以下、各実施形態に係るX線CT装置、ワークステーション及びプログラムについて図面を用いて説明する。なお、X線CT装置には、X線管とX線検出器とが一体として被検体の周囲を回転するRotate/Rotate-Type(第3世代CT)、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管のみが被検体の周囲を回転するStationary/Rotate-Type(第4世代CT)等の様々なタイプがあり、いずれのタイプでも実施形態へ適用可能である。以下の各実施形態については、第3世代CTを例に挙げて説明する。
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成を示すブロック図である。X線CT装置1は、X線管11を有するX線源から被検体Pに対してX線を曝射し、当該被検体を透過したX線をX線検出器12で検出する。X線CT装置1は、当該X線検出器12からの出力に基づいて、被検体Pに関するCT画像を生成する。X線源及びX線検出器12は、撮影系の一例である。
図1に示すX線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。架台装置10は、被検体PをX線CT撮影するための構成を有するスキャン装置である。なお、図1に描画された複数の架台装置10は、1台の架台装置10の正面及び側面を示している。寝台装置30は、X線CT撮影の対象となる被検体Pを載置し、X線CT撮影を実行する位置まで移動するための装置である。コンソール装置40は、架台装置10を制御するコンピュータである。
例えば、架台装置10および寝台装置30はCT検査室に設置され、コンソール装置40はCT検査室に隣接する制御室に設置される。なお、コンソール装置40は、必ずしも制御室に設置されなくてもよい。例えば、コンソール装置40は、架台装置10及び寝台装置30とともに同一の部屋に設置されてもよい。いずれにしても架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とは互いに通信可能に有線または無線で接続されている。
架台装置10は、X線管11、X線検出器12、回転フレーム13、X線高電圧装置14、制御装置15、ウェッジ16、コリメータ17及びDAS18を有する。
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。例えば、X線管11には回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。X線管11で発生したX線は、コリメータ17を介してコーンビーム形に成形され、被検体Pに曝射される。なお、X線管11及びコリメータ17は、X線源の一例である。
X線検出器12は、X線管11から曝射され、被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号をDAS18へと出力する。X線検出器12は、例えば、X線管の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数配列された構造を有する。また、X線検出器12は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器(半導体検出器)であっても構わない。
回転フレーム13は、X線源とX線検出器12とを回転軸回りに回転可能に支持する。具体的には、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、後述する制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。回転フレーム13は、アルミニウム等の金属により形成された非回転部分に回転可能に支持される。詳しくは、回転フレーム13は、ベアリングを介して固定フレームの縁部に接続されている。なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とそれぞれ定義するものとする。回転フレーム13は、制御装置15の駆動機構からの動力を受けて回転軸Z回りに一定の角速度で回転する。なお、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やDAS18を更に備えて支持する。このような回転フレーム13は、撮影空間をなす開口(ボア)が形成された略円筒形状の筐体に収容されている。開口はFOV19に略一致する。開口の中心軸は、回転フレーム13の回転軸Zに一致する。回転フレーム13の回転軸Zは、X線管11の回転軸Zと呼んでもよい。なお、DAS18が生成した検出データは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から光通信によって架台装置の非回転部分(例えば、図示しない固定フレーム)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へと転送される。なお、回転フレーム13から架台装置10の非回転部分への検出データの送信方法は、前述の光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧及びX線管11に供給するフィラメント電流を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、X線高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(図示しない)側に設けられても構わない。
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。処理回路は、ハードウェア資源として、CPUやMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。また、制御装置15は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)やフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現されてもよい。制御装置15は、コンソール装置40からの指令に従い、X線高電圧装置14およびDAS18等を制御する。当該プロセッサは、当該メモリに保存されたプログラムを読み出して実行することで上記制御を実現する。また、制御装置15は、コンソール装置40若しくは架台装置10に取り付けられた、後述する入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御、及び寝台装置30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台装置10をチルトさせる制御は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられても構わない。なお、制御装置15は、当該メモリにプログラムを保存する代わりに、当該プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、当該プロセッサは、当該回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで上記制御を実現する。
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ16(ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter))は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。
DAS18(Data Acquisition System)は、被検体Pにより減弱されたX線の強度を示すデジタル値を1ビューごとに収集する。DAS18は、X線検出器12の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、増幅された電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、当該デジタル信号が示すデジタル値を有する検出データを生成する。検出データは、生成元のX線検出素子のチャンネル番号、列番号、および収集されたビューを示すビュー番号により識別されたX線強度のデジタル値のセットである。なお、ビュー番号としては、ビューが収集された順番(収集時刻)を用いてもよく、X線管11の回転角度を表す番号(例、1~1000)を用いてもよい。また、DAS18が生成した検出データは、架台装置10に収容された非接触データ伝送回路(図示せず)を介してコンソール装置40へと転送される。また、DASは、データ収集部の一例である。
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備えている。
基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。
寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を天板33の長軸方向に移動するモータあるいはアクチュエータである。寝台駆動装置32は、コンソール装置40による制御、または制御装置15による制御に従い、天板33を移動する。例えば、寝台駆動装置32は、天板33に載置された被検体Pの体軸が回転フレーム13の開口の中心軸に一致するよう、天板33を被検体Pに対して直交方向に移動する。また、寝台駆動装置32は、架台装置10を用いて実行されるX線CT撮影に応じて、天板33を被検体Pの体軸方向に沿って移動してもよい。
支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44と、通信インターフェース45とを有する。メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44と、通信インターフェース45との間のデータ通信は、バス(BUS)を介して行われる。なお、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40又はコンソール装置40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、投影データや医用画像データを記憶する。医用画像データとしては、例えば、後述する第1画像群、第2画像群、基準画像及び目標画像が適宜、使用可能となっている。また、メモリ41は、本実施形態に係る制御プログラムやデータ等を記憶する。データとしては、例えば、心電図データ、モーションマップ、面積・容積変化曲線、CT値変化曲線及び画像特徴量が適宜、使用可能となっている。また、メモリ41の保存領域は、X線CT装置1内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。また、本実施形態に係るプログラムは、当該プログラムを記憶した非一過性の記憶媒体(non-transitory storage medium)からメモリ41に読み出されて処理回路44に実行されてもよい。
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。また、ディスプレイ42は、表示部の一例である。また、ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等により実現される。また、入力インターフェース43は、入力部の一部である。また、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
処理回路44は、入力インターフェース43から出力される入力操作の電気信号に応じてX線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、ハードウェア資源として、CPUやMPU、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路44は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、システム制御機能441、スキャン制御機能442、画像生成機能443、領域特定機能444、画像群取得機能445、位相特定機能446、表示制御機能447などを実現する。このプログラムは、例えば、複数時相の第1画像群を記憶するメモリ41を備えたコンピュータに、メモリ41内の第1画像群に基づく領域特定機能444、画像群取得機能445、位相特定機能446、を実現させるためのプログラムを含んでいる。
システム制御機能441は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路44の各機能を制御する。具体的には、システム制御機能441は、メモリ41に記憶されている制御プログラムを読み出して処理回路44内のメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線CT装置1の各部を制御する。
スキャン制御機能442は、スキャン範囲、関心領域、撮影条件等を決定するための被検体Pの位置決め画像データを取得する。撮影条件としては、例えば、X線管11の管電圧・管電流、得られる画像スライスの総幅に対する1回転での寝台移動量(撮影ピッチ)、開始タイミング、撮影列数、回転速度などがある。
スキャン制御機能442は、位置決め画像データの取得後、モニタリング撮影及び本スキャンを順に実行するように撮影系を制御する。なお、「モニタリング撮影」は、「モニタリングスキャン」ともいう。本スキャンとしては、心電計50からの心電図データに基づいて、少なくとも1心拍分のCT撮像が実行される。
画像生成機能443は、DAS18から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生成する。なお、前処理前のデータ(検出データ)および前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。また、画像生成機能443は、このような投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。CT画像データを再構成する場合、フルスキャン再構成方式では被検体の周囲一周、360°分の投影データが必要であり、ハーフスキャン再構成方式でも180°+ファン角度分の投影データが必要である。いずれの再構成方式に対しても本実施形態へ適用可能である。以下、説明を簡単にするため、被検体周囲一周、360°分の投影データを用いて再構成する再構成(フルスキャン再構成)方式を用いるものとする。CT画像データは、被検体Pに関するCT値の空間分布を表している。CT値とは、CT画像を表現するための値で、水が0、空気が-1000と定義された相対的な値を指す。CT値は、X線減弱係数で決定され、水のX線減弱係数μ_waterが0となり、空気のX線減弱係数μ_airが-1000となるようにキャリブレーション(校正)が行われる。そのため、水よりもX線減弱係数が高い組織はCT値が高くなる。組織のX線減弱係数をμとしたとき、組織のCT値[HU]は次式から得られる。
組織のCT値[HU]=1000×(μ-μ_water)/μ_water
画像生成機能443は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づき、生成したCT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像データやボリュームデータに変換する。ボリュームデータは、3次元空間におけるCT値の分布情報を有するデータである。変換後の断層像データやボリュームデータは、例えば、モニタリング画像やボリューム画像としてディスプレイ42に表示される。モニタリング画像は、モニタリング撮影時の断層像である。公知の方法としては、例えば、ボリュームレンダリングや、サーフェスレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理が適宜、使用可能となっている。
領域特定機能444は、被検体内で開閉動作を行う構造物を時系列に沿って一部に描画する複数時相の第1画像群に基づいて、構造物が存在する候補空間領域と、構造物が特定形状となる候補時相領域とを特定する。ここで、第1画像群は、開閉の1サイクル分の4D画像であり、具体的には、心臓弁の場合は1心拍分の複数時相のボリューム画像である。複数時相は、10時相~100時相の範囲内にある。時相は、時系列に沿った各ボリューム画像における投影データの平均収集時刻である。いい換えると、第1画像群は、1心拍を10~100分割した時刻毎に得られたボリューム画像を含んでいる。構造物は心臓弁であってもよい。すなわち、各々のボリューム画像は、一部に心臓弁を描画している。あるいは、第1画像群の各々のボリューム画像は、それぞれ心臓弁のボリューム画像を一部に含んでいる。心臓弁としては、三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁及び大動脈弁のいずれでもよい。なお、構造物は、心臓弁に限らず、軟口蓋、喉頭蓋又は声門のように、被検体内で開閉動作を行う構造物であればよい。以下の説明は、大動脈弁(心臓弁)を構造物の代表例として述べる。特定形状は、構造物の開閉動作のうち、開状態の形状及び閉状態の形状のいずれでもよい。また、特定形状は全開状態(最大の開口状態)の形状であってもよい。候補空間領域は、第1画像群の各々のボリューム画像内で構造物が存在する候補となる空間領域である。候補空間領域は、例えば、各々のボリューム画像内で心臓弁を描画する候補となる一部の空間領域を意味している。候補時相領域は、第1画像群の全てのボリューム画像に対応する複数時相のうち、構造物が特定形状である候補となる一部の時相領域である。候補時相領域は、例えば、全開状態の心臓弁を描画する候補となる2~3個のボリューム画像を示す2時相~3時相からなる時相領域を意味している。
なお、領域特定機能444は、第1画像群に基づいて、第1画像群内のスライス位置と、被検体の心位相とに対応する動き量を表すモーションマップを作成し、当該モーションマップに基づいて、候補時相領域を特定してもよい。モーションマップは、各位相(各時相)のボリューム画像に基づき、各スライス位置及び各位相における断層画像の動き量を濃淡で表し、スライス位置ごとに濃淡を位相に沿って並べたモーションラインを、スライス位置に対応付けてスライス方向に並べた画像である。なお、「心位相」又は「位相」の用語は、心電計50からの心電図データによって検出されたR波を目印にし、R波からR波までの時間を100%で規格化し、現在のボリューム画像の時相(時刻)を%で表現したものを指している。なお、位相は、ここでは典型的な「%」表記で説明するが、R波を基準にしたmsec(ミリ秒)による表記を採用してもよい。また、時相を位相で表現可能なため、適宜、時相と位相を互いに読み替えてもよい。さらに、領域特定機能444は、当該モーションマップに基づいて、構造物が存在する候補空間領域を特定してもよい。モーションマップから候補空間領域を特定する場合には、構造物の開閉動作に応じた動き量がモーションマップに加わることから、モーションマップ内で特に動き量が大きいZ位置の範囲を特定すればよい。モーションマップを用いる場合の他の候補空間領域の特定方法としては、造影剤の流入又は流出に応じて、CT値の上昇又は下降度合いが大きい空間領域を特定してもよい。
また、領域特定機能444は、モーションマップに代えて、構造物に関する面積や容積の変化曲線(面積・容積変化曲線)又はCT値変化曲線に基づいて、候補時相領域を特定してもよい。あるいは、領域特定機能444は、モーションマップ、面積・容積変化曲線及びCT値変化曲線の少なくとも2つに基づく特定結果が重なった領域を求めることにより、一層絞り込んだ候補時相領域を特定してもよい。また、領域特定機能444は、複数段階のモーションマップを用いることにより、一層絞り込んだ候補時相領域を特定してもよい。領域特定機能444は、領域特定部の一例である。
画像群取得機能445は、第1画像群に対応する投影データのうち、候補空間領域及び候補時相領域の両者に対応する投影データのみを第1画像群の時間分解能よりも高い時間分解能で再構成処理することにより、複数時相の第2画像群を取得する。画像群取得機能445は、画像群取得部の一例である。
位相特定機能446は、第2画像群に基づいて、特定形状を含む目標画像の位相を特定する。ここで、位相特定機能446は、第2画像群の各々の画像と、予め設定された基準画像とに基づいて、目標画像を特定し、目標画像の位相を特定してもよい。いい換えると、特定形状(開口弁)の目標画像に類似している画像を第2画像群から検索し、類似度が一番高い位相を最適位相として特定する。検索対象はCT生データでもCT再構成画像、CT任意断層像画像のいずれでもよい。生データの場合は特定形状を含む再構成画像群をバックプロジェクションして得られる生データで検索すればよい。また、位相特定機能446としては、AI(人工知能)の機械学習モデルに過去の目標画像を学習させることにより作成した学習済みモデルを用い、当該学習済みモデルにより、第2画像群から目標画像を特定してもよい。あるいは、位相特定機能446は、第2画像群の各々の画像と、予め設定されて特定形状を定義する画像特徴量とに基づいて、目標画像を特定し、目標画像の位相を特定してもよい。画像特徴量としては、例えば、「画像中に円内に線状の領域が存在する」、「画像中に円内に三角形状の領域が存在する」などの構造物の特徴を定義してもよい。この構造物の特徴の定義は、ユーザの入力操作に応じて設定してもよい。位相特定機能446は、位相特定部の一例である。
表示制御機能447は、各機能による処理結果などのデータを表示するようにディスプレイ42を制御する。例えば、表示制御機能447は、医用画像データに基づいて、医用画像をディスプレイ42に表示させる。
なお、システム制御機能441、スキャン制御機能442、画像生成機能443、領域特定機能444、画像群取得機能445、位相特定機能446、表示制御機能447は、一つの基板の処理回路44により実装されてもよいし、複数の基板の処理回路44により分散して実装されてもよい。同様に、コンソール装置40は、単一のコンソールにて複数の機能を実行するものとして説明したが、複数の機能を別々のコンソールが実行することにしても構わない。
通信インターフェース45は、有線、無線又はその両方にて外部装置と通信するための回路である。外部装置は、この例では心電計50であるが、これに限定されない。外部装置は、例えば、モダリティ、画像処理装置、放射線部門情報管理システム(RIS:Radiological Information System)、病院情報システム(HIS:Hospital Information System)及びPACS(Picture Archiving and Communication System)等のシステムに含まれるサーバ、あるいは他のワークステーション等としてもよい。
心電計50は、被検体Pに取り付けられた電極(図示せず)を介して当該被検体Pの心電波形(Electrocardiogram:ECG)を取得する。心電計50は、取得した心電波形及び時間情報を含む心電図データを、通信インターフェース45を介して処理回路44及びメモリ41へと出力する。
次に、以上のように構成されたX線CT装置の動作について図2のフローチャート及び図3乃至図6の模式図を用いて説明する。
始めに、X線CT装置1は、図示しない通信インターフェースを介して検査予約システム等から検査対象の被検体に関する被検体情報(患者情報)を取得する。被検体情報は、患者ID、患者名、生年月日、年齢、体重、性別、検査部位である。なお、被検体情報は、被検体のインプラントを示すインプラント情報を含んでもよい。
続いて、造影セットアップ、位置決め撮影、モニタリング撮影が実行される。
モニタリング撮影の終了後、ステップST10において、スキャン制御機能442により、心電図データの取得と共に、被検体Pの心臓の4D画像を取得するための本スキャンを実行するようにX線源とX線検出器12とを制御する。この本スキャンは、例えば、1回転のスキャンで心臓全体を撮影可能なボリュームスキャンである。
本スキャン中、画像生成機能443は、X線検出器12からDAS18を介して出力された投影データに対して再構成処理を行い、医用画像データ(断層像データやボリュームデータ)を生成してメモリ41に保存する。なお、ボリュームデータは、再構成された複数の断層像データを補間処理することにより生成される。詳しくは図3に示すように、ボリュームデータghは、心電図データのR波に基づき、1心拍を10~20分割した複数時相の各々に応じて生成される。また、各々のボリュームデータghは、心臓全体が撮影されたデータであり、心臓弁が撮影されたボリュームデータgvを一部に含んでいる。また、図3(a)は心電図データを示し、図3(b)は、心電図データに同期した心臓弁(大動脈弁)の開閉状態を示し、図3(c)は、心電図データに同期した心拍及び心位相を示している。
スキャン制御機能442は、心電図データに基づき、少なくとも1心拍分の投影データを収集したか否かを判定し、収集した場合には、本スキャンを終了するようにX線源とX線検出器12とを制御する。一方、この判定の結果、否の場合には、本スキャンを継続する。本スキャンの終了により、X線CT装置1は、被検体Pの心臓の4D画像である複数時相の第1画像群を取得する。補足すると、X線CT装置1は、1心拍分の複数時相の第1画像群を取得する。第1画像群は、粗い時間分解能(10~20 [Volume/1心拍])のボリューム画像を含んでいる。これにより、ステップST10が終了する。
ステップST10の後、ステップST20において、領域特定機能444は、当該取得した複数時相の第1画像群に基づいて、構造物が存在する候補空間領域と、構造物が特定形状となる候補時相領域とを特定する。このステップST20は、例えば第1画像群のボリュームデータghに基づくモーションマップMpを用いることにより、ステップST21~ST23に示すように実行される。
ステップST21において、領域特定機能444は、第1画像群に基づいて、第1画像群内のスライス位置と、被検体の心位相とに対応する動き量を表すモーションマップMpを作成する。例えば図4の上段に示すように、心臓全体のボリュームデータghからスライス方向(Z方向)に沿って、大動脈、大動脈弁及び左心室を描画したCT断層画像g1を作成する。また、CT断層画像g1の各スライス位置(Z位置)において、心位相の前後2つの断層画像(図示せず)を作成し、当該2つの断層画像の画素値の差分(絶対値)の総和を動き量として算出する。この動き量は、当該スライス位置と心位相とに対応し、スライス位置と心位相との組合せ毎に算出される。しかる後、動き量の値を濃淡(又は色)で表したモーションマップMpを作成する。なお、動き量を算出する方法は、2つの断層画像の差分をとる方法に限らず、2つのボリュームデータの差分をとる方法を用いてもよい。
ステップST21の後、ステップST22において、領域特定機能444は、第1画像群又はモーションマップMpに基づいて、候補空間領域A_sを特定する。例えば、候補空間領域A_sは、第1画像群に基づくCT断層画像g1において、心臓弁が存在するZ位置の領域として特定してもよい。また例えば、候補空間領域A_sは、モーションマップMpにおいて、心臓弁の動き量に対応する濃淡が存在するZ位置の領域として特定してもよい。あるいは、領域特定機能444は、第1画像群に基づく特定結果とモーションマップに基づく特定結果とが重なった領域を求めることにより、一層絞り込んだ候補空間領域A_sを特定してもよい。
ステップST22の後、ステップST23において、領域特定機能444は、モーションマップMpに基づいて、候補時相領域A_t1を特定する。例えば、領域特定機能444は、モーションマップMpの候補空間領域A_s内で時間(位相)方向に沿って動き量の小さい2つの低値領域(A_t1,A_t2)を特定し、低値領域のうち、心臓弁の全開状態を含む領域を候補時相領域A_t1として特定する。なお、他方の低値領域A_t2は、心臓弁の閉状態に対応する。補足すると、候補空間領域A_s及び候補時相領域A_t1に対応するボリュームデータによれば、図4の中段に示す如き、開状態の心臓弁の画像g_voが通常得られる。但し、通常得られる画像g_voは、粗い時間分解能(10~20 [Volume/1心拍])のため、図4の下段に示す如き、観察したい全開状態の画像の前又は後の画像である。なお、観察したい全開状態の画像は、細かい時間分解能(100~200 [Volume/1心拍])で得られる。このため、後述するステップST30以降の処理が必要となる。一方、候補空間領域A_s及び他方の低値領域A_t2に対応するボリュームデータによれば、図4の中段に示す如き、閉状態の心臓弁の画像g_vcが通常得られる。閉状態の場合、通常得られる画像g_vcは、図4の下段に示す如き、観察したい全閉状態の画像とほぼ同じである。このため、閉状態の心臓弁については、従来から容易に計測できる。このようなステップST23の終了により、ステップST20が終了する。
ステップST20の後、ステップST30において、画像群取得機能445は、第1画像群に対応する投影データのうち、候補空間領域A_s及び候補時相領域A_t1の両者に対応する投影データのみを第1画像群の時間分解能よりも高い時間分解能で再構成処理することにより、複数時相の第2画像群を取得する。詳しくは図5の上段に示すように、再構成により、候補空間領域A_s及び候補時相領域A_t1の両者に対応するボリュームデータgvを生成する。ボリュームデータgvは、候補時相領域A_t1を10~20分割した複数時相の各々に応じて生成される。いい換えると、ボリュームデータgvは、候補時相領域A_t1において、1心拍を100~200分割した時間分解能(100~200 [Volume/1心拍])で生成される。また、各々のボリュームデータgvは、心臓全体ではなく、心臓弁が存在する候補空間領域A_sに応じたデータである。すなわち、第2画像群に対応するボリュームデータgvは、第1画像群に対応するボリュームデータghに比べ、細かい時間分解能をもつ小さい空間領域のデータである。また、図5(a)は、心電図データに同期した心臓弁(大動脈弁)の開閉状態を示し、図5(b)は、心電図データに同期した心拍、心位相及び候補時相領域A_t1を示している。これにより、ステップST30が終了する。
ステップST30の終了後、ステップST40において、位相特定機能446は、第2画像群に基づいて、特定形状を含む目標画像の位相を特定する。このステップST40は、例えば、目標画像及びその位相を順次特定するステップST41~ST42に示すように実行される。
ステップST41において、位相特定機能446は、第2画像群の各々の画像と、予め設定されたデータとに基づいて、目標画像を特定する。ここで、予め設定されたデータとしては、特定形状を含む基準画像としてもよく、特定形状を定義する画像特徴量としてもよい。具体的には例えば、図5の下段に示すように、位相特定機能446は、第2画像群の各々のボリュームデータgvから得られる心臓弁の開状態の画像g_voと、基準画像g_refとを比較することにより、一致度又は類似度の高い画像g_voを目標画像として特定する。すなわち、完全一致しなくても、一致度又は類似度の高い画像g_voを選択(特定)する。なお、位相特定機能446としては、AI(人工知能)の機械学習モデルに過去の目標画像を学習させることにより作成した学習済みモデルを用い、当該学習済みモデルにより、第2画像群から目標画像を特定してもよい。この場合、学習済みモデルは、学習データに基づいて、モデル学習プログラムに従い機械学習モデルに機械学習を行わせることにより、得られた学習済みの機械学習モデルである。学習データは、第2画像群の各々のボリュームデータgvから得られる心臓弁の開状態の画像g_voを入力データとし、入力データのうち、基準画像g_refに対して一致度又は類似度の高い画像g_voを出力データ(目標データ)とすればよい。入力データは、さらに基準画像g_refを含んでもよい。また、学習済みモデルは、X線CT装置1の工場出荷前に予めメモリ41に保存してもよい。あるいはX線CT装置1の工場出荷後に、図示しないサーバ装置などから取得した学習済みモデルをメモリ41に保存してもよい。このことは、以下の各実施形態でも同様である。
なお、ボリュームデータgvから心臓弁の画像g_voを作成する前に、心臓弁が小さいため、心臓弁の位置を指定しにくい場合がある。この場合、位相特定機能446は、図6に示すように、ボリュームデータgvから心臓弁の断面を含む断層像g21~g23を作成し、この断層像g21~g23から心臓弁の位置p_vを指定することにより、心臓弁の画像g_voを作成してもよい。いずれにしても、目標画像の特定により、ステップST41は終了する。
ステップST41の後、ステップST42において、位相特定機能446は、特定した目標画像に対応するボリュームデータgvの位相を、目標画像の位相として特定する。これにより、心臓CTにおいて、特定形状(開口弁)を観察するための最適位相を取得することができる。これにより、例えば動脈弁の場合、最適位相において、大動脈弁弁口面積や大動脈弁弁輪径、弁輪の長さ、深さ、容積を計測することができる。
上述したように第1の実施形態によれば、被検体内で開閉動作を行う構造物を時系列に沿って一部に描画する複数時相の第1画像群に基づいて、当該構造物が存在する候補空間領域と、当該構造物が特定形状となる候補時相領域とを特定する。また、第1画像群に対応する投影データのうち、候補空間領域及び候補時相領域の両者に対応する投影データのみを当該第1画像群の時間分解能よりも高い時間分解能で再構成処理することにより、複数時相の第2画像群を取得する。さらに、第2画像群に基づいて、当該特定形状を含む目標画像の位相とを特定する。従って、全ての投影データに対応する高い時間分解能の画像群から特定形状を検索する場合に比べ、ユーザの操作と必要なリソースとを低減しつつ、構造物が特定形状となる位相を特定することができる。
いい換えると、第1の実施形態によれば、時間方向に複数の時相で撮像されたデータから、臓器全体とは別個の動きを伴う構造物(目的部位)に関し、(1)目的部位を占める空間を探索し、(2)目的部位の特定の動きの時間帯を探索する。(3)上記(1)(2)で探索した空間及び時間帯に対応する範囲のデータから時間分解能のよい複数時相の画像を作成し、(4)特定の動きの瞬間を特徴づける形態情報(基準画像、画像特徴量)との照合を行う。これにより、目的部位の特定の動きの瞬間を示す時相データを効率よく自動生成する。
あるいは、画像の大半を占める動きから独立して別個に動く構造物について、空間的な切り出しと、時間的な切り出しと、両方の切り出された範囲で時間分解能の細分化とを行う。その結果、細分化された複数時相のボリュームデータにおいて、評価したい特定の瞬間の形状又は形状の特徴を用いて一致度又は類似度が高い時相のボリュームデータを検索し、そのボリュームデータの時相を最適位相とする。
これにより、画像の大半を占める動きから独立して別個に動く構造物を画像全体から抽出し、その構造物のある瞬間の状態を評価する時に、ユーザの操作数を低減し、また、使用するメモリやディスク容量を低減して目的の処理を行うことができる。
また、第1の実施形態によれば、構造物は心臓弁であり、特定形状は全開状態の形状である。これにより、全ての投影データに対応する高い時間分解能の画像群から全開状態の形状を検索する場合に比べ、ユーザの操作数と必要なリソースとを低減しつつ、心臓弁が全体状態の形状となる位相を特定することができる。
補足すると、例えば、心臓弁である大動脈弁は、心臓全体に比べて小さく、大動脈弁の全開状態は、1心拍中の一瞬(例、0.1秒以下)である。このため、従来の場合、心臓全体の1心拍の動画像から大動脈弁の全開状態の形状を特定する際に、1心拍を100分割した画像群を作成し、ユーザが手動操作で選択する必要がある。そして、この選択は、ユーザの操作数が膨大になり、手間がかかる。また、1心拍を100分割した画像群を作成する従来方法は長い時間と、多くのメモリ消費量とが必要になり、実装が困難である。
一方、本実施形態では、前述した通り、ユーザの操作数と必要なリソースとを低減しつつ、心臓弁が全体状態の形状となる位相を特定することができる。
また、第1の実施形態によれば、第1画像群に基づいて、第1画像群内のスライス位置と、被検体の心位相とに対応する動き量を表すモーションマップを作成し、当該モーションマップに基づいて、候補時相領域を特定する。従って、スライス位置に対応するモーションマップ内の位置から構造物の存在範囲を特定し、当該構造物の存在範囲において、心位相に対応するモーションマップ内の動き量(例、濃淡)から構造物の動き量が小さい時相領域(心位相の範囲)を候補時相領域として特定できる。
また、第1の実施形態によれば、第2画像群の各々の画像と、予め設定された基準画像とに基づいて、目標画像を特定し、目標画像の位相を特定する。あるいは、第2画像群の各々の画像と、予め設定されて特定形状を定義する画像特徴量とに基づいて、目標画像を特定し、目標画像の位相を特定する。従って、予め基準画像又は画像特徴量を設定することにより、目標画像及びその位相を特定することができる。なお、基準画像を設定する場合、画像特徴量に比べ、特定形状を含む既存の画像を基準画像として流用し易い利点がある。また、画像特徴量を設定する場合、基準画像が無くても、目標画像に含まれる特定形状を定義できる利点がある。
<第1の実施形態の変形例>
次に、第1の実施形態の変形例について述べる。
この変形例は、第1の実施形態に比べ、候補時相領域をより狭い範囲に絞る観点から、モーションマップを多段階に用いる構成である。なお、多段階とは、2段階以上の複数段階であり、この例では2段階としているが、2段階に限定されない。また、2段階の場合、1段階目の全体のモーションマップは、粗い時間分解能(例、10-20 [Volume/1 心拍])のボリュームデータに基づいて作成される。2段階目のモーションマップは、1段階目のモーションマップによって候補空間領域及び候補時間領域がを絞り込まれた後、細かい時間分解能(100-200 [Volume/1 心拍])のボリュームデータに基づいて作成される。
具体的には、この変形例は、前述した領域特定機能444にて1段階目のモーションマップを用いる第1の実施形態に加え、位相特定機能446にて2段階目のモーションマップを用いている。
変形例に係る位相特定機能446は、第2画像群に基づいて、第2画像群内のスライス位置と、被検体の心位相とに対応する動き量を表すモーションマップを作成し、当該モーションマップに基づいて候補時相領域を限定する。しかる後、位相特定機能446は、限定した候補時相領域に対応する第2画像群に基づいて、特定形状を含む目標画像の位相を特定する。
他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
次に、以上のように構成されたX線CT装置の変形例の動作について図7のフローチャート及び図8の模式図を用いて説明する。この変形例の動作は、図2のステップST41に代えて、図7に示す如きステップST41-1~ST41-3を行うものである。
すなわち、X線CT装置1は、前述同様に、ステップST10~ST30を実行し、第1段階のモーションマップMpを用いて候補空間領域及び候補時相領域を特定し、第2画像群を取得する。図8の中段に示す如き、ボリュームデータgvは、前述したステップST30により取得された第2画像群に対応する。なお、図8(a)は、心電図データに同期した心臓弁(大動脈弁)の開閉状態を示し、図8(b)は、心電図データに同期した心拍、心位相及び候補時相領域A_t1を示している。これにより、ステップST30が終了する。
ステップST30の終了後、ステップST40において、位相特定機能446は、第2画像群に基づいて、特定形状を含む目標画像の位相を特定する。このステップST40は、例えば、目標画像及びその位相を順次特定するステップST41-1~ST41-3,ST42に示すように実行される。
ステップST41-1において、位相特定機能446は、第2画像群に基づいて、第2画像群内のスライス位置と、被検体の心位相とに対応する動き量を表すモーションマップMpを作成する。このモーションマップMpは、第2段階のモーションマップである。
ステップST41-1の後、ステップST41-2において、位相特定機能446は、第2段階のモーションマップMpに基づいて、候補時相領域A_t1を狭い範囲に限定して候補時相領域A_t1aを特定する(A_t1a<A_t1)。なお、図8(c)は、心電図データに同期した心拍、心位相及び候補時相領域A_t1aを示している。
ステップST41-2の後、ステップST41-3において、位相特定機能446は、ステップST41-2で特定された候補時相領域A_t1aに対応する第2画像群の各々の画像と、予め設定されたデータとに基づいて、目標画像を特定する。このステップST41-3は、第2画像群の候補時相領域A_t1aがステップST23の候補時相領域A_t1よりも狭いことを除き、前述したステップST41と同様に実行される。なお、図8の下段は、ステップST41-3の第2画像群に対応するボリュームデータgvを示している。図8の下段に示すボリュームデータgvは、図8の中段に示すボリュームデータgvから候補時相領域A_t1a(<A_t1)に応じて選択されている。
ステップST41-3の後、前述同様に、ステップST42が実行される。
上述したように第1の実施形態の変形例によれば、モーションマップを多段階に用いた構成としても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係るX線CT装置について説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、第1段階のモーションマップMpに代えて、大動脈弁の開閉動作に関する左心室の面積や容積の変化曲線(面積・容積変化曲線)を用いる構成となっている。
これに伴い、領域特定機能444は、第1画像群に基づいて、被検体の心位相に沿った開閉動作に関する面積・容積変化曲線を作成し、当該面積・容積変化曲線の変曲点に対応して候補時相領域を特定する。なお、面積・容積変化曲線としては、面積の変化曲線又は容積の変化曲線が適宜、使用可能となっている。但し、これに限らず、面積の変化曲線及び容積の変化曲線を用い、各々の変曲点の心位相を平均して候補時相領域を特定してもよい。
他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
次に、以上のように構成されたX線CT装置の動作について図9のフローチャート及び図10の模式図を用いて説明する。この動作は、図2のステップST21~ST23に代えて、図9に示す如きステップST21a~ST23aを行うものである。
すなわち、X線CT装置1は、前述同様に、ステップST10を実行し、粗い時間分解能の第1画像群を取得する。
ステップST10の後、ステップST20において、領域特定機能444は、当該取得した複数時相の第1画像群に基づいて、構造物が存在する候補空間領域と、構造物が特定形状となる候補時相領域とを特定する。このステップST20は、被検体の心位相に沿った、構造物の開閉動作に関する面積・容積変化曲線を作成することにより、ステップST21a~ST23aに示すように実行される。なお、以下のステップST21a~ST23aの説明は、面積変化曲線を用いず、容積変化曲線を用いる場合を例に挙げて述べる。
ステップST21aにおいて、領域特定機能444は、第1画像群に基づいて、図10(a)に示すように、第1画像群に対応する各々のボリュームデータから心臓の左心室の容積を心位相毎に算出し、左心室の容積変化曲線を作成する。なお、第2の実施形態では、図10(b)に示す如き、前述したモーションマップMpを使用しない。
ステップST21aの後、ステップST22aにおいて、領域特定機能444は、第1画像群に基づいて、前述同様に候補空間領域A_sを特定する。
ステップST22aの後、ステップST23aにおいて、領域特定機能444は、当該容積変化曲線の変曲点Piに対応して候補時相領域A_t1を特定する。例えば、領域特定機能444は、容積変化曲線が下降する駆出期(ejection phase:Ej)における変曲点Piを検出し、当該変曲点Piの心位相を中心に±5%の心位相の領域(全10%の心位相の領域)を、候補時相領域A_t1として特定する。なお、±5%(全10%)の範囲は、一例であり、これに限定されない。また、変曲点Piを用いずに、容積変化曲線が下降する範囲の中央付近の領域を、候補時相領域A_t1として特定してもよい。これは、左心室の容積変化曲線が下降する駆出期(左心室の収縮期)には、大動脈弁が開状態となって左心室の血液が大動脈に駆出されているため、大動脈弁の瞬間的な全開状態を含むからである。なお、大動脈弁の全開状態を含む候補時相領域としては、左心室の容積が下がっていく時期と上昇していく時期との2通りが可能であるが、下がっていく時の方が全開状態の時間が長いため、容積が下がっていく時を優先する方が好ましい。また、心腔容積を使用して候補時相領域を特定する場合には、候補空間領域を特定する前に候補時間領域を特定してもよい。心容積変化以外に、バルサルバ洞容積や大動脈・肺動脈面積の面積や容積変化で候補時間領域を特定してもよい。いずれにしても、このようなステップST21a~ST23aの終了により、ステップST20が終了する。
ステップST20の後、前述同様に、ステップST30~ST40が実行される。
上述したように第2の実施形態によれば、第1画像群に基づいて、被検体の心位相に沿った開閉動作に関する容積変化曲線を作成し、当該容積変化曲線の変曲点に対応して候補時相領域を特定する。このように、モーションマップに代えて、面積・容積変化曲線を用いる構成としても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第2の実施形態の変形例>
次に、第2の実施形態の変形例について述べる。
この変形例は、第2の実施形態を第1実施形態の変形例のように変形したものであり、候補時相領域をより狭い範囲に絞る観点から、モーションマップを用いる構成である。
具体的には、この変形例は、前述した領域特定機能444にて面積・容積変化曲線から候補時相領域を特定する第2の実施形態に加え、位相特定機能446にてモーションマップから候補時相領域を限定している。
変形例に係る位相特定機能446は、第2画像群に基づいて、第2画像群内のスライス位置と、被検体の心位相とに対応する動き量を表すモーションマップを作成し、当該モーションマップに基づいて候補時相領域を限定する。しかる後、位相特定機能446は、限定した候補時相領域に対応する第2画像群に基づいて、特定形状を含む目標画像の位相を特定する。
他の部分の構成は、第2の実施形態と同様である。
次に、以上のように構成されたX線CT装置の変形例の動作について、前述した図7のフローチャート及び図11の模式図を用いて説明する。この変形例の動作は、第2の実施形態の動作において、図2のステップST41に代えて、図7に示す如きステップST41-1~ST41-3を行うものである。
すなわち、X線CT装置1は、前述同様に、ステップST10、ST21a~ST23aを実行し、図11(a)に示すCT断層画像g1から候補空間領域A_sを特定し、図11(b)に示す容積変化曲線から候補時相領域A_t1を特定する。また同様に、図11(c)に示すCT断層画像g1に対応するモーションマップMp(g1)は用いない。
続いて同様に、ステップST30を実行し、第2画像群を取得する。これにより、ステップST30が終了する。
ステップST30の終了後、ステップST40において、位相特定機能446は、第2画像群に基づいて、特定形状を含む目標画像の位相を特定する。このステップST40は、例えば、目標画像及びその位相を順次特定するステップST41-1~ST41-3,ST42に示すように実行される。
ステップST41-1において、位相特定機能446は、第2画像群のCT断層画像g2に基づいて、第2画像群内のスライス位置z1と、被検体の心位相とに対応する動き量を表すモーションマップMp(g2)を作成する。なお、このモーションマップMp(g2)は、スライス位置z1を用いる場合に限らず、動脈弁を横断するオブリーク(Oblique)面で複数時相の断層画像を作成し、隣り合った断層画像同士で差分をとることにより作成してもよい。また、図11(b)に示すモーションマップMp(g2)は、心臓弁の動き量の小さい時相領域(濃い領域)が候補時相領域A_t1に対応している旨の理解を容易にするため、心位相の全範囲を候補時相領域A_t1よりも広い範囲で記述している。補足すると、モーションマップMp(g2)は、実際には候補時相領域A_t1と同じ心位相の範囲で作成される。
ステップST41-1の後、ステップST41-2において、位相特定機能446は、モーションマップMp(g2)に基づいて、候補時相領域A_t1を狭い範囲に限定して候補時相領域A_t1a(図示せず)を特定する(A_t1a<A_t1)。
ステップST41-2の後、前述同様に、ステップST41-3,ST42が実行される。
上述したように第2の実施形態の変形例によれば、面積・容積変化曲線の後に、モーションマップを用いた構成としても、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態に係るX線CT装置について説明する。
第3の実施形態は、第1の実施形態の変形例であり、第1段階のモーションマップMpに代えて、大動脈弁のCT値変化曲線を用いる構成となっている。
これに伴い、領域特定機能444は、第1画像群に基づいて、被検体の心位相に沿った構造物のCT値変化曲線を作成し、CT値変化曲線の略一定状態に対応して候補時相領域を特定する。
他の部分の構成は、第1の実施形態と同様である。
次に、以上のように構成されたX線CT装置の動作について図12のフローチャート、図13及び図14の模式図を用いて説明する。この動作は、図2のステップST21~ST23に代えて、図12に示す如きステップST21b~ST23bを行うものである。
すなわち、X線CT装置1は、前述同様に、ステップST10を実行し、粗い時間分解能の第1画像群を取得する。
ステップST10の後、ステップST20において、領域特定機能444は、当該取得した複数時相の第1画像群に基づいて、構造物が存在する候補空間領域と、構造物が特定形状となる候補時相領域とを特定する。このステップST20は、被検体の心位相に沿った、構造物のCT値変化曲線を作成することにより、ステップST21b~ST23bに示すように実行される。
ステップST21bにおいて、領域特定機能444は、第1画像群に基づいて、図13に示すように、第1画像群に対応する各々のボリュームデータから得られる各々のCT断層画像において、大動脈弁61のCT値を算出する。なお、図13中、大動脈弁61は、左心室63と大動脈65との間にあり、左心室63から駆出された血液の逆流を防止する役目を担う。大動脈弁61は、図13には2つしか示されていないが、図4等に示すように、3つの弁尖からなる。3つの弁尖に囲まれる空間は、弁口67と呼ばれる。大動脈弁61の3つの弁尖を通る断面における弁口67の面積は、弁口面積と呼ばれている。換言すれば、断面上における弁口輪郭内の面積が弁口面積である。大動脈弁61の各弁尖と大動脈65の内壁との間の空間は、大動脈洞(いわゆるバルサルバ洞:sinus of Valsalva)69と呼ばれている。左心室63が収縮する場合、正常な大動脈弁61は開く。反対に左心室63が弛緩する場合、正常な大動脈弁61は閉じる。弁膜症が生じている大動脈弁は、正常に動作せず、完全に閉じなかったり、完全に開かなかったりする。例えば、弁狭窄の場合、左心室が収縮しても大動脈弁が完全には開かない。閉塞不全の場合、左心室が弛緩しても大動脈弁が完全には閉じない。すなわち弁口面積は、心臓に弁膜症が発症しているか否かを評価するための1つの指標となりうる。
詳しくは、領域特定機能444は、図14の上段に示すように、心位相に沿った各々のCT断層画像のうち、大動脈弁61の閉状態において大動脈弁61の全体を含み、開状態において大動脈弁61の基端を含むが先端を含まない空間領域A_ocのCT値を算出する。なお、これに限らず、空間領域A_ocは、大動脈弁61の開閉状態に応じて、CT値が変化する領域であればよい。
いずれにしても、領域特定機能444は、第1画像群に基づいて、心位相に沿って大動脈弁61を含む空間領域のCT値を算出することにより、図14の下段に示す如き、CT値変化曲線を作成する。これにより、ステップST21bが終了する。
ステップST21bの後、ステップST22bにおいて、領域特定機能444は、第1画像群に基づいて、前述同様に候補空間領域A_sを特定する。
ステップST22bの後、ステップST23bにおいて、領域特定機能444は、当該CT値変化曲線の略一定状態に対応して候補時相領域A_t1を特定する。例えば、領域特定機能444は、CT値変化曲線において、大動脈弁61の開状態に対応する略一定部分を検出し、当該略一定部分の中央付近の心位相を中心に±5%の心位相の領域(全10%の心位相の領域)を、候補時相領域A_t1として特定する。なお、±5%(全10%)の範囲は、一例であり、これに限定されない。また、略一定状態の部分を用いずに、CT値変化曲線の立ち下がり部と立ち上がり部との間の中央付近の領域を、候補時相領域A_t1として特定してもよい。また、CT値変化曲線を使用して候補時相領域を特定する場合には、候補空間領域を特定する前に候補時間領域を特定してもよい。いずれにしても、このようなステップST21b~ST23bの終了により、ステップST20が終了する。
ステップST20の後、前述同様に、ステップST30~ST40が実行される。
上述したように第3の実施形態によれば、第1画像群に基づいて、被検体の心位相に沿った構造物のCT値変化曲線を作成し、CT値変化曲線の略一定状態に対応して候補時相領域を特定する。このように、モーションマップに代えて、CT値変化曲線を用いる構成としても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第3の実施形態の変形例>
次に、第3の実施形態の変形例について述べる。
この変形例は、第3の実施形態を第1実施形態の変形例のように変形したものであり、候補時相領域をより狭い範囲に絞る観点から、モーションマップを用いる構成である。
具体的には、この変形例は、前述した領域特定機能444にてCT値変化曲線から候補時相領域を特定する第3の実施形態に加え、位相特定機能446にてモーションマップから候補時相領域を限定している。
変形例に係る位相特定機能446は、第2画像群に基づいて、第2画像群内のスライス位置と、被検体の心位相とに対応する動き量を表すモーションマップを作成し、当該モーションマップに基づいて候補時相領域を限定する。しかる後、位相特定機能446は、限定した候補時相領域に対応する第2画像群に基づいて、特定形状を含む目標画像の位相とを特定する。
他の部分の構成は、第3の実施形態と同様である。
以上のように、CT値変化曲線の後にモーションマップを用いる構成としても、第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
<第4の実施形態>
次に、第4の実施形態に係るワークステーションについて説明する。
第4の実施形態は、第1乃至第3の各実施形態及びそれらの各変形例に適用可能な実施形態であり、図15に示すように、X線CT装置1とは別体の装置としてワークステーション70を備えている。X線CT装置1とワークステーション70とは、ネットワークを介して通信可能に接続されている。
X線CT装置1は、前述同様に、本スキャンを行い、少なくとも1心拍分の投影データを収集する。この投影データは、心電計50からの心電図データと共に、ワークステーション70に転送される。第4の実施形態に係るX線CT装置1は、図1に示した処理回路44から、領域特定機能444、画像群取得機能445、位相特定機能446が省略された構成となっている。
ワークステーション70は、X線CT装置1に収集された投影データを保存し、当該投影データから前述同様に、第1画像群、第2画像群を取得し、目標画像の位相を特定するコンピュータ装置である。ワークステーション70は、メモリ71、ディスプレイ72、入力インターフェース73、処理回路74及び通信インターフェース75を備えている。メモリ71、ディスプレイ72、入力インターフェース73、処理回路74及び通信インターフェース75の間のデータ通信は、バス(BUS)を介して行われる。
メモリ71は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ71は、HDDやSSD等以外にも、CD、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体や、RAM等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。メモリ71は、例えば、投影データや医用画像データを記憶する。医用画像データとしては、例えば、後述する第1画像群、第2画像群、基準画像及び目標画像が適宜、使用可能となっている。また、メモリ41は、本実施形態に係る制御プログラムやデータ等を記憶する。データとしては、例えば、心電図データ、モーションマップ、面積・容積変化曲線、CT値変化曲線及び画像特徴量が適宜、使用可能となっている。また、メモリ41の保存領域は、ワークステーション70内にあってもよいし、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。
ディスプレイ72は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ72は、処理回路74によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ72は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。また、ディスプレイ72は、表示部の一例である。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、ワークステーション70本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
入力インターフェース73は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路74に出力する。入力インターフェース73としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜使用可能である。なお、本実施形態において入力インターフェース73は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路74へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース73の例に含まれる。入力インターフェース73は、入力部の一例である。
処理回路74は、入力インターフェース73から出力される入力操作の電気信号に応じてワークステーション70全体の動作を制御する。例えば、処理回路74は、ハードウェア資源として、CPUやMPU、GPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。処理回路74は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより画像生成機能743、領域特定機能744、画像群取得機能745、位相特定機能746及び表示制御機能747等を実行する。なお、画像生成機能743、領域特定機能744、画像群取得機能745、位相特定機能746及び表示制御機能747は、前述した画像生成機能443、領域特定機能444、画像群取得機能445、位相特定機能446及び表示制御機能447と同様の機能である。また、各機能は単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。
画像生成機能743は、前述同様に、X線CT装置1のDAS18から出力された検出データに対して、前述した前処理を施したデータを生成する。なお、前処理前のデータ(検出データ)および前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。また、画像生成機能743は、このような投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。
また同様に、画像生成機能743は、入力インターフェース73を介して操作者から受け付けた入力操作に基づき、生成したCT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像データやボリュームデータに変換する。変換後の断層像データやボリュームデータは、例えば、モニタリング画像やボリューム画像としてディスプレイ72に表示される。
領域特定機能744は、前述同様に、被検体内で開閉動作を行う構造物を時系列に沿って一部に描画する複数時相の第1画像群に基づいて、構造物が存在する候補空間領域と、構造物が特定形状となる候補時相領域とを特定する。また同様に、領域特定機能744は、モーションマップ、面積・容積変化曲線又はCT値変化曲線に基づいて、候補時相領域を特定してもよい。前述同様に、領域特定機能744は、モーションマップ、容積変化曲線及びCT値変化曲線の少なくとも2つに基づく特定結果が重なった領域を求めることにより、一層絞り込んだ候補時相領域を特定してもよい。また同様に、領域特定機能744は、複数段階のモーションマップを用いることにより、一層絞り込んだ候補時相領域を特定してもよい。
画像群取得機能745は、前述同様に、第1画像群に対応する投影データのうち、候補空間領域及び候補時相領域の両者に対応する投影データのみを第1画像群の時間分解能よりも高い時間分解能で再構成処理することにより、複数時相の第2画像群を取得する。
位相特定機能746は、前述同様に、第2画像群に基づいて、特定形状を含む目標画像の位相を特定する。また同様に、位相特定機能746は、第2画像群の各々の画像と、予め設定されたデータとに基づいて、目標画像を特定し、目標画像の位相を特定してもよい。
表示制御機能747は、各機能による処理結果などのデータを表示するようにディスプレイ72を制御する。
なお、画像生成機能743、領域特定機能744、画像群取得機能745、位相特定機能746、表示制御機能747は、一つの基板の処理回路74により実装されてもよいし、複数の基板の処理回路74により分散して実装されてもよい。同様に、ワークステーション70は、単一のワークステーションにて複数の機能を実行するものとして説明したが、複数の機能を別々のワークステーションが実行することにしても構わない。
通信インターフェース75は、有線、無線又はその両方にてX線CT装置1との間でデータ通信を行う回路である。
他の構成は、第1乃至第3の各実施形態及び変形例と同様である。
以上のような構成によれば、領域特定機能744、画像群取得機能745及び位相特定機能746がX線CT装置1とは別体の装置であるワークステーション70に設けられる。当該構成により、ワークステーション70において、第1乃至第3の各実施形態等の作用効果を同様に得ることができる。
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、被検体内で開閉動作を行う構造物を時系列に沿って一部に描画する複数時相の第1画像群に基づいて、当該構造物が存在する候補空間領域と、当該構造物が特定形状となる候補時相領域とを特定する。また、第1画像群に対応する投影データのうち、候補空間領域及び候補時相領域の両者に対応する投影データのみを当該第1画像群の時間分解能よりも高い時間分解能で再構成処理することにより、複数時相の第2画像群を取得する。さらに、第2画像群に基づいて、当該特定形状を含む目標画像の位相とを特定する。従って、ユーザの操作と必要なリソースとを低減しつつ、構造物が特定形状となる位相を特定することができる。
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブル論理デバイス等の回路を意味する。プログラマブル論理デバイスには、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)等がある。「CPU」は、「Central Processing Unit」の略語である。「GPU」は、「Graphics Processing Unit」の略語である。「ASIC」は、Application Specific Integrated Circuit」の略語である。「SPLD」は、「Simple Programmable Logic Device」の略語である。「CPLD」は、「Complex Programmable Logic Device」の略語である。「FPGA」は、「Field Programmable Gate Array」の略語である。この種のプロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリにプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1又は図15における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。