本発明は、画像形成装置、若しくは、画像形成装置の一部を構成するプロセスカートリッジのいずれかの形態としても実施可能である。
以下、本発明に係る電子写真画像形成装置を図面に則して説明する。なお、以下に説明する実施例は、例示的に本発明を説明するものであって、以下に記載される構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置関係などは、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれに限定するものではない。
ここで、電子写真画像形成装置とは、電子写真画像形成方式を用いて記録媒体に画像を形成するものである。そして、電子写真画像形成装置の例としては、例えば、電子写真複写機、電子写真プリンター(例えば、レーザービームプリンター、LEDプリンター等)、ファクシミリ装置及びワードプロセッサ等が含まれる。
また、画像形成装置の一部を構成するプロセスカートリッジとは、帯電手段、現像手段またはクリーニング手段と電子写真感光体ドラムとを一体的にカートリッジ化し、このカートリッジを電子写真画像形成装置の本体に対して着脱可能とするものである。また、帯電手段、現像手段、クリーニング手段の少なくとも1つと電子写真感光体ドラムとを一体的にカートリッジ化して電子写真画像形成装置の本体に着脱可能とするものである。更に、少なくとも現像手段と電子写真感光体ドラムとを一体的にカートリッジ化して電子写真画像形成装置の本体に着脱可能とするものである。
<画像形成装置>
まず、本発明の実施例(以下、本実施例と称する)に係る電子写真画像形成装置(以下、画像形成装置)の(1)全体構成、(2)各制御部の構成、および、(3)画像形成プロセスについて、図2および図3を用いて説明する。
なお、図2は、本実施例に係るプロセスカートリッジが使用される画像形成装置の断面概念図である。図3は、本発明の実施例に係るプロセスカートリッジが使用される画像形成装置の制御部の構成図である。
(1)全体構成
図2に示すように、本実施例では、画像形成装置100は、インライン方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザープリンタである。画像形成装置100は、画像情報にしたがって、記録材P(例えば、記録用紙、プラスチックシートなどの記録媒体)にフルカラー画像を形成することができる。画像情報は、画像読み取り装置、或いは、画像形成装置100に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器から、画像形成装置100に入力される。
画像形成装置100は、複数の画像形成部として、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための第1、第2、第3、第4のプロセスカートリッジSa、Sb、Sc、Sdを有する。本実施例では、第1~第4のプロセスカートリッジSa、Sb、Sc、Sdは、鉛直方向と交差する方向に一列に配置されている。
なお、本実施例では、第1~第4のプロセスカートリッジSa、Sb、Sc、Sdの構成及び動作は、形成する画像の色が異なることを除いて実質的に同じである。したがって、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字a、b、c、dは省略して、総括的に説明する。
本実施例では、画像形成装置100は、複数の像担持体として、鉛直方向と交差する方向に並設された4個のドラム型の電子写真感光体、すなわち、感光体ドラム1(1a、1b、1c、1d)を有する。感光体ドラム1は、駆動手段(駆動源)を構成する第2駆動部1001により回転駆動される。
感光体ドラム1の周囲には、帯電ローラ2(2a、2b、2c、2d)、スキャナユニット(露光装置)3(3a、3b、3c、3d)、現像ユニット(現像装置)4(4a、4b、4c、4d)が配置されている。
帯電ローラ2は、感光体ドラム1の表面を均一に帯電する帯電手段である。またスキャナユニット3は、パーソナルコンピュータ等のホスト機器から入力された画像情報からCPU(不図示)で演算された出力に基づき、レーザーを照射して感光体ドラム1上に静電像(静電潜像)を形成する露光手段である。
現像ユニット4は、静電像を現像剤(以下、トナーT)像として現像する現像手段である。
後述するが、本実施例では、現像ユニット4は主に、現像ローラ22と現像ブレード23を備えている。現像ローラ22は、さらに第1駆動部2202によって回転駆動される。
また、本実施例では、現像ブレード23は、第1電圧印加手段2301から電圧が印加可能なように構成されている。現像ローラ22は、第2電圧印加手段2201から電圧が印加可能なように構成されている。
そして、感光体ドラム1と、感光体ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2と、現像ユニット4とは一体化され、プロセスカートリッジSを形成している。プロセスカートリッジSは、画像形成装置100に設けられた装着ガイド、位置決め部材などの装着手段を介して、画像形成装置100に着脱可能となっている。
また、4個の感光体ドラム1に対向して、感光体ドラム1上のトナー像を記録材Pに転写するための中間転写体としての中間転写ベルト10が配置されている。無端状のベルトで形成された中間転写ベルト10は、すべての感光体ドラム1に当接し、図示矢印R3方向(時計方向)に循環移動(回転)する。中間転写ベルト10は、複数の支持部材として、二次転写対向ローラ13、駆動ローラ11、テンションローラ12に掛け渡されている。
中間転写ベルト10の内周面側には、各感光体ドラム1に対向するように、一次転写手段としての4個の一次転写ローラ14(14a、14b、14c、14d)が並設されている。一次転写ローラ14は、中間転写ベルト10を感光体ドラム1に向けて押圧し、中間転写ベルト10と感光体ドラム1とが当接する一次転写部を形成する。
また、中間転写ベルト10の外周面側において二次転写対向ローラ13に対向する位置には、二次転写手段としての二次転写ローラ20が配置されている。二次転写ローラ20は、中間転写ベルト10を介して二次転写対向ローラ13に圧接し、中間転写ベルト10と二次転写ローラ13とが当接する二次転写部を形成する。
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置30に搬送される。定着装置30において記録材Pに熱及び圧力を加えられることで、記録材Pにトナー像が定着される。
なお、画像形成装置100は、所望の一つの画像形成部のみを用いて、又は、幾つか(全てではない)の画像形成部のみを用いて、単色又は、マルチカラーの画像を形成することもできるようになっている。
本実施例において画像形成装置100は、プロセススピード148.2mm/sec、A4サイズ紙対応のプリンターである。
(2)各制御部の構成
以下、図3を参照して、画像形成装置全体の制御を行うコントローラ200を含む各制御部の構成について説明する。
コントローラ200(制御部)は、図3に示すように、CPU回路部150、ROM151およびRAM152を内蔵する。CPU回路部150はROM151に格納されている制御プログラムに応じて、一次転写制御部201、二次転写制御部202、現像制御部203、露光制御部204、帯電制御部205を統括的に制御する。
環境テーブルや紙厚さ対応テーブルはROM151に格納されておりCPUが呼び出して反映される。RAM152は、制御データを一時的に保持し、また制御に伴う演算処理の作業領域として用いられる。一次転写制御部201、二次転写制御部202は、それぞれ一次転写電源15と二次転写電源21を制御し、不図示の電流検出回路が検出する電流値に基づいて一次転写電源15と二次転写電源21から出力する電圧を制御している。
コントローラは、ホストコンピュータ(不図示)から画像情報と印字命令を受信すると、各制御部(一次転写制御部201、二次転写制御部202、現像制御部203、露光制御部204、帯電制御部205)を制御して印字動作に必要な画像形成動作を実行する。
コントローラ200(制御部)の指令信号に従って、現像制御部203は、第1駆動部2202および第2駆動部1001を制御している。一方、コントローラ200の指令信号に従って、帯電制御部205は、第1電圧印加部2301および第2電圧印加部2201を制御している。
即ち、コントローラ200(制御部)は、第1駆動部2202、第2駆動部1001、第1電圧印加部2301、および、第2電圧印加部2201のそれぞれの動作について制御を行っている。
(3)画像形成プロセス
以下、本実施例の画像形成装置の画像形成プロセスについて説明する。
画像形成時には、まず感光体ドラム1の表面が帯電ローラ2によって一様に帯電される。
次に、ホスト機器から入力された画像情報からCPUで演算された出力に基づいてスキャナユニット3から発せられたレーザー光で帯電した感光体ドラム1の表面を走査露光し、感光体ドラム1上に画像情報に従った静電像が形成される。
次に、感光体ドラム1上に形成された静電像は、現像ユニット4によってトナー像として現像される。
そして、一次転写ローラ14に、一次転写電圧印加手段としての一次転写電圧電源15(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。これによって、感光体ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト10上に一次転写される。なお、フルカラー画像の形成時には、上述のプロセスが、第1~第4のプロセスカートリッジSa、Sb、Sc、Sdにおいて順次に行われ、中間転写ベルト10上に各色のトナー像が次に重ね合わせて一次転写される。
その後、中間転写ベルト10の移動と同期が取られて記録材Pが二次転写部へと搬送される。
そして、二次転写ローラ20に、二次転写電圧印加手段としての二次転写電圧電源21(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト10上の4色トナー像は、記録材Pを介して中間転写ベルト10に当接している二次転写ローラ20の作用によって、給送手段によって搬送された記録材P上に一括して二次転写される。
トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置30に搬送される。定着装置30において、記録材Pは、熱及び圧力を加えられることで、転写されたトナー像が定着され、画像形成装置100から排出される。
なお、現像ユニット4は、トナーTの現像量をコントロールするために、現像剤担持体としての現像ローラ22(後述)を感光体ドラム1に対して速度差を持たせながら接触させて反転現像を行うものとした。すなわち、感光体ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーを、感光体ドラム1上の露光により電荷が減衰した部分(画像部、露光部)に付着させることで静電像を現像する現像ユニット4を用いた。
また、一次転写工程で残留した感光体ドラム1の表面の転写残トナーは、後述の現像ローラ22によって回収され、再利用される。なお、一次転写工程で残留した感光体ドラム1の表面の転写残トナーは帯電ローラ2を通過するときに、正規の帯電極性に帯電される。その後、帯電ローラ2によって形成される感光体ドラム1の電位と、現像ローラ22に直流電圧を印加されて形成される現像ローラ22の電位の電位差による電界によって、転写残トナーは現像ローラ22に回収され、再利用される。
<プロセスカートリッジの構成>
以下、本実施例の画像形成装置100に装着されるプロセスカートリッジSの構成について説明する。
本実施例では、各色用のプロセスカートリッジSは、図示しない識別部等を除き、同一形状を有する。そして、各色用のプロセスカートリッジSの現像ユニット4内には、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーが収容されている。
なお、本実施例では、現像ユニット4は、現像剤として非磁性一成分トナーを用いた。
プロセスカートリッジSは、感光体ドラム1、回転可能な帯電ローラ2を備えた感光体ユニットと、回転可能な現像ローラ22等を備えた現像ユニット(現像装置)4と、を一体化して構成される。
感光体ドラム1は、図示しない軸受を介して回転可能に支持されている。感光体ドラム1は、図示しない駆動手段(駆動源)の駆動力が感光体ユニットに伝達されることで、画像形成動作に応じて図示矢印R1方向(反時計方向)に回転駆動される。帯電ローラ2は、導電性ゴムのローラ部が感光体ドラム1に加圧接触し、感光体ドラム1に従動回転される。
一方、現像ユニット4は、図4に示すように、トナーTを担持する現像ローラ22と、現像ブレード23(規制部材)と、これらを固定する現像枠体24と、を有している。
現像枠体24は、現像ローラ22が配置された現像室24aと、現像室24aから外界へつながる現像開口部を封止する吹き出し防止シート24bと、を備えている。
現像ブレード23の一端(固定端)は、現像枠体24に固定された固定部材25に固定され、現像ブレード23の他端(自由端)が現像ローラ22に当接され、現像ローラ22上のトナーコート量規制と電荷付与が可能なように構成されている。
現像ローラ22は、現像開口部に配置され、感光体ドラム1に当接可能なように構成されている。また、現像ローラ22は、図4に示す矢印の方向R4へ回転駆動される。一方、感光体ドラム1は方向R1へ回転駆動される。
なお、図4に示すように、本実施例では、現像ローラ22と感光体ドラム1は、対向部(接触部C1)において各々の表面(C2、C3)が同方向(本実施例では重力方向上方からから下方に向かう方向)に移動するように、それぞれ回転駆動される。また、所定の直流電圧が現像バイアスとして現像ローラ22に印加される。そして、摩擦帯電でマイナス(負極性)に帯電したトナーによって、感光体ドラム1と接触する現像部(接触部)において、感光体ドラム上の静電潜像が顕像化され、トナー像(現像剤像)が感光体ドラムに形成される。
現像ブレード23は、図4に示すように、現像ローラ22の回転方向に対してカウンター方向を向くようにして当接しており、トナーのコート量の規制及び電荷付与を行っている。即ち、現像ブレード23は、その自由端が現像ローラ22の回転方向の上流側に延びるように、現像ローラの表面に当接している。
また、本実施例では、現像ブレード23として、厚さ50~120μmの板バネ状のSUS板の支持部材23aを用いることができる。支持部材23aのバネ弾性を利用して、ブレード部23bの表面を現像ローラ22に当接させることができる。ブレード部23bは、短手方向において、一端(自由端)にブレード部23bが形成され、他端(固定端)が現像枠体24に固定された固定部材25に接続され、支持された構成とされている。
なお、現像ブレード23は前述した構成に限定されず、支持部材23aとしてSUS板を用いる他、例えば、リン青銅やアルミニウム等の金属薄板を用いても良い。また、ブレード部23bは、支持部23aの表面に、ポリアミドエラストマー、ウレタンゴム、または、ウレタン樹脂等の導電性樹脂からなる薄膜を被覆してもよい。あるいは、支持部材23aそのものを現像ブレード23として現像ローラ22に当接させてもよい。
さらに、所定直流電圧を現像ブレード23に印加し、現像ブレード23と現像ローラ22の電位差を制御することで、後述する現像ローラ22上のトナー搬送量を制御することができる。
(1)現像ローラの構成および製作方法
以下、図1(a)、(b)を用いて、本実施例の最大の特徴である現像ローラ22について詳細に説明する。なお、図1(a)は、本実施例に係るプロセスカートリッジの現像ローラの断面概念図である。また、図(b)は、現像ローラの表面における平面拡大概念図である。
図1(a)に示すように、現像ローラ22は、金属芯金22aの表面に、表層22c、基層22b、誘電部22dがこの順に積層して形成される。
なお、本実施例では、基層22bは、表1に記載のシリコーンゴム組成物からなり、表層22cは表2に記載のウレタンからなる。そして、誘電部22dは表3に記載の材料からなる絶縁性の塗料が表層22cに塗布されて形成される。表層22cおよび基層22bは、金属芯金22aを介して、アースに接地されている。
以下、本実施例における現像ローラ22の製法、材料および寸法などについて説明する。
(1-1)金属芯金22a
金属芯金22aは、外径6mm、長さ259.9mmのSUS304製の芯金に、プライマー(商品名:DY35-051、東レ・ダウコーニング株式会社製)を塗布し、温度150℃で20分間加熱して製作される。
(1-2)基層22b
基層22bは、(1)で製作された金属芯金22aに積層して形成される。具体的には、金属芯金22aを内径10.0mmの円筒状金型内に挿入し、金型の円筒に同心となるように金属芯金を設置する。
そして、基層22bの形成材料として、表1に示す材料を混合機(商品名:トリミックスTX-15井上製作所社製)で混合した混合物を、温度120℃に加熱された金型内に注入する。その後、金型を温度120℃にて10分間加熱して成型し、そして室温まで冷却後、金型から脱型する。このように、金属芯金22aの外周には、厚み2.00mmの基層22bが形成される。
(1-3)表層22c
表層22cは、基層22bの表面に表層22cを形成する塗料を塗布することにより形成される。なお、表層22cを形成する塗料は、以下の方法にて製作される。
即ち、表2に示す複数の材料を秤量して撹拌混合させ、混合物の固形分濃度が28質量%になるように混合物をメチルエチルケトン(Aldrich社製)に投入して攪拌する。そして、さらにビーズミル(アシザワファインテック社製)にて均一に分散して、塗料を製作する。
基層22bが形成されたローラを、「オーバーフロー式」循環塗工機にて、上記の塗料の液中に浸漬して、塗工する。これにより、基層22bの表面に、膜厚が15μmの層が塗布(形成)される。さらに、塗布されたローラを、温度130℃にて90分間加熱して、塗膜を乾燥・硬化させれば、基層22bに弾性を有する表層22cが形成(積層)される。
(1-4)誘電部22d
誘電部22dは、表層22cの表面に、誘電部を形成する塗料を塗布することにより形成される。なお、誘電部を形成する塗料は、以下の方法にて製作される。
即ち、表3に示す複数の材料を秤量して撹拌混合させ、混合物の固形分濃度が3質量%になるように混合物をメチルエチルケトン(Aldrich社製)に投入して攪拌し、塗料を製作する。次に、スプレー塗工にて塗料の塗着量が0.040gとなるよう、表層22cが形成されたローラの表面に上記塗料を塗布する。さらに、温度140℃にて80分間加熱して、塗膜を乾燥・硬化させれば、表層22cの表面に誘電部22dを有する現像ローラ22の製作が完了する。
(2)現像ローラ上のトナーが受ける力の作用
(2-1)グラディエント力の作用
上記の製法で製作された現像ローラ22は、図1(B)に示す通り、表面に誘電部22dと表層22c(基層22bと金属芯金22aを介して接地されている)とが不規則に混在して分布するように構成されている。現像ローラ22の表面に、現像ブレード23が直接に摺擦、または、トナーTを介して摺擦されることにより、現像ローラ22の誘電部22dに所定の電荷が付与される(帯電される)。
電荷が付与された誘電部22d上に電界が発生する。特に、誘電部22dと芯金22aを介して接地された表層22cとの隣接部上には「微小閉電界E」が発生し、現像ローラ22の表面全体では、多数の微小閉電界Eが形成される。
例えば、トナーTを介した現像ブレード23の現像ローラ22への摺擦により誘電部22dに電荷を付与すると、図5に示すように誘電部22dから表層22cへ円弧状に伸びる微小閉電界Eが多数形成される。その結果、現像ローラ22上には現像室24a内の帯電したトナーTはもちろんのこと、無帯電、又は低帯電等の帯電量が不安定なトナーTも、現像ローラ22上の多数の微小閉電界Eの発生領域に搬送される。
なお、搬送された現像剤Tは、電界によって生じる静電的な力、及び無帯電の現像剤の場合は微小閉電界Eによって生じる後述のグラディエント力(Gradient Force)を受けて、現像ローラ22面に吸引されて担持される。
ここで、図6(a、b)を用いて、「グラディエント力」について詳細に説明する。
図6(a)、(b)は、本実施例に係るプロセスカートリッジの現像ローラ表面におけるグラディエント力の作用を示す概念図である。特に、図6は、電界中の誘電体粒子(現像剤粒子)の運動を示している。
図6(a)に示すように、帯電した誘電体粒子(トナー粒子)71が外部から与えられた電界の中にあるときは、その帯電電荷の極性の正、負に応じて、電界の方向と同一方向、又は逆方向の静電的な力をうける。
また、図6(b)に示すように、場所的に大きさが異なる不平等電界が形成されている場合には、そこにある無帯電誘電体粒子(トナー粒子)72は、例え電荷を持たなくとも電界の強い領域(図6(b)では右の方向)に向かう力をうける。この力は、「グラディエント力」である。
このように、静電的な力もしくは「グラディエント力」によって現像ローラ上に担持されたトナーTは、規制部材である現像ブレード23によって所定の厚さに規制される。この際、現像ブレード23がトナーTを介して現像ローラの表面を摺擦(摩擦帯電)より、それぞれの部材の構成材料の摩擦帯電系列上の位置に応じた極性で、現像動作に必要な所定の帯電量にトナーTを帯電させることができる。即ち、現像ローラ22上には所定の付着量及び帯電量の多層のトナーTを安定して担持することができる。
なお、グラディエント力は、電界の強い領域(すなわち表層22cと誘電部22dの境界)に近いほど、表層22cと誘電部22dの間の電位差が大きくなり、微小閉電界Eも強くなる。したがって、搬送されるトナーTも表層22cと誘電部22dの境界付近に強く(多く)搬送され、誘電部22dの直上などの部位は、比較的に弱く(少なく)搬送される。このため、図9に示すように、現像ローラ22は、誘電部22dの表面にはトナーTが付着されていない(露出した)領域(露出部22d1)が形成される。
したがって、通常の画像形成プロセス(画像形成動作)による現像ローラの回転動作のみで、「露出部」が感光体ドラム1を常に摺擦することができる。その結果、感光体ドラム1上に付着した放電生成物などの異物が現像ローラ22のこの「露出部」によって掻き取られることができる。即ち、感光体ドラム上の放電生成物の付着や蓄積を抑制することができ、放電生成物に起因する画像不良を軽減することもできる。
なお、誘電部22dの露出部の領域を大きくすれば、感光体ドラム1との接触の機会が増え、摺擦による掻き取り能力が向上する。一方、誘電部22dの露出部22d1の領域の増大に連れて、現像ローラ22のトナー搬送量が低下することになる。
従って、トナー搬送量の低下を防ぐために、現像ローラ22のトナー搬送量の「下限値」を、予め画像形成に必要な画像濃度に基づき設定した場合、誘電部22dには十分な「露出部(露出領域)」を確保できなくなる可能性がある。
この問題に対して、本実施例では、「画像形成時」と「非画像形成時」のそれぞれに、誘電部22dの「露出領域」の面積を設定することで、「画像形成時」に画像濃度を維持しつつ、「非画像形成時」に「放電生成物の付着や蓄積」を抑制する。これにより、正常の画像形成動作を実現しつつ、放電生成物に起因する画像不良(画像流れ)を抑制することができる。
(2-2)グラディエント力+クーロン力の作用
誘電部22dに、現像ブレード23が直接、又はトナーTを介して摺擦されることによって、誘電部22dの帯電極性がトナーTの正規帯電極性と同極性になるように、誘電部または現像ブレードを構成することができる。
先述したように、放電生成物の掻き取り性の向上の観点では、誘電部22dをより露出した状態とすることが望ましい。したがって、誘電部22dとトナーTの帯電極性を同極性とした場合、「微小閉電界E」による「グラディエント力」による作用に加え、電荷の「クーロン力」(斥力)によって誘電部22d上のトナーTが誘電部22dから離れる傾向にある。したがって、グラディエント力とクーロン力の作用によって、より積極的に誘電部22dをトナーTから露出させる(露出部22d1を形成する)ことができる。
その結果、現像ローラ22上の誘電部22dをより多く露出することが可能になり、放電生成物の掻き取り能力が強まる。よって、放電生成物に起因する画像不良(画像流れ)をより効果的に抑制できる。
なお、本実施例では、誘電部22dに対して現像ブレード23が直接、又はトナーTを介して摺擦されることによって、誘電部22dの帯電極性は、「負極性」となり、トナーTの正規帯電極性(負極性)と同極性である。
一方、誘電部22dに対して、現像ブレード23が直接、又はトナーTを介して摺擦によって、誘電部22dの帯電極性を「正極性」にすることもできる。この場合、以下のように現像ローラ22を製作することができる。
現像ローラ22に表層22cが形成された弾性層ローラは、前述の製法で得ることができる。次に、スチレンアクリル系樹脂(商品名:ヒタロイドHA-1470、日立化成工業社製)の固形分濃度が3質量%になるように混合物をメチルエチルケトン(Aldrich社製)に投入して攪拌し、塗料を製作する。
次に、スプレー塗工にて塗料の塗着量が0.040gとなるよう、表層22cが形成されたローラの表面に上記塗料を塗布する。さらに、温度90℃にて60分間加熱して、塗膜を乾燥させれば、表層22cの表面に「正極性」になれる誘電部22dを有する現像ローラ22の製作が完了する。
(3)グラディエント力をより高めるための構成
次に、グラディエント力(電界強度)をより高められる構成について説明する。
(3-1)トナーの形状(平均円形度)
前述したとおり、現像ローラ22上の誘電部22dは、現像ブレード23との摺擦、あるいはトナーTを介した摺擦によって所定の電極性(電荷)が付与される。なお、現像ブレード23と、現像ローラ22上の誘電部22dとの間において、トナーTが転がりやすいほど電荷の授受(帯電)が促進される。
具体的には、トナーTが真球に近いほど誘電部22dに対する帯電性が良くなる。本実施例では、トナーTの平均円形度が0.97以上の場合、トナーTがより転がりやすくなり、誘電部22dへの電荷の付与能(帯電性)が高まることが確認できた。
一方、誘電部がより帯電された場合、誘電部22dと表層22cの境界部において、より強く「微小閉電界E」を形成することができる。これにより、より多くの誘電部22dを露出させることが可能になる。
従って、露出部による放電生成物の掻き取り性が向上し、画像流れなどの放電生成物の付着に起因する画像不良を効果的に抑制することができる。
トナーの平均円形度の測定方法については説明する。
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000型」(シスメックス(株)製)によって測定した。
具体的には、イオン交換水20mLに、分散剤として界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩を適量加えた後、測定試料0.02gを加える。混合物を発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散機(例えば「VS-150」((株)ヴェルヴォクリーア製など)を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とした。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。
標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス(株)製)を用いて測定を行った。調製した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測した。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径2.00μm以上、200.00μm以下に限定し、トナー粒子の平均円形度を求めた。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えばDuke Scientific社製5200Aをイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施する。
なお、本実施例では、シスメックス(株)による校正作業が行われたシスメックス(株)が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を用いた。解析粒子径を円相当径2.00μm以上、200.00μm以下に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000型」(シスメックス(株)製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。
フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積や周囲長などが計測される。
次に、各粒子像の投影面積Sと周囲長Lを求める。上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度は、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度C=2×(π×S)0.5/L
粒子像が円形の時に円形度は1.000になり、粒子像の外周の凹凸程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、円形度0.200~1.000の範囲を800分割し、測定粒子数を用いて平均円形度の算出を行っている。
(3-2)現像ブレードの構成および現像ブレード電圧
トナーの「平均円形度」を規定する方法以外では、現像ローラ22と現像ブレード23に電圧を印加し、両者間の電位差を調整する方法でも同様に「グラディエント力」(電界強度)をより高められる。
なお、現像ブレード23として、厚さ50~120μmの板バネ状のSUS板の支持部材23aを用いることができる。支持部材23aのバネ弾性を利用して、ブレード部23bの表面を現像ローラ22に当接させることができる。支持部23aの表面には、ポリアミドエラストマー、ウレタンゴムまたはウレタン樹脂等の導電性樹脂からなる薄膜を被覆してもよい。
あるいは、支持部材23aをそのまま現像ブレード23として現像ローラ22に当接させてもよい。その場合、支持部材23aとしてSUS板を用いる他、例えば、リン青銅やアルミニウム等の導電性の金属薄板を用いることができる。
本実施例では、現像ローラ22と感光体ドラム1の接触部C1において、互いの表面(C2、C3)が速度差を持たせながら移動するように、現像ローラ22と感光ドラム1が回転駆動される。
感光体ドラム1の帯電極性と同極性に帯電したトナーT(本実施例では負極性)が反転現像される。すなわち、現像ローラ22には、負極性の電圧が印加される。現像ブレード23にも、トナーTの正規帯電極(負極性)と同極性で、かつその絶対値が現像ローラ22に印加される電圧よりも大きい電圧が印加される。これにより、トナーTが摺擦され、摩擦帯電されるに加え、現像ブレード23側からの電荷注入により、より強く電荷が付与される。
なお、「グラディエント力」は、誘電部22dと表層22c(接地されている)の電位差が大きいほど、より強く働くようになるため、トナーTが「グラディエント力」によって引き寄せたあと、現像ローラ22の誘電部22dの露出割合が多くなる。その結果、放電生成物の掻き取り性が向上し、画像流れなどの放電生成物の付着に起因する画像不良を効果的に抑制することができる。
なお、本実施例では、現像ローラ22の誘電部22dの帯電極性は負極性である。また、現像ローラ22に印加する電圧Vdc(第2の電圧)は-300v、現像ブレード23に印加する電圧Vb(第1の電圧)は-500でる。すなわち、現像ローラ22に印加する電圧Vdcと現像ブレード23に印加する電圧「Vb」の差分(電位差)ΔV(=Vb-Vdc)=-200vである。
「ΔV」は、絶対値が大きいほど、「グラディエント力」を強める働きは大きくなるものの、「ΔV」の絶対値が500vを超えると、電荷注入に加え放電が開始する。このため、現像ローラ22には、画像形成に必要な電圧(電位)以上に電圧を印加しないことが望ましい。
また、前述した誘電部22dの帯電極性が、「正極性」の現像ローラ22の場合では、「ΔV」が正極性側に強くなるように現像ローラ22と現像ブレード23に電圧を印加すれば、同様に、「グラディエント力を高める」効果を得ることができる。
(3-2-1)現像ブレード/現像ローラ間の電位差と、トナー搬送量の関係
次に、現像ブレードと現像ローラの間の電位差ΔV(Vb-Vdc)と、トナー搬送量の関係について詳細に説明する。
図7は、現像ブレードと現像ローラの間の電位差ΔVと、誘電部電位Edとの間の関係を示すものである。一方、図8は、誘電部電位Edと、現像ローラ上のトナー搬送量との間の関係を示すものである。
図7に示すように、ΔVがトナーTの正規帯電極と同方向(本実施例では負極方向)に大きくなるほど、誘電部電位EdはトナーTの正規帯電極性と同方向(負極方向)に大きくなる。これは、現像ブレード23から誘電部22dへの「電荷注入」によるものである。
一方、図8に示すように、誘電部電位Edの値が、トナーTの正規帯電極性と同方向(負極方向)に大きくなるほど、トナー搬送量が多くなる。これは、トナーTの正規帯電極性と同方向(負極方向)にブレードの電圧Vbを大きくすることで、表層22cと誘電部22dの境界の電位差も大きくなり、境界部にトナーTを付着させるための電界も大きくなる為である。
したがって、表層22cと誘電部22dの境界の付近に多くのトナーが付着することで、搬送量が増大する。逆に、トナーTの正規帯電極性と逆方向に現像ブレード電圧Vbを変化(若しくは「大きく」)すると、表層22cと誘電部22dの境界の電位差が小さくなり、トナー搬送量は少なくなる。
図9の(a)(b)は、本実施例の現像ローラの表面上にトナーが付着された様子を示す概念図である。図9(a)、(b)に示すように、誘電部電位Ed(Ed1、Ed2)とトナー保持(搬送)量が正比例する。
具体的に、図9(a)に示すように、誘電部電位Ed1(大)の場合、表層22cと誘電部22dの境界にて、多くのトナーが保持(搬送)される。
一方、図9(b)に示すように、誘電部電位Ed2(小、Ed2<Ed1)の場合、トナー搬送量が少なくなり、図8(a)に比べ、表層22cと誘電部22dの境界において、トナーの保持量(搬送量)が減少する。また、保持量(搬送量)の減少に伴い、誘電部22dの直上の露出部22d1は、図8(a)に比べ、領域(面積)が大きくなる。
以上のことから、現像ブレード23と現像ローラ22のそれぞれに印加する電圧の電位差ΔV(Vb-Vdc)を制御することにより、誘電部電位Edを制御することができる。また、現像ローラ22上のトナー搬送量、および、誘電部22dの露出部22d1の領域(面積)を調整することができる。
したがって、非画像形成時に、現像ブレード23と現像ローラ22のそれぞれに印加する電圧の電位差ΔVを、画像形成時に対して、トナーTの正規帯電極性とは逆方向に変化(シフト)させることで、現像ローラ22上のトナー搬送量を減少させることができる。これにより、非画像形成時に、誘電部22dの露出部22d1の領域を大きくさせた状態で感光体ドラム1と現像ローラを接触回転させることで、効果的に感光体ドラム1上に付着した放電生成物を現像ローラ(露出部22d1)で掻き取ることが可能となる。
(3-2-2)クリーニングモード
次に、本実施例における「クリーニングモード」の制御について、図10を用いて説明する。図10は、本実施例に係る画像形成装置の制御フローチャートである。
図10に示すように、本実施例では、画像形成動作(S101)の終了後に、画像を形成しない非画像形成動作である「後処理」を行う。なお、「後処理」として、現像ローラと感光体ドラムを回転させる「後回転動作」を行う。本実施例では、制御部を構成するコントローラ200は、「後回転動作」を行う際に、「クリーニングモード」を合わせて実行する否かを判定することができる。
具体的に、本実施例では、画像形成装置100(図2および図3を参照する)には、温度および湿度を検知するための検知部(不図示)が設けられている。制御部(200)は、検知部に温度および湿度の検知動作を行わせる(S102)。そして、検知部の検知結果に基づいて、制御部は、「クリーニングモード」の実施を決定する。
一例として、例えば、制御部(200)は、温度が27℃以上、かつ、湿度が70%以上である場合に、検知温度、湿度が所定値以上と判定し(S103)、「後回転動作」として、非画像形成時に「クリーニングモード」を実行させる(S104)。クリーニングモードを実行した後、後処理動作が終了する。
なお、本実施例のクリーニングモードでは、制御部(200)は、画像形成時の現像ブレード23と現像ローラ22の電位差ΔV1(-200V)に対し、電位差ΔV2(+50V)となるように、第1電圧印加部2301、第2電圧印加部2201を制御する。さらに、制御部は、現像ローラ22の誘電部22dの露出部22d1と感光体ドラム1が接触させた状態で、感光体ドラム1を1周以上に回転させるように制御する。
このように、本実施例によれば、簡易の構成により、画像形成時の画像濃度を維持しつつ、非画像形成時において感光体ドラム1上に付着した放電生成物などの異物を効果的に掻き取ることができる。
これにより、放電生成物の付着や蓄積を抑制することができ、放電生成物に起因する画像不良(画像流れ)が効果的に抑制できる。
(4)第1の変形例
次に、本実施例に係る第1の変形例について説明する。
なお、第1の変形例は、基本的に上記した本実施例と同様であり、以下、主に相違点について説明する。
第1の変形例では、(非画像形成時に)クリーニングモードを実行する際、制御部(200)は、回転する現像ローラ22と感光体ドラム1との表面速度の差を、「画像形成時」に対して「速度差」が大きくなるように制御する。
これにより、現像ローラ22の誘電部22dの露出部22d1の領域との感光体ドラム1との接触機会を増えて、摺擦による掻き取り能力が向上する。
なお、画像形成時、現像ローラ22と感光体ドラム1との表面速度の差について、その「下限値」は、例えば、画像を形成するために必要な画像濃度を条件として設定してもよい。一方、その「上限値」は、現像ローラ22から感光体ドラム1への搬送量の過剰よる画像不良(カブリ画像)が生じないことを条件として設定してもよい。
第1の変形例では、非画像形成時に「クリーニングモード」を設け、現像ローラ22と感光体ドラム1との表面速度差を、画像形成時に対して、「速度差」が大きくなるように制御することにより、画像濃度を維持しつつ、画像不良を抑制することができる。
より具体的には、先述の通り、感光体ドラム1へ移動するトナーTの量(現像量)をコントロールするために、現像ローラ22が感光体ドラム1に対して接触部C1の表面移動速度に差を持ちながら回転駆動される。現像ローラ22の表面(C2)移動速度は、接触部における感光体ドラム1の表面(C3)移動速度より速いほど、放電生成物の掻き取り性が高くなる。
例えば、現像ローラ22の回転速度が感光体ドラム1の回転速度よりも速い場合、一つの(単位的な)誘電部22dの島が掻き取り可能な掻き取り面積が大きくなるため、効率的に一つの誘電部22dの島全域を利用することができる。
逆に、現像ローラ22の表面移動速度が感光体ドラム1の表面移動速度よりも遅い場合は、回転方向に対して、一つの(単位的な)誘電部22dの島の一部のみで掻き取るようになる。このため、ある程度放電生成物を掻き取ると、放電生成物が誘電部のその一部のみに蓄積し、所望の掻き取り性能を維持しにくくなる。
以上説明したとおり、現像ローラ22の回転速度は、感光体ドラム1の回転速度に対してより速いと、放電生成物の掻き取り性が高く好ましく、画像流れなどの放電生成物の付着に起因する画像不良を効果的に抑制することができる。
一方、感光体ドラム1に対して、現像ローラ22の回転速度が速すぎる場合、若しくは、現像ローラ22の回転速度が感光体ドラム1の回転速度よりも速いものの、速度差が小さ過ぎる場合では、所望の効果が得られにくい。
例えば、感光体ドラム1に対する現像ローラ22の回転速度が速すぎる場合、現像ローラ22と感光体ドラム1の接触部のトナー層厚が厚くなりすぎて、誘電部22dがトナーTで埋もれてしまい、掻き取り性が低下する。
また、速度差が小さすぎると、所望の掻き取り性能を発揮しない場合がある。
発明者の検討によれば、現像ローラ22の回転速度が、感光体ドラム1の回転速度に対して(表面移動速度比)110~250%の範囲では、特に効果的に掻き取り性を発揮できることが確認できた。特に、鮮明な画像を形成するにあたっては、130~200%の範囲がより好ましい。本実施例では、周速比を140%とした。
上記構成以外にも、誘電部22dの回転方向と直交する方向の長さが、感光体ドラム1を帯電させるための帯電ローラ2の回転方向と直交する方向の長さよりも長いと、より効果的に放電生成物を掻き取ることができる。
なお、放電生成物は、帯電ローラ2と感光体ドラム1との接触部で発生する。したがって、帯電ローラ2の回転方向と直交する方向の長さよりも、掻き取り性を発揮する誘電部22dの回転方向と直交する方向の長さが長ければ、放電生成物の発生領域すべてを誘電部22dで掻き取ることができる。その結果、画像の端部などで放電生成物に起因する画像流れなどの画像不良の発生をより抑制することができる。
本実施例では、帯電ローラ2と誘電部22dの、回転方向と直交する方向(長手方向)の長さは、帯電ローラ2が227.6mmであり、誘電部22dが234.2mmである。
このように、第1の変形例は、前述した実施例と同様に、ドラム清掃部材を設けることなく、画像濃度の維持しつつ、帯電工程で発生する放電生成物(オゾンやNOx)を露出部22d1によって効果的に除去することができる。これにより、画像流れなどの画像不良を抑制することができる。
(5)第2の変形例
次に、本実施例に係る第2の変形例について説明する。
なお、第2の変形例は、基本的に上記した本実施例および第1変形例と同様であり、以下、主に相違点について説明する。
第2の変形例は、クリーニングモードの際に、現像ブレードの電圧制御、および、感光体ドラムと現像ローラの周速差の制御の両方を行う。
具体的には、第2変形例では、(非画像形成時に)クリーニングモードを実行する際、制御部(200)は、現像ブレード23と現像ローラ22のそれぞれに印加する電圧の電位差ΔVを制御する。つまり、制御部は、クリーニングモードを実行する際、「画像形成時」に対して、トナーTの正規帯電極性とは逆方向にシフトしつつ、回転する現像ローラ22と感光体ドラム1との表面速度差を、「画像形成時」に対して「速度差」が大きくなるように制御する。
なお、クリーニングモードを実行する際に、現像ローラ22の誘電部22d露出部と感光体ドラム1が接触した状態で、感光体ドラム1を1周以上回転させて後回転動作を行う。
第2の変形例によれば、上記した本実施例および第1の変形例の構成よりも、第2の変形例の構成では、感光体ドラムの表面に露出部22d1が接触する機会がさらに増加する。このため、現像ローラ22の誘電部22dの露出部22d1領域との摺擦が更に促進され、より高い掻き取り能力が期待できる。
<評価実験>
本実施例の効果を確認するため、本実施例および比較例の構成において、それぞれ評価実験を行った。
なお、画像形成装置100にHP Color LaserJet Pro M452dw(HP社、商品名)を用い、記録材PにCS-680(キヤノンマーケティングジャパン、商品名)を用いて評価を行った。高温高湿環境(30℃/80%)において、A4サイズ用の紙2枚間欠で20000枚の通紙試験を行った。本実施例および比較例の構成において、それぞれ画像流れによる画像不良の発生有無について検証を行った。
(1)比較例の構成
本実施例の比較例では、画像形成動作が終了した直後も、画像形成時の現像ブレード23と現像ローラ22の電位差ΔVが「-200V」のままに維持された状態で、後処理として、感光体ドラムと現像ローラを「後回転(動作)」させて終了する。即ち、本比較例では「クリーニングモード」(S102~S103)を実施しない。
なお、本比較例は、本実施例とは、構成および「画像形成時」のプロセス条件は全て同じである。また、本比較例でも、本実施例と同様に、画像濃度については、分光濃度計X-rite504(X-rite社製)による測定値が1.4以上を維持できるように設定されている。
(2)本実施例と比較例の評価結果の対比
表4は、本実施例および比較例それぞれの評価結果を対比したものである。
表4に示すように、後処理としての後回転動作中(非画像形成時)にクリーニングモードを実施することで、感光体ドラム1上の放電生成物を効果的に掻き取ることができ、画像流れによる画像不良が確認されない。
一方、クリーニングモードが実施されない比較例では、放電生成物を十分に掻き取ることができず、画像流れによる画像不良が確認された。
以上説明した通り、本実施例によれば、ドラム清掃部材を設けることなく、画像濃度を維持しつつ、帯電工程で発生する放電生成物(オゾンやNOx)を効果的に除去することができる。これにより、画像流れなどの画像不良を抑制することができる。
なお、本実施例では、「クリーニングモード」の実行の要否判断は、温度および湿度に基づく構成例を説明したが、これに限らず、画像不良が発生しうる条件を考慮して、実行の要否判断を行っても良い。
例えば、以下の情報のうちの少なくとも一つ、若しくは、複数を考慮した上で要否判断を行ってもよい。具体的に、感光体ドラム1の総回転数(表面の移動距離)、現像ユニット4内のトナー劣化度合いに関する情報、帯電部材に印加する印加電圧の値、画像情報(印字率)、または、画像形成時のプリントジョブ枚数などが挙げられる。
このように、本実施例の構成を以下のように纏めることができる。
即ち、本実施例の画像形成装置は、表面において、導電性を有する導電部および導電部よりも電気抵抗の高い誘電部を備え、現像剤を担持する現像剤担持体と、現像剤担持体に担持される現像剤の厚みを規制する規制部材と、を有する。また、本実施例の画像形成装置は、現像剤担持体と接触可能なように構成され、現像剤からなる現像剤像を担持する像担持体と、規制部材に第1の電圧Vbを印加する第1電圧印加部と、第1電圧印加部を制御する制御部と、を有する。そして、本実施例の画像形成装置は、現像剤担持体および像担持体を回転させることにより、現像剤像が像担持体から転写された後の像担持体上に残留した現像剤を、像担持体から現像剤担持体へ回収させる。また、本実施例では、制御部は、画像を形成しない非画像形成時において、画像を形成する画像形成時に対して、第1の電圧Vbを現像剤の正規帯電極性とは逆極性側へ変化させるように、第1電圧印加部を制御するクリーニングモードを有する。
なお、現像剤担持体と像担持体が接触する接触部における表面と、像担持体の接触部における表面とは、互いに異なる速度で移動することができる。
若しくは、本実施例の画像形成装置は、表面において、導電性を有する導電部および導電部よりも電気抵抗の高い誘電部を備え、現像剤を担持する現像剤担持体と、現像剤担持体に担持される現像剤の厚みを規制する規制部材と、を有する。また、本実施例の画像形成装置は、現像剤担持体と接触可能なように構成され、現像剤からなる現像剤像を担持する像担持体と、規制部材に第1の電圧Vbを印加する第1電圧印加部と、現像剤担持体に第2の電圧Vdcを印加する第2電圧印加部と、を有する。また、本実施例の画像形成装置は、第1電圧印加部および第2電圧印加部を制御する制御部、を有する。そして、本実施例の画像形成装置は、現像剤担持体および像担持体を回転させることにより、現像剤像が像担持体から転写された後の像担持体上に残留した現像剤を、像担持体から現像剤担持体へ回収させる。また、本実施例では、制御部は、非画像形成時において、画像形成時に対して、第1の電圧Vbから第2の電圧Vdcを差し引いた電位差ΔVを、現像剤の正規帯電極性とは同極性側へ変化させるように制御するクリーニングモードを有する。
なお、現像剤担持体と像担持体が接触する接触部における表面と、像担持体の接触部における表面とは、互いに異なる速度で移動することができる。
若しくは、本実施例の画像形成装置は、表面において、導電性を有する導電部および導電部よりも電気抵抗の高い誘電部を備え、現像剤を担持する現像剤担持体と、現像剤担持体に担持される現像剤の厚みを規制する規制部材と、を有する。また、本実施例の画像形成装置は、現像剤担持体と接触可能なように構成され、現像剤からなる現像剤像を担持する像担持体と、現像剤担持体を回転させる第1駆動部と、像担持体を回転させる第2駆動部と、第1駆動部と第2駆動部を制御する制御部とを有する。そして、本実施例の画像形成装置は、現像剤担持体および像担持体を回転させることにより、現像剤像が像担持体から転写された後の像担持体上に残留した現像剤を、像担持体から現像剤担持体へ回収させる。また、本実施例では、制御部は、非画像形成時において、画像形成時に対して、現像剤担持体と像担持体が接触する接触部における互いの表面の相対移動速度を、大きくなるように、第1駆動部および第2駆動部を制御するクリーニングモードを有する。
上記の構成によれば、誘電部により積極的に「露出部」を形成することができ、像担持体上の付着物を効果的に除去することができる。
なお、本実施例では、像担持体の回転方向は、現像剤担持体の回転方向とは、逆方向であることが好ましい。
また、本実施例では、接触部において、像担持体の表面の移動速度よりも、現像剤担持体の表面の移動速度を速く設定することが好ましい。
また、本実施例では、制御部は、クリーニングモードを実行する場合、接触において、像担持体の表面の移動速度に対する、現像剤担持体の表面の移動速度の比は、110%~250%であることが好ましい。なお、接触部において、像担持体の表面の移動速度よりも、現像剤担持体の表面の移動速度が速くなることが好ましい。これにより、より効果的に像担持体上の付着物を除去することができる。
また、本実施例では、制御部は、画像を形成する画像形成動作が終了した後に、クリーニングモードを実行することができる。
また、本実施例では、制御部は、クリーニングモードを実行する場合、像担持体を1回転以上に回転させることが好ましい。
また、本実施例では、制御部は、クリーニングモードを実行する場合、環境温度情報、および、像担持体に関する情報の少なくとも一方の情報に基づき、像担持体の回転回数を決定することができる。
また、本実施例では、制御部は、環境温度情報、および、像担持体に関する情報の少なくとも一方の情報に基づき、クリーニングモードの実施頻度を決定することができる。
なお、本実施例では、現像剤担持体は、誘電部または導電部の一方が海部を形成し、他方が海部に分散された島部を形成する海島構造を有することができる。特に、導電部は、海部を形成し、誘電部は、島部を形成することが好ましい。これにより、より効率的に像担持体上の付着物を除去することができる。
また、本実施例では、誘電部は、規制部材との摩擦によって現像剤担持体の表面に帯電された現像剤の正規帯電極性とは、同極性となるように構成されることができる。これにより、より効果的に像担持体上の付着物を除去することができる。
また、本実施例では、現像剤の正規帯電極性を負極性とすることができる。
また、本実施例では、現像剤の平均円形度が0.97以上であることが好ましい。これにより、より効果的に誘電部を帯電させることができ、結果的により像担持体上の付着物を除去できる。
また、本実施例のプロセスカートリッジは、現像剤担持体を回転可能なように支持する枠体を有することができる。また、規制部材は、枠体に固定される固定端と、固定端とは反対側にある自由端とを有し、規制部材の自由端が現像剤担持体に当接されることができる。なお、規制部材の自由端は、固定端から、現像剤担持体の回転方向の上流側に向けて延延びるように配置されることが好ましい。これにより、より効果的に誘電部を帯電させることができ、結果的により像担持体上の付着物を除去できる。
また、本実施例のプロセスカートリッジは、像担持体を帯電させる帯電部材をさらに有することができる。また、誘電部が設けられた領域の現像剤担持体の回転軸方向における幅が、帯電部材の像担持体の回転軸方向における幅よりも大きく設定することができる。これにより、放電生成物が形成される領域が誘電部の領域内に配置されるため、より効率的に付着物を除去できる。
また、本実施例のプロセスカートリッジは、画像形成装置の装置本体に対して着脱可能である。
また、本実施例の画像形成装置は、前述したプロセスカートリッジと、像担持体に担持された現像剤像を記録媒体へ転写する転写部材と、を有してもよい。
本実施例によると、感光体ドラム清掃部材を別途設けることなく、さらに装置の大型化、コストアップ、ダウンタイムの増加なども招くことなく、帯電工程で発生する感光体ドラム上の放電生成物(オゾンやNOx)を容易に除去することができる。即ち、現像剤担持体の表面にある誘電部の一部(露出部)を積極的に露出させることによって、露出部によって感光体ドラム上の「放電生成物」が効果的に除去され、画像不良の発生を有効に抑制することができる。