本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
以下に説明する実施の形態においては、車両から回収された使用済みの組電池の再利用を行なう。組電池は、複数のモジュールを含んで構成される。組電池を構成する複数のモジュールは、互いに直列に接続されていてもよいし、互いに並列に接続されていてもよい。複数のモジュールの各々は、電気的に接続(たとえば、直列接続)された複数のセル(単電池)を含む。組電池を構成する各セルとしては任意の二次電池を採用可能であるが、以下では、車載バッテリの代表的な例として、リチウムイオン電池及びニッケル水素電池について主に説明する。
組電池の「再利用」は、全てのセルの再利用(以下、「全部再利用」とも称する)と、部分的なセルの再利用(以下、「部分再利用」とも称する)と、資源リサイクルとに大別される。部分再利用は、パーツ利用と、リビルトとに、さらに大別される。
全部再利用では、車両から回収された組電池が、適切な性能回復処理及び所定の性能検査を経て、セルの交換を行なうことなく再利用される。
部分再利用では、車両から回収された組電池が所定のリユース単位(たとえば、モジュール又はセル)に解体される。これにより、複数のリユース単位が得られる。
パーツ利用では、組電池の解体によって得た上記複数のリユース単位に所定の出荷検査を行ない、出荷検査を通過したリユース単位が出荷される。
リビルトでは、組電池の解体によって得た上記複数のリユース単位のうち再利用可能なリユース単位を用いて、組電池が製造される。たとえば、再利用可能な複数のリユース単位を組み合わせて、新たな組電池が製造される。あるいは、組電池の一部が再利用可能なリユース単位に交換されて、組電池が再構築される。こうして製造された組電池(すなわち、リビルト品)は出荷検査を経て出荷される。
資源リサイクルでは、車両から回収された組電池が電池材料に分解され、組電池から再生可能な材料が取り出される。
図1は、本開示の実施の形態における、電池パックの回収から製造・販売までの物流の一態様を示す図である。以下では、図1に示される物流の態様を「電池物流モデル」と称する。
図1を参照して、この電池物流モデルは、電池管理業者30(以下、単に「管理業者30」とも称する)、電池パック製造業者34(以下、単に「製造業者34」とも称する)、販売店35、リサイクル業者36、及び以下に説明する電池管理システムによって構築される。
図2は、この実施の形態に係る電池管理システムにおいて構築される通信ネットワークの例を示す図である。図2を参照して、電池管理システム1は、車両10と、管理サーバ20と、端末40,44,45と、通信ネットワーク50とを含む。車両10、管理サーバ20、及び端末40,44,45は、通信ネットワーク50を介して互いに通信可能に構成される。通信ネットワーク50は、インターネットと基地局とによって構築されるネットワークであってもよい。通信ネットワーク50は基地局51を含む。車両10は、通信ネットワーク50の基地局51と無線通信によって情報の授受が可能に構成される。図2には1台の車両10のみを図示しているが、電池管理システム1には、複数の車両(たとえば、図1に示す車両60-1,60-2,60-3,・・・)が含まれる。管理サーバ20は、予め登録された全ての車両と通信可能に構成される。端末40、44、45は、それぞれ図1に示される管理業者30、製造業者34、販売店35の端末である。
図1に示される管理業者30は、車両60-1,60-2,60-3,・・・から使用済みの電池パックを回収する。車両60-1,60-2,60-3,・・・は、それぞれ電池パック62-1,62-2,62-3,・・・を搭載しており、各電池パックは、複数のモジュールから構成される組電池を含んで構成される。管理業者30は、車両10から回収された使用済みの電池パックを販売店35から受け取ってもよい。
図3は、管理業者30が車両から電池パックを回収した後に行なう作業の一例を示すフローチャートである。
図1及び図2とともに図3を参照して、管理業者30は、ステップ(以下、単に「S」とも表記する)11において、車両から回収した電池パックから組電池を取り出し、組電池を解体してリユース単位を回収する。リユース単位は、セルであってもよいし、いくつかのセルが纏められたモジュールであってもよい。この実施の形態では、リユース単位をモジュール(MDL)とする。
S12では、管理業者30が、上記組電池の解体によって得た複数のリユース単位(すなわち、複数のモジュール)の各々の残存放電を行なう。これにより、リユース単位の各セルは、空状態(すなわち、実質的に電気を蓄えていない状態)になる。
S13では、管理業者30が、上記残存放電が行なわれた複数のリユース単位(すなわち、複数のモジュール)を所定の保管場所(たとえば、後述する図4に示す保管庫500)に保管する。管理業者30は、保管するモジュール毎に当該モジュールを特定するためのID(以下、「M-ID」とも称する)を付与する。端末40においては、管理業者30が保管する各モジュールの情報がM-IDと紐付けられて管理されている。管理業者30は、端末40を用いてM-ID及びモジュール情報を管理サーバ20へ送信する。なお、図1には管理業者30のみを示しているが、電池管理業者は拠点ごとに存在する。各拠点の電池管理業者が管理するモジュール情報は、各拠点の電池管理業者から管理サーバ20に集約される。管理サーバ20は、各拠点の電池管理業者が管理するモジュール情報を拠点ごと(すなわち、電池管理業者ごと)に区別して一括管理している。
上記S11~S13は、車両ごとに行なわれる。これにより、複数のモジュールが空状態(すなわち、実質的に電気を蓄えていない状態)で保管される。複数の車両の各々から回収した複数のモジュールを空状態で保管することによって保管中のモジュール劣化を抑制することができる。管理業者30は、上記S12の前に、回復可能な電池の性能低下(たとえば、ハイレート劣化又は付属部品の不良)を回復するための処理(すなわち、性能回復処理)を上記リユース単位に施してもよい。性能回復処理は、ハイレート劣化を回復させるための充電又は放電であってもよいし、付属部品の交換であってもよい。
再び図1及び図2を参照して、管理業者30は、保管中のリユース単位(この実施の形態では、モジュール)の性能検査を行ない、検査結果に応じてリユース単位を分別する。この実施の形態では、性能検査として、満充電容量の推定が行なわれる。リユース単位の分別によって、リユース単位の用途が決定される。用途の分け方は任意であり、たとえば、パーツ利用/リビルト/資源リサイクルのような分け方であってもよいし、自動車用電池/定置用電池のような分け方であってもよい。また、自動車用電池をさらに大型車用電池/小型車用電池のように分類してもよいし、定置用電池をさらに家庭用電池/ビル用電池/店舗用電池/工場用電池のように分類してもよい。定置用電池は、再生可能エネルギー(たとえば、太陽エネルギー)の需給調整に利用されてもよい。
管理業者30によって「資源リサイクル」に分別されたリユース単位(この実施の形態では、モジュール)は、管理業者30からリサイクル業者36へ送られる。リサイクル業者36は、管理業者30から受け取ったリユース単位を電池材料に分解することにより、新たなセル又はその他製品の原料として利用するための再資源化を行なう。
管理業者30によって「リビルト」に分別されたリユース単位(この実施の形態では、モジュール)は、管理業者30から製造業者34へ送られる。製造業者34は、管理業者30から受け取ったリユース単位を用いて組電池を製造するとともに、製造された組電池を電池パックに搭載する。さらに、製造業者34は、組電池に対して付属部品(たとえば、拘束板、センサ、及びリレー)を取り付けることにより、電池パックを完成させる。
製造業者34によって製造された組電池を含む電池パックは、製造業者34から販売店35へ送られる。販売店35は、電池パックを販売したり、電池パックを搭載した新車を販売したり、車両で使用された組電池のリビルト(再構築)の注文を受け付けたりする。
販売店35は、車両毎に当該車両を特定するためのID(以下、「車両ID」とも称する)を付与し、端末45において、各車両の情報を車両IDと紐付けて管理している。車両の情報には、各車両に搭載された通信機器の通信アドレスが含まれる。販売店35は、端末45を用いて車両ID及び各車両の情報を管理サーバ20へ送信する。なお、図1には販売店35のみを示しているが、販売店は拠点ごとに存在する。各拠点の販売店が管理する車両の情報は、各拠点の販売店及び各車両から管理サーバ20に集約される。管理サーバ20は、各拠点の販売店が管理する車両の情報を拠点ごと(すなわち、販売店ごと)に区別して一括管理している。
図1に示される電池物流モデルにおいて、電池パックの不調を感じた車両10のユーザが、販売店35に車両10を持ち込んで電池パックの修理を依頼した場合には、たとえば次のような手順で電池パックの修理が行なわれる。
車両10のユーザは販売店35へ車両10を引き渡す。販売店35は、車両10に車両IDを付与する。ただし、すでに車両10に車両IDが付与されている場合には、車両IDの付与は省略される。販売店35は、車両10に搭載された組電池について全部再利用が可能か否かを判断する。
全部再利用が可能と判断された場合には、販売店35は、セルの交換を行なうことなく、性能回復処理によって組電池を回復させる。性能回復処理が施された組電池は、性能検査を経て、車両10に搭載される。
全部再利用が不可能と判断された場合には、販売店35は、組電池のリビルトを製造業者34に発注する。この際、販売店35は、車両10から回収した電池パックを車両IDとともに製造業者34へ送付する。製造業者34は、リビルトに必要なリユース単位(この実施の形態では、モジュール)を管理業者30に要求し、そのリユース単位を管理業者30から受け取る。そして、製造業者34は、受け取ったリユース単位を用いて組電池のリビルトを行なう。製造された組電池(すなわち、リビルト品)を含む電池パックは、車両10が持ち込まれた販売店35へ配送され、性能検査を経て、販売店35において車両10に搭載される。
図1では、管理業者30、製造業者34、及び販売店35を、互いに個別の業者としたが、業者の区分はこれに限定されるものではない。たとえば、管理業者30と製造業者34と販売店35とが一の業者であってもよい。
この実施の形態に係る電池管理システムは、管理業者30の拠点に設置される。電池管理システムは、二次電池の情報を管理するように構成される。詳細は後述するが、この実施の形態に係る電池管理システムは、学習済みニューラルネットワークを用いて、二次電池の満充電容量を推定するように構成される。図4は、この実施の形態に係る電池管理システムの概要を示す図である。
図1及び図2とともに図4を参照して、この実施の形態に係る電池管理システムは、二次電池の情報を取得する分析装置と、二次電池を保管する保管庫500とを備える。分析装置は、測定装置100と、電池管理装置200と、電源装置510と、充放電器520と、センサモジュール530とを含んで構成される。この実施の形態では、測定装置100、電源装置510、充放電器520、及びセンサモジュール530が保管庫500内に設置され、電池管理装置200が保管庫500の外側に設置されている。電池管理装置200は、たとえば図2に示した端末40に搭載される。保管庫500内には、さらに、複数の自動放電装置540と、温度管理装置550とが設置されている。
電源装置510は、充放電器520と複数の自動放電装置540との各々と電気的に接続されている。また、電源装置510は、蓄電装置を含む。管理業者30は、図3のS12において、車両から回収されたモジュールMを自動放電装置540にセットする。この作業は、ユーザが自ら行なってもよいし、電池管理装置200からの指示又は所定のプログラムに従ってロボットが行なってもよい。自動放電装置540は、モジュールMがセットされると、自動的にモジュールMの残存放電(すなわち、モジュールMが空状態になるまでの放電)を行なうように構成される。各自動放電装置540にセットされた各モジュールMから放電される電力は電源装置510へ出力され、蓄電装置に蓄えられる。こうした構成によれば、図3のS12(残存放電)及びS13(電池保管)を同時に行なうこと(ひいては、工程時間を短縮すること)が可能になる。温度管理装置550は、保管庫500内の温度を測定しながら保管庫500内の温度を設定値に調整するように構成される。温度管理装置550は、保管庫500内の空気調和を行なうように構成されてもよい。保管庫500内の温度は、温度管理装置550によって所定の温度(たとえば、約25℃)に保たれる。
電源装置510は、充放電器520に電力を供給するように構成される。電源装置510は、電力系統(すなわち、電気事業者が提供する電力網)に接続され、電力系統から供給される電力に所定の電力変換を行ない、変換後の電力を充放電器520へ供給するように構成されてもよい。
管理業者30は、二次電池の出荷前に、分析装置によって二次電池の性能検査を行なう。管理業者30は、空状態で保管されている複数のモジュールMのうち、出荷予定のモジュールMD(対象電池)を充放電器520に接続する。この作業は、ユーザが自ら行なってもよいし、電池管理装置200からの指示又は所定のプログラムに従ってロボットが行なってもよい。充放電器520は、電源装置510から供給される電力を用いて、モジュールMDに対して定電流充電を行なうように構成される。より具体的には、充放電器520は、電源装置510から供給される電力を定電流充電に適した電力に変換し、変換された電力をモジュールMDへ供給することにより、一定の電流値でモジュールMDの充電を行なうように構成される。
充放電器520は、電源装置510からモジュールMDまでの電力経路の接続/遮断を切り替えるリレーと、電力変換回路と(いずれも図示せず)を含んで構成される。電力変換回路は、整流回路、PFC(Power Factor Correction)回路、絶縁回路(たとえば、絶縁トランス)、DC/DCコンバータ、インバータ、及びフィルタ回路の少なくとも1つを含んでもよい。充放電器520に含まれるリレー及び電力変換回路の各々は、測定装置100の制御装置110によって制御される。充放電器520は、制御装置110からの指示に従い、モジュールMDの充電を行なうように構成される。また、充放電器520は、制御装置110からの指示に従い、モジュールMDの放電を行ない、モジュールMDから出力される電力を電源装置510へ出力するように構成される。
センサモジュール530は、充放電器520に接続されたモジュールMDの状態(たとえば、電圧、電流、及び温度)を検出する各種センサを含み、検出結果を測定装置100へ出力する。センサモジュール530の出力は、測定装置100の制御装置110に入力される。制御装置110は、センサモジュール530の出力に基づいて、モジュールMDの状態(たとえば、温度、電流、電圧、SOC、及び内部抵抗)を取得することができる。
測定装置100は、制御装置110、記憶装置120、及び通信装置130を備える。電池管理装置200は、制御装置210、記憶装置220、通信装置230、入力装置240、及び表示装置250を備える。制御装置110及び210の各々としては、プロセッサ及びRAM(Random Access Memory)を含むマイクロコンピュータを採用できる。プロセッサとしては、CPU(Central Processing Unit)を採用できる。記憶装置120及び220の各々は、たとえばROM(Read Only Memory)及び書き換え可能な不揮発性メモリを含む。記憶装置120及び220の各々には、プログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、及び各種パラメータ)が記憶されている。なお、測定装置100及び電池管理装置200の各々が備えるプロセッサの数は任意であり、所定の制御ごとにプロセッサが用意されてもよい。
通信装置130及び230の各々は、所定の通信I/F(インターフェース)を含んで構成される。測定装置100と電池管理装置200とは、通信装置130及び230を介して、相互に通信可能に構成される。通信方式は有線及び無線のいずれであってもよい。
入力装置240は、ユーザからの入力を受け付ける装置である。入力装置240は、ユーザによって操作され、ユーザの操作に対応する信号を制御装置210へ出力する。たとえば、ユーザは、入力装置240を通じて、所定の指示又は要求を制御装置210に入力したり、パラメータの値を制御装置210に設定したりすることができる。通信方式は有線でも無線でもよい。入力装置240としては、各種ポインティングデバイス(マウス、タッチパッド等)、キーボード、又はタッチパネルを採用できる。また、入力装置240は、携帯機器(たとえば、ノートパソコン、スマートフォン、又はウェアラブルデバイス)の操作部であってもよい。
表示装置250は、制御装置210から入力される情報を表示するように構成される。制御装置210は、表示装置250を通じてユーザへ情報を報知することができる。表示装置250の例としては、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、タッチパネルディスプレイが挙げられる。表示装置250は、携帯機器の表示部であってもよい。表示装置250はスピーカ機能を備えていてもよい。
制御装置110は、充放電制御部111と、情報管理部112とを含む。これら各部は、たとえば、プロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムとによって具現化される。ただしこれに限られず、これら各部は、専用のハードウェア(電子回路)によって具現化されてもよい。
充放電制御部111は、充放電器520を制御することにより、充放電器520に接続されたモジュールMDの充電及び放電を制御するように構成される。この実施の形態では、充放電制御部111が、充放電器520を制御することによりモジュールMDの定電流充電を行ない、モジュールMDのCCV充電波形(すなわち、モジュールMDの定電流充電中のCCVの推移を示す波形)を取得するように構成される。情報管理部112は、センサモジュール530の検出結果を受信するように構成される。モジュールMDの定電流充電中において、センサモジュール530は、モジュールMDの電圧(すなわち、CCV)を逐次検出し、検出されたCCVを情報管理部112へ逐次出力する。情報管理部112には、上記CCV充電波形が入力される。この実施の形態では、電流値2Aの条件でモジュールMDの定電流充電が行なわれるように、充放電制御部111が充放電器520を制御する。これにより、モジュールMDの初期充電のCCV充電波形が、情報管理部112に入力される。なお、定電流充電の条件(たとえば、電流値)は、上記に限られず任意に設定できる。
情報管理部112は、センサモジュール530の出力に基づいて、リアルタイムでモジュールMDのCCVを検出するとともに、モジュールMDのCCVの推移を示すCCV充電波形を記憶装置120に記録する。情報管理部112は、CCV充電波形の取得が終了すると、記憶装置120に記録されたCCV充電波形を用いて、検査用画像データを作成し、作成された検査用画像データを記憶装置120に保存する。検査用画像データは、予め定められたピクセル数の領域にCCV充電波形が描かれた画像におけるピクセル毎の数値を示すデータであり、後述する学習済みニューラルネットワークの入力データに相当する。検査用画像データのグラフ書式及び画像フォーマットは、後述する学習用画像(図6参照)と同じである。この実施の形態に係る充放電制御部111、情報管理部112、電源装置510、充放電器520、及びセンサモジュール530は、本開示に係る「充電装置」の一例に相当する。この実施の形態に係る情報管理部112は、本開示に係る「第1作成装置」の一例に相当する。
制御装置210は、情報管理部211と、容量推定部212と、分別部213とを含む。これら各部は、たとえば、プロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムとによって具現化される。ただしこれに限られず、これら各部は、専用のハードウェア(電子回路)によって具現化されてもよい。
情報管理部211は、測定装置100からモジュールMDの検査用画像データを取得するように構成される。測定装置100の制御装置110は、たとえばユーザからの要求に応じて上記のようにモジュールMDの検査用画像データを作成し、作成された検査用画像データを、通信装置130及び230を介して制御装置210へ送信する。そして、制御装置110から制御装置210へ送信された検査用画像データを、情報管理部211が受信する。
容量推定部212は、モジュールMDについて取得された検査用画像データを学習済みニューラルネットワークの入力層に入力することにより、モジュールMDの満充電容量を推定するように構成される。学習済みニューラルネットワークは、記憶装置220に記憶されている。分別部213は、容量推定部212により推定されたモジュールMDの満充電容量を用いて、モジュールMDの用途を決定するように構成される。この実施の形態に係る容量推定部212、分別部213は、それぞれ本開示に係る「推定装置」、「分別装置」の一例に相当する。
図5は、ニューラルネットワークの学習について説明するための図である。図5を参照して、未学習ニューラルネットワークに適切な学習を行なうことによって、学習済みニューラルネットワークが得られる。この実施の形態では、管理業者30が、未学習ニューラルネットワークに教師あり機械学習を行なうことにより、学習済みニューラルネットワークを得る。この実施の形態において、未学習ニューラルネットワークは、汎用の機械学習アルゴリズムであり、学習済みニューラルネットワークは、二次電池の満充電容量を推定する推定モデルとして機能する。
ニューラルネットワークは、入力層xと隠れ層yと出力層zとを備える。入力層xには、学習用画像及び検査用画像データの各々が入力される。入力層xは、学習用画像(ひいては、検査用画像データ)のピクセル数に対応する数(N個)のノードを含んで構成される。出力層zのノード数は、必要な出力数に応じて決定される。たとえば、出力層zのノード数が101個であれば、出力層zは、0Ah~10Ahの範囲で0.1Ah刻みで満充電容量の推定結果を出力したり、15Ah~25Ahの範囲で0.1Ah刻みで満充電容量の推定結果を出力したり、0Ah~20Ahの範囲で0.2Ah刻みで満充電容量の推定結果を出力したりすることが可能になる。出力層zのノード数は任意に設定できるが、この実施の形態では、出力層zのノード数を71個とする。
本願発明者は、CCV充電波形及びCCV放電波形の各々と満充電容量とが相関することに着眼した。CCV充電波形は、二次電池の定電流充電中のCCVの推移を示すCCV波形である。CCV放電波形は、二次電池の定電流放電中のCCVの推移を示すCCV波形である。
教師データとして、二次電池のCCV充電波形を所定のグラフ書式及び画像フォーマットで表現した学習用画像(以下、「CCV充電波形の学習用画像」とも称する)と、正解データ(すなわち、二次電池の満充電容量の実測データ)とを用いて、未学習ニューラルネットワークに教師あり機械学習を行なうことによって、CCV充電波形の画像データ(より特定的には、CCV充電波形の学習用画像と同じグラフ書式及び画像フォーマットで表現された画像データ)を入力データとして高い精度で二次電池の満充電容量を推定できる学習済みニューラルネットワークが得られる。また、教師データとして、二次電池のCCV放電波形を所定のグラフ書式及び画像フォーマットで表現した学習用画像(以下、「CCV放電波形の学習用画像」とも称する)と、正解データ(すなわち、二次電池の満充電容量の実測データ)とを用いて、未学習ニューラルネットワークに教師あり機械学習を行なうことによって、CCV放電波形の画像データ(より特定的には、CCV放電波形の学習用画像と同じグラフ書式及び画像フォーマットで表現された画像データ)を入力データとして高い精度で二次電池の満充電容量を推定できる学習済みニューラルネットワークが得られる。
図6は、ニューラルネットワークの学習で用いられる学習用画像の一例を示す図である。図6に示される学習用画像は、予め定められたピクセル数の領域にCCV放電波形が描かれた画像におけるピクセル毎の数値(すなわち、画素値)を示すデータである。以下、CCV波形が描かれる上記領域を、「画像領域」とも称する。画像領域のピクセル数は、たとえば約12000である。画像領域の一例では、縦のピクセル数が約60、横のピクセル数が約200である。図6に示される学習用画像では、白黒の濃淡(白~黒)がグレースケールの256階調(0~255)で表わされている。画素値0は白を表わし、画素値255は黒を表わす。画像領域の各画素値は、0~255のいずれかの値をとり、ピクセルが黒に近づくほどピクセルの画素値は大きくなる。この学習用画像において、横軸は時間、縦軸はCCVを示しており、実測データ(たとえば、図4に示したセンサモジュール530の検出値)に近い位置のピクセルほど画素値は大きくなる。横軸における同一時刻のCCVは、たとえば2~3個のピクセルで表現される。こうしたグラフ書式及び画像フォーマットによれば、少ないピクセル数でも高い精度でCCV波形(すなわち、CCVの推移)を表現することができる。
上記では、図6に示したCCV放電波形の学習用画像の一例を参照して、学習用画像のグラフ書式及び画像フォーマットについて説明した。CCV放電波形の学習用画像とCCV充電波形の学習用画像とでは、画像領域に描かれるCCV波形が異なるだけで、グラフ書式及び画像フォーマットは同じである。このため、CCV充電波形の学習用画像の図示は省略する。
図7は、リチウムイオン電池について測定された4つのCCV充電波形(すなわち、定電流充電時のCCV波形)を示す図である。リチウムイオン電池の満充電容量は、リチウムイオン電池の劣化が進行するほど低下する。本願発明者は、初期容量21Ahの非水系電解液リチウムイオン電池を電動車両で使用して劣化させつつ、リチウムイオン電池の満充電容量が測定ポイント(20Ah、19Ah、18Ah、17Ah)まで劣化したタイミングでリチウムイオン電池のCCV充電波形を測定した。図7において、線L11、L12、L13、L14は、それぞれリチウムイオン電池の満充電容量が20Ah、19Ah、18Ah、17Ahになった時点で測定されたCCV充電波形を示している。図7に示されるように、CCV充電波形と満充電容量とは相関関係を有する。
図8は、リチウムイオン電池について測定された4つのCCV放電波形(すなわち、定電流放電時のCCV波形)を示す図である。本願発明者は、初期容量21Ahの非水系電解液リチウムイオン電池を電動車両で使用して劣化させつつ、リチウムイオン電池の満充電容量が測定ポイント(20Ah、19Ah、18Ah、17Ah)まで劣化したタイミングでリチウムイオン電池のCCV放電波形を測定した。図8において、線L21、L22、L23、L24は、それぞれリチウムイオン電池の満充電容量が20Ah、19Ah、18Ah、17Ahになった時点で測定されたCCV放電波形を示している。図8に示されるように、CCV放電波形と満充電容量とは相関関係を有する。
再び図5を参照して、前述した教師データを用いてニューラルネットワークの教師あり機械学習を行なうことにより、ニューラルネットワークの目標出力と実際の出力とが一致するように、入力層xと隠れ層yとの間の重み付けW1と、隠れ層yと出力層zとの間の重み付けW2とが調整される。教師信号による重み付けW1,W2の調整を繰り返すことによって、ニューラルネットワークの容量推定精度を高めることができる。
本願発明者は、初期容量7Ahのニッケル水素電池についてCCV充電波形の画像データから満充電容量を推定するように学習された学習済みニューラルネットワーク(以下、「第1学習済みNN」とも称する)と、初期容量21Ahの非水系電解液リチウムイオン電池についてCCV放電波形の画像データから満充電容量を推定するように学習された学習済みニューラルネットワーク(以下、「第2学習済みNN」とも称する)との各々について、以下に説明する方法で容量推定精度を評価した。
本願発明者は、各学習済みNNについて336個の評価用データを用意した。第1学習済みNNを評価するための評価用データとしては、初期容量7Ahのニッケル水素電池の、CCV充電波形の評価用画像及び正解データ(すなわち、満充電容量の実測値)を用意した。第2学習済みNNを評価するための評価用データとしては、初期容量21Ahの非水系電解液リチウムイオン電池の、CCV放電波形の評価用画像及び正解データ(すなわち、満充電容量の実測値)を用意した。本願発明者は、評価用画像を学習済みNN(すなわち、第1学習済みNN又は第2学習済みNN)に入力し、学習済みNNの出力値(すなわち、満充電容量の推定値)を得た。本願発明者は、学習済みNNの出力値と満充電容量の実測値との差の絶対値(以下、「絶対誤差」と称する)を算出した。本願発明者は、評価用データごとに絶対誤差を算出し、336個の絶対誤差を得た。本願発明者は、336個の絶対誤差のうち0.5Ah以下である絶対誤差の個数割合(以下、「評価結果A」とも称する)を求めた。さらに、336個の絶対誤差の平均値(以下、「評価結果B」とも称する)を求めた。上記評価では、2つの観点から学習済みNNの容量推定精度が評価される。評価結果Aが高いほど、また、評価結果Bが小さいほど、学習済みNNの容量推定精度は高いと評価される。
図9は、第1学習済みNNの評価結果を示す図である。図9を参照して、第1学習済みNNの評価では、評価結果Aが88.54%、評価結果Bが0.22Ahであった。このように、第1学習済みNNを用いることで、二次電池(より特定的には、初期容量7Ahのニッケル水素電池)の満充電容量を高い精度で推定することができた。
図10は、第2学習済みNNの評価結果を示す図である。図10を参照して、第2学習済みNNの評価では、評価結果Aが92.38%、評価結果Bが0.21Ahであった。このように、第2学習済みNNを用いることで、二次電池(より特定的には、初期容量21Ahの非水系電解液リチウムイオン電池)の満充電容量を高い精度で推定することができた。
この実施の形態では、予め定められたピクセル数の領域に二次電池のCCV充電波形が描かれた画像におけるピクセル毎の数値を示す第1入力データを受け付ける入力層を備え、入力層に第1入力データが入力されると、二次電池の満充電容量を出力する学習済みニューラルネットワーク(以下、「充電型NN」とも称する)を使用する。上述の第1学習済みNNは、充電型NNの一例に相当する。ただし、上述のような学習により、予め定められたピクセル数の領域に二次電池のCCV放電波形が描かれた画像におけるピクセル毎の数値を示す第2入力データを受け付ける入力層を備え、入力層に第2入力データが入力されると、二次電池の満充電容量を出力する学習済みニューラルネットワーク(以下、「放電型NN」とも称する)を生成することも可能である。上述の第2学習済みNNは、放電型NNの一例に相当する。放電型NNを用いる実施の形態(変形例)については、後述する。
再び図4を参照して、上述のようにニューラルネットワークの学習を行ない、容量推定精度が十分高くなった学習済みニューラルネットワークが記憶装置220に格納される。この実施の形態では、複数の学習済みニューラルネットワークが記憶装置220に記憶されている。複数の学習済みニューラルネットワークは、電池メーカ及び型番によって区別されて管理されている(後述する図11参照)。電池の製造条件は、電池メーカによって異なる。型番は、電池の構造(たとえば、寸法、形状、及び材料)及び初期容量を示す。複数の電池について、電池メーカ及び型番が同じであることは、電池の構造、初期容量、及び製造条件が概ね同じであることを意味する。各学習済みニューラルネットワークは、対応する電池メーカ及び型番の二次電池を用いて学習されたニューラルネットワークである。記憶装置220に記憶されている複数の学習済みニューラルネットワークの各々は、充電型NNの一例に相当する。以下、ニューラルネットワークを、「NN」と記載する場合がある。
記憶装置220には、電池メーカ及び型番と、学習済みNNとを紐付ける情報(以下、「NN情報」とも称する)が記憶されている。図11は、NN情報の一例を示す図である。図11を参照して、NN情報によって、電池メーカ及び型番と、学習済みNN(NX-1、NX-2、NY-1、・・・)とが紐付けられている。また、図11に示すNN情報は、各学習済みNNに関する情報(たとえば、学習条件)を含む。学習条件の例としては、入力データのグラフ書式及び画像フォーマット、学習時の充電レート、学習時の温度が挙げられる。
再び図4を参照して、記憶装置220には、保管庫500に保管される各モジュールMの情報(以下、「電池情報」とも称する)がM-IDによって区別されて記憶されている。図12は、電池情報の一例を示す図である。図12を参照して、電池情報は、たとえば、電池メーカと、型番と、電池材料(非水系電解液リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、全固体リチウムイオン電池、・・・)と、初期容量とを含む。電池情報は、図12に示されない情報(たとえば、電池の寸法及び形状)をさらに含んでもよい。
再び図4を参照して、制御装置210は、ユーザからの要求に応じて、表示装置250にNN情報(たとえば、図11参照)及び電池情報(たとえば、図12参照)の少なくとも一方を表示させるように構成される。ユーザは、入力装置240を通じて制御装置210に指示することによって、記憶装置220に記憶されている各学習済みNNの情報と、保管庫500に保管されている各モジュールMの情報とを確認することができる。
ユーザは、保管庫500に保管される複数のモジュールMのいずれかを出荷するときに、その出荷されるモジュールMを充放電器520に接続する。充放電器520に接続されたモジュールMは、モジュールMD(対象電池)となる。ユーザは、モジュールMDを出荷する前に、入力装置240を通じて制御装置210にモジュールMDの分別を要求する。この際、ユーザはモジュールMDのM-IDを制御装置210に入力する。制御装置210の情報管理部211は、ユーザからの要求に応じて、測定装置100の制御装置110に検査用画像データの送信を要求する。制御装置110は、情報管理部211からの要求に応じて、充放電器520を制御してモジュールMDの定電流充電を行ない、センサモジュール530の出力から検査用画像データを作成し、作成された検査用画像データを情報管理部211へ送信する。情報管理部211は、受信した検査用画像データを容量推定部212へ送る。
容量推定部212は、記憶装置220内の電池情報と、ユーザにより入力された上記M-IDとを用いて、モジュールMDの電池メーカ及び型番を取得する。そして、容量推定部212は、記憶装置220内のNN情報を参照して、記憶装置220に記憶されている複数の学習済みNNの中から、モジュールMDの電池メーカ及び型番に対応する1つの学習済みNNを選択する。こうすることで、モジュールMDに合った学習済みNNが選択される。その後、容量推定部212は、情報管理部211から受け取ったモジュールMDの検査用画像データを、上記のように選択された学習済みNNの入力層に入力することにより、モジュールMDの満充電容量を推定する。
容量推定部212によって推定されたモジュールMDの満充電容量(推定結果)は、容量推定部212から分別部213へ送られる。分別部213は、その推定結果に基づいてモジュールMDの用途を決定する。分別部213は、決定した用途を、記憶装置220内の電池情報に書き込むとともに、情報管理部211へ送る。情報管理部211は、モジュールMDの用途を受け取ると、その用途を表示装置250に表示させる。ユーザは、表示装置250の画面を見て、分別結果(すなわち、モジュールMDの用途)を確認し、分別結果に従ってモジュールMDを出荷する。
図13は、電池管理装置200の情報管理部211からの要求に応じて測定装置100の制御装置110が実行する処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、情報管理部211が後述する図14のS31において制御装置110に検査用画像データの送信を要求すると、開始される。
図4とともに図13を参照して、S21では、充放電制御部111がモジュールMDの定電流充電を開始する。定電流充電の条件(たとえば、充電レート)は、予め決められた条件であってもよいし、ユーザによって指定されてもよい。
S221では、情報管理部112が、定電流充電中のセンサモジュール530の出力(モジュールMDのCCVを含む)を取得して記憶装置120に記録する。S222では、CCV充電波形の取得が完了したか否かを、情報管理部112が判断する。CCV充電波形の取得が完了するまでの期間(すなわち、S222でNOと判断されている期間)は、S221及びS222が繰り返し実行される。この実施の形態では、モジュールMDのSOCが所定SOC値(たとえば、5%)を超えると、S222においてYES(CCV充電波形の取得が完了した)と判断され、処理がS23に進む。ただし、S222における判断条件は上記に限られない。たとえば、情報管理部112は、S21で定電流充電を開始してから所定時間(たとえば、1200秒)が経過したときに、S222においてYESと判断してもよい。この実施の形態では、図13のS21,S221,S222が、本開示に係る「第1ステップ」の一例に相当する。
S23では、情報管理部112が、記憶装置120に記録されたCCV充電波形を用いて、検査用画像データを作成し、作成された検査用画像データを記憶装置120に保存する。この実施の形態では、図13のS23が、本開示に係る「第2ステップ」の一例に相当する。
S24では、情報管理部112が、上記S23で作成された検査用画像データを電池管理装置200へ送信する。その後、情報管理部112は、電池管理装置200から分別結果(すなわち、後述する図14のS37において送信される分別結果)を受信するまでS25で待機する。S25で待機している間(すなわち、S25でNOと判断されている期間)も、S21で開始された充電は継続して行なわれる。この実施の形態では、S21で充電が開始されてから充電の条件が変更されることなく充電が継続されるが、S222においてYESと判断されたタイミングで充電の条件が変更されてもよい。たとえば、制御装置110は、充電レートを大きくしてもよい。
情報管理部112が電池管理装置200から分別結果を受信すると(S25にてYES)、処理はS26に進む。この実施の形態では、分別結果によってモジュールMDがパーツ利用/リビルト/資源リサイクルのいずれかに分別される。S26では、モジュールMDが資源リサイクルに分別されたか否かを、充放電制御部111が判断する。
S26においてNO(モジュールMDがパーツ利用又はリビルトに分別された)と判断されると、充放電制御部111は、S27において充電の完了条件が成立するか否かを判断する。充電の完了条件が成立しない期間(すなわち、S27でNOと判断されている期間)においては、充放電制御部111はモジュールMDの充電を継続する。この実施の形態では、モジュールMDのSOCが用途(より特定的には、後述するS36で決定された用途)に適したSOC(たとえば、満充電状態に相当するSOC)になると、S27においてYES(充電の完了条件が成立した)と判断され、S28において、充放電制御部111がモジュールMDの充電を停止する。S28の処理が行なわれることによって、図13の一連の処理は終了する。
S26においてYES(モジュールMDが資源リサイクルに分別された)と判断されると、充放電制御部111は、モジュールMDの充電を停止し、充放電器520を制御してモジュールMDの残存放電を行なう。S29の処理が行なわれることによって、図13の一連の処理は終了する。
図14は、ユーザからの要求に応じて電池管理装置200の制御装置210が実行する処理を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、ユーザが、制御装置210にモジュールMDのM-IDを入力するとともにモジュールMDの分別を要求すると、開始される。
図4とともに図14を参照して、S31では、情報管理部211が、モジュールMDの検査用画像データの送信を要求する信号を測定装置100へ送信する。その後、情報管理部211は、測定装置100から検査用画像データ(すなわち、図13のS24において送信される検査用画像データ)を受信するまでS32で待機する。
情報管理部211が測定装置100からモジュールMDの検査用画像データを受信すると(S32にてYES)、処理はS33に進む。S33では、容量推定部212が、記憶装置220内の電池情報と、ユーザにより入力された上記M-IDとを用いて、モジュールMDの電池メーカ及び型番を取得する。S34では、容量推定部212が、記憶装置220内のNN情報を参照して、記憶装置220に記憶されている複数の学習済みNNの中から、モジュールMDの電池メーカ及び型番に対応する1つの学習済みNNを選択する。S35では、容量推定部212が、測定装置100から受信したモジュールMDの検査用画像データを、S34で選択された学習済みNNの入力層に入力することにより、モジュールMDの満充電容量を推定する。
図15は、学習済みNNを用いた満充電容量の推定の概要を示す図である。図15に示すように、図14のS35において、学習済みNNの入力層にモジュールMDの検査用画像データ(入力画像)が入力されると、学習済みNNの出力層からモジュールMDの満充電容量が出力される。この実施の形態では、図14のS35が、本開示に係る「第3ステップ」の一例に相当する。
再び図4とともに図14を参照して、S36では、分別部213が、上記S35で推定されたモジュールMDの満充電容量に基づいてモジュールMDを分別する。モジュールMDは、用途によって分別される。そして、分別部213は、分別結果(すなわち、モジュールMDの用途)を記憶装置220に保存する。
上記S36において、分別部213は、まず、モジュールMDをパーツ利用/リビルト/資源リサイクルのいずれかに分別する。分別部213は、たとえば、モジュールMDの満充電容量が第1閾値未満であれば、モジュールMDの用途を「資源リサイクル」に決定する。さらに、分別部213は、モジュールMDの満充電容量が第1閾値以上第2閾値未満であれば、モジュールMDの用途を「家庭用電池(パーツ利用)」に決定し、モジュールMDの満充電容量が第2閾値以上第3閾値未満であれば、モジュールMDの用途を「工場用電池(パーツ利用)」に決定し、モジュールMDの満充電容量が第3閾値以上であれば、モジュールMDの用途を「リビルト」に決定する。上記第1~第3閾値は、「第1閾値<第2閾値<第3閾値」のような関係を有する。上記は、分別の一態様であり、適宜変更可能である。たとえば、満充電容量の小さい二次電池を「リビルト」に割り当ててもよい。また、分別部213は、推定されたモジュールMDの満充電容量に基づいて部分再利用/資源リサイクルの分別のみを行なってもよい。
情報管理部211は、上記S36で決定された用途を、S37において測定装置100へ送信し、S38において表示装置250に表示させる。表示装置250は、上記S35で推定された満充電容量を、用途と一緒に表示してもよい。S38の処理が行なわれることによって、図14の一連の処理は終了する。
ユーザは、上記S38の処理によって表示された分別結果(すなわち、モジュールMDの用途)を確認し、分別結果に従ってモジュールMDを出荷する。図16は、モジュールMDの出荷態様の一例を示す図である。図16において、モジュールM1、M2、M3、M4はそれぞれ、図14のS36で「リビルト」、「家庭用電池(パーツ利用)」、「工場用電池(パーツ利用)」、「資源リサイクル」に分別されたモジュールである。
図16を参照して、モジュールM1~M3には、それぞれタグT1~T3が取り付けられている。タグT1~T3は、モジュールM1~M3を出荷するタイミングで取り付けられてもよいし、モジュールM1~M3を保管庫500に入れるタイミング(たとえば、図3のS11)で取り付けられてもよい。この実施の形態に係るタグT1~T3の各々は、対応するモジュールのM-ID、満充電容量、及び用途が記憶されたICタグである。ICタグとしては、たとえばRFID(Radio Frequency IDentification)タグを採用できる。電池管理装置200は、無線通信により、タグT1~T3の各々に記憶される情報の読み取り及び書き換えを行なうように構成されてもよい。電池管理装置200は、図14のS36でモジュールM1~M3の用途が決定したときに、決定した用途をタグT1~T3に書き込んでもよい。
モジュールM1~M3は、図14のS36で決定された用途に対応する出荷先へ出荷される。モジュールM1は、図1に示した製造業者34へ出荷される。モジュールM2,M3は、定置用電池の販売店へ出荷される。モジュールM4は、図1に示したリサイクル業者36へ送られる。リサイクル業者36は、モジュールM4を電池材料に分解することにより、新たなセル又はその他製品の原料として利用するための再資源化を行なう。
以上説明したように、この実施の形態に係る電池管理システムでは、制御装置210が、モジュールMD(対象電池)について取得されたCCV充電波形の画像データ(すなわち、検査用画像データ)を学習済みニューラルネットワークの入力層に入力することにより、モジュールMDの満充電容量を推定するように構成される。この実施の形態に係る容量推定方法は、AC-IR法と比べて、推定のための工数は少なく、簡単に推定を行なうことができる。また、推定にかかる時間は短い。上記の電池管理システムによれば、特殊な測定機器を用いたり、複雑な演算を行なわなくても、高い精度で、早く、かつ、簡単に二次電池の満充電容量を推定することが可能になる。
上記実施の形態では、二次電池を一定の温度(たとえば、25℃)で保管し、ニューラルネットワークの学習及び評価、並びに学習済みニューラルネットワークを用いた性能検査を、保管温度で行なっている。しかし、全ての管理業者が二次電池を一定の温度で保管できるとは限らない。保管温度が変動する状況においても二次電池の満充電容量を高い精度で推定するために、制御装置210が、二次電池の満充電容量(目的変数)を推定するときに、二次電池のCCV波形取得時の温度を説明変数として扱うように構成されてもよい。
上記実施の形態に係る電池管理システムは、充電型NNを用いて二次電池の満充電容量を推定している。しかしこれに限られず、電池管理システムは、放電型NNを用いて二次電池の満充電容量を推定してもよい。図3、図4、図14、及び図17を用いて、放電型NNを用いる実施の形態(変形例)について説明する。
図3を参照して、この変形例では、管理業者30が、S12において、車両から回収されたモジュールMを、自動放電装置540ではなく、充放電器520に接続する。充放電器520にモジュールMが接続されると、図17の処理が開始される。充放電器520に接続されたモジュールMは、モジュールMD(対象電池)となる。
図17は、図13に示した処理の変形例を示す図である。図4とともに図17を参照して、S411では、充放電制御部111が、充放電器520を制御することにより、モジュールMDのSOCを定電流放電の開始SOC(たとえば、満充電状態に相当するSOC)に調整する。定電流放電の開始SOCは、予め決められたSOC値であってもよいし、ユーザによって指定されてもよい。
S411の処理後、充放電制御部111は、S412において、モジュールMDの定電流放電を開始する。この変形例では、電流値2Aの条件でモジュールMDの定電流放電が行なわれるように、充放電制御部111が充放電器520を制御する。なお、定電流放電の条件(たとえば、電流値)は、上記に限られず任意に設定できる。定電流放電の条件(たとえば、放電レート)は、予め決められた条件であってもよいし、ユーザによって指定されてもよい。
S421では、情報管理部112が、定電流放電中のセンサモジュール530の出力(モジュールMDのCCVを含む)を取得して記憶装置120に記録する。S422では、CCV放電波形の取得が完了したか否かを、情報管理部112が判断する。CCV放電波形の取得が完了するまでの期間(すなわち、S422でNOと判断されている期間)は、S421及びS422が繰り返し実行される。この変形例では、モジュールMDのSOCが所定SOC値(たとえば、90%)を下回ると、S422においてYES(CCV放電波形の取得が完了した)と判断され、処理がS43に進む。ただし、S422における判断条件は上記に限られない。たとえば、情報管理部112は、S412で定電流放電を開始してから所定時間(たとえば、1200秒)が経過したときに、S422においてYESと判断してもよい。この変形例に係る充放電制御部111、情報管理部112、電源装置510、充放電器520、及びセンサモジュール530(図4)は、本開示に係る「放電装置」の一例に相当する。
S43では、情報管理部112が、記憶装置120に記録されたCCV放電波形を用いて、検査用画像データを作成し、作成された検査用画像データを記憶装置120に保存する。この変形例に係る検査用画像データは、予め定められたピクセル数の領域にCCV放電波形が描かれた画像におけるピクセル毎の数値を示すデータであり、学習済みニューラルネットワークの入力データに相当する。この変形例に係る情報管理部112(図4)は、本開示に係る「第2作成装置」の一例に相当する。
S44では、情報管理部112が、上記S43で作成された検査用画像データを電池管理装置200へ送信する。その後、S45において、モジュールMDの残存放電が行なわれる。たとえば、充放電制御部111が、S412で開始された放電を継続することにより、モジュールMDの残存放電が行なわれてもよい。S412で放電が開始されてから放電の条件が変更されることなく放電が継続されてもよいし、S422においてYESと判断されたタイミングで放電の条件が変更されてもよい。また、管理業者30は、モジュールMDを充放電器520から取り外して自動放電装置540にセットすることにより、モジュールMDの残存放電を行なってもよい。S45の処理が行なわれることによって、図17の一連の処理は終了する。
この変形例では、図4に示した記憶装置220に複数の放電型NNが記憶されている。複数の放電型NNは、電池メーカ及び型番によって区別されて管理されている。また、S37及びS38を割愛した図14の処理が、電池管理装置200の制御装置210によって実行される。図14のS35では、容量推定部212が、測定装置100から受信したモジュールMDの検査用画像データ(すなわち、図17のS44において送信される検査用画像データ)を、S34で選択された学習済みNN(より特定的には、放電型NN)の入力層に入力することにより、モジュールMDの満充電容量を推定する。
上記のように満充電容量の推定と残存放電とが行なわれたモジュールMは、保管庫500に保管される(図3のS13)。なお、充電型NNと放電型NNとの両方が記憶装置220に記憶されており、制御装置210が、対象電池に応じて充電型NNと放電型NNとを使い分けるように構成されてもよい。
上記実施の形態では、保管庫500及び電池管理装置200が管理業者30の拠点に設置されている。しかしこれに限られず、保管庫500が製造業者34の拠点に設置され、電池管理装置200が図2に示した管理サーバ20に搭載されてもよい。また、前述の電池管理システムは、製造業者34又は販売店35の拠点に設置されてもよい。図18は、製造業者34の拠点に設置された電池管理システムの一例について説明するための図である。
図1とともに図18を参照して、製造業者34は、図14のS36において「リビルト」に分別されたモジュールM61~M63(すなわち、リビルトに適した満充電容量を有する複数のモジュール)を組み合わせて、組電池600(すなわち、リビルト品)を製造する。この組電池600を製造する工程が、本開示に係る「第4ステップ」の一例に相当する。図18に例示される組電池600は、複数のセル601を含んで構成される。組電池600では、一のセル601の正極端子と、隣接する別のセル601の負極端子とが、導電性を有するバスバー602によって電気的に接続されている。セル601同士は直列に接続されている。こうした組電池600に対して付属部品を取り付けることにより、電池パックが製造される。電池パックには、組電池600を構成する各モジュールの情報(たとえば、M-ID及び満充電容量)が組電池600の電池IDとともに記憶されたタグT6(たとえば、RFIDタグ)が取り付けられる。このように製造された組電池600を含む電池パックは出荷検査を経て出荷される。製造業者34は、図14のS36において「資源リサイクル」に分別されたモジュールM5を、リサイクル業者36へ送る。リサイクル業者36によってモジュールM5の再資源化が行なわれる。
電池管理システムの構成は、図4に示した構成に限られない。たとえば、自動放電装置540は割愛可能である。また、充電及び放電の両方を行なう充放電器520の代わりに、充電のみを行なう充電装置を採用してもよいし、放電のみを行なう放電装置を採用してもよい。電池管理装置200は、携帯機器(たとえば、スマートフォン)に搭載されてもよい。測定装置100と電池管理装置200とが離れて配置されることは必須ではない。電池管理装置200は測定装置100と一緒に保管庫500内に設置されてもよい。測定装置100と電池管理装置200とは一体化していてもよい。記憶装置220が記憶する学習済みニューラルネットワークの数は任意であり、1つであってもよい。
上記実施の形態及び変形例では、測定装置100の制御装置110が「第1作成装置」及び「第2作成装置」として機能するが、電池管理装置200の制御装置210が「第1作成装置」及び「第2作成装置」として機能してもよい。すなわち、検査用画像データは、電池管理装置200において作成されてもよい。
電池管理システムが分別装置を備えること(すなわち、電池管理システムが対象電池の用途を決定すること)は必須ではない。電池管理装置200によって推定された対象電池(たとえば、モジュールMD)の満充電容量に基づいて、ユーザが対象電池の用途を決定してもよい。
上記実施の形態では、車両から二次電池を回収する例について言及したが、電池管理システムは、他の移動体(たとえば、船、飛行機、無人搬送車、農業機械、又はドローン)から回収された二次電池に適用されてもよいし、携帯機器(すなわち、ユーザによって携帯可能な電子機器)から回収された二次電池に適用されてもよいし、定置用の二次電池に適用されてもよい。対象電池は、モジュールに限られず、単電池であってもよいし、組電池であってもよい。電池管理システムは、車両から組電池を回収したとき(たとえば、図3のS11)に、組電池の満充電容量を推定し、推定された満充電容量に基づいて、その組電池の分別(たとえば、全部再利用/資源リサイクルの分別)を行なうように構成されてもよい。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。