以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のエアバッグ装置10は、図1,2に示すように、ステアリングホイールWのボス部Bに取付固定される運転席用のエアバッグ装置10である。ステアリングホイールWは、操舵時に把持するリング部R、リング部Rの中央に配置されるボス部B、及び、リング部Rとボス部Bとを連結するスポーク部S、を有したステアリングホイール本体1と、ボス部Bの上部に配設されるエアバッグ装置10と、を備えて構成される。
なお、本明細書でのエアバッグ装置10、エアバッグ30、ステアリングホイールW等の上下・左右・前後の方向は、ステアリングホイールWを車両のステアリングシャフトSSにナットN止めして接続させた状態における車両の直進操舵時を基準として、上下方向は、そのステアリングシャフトSSの軸方向に沿った上下方向に対応し、左右方向は、そのステアリングシャフトSSの軸直交方向の車両の左右方向に対応し、前後方向は、そのステアリングシャフトSSの軸直交方向の車両の前後方向に対応している。
実施形態のステアリングホイール本体1は、ボス部Bから延びるスポーク部Sが、左右の前後両側に延びる4本のスポーク部SLF,SLB,SRF,SRBとして、構成され、リング部Rが、ボス部Bの後側で、各スポーク部Sを連結するような平面視として略U字状に、形成されている。そのため、リング部Rが、ボス部Bから左右に延びるそれぞれの左右方向の幅寸法LL,LR(左側寸法LL、右側寸法LR)より、ボス部Bから前方に延びる前後方向の幅寸法(前側寸法)LFを、小さくする構成としている。さらに、実施形態では、リング部Rは、ボス部Bから後方に延びる前後方向の幅寸法(後側寸法)LBも、前方側の幅寸法LFより大きいものの、ボス部Bから左右に延びるそれぞれの左右方向の幅寸法LL,LRより、小さくする構成としている。なお、前部側のスポーク部SLF,SRFは、操舵時に把持可能であり、リング部Rの左部Rlや右部Rrの近傍では、把持可能なリング部Rの前部Rfとしての機能も果たす。
また、ステアリングホイール本体1は、リング部R、ボス部B、及び、スポーク部Sを相互に連結するように配設される芯金2と、リング部Rとリング部R近傍のスポーク部Sの芯金2の部位を覆うウレタン等からなる被覆層3と、を備えて構成されている。芯金2は、リング部Rに配置されるリング芯金部2a、ボス部Bに配置されてステアリングシャフトSSと接続されるボス芯金部2b、及び、各スポーク部Sに配置されてリング芯金部2aとボス芯金部2bとを連結する図示しないスポーク芯金部、から構成される。
さらに、ステアリングホイール本体1は、ボス部Bの下面側に、ロアカバー9を配設させて構成されている。
なお、車両搭載時のステアリングホイールWのリング部Rは、操舵し易いように、前部Rfより後部Rb側を下方に下げており、そのため、エアバッグ30を支持するリング部Rの上面RP側は、斜め上後向きに向いて配設される。
エアバッグ装置10は、エアバッグ30を折り畳んだ略円柱状の折畳完了体80と、エアバッグ30に膨張用ガスを供給するインフレーター15と、折畳完了体80を覆ってボス部Bの上面側に配置される合成樹脂製のエアバッグカバー(パッド)20と、折畳完了体80(エアバッグ30)をステアリングホイールWのボス部Bに搭載するために保持して収納する金属製のバッグホルダ(ケース)11と、を備えて構成されている。バッグホルダ11は、折畳完了体80を取付固定して収納する部位であるとともに、インフレーター15とエアバッグカバー20とを保持する部位でもある。
なお、エアバッグ30を折り畳んだ折畳完了体80には、底面側の内部に、エアバッグ30をバッグホルダ11に取付固定するための板金製の四角環状としたリテーナ25が配設されている。そして、エアバッグ30は、リテーナ25を組み付けた状態で、初期折り体78に折り畳まれ(図5のD,図6のC参照)、さらに、初期折り体78から折畳完了体80に折り畳まれて(図8のB参照)、バッグホルダ11に取付固定される。リテーナ25は、四隅にボルト27を下方へ突設させた四角環状の底壁部26を備え、底壁部26は、中央に、インフレーター15の後述する本体部16を挿入させる連通用開口26aを配設させている。
インフレーター15は、円柱状の本体部16を備え、本体部16の外周面には、四角環状のフランジ部17が突設されている。フランジ部17には、リテーナ25のボルト27を貫通させる図示しない貫通孔が形成されている。本体部16のフランジ部17より上方の上部側には、膨張用ガスGを吐出させる複数のガス吐出口16aが配設されている。
エアバッグカバー20は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等の合成樹脂製として、ステアリングホイールWの中央付近のボス部Bの上面側に配設されている。エアバッグカバー20は、ボス部Bの内部に折り畳まれて収納された折畳完了体80の上方を覆う天井壁部21と、天井壁部21の下面から略円筒状に延び、略円柱状の折畳完了体80の外周を覆う側壁部22と、を備えて構成されている。
天井壁部21には、膨張するエアバッグ30に押されて前後両側に開くドア部21aが、配設されている。各ドア部21aは、前後方向の縁にヒンジ部21bを設けて、周囲に、上方から見て略H字状の薄肉の破断予定部21cを設けて構成されている。
エアバッグカバー20の側壁部22は、バッグホルダ11における側壁支持部13の係止部13aに係止される係止縁部22aを備えるとともに、側壁支持部13にリベット23止めされるように、リベット23を挿通させる連結孔22bを備えている。
バッグホルダ11は、板金製として、折畳完了体80、インフレーター15、及び、エアバッグカバー20、を保持し、さらに、図示しない連結ブラケットを利用して、エアバッグ装置10をステアリングホイール本体1側に取り付ける板金製の部材として構成されている。バッグホルダ11は、略円環状のベースプレート部12と、ベースプレート部12の外周縁から上下両側に突出する側壁支持部13と、を備えて構成されている。
ベースプレート部12の中央には、エアバッグ30の流入用開口34に対応して、インフレーター15の本体部16を下方から挿入可能な略円形の挿入孔12aが、開口し、挿入孔12aの周縁には、リテーナ25の各ボルト27を貫通させる四個の貫通孔12bが形成されている。挿入孔12aの周縁における貫通孔12bを設けた部位は、リテーナ25を利用して、折畳完了体80とインフレーター15とを取り付けるための取付座12cとなる。
側壁支持部13には、既述したように、エアバッグカバー20の側壁部22を連結保持するための係止部13aとリベット23を挿通させる連結孔13bとが、形成されている。
エアバッグ30は、図1,2の二点鎖線や図10のBに示すように、前部30a側の厚さ寸法Tfを、後部30b側の厚さ寸法Tbより、大きくした略円板状の膨張完了形状としている。エアバッグ30の外周壁31は、図2,3に示すように、膨張用ガスを流入させるための流入用開口34を中央付近に設けて、エアバッグ30の膨張完了時にリング部Rの上面RP側に支持される車体側壁部32と、車体側壁部32の外周縁33に対して外周縁40を連ならせて、流入用開口34の上方を塞いで、車体側壁部32と対向するように配設される運転者側壁部39と、を備えて構成されている。
なお、車体側壁部32の円形に開口した流入用開口34の周縁は、バッグホルダ11への取付部35としており、取付部35には、リテーナ25のボルト27を貫通させる4つの貫通孔35aが形成されている(図2~4参照)。取付部35は、内側面をリテーナ25の底壁部26の下面側に当接されて、バッグホルダ11の取付座12cに固定される略四角環状の部位としている。
エアバッグ30の外周壁31を形成する基布は、図4に示すように、運転者側壁部39を形成する運転者側基布60と、車体側壁部32を形成する車体側基布50と、から形成されている。さらに、車体側基布50は、流入用開口34を有した後側基布51と、後側基布51の前縁側の弧部52aに後縁側の弧部56bを結合させる前側基布55と、から構成されている。これらの基布60,51,55は、ポリアミドやポリエステル等の合成繊維製のバッグ用基布から形成されている。
運転者側基布60は、前部側の弓形部60aと、後部側の円形状を半分とした半円部60bと、を備えた略円形状として、外周縁61の後縁側を半円弧部61bとし、前縁側を弧部61aとしている。
車体側基布50の後側基布51は、前部側の弓形部51aと、後部側の円形状を半分とした半円部51bと、を備えて略円形状として、外周縁52の後縁側を半円弧部52bとし、前縁側を弧部52aとしている。後側基布51の半円部51bは、運転者側基布60の半円部60bと同じ外形形状としており、その外周側の縁の半円弧部52bは、運転者側基布60の半円部60bの外周側の縁となる半円弧部61bと結合(縫合)される部位としている。
そして、前側基布55は、前後に弓形部55a,55bを配設させた略楕円形状として、外周縁56の前後の縁を弧部56a,56bとしている。なお、弧部56aは、膨張完了時のエアバッグ30の外周壁31の状態としては、前縁側となり、運転者側基布60の前縁側の弧部61aと結合(縫合)される部位としており、弧部61aと同じ外形形状としている。また、前側基布55の弧部56bは、膨張完了時のエアバッグ30の外周壁31の状態としては、前側基布55の後縁側となり、車体側基布50の後側基布51における前縁側の弧部52aと結合(縫合)される部位として、弧部52aと同じ外形形状としている。
また、前側基布55は、左右方向の幅寸法WLを、他の運転者側基布60や後側基布51と同様としているものの、左右両端を結ぶ直線C1を基準とする前後の幅寸法F1,F2として、前側の幅寸法F1を後側の幅寸法F2より大きくしている。そのため、左右両端を結ぶ直線C1に折目66を付けて二つ折りすると、前側の弓形部55aは、後側の弓形部55bと重なる内側部55aaと、後側の弓形部55bからはみ出る張出部55abと、を有することとなる。なお、折目66は、後述する初期折り体78の折目66となり、内側部55aaは、弓形部55bとともに、後述する折込部65を形成する部位となる。また、張出部55abは、運転者側基布60の前縁側部位とともに、後述する折返部76を形成する部位となる。
さらに、エアバッグ30には、車体側壁部32の前側基布55の部位に、ベントホール37が形成されている。
また、エアバッグ30内には、膨張完了時の後部30b側の厚さ寸法Tb(図10のB参照)を規制するテザー44が、左右に並設されている。テザー44は、図4に示すように、運転者側壁部39側に連結される上側部44aと、車体側壁部32の流入用開口34の周縁から延びる下側部44bと、を相互に結合させて、形成されている。各上側部44aは、上端44aa側を、楕円形状の縫合部44abを設けて、運転者側壁部39側に結合されている。各下側部44bは、流入用開口34の周縁の耐熱性を高める補強布42から延びており、上側部44aの下端44acと結合されて、テザー44を形成する。
なお、エアバッグ30の膨張完了時の前部30a側では、流入用開口34の前方側に、車体側壁部32の前側基布55を配設させて、運転者側壁部39より、前後方向の膜長が長いことから、厚く膨らみ、後部30b側にテザー44が配設されて、後部30b側の厚さ寸法Tbが規制されていることと相俟って、リング部Rの上面RP側での膨張完了時に前部30a側の厚さ寸法Tfが、後部30b側の厚さ寸法Tbより、厚くなり(図10のB参照)、エアバッグ30の膨張完了時、略鉛直面に沿うように配設される運転者側壁部39により、運転者Dを受け止めることができる。
さらに、エアバッグ30内には、インフレーター15から吐出される膨張用ガスを前後両側に流す整流布46が配設されており、整流布46は、図4に示すように、流入用開口34の周縁に縫合される本体部46aと、本体部46aの左右両側から延びる腕部46bと、を備えて、腕部46b,46bの先端相互を結合させて形成されている。各腕部46bには、補助用開口46cが形成されている。
なお、補強布42と本体部46aとにも、流入用開口34と貫通孔35aとが形成されている。
エアバッグ30の製造は、流入用開口34や貫通孔35aを設けていない状態の車体側基布50の後側基布51に、補強布42と整流布46の本体部46aとを縫合して、流入用開口34と貫通孔35aとを孔開け加工して形成する。また、ベントホール37を設けていない状態の車体側基布50の前側基布55に、ベントホール用の補強布(図符号省略)を縫合して、ベントホール37を孔開け加工して形成する。運転者側基布60には、各テザー44の上側部44aの上端44aaを、縫合部44abを設け、縫合する。
そして、前側基布55の後縁側の弧部56bと、後側基布51の前縁側の弧部52aを縫合して、車体側基布50を形成する。ついで、車体側基布50と運転者側基布60との外表面側相互を合わせて、後側基布51の後縁側の半円弧部52bと運転者側基布60の後縁側の半円弧部61bとを縫合するとともに、前側基布55の前縁側の弧部56aと、運転者側基布60の前縁側の弧部61aとを縫合すれば、エアバッグ30の外周壁31を形成することができる。その後、縫代が外表面側に露出しないように、流入用開口34を利用して、エアバッグ30を反転させ、流入用開口34を利用して、テザー44の上側部44aの下端44acと下側部44bとを引き出して縫合により結合するとともに、整流布46の腕部46b、46b相互を引き出して縫合により結合して、それぞれの結合部位をエアバッグ30内に収納すれば、エアバッグ30の製造を完了させることができる。
このように製造したエアバッグ30は、初期折り体78を形成するように折り畳んだ後、折畳完了体80とするように折り畳む。
初期折り体78を形成する際には、まず、図5のA~Cと図6のA,Bに示すように、車体側壁部32を形成する車体側基布50の前側基布55に、左右方向に沿う折目66を設けて、二つ折りして、車体側壁部32の上に、平らに運転者側壁部39を重ねて、初期折り準備体64を形成する。この初期折り準備体64は、平らに展開した運転者側壁部39の前縁側部位62の下方において、膨張完了時のエアバッグ30の前部30a側の車体側壁部32の前縁側部位(前側基布)55を、流入用開口34側の後方側に折り込んだ折込部65、が形成されている状態である。折込部65は、前側基布55の前部側の弓形部55aと後部側の弓形部55bとを、両者の境界部位(直線C1の部位)に折目66を設けて、二つ折りして形成されており、後部側の弓形部55bを下方に配置させ、弓形部55bの上方に前部側の弓形部55aの内側部55aaが重なって、形成されている。
そしてさらに、初期折り体78は、図5のC,Dと図6のB,Cに示すように、初期折り準備体64における折込部65に連なる運転者側壁部39の前縁側部位62を、折込部65に連なる流入用開口34から延びる車体側壁部32の前端部53に、上下方向に重なるように、折目72を付けて折り返した折返部(折返重ね部)76、を設ければ、形成することができる。実施形態の場合には、折返部76は、折込部65に連なる運転者側壁部39の前縁側部位62を、折込部65に連なる流入用開口から延びる車体側壁部32の前端部53の上方側に重ねて、形成されている。
なお、エアバッグ30の折畳時には、予め、エアバッグ30内の取付部35に、リテーナ25を配置させて、各ボルト27を、貫通孔35aを経て、エアバッグ30外へ突出させた状態で行う。
そして、折畳完了体80に折り畳む際には、図7~8に示すように、初期折り体78をラジアル折りする。ラジアル折りは、初期折り体78における流入用開口34から外周縁78a側に延びる複数個所(実施形態では流入用開口34から放射状に配置された16箇所)を、流入用開口34側に接近させて、初期折り体78における流入用開口34から外周縁78a側に延びる略円環状の周縁部位79を、流入用開口34の上方側に集合させる折り畳み方である。
ラジアル折りに使用するバッグ折り機90は、図7~8に示すように、底側基板91の周囲に、底側基板91の中央側に移動する8つずつの2種類の押し込み具94,96を配設させて構成されている。底側基板91の上面側の中央91aには、初期折り体78から突出したリテーナ25の各ボルト27を嵌めるセット部92が、配設されている。
押し込み具94は、初期折り体78の外周縁78aにおける8つの箇所78bを把持でき、かつ、中央91a側に押し込むことができるように、構成されている(図8参照)。さらに、押し込み具94のセット部92側には、折畳完了体80の略円柱状の外周面における円弧状の曲面に対応する型面94aが、形成されている。押し込み具96は、セット部92側を先細りとした略三角板形状としている。
なお、底側基板91の上方には、押し込み具94,96の押し込み時に、初期折り体78の高さ寸法を規制して、略円柱状の折畳完了体80を形成できるように、図示しない天井側基板が配置されることとなる。
そして、バッグ折り機90を使用する際には、初期折り体78の各ボルト27をセット部92にセットし、ついで、底側基板91のセット部92から、所定高さ(折畳完了体80の高さ寸法と同等)となる位置に、図示しない天井側基板を配置させ、図7に示すように、各押し込み具94,96を、セット部92側に移動させるとともに、初期折り体78の外周縁78aの所定の8つの箇所78bを、押し込み具94に把持させる。その後、図8のAに示すように、まず、各押し込み具96をセット部92側(流入用開口34側)に移動させて、初期折り体78における押し込み具94のセット部92側の領域を残して、初期折り体78の外周縁78aの8つの押し込み箇所78cを、セット部92側に押し込む。その後、各押し込み具94における外周縁78aの把持箇所78bの把持を解除し、各押し込み具94をセット部92側に移動させて、8つの箇所78bを、図8のBに示すように、セット部92側に押し込めば、略円柱状の折畳完了体80を形成できる。
なお、このようにラジアル折りした折畳完了体80は、折畳形状を維持できるように、まず、昇温した押し型で加熱圧縮成形し、さらに、常温とした押し型で冷却圧縮成形して、折り崩れを防止する。
折り崩れを防止する処理を行なった後には、図示しないラッピング材により折畳完了体80を包み、エアバッグ装置10を組み立てる。この組立時には、折畳完了体80をエアバッグカバー20の側壁部22の内周面側に嵌め、折畳完了体80から延びる各ボルト27を、バッグホルダ11の貫通孔12bに、貫通させるとともに、エアバッグカバー20の係止縁部22aをバッグホルダ11の係止部13aに係止させるとともに、リベット23を連結孔13b,22bに貫通させて、バッグホルダ11の側壁支持部13とエアバッグカバー20の側壁部22とを連結する。その後、バッグホルダ11の挿入孔12a内へ、下方からインフレーター15の本体部16を挿入させつつ、バッグホルダ11から突出している各ボルト27を、インフレーター15のフランジ部17に貫通させて、各ボルト27に図示しないナットを締結させれば、エアバッグカバー20を取付済みのバッグホルダ11に、折畳完了体80とインフレーター15とが取付固定されて、エアバッグ装置10が組み立てられる。
エアバッグ装置10の車両への搭載は、ステアリングシャフトSSへ組付済みのステアリングホイール本体1に、バッグホルダ11から延びる図示しない取付ブラケットを締結すれば、エアバッグ装置10をステアリングホイール本体1に取り付けることができ、ステアリングホイールWの組立が完了するとともに、ステアリングホイールWを、エアバッグ装置10とともに、車両へ搭載することができる。
なお、エアバッグ装置10のステアリングホイール本体1への取り付け時には、インフレーター15に、作動信号入力用の図示しないリード線を結線することとなる。
車両への搭載後、インフレーター15に作動信号が入力されれば、インフレーター15は、膨張用ガスGをガス吐出口16aから吐出させることから、折り畳まれたエアバッグ30は、膨張用ガスGを流入させて膨張し、図示しないラッピング材を破断させ、さらに、エアバッグカバー20の天井壁部21のドア部21aを押し開き、ドア部21aの開いた開口から突出して、ボス部Bの上方からリング部Rの上面を覆うように、展開膨張することととなる(図1,2の二点鎖線参照)。
そして、実施形態のエアバッグ装置10では、エアバッグ30の膨張時、折り畳んだ工程の順序と略逆の順序で、折りを解消することから、最終的な折りの解消時、初期折り体78の折返部76における運転者側壁部39の前縁側部位62が、折り返しの折りを解消するように、前方側に繰り出されつつ、折込部65が、前方に繰り出す状態となる。そのため、図9のA,Bに示すように、運転者Dの頭部DHがリング部Rに接近していても、膨張途中のエアバッグ30が、前部30a側において、運転者Dの頭部DHとリング部Rの上面RP側との間に進入しつつ、折返部76を前方側に繰り出し、そして、折込部65の折り込んだ折目66の前方移動する折りの解消とともに、その折りを解消した折込部65の部位の厚さを増すような膨張により(図9のB、図10のA参照)、運転者Dの顎DJの下側への進入を防止でき、かつ、リング部Rの上面RP側で、運転者Dの頭部DHを受け止めて保護できる。そしてさらに、エアバッグ30が膨張すれば、図10のA,Bに示すように、運転者Dの頭部DHだけでなく、リング部Rの上面RPと胸部DBや腹部DSとの間にも、進入する状態となることから、膨張を完了させたエアバッグ30は、運転者Dの頭部DH、胸部DB、及び、腹部DSを好適に受け止めて保護できる。
したがって、実施形態のエアバッグ装置10では、膨張するエアバッグ30が、近接する運転者Dを好適に受け止めて保護することができる。
また、実施形態のエアバッグ装置10では、エアバッグ30の折畳完了体80が、初期折り体78における流入用開口34から外周縁78a側に延びる複数個所を、流入用開口34側に接近させて、初期折り体78における流入用開口34から外周縁78a側に延びる周縁部位79を、流入用開口34の上方側に集合させるラジアル折りにより、形成されている。
そのため、実施形態では、ボス部Bに収納する折畳完了体80が、初期折り体78を流入用開口34の上方側に集合させてなるラジアル折りして、形成されており、流入用開口34の周縁部位79が、略均等に流入用開口側に接近して折り畳まれることから、コンパクトに形成され、ボス部Bへの搭載スペースを小さくすることができる。
なお、実施形態の場合、初期折り体78の前後左右の幅寸法を狭める際、前後左右の幅寸法とともに、前後左右と交差する斜め方向の幅寸法も、同時に狭めるように、ラジアル折りしたが、初期折り体78の前後方向と左右方向との幅寸法を狭めるように、すなわち、初期折り体78の外周縁78aにおける前後左右の縁側を、流入用開口34側に接近させるように、ロール折りや蛇腹折り等して、折り畳んでもよい。
また、実施形態のエアバッグ装置10では、エアバッグ30の膨張完了形状が、前部30a側の厚さ寸法Tfを、後部30b側の厚さ寸法Tbより、大きくするように、構成されている。
そのため、実施形態では、後下がりに傾斜したリング部Rの上面RP側で膨張完了時のエアバッグ30が支持されると、エアバッグ30の運転者側壁部39を、鉛直方向に沿わせるように配置させることができて、上下方向に沿った略鉛直面となる受止面41において、前方移動する運転者Dの頭部DHから腹部DSにかけての略全面を、均等に受け止めることが可能となり、部分的な反力を運転者Dに与えずに運転者Dを受け止めて保護できることから、前方移動する運転者Dの拘束性能を向上させることができる。
なお、実施形態の場合、厚さ寸法Tf,Tbの差は、前側基布55を設けたり、あるいは、テザー44を配設させて、設定しているが、外周壁31の形状や膜長の長さを変えるだけ、あるいは、テザーだけで、前部30a側と後部30b側の厚さ寸法Tf,Tbに差を設けるようにしてもよい。
勿論、折込部65を形成した初期折り体78を形成できれば、エアバッグの膨張完了形状としては、前部側と後部側との厚さ寸法を同等としてもよい。
さらに、実施形態のエアバッグ装置10では、ステアリングホイールWのリング部Rが、ボス部Bから左右に延びるそれぞれの左右方向の幅寸法LL,LRより、ボス部Bから前方に延びる前後方向の幅寸法LFを、小さくする構成としている。
このようなステアリングホイールWでは、リング部Rの前部Rf側で、膨張完了時のエアバッグ30が、直接、支持され難いが、エアバッグ30自体が、前部30a側を厚く膨張させていれば、運転者Dの受止時、運転者側壁部39が前方移動しようとしても、後部30b側に比べて、前部30a側では、厚さ寸法Tfのある分、車体側壁部32が、リング部Rの左右の左部Rlや右部Rrの前端側(前面)Rlf,Rrf、あるいは、リング部Rの前部Rf側の前面Rff側に圧接させて、反力を確保しやすく、前方移動量を、後部30b側と同等にできて、円滑に、運転者側壁部39の略鉛直面となる受止面41で、前方移動する運転者Dの頭部DHから腹部DSにかけての略全面を、略同等の受止ストロークとして、ソフトに受け止めることが可能となる。
また、実施形態のエアバッグ装置10では、エアバッグ30の外周壁31が、運転者側壁部39を形成する運転者側基布60と、車体側壁部32を形成する車体側基布50と、から形成されるとともに、車体側基布50が、流入用開口34を有した後側基布51と、折込部65を形成する折込形成部57を有して、後縁(弧部)56bを後側基布51の前縁(弧部)52aと結合させてなる前側基布55と、を備えて構成され、そして、エアバッグ30の外周壁31が、後側基布51の前縁(弧部)52aと前側基布55の後縁(弧部)56bとを結合させてなる車体側基布50の外周縁50a(車体側壁部32の外周縁33)と、運転者側基布60の外周縁61(運転者側壁部39の外周縁40)と、を結合させて、形成されている。
そのため、実施形態では、初期折り体78を形成する際、車体側壁部32の後側基布51に、運転者側壁部39を構成する運転者側基布60を、重ねて平らにしつつ、車体側壁部32の前側基布55に、左右方向に沿う折目66を付けて、車体側壁部32の流入用開口34側に折り込めば、簡単に、折込部65を形成でき、その後、後側基布51の前縁52a側から前方に突出している運転者側基布60の前縁61a側の前縁側部位62を、後側基布51の前縁52a側に対して、上下方向で重ねるように折り返せば、簡単に、折返部76を形成できる。すなわち、このような構成では、折込部65の折目66や折返部76の折目72を簡単に付けて、初期折り体78を容易に形成することができる。また、エアバッグ30の外周壁31が、運転者側壁部39を形成する運転者側基布60と、車体側壁部32を形成する後側基布51及び前側基布55との、三枚の基布60,51,55から構成できることから、エアバッグ30では、構成材料を、極力、少なくして、形成することができる。
勿論、折込部65を形成するエアバッグ30は、実施形態のような平面縫製の容易な三枚の平面状の基布51,55,60から形成せずに、立体的な縫製による立体バッグから、形成してもよい。
なお、実施形態では、エアバッグ30の初期折り体78の折返部(折返重ね部)76として、折込部65に連なる運転者側壁部39の前縁側部位62を、折込部65に連なる流入用開口34から延びる車体側壁部32の前端部53の上方側に重ねて、配設した場合を示したが、図11のA~Dや図12のA~Cに示すように、エアバッグ30の初期折り体78Aとしての折返部(折返重ね部)76Aは、折込部65に連なる運転者側壁部39の前縁側部位62を、折込部65に連なる流入用開口34から延びる車体側壁部32の前端部53の下方側に重ねて、配設されていてもよい。
このような初期折り体78Aでも、実施形態と同様に、ラジアル折りしてエアバッグ装置10Aに組み付けて、ステアリングホイールWに搭載すれば、図13,14に示すように、実施形態と同様に、エアバッグ30が膨張する。
すなわち、このエアバッグ装置10Aでも、エアバッグ30の膨張時、折り畳んだ工程の順序と略逆の順序で、折りを解消することから、最終的な折りの解消時、初期折り体78Aの折返部76Aにおける運転者側壁部39の前縁側部位62が、折り返しの折りを解消するように、前方側に繰り出されつつ、折込部65が、前方に繰り出す状態となる。そのため、図13のA,Bに示すように、運転者Dの頭部DHがリング部Rに接近していても、膨張途中のエアバッグ30が、前部30a側において、運転者Dの頭部DHとリング部Rの上面RP側との間に進入しつつ、折返部76Aを前方側に繰り出し、そして、折込部65の折り込んだ折目66の前方移動する折りの解消とともに、その折りを解消した折込部65の部位の厚さを増すような膨張により(図13のB、図14のA参照)、運転者Dの顎DJの下側への進入を防止でき、かつ、リング部Rの上面RP側で、運転者Dの頭部DHを受け止めて保護できる。そしてさらに、エアバッグ30が膨張すれば、実施形態と同様に、図14のA,Bに示すように、運転者Dの頭部DHだけでなく、リング部Rの上面RPと胸部DBや腹部DSとの間にも、進入する状態となることから、膨張を完了させたエアバッグ30は、運転者Dの頭部DH、胸部DB、及び、腹部DSを好適に受け止めて保護できる。
そしてさらに、折返部としては、折込部65に連なる運転者側壁部39の前縁側部位62を、折込部65に連なる流入用開口34から延びる車体側壁部32の前端部53の上方側や下方側に重ねずに、単に、折り返すだけでもよい。すなわち、図15のA~Dや図16のA~Cに示すように、エアバッグ30の初期折り体78Bでは、折返部76Bが、折込部65に連なる運転者側壁部39の前縁側部位62を、折込部65に連なる流入用開口34から延びる車体側壁部32の前端部53側に対して、重ねずに、単に、接近させるように折り返して、配設されている。
このような初期折り体78Bでも、実施形態と同様に、ラジアル折りしてエアバッグ装置10Bに組み付けて、ステアリングホイールWに搭載すれば、図17,18に示すように、エアバッグ30が膨張する。
そして、このエアバッグ装置10Bでも、エアバッグ30の膨張時、折り畳んだ工程の順序と略逆の順序で、折りを解消することから、最終的な折りの解消時、初期折り体78Aの折返部76Bにおける運転者側壁部39の前縁側部位62が、折り返しの折りを解消するように、前方側に繰り出されつつ、折込部65が、前方に繰り出す状態となる。そのため、図17のA,Bに示すように、運転者Dの頭部DHがリング部Rに接近していても、膨張途中のエアバッグ30が、前部30a側において、運転者Dの頭部DHとリング部Rの上面RP側との間に進入しつつ、折返部76Bを前方側に繰り出し、そして、折込部65の折り込んだ折目66の前方移動する折りの解消とともに、その折りを解消した折込部65の部位の厚さを増すような膨張により(図17のB、図18のA参照)、運転者Dの顎DJの下側への進入を防止でき、かつ、リング部Rの上面RP側で、運転者Dの頭部DHを受け止めて保護できる。そしてさらに、エアバッグ30が膨張すれば、実施形態と同様に、図18のA,Bに示すように、運転者Dの頭部DHだけでなく、リング部Rの上面RPと胸部DBや腹部DSとの間にも、進入する状態となることから、膨張を完了させたエアバッグ30は、運転者Dの頭部DH、胸部DB、及び、腹部DSを好適に受け止めて保護できる。
特に、折返部76Bのように、運転者側壁部39の前縁側部位62を、車体側壁部32の前端部53に対して、重ねずに、接近させるように、単に、折り返すだけで形成する場合には、運転者側壁部39の前縁側部位62が車体側壁部32の前端部53に重ならない分、エアバッグ30の膨張時、折返部76Bの前方側への折りの解消が素早くなり、そして、折込部65の前方側への折りの解消も素早く行われることとなって、運転者Dの頭部DHが、一層、リング部Rに接近していても、膨張途中のエアバッグ30は、前部30a側において、素早く前方側に展開できて、運転者Dの頭部Hとリング部Rの上面RP側との間に円滑に進入させることができる。