JP7147596B2 - インキ組成物、印刷物、及び、真贋判定方法 - Google Patents

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Description

本開示は、円偏光発光による真贋識別性に優れた新規なインキ組成物、およびそれを用いた印刷物とその真贋判定方法に関する。
銀行券、有価証券、パスポート、身分証明書、印紙類、回数券、各種チケット等のようにセキュリティが必要とされる印刷物には、偽造や改ざんを防止すること、偽造品と真正品とを識別するために、真贋判定、偽造防止要素の付与が不可欠となっている。
近年はプリンタやスキャナといった電子機器の普及に伴い、有価証券等の無許可複製が横行している。このような偽造の被害が、社会問題化しており、偽造技術は巧妙を極める一方であることから、高度な真贋判定、偽造防止の技術の開発が急務となっている。
様々な偽造防止技術の中に、通常無色で紫外線照射時に像が浮かび上がることによって、印刷された物品が真正であることを識別するセキュリティ用の蛍光発光印刷物がある。
蛍光発光材の中でも希土類金属錯体は高い発光強度をもつため、視認性に優れる蛍光材として有望である。
例えば、特許文献1には、希土類錯体を含有する発光性インキ組成物、及び、その印刷物によりセキュリティ機能を持たせることができることが開示されている。しかし、蛍光材自体の入手は容易であり、また光源となるブラックライト等の紫外線発生装置も広く普及しているため、蛍光印刷物の存在が明らかになると偽造や複製の危険性が高まる。
そこで近年、前記蛍光印刷物として単に光るだけでなく、より特殊な発光をすることで偽造防止能を高める例が試みられている。
特許文献2には、不斉配位子をもつ希土類錯体が円偏光発光性を示し、セキュリティ材料への応用が期待される旨が記載されている。従来の有機化合物では、円偏光発光性の度合い(円偏光度)を示すg値が0.001程度であるのに対して、希土類錯体は、g値が格段に高く、円偏光発光性に優れている旨が記載されている。特許文献2の円偏光発光性希土類錯体は、g値の絶対値の最大値が0.5と記載されている。
また、特許文献3には、g値の絶対値が1.8以上と高い円偏光発光性希土類錯体が記載され、セキュリティインキに適用することも可能と記載されている。特許文献3の円偏光発光性希土類錯体は、アセトンなどのケトン系溶媒分子が希土類金属に直接配位することで、円偏光度の高い立体構造をとり、絶対値が1.8以上のg値を示している。
非特許文献1では、4対のヘプタフルオロブチリルカンフォレート(hfbc)配位子を有するユーロピウム錯体M[Eu((+、-)-hfbc)(M = Na、K、Rb、Cs)を使用して、アルカリ金属の大きさが、溶液中のM[Eu((+、-)-hfbc)(構成単位)とEu((+、-)-hfbc)(抑制剤)との間の平衡定数を決定するのに決定的な役割を果たし、ユーロピウム錯体のらせん凝集体における長さの変化およびねじれの拡大をもたらすことを示している。非特許文献1の最大のg値を示すCs[Eu((+)-hfbc)は、g値の絶対値が1.4程度である。
ここで円偏光発光性の度合い(円偏光度)を示すg値は、下記のように定義される値である。
CDスペクトルからのg値=Δε/ε=2(ε-ε)/(ε+ε
(式中、εは左円偏光における吸収係数、εは右円偏光における吸収係数を表す。)
CPLスペクトルからのg値=ΔI/I=2(I-I)/(I+I
(式中、Iは左回りの円偏光発光強度、Iは右回りの円偏光発光強度を表す。)
なお、g値を円偏光二色性(CD)スペクトルから求める場合及び円偏光発光(CPL)スペクトルから求める場合のいずれにおいても、理論上、g値の最大絶対値は2である。
国際公開第2015/002282号 特許第5713360号 特許第5849255号
Chem.Commun.,2016,52,9885-9888.
しかしながら、特許文献2及び3記載の円偏光発光性希土類錯体は、下記理由により、それを含む印刷物の円偏光発光を視認することはできない。
特許文献2の円偏光発光性希土類錯体はg値の絶対値が0.5であり、高い値であるが、このg値は重アセトニトリル溶液中で観測されたものであり、塗膜状態ではg値が低くなってしまう。また、特許文献2の円偏光発光性希土類錯体は結晶性が高く、塗膜中に低い濃度でしか均一に分散できないため、塗膜とした場合の発光強度が不十分で所定の円偏光フィルタを介しても視認できない。
特許文献3の円偏光発光性希土類錯体はg値の絶対値が1.8以上とあり、高い値であるが、このg値はケトン系溶液中で観測されたものであり、塗膜状態ではg値が低くなってしまう。ケトン系溶媒分子が希土類金属に直接配位した円偏光度の高い特定の錯体構造は、溶媒が乾燥された塗膜中での安定性が不足しているからと推察される。溶媒中のケトン系溶媒分子比率によって錯体構造が変化することから、溶媒のない状態や、樹脂などの塗膜を構成する他の成分が共存する状態では、より安定な8配位錯体構造に戻り得ることが考えられる。
また、非特許文献1には、非特許文献1の希土類錯体の凝集体は円偏光フィルタを用いた円偏光ルミネセンスの裸眼視覚化をもたらした旨が記載されている。しかし、特にセキュリティが必要とされる印刷物となるインキ層(塗膜)は、実使用上高い発光強度を有する必要がある。非特許文献1に記載されている材料では、発光効率が低く、発光強度が不十分である。また、前記凝集体を保持した状態での微粒子化が困難なため、粗大な粒子が多くなり、塗膜にした場合の透明性が低くなってしまう。
また、セキュリティ印刷物に用いられるためには、円偏光発光性希土類錯体は、通常無色で存在が知られない必要があり、塗膜にした時に透明性が必要である。
本開示の実施形態は、発光強度が高く、円偏光発光性に優れ、且つ、透明性に優れるインキ層を形成可能なインキ組成物、発光強度が高く、円偏光発光性に優れ、且つ、透明性に優れるインキ層を有する印刷物、及び当該印刷物を用いた真正品を判定する真贋判定方法を提供することを目的とする。
本開示の1実施形態は、下記一般式(1)、又はその鏡像異性体で表される、円偏光発光性希土類錯体を含有する、セキュリティインキ組成物を提供する。
Figure 0007147596000001
(一般式(1)中、Ln3+は、3価の希土類イオンを表す。
Zは各々独立に、ホスフィンオキシド(P=O)、又はリン(P)を表す。
Yは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表すが、Yが結合しているフェニル基1個につき、少なくとも1つのYがアルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基であり、Yに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
Xは、直接結合、或いは、-O-、-S-、-NR-(ここで、Rは水素原子又は炭素数1~22の炭化水素基)、又は炭素数1~22の炭化水素基を表す。
Qは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表すか、或いは、互いに結合して6員環の芳香族炭化水素環を形成していても良く、Qに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
は、炭素数1~22の炭化水素基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表し、Rに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
及びRは各々独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~22の炭化水素基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表し、R及びRに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
n1は0~6の数を表し、n2は0~3の数を表すが、n1+2×n2は1以上6以下である。mは3の数を表す。
n1、n2又はmが2以上の場合に、括弧内の構造は、同一でも異なっていても良い。)
また、本開示の1実施形態は、前記一般式(1)、又はその鏡像異性体で表される、円偏光発光性希土類錯体を含有するインキ層を有する、セキュリティ印刷物を提供する。
本開示の1実施形態のセキュリティインキ組成物、及びセキュリティ印刷物においては、前記一般式(1)で表される円偏光発光性希土類錯体は、前記一般式(1)中、Yが結合しているフェニル基1個につき、Zに対してオルト位又はメタ位の少なくとも1つのYが、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基である、円偏光発光性希土類錯体であってもよい。
本開示の1実施形態のセキュリティインキ組成物、及びセキュリティ印刷物においては、前記一般式(1)又はその鏡像異性体で表される円偏光発光性希土類錯体は、下記一般式(2)又はその鏡像異性体で表される円偏光発光性希土類錯体であってもよい。
Figure 0007147596000002
(一般式(2)中、Ln3+、Z、X、Q、R、R、R、n1、n2、及びmは各々、前記と同義であり、Rは各々独立に、炭素数1~22の炭化水素基を表し、基中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。)
また、本開示の1実施形態は、前記本開示の1実施形態のセキュリティ印刷物の蛍光発光を、バンドパスフィルタと円偏光フィルタとにこの順で通して、観察することにより、真正品を判定する真贋判定方法を提供する。
本開示の実施形態によれば、発光強度が高く、円偏光発光性に優れ、且つ、透明性に優れるインキ層を形成可能なインキ組成物、発光強度が高く、円偏光発光性に優れ、且つ、透明性に優れるインキ層を有する印刷物、及び当該印刷物を用いた真正品を判定する真贋判定方法を提供することができる。
図1は、本開示に係る印刷物の一例を示す概略断面図である。 図2は、前記本開示の1実施形態の真贋判定方法の一例を示す図である。 図3は、本開示の1実施形態の真贋判定方法に用いられるフィルタセットの一例を示す。 図4は、本開示の1実施形態の真贋判定方法に用いられるフィルタセットの一例を示す。 図5は、実施例1及び実施例2のインキ層の発光スペクトルを示す。 図6は、実施例3及び実施例4のインキ層の発光スペクトルを示す。 図7は、実施例5及び実施例6のインキ層の発光スペクトルを示す。 図8は、実施例7のインキ層の発光スペクトルを示す。 図9は、実施例8及び比較例1のインキ層の発光スペクトルを示す。 図10は、実施例3、4、5及び6のインキ層の円偏光発光(CPL)スペクトルを示す。 図11は、セキュリティインキ組成物を部分的に塗布したサンプル調製法を示した図である。 図12は、実施例1及び実施例2のセキュリティインキ組成物のインキ層の発光及び偏光を目視観測した結果を示し、図12(A)はバンドパスフィルタのみを介して得られた発光の写真であり、図12(B)はバンドパスフィルタと左円偏光透過フィルタとを介して得られた発光の写真であり、図12(C)はバンドパスフィルタと右円偏光透過フィルタとを介して得られた発光の写真である。
以下、本開示の実施の形態や実施例などを、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態や実施例等の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定が無い限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
また、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
1.インキ組成物
本開示は、下記一般式(1)、又はその鏡像異性体で表される、円偏光発光性希土類錯体を含有する、セキュリティインキ組成物を提供する。
Figure 0007147596000003
(一般式(1)中、Ln3+は、3価の希土類イオンを表す。
Zは各々独立に、ホスフィンオキシド(P=O)、又はリン(P)を表す。
Yは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表すが、Yが結合しているフェニル基1個につき、少なくとも1つのYがアルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基であり、Yに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
Xは、直接結合、或いは、-O-、-S-、-NR-(ここで、Rは水素原子又は炭素数1~22の炭化水素基)、又は炭素数1~22の炭化水素基を表す。
Qは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表すか、或いは、互いに結合して6員環の芳香族炭化水素環を形成していても良く、Qに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
は、炭素数1~22の炭化水素基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表し、Rに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
及びRは各々独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~22の炭化水素基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表し、R及びRに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
n1は0~6の数を表し、n2は0~3の数を表すが、n1+2×n2は1以上6以下である。mは3の数を表す。
n1、n2又はmが2以上の場合に、括弧内の構造は、同一でも異なっていても良い。)
本開示のインキ組成物は、発光強度が高く、円偏光発光性に優れ、且つ、透明性に優れるインキ層を形成することができる。
本開示のインキ組成物が含有する前記特定の円偏光発光性希土類錯体は、不斉炭素原子を有するキラル配位子(i)を3つ有する他に、配位子(ii-1)及び配位子(ii-2)の少なくとも1種を1つ以上有する。配位子(ii-1)及び配位子(ii-2)は、希土類イオンに配位するホスフィンオキシド(P=O)又はリン(P)に結合しているフェニル基1個につき、少なくとも1つのYがアルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基であり、嵩高い置換基を有している。当該嵩高い置換基を有することにより、一般式(1)又はその鏡像異性体で表される円偏光発光性希土類錯体は、安定な錯体構造が複数生じ、非晶質となり、光学的に等方な系が生成したため、錯体単独で塗膜を形成しても透明性が高くなると推定される。また、当該嵩高い置換基の導入による適切な立体障害により、配位子(ii-1)及び配位子(ii-2)の少なくとも1種の希土類イオンに対する配位距離が遠くなり、一方で、3つのキラル配位子(i)の希土類イオンに対する配位距離が近くなることにより、前記特定の円偏光発光性希土類錯体は、キラル効果が増強し、円偏光発光性に優れると推定される。更に、当該置換基は、希土類中心金属への弱い配位性をもつことにより錯体分子同士で相互作用し、その集合体の非晶性を高めるという作用によって、前記特定の円偏光発光性希土類錯体は、塗膜にした場合の透明性に優れると推定される。また、配位子(i)はβジケトン構造を有し、吸光係数が高いため、励起光のエネルギーを配位した希土類イオンへ効率よく供給することができる。配位子(ii-1)及び配位子(ii-2)の全体の嵩高い置換基の導入による適切な立体障害により、3つのキラル配位子(i)の希土類イオンに対する配位距離が近くなることで、前記励起光エネルギーを希土類イオンへ効率的に供給でき、全体の発光強度を向上することができるため、前記特定の円偏光発光性希土類錯体は、g値の最大値の発光波長の発光強度が大きくなると推定される。
本開示のインキ組成物は、少なくとも前記一般式(1)又はその鏡像異性体で表される円偏光発光性希土類錯体を含有し、通常、液体又は半流動体とするために、溶剤を含有する。溶剤の代わりに、常温(25℃)で液状の光硬化成分を含有していてもよい。また、本開示の効果を損なわない範囲で、本開示のインキ組成物は、必要に応じて更にその他の成分を含有していてもよい。
<円偏光発光性希土類錯体>
本開示のインキ組成物が含有する円偏光発光性希土類錯体は、前記一般式(1)又はその鏡像異性体で表される。
前記一般式(1)において、Ln3+は、3価の希土類イオンを表し、具体的には、Eu3+、Tb3+、Sm3+、Er3+、Pr3+、Ho3+、Tm3+及びDy3+からなる群から選ばれる。
前記3価の希土類イオンは、所望の発光色が得られるように適宜選択されるが、中でも、発光効率に優れ、発光強度が高い点から、Eu3+又はTb3+が好ましく、Eu3+がより好ましい。
前記一般式(1)中、Zは各々独立に、ホスフィンオキシド(P=O)、又はリン(P)を表し、いずれであってもよい。中でも、低振動型構造となり発光強度を向上させることができる点から、ホスフィンオキシドであることが好ましい。
前記一般式(1)中、Yは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表すが、Yが結合しているフェニル基1個につき、少なくとも1つのYがアルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基である。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
Yに含まれて良い炭化水素、具体的には、前記アルコキシ基(-OR)、エステル基(-COOR)、アシルオキシ基(-OCOR)、アミノ基(-NR)、スルホニル基(-SO)、シリル基(-SiR)(ここで、R、R、R、Rは各々独立に炭化水素基を表し、R、R、R、R、Rは各々独立に水素原子又は炭化水素基を表す)に含まれて良い炭化水素は各々独立に、炭素数1~22の炭化水素基であってよい。
炭素数1~22の炭化水素基において、炭化水素は、直鎖若しくは分岐鎖又は環状であってよく、飽和若しくは不飽和であってよい。前記炭化水素基は、炭素数1~12の炭化水素基であってよく、炭素数1~10の炭化水素基であってよく、炭素数1~6の炭化水素基であってよく、炭素数1~4の炭化水素基であってよい。
また、Yに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
Yが結合しているフェニル基1個につき、少なくとも1つのYが、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基であるが、円偏光発光性を大きくする点から、Zに対してオルト位又はメタ位の少なくとも1つのYが、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基であることが好ましく、Zに対してオルト位の少なくとも1つのYが、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基であることがより好ましい。
Xは、直接結合、或いは、-O-、-S-、-NR-(ここで、Rは水素原子又は炭素数1~22の炭化水素基)、又は炭素数1~22の炭化水素基を表す。Xが直接結合の場合、Xに2価の基は存在せず、フェニレン基同士が直接結合した構造を示す。-NR-における炭素数1~22の炭化水素基は、前記Yにおける炭素数1~22の炭化水素基と同様であって良い。
Xにおける炭素数1~22の炭化水素基は、2価の炭素数1~22の炭化水素基を表し、当該炭化水素も直鎖若しくは分岐鎖又は環状であってよく、飽和若しくは不飽和であってよい。Xにおける炭素数1~22の炭化水素基は、炭素数1~12の炭化水素基であってよく、炭素数1~10の炭化水素基であってよく、炭素数1~6の炭化水素基であってよく、炭素数1~4の炭化水素基であってよい。
Qは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表すか、或いは、互いに結合して6員環の芳香族炭化水素環を形成していても良く、Qに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。Qにおけるハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、アミノ基、スルホニル基、シリル基はそれぞれ、Yにおけるものと同様であって良い。
Qは、互いに結合して6員環の芳香族炭化水素環を形成していても良く、当該6員環の芳香族炭化水素環は、結合しているフェニレン基と縮合していてよい。
は、炭素数1~22の炭化水素基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表し、Rに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。Rが、前記基のいずれかであることにより、希土類イオンに配位する酸素原子と直接結合する炭素原子が振動し難くなり、当該希土類錯体の発光強度の低下を抑制することができる。
における炭素数1~22の炭化水素基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、アミノ基、スルホニル基、シリル基は、前記Yにおける炭素数1~22の炭化水素基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、アミノ基、スルホニル基、シリル基と同様であって良い。
は、ハロゲン化炭化水素を含むことが好ましく、炭素数1~12のハロゲン化炭化水素を含むことが好ましく、炭素数1~8のハロゲン化炭化水素を含むことがより好ましく、炭素数1~4のハロゲン化炭化水素を含むことがよりさらに好ましい。
がハロゲン原子を有し、C-X(Xはハロゲン原子:F、Cl、Br又はI)結合を有する場合には、低振動の骨格になることから、当該構造を含むと、希土類金属が受け取ったエネルギーを振動失活させないように機能し、発光効率を向上し、発光強度を向上する点から好ましい。
は、中でも希土類イオンに配位する酸素原子と直接結合する炭素原子を振動し難くする点から、より原子量の大きな元素が炭素原子と結合している、炭素数1~12のハロゲン化炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~8のハロゲン化炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1~4のハロゲン化炭化水素基であることがよりさらに好ましく、具体的には、トリフルオロメチル基、ヘプタフルオロブチリル基等が挙げられる。
及びRは各々独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~22の炭化水素基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表し、R及びRに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
及びRにおける炭素数1~22の炭化水素基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、アミノ基、スルホニル基、シリル基は、前記Yにおける炭素数1~22の炭化水素基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、アミノ基、スルホニル基、シリル基と同様であって良い。
n1は単座の配位子(ii-1)の配位数であり、0~6の数を表し、n2は二座の配位子(ii-2)の配位数であり、0~3の数を表す。また、mは二座の配位子(i)の配位数を示し、3である。
前記一般式(1)で示される希土類錯体の配位数は、全体で7~12であり得るため、n1+2×n2+2×mは7以上12以下であることから、n1+2×n2は1以上6以下である。
前記一般式(1)で示される希土類錯体の配位数は、全体で7~9であることが好ましく、n1+2×n2+2×mは7以上9以下が好ましいことから、n1+2×n2は1以上3以下であることが好ましい。
前記一般式(1)で示される構造としては、例えば、下記一般式(1-1)~(1-4)で示される構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Figure 0007147596000004
Figure 0007147596000005
Figure 0007147596000006
Figure 0007147596000007
(一般式(1-1)~(1-4)中、Ln3+、Z、Y、R、R、R、n1、n2、及びmは各々、前記と同義であり、Qは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表す。)
また中でも、円偏光発光性に優れ、透明性が高く、且つ発光強度が大きいインキ層を形成可能な点から、前記一般式(1)又はその鏡像異性体で表される円偏光発光性希土類錯体は、下記一般式(2)又はその鏡像異性体で表される円偏光発光性希土類錯体であることが好ましい。
Figure 0007147596000008
(一般式(2)中、Ln3+、Z、X、Q、R、R、R、n1、n2、及びmは各々、前記と同義であり、Rは各々独立に、炭素数1~22の炭化水素基を表し、基中の水素原子はハロゲン原子に置換されていても良い。)
一般式(2)中、Rにおける炭素数1~22の炭化水素基は、前記Yにおける炭素数1~22の炭化水素基と同様であって良い。
前記希土類錯体は、例えば、希土類イオンの原料である希土類金属化合物と配位子となるべき化合物とを、必要に応じて触媒の存在下で、これらを溶解または分散できる溶媒中にて攪拌する方法によって合成することができる。溶媒としては、希土類金属化合物及び配位子となるべき化合物に対してそれぞれ好適なものを混合して用いてもよく、例えば、水/メタノールの混合溶媒を適用することができる。
例えば具体的には、下記一般式(ii-a)で表される化合物及び下記一般式(ii-b)で表される化合物の少なくとも1種と、下記一般式(i-a)で表される希土類錯体とを反応させることにより、一般式(1)で表される円偏光発光性希土類錯体を調製することができる。
Figure 0007147596000009
(式中、Ln3+、Z、Y、X、Q、R、R、R、及びmは各々、前記と同義であり、Gは、配位分子を表し、kは1~3の数を表す。)
前記Gの配位分子としては、反応を阻害しない限り特に限定されないが、例えば、水、重水、テトラヒドロフラン、ピリジン、イミダゾール、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等を挙げることができ、好ましくは水である。
前記一般式(i-a)で表される希土類錯体としては、例えば具体的には、酢酸ユウロピウムn水和物のような希土類金属化合物と、配位子(i)に相当する(+)-3-トリフルオロアセチルカンファーのようなアセチルカンファー誘導体とを、水/メタノールの混合溶媒中にアンモニウム水溶液存在下で、反応させ、トリス{(+)-3-トリフルオロアセチルカンファー}ユウロピウム水和物のような、アセチルカンファー誘導体希土類水和物を調製することができる。
前記一般式(ii-a)で表される化合物及び前記一般式(ii-b)で表される化合物の少なくとも1種と、前記一般式(i-a)で表される希土類錯体との反応は、溶媒中で混合することにより行われても良いし、無溶媒で混合することにより行われても良い。
前記希土類錯体は、蛍光体としての特性を有しており、発光強度が最大となる波長は特に限定はされないが、通常、300nm以上1600m以下である。
前記希土類錯体は、円偏光発光性の点から、後述する実施例と同様に円偏光発光スペクトルを用いて測定されたg値の絶対値が、0.04以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、1.0以上であることがより更に好ましい。
また、本開示のインキ組成物は、前記希土類錯体として、g値の最大値の発光波長の発光強度が大きくなる希土類錯体を含むことが、円偏光発光性の視認性が高まる点から好ましい。そのために、前記希土類錯体は、発光効率が高くなることが好ましく、具体的には、後述する実施例と同様に求められる発光効率が5%以上であることが好ましい。
また、本開示のインキ組成物は、インキ層中に高濃度で希土類錯体を存在させることにより円偏光発光性の視認性を向上させる点から、結晶性が低く、単独で塗膜にした場合に透明性が高い希土類錯体を含むことが好ましい。そのために、前記希土類錯体は、単独で厚み200μmの塗膜にした場合に、後述する実施例と同様に求められる全光線透過率が85%以上であることが好ましく、更に90%以上であることが好ましい。
また、前記希土類錯体は、発光スペクトルにおける最大発光波長を検出波長とし、励起光の波長を走査して発光強度を測定した励起スペクトルにおいて、350nm以上400nm以下の範囲に最大値を有することが、一般的に入手しやすい紫外線光源を真贋判定器具として使用した際に視認性に優れる点から好ましい。
インキ組成物において、前記希土類錯体は、1種単独で用いても良いし、2種以上混合して用いても良い。
<溶剤>
本開示のインキ組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で、印刷方式に応じたインキ特性を有するように、溶剤を含有してもよい。
溶剤としては、既知の溶剤を適宜選択して用いることができ、有機溶剤、乾性油、半乾性油、鉱物油、水等が挙げられる。
溶剤としては、具体的には例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロベンゼン等が好適に用いられる。
<その他の成分>
本開示のインキ組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で、印刷方式に応じたインキ特性を有するように、必要に応じて更に、樹脂、光硬化成分、各種添加剤等のその他の成分を含有していてもよい。
印刷方式に応じたインキ特性を有するように、溶剤の代わりに、常温(25℃)で液状の光硬化成分を含有していてもよい。
樹脂としては、既知の樹脂を適宜選択して用いることができる。例えば、印刷に使用されている既知の樹脂を使用してよく、油性インキに含まれる樹脂、又はUVインキに含まれる樹脂を使用してよい。
樹脂は、天然樹脂又は合成樹脂でよく、かつホモポリマー又はコポリマーでよい。油性インキの粘性を確保するためには、樹脂が固形であることが好ましい。天然樹脂としては、例えば、松脂、琥珀、シェラック、ギルソナイト等が挙げられる。
合成樹脂としては、例えば、ロジン、フェノール樹脂、変性アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等のマレイン酸樹脂、環化ゴム、アクリル樹脂、1液型ウレタン樹脂、2液型ウレタン樹脂、及びその他の合成樹脂が挙げられる。
また、水性インキとする場合には、例えば、水溶性樹脂、コロイダルディスパージョン樹脂、エマルジョン樹脂等を含んでよい。
上記で列挙した樹脂は、それぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
また、光硬化性成分としては、既知の光硬化性成分を適宜選択して用いることができる。光硬化性成分は、モノマー、オリゴマー、光重合開始剤等を含む。
モノマーとしては、従来から光重合に使用されていたエチレン性不飽和結合を有する化合物が挙げられる。また、オリゴマーは、エチレン性不飽和結合を有する化合物を、オリゴマー化することにより得られる。
エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸系化合物;マレイン酸系化合物;ウレタン系、エポキシ系、ポリエステル系、ポリオール系、植物油系化合物等で変性したエチレン性不飽和二重結合を有する化合物等が挙げられる。
光重合開始剤は、例えば紫外線照射によって活性酸素等のラジカルを発生する化合物である。光重合開始剤としては、印刷に使用されている既知の光重合開始剤を適宜選択して含有させればよい。
前記添加剤としては、印刷に使用されている既知の補助剤、例えば、分散剤、架橋剤、乾燥促進剤、重合禁止剤、ワックス、体質顔料、着色剤、乾燥抑制剤、酸化防止剤、整面助剤、裏移り防止剤、消泡剤、又は界面活性剤等が挙げられる。
<インキ組成物における各成分の配合割合>
本開示のインキ組成物は、円偏光発光性に優れ、且つ発光強度が大きい点から、インキ組成物の固形分全量に対する前記希土類錯体の含有割合が、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより更に好ましく、上限値は100質量%であって良い。一方でインキ層を形成し易い点から前記その他の成分を含有する場合、前記希土類錯体の含有割合の上限値は、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがより更に好ましい。なお、本開示において固形分とは、溶剤以外の成分をいう。
本開示のインキ組成物が前記その他の成分を含有する場合は、インキ組成物の固形分全量に対する前記その他の成分に由来する固形分の割合は適宜調整されれば良いが、発光強度の点から、60質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがより更に好ましい。
また、本開示のインキ組成物が溶剤を含有する場合、溶剤を含むインキ組成物全量に対する固形分の割合は、印刷方法に応じて適宜調節され、特に限定はされないが、印刷適性の点から、5質量%以上80質量%以下であることが好ましく、10質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
<インキ組成物の製造方法>
本開示のインキ組成物の製造方法としては、前述した本開示のインキ組成物が得られる方法であれば特に限定はされず、例えば、前記希土類錯体と、溶剤と、必要に応じて用いられる前記その他の成分とを、公知の混合手段を用いて混合する方法が挙げられる。
各成分の混合及び分散は、単なる攪拌であってもよいし、例えば一軸ミキサー及び二軸ミキサー等のミキサーや、例えば3本ローラーミル、ビーズミル、ボールミル、サンドグラインダー及びアトライター等の練肉機(ink mill)により行なうことができる。
<インキ組成物の用途>
本開示のセキュリティインキ組成物は、可視光では目視不可能で、可視光以外の励起光の照射により蛍光を発し、且つ円偏光発光性を有するため、当該発光の特殊性から、真贋判定用途、偽造防止用途等の各種セキュリティ用途に好適に用いられるものである。
2.セキュリティ印刷物
本開示の印刷物は、一般式(1)又はその鏡像異性体で表される、円偏光発光性希土類錯体を含有するインキ層を有する、セキュリティ印刷物である。
本開示の印刷物は、前記本開示のインキ組成物の固化物を含有するインキ層を有する、印刷物であってよい。
図1は、本開示に係る印刷物の一例を示す概略断面図である。印刷物1は、基材10の一方の面にインキ層11を有している。インキ層11は、前記一般式(1)又はその鏡像異性体で表される円偏光発光性希土類錯体を含有する層であり、前記本開示の1実施形態のインキ組成物を用いて形成されていてよい。
本開示の印刷物は、インキ層が、発光強度が高く、円偏光発光性に優れ、且つ、透明性に優れる。そのため、本開示の印刷物は、通常無色で存在が知られず、塗膜とした場合の発光強度が十分で所定の円偏光フィルタを介して真贋判定可能なインキ層を形成可能であり、その発光の特殊性から、高い偽造防止性を有する実用的な印刷物を提供可能である。
本開示に係る印刷物1は、単数又は複数のインキ層11を有していてよい。基材10上に複数のインキ層11が設けられている場合には、各インキ層を形成するインキ組成物の組成等は、同じであっても異なっていてもよい。インキ層11としては、任意のパターンを有することができる。
また、本開示の印刷物は、少なくともインキ層を有し、本開示の効果を損なわない範囲において、必要に応じて更に、前記インキ層を支持するための基材、及びその他の層を有していてもよい。
<インキ層>
本開示の印刷物が有するインキ層は、前記一般式(1)又はその鏡像異性体で表される円偏光発光性希土類錯体を含有するインキ層であり、前記本開示のインキ組成物の固化物を含有するインキ層であってよく、すなわち、前記本開示のインキ組成物を用いて形成されたインキ層であってよい。
前記本開示のインキ組成物については、前述した通りなので、ここでの説明を省略する。
本開示において、固化物とは、化学反応を経て又は経ないで固化した物をいう。前記固化物としては、例えば、硬化反応により硬化した硬化物、乾燥により固化した物、熱可塑性樹脂の冷却により固化した物等が挙げられる。
前記インキ層は、例えば、支持体となる基材上に、前記本開示のインキ組成物を塗布し、固化することにより形成することができる。
前記塗布の方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、特に限定はされないが、例えば、凹版印刷、凸版印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インキジェット印刷、スプレー印刷、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、スリットコート法、ダイコート法、ディップコート法等が挙げられる。
前記インキ組成物を固化する方法は、前記インキ組成物が含有する成分に応じて適宜選択され、特に限定はされないが、例えば、前記インキ組成物が溶剤を含有する場合は、乾燥により当該溶剤を除去する方法、前記インキ組成物が光硬化性樹脂を含有する場合は、光照射により当該光硬化性樹脂を硬化させる方法、前記インキ組成物が熱硬化性樹脂を含有する場合は、加熱により当該熱硬化性樹脂を硬化させる方法、前記インキ組成物が熱可塑性樹脂を含有する場合は、溶融樹脂を冷却により固化させる方法、及びこれらの方法を組み合わせた方法等が挙げられる。
前記インキ層は、基材の片面又は両面の全体に形成されたものであってもよいし、パターン状に形成されたものであってもよい。
インキ層が、前記一般式(1)又はその鏡像異性体で表される円偏光発光性希土類錯体を含有することは、インキ層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、例えば、ESI-Mass等の質量分析、NMR、IR、ICP発光分析、原子吸光分析、蛍光X線分析、X線吸収微細構造解析(XAFS)、およびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。希土類金属の分析は、例えば島津製作所製、マルチ型ICP発光分析装置 ICPE-9000を用いて行うことができる。
<基材>
前記基材としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、セルロース繊維紙等の紙類、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレート等の各種合成樹脂のプラスチックシート、また、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルム、あるいは基材内部に微細空隙(ミクロボイド)を有するフィルム(いわゆる合成紙)等が挙げられる。前記基材は、必ずしもフィルム乃至シート状でなくてもよく、立体的な形状を持つ樹脂成形体等であってもよい。
<セキュリティ印刷物の用途>
本開示のセキュリティ印刷物は、前記インキ層が特殊な円偏光発光性に優れ、透明性が高く、且つ発光強度が大きいことから、偽造防止印刷物として好適に用いることができる。偽造防止印刷物としては、例えば、手形、小切手、株券、社債券、各種証券等の有価証券、銀行券、商品券、交通機関の乗車券、有料施設やイベントの入場券、宝くじ、公営競技の投票券の当たり券、印紙類、クレジットカード等のカード、パスポート、身分証明書、各種商業印刷物、ポスター等が挙げられる。
3.真贋判定方法
本開示の真贋判定方法は、前記本開示のセキュリティ印刷物の蛍光発光を、バンドパスフィルタと円偏光フィルタとにこの順で通して、観察することにより、真正品を判定する真贋判定方法である。
前記希土類錯体の円偏光発光は、他のキラルな有機蛍光材料に比べて円偏光度が高いことが知られているが、発光波長によって円偏光度が異なるため、発光状態をそのまま観察しても選択的な円偏光発光状態を識別することはできない。特に発光のメインとなる波長は一般に円偏光度が低いため、円偏光フィルタのみを介して観察しても、g値の高い円偏光発光の強度差を視認できない。
例えば、円偏光発光性ユウロピウム錯体の蛍光円偏光度の高い発光波長は594nmであり、この発光強度はメインの613nmに比べて微弱である。メインとなる613nmの円偏光度は594nmに比べて低いため、たとえ594nmの円偏光度が高くても、何十倍も強度が高くて円偏光度の低い光が混在すると、その円偏光度を視認できなくなる。
そのため、バンドパスフィルタなどで、円偏光度の高い波長のみを選択的に抽出し、かつ異なる偏光度の光を遮断するため、円偏光フィルタを組み合わせるフィルタセットが必要となる。
本開示の1実施形態の真贋判定方法の一例を、下記に示すが、これらの実施形態に限定されるものではない。
図2は、前記本開示の1実施形態の真贋判定方法の一例を示す図である。図2は、前記本開示のセキュリティ印刷物20に励起光源21による励起光照射22を行いながら、セキュリティ印刷物20の蛍光発光を、バンドパスフィルタ23と円偏光フィルタ24とにこの順で通して、観察する。前記本開示のセキュリティ印刷物20の蛍光発光を、バンドパスフィルタ23と円偏光フィルタ24とにこの順で通すと、前記セキュリティ印刷物に含有される円偏光発光性希土類錯体の蛍光発光による左円偏光もしくは右円偏光どちらかを一方的に検出することができる。
例えば、左円偏光を生じる円偏光発光性希土類錯体を含有するインキ層が部分的に形成された印刷物では、当該印刷物の蛍光発光を、バンドパスフィルタと左円偏光を一方的に検出できる円偏光フィルタとに通すと部分的に塗布された部分の左円偏光が検出され、すなわち発光が観察されるが、バンドパスフィルタと右円偏光を一方的に検出できる円偏光フィルタとに通すと円偏光は検出されず、発光は観察されない。その明暗のコントラストから、印刷物の真贋を判定することができる。
また、左円偏光を生じる円偏光発光性希土類錯体を含有するインキ層と、右円偏光を生じる円偏光発光性希土類錯体を含有するインキ層とがそれぞれ部分的に形成された印刷物では、当該印刷物の蛍光発光を、バンドパスフィルタと左円偏光を一方的に検出できる円偏光フィルタとに通した場合と、バンドパスフィルタと右円偏光を一方的に検出できる円偏光フィルタとに通した場合とで、発光の観察パターンが異なる。このようなインキ層の発光の特殊性から、本開示の1実施形態の真贋判定方法は、優れた真贋判定性を有する。
前記印刷物に含まれる円偏光発光性希土類錯体の励起光としては、可視光線以外の電磁波が挙げられ、例えば、紫外線、赤外線等が挙げられる。励起光源21としては、例えば紫外線ランプ等を挙げることができる。
バンドパスフィルタ23としては、円偏光度の高い波長のみを選択的に透過するフィルタを用いればよく、従来公知のバンドパスフィルタの構成を適宜選択して採用することができる。
また、円偏光フィルタ24としても、従来公知の円偏光フィルタの構成を適宜選択して採用することができる。例えば、円偏光フィルタとしては、直線偏光板とλ/4板の組み合わせが挙げられる。左円偏光を一方的に検出できる円偏光フィルタと、右円偏光を一方的に検出できる円偏光フィルタとしては、直線偏光板と、位相が互いに90°異なるλ/4板を別々に組み合わせたフィルタを用いることができる。円偏光板に用いられる直線偏光板やλ/4板もそれぞれ、従来公知の構成を適宜選択して採用することができる。
セキュリティ印刷物20の蛍光発光を、バンドパスフィルタ23と円偏光フィルタ24とにこの順で通して、観察することが可能であれば、バンドパスフィルタ23と円偏光フィルタ24のフィルタセットは特に限定されるものではない。
図3及び図4はそれぞれ、本開示の1実施形態の真贋判定方法に用いられるフィルタセットの一例を示す。例えば、図3に示すように、一面に、バンドパスフィルタ23と、左円偏光を一方的に検出できる円偏光フィルタ24aと右円偏光を一方的に検出できる円偏光フィルタ24bとを備え、折り畳み線26で折り畳んで用いるフィルタセット25であってもよい。当該フィルタセット25は、図4に示すように、バンドパスフィルタ23と、左円偏光を一方的に検出できる円偏光フィルタ24aと右円偏光を一方的に検出できる円偏光フィルタ24bとが重なるように、折り畳み線26で折り畳んで用いることにより、蛍光発光を、バンドパスフィルタ23と円偏光フィルタ24とにこの順で通して観察することが可能なフィルタセットである。他の例として、フィルタセット25を眼鏡形状にすることも考えられる。
(合成例1:円偏光発光性希土類錯体1の合成)
酢酸ユウロピウムn水和物(710mg、1.8mmol)および蒸留水150mL、アンモニウム水溶液(数滴)、メタノール10mLを300mLナスフラスコに加えた。(+)-3-(trifluoroacetyl)camphor (+tfc,1000mg、4mmol)をメタノール10mLに溶かし、前記酢酸ユウロピウム水溶液に撹拌しながら加え、室温で3時間撹拌した。生成した黄色の沈殿を吸引ろ過により回収した後、蒸留水で洗浄し、得られた黄色の粉末を減圧下で乾燥させた。これにより、[Eu(+tfc)(HO)]を得た。
ESI-MS(m/z):[M-(2HO)+Na]
M:[Eu(-tfc)(HO)] 計算値917.19 実測値917.16
Figure 0007147596000010
次に、得られた[Eu(+tfc)(HO)](180mg、0.2mmol)、Tris(2,6-dimethoxyphenyl)phosphine oxide(tdmpo, 180mg、0.4mmol)及びメタノール10mLを100mlナスフラスコに入れ、室温で3時間撹拌した。撹拌後、減圧下で溶媒を留去し、淡黄色のフィルムを得た。得られた淡黄色のフィルムをジクロロメタン溶媒に溶解させ、不溶物をろ過により取り除いた後、ろ液から溶媒を留去し、透明なフィルムを得た。
Figure 0007147596000011
得られたフィルムを粉砕することで得られた粉体を、ESI-MSによって同定した。
ESI-MS測定装置は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、Thermo Scientic Exactiveを用いた。ESI-MS測定結果を以下に示す。
ESI-MS(m/z):[M-(+tfc)]
M:[Eu(+tfc)(tdmpo)] 計算値1563.41 実測値1563.38
M:[Eu(+tfc)(tdmpo)] 計算値1105.26 実測値1105.27
これにより、得られた円偏光発光性希土類錯体1は[Eu(+tfc)(tdmpo)]、及び[Eu(+tfc)(tdmpo)]の混合物であることが明らかにされた。
(合成例2:円偏光発光性希土類錯体2の合成)
合成例1において、(+)-3-(trifluoroacetyl)camphor (+tfc,1000mg、4mmol)を用いた代わりに、(-)-3-(trifluoroacetyl)camphor (-tfc,1000mg、4mmol)を用いた以外は、合成例1と同様にして、円偏光発光性希土類錯体2を合成し、合成例1と同様にして同定した。
ESI-MS(m/z):[M-(-tfc)]
M:[Eu(-tfc)(tdmpo)] 計算値1563.41 実測値1563.42
M:[Eu(-tfc)(tdmpo)] 計算値1105.26 実測値1105.27
これにより、得られた円偏光発光性希土類錯体2は[Eu(-tfc)(tdmpo)]、及び[Eu(-tfc)(tdmpo)]の混合物であることが明らかにされた。
(合成例3:円偏光発光性希土類錯体3の合成)
合成例1と同様にして[Eu(+tfc)(HO)]を得た後、Eu(+tfc)(HO)(3mg)と、2当量に相当するtdmpoを少量のジクロロメタン溶媒(0.1mL)に溶解させ、その溶液をガラス基板上に塗布し乾燥させた。その結果、透明なフィルムが得られた。
得られた円偏光発光性希土類錯体3について、発光スペクトル形状が円偏光発光性希土類錯体1と類似したことから、得られた円偏光発光性希土類錯体3は円偏光発光性希土類錯体1と配位環境すなわち構造が近しいことが明らかにされた。
(合成例4:円偏光発光性希土類錯体4の合成)
合成例1と同様にして[Eu(+tfc)(HO)]を得た後、Eu(+tfc)(HO)(3mg)と、3当量に相当するtdmpoを少量のジクロロメタン溶媒(0.1 mL)に溶解させ、その溶液をガラス基板上に塗布し乾燥させた。その結果、透明なフィルムが得られた。
得られた円偏光発光性希土類錯体4について、発光スペクトル形状が円偏光発光性希土類錯体1と3と類似したことから、得られた円偏光発光性希土類錯体4は配位環境すなわち構造が円偏光発光性希土類錯体1と3と近いが、後述するように、円偏光発光性希土類錯体3と寿命成分比がわずかに異なることから、その成分比は違うと考えられる。
(合成例5:円偏光発光性希土類錯体5の合成)
合成例2と同様にして[Eu(-tfc)(HO)]を得た後、Eu(-tfc)(HO)(3mg)と、2当量に相当するtdmpoを少量のジクロロメタン溶媒(0.1mL)に溶解させ、その溶液をガラス基板上に塗布し乾燥させた。その結果、透明なフィルムが得られた。
得られた円偏光発光性希土類錯体5について、発光スペクトル形状が円偏光発光性希土類錯体2と類似したことから、得られた円偏光発光性希土類錯体5は円偏光発光性希土類錯体2と配位環境すなわち構造が近しいことが明らかにされた。
(合成例6:円偏光発光性希土類錯体6の合成)
合成例2と同様にして[Eu(-tfc)(HO)]を得た後、Eu(-tfc)(HO)(3mg)と、3当量に相当するtdmpoを少量のジクロロメタン溶媒(0.1 mL)に溶解させ、その溶液をガラス基板上に塗布し乾燥させた。その結果、透明なフィルムが得られた。
得られた円偏光発光性希土類錯体6について、発光スペクトル形状が円偏光発光性希土類錯体2と5と類似したことから、得られた円偏光発光性希土類錯体6は配位環境すなわち構造が円偏光発光性希土類錯体2と5と近いが、円偏光発光性希土類錯体5と寿命成分比がわずかに異なることから、その成分比は違うと考えられる。
(合成例7:円偏光発光性希土類錯体7の合成)
合成例1と同様にして[Eu(+tfc)(HO)]を得た後、Eu(+tfc)(HO)(3mg)と、2当量に相当する下記式で表されるTris(2,6-dimethoxyphenyl)phosphine(tdmp)を少量のジクロロメタン溶媒(0.1mL)に溶解させ、その溶液をガラス基板上に塗布し乾燥させた。その結果、透明なフィルムが得られた。
得られた円偏光発光性希土類錯体7は、発光スペクトル形状が円偏光発光性希土類錯体1と類似しており、円偏光発光性希土類錯体1と比較的近い構造を形成していると考えられる。
Figure 0007147596000012
(合成例8:円偏光発光性希土類錯体8の合成)
合成例1と同様にして[Eu(+tfc)(HO)]を得た後、Eu(+tfc)(HO)(3mg)と、2当量に相当する下記式で表されるTris(4-methoxyphenyl)phosphine oxide)(tmpo)を少量のジクロロメタン溶媒(0.1mL)に溶解させ、その溶液をガラス基板上に塗布し乾燥させた。その結果、透明なフィルムが得られた。
得られた円偏光発光性希土類錯体8は円偏光発光スペクトル測定よりマイナス側の円偏光発光特性を持つことを確認した。
ESI-MS(m/z):[M-(+tfc)]
M:[Eu(+tfc)(tmpo)] 計算値1383.35 実測値1383.36
これにより、得られた円偏光発光性希土類錯体8は[Eu(+tfc)(tmpo)]であった。
Figure 0007147596000013
(比較合成例1:比較円偏光発光性希土類錯体1の合成)
合成例1と同様にして[Eu(+tfc)(HO)]を得た後、Eu(+tfc)(HO)(3mg)と、2当量に相当するトリフェニルフォスフィンオキシド(tppo)を少量のジクロロメタン溶媒(0.1mL)に溶解させ、その溶液をガラス基板上に塗布し乾燥させた。その結果、透明なフィルムは得られず、淡黄色の粉体が得られた。
得られた比較円偏光発光性希土類錯体1は、発光スペクトル形状が、元素分析で同定されている[Eu(+tfc)(tppo)]の発光スペクトル形状と類似したことから、Eu(+tfc)(tppo)]であると考えられる。
(参考合成例1)
合成例1と同様にして[Eu(+tfc)(HO)]を得た後、Eu(+tfc)(HO)(1mg)と、2当量に相当するtdmpoを混合し、メノウ乳鉢と乳棒を用い、15分間ミリングした。得られたEu(+tfc)+2tdmpo-ミリング物(1mg)を少量のKBr(150mg)と混合し、圧力(48kN,3min)をかけた。その結果、長径1cmの錠剤が得られた。
(参考合成例2)
参考合成例1において[Eu(+tfc)(HO)]を得た後、Eu(+tfc)(HO)(1mg)と、2当量に相当するtdmpoを混合する代わりに、3当量に相当するtdmpoを混合した以外は、参考合成例1と同様にして、長径1cmの錠剤を得た。
(実施例1)
(1)セキュリティインキ組成物1の調製
合成例1で得られた円偏光発光性希土類錯体1を0.3質量部と、ジクロロメタンを10質量部とを混合することで、セキュリティインキ組成物1を調製した。
(2)印刷物の作製
得られたセキュリティインキ組成物1をバーコーターで印刷紙に塗布後、乾燥することでインキ層を形成し、実施例1の印刷物を得た。
(実施例2~8)
(1)セキュリティインキ組成物の調製
実施例1において、合成例1で得られた円偏光発光性希土類錯体1の代わりに、合成例2~8で得られた円偏光発光性希土類錯体2~8を用いて、実施例1と同様にしてセキュリティインキ組成物2~8を調製した。
(2)印刷物の作製
実施例1において、セキュリティインキ組成物1の代わりに、セキュリティインキ組成物2~8を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2~8のインキ層を形成し、印刷物を得た。
(比較例1)
(1)セキュリティインキ組成物の調製
実施例1において、合成例1で得られた円偏光発光性希土類錯体1の代わりに比較円偏光発光性希土類錯体1を用いて、実施例1と同様にして比較セキュリティインキ組成物1を調製した。
(2)印刷物の作製
実施例1において、セキュリティインキ組成物1の代わりに、比較セキュリティインキ組成物1を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1のインキ層を形成した。比較例1のインキ層は粉末状のものが析出した状態となり、粉末の定着性にも乏しく、表面が均一な塗膜とはならなかった。
[評価]
各セキュリティインキ組成物のインキ層の下記評価は、石英基板(厚み3mm、アズワン製、2-9784-01)上に、乾燥後の膜厚が200μmとなるように、塗布して乾燥したインキ層を用いて行った。
1.発光スペクトル測定
セキュリティインキ組成物のインキ層の発光スペクトルを測定した。
発光スペクトルの測定条件は以下のとおりである。
測定装置: モジュール型蛍光分光光度計(FluoroLog-3、HORIBA製)
測定条件:測定波長域:550-720nm、励起波長:350nm、測定波長間隔:0.1nm
希土類錯体の構造はその発光スペクトル形状から推察することが可能である。希土類錯体の発光スペクトルの形状は、一般的に、希土類錯体を構成する希土類金属と配位する配位子が形成する配位環境の対称性によって変化する。配位環境の対称性が低いと複数本に分裂して観測されるが、対称性が高い場合はスペクトルが分裂する本数が減り、最も対称性が高くなると1本のシャープな発光となる。この配位環境の対称性は希土類金属と各配位子の立体的な作用に起因することから、発光スペクトルの形状が類似であればその配位環境すなわち希土類錯体の構造が近しいといえる。例えば610nm付近の最も大きな発光は配位環境の異なる対称性によって少なくとも5つに分裂し得ることが知られており、分裂することなく1本である場合にはその対称性はとても高いといえる。
また、この配位環境の対称性が高いことは各配位子が円偏光発光特性を高める適切な距離を保っていることの証左と考えられる。すなわち配位環境の対称性は3分子の2座のキラルなアセチルアセトン配位子の配位構造の対称性を主に示していると考えられ、正八面体構造をとる場合に対称性が最も高くなる。ホスフィンオキシドないしホスフィン配位子が希土類金属に近づきすぎると、2座のキラルなアセチルアセトン配位子が3分子希土類金属に配位した場合に対称性の高い正八面体構造をとることが難しくなり、希土類錯体の配位環境の対称性が低下してしまう。本願のホスフィンオキシドないしホスフィン配位子では置換基の導入によって、希土類金属と適切な距離を保つことで、キラルなアセチルアセトン配位子が対称性の配位環境を有することができ、その結果発光に関わるエネルギー移動が効率的になることで、円偏光発光特性や発光効率を高めることができると考えられる。
発光スペクトル測定の結果を図5~9に示す。図5は、実施例1及び実施例2の、図6は実施例3および4の、図7は実施例5および6の、図8は実施例7の、図9は実施例8および比較例1のインキ層の発光スペクトルを示す。図5において、実線は、実施例1のインキ層の発光スペクトル、点線は、実施例2のインキ層の発光スペクトルである。図6において、実線は、実施例3のインキ層の発光スペクトル、点線は、実施例2のインキ層の発光スペクトルである。図7において、実線は、実施例5のインキ層の発光スペクトル、点線は、実施例6のインキ層の発光スペクトルである。図9において、実線は、実施例8のインキ層の発光スペクトル、点線は、比較例1のインキ層の発光スペクトルである。実施例1~7のインキ層の発光スペクトルは、610nmにシャープな1本の発光が観測された点で類似しており、この点から希土類錯体の構造が近しいことが推察できる。当該発光スペクトルは、希土類金属の発光を示しており、その配位環境の対称性を反映しているからである。また、図6における実施例3と実施例4のインキ層の発光スペクトル、図7における実施例5と実施例6のインキ層の発光スペクトルを比較すると、610nmのメインの発光の長波長側(617nm付近)の発光強度にわずかではあるが差があり、実施例4及び6の方が617nm付近の発光強度が低くなっており、より対称性が高くなっているといえる。これは、対応するホスフィンオキシド配位子の配位数が増えたことによって、希土類金属にホスフィンオキシド配位子が近づきにくくなり、アセチルアセトン配位子がより対称性の高い配位環境を確保できているためだと考えられる。実施例8のインキ層の発光スペクトルは610nm付近に2本の発光が観測され、実施例1~7の希土類錯体と比較してやや対称性が低いが、比較例1のインキ層の発光スペクトルよりはその分裂の程度が低いため、比較例1の希土類錯体よりは配位環境の対称性が高いことを示唆している。
2.発光減衰挙動
実施例3及び実施例4のインキ層の発光減衰挙動を測定した。
発光減衰挙動の測定条件は以下のとおりである。
測定装置:モジュール型蛍光分光光度計(FluoroLog-3、HORIBA製)
測定条件:励起波長:356nm、検出波長:612nm
発光減衰挙動より、得られたインキ層には多成分の錯体が含まれることが確認された。各成分をτ、τ、τ成分とし、各成分の存在割合と発光寿命を表1に示す。各成分の存在割合より、主成分はτ、τ成分であることが確認された。実施例3と実施例4の発光寿命の違いは、希土類錯体の周りの環境の違いに由来していると推定される。
Figure 0007147596000014
3.円偏光発光スペクトル測定
セキュリティインキ組成物のインキ層の円偏光発光(CPL)スペクトルを測定した。
円偏光発光(CPL)スペクトルの測定条件は以下のとおりである。
測定装置:円偏光ルミネセンス測定装置(CPL-200、日本分光株式会社製)
励起波長: 350nm
感度:100mdeg.
走査速度:10nm/min
測定間隔:0.2nm
円偏光発光(CPL)スペクトルの結果の一部を図10に示す。図10は、実施例3、4、5及び6のインキ層の円偏光発光(CPL)スペクトルを示す。図10において、Eu(III)錯体の発光に伴うCPLが観測され、その符号は鏡像異性体のカンファー配位子に依存して反転した。実施例の各インキ層の594nmにおけるCPLのg値を表2に示す。
また、参考合成例1及び2で得られた錠剤の円偏光発光(CPL)スペクトルを測定した結果、参考合成例1の錠剤のg値は-1.6、参考合成例2の錠剤のg値は-1.6であり、参考合成例1及び2ではそれぞれ、合成例1及び2と同様の円偏光発光性錯体が合成されていることが示唆された。本開示に用いられる円偏光発光性希土類錯体は、参考合成例1及び2のように、固相反応においても調製可能であることが示された。
4.透明性(全光線透過率)測定
セキュリティインキ組成物のインキ層の透明性を評価するために、JIS-7361-1に準拠して、全光線透過率を測定した。
全光線透過率の測定条件は以下のとおりである。実施例及び比較例の各インキ層の全光線透過率を表2に示す。
測定装置:顕微分光測定装置(OSP-SP200、オリンパス製)
測定条件:ブランク状態の入射光量を測定した後、サンプルのインキ層をセットした状態での透過光量を測定し、その2つの比によって求めた。
5.発光効率測定
セキュリティインキ組成物のインキ層の発光効率(ΦL)を測定した。
発光効率(ΦL)の測定条件は以下のとおりである。実施例及び比較例の各インキ層の発光効率(ΦL)を表2に示す。
測定装置:蛍光積分球ユニット(ILF-533、直径100mmφ、日本分光(株)製)を取り付けた蛍光分光光度計(FP6300、日本分光(株)製)
測定条件:測定波長域:350-720nm、励起波長:370nm、測定波長間隔:0.2nm
算出方法:積分球を用いて、インキ層の発光スペクトルを測定した。励起波長は370nm、測定範囲は350nm~720nmとした。リファレンスとして、励起光のスペクトルを同様の条件で測定した。これらの差スペクトルを求め、インキ層が光吸収した強度IEXとEu(III)イオンの発光強度IEUから、以下の式を用いて発光量子収率ΦLを算出した。λは波長(nm)、νは周波数(cm-1)である。
Figure 0007147596000015
Figure 0007147596000016
×は、比較例1のインキ層が、粉末状のものが析出した状態となって表面が均一な塗膜にならず透明性を確保できなかったため、塗膜状態で測定できなかったことを示す。
6.円偏光発光の目視判定
セキュリティインキ組成物のインキ層の円偏光発光の目視判定を行った。左円偏光もしくは右円偏光どちらかを一方的に検出可能なCPL検出装置として図2に示される装置を用いた。図2における励起光源21として紫外線照射ランプを用い、紫外線照射22を行いながら、セキュリティ印刷物20の蛍光発光を、バンドパスフィルタ23と円偏光フィルタ24とにこの順で通して、観察した。バンドパスフィルタは594nm透過フィルタを用い、円偏光フィルタ24としては、直線偏光板と位相が互いに90°異なるλ/4板を別々に組み合わせたフィルタによって、左円偏光もしくは右円偏光どちらかを一方的に検出した。
図11は、セキュリティインキ組成物を部分的に塗布したサンプル調製法を示した図である。合成例1のような(+)-3-(trifluoroacetyl)camphorを用いて調製された円偏光発光性希土類錯体を含むセキュリティインキ組成物の場合には、図11の30のように、星型に塗布した。合成例2のような(-)-3-(trifluoroacetyl)camphorを用いて調製された円偏光発光性希土類錯体を含むセキュリティインキ組成物の場合には、図11の31のように、星型を白抜きにした円状に塗布した。
実施例1のセキュリティインキ組成物を図11の30のように、ガラス基板上に星型に塗布したサンプルと、実施例2のセキュリティインキ組成物を図11の31のように、ガラス基板上に星型を白抜きにした円状に塗布したサンプルとを、図11のように重ね合わせて、目視観測した結果を図12に示す。この2つのガラス基板を重ねたサンプルについて、バンドパスフィルタのみを介して得られた発光の写真を図12(A)に、バンドパスフィルタと左円偏光透過フィルタとを介して得られた発光の写真を図12(B)に、バンドパスフィルタと右円偏光透過フィルタとを介して得られた発光の写真を図12(C)に示す。観測の結果、検出された左円偏光と右円偏光は明らかに強度が異なり、明確に観測されることが確認された。
1 印刷物
10 基材
11 インキ層
20 セキュリティ印刷物
21 励起光源
22 紫外線照射
23 バンドパスフィルタ
24、24a、24b 円偏光フィルタ
25 フィルタセット
26 折り畳み線

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)、又はその鏡像異性体で表される、円偏光発光性希土類錯体を含有する、セキュリティインキ組成物。
    Figure 0007147596000017
    (一般式(1)中、Ln3+は、3価の希土類イオンを表す。
    Zは各々独立に、ホスフィンオキシド(P=O)、又はリン(P)を表す。
    Yは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表すが、Yが結合しているフェニル基1個につき、少なくとも1つのYがアルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基であり、Yに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
    Xは、直接結合、或いは、-O-、-S-、-NR-(ここで、Rは水素原子又は炭素数1~22の炭化水素基)、又は炭素数1~22の炭化水素基を表す。
    Qは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表すか、或いは、互いに結合して6員環の芳香族炭化水素環を形成していても良く、Qに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
    は、炭素数1~22の炭化水素基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表し、Rに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
    及びRは各々独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~22の炭化水素基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表し、R及びRに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
    n1は0~6の数を表し、n2は0~3の数を表すが、n1+2×n2は1以上6以下である。mは3の数を表す。
    n1、n2又はmが2以上の場合に、括弧内の構造は、同一でも異なっていても良い。)
  2. 前記一般式(1)中、Yが結合しているフェニル基1個につき、Zに対してオルト位又はメタ位の少なくとも1つのYが、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基である、円偏光発光性希土類錯体を含有する、請求項1に記載のセキュリティインキ組成物。
  3. 下記一般式(2)、又はその鏡像異性体で表される、円偏光発光性希土類錯体を含有する、請求項1又は2に記載のセキュリティインキ組成物。
    Figure 0007147596000018
    (一般式(2)中、Ln3+、Z、X、Q、R、R、R、n1、n2、及びmは各々、前記と同義であり、Rは各々独立に、炭素数1~22の炭化水素基を表し、基中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。)
  4. 下記一般式(1)、又はその鏡像異性体で表される、円偏光発光性希土類錯体を含有するインキ層を有する、セキュリティ印刷物。
    Figure 0007147596000019
    (一般式(1)中、Ln3+は、3価の希土類イオンを表す。
    Zは各々独立に、ホスフィンオキシド(P=O)、又はリン(P)を表す。
    Yは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表すが、Yが結合しているフェニル基1個につき、少なくとも1つのYがアルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基であり、Yに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
    Xは、直接結合、或いは、-O-、-S-、-NR-(ここで、Rは水素原子又は炭素数1~22の炭化水素基)、又は炭素数1~22の炭化水素基を表す。
    Qは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表すか、或いは、互いに結合して6員環の芳香族炭化水素環を形成していても良く、Qに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
    は、炭素数1~22の炭化水素基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表し、Rに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
    及びRは各々独立に、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~22の炭化水素基、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基のいずれかを表し、R及びRに含まれて良い炭化水素中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。
    n1は0~6の数を表し、n2は0~3の数を表すが、n1+2×n2は1以上6以下である。mは3の数を表す。
    n1、n2又はmが2以上の場合に、括弧内の構造は、同一でも異なっていても良い。)
  5. 前記一般式(1)中、Yが結合しているフェニル基1個につき、Zに対してオルト位又はメタ位の少なくとも1つのYが、アルコキシ基、エステル基、アシルオキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホニル基、シアノ基、シリル基、ホスホン酸基、ジアゾ基、又はメルカプト基である、円偏光発光性希土類錯体を含有する、請求項4に記載のセキュリティ印刷物。
  6. 下記一般式(2)、又はその鏡像異性体で表される、円偏光発光性希土類錯体を含有するインキ層を有する、請求項4又は5に記載のセキュリティ印刷物。
    Figure 0007147596000020
    (一般式(2)中、Ln3+、Z、X、Q、R、R、R、n1、n2、及びmは各々、前記と同義であり、Rは各々独立に、炭素数1~22の炭化水素基を表し、基中の水素原子は各々独立にハロゲン原子に置換されていても良い。)
  7. 請求項4~6のいずれか1項に記載のセキュリティ印刷物の蛍光発光を、バンドパスフィルタと円偏光フィルタとにこの順で通して、観察することにより、真正品を判定する真贋判定方法。
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