロックすることができない。なお、空打ち防止アーム37を長くすればコンタクトアーム35をロックすることができるが、その場合は、図14(b)のドライバ31の代わりにファスナ60があるときにも空打ち防止アーム37がコンタクトアーム35に干渉してしまうので、プッシャ36の前進を妨げることになる。プッシャ36の前進が妨げられると、ファスナ60の押圧保持が不十分となり、打ち込み不良が発生するおそれがある。
このように、ドライバ31に溝31cがない場合には、コンタクトアーム35のロックが不十分となったり、ファスナ60の押圧保持が不十分となったりするおそれがある。この点、本実施形態によれば、溝31cの深さを調節することで、このような問題を回避することができる。
ところで、本実施形態における打ち込み工具10は、ファスナ60の打ち込み動作における反動を吸収するための反動吸収機構を備えている。
この反動吸収機構は、図15に示すように、パイプ44内に摺動可能に設けられたバランサ45や、このバランサ45をファスナ60の打ち込み方向とは反対方向に付勢するバランサ付勢部材46を備えて構成されている。
バランサ45は、プランジャ32の摺動をガイドするパイプ44の内径に沿うように形成された円筒状の金属部材であり、パイプ44の内側を摺動可能となっている。なお、パイプ44はファスナ60の打ち出し方向と平行に配置されているため、このパイプ44内を摺動するバランサ45はドライバ31と平行に摺動するように形成されている。
また、バランサ付勢部材46は、パイプ44内に配置される圧縮バネである。このバランサ付勢部材46は、バランサ45よりも射出口側に配置されて、バランサ45を射出口から離反する方向に付勢している。
バランサ45は、紐状部材のワイヤ47を介してプランジャ32と連結されており、プランジャ32が移動したときに連動して動くようになっている。具体的には、プーリ48によってワイヤ47にかかる力の方向が約180度変えられているため、プランジャ32が駆動機構20に押し上げられることによってドライバ31が上方向に摺動したときには、バランサ45がワイヤ47に引っ張られて下方に移動する。このとき、バランサ付勢部材46は圧縮され、バネに付勢力が蓄えられることとなる。
そして、図16に示すように、プランジャ32が駆動機構20から解放されることにより、ドライバ31が下死点に移動してファスナ60の打ち込み動作が行われると、ワイヤ47による引張が解除されるため、バランサ45はバランサ付勢部材46の付勢力により上方へと移動する。このようにバランサ45が移動することにより、打ち込み時の反動が吸収されるようになっている。
なお、パイプ44の上端付近には、上方に移動したバランサ45を受けるためのゴム製のバランサストップ49が設けられている。
ただし、本実施形態においては、バランサ付勢部材46が自然状態であるときに、バランサ45がバランサストップ49に当たらないように、バランサ付勢部材46の自由長を短く設定している。このため、図16に示すように、バランサストップ49と衝突する前にバランサ付勢部材46による付勢力が作用しなくなる。よって、バランサ45がバランサストップ49に当たるとしても、慣性によって移動するバランサ45がバランサストップ49に当たるだけとなっている。このような設定とすることで、バランサ45がバランサストップ49に衝突することによる衝撃を小さくすることができる。
なお、本実施形態に係る反動吸収機構は、バランサ45がプランジャ32とは反対方向に移動することで打ち込みによる反動を相殺するものであるため、バランサ45は必ずしもバランサストップ49に押しつけられる必要はない。バランサ45がバランサストップ49に当たらないとしても、反動吸収の効果は得ることができる。
このように、本実施形態に係る反動吸収機構は、ドライバ31が射出口の方向に摺動したときに、バランサ付勢部材46の付勢力により射出口から離反する方向に移動するバランサ45を備える。このため、打ち込み時には、打ち込み工具10に対して被打込み材から離れる方向に力が加わるものの、同時に、バランサ付勢部材46がバランサ45を付勢する反力により、打ち込み工具10を被打込み材の方向に押し付ける力が加わる。すなわち、「被打込み材から離れる方向に加わる力」と「被打込み材の方向に押し付ける力」とが相殺されることにより、打ち込み時に受ける反動を吸収することができる。このような作用により、被打込み材に対して小さな押付力で十分な打ち込み力が得られるので、作業者の疲労が軽減される。また、反動によってドライバ31がファスナ60から外れ、被打込み材を傷付けるといった問題も発生しづらい。
また、打ち込み完了後の静止状態においてバランサ45とバランサストップ49が接触しないようにバランサ付勢部材46の付勢力を設定したので、バランサ45による衝撃を軽減することができる。
ところで、自然状態でバランサ45をバランサストップ49に押し付けるような設定にした場合、衝突時にバランサストップ49へ加えられる衝撃が大きく、機械本体が持ち上がるような挙動(機械本体が被打込み材から離される挙動)が発生するため、打ち込み感が悪化する。しかしながら、上記したようにバランサ45による衝撃を軽減する設定にしたことにより、打ち込み感を損なうことがない。また、バランサ45による衝撃を軽減することで、機械本体やバランサ付勢部材46の破損を防ぐことができる。
なお、本実施形態のバランサ付勢部材46は、バランサ45とバランサストップ49が接触しないような付勢力の設定に加え、端部をオープンエンドに形成している。このようにすることで、バランサ45とバランサストップ49の衝突による衝撃で、バランサ付勢部材46が破損することを防いでいる。
以上説明したように、本実施形態によれば、ドライバ31には、プッシャ36の先端36bに臨むように溝31cが形成されており、プッシャ36には、射出経路15aの方向に突出する空打ち防止アーム37が設けられており、コンタクトアーム35には、射出経路15aから見てプッシャ36の反対側で空打ち防止アーム37に係合するアーム係合部35aが形成されており、空打ち防止アーム37がアーム係合部35aに係合することでコンタクトアーム35が摺動できないようにロックされるように構成されている。そして、射出経路15aでドライバ31が待機しており、かつ、マガジン12にファスナ60が装填されていないときに、ドライバ31の溝31cにプッシャ36の先端36bが進入するように構成されている。
このような構成によれば、ファスナ60が無くなったときに、中間位置で待機しているドライバ31の溝31cにプッシャ36が進入するため、溝31cの分だけプッシャ36を前進させることができる。これにより、ファスナ60の1本分の厚みとドライバ31の厚みとがほぼ同じであっても、最後のファスナ60の打ち込み途中(ドライバ31がファスナ60よりも上方にあり、プッシャ36とコンタクトアーム35との間にファスナ60が1本だけある状態)には空打ち防止アーム37とコンタクトアーム35が接触せず、打ち込み後(プッシャ36とコンタクトアーム35との間にドライバ31だけがあり、ファスナ60が無い状態)では空打ち防止アーム37とコンタクトアーム35が干渉するように設定することができる。
また、本実施形態においては、溝31cがドライバ31の両側部に形成されている。すなわち、ファスナ60がコ字形であるため、プッシャ36はコ字形のファスナ60の両脚部を押圧するために両側部に押圧部36aを備えており、このプッシャ36の押圧部36aに相対する位置にのみ溝31cを形成している。このように溝31cの位置を限定することで、ドライバ31全体を薄くする必要がないので、ドライバ31の打ち込み性能や耐久性への影響を最小限とすることができる。
また、溝31cはドライバ31の先端部(ファスナ60との接触部)には形成されないようにしてもよい。このように構成すれば、ドライバ31とファスナ60との接触面積が溝31cによって小さくなることがないので、ドライバ31の打ち込み性能への影響を最小限とすることができる。
なお、上記した実施形態においては、空打ち防止アーム37がプッシャ36に固定された例について説明したが、本発明の実施形態としてはこれに限らない。すなわち、空打ち防止アーム37はプッシャ36と連動して前進するものであればよく、プッシャ36とは別部材で構成してもよい。
なお、上記した実施形態においては、ドライバ31が意図的に中間位置で待機する打ち込み工具10を例に挙げて説明したが、本発明の実施形態としてはこれに限らない。すなわち、待機位置が中間位置ではない打ち込み工具10であっても、何らかの不具合により不完全なリターンとなり、ドライバ31が中間位置で停止してしまうことがありえる。このような打ち込み工具10に本発明を適用してもよい。