以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。なお、同一の構成については、同じ符号を付して説明する。また、実施形態に記載されている構成要素の相対配置、形状等は、あくまで例示であり、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
<<実施形態1>>
図1は、本実施形態で使用するインクジェット記録装置1(以下、記録装置1)の内部構成図である。図において、x方向は水平方向、y方向(紙面垂直方向)は後述する記録ヘッド8において吐出口が配列される方向、z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。
記録装置1は、プリント部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、プリント部2とスキャナ部3で個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFで自動給紙される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。なお、本実施形態はプリント部2とスキャナ部3を併せ持った複合機であるが、スキャナ部3を備えない形態であってもよい。図1は、記録装置1が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。
プリント部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシート)Sを収容するための第1カセット5Aと第2カセット5Bが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体が、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体が、平積みに収容されている。第1カセット5A近傍には、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送するための第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5B近傍には、第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際にはいずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド18、インナーガイド19およびフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、記録ヘッド8の上流側および下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、搬送ローラ7の下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、記録ヘッド8の下流側に配される搬送ローラ7及び排出ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有し、当該側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
本実施形態の記録ヘッド8は、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドであり、記録データに従ってインクを吐出する吐出口が、図1におけるy方向に沿って記録媒体Sの幅に相当する分だけ複数配列されている。記録ヘッド8が待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面8aは、図1のように鉛直下方を向きキャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、後述するプリントコントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ヘッド8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。記録ヘッド8の待機位置から記録位置への移動については、後に詳しく説明する。
インクタンクユニット14は、記録ヘッド8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。本実施形態では循環型のインク供給系を採用しており、インク供給ユニット15は記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力と記録ヘッド8から回収されるインクの流量を適切な範囲に調整する。
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングにこれらを作動させて、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う。
図2は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリント部2を統括するプリントエンジンユニット200と、スキャナ部3を統括するスキャナエンジンユニット300と、記録装置1全体を統括するコントローラユニット100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下に制御構成の詳細について説明する。
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置400から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部108が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F105を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置400から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えばホスト装置400から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してこのコマンドをスキャナ部3に送信する。
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、プリント部2が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。記録ヘッド8が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を介して図1に示す給送ユニット6A、6B、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を駆動して、記録媒体Sを搬送する。プリントコントローラ202の指示に従って、記録媒体Sの搬送動作に連動して記録ヘッド8による記録動作が実行され、印刷処理が行われる。
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ヘッド8の向きや位置を変更する。インク供給制御部209は、記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17の動作を制御する。
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら、スキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えばコントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザによってADFに搭載された原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、プリントコントローラ202は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ヘッド8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
図3は、記録装置1が記録状態にあるときを示す。図1に示した待機状態と比較すると、キャップユニット10が記録ヘッド8の吐出口面8aから離間し、吐出口面8aがプラテン9と対向している。本実施形態において、プラテン9の平面は水平方向に対して約45度傾いており、記録位置における記録ヘッド8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が一定に維持されるように水平方向に対して約45度傾いている。
記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図3に示す記録位置に移動する際、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を用いて、キャップユニット10を図3に示す退避位置まで降下させる。これにより、記録ヘッド8の吐出口面8aは、キャップ部材10aと離間する。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を用いて記録ヘッド8の鉛直方向の高さを調整しながら45度回転させ、吐出口面8aをプラテン9と対向させる。記録動作が完了し、記録ヘッド8が記録位置から待機位置に移動する際は、プリントコントローラ202によって上記と逆の工程が行われる。
図4は、記録装置1がメンテナンス状態のときの図である。記録ヘッド8を図1に示す待機位置から図4に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向において上方に移動させるとともにキャップユニット10を鉛直方向下方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から図4における右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
一方、記録ヘッド8を図3に示す記録位置から図4に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を45度回転させつつ鉛直方向上方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から右方向に移動させる。その後プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させて、メンテナンスユニット16によるメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
<インク供給ユニット(インク循環系)>
図5は、本実施形態のインクジェット記録装置1で採用するインク供給ユニット15を含む図である。図5を用いて本実施形態のインク循環系の流路構成を説明する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14から記録ヘッド(図5以降ではヘッドユニット)8へインクを供給する構成である。ここでは、1色のインクについての構成を示しているが、実際にはこのような構成が、インク色ごとに用意されている。インク供給ユニット15は、基本的に図2で示したインク供給制御部209によって制御される。以下、ユニットの各構成について説明する。
インクは主にサブタンク151とヘッドユニット8の間を循環する。ヘッドユニット8では画像データに基づいてインクの吐出動作が行われ、吐出されなかったインクが再びサブタンク151に回収される。
所定量のインクを収容するサブタンク151は、ヘッドユニット8へインクを供給するための供給流路C2とヘッドユニット8からインクを回収するための回収流路C4に接続されている。すなわち、サブタンク151、供給流路C2、ヘッドユニット8、および回収流路C4によってインクが循環する循環経路が構成される。また、サブタンク151は、空気が流れる流路C0に接続されている。
サブタンク151には複数のピンで構成される液面検知手段151aが設けられ、インク供給制御部209は、これら複数のピン間の導通電流の有無を検知することによって、インク液面の高さ、即ちサブタンク151内のインク残量を把握することができる。減圧ポンプP0は、サブタンク151の内部を減圧するための負圧発生源である。大気開放弁V0は、サブタンク151の内部を大気に連通させるか否かを切り替えるための弁である。
メインタンク141は、サブタンク151へ供給されるインクを収容するタンクである。メインタンク141は可撓性部材で構成され、可撓性部材の容積変化によってサブタンク151へインクが充填される。メインタンク141は、記録装置本体に対して着脱可能な構成である。サブタンク151とメインタンク141とを接続するタンク接続流路C1の途中には、サブタンク151とメインタンク141の接続を切り替えるためのタンク供給弁V1が配されている。
以上の構成のもと、インク供給制御部209は、液面検知手段151aによってサブタンク151内のインクが所定量より少なくなったことを検知すると、大気開放弁V0、供給弁V2、回収弁V4、およびヘッド交換弁V5を閉じ、タンク供給弁V1を開く。この状態において、インク供給制御部209は減圧ポンプP0を作動させる。すると、サブタンク151の内部が負圧となりメインタンク141からサブタンク151へインクが供給される。液面検知手段151aによってサブタンク151内のインクが所定量を超えたことを検知すると、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1を閉じ減圧ポンプP0を停止する。
供給流路C2は、サブタンク151からヘッドユニット8へインクを供給するための流路であり、その途中には供給ポンプP1と供給弁V2とが配されている。記録動作中は、供給弁V2を開いた状態で供給ポンプP1を駆動することにより、ヘッドユニット8へインクを供給しつつ循環経路においてインクを循環することができる。ヘッドユニット8によって単位時間あたりに吐出されるインクの量は画像データに応じて変動する。供給ポンプP1の流量は、ヘッドユニット8が単位時間あたりのインク消費量が最大となる吐出動作を行った場合にも対応できるように決定されている。
リリーフ流路C3は、供給弁V2の上流側であって、供給ポンプP1の上流側と下流側を接続する流路である。供給ポンプP1の上流側と接続される接続部を第1接続部とし、下流側と接続される接続部を第2接続部とする。リリーフ流路C3の途中には差圧弁であるリリーフ弁V3が配される。供給ポンプP1からの単位時間あたりのインク供給量がヘッドユニット8の単位時間あたりの吐出量と回収ポンプP2における単位時間あたりの流量(インクを引く量)の合計値よりも多い場合は、リリーフ弁V3は自身に作用する圧力に応じて開放される。これにより、供給流路C2の一部とリリーフ流路C3とで構成される巡回流路が形成される。上記リリーフ流路C3の構成を設けることにより、ヘッドユニット8に対するインク供給量はヘッドユニット8でのインク消費量に応じて調整され、循環経路内の圧力を画像データによらず安定させることができる。
回収流路C4は、ヘッドユニット8からサブタンク151へインクを回収するための流路であり、その途中には回収ポンプP2と回収弁V4が配されている。回収ポンプP2は、循環経路内にインクを循環させる際、負圧発生源となってヘッドユニット8よりインクを吸引する。回収ポンプP2の駆動により、ヘッドユニット8内のIN流路80bとOUT流路80cの間に適切な圧力差が生じ、IN流路80bとOUT流路80cの間でインクを循環させることができる。ヘッドユニット8内の流路構成については後に詳しく説明する。
回収弁V4は、記録動作を行っていないとき、すなわち循環経路内にインクを循環させていないときの逆流を防止するための弁である。本実施形態の循環経路では、サブタンク151はヘッドユニット8よりも鉛直方向において上方に配置されている(図1参照)。このため、供給ポンプP1や回収ポンプP2を駆動していないとき、サブタンク151とヘッドユニット8の水頭差によって、サブタンク151からヘッドユニット8へインクが逆流してしまうおそれがある。このような逆流を防止するため、本実施形態では回収流路C4に回収弁V4を設けている。
同様に供給弁V2も、記録動作を行っていないとき、すなわち循環経路内にインクを循環させていないときに、サブタンク151からヘッドユニット8へのインクの供給を防止するための弁として機能する。
ヘッド交換流路C5は、供給流路C2とサブタンク151の空気室(インクが収容されていない空間)とを接続する流路であり、その途中にはヘッド交換弁V5が配されている。ヘッド交換流路C5の一端は、供給流路C2におけるヘッドユニット8の上流に接続され、この接続部を第3接続部と称する。第3接続部は、供給弁V2より下流側に配される。ヘッド交換流路C5の他端は、サブタンク151の重力方向の上方に接続してサブタンク151内部の空気室と連通する。この接続部を第4接続部と称する。ヘッド交換流路C5は、ヘッドユニット8を交換する際や記録装置1を輸送する際など、使用中のヘッドユニット8からインクを引き抜くときに利用される。ヘッド交換弁V5は、記録装置1にインクを充填するときとヘッドユニット8からインクを引き抜くとき以外は閉じるように、インク供給制御部209によって制御される。また、上述した供給弁V2は、供給流路C2において、ヘッド交換流路C5との第3接続部と、リリーフ流路C3との第2接続部の間に設けられている。なお、第2接続部は第3接続部より下流の供給流路C2に配される形態であってもよい。
次に、ヘッドユニット8内の流路構成について説明する。供給流路C2よりヘッドユニット8に供給されたインクは、フィルタ83を通過した後、第1の負圧制御ユニット81と、第2の負圧制御ユニット82とに供給される。第1の負圧制御ユニット81は、弱い負圧に制御圧力が設定されている。第2の負圧制御ユニット82は、強い負圧に制御圧力が設定されている。これら第1の負圧制御ユニット81と第2の負圧制御ユニット82における圧力は、回収ポンプP2の駆動により適正な範囲で生成される。
インク吐出部80には、複数の吐出口が配列された記録素子基板80aが複数配置され、長尺の吐出口列が形成されている。第1の負圧制御ユニット81より供給されるインクを導くための共通供給流路80b(IN流路)と、第2の負圧制御ユニット82より供給されるインクを導くための共通回収流路80c(OUT流路)も、記録素子基板80aの配列方向に延在している。さらに個々の記録素子基板80aには、共通供給流路80bと接続する個別供給流路と、共通回収流路80cと接続する個別回収流路が形成されている。このため、個々の記録素子基板80aにおいては、相対的に負圧の弱い共通供給流路80bより流入し、相対的に負圧の強い共通回収流路80cへ流出するような、インクの流れが生成される。個別供給流路と個別回収流路との経路中に、各吐出口に連通し、インクを充填する圧力室が設けられており、記録を行っていない吐出口や圧力室においてもインクの流れが生じる。記録素子基板80aで吐出動作が行われると、共通供給流路80bから共通回収流路80cへ移動するインクの一部は吐出口から吐出されることによって消費されるが、吐出されなかったインクは共通回収流路80cを経て回収流路C4へ移動する。
図6(a)は記録素子基板80aの一部を拡大した平面模式図であり、図6(b)は、図6(a)の断面線VIb-VIbにおける断面模式図である。記録素子基板80aには、インクが充填される圧力室1005とインクを吐出する吐出口1006が設けられている。圧力室1005において、吐出口1006と対向する位置には記録素子1004が設けられている。また、記録素子基板80aには、共通供給流路80bと接続する個別供給流路1008と、共通回収流路80cと接続する個別回収流路1009とが吐出口1006毎に複数形成されている。
上述した構成により、記録素子基板80aでは、相対的に負圧の弱い(圧力の高い)共通供給流路80bより流入し、相対的に負圧の強い(圧力の低い)共通回収流路80cへ流出するインクの流れが生成される。より詳しくは、共通供給流路80b→個別供給流路1008→圧力室1005→個別回収流路1009→共通回収流路80cの順にインクが流れる。記録素子1004によってインクが吐出されると、共通供給流路80bから共通回収流路80cへ移動するインクの一部は吐出口1006から吐出されることによってヘッドユニット8の外部へ排出される。一方、吐出口1006から吐出されなかったインクは、共通回収流路80cを経て回収流路C4へ回収される。
図7はヘッドユニット8に設けられた第1の負圧制御ユニット81を示す。図7(a)(b)は外観斜視図であり、特に図7(b)は、第1の負圧制御ユニット81の内部を示すために可撓性フィルム232を不図示にした様子を示す。図7(c)は、図7(a)におけるVIIc-VIIcの断面を示す。第1の負圧制御ユニット81と第2の負圧制御ユニット82は差圧弁であり、制御圧(バネの初期荷重)の差異以外は同一の構成のため、第2の負圧制御ユニット82の説明は省略する。
第1の負圧制御ユニット81は、図7(b)に示される受圧板231とその周囲の空間を密閉する可撓性フィルム232によって、第1圧力室233が内部に形成されている。可撓性フィルム232は、図7(b)で示す円形状の縁及び受圧板231に対して溶着されている。第1圧力室233内のインクの増減に応じて、可撓性フィルム232と可撓性フィルム232に溶着された受圧板231とが上下に変位する。
第1圧力室233のインク供給方向における上流側には、供給ポンプP1と接続される第2圧力室238と、受圧板231と連結されたシャフト234と、シャフト234と連結された弁235と、弁235に当接するオリフィス236と、が設けられている。本実施形態のオリフィス236は、第1圧力室233と第2圧力室238との境界に設けられている。弁235とシャフト234と受圧板231はさらに、付勢部材(バネ)237によって鉛直上方へ向けて付勢されている。
第1圧力室233内の圧力の絶対値が第1閾値以上であるとき(第1閾値より負圧が弱い場合)は、付勢部材237の付勢力によって弁235がオリフィス236と当接し、第1圧力室233と第2圧力室238との接続を遮断している。一方、第1圧力室233内の圧力の絶対値が第1閾値未満となったとき、つまり第1圧力室233に第1閾値より強い負圧がかかったとき、可撓性フィルム232が収縮して下方へ変位する。これにより、受圧板231と弁235が付勢部材237の付勢に抗って下方へ変位して、弁235とオリフィス236が離間して、第1圧力室233と第2圧力室238とが接続される。この接続によって、供給ポンプP1によって供給されたインクが第1圧力室233へ向けて流入する。
第1の負圧制御ユニット81は上述した差圧弁の構成になっており、これにより流入圧力と流出圧力を一定に制御する。第2の負圧制御ユニット82は、第1の負圧制御ユニット82より強い負圧を発生させるために、付勢部材237の付勢力が第1の負圧制御ユニットより大きいものを採用している。すなわち、第2の負圧制御ユニット82は、第1閾値よりも圧力の絶対値が小さい、第2閾値未満となったときに弁が開放される。従って、回収ポンプP2が駆動すると、まず第1の負圧制御ユニット81が開放され、次いで第2の負圧制御ユニット82が開放される。
以上の構成のもと、記録動作を行うとき、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1とヘッド交換弁V5を閉じ、大気開放弁V0、供給弁V2、および回収弁V4を開き、供給ポンプP1および回収ポンプP2を駆動する。これにより、サブタンク151→供給流路C2→ヘッドユニット8→回収流路C4→サブタンク151の循環経路が確立する。供給ポンプP1からの単位時間あたりのインク供給量がヘッドユニット8の単位時間あたりの吐出量と回収ポンプP2における単位時間あたりの流量の合計値よりも多い場合は、供給流路C2からリリーフ流路C3にインクが流れ込む。これにより、供給流路C2からヘッドユニット8に流入するインクの流量が調整される。
記録動作を行っていないとき、インク供給制御部209は、供給ポンプP1および回収ポンプP2を停止し、大気開放弁V0、供給弁V2、および回収弁V4を閉じる。これにより、ヘッドユニット8内のインクの流れは止まり、サブタンク151とヘッドユニット8の水頭差による逆流も抑制される。また、大気開放弁V0を閉じることで、サブタンク151からのインク漏れやインクの蒸発が抑制される。
<インク充填>
次いで、図5を参照して説明したインク循環系のインク充填について説明する。インク充填は、例えば、インクタンクユニット14にメインタンク141が取り付けられた後、サブタンク151、ヘッドユニット8、及びインクが循環する流路にインクを充填するために行われる。なお、充填動作は記録装置1の着荷時に限らず、ヘッドユニット8の交換後や輸送のためにヘッドユニット8内のインクをサブタンク151内へ全て回収した後にも行われる。
図8は、メインタンク141からサブタンク151へインクを補給する際のインク循環系の状態を示す。ここでは、大気開放弁V0、供給弁V2、ヘッド交換弁V5、及び回収弁V4は閉じ(CLOSE)、タンク供給弁V1が開いている(OPEN)。また、供給ポンプP1及び回収ポンプP2は停止している。この状態で減圧ポンプP0が駆動すると、サブタンク151内に負圧が生じ、メインタンク141からタンク接続流路C1を介してサブタンク151へ、インクが補給される。サブタンク151の液面検知手段151aによってサブタンク151内のインクが所定量を超えたことが検知されると、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1を閉じ、減圧ポンプP0を停止する。その後、インク供給制御部209は大気開放弁V0を開き、負圧になっているサブタンク151内の圧力を大気開放する。
次いで、インク供給制御部209は、サブタンク151からインクを供給し、上流流路にインクを充填する。上流流路とは、サブタンク151とヘッドユニット8との間にある流路の総称であり、供給流路C2、リリーフ流路C3、及びヘッド交換流路C5を含む。
図9は、上流流路にインク充填する際のインク循環系の状態を示す。ここでは、サブタンク151へのインクの補給が完了した状態から、供給弁V2及びヘッド交換弁V5が開いている。この状態で供給ポンプP1が駆動すると、サブタンク151からインクが供給され、上流流路にインクが充填される。なお、回収ポンプP2は停止しており、第1の負圧制御ユニット81と第2の負圧制御ユニット82には所定の負圧がかからないため、閉塞されている。これにより、ヘッドユニット8にはインクが供給されない。上流流路のインク充填が完了した後、インク供給制御部209は、ヘッドユニット8にインクを充填する。
インク供給制御部209は、供給ポンプP1を駆動し、ヘッドユニット8の手前の供給流路C2までインクを供給する。次に、インク供給制御部209は、キャップユニット10によってヘッドユニット8をキャップする。すなわち、キャップユニット10のキャップ部材10aによって、ヘッドユニット8の吐出口面8aを覆う。次に、インク供給制御部209は、キャップユニット10の減圧ポンプP3を駆動する。すなわち、供給ポンプP1でインクを送液しながら、キャップユニット10内に負圧を発生させる。この負圧によって、ヘッドユニット8内の負圧制御ユニットが開放され、吐出口までインクを引き込むことで、インクを充填する。インク供給制御部209は、所定時間の経過後、供給ポンプP1及び減圧ポンプP3を停止する。ヘッドユニット8のインク充填が完了した後、インク供給制御部209は、回収流路C4にインクを充填する。
図10は、回収流路C4にインクを充填する際のインク循環系の状態を示す。ここでは、ヘッドユニット8へのインクの充填が完了した状態から、回収弁V4が開き、大気開放弁V0が閉じた状態で、サブタンク151の減圧ポンプP0が駆動されている。インク供給制御部209は、回収弁V4が開き、大気開放弁V0が閉じた状態で、サブタンク151の減圧ポンプP0を駆動する。減圧ポンプP0が駆動することで発生したサブタンク151内の負圧によって、ヘッドユニット8から回収流路C4へインクが流れる。インク供給制御部209は、回収流路C4のインク充填が完了した後、減圧ポンプP0を停止する。
<インク引き抜き処理>
図11は、上述したようなインク充填処理によって流路内およびヘッドユニット8内にインクが充填されているインク循環系の状態を示す図である。以下では、このように充填されているインクを、流路内およびヘッドユニット8からサブタンク151へ引き抜く処理を説明する。例えば、ヘッドユニット8が故障して交換する場合などにおいては、ヘッドユニット8をインク供給ユニット15から切り離すことが行われる。このとき、ヘッドユニット8内のインクが十分に引き抜かれていない場合、ヘッドユニット8内に残留しているインクが廃インクとなって捨てられてしまうことになる。また、ヘッドユニット8をインク供給ユニット15から切り離す際に、インク漏れが生じてしまう。そこで、充填されているインクを、流路内およびヘッドユニット8から適切に引き抜くことが求められる。本実施形態では、上流流路側と回収流路C4側とのそれぞれの側から、ヘッドユニット8内のインクを引き抜く処理を行う。
図12は、本実施形態におけるインク引き抜き処理のフローチャートの一例を示す図である。インク引き抜き処理は、インク供給制御部209が、インク供給ユニット15に設けられた各種ポンプ及び各種弁の動作を制御することによって実行される。インク供給制御部209は、サブタンク内部を減圧する減圧ポンプP0(タンク内減圧ポンプ)を含む各種ポンプの駆動および停止を制御する。またインク供給制御部209は、ヘッド交換弁V5(交換駆動弁)および回収弁V4を含む各種弁を開閉可能に制御する。図12の処理の開始前のインク循環系の状態は、図11で示すとおりである。即ち、大気開放弁V0、タンク供給弁V1、供給弁V2、回収弁V4、およびヘッド交換弁V5は、閉じている(CLOSE)。また、減圧ポンプP0、供給ポンプP1、回収ポンプP2は、停止している。
まず、ステップS1201においてインク供給制御部209は、ヘッド交換弁V5を開放する(OEPN)。その一方で、インク供給制御部209は、回収弁V4(回収駆動弁)を閉塞したままの状態にしておく(CLOSE)。そして、ステップS1202においてインク供給制御部209は、減圧ポンプP0(タンク内減圧ポンプ)を駆動してサブタンク151内に負圧を発生させる。これにより、上流流路側のインクの引き抜きが開始される。
図13は、上流流路側のインク引き抜きが行われているインク循環系の状態を示す図である。ヘッド交換弁V5が開いており(OPEN)、減圧ポンプP0の駆動によりサブタンク151内に生じた負圧によって、ヘッド交換流路C5および供給流路C2の一部のインクがサブタンク151内に引き抜かれている。また、ヘッドユニット8内に充填されていたインクの多くが、ヘッド交換流路C5を通じてサブタンク151内に引き抜かれている。具体的な現象としては、まず、減圧ポンプP0によって発生した負圧によって、ヘッドユニット8の吐出口面8aに形成されているメニスカスが破壊される。そしてメニスカスが破壊された吐出口面8aから大気が流入し、流入した大気とともにヘッドユニット8内に充填されているインクが、ヘッド交換流路C5を通じてサブタンク151内に引き抜かれる。このように吐出口面8aからインクが引き抜かれるので、図13に示すように、ヘッドユニット8内においては、吐出口面8aより下流側の回収流路C4側の流路にインクが一部残っている。また、吐出口面8aからヘッド交換流路C5を通じてインクが回収されるので、ヘッド交換流路C5と供給流路C2との接続部である第3接続部より上流側の供給流路C2に、インクが一部残っている。
ステップS1203においてインク供給制御部209は、インクの引き抜きが完了するまで所定時間待機する。そして、ステップS1204においてインク供給制御部209は、減圧ポンプP0を停止する。これまでの処理により、ヘッドユニット8内の大部分および一部の上流流路側からのインクの引き抜きが完了する。
続いてステップS1205においてインク供給制御部209は、ヘッド交換弁V5を閉じる(CLOSE)。その一方で、インク供給制御部209は、回収弁V4を開ける(OPEN)。そして、ステップS1206においてインク供給制御部209は、減圧ポンプP0(タンク内減圧ポンプ)を駆動してサブタンク151内に負圧を発生させる。これにより、回収流路C4側(下流流路側)のインクの引き抜きが開始される。
図14は、回収流路C4側のインク引き抜きが行われているインク循環系の状態を示す図である。ヘッド交換弁V5が閉じており(CLOSE)、回収弁V4が開いている(OPEN)。そして、減圧ポンプP0の駆動によりサブタンク151内に生じた負圧によって、回収流路C4のインクおよびヘッドユニット8内に一部残っているインクが、サブタンク151内に引き抜かれている。先の上流流路側の引き抜き処理において、ヘッドユニット8の吐出口面8aのメニスカスは既に破壊されている。メニスカスが破壊されている吐出口面8aから大気が流入し、流入した大気とともにヘッドユニット8内に充填されているインクが、回収流路C4を通じてサブタンク151内に引き抜かれる。このように、供給流路C2側(上流流路側)と回収流路C4側との両側からそれぞれインクの引き抜き処理を行うことで、ヘッドユニット8内に充填されているインクを適切に引き抜くことができる。
ステップS1207においてインク供給制御部209は、インクの引き抜きが完了するまで所定時間待機する。そして、ステップS1208においてインク供給制御部209は、減圧ポンプP0を停止する。ステップS1205からステップS1208までの処理により、ヘッドユニット8内に一部残存しているインクおよび回収流路C4のインクの引き抜きが完了する。
なお、回収流路C4の引き抜きでは、減圧ポンプP0を用いてサブタンク151内に負圧を発生させて回収流路C4側のインクを引き抜く形態を説明した。このような構成によれば、回収ポンプP2が低出力のポンプである場合であっても、あるいは、流路が長い場合や流路が狭い場合などで流抵抗が大きくなる場合であっても、インクを適切に引き抜くことができる。しかしながら、インクの引き抜き時に回収ポンプP2を停止した状態で維持しておく必要はなく、回収流路C4の引き抜き時に回収ポンプP2を駆動させる形態でもよい。即ち、ステップS1206では、減圧ポンプP0および回収ポンプP2を駆動させてもよい。回収ポンプP2を駆動させることで、回収ポンプP2がインクの引き抜きの補助的な役割を果たすことができる。つまり、減圧ポンプP0を単体で駆動させるよりもヘッドユニット8に作用する負圧を大きくすることができるので、インクの引き抜きを早く完了させることができる。
また、図12で示したフローチャートの処理では、上流流路側からインクの引き抜きを行い、次いで回収流路C4側のインクの引き抜きを行う形態を例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。先に回収流路C4側のインクの引き抜きを行い、次いで上流流路側からインクの引き抜きを行う形態でもよい。すなわち、ステップS1205からステップS1208を、ステップS1201の前に移動させてもよい。いずれの形態を採用しても、供給流路C2側(上流流路側)と回収流路C4側との両側からそれぞれインクの引き抜き処理が行われるので、ヘッドユニット8内のインクを適切に引き抜くことができる。
また、図12で示したフローチャートの処理では、弁の制御をした後に減圧ポンプP0を駆動する形態を説明したが、これに限られるものではない。減圧ポンプP0を先に駆動して一定負圧を発生させている状態で、弁の制御を行う形態でもよい。減圧ポンプP0を先に駆動して一定負圧を発生させた状態で弁を開放する場合には、必要以上の負圧を流路内に生じさせずに済むので、吐出口における他色のインクの吸い込みを防ぎ、インクの混色が生じることを抑制できる。詳しくは図22を用いて後述する。
また、本実施形態では、供給流路C2とは別個のヘッド交換流路C5を備えており、上流流路側のインクの引き抜きは、ヘッド交換流路C5を通じて行われる形態を説明した。しかしながら、この例に限られるものではない。ヘッド交換弁V5の代わりに供給弁V2を制御して、上流流路側のインクの引き抜きが行われてもよい。あるいは、ヘッド交換弁V5および供給弁V2との両方を制御して、上流流路側のインクの引き抜きが行われても良い。ヘッド交換弁V5および供給弁V2を、それぞれ供給駆動弁と称することがある。なお、ヘッド交換流路C5が備えられていないインク循環系においては、供給弁V2に相当する供給駆動弁を制御すればよい。
<<実施形態2>>
本実施形態では、ヘッドユニット8とインク供給ユニット15との間に、それぞれのユニットを接続するための接続部(以下、「ジョイント」という)がある場合において、ヘッドユニット8をインク供給ユニット15から引き離す形態を説明する。ヘッドユニット8を交換する場合、ジョイントを解除して、ヘッドユニット8とインク供給ユニット15とが引き離される。ジョイントを解除した場合に、ジョイントの接続面からインクが垂れる場合がある。本実施形態では、このようなジョイント解除時のインクの垂れを抑制する形態を説明する。なお、実施形態1で説明した構成と同様の構成については、説明を省略する。
図15は、本実施形態におけるインク充填がされている状態のインク循環系の状態を示す図である。供給流路C2側のジョイントJは、供給流路C2において、ヘッド交換流路C5と供給流路C2との接続部である第3接続部よりも下流側(ヘッドユニット8側)に配されている。回収流路C4側のジョイントJは、回収流路C4において、回収ポンプP2よりも上流側(ヘッドユニット8側)に配されている。
図16は、本実施形態におけるインク引き抜き処理のフローチャートの一例を示す図である。インク引き抜き処理は、インク供給制御部209が、インク供給ユニット15に設けられた各種ポンプ及び各種弁の動作を制御することによって実行される。図16の処理の開始前のインク循環系の状態は、図15で示すとおりである。即ち、大気開放弁V0、タンク供給弁V1、供給弁V2、回収弁V4、およびヘッド交換弁V5は、閉じている(CLOSE)。また、減圧ポンプP0、供給ポンプP1、回収ポンプP2は、停止している。
まず、ステップS1601においてインク供給制御部209は、実施形態1で説明したインク引き抜き処理を行う。すなわち、ヘッドユニット8内並びに上流流路側及び回収流路C4側のインクの引き抜き処理が行われる。ステップS1601の処理により、流路内のインクは、概ね引き抜かれた状態にはなっている。しかしながら、流路内に残存しているインクも想定され、このような残存したインクが存在する場合、ジョイントJを解除した場合にジョイントJの接続面からインク漏れが生じる場合がある。そこで、本実施形態では、ジョイントJの接続を解除する際に、ジョイントJに負圧が生じている状態にする制御を行う。ジョイントJに負圧が生じている場合、ジョイントJの接続を解除した際に、接続面に存在するインクは、負圧により、流路内に引き込まれることになる。このため、ジョイントJの接続を解除した場合のインク漏れを抑制することができる。
ステップS1602においてインク供給制御部209は、ヘッド交換弁V5および回収弁V4を閉じる(CLOSE)。ステップS1603においてインク供給制御部209は、キャップユニット10によってヘッドユニット8をキャップする。すなわち、ヘッドユニット8の吐出口面8aをキャッピングさせる。次に、ステップS1604においてインク供給制御部209は、減圧ポンプP3(キャップ内減圧ポンプ)を駆動してキャップユニット10内に負圧を発生させる。ステップS1605においてインク供給制御部209は、十分な負圧が生じるまで所定時間待機する。ステップS1606においてインク供給制御部209は、減圧ポンプP3を停止する。
図17は、キャップユニット10内に負圧を発生させた状態のインク循環系の状態を示す図である。負圧が生じている空間は、薄いハッチングで示されている。負圧が生じている空間は、キャップユニット10からヘッド交換弁V5、供給弁V2、回収弁V4までの流路の空間であり、ジョイントJを含んでいる。この状態においてジョイントJを解除した場合、ジョイントJの接続面にインクが存在していても、負圧によりインクが流路内に引き込まれることになる。
ステップS1607では、ジョイントの解除が行われる。ジョイントの解除は例えばユーザによって行われる。図18は、本実施形態の効果を説明する図である。図18(a)は、ジョイントJの近傍にインクが残存している状態でジョイントJの接続を解除した場合の図である。この場合、ジョイントJの接続が解除された面からインクが垂れてしまう。一方、図18(b)は、ジョイントJに負圧が生じている状態で、ジョイントJの接続を解除した図である。ジョイントJの接続を解除した場合、ジョイントJの近傍に残存しているインクは、流路内に引き込まれることになる。このため、インクが垂れてしまうことを抑制できる。
<変形例1>
次に、実施形態2の変形例を説明する。上述した形態では、ジョイントJに負圧を生じさせる負圧発生源として、キャップ内を減圧する減圧ポンプP3(キャップ内減圧ポンプ)を用いる形態を説明した。変形例では、サブタンク151を減圧する減圧ポンプP0(タンク内減圧ポンプ)を用いてジョイントJに負圧を生じさせる形態を説明する。
図19は、変形例のフローチャートを示す図である。ステップS1902、S1904、およびS1906が図16の処理と異なる。以下、異なる部分を説明する。
ステップS1902においてインク供給制御部209は、ヘッド交換弁V5および回収弁V4を開く(OPEN)。ステップS1904においてインク供給制御部209はサブタンク151を減圧する減圧ポンプP0(タンク内減圧ポンプ)を用いて負圧を発生させる。ステップS1906においてインク供給制御部209は、減圧ポンプP0を停止する。
図20は、キャップユニット10によってヘッドユニット8をキャップした状態であり、ヘッド交換弁V5および回収弁V4を開いた(OPEN)状態で、減圧ポンプP0を駆動して負圧を発生させた状態の図である。ヘッドユニット8がキャップされている状態であるので、ヘッドユニット8内並びにステップS1901でインクが引き抜かれた上流流路及び回収流路C4内の空間が、負圧が生じている空間となっている。即ち、負圧が生じている空間は、ジョイントJを含んでいる。この状態においてジョイントJを解除した場合、ジョイントJの接続面にインクが存在していても、負圧によりインクが流路内に引き込まれることになる。
<変形例2>
次に、実施形態2のさらなる変形例を説明する。キャップユニット10内に負圧を発生させた状態でジョイントJを解除する形態については、実施形態2で説明したものと同様である。本変形例では、キャップ内を減圧する減圧ポンプが、サブタンク151を減圧する減圧ポンプP0と同じ単一のポンプである形態を説明する。
図21は、本変形例におけるインク循環系の状態を示す図である。単一の減圧ポンプP0が、サブタンク151及びキャップユニット10を減圧するように動作可能である。ここでは、減圧ポンプP0とサブタンク151を接続する流路C0と、減圧ポンプP0とキャップユニット10を接続する流路C7が設けられている。また、サブタンク151への流路C0には、サブタンク減圧弁V6が設けられ、キャップユニット10への流路C7には、キャップユニット減圧弁V7が設けられている。インク供給制御部209がサブタンク減圧弁V6を開き、キャップユニット減圧弁V7を閉じた状態で減圧ポンプP0を駆動すると、サブタンク151が減圧される。インク供給制御部209がキャップユニット減圧弁V7を開き、サブタンク減圧弁V6を閉じた状態で減圧ポンプP0を駆動すると、キャップユニット10が減圧される。図21の例では、キャップ内に負圧を生じさせる場合を示している。具体的には、キャップユニット10が吐出口面8aをキャッピングした状態で減圧ポンプP0を動作させ、サブタンク減圧弁V6を閉じ、キャップユニット減圧弁V7を開いている状態を示している。このように、サブタンク内部を減圧する減圧ポンプとヘッドユニット8内を減圧する減圧ポンプとが共通のポンプであってもよい。
<サブタンク減圧弁を用いたインク引き抜き方法>
図22は、実施形態1および2において適用可能な、サブタンク減圧弁V6を用いたインク引き抜き方法を示すフローチャートである。図22を用いて、減圧ポンプP0とサブタンク151との間にサブタンク減圧弁V6を設けた場合のインクの引き抜き方法について説明する。まず、ステップS2201においてインク供給制御部209は、サブタンク減圧弁V6を開放する(OPEN)。その一方で、回収弁V4及びヘッド交換弁V5を閉塞したままの状態にしておく(CLOSE)。
そして、ステップS2202においてインク供給制御部209は、減圧ポンプP0(タンク内減圧ポンプ)を駆動してサブタンク151内に負圧を発生させる。ステップS2203においてサブタンク151内が所定の負圧に到達するまで待機後、ステップS2204においてインク供給制御部209は減圧ポンプP0を停止する。これにより、サブタンク減圧弁V6とヘッド交換弁V5と回収弁V4とによって形成された閉空間が所定の負圧になる。
ステップS2205においてインク供給制御部209は、サブタンク減圧弁V6を閉塞し(CLOSE)、続いてステップS2206においてヘッド交換弁V5を開放する(OPEN)。これにより、閉空間にチャージされていた負圧によって上流流路側のインク引き抜きが開始される。ステップS2207においてインク供給制御部209は、インクの引き抜きが完了するまで所定時間待機する。これまでの処理により、ヘッドユニット8内の大部分および一部の上流流路側からのインクの引き抜きが完了する。
続いてステップS2208においてインク供給制御部209は、ヘッド交換弁V5と回収弁V4とを閉塞し(CLOSE)、サブタンク減圧弁V6を開放する(OPEN)。そして上流流路側と同様に、ステップS2209においてインク供給制御部209は、減圧ポンプP0を駆動してサブタンク151内に負圧を発生させる。ステップS2210においてサブタンク151内が所定の負圧に到達するまで待機後、ステップS2211においてインク供給制御部209は、減圧ポンプP0を停止する。これにより、サブタンク減圧弁V6とヘッド交換弁V5と回収弁V4とによって形成された閉空間が所定の負圧になる。
ステップS2212においてインク供給制御部209は、サブタンク減圧弁V6を閉塞し(CLOSE)、続いてステップS2213において回収弁V4を開放する(OPEN)。これにより、閉空間にチャージされていた負圧によって回収流路C4側(下流流路側)のインクの引き抜きが開始される。ステップS2214においてインク供給制御部209は、インクの引き抜きが完了するまで所定時間待機する。これまでの処理により、ヘッドユニット8内の大部分および一部の回収流路側からのインクの引き抜きが完了し、フローを終了する。
このようにサブタンク減圧弁V6を設け、ヘッドユニット8および上流流路、回収流路C4内のインクを引き抜く場合には、サブタンク151内に所定の負圧をチャージした後、サブタンク減圧弁V6を閉塞する。吐出口面8aから混入した大気によりサブタンク151内に泡が発生し、サブタンク151の上面まで泡が到達する場合がある。このような場合においても、サブタンク減圧弁V6を閉塞することで、流路C0においてサブタンク減圧弁V6より下流に泡が侵入することを防止することができる。