JP7142474B2 - 隙間充填構造、溶融塩電解槽および、隙間充填構造の製造方法 - Google Patents

隙間充填構造、溶融塩電解槽および、隙間充填構造の製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、溶融塩電解が行われる電解槽の開口部を覆蓋する蓋体と、一部を蓋体から外部に突出させて配置される陽極との間の隙間についての隙間充填構造、溶融塩電解槽および、隙間充填構造の製造方法に関するものであり、特に、当該隙間を有効に充填することのできる技術を提案するものである。
たとえば、クロール法による金属チタンの製造で生成される塩化マグネシウム等を電気分解する溶融塩電解では、電解槽の内部を、溶融塩を貯留させた高温の溶融塩浴とする。そして、この溶融塩浴で、電解槽の内部に配置した電極への通電により、金属塩化物を金属マグネシウム等の溶融金属と塩素等のガスとに分解する。このガスは一般に、電解槽の開口部を覆蓋する蓋体と電解槽とで区画される内部から、所定のガス排出通路を経て電解槽の外部に排出される。
かかる電気分解に用いる電極のうち、陽極は通常、一部を電解槽の内部に位置させて溶融塩浴に浸漬させるとともに、残部を蓋体から電解槽の外部に突出させ、その突出部分で電源等に接続される。
このような陽極は、電解槽の内部に位置する部分と蓋体から外部に突出する部分を有することにより、蓋体を貫通するように配置され、この貫通箇所で、蓋体と陽極との間に隙間が生じることがある。この場合、蓋体と陽極との間の隙間には、所定の材料ないし部材を充填してシールする。これは、塩素等のガスが吸引されて若干の減圧下で塩素雰囲気等となる電解槽内部の気密性を確保して、電解槽内部の塩素等の漏出を防止するためである。また、陽極や溶融塩浴と電解槽外部の大気との接触を防止するという目的もある。
ここで、特許文献1には、「塩素ガスの発生を伴う電解反応を行い、電解反応室と外部との気密を保持するシール部を有する電解槽において、前記シール部がシート状部材により構成されることを特徴とする電解槽」が開示されている。具体的には、「前記シート状部材は耐熱樹脂シートであり、その内面側に形成された断熱層と組み合わされている」と記載されており、さらに、「塩とフラックスの混合物26を堆積することにより、シート状部材23の内面側に断熱層を形成している。」と記載されている。
そして、これによれば、「電解反応室の対外シール性に優れ、外気侵入による電力原単位の低下を回避できる。また、そのシール部で電解反応室内の圧力変動を吸収でき、塩素ガスの漏出をより確実に防止できる。更に、シール部の経済性及び耐久性に優れ、メンテナンス作業も容易である。」とされている。
またここで、特許文献2には、「溶融塩浴を貯留する電解槽に、この電解槽の内部に突出させられた電極と、溶融塩浴が電気分解して生成した金属を貯留する収集室と、この収集室の上部に設けられた蓋とを備えた金属製造用電解装置において、蓋と電解槽との間の間隙に粉末を設けた」ものが記載されている。
そしてまた、特許文献3には、「陽極シール構造は、電解装置外部において陽極に設けられた金属製シールカバーと、電解室蓋上部に設けられたシール材保持部と、このシール材保持部に充填されたシール材と、陽極および電解室蓋の空隙に装填された断熱材から構成されており、金属製シールカバーと電解室蓋とがシール材を介して密閉されている」ものが記載されている。
特開2004-232061号公報 特開2001-295088号公報 特開2010-116602号公報
特許文献1では、その図2に示されているように、「シート状部材23の内面側には、塩とフラックスの混合物26により形成された断熱層が設けられている。」としている。また、特許文献2は、「蓋と電解槽との間の間隙に粉末を設けたことを特徴とする」ものであり、特許文献3では、その図2に示されているように、「シール材21を充填したシール材保持部27」が用いられている。
しかるに、このような「塩とフラックスの混合物」等の粉体を用いると、所定の材料からなる当該粉体が、蓋体の開閉時等に、減圧されている電解槽内部に吸い込まれるおそれがあり、改善の余地が残されていた。特に、特許文献1に開示された構成では、比較的長期間にわたる操業の間に、電解槽内部の密閉性の低下を招く他、かかる粉体による断熱効果が低下して「シート状部材」の溶解等が発生する可能性も否定できない。
この発明の目的は、溶融塩電解槽の蓋体と陽極との間の隙間を有効に充填することのできる隙間充填構造、溶融塩電解槽および、隙間充填構造の製造方法を提供することにある。
この発明の隙間充填構造は、内部の溶融塩浴で溶融塩電解を行う電解槽と、電解槽の開口部を覆蓋する蓋体と、電解槽の内部に配置される部分及び蓋体から外部に突出する部分を有する陽極を含む電極とを備える溶融塩電解槽における、蓋体と陽極との間の隙間を充填する構造であって、前記隙間に、前記蓋体と陽極との間に及んで形成された金属塩化物及び/又はフッ化物の固化体を含む充填材が設けられてなるものである。
この発明の隙間充填構造では、前記固化体が、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
この場合、前記固化体は、塩化マグネシウムを10質量%~70質量%で含むとともに、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種を30質量%~90質量%で含むことが好ましい。
この発明の隙間充填構造では、前記固化体が、電解槽の内部側から外部側までにおいて積層された複数層の固化層を含むことが好適である。
この発明の溶融塩電解槽は、内部の溶融塩浴で溶融塩電解を行う電解槽と、電解槽の開口部を覆蓋する蓋体と、電解槽の内部に配置される部分及び蓋体から外部に突出する部分を有する陽極を含む電極とを備えるものであって、蓋体と陽極との間の隙間に、上述したいずれかの隙間充填構造を有するものである。
この発明の隙間充填構造の製造方法は、内部で溶融塩を貯留させた溶融塩浴にて溶融塩電解を行う電解槽と、電解槽の開口部を覆蓋する蓋体と、電解槽の内部に配置される部分及び蓋体から外部に突出する部分を有する陽極を含む電極とを備える溶融塩電解槽で、蓋体と陽極との間の隙間を充填して隙間充填構造を製造する方法であって、前記溶融塩を前記隙間に流し込み、当該隙間で該溶融塩を固化させるものである。
この発明の隙間充填構造の製造方法では、前記溶融塩が、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
この発明の隙間充填構造の製造方法では、前記隙間への前記溶融塩の流込み及び、当該隙間での該溶融塩の固化を、複数回にわたって行うことが好適である。
この発明の隙間充填構造によれば、溶融塩電解槽の蓋体と陽極との間の隙間に設けた充填材が、蓋体と陽極との間に及んで形成された金属塩化物及び/又はフッ化物の固化体を含むことにより、たとえ電解槽内部が減圧雰囲気であったとしても、当該固化体が電解槽内部に吸引されにくいので、比較的長時間の操業にわたり蓋体と陽極との間の隙間を有効に充填することができる。
また、この発明の隙間充填構造の製造方法によれば、溶融塩を隙間に流し込んで当該隙間で該溶融塩を固化させることにより、上述したような固化体を含む充填材が隙間に設けられた隙間充填構造を有効に製造することができる。
この発明の一の実施形態の隙間充填構造を有する溶融塩電解槽の一例を示す縦断面図である。 図1のII-II線に沿う断面図である。 図1の溶融塩電解槽が有する隙間充填構造を示す、図2の要部の部分拡大断面図である。 隙間充填構造の充填材の他の例を示す、図3と同様の断面図である。 充填材のさらに他の例を示す、図3と同様の断面図である。 蓋体及び充填材の例を示す、図3と同様の断面図である。
以下に図面を参照しながら、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に縦断面図で例示する溶融塩電解槽1は、たとえば主としてAl23等の耐火煉瓦その他の適切な材料からなる容器形状を有し、その内部に貯留された金属塩化物及び/またはフッ化物を含む溶融塩からなる溶融塩浴で、溶融塩中の特定の金属塩化物の電気分解が行われる電解槽2を備える。また溶融塩電解槽1は、容器形状の電解槽2の上方側に位置する開口部を覆蓋する蓋体3と、電解槽2内に溶融塩浴の深さ方向と平行に並べて配置した部分を有する陽極4a及び陰極4bを含む電極4とを備えるものである。なお、図示しないが、溶融塩電解槽1はさらに、電解槽2内の温度調整を行う熱交換器としての温度調整管等を備えることがある。
なおここでは、電気分解される金属塩化物を塩化マグネシウム(MgCl2)とした場合を例として説明する。この場合、塩化マグネシウムの電気分解により、図1に示すように、溶融金属として金属マグネシウム(Mg)が生成されるとともに、ガスとして塩素(Cl2)が発生する。溶融塩電解で生成された金属マグネシウムは、金属チタンを製造するクロール法における四塩化チタンの還元に、また塩素ガスは、同法におけるチタン鉱石の塩素化にそれぞれ用いることができる。この電気分解の原料とする塩化マグネシウムとしては、クロール法で副次的に生成されるものを使用可能である。
溶融塩には、上記の電気分解される塩化マグネシウムの他、支持塩として、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種が含まれ得る。
但し、溶融塩電解槽1は、塩化アルミニウム(AlCl3)もしくは塩化亜鉛(ZnCl2)等の金属塩化物の電気分解にも用いることができる。
ここで、図示の電解槽2は内部に、図1に示すところでは実質的に深さ方向に沿って配置された隔壁5をさらに備えるものである。かかる隔壁5により、電解槽2の内部は、図1では右側に位置して電極4が配置された電解室2aと、左側に位置し、電解室2aでの電気分解により得られた溶融金属が流れ込んで該溶融金属が溶融塩との密度差により上方側に溜まる貯留室2bとに区画される。この隔壁5は具体的には、電解槽2の上方側に位置する蓋体3に近接させて配置される。電解槽2の下方側の底部には、貯留室2bから電解室2aへの溶融塩浴の移動を可能にする溶融塩循環路5aが形成される。また、この電解槽2では、隔壁5の上方側に設けた溶融金属流路5bにより、電解室2aから貯留室2bへの溶融金属の流入が可能である。
またここで、電解室2aに配置された電極4は、少なくとも、図示しない電源等に接続された陽極4a及び陰極4bを有する。これらの陽極4a及び陰極4bにより、MgCl2→Mg+Cl2等の反応に基いて、陽極4aの表面で酸化反応により塩素等のガスを生じさせるとともに、陰極4bの表面で還元反応により溶融金属である金属マグネシウム等を生成させる。
電極4は、少なくとも陽極4a及び陰極4bを有するものであれば、溶融塩中の金属塩化物の電気分解を行うことができる。一方、電気分解の生成効率向上等の観点より、図2に示すところから解かるように、陽極4aと陰極4bとの間に、電源に接続されず陽極4a及び陰極4b間への電圧の印加によって分極する一枚以上、たとえば二枚のバイポーラ電極4cをさらに有することが好ましい。但し、このようなバイポーラ電極4cは必ずしも必要ではない。
上述した溶融塩電解槽1を用いた溶融塩電解では、溶融塩浴の対流により、図1に示すように、貯留室2bから底部側の溶融塩循環路5aを経て電解室2aに流動した溶融塩中の特定の金属塩化物が電気分解されて、電解室2aで溶融金属が生成される。そしてこの溶融金属は、隔壁5の浴面側の溶融金属流路5bを通って貯留室2bに流入する。その後、溶融塩に対する比重の小さい溶融金属は、貯留室2bの浅い箇所に浮上してそこに溜まる。貯留室2bに浮上した溶融金属は、図示しないポンプ等により回収することができる。したがって、これによれば、溶融塩から溶融金属を製造することができる。
このような溶融塩電解槽1では、電極4の、平板その他の板状等の陽極4aは、図2に示すように、たとえば蓋体3に設けた貫通孔3aを通って蓋体3を貫通するように電解槽2の上下方向に延びて配置されることがある。この場合、陽極4aは、電解槽2の内部に位置する部分と蓋体3から外部に突出する部分とを有する。このうち、陽極4aの、電解槽2の内部に配置される部分は、当該内部で溶融塩浴に浸漬させられる。一方、陽極4aの、蓋体3から外部に突出する部分は、電源に接続される。
この場合、陽極4aを通す蓋体3の貫通孔3aが、陽極4aの幅及び厚みよりも若干大きな寸法を有するものとして設けられること等により、蓋体3と陽極4aとの間には、電解槽2の内部と外部との間で気体の流通が生じ得る隙間Gが形成される。
この隙間Gは、充填等の対処をせずにおくと、陽極4aや溶融塩浴と電解槽外部の大気とが接触し、それにより、グラファイト等からなる陽極の酸化による寿命の短命化、溶融金属の酸化による汚染を招く。また、電解槽内部の塩素等が隙間Gから外部へ漏出しうる懸念が生じ、かつ、電解槽内部の塩素濃度が低下する懸念がある。それ故に、隙間Gを充填材6で充填して密閉する。
この実施形態では、図3に例示するように、充填材6が、蓋体3と陽極4aとの間に及んで形成された金属塩化物及び/又はフッ化物の固化体6aを含むものとする。この固化体6aは、図3に示すように、蓋体3と陽極4aとの間に広がって、つまり蓋体3の貫通孔3aの内縁部から陽極4aの表面にわたり跨って形成されている。それ故に、固化体6aは、従来用いられていた粉体のように、塩素等のガスが吸引されて減圧される電解槽内部に吸引されにくい。それにより、充填材の吸引による経時的な気密性の低下を有効に防止することができる。
また、図3に例示する固化体6aは、金属塩化物及び/又はフッ化物からなるものであり、外気に接して溶融塩電解の際にもある程度の低温が保たれる蓋体3に隣接して配置されるので、耐熱性の点で過度の性能を要求されない。なお、図示のように、蓋体3は、電解槽2の内部に面するAl23又はSiO2等からなる内層3bと、その外側に配置される鉄製等の外層3cとで構成されることがある。この場合、蓋体3は、溶融塩電解の際に内層3bの内面位置では500℃程度まで加熱されるも、外層3cの外面位置では200℃~400℃程度に維持され得る。加えて、固化体6aは絶縁性に優れるため、充填材を金属材料とした場合のようなショートの問題も生じない。
かかる金属塩化物及び/又はフッ化物からなる固化体6aは、仮にその一部が電解槽内部に落下するなどして、溶融塩浴に混入したとしても、溶融塩電解に大きな影響を及ぼすことがない。
この観点より、先に述べたような塩化マグネシウム等の電気分解を行う溶融塩電解槽1では、固化体6aは、その溶融塩浴に含まれ得る金属塩化物及び/又はフッ化物、具体的には、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。当該溶融塩浴は、電気分解の対象とする塩化マグネシウムや、その支持塩としての塩化カリウム、フッ化マグネシウム及び/又はフッ化カルシウムを含み得るので、そのような材質からなる固化体6aの、溶融塩浴への混入は大きな問題とはならないからである。
特に、固化体6aは、少なくとも塩化マグネシウムを含むことがより一層好ましい。この場合においては、固化体6aは、塩化マグネシウムを10質量%~70質量%で含むことが好適である。塩化マグネシウムの含有量を10質量%~70質量%とすることにより、溶融塩は比較的低い温度でも溶融可能で大気中で取り扱い易い。比較的低い温度でも溶融しているので、溶融塩からの熱による陽極へのダメージも少なく、隙間Gに溶融状態の溶融塩が入り込みやすい。塩化マグネシウムの含有量を10質量%~30質量%とすることも可能である。
一方、固化体6a中の、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種の含有量は、上記の塩化マグネシウムの含有量との合計が100質量%以下であることを前提として、30質量%~90質量%とすることが好ましく、70質量%~90質量%とすることがより好ましい。支持塩の含有量をこのような範囲内とすることにより、溶融塩は比較的低い温度でも溶融状態であることができる。固化体6aが、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択される二種以上を含む場合は、上記の含有量は、それらの二種以上の合計含有量を意味する。
蓋体3と陽極4aとの間の隙間Gの充填構造として、充填材6に含まれるこのような固化体6aの製造は、溶融塩を隙間Gに流し込んで、その溶融塩を隙間Gで固化させることにより行うことができる。なおこの際に、電解槽2の内部に既に溶融塩が貯留されていて溶融塩浴が存在する場合は、この溶融塩浴から溶融塩を汲み上げて、これを隙間Gに流し込むことができる。あるいは、溶融塩浴と実質的に同じ組成の溶融塩を別途、隙間Gに送り込んで流し込むこともできる。
溶融塩が隙間Gに流し込まれて固化してなった固化体6aは一般に、溶融塩が陽極4aと蓋体3との間の隙間G内に広がって流動した結果として、図3に示すように、蓋体3の貫通孔3aの内縁部から陽極4aの表面に至る塊状を有するものである。
なお、図3に示すような陽極4aを縦断する断面視にて、蓋体3の内縁部に隣接する陽極4aの表面に立てた垂線の方向(同図では左右方向)における固化体6aの幅は通常、蓋体3の内縁部と陽極表面との間の同方向の距離以上になる。これにより、電解槽内部への固化体6aの落下が抑制される。図3には示さないが、仮に、貫通孔3a内における陽極4aの周囲の少なくとも一部や、後述の図6のように蓋体3の厚み方向の少なくとも一部で、蓋体3の内縁部と陽極表面との間の距離が変化する場合、固化体6aの幅は、その距離が最も短くなる最小距離以上とすることが好ましい。あるいは、陽極4aの周囲の全体で、蓋体3の内縁部と陽極表面との間の距離が実質的に均一である場合、固化体6aの幅は、その距離と実質的に等しくなる。
ここで、隙間Gへの溶融塩の流込み及び、隙間Gでの溶融塩の固化を一連の過程として、その過程を、たとえば溶融塩の固化に要する所定の時間をおいて複数回にわたって行うことが好適である。
この場合、図4に示すように、隙間充填構造の充填材16の固化体は、電解槽2の内部側から外部側に向けて(同図では下方側から上方側に向けて)積層された複数層の固化層16a、16b及び16cを含むものになる。複数層の固化層16a、16b及び16cはそれぞれ、たとえば電解槽2の内部側から順次に、上記の各過程で形成されたものである。図示の例では、充填材16が、三層の固化層16a、16b及び16cの固化体を含むものであるが、溶融塩の流込み及び固化の過程を経る回数を変更することによって、二層又は四層以上の固化層の固化体を含むものとすることも可能である。
隙間Gにおける溶融塩の流込み及び固化を複数回行う場合は、前回の溶融塩の流込みから次回の溶融塩の流込みまでの、固化のために放置する時間を5~10分とすることが好ましい。
溶融塩を隙間Gに流し込むと、溶融塩が固化する際に収縮することに起因する固化体の割れが発生することがある。これに対し、上述したように充填材16の固化体が複数層の固化層16a、16b及び16cを含む場合は、このような固化時の収縮による割れを有効に抑制することができる。
固化体が複数層の固化層16a、16b及び16cを含むかどうかについては、蓋体3から陽極4aを取り外したのち、固化体を採取してその断面を観察することにより確認可能である。
またここで、隙間Gへ溶融塩を流し込むに先立って予め、隙間Gに、SiO2又は、CaOおよびMgO等からなるブランケットを挟み込んで配置しておき、その後、そのブランケット上に、溶融塩を流し込むこともできる。これにより、隙間Gに溶融塩を流し込んだ際に、溶融塩が隙間Gを通過して電解槽2の内部に入り込むことを抑制することができ、隙間充填構造の製造がより一層容易になる。
ブランケットを用いた場合、図5に示すように、それにより製造された隙間充填構造の充填材26は、固化体26aの他、その固化体26aよりも電解槽2の内部側(同図では下方側)で隙間Gに挟み込まれたブランケット26bをさらに含むものとなる。
但し、隙間Gに溶融塩を流し込んで固化させる際の冷却条件等によっては、溶融塩が隙間Gを通過する前に該溶融塩を隙間Gで固化させることも可能であるから、ブランケット26bの使用は必ずしも必要ではない。なお、電解槽内部に面する充填材の表面は、図3、4のように、ブランケットなしで隙間充填構造を製造した場合は固化体6aないし固化層16aとなるが、図5のようにブランケット26bを用いた場合は当該ブランケット26bとなる。
図6に、他の例の蓋体33及び充填材36を示す。
この蓋体33は、電解槽2の内部側から外部側に向かう途中で、陽極4aとの間の距離が漸増する形状になる内縁部の貫通孔33aが設けられたものであり、それに応じて、隙間Gのブランケット36b上に、この断面視で幅方向の寸法が電解槽2の外部に向けて漸増する形状の固化体36aが、貫通孔33aの内縁部から陽極4aの表面に達する形態で形成されている。このような蓋体33で、固化体36aを含む隙間充填構造を製造する場合、隙間Gに流し込む溶融塩が、たとえば、貫通孔33aの内縁部と陽極4aの表面との間の距離が最も短くなる内部側の箇所で堰き止められるように、ブランケット36bを予め配置することが好ましい。
次に、この発明の隙間充填構造を試作し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、これに限定されることを意図するものではない。
(比較例1)
蓋体と陽極との間の隙間に、SiO2からなるブランケットを挟み込んで配置し、その上から、CaF2からなり目開き150μmの篩で篩下に得られた粉体を投入して該粉体で隙間を充填し、これを隙間充填構造とした。
この隙間充填構造を有する溶融塩電解槽を用いて溶融塩電解を行った。電解槽内で生成する塩素ガスを回収するために、電解槽内は弱負圧として操業した。電解槽内部の塩素濃度は、操業開始時は99%であったが、8時間にわたって操業した後は98%に低下していた。次いで操業中に、隙間充填構造を目視にて確認したところ、隙間に充填した粉体の一部に小さな孔が開いていた。
これらのことから、操業に伴い、隙間充填構造の粉体が、電解槽内部に吸引される等して減少し、これにより電解槽内部の密閉度が低下した結果として、内部の塩素濃度が低下したものと推測される。なお、操業中において電解槽内から蓋体外部への塩素の漏洩は確認されなかった。
(実施例1)
蓋体と陽極との間の隙間に、SiO2からなるブランケットを挟み込んで配置し、その上から、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム及び塩化カルシウムを含む溶融塩を流し込んで固化させて固化体とし、これを隙間充填構造とした。固化体中の塩化マグネシウムの含有量は20質量%、塩化ナトリウムの含有量は50質量%、塩化カルシウムの含有量は30質量%とした。溶融塩の流込み及び固化は1回のみ行った。
この隙間充填構造を有することを除いて比較例1と同様の溶融塩電解槽を用いて、比較例1と同様の電解条件にて溶融塩電解を行った。電解槽内部の塩素濃度は、操業開始時は99%、30日間にわたって操業した後も99%であり、塩素濃度の大きな低下は見られなかった。
したがって、この隙間充填構造では、蓋体と陽極との間の隙間を有効に充填できることが解かった。
(実施例2)
固化体中の塩化マグネシウムの含有量を70質量%、塩化ナトリウムの含有量を18質量%、塩化カルシウムの含有量を12質量%としたことを除いて、実施例1と同様の隙間充填構造を製造した。
この隙間充填構造を有することを除いて比較例1と同様の溶融塩電解槽を用いて、比較例1と同様の電解条件にて溶融塩電解を行った。電解槽内部の塩素濃度は、操業開始時は99%、30日間にわたって操業した後も99%であり、塩素濃度の大きな低下は見られなかった。
したがって、この隙間充填構造でも、蓋体と陽極との間の隙間を有効に充填できることが解かった。
(実施例3)
隙間への溶融塩の流込み及び固化を三回行って、三層の固化層を有する固化体としたことを除いて、実施例1と同様の隙間充填構造を製造した。
この隙間充填構造を有することを除いて比較例1と同様の溶融塩電解槽を用いて、比較例1と同様の電解条件にて溶融塩電解を行った。電解槽内部の塩素濃度は、操業開始時は99%、30日間にわたって操業した後も99%であり、塩素濃度の大きな低下は見られなかった。
したがって、この隙間充填構造でも、蓋体と陽極との間の隙間を有効に充填できることが解かった。
(実施例4)
ブランケットを配置しなかったことを除いて、実施例1と同様の隙間充填構造を製造した。
この隙間充填構造を有することを除いて比較例1と同様の溶融塩電解槽を用いて、比較例1と同様の電解条件にて溶融塩電解を行った。電解槽内部の塩素濃度は、操業開始時は99%、30日間にわたって操業した後も99%であり、塩素濃度の大きな低下は見られなかった。
したがって、この隙間充填構造でも、蓋体と陽極との間の隙間を有効に充填できることが解かった。
1 溶融塩電解槽
2 電解槽
2a 電解室
2b 貯留室
3、33 蓋体
3a、33a 貫通孔
3b、33b 内層
3c、33c 外層
4 電極
4a 陽極
4b 陰極
4c バイポーラ電極
5 隔壁
5a 溶融塩循環路
5b 溶融金属流路
6、16、26、36 充填材
6a、26a、36a 固化体
16a、16b、16c 固化層
26b、36b ブランケット
G 隙間

Claims (3)

  1. 内部で溶融塩を貯留させた溶融塩浴にて溶融塩電解を行う電解槽と、電解槽の開口部を覆蓋する蓋体と、電解槽の内部に配置される部分及び蓋体から外部に突出する部分を有する陽極を含む電極とを備える溶融塩電解槽で、蓋体と陽極との間の隙間を充填して隙間充填構造を製造する方法であって、
    前記溶融塩を前記隙間に流し込み、当該隙間で該溶融塩を固化させる、隙間充填構造の製造方法。
  2. 前記溶融塩が、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、フッ化マグネシウム及びフッ化カルシウムからなる群から選択される少なくとも一種を含む、請求項に記載の隙間充填構造の製造方法。
  3. 前記隙間への前記溶融塩の流込み及び、当該隙間での該溶融塩の固化を、複数回にわたって行う、請求項又はに記載の隙間充填構造の製造方法。
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