以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
[第一実施形態]
<エンジン2の概略構成>
図1は、実施形態の内燃機関の構成を示す斜視図である。実施形態の内燃機関は、回転ピストン型のエンジン2である。エンジン2の燃料には、たとえば、ガスやガソリンや軽油等が用いられる。エンジン2は、ハウジング4と、吸気管6と、排気管8と、インジェクタ10と、スロットルモータ14と、第1出力軸16と、第2出力軸18とを含む。
吸気管6の一方端は、ハウジング4の吸気ポート(図示せず)に接続される。吸気管6の他方端には、たとえば、エアクリーナ(図示せず)が接続される。エアクリーナは、エンジン2の外部から吸入される空気から異物を除去する。エンジン2の作動中において、吸気管6には、エアクリーナから吸入された空気が流通する。吸気管6を流通する空気は、ハウジング4の吸気ポートに流通する。
吸気管6には、吸気管6を流通する空気の流量を制限するスロットルバルブが設けられている。スロットルモータ14は、スロットルバルブの開度を調整する。
インジェクタ10は、吸気管6のスロットルバルブよりも上流側に設けられ、燃料(たとえば、ガス)を吸気管6内に噴射する。噴射された燃料は、吸気管6内で空気と混合されてハウジング4の吸気ポートに流通する。
ハウジング4の外周部分は、図1に示すように円筒形状によって形成されており、その内周部分も円筒形状に形成されている。ハウジング4は、その内部に、第1出力軸16に接続される第1ピストン部材と、第2出力軸18に接続される第2ピストン部材とを収納する。
排気管8の一方端は、ハウジング4の排気ポート(図示せず)に接続される。排気管8の他方端には、たとえば、排気処理装置(図示せず)が接続される。エンジン2の作動中において、ハウジング4内での燃焼により生じた排気は、ハウジング4の排気ポートから排気管8に流通する。排気管に流通する排気は、排気処理装置によって浄化されて、エンジン2の外部に排出される。
第1出力軸16および第2出力軸18は、いずれもハウジング4内での燃料の燃焼によって回転する。第1出力軸16および第2出力軸18は、たとえば、モータジェネレータ(図示せず)の回転軸に接続される。このモータジェネレータは、たとえば、三相交流回転電機である。
<エンジン2の内部構造>
図2は、エンジン2内部に設けられるピストン部材の構成の一例を示す図である。図2を参照して、エンジン2の内部構造の一例について説明する。
図2に示すように、ハウジング4内には、第1ピストン部材24と、第2ピストン部材28とが組み合わされて収納される。第1ピストン部材24は、第1回転体24aと、第1壁面部材24bとを含む。第2ピストン部材28は、第2回転体28aと、第2壁面部材28bとを含む。
第1ピストン部材24と、第2ピストン部材28とは、ハウジング4によって回転可能に支持されている。第1回転体24aと第2回転体28aとは、図2中に一点鎖線で図示される回転中心AXが一致している。第1回転体24aと第2回転体28aとは、回転中心AXを中心に回転可能である。第1回転体24aと第2回転体28aとは、第1回転体24aの一方の端面と第2回転体28aの一方の端面とが軸方向に対向するように設けられる。
なお本明細書中の説明では、回転中心AXと平行な方向を軸方向と称し、回転中心AXを中心とする円周に沿う方向を周方向と称し、回転中心AXと直交する方向を径方向と称する。径方向において、回転中心AXに近い側を内側と称し、回転中心AXから離れる側を外側と称する。
第1回転体24aは、その回転中心AXを含む断面に斜面部分24cを有するように形成される。第2回転体28aは、その回転中心AXを含む断面に斜面部分28cを有するように形成される。これにより、第1回転体24aと第2回転体28aとが組み合わされた状態において、第1回転体24aと第2回転体28aとの間には、V字形状の断面を有する凹部が周方向に形成される。
第1壁面部材24bは、第1回転体24aの斜面部分24cから、径方向外側に向けて延在し、第2回転体28aの斜面部分28cに向けて軸方向に延在するように、設けられている。第1壁面部材24bは、2つの三角形の板状部材によって構成される。第1壁面部材24bの2つの三角形の板状部材は、回転中心AXについて互いに対称となる位置に配置されている。図2には、第1壁面部材24bの2つの板状部材のうちの一方のみが図示されている。
第2壁面部材28bは、第2回転体28aの斜面部分28cから、径方向外側に向けて延在し、第1回転体24aの斜面部分24cに向けて軸方向に延在するように、設けられている。第2壁面部材28bは、上述の第1壁面部材24bを構成する板状部材と同形状となる、2つの三角形の板状部材によって構成される。第2壁面部材28bの2つの三角形の板状部材は、回転中心AXについて互いに対称となる位置に配置されている。
第1壁面部材24bおよび第2壁面部材28bの三角形の板状部材は、いずれも、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28がハウジング4に収納されている状態において第1回転体24aと第2回転体28aとの間のV字形状の凹部とハウジング4の内周面とによって形成される三角形の断面形状に合致するように、形成される。
第1壁面部材24bは、三角形の一辺において、第1回転体24aの斜面部分24cに固定されている。第1壁面部材24bの三角形の一辺は、ハウジング4の内周面に対向している。第1壁面部材24bの三角形の一辺は、第2回転体28aの斜面部分28cに対向している。
第2壁面部材28bは、三角形の一辺において、第2回転体28aの斜面部分28cに固定されている。第2壁面部材28bの三角形の一辺は、ハウジング4の内周面に対向している。第2壁面部材28bの三角形の一辺は、第1回転体24aの斜面部分24cに対向している。
第1回転体24aには、回転中心AXが一致するように第1出力軸16が接続される。第1回転体24aとハウジング4との間には、ワンウェイクラッチ22が設けられる。ワンウェイクラッチ22は、第1回転体24aのハウジング4内における予め定められた回転方向へのみ回転を許容し、予め定められた回転方向とは逆方向への回転を抑制する。
第2回転体28aには、回転中心AXが一致するように第2出力軸18が接続される。第2回転体28aとハウジング4との間には、ワンウェイクラッチ26が設けられる。ワンウェイクラッチ26は、第2回転体28aのハウジング4内における予め定められた回転方向へのみ回転を許容し、予め定められた回転方向とは逆方向への回転を抑制する。
第1壁面部材24bおよび第2壁面部材28bは、三角形の板状形状に限られず、たとえば円板形状など、任意の形状を有してもよい。
<燃焼室>
図3は、燃焼室Aで燃料が燃焼する場合における各構成部材の動作の一例を説明するための図である。図3には、ハウジング4の中央部分(たとえば、第1回転体24aと第2回転体28aとの当接部分)における、回転中心AXに直交する断面が示される。
図3に示すように、ハウジング4内には、ハウジング4の内周面4mと、第1ピストン部材24と、第2ピストン部材28とによって、燃料を燃焼させるための4つの燃焼室A~Dが形成される。第1壁面部材24bおよび第2壁面部材28bは、燃焼室A~Dの周方向の壁面を構成している。周方向に隣り合う2つの燃焼室は、第1壁面部材24bおよび第2壁面部材28bによって仕切られている。
燃焼室Aおよび燃焼室Cは、ハウジング4の内周面4m、第1ピストン部材24の回転方向の前方面24m、および第2ピストン部材28の回転方向の後方面28nによって、規定されている。燃焼室Bおよび燃焼室Dは、ハウジング4の内周面4m、第1ピストン部材24の回転方向の後方面24n、および第2ピストン部材28の回転方向の前方面28mによって、規定されている。
図2に示されるワンウェイクラッチ22,26は、図3においては、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28の反時計回りの回転を抑制し、時計回りの回転を許容する。図3中の時計回り方向は、実施形態における一方向に相当する。燃焼室A、燃焼室B、燃焼室Cおよび燃焼室Dは、この一方向においてこの順に並んでいる。
図3に示される燃焼室Aでは、圧縮された空気と燃料との混合気が自着火によって着火する。燃焼室Aで燃料が燃焼すると、第1ピストン部材24の反時計回りの移動がワンウェイクラッチ22によって抑制されるため、第1ピストン部材24の回転位置が維持されつつ、第2ピストン部材28のみが破線矢印の方向に図中の時計回り方向に回転する。燃焼室Aでは、燃焼室A内の気体が膨張するともに燃焼室Aの容積が増加する、膨張行程となる。
燃焼室Aでの燃料の燃焼によって、第2ピストン部材28が破線矢印の方向に図中の時計回り方向に回転すると、第1ピストン部材24の回転位置が維持されるため、燃焼室Bの容積が減少する。このとき、燃焼室Bは、排気管8と連通している。そのため、燃焼室B内の排気は、燃焼室Bの容積の減少とともに、排気管8に排出されていく。燃焼室Bでは、膨張した排気が排気管8から排出される排気行程となる。
一方、図3に示される燃焼室Dは、吸気管6と連通している。そのため、吸気管6から空気と燃料との混合気が燃焼室D内に吸入される。燃焼室Dでは、吸気管6から混合気が吸入される吸気行程となる。
燃焼室Aでの燃料の燃焼によって第2ピストン部材28が破線矢印の方向に図中の時計回り方向に回転する途中で、燃焼室Dは吸気管6と非連通になる。第2ピストン部材28がさらに回転すると、第1ピストン部材24の回転位置が維持されるため、燃焼室Dの容積が減少する。このとき燃焼室Dは、吸気管6および排気管8のいずれにも連通していないため、燃焼室Dの容積の減少によって燃焼室D内の混合気が圧縮される。燃焼室Dでは、吸気管6から吸入された混合気が圧縮される圧縮行程となる。
図3に示される燃焼室Cでは、燃焼室Aでの燃料の燃焼によって、第2ピストン部材28が破線矢印の方向に図中の時計回り方向に回転すると、第1ピストン部材24の回転位置が維持されるため、容積が増加する。燃焼室Cは、第2ピストン部材28が回転する途中で、吸気管6と連通する。そのため、燃焼室Cの容積の増加とともに、吸気管6から混合気が燃焼室C内に吸入される。燃焼室Cでは、吸気管6から混合気が吸入される吸気行程となる。
燃焼室D内の圧力が上昇することによって第1ピストン部材24に時計回りの力が作用すると、第1ピストン部材24が回転し、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との位置関係が図4に示す位置関係となる。
図4は、燃焼室Dで燃料が燃焼する場合における各構成部材の動作の一例を説明するための図である。図4には、図3と同様に、ハウジング4の中央部分における回転中心AXに直交する断面が示される。図4に示されるエンジン2の構成は、図3に示されるエンジン2の構成と比較して、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との位置関係ならびに燃焼室A~Dの位置および容積が異なる点以外は同様である。
図4に示される燃焼室Dでは、圧縮行程の後の膨張行程となる。すなわち、燃焼室Dでは、圧縮された空気と燃料との混合気が自着火によって着火する。燃焼室Dで燃料が燃焼すると、第2ピストン部材28の反時計回りの移動がワンウェイクラッチ26によって抑制されるため、第2ピストン部材28の回転位置が維持されつつ、第1ピストン部材24のみが時計回りに回転し、燃焼室D内の気体の膨張とともに燃焼室Dの容積が増加する。
図4に示される燃焼室Aでは、膨張行程の後の排気行程となる。すなわち、燃焼室Dでの燃料の燃焼によって、第1ピストン部材24が時計回りに回転すると、第2ピストン部材28の回転位置が維持されるため、燃焼室Aの容積が減少する。このとき、燃焼室Aは、排気管8と連通している。そのため、燃焼室A内の排気は、燃焼室Aの容積の減少とともに、排気管8に排出されていく。
図4に示される燃焼室Bでは、排気行程の後の吸気行程となる。すなわち、燃焼室Dでの燃料の燃焼によって、第1ピストン部材24が時計回りに回転すると、第2ピストン部材28の回転位置が維持されるため、燃焼室Bの容積が増加する。このとき、燃焼室Bは、第1ピストン部材24が回転する途中で、吸気管6と連通する。そのため、燃焼室Bの容積の増加とともに、吸気管6から混合気が燃焼室B内に吸入される。
図4に示される燃焼室Cでは、吸気行程の後の圧縮行程となる。すなわち、燃焼室Dでの燃料の燃焼によって、第1ピストン部材24が時計回りに回転すると、第2ピストン部材28の回転位置が維持されるため、燃焼室Cの容積が減少する。このとき、燃焼室Cは、吸気管6および排気管8のいずれにも連通していないため、燃焼室Cの容積の減少によって燃焼室C内の混合気が圧縮される。
そして、燃焼室C内の圧力が上昇することによって第2ピストン部材28に時計回りの力が作用すると、第2ピストン部材28が回転し、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との位置関係が図3に示す位置関係となる。
このようにして、燃焼室A~Dのうちのいずれかで燃焼する毎に、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28とが交互に回転することによって、エンジン2が動作する。燃焼室A、燃焼室B、燃焼室Cおよび燃焼室D内において、吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなるサイクルが繰り返される。
<シール構造の概略構成>
以下、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との対向面間をシールするシール構造について説明する。図5は、第1ピストン部材24および第2ピストン部材28の断面図である。図5には、図2に示す回転中心AXを含み第1ピストン部材24の第1壁面部材24bを通る、第1ピストン部材24および第2ピストン部材28の断面が図示されている。図5においては、図中の左右方向が軸方向である。
第1ピストン部材24と第2ピストン部材28とは、軸方向に並んで配置されている。第1ピストン部材24と第2ピストン部材28とは、軸受100を介して連結されており、互いに相対回転可能に構成されている。第1ピストン部材24には、潤滑油路210が形成されている。第2ピストン部材28には、潤滑油路212が形成されている。潤滑油路210と潤滑油路212とは連通している。
第1ピストン部材24は、燃焼室A~Dの径方向内側に、第2ピストン部材28に対向する環状の対向面240を有している。第2ピストン部材28は、燃焼室A~Dの径方向内側に、第1ピストン部材24に対向する環状の対向面を有している。
図6は、第1ピストン部材24およびシール構造の斜視図である。図6には、図5に含まれる構成のうち、第2ピストン部材28を除く構成の斜視図が示されている。図7は、図6に示す領域VIIの拡大図である。図5~7に示されるように、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との間の気密性を保つシール構造は、シールリング40と、ピストンシール50,150と、コーナーシール60,160とを含んでいる。
シールリング40は、環状の形状を有している。シールリング40は、第1ピストン部材24および第2ピストン部材28と同心に配置されている。シールリング40は、斜面部分24cよりも径方向の内側に配置されている。シールリング40は、第1壁面部材24bよりも径方向の内側に配置されている。したがってシールリング40は、燃焼室A~Dよりも径方向の内側に配置されており、燃焼室A~Dの内周部をシールしている。シールリング40は、燃焼室A~Dから内周側へのガスの漏れを抑制するガスシールである。
シールリング40は、第1ピストン部材24に保持されている。第1ピストン部材24の、第2ピストン部材28に対向する対向面240には、環状のロータ溝244が形成されている。ロータ溝244は、対向面240の一部が環状に窪んで形成されており、第2ピストン部材28に向かって開口している。ロータ溝244内に、シールリング40の一部が収容されている。
シールリング40は、周方向の1箇所に合口部を有する略C字形状に形成されている。シールリング40は、拡径方向に作用する自己張力を有している。ロータ溝244にシールリング40を収容する際に、シールリング40の合口部を閉じてシールリング40の径を縮小させた状態にする。これにより、シールリング40には、径方向外側への付勢力が作用する。この付勢力が、拡径方向の自己張力としてシールリング40に付与される。
シールリング40は、矩形状の断面形状を有している。シールリング40は、第2ピストン部材28に接触する摺動シール面41を有している。第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との相対回転に伴い、摺動シール面41は第2ピストン部材28に対して摺動する。
シールリング40は、環状シール面42を有している。環状シール面42は、シールリング40の径方向外側の表面を構成している。環状シール面42は、ロータ溝244内において第1ピストン部材24に接触する面である。環状シール面42は、ロータ溝244の内面に接触している。環状シール面42は、ロータ溝244の径方向外側の側壁面に接触している。シールリング40は、拡径方向の自己張力の作用によって、ロータ溝244内で径方向外側へと動き、シールリング40の環状シール面42がロータ溝244の内面に接触する。これにより、シールリング40の第1ピストン部材24への密着性が確保されている。
シールリング40は、シールリング40の径方向内側の表面を構成する環状の内側環状面43を有している。シールリング40に拡径方向の自己張力が作用していることにより、内側環状面43は、ロータ溝244の内面から離れて配置されている。内側環状面43とロータ溝244の径方向内側の側壁面との間には、隙間が形成されている。シールリング40は、摺動シール面41と反対側の裏側面44を有している。
シールリング40は、ばね部45を有している。ばね部45はロータ溝244の底面とシールリング40の裏側面44とに接触しており、シールリング40をロータ溝244の外部へ向けて付勢している。これにより、シールリング40の摺動シール面41の第2ピストン部材28への密着性が確保されている。
ピストンシール50は、第1ピストン部材24の第1壁面部材24bに保持されている。第1壁面部材24bには収容溝255,258が形成されており、収容溝255,258内にピストンシール50が収容されている。収容溝255は、第1壁面部材24bの、第2ピストン部材28の斜面部分28cに対向する縁に形成されている。収容溝258は、第1壁面部材24bの、ハウジング4の内周面4mに対向する外周縁に形成されている。
ピストンシール50は、第2ピストン部材28の斜面部分28cに接触するシール面51を有している。第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との相対回転に伴い、シール面51は第2ピストン部材28に対して摺動する。ピストンシール50は、ハウジング4の内周面4mに接触するシール面81を有している。ハウジング4内で第1ピストン部材24が回転することに伴い、シール面81はハウジング4に対して摺動する。
ピストンシール50は、第1ピストン部材24の第1壁面部材24bと第2ピストン部材28の斜面部分28cとの間をシールしており、かつ、第1ピストン部材24の第1壁面部材24bとハウジング4との間をシールしている。ピストンシール50は、周方向に隣り合う2つの燃焼室間をシールしており、燃焼室A~Dのうちの1の燃焼室から当該1の燃焼室の隣の燃焼室へのガスの漏れを抑制している。
ピストンシール150は、ピストンシール50と同様の構造を有している。ピストンシール150は、図6には図示しない第2ピストン部材28の第2壁面部材28bに保持されている。ピストンシール150は、第1ピストン部材24の斜面部分24cに接触するシール面と、ハウジングに接触するシール面とを有している。ピストンシール150は、第2ピストン部材28の第2壁面部材28bと第1ピストン部材24の斜面部分24cとの間、および第2壁面部材28bとハウジング4との間をシールしている。ピストンシール150は、周方向に隣り合う2つの燃焼室間をシールしており、燃焼室A~Dのうちの1の燃焼室から当該1の燃焼室の隣の燃焼室へのガスの漏れを抑制している。
コーナーシール60は、シールリング40とピストンシール50との交差部に配置されている。コーナーシール60は、第1ピストン部材24に保持されている。第1ピストン部材24には、対向面240の一部が窪んだ収容凹部260が形成されており、収容凹部260内にコーナーシール60が収容されている。収容凹部260は、第1壁面部材24bの径方向内側の端部に形成されている。したがってコーナーシール60は、第1壁面部材24bの径方向内側の端部において、第1ピストン部材24に保持されている。
図8は、第1コーナーシールとしてのコーナーシール60の斜視図である。コーナーシール60は、摺動シール面61を有している。摺動シール面61は、第2ピストン部材28に接触する。第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との相対回転に伴い、摺動シール面61は第2ピストン部材28に対して摺動する。収容凹部260の底面にはばね部材73が設けられており、ばね部材73はコーナーシール60を収容凹部260の外部へ向けて付勢している。これにより、摺動シール面61の第2ピストン部材28への密着性が確保されている。
コーナーシール60には、差込部64が形成されている。ピストンシール50は、差込部64に差し込まれて、コーナーシール60と係合している。コーナーシール60は、シールリング40とピストンシール50とを接続して、シールの切れ目を発生させないようにする。
コーナーシール60には、コーナーシール溝65が形成されている。コーナーシール溝65は、摺動シール面61の一部が窪んで形成されており、第2ピストン部材28に向かって開口している。シールリング40は、その一部がコーナーシール溝65内に収容されて、コーナーシール60と係合している。コーナーシール溝65は、径方向外側の壁面をなす外周壁面66と、径方向内側の壁面をなす内周壁面67とを有している。
シールリング40の環状シール面42は、外周壁面66から離れて配置されている。環状シール面42と外周壁面66との間には、隙間G1が形成されている。環状シール面42は、コーナーシール溝65の内面の一部をなす外周壁面66と、隙間G1を介して対向している。シールリング40の内側環状面43は、内周壁面67から離れて配置されている。内側環状面43と内周壁面67との間には、隙間が形成されている。内側環状面43は、コーナーシール溝65の内面の一部をなす内周壁面67と、隙間を介して対向している。
差込部64の延びる方向とコーナーシール溝65の延びる方向とは、略直交している。コーナーシール60が第1ピストン部材24に保持された状態で、差込部64は、径方向に延びている。コーナーシール60が第1ピストン部材24に保持された状態で、コーナーシール溝65は、周方向に延びている。
コーナーシール160は、シールリング40とピストンシール150との交差部に配置されている。コーナーシール160は、第2ピストン部材28に保持されている。第2ピストン部材28の第2壁面部材28bの径方向内側の端部には、対向面の一部が窪んだ収容凹部が形成されており、この収容凹部内にコーナーシール160が収容されている。したがってコーナーシール160は、第2壁面部材28bの径方向内側の端部において、第2ピストン部材28に保持されている。
図9は、第2コーナーシールとしてのコーナーシール160の斜視図である。コーナーシール160は、摺動シール面161を有している。摺動シール面161は、第1ピストン部材24に接触する。第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との相対回転に伴い、摺動シール面161は第1ピストン部材24に対して摺動する。コーナーシール160にはばね部材173が設けられており、ばね部材173はコーナーシール60を第1ピストン部材24へ向けて付勢している。これにより、コーナーシール160の第1ピストン部材24への密着性が確保されている。
コーナーシール160には、差込部164が形成されている。ピストンシール150は、差込部164に差し込まれて、コーナーシール160と係合している。コーナーシール160は、シールリング40とピストンシール150とを接続して、シールの切れ目を発生させないようにする。
コーナーシール160には、コーナーシール溝165が形成されている。コーナーシール溝165は、摺動シール面161の一部が窪んで形成されており、第1ピストン部材24に向かって開口している。シールリング40は、その一部がコーナーシール溝165内に収容されて、コーナーシール160と係合している。コーナーシール溝165は、径方向外側の壁面をなす外周壁面166と、径方向内側の壁面をなす内周壁面167とを有している。
シールリング40の環状シール面42は、外周壁面166から離れて配置されている。環状シール面42と外周壁面166との間には、隙間が形成されている。環状シール面42は、コーナーシール溝165の内面の一部をなす外周壁面166と、隙間を介して対向している。シールリング40の内側環状面43は、内周壁面167から離れて配置されている。内側環状面43と内周壁面167との間には、隙間が形成されている。内側環状面43は、コーナーシール溝165の内面の一部をなす内周壁面167と、隙間を介して対向している。
差込部164の延びる方向とコーナーシール溝165の延びる方向とは、略直交している。コーナーシール160が第2ピストン部材28に保持された状態で、差込部164は、径方向に延びている。コーナーシール160が第2ピストン部材28に保持された状態で、コーナーシール溝165は、周方向に延びている。
図5,6に戻って、軸方向においてピストンシール50に隣り合って、シールリング90が設けられている。シールリング90には径方向外側への自己張力が作用している。この自己張力によって、シールリング90はハウジング4の内周面4mに密着している。
<ロータ溝とコーナーシールとの比較>
図10は、ロータ溝244と、第1コーナーシール、すなわちコーナーシール60との比較を示す模式図である。図10および後続の図面においては、第1ピストン部材24、第2ピストン部材28、およびシールリング40の、周方向に直交する断面(径方向および軸方向を含む断面)の形状が、模式的に実線で示されている。一方、コーナーシール60,160の形状が、二点鎖線で模式的に示されている。図10および後続の図面においては、図中の左右方向が軸方向であり、図中の上下方向が径方向である。図中の上側が径方向の外側であり、図中の下側が径方向の内側である。
第1ピストン部材24は、第2ピストン部材28に対向する対向面240を有している。第2ピストン部材28は、第1ピストン部材24に対向する対向面280を有している。第1ピストン部材24の対向面240には、ロータ溝244が形成されている。第2ピストン部材28の対向面280には、溝は形成されておらず、対向面280は平坦な形状を有している。
ロータ溝244は、ロータ溝244の径方向外側の側壁面をなす外周壁面246と、径方向内側の側壁面をなす内周壁面247とを有している。シールリング40の環状シール面42は、外周壁面246に接触している。シールリング40の内側環状面43は、内周壁面247から離れて配置されている。内側環状面43と内周壁面247との間には、隙間が形成されている。内側環状面43は、内周壁面247と隙間を介して対向している。シールリング40の摺動シール面41は、第2ピストン部材28の対向面280に接触している。シールリング40の裏側面44は、ロータ溝244の底面から離れて配置されており、ロータ溝244の底面と隙間を介して対向している。
シールリング40は、その一部がロータ溝244内に収容されている。シールリング40の一部は、ロータ溝244の外部に配置されている。シールリング40は、ロータ溝244内に収容されている溝内部分47と、ロータ溝244外に配置されており対向面240から突出している溝外部分48とを有している。
シールリング40の環状シール面42は、コーナーシール溝65の外周壁面66から離れて配置されており、外周壁面66と隙間G1を介して対向している。シールリング40の内側環状面43は、コーナーシール溝65の内周壁面67から離れて配置されており、内周壁面67と隙間を介して対向している。シールリング40の裏側面44は、コーナーシール溝65の底面から離れて配置されており、コーナーシール溝65の底面と隙間を介して対向している。
コーナーシール60の摺動シール面61は、第2ピストン部材28の対向面280に接触している。コーナーシール溝65の外周壁面66は、ロータ溝244の外周壁面246よりも、径方向外側に配置されている。コーナーシール溝65の外周壁面66は、ロータ溝244の外周壁面246よりも、シールリング40の環状シール面42から離れている。コーナーシール溝65の内周壁面67は、ロータ溝244の内周壁面247よりも、径方向内側に配置されている。コーナーシール溝65の内周壁面67は、ロータ溝244の内周壁面247よりも、シールリング40の内側環状面43から離れている。
コーナーシール溝65の幅は、シールリング40の径方向寸法よりも、大きくなっている。コーナーシール溝65の幅は、ロータ溝244の幅よりも、大きくなっている。コーナーシール溝65の深さは、シールリング40の軸方向寸法よりも、大きくなっている。
図11は、ロータ溝244と、第2コーナーシール、すなわちコーナーシール160との比較を示す模式図である。シールリング40の環状シール面42は、コーナーシール溝165の外周壁面166から離れて配置されており、外周壁面166と隙間G2を介して対向している。シールリング40の内側環状面43は、コーナーシール溝165の内周壁面167から離れて配置されており、内周壁面167と隙間を介して対向している。シールリング40の摺動シール面41は、コーナーシール溝165の底面から離れて配置されており、コーナーシール溝165の底面と隙間を介して対向している。
コーナーシール160の摺動シール面161は、第1ピストン部材24の対向面240に接触している。コーナーシール溝165の外周壁面166は、ロータ溝244の外周壁面246よりも、径方向外側に配置されている。コーナーシール溝165の外周壁面166は、ロータ溝244の外周壁面246よりも、シールリング40の環状シール面42から離れている。コーナーシール溝165の内周壁面167は、ロータ溝244の内周壁面247よりも、径方向内側に配置されている。コーナーシール溝165の内周壁面167は、ロータ溝244の内周壁面247よりも、シールリング40の内側環状面43から離れている。
コーナーシール溝165の幅は、シールリング40の径方向寸法よりも、大きくなっている。コーナーシール溝165の幅は、ロータ溝244の幅よりも、大きくなっている。コーナーシール溝165の深さは、シールリング40の溝外部分48が対向面240から突出する突出高さよりも、大きくなっている。
<作用および効果>
次に、上述した実施形態の作用および効果について説明する。
実施形態のシール構造では、図7,10に示されるように、シールリング40は、環状シール面42を有している。環状シール面42は、ロータ溝244内において第1ピストン部材24の外周壁面246に接触している。シールリング40は、コーナーシール溝65内に一部が収容されている。環状シール面42は、コーナーシール溝65の外周壁面66と隙間G1を介して対向している。
第1ピストン部材24およびコーナーシール60の製造時の誤差、およびコーナーシール60を第1ピストン部材24に組み付ける際の誤差により、コーナーシール溝65が、ロータ溝244に対して径方向に位置ずれする場合がある。
シールリング40の環状シール面42とコーナーシール溝65の外周壁面66との間に隙間G1が形成され、この隙間G1が、ロータ溝244に対するコーナーシール溝65の位置ずれが発生した場合においても位置ずれを吸収できる大きさを有していることで、シールリング40はコーナーシール60に対して非接触とされる。コーナーシール60がシールリング40に径方向の応力を作用してシールリング40を変位または変形させることが、抑制されている。これにより、シールリング40の環状シール面42の、ロータ溝244の外周壁面246への密着を確保できる。環状シール面42と外周壁面246との間にガス漏れの原因となる隙間が形成されない構成とすることで、シール構造のシール性を向上することができる。したがって、燃焼室A~Dからのガスの漏れ量を低減することができ、エンジン2の燃焼効率を向上することができる。
図7に示されるように、シールリング40は、拡径方向に作用する自己張力を有している。環状シール面42は、シールリング40の径方向外側の表面を構成している。環状シール面42は、シールリング40の自己張力により、ロータ溝244の外周壁面246に接触する。これにより、環状シール面42の外周壁面246への密着を確保することができる。
図7,10に示されるように、コーナーシール溝65の幅は、シールリング40の径方向寸法よりも大きい。このように寸法を規定することにより、シールリング40の環状シール面42とコーナーシール溝65の外周壁面66との間に隙間G1を確実に形成し、シールリング40をコーナーシール60に対して非接触に維持することができる。
図11に示されるように、コーナーシール160にはコーナーシール溝165が形成されている。シールリング40は、コーナーシール溝165の外周壁面166と隙間G2を介して対向している。ロータ溝244に対するコーナーシール溝165の位置ずれが発生した場合においても位置ずれを隙間G2で吸収できるので、シールリング40をコーナーシール160に対して非接触に維持することができる。コーナーシール160がシールリング40に径方向の応力を作用してコーナーシール60を変位または変形させることが抑制されるので、シールリング40の環状シール面42の、ロータ溝244の外周壁面246への密着を確保することができる。
図11に示されるように、シールリング40は、第1ピストン部材24の対向面240から突出してロータ溝244外に配置されている溝外部分48を有している。コーナーシール溝165の深さは、溝外部分48が対向面240から突出する突出高さよりも大きい。軸方向におけるシールリング40とコーナーシール160との干渉を回避することにより、シールリング40の摺動シール面41を確実に第2ピストン部材28の対向面280に接触させてシール性を確保することができ、かつ、コーナーシール160の摺動シール面161を確実に第1ピストン部材24の対向面240に接触させてシール性を確保することができる。
[第二実施形態]
図12は、第二実施形態における、ロータ溝244と、第1コーナーシール、すなわちコーナーシール60との比較を示す模式図である。第二実施形態のシール構造は、シールリング40の断面形状、ロータ溝244およびコーナーシール溝65の形状において、第一実施形態とは異なっている。
具体的には、図12に示されるように、シールリング40は、不等辺六角形状の断面形状を有している。シールリング40は環状シール面42を有している。環状シール面42は、外周面42Aと、外傾斜面42Bと、第一辺42Cとを有している。外周面42Aは軸方向に延びている。外傾斜面42Bは、軸方向および径方向に対して傾斜して延びている。第一辺42Cは、外周面42Aと外傾斜面42Bとの境界をなしている。
シールリング40は、内側環状面43を有している。内側環状面43は、内周面43Aと、内傾斜面43Bと、第二辺43Cとを有している。内周面43Aは軸方向に延びている。外周面42Aと内周面43Aとは、互いに平行に延びている。内傾斜面43Bは、軸方向および径方向に対して傾斜して延びている。第二辺43Cは、内周面43Aと内傾斜面43Bとの境界をなしている。
シールリング40の断面は、矩形がその一方の長辺の両側において面取りされた形状を有している。シールリング40の表面に、径方向に並ぶ2つの傾斜面が形成されており、外傾斜面42Bは径方向外側の傾斜面であり、内傾斜面43Bは径方向内側の傾斜面である。外傾斜面42Bと内傾斜面43Bとが軸方向に対して傾斜する角度は、たとえば、30°以上60°以下、好ましくは40°以上50°以下、好ましくは略45°としてもよい。
外傾斜面42Bは、シールリング40の裏側面44と外周面42Aとをつなぐ面であり、外周面42Aから裏側面44に近づくにつれて径方向内側へ延びるように、軸方向および径方向に対して傾斜している。シールリング40は拡径方向に作用する自己張力を有しており、外傾斜面42Bは、自己張力の作用する方向、すなわち径方向外側に向かうにつれて第2ピストン部材28に近づくように延びている。
内傾斜面43Bは、シールリング40の裏側面44と内周面43Aとをつなぐ面であり、内周面43Aから裏側面44に近づくにつれて径方向外側へ延びるように、軸方向および径方向に対して傾斜している。内傾斜面43Bは、径方向内側に向かうにつれて第2ピストン部材28に近づくように延びている。
第1ピストン部材24の対向面240には、ロータ溝244が形成されており、シールリング40は、ロータ溝244内に一部が収容されている。図12に示されるように、シールリング40のうち、裏側面44、外傾斜面42Bおよび内傾斜面43Bを含む部分は、ロータ溝244内に収容されている溝内部分47を構成している。シールリング40のうち、摺動シール面41を含む部分は、ロータ溝244の外部に配置されている溝外部分48を構成している。
ロータ溝244は、外周壁面246を有している。外周壁面246は、外周面246Aと、外傾斜面246Bとを有している。外周面246Aは、軸方向に延びている。外周面246Aは、シールリング40の外周面42Aと向き合っており、外周面246Aと外周面42Aとの間には隙間が形成されている。ロータ溝244の外周面246Aと、シールリング40の外周面42Aとは、互いに非接触である。外周面246Aと外周面42Aとは、平行に配置されている。外傾斜面246Bは、軸方向および径方向に対して傾斜して延びている。
ロータ溝244は、内周壁面247を有している。内周壁面247は、内周面247Aと、内傾斜面247Bとを有している。内周面247Aは、軸方向に延びている。内周面247Aは、シールリング40の内周面43Aと向き合っており、内周面247Aと内周面43Aとの間には隙間が形成されている。ロータ溝244の内周面247Aと、シールリング40の内周面43Aとは、互いに非接触である。内周面247Aと内周面43Aとは、平行に配置されている。内傾斜面247Bは、軸方向および径方向に対して傾斜して延びている。
ロータ溝244の壁面に、径方向に並ぶ2つの傾斜面が形成されており、外傾斜面246Bは径方向外側の傾斜面であり、内傾斜面247Bは径方向内側の傾斜面である。外傾斜面246Bは、ロータ溝244の底面と外周面246Aとをつなぐ面であり、外周面246Aから底面に近づくにつれて径方向内側へ延びるように、軸方向および径方向に対して傾斜している。外傾斜面246Bは、径方向外側へ向かうにつれて第2ピストン部材28に近づくように延びている。内傾斜面247Bは、ロータ溝244の底面と内周面247Aとをつなぐ面であり、内周面247Aから底面に近づくにつれて径方向外側へ延びるように、軸方向および径方向に対して傾斜している。内傾斜面247Bは、径方向内側へ向かうにつれて第2ピストン部材28に近づくように延びている。
シールリング40の外傾斜面42Bと内傾斜面43Bとは、ロータ溝244の外傾斜面246Bおよび内傾斜面247Bと、異なる角度で傾斜している。シールリング40は、外周面42Aと外傾斜面42Bとの境界をなす第一辺42Cがロータ溝244の外傾斜面246Bに接触するように、構成されている。
シールリング40の内側環状面43は、ロータ溝244の内周壁面247と向き合っており、内側環状面43と内周壁面247との間には隙間が形成されている。シールリング40の内側環状面43と、ロータ溝244の内周壁面247とは、互いに非接触である。
シールリング40の外周面42Aは、コーナーシール溝65の外周壁面66から離れており、外周壁面66と隙間G1を介して対向している。シールリング40の内周面43Aは、コーナーシール溝65の内周壁面67から離れており、内周壁面67と隙間を介して対向している。
コーナーシール溝65の外周壁面66は、ロータ溝244の外周壁面246よりも、径方向外側に配置されている。コーナーシール溝65の外周壁面66は、ロータ溝244の外周壁面246よりも、シールリング40の環状シール面42から離れている。コーナーシール溝65の内周壁面67は、ロータ溝244の内周壁面247よりも、径方向内側に配置されている。コーナーシール溝65の内周壁面67は、ロータ溝244の内周壁面247よりも、シールリング40の内側環状面43から離れている。
コーナーシール溝65の幅は、シールリング40の径方向寸法よりも、大きくなっている。コーナーシール溝65の幅は、ロータ溝244の幅よりも、大きくなっている。コーナーシール溝65の深さは、シールリング40の軸方向寸法よりも、大きくなっている。
図13は、第二実施形態における、ロータ溝244と、第2コーナーシール、即ちコーナーシール160との比較を示す模式図である。シールリング40の外周面42Aは、コーナーシール溝165の外周壁面166から離れて配置されており、外周壁面166と隙間G2を介して対向している。シールリング40の内周面43Aは、コーナーシール溝165の内周壁面167から離れて配置されており、内周壁面167と隙間を介して対向している。
コーナーシール160の摺動シール面161は、第1ピストン部材24の対向面240に接触している。コーナーシール溝165の外周壁面166は、ロータ溝244の外周壁面246よりも、径方向外側に配置されている。コーナーシール溝165の外周壁面166は、ロータ溝244の外周壁面246よりも、シールリング40の環状シール面42から離れている。コーナーシール溝165の内周壁面167は、ロータ溝244の内周壁面247よりも、径方向内側に配置されている。コーナーシール溝165の内周壁面167は、ロータ溝244の内周壁面247よりも、シールリング40の内側環状面43から離れている。
コーナーシール溝165の幅は、シールリング40の径方向寸法よりも、大きくなっている。コーナーシール溝165の幅は、ロータ溝244の幅よりも、大きくなっている。コーナーシール溝165の深さは、シールリング40の溝外部分48が対向面240から突出する突出高さよりも、大きくなっている。
以上説明した第二実施形態のシール構造では、シールリング40は、拡径方向に作用する自己張力を有している。ロータ溝244の外周壁面246は、外傾斜面246Bを有している。シールリング40は、拡径方向の自己張力によって、ロータ溝244内で径方向外側へと動き、シールリング40の環状シール面42の第一辺42Cが外傾斜面246Bに接触する。これにより、ロータ溝244の内面へのシールリング40の密着性が確保されている。
シールリング40がさらに拡径しようとする付勢力が、シールリング40の環状シール面42からロータ溝244の外傾斜面246Bに作用する。外傾斜面246Bから、シールリング40に対して、ロータ溝244の外部へ向かう軸方向の力が働く。この軸方向の力を受けることで、シールリング40は第2ピストン部材28に近づき、シールリング40の摺動シール面41が第2ピストン部材28の対向面280に接触する。これにより、シールリング40の対向面280への密着性が確保されている。
したがって、シールリング40を第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との両方に確実に密着できる構成を実現でき、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との合わせ面のシール性を向上することができる。
図12に示されるように、コーナーシール溝65の深さは、シールリング40の軸方向寸法よりも大きい。軸方向におけるシールリング40とコーナーシール60との干渉を回避することにより、シールリング40の第一辺42Cを確実に第1ピストン部材24の外傾斜面246Bに接触させてシール性を確保することができ、かつ、コーナーシール60の摺動シール面61を確実に第2ピストン部材28の対向面280に接触させてシール性を確保することができる。
なお、これまでの実施形態の説明においては、シールリング40が拡径方向に作用する自己張力を有している例について説明した。この例に限られず、シールリング40は、縮径方向に作用する自己張力を有していてもよい。合口部を有するシールリング40をロータ溝244内に収容する際に、合口部を広げてシールリング40の径を拡大させた状態にする。これにより、シールリング40には、径方向内側への付勢力が作用する。この付勢力が、縮径方向の自己張力としてシールリング40に付与される。
シールリング40は、縮径方向の自己張力の作用によって、ロータ溝244内で径方向内側へと動く。自己張力の作用する方向であるシールリング40の径方向内側の表面が、ロータ溝244内において第1ピストン部材24に接触する環状シール面として機能する。この場合においては、シールリング40の径方向内側の表面が、コーナーシール溝65の内周壁面67と隙間を介して対向する構成とする。このようにすれば、上述した実施形態と同様に、シールリング40をコーナーシール60に対して非接触にできるので、シールリング40の環状シール面をロータ溝244の内周壁面247に確実に密着させることができる。
または、周方向に合口部を有さず、したがって自己張力を有しないシールリング40が用いられてもよい。このような円環状のシールリング40は、摺動シール面41が第2ピストン部材28の対向面280に接触し、裏側面44がロータ溝244の底面に接触することで、第1ピストン部材24と第2ピストン部材28との両方に密着してシール性能を発揮する。この場合においては、シールリング40の裏側面44が、コーナーシール溝65の底面と隙間を介して対向する構成とすれば、上述した実施形態と同様に、シールリング40をコーナーシール60に対して非接触にでき、シールリング40をロータ溝244の底面に確実に密着させることが可能になる。
実施形態の説明においては、コーナーシール溝65の幅がロータ溝244の幅よりも大きい例について説明した。実施形態の説明の通り、シールリング40が拡径方向の自己張力を有する場合、シールリング40の内側環状面43は、ロータ溝244の内周壁面247と隙間を介して対向し、かつコーナーシール溝65の内周壁面67と隙間を介して対向する。内側環状面43とコーナーシール溝65の内周壁面67との間の隙間が、内側環状面43とロータ溝244の内周壁面247との間の隙間よりも小さくてもよい。この隙間寸法の差分が、ロータ溝244の外周壁面246の径方向位置とコーナーシール溝65の外周壁面66の径方向位置との差分よりも大きい場合には、コーナーシール溝65の幅がロータ溝244の幅よりも小さくなる。したがって、コーナーシール溝65の幅は、ロータ溝244の幅よりも必ずしも大きくなくてもよい。
以上のように実施形態について説明を行なったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。