JP7142286B2 - セレン含有アミノ酸を含む糖鎖-ポリペプチド複合体、および、その医薬用途 - Google Patents

セレン含有アミノ酸を含む糖鎖-ポリペプチド複合体、および、その医薬用途 Download PDF

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本発明は、角結膜疾患の治療のために使用し得る、糖鎖-ポリペプチド複合体に関する。
ドライアイは、涙液および角結膜上皮の慢性疾患で、眼不快感や視機能異常を伴うものであり、日本国内における潜在患者数は800万人とも2200万人とも言われている。発症要因にはVDT作業、乾燥環境、コンタクトレンズ装着などがあり、パソコン、スマートフォン、タブレットの普及拡大状況から、今後の患者数増大が懸念されている。
喫煙は多くの疾患における増悪、発症要因であり、ドライアイにも喫煙は関与している。2014年の日本たばこ産業(JT)による調査では、日本国内の喫煙者数は約2000万人と報告されており、その人数の多さから角結膜疾患への影響は大きいと考えられる。樋口らは、ラットを用いた研究により、積極的に喫煙することなく、室内でタバコ煙(TS)に曝露されることによってドライアイが発症することを明らかにした(非特許文献1)。代表的なドライアイ治療薬として、ヒアルロン酸、ジクアス、ムコスタ点眼液などが上げられるが、これらはいずれも涙の状態の改善(対症療法)を目的とした点眼剤であり、より有効な治療薬が求められている。
これに対し、セレノプロテインP(SeP)やセレン結合ラクトフェリン(セレンラクトフェリン)等のセレン含有タンパク質を点眼することによって、上記の既存の点眼剤とは異なる作用機序で角結膜疾患を治療または抑制することが提案されている(特許文献1、非特許文献2-4)。
WO2012/161112
Higuchi A. et al. Free Radic Biol Med. 2011;51:2210-16 Higuchi A. et al. PLoS One. 2012; 7: e45612 Higuchi A. et al. PLoS One. 2010; 5: e9911 Higuchi A. et al. Sci. Rep. 2016; 6, 36903
上記のとおり、セレノプロテインP(SeP)やセレン結合ラクトフェリン(セレンラクトフェリン)等のセレン含有タンパク質の点眼は角結膜疾患の治療に有効であるが、これらはいずれも遺伝子工学的手法による製造が難しいタンパク質であり、製造コストが極めて大きい。また、セレン含有アミノ酸やセレン含有ペプチドを点眼しても、点眼後速やかに薬剤が眼球表面から流れ落ちるために、これらのセレン含有化合物の効果が十分に発揮されにくいという問題点もあった。
本発明者らは、上記の課題に対して鋭意検討を行った結果、所定の構造を有し、ヒドロゲルを形成する作用を有する糖鎖付加ポリペプチドとセレン含有アミノ酸とを融合させた新規の糖鎖-ポリペプチド複合体によって、上記の課題を解決し得ることを見出した。本発明の新規な糖鎖-ポリペプチド複合体は、セレン含有アミノ酸の作用によって角結膜疾患の治療効果を有し、また、ヒドロゲルを形成するポリペプチドの効果によって有効成分を眼球表面に長く留めることができる。さらに、本発明の糖鎖-ポリペプチド複合体は化学合成により製造することができるため、薬剤へのウイルスや細菌等の微生物の混入リスクがなく、大量合成にも適している。
すなわち本発明は、糖鎖-ポリペプチド複合体であって、前記ポリペプチドは、
(A)極性アミノ酸残基と非極性アミノ酸残基が交互に配置されたアミノ酸配列を含むペプチド部分;
(B)糖鎖が結合される、1または複数のアミノ酸残基;および
(C)1または複数の、セレンを含有するアミノ酸残基;
を含み、
ここで、前記(B)のアミノ酸残基に糖鎖が結合していることを特徴とする、
糖鎖-ポリペプチド複合体に関する。
本発明の一実施形態においては、前記糖鎖-ポリペプチド複合体が、pHが中性付近の水溶液中において自己集合することにより、βシート構造を含むヒドロゲルを形成しうるものであることを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記ペプチド部分(A)が、8~34個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含むペプチド部分であることを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記セレンを含有するアミノ酸残基が、セレノメチオニン残基、セレノシステイン残基、Se-メチルセレノシステイン残基、または、セレノホモシステイン残基であることを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記セレンを含有するアミノ酸残基は、前記ポリペプチドのN末端またはC末端に配置されることを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記(B)の糖鎖が結合されるアミノ酸残基が、システイン残基またはアスパラギン残基であることを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記各極性アミノ酸残基が、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、アルギニン残基、リジン残基、ヒスチジン残基、チロシン残基、セリン残基、トレオニン残基、アスパラギン残基、グルタミン残基、および、システイン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であることを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記各非極性アミノ酸残基が、アラニン残基、バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、メチオニン残基、フェニルアラニン残基、トリプトファン残基、プロリン残基、および、グリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であることを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記各極性アミノ酸残基が、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、アルギニン残基、および、トレオニン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
前記各非極性アミノ酸が、アラニン残基であることを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記(A)のペプチド部分のアミノ酸配列が、「RADA」の繰り返し配列、または、「RATARAEA」の繰り返し配列であることを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記(A)のペプチド部分のアミノ酸配列が、RADARADARADARADA(配列番号1)、RADARADARADARADARADA(配列番号2)、および、RATARAEARATARAEA(配列番号3)からなる群から選択されるアミノ酸配列であることを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記ポリペプチドに結合している1または複数の糖鎖に存在する糖残基の数の合計が5以上であることを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記ポリペプチドに結合している糖鎖の数が、1、2、または、3本であることを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記糖鎖が結合するアミノ酸残基(B)は、前記ペプチド部分(A)のN末端側またはC末端側に、直接的または間接的に結合していることを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記ポリペプチドに結合している糖鎖の数が1本の場合には、糖鎖が結合するアミノ酸残基(B)は、前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基、または、C末端に位置するアミノ酸残基と結合しており;
前記ポリペプチドに結合している糖鎖の数が2本の場合には、糖鎖が結合するアミノ酸残基(B)が、次の(1)~(3)のいずれかの位置に存在する、
(1)前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基に2残基の(B)が結合する
(2)前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基に1残基の(B)が結合し、前記ペプチド部分(A)のC末端に位置するアミノ酸残基に1残基の(B)が結合する
(3)前記ペプチド部分(A)のC末端に位置するアミノ酸残基に2残基の(B)が結合する;または、
前記ポリペプチドに結合している糖鎖の数が3本の場合には、糖鎖が結合しているアミノ酸残基(B)が、次の(1)~(4)のいずれかの位置に存在する、
(1)前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基に3残基の(B)が結合する
(2)前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基に2残基の(B)が結合し、前記ペプチド部分(A)のC末端に位置するアミノ酸残基に1残基の(B)が結合する
(3)前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基に1残基の(B)が結合し、前記ペプチド部分(A)のC末端に位置するアミノ酸残基に2残基の(B)が結合する
(4)前記ペプチド部分(A)のC末端に位置するアミノ酸残基に3残基の(B)が結合する;
ことを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記糖鎖が、分岐を有する糖鎖であることを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記糖鎖が、ジシアロ糖鎖、アシアロ糖鎖、ジグルクナック糖鎖、ジマンノース糖鎖、グルクナック糖鎖、マルトトリオース糖鎖、マルトース糖鎖、マルトテトラオース糖鎖、マルトヘプタオース糖鎖、β-シクロデキストリン、および、γ-シクロデキストリンからなる群から選択される糖鎖であることを特徴とする。
本発明の一実施形態は、上記の糖鎖-ポリペプチド複合体を含む、医薬組成物に関する。
本発明の一実施形態においては、前記医薬組成物が点眼剤または軟膏剤であることを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記医薬組成物が、角結膜疾患の治療用または予防用である、または、角結膜疾患の治療または予防のために使用される、ことを特徴とする。
本発明の一実施形態においては、前記角結膜疾患が、ドライアイ、乾性角結膜炎、点状表層角膜症、角膜びらん、または、角膜潰瘍であることを特徴とする。
本発明の他の実施態様は、角結膜疾患の治療剤または予防剤の製造のための、上記の糖鎖-ポリペプチド複合体の使用、に関する。
本発明の他の実施態様は、角結膜疾患の治療方法または予防方法であって、
それを必要とする対象の疾患部位に、治療上有効量の糖鎖-ポリペプチド複合体を含む組成物を適用するステップを含み、
ここで、前記糖鎖-ポリペプチド複合体は、
(A)極性アミノ酸残基と非極性アミノ酸残基が交互に配置された、8~34個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含むペプチド部分;
(B)糖鎖が結合される、1または複数のアミノ酸残基;および
(C)1または複数のセレン含有アミノ酸残基;
を含むポリペプチドを含み、
前記(B)のアミノ酸残基に糖鎖が結合している、
ことを特徴とする方法に関する。
上記の一又は複数の特徴を任意に組み合わせた発明も、本発明の範囲に含まれる。
図1は、実施例1の各実験群における処置後の角膜障害の程度を、フルオレセイン(Fluorescein)染色スコアによって評価したグラフを示す。 図2は、実施例2の各実験群における処置後の角膜障害の程度を、フルオレセイン(Fluorescein)染色スコアによって評価したグラフを示す。
本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体は、生物由来であってもよく、化学合成によって製造されたものでもよいが、安全性や品質の安定性、糖鎖の均一性の面から、化学合成によって製造されたものであることが好ましい。
本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体は、例えば、水溶液中において、ペプチド分子間の静電的相互作用、水素結合、および、疎水性相互作用などの相互作用を介して自己集合しうる。本明細書において、糖鎖-ポリペプチド複合体が水溶液中で「自己集合する」とは、水溶液中においてポリペプチド同士が、何らかの相互作用(例えば、静電的相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性相互作用等)を介して、自発的に集合することを意味し、限定的な意味で解釈されてはならない。
本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体は、水溶液中において自己集合し、βシート構造を形成しうる。さらに、そのβシート構造が何重にも重なることにより、ヒドロゲルを形成し得る。水溶液中において糖鎖-ポリペプチド複合体がβシート構造を形成していることの確認方法は特に限定されないが、例えば、糖鎖-ポリペプチド複合体を含む水溶液の円偏光二色性(CD)を測定することにより、確認することができる。一般的に、βシート構造を有する分子の特徴として、197nm付近の波長に正の吸収がみられ、216nm付近の波長に負の吸収がみられることから、円偏光二色性の測定により、これらの波長付近のピークを確認することによって、βシート構造の形成を確認することができる。
本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体は、極性アミノ酸残基と非極性アミノ酸残基が交互に配置されたアミノ酸配列を含むことにより、水溶液中においてβシート構造を形成した際に、βシート構造の一方の面には極性アミノ酸残基のみが配置され得、他方の面に非極性アミノ酸残基のみが配置されうる。したがって、かかるβシート構造は、疎水面(非極性アミノ酸残基のみが配置された面)を隠すように集合して二層構造を形成しうる。そして、分子の自己集合が進むにつれてこのβシートの層構造が伸長してゆき、三次元の立体構造(例えば、ヒドロゲル)を形成しうる。このような性質を有するポリペプチドはSAP(Self-Assembling Peptide)と呼ばれることがある。なお、本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体は、上記の構造を有することにより、両親媒性であってよい。
本発明において、「pHが中性付近」であるとは、pHが7.0付近であることを意味し、より具体的にはpHが5.0~9.0の範囲、好ましくは、pHが6.0~8.0の範囲内であることを意味する。
本発明の一実施形態においては、糖鎖-ポリペプチド複合体が、pHが中性付近の水溶液中において自己集合してβシート構造を含むヒドロゲルを形成しうるものであることを特徴とするが、当該特徴を有している限り、pHが中性付近以外の水溶液中においても自己集合してβシート構造を含むヒドロゲルを形成しうるものを除外するものではない。
本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体は、極性アミノ酸残基と非極性アミノ酸残基が交互に配置されたアミノ酸配列を含むペプチド部分を含むが、当該ペプチド部分のアミノ酸配列の長さは限定されず、好ましくは8~34個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であってよく、より好ましくは12~25個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であってよく、さらに好ましくは16~21個のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列であってよい。
本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体は、極性アミノ酸残基と非極性アミノ酸残基が交互に配置されたアミノ酸配列を含むペプチド部分を含むが、本発明において、「アミノ酸」とは、その最も広い意味で用いられ、タンパク質構成アミノ酸のみならずアミノ酸変異体および誘導体といったようなタンパク質非構成アミノ酸を含む。当業者であれば、この広い定義を考慮して、本発明におけるアミノ酸として、例えば、タンパク質構成L-アミノ酸;D-アミノ酸;アミノ酸変異体および誘導体などの化学修飾されたアミノ酸;ノルロイシン、β-アラニン、オルニチンなどのタンパク質非構成アミノ酸;およびアミノ酸の特徴である当業界で公知の特性を有する化学的に合成された化合物などが挙げられることを理解するであろう。タンパク質非構成アミノ酸の例として、α-メチルアミノ酸(α-メチルアラニンなど)、D-アミノ酸、ヒスチジン様アミノ酸(2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン、α-フルオロメチル-ヒスチジンおよびα-メチル-ヒスチジンなど)、側鎖に余分のメチレンを有するアミノ酸(「ホモ」アミノ酸)および側鎖中のカルボン酸官能基アミノ酸がスルホン酸基で置換されるアミノ酸(システイン酸など)が挙げられる。本発明の好ましい態様において、本発明において用いられるアミノ酸は、タンパク質構成アミノ酸であってよい。
本発明において、極性アミノ酸残基は、側鎖が極性を有しうるアミノ酸残基であれば特に限定されないが、例えば、酸性アミノ酸残基と塩基性アミノ酸残基が含まれる。本明細書において、酸性アミノ酸残基は、例えば、アスパラギン酸(Asp:D)残基、および、グルタミン酸(Glu:E)などを含み、塩基性アミノ酸とは、例えば、アルギニン(Arg:R)、リジン(Lys:K)、ヒスチジン(His:H)などを含む。
なお、本明細書中において、例えば「アスパラギン酸(Asp:D)」などの表記は、アスパラギン酸の略号として、三文字表記で「Asp」、一文字表記で「D」を用いることがあることを意味する。
また、本明細書において、中性アミノ酸残基のうち、水酸基、酸アミド基、チオール基等を含むアミノ酸残基は、極性を有するものとして、極性アミノ酸残基に含まれるものとする。例えば、本明細書において、チロシン(Tyr:Y)、セリン(Ser:S)、トレオニン(Thr:T)、アスパラギン(Asn:N)、グルタミン(Gln:Q)、システイン(Cys:C)は極性アミノ酸残基に含まれる。
本明細書において、非極性アミノ酸残基は、側鎖が極性を有しないアミノ酸であれば特に限定されないが、例えば、アラニン(Ala:A)、バリン(Val:V)、ロイシン(Leu:L)、イソロイシン(Ile:I)、メチオニン(Met:M)、フェニルアラニン(Phe:F)、トリプトファン(Trp:W)、グリシン(Gly:G)、プロリン(Pro:P)などを含む。
本発明において用いられるセレン含有アミノ酸残基は、セレンを含有するアミノ酸残基である限り限定されないが、例えば、セレノメチオニン(SeMet)残基、セレノシステイン(Sec)残基、Se-メチルセレノシステイン(SeMC)残基、セレノホモシステイン(HomoSec)残基であってよい。なお、これらのセレン含有アミノ酸は、本分野の当業者に公知の生化学的方法および/または工業的方法によって生産することができる。また、これらのセレン含有アミノ酸がセレノシスタチオニンやセレノシスチンの構造で糖鎖-ポリペプチド複合体に含まれる態様も、本発明の範囲に含まれる。
本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体において、「極性アミノ酸残基と非極性アミノ酸残基が交互に配置されたアミノ酸配列」は、好ましくは、当該アミノ酸配列は「RADA」の繰り返し配列(繰り返しが2~8回、好ましくは繰り返しが3~6回)、または、「RATARAEA」の繰り返し配列(繰り返しが1~4回、好ましくは繰り返しが2~3回)であってよく、より好ましくは、当該アミノ酸配列は、RADARADARADARADA(配列番号1)、RADARADARADARADARADA(配列番号2)、および、RATARAEARATARAEA(配列番号3)からなる群から選択されるアミノ酸配列であってよい。
本発明において、「糖鎖」とは、単位糖(単糖および/またはその誘導体)が1つ以上連なってできた化合物をいう。単位糖が2つ以上連なる場合、各々の単位糖同士の間は、グリコシド結合による脱水縮合によって結合する。このような糖鎖としては、例えば、生体中に含有される単糖類および多糖類(グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース、キシロース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、シアル酸並びにそれらの複合体および誘導体)の他、分解された多糖、糖タンパク質、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、糖脂質などの複合生体分子から分解または誘導された糖鎖など広範囲なものが挙げられるが、それらに限定されない。糖鎖は直鎖型であっても分岐鎖型であってもよい。
また、本発明において、「糖鎖」には糖鎖の誘導体も含まれ、糖鎖の誘導体としては、例えば、糖鎖を構成する糖が、カルボキシ基を有する糖(例えば、C-1位が酸化されてカルボン酸となったアルドン酸(例えば、D-グルコースが酸化されたD-グルコン酸)、末端のC原子がカルボン酸となったウロン酸(D-グルコースが酸化されたD-グルクロン酸))、アミノ基またはアミノ基の誘導体を有する糖(例えば、D-グルコサミン、D-ガラクトサミンなど)、アミノ基およびカルボキシ基を両方とも有する糖(例えば、N-グリコイルノイラミン酸、N-アセチルムラミン酸など)、デオキシ化された糖(例えば、2-デオキシ-D-リボース)、硫酸基を含む硫酸化糖、リン酸基を含むリン酸化糖などである糖鎖が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体において、ポリペプチドに結合される糖鎖は特に限定されないが、生体適合性の観点から、生体内で複合糖質(糖ペプチド(または糖タンパク質)、プロテオグリカン、糖脂質等)として存在する糖鎖であることが好ましい。かかる糖鎖としては、生体内で糖ペプチド(または糖タンパク質)としてペプチド(またはタンパク質)に結合している糖鎖であるN-結合型糖鎖、O-結合型糖鎖等が挙げられる。
本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体において、ポリペプチドに結合される糖鎖は、例えば、ジシアロ(Disialo)糖鎖、アシアロ(Asialo)糖鎖、ジグルクナック(DiGlcNAc)糖鎖、ジマンノース(DiMan)糖鎖、グルクナック(GlcNAc)糖鎖、マルトトリオース(Maltotriose)糖鎖、マルトース(Maltose)糖鎖、マルトテトラオース(Maltotetraose)糖鎖、マルトヘプタオース(Maltoheptaose)糖鎖、β-シクロデキストリン(β-cyclodextrin)糖鎖、γ-シクロデキストリン(γ-cyclodextrin)糖鎖を用いることができる。
より具体的には、本発明に用いられる糖鎖は、以下の式(1)で示すジシアロ糖鎖であってよく、以下の式(2)で示すアシアロ糖鎖であってよく、以下の式(3)で示すジグルクナック糖鎖であってよく、以下の式(4)で示すジマンノース糖鎖であってよく、以下の式(5)で示すグルクナック糖鎖であってよく、以下の式(6)で示すマルトトリオース糖鎖であってよく、以下の式(7)で示すマルトース糖鎖であってよく、以下の式(8)で示すマルトテトラオース糖鎖であってよく、以下の式(9)で示すマルトヘプタオース糖鎖であってよく、以下の式(10)で示すβ-シクロデキストリン糖鎖であってよく、以下の式(11)で示すγ-シクロデキストリン糖鎖であってよい。
Figure 0007142286000001

式(1)ジシアロ糖鎖
Figure 0007142286000002

式(2)アシアロ糖鎖
Figure 0007142286000003

式(3)ジグルクナック糖鎖
Figure 0007142286000004

式(4)ジマンノース糖鎖
Figure 0007142286000005

式(5)グルクナック糖鎖
Figure 0007142286000006

式(6)マルトトリオース糖鎖
Figure 0007142286000007

式(7)マルトース糖鎖
Figure 0007142286000008

式(8)マルトテトラオース糖鎖
Figure 0007142286000009

式(9)マルトヘプタオース糖鎖
Figure 0007142286000010

式(10)β-シクロデキストリン糖鎖
Figure 0007142286000011

式(11)γ-シクロデキストリン糖鎖
本発明において、上記のジシアロ糖鎖、アシアロ糖鎖、ジグルクナック糖鎖、ジマンノース糖鎖、またはマルトヘプタオース糖鎖の非還元末端から1または複数の糖を失った糖鎖も用いることができる。
本発明において、糖鎖が結合されるアミノ酸残基は特に限定されないが、例えば糖鎖をシステイン(Cys:C)またはアスパラギン(Asn:N)に結合させることができ、好ましくはシステイン(Cys:C)に結合させることができる。
本発明において、アミノ酸に糖鎖を結合させる方法は特に限定されず、例えば、アミノ酸残基に糖鎖を直接結合してもよく、アミノ酸残基にリンカーを介して糖鎖を結合させてもよい。
また、本発明において、糖鎖が結合したアミノ酸残基は、「極性アミノ酸残基と非極性アミノ酸残基が交互に配置されたアミノ酸配列」に対して直接結合していてもよく、例えば、リンカー等を介して間接的に結合していてもよい。
本発明において、(A)極性アミノ酸残基と非極性アミノ酸残基が交互に配置されたアミノ酸配列を含むペプチド部分と、(B)糖鎖が結合される、1または複数のアミノ酸残基と、(C)1または複数の、セレンを含有するアミノ酸残基とは、任意の順番で結合されてよい。好ましくは、セレンを含有するアミノ酸残基は、上記(A)~(C)を含むポリペプチドのN末端またはC末端に配置されてよい。上記(A)~(C)は、それぞれ直接結合していてもよく、例えばリンカーを介して間接的に結合していてもよい。
上記のようなリンカーとしては、例えば、アミノ酸とペプチド結合できるように、両末端にアミノ基およびカルボキシ基を有するアルキル鎖やPEG鎖等を挙げることができる。このようなリンカーとしては、例えば、-NH-(CH-CO-(式中、nは整数であり、目的とするリンカー機能を阻害しない限り限定されるものではないが、好ましくは1~15の整数を示す。)や-NH-(CHCHO)-CHCH-CO-(式中、mは整数であり、目的とするリンカー機能を阻害しない限り限定されるものではないが、好ましくは1~7の整数を示す。)等を挙げることができる。より具体的には、-NH-(CH11-CO-(C12linker)や-NH-(CHCHO)-CHCH-CO-(PEGlinker)等を挙げることができる。
本発明の糖鎖-ポリペプチド複合体は、当業者に公知のポリペプチド合成方法に、糖鎖付加工程を組み込むことで製造することができる。糖鎖付加に際しては、トランスグルタミナーゼに代表される、酵素を利用する方法も用いることができるが、この場合、付加する糖鎖が大量に必要になる、最終工程後の精製が煩雑になる、糖鎖の付加位置および付加可能な糖鎖が制限される、等の問題があるため、アッセイ用等の少量の合成には用いることが可能でも、大規模な製造には実用的な方法とは言えないことがある。
本発明の糖鎖-ポリペプチド複合体の簡便な製造方法の具体例として、以下、糖鎖が結合したAsn(糖鎖付加Asn)を使用し、固相合成、液相合成等の公知のペプチド合成方法を適用することにより糖鎖-ポリペプチド複合体を製造する方法(A法)、および、任意のアミノ酸残基をCysとしたポリペプチドを公知のペプチド合成方法に従って製造し、その後、Cysに化学合成により糖鎖を付加し、糖鎖-ポリペプチド複合体を製造する方法(B法)を例示する。これらの製造方法を参考に、当業者であれば様々な方法で糖鎖-ポリペプチド複合体を製造することが可能である。
また、これらのA法およびB法は、2つ以上を組み合わせて行うことも可能である。アッセイなどに用いる少量の合成であれば、さらに、上記の方法に、転移酵素による糖鎖伸長反応を組み合わせることも可能である。なお、A法は、国際公開第2004/005330号パンフレット(US2005222382(A1))に、B法は、国際公開第2005/010053号パンフレット(US2007060543(A1))に、それぞれ記載されており、その開示は全体として本明細書に参照により組み込まれる。また、A法およびB法において用いられる糖鎖構造が均一な糖鎖の製造に関しては、国際公開第03/008431号パンフレット(US2004181054(A1))、国際公開第2004/058984号パンフレット(US2006228784(A1))、国際公開第2004/058824号パンフレット(US2006009421(A1))、国際公開第2004/070046号パンフレット(US2006205039(A1))、国際公開第2007/011055号パンフレット等に記載されており、その開示は全体として本明細書に参照により組み込まれる。
より具体的には、本発明の糖鎖-ポリペプチド複合体は、WO2014/162906に記載の方法に基づいて製造することができる。
糖鎖-ポリペプチド複合体を製造する方法(A法)
糖鎖-ポリペプチド複合体は、例えば、以下に概略を示すように、糖鎖が結合したAsnを用いた固相合成によって製造することができる。
(1)脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護されたアミノ酸のカルボキシ基を樹脂(レジン)へ結合させる。この場合、アミノ酸のアミノ基窒素を脂溶性保護基で保護しているので、アミノ酸同士の自己縮合は防止され、レジンとアミノ酸とが反応して結合が起こる。
(2)得られた反応物の脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させる。
(3)この遊離アミノ基と、脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護された任意のアミノ酸のカルボキシ基とを、アミド化反応させる。
(4)上記脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させる。
(5)上記(3)および(4)の工程を1回以上繰り返すことにより、任意の数の任意のアミノ酸が連結した、末端にレジンを結合し、他端に遊離アミノ基を有するペプチドが得られる。
(6)上記(5)で合成したペプチドの遊離アミノ基をアセチル基で保護する場合、無水酢酸、酢酸等を用いてアセチル化することも好ましい。
(7)最後に、酸でレジンを切断することにより、所望のアミノ酸配列を有するペプチドを得ることができる。
ここで、(1)において、脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護されたアミノ酸の代わりに、脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護された糖鎖付加Asnを用い、当該アスパラギン部分のカルボキシ基とレジンの水酸基とを反応させれば、C末端に糖鎖付加Asnを有するペプチドを得ることができる。
また、(2)の後、または、(3)と(4)を1回以上の任意の回数繰り返した後、(3)において、脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護されたアミノ酸の代わりに、脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護された糖鎖付加Asnを用いれば、ポリペプチドの任意の箇所に糖鎖を結合させることができる。
このように、(1)および(3)のいずれかの工程で、2回以上、脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護されたアミノ酸の代わりに、脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護された糖鎖付加Asnを用いることで、ポリペプチドの任意の2ヶ所以上に糖鎖を結合させることができる。
糖鎖付加Asnを結合させた後、脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させ、その直後に工程(7)を行えば、N末端に糖鎖付加Asnを有するポリペプチドを得ることができる。
C末端をアミド基として供給する樹脂(レジン)としては、通常、固相合成で使用する樹脂(レジン)であればよく、例えば、アミノ基で官能化されたRink-Amide-レジン(メルク社製)、Rink-Amide-PEGAレジン(メルク社製)や、NH-SAL-レジン(渡辺化学社製)を用いることが好ましい。また、アミノ基で官能化されたAmino-PEGA-レジン(メルク社製)等にFmoc-NH-SAL-レジン-リンカー(渡辺化学社製)等を結合させてもよい。このレジンとペプチドを酸で切断することにより、ペプチドのC末端アミノ酸をアミド化することができる。
また、C末端をカルボン酸にする場合の樹脂(レジン)としては、例えば、塩素で官能化された2-クロロトリチルクロリド樹脂(メルク社製)や、アミノ基で官能化されたAmino-PEGAレジン(メルク社製)、水酸基を有するNovaSyn TGTアルコール樹脂(メルク社製)、Wangレジン(メルク社製)、HMPA-PEGAレジン(メルク社製)等を用いることができる。また、Amino-PEGAレジンとアミノ酸との間にリンカーを存在させてもよく、このようなリンカーとして、例えば、4-ヒドロキシメチルフェノキシ酢酸(HMPA)、4-(4-ヒドロキシメチル-3-メトキシフェノキシ) -ブチル酢酸(HMPB)等を挙げることができる。C末端のアミノ酸が樹脂にあらかじめ結合したH-Cys(Trt)-Trityl NovaPEG樹脂(メルク社製)等も用いることができる。
樹脂と脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護されたアミノ酸との結合は、例えば、水酸基を有する樹脂や塩素で官能化された樹脂を使用するには、アミノ酸のカルボキシ基を樹脂へエステル結合させる。また、アミノ基で官能化された樹脂を使用する場合には、アミノ酸のカルボキシ基を樹脂にアミド結合により結合させる。
なお、2-クロロトリチルクロリド樹脂は、固相合成においてペプチド鎖を伸長する際、末端にあるCysのラセミ化を防止することができる点において、好ましい。
糖鎖-ポリペプチド複合体を製造する方法-2(A法)
糖鎖-ポリペプチド複合体は、例えば、以下に概略を示すように、糖鎖が結合したAsnを用いた液相合成によって製造することができる。
(1)脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護されたアミノ酸のカルボキシ基をアミノ基が遊離でカルボキシ基が保護またはアミド化されたアミノ酸へ結合させる。
(2)得られた反応物の脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させる。
(3)この遊離アミノ基と、脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護された任意のアミノ酸のカルボキシ基とを、溶液中でアミド化反応させる。この場合、N末端側のアミノ酸のアミノ基窒素を脂溶性保護基で保護しており、C末端側のカルボキシ基は保護またはアミド化されているので、アミノ酸同士の自己縮合は防止され、遊離のアミノ基とカルボキシ基とが反応して結合が起こる。
(4)上記脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させる。
(5)上記(3)および(4)の工程を1回以上繰り返すことにより、任意の数の任意のアミノ酸が連結した、C末端のカルボキシ基が保護またはアミド化され、N末端に遊離アミノ基を有するペプチドが得られる。
(6)上記(5)で合成したペプチドの遊離アミノ基をアセチル基で保護する場合、無水酢酸、酢酸等を用いてアセチル化することも好ましい。
(7)最後に、酸で側鎖の脂溶性保護基を切断することにより、所望のアミノ酸配列を有するペプチドを得ることができる。
糖鎖-ポリペプチド複合体を製造する方法-3(A法)
糖鎖-ポリペプチド複合体は、例えば、以下に概略を示すように、糖鎖が結合したAsnを用いたフラグメント合成法によって製造することができる。
(1)上記の糖鎖-ポリペプチド複合体を製造する方法(A法)の(1)-(6)によって、アセチル基または脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護されたポリペプチドまたは糖鎖-ポリペプチド複合体を樹脂上に合成する。
(2)側鎖保護基が脱保護されない条件で、レジンからポリペプチドまたは糖鎖-ポリペプチド複合体を切断し、C末端に遊離のカルボキシを有し、N末端がアセチル基または脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護されたポリペプチドまたは糖鎖-ポリペプチド複合体を得る。
(3)得られたアセチル基または脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護されたポリペプチドまたは糖鎖-ポリペプチド複合体を、固相合成法または液相合成法により、樹脂またはポリペプチドと連結させる。
(4)上記脂溶性保護基を脱離して遊離アミノ基を形成させる。
(5)上記(3)および(4)の工程を1回以上繰り返すことにより、任意の数の任意のアミノ酸が連結したペプチドが得られる。
(6)最後に、酸でレジンを切断することにより、所望のアミノ酸配列を有するペプチドを得ることができる。
脂溶性保護基としては、例えば9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)基、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)基、ベンジル基、アリル基、アリルオキシカルボニル基、アセチル基等の、カーボネート系またはアミド系の保護基等を挙げることができる。アミノ酸に脂溶性保護基を導入するには、例えばFmoc基を導入する場合には9-フルオレニルメチル-N-スクシニミジルカーボネートと炭酸水素ナトリウムを加えて反応を行うことにより導入できる。反応は0~50℃、好ましくは室温で、約1~5時間程度行うのが良い。
脂溶性保護基で保護したアミノ酸としては、市販のものも使用することができる。例えば、Fmoc-Ser-OH、Fmoc-Asn-OH、Fmoc-Val-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-AIa-OH、Fmoc-Tyr-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Lys-OH、Fmoc-Arg-OH、Fmoc-His-OH、Fmoc-Asp-OH、Fmoc-Glu-OH、Fmoc-Gln-OH、Fmoc-Thr-OH、Fmoc-Cys-OH、Fmoc-Met-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Trp-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-SeMet-OH、Fmoc-3-(Methylseleno)-Ala-OHを挙げることができる。
また、脂溶性保護基で保護したアミノ酸であって、側鎖に保護基を導入したものとして、例えば、Fmoc-Arg(Pbf)-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-Cys(Acm)-OH、Fmoc-Cys(StBu)-OH、Fmoc-Cys(tBu)-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-His(Trt)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Trp(Boc)-OH、Fmoc-Tyr(tBu)-OH、Fmoc-Sec(Trt)-OH、Fmoc-Sec(pMeOBzl)-OH、Fmoc-Sec(pMeBzl)-OH、Fmoc-HomoSec(pMeBzl)-OH、Fmoc-HomoSec(Mob)-OHを挙げることができる。
また、糖鎖-ポリペプチド結合体のアミノ酸配列中に、リンカーを付加させたい場合には、固相合成の過程において、上記の脂溶性保護基で保護したアミノ酸の代わりに、脂溶性保護基で保護したリンカーを使用することで、好ましい位置に、リンカーを挿入することができる。
2-クロロトリチルクロリド樹脂を用いる場合、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、トリエチルアミン、ピリジン、2,4,6-コリジン等の塩基を用いることでエステル化を行うことができる。また、水酸基を有する樹脂を用いる場合、エステル化触媒として、例えば1-メシチレンスルホニル-3-ニトロ-1,2,4-トリアゾール(MSNT)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)等の公知の脱水縮合剤を用いることができる。アミノ酸と脱水縮合剤との使用割合は、前者1等量に対して、後者が、通常1~10等量、好ましくは2~5等量である。
エステル化反応は、例えば、固相カラムにレジンを入れ、このレジンを溶剤で洗浄し、その後アミノ酸の溶液を加えることにより行うのが好ましい。洗浄用溶剤としては、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、2-プロパノール、ジクロロメタン等を挙げることができる。アミノ酸を溶解する溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、DMF、ジクロロメタン等を挙げることができる。エステル化反応は0~50℃、好ましくは室温で、約10分~30時間程度、好ましくは15分~24時間程度行うのが良い。
この時固相上の未反応の基を、無水酢酸等を用いてアセチル化してキャッピングすることも好ましい。
脂溶性保護基の脱離は、例えば塩基で処理することにより行うことができる。塩基としては、例えばピペリジン、モルホリン等を挙げることができる。その際、溶媒の存在下で行うのが好ましい。溶媒としては、例えばDMSO、DMF、メタノール等を挙げることができる。
遊離アミノ基と、脂溶性保護基でアミノ基窒素が保護された任意のアミノ酸のカルボキシ基とのアミド化反応は、活性化剤および溶媒の存在下行うのが好ましい。
活性化剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(WSC/HCl)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、カルボニルジイミダゾール(CDI)、ジエチルシアノホスホネート(DEPC)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリスピロリジノホスホニウム(DIPCI)、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、ヒドロキシフタルイミド(HOPht)、ペンタフルオロフェノール(Pfp-OH)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-5-クロロ-1H-ベンゾトリアゾリウム 3-オキシド ヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスホネート(HATU)、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、3,4-ジヒドロ-3-ヒドロジ-4-オキサ-1,2,3-ベンゾトリアジン(Dhbt)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルフォリニウム クロライド n-ハイドレート(DMT-MM)等を挙げることができる。
活性化剤の使用量は、脂溶性の保護基でアミノ基窒素が保護された任意のアミノ酸に対して、1~20当量、好ましくは1~10当量、さらに好ましくは、1~5当量とするのが好ましい。
溶媒としては、例えばDMSO、DMF、ジクロロメタン等を挙げることができる。反応は0~50℃、好ましくは室温で、約10分~30時間程度、好ましくは15分~24時間程度行うのが良い。脂溶性保護基の脱離は、上記と同様に行うことができる。
アミノ基で官能化されたRink-Amide-レジン(メルク社製)、Rink-Amide-PEGAレジン(メルク社製)、NH-SAL-レジン(渡辺化学社製)や、NH-SAL-レジン-リンカーが結合したAmino-PEGA-レジン(メルク社製)等にC末端のアミノ酸を導入する場合、上記のアミド化反応を用いて導入することができる。
樹脂(レジン)からペプチド鎖を切断するには酸で処理するのが好ましい。酸としては、例えばトリフルオロ酢酸(TFA)、弗化水素(HF)等を挙げることができる。
このようにして、所望の位置に糖鎖付加Asnを有する糖鎖-ポリペプチド複合体を得ることができる。
なお、本発明の一実施態様において、固相合成に用いる糖鎖付加Asnにおける糖鎖上の非還元末端にシアル酸を含む場合には、酸処理によりシアル酸が切断されるのを防ぐために、当該シアル酸のカルボキシ基を、保護基により保護していることが好ましい。保護基としては、例えば、ベンジル基、アリル基、ジフェニルメチル基、フェナシル基等を挙げることができる。保護基の導入および保護基の脱離の方法は、公知の方法により行うことができる。
糖鎖-ポリペプチド複合体を製造する方法(B法)
糖鎖-ポリペプチド複合体は、まずポリペプチドを合成し、後で合成したポリペプチドへ糖鎖を付加する方法によっても製造することができる。具体的には、糖鎖を付加したい位置にCysを含むポリペプチドを、固相合成法、液相合成法、細胞により合成する方法、天然に存在するものを分離抽出する方法等により製造する。ポリペプチドを固相合成法または液相合成法により合成する場合、アミノ酸は一残基ずつ連結させても良く、ポリペプチドを連結させてもよい。ここで、ジスルフィド結合を形成する予定の位置にあるCys等、糖鎖を付加しないCysに対しては、例えばアセトアミドメチル(Acm)基で保護しておく。また、糖鎖を付加せず、かつ、ジスルフィド結合の形成にも使用しないCysを糖鎖-ポリペプチド複合体に導入する場合には、糖鎖付加工程およびジスルフィド結合形成工程の間、Cysを保護基により保護しておき、その後脱保護するようにしてCysを導入することができる。このような保護基としては、例えば、tert-ブチル(tBu)や4-メトキシベンジルを挙げることができる。
また、1つのポリペプチド中のCysに、異なる糖鎖を付加する場合には、最初に糖鎖を導入するCysを無保護とし、次に異なる糖鎖を導入するCysを、StBu等により保護しておくことで、異なる糖鎖を導入することができる。具体的には、固相合成等によりポリペプチドを合成する際、第一の糖鎖を導入したいCysを無保護とし、かつ、第二の糖鎖を導入したいCysをFmoc-Cys(StBu)-OH等を用いて、保護基を有するCysとする。その後、StBu等の保護基を保持したまま、無保護のCysへ糖鎖を導入する。次に、StBu基等を脱保護することで、無保護となったCysへ異なる糖鎖を導入することができる。なお、第一の糖鎖を導入したいCysおよび第二の糖鎖を導入したいCysは、1つ又は複数個とすることができる。
なお、StBu基の脱保護は、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、ジチオトレイトール(DTT)、トリブチルホスフィン等の還元剤を用いて反応させることにより脱保護することができる。上記反応は、通常0~80℃、好ましくは、5~60℃、更に好ましくは10~35℃で行うのが良い。反応時間は、好ましくは、通常30分~5時間程度である。反応終了後は、適宜、公知の方法(例えば、高速液体カラムクロマトグラフィー(HPLC))で精製するのが良い。
異なる糖鎖を導入する際には、Cysの脱保護工程における還元条件やHPLC等の精製工程における酸性条件に対して、より安定な糖鎖から導入することが好ましい。特に、シアル酸含有糖鎖を導入する際には、シアル酸を有さない糖鎖又はシアル酸残基数が少ない糖鎖から、先に導入することが好ましい。
また、糖鎖-ポリペプチド複合体のアミノ酸配列中に、リンカーを付加させたい場合には、例えば固相合成の過程において、脂溶性保護基で保護したアミノ酸の代わりに、脂溶性保護基で保護したリンカーを使用することで、合成したポリペプチドの好ましい位置に、リンカーを挿入することができる。
次に、ハロアセチル化糖鎖誘導体を上記で得た無保護のCysを含むペプチドと反応させることにより、糖鎖を無保護のCysのチオール基と反応させ、ペプチドに結合させる。上記反応は、リン酸緩衝液、トリス‐塩酸緩衝液、クエン酸緩衝液、またはこれらの混合溶液中において、通常0~80℃、好ましくは、10~60℃、更に好ましくは15~35℃で行うのが良い。反応時間は、通常10分~24時間、好ましくは、通常30分~5時間程度である。反応終了後は、適宜、公知の方法(例えば、HPLC)で精製するのが良い。
ハロアセチル化糖鎖誘導体は、例えば、アスパラギン結合型糖鎖の1位の炭素に結合している水酸基を、-NH-(CH-(CO)-CHX(Xはハロゲン原子、aは整数であり、目的とするリンカー機能を阻害しない限り限定されるものではないが、好ましくは0~4の整数を示す。)で置換した化合物である。
具体的には、ハロアセチル化複合型糖鎖誘導体とCys含有ポリペプチドとをリン酸緩衝液中、室温で反応させる。反応終了後、HPLCで精製することにより糖鎖が結合したCysを有する糖鎖-ポリペプチド複合体を得ることができる。
また、DMSO、DMF、メタノール、アセトニトリルといった有機溶媒と、上記の緩衝液との混合溶液中で反応を行うこともできる。このとき、有機溶媒の比率は、0~99%(v/v)の範囲で、上記緩衝液に添加することができる。緩衝液への溶解性が低い無保護のCysを含むペプチドは、このような有機溶媒を添加することにより反応溶液への溶解性を向上させることができ、好ましい。
または、DMSO、DMF、メタノール、アセトニトリルといった有機溶媒や、それらの混合溶液中で反応を行うこともできる。その際、塩基の存在下で行うのが好ましい。塩基としては、例えばDIPEA、トリエチルアミン、ピリジン、2,4,6-コリジン等を挙げることができる。また、グアニジン塩酸塩や尿素を緩衝溶液に加えた混合溶液中においても反応を行うことができる。なお、グアニジン塩酸塩や尿素は、最終濃度が1M~8Mとなるように上記緩衝液に加えることができる。グアニジン塩酸塩や尿素の添加によっても、緩衝液への溶解性の低いペプチドの溶解性を向上させることができ、好ましい。
さらに、無保護のCysを含むポリペプチドが、ジスルフィド結合を介した2量体を形成することを防止するために、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)やジチオトレイトール(DTT)を緩衝液に添加して反応させることもできる。TCEPやDTTは、最終濃度が10μM~10mMとなるように緩衝液に加えることができる。
また、糖鎖を目的のCysへ結合させた後、Acm等で保護されたCysの保護基を脱保護する。保護基がAcm基である場合は、水、メタノール、酢酸、またはこれらの混合溶液中において、ヨウ素、酢酸水銀(II)、硝酸銀(I)、または、酢酸銀(I)等を用いて反応させることにより脱保護することができる。
上記反応は、通常0~80℃、好ましくは、5~60℃、更に好ましくは10~35℃で行うのが良い。反応時間は、好ましくは、通常5分~24時間程度である。反応終了後は、DTTや塩酸等により処理した後、適宜、公知の方法(例えば、HPLC)で精製するのが良い。
このようにして、所望の位置に糖鎖が結合したCysを有する糖鎖-ポリペプチド複合体を得ることができる。また、このように精製された糖鎖-ポリペプチド複合体は、後述するように、脱保護されたCys同士でのジスルフィド結合を形成させることができる。
また、ジシアロ糖鎖やモノシアロ糖鎖等のシアル酸含有糖鎖をペプチド配列中に複数本有する糖鎖-ポリペプチド複合体を製造する際には、導入する糖鎖上のシアル酸のカルボキシ基が、ベンジル(Bn)基、アリル基、ジフェニルメチル基、フェナシル基等により保護されたシアル酸含有糖鎖を用いることができる。
シアル酸のカルボキシ基が保護された糖鎖を導入した際には、後述する糖鎖-ポリペプチド複合体におけるジスルフィド結合の形成工程の後、シアル酸保護基の脱保護の工程をすることができる。
このように、シアル酸のカルボキシ基をベンジル基等で保護することにより、製造工程におけるHPLC等による分離・精製工程が容易となる。また、シアル酸のカルボキシ基の保護は、酸に不安定なシアル酸の脱離を防ぐことも可能である。
糖鎖上のシアル酸のカルボキシ基の保護反応は、当業者に周知の方法により行うことができる。また、ジスルフィド結合を形成させた糖鎖-ポリペプチド複合体において、シアル酸のカルボキシ基の保護基は、塩基性条件下で加水分解することによって脱保護できる。上記反応は、通常0~50℃、好ましくは、0~40℃、更に好ましくは0~30℃で行うのが良い。反応時間は、好ましくは、通常5分~5時間程度である。反応終了後は、リン酸や酢酸などの弱酸によって中和した後、適宜、公知の方法(例えば、HPLC)で精製するのが良い。
また、上記A法およびB法により作製された糖鎖-ポリペプチド複合体は、空気および/または酸素、ヨウ素、DMSO、酸化および還元されたグルタチオンの混合物、フェリシアン酸カリウム、エルマン試薬(5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸))、トリフルオロ酢酸タリウム(III)、ならびに、アルキルトリクロロシランスルホキシドなどを用いた当業者に周知の方法で、Cys同士のジスルフィド結合を形成することができる。
なお、Cys-Cys間でのジスルフィド結合を形成させる際に、ジスルフィド結合することが望ましくない糖鎖-ポリペプチド複合体中のCysに対しては、保護基により保護しておく。このような保護基としては、Acm、tBu、4-メトキシベンジル、4-メチルベンジル等、酸化条件で安定な保護基を用いることができる。
また、B法において、ジスルフィド結合の形成は、糖鎖の導入の前に行うことも可能である。ただし、ジスルフィド結合させたいCysに保護基が導入されている場合には、脱保護の工程がジスルフィド結合形成の工程よりも先となる。
また、B法においてハロアセチル化複合型糖鎖誘導体と反応させるアミノ酸は、チオール基を含有するアミノ酸であれば特に限定されず、例えば、D体のシステイン(D-Cys)、ホモシステイン、ノルシステイン、ペニシラミンなどもCysと同様に用いることが可能である。
本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体に結合する糖鎖の種類は特に限定されないが、糖鎖-ポリペプチド複合体に結合している糖鎖に存在する糖残基の数の合計が5以上であることが好ましい。例えば、5糖以上の糖鎖を1本以上付加してもよく、5糖以下の糖鎖を複数本付加することにより、1つの糖鎖-ポリペプチド複合体に付加された糖鎖に存在する糖残基の数が5以上になるようにしてもよい。糖鎖を複数本付加する場合には、1つのペプチドに結合される糖鎖の種類は同一であってもよく、異なる種類の糖鎖を組み合わせて結合してもよいが、同一であることが好ましい。
例えば、糖鎖-ポリペプチド複合体に結合している糖鎖に存在する糖残基の数の合計が5の場合、2つの糖残基を有するマルトース糖鎖と、3つの糖残基を有するマルトトリオース糖鎖がそれぞれ1本ずつ結合していてもよい。また、糖鎖-ポリペプチド複合体に結合している糖鎖に存在する糖残基の数の合計が6の場合、マルトース糖鎖が3本結合されていてもよく、マルトトリオース糖鎖が2本結合されていてもよい。また、糖鎖-ポリペプチド複合体に結合している糖鎖に存在する糖残基の数の合計が7の場合、マルトース糖鎖が2本およびマルトトリオース糖鎖が1本結合していてもよく、7つの糖残基を有するジグルクナック糖鎖が1本結合していてもよい。同様に、糖鎖-ポリペプチド複合体に結合している糖鎖に存在する糖残基の数の合計が8以上の場合においても、様々な組み合わせの糖鎖が結合していてもよい。
本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体に結合する糖鎖の数は、糖鎖-ポリペプチド複合体が、pHが中性付近の水溶液中において自己集合することにより、βシート構造を形成しうるという特徴を失わない限り限定されない。例えば、1、2、3、4、5、または、6本であってよく、好ましくは、1、2、または、3本であってよい。
本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体において、糖鎖が結合するアミノ酸残基の位置は、糖鎖-ポリペプチド複合体が、pHが中性付近の水溶液中において自己集合することにより、βシート構造を形成しうるという特徴を失わない限り限定されない。例えば、糖鎖が結合するアミノ酸残基の位置はポリペプチドのN末端側および/またはC末端側であってよく、N末端側およびC末端側以外の位置であってもよい。
例えば、本発明の糖鎖-ポリペプチド複合体に結合している糖鎖の数が1本の場合には、糖鎖が結合するアミノ酸残基(B)は、極性アミノ酸残基と非極性アミノ酸残基が交互に配置されたアミノ酸配列を含むペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基、または、C末端に位置するアミノ酸残基と結合していてよい。
また、例えば、本発明の糖鎖-ポリペプチド複合に結合している糖鎖の数が2本の場合には、糖鎖が結合するアミノ酸残基(B)が、次の(1)~(3)のいずれかの位置に存在してよい。
(1)前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基に2残基の(B)が結合する
(2)前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基に1残基の(B)が結合し、前記ペプチド部分(A)のC末端に位置するアミノ酸残基に1残基の(B)が結合する
(3)前記ペプチド部分(A)のC末端に位置するアミノ酸残基に2残基の(B)が結合する
また、例えば、本発明の糖鎖-ポリペプチド複合に結合している糖鎖の数が3本の場合には、糖鎖が結合しているアミノ酸残基(B)が、次の(1)~(4)のいずれかの位置に存在してよい。
(1)前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基に3残基の(B)が結合する
(2)前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基に2残基の(B)が結合し、前記ペプチド部分(A)のC末端に位置するアミノ酸残基に1残基の(B)が結合する
(3)前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基に1残基の(B)が結合し、前記ペプチド部分(A)のC末端に位置するアミノ酸残基に2残基の(B)が結合する
(4)前記ペプチド部分(A)のC末端に位置するアミノ酸残基に3残基の(B)が結合する
本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体に付加される糖鎖は、分岐を有する糖鎖であってよい。ここで、本発明において、ポリペプチドに結合された糖鎖が「分岐を有する糖鎖」であるとは、例えば、ジシアロ糖鎖、アシアロ糖鎖、ジグルクナック糖鎖のように、1つの糖鎖の中で分岐を有している場合に限定されず、例えば、1つのポリペプチドに複数本の直鎖状の糖鎖が付加されることにより、ペプチド全体として糖鎖が分岐を有している状態にある場合も含まれる。例えば、1つのペプチドにマルトース糖鎖やマルトトリオース糖鎖等の直鎖状の糖鎖が2本以上結合している場合も、本発明において「分岐を有する糖鎖」に含まれることとする。
本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体に含まれるセレン含有アミノ酸の数は、糖鎖-ポリペプチド複合体が、pHが中性付近の水溶液中において自己集合することにより、βシート構造を形成しうるという特徴を失わない限り限定されない。例えば、1、2、3、4、5、または、6残基であってよく、好ましくは、1、2、または、3残基であってよい。
本発明に係る糖鎖-ポリペプチド複合体において、セレン含有アミノ酸の位置は、糖鎖-ポリペプチド複合体が、pHが中性付近の水溶液中において自己集合することにより、βシート構造を形成しうるという特徴を失わない限り限定されない。例えば、セレン含有アミノ酸残基の位置はポリペプチドのN末端側および/またはC末端側であってよく、N末端側およびC末端側以外の位置であってもよい。
例えば、本発明の糖鎖-ポリペプチド複合体に含まれるセレン含有アミノ酸が1残基の場合には、セレン含有アミノ酸残基は、ポリペプチドのN末端またはC末端の位置であってよい。
また、ポリペプチドに含まれるセレン含有アミノ酸の数が2残基の場合には、当該2残基のアミノ酸は、次の(1)~(3)からなる群から選択される位置であってもよい。
(1)ポリペプチドのN末端に位置するアミノ酸残基から数えて1番目および2番目
(2)ポリペプチドのC末端に位置するアミノ酸残基から数えて1番目および2番目
(3)ポリペプチドのN末端、および、前記ポリペプチドのC末端
本発明において、ヒドロゲルとは、分散媒が実質的に水であるゲルを意味する。本発明に係るペプチドを水に分散させると、ヒドロゲルを形成するが、ペプチドと水との混合割合は特に限定されず、ヒドロゲルの用途に応じて当業者が適宜混合割合を調節することができる。
本発明において、ヒドロゲルの強度や性質についての評価方法は特に限定されないが、例えば、スチール球載荷試験や動粘液度測定によって評価することができる。スチール球載荷試験では、例えば、ダーラム管内で形成させたヒドロゲルの表面に所定の重量のスチール球を載荷し、スチール球がヒドロゲルの表面に留まるか、沈むかを観察することによって、ヒドロゲルの強度を評価することができる。また、スチール球載荷試験では、ヒドロゲル中の透明度や、不溶物・沈殿の有無を目視で確認することができる。ヒドロゲルの動粘液度測定では、対象となるヒドロゲルについて、検流計を用いて動粘度を測定することにより、時間の経過にともなうヒドロゲルの強度の変化を測定することができる。
本発明の糖鎖-ポリペプチド複合体は、医薬組成物として調製されてよい。本発明に係る医薬組成物は、必要に応じて他の薬効成分、栄養剤、担体等の他の任意成分を加えることができる。任意成分として、例えば結晶性セルロース、ゼラチン、乳糖、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物性及び動物性脂肪、油脂、ガム、ポリアルキレングリコール等の、薬学的に許容される担体、結合剤、安定化剤、溶剤、分散媒、増量剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。
本発明の糖鎖-ポリペプチド複合体を含む医薬組成物は、様々な医薬用途に用い得るが、特に、角結膜疾患の治療用または予防用に好適に用いることができる。治療または予防の対象となる角結膜疾患の種類は限定されないが、例えばドライアイ、乾性角結膜炎、点状表層角膜症、角膜びらん、または、角膜潰瘍であってよい。本発明の糖鎖-ポリペプチド複合体を含む医薬組成物を角結膜疾患の治療用または予防用に用いるための剤型としては、点眼剤または軟膏剤が好ましい。
本発明の医薬組成物の対象への投与頻度や投与期間は、対象の症状や状態等を考慮して、当業者(例えば、医師)が適宜決定することができる。
本発明の医薬組成物に含まれる糖鎖-ポリペプチドの濃度は、治療する疾患や薬剤の剤型によって当業者が適宜調整することができるが、例えば、0.01重量%~20重量%、0.05重量%~15重量%、0.1重量%~10重量%、0.2重量%~7.5重量%、0.3重量%~5.0重量%、0.4重量%~3.0重量%、0.5重量%~2.0重量%、0.5重量~1.5重量%の範囲の濃度としてよい。
なお、本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
また、本明細書において用いられる「含む」との用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記述された事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素、数字など)が存在することを排除しない。
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書及び関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、又は、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
第一の、第二のなどの用語が種々の要素を表現するために用いられる場合があるが、これらの要素はそれらの用語によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は一つの要素を他の要素と区別するためのみに用いられているのであり、例えば、第一の要素を第二の要素と記し、同様に、第二の要素は第一の要素と記すことは、本発明の範囲を逸脱することなく可能である。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、しかしながら、本発明はいろいろな形態により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。
本発明の糖鎖-ポリペプチド複合体の角結膜疾患に対する治療効果を確認するため、以下の実験を行った。
本実施例において比較対象として使用した糖鎖-ポリペプチド複合体(化合物1)の構造を以下に示す(配列番号4)。
Figure 0007142286000012
本実施例において用いたセレノメチオニン含有糖鎖-ポリペプチド複合体(化合物2)の構造を以下に示す(配列番号5)。化合物1のポリペプチド部分のN末端側のCysを介してセレン含有アミノ酸であるセレノメチオニン(SeMet)が結合されている。
Figure 0007142286000013
なお、上記のいずれの化合物も、WO2014/162906に記載の方法に基づいて製造された。
化合物2のESI-MS:(m/z)calcd for C1262123663SSe:[M+2H]2+ 1676.2、[M+3H]3+ 1117.8、[M+4H]4+ 838.6 found 1676.2、1117.8、838.6。
実施例1:角膜障害モデルラットを用いた本発明の角膜障害抑制の検討1
以下の材料および条件に基づき、角膜障害モデルラットを用いた本発明の角膜障害抑制の検討を実施した。
<角膜障害モデル(ドライアイモデル)の作成>
7週齢雄性SDラット(クレア社、購入時6週齢)に喫煙処理を施し、ドライアイモデルを作製した。すなわち、チャンバーに入れたラットを、タバコ主流煙(TS)に1日あたり3時間曝露させ、これを5日間連続して行うことにより角膜障害を惹起した。
<点眼実験>
以下の群構成(1)~(5)に対して点眼実験を行った。なお、化合物はPBS溶液として点眼投与し、vehicle投与群においては蒸留水(DW)を使用した。また、正常ラットには点眼を行わなかった。
(群構成)
(1)正常ラット(TS非曝露)、4匹
(2)TS曝露ラット+DW点眼、4匹
(3)TS曝露ラット+0.5%化合物2(PBS溶液)点眼、4匹
(4)TS曝露ラット+1%化合物2(PBS溶液)点眼、4匹
(5)TS曝露ラット+2%化合物2(PBS溶液)点眼、4匹
投与は、DWまたは化合物2のPBS溶液を、片眼に1回5μLずつ両眼に点眼した。また点眼投与は、TS曝露前に1回、TS曝露後に3回の合計1日4回、5日間連日行った。
<角膜障害のスコア化>
5日間の点眼終了後、角膜上皮の障害部を蛍光色素フルオレセインにて染色した。
角膜上皮の障害の程度は、角膜全体を上中下及び左中右の合わせて9つの部分に分割して、各部分ごとに下記の基準で障害をスコア化し、その合計値を求めた。
(角膜上皮のフルオレセイン染色スコア判断基準)
0:染色されない(点状蛍光なし)
1:わずかに点状蛍光がみられる
2:比較的多く点状蛍光がみられる
3:密に点状蛍光がみられる
実験結果を図1に示す。図中、縦軸は蛍光スコア値の平均値を示す。カラムは左側から前記群構成の(1)~(5)を示す。図中のアスタリスク2個を付したシンボル(**)はダネットの検定法において有意水準1%以下であることを表す。図1に示すとおり、本発明のセレノメチオニン含有糖鎖-ポリペプチド複合体(化合物2)を点眼した群(第3-5群)においては、vehicle点眼群(第2群)と比較して、有意に角膜障害が抑制されていた。なお、いずれの実験群においても有意な角膜障害抑制効果が見られたが、特に1%濃度のペプチド溶液を用いた実験群(第4群)において最も良好な効果が見られた。
実施例2:角膜障害モデルラットを用いた本発明のペプチドの角膜障害抑制の検討2
実施例1と同様の方法を用いて、以下の材料および条件に基づき、角膜障害モデルラットを用いた本発明の角膜障害抑制の検討を実施した。
<実験動物>
7週齢雄性SDラット(クレア社、購入時6週齢)
<角膜障害モデル(ドライアイモデル)の作成>
実験動物に対して、タバコ主流煙(TS)全身曝露、3時間/日、5日間
<点眼実験>
以下の群構成(1)~(4)に対して点眼実験を行った。なお、化合物はPBS溶液として点眼投与し、vehicle投与群においてはPBSを使用した。また、正常ラットには点眼を行わなかった。
(群構成)
(1)正常ラット(非曝露)、8匹
(2)TS曝露ラット+PBS点眼、8匹
(3)TS曝露ラット+1%化合物2(PBS溶液)点眼、8匹
(4)TS曝露ラット+1%化合物1(PBS溶液)点眼、8匹
<点眼方法>
5μL/片眼/回(両眼に点眼)、曝露前1回、曝露後3回(計4回/日)、5日間
各実験群における処置後の角膜障害の程度を、フルオレセイン(Fluorescein)染色スコアによって評価した。実験結果を図2に示す。図中、縦軸は蛍光スコア値の平均値を示す。カラムは左側から前記群構成の(1)~(4)を示す。図中のシャープ3個を付したシンボル(###)は、第1群に対してダネットの検定法において有意水準0.1%以下であることを表す。図中のアスタリスク3個を付したシンボル(***)は、第2群に対してダネットの検定法において有意水準0.1%以下であることを表す。
図2に示すとおり、本発明のセレノメチオニン含有糖鎖-ポリペプチド複合体(化合物2)を点眼した群(第3群)においては、比較対照であるセレノメチオニン含有糖鎖-ポリペプチド複合体(化合物1)を点眼した群(第4群)と比較して、さらに角膜障害が抑制されていた。
以上の結果から、本発明の糖鎖-ポリペプチド複合体は、ポリペプチド部分にセレン含有アミノ酸を含むことによって、向上された角膜障害抑制効果を奏することが明らかとなった。すなわち、本発明によって、軽度~重度のドライアイ、角結膜炎、角膜びらん、角膜潰瘍などの角膜障害を治療し得る。
(実施例3)スチール球載荷試験によるヒドロゲル特性の評価
WO2014/162906に記載の方法に基づき、0.5重量%および1重量%の濃度で化合物1および化合物2をPBSに溶解し、スチール球載荷試験を実施した。ダーラム管内のスチール球の位置は3段階で評価し、スチール球がヒドロゲル表面付近に留まった状態を○、載荷後に沈降し内部で留まった状態を△、またダーラム管の下部まで沈降した状態を×とした。また、ヒドロゲルが均一ではなく白濁や不溶物(沈殿物)が観察された場合に※を付記した。スチール球が表面付近に留まり(○)、白濁や不溶物が見られない(※がない)ヒドロゲルは、透明性があり、かつ均一なゲルと考えられた。得られた評価結果を表1に示す。
Figure 0007142286000014
表1に示すとおり、化合物1および化合物2は、PBS中において、均一なヒドロゲルを形成した。以上の結果から、実施例1および2で用いた糖鎖-ポリペプチド複合体のPBS溶液は、ヒドロゲルであることが明らかとなった。

Claims (20)

  1. 糖鎖-ポリペプチド複合体であって、
    前記ポリペプチドは、
    (A)極性アミノ酸残基と非極性アミノ酸残基が交互に配置されたアミノ酸配列を含むペプチド部分、ここで、前記ペプチド部分は、pHが6.0~8.0の範囲内の水溶液中において自己集合することにより、βシート構造を含むヒドロゲルを形成しうる8~34個のアミノ酸残基を含むペプチド部分である
    (B)糖鎖が結合される、1または複数のアミノ酸残基;および
    (C)1または複数の、セレンを含有するアミノ酸残基;
    を含み、
    ここで、前記(B)のアミノ酸残基に糖鎖が結合している
    糖鎖-ポリペプチド複合体。
  2. 請求項1に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体であって、
    前記セレンを含有するアミノ酸残基が、セレノメチオニン残基、セレノシステイン残基、Se-メチルセレノシステイン残基、または、セレノホモシステイン残基であることを特徴とする、
    糖鎖-ポリペプチド複合体。
  3. 請求項1に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体であって、
    前記セレンを含有するアミノ酸残基は、前記ポリペプチドのN末端またはC末端に配置されることを特徴とする、
    糖鎖-ポリペプチド複合体。
  4. 請求項1に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体であって、
    前記(B)の糖鎖が結合されるアミノ酸残基が、システイン残基またはアスパラギン残基であることを特徴とする、
    糖鎖-ポリペプチド複合体。
  5. 請求項1に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体であって、
    前記各極性アミノ酸残基が、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、アルギニン残基、リジン残基、ヒスチジン残基、チロシン残基、セリン残基、トレオニン残基、アスパラギン残基、グルタミン残基、および、システイン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であることを特徴とする、
    糖鎖-ポリペプチド複合体。
  6. 請求項1に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体であって、
    前記各非極性アミノ酸残基が、アラニン残基、バリン残基、ロイシン残基、イソロイシン残基、メチオニン残基、フェニルアラニン残基、トリプトファン残基、プロリン残基、および、グリシン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であることを特徴とする、
    糖鎖-ポリペプチド複合体。
  7. 請求項に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体であって、
    前記各極性アミノ酸残基が、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基、アルギニン残基、および、トレオニン残基からなる群から選択されるアミノ酸残基であり、
    前記各非極性アミノ酸が、アラニン残基であることを特徴とする、
    糖鎖-ポリペプチド複合体。
  8. 請求項1に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体であって、
    前記(A)のペプチド部分のアミノ酸配列が、「RADA」の繰り返し配列、または、「RATARAEA」の繰り返し配列であることを特徴とする、
    糖鎖-ポリペプチド複合体。
  9. 請求項に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体であって、
    前記(A)のペプチド部分のアミノ酸配列が、RADARADARADARADA(配列番号1)、RADARADARADARADARADA(配列番号2)、および、RATARAEARATARAEA(配列番号3)からなる群から選択されるアミノ酸配列であることを特徴とする、
    糖鎖-ポリペプチド複合体。
  10. 請求項1に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体であって、
    前記ポリペプチドに結合している1または複数の糖鎖に存在する糖残基の数の合計が5以上であることを特徴とする、
    糖鎖-ポリペプチド複合体。
  11. 請求項10に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体であって、
    前記ポリペプチドに結合している糖鎖の数が、1、2、または、3本であることを特徴とする、
    糖鎖-ポリペプチド複合体。
  12. 請求項11に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体であって、
    前記糖鎖が結合するアミノ酸残基(B)は、前記ペプチド部分(A)のN末端またはC末端に、直接的または間接的に結合していることを特徴とする、
    糖鎖-ポリペプチド複合体。
  13. 請求項12に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体であって、
    前記ポリペプチドに結合している糖鎖の数が1本の場合には、糖鎖が結合するアミノ酸残基(B)は、前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基、または、C末端に位置するアミノ酸残基と結合しており;
    前記ポリペプチドに結合している糖鎖の数が2本の場合には、糖鎖が結合するアミノ酸残基(B)が、次の(1)~(3)のいずれかの位置に存在する、
    (1)前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基に2残基の(B)が結合する
    (2)前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基に1残基の(B)が結合し、前記ペプチド部分(A)のC末端に位置するアミノ酸残基に1残基の(B)が結合する
    (3)前記ペプチド部分(A)のC末端に位置するアミノ酸残基に2残基の(B)が結合する;または、
    前記ポリペプチドに結合している糖鎖の数が3本の場合には、糖鎖が結合しているアミノ酸残基(B)が、次の(1)~(4)のいずれかの位置に存在する、
    (1)前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基に3残基の(B)が結合する
    (2)前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基に2残基の(B)が結合し、前記ペプチド部分(A)のC末端に位置するアミノ酸残基に1残基の(B)が結合する
    (3)前記ペプチド部分(A)のN末端に位置するアミノ酸残基に1残基の(B)が結合し、前記ペプチド部分(A)のC末端に位置するアミノ酸残基に2残基の(B)が結合する
    (4)前記ペプチド部分(A)のC末端に位置するアミノ酸残基に3残基の(B)が結合する;
    ことを特徴とする、
    糖鎖-ポリペプチド複合体。
  14. 請求項1に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体であって、
    前記糖鎖が、分岐を有する糖鎖であることを特徴とする、
    糖鎖-ポリペプチド複合体。
  15. 請求項10に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体であって、
    前記糖鎖が、ジシアロ糖鎖、アシアロ糖鎖、ジグルクナック糖鎖、ジマンノース糖鎖、グルクナック糖鎖、マルトトリオース糖鎖、マルトース糖鎖、マルトテトラオース糖鎖、マルトヘプタオース糖鎖、β-シクロデキストリン、および、γ-シクロデキストリンからなる群から選択される糖鎖であることを特徴とする、
    糖鎖-ポリペプチド複合体。
  16. 請求項1~15のいずれか1項に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体を含む、
    医薬組成物。
  17. 請求項16に記載の医薬組成物であって、
    点眼剤または軟膏剤であることを特徴とする、
    医薬組成物。
  18. 請求項16または17に記載の医薬組成物であって、
    角結膜疾患の治療用または予防用である、または、角結膜疾患の治療または予防のために使用される、
    医薬組成物。
  19. 請求項18に記載の医薬組成物であって、
    前記角結膜疾患が、ドライアイ、乾性角結膜炎、点状表層角膜症、角膜びらん、または、角膜潰瘍であることを特徴とする、
    医薬組成物。
  20. 角結膜疾患の治療剤または予防剤の製造のための、請求項1に記載の糖鎖-ポリペプチド複合体の使用。
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Biochemistry, 2003, 42(32), pp.9703-9711
Database UniProtKB/Swiss-Prot [online], Accession No. P49908.3, 22-Jun-2018 updated,[retrieved on 2022-03-09]HILL, K. E. et al.,Definition: RecName: Full=Selenoprotein P; Short=SeP; Flags: Precursor,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/172046864?sat=46&satkey=160158407

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