以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態に従う暖房熱源機が適用された給湯システム100の概略構成図である。
図1を参照して、給湯システム100は、給湯回路101と、追焚回路102と、暖房回路103と、コントローラ300とを備える。給湯回路101は、カラン105や図示しないシャワー等の給湯栓の開栓時に出湯するように構成される。追焚回路102は、図示しない浴槽内の湯を加熱循環するように構成される。暖房回路103は、図2に示される暖房装置に対して液状の熱媒体である温水を循環供給するように構成される。コントローラ300は、たとえば、マイクロコンピュータによって構成される。
追焚回路102は、浴槽水吸入口191及び浴槽水吐出口192の間に、浴槽内の湯を加熱循環するための追焚循環経路を形成するように構成される。浴槽水吸入口191及び浴槽水吐出口192は、浴槽内に配置された浴槽アダプタ(図示せず)に設けられた開口部と、配管を経由してそれぞれ接続される。暖房回路103から熱媒体を受ける暖房装置は、暖房戻口302と暖房出力口(低温)304との間、又は、暖房戻口302及び暖房出力口(高温)306との間に接続される。
以下、順に、給湯回路101、追焚回路102及び暖房回路103の構成について説明する。
給湯回路101は、缶体10に格納された、一次熱交換器11a、二次熱交換器21a及び燃焼バーナ30aを含む。給湯回路101は、さらに、入水管50と、バイパス管60と、出湯管70とを含む。
入水管50には、水道水等が給水される。入水管50及び出湯管70の間にはバイパス管60が配置される。入水管50には、バイパス管60への分流を制御するための分配弁80が介挿接続される。分配弁80の開度に応じて、給水量の一部が入水管50からバイパス管60へ分流される。
さらに、入水管50には、温度センサ110及び流量センサ150が配置される。温度センサ110は、入水温度を検出する。流量センサ150は、分配弁80よりも下流側(缶体側)に配置されており、缶体10を通過する流量(缶体流量)を検出する。
入水管50の水は、まず二次熱交換器21aによって予熱された後、一次熱交換器11aにおいて主加熱される。一次熱交換器11a及び二次熱交換器21aによって所定温度まで加熱された湯は、出湯管70から出湯される。
出湯管70は、合流部75においてバイパス管60と接続される。したがって、給湯システム100からは、缶体10から出力された高温水と、バイパス管60からの低温水とを混合した適温の湯が、台所や浴室等の給湯栓や、図示しない風呂への注湯回路などの所定の給湯箇所に供給される。
出湯管70には、流量調整弁90及び温度センサ120,130が設けられる。温度センサ120は、出湯管70のバイパス管60との合流部75よりも上流側(缶体側)に配置されて、缶体10からの出力湯温を検出する。温度センサ130は、合流部75よりも下流側(出湯側)に設けられて、バイパス管60からの水が混合された後の出湯温度Thを検出する。流量調整弁90は、出湯流量を制御するために設けられる。温度センサ110,120,130は、たとえば、サーミスタによって構成される。
缶体10において、燃焼バーナ30aからは、燃料ガスと、送風ファン40によって供給される燃焼用空気との混合気が出力される。図示しない点火装置によって混合気が着火されることにより、燃料ガスが燃焼されて火炎が生じる。燃焼バーナ30aからの火炎によって生じる燃焼熱は、缶体10内で一次熱交換器11a及び二次熱交換器21aへ与えられる。
一次熱交換器11aは、燃焼バーナ30aによる燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)により入水を熱交換によって加熱する。二次熱交換器21aは、燃焼バーナ30aからの燃焼排ガスの潜熱によって通流された水を熱交換によって加熱する。缶体10の燃焼ガスの流れ方向下流側には、熱交換後の燃焼排ガスを排出処理するための排気経路15が設けられる。このように、缶体10では、燃焼バーナ30aでの燃焼による発生熱量により、一次熱交換器11a及び二次熱交換器21aで、入水管50から供給された水を加熱する。
燃焼バーナ30aへのガス供給管31には、元ガス電磁弁32、ガス比例弁33及び、能力切換弁35a~35cが配置される。元ガス電磁弁32は、燃焼バーナ30aへの燃料ガスの供給をオンオフする機能を有する。ガス供給管31のガス流量は、ガス比例弁33の開度に応じて制御される。能力切換弁35a~35cは、複数の燃焼バーナ30aのうちの、燃料ガスの供給対象となるバーナ本数(バーナ燃焼本数)を切換えるために開閉制御される。
次に、追焚回路102を含む、給湯システム100における浴槽への給湯に関連した構成について説明する。なお、以下では、浴槽に対する給湯を「注湯」と表記する一方で、浴槽以外の給湯栓(カラン105等)への給湯を、単に「給湯」と表記することとする。
給湯システム100は、出湯管70から分岐して浴槽(図示せず)へ給湯するための注湯管180をさらに備える。注湯管180は、出湯管70から流量調整弁90を経由して分岐される。さらに、注湯管180には、注湯電磁弁210及び逆止弁220が介挿接続される。注湯管180は、後程説明する風呂戻り配管190と、合流部185で連結される。
コントローラ300による注湯電磁弁210の開閉制御によって、給湯回路101から浴槽へ注湯するための経路の形成/遮断を制御することができる。
追焚回路102は、風呂戻り配管190と、風呂往き配管195と、追焚循環ポンプ400と、風呂熱交換器410とを含む。
風呂戻り配管190は、浴槽水吸入口191と追焚循環ポンプ400の吸入口との間に設けられる。追焚循環ポンプ400の吐出側は、風呂熱交換器410の一方端と接続される。風呂熱交換器410の他方端は、風呂往き配管195によって、浴槽水吐出口192と連結される。
追焚運転時には、追焚循環ポンプ400が作動することにより、浴槽水吸入口191から給湯システム100へ浴槽内の湯が吸入される。そして、吸入された湯が、風呂戻り配管190、追焚循環ポンプ400、風呂熱交換器410及び風呂往き配管195を経由して、浴槽水吐出口192から浴槽内に戻される追焚循環経路が形成される。追焚循環経路において、風呂熱交換器410の入力側及び出力側には、温度センサ374及び372がそれぞれ設けられる。
追焚運転時には、暖房回路103の熱動弁330が開放される。これにより、後述する暖房回路103で加熱された熱媒体が、風呂熱交換器410を通流する。この結果、追焚循環経路の湯が、風呂熱交換器410によって加熱されることによって、浴槽内の湯温を上昇させることができる。
さらに、風呂戻り配管190は、合流部185において、注湯管180と連結される。これにより、注湯電磁弁210が開放されると、給湯回路101からの湯が、注湯管180を経由して合流部185に供給される。注湯運転時には、追焚循環ポンプ400が停止されているため、供給された湯は、風呂戻り配管190及び風呂往き配管195をそれぞれ経由して、浴槽水吸入口191及び浴槽水吐出口192の両方から、浴槽内に供給される。
次に、給湯システム100内の暖房回路103について説明する。
暖房回路103は、暖房運転時に、暖房戻口302と暖房出力口(低温)304との間、及び、暖房戻口302と暖房出力口(高温)306との間のそれぞれに、熱媒体(代表的には、温水)の循環経路を形成するように構成される。暖房回路103は、本実施の形態に係る暖房熱源機の一実施例に相当する。
図2は、暖房回路103(暖房熱源機)と暖房装置との間の接続関係を説明するブロック図である。
図2を参照して、暖房戻口302及び暖房出力口(高温)306の間には、高温暖房端末500が接続される。高温暖房端末500は、高温暖房装置510及び開閉弁520を有する。開閉弁520の開閉は、高温暖房端末500のコントローラ(図示せず)によって制御される。
開閉弁520は、高温暖房装置510の作動時、及び、後述の凍結予防運転時に開放される。開閉弁520が開放されると、高温暖房装置510及び暖房回路103の間に、暖房戻口302と暖房出力口(高温)306を経由した、熱媒体の循環供給経路が形成される。たとえば、高温暖房装置510は、暖房回路103からの熱媒体によって加熱された温風を出力する、ルームヒーターによって構成される。
暖房戻口302と、複数の暖房出力口(低温)304との間には、複数の低温暖房端末600が接続される。複数の暖房出力口(低温)304の各々には、コントローラ300からの指令に応じて開閉制御される端末熱動弁305が設けられる。
各低温暖房端末600は、低温暖房装置610及び開閉弁620を有する。開閉弁620が開放されると、対応の低温暖房装置610及び暖房回路103の間に、暖房戻口302と暖房出力口(低温)304を経由した、熱媒体の循環供給経路が形成される。たとえば、低温暖房装置610は、暖房回路103からの熱媒体が通流される、床暖房用の温水パネルによって構成される。
低温暖房端末600ごとに、開閉弁620の開閉が、低温暖房端末600のコントローラ(図示せず)によって制御される。各開閉弁620は、対応の低温暖房装置610の作動時、及び、後述の凍結予防運転時に開放される。コントローラ間の通信によって、開閉弁620の開閉についても、コントローラ300(図1)による制御と連動させることができる。例えば、凍結防止運転の際には、コントローラ300からの通知に応じて、各開閉弁520及び/又は620を開放することができる。
再び図1を参照して、暖房回路103は、一次熱交換器11b及び二次熱交換器21bと、燃焼バーナ30bとを含む。一次熱交換器11b,二次熱交換器21b及び燃焼バーナ30bは、給湯回路の一次熱交換器11a、二次熱交換器21a及び燃焼バーナ30aと共通の缶体10内に格納されている。
一次熱交換器11bは、燃焼バーナ30bによる燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)により入水を熱交換によって加熱する。二次熱交換器21bは、燃焼バーナ30bからの燃焼排ガスの潜熱によって通流された水を熱交換によって加熱する。能力切換弁36a,36bの開閉制御によって、複数の燃焼バーナ30bのうちの、燃料ガスの供給対象となるバーナ本数(バーナ燃焼本数)が切換えられる。燃焼バーナ30bに対しては、燃焼バーナ30aと共通のガス供給管31、元ガス電磁弁32及びガス比例弁33を経由して、燃料ガスが供給される。
さらに、暖房回路103は、暖房循環ポンプ310と、暖房膨張タンク320と、熱動弁330と、バイパス熱動弁345と、配管340,350,360,370,380,390と、端末熱動弁305と、温度センサ382,384とを含む。熱動弁330及びバイパス熱動弁345の各々は、コントローラ300からの指令に従って開閉制御される。
配管350の一端は、一次熱交換器11bの一方端(入側)と接続される。配管350の他端は、複数の端末熱動弁305を経由して複数の暖房出力口(低温)304と接続される。配管360は、一次熱交換器11bの他方端(出側)及び配管380の間に配設される。配管360及び370は、一次熱交換器11bの同一側(出側)で分岐しており、配管370によって、一次熱交換器11bの他方端及び暖房出力口306(高温)の間が接続される。
配管380は、暖房戻口302と二次熱交換器21bの一方端(入側)との間を連結する。配管340は、暖房膨張タンク320と、配管370との間に接続される。配管390の一端は、二次熱交換器21bの他方端(出側)と接続され、配管390の他端は、接続点395において、配管340と接続される。
配管340において、配管390との接続点395と、配管370との間にバイパス熱動弁345が介挿接続される。バイパス熱動弁345は、コントローラ300からの指令に応じて開閉制御されるが、閉状態においてもバイパス流路によって一定流量が確保される。即ち、バイパス熱動弁345の閉止時にも、接続点395及び配管370の間に熱媒体の流路が確保される。
暖房循環ポンプ310の吸入口311は、暖房膨張タンク320と接続される。暖房循環ポンプ310の吐出口312は、配管350の分岐部355と接続される。暖房膨張タンク320は、暖房循環ポンプ310の吸入口311と連結される。暖房膨張タンク320は、暖房回路103を循環する熱媒体を一時的に貯留する。暖房膨張タンク320の水位低下時には、給水弁327を開放することにより、配管51から給水することができる。また、水位上昇時には、配管325を経由して、オーバーフロータンク328から排水栓106へ、熱媒体を排出することができる。又、図示を省略しているが、缶体10の内部で発生したドレン(凝縮水)は、ドレンタンク(図示せず)にて貯留され、中和処理後に外部へ排出される。
配管360には、コントローラ300からの指令に応じて開閉制御される熱動弁330が介挿接続される。熱動弁330の開放時には、一次熱交換器11bで加熱された熱媒体は、配管370によって暖房出力口306(高温)へ出力される経路と、配管360を経由して循環される経路とに分けられる。従って、熱動弁330の開放時には、一次熱交換器11bから出力された熱媒体を、風呂熱交換器410、合流部385及び配管380を経由して二次熱交換器21bへ循環させる経路が、さらに形成される。
一方で、熱動弁330が閉状態であると、一次熱交換器11bから出力された熱媒体は、配管370のみへ供給される。配管370へ供給された熱媒体は、暖房出力口(高温)306及び配管340へ出力される。
一次熱交換器11bの出力側には、暖房回路103における缶体10からの出力温度、即ち、加熱後の熱媒体温度(以下、「高温側熱媒体温度Twh」とも称する)を検出するための温度センサ384が配置される。一方で、暖房膨張タンク320には、タンク内の熱媒体温度(以下、「低温側熱媒体温度Twl」とも称する)を検出するための温度センサ382が配置される。温度センサ382によって検出された低温側熱媒体温度Twlは、暖房出口(低温)304から供給される熱媒体の温度に相当する。温度センサ382,384は、たとえば、サーミスタにより構成される。
コントローラ300は、各センサからの出力信号(検出値)及びユーザ操作を受けて、給湯システム100の全体動作を制御するために、各機器への制御指令を発生する。ユーザ操作には、給湯システム100の運転オン/オフ指令及び設定湯温(Tr*)指令が含まれる。たとえば、ユーザ操作は、図示しないリモートコントローラに対して入力される。
制御指令には、各弁の開閉及び開度指令、燃焼バーナ30a,30bに対する指令(燃焼オンオフ及び発生熱量)、並びに、暖房循環ポンプ310のオンオフ指令等が含まれる。運転オン/オフ指令は、給湯回路101による給湯運転及び注湯運転、追焚回路102による追焚運転、並びに、暖房回路103による暖房運転の各々のオン/オフ指令を含む。なお、暖房運転については、高温暖房装置510及び低温暖房装置610(図2)に対するオン指令に応じて、給湯システム100における暖房運転が自動的にオンされてもよい。設定湯温(Tr*)は、給湯運転及び注湯運転のそれぞれに別個に設定されることが好ましい。なお、暖房運転では、直接、設定温度を入力しないことが一般的である。
給湯運転及び注湯運転時には、給湯回路101の燃焼バーナ30aでの燃焼によって、入水管50の低温水が加熱されて出湯管70へ出力される。コントローラ300は、給湯運転及び注湯運転時における、燃焼バーナ30aによる要求発生熱量P*を算出する。例えば、要求発生熱量P*は、缶体出側温度の検出値が目標値に制御されるように算出される。缶体出側温度の目標値は、ユーザによって設定された給湯運転及び注湯運転時の設定温度と、バイパス管60の分流率(分配弁80の開度)に基づいて設定できる。
追焚運転及び暖房運転時には、暖房循環ポンプ310の駆動によって形成される循環経路を循環する熱媒体が、燃焼バーナ30bでの燃焼によって加熱される。コントローラ300は、燃焼バーナ30bによる要求発生熱量P*を、温度センサ384によって検出された一次熱交換器11bの出力温度(高温側熱媒体温度Twh)の検出値が目標値へ制御されるように算出する。すなわち、燃焼バーナ30bによる要求発生熱量P*は、暖房回路103における一次熱交換器11bからの出力温度Tht*と、温度センサ382,384による検出温度(高温側熱媒体温度Twh,低温側熱媒体温度Twl)とに基づいて、算出することができる。代表的には、要求発生熱量P*は、設定された上限値Pmaxを超えない範囲内で、缶体10における目標昇温量ΔT(ΔT=Tht*-Thi)及び缶体出側温度の偏差ΔTht(ΔTht=Tht*-Tht)に基づいて算出することができる。
コントローラ300は、給湯運転、注湯運転、暖房運転及び追焚運転の各々において、算出された要求発生熱量P*に従って、燃焼バーナ30a,30bへの供給ガス量を算出する。さらに、コントローラ300は、この供給ガス量を実現するような、燃焼バーナ30a,30bのうちのバーナ燃焼本数及びガス流量の組合せを決定するとともに、決定されたバーナ燃焼本数及びガス流量が実現されるように、ガス比例弁33の開度及び能力切換弁35a~35c,36a,36bの開閉を制御する。さらに、コントローラ300は、算出された供給ガス量に対して、送風ファン40による送風量の比(空燃比)が所定値(たとえば、理想空燃比)となるように、送風ファン40の回転数を制御する。
給湯システム100では、暖房運転のオン時には、暖房循環ポンプ310の作動により、暖房戻口302と、暖房出力口(低温)304及び/又は暖房出力口(高温)306とを経由して、暖房回路103から、高温暖房装置510及び/又は低温暖房装置610に対して、下記の「暖房循環経路」によって熱媒体(温水)を循環供給することができる。
暖房循環ポンプ310の駆動によって、暖房戻口302から、配管380、二次熱交換器21b、配管390、接続点395、配管340、及び、暖房膨張タンク320を経由して、暖房循環ポンプ310の吸入口311に至る吸入経路が形成される。暖房膨張タンク320から暖房循環ポンプ310に吸入された熱媒体は、吐出口312から、配管350の分岐部355へ出力される。
暖房循環ポンプ310から吐出された熱媒体は、配管350の分岐部355において、端末熱動弁305及び暖房出力口(低温)304に至る出力経路と、一次熱交換器11bを通過する加熱経路とに分岐される。当該加熱経路は、一次熱交換器11bの通過後に暖房出力口(高温)306から熱媒体を出力する出力経路と、一次熱交換器11bの通過後に配管340(バイパス熱動弁345)を介して再び暖房膨張タンク320へ至る戻り経路とを含む。上述のように、バイパス熱動弁345の閉止時にも上記戻り経路は形成されるが、バイパス熱動弁345の開放時には、上記戻り経路の流量を増加させることができる。例えば、暖房運転のオン直後において熱媒体の温度が低い場合には、バイパス熱動弁345を開放することによって、熱媒体の温度を速やかに上昇することが可能となる。
上記暖房循環経路の形成によって、高温暖房装置510に対しては、暖房出力口306(高温)から、一次熱交換器11bを通過した高温水が供給される。一方で、低温暖房装置610に対しては、暖房出力口304(低温)から、暖房膨張タンク320内の湯が供給される。
暖房運転のオフ時には、暖房回路103、高温暖房装置510、及び、低温暖房装置610の各々での熱媒体の通流が停止される。従って、厳寒期等には、暖房運転のオフが長期間継続すると、熱媒体が凍結することが懸念される。従って、暖房回路103では、暖房運転のオフ時に、暖房回路103及び低温暖房装置610に熱媒体を循環させる凍結予防運転が自動的に実行される。例えば、凍結予防運転は、暖房運転オフ期間において、熱媒体温度Twh,Twl、図示しない雰囲気温度センサによって検出された気温、及び、熱媒体の循環が停止されてからの経過時間等の少なくとも1つを用いて予め定められた開始条件の成立時に自動的に起動される。
一般的な凍結予防運転では、特許文献1,2にも記載されるように、暖房運転オン時と同様の「暖房循環経路」を形成するとともに、燃焼バーナ30bでの燃焼オン(以下、「燃焼運転オン」とも称する)により、熱媒体が所定温度まで加熱される。この際に、一次熱交換器11bを通流する熱媒体の温度が低いと、一次熱交換器11bの外面(排ガスとの接触面)に結露によるドレン(凝縮水)が発生する虞がある。一方で、ドレンが発生しない温度まで熱媒体を加熱すると、当該熱媒体が暖房装置を通流することにより、暖房運転がオフされている当該暖房装置における温度上昇が過度となって、ユーザに違和感を生じさせることが懸念される。
従って、本実施の形態に係る暖房熱源機(暖房回路103)では、暖房装置側で過度の温度上昇を生じさせることなく、暖房回路103内部での結露発生を防止するための凍結予防運転を実行する。以下、本実施の形態では、低温暖房装置610を対象とする凍結予防運転について説明する。すなわち、低温暖房装置610は、凍結予防運転の対象となる「暖房装置」の一実施例に対応する。
図3は、実施の形態1に係る暖房熱源機による凍結予防運転の制御処理を示すフローチャートである。図3に示す制御処理は、暖房運転オフ時に、コントローラ300により繰返し実行される。さらに、図4には、図3の制御処理に伴う暖房回路103(暖房熱源機)の動作状態の遷移を説明するための図表が示される。
図3及び図4を参照して、コントローラ300は、ステップ(以下、単に「S」とも表記する)110により、凍結予防運転の開始条件が成立しているかどうかを判定する。上述のように、S110での開始条件は、熱媒体温度(Twh,Twl)及び/又は気温の低下、並びに、熱媒体の滞留時間(暖房循環ポンプ310の停止期間長)の長期化等を検知するように、任意に設定することができる。
暖房運転がオフされた凍結予防運転の開始前では、暖房回路103は、ステージ♯0(図4)である。図4に示されるように、ステージ♯0では、暖房循環ポンプ310がオフ、かつ、燃焼バーナ30bによる燃焼運転がオフであり、端末熱動弁305は閉状態である。
コントローラ300は、凍結予防運転の開始条件が成立すると(S110のYES判定時)すると、S120に処理を進めて、凍結防止運転を開始する。一方で、当該開始条件の不成立時(S110のNO判定時)には、凍結防止運転の開始は待機される。
コントローラ300は、S120により、暖房循環ポンプ310をオンするとともに、端末熱動弁305を開放する。これにより、図4に示されるように、暖房回路103は、ステージ♯0からステージ♯1へ遷移する。ステージ♯1においても、ステージ♯0と同様に、燃焼バーナ30bによる燃焼運転はオフに維持される。暖房循環ポンプ310のオン、及び、端末熱動弁305の開放により、暖房回路103及び低温暖房装置610の間には、暖房運転時と同様の暖房循環経路が形成される。
さらに、コントローラ300は、S120の実行後、S125により、所定時間Tx1の経過を待機する。Tx1は、端末熱動弁305が閉状態から開状態へ変化する所要時間、並びに、暖房循環経路の形成によって、暖房回路103の内部(以下、「機内」とも称する)に滞留した熱媒体、及び、低温暖房装置610を含む、暖房回路103の外部(以下、「機外」とも称する)に滞留した熱媒体が混合されて温度が均一化される迄の所要時間の和に対応させて予め設定される。
コントローラ300は、所定時間Tx1が経過すると(S125のYES判定時)、S130により、温度センサ382及び384によって検出された、ステージ♯1における高温側熱媒体温度Twh及び低温側熱媒体温度Twlを、加熱開始温度Tr1と比較する。加熱開始温度Tr1は、凍結予防のために燃焼による熱媒体の温度上昇が必要か否か判定するしきい値であり、例えば、Tr1=15℃程度に設定することができる。
高温側熱媒体温度Twh及び低温側熱媒体温度Twlの両方が加熱開始温度Tr1以上であるとき(S130のNO判定時)には、コントローラ300は、熱媒体の温度が凍結が危惧される領域まで低下していないと判定して、S200に処理を進める。S200では、暖房循環ポンプ310がオフされるとともに、端末熱動弁305が閉止されることにより、暖房予防運転を終了する。この結果、暖房回路103は、ステージ♯1から凍結予防運転の開始前と同様のステージ♯0(図4)へ復帰する。
コントローラ300は、高温側熱媒体温度Twh及び低温側熱媒体温度Twlの一方、又は、両方が加熱開始温度Tr1より低いとき(S130のYES判定時)には、S140により端末熱動弁305を再び閉止する。さらに、S145により、S140による端末熱動弁305の閉止指令の発生から所定時間Tx2の経過が待機される。Tx2は、端末熱動弁305が開状態から閉状態に変化する所要時間に対応して予め設定される。
端末熱動弁305の閉止により、暖房回路103は、ステージ♯1からステージ♯2(図4)へ遷移する。再び図1を参照して、ステージ♯2では、暖房回路103の内部において、暖房膨張タンク320から出力された熱媒体が、分岐部355、配管350、一次熱交換器11b、配管370、及び、配管340を経由して、再び暖房膨張タンク320に戻される循環経路(以下、「機内循環経路」とも称する)が形成される。
ステージ♯2では、端末熱動弁305の閉止と連動させてバイパス熱動弁345を開放することにより、循環される熱媒体の流量を増加させることが好ましい。或いは、バイパス熱動弁345については、凍結予防運転中を通じて開放することも可能である。
再び図3を参照して、コントローラ300は、端末熱動弁305の閉止指令の生成(S140)から所定時間Tx2が経過すると(S145のYES判定時)、S150により、燃焼バーナ30bによる燃焼運転をオンする。これにより、暖房回路103は、ステージ♯2からステージ♯3(図4)へ遷移する。ステージ♯3では、機内循環経路を通流する熱媒体が、燃焼バーナ30bからの熱量によって一次熱交換器11bで加熱される。
コントローラ300は、ステージ♯3中にはS160により、高温側熱媒体温度Twhを、加熱終了温度Tr2と比較する。Twh≦Tr2の期間中(S160のNO判定時)には、燃焼運転のオン(S150)が継続される。加熱終了温度Tr2は、一次熱交換器11bにおいて結露が発生しないような熱媒体の温度領域に対応させて、予め設定することができる。例えば、Tr2は、60℃以上の温度に設定することができる。
コントローラ300は、高温側熱媒体温度Twhが加熱終了温度Tr2よりも高くなると(S160のYES判定時)、S170に処理を進めて、燃焼バーナ30bによる燃焼運転をオフする。これにより、暖房回路103は、ステージ♯3からステージ♯4(図4)へ遷移する。コントローラ300は、S175により、ステージ♯4を所定時間Tx3の間維持する。これにより、燃焼運転がオフされた状態で機内循環経路の形成を継続することにより、熱媒体温度の均一化が図られる。
コントローラ300は、燃焼運転のオフ(S170)から所定時間Tx3が経過すると(S175のYES判定時)、S180に処理を進めて、端末熱動弁305を開放する。これにより、暖房回路103は、ステージ♯4からステージ♯5(図4)へ遷移する。ステージ♯5では、ステージ♯1と同様に、燃焼運転がオフされた状態で、低温暖房装置610を含む暖房循環経路が形成される。ステージ♯5では、暖房循環経路の形成により、機内循環経路で加熱された熱媒体と、機外に滞留した非加熱の熱媒体とが混合される。
コントローラ300は、さらに、S185により、S180による端末熱動弁305の開放指令の発生から所定時間Tx4が経過するまで処理を待機する。Tx4は、端末熱動弁305が閉状態から開状態に変化する所要時間、並びに、暖房循環経路の形成によって、加熱された熱媒体、及び、非加熱の熱媒体が混合されて温度が均一化される迄の所要時間の和に対応させて予め設定される。
コントローラ300は、端末熱動弁305の開放指令の生成(S180)から所定時間Tx4が経過すると(S185のYES判定時)、S190により、熱媒体温度を終了判定温度Tendと比較することにより、凍結予防運転の終了判定を実行する。終了判定温度Tendは、S130における加熱開始温度Tr1と同一値とすることができる。即ち、S160での加熱終了温度Tr2は、終了判定温度Tendよりも高い。
例えば、S190(運転終了判定)は、高温側熱媒体温度Twh及び低温側熱媒体温度Twlの両方が終了判定温度Tendよりも高い場合にYES判定とすることができる。一方で、高温側熱媒体温度Twh及び低温側熱媒体温度Twlの少なくとも一方が終了判定温度Tend以下であり、YES判定とされない状態が一定時間継続すると、S190(運転終了判定)は、NO判定とされる。
コントローラ300は、S190による凍結予防運転の終了判定がYES判定となると、S200に処理を進めて、凍結予防運転を終了する。S200では、暖房循環ポンプ310をオフするとともに、端末熱動弁305を閉止することによって、暖房回路103は、ステージ♯5から、凍結予防運転の開始前と同様のステージ♯0と同様のステージ♯6(図4)へ遷移する。
一方で、S190による凍結予防運転の終了判定がNO判定となると、凍結予防運転を継続するために、処理はS130に戻される。上述のように、ステージ♯5では、ステージ♯1と同様に、燃焼運転がオフされた状態で、低温暖房装置610を含む暖房循環経路が形成されているので、再び、ステージ♯1から、上述のS130~S190の処理が再実行される。
これにより、低温暖房装置610を通流する熱媒体の温度が終了判定温度Tendに達するまで、機内循環経路を形成して熱媒体を燃焼運転によって加熱する「第1の循環運転」と、当該第1の循環運転の後に実行される、燃焼運転をオフして暖房循環経路を形成する「第2の循環運転」との組み合わせによる凍結予防運転を継続することができる。
以上説明したように、実施の形態1に従う暖房熱源機の凍結防止運転では、機内循環経路を形成して燃焼運転をオンすることにより、低温暖房装置610での温度上昇を発生することなく、結露の発生を防止するために、一次熱交換器11bを通流する熱媒体を加熱終了温度Tr2まで加熱することができる。さらに、機内循環経路での熱媒体の加熱後に、燃焼運転をオフした状態で暖房循環経路を形成することにより、昇温された熱媒体を低温暖房装置610に通流させることで、低温暖房装置610を含む暖房循環経路での凍結の発生を防止することができる。この際に、低温暖房装置610を通流する熱媒体の温度は、加熱後の熱媒体(機内)と、非加熱の熱媒体(機外)とを混合した温度となるので、低温暖房装置610での温度上昇量を抑制することができる。
従って、実施の形態1に係る暖房熱源機によれば、低温暖房装置610を通流する熱媒体温度よりも高い温度まで加熱した熱媒体が一次熱交換器11bを通流する期間を設けることができる。この結果、低温暖房装置610で過度の温度上昇を生じさせることなく、かつ、暖房回路103内(一次熱交換器11b)での結露発生を防止することが可能な凍結予防運転を実現することができる。
実施の形態1において、ステージ♯2~♯4(図4)で形成される「機内循環経路」は「第1の循環経路」に対応し、暖房運転時及びステージ♯1,♯5(図4)で形成される「暖房循環経路」は「第2の循環経路」に対応する。又、凍結予防運転において、機内循環経路及び暖房循環経路を切替える端末熱動弁305は「切替機構」の一実施例に対応し、温度センサ382,384は「温度検出器」の一実施例に対応する。
又、燃焼バーナ30bは「熱源」の一実施例に対応し、燃焼バーナ30bによる燃焼運転のオンは「熱源の作動」に対応し、燃焼運転のオフは「熱源の停止」に対応する。更に、暖房循環ポンプ310は「循環ポンプ」の一実施例に対応し、コントローラ300は「制御器」の一実施例に対応する。
実施の形態1では、図4のS140~S160により、機内循環経路を形成して燃焼運転をオンすることによって「第1の循環運転」が実行され、図4のS180~S185により、暖房循環経路を形成することによって「第2の循環運転」が実行される。
特に、実施の形態1では、図4のS140~S160(第1の循環運転)の前に、ステージ♯1により暖房循環経路を形成した状態で、熱媒体温度を加熱開始温度Tr1と比較する。熱媒体温度が加熱開始温度Tr1以上であるときには、燃焼運転をオンすることなく凍結予防運転を終了することにより、無用な燃焼運転の実行によるエネルギ消費量の増大を回避することができる。即ち、図4のS120~S130により「予備循環運転」が実行される。
[実施の形態2]
実施の形態1では、機内循環経路を形成時における加熱終了温度Tr2を高く設定することにより、結露の発生を防止できる。一方で、加熱終了温度Tr2が高過ぎると、結露は防止できる一方で、運転オフ状態の暖房装置での温度上昇が過度となることで、ユーザに違和感を生じさせることが懸念される。
したがって、実施の形態2では、凍結予防運転中における熱媒体温度の実績から加熱終了温度Tr2を高精度に設定する制御を説明する。
図5及び図6は、実施の形態2に係る暖房熱源機における凍結予防運転の処理を説明するフローチャートである。図5及び図6に示す制御処理は、暖房運転オフ時に、コントローラ300により繰返し実行される。
図5及び図6を参照して、実施の形態2に係る凍結予防運転では、コントローラ300は、図3に示されたS110~S200の処理に加えて、S210~S260の処理をさらに実行する。
コントローラ300は、図3のS125のYES判定時、即ち、暖房循環経路が形成されたステージ♯1において、S210により、温度センサ382の検出値(低温側熱媒体温度Twl)に基づいて、検出温度T1を取得する(T1=Twl)。
さらに、コントローラ300は、S140による端末熱動弁305の閉止指令の生成後、燃焼バーナ30bによる燃焼運転のオン(S150)までの間に、S220,S230の処理によって、S150でオンされる燃焼運転での加熱終了温度Tr2を設定する。即ち、実施の形態2では、S150による燃焼運転の開始毎に、S220,S230によって加熱終了温度Tr2が都度算出される。
コントローラ300は、燃焼運転のオフ(S170)後、即ち、ステージ♯4において、機内循環経路内の熱媒体温度が安定すると(S175のYES判定時)、S240により、温度センサ382の検出値(低温側熱媒体温度Twl)に基づいて、検出温度T2を取得する(T2=Twl)。
さらに、コントローラ300は、燃焼運転のオフ後、さらに、端末熱動弁305が開放された後(S185のYES判定時)、S250により、温度センサ382の検出値に基づいて、検出温度T3を取得する(T3=Twl)。即ち、検出温度T3は、ステージ♯5における低温側熱媒体温度Twlに相当する。さらに、コントローラ300は、S260により、検出温度T1~T3を用いて、機外での熱媒体保有量(以下、機外保有量とも称する)V3の推定演算を実行する。当該保有量V3は、ステージ♯3において機外に滞留する非加熱の熱媒体の体積に相当する。
図7には、図5及び図6の制御処理に伴う暖房回路103(暖房熱源機)の動作状態の遷移を説明するための図表が示される。
図7を参照して、実施の形態2においても、実施の形態1と同様のステージ♯0~♯6の遷移により、凍結予防運転が実行される。更に、実施の形態2では、燃焼運転がオンされる毎に、当該燃焼運転の直前のステージ♯1で取得された検出温度T1と、暖房回路103の内部での熱媒体保有量(以下、機内保有量とも称する)V1及び機外保有量V3とを用いて、加熱終了温度Tr2が設定される。
ここで、凍結予防運転での暖房循環経路形成時(ステージ♯5)の熱媒体目標温度Ttg(Ttg≧Tend)、機内保有量V1、機外保有量V3、及び、検出温度T1と、燃焼運転における理論上の加熱目標温度Tr*とには、下記の式(1)が成立する。
V1・Tr*+V3・T1=(V1+V3)・Ttg …(1)
式(1)の左辺は、ステージ♯4、即ち、燃焼運転オフ、かつ、熱媒体の混合前における、機内の熱媒体及び機外の熱媒体のそれぞれの保有熱量の和に相当する。一方で、式(1)の右辺は、ステージ♯5、即ち、熱媒体の混合後における、機内及び機外の熱媒体全量の保有熱量に相当する。
式(1)を変形した下記の式(2)により、加熱目標温度Tr*を求めることができる。
Tr*=((V1+V3)・Ttg-V3・T1)/V1 …(2)
式(1),(2)において、機内保有量V1は、暖房回路103内の配管体積等から既知の定数であり、暖房熱源機を含む給湯システム100が施工配置される前に設定することができる。
一方で、機外保有量V3は、給湯システム100の施工現場毎に異なる値となるため、工場出荷段階では統一した定数とすることが困難である。従って、実施の形態2では、既知の機内保有量V1と、一連のステージ♯1~♯5で取得された検出温度T1~T3を用いた演算によって、機外保有量V3を推定する。
ステージ♯1において暖房循環経路が形成された状態で取得された低温側熱媒体温度Twl(S210)は、機外及び機内で共通の熱媒体温度である(T1=Twl)。従って、ステージ♯4において、非加熱である機外の熱媒体温度は、検出温度T1と同等とみなすことができる。従って、燃焼運転オフ後の機内の熱媒体の検出温度T2、及び、ステージ♯5での混合後における機内及び機外で共通の熱媒体の検出温度T3の間には、下記の式(3)の関係が成立することが理解される。
V1・T2+V3・T1=V1・T3+V3・T3 …(3)
式(3)の左辺は、ステージ♯4(熱媒体の混合前)での機内の熱媒体及び機外の熱媒体のそれぞれの保有熱量の和に相当する。一方で、式(3)の右辺は、ステージ♯5(熱媒体の混合後)における、機内及び機外の熱媒体全量の保有熱量に相当する。
式(3)を変形すると、機外保有量V3を推定するための下記の式(4)を得ることができる。
V3=V1・(T3-T2)/(T1-T3) …(4)
即ち、図6のS260では、一連のS210,S240,S250で取得された検出温度T1~T3と、既知の定数である機内保有量V1とを用いて、式(4)に従って、機外保有量V3の推定値を算出することができる。
尚、機外保有量V3は、基本的には、給湯システム100が一旦施工された後は変化しない定数である。従って、S260については、コントローラ300のリセット処理後における初回の凍結予防運転時のみ実行し、以降では、図示しないメモリ領域に、機外保有量V3の推定値を保持し、S220の実行毎に読み出して、式(2)による加熱目標温度Tr*の算出に用いる態様とすることが可能である。
或いは、機外保有量V3が構造等から既知である場合には、S260による推定演算を省略することが可能である。この場合には、既知の定数として予め記憶された機内保有量V1及び機外保有量V3の値をS220の実行毎に読み出すことで、式(2)によって加熱目標温度Tr*を算出することができる。
コントローラ300は、S230では、S220により算出された加熱目標温度Tr*を用いて、下記の式(5)により、今回の燃焼運転の加熱終了温度Tr2を設定する。
Tr2=T0+x …(5)
x=Tr*-T0(但し、x≧0)
T0は、結露が発生しないような熱媒体の温度領域の下限温度に対応させて、例えば、60℃程度に設定することができる。即ち、式(5)によれば、Tr2≧T0の範囲内で、かつ、ステージ♯5での熱媒体温度を熱媒体目標温度Ttgに上昇させるために必要な熱量が燃焼運転で与えられるように、加熱終了温度Tr2を設定することができる。
実施の形態2に係る暖房熱源機の凍結予防運転では、S230で設定された加熱終了温度Tr2に従って、燃焼運転のオフが判定される(S160)。従って、実施の形態1で説明した効果に加えて、燃焼運転時の結露発生防止と、運転オフ状態の暖房装置での過度な温度上昇の抑制とを、より確実に両立した凍結予防運転を実現することができる。
尚、実施の形態2において、S120,S130の間のS210で取得される検出温度T1は、予備循環運転における「第1の検出温度」に対応し、S180の前のS240で取得される検出温度T2は、第2の循環運転の開始前における「第2の検出温度」に対応する。又、S180~S185の後のS250で取得される検出温度T3は、第2の循環運転の終了後における「第3の検出温度」に対応する。同様に、機内保有量V1は「第1の保有量」に対応し、機外保有量V3は「第2の保有量」に対応する。
[実施の形態3]
実施の形態1及び2では、暖房装置側に熱媒体を通流する際には、燃焼バーナ30bの燃焼運転を完全にオフした状態としたが、実施の形態3では、簡易な凍結予防運転の変形例を説明する。
図8は実施の形態3に係る暖房熱源機の凍結予防運転における制御処理を説明するためのフローチャートである。図8に示す制御処理についても、暖房運転オフ時に、コントローラ300により繰返し実行される。さらに、図9には、図8の制御処理に伴う暖房回路103(暖房熱源機)の動作状態の遷移を説明するための図表が示される。
図8及び図9を参照して、コントローラ300は、S110(図3)と同様のS310により、凍結予防運転の開始条件が成立したかどうかを判定する。暖房運転がオフされた凍結予防運転の開始前では、暖房回路103は、ステージ♯A(図9)である。図9に示されるように、ステージ♯Aでは、暖房循環ポンプ310がオフ、かつ、燃焼バーナ30bによる燃焼運転がオフであり、端末熱動弁305は閉状態である。
コントローラ300は、凍結予防運転の開始条件が成立(S310のYES判定時)すると、S320に処理を進めて、凍結防止運転を開始する。一方で、当該開始条件の不成立時(S310のNO判定時)には、凍結防止運転の開始は待機される。
コントローラ300は、S320により、暖房循環ポンプ310をオンするとともに、S330により、燃焼バーナ30bによる燃焼運転を開始する。これにより、図9に示されるように、暖房回路103は、ステージ♯Aからステージ♯Bへ遷移する。ステージ♯Bにおいても、ステージ♯Aと同様に、端末熱動弁305は閉状態である。従って、暖房循環ポンプ310のオン、及び、燃焼運転のオンにより、暖房回路103では、実施の形態1,2でのステージ♯3と同様に、機内循環経路が形成された状態で、熱媒体が加熱される。
ステージ♯Bでは、暖房循環ポンプ310のオンとともにバイパス熱動弁345を開放することにより、機内循環される熱媒体の流量を増加させることが好ましい。或いは、バイパス熱動弁345については、凍結予防運転中を通じて開放することも可能である。
さらに、コントローラ300は、S330による燃焼運転の開始後に、S340により、端末熱動弁305の開放指令を生成する。これにより、実施の形態1の所定時間Tx1(S125)相当の経過後には、端末熱動弁305が開状態となることにより、図9に示すように、暖房回路103は、ステージ♯Bからステージ♯Cへ遷移する。
ステージ♯Cでは、端末熱動弁305の開放による暖房運転時と同様の暖房循環経路が形成された状態で、燃焼バーナ30bの燃焼運転によって、熱媒体が加熱される。コントローラ300は、ステージ♯C中において、S350により、熱媒体温度を終了判定温度Tend♯と比較することにより、凍結予防運転の終了判定を実行する。
例えば、S350(運転終了判定)は、高温側熱媒体温度Twhが終了判定温度Tend♯よりも高い場合にYES判定とされる。一方で、高温側熱媒体温度Twhが終了判定温度Tend♯以下である場合には、S350(運転終了判定)は、NO判定とされる。コントローラ300は、S350による凍結予防運転の終了判定がNO判定の間、燃焼バーナ30bの燃焼運転のオンを継続する。
一方で、コントローラ300は、S350による凍結予防運転の終了判定がYES判定となると、S360により、燃焼バーナ30bの燃焼運転をオフする。これにより、図9に示すように、暖房回路103は、ステージ♯Cからステージ♯Dへ遷移する。ステージ♯Dでは、実施の形態1及び2でのステージ♯5と同様に、燃焼運転がオフされた状態で暖房循環経路が形成される。
コントローラ300は、S370により、所定時間Tyが経過するまで、ステージ♯Dを維持する。これにより、高温側熱媒体温度Twhが終了判定温度Tend♯まで上昇した後で、機外及び機内の熱媒体温度を均一化するために時間をさらに確保することができる。
コントローラ300は、燃焼運転のオフ(S360)から所定時間Tyが経過すると(S370のYES判定時)、S380に処理を進める。コントローラ300は、S380では、暖房循環ポンプ310をオフするとともに、端末熱動弁305を閉止する。これにより、図9に示されるように、暖房回路103が、ステージ♯Dから、凍結予防運転の開始前と同様のステージ♯Aと同様のステージ♯E(図9)へ遷移することによって、凍結防止運転は終了される。尚、S320でバイパス熱動弁345を開放する場合には、S380において、バイパス熱動弁345は閉止される。
なお、図8のフローチャートにおいて、S330の直後にS340に処理を進めても、端末熱動弁305が実際に開状態となる迄の所要時間に対応して、ステージ♯B、すなわち、機内循環経路が形成された状態で熱媒体を加熱する期間を設けることが可能である。又は、S330の処理後において、所定時間の経過後、或いは、高温側熱媒体温度Twhの温度条件(実施の形態1,2の様な加熱終了温度の設定)の成立後に、S340に処理を進めるように、図8の制御処理を変形することも可能である。
以上説明したように、実施の形態3に係る暖房熱源機の凍結予防運転においても、最終的に(ステージ♯D)低温暖房装置610を通流する熱媒体温度よりも高い温度の熱媒体を、一次熱交換器11bに通流することができる。従って、低温暖房装置610で過度の温度上昇を生じさせることなく、暖房回路103内(一次熱交換器11b)での結露発生を防止することが可能な凍結予防運転を実現することができる。
特に、実施の形態3に係る暖房熱源機の凍結予防運転によれば、暖房回路103の外部の熱媒体保有量(機外保有量V3)が、暖房回路103内部の熱媒体保有量(機内保有量V1)と比較して多い場合にも、熱媒体の昇温に要する時間を短縮することが可能である。
実施の形態3では、図8S330により、機内循環経路を形成して燃焼運転をオンすることによって「第1の循環運転」が実行され、図4のS340以降において、暖房循環経路を形成することによって「第2の循環運転」が実行される。実施の形態3では、「第2の循環運転」において、燃焼運転のオン(即ち、熱源の作動)が維持される。
尚、本実施の形態では、暖房出力口(低温)304に対して端末熱動弁305を配置した暖房回路103により、低温暖房装置610を対象とした凍結防止運転を説明したが、暖房出力口(高温)306に対して同様の端末熱動弁を配置することにより、高温暖房装置510を対象として、実施の形態1~3で説明した凍結予防運転を実行することも可能である。
又、実施の形態1~3で説明した給湯システム100は、暖房熱源機に相当する暖房回路103に加えて、給湯回路101及び追焚回路102を具備しているが、給湯回路101及び追焚回路102については、配置が省略されても構わない。更に、暖房回路103の構成についても、上述の暖房装置をバイパスした機内循環経路、及び、暖房装置を含む暖房循環経路の切替機構を具備する構成であれば、任意の構成を有する暖房熱源機(暖房回路103)に対して、実施の形態1~3で説明した凍結予防運転を適用することができる。
更に、熱媒体を加熱するための「熱源」についても、実施の形態1~3で例示したガスを燃料とする燃焼バーナに限定されるものではなく、作動及び停止を制御可能であれば任意の熱源を適用することが可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。