以下、本発明に係るウェーハのエッジトリミング加工装置の一実施例を、図面を用いて説明する。図1は、エッジトリミング加工装置10の一実施例の概略上面図であり、図2は、図1に示すエッジトリミング加工装置10が備える研削装置16の正面図である。本実施例のエッジトリミング加工装置10は、同一の研削装置16を2組備えている。
エッジトリミング加工装置10は、供給回収部14、測定・アライメント部22、2台の研削装置16、洗浄・乾燥部20、および搬送手段24を備えている。なお図示を省略したが、これら各部14、22、16、20および手段24を制御する操作パネルや制御装置も有している。
供給回収部14は、エッジトリミング加工する貼り合わせウェーハWをウェーハカセット30から測定・アライメント部22および加工部19側へ供給するとともに、エッジトリミング加工された貼り合わせウェーハWを加工部19側からウェーハカセット30、31に回収する。本実施例の供給回収部14は、3台のウェーハカセット30、1台のウェーハ供給回収ロボット34を備える測定搬送部12、および1台のリジェクト用ウェーハカセット31を備える。
測定搬送部12は、カセットテーブルにセットされた各ウェーハカセット30から、貼り合わせウェーハWを1枚ずつ取り出して測定・アライメント部22に供給する。それとともに、エッジトリミング加工が終了した貼り合わせウェーハWを測定・アライメント部22からウェーハカセット30、31に収納する。その際、測定・アライメント部22で仕様を満たさずNGであった貼り合わせウェーハWはリジェクト用ウェーハカセット31に、仕様を満たす貼り合わせウェーハWはウェーハカセット30に収納する。供給回収ロボット34は、例えば3軸回転型の搬送アームであり、吸着パッドで貼り合わせウェーハWの表面を真空吸着して貼り合わせウェーハWを保持する。測定搬送部12は、例えば基部が円運動可能な構造になっており、基部が円の外周を移動することで、各ウェーハカセット30、31と測定・アライメント部22へ貼り合わせウェーハWを供給および回収できるようになっている。一方、各ウェーハカセット30、31と測定・アライメント部22は、測定搬送部12側に開口して、貼り合わせウェーハWを受入れ、取り出すことを可能にしている。
測定・アライメント部22は、エッジトリミング加工する貼り合わせウェーハWの厚さや以下に詳細を説明する貼り合わせウェーハWの中心位置を計測する。測定・アライメント部22は、測定テーブル50、厚さセンサ52、外径測定装置54および選択的にエッジ形状検出センサを備える。測定テーブル50は、その中心軸周りに貼り合わせウェーハWを回転させる。エッジ形状検出センサ56(不図示)はレーザセンサであり、貼り合わせウェーハWの外周エッジ形状やノッチが形成されている場合にノッチを検出する。
2台の研削装置16は、エッジトリミング加工装置10の正面部に並列して配置されており、それぞれ、貼り合わせウェーハWの外周エッジトリミング加工を2段階に実行する。2台の研削装置16は互いに同一の構成であり、貼り合わせウェーハWを所定位置に位置決めするための研削テーブル60とスピンドル62から構成される。
洗浄・乾燥部20は、エッジトリミング加工後の貼り合わせウェーハWを洗浄し、その後貼り合わせウェーハWを乾燥させる。洗浄テーブル82に保持した貼り合わせウェーハWを回転させながら、貼り合わせウェーハWの表面に洗浄液を噴射して、貼り合わせウェーハWの表面に付着した汚れを剥離除去する、例えばスピン洗浄装置を備える。また、洗浄液を除去するための図示しない乾燥手段を備える。
搬送手段24は、研削装置16で加工を終えた貼り合わせウェーハWを、洗浄・乾燥部20に搬送および回収する。回収された貼り合わせウェーハWは、再加工するために研削装置16に戻される、または最終形状チェックおよび割れや欠け等の製品チェックをするために測定・アライメント部22へ搬送される。測定・アライメント部22で形状チェックや製品チェックをする場合には、搬送手段24は研削装置16の背面空間66を通って、研削加工後の貼り合わせウェーハWを測定・アライメント部22へ搬送する。
次に、図1のA部に示した本発明の特徴的部分である研削装置16の構成について、図2を用いて説明する。2台の研削装置16の構成は同じであるから、図1のA部についてのみ説明するが、他方の研削装置16も同様である。
研削装置16Aは、貼り合わせウェーハWを載置する研削テーブル60と砥石152を搭載したスピンドル62を備える。本実施例では、研削テーブル60はX―Y平面内を移動可能であり、スピンドル62はX―Y平面内に、その位置が固定されている。従って貼り合わせウェーハWの外周加工であるエッジトリミング加工をする場合には、研削テーブル60とともに貼り合わせウェーハWを移動させて、スピンドル62上の砥石152に接近させる。
研削テーブル60は、ベース141上に載置されたX軸ベース121、2本のX軸ガイドレール122、4個のX軸リニアガイド123、ボールスクリューとサーボモータで構成されたX軸駆動手段125により、図2のX方向に移動されるXテーブル124を有して、X軸駆動機構220を構成する。Xテーブル124上には2本のY軸ガイドレール126が載置され、4個のY軸リニアガイド127、図示しないボールスクリューとサーボモータから構成されるY軸駆動手段、およびY軸駆動手段によりX方向に直交するY方向に移動されるYテーブル128とともに、Y軸駆動機構230を構成する。
Yテーブル128の上部には、2本のZ軸ガイドレール129と、図示しない4個のZ軸リニアガイドにより案内され、Z軸駆動手段130によって図2のZ方向に移動されるZテーブル131が組み込まれている。Zテーブル131は、ボールスクリュー及びステッピングモータを備えるZ軸駆動手段130によって図2のZ方向に移動される。Z軸駆動手段130等は、Z軸駆動機構240を構成する。Zテーブル131には、θ軸モータ132、θスピンドル133が組み込まれている。θスピンドル133の一端側には、貼り合わせウェーハWを吸着載置するウェーハテーブル134が取り付けられている。
ウェーハテーブル134は、回転中心Og(図6参照)を中心として図2のθ方向に回転する。ウェーハテーブル134の上面には、図1に示した搬送手段24が配設可能であり、搬送手段24の先端には下向きに吸着パッドが取り付けられる。吸着パッドは真空源と連通し、エッジトリミング加工される貼り合わせウェーハWが載置されて吸着固定される。研削テーブル60が、貼り合わせウェーハWを図2のθ方向に回転させるとともに、X、Y、及びZ方向に、所定位置まで移動させる。スピンドル62では、基台150内にACサーボモータ151が固定収容され、ダイレクトドライブ方式で、例えば回転速度500rpm(約8.3Hz)で回転される。
ところで、本実施例で使用する貼り合わせウェーハWは、前工程で実質的に同一形状の2枚のシリコンウェーハW0を貼り合わせて形成されている。各シリコンウェーハW0は、例えば直径300mm、厚さ0.6~1.0mm程度の12インチウェーハWであり、接着剤等の接着手段で貼り合わされる。具体的な貼り合わせにおいては、2枚のウェーハW0を積層し、積層された2枚のウェーハW0、W0間に接着手段を塗布する。このとき、2枚のウェーハW0の積層における位置ずれ、および接着手段が固化する際に接着力の局所的不均一を発生して生じる位置ずれ等により、微視的には、実質的に同一のウェーハW0の中心位置O1、O2が互いに異なってくる。
貼り合わせウェーハWの貼り合わせ時には、2枚のウェーハWba、Wboの間に中心位置間で、例えば0.5mmの中心位置Oba、Oboの誤差を許容している。後工程で、中心位置間の位置誤差を考慮せずにチップへの切断等を実行すると、有効なチップ領域が変化しているので、絶縁不良等の不具合を生じる恐れがあり、何らかの対応が必要になる。
そこで、貼り合わせ時の位置ずれがチップへの切断に影響しないよう、貼り合わせ工程が済んだ後に、貼り合わせウェーハWの周縁部に形成される、接着不全部のような不要部の除去とともに位置ずれを補償するエッジトリミング加工を実施する。例えば、エッジトリミング加工では、貼り合わせウェーハWで下側に位置するベースウェーハWbaを基準にして、外周部に半径方向長さで約1~7mm、高さ方向に上側に位置するボンドウェーハWboの全高とベースウェーハWbaの貼り合わせ面からの厚さを含めて、100μm程度の厚さをエッジトリミング加工することが求められる。
次に、エッジトリミング加工前に図1の測定・アライメント部22で実施する、貼り合わせウェーハWの外径測定方法およびその測定結果に基づく貼り合わせウェーハWの加工中心位置の求め方について、図3ないし図6を用いて説明する。図3は、測定・アライメント部22に配設された外径測定装置54の模式図であり、同図(a)はその斜視図、同図(b)は側面図である。
測定・アライメント部22には、測定テーブル50が配設されており、ウェーハ供給回収ロボット34により搬送された貼り合わせウェーハWが載置されている。この状態では、貼り合わせウェーハWは測定テーブル50のほぼ中心に配置されてはいるものの、正確な加工中心には位置していない。上述したように、ベースウェーハWbaとボンドウェーハWboは正確には位置が一致していないので、エッジトリミング加工において意図しないウェーハ領域、特にボンドウェーハWboのチップ形成面の研削を防止するため、ベースウェーハWbaの中心である正確な加工中心Oboを求める。
貼り合わせウェーハWは、ワイヤカット等でスライスされた2枚のシリコンウェーハWbo、Wbaを貼り合わせて形成されているので、その表面性状は鏡面に近く、またガラス基板のように光を透過することもない。そこで、貼り合わせウェーハWの外径を、光学的に光が透過(または通過)する部分と通過せずに反射する部分との対比で求める。その際、光がボンドウェーハWboの上面で反射したのか、ベースウェーハWbaの上面で反射したのかは、判定できない。どの面で反射したかは、図示しない形状観察手段または可視カメラ等で判断する。
貼り合わせウェーハWの外径測定装置54は、測定テーブル50の外周部に配設されている。外径測定装置54は、ベース328上に立設された支柱322の長手方向中間部に間隔を置いて保持された2つの保持材324、326を備える。2つの保持材324、326を、ほぼ測定テーブル50の半径方向に一致するように配置する。一方の保持材324が他方の保持材326に面する側には、測定テーブル50の半径方向に一致するように配置された1個または複数の光源310が配設されている。他方の保持材326が一方の保持材324に対向して面する側には、光源310に対応して複数のセンサを有するラインセンサ312が配設されている。ラインセンサ312も、ほぼ測定テーブル50の半径方向に一致するように配置されている。光源310とラインセンサ312は、制御部350に接続されており、ラインセンサ312が検出した検出光から、貼り合わせウェーハWを構成するベースウェーハWbaの中心および外径φDの分布を演算する。
光源310からは、ラインセンサ312に向けて下向きに平行光が放射され、ボンドウェーハWboとベースウェーハWbaの少なくともいずれかの上面で光路を遮られる放射光304と光路を妨げられること無くラインセンサ312に到達する放射光302とが発生する。測定テーブル50を中心軸50a周りに連続回転させ、この2種の放射光304、302の境界を連続して検出することで、貼り合わせウェーハWの輪郭が検出される。検出された輪郭に基づいて、現在の回転中心(測定テーブル50の回転中心)Oに対するベースウェーハWbaの位置Oba、および現在の回転中心Oに対応した貼り合わせウェーハWの外径(輪郭までの距離)が、測定テーブル50の回転角αに対して求められる。
ラインセンサ312の出力例を図4(a)に、この出力例に基づいて求めた現在の回転中心Oに対する貼り合わせウェーハWの外径(輪郭)の軌跡を図4(b)に示す。図4(a)において、横軸は測定テーブル50の回転角α(°)である。縦軸は、複数のセンサからなるラインセンサ312全体の出力(V)であり、光源310から放射された放射光の内のどの程度がラインセンサ312まで到達したか、逆に言えばどの程度が貼り合わせウェーハWで遮られたかを示す。ラインセンサの出力(V)は測定テーブル50の半径位置に対して予め構成されており、出力(V)が低いほど貼り合わせウェーハWの外径が大きく、出力(V)が高いほど貼り合わせウェーハWの外径が短いことを示す。
2枚のシリコンウェーハWbaとWboの位置が完全に一致して貼り合わせウェーハWが形成され、かつ完全に測定テーブル50の中心と貼り合わせウェーハWの中心が一致している場合には、出力は測定テーブル50の回転角αに対して一定となる。また2枚のシリコンウェーハWbaとWboが完全に一致して貼り合わせられていても、測定テーブル50に対して変位して載置されていると、測定テーブル50が1回転する間に極大部と極小部を各1個有する出力形状が得られる。一般的には、2枚のシリコンウェーハWbaとWboの位置は完全には一致せず、また位置調整していない場合には測定テーブル50の中心に貼り合わせウェーハWの中心を一致させるのも困難であるから、図4(a)に示すように、測定テーブル50が1回転する間に2個の極大部と2個の極小部を有する出力形状が得られる。
図4(a)に示した出力に基づき、貼り合わせウェーハWの外径(輪郭)を極座標表示して、図4(b)に示す。中心位置ずれを明確にするために、例えば呼び径(12インチウェーハならφ300)等を基準外径φRefとして、この基準外径φRefからのずれΔρを、開始位置からの角度αに対して1目盛、例えば50μmの図にプロットする。ここで、図4(b)の基準外径φRefは、図4(a)のV0に対応する。図4(a)からは、ひょうたん型の2個の円弧の組み合わせ形状が得られる。
次にこのように得られた極座標表示の図形から、貼り合わせウェーハを構成するベースウェーハWbaとボンドウェーハWboの中心位置Oba、Oboを求める演算方法を、図5を用いて説明する。図5は、図4(b)に対応する図である。なおこの演算において、ベースウェーハWbaとボンドウェーハWboのずれ位置関係は、他の方法により知られているものとする。例えば図5においては、左側の弧状部が外径測定装置54により検出されたベースウェーハWbaの輪郭であり、右側の弧状部がボンドウェーハWboの輪郭である。
左側の弧状部上の3点以上の複数の点を選び、その3点以上の点から輪郭線を円弧近似することにより半径ρの円弧とその中心位置が得られ、得られた中心位置がベースウェーハWbaの中心位置Obaとなる。同様にしてボンドウェーハWboの中心位置Oboも求められる。これにより、現在の回転中心Oから各ウェーハWbo、Wbaの中心位置Oba、Oboまでの位置ずれベクトルA、Bが求められる。従って、この位置ずれベクトルAの量だけ貼り合わせウェーハWの位置を移動させれば、ベースウェーハWbaの中心位置Obaを測定テーブル50の回転中心Oに一致させることができ、ベースウェーハWbaの中心Oba周りに貼り合わせウェーハWを回転させることができる(図6(c)参照)。これらの関係は、外径測定装置54が備える制御部350に記憶される。
得られたベースウェーハWbaの回転中心Obaに基づいて、貼り合わせウェーハWをエッジトリミング加工する詳細を、図6を用いて説明する。図6では、比較のために貼り合わせウェーハWについての従来のエッジトリミング方法も示す(図6(d)、(e)図)。なおこの図6においては、砥石152を貼り合わせウェーハWの周方向2カ所に一点鎖線で示しているが、図2から明らかなように、加工に用いる砥石152は1個である。貼り合わせウェーハWの周方向位置の違いによる加工の違いを示すために、参考までに相対位置関係を併せ記載している。
図6(a)に示すように、ウェーハカセット30から測定・アライメント部22へ供給回収ロボット34を用いて搬送された貼り合わせウェーハWは、測定テーブル50の回転中心Oとは位置ずれして測定テーブル50上に載置される。この状態で、図4、5に記載した方法により、外径測定装置54を用いて貼り合わせウェーハWの輪郭を測定し、ベースウェーハWbaの中心位置Obaを求める。そして供給回収ロボット34を用いてウェーハテーブル134に載置する。その際図6(b)に示すように、ベースウェーハWbaの中心位置Obaと研削テーブルの回転中心Ogを、測定・アライメント部22の計測および演算結果を用いて一致させる。
接着剤を塗布して貼り合わせた貼り合わせウェーハWでは、外周部に塗布した接着剤が端部の隙間からはみ出てウェーハの接着面以外の面を汚染するのを防止する等の目的で、端部近傍では接着剤量を少なくしている。その結果、各ウェーハの外周縁部には接着剤が塗布されていない貼り合わせ面が形成される場合がある。接着剤が無い部分はウェーハ同士が貼り合わされておらずチップを形成できないので、予めそのようなチップを形成できない領域の発生を見込んでエッジトリミング加工している。上述したように、チップを形成できない領域として各ウェーハの外周部から半径方向に1~7mmを見込んで、貼り合わせウェーハWの外周を研削している。本実施例では、この接着が不完全な領域として見込んだ範囲に、貼り合わせウェーハWを構成する上下2枚のウェーハの不完全重なり部、すなわち重なっていない部分を含めて加工することにより、エッジトリミング加工時に、予期したより過大な切り込み量の研削が発生するのを防止する。
そこで、本発明では研削加工工程を2段階で実施する。第1段階は、図6(b)に示す加工状態であり、第2段階は図6(c)に示す加工状態である。第1段階の加工状態では、外径測定装置54で検出されたボンドウェーハWboのはみ出し部を研削する。貼り合わせウェーハWを測定・アライメント部22に搬送し、詳細を後述する貼り合わせウェーハWの加工中心O1がウェーハテーブル134の回転中心Ogに一致するようアライメントする。アライメントされた貼り合わせウェーハWは、加工部19側へ移される。その後、図2に示すスピンドル62側へ研削テーブル60を近づけるY軸切り込みを実行する。なお、スピンドル62に取付けた砥石152は、例えば直径200mmの800番の金属砥石である。
Y軸切り込みを実行する前に、研削テーブル60が備えるZ軸駆動機構240を用いて、砥石152の高さを調整する。具体的には、貼り合わせウェーハWを構成するボンドウェーハWboとベースウェーハWbaの貼り合わせ界面に、砥石152の底面を一致させる。その後、Y軸切り込みにおいて、貼り合わせウェーハWの外周方向から中心部へ向けて水平方向に研削テーブル60を移動させる。このときの切り込み量と貼り合わせウェーハWの加工中心O1について、以下に詳述する。
第1段階の研削加工工程では、貼り合わせウェーハWのエッジトリミング加工後に求められる目標形状を超えて研削されることが無い範囲で、ボンドウェーハWboがベースウェーハWbaからはみ出た部分を取り除く。その際、トリミング幅(貼り合わせウェーハWの半径方向における長さ)は、貼り合わせウェーハWを測定・アライメント部22で測定した際に検出された、貼り合わせウェーハWの外径の最大値と最小値を用いて決定される。貼り合わせウェーハWの外径の最大値は、ベースウェーハWbaの外径にボンドウェーハWboのはみ出し部長さを加えた値である。また最小値は貼り合わせウェーハWを構成する各ウェーハWba、Wboの外径である。この最大値から貼り合わせウェーハWの外径の最小値を減算して差分を取り、目標値(初期設定値)と平均した値の幅(トリミング幅)だけ、エッジトリミング加工する。
エッジトリミング加工幅が決定したので、ボンドウェーハWboの中心位置Oboからトリミング幅の1/2だけ外径の最大値側へ加工中心位置O1をオフセットする。これによりボンドウェーハWboの最大はみ出し部分はベースウェーハWbaの輪郭に沿って面位置となり、一方ベースウェーハWbaだけがありボンドウェーハWboが貼り合わされていない最大未重なり部では、ボンドウェーハWboの加工代はゼロとなる。したがって、貼り合わせウェーハWに第1段階のエッジトリミング加工を施した後の形状は、上方から見て、真円形状のベースウェーハWbaにこのベースウェーハWbaより僅かに小径のボンドウェーハWboが載っており、全体としてはベースウェーハWbaの外径に沿った真円形状の輪郭を示す。
次に図6(c)に示すように、第2段階の研削加工工程を実行する。第2段階の研削加工工程を実行する前に、再び測定・アライメント部22へ第1段階の研削加工工程を終えた貼り合わせウェーハWを搬送する。そして、ウェーハテーブル134の回転中心Ogと貼り合わせウェーハWを構成するベースウェーハWbaの中心位置Obaが一致するようにアライメントする。アライメント終了後は、加工部19側に貼り合わせウェーハWを移し、その後、図2に示すスピンドル62側へ研削テーブル60を近づける。
第2段階の研削加工工程では、砥石152の切り込み深さは、ベースウェーハWbaの一部も含む、エッジトリミング加工で求められる所定切り込み深さである。第2段階の研削加工においても、実質的に水平方向から砥石152に貼り合せウェーハWを接近させるY軸切り込みを実行する。すなわち、砥石152の底面をボンドウェーハWboの上面から深さtだけ下がった位置に位置決めし、研削テーブル60をY軸方向に移動し、ボンドウェーハWboとベースウェーハWbaとを同時に加工する。
第2段階の研削加工工程後には、ボンドウェーハWboの中心位置OboがベースウェーハWbaの中心位置Obaに対して位置ずれしている量だけ、最大加工幅Δl1と最小加工幅Δl2の間に差が生じる。しかしながら、ベースウェーハWbaの回転中心Obaを中心に貼り合わせウェーハWを回転させてエッジトリミングしているので、ベースウェーハWbaが過大に研削される恐れは無い。逆に言えば、ベースウェーハWbaのチップ形成範囲に影響を及ぼすこと無く、設計加工径φDdesまたはそれに最も近似した許容最大範囲が残るように、貼り合わせウェーハWの外周部をエッジトリミング加工できる。
一方、従来のエッジトリミング方法は、貼り合わせウェーハWがウェーハカセット30から測定・アライメント部22へ供給回収ロボット34を用いて搬送される点では、本発明と同じである。その場合、図6(a)に示すように、貼り合わせウェーハWが、測定テーブル50の中心Oとは位置ずれして測定テーブル50上に載置される点も本発明と同じである。
しかしながら、従来のエッジトリミング方法では、図6(d)に示すように、測定・アライメント部22で貼り合わせウェーハWの輪郭を検出した後、検出した輪郭から最大直径となる位置を求め、その直径の中点をウェーハテーブル134の回転中心Ogに合わせていた。すなわち、ベースウェーハWbaの中心ObaとボンドウェーハWboの中心Oboの中間点を貼り合わせウェーハWの中心Oとして、ウェーハテーブル134の回転中心Ogに合わせていた。そしてこの位置を中心にして、貼り合わせウェーハWを回転させている。その際、砥石152の切り込み深さを設計切り込み深さであるtに、半径方向切り込み量を設計加工径φDdesが残る量に設定している。その後、ボンドウェーハWboの全厚さとベースウェーハWbaの貼り合わせ面から一部の高さまでの研削を、一度の研削加工で実施している。
研削加工終了後には、図6(e)に示すように、最大加工幅Δl1と最小加工幅Δl2を有して設計加工径φDdesが得られる。しかしながら、最大加工幅Δl1部では、ベースウェーハWba側で、貼り合わせウェーハWの種類ごとに設定された貼り合わせ不全部を含む不要部の除去範囲1~7mmを超えて、エッジトリミング加工される恐れがあった。つまり、ベースウェーハWbaでは、チップ形成に影響を及ぼす部分まで研削される恐れがあり、その場合、半導体チップ製作における歩留まりの低下をもたらす。これに対して、本発明によるエッジトリミング方法では、ベースウェーハWbaを基準にした第2段階の研削加工を実行するので、ベースウェーハWbaが許容範囲を超えて研削加工される恐れが無い。
次に、上記貼り合わせウェーハWのエッジトリミング加工方法に関する手順を、図7にフローチャートで示す。図1も参照する。ステップS710において、供給回収部14のウェーハカセット30内に収容されている貼り合わせウェーハWを、測定搬送部12を用いて測定・アライメント部22に搬送する。測定・アライメント部22では外径測定装置54等を用いて貼り合わせウェーハWの輪郭を検出した後、貼り合わせウェーハWを構成する各ウェーハWba、Wboの中心位置Oba、Oboを演算する。貼り合わせウェーハWについて第1段階の研削加工を実施するために、演算して求めた中心位置Oba、OboおよびボンドウェーハWboのはみ出し位置とはみ出し量に基づき、貼り合わせウェーハWの回転中心位置O1を求めてアライメントする(ステップS720)。アライメントされた貼り合わせウェーハWの回転中心位置O1を研削テーブル60の中心位置に一致させ、貼り合わせウェーハWを真空吸着して保持する(ステップS730)。
研削テーブル60のX、Z軸駆動機構220、240を駆動してスピンドル62に取付けた砥石152と加工方向および加工高さを一致させ、研削テーブル60のY軸駆動機構230を用いて、第1段階の研削加工工程を所定切り込み量だけ、Y軸切り込みで実行する(ステップS740)。上述したように、この第1段階の研削加工工程ではボンドウェーハWboの外周部のみ研削加工する。第1段階の研削を終了したら、搬送手段24を用いて洗浄・乾燥部20へ貼り合わせウェーハWを搬送し、洗浄・乾燥する(ステップS750)。
その後、搬送手段24を用いて、貼り合わせウェーハWを測定・アライメント部22へ搬送する。測定・アライメント部22では、第2段階の研削加工工程、すなわち最終エッジトリミング加工を実行するために、貼り合わせウェーハWのベースウェーハWbaの中心位置Obaがウェーハテーブル134の回転中心Ogに一致するようにアライメントする(ステップS760)。アライメントされた貼り合わせウェーハWは、測定搬送部12の供給回収ロボット34を用いて研削テーブル60にアライメントされて載置され、真空吸引により保持される(ステップS770)。
研削テーブル60のX、Z軸駆動機構220、240を駆動してスピンドル62に取付けた砥石152と加工方向および加工高さを設定方向および設定高さに一致させ、研削テーブル60のY軸駆動機構230を用いて、第2段階の研削加工工程を所定切り込み量だけ、Y軸切り込みで実行する(ステップS780)。この第2段階の研削加工では、ボンドウェーハWboだけでは無く、ベースウェーハWbaも高さ方向に一部、外周部を研削加工する。
第2段階の研削加工工程が終了したら、エッジトリミング加工が終了したので、研削加工後の貼り合わせウェーハWを、再び搬送手段24を用いて洗浄・乾燥部20へ搬送し、洗浄・乾燥する(ステップS790)。
洗浄・乾燥終了後に、搬送手段24を用いて、貼り合わせウェーハWを供給回収部14のウェーハカセット30内に収納する(ステップS800)。なお、ウェーハカセット30内に収納する前に、測定・アライメント部22で貼り合わせウェーハWの欠けや割れ等をチェックして、不具合が生じている物をリジェクト用ウェーハカセット31に収容するようにしても良い。
上記実施例では、シリコンウェーハとシリコンウェーハを貼り合わせた貼り合わせウェーハについて説明したが、不透明材料製のウェーハ同士を貼り合わせて貼り合わせウェーハが形成されていれば、他の種類の貼り合わせウェーハであっても本発明を適用できることは言うまでも無い。また、上記実施例では2枚のシリコンウェーハの直径を同一にしているが、ベースウェーハWbaに比べてボンドウェーハWboの直径が僅かに小さいような貼り合わせウェーハWまたはその逆にも適用できる。