[本開示の基礎となる知見]
本開示に関わる発明者ら、つまり、本発明者らは、「背景技術」で挙げた特許文献1及び2に記載される技術を検討し、ユーザの歩行を支援つまりアシストする技術を検討した。本発明者らは、アシスト装置の装着者であるユーザの状態が常に同じでないことに着目した。例えば、荷物等の物品を持っているユーザへのアシスト方法は、物品を持っていないユーザへのアシスト方法と異ならせる必要がある。
まず、本発明者らは、ワイヤを介して、モータによる力をユーザに与えることで、歩行を支援するアシスト装置を検討した。本発明者らは、ユーザの脚に対する様々なアシストを可能にするために、アシスト装置を、ユーザの左脚の股関節の前、ユーザの左脚の股関節の後、ユーザの右脚の股関節の前、ユーザの右脚の股関節の後のそれぞれにワイヤを備える構成とした。さらに、本発明者らは、これらのワイヤが、ユーザに装着される上半身ベルト及び左膝ベルトまたは右膝ベルトに接続される構成とし、これにより、これらのワイヤがユーザに装着される構成とした。このように、本発明者らは、簡易な構成のアシスト装置を考案した。
例えば、特許文献1は、大腿の側部に取り付けられた棒状の大腿リンクと、下腿の側部に取り付けられた棒状の下腿リンクを含むアシスト装具を開示する。大腿リンク及び下腿リンクに接続された膝アシストモータは、大腿リンク及び下腿リンクがなす角度を変更するように駆動され、これにより、アシスト装具はユーザの膝の屈伸動作をアシストする。ユーザの右脚の側部及びユーザの左脚の側部のそれぞれに、大腿リンク、下腿リンク及び膝アシストモータが取り付けられるため、特許文献1のアシスト装具は、ユーザにとって大がかりな構造である。よって、アシスト装具がユーザへ与える負担が大きくなる。
特許文献2では、ユーザの大腿の前部に配置されたケーブルを通じて、ユーザの腰から大腿及び下腿にわたって装着された軟性外骨格スーツの接続要素に張力が付与され、それにより、ユーザの膝の屈伸動作がアシストされる。特許文献2の軟性外骨格スーツにおいて、ユーザに取り付けられる接続要素等は、ユーザにとって大がかりな構成である。よって、軟性外骨格スーツがユーザへ与える負担が大きくなる。
また、特許文献1及び2は、ユーザの状態に応じたアシスト方法の詳細を開示していない。そこで、本発明者らは、上述のような簡易な構成のアシスト装置を用いて、ユーザの状態に対応したアシストを付与する技術を以下のように考案した。
本開示の第一の態様に係るアシスト装置は、ユーザの上半身に装着される上半身ベルトと、前記ユーザの左膝に装着される左膝ベルトと、前記ユーザの右膝に装着される右膝ベルトと、前記ユーザの前部において、前記上半身ベルト及び前記左膝ベルトを接続する第1のワイヤと、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルト及び前記左膝ベルトを接続する第2のワイヤと、前記ユーザの前部において、前記上半身ベルト及び前記右膝ベルトを接続する第3のワイヤと、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルト及び前記右膝ベルトを接続する第4のワイヤと、少なくとも1つのモータと、前記ユーザの左手に装着される左センサと、前記ユーザの右手に装着される右センサと、制御回路とを備え、物品を把持する前記ユーザの歩行をアシストする場合、前記少なくとも1つのモータは、前記ユーザの左脚の歩行フェーズの35%以上90%以下の第1の区間において、前記第1のワイヤに、第1の閾値以上の張力を発生させ、前記左脚の歩行フェーズの0%以上25%以下及び65%以上100%未満の第2の区間において、前記第2のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記ユーザの右脚の歩行フェーズの35%以上90%以下の第3の区間において、前記第3のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記右脚の歩行フェーズの0%以上25%以下及び65%以上100%未満の第4の区間において、前記第4のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記制御回路は、前記左センサから左センサ値を取得し、前記右センサから右センサ値を取得し、前記左センサ値が第2の閾値以上であり、且つ前記右センサ値が第2の閾値より小さい第1の条件、又は、前記右センサ値が前記第2の閾値以上であり、且つ前記左センサ値が第2の閾値より小さい第2の条件を検出し、前記少なくとも1つのモータは、前記第1の条件の場合、前記第2の区間における前記第2のワイヤの張力及び前記第3の区間における前記第3のワイヤの張力を、前記第1の区間における前記第1のワイヤの張力及び前記第4の区間における前記第4のワイヤの張力よりも大きくし、前記第2の条件の場合、前記第1の区間における前記第1のワイヤの張力及び前記第4の区間における前記第4のワイヤの張力を、前記第2の区間における前記第2のワイヤの張力及び前記第3の区間における前記第3のワイヤの張力よりも大きくする。
上記態様によると、第1のワイヤに発生する張力は、ユーザの左脚に、屈曲させるアシスト力を与えることができ、第3のワイヤに発生する張力は、ユーザの右脚に、屈曲させるアシスト力を与えることができる。第2のワイヤに発生する張力は、ユーザの左脚に、伸展させるアシスト力を与えることができ、第4のワイヤに発生する張力は、ユーザの右脚に、伸展させるアシスト力を与えることができる。アシスト装置は、左脚の歩行フェーズの第1の区間で第1のワイヤに第1の閾値以上の張力を発生させることで、左脚の屈曲動作をアシストし、右脚の歩行フェーズの第3の区間で第3のワイヤに第1の閾値以上の張力を発生させることで、右脚の屈曲動作をアシストし、これにより、ユーザの歩行をアシストする。また、アシスト装置は、左脚の歩行フェーズの第2の区間で第2のワイヤに第1の閾値以上の張力を発生させることで、左脚の伸展動作をアシストし、右脚の歩行フェーズの第4の区間で第4のワイヤに第1の閾値以上の張力を発生させることで、右脚の伸展動作をアシストし、これにより、ユーザの歩行をアシストする。なお、第1の閾値は、ユーザが、ワイヤに発生した張力により、脚の動作が促されていると認知できるような張力であってもよく、例えば、40N(ニュートン)であってもよい。
さらに、第1の条件では、左センサには力が加わっているが、右センサには力がかかっていないため、ユーザは、物品を左手のみで把持し、左脚にかかる負荷が、右脚よりも大きい可能性がある。この場合、アシスト装置は、ワイヤの張力を差異付けることによって、左脚の伸展のアシスト力及び右脚の屈曲のアシスト力を、左脚の屈曲のアシスト力及び右脚の伸展のアシスト力よりも大きくする。また、第2の条件では、右センサには力が加わっているが、左センサには力がかかっていないため、ユーザは、物品を右手のみで把持し、右脚にかかる負荷が、左脚よりも大きい可能性がある。この場合、アシスト装置は、ワイヤの張力を差異付けることによって、左脚の屈曲のアシスト力及び右脚の伸展のアシスト力を、左脚の伸展のアシスト力及び右脚の屈曲のアシスト力よりも大きくする。いずれの条件の場合でも、負荷がより大きい脚の伸展のアシスト力が、負荷がより小さい脚の伸展のアシスト力よりも大きい。ここで、伸展のアシスト力は、重力方向下方の負荷を受ける脚を補助し、当該脚の負担を軽減する。よって、アシスト装置は、左脚及び右脚の負担を均等にしつつ軽減するバランスのとれたアシストを行うことができる。このとき、ユーザは、左脚及び右脚の負荷が均等であるように体感しつつ、左脚及び右脚をバランスよく動作させて歩行することができる。また、いずれの条件の場合でも、負荷がより小さい脚の屈曲のアシスト力が、負荷がより大きい脚の屈曲のアシスト力よりも大きい。これにより、アシスト装置は、ユーザが負荷がより小さい脚の歩行を進めやすくするようにアシストし、ユーザの歩行の進行を誘導することができる。また、アシスト装置は、左脚及び右脚それぞれへのアシスト力を大きくするため、左脚及び右脚の間でバランスのとれたアシストを行うことができる。従って、アシスト装置は、ユーザの状態に対応したアシストをユーザに付与することができる。
本開示の第二の態様に係るアシスト装置は、ユーザの上半身に装着される上半身ベルトと、前記ユーザの左膝に装着される左膝ベルトと、前記ユーザの右膝に装着される右膝ベルトと、前記ユーザの前部において、前記上半身ベルト及び前記左膝ベルトを接続する第1のワイヤと、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルト及び前記左膝ベルトを接続する第2のワイヤと、前記ユーザの前部において、前記上半身ベルト及び前記右膝ベルトを接続する第3のワイヤと、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルト及び前記右膝ベルトを接続する第4のワイヤと、少なくとも1つのモータと、制御回路とを備え、物品を把持する前記ユーザの歩行をアシストする場合、前記少なくとも1つのモータは、前記ユーザの左脚の歩行フェーズの35%以上90%以下の第1の区間において、前記第1のワイヤに、第1の閾値以上の張力を発生させ、前記左脚の歩行フェーズの0%以上25%以下及び65%以上100%未満の第2の区間において、前記第2のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記ユーザの右脚の歩行フェーズの35%以上90%以下の第3の区間において、前記第3のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記右脚の歩行フェーズの0%以上25%以下及び65%以上100%未満の第4の区間において、前記第4のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記制御回路は、物品を把持する手を指定する情報を取得し、前記少なくとも1つのモータは、前記情報が左手を示す場合、前記第2の区間における前記第2のワイヤの張力及び前記第3の区間における前記第3のワイヤの張力を、前記第1の区間における前記第1のワイヤの張力及び前記第4の区間における前記第4のワイヤの張力よりも大きくし、前記情報が右手を示す場合、前記第1の区間における前記第1のワイヤの張力及び前記第4の区間における前記第4のワイヤの張力を、前記第2の区間における前記第2のワイヤの張力及び前記第3の区間における前記第3のワイヤの張力よりも大きくする。
上記態様によると、アシスト装置は、物品を把持する手として左手が指定された場合、ワイヤの張力を差異付けることによって、左脚の伸展のアシスト力及び右脚の屈曲のアシスト力を、左脚の屈曲のアシスト力及び右脚の伸展のアシスト力よりも大きくする。また、アシスト装置は、物品を把持する手として右手が指定された場合、ワイヤの張力を差異付けることによって、左脚の屈曲のアシスト力及び右脚の伸展のアシスト力を、左脚の伸展のアシスト力及び右脚の屈曲のアシスト力よりも大きくする。ここで、物品を把持する手と同じ側の脚にかかる負荷は、物品を把持しない手と同じ側の脚にかかる負荷よりも大きい。いずれの場合でも、負荷がより大きい脚の伸展のアシスト力が、負荷がより小さい脚の伸展のアシスト力よりも大きいため、アシスト装置は、左脚及び右脚の負担を均等にしつつ軽減するバランスのとれたアシストを行うことができる。また、負荷がより小さい脚の屈曲のアシスト力が、負荷がより大きい脚の屈曲のアシスト力よりも大きいため、アシスト装置は、ユーザが負荷がより小さい脚の歩行を進めやすくするようにアシストすることができる。また、アシスト装置は、左脚及び右脚それぞれへのアシスト力を大きくするため、左脚及び右脚の間でバランスのとれたアシストを行うことができる。従って、アシスト装置は、ユーザの状態に対応したアシストをユーザに付与することができる。
本開示の第二の態様に係るアシスト装置は、さらに、インタフェース装置を備え、前記制御回路は、前記インタフェース装置を介して、前記情報を受け付けてもよい。
上記態様によると、アシスト装置は、アシスト装置を装着するユーザからの入力を受け付けることによって、ユーザの指定に応じて、物品を把持する手を決定することができる。
本開示の第一の態様及び第二の態様に係るアシスト装置において、前記第1の区間では、前記左脚は、立脚期から遊脚期へ移行し、前記第2の区間では、前記左脚は、遊脚期から立脚期へ移行し、前記第3の区間では、前記右脚は、立脚期から遊脚期へ移行し、前記第4の区間では、前記右脚は、遊脚期から立脚期へ移行してもよい。
上記態様によると、アシスト装置は、左脚が立脚期から遊脚期に移行する第1の区間において、屈曲動作をアシストし、右脚が立脚期から遊脚期に移行する第3の区間において、屈曲動作をアシストするため、ユーザの歩行を効果的にアシストすることができる。また、アシスト装置は、左脚が遊脚期から立脚期に移行する第2の区間において、伸展動作をアシストし、右脚が遊脚期から立脚期に移行する第4の区間において、伸展動作をアシストするため、ユーザの歩行を効果的にアシストすることができる。
本開示の第一の態様及び第二の態様に係るアシスト装置において、前記少なくとも1つモータは、第1のモータ、第2のモータ、第3のモータ、及び第4のモータを含み、前記第1のワイヤの第1端は、前記左膝ベルトに固定され、且つ前記第1のワイヤの第2端は、前記第1のモータに固定され、前記第2のワイヤの第1端は、前記左膝ベルトに固定され、且つ前記第2のワイヤの第2端は、前記第2のモータに固定され、前記第3のワイヤの第1端は、前記右膝ベルトに固定され、且つ前記第3のワイヤの第2端は、前記第3のモータに固定され、前記第4のワイヤの第1端は、前記右膝ベルトに固定され、且つ前記第4のワイヤの第2端は、前記第4のモータに固定されてもよい。
上記態様によると、アシスト装置は、第1のワイヤの張力、第2のワイヤの張力、第3のワイヤの張力及び第4のワイヤの張力を個別に制御することができる。よって、アシスト装置は、繊細なアシストを可能にする。
本開示の第一の態様及び第二の態様に係るアシスト装置は、さらに、前記上半身ベルト及び前記左膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの前部において、前記第1のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第5のワイヤと、前記上半身ベルト及び前記左膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの後部において、前記第2のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第6のワイヤと、前記上半身ベルト及び前記右膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの前部において、前記第3のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第7のワイヤと、前記上半身ベルト及び前記右膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの後部において、前記第4のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第8のワイヤとを備え、物品を把持する前記ユーザの歩行をアシストする場合、前記第1の区間において、前記第1のワイヤ及び前記第5のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記第2の区間において、前記第2のワイヤ及び前記第6のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記第3の区間において、前記第3のワイヤ及び前記第7のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記第4の区間において、前記第4のワイヤ及び前記第8のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させてもよい。
上記態様によると、第1のワイヤに発生する張力及び第5のワイヤに発生する張力は、ユーザの左脚に、屈曲させるアシスト力を与えることができる。第2のワイヤに発生する張力及び第6のワイヤに発生する張力は、ユーザの左脚に、伸展させるアシスト力を与えることができる。第3のワイヤに発生する張力及び第7のワイヤに発生する張力は、ユーザの右脚に、屈曲させるアシスト力を与えることができる。第4のワイヤに発生する張力及び第8のワイヤに発生する張力は、ユーザの右脚に、伸展させるアシスト力を与えることができる。よって、第1のワイヤ~第8のワイヤを備えるアシスト装置は、第1のワイヤ~第4のワイヤを備えるアシスト装置と同様のアシストを行うことができる。また、第1のワイヤ~第8のワイヤを備えるアシスト装置は、第1のワイヤの張力~第8のワイヤを個別に制御することによって、アシストのバリエーションを増やすことができる。例えば、第1のワイヤに発生する張力及び第5のワイヤに発生する張力は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれの場合での異なるアシストが可能である。
本開示の第一の態様及び第二の態様に係るアシスト装置において、前記左脚の歩行フェーズの50%の時点は、前記右脚の歩行フェーズの0%の時点に対応し、前記右脚の歩行フェーズの50%の時点は、前記左脚の歩行フェーズの0%の時点に対応してもよい。
本開示の第一の態様及び第二の態様に係るアシスト装置は、さらに、メモリを備え、前記メモリは、前記少なくとも1つのモータを制御するためのプログラムを記録し、前記制御回路は、前記プログラムに基づいて、前記少なくとも1つのモータを制御してもよい。
本開示の第一の態様及び第二の態様に係るアシスト装置は、さらに、前記ユーザの歩行周期を検出する歩行センサを備え、前記制御回路は、前記歩行センサのセンサ値に基づいて、前記左脚の歩行フェーズ、及び前記右脚の歩行フェーズを算出してもよい。
上記態様によると、アシスト装置は、ユーザの歩行周期に対応する歩行フェーズに基づき、ユーザの歩行をアシストすることができる。よって、アシスト装置は、ユーザの実際の歩行に合わせたアシストを可能にする。
本開示の第一の態様に係るアシスト方法は、ユーザに取り付けられた複数のワイヤを用いて、前記ユーザの移動をアシストするアシスト方法であって、前記複数のワイヤのうちの第1のワイヤは、前記ユーザの前部において、前記ユーザの上半身に装着される上半身ベルトと、前記ユーザの左膝に装着される左膝ベルトとを接続し、前記複数のワイヤのうちの第2のワイヤは、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルトと前記左膝ベルトとを接続し、前記複数のワイヤのうちの第3のワイヤは、前記ユーザの前部において、前記上半身ベルトと、前記ユーザの右膝に装着される右膝ベルトとを接続し、前記複数のワイヤのうちの第4のワイヤは、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルトと前記右膝ベルトとを接続し、物品を把持する前記ユーザの歩行をアシストする場合、前記ユーザの左脚の歩行フェーズの35%以上90%以下の第1の区間において、前記第1のワイヤに、第1の閾値以上の張力を発生させ、前記左脚の歩行フェーズの0%以上25%以下及び65%以上100%未満の第2の区間において、前記第2のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記ユーザの右脚の歩行フェーズの35%以上90%以下の第3の区間において、前記第3のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記右脚の歩行フェーズの0%以上25%以下及び65%以上100%未満の第4の区間において、前記第4のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記ユーザの左手に装着された左センサから左センサ値を取得し、前記ユーザの右手に装着された右センサから右センサ値を取得し、前記左センサ値が第2の閾値以上であり、且つ前記右センサ値が第2の閾値より小さい第1の条件、又は、前記右センサ値が前記第2の閾値以上であり、且つ前記左センサ値が第2の閾値より小さい第2の条件を検出し、前記第1の条件の場合、前記第2の区間における前記第2のワイヤの張力及び前記第3の区間における前記第3のワイヤの張力を、前記第1の区間における前記第1のワイヤの張力及び前記第4の区間における前記第4のワイヤの張力よりも大きくし、前記第2の条件の場合、前記第1の区間における前記第1のワイヤの張力及び前記第4の区間における前記第4のワイヤの張力を、前記第2の区間における前記第2のワイヤの張力及び前記第3の区間における前記第3のワイヤの張力よりも大きくし、前記第1のワイヤ~前記第4のワイヤの張力は、少なくとも1つの制御回路が制御するモータによって調節される。上記態様によると、本開示の第一の態様に係るアシスト装置と同様の効果が得られる。
本開示の第二の態様に係るアシスト方法は、ユーザに取り付けられた複数のワイヤを用いて、前記ユーザの移動をアシストするアシスト方法であって、前記複数のワイヤのうちの第1のワイヤは、前記ユーザの前部において、前記ユーザの上半身に装着される上半身ベルトと、前記ユーザの左膝に装着される左膝ベルトとを接続し、前記複数のワイヤのうちの第2のワイヤは、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルトと前記左膝ベルトとを接続し、前記複数のワイヤのうちの第3のワイヤは、前記ユーザの前部において、前記上半身ベルトと、前記ユーザの右膝に装着される右膝ベルトとを接続し、前記複数のワイヤのうちの第4のワイヤは、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルトと前記右膝ベルトとを接続し、物品を把持する前記ユーザの歩行をアシストする場合、前記ユーザの左脚の歩行フェーズの35%以上90%以下の第1の区間において、前記第1のワイヤに、第1の閾値以上の張力を発生させ、前記左脚の歩行フェーズの0%以上25%以下及び65%以上100%未満の第2の区間において、前記第2のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記ユーザの右脚の歩行フェーズの35%以上90%以下の第3の区間において、前記第3のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記右脚の歩行フェーズの0%以上25%以下及び65%以上100%未満の第4の区間において、前記第4のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、物品を把持する手を指定する情報を取得し、前記情報が左手を示す場合、前記第2の区間における前記第2のワイヤの張力及び前記第3の区間における前記第3のワイヤの張力を、前記第1の区間における前記第1のワイヤの張力及び前記第4の区間における前記第4のワイヤの張力よりも大きくし、前記情報が右手を示す場合、前記第1の区間における前記第1のワイヤの張力及び前記第4の区間における前記第4のワイヤの張力を、前記第2の区間における前記第2のワイヤの張力及び前記第3の区間における前記第3のワイヤの張力よりも大きくし、前記第1のワイヤ~前記第4のワイヤの張力は、少なくとも1つの制御回路が制御するモータによって調節される。上記態様によると、本開示の第二の態様に係るアシスト装置と同様の効果が得られる。
本開示の第二の態様に係るアシスト方法において、インタフェース装置を介して、前記情報を取得してもよい。
本開示の第一の態様及び第二の態様に係るアシスト方法において、前記第1の区間では、前記左脚は、立脚期から遊脚期へ移行し、前記第2の区間では、前記左脚は、遊脚期から立脚期へ移行し、前記第3の区間では、前記右脚は、立脚期から遊脚期へ移行し、前記第4の区間では、前記右脚は、遊脚期から立脚期へ移行してもよい。
本開示の第一の態様及び第二の態様に係るアシスト方法において、前記第1のワイヤの第1端は、前記左膝ベルトに固定され、且つ前記第1のワイヤの第2端は、前記少なくとも1つのモータのうちの第1のモータに固定され、前記第2のワイヤの第1端は、前記左膝ベルトに固定され、且つ前記第2のワイヤの第2端は、前記少なくとも1つのモータのうちの第2のモータに固定され、前記第3のワイヤの第1端は、前記右膝ベルトに固定され、且つ前記第3のワイヤの第2端は、前記少なくとも1つのモータのうちの第3のモータに固定され、前記第4のワイヤの第1端は、前記右膝ベルトに固定され、且つ前記第4のワイヤの第2端は、前記少なくとも1つのモータのうちの第4のモータに固定されてもよい。
本開示の第一の態様及び第二の態様に係るアシスト方法において、前記複数のワイヤはさらに、前記上半身ベルト及び前記左膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの前部において、前記第1のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第5のワイヤと、前記上半身ベルト及び前記左膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの後部において、前記第2のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第6のワイヤと、前記上半身ベルト及び前記右膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの前部において、前記第3のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第7のワイヤと、前記上半身ベルト及び前記右膝ベルトを接続し、且つ前記ユーザの後部において、前記第4のワイヤが延びる方向と交差する方向に延びる第8のワイヤとを含み、物品を把持する前記ユーザの歩行をアシストする場合、前記第1の区間において、前記第1のワイヤ及び前記第5のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記第2の区間において、前記第2のワイヤ及び前記第6のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記第3の区間において、前記第3のワイヤ及び前記第7のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させ、前記第4の区間において、前記第4のワイヤ及び前記第8のワイヤに、前記第1の閾値以上の張力を発生させてもよい。
本開示の第一の態様及び第二の態様に係るアシスト方法において、前記左脚の歩行フェーズの50%の時点は、前記右脚の歩行フェーズの0%の時点に対応し、前記右脚の歩行フェーズの50%の時点は、前記左脚の歩行フェーズの0%の時点に対応してもよい。
本開示の第一の態様及び第二の態様に係るアシスト方法において、前記ユーザの歩行周期を検出する歩行センサのセンサ値を取得し、前記センサ値に基づいて、前記左脚の歩行フェーズ及び前記右脚の歩行フェーズを算出してもよい。
本開示の第一の態様に係るプログラムは、ユーザに取り付けられた複数のワイヤに張力を発生させる少なくとも1つのモータを制御することをコンピュータに実行させるプログラムであって、ここで、前記複数のワイヤのうちの第1のワイヤは、前記ユーザの前部において、前記ユーザの上半身に装着される上半身ベルトと、前記ユーザの左膝に装着される左膝ベルトとを接続し、前記複数のワイヤのうちの第2のワイヤは、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルトと前記左膝ベルトとを接続し、前記複数のワイヤのうちの第3のワイヤは、前記ユーザの前部において、前記上半身ベルトと、前記ユーザの右膝に装着される右膝ベルトとを接続し、前記複数のワイヤのうちの第4のワイヤは、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルトと前記右膝ベルトとを接続し、物品を把持する前記ユーザの歩行をアシストする場合、前記ユーザの左脚の歩行フェーズの35%以上90%以下の第1の区間において、前記少なくとも1つのモータに、第1の閾値以上の張力を前記第1のワイヤに発生させ、前記左脚の歩行フェーズの0%以上25%以下及び65%以上100%未満の第2の区間において、前記少なくとも1つのモータに、前記第1の閾値以上の張力を前記第2のワイヤに発生させ、前記ユーザの右脚の歩行フェーズの35%以上90%以下の第3の区間において、前記少なくとも1つのモータに、前記第1の閾値以上の張力を前記第3のワイヤに発生させ、前記右脚の歩行フェーズの0%以上25%以下及び65%以上100%未満の第4の区間において、前記少なくとも1つのモータに、前記第1の閾値以上の張力を前記第4のワイヤに発生させ、前記ユーザの左手に装着された左センサから左センサ値を取得し、前記ユーザの右手に装着された右センサから右センサ値を取得し、前記左センサ値が第2の閾値以上であり、且つ前記右センサ値が第2の閾値より小さい第1の条件、又は、前記右センサ値が前記第2の閾値以上であり、且つ前記左センサ値が第2の閾値より小さい第2の条件を検出し、前記第1の条件の場合、前記第2の区間における前記第2のワイヤの張力及び前記第3の区間における前記第3のワイヤの張力を、前記第1の区間における前記第1のワイヤの張力及び前記第4の区間における前記第4のワイヤの張力よりも大きくし、前記第2の条件の場合、前記第1の区間における前記第1のワイヤの張力及び前記第4の区間における前記第4のワイヤの張力を、前記第2の区間における前記第2のワイヤの張力及び前記第3の区間における前記第3のワイヤの張力よりも大きくする。上記態様によると、本開示の第一の態様に係るアシスト装置と同様の効果が得られる。
本開示の第二の態様に係るプログラムは、ユーザに取り付けられた複数のワイヤに張力を発生させる少なくとも1つのモータを制御することをコンピュータに実行させるプログラムであって、ここで、前記複数のワイヤのうちの第1のワイヤは、前記ユーザの前部において、前記ユーザの上半身に装着される上半身ベルトと、前記ユーザの左膝に装着される左膝ベルトとを接続し、前記複数のワイヤのうちの第2のワイヤは、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルトと前記左膝ベルトとを接続し、前記複数のワイヤのうちの第3のワイヤは、前記ユーザの前部において、前記上半身ベルトと、前記ユーザの右膝に装着される右膝ベルトとを接続し、前記複数のワイヤのうちの第4のワイヤは、前記ユーザの後部において、前記上半身ベルトと前記右膝ベルトとを接続し、物品を把持する前記ユーザの歩行をアシストする場合、前記ユーザの左脚の歩行フェーズの35%以上90%以下の第1の区間において、前記少なくとも1つのモータに、第1の閾値以上の張力を前記第1のワイヤに発生させ、前記左脚の歩行フェーズの0%以上25%以下及び65%以上100%未満の第2の区間において、前記少なくとも1つのモータに、前記第1の閾値以上の張力を前記第2のワイヤに発生させ、前記ユーザの右脚の歩行フェーズの35%以上90%以下の第3の区間において、前記少なくとも1つのモータに、前記第1の閾値以上の張力を前記第3のワイヤに発生させ、前記右脚の歩行フェーズの0%以上25%以下及び65%以上100%未満の第4の区間において、前記少なくとも1つのモータに、前記第1の閾値以上の張力を前記第4のワイヤに発生させ、物品を把持する手を指定する情報を取得し、前記情報が左手を示す場合、前記第2の区間における前記第2のワイヤの張力及び前記第3の区間における前記第3のワイヤの張力を、前記第1の区間における前記第1のワイヤの張力及び前記第4の区間における前記第4のワイヤの張力よりも大きくし、前記情報が右手を示す場合、前記第1の区間における前記第1のワイヤの張力及び前記第4の区間における前記第4のワイヤの張力を、前記第2の区間における前記第2のワイヤの張力及び前記第3の区間における前記第3のワイヤの張力よりも大きくする。上記態様によると、本開示の第二の態様に係るアシスト装置と同様の効果が得られる。
なお、上記の包括的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能な記録ディスク等の記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、例えばCD-ROM等の不揮発性の記録媒体を含む。
[実施の形態]
以下、本開示の実施の形態に係るアシスト装置等について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ(工程)、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、以下の実施の形態の説明において、略平行、略直交のような「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、略平行とは、完全に平行であることを意味するだけでなく、実質的に平行である、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。他の「略」を伴った表現についても同様である。また、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。さらに、各図において、実質的に同一の構成要素に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
本実施の形態において、アシスト装置100は、アシスト装置100を体に装着したユーザの歩行を支援するものとして、アシスト装置100を説明する。具体的には、アシスト装置100は、ユーザが歩行するために、ユーザの股関節の屈伸を能動的に支援するものとして、実施の形態に係るアシスト装置100を説明する。本実施の形態において、能動的支援とは、ユーザが進行方向に歩行するために股関節の屈伸動作を行っているときに、股関節に必要な屈伸力を補助することだけでなく、屈伸動作を起こすための力を付与すること、及び、所望の屈伸量に股関節の屈伸量を物理的に制御すること、つまり、ユーザの股関節の動作を物理的に制御することを含み得る。本明細書において、アシスト装置100がユーザをアシストすることは、ユーザの動作を能動的に支援すること、及び、ユーザの動作を補助的に支援することのいずれをも含む。
[1.実施の形態に係るアシスト装置の構成]
図1~図3を参照して、実施の形態に係るアシスト装置100を説明する。なお、図1は、実施の形態に係るアシスト装置100がユーザ1に装着された例を前方から見た正面図である。図2は、図1のアシスト装置100及びユーザ1の背面図である。図3は、実施の形態に係るアシスト装置100の機能的な構成を示すブロック図である。
図1~図3に示されるように、アシスト装置100は、上半身ベルト111と、左膝ベルト112aと、右膝ベルト112bと、複数のワイヤ110とを備える。さらに、アシスト装置100は、複数のモータ114と、複数の力センサ(force sensor)115と、複数のモータ114の動作を制御する制御部120とを備えている。また、アシスト装置100は、複数のモータ114等に電力を供給する電源130を備えてもよい。電源130は、例えば、一次電池又は二次電池等であってもよい。
複数のワイヤ110はワイヤ110a1~110a4である。複数のワイヤ110のそれぞれは上半身ベルト111と左膝ベルト112aまたは上半身ベルト111と右膝ベルト112bに接続される。
複数のモータ114はモータ114a1~114a4である。ワイヤ110a1はモータ114a1に接続される。ワイヤ110a2はモータ114a2に接続される。ワイヤ110a3はモータ114a3に接続される。ワイヤ110a4はモータ114a4に接続される。
複数の力センサは力センサ115a1~115a4である。力センサ115a1はワイヤ110a1に設けられる。力センサ115a2はワイヤ110a2に設けられる。力センサ115a3はワイヤ110a3に設けられる。力センサ115a4はワイヤ110a4に設けられる。
上半身ベルト111は、ユーザ1の上半身に装着される。上半身ベルト111の例は、帯状の形状を有する。上半身ベルト111は、端部付近に、固定具を備える。固定具の例は、ベルクロ(登録商標)などの面ファスナ、フック、バックルなどの留め具、又は、テープ(hook and loop fastener、velcro(登録商標)tape)である。例えば、上半身ベルト111は、ユーザ1の腰部に巻回され、固定具により巻回された状態が維持されることにより、ユーザ1の腰に装着される。固定具の固定位置を調節することによって、巻回された上半身ベルト111の内径が変化する。これにより、上半身ベルト111の長さが調整できるため、腰部の周囲の長さが異なる様々なユーザ1が上半身ベルト111を装着できる。上半身ベルト111の材料の例は、非伸縮性の材料である。これにより、上半身ベルト111は、複数のワイヤ110により引っ張られても変形しにくい。ここで、「上半身」とは、ユーザの身体の肩から腰までの領域を含む。図1及び図2に示す上半身ベルト111は、ユーザ1の腰に装着される腰ベルトの構成を有している。上半身ベルト111は、例えば、ユーザ1の腰及び/またはユーザ1の肩及び/またはユーザ1の胸部に装着される構成であってもよい。
なお、上半身ベルト111は、筒状の形状を有していてもよく、この場合、筒状の形状の周長はユーザ1の腰部の周囲の長さよりも長い。上半身ベルト111は、上半身ベルト111の長さを、ユーザ1の腰の周囲の長さに調整するための調整機構を有する。調整機構は、例えば、面ファスナであり、面ファスナのフック面を有する部位が筒状の外周に当該外周から分岐するように配置され、筒状の外周面に面ファスナのループ面が配置される構成により実現されてもよい。つまり、面ファスナの部分で上半身ベルト111が折り返され、折り返し量に応じて、上半身ベルト111が形成する筒の内径が変化する。
左膝ベルト112aは、ユーザ1の左脚における左膝近傍に装着され、右膝ベルト112bは、ユーザ1の右脚における右膝近傍に装着される。左膝ベルト112aは、左脚において、膝下から大腿部にわたる領域のいずれかの部位に装着されてもよい。右膝ベルト112bは、右脚において、膝下から大腿部にわたる領域のいずれかの部位に装着されてもよい。つまり、本明細書において、「膝」とは、膝下から大腿部にわたる領域を含んでもよい。
膝ベルト112a及び112bのそれぞれは、例えば、帯状の形状を有しており、端部付近に、固定具を備える。固定具の例は、ベルクロ(登録商標)などの面ファスナ、フック、バックルなどの留め具、又はテープである。膝ベルト112a及び112bのそれぞれは、ユーザの大腿部、又は膝上に装着される。例えば、膝ベルト112a及び112bは、ユーザ1の大腿部等に巻回され、固定具により巻回された状態が維持されることにより、ユーザ1の大腿部等に装着される。固定具の固定位置を調節することによって、巻回された膝ベルト112a及び112bの内径が変化する。これにより、膝ベルト112a及び112bの長さが調整できるため、脚の周囲の長さが異なる様々なユーザ1が装着可能である。膝ベルト112a及び112bは、膝関節に装着されなくてもよい。人間の大腿部は、膝から尻にかけて、次第に太くなるという特徴がある。そのため、大腿部の中でも膝上に膝ベルト112a及び112bを装着することで、膝ベルト112a及び112bは、きつく締まっている場合、ワイヤから引っ張り力を受けてもその滑りが小さくなる。また、膝ベルト112a及び112bの材料の例は、非伸縮性の材料である。これにより、膝ベルト112a及び112bは、ワイヤにより引っ張られても変形しにくい。
なお、膝ベルト112a及び112bは、筒状の形状を有していてもよく、この場合、筒状の形状の周長はユーザ1の大腿部の周囲の長さよりも長い。膝ベルト112a及び112bは、膝ベルト112a及び112bの長さを、ユーザ1の大腿部等の周囲の長さに調整するための調整機構を有する。調整機構は、例えば、面ファスナであり、面ファスナのフック面を有する部位が筒状の外周に当該外周から分岐するように配置され、筒状の外周面に面ファスナのループ面が配置される構成により実現されてもよい。つまり、面ファスナの部分で膝ベルト112a及び112bがそれぞれ折り返され、折り返し量に応じて、膝ベルト112a及び112bが形成する筒の内径が変化する。
複数のモータ114は、上半身ベルト111に固定されて配置されている。本実施の形態では、複数のモータ114は、4つのモータ114a1~114a4で構成されている。例えば、モータ114a1~114a4は、上半身ベルト111が備える中空の収容部111a1~111a4内に収容されてもよい。収容部111a1~111a4は、上半身ベルト111と一体化されていてもよく、上半身ベルト111に着脱可能であってもよい。図1及び図2に示すように、複数の収容部111a1~111a4が設けられてもよい。図1及び図2の例では、収容部111a1、111a2、111a3及び111a4はそれぞれ、ユーザ1の前部左側、後部左側、前部右側及び後部右側に配置されている。モータ114a1、114a2、114a3及び114a4それぞれが、収容部111a1、111a2、111a3及び111a4に収容されている。そして、モータ114a1は上半身ベルト111と膝ベルト112aとの間のワイヤ110a1の長さを変更してワイヤ110a1の張力を調節し、モータ114a2は上半身ベルト111と膝ベルト112bとの間のワイヤ110a2の長さを変更してワイヤ110a2の張力を調節し、モータ114a3は上半身ベルト111と膝ベルト112cとの間のワイヤ110a3の長さを変更してワイヤ110a3の張力を調節し、モータ114a4は上半身ベルト111と膝ベルト112dとの間のワイヤ110a4の長さを変更してワイヤ110a4の張力を調節する。
本実施の形態では、モータ114a1~114a4のそれぞれは、プーリと、プーリを回転させるための駆動軸と、駆動軸を回転駆動する電動モータとを備える。モータ114a1~114a4のそれぞれのプーリは、ワイヤ110a1~110a4のち対応するワイヤを巻き付ける。モータ114a1~114a4とワイヤ110a1~110a4は1対1に対応する。モータ114a1~114a4それぞれのプーリ、駆動軸及び電動モータは、収容部111a1~111a4内に収容される。なお、モータ114a1~114a4のそれぞれは、電動モータを備え、プーリ及び駆動軸を備えなくてもよく、上半身ベルト111がモータ114a1~114a4のそれぞれに対応するプーリ及び駆動軸を備えてもよい。この場合、電動モータの回転軸が、プーリの駆動軸と回転駆動力を伝達可能に接続される。なお、モータ114a1~114a4の代わりに、例えば、リニアアクチュエータ、又は空気圧式若しくは液圧式のピストン等の、上半身ベルト111と膝ベルト112a及び112bとの間のワイヤ110a1~110a4の長さを調節できる装置が用いられてもよい。このようなアシスト装置100では、各ワイヤ110a1~110a4の巻き取り部分及びモータ114a1~114a4が上半身ベルト111に配置され、上半身ベルト111の下方では、ワイヤ110a1~110a4並びに膝ベルト112a及び112bが配置される。このため、アシスト装置100は、シンプル且つ小型な構成を実現する。
本実施の形態では、複数のワイヤ110は、4本のワイヤ110a1~110a4で構成されている。そして、ワイヤ110a1~110a4の長さを個別に調節するように、ワイヤ110a1にモータ114a1が接続され、ワイヤ110a2にモータ114a2が接続され、ワイヤ110a3にモータ114a3が接続され、ワイヤ110a4にモータ114a4が接続されている。
ワイヤ110a1及び110a2それぞれの一方の端部は、左膝ベルト112aに固定され、ワイヤ110a1の他方の端部はモータ114a1に接続され、ワイヤ110a2の他方の端部はモータ114a2に接続されている。つまり、ワイヤ110a1の他方の端部、及びワイヤ110a2の他方の端部は固定されている。ワイヤ110a1は、左膝ベルト112aとモータ114a1を接続し、ワイヤ110a2は、左膝ベルト112aとモータ114a2を接続している。
ワイヤ110a3及び110a4それぞれの一方の端部は、右膝ベルト112bに固定され、ワイヤ110a3の他方の端部はモータ114a3に接続され、ワイヤ110a4の他方の端部はモータ114a4に接続されている。つまりワイヤ110a3の他方の端部、及びワイヤ110a4の他方の端部は固定されている。ワイヤ110a3は、右膝ベルト112bとモータ114a3を接続し、ワイヤ110a4は、右膝ベルト112bとモータ114a4を接続している。
本実施の形態では、モータ114a1~114a4のそれぞれは、プーリを正回転又は逆回転させることによって、ワイヤ110a1~110a4のうち対応するワイヤをプーリに巻き付ける又は巻き戻す。上述のようなワイヤ110a1~110a4は、上半身ベルト111によってユーザ1の腰に固定され、膝ベルト112a及び112bによってユーザの左右の大腿部等に固定される。
上述したように、ワイヤ110a1~110a4のそれぞれは、上半身ベルト111と左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bとを接続している。ワイヤ110a1~110a4のそれぞれの上半身ベルト111への接続は直接的な接続であっても、間接的な接続であってもよい。ワイヤ110a1~110a4のそれぞれの左膝ベルト112aまたは膝ベルト112bへの接続は、直接的な接続であっても、間接的な接続であってもよい。上述の例では、ワイヤ110a1~110a4のそれぞれの一方の端部は、左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bに固定され、つまり直接的に接続され、ワイヤ110a1~110a4のそれぞれの他方の端部は、対応するモータを介して上半身ベルト111に固定され、つまり間接的に接続されている。しかしながら、複数のワイヤ110のそれぞれの上半身ベルト111への接続と、複数のワイヤ110のそれぞれの左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bへの接続は、例えば、以下のような構成であってもよい。
具体的には、複数のワイヤ110のそれぞれの一方の端部は、対応するモータを介して、左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bに間接的に接続され、複数のワイヤ110のそれぞれの他方の端部は、上半身ベルト111に直接的に接続されてもよい。又は、複数のワイヤ110のそれぞれの両方の端部は、上半身ベルト111、及び、左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bに直接的に接続され、複数のワイヤ110のそれぞれの中間に、モータ、リニアアクチュエータ、又は、空気圧式若しくは液圧式のピストンがワイヤの長さを調節できるように配置されてもよい。
又は、複数のワイヤ110のそれぞれの一方の端部は、左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bに直接的に接続され、複数のワイヤ110のそれぞれの他方の端部は、対応するモータを介して、左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bに間接的に接続され、複数のワイヤ110のそれぞれは、左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bと上半身ベルト111との間を往復するように配置されてもよい。又は、複数のワイヤ110のそれぞれの一方の端部は、上半身ベルト111に直接的に接続され、複数のワイヤ110のそれぞれの他方の端部は、対応するモータを介して、上半身ベルト111に間接的に接続され、複数のワイヤ110のそれぞれは、上半身ベルト111と左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bとの間を往復するように配置されてもよい。
又は、複数のワイヤ110のそれぞれの両方の端部は、モータに接続され、モータを介して輪状に配置されてもよい。このとき、複数のワイヤ110のそれぞれは、上半身ベルト111と左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bとの間を往復するように配置され、複数のモータ114のそれぞれは、ワイヤの輪の周長を変更する。
上述のいずれの構成においても、複数のワイヤ110のそれぞれは、その張力が上半身ベルト111と左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bとによって支持されるように、上半身ベルト111と左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bとに接続される。これにより、モータ114a1~114a4のそれぞれが、複数のワイヤ110のうち対応するワイヤを引っ張ったとき、上半身ベルト111と左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bとを近づける張力が対応するワイヤに発生する。
また、複数の力センサ115は、4つの力センサ115a1~115a4で構成されている。力センサ115a1はワイヤ110a1の張力を検出して制御部120に出力し、力センサ115a2はワイヤ110a2の張力を検出して制御部120に出力し、力センサ115a3はワイヤ110a3の張力を検出して制御部120に出力し、力センサ115a4はワイヤ110a4の張力を検出して制御部120に出力する。力センサ115a1は膝ベルト112aにおいてワイヤ110a1に設けられ、力センサ115a2は膝ベルト112aにおいてワイヤ110a2に設けられ、力センサ115a3は膝ベルト112bにおいてワイヤ110a3に設けられ、力センサ115a4は膝ベルト112bにおいてワイヤ110a4に設けられる。力センサ115a1~115a4は、上半身ベルト111に配置されてもよい。力センサ115a1~115a4のそれぞれは、ワイヤ110a1~110a4のうち対応するワイヤの張力を検出できるものであればよく、例えば、ひずみゲージ式力センサ、圧電式力センサ等であってもよい。力センサ115a1~115a4とワイヤ110a1~110a4は1対1に対応する。
また、ワイヤ110a1~110a4のそれぞれは、金属製のワイヤであってもよく、非金属ワイヤであってもよい。非金属ワイヤの例は、繊維ワイヤ又は繊維ベルトである。繊維ワイヤ又は繊維ベルトの材料の例は、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、パラ型アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO(ポリ-パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、ポリアリレート繊維又は炭素繊維等である。本実施の形態では、4つの連結ベルト111b1~111b4のそれぞれは、ワイヤ110a1~110a4のうち対応するワイヤに沿い且つ上半身ベルト111から左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bにわたって延びるように設けられている。連結ベルト111b1~111b4とワイヤ110a1~110a4は1対1に対応する。これに限定するものではないが、連結ベルト111b1~111b4は、上半身ベルト111及び左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bと一体化されており、これらと同様の材料で形成されている。例えば、上半身ベルト111、膝ベルト112a及び112b、並びに、連結ベルト111b1~111b4は、ユーザ1が装着する1つのアシスト機能付きのスーツを形成し得る。連結ベルト111b1~111b4のそれぞれは、ワイヤ110a1~110a4のうち対応するワイヤを内部に含み、対応するワイヤを被覆している。連結ベルト111b1~111b4をまとめて、連結ベルト111bと記載する場合もある。
図1、図2及び図4を参照して、ワイヤ110a1~110a4の配置構成の詳細を説明する。なお、図4は、図1のアシスト装置100の各構成要素の配置を模式的に示す図である。ワイヤ110a1は、ユーザ1の前部において、上半身ベルト111及び左膝ベルト112aを、モータ114a1を介して接続する。ワイヤ110a1は、ユーザ1の前部において、左膝ベルト112aから上方に延びる。ワイヤ110a2は、ユーザ1の後部において、上半身ベルト111及び左膝ベルト112aを、モータ114a2を介して接続する。ワイヤ110a2は、ユーザ1の後部において、左膝ベルト112aから上方に延びる。ワイヤ110a3は、ユーザ1の前部において、上半身ベルト111及び右膝ベルト112bを、モータ114a3を介して接続する。ワイヤ110a3は、ユーザ1の前部において、右膝ベルト112bから上方に延びる。ワイヤ110a4は、ユーザ1の後部において、上半身ベルト111及び右膝ベルト112bを、モータ114a4を介して接続する。ワイヤ110a4は、ユーザ1の後部において、右膝ベルト112bから上方に延びる。このように、ユーザ1の左脚の前部にワイヤ110a1、ユーザ1の左脚の後部にワイヤ110a2、ユーザ1の右脚の前部にワイヤ110a3、ユーザ1の右脚の後部にワイヤ110a4が配置される。ワイヤ110a1~110a4を個別に引張することによって、左右の脚に様々な方向の力を付与することができる。
なお、図1、図2及び図4の例では、ユーザ1の前部において、ワイヤ110a1及び110a3は、互いに交差していないが、交差してもよい。図1、図2及び図4の例では、ユーザ1の後部において、ワイヤ110a2及び110a4は、互いに交差していないが、交差してもよい。
また、モータ114a1~114a4がワイヤ110a1~110a4を引っ張ることによりワイヤ110a1~110a4に張力が付与され、これらの張力は、上半身ベルト111並びに膝ベルト112a及び112bを介して、ユーザ1の左右の脚に伝達される。ワイヤ110a1~110a4の張力が効果的にユーザ1の左右の脚に伝達されるために、上半身ベルト111並びに膝ベルト112a及び112bは、変形しないような剛性を有し、伸長しないような伸縮性を有してもよい。上半身ベルト111並びに膝ベルト112a及び112bを形成する材料の一例は、上述したように非伸縮性の材料である。このような上半身ベルト111並びに膝ベルト112a及び112bが、緩みなくユーザ1に装着されユーザ1の身体にフィットしていると、モータ114a1~114a4の駆動力は、ワイヤ110a1~110a4を介してユーザ1の脚に効率的に伝達し、ユーザ1の脚の動作を効果的にアシストする。なお、本明細書において、アシストするとは、ユーザが所定の動作をするために、ユーザの動作自体を補助することと、所定の動作をユーザの身体に強いて身体の動きを誘導することとを含む。
さらに、アシスト装置100がワイヤ110a1~110a4に付与する張力と、当該張力がアシストするユーザの動作との関係を説明する。例えば、図5には、アシスト装置100がアシストするユーザの右脚の動作例が示されている。なお、図5は、アシスト装置100が遊脚期の右脚にアシスト力を与える例を示しているが、アシスト装置100は、立脚期の右脚にアシスト力を与えてもよい。また、アシスト装置100は、ユーザの左脚に対しても、右脚と同様の動作をさせることができる。図5に示すように、アシスト装置100は、ユーザの右脚股関節に対して、屈曲及び伸展させるアシスト力を付与することができる。股関節の屈曲は、大腿部を前方向に動かす動きであり、股関節の伸展は、大腿部を後方向に動かす動きである。
さらに、図6A~図7Bを参照して、アシスト装置100が誘導するつまりアシストするユーザの動作と、ワイヤ110a1~110a4を介してユーザに与えられるアシスト力との関係を説明する。図6Aは、実施の形態に係るアシスト装置100がユーザの左脚の股関節の屈曲をアシストするケースを示し、図6Bは、実施の形態に係るアシスト装置100がユーザの右脚の股関節の屈曲をアシストするケースを示す。図6Aでは、左脚を屈曲させるために、制御部120は、モータ114a1を駆動し、ワイヤ110a1の張力を増加させる、つまりワイヤ110a1に張力を発生させる。図6Bでは、右脚を屈曲させるために、制御部120は、モータ114a3を駆動し、ワイヤ110a3の張力を増加させる。制御部120は、ワイヤの張力の制御を、力センサ115a1~115a4の検出結果に基づき、行ってもよく、モータ114a1~114a4の駆動量に基づき、行ってもよい。制御部120の詳細は、後述する。
これに限定するものではないが、本実施の形態では、屈曲前の平常時にも、ワイヤ110a1~110a4それぞれに張力がかけられており、その張力は、ワイヤがたるまない程度、例えば、10N以下であってもよく、または、5N以下であってもよい。そして、左脚及び右脚それぞれを屈曲させるために、ワイヤ110a1及び110a3の張力がそれぞれ、例えば、40N以上100N以下の値に引き上げられる。左脚を例に説明する。健康的な20歳代~40歳代の成人男性であるユーザに対して、ワイヤ110a1に40N以上の張力を作用させる。このとき、ユーザは、左脚に屈曲方向の力が作用し、且つ左脚の屈曲が促されていることを明確に自覚することができる。ワイヤ110a1に80N超の張力が作用すると、ユーザの左脚は、屈曲方向に持ち上げられる。また、ワイヤ110a1に作用する張力が、20N以下である場合、ユーザは、ワイヤ110a1の張力による抵抗をほとんど感じずに現状の動作を継続する。なお、上記の張力の数値は、一例であり、ユーザの年齢、性別、体格、体力、脚の動作の種類、脚へのアシストの介入程度等に応じて、適宜変更され得る。
図7A及び図7Bは、実施の形態に係るアシスト装置100がユーザの左脚及び右脚の股関節の伸展をアシストするケースを示す。図7Aでは、制御部120は、左脚に伸展させるために、ワイヤ110a2の張力を増加する。図7Bでは、制御部120は、右脚に伸展させるために、ワイヤ110a4の張力を増加する。この伸展時のワイヤの張力は、屈曲時のワイヤの張力と同様であってもよい。
上述では、制御部120は、1つの脚の1つの動作をアシストするために、1つのワイヤの張力を増加させた。このとき、制御部120は、他の3つのワイヤの張力を現状に維持するように、ユーザの動作に合わせて他の3つのワイヤに対応するモータを制御し、他の3つのワイヤの張力を調整してもよい。制御部120は、3つのワイヤに張力が作用しないように、他の3つのワイヤに対応するモータを制御してもよい。例えば、制御部120は、他の3つのワイヤに対応するモータの動作を停止させてもよい。
上述のようなアシスト装置100は、ユーザの歩行中、ユーザの脚が立脚期及び遊脚期に生じるトルクに合わせて、屈曲及び伸展方向のアシスト力であるアシストトルクをユーザに付与し、ユーザの歩行動作をアシストすることができる。
さらに、図3を参照して、アシスト装置100の制御部120の構成を説明する。制御部120は、アシスト装置100全体の動作を制御する。制御部120は、各ワイヤ110a1~110a4に与える動作を決定し、ユーザ1の股関節のアシスト制御を行う。各ワイヤ110a1~110a4に与える動作は、各ワイヤ110a1~110a4へ張力を付与するタイミング、張力の大きさ及び張力の付与期間を含むワイヤの動作パターンである。
制御部120は、アシスト装置100に設けられた入力装置140、又は、アシスト装置100の外部の端末装置150から、ユーザ1等により入力された指令を取得し、取得した指令に基づき、アシスト装置100によるアシストの実施及び停止を制御する。アシスト装置100の入力装置140は、ボタン、スイッチ、キー、タッチパッド又は音声認識装置のマイク等であってもよい。端末装置150は、アシスト装置100を装着するユーザ1が携帯する端末装置であってよく、例えば、スマートフォン、スマートウオッチ、タブレット又はパーソナルコンピュータであってもよい。制御部120は、入力装置140及び端末装置150と有線通信してもよく無線通信してもよい。上記無線通信には、Wi-Fi(登録商標)(Wireless Fidelity)等の無線LAN(Local Area Network)が適用されてもよく、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等の近距離無線通信が適用されてもよく、その他のいかなる無線通信が適用されてもよい。有線通信には既存のいかなる有線通信が適用されてもよい。このような制御部120は、有線又は無線の通信回路を備えてもよく、アシスト装置100が備える有線又は無線の通信回路を通じて、有線通信又は無線通信を行ってもよい。ここで、入力装置140及び端末装置150は、インタフェース装置の一例である。
例えば、図8には、実施の形態に係るアシスト装置100が備える入力装置140の入力部分の一例が示されている。入力装置140は、入力を受け付ける6つの物理的なボタンを備える。6つのボタンは、アシスト装置100を起動するためのONボタン141、アシスト装置100を停止するためのOFFボタン142、通常歩行モードを選択するための通常歩行ボタン143、運搬歩行モードを選択するための運搬歩行ボタン144、並びに、ユーザの利き手として「左手」を入力するための左手ボタン145及びユーザの利き手として「右手」を入力するための右手ボタン146等を含む。通常歩行モードは、アシスト装置100の動作モードの1つである。運搬歩行モードは、アシスト装置100の動作モードの1つである。入力装置140の入力部分がタッチパネルである場合、各ボタンは画面上のアイコンであってもよい。また、左手ボタン145及び右手ボタン146は、ダイヤル、スライドボタン、又はジョイスティックなどのレバー等であってもよい。入力装置140は、本実施の形態では、上半身ベルト111に配置されるが、これに限定されず、膝ベルト112a又は112bに配置されてもよく、上半身ベルト111から離れたユーザ1の身体の部分に配置されてもよい。また、外部の端末装置150も、入力装置140と同様のボタンの構成、又は、画面上のアイコンの構成を有してもよい。
また、本実施の形態では、ユーザ1には、図9に示すように、接触センサ301a及び301bと、感圧センサ302及び慣性計測装置303の少なくとも一方とが装着される。なお、図9は、ユーザ1に装着されるセンサ等の配置を示す図である。接触センサ301a及び301b、感圧センサ302並びに慣性計測装置303は、検出結果を制御部120に出力する。接触センサ301aは、ユーザ1の左手に装着され、接触センサ301bは、ユーザ1の右手に装着される。具体的には、接触センサ301aはユーザ1が装着する左手の手袋の指の腹部分等に取り付けられ、接触センサ301bはユーザ1が装着する右手の手袋の指の腹部分等に取り付けられる。本実施の形態では、物体を把持するときに物体と接触する頻度が高い左手の人差し指に、接触センサ301aが装着され、物体を把持するときに物体と接触する頻度が右手の人差し指に、接触センサ301bは装着されるが、これに限定されず、他の指又は掌等に装着されてもよい。接触センサ301a及び301bは、ユーザ1の手と物体との直接的な接触及び間接的な接触を検知する。接触センサ301a及び301bの例は、接触検知センサ、触覚センサ、近接センサ又は感圧センサ302と同様のセンサ等である。なお、接触センサ301a及び301bは、ユーザ1が物体を把持したときに、物体が接触し得るユーザ1の腕等に装着されてもよい。ここで、接触センサ301aは、左手に装着される左接触センサであり、左圧力センサの一例である。接触センサ301bは、右手に装着される右接触センサであり、右圧力センサの一例である。
左圧力センサは、左荷重センサ、又は左力センサであってもよい。右圧力センサは、右荷重センサ、又は右力センサであってもよい。左圧力値は、左圧力センサから得た左圧力値、左荷重センサから得た左荷重値、または、左力センサから得た左力値であってもよい。右圧力値は、右圧力センサから得た右圧力値、右荷重センサから得た右荷重値、または、右力センサから得た右力値であってもよい。
感圧センサ302は、ユーザ1の足裏に装着され、具体的には、ユーザ1が装着する靴底等に取り付けられる。感圧センサ302は、ユーザ1の両足に装着されてもよく、片足に装着されてもよい。感圧センサ302は、ユーザ1の足裏に作用する圧力つまり荷重を検知する。感圧センサ302の例は、静電容量式、圧電式又はひずみゲージ式の圧力センサである。慣性計測装置303は、ユーザ1の移動と連動する部分、例えば、上半身の腰等に装着され、具体的には、上半身ベルト111に取り付けられる。慣性計測装置303は、加速度センサ及びジャイロセンサ(「角速度センサ」とも呼ばれる)を含む。加速度センサの例は、3軸加速度センサであり、ジャイロセンサの例は、3軸ジャイロセンサである。慣性計測装置303は、加速度センサを含み、ジャイロセンサを含まなくてもよい。慣性計測装置303は、さらに地磁気センサを含んでもよい。慣性計測装置303は、検出する加速度及び角速度に基づき、ユーザ1の各方向の加速度、移動方向、移動速度及び移動距離を検出する。ここで、感圧センサ302及び慣性計測装置303は、歩行センサの一例である。
接触センサ301a及び301b、感圧センサ302並びに慣性計測装置303と、制御部120とは、有線通信又は無線通信を介して、情報を授受する。当該有線通信及び無線通信には、上述した有線通信及び無線通信のいずれが適用されてもよい。
図3に示すように、制御部120は、把持認識部121、駆動制御部122、歩行タイミング検出部123、ワイヤ張力認識部124及び記憶部125を有している。把持認識部121、駆動制御部122、歩行タイミング検出部123及びワイヤ張力認識部124からなる制御部120の構成要素は、CPU(Central Processing Unit)又はDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、並びに、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read-Only Memory)等のメモリなどからなるコンピュータシステムにより構成されてもよい。上記構成要素の一部又は全部の機能は、CPU又はDSPがRAMを作業用のメモリとして用いてROMに記録されたプログラムを実行することによって達成されてもよい。また、上記構成要素の一部又は全部の機能は、電子回路又は集積回路等の専用のハードウェア回路によって達成されてもよい。上記構成要素の一部又は全部の機能は、上記のソフトウェア機能とハードウェア回路との組み合わせによって構成されてもよい。プログラムは、アプリケーションとして、インターネット等の通信網を介した通信、モバイル通信規格による通信、その他の無線ネットワーク、有線ネットワーク、又は放送等で提供されるものであってもよい。制御部120が構成するコンピュータシステム及び/又はハードウェア回路は、例えば、上半身ベルト111に搭載され、モータ114a1~114a4と共に収容部111a1~111a4内に収容されてもよく、別の場所で、上半身ベルト111に埋め込まれてもよい。ここで、制御部120は、制御回路の一例である。
記憶部125は、情報を格納することができ、且つ、格納した情報の取り出しを可能にする。記憶部125は、制御部120の各構成要素が処理を実行するためのコンピュータプログラム、後述する各閾値、後述するワイヤ張力の入力プロフィール等を記憶する。記憶部125は、例えば、ROM、RAM、フラッシュメモリなどの半導体メモリ、ハードディスクドライブ、又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置によって実現される。本実施の形態では、記憶部125は、制御部120に含まれているが、別であってもよい。ここで、記憶部125は、メモリの一例である。
把持認識部121は、ユーザ1の手にかかる荷重を検出し、それにより、ユーザ1による物体の把持を検出する。把持認識部121は、接触センサ301a及び301bから取得するセンサ値の変化量に基づいて、ユーザ1の左手及び右手にかかる荷重を検出する。ここで、接触センサ301a及び301bのセンサ値から検出される荷重は、圧力値の一例である。例えば、図10Aに示すように、ユーザ1の左手には、左接触センサ301aが配置され、ユーザ1の右手には、右接触センサ301bが配置される。具体的には、左接触センサ301aは、左手人差し指の腹上に配置され、右接触センサ301bは、右手人差し指の腹上に配置される。なお、図10Aは、接触センサ301a及び301bとユーザの手との関係を示す図である。
接触センサ301a及び301bが圧電式のセンサである場合、把持認識部121は、接触センサ301a及び301bの検出センサ値それぞれに対応する電圧値が所定の値未満になる時点を、ユーザ1の左手及び右手が物体と接触した時点、つまり、ユーザ1の左手及び右手それぞれが物体を把持した時点として検出する。また、接触センサ301a及び301bそれぞれの電圧値が小さくなる程、ユーザ1の左手及び右手にかかる物体の荷重が大きくなる。このため、把持認識部121は、接触センサ301a及び301bそれぞれの電圧値から、ユーザ1の左手及び右手にかかる荷重を算出する。例えば、図10Bが示す接触センサ301a及び301bの信号の例では、所定の値は、「VA」である。図10Bにおいては、接触センサ301a及び301bの電圧値が所定の値VA未満となる状態、つまりユーザ1が物体を把持している状態では、左接触センサ301aの電圧値VLが、右接触センサ301bの電圧値VRよりも小さい。よって、ユーザ1の左手にかかる荷重LLは、右手にかかる荷重LRよりも大きい。把持認識部121は、接触センサ301a及び301bそれぞれの電圧値VL及びVRから、ユーザ1の左手にかかる荷重LLと、ユーザ1の右手にかかる荷重LRとを算出し、駆動制御部122に出力する。なお、図10Bの例では、VL<VRであり、LL>LRである。
歩行タイミング検出部123は、ユーザ1にアシストを行うタイミングを決定するために、歩行のタイミングを検出する。歩行のタイミングは、歩行中におけるユーザ1にアシストを開始するタイミング、並びに、1歩の中での立脚期及び遊脚期などの相(フェーズ)を決めるタイミングを含み得る。駆動制御部122は、歩行タイミング検出部123が検出した歩行のタイミングから、ユーザ1にアシストを実施するタイミングを決定し、モータの動作を制御する。
具体的には、歩行タイミング検出部123は、アシスト装置100を装着するユーザ1の歩行周期を推定し、推定結果に基づき次の歩行フェーズを予測し、駆動制御部122に、予測した歩行フェーズに基づくアシストタイミングを出力する。歩行周期は、一方の脚のかかとが接地し、次に同じ脚のかかとが接地するまでの動作の時間の間隔又は連続動作である。歩行周期は、立脚期及び遊脚期からなる。
歩行タイミング検出部123は、感圧センサ302又は慣性計測装置303の加速度センサ及びジャイロセンサから取得するセンサ値に基づいて、ユーザ1のかかとが接地するタイミングを検出し、ユーザ1の1歩毎の歩行フェーズつまり歩行周期をリアルタイムで推定する。なお、ユーザ1の1歩とは、左右の脚のいずれかが1歩進むことである。例えば、ユーザ1の1歩は、左脚が接地してから次に左脚が接地するまでの期間である。そして、歩行タイミング検出部123は、推定した歩行周期に基づき、次の1歩における歩行フェーズ、立脚期及び遊脚期それぞれの開始時期及び継続時間を予測し、駆動制御部122に出力する。なお、ユーザ1が携帯する端末装置150が慣性計測装置を備える場合、歩行タイミング検出部123は、端末装置150から、加速度センサのセンサ値及びジャイロセンサのセンサ値を取得してもよい。
ここで、歩行フェーズ(gate phase)は、ユーザ1が1歩進む過程における歩行状態の時間的なタイミングを表す。歩行フェーズでは、ユーザ1の一方の脚が地面に着地したときが0%とされ、且つ、次にユーザ1の同じ脚が地面に着地したときが100%とされる。そして、歩行フェーズは、ユーザ1の歩行状態のタイミングを0%~100%で表す。例えば、歩行フェーズの0%~100%の値は、ユーザ1の一方の脚が地面に着地したときから次にユーザ1の同じ脚が地面に着地するときまでの経過時間に対応させてもよい。具体的には、ユーザ1の一方の脚が地面に着地したときから、次にユーザ1の同じ脚が地面に着地したときまでの時間が1sec(秒)の場合、ユーザ1の脚が地面に着地したときから0.5sec経過した時刻における歩行フェーズは、50%と表される。
より具体的には、歩行タイミング検出部123は、感圧センサ302のセンサ値に基づいてユーザ1の脚が地面に着地した時点を決定する場合、例えば、図11に示すように、感圧センサ302の圧力センサ値に対応する電圧値が、所定の値未満になる時点をかかとの接地タイミングとして検出する。なお、図11は、感圧センサ302の信号の例を示す図である。そして、感圧センサ302により所定値以上の圧力値が計測されている期間は、かかとが接地されていることを意味する。例えば、図11の例では、所定の値は、「VB」であり、感圧センサ302は、ユーザ1の両足に配置されている。歩行タイミング検出部123は、上半身ベルト111等に配置された慣性計測装置303に基づくタイミングよりも、感圧センサ302を介して、靴そのものが接地したタイミングを取得することによって、より確実に歩行周期を推定することができる。
また、歩行タイミング検出部123は、慣性計測装置303を用いる場合、加速度センサの情報に基づいてユーザ1の足が地面に着地した時点を決定する。加速度センサに基づく足の着地時点の推定方法は、例えば、IEEE TRANSACTIONS ON BIOMEDICAL ENGINEERING,VOL.52,NO.3,2005年,p.488,Fig.1,p.489,Fig.2を参照されたい。なお、歩行タイミング検出部123は、慣性計測装置303のセンサ値に基づいて歩行周期を推定する場合、加速度センサ及びジャイロセンサの信号波形から、歩行周期を推定してもよい。例えば、図12に示すような加速度センサの信号波形から、歩行周期の推定が可能である。図12の例では、加速度センサの信号波形から、ユーザ1の足の着地時点を推定することができ、それにより、歩行周期の推定が可能である。なお、図12は、慣性計測装置303の加速度センサの信号の例を示す図である。
なお、ユーザ1には、角度センサ(「傾斜センサ」とも呼ばれる)が装着されてもよい。このとき、角度センサは、例えば、ユーザ1の大腿部に取り付けられる。そして、歩行タイミング検出部123は、ユーザ1の股関節の角度を歩行情報として取得する。歩行タイミング検出部123は、ユーザ1の股関節の角度変化の周期に基づいて、歩行フェーズを算出する。
感圧センサ302及び慣性計測装置303のいずれを使用する場合であっても、歩行タイミング検出部123は、例えば、ユーザ1の直近の3歩の感圧センサ302のセンサ値または慣性計測装置303のセンサ値から、1歩毎の歩行フェーズの0%~100%の経過時間を推定し、3つの経過時間の平均値を算出してもよい。そして、歩行タイミング検出部123は、経過時間の平均値から次の1歩での歩行フェーズ100%の時刻を予測してもよい。さらに、歩行タイミング検出部123は、センサの信号波形から、1歩毎の歩行フェーズにおける立脚期及び遊脚期の開始タイミングを推定し、3歩の間で開始タイミングの平均値を算出してもよい。そして、歩行タイミング検出部123は、平均値に基づき、次の1歩での立脚期及び遊脚期の開始タイミングを予測してもよい。
又は、歩行タイミング検出部123は、ユーザ1の直近の1歩の感圧センサ302のセンサ値または慣性計測装置303のセンサ値から、1歩の歩行フェーズの0%~100%の経過時間を推定し、推定した経過時間に基づき、次の1歩での歩行フェーズ100%の時刻を予測してもよい。さらに、歩行タイミング検出部123は、センサの信号波形から、1歩の歩行フェーズにおける立脚期及び遊脚期の開始タイミングを推定し、次の1歩での立脚期及び遊脚期の開始タイミングを予測してもよい。
ワイヤ張力認識部124は、各ワイヤ110a1~110a4に発生している張力を検出する。ワイヤ張力認識部124は、力センサ115a1~115a4から取得するセンサ値に基づいて、各ワイヤ110a1~110a4の張力を検出する。ワイヤ張力認識部124は、検出した各ワイヤ110a1~110a4の張力を駆動制御部122に出力する。
駆動制御部122は、歩行タイミング検出部123から取得するユーザ1の予測された歩行フェーズの情報と、把持認識部121から取得するユーザ1による物体の把持情報とを基に、ワイヤ110a1~110a4の張力を調節するモータ114a1~114a4の制御を行う。駆動制御部122は、モータ114a1~114a4それぞれを起動させ、モータ114a1~114a4それぞれを停止させ、モータ114a1~114a4それぞれによるワイヤ110a1~110a4の引張量及び引張力を制御する。駆動制御部122によるモータ114a1~114a4それぞれの回転量の制御及び回転トルクの調整は、対応するワイヤの引張量及び引張力の制御を可能にする。
具体的には、駆動制御部122は、歩行タイミング検出部123から取得する歩行タイミングの予測結果に基づき、ユーザ1に行うアシストの種類を決定する。アシストの種類には、屈曲及び伸展のような、ユーザ1に対してアシストする脚の動作が含まれる。さらに、駆動制御部122は、アシストの種類に応じて、ワイヤ110a1~110a4の中から、ユーザ1への動作のアシストを行うために引っ張るべきワイヤと、当該ワイヤに与える張力と、当該ワイヤを引っ張るタイミングとを決定する。
また、駆動制御部122は、把持認識部121から取得するユーザ1が物体を把持しているか否かの情報、把持しているユーザの左手及び右手にかかる荷重等に基づき、同一のアシストの種類に対しても、ワイヤの張力とワイヤを引っ張るタイミングとの関係を変更する。
歩行タイミング検出部123から取得される歩行タイミングとアシストの種類との関係であるアシスト対応関係は、予め設定され、例えば、記憶部125に格納されている。引っ張られるワイヤと、ワイヤの張力と、ワイヤを引っ張るタイミングとの関係であるワイヤ-張力関係は、アシストの種類及びユーザ1による物体の把持の有無等に応じて、予め設定され、例えば、記憶部125に格納されている。また、ワイヤ-張力関係は、アシスト装置100のアシストでの制御実績に基づき、更新されてもよい。駆動制御部122は、記憶部125に格納されたアシスト対応関係及びワイヤ-張力関係の情報に基づき、ユーザ1に行うアシストの種類を決定し、決定したアシストの種類に対応するワイヤの制御を決定する。駆動制御部122は、決定したワイヤに与える張力及び引っ張るタイミングに応じて、当該ワイヤに繋がれたモータの制御を行う。
また、駆動制御部122は、ワイヤ張力認識部124から取得する各ワイヤ110a1~110a4の張力の情報に基づき、各ワイヤ110a1~110a4の張力が所定の張力となるように、モータ114a1~114a4の動作を制御する。また、駆動制御部122は、把持認識部121、歩行タイミング検出部123及びワイヤ張力認識部124から取得した情報に加えて、年齢、性別、体格及び体力等のユーザ1の情報、並びに脚へのアシストの介入程度等に基づき、ワイヤ-張力関係を変更して用いてもよい。
[2.アシスト装置の変形例]
上述したアシスト装置100において、上半身ベルト111と膝ベルト112a及び112bとは、4つのワイヤ110a1~110a4によって接続されていたが、ワイヤの数量はこれに限定されない。例えば、図13~図17に示すように、ワイヤの数量は、8つであってもよい。なお、図13は、実施の形態の変形例に係るアシスト装置200がユーザ1に装着された例を斜め前方から見た斜視図である。図14は、図13のアシスト装置100及びユーザ1の正面図である。図15は、図13のアシスト装置100及びユーザ1の背面図である。図16は、図13のアシスト装置200の各構成要素の配置を模式的に示す図である。図17は、図13のアシスト装置200の機能的な構成を示すブロック図である。
図13~図17に示されるように、変形例に係るアシスト装置200は、上半身ベルト111と、膝ベルト112a及び112bと、8つのワイヤである第一ワイヤ110a1~第八ワイヤ110a8とを備える。さらに、アシスト装置200は、第一ワイヤ110a1に繋がれたモータ114a1、第二ワイヤ110a2に繋がれたモータ114a2、第三ワイヤ110a3に繋がれたモータ114a3、第四ワイヤ110a4に繋がれたモータ114a4、第五ワイヤ110a5に繋がれたモータ114a5、第六ワイヤ110a6に繋がれたモータ114a6、第七ワイヤ110a7に繋がれたモータ114a7、第八ワイヤ110a8に繋がれたモータ114a8、及び、第一ワイヤ110a1に設けられた力センサ115a1、第二ワイヤ110a2に設けられた力センサ115a2、第三ワイヤ110a3に設けられた力センサ115a3、第四ワイヤ110a4に設けられた力センサ115a4、第五ワイヤ110a5に設けられた力センサ115a5、第六ワイヤ110a6に設けられた力センサ115a6、第七ワイヤ110a7に設けられた力センサ115a7、第八ワイヤ110a8に設けられた力センサ115a8、及び、制御部120を備えている。
上半身ベルト111において、ユーザ1の前部、左側部、背部及び右側部にはそれぞれ、収容部111a1、111a2、111a3及び111a4が配置されている。モータ114a1及び114a3が、収容部111a1に収容され、モータ114a5及び114a6が、収容部111a2に収容され、モータ114a2及び114a4が、収容部111a3に収容され、モータ114a7及び114a8が、収容部111a4に収容されている。
第一ワイヤ110a1及び第五ワイヤ110a5は、ユーザ1の前部で互いに交差する方向に延びるように配置され、具体的には、互いに交差して配置されている。第一ワイヤ110a1及び第五ワイヤ110a5それぞれの一方の端部は、左膝ベルト112aに固定され、第一ワイヤ110a1の他方の端部は、モータ114a1に接続され、第五ワイヤ110a5の他方の端部は、モータ114a5に接続されている。つまり、第一ワイヤ110a1は、左膝ベルト112aとモータ114a1を接続し、第五ワイヤ110a5は、左膝ベルト112aとモータ114a5を接続している。
第二ワイヤ110a2及び第六ワイヤ110a6は、ユーザ1の後部で互いに交差する方向に延びるように配置され、具体的には、互いに交差して配置されている。第二ワイヤ110a2及び第六ワイヤ110a6それぞれの一方の端部は、左膝ベルト112aに固定され、第二ワイヤ110a2の他方の端部は、モータ114a2に接続され、第六ワイヤ110a6の他方の端部は、モータ114a6に接続されている。つまり、第二ワイヤ110a2は、左膝ベルト112aとモータ114a2を接続し、第六ワイヤ110a6は、左膝ベルト112aとモータ114a6を接続している。
第三ワイヤ110a3及び第七ワイヤ110a7は、ユーザ1の前部で互いに交差する方向に延びるように配置され、具体的には、互いに交差して配置されている。第三ワイヤ110a3及び第七ワイヤ110a7それぞれの一方の端部は、右膝ベルト112bに固定され、第三ワイヤ110a3の他方の端部は、モータ114a3に接続され、第七ワイヤ110a7の他方の端部は、モータ114a7に接続されている。つまり、第三ワイヤ110a3は、右膝ベルト112bとモータ114a3を接続し、第七ワイヤ110a7は、右膝ベルト112bとモータ114a7を接続している。
第四ワイヤ110a4及び第八ワイヤ110a8は、ユーザ1の後部で互いに交差する方向に延びるように配置され、具体的には、互いに交差して配置されている。第四ワイヤ110a4及び第八ワイヤ110a8それぞれの一方の端部は、右膝ベルト112bに固定され、第四ワイヤ110a4の他方の端部は、モータ114a4に接続され、第八ワイヤ110a8の他方の端部は、モータ114a8に接続されている。つまり、第四ワイヤ110a4は、右膝ベルト112bとモータ114a4を接続し、第八ワイヤ110a8は、右膝ベルト112bとモータ114a8を接続している。
また、第一ワイヤ110a1及び第二ワイヤ110a2は、左膝ベルト112aから上方に且つユーザ1の右方に向かって延びる。具体的には、第一ワイヤ110a1及び第二ワイヤ110a2は、左膝ベルト112aから上方に向かって延びつつユーザ1の右方に向かって延び、例えば、左膝ベルト112aから右斜め上方に向かって延びる。第五ワイヤ110a5及び第六ワイヤ110a6は、左膝ベルト112aから上方に且つユーザ1の左方に向かって延びる。具体的には、第五ワイヤ110a5及び第六ワイヤ110a6は、左膝ベルト112aから上方に向かって延びつつユーザ1の左方に向かって延び、例えば、左膝ベルト112aから左斜め上方に向かって延びる。第三ワイヤ110a3及び第四ワイヤ110a4は、右膝ベルト112bから上方に且つユーザ1の左方に向かって延びる。具体的には、第三ワイヤ110a3及び第四ワイヤ110a4は、右膝ベルト112bから上方に向かって延びつつユーザ1の左方に向かって延び、例えば、右膝ベルト112bから左斜め上方に向かって延びる。第七ワイヤ110a7及び第八ワイヤ110a8は、右膝ベルト112bから上方に且つユーザ1の右方に向かって延びる。具体的には、第七ワイヤ110a7及び第八ワイヤ110a8は、右膝ベルト112bから上方に向かって延びつつユーザ1の右方に向かって延び、例えば、右膝ベルト112bから右斜め上方に向かって延びる。
なお、2つのワイヤが互いに交差する方向に延びるとは、2つのワイヤが延びる方向が交差することである。さらに、2つのワイヤの延びる方向が交差するとは、2つのワイヤが延びる方向が平行でないことであり、交点において交差していてもよく、交点を有さずに交差していなくてもよい。よって、2つのワイヤは、実際に、交点において交差していてもよく、交差していなくてもよい。このような互いに交差する方向に延びる2つのワイヤは、ユーザ1の外方からユーザ1を見たときに、交わっていてもよく、交わっていなくてもよい。当該2つのワイヤが交わっていない場合、図18及び図19に示すように、当該2つのワイヤは、例えば、V字状の形状を形成するように延びてもよく、互いから離れて延びてもよい。なお、図18及び図19のそれぞれは、図13のアシスト装置200におけるワイヤの配置の一変形例を示す図である。
また、本変形例では、8つの連結ベルト111b1~111b8のそれぞれは、第一ワイヤ110a1~第八ワイヤ110a8のうち対応するワイヤに沿い且つ上半身ベルト111から左膝ベルト112a又は右膝ベルト112bにわたって延びるように設けられている。連結ベルト111b1~111b8は第一ワイヤ110a1~第八ワイヤ110a8と1対1に対応する。
本変形例では、互いに交差する方向に延びる2つのワイヤのペアに関して、各ワイヤのペアの2つのワイヤはX字状に交差するが、第一ワイヤ110a1~第八ワイヤ110a8の配置構成は、これに限定されない。図18に示すように、例えば、第一ワイヤ110a1及び第五ワイヤ110a5が、V字状に配置されてもよい。この場合、第一ワイヤ110a1及び第五ワイヤ110a5は、左膝ベルト112aから上方に、末広がりのテーパ形状を形成し得る。さらに、左膝ベルト112a上において、第一ワイヤ110a1及び第五ワイヤ110a5は、図18に示すように互いに接近していてもよく、図19に示すように互いから離れていてもよい。他のワイヤのペアについても同様である。
又は、図20に示すように、例えば、第一ワイヤ110a1及び第五ワイヤ110a5が、V字形状を上下反対にした形状に配置されてもよい。この場合、第一ワイヤ110a1及び第五ワイヤ110a5は、左膝ベルト112aから上方に、先細のテーパ形状を形成し得る。さらに、上半身ベルト111上において、第一ワイヤ110a1及び第五ワイヤ110a5は、図20に示すように互いに接近していてもよく、図21に示すように互いから離れていてもよい。他のワイヤのペアについても同様である。なお、図20及び図21は、図13のアシスト装置200におけるワイヤの配置の変形例を示す図である。
図13~図15では、収容部111a1から延びる第一ワイヤ110a1と第三ワイヤ110a3は、V字形状を上下反対にした形状を形成し、収容部111a2から延びる第五ワイヤ110a5と第六ワイヤ110a6は、V字形状を上下反対にした形状を形成し、収容部111a3から延びる第二ワイヤ110a2と第四ワイヤ110a4は、V字形状を上下反対にした形状を形成し、収容部111a4から延びる第七ワイヤ110a7と第八ワイヤ110a8は、V字形状を上下反対にした形状を形成する。しかしながら、上半身ベルト111上での、第一ワイヤ110a1~第八ワイヤ110a8の配置は、上記配置に限定されない。例えば、第一ワイヤ110a1の巻き取り部分と第三ワイヤ110a3の巻き取り部分は、当該2つのワイヤが交差しないように離れて配置されてもよく、当該2つのワイヤがX字状に交差するように配置されてもよい。第五ワイヤ110a5の巻き取り部分と第六ワイヤ110a6の巻き取り部分は、当該2つのワイヤが交差しないように離れて配置されてもよく、当該2つのワイヤがX字状に交差するように配置されてもよい。第二ワイヤ110a2の巻き取り部分と第四ワイヤ110a4の巻き取り部分は、当該2つのワイヤが交差しないように離れて配置されてもよく、当該2つのワイヤがX字状に交差するように配置されてもよい。第七ワイヤ110a7の巻き取り部分と第八ワイヤ110a8の巻き取り部分は、当該2つのワイヤが交差しないように離れて配置されてもよく、当該2つのワイヤがX字状に交差するように配置されてもよい。
上述のようなアシスト装置200において、例えば、第一ワイヤ110a1に対してモータ114a1が張力を発生させ、第五ワイヤ110a5に対してモータ114a5が張力を発生させる。アシスト装置200は、モータ114a1を駆動して、第一ワイヤ110a1の張力を大きくすることで、膝と踵との距離を短くする方向に、ユーザ1の脚に力を作用させ、歩行時のユーザ1の足首の動きをアシストし、アシスト装置200は、モータ114a5を駆動して、第五ワイヤ110a5の張力を大きくすることで、膝と踵との距離を短くする方向に、ユーザ1の脚に力を作用させ、歩行時のユーザ1の足首の動きをアシストする。また、アシスト装置200は、第一ワイヤ110a1及び第五ワイヤ110a5の張力を異なる値に設定することで、ユーザ1の踵の左右の傾きに関するモーメント力を発生させることができ、ユーザ1の歩行時の足首の動きをアシストできる。
アシスト装置200は、ユーザの左脚股関節及び右脚股関節に対して、屈曲及び伸展させるアシスト力を付与することができる。図22Aを参照すると、変形例に係るアシスト装置200がユーザの左脚の股関節の屈曲をアシストするケースが示されている。図22Bを参照すると、変形例に係るアシスト装置200がユーザの右脚の股関節の屈曲をアシストするケースが示されている。図22Aでは、駆動制御部122は、左脚を屈曲させるために、モータ114a1及び114a5を駆動し、第一ワイヤ110a1及び第五ワイヤ110a5の張力を増加させる。図22Bでは、駆動制御部122は、右脚を屈曲させるために、モータ114a3及び114a7を駆動し、第三ワイヤ110a3及び第七ワイヤ110a7の張力を増加させる。本変形例では、第一ワイヤ110a1及び第五ワイヤ110a5の張力は同等とされるが、異なっていてもよい。本変形例では、第三ワイヤ110a3及び第七ワイヤ110a7の張力は同等とされるが、異なっていてもよい。
図23Aを参照すると、変形例に係るアシスト装置200がユーザの左脚の股関節の伸展をアシストするケースが示されている。図23Bを参照すると、変形例に係るアシスト装置200がユーザの右脚の股関節の伸展をアシストするケースが示されている。図23Aでは、駆動制御部122は、左脚を伸展させるために、第二ワイヤ110a2及び第六ワイヤ110a6の張力を増加する。図23Bでは、駆動制御部122は、右脚に伸展させるために、第四ワイヤ110a4及び第八ワイヤ110a8の張力を増加する。この伸展時の第二ワイヤ110a2の張力は、屈曲時の第一ワイヤ110a1の張力と同様であってもよい。この伸展時の第六ワイヤ110a6の張力は、屈曲時の第五ワイヤ110a5の張力と同様であってもよい。この伸展時の第四ワイヤ110a4の張力は、屈曲時の第三ワイヤ110a3の張力と同様であってもよい。この伸展時の第八ワイヤ110a8の張力は、屈曲時の第七ワイヤ110a7の張力と同様であってもよい。
上述では、駆動制御部122は、1つの脚の1つの動作をアシストするために、2つのワイヤの張力を増加させた。このとき、駆動制御部122は、他の6つのワイヤの張力を現状の値から変化させないように、ユーザの動作に合わせてモータを制御しワイヤの張力を調整してもよく、または、6つのワイヤに張力が作用しないように、6つワイヤのモータを停止してもよい。
[3.アシスト装置の動作]
[3-1.アシスト装置の全体的な動作]
次に、アシスト装置の全体的な動作の流れを説明する。アシスト装置の全体的な動作の流れに関して、実施の形態に係るアシスト装置100と変形例に係るアシスト装置200とは、同様であるため、実施の形態に係るアシスト装置100の動作を説明し、変形例に係るアシスト装置200の動作の説明を省略する。図24は、アシスト装置100がユーザ1をアシストする動作の全体的な流れの一例のフローチャートを示している。
図3及び図24に示すように、ステップS001において、アシスト装置100の制御部120は、ユーザから動作モードの指令を取得する、つまり、受け付ける。制御部120は、取得した指令に基づき、アシスト装置100の動作モードを決定する。具体的には、制御部120の駆動制御部122は、アシスト装置100の入力装置140、又は端末装置150から、アシスト装置100が実施する動作モードを受け取る。動作モードの例は、ユーザが荷物のような物品等の物体を把持せずに歩行する通常歩行モードと、ユーザが物体を把持して歩行する運搬歩行モードとである。
ステップS002において、駆動制御部122は、指令が運搬歩行モードであるか否かを判定する。駆動制御部122は、指令が運搬歩行モードである場合(ステップS002でYes)、ステップS003に進み、指令が運搬歩行モードでない場合(ステップS002でNo)、ステップS009に進む。
ステップS003において、制御部120の把持認識部121は、ユーザが物体を把持しているか否かを判定する。把持認識部121は、ユーザが手に装着する接触センサ301a及び301bから取得するセンサ値に基づき、ユーザによる物体の把持の有無を検出し、検出結果を駆動制御部122に出力する。把持認識部121は、把持ありと判定する場合(ステップS003でYes)、ステップS004に進み、把持なしと判定する場合(ステップS003でNo)、ステップS007に進む。
ステップS004において、駆動制御部122は、歩行タイミング検出部123が予測する歩行フェーズを取得する。さらに、ステップS005において、駆動制御部122は、取得した歩行フェーズに基づき、モータ114a1~114a4を制御し、ユーザの歩行をアシストするための予め設定された入力プロフィールに基づき、アシスト装置100のワイヤ110a1~114a4に張力を発生させる。予め設定された入力プロフィールは、記憶部125に格納されている。駆動制御部122は、ワイヤ110a1~114a4に張力を発生させることによって、ユーザの左脚及び右脚それぞれの屈曲及び伸展動作をアシストする。このとき、駆動制御部122は、力センサ115a1から取得するワイヤ110a1の張力に基づきワイヤ110a1の張力を制御し、力センサ115a2から取得するワイヤ110a2の張力に基づきワイヤ110a2の張力を制御し、力センサ115a3から取得するワイヤ110a3の張力に基づきワイヤ110a3の張力を制御し、力センサ115a4から取得するワイヤ110a4の張力に基づきワイヤ110a4の張力を制御する。
さらに、駆動制御部122は、把持認識部121の検出結果に基づき、ワイヤ110a1~110a4に発生させる張力のバランス、つまり、比率を変更する。そして、駆動制御部122は、上記比率が変更された入力プロフィールに基づき、ワイヤ110a1~110a4に張力を発生させる。上記比率が変更された入力プロフィールは、記憶部125に格納されていてもよく、駆動制御部122によって算出されてもよい。
例えば、把持認識部121が検出するユーザの左手及び右手にかかる荷重が同等である場合、駆動制御部122は、ワイヤ110a1に発生させる張力をワイヤ110a3に発生させる張力と同等とし、ワイヤ110a1に発生させる張力をワイヤ110a4に発生させる張力と同等とし、ワイヤ110a2に発生させる張力をワイヤ110a3に発生させる張力と同等とし、ワイヤ110a2に発生させる張力をワイヤ110a4に発生させる張力と同等とする。ユーザの左手及び右手にかかる荷重に差異がある場合、駆動制御部122は、ワイヤ110a1に発生させる張力とワイヤ110a3に発生させる張力に差異をつける、または、ワイヤ110a1に発生させる張力とワイヤ110a4に発生させる張力に差異をつける、または、ワイヤ110a2に発生させる張力とワイヤ110a3に発生させる張力に差異をつける、または、ワイヤ110a2に発生させる張力とワイヤ110a4に発生させる張力に差異をつける。このように、アシスト装置100は、物体を把持しているユーザの左手及び右手にかかる荷重に基づき、ユーザの歩行をアシストする。なお、2つの荷重が同等であることは、2つの荷重が同一であることだけでなく、2つの荷重の差異が数%~十数%以内であることを含んでもよい。
また、入力プロフィールは、左脚の歩行フェーズにおいてワイヤに張力を発生させるタイミング、ワイヤに張力を発生させる期間、及び当該期間内でのワイヤの張力の値を含み、右脚の歩行フェーズにおいてワイヤに張力を発生させるタイミング、ワイヤに張力を発生させる期間、及び当該期間内でのワイヤの張力の値を含む。入力プロフィールは、予め設定され、記憶部125に格納されている。なお、アシスト装置100によるアシストを受けているとき、ユーザは、入力装置140又は端末装置150を介して、ワイヤ張力の発生タイミング、ワイヤ張力の発生期間、及びワイヤ張力の値を調節してもよい。駆動制御部122は、当該調節結果を反映することによって入力プロフィールを変更し、記憶部125に格納してもよい。そして、駆動制御部122は、変更後の入力プロフィールを用いて、ワイヤ張力を制御してもよい。
次いで、ステップS006において、駆動制御部122は、ユーザからアシスト装置100によるアシストを停止する停止指令を取得したか否かを判定する。駆動制御部122は、停止指令を取得した場合(ステップS006でYes)、アシスト装置100を停止して一連の処理を終了し、停止指令を取得しない場合(ステップS006でNo)、ステップS003に戻る。なお、停止指令は、動作モードを変更する指令であってもよい。
ステップS003~S006の動作を繰り返すことによって、駆動制御部122は、ユーザの左手及び右手にかかる荷重の差異等に応じて、ワイヤ110a1~110a4に発生させる張力のバランスを変更した入力プロフィールを用いて、ワイヤ張力を制御する。これにより、左手及び右手にかかる荷重の関係が変化した場合でも、変化後の関係に対応して、駆動制御部122は、ワイヤ張力を制御する。
また、ステップS007において、駆動制御部122は、歩行タイミング検出部123が予測する歩行フェーズを取得する。さらに、ステップS008において、駆動制御部122は、取得した歩行フェーズに基づき、モータ114a1~114a4を制御し、ユーザの歩行をアシストするための予め設定された入力プロフィールに基づき、ワイヤ110a1~110a4に張力を発生させる。駆動制御部122は、力センサ115a1から取得するワイヤ110a1の張力に基づきワイヤ110a1の張力を制御し、力センサ115a2から取得するワイヤ110a2の張力に基づきワイヤ110a2の張力を制御し、力センサ115a3から取得するワイヤ110a3の張力に基づきワイヤ110a3の張力を制御し、力センサ115a4から取得するワイヤ110a4の張力に基づきワイヤ110a4の張力を制御することによって、ユーザの左脚及び右脚それぞれの屈曲及び伸展動作をアシストする。また、駆動制御部122は、把持認識部121から、ユーザの左手及び右手にかかる荷重を取得しないため、ユーザの左手及び右手にかかる荷重が同等である場合と同様の入力プロフィールに基づき、ワイヤ110a1~110a4の張力を制御する。このように、アシスト装置100は、物体を把持していないユーザの歩行をアシストする。駆動制御部122は、ステップS008の処理後、ステップS006に進む。
また、ステップS009以降、駆動制御部122は、通常歩行モードで動作する。ステップS009において、駆動制御部122は、歩行タイミング検出部123が予測する歩行フェーズを取得する。さらに、ステップS010において、駆動制御部122は、取得した歩行フェーズに基づき、モータ114a1~114a4を制御し、ユーザの歩行をアシストするための予め設定された入力プロフィールに基づき、ワイヤ110a1~110a4に張力を発生させる。ステップS010での入力プロフィールは、ステップS008での入力プロフィールと同じであってもよい。駆動制御部122は、力センサ115a1~115a4から取得するワイヤ110a1~110a4の張力に基づき、ワイヤ110a1~110a4の張力を制御することによって、ユーザの左脚及び右脚それぞれの屈曲及び伸展動作をアシストする。このように、アシスト装置100は、物体を把持していないユーザの歩行をアシストする。
次いで、ステップS011において、駆動制御部122は、ユーザからアシスト装置100によるアシストを停止する停止指令を取得したか否かを判定する。駆動制御部122は、停止指令を取得した場合(ステップS011でYes)、アシスト装置100を停止して一連の処理を終了し、停止指令を取得しない場合(ステップS011でNo)、ステップS009に戻る。なお、停止指令は、動作モードを変更する指令であってもよい。
上述したように、アシスト装置100は、ユーザが選択する通常歩行モード又は運搬歩行モードに応じて、ユーザの歩行動作をアシストする。さらに、運搬歩行モードでは、アシスト装置100は、物体を把持しているユーザの左手及び右手の荷重等に応じて、ワイヤ110a1~110a4に発生させる張力のバランスを変更し、ユーザの状態に応じたアシストを行う。
[3-2.アシスト装置のアシスト動作の詳細]
アシスト装置のアシスト動作の詳細を説明する。物品等の物体を把持している、つまり保持している状態でユーザが前方に向かって歩行する際、アシスト装置がユーザの歩行をアシストする動作を説明する。具体的には、前進歩行するユーザの左脚と右脚それぞれの屈曲及び伸展動作のアシストにおいて、張力を増加させるワイヤと、当該ワイヤの張力を増加させるタイミングとの関係を説明する。なお、実施の形態に係るアシスト装置100の動作と変形例に係るアシスト装置200の動作とは、屈曲及び伸展動作のアシストの際に張力を発生させるワイヤの数量及び張力の最大値が異なる点を除き、同様である。このため、以降では、実施の形態に係るアシスト装置100の動作を説明し、変形例に係るアシスト装置200の動作の説明を省略する。
アシスト装置100の駆動制御部122は、屈曲及び伸展からなるアシストの種類に応じたワイヤ-張力関係に基づき、張力を発生させるワイヤと、当該ワイヤの引張力と、当該ワイヤの張力を発生させるタイミング及び期間とを決定し、ユーザの動作をアシストする。例えば、図25には、物体を把持するユーザの前進歩行をアシストするアシスト装置100の動作の例が示されている。図25は、ユーザの左手及び右手にかかる荷重が同等であるケースを示す。そして、物体を把持しないユーザの前進歩行をアシストする場合も、アシスト装置100は、図25の例と同様に動作する。
図25では、ユーザの歩行状態と、各脚の歩行フェーズと、各脚の遊脚期及び立脚期との関係が示されている。さらに、各脚の歩行フェーズと、張力が発生させられるワイヤと、当該ワイヤの張力の状態つまりワイヤ張力の入力プロフィールとが、関係付けて示されている。ワイヤ張力の入力プロフィールは、各ワイヤに発生させる最大張力(張力ゲインとも呼ばれる)に対するワイヤ張力の割合を示す。例えば、各ワイヤの張力ゲインが100Nである場合、実際に発生させる張力は、入力プロフィール×張力ゲインで表される。そして、歩行フェーズ0~100%の間において、アシスト装置100は、最大張力を100Nとして、ワイヤ張力を変化させながら生み出す。
図25は、アシスト装置100が、ユーザの左脚及び右脚に対して、屈曲動作及び伸展動作のいずれをもアシストする例を示す。上述したように、アシスト装置100は、ワイヤ110a1に張力を発生することによって、屈曲動作のアシスト力を左脚に加え、ワイヤ110a2に張力を発生することによって、伸展動作のアシスト力を左脚に加える。アシスト装置100は、ワイヤ110a3に張力を発生することによって、屈曲動作のアシスト力を右脚に加え、ワイヤ110a4に張力を発生することによって、伸展動作のアシスト力を右脚に加える。なお、アシスト装置100は、ユーザの左脚及び右脚に対して、屈曲動作のアシスト及び伸展動作のアシストではなく、屈曲動作のアシスト及び伸展動作のアシストの一方を行ってもよい。
図25において、右脚の歩行フェーズを基準とし、右脚の歩行フェーズにおいて、右脚のかかとの接地を0%とし、左脚のかかとの接地を50%としている。これに限定するものではないが、本実施の形態では、右脚の歩行フェーズの0%は、左脚の歩行フェーズの50%と同時期である。なお、図25の例では、説明の便宜上、右脚の歩行フェーズを基準にしているが、いずれの脚の歩行フェーズが基準であってもよく、一方の脚の歩行フェーズを基準にする必要もない。
右脚の立脚期は右脚の歩行フェーズの0%以上かつ右脚の歩行フェーズの60%以下の期間であり、右脚の遊脚期は右脚の歩行フェーズの60%超かつ右脚の歩行フェーズの100%未満の期間である。
また、左脚の遊脚期は左脚の歩行フェーズの60%超かつ左脚の歩行フェーズの100%未満の期間であり、左脚の立脚期は左脚の歩行フェーズの100%以上かつ左脚の歩行フェーズの160%以下の期間である。なお、左脚の歩行フェーズにおいて、左脚の遊脚期である左脚の歩行フェーズの60%超かつ左脚の歩行フェーズの100%未満の期間は、左脚の第1の歩行フェーズに含まれ、左脚の立脚期である左脚の歩行フェーズの100%以上かつ左脚の歩行フェーズの160%以下の期間は、左脚の第1の歩行フェーズの次の左脚の第2の歩行フェーズに含まれる。つまり、左脚の歩行フェーズの100%以上かつ左脚の歩行フェーズの160%以下の期間は、左脚の第2の歩行フェーズの0%以上かつ左脚の第2の歩行フェーズの60%以下の期間である。このように、以下の説明において、100%以上の数値を用いて表す歩行フェーズは、0%~100%の数値を用いて表す歩行フェーズの次の歩行フェーズを意味する。また、図25において100%超の数値を用いて示されている歩行フェーズを、0%~100%の数値で置き換えて表現する場合がある。
ユーザの前進歩行をアシストする場合、アシスト装置100は、例えば、左脚の歩行フェーズの40%付近のタイミングで、左脚に屈曲のアシスト力を与える。左脚の上記タイミングは、左脚の立脚期及び右脚の遊脚期に含まれるタイミングである。具体的には、上記タイミングは、遊脚期の右脚が接地する直前のタイミングであり、このとき、ユーザの身体重心が前方に偏っている。ユーザの前進歩行をアシストする場合、アシスト装置100は、例えば、右脚の歩行フェーズの40%付近のタイミングで、右脚に屈曲のアシスト力を与える。右脚の上記タイミングは、左脚の遊脚期及び右脚の立脚期に含まれるタイミングである。具体的には、上記タイミングは、遊脚期の左脚が接地する直前のタイミングであり、このとき、ユーザの身体の重心が前方に偏っている。
また、アシスト装置100は、例えば、左脚の歩行フェーズの75%付近のタイミングで、左脚に伸展のアシスト力を与える。左脚の上記タイミングは、左脚の遊脚期及び右脚の立脚期に含まれるタイミングである。具体的には、上記タイミングは、ユーザが遊脚期の左脚を前方へ振り出す途中のタイミングであり、ユーザの身体の重心が後方から前方に移行する過程に含まれる。また、アシスト装置100は、例えば、右脚の歩行フェーズの75%付近のタイミングで、右脚に伸展のアシスト力を与える。右脚の上記タイミングは、左脚の立脚期及び右脚の遊脚期に含まれるタイミングである。具体的には、上記タイミングは、ユーザが遊脚期の右脚を前方へ振り出す途中のタイミングであり、ユーザの身体の重心が後方から前方に移行する過程に含まれる。
アシスト装置100がユーザの前進歩行をアシストする場合、ワイヤ110a1~110a4それぞれに、第1の閾値以上の張力を発生させる。図25の例でのワイヤ110a1~110a4のそれぞれの張力の一例は、100Nである。なお、第1の閾値は、ユーザが、ワイヤに発生した張力により、屈曲又は伸展の動作が促されていると認知できるような張力であってもよい。第1の閾値の例は、100Nの40%である40Nである。図25の例では、アシスト装置100は、ワイヤ110a1~110a4それぞれに対して、ワイヤ張力の発生期間において、発生させるワイヤ張力を徐々に増加させ、最大張力に達した後、徐々に減少させる。アシスト装置100がワイヤ110a1~110a4のそれぞれに発生させるワイヤ張力の入力プロフィールは、凸曲線の波形を形成する。なお、本例では、最大張力は100Nである。
アシスト装置100は、左脚の屈曲動作をアシストするために、例えば、左脚の歩行フェーズの40%以上85%以下の期間である第1の区間の全体において、ワイヤ110a1に張力を連続的に発生させる。そして、アシスト装置100は、第1の区間の少なくとも一部において、第1の閾値以上の張力をワイヤ110a1に発生させる。第1の区間内では、左脚は、立脚期から遊脚期に移行する。立脚期から遊脚期への移行の際に、左脚が屈曲動作のアシスト力を受けることによって、ユーザは、左脚を容易に持ち上げることができ、容易且つ確実に歩行することができる。
また、アシスト装置100は、第1の区間以外の期間である第5の区間において、図25の例では、ワイヤ110a1に張力を発生させないが、張力を発生させてもよい。例えば、アシスト装置100は、第5の区間において、ワイヤ110a1に第4の閾値よりも小さい張力を発生させてもよい。第4の閾値は、第1の閾値よりも小さく、例えば、ユーザが認知できないような張力である。このような第4の閾値は、例えば、ワイヤ110a1がたるまない程度の張力であってもよい。第4の閾値の例は、第1の閾値の0.2~0.4倍の値、又は10Nである。本明細書及び特許請求の範囲において、第4の閾値よりも小さい張力を発生させることは、0以上第4の閾値未満の張力を発生させることを意味し、発生させる張力が0である場合を含む。
なお、第1の区間の開始タイミングは、左脚の歩行フェーズの35%以上55%以下の期間に含まれるタイミングであってもよい。第1の区間の終了タイミングは、左脚の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間に含まれるタイミングであってもよい。ワイヤ張力が最大張力となるタイミングは、図25の例では、左脚の歩行フェーズの65%のタイミングであるが、左脚の歩行フェーズの60%以上70%以下の期間に含まれるタイミングであってもよい。よって、第1の区間は、左脚の歩行フェーズの35%以上90%以下の期間を取り得る。
アシスト装置100は、左脚の伸展動作をアシストするために、例えば、左脚の歩行フェーズの75%以上120%以下の期間である第2の区間の全体において、ワイヤ110a2に張力を連続的に発生させる。そして、アシスト装置100は、第2の区間の少なくとも一部において、第1の閾値以上の張力をワイヤ110a2に発生させる。第2の区間内では、左脚は、遊脚期から立脚期に移行する。遊脚期から立脚期への移行の際に、左脚が伸展動作のアシスト力を受けることによって、ユーザは、左脚を安定して着地させることができ、容易に且つ確実に歩行することができる。また、アシスト装置100は、第2の区間以外の期間である第6の区間において、図25の例では、ワイヤ110a2に張力を発生させないが、第4の閾値よりも小さい張力を発生させてもよい。
なお、第2の区間の開始タイミングは、左脚の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間に含まれるタイミングであってもよい。第2の区間の終了タイミングは、左脚の歩行フェーズの110%以上125%以下の期間に含まれるタイミングであってもよい。ワイヤ張力が最大張力となるタイミングは、図25の例では、左脚の歩行フェーズの100%のタイミングであるが、左脚の歩行フェーズの85%以上100%以下の期間に含まれるタイミングであってもよい。よって、第2の区間は、左脚の歩行フェーズの65%以上125%以下の期間、つまり、左脚の歩行フェーズの0%以上25%以下の期間及び左脚の歩行フェーズの65%以上100%未満の期間を取り得る。
アシスト装置100は、右脚の屈曲動作をアシストするために、例えば、右脚の歩行フェーズの40%以上85%以下の期間である第3の区間の全体において、ワイヤ110a3に張力を連続的に発生する。そして、アシスト装置100は、第3の区間の少なくとも一部において、第1の閾値以上の張力をワイヤ110a3に発生させる。第3の区間内では、右脚は、立脚期から遊脚期に移行する。また、アシスト装置100は、第3の区間以外の期間である第7の区間において、図25の例では、ワイヤ110a3に張力を発生させないが、第4の閾値よりも小さい張力を発生させてもよい。
なお、第3の区間の開始タイミングは、右脚の歩行フェーズの35%以上55%以下の期間に含まれるタイミングであってもよい。第3の区間の終了タイミングは、右脚の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間に含まれるタイミングであってもよい。ワイヤ張力が最大張力となるタイミングは、図25の例では、右脚の歩行フェーズの65%のタイミングであるが、右脚の歩行フェーズの60%以上70%以下の期間に含まれるタイミングであってもよい。よって、第3の区間は、右脚の歩行フェーズの35%以上90%以下の期間を取り得る。
アシスト装置100は、右脚の伸展動作をアシストするために、例えば、右脚の歩行フェーズの75%以上120%以下の期間である第4の区間の全体において、ワイヤ110a4に張力を連続的に発生する。そして、アシスト装置100は、第4の区間の少なくとも一部において、第1の閾値以上の張力をワイヤ110a4に発生させる。第4の区間内では、右脚は、遊脚期から立脚期に移行する。また、アシスト装置100は、第4の区間以外の期間である第8の区間において、図25の例では、ワイヤ110a4に張力を発生させないが、第4の閾値よりも小さい張力を発生させてもよい。
なお、第4の区間の開始タイミングは、右脚の歩行フェーズの65%以上90%以下の期間に含まれるタイミングであってもよい。第4の区間の終了タイミングは、右脚の歩行フェーズの110%以上125%以下の期間に含まれるタイミングであってもよい。ワイヤ張力が最大張力となるタイミングは、図25の例では、右脚の歩行フェーズの100%のタイミングであるが、右脚の歩行フェーズの85%以上100%以下の期間に含まれるタイミングであってもよい。よって、第4の区間は、右脚の歩行フェーズの65%以上125%以下の期間、つまり、右脚の歩行フェーズの0%以上25%以下の期間及び右脚の歩行フェーズの65%以上100%未満の期間を取り得る。
また、アシスト装置100は、上述したように、ワイヤ張力の各入力プロフィールに対応する期間の全体において、当該入力プロフィールに対応するワイヤに連続的に張力を発生させていたが、これに限定されない。アシスト装置100は、入力プロフィールに対応する期間において、ワイヤへの張力の発生を一時的に中断してもよい。このような場合、アシスト装置100がユーザの脚に与える負荷が低減し、ユーザがアシスト装置100の作用により感じる負担が低減する。
図25に示すワイヤ張力の入力プロフィールは、駆動制御部122がモータに信号を出力してから、実際にワイヤに張力が発生するまでの時間の遅れを考慮して、所望の時点よりも、歩行フェーズで数%早めに、ワイヤの張力が立ち上がるように設定されている。例えば、図25の例では、所望の時点よりも約5%程度早いタイミングでワイヤの張力が立ち上がるように、ワイヤ張力の入力プロフィールが作成されている。また、屈曲のアシストに関して、足のかかとが接地する直前に屈曲のアシストが終了するように、アシスト装置100はアシストを行う。そこで、ワイヤの張力の出力の遅れを考慮し、屈曲のアシストの終了が各脚の歩行フェーズでおおよそ100%のタイミングになるように、ワイヤ張力の入力プロフィールは、各脚の歩行フェーズの80%以上90%以下の期間に含まれるタイミングで終了するように作成されている。
上述したように、図25の例は、ユーザの左手及び右手にかかる荷重が同等であるケースを示す。しかしながら、アシスト装置100は、ユーザの左手及び右手にかかる荷重が異なる場合、図25に示すワイヤ張力の入力プロフィールと異なる入力プロフィールを用いて、各ワイヤ110の張力を制御する。
具体的には、アシスト装置100は、接触センサ301a及び301bから取得するセンサ値に基づき、物体を把持する左手及び右手にかかる荷重を検出する。さらに、アシスト装置100は、左手及び右手にかかる荷重の差異に基づき、図25に示すワイヤ張力の入力プロフィールを変更し、変更された入力プロフィールを用いて、ワイヤ110a4~110a4の張力を制御し、ユーザの歩行をアシストする。
例えば、図26A~図26Cに示すように、ユーザによる物体の把持方法に応じて、ユーザの左手及び右手にかかる荷重が変動する。なお、図26A~図26Cは、ユーザによる物体の把持方法の例を示す図である。
図26Aの例では、アシスト装置100を装着するユーザ1は、物体Aに対して、同等の高さ位置に左手及び右手をあてがい、物体Aを把持している。つまり、ユーザ1は、左腕及び右腕の姿勢を均衡させた状態で物体Aを把持している。この場合、ユーザの左手及び右手にかかる荷重は、同等である。このため、駆動制御部122は、図25に示すようなワイヤ張力の入力プロフィールを用いて、ワイヤ110a4~110a4の張力を制御する。
図25に示す入力プロフィールでは、左脚の歩行フェーズの第1の区間におけるワイヤ110a1の張力の入力プロフィールと、右脚の歩行フェーズの第3の区間におけるワイヤ110a3の張力の入力プロフィールとが、同様である。つまり、第1の区間におけるワイヤ110a1の最大張力と、第3の区間におけるワイヤ110a3の最大張力とが、同等である。さらに、左脚の歩行フェーズの第2の区間におけるワイヤ110a2の張力の入力プロフィールと、右脚の歩行フェーズの第4の区間におけるワイヤ110a4の張力の入力プロフィールとが、同様である。つまり、第2の区間におけるワイヤ110a2の最大張力と、第4の区間におけるワイヤ110a4の最大張力とが、同等である。
また、図26Bの例では、アシスト装置100を装着するユーザ1は、物体Aに対して、不均等な高さ位置に左手及び右手をあてがい、物体Aを把持している。具体的には、右手の高さ位置が、左手の高さ位置よりも高い。この場合、ユーザの左手にかかる荷重は、右手にかかる荷重よりも大きい。これにより、ユーザの身体の重心は、中央から左方へ偏り、ユーザの左脚の負荷が大きくなる。このため、駆動制御部122は、図25に示すようなワイヤ張力の入力プロフィールにおいて、左脚のワイヤ110a1及び110a2の張力を右脚のワイヤ110a3及び110a4の張力よりも大きくなるように変更したワイヤ張力の入力プロフィールを用いる。本実施の形態では、左脚のワイヤ110a1及び110a2の張力と右脚のワイヤ110a3及び110a4の張力との関係は、張力の比率に基づき定義されるが、これに限定されず、例えば、張力の差に基づき定義されてもよい。
具体的には、上記のような場合、右脚のワイヤ110a3及び110a4の張力に対する左脚のワイヤ110a1及び110a2の張力の比率は、第1の比率とされる。つまり、第1の比率=(左脚のワイヤの張力)/(右脚のワイヤの張力)である。第1の比率は、1.2以上2.0以下の範囲内のいずれかの値とされる。第1の比率は、左手にかかる荷重と右手のかかる荷重との差異が大きくなる程、大きくされるが、固定された値でもよい。固定された値の場合、第1の比率は、予め決定され、記憶部125に格納されていてもよく、入力装置140又は端末装置150を介してユーザによって決定され、記憶部125に格納されていてもよい。例えば、図8に示す入力装置140では、左手ボタン145及び右手ボタン146が、第1の比率を下降及び上昇する機能を備えてもよい。
第1の比率は、同じ動作をアシストする左脚及び右脚のワイヤのペアの張力で構成される。第1の比率を構成するワイヤのペアの張力の例は、左脚の歩行フェーズの第1の区間におけるワイヤ110a1の最大張力と右脚の歩行フェーズの第3の区間におけるワイヤ110a3の最大張力とのペア、及び、左脚の歩行フェーズの第2の区間におけるワイヤ110a2の最大張力と右脚の歩行フェーズの第4の区間におけるワイヤ110a4の最大張力とのペア等である。
図26Bの例において、第1の比率は、例えば、「1.2」とされる。この場合、駆動制御部122は、図27に示すようなワイヤ張力の入力プロフィールに基づき、各ワイヤ110の張力を制御する。なお、図27は、左手の荷重が右手の荷重よりも大きい状態で物体を把持するユーザの前進歩行をアシストするアシスト装置100の動作の例を示す図である。図27の例では、左脚のワイヤ110a1及び110a2に発生させる最大張力は、100Nであり、右脚のワイヤ110a3及び110a4に発生させる最大張力は、83Nである。ワイヤ110a3及び110a4の張力の入力プロフィールの波形の全体が、小さくされた最大張力に合わせて、変更されている。図27の例では、ワイヤ110a3及び110a4の張力の入力プロフィールの波形における張力の発生タイミング、張力の発生期間、及び、張力が最大となるタイミングは、図25から変更されていない。
図27の例において、第1の区間におけるワイヤ110a1の張力をf1(θ)、第2の区間におけるワイヤ110a2の張力をf2(θ)、第3の区間におけるワイヤ110a3の張力をf3(θ)、第4の区間におけるワイヤ110a4の張力をf4(θ)、θを歩行フェーズとして、f1(θ)/f3(θ)=第1の比率、f2(θ)/f4(θ)=第1の比率、第1の比率=1.2と定義してもよい。ここで、θは張力付与開始時の歩行フェーズを含なくてもよい。ここで、θは張力付与終了時の歩行フェーズを含まなくてもよい。
よって、駆動制御部122は、左脚の歩行フェーズの第1の区間におけるワイヤ110a1の張力、及び左脚の歩行フェーズの第2の区間におけるワイヤ110a2の張力を、右脚の歩行フェーズの第3の区間におけるワイヤ110a3の張力、及び右脚の歩行フェーズの第4の区間におけるワイヤ110a4の張力よりも大きくする。
図27のように、左脚のワイヤ110a1及び110a2の最大張力のいずれも、右脚のワイヤ110a3及び110a4の最大張力よりも大きくすることは、ユーザの歩行のアシストに最も効果的である。ユーザは、負荷がより大きい左脚により大きいアシスト力を受け、負荷がより小さい右脚により小さいアシスト力を受けるため、左脚及び右脚の負荷が均等であるように体感しつつ、スムーズに歩行することができる。また、物体を把持するユーザの身体の重心は、前方へ移動する傾向がある。このため、ユーザの後部のワイヤ110a2及び110a4に発生させる張力を大きくし伸展のアシスト力を大きくすることは、ユーザの身体の重心を直立状態に維持することに効果的である。よって、左脚のワイヤ110a2の最大張力のみが、右脚のワイヤ110a3及び110a4の最大張力よりも大きくされ、左脚のワイヤ110a1の最大張力は、右脚のワイヤ110a3及び110a4の最大張力と同等とされてもよい。このような場合でも、物体を把持するユーザは、左脚及び右脚の負荷が比較的均等であるように体感することができる。
また、ユーザの右手にかかる荷重が左手のかかる荷重よりも大きい場合、第1の比率=(右脚のワイヤの張力)/(左脚のワイヤの張力)である。そして、アシスト装置100は、第1の比率に基づき、右脚のワイヤ110a3及び110a4に発生させる張力を、左脚のワイヤ110a1及び110a2に発生させる張力よりも大きくしたアシストを行う。
よって、駆動制御部122は、右脚の歩行フェーズの第3の区間におけるワイヤ110a3の張力、及び右脚の歩行フェーズの第4の区間におけるワイヤ110a4の張力を、左脚の歩行フェーズの第1の区間におけるワイヤ110a1の張力、及び左脚の歩行フェーズの第2の区間におけるワイヤ110a2の張力よりも大きくする。
また、図26Cの例では、アシスト装置100を装着するユーザ1は、左手のみを用いて、物体Aを把持している。この場合、ユーザの左手にかかる荷重は、右手にかかる荷重よりも遙かに大きく、ユーザの身体の重心は、中央から左方へ偏り、ユーザの左脚の負荷が大きくなる。このため、駆動制御部122は、図26Bの例よりも大きい第1の比率に対応するワイヤ張力の入力プロフィールを用いて、ワイヤ110a4~110a4の張力を制御する。このような第1の比率は、1.2以上3.0以下の範囲内のいずれかの値とされる。図26Cの例において、第1の比率は、例えば、「1.5」とされる。この場合、駆動制御部122は、図28に示すようなワイヤ張力の入力プロフィールに基づき、ワイヤ110a4~110a4の張力を制御する。なお、図28は、左手の荷重が右手の荷重よりも大きい状態で物体を把持するユーザの前進歩行をアシストするアシスト装置100の動作の別の例を示す図である。図28の例では、左脚のワイヤ110a1及び110a2に発生させる最大張力は、100Nであり、右脚のワイヤ110a3及び110a4に発生させる最大張力は、67Nである。ワイヤ110a3及び110a4の張力の入力プロフィールの波形の全体が、小さくされた最大張力に合わせて、変更されている。
図28の例において、第1の区間におけるワイヤ110a1の張力をg1(θ)、第2の区間におけるワイヤ110a2の張力をg2(θ)、第3の区間におけるワイヤ110a3の張力をg3(θ)、第4の区間におけるワイヤ110a4の張力をg4(θ)、θを歩行フェーズとして、g1(θ)/g3(θ)=第1の比率、g2(θ)/g4(θ)=第1の比率、第1の比率=1.5と定義してもよい。ここで、θは張力付与開始時の歩行フェーズを含まなくてもよい。ここで、θは張力付与終了時の歩行フェーズを含まなくてもよい。
上述したように、アシスト装置100は、ユーザの左手及び右手にかかる荷重の差異に基づき、第1の比率を決定する。具体的には、上記差異が大きくなる程、第1の比率は大きくなる。さらに、アシスト装置100は、図25に示すような第1の比率が1である場合のワイヤ張力の入力プロフィールを、第1の比率に基づき左脚及び右脚のワイヤ張力を差異付けることによって変更し、変更された入力プロフィールに基づき、ワイヤ110a4~110a4の張力を制御する。つまり、アシスト装置100は、ユーザの左手及び右手にかかる荷重の差異に基づき、左脚のワイヤ張力と右脚のワイヤ張力とのバランスを変更する。なお、左手及び右手にかかる荷重の差異は、左手及び右手にかかる荷重の差、並びに、左手及び右手にかかる荷重の比率等で表されてもよい。また、変更された入力プロフィールは、記憶部125に予め格納されていてもよく、駆動制御部122によって算出されてもよい。さらに、図24に関して説明したように、歩行中にユーザの物体の把持方法が、例えば、図26A~図26Cの間で変化した場合でも、アシスト装置100は、変化後の把持方法に対応して、左脚及び右脚のワイヤ張力のバランスを変更することができる。
[3-3-1.アシスト装置のアシスト動作の変形例1]
アシスト装置100のアシスト動作の変形例1を説明する。本変形例では、アシスト装置100は、ユーザの利き手情報に基づき、左脚のワイヤ110a1及び110a2に発生させるワイヤ張力と、右脚のワイヤ110a3及び110a4に発生させるワイヤ張力とを差異付ける。ユーザの利き手情報は、ユーザの利き手が左手及び右手のいずれであるかを示す情報である。アシスト装置100の駆動制御部122は、記憶部125に予め格納されたユーザの利き手情報を取得してもよく、入力装置140又は端末装置150を介して入力されたユーザの利き手情報を取得してもよい。
図8に示すように、入力装置140が用いられる場合、ユーザは、左手ボタン145又は右手ボタン146を押すことによって、利き手を決定する。駆動制御部122は、左手ボタン145又は右手ボタン146が発生する信号を受信することによって、左手又は右手の利き手情報を取得する。なお、利き手と利き手でない手との筋力差の設定が可能であってもよい。例えば、入力装置140の場合、左手ボタン145又は右手ボタン146を押す回数に応じて、筋力差が設定されてもよい。具体的には、例えば、左手ボタン145が押される回数が増えるに従い、左手の筋力が右手に対してより大きく設定されてもよい。右手ボタン146についても同様である。なお、筋力差の設定方法は、上記に限定されず、いかなる方法でもよく、例えば、筋力差の設定するためのボタン、ダイヤル、スライドボタン又はレバー等が設けられてもよい。なお、ユーザの利き手情報が入力されるタイミングは、ユーザが動作モードの実行を決定する操作を行う過程のうちのいずれかのタイミング等であってもよい。
ユーザは、物体を両手で把持する際、利き手により大きい負荷をかける場合が多い。さらに、ユーザは、物体を片手で把持する際、利き手で把持する場合が多い。このため、物体を把持するユーザの身体の重心は、利き手に向かって偏り、利き手と同じ側の脚の負荷がより大きくなる。例えば、利き手が左手であれば、左脚の負荷が右脚よりも大きくなり、利き手が右手であれば、右脚の負荷が左脚よりも大きくなる。このため、駆動制御部122は、図25に示すようなワイヤ張力の入力プロフィールを、利き手と同じ側の脚のワイヤ110の張力が、利き手と反対側の脚のワイヤ110の張力よりも大きくなるように変更し、この変更された入力プロフィールを用いる。例えば、左手が利き手である場合、変更された入力プロフィールでは、左脚のワイヤ110a1及び110a2に発生させる張力が、右脚のワイヤ110a3及び110a4に発生させる張力よりも大きい。
本変形例でも、左脚のワイヤ110a1及び110a2の張力と右脚のワイヤ110a3及び110a4の張力との関係は、張力の比率に基づき定義されるが、これに限定されず、例えば、張力の差に基づき定義されてもよい。具体的には、第1の比率と同様の第2の比率が用いられる。利き手が左である場合、第2の比率=(左脚のワイヤの張力)/(右脚のワイヤの張力)である。第2の比率は、1.2以上1.5以下の範囲内のいずれかの値とされる。そして、駆動制御部122は、予め決められた第2の比率を用いてもよく、上述で設定された利き手と利き手でない手との筋力差に基づき、第2の比率を決定してもよい。このとき、筋力差が大きい程、第2の比率が大きくなる。そして、例えば、利き手が左手であり且つ第2の比率が「1.2」である場合、駆動制御部122は、左手及び右手の荷重に差異がある場合と同様に、図27に示すようなワイヤ張力の入力プロフィールに基づき、各ワイヤ110の張力を制御する。
このような駆動制御部122は、利き手が左手の場合、左脚の歩行フェーズの第1の区間におけるワイヤ110a1の張力、及び左脚の歩行フェーズの第2の区間におけるワイヤ110a2の張力を、右脚の歩行フェーズの第3の区間におけるワイヤ110a3の張力、及び右脚の歩行フェーズの第4の区間におけるワイヤ110a4の張力よりも大きくする。また、駆動制御部122は、利き手が右手の場合、右脚の歩行フェーズの第3の区間におけるワイヤ110a3の張力、及び右脚の歩行フェーズの第4の区間におけるワイヤ110a4の張力を、左脚の歩行フェーズの第1の区間におけるワイヤ110a1の張力、及び左脚の歩行フェーズの第2の区間におけるワイヤ110a2の張力よりも大きくする。
本変形例でも、例えば、利き手が左手の場合、左脚のワイヤ110a1及び110a2の最大張力のいずれもが、右脚のワイヤ110a3及び110a4の最大張力よりも大きくされてもよく、左脚のワイヤ110a2の最大張力のみが、右脚のワイヤ110a3及び110a4の最大張力よりも大きくされてもよい。
上述したように、アシスト装置100は、ユーザの利き手の情報に基づき、第2の比率を決定する。さらに、アシスト装置100は、図25に示すような第2の比率が1である場合のワイヤ張力の入力プロフィールを、第2の比率に基づき左脚及び右脚のワイヤ張力を差異付けることによって変更し、変更された入力プロフィールに基づき、各ワイヤ110の張力を制御する。つまり、アシスト装置100は、ユーザの利き手の情報に基づき、左脚のワイヤ張力と右脚のワイヤ張力とのバランスを変更する。なお、変更された入力プロフィールは、記憶部125に予め格納されていてもよく、駆動制御部122によって算出されてもよい。
アシスト装置100は、本変形例のように、ユーザの利き手の情報に基づき、左脚及び右脚のワイヤ張力のバランスを変更する場合、ユーザの左手及び右手にかかる荷重の差異に基づく左脚及び右脚のワイヤ張力のバランスの変更を適用しても適用しなくてもよい。適用しない場合、接触センサ301a及び301bによる検出が不要になるため、アシスト装置100の簡略化及びワイヤ張力の制御処理の簡略化が可能になる。適用する場合、物体を把持するユーザの状態とユーザの特性とを反映した緻密なワイヤ張力の制御が可能になる。
[3-3-2.アシスト装置のアシスト動作の変形例2]
アシスト装置100のアシスト動作の変形例2を説明する。本変形例では、アシスト装置100は、左手及び右手にかかる荷重に基づき、ユーザが物体を片手で把持していることを検出する。ユーザが物体を片手で把持している場合、実施の形態では、アシスト装置100は、把持している手と同じ側の脚のワイヤ110の張力を、反対側の脚のワイヤ110の張力よりも大きくした。しかしながら、本変形例では、アシスト装置100は、実施の形態と異なる組み合わせのワイヤ110の張力を、他のワイヤ110の張力よりも大きくする。
まず、本変形例に係るアシスト装置100の動作のうち、左手及び右手にかかる荷重に基づきユーザが物体を片手で把持していることを検出する動作を説明する。図3、図10A及び図10Bを参照すると、把持認識部121は、左接触センサ301a及び右接触センサ301bから取得するセンサ値に基づき、左接触センサ301a及び右接触センサ301bにかかる荷重を検出し、それにより、ユーザ1の左手及び右手にかかる荷重を検出する。
ここで、左接触センサ301aにかかる荷重つまり力が、第2の閾値以上であり、且つ、右接触センサ301bにかかる荷重がない場合を、第1の条件とする。また、右接触センサ301bにかかる荷重が、第2の閾値以上であり、且つ、左接触センサ301aにかかる荷重がない場合を、第2の条件とする。駆動制御部122は、第1の条件が満たされる場合、ユーザが物体を左手のみで把持していると検出し、第2の条件が満たされる場合、ユーザが物体を右手のみで把持していると検出する。
なお、第2の閾値は、第2の閾値以上の荷重が片手に作用すると、ユーザが、当該手と同じ側の脚への負荷の増加を体感するような値であってもよい。第2の閾値は、時間的な意味を含んでもよく、例えば、所定の時間以上にわたって第2の閾値以上の値が継続することが、第2の閾値以上の値であるとされてもよい。第2の閾値は、ユーザ毎に設定されてもよい。第2の閾値は、例えば、0~255で正規化された電圧値50~220の範囲内で選択されてもよく、その一例は、200である。また、左接触センサ301a及び右接触センサ301bにかかる荷重がないことは、荷重が「0」であることだけでなく、第3の閾値よりも小さい荷重であることを含む。駆動制御部122は、0以上且つ第3の閾値未満である荷重が左接触センサ301a及び右接触センサ301bにかかっていても、荷重がかかっていないと見なす。第3の閾値は、0~255で正規化された電圧値のような値であってもよい。第3の閾値は、10~50の範囲内から選択されてもよく、その一例は、20である。
上述のように、駆動制御部122は、第1の条件又は第2の条件が満たされるか否かに基づき、ユーザが物体を左手のみ又は右手のみで把持しているか否かを検出する。なお、左接触センサ301a及び右接触センサ301bの一方にかかる荷重が第2の閾値以上であり、他方にかかる荷重が第3の閾値以上である場合、駆動制御部122は、ユーザが両手で物体を把持していると検出してもよい。
次いで、第1の条件及び第2の条件が満たされる場合のアシスト装置100の動作を説明する。まず、第1の条件が満たされる場合、ユーザは、物品を左手のみで把持し、左脚にかかる負荷が、右脚よりも大きい。このため、駆動制御部122は、図25に示すようなワイヤ張力の入力プロフィールにおいて、左脚のワイヤ110a2及び右脚のワイヤ110a3の張力が、左脚のワイヤ110a1及び右脚のワイヤ110a4の張力よりも大きくなるように変更されたワイヤ張力の入力プロフィールを用いる。つまり、アシスト装置100は、ワイヤ110a1~110a4における張力のバランスを変更する。具体的には、左脚の歩行フェーズの第2の区間でのワイヤ110a2の最大張力が、右脚の歩行フェーズの第4の区間でのワイヤ110a4の最大張力よりも大きくされる。さらに、右脚の歩行フェーズの第3の区間でのワイヤ110a3の最大張力が、左脚の歩行フェーズの第1の区間でのワイヤ110a1の最大張力よりも大きくされる。
よって、駆動制御部122は、左脚の歩行フェーズの第2の区間でのワイヤ110a2の張力を、右脚の歩行フェーズの第4の区間でのワイヤ110a4の張力よりも大きくし、右脚の歩行フェーズの第3の区間でのワイヤ110a3の張力を、左脚の歩行フェーズの第1の区間でのワイヤ110a1の張力よりも大きくする。これにより、アシスト装置100は、左脚の伸展のアシスト力及び右脚の屈曲のアシスト力をそれぞれ、右脚の伸展のアシスト力及び左脚の屈曲のアシスト力よりも大きくする。
また、バランスの変更後のワイヤ張力の関係は、実施の形態において用いられた第1の比率と同様の第3の比率に基づき定義されるが、これに限定されず、例えば、張力の差に基づき定義されてもよい。第3の比率の場合、第3の比率=(ワイヤ110a2の張力)/(ワイヤ110a4の張力)、及び第3の比率=(ワイヤ110a3の張力)/(ワイヤ110a1の張力)である。第3の比率は、1.2以上2.0以下の範囲内のいずれかの値とされる。第3の比率は、左手にかかる荷重と右手のかかる荷重との差異が大きくなる程、大きくされるが、固定された値でもよい。固定された値の場合、第3の比率は、予め決定され、記憶部125に格納されていてもよく、入力装置140又は端末装置150を介してユーザによって決定され、記憶部125に格納されていてもよい。例えば、図8に示す入力装置140では、左手ボタン145及び右手ボタン146が、第3の比率を下降及び上昇する機能を備えてもよい。
上述のような駆動制御部122は、第1の条件が満たされる場合、図25から変更された図29に示すようなワイヤ張力の入力プロフィールに基づき、各ワイヤ110の張力を制御する。なお、図29は、左手のみで物体を把持するユーザの前進歩行をアシストするアシスト装置100の動作の例を示す図である。図29の例では、第3の比率は、「1.5」であり、ワイヤ110a2及びワイヤ110a3に発生させる最大張力は、100Nであり、ワイヤ110a4及びワイヤ110a1に発生させる最大張力は、67Nである。ワイヤ110a1及び110a4の張力の入力プロフィールの波形の全体が、小さくされた最大張力に合わせて、変更されている。図29の例では、ワイヤ110a1及び110a4の張力の入力プロフィールの波形における張力の発生タイミング、張力の発生期間、及び、張力が最大となるタイミングは、図25から変更されていない。
図29の例において、第1の区間におけるワイヤ110a1の張力をh1(θ)、第2の区間におけるワイヤ110a2の張力をh2(θ)、第3の区間におけるワイヤ110a3の張力をh3(θ)、第4の区間におけるワイヤ110a4の張力をh4(θ)、θを歩行フェーズとして、h2(θ)/h4(θ)=第3の比率、h3(θ)/h1(θ)=第3の比率と定義してもよい。ここで、θは張力付与開始時の歩行フェーズを含まなくてもよい。ここで、θは張力付与終了時の歩行フェーズを含まなくてもよい。
次いで、第2の条件が満たされる場合、ユーザは、物品を右手のみで把持し、右脚にかかる負荷が、左脚よりも大きい。このため、駆動制御部122は、図25に示すようなワイヤ張力の入力プロフィールにおいて、右脚のワイヤ110a4及び左脚のワイヤ110a1の張力が、左脚のワイヤ110a2及び右脚のワイヤ110a3の張力よりも大きくなるように変更されたワイヤ張力の入力プロフィールを用いる。具体的には、右脚の歩行フェーズの第4の区間でのワイヤ110a4の最大張力が、左脚の歩行フェーズの第2の区間でのワイヤ110a2の最大張力よりも大きくされる。さらに、左脚の歩行フェーズの第1の区間でのワイヤ110a1の最大張力が、右脚の歩行フェーズの第3の区間でのワイヤ110a3の最大張力よりも大きくされる。
よって、駆動制御部122は、右脚の歩行フェーズの第4の区間でのワイヤ110a4の張力を、左脚の歩行フェーズの第2の区間でのワイヤ110a2の張力よりも大きくし、左脚の歩行フェーズの第1の区間でのワイヤ110a1の張力を、右脚の歩行フェーズの第3の区間でのワイヤ110a3の張力よりも大きくする。これにより、アシスト装置100は、右脚の伸展のアシスト力及び左脚の屈曲のアシスト力をそれぞれ、左脚の伸展のアシスト力及び右脚の屈曲のアシスト力よりも大きくする。よって、アシスト装置100は、第1の条件が満たされる場合の左脚及び右脚へのアシストと類似するアシストを、右脚及び左脚に与える。
また、第3の比率について、第3の比率=(ワイヤ110a4の張力)/(ワイヤ110a2の張力)、及び第3の比率=(ワイヤ110a1の張力)/(ワイヤ110a3の張力)である。
上述のような駆動制御部122は、第2の条件が満たされる場合、図25から変更された図30に示すようなワイヤ張力の入力プロフィールに基づき、ワイヤ110a4~110a4の張力を制御する。なお、図30は、右手のみで物体を把持するユーザの前進歩行をアシストするアシスト装置100の動作の例を示す図である。図30の例では、第3の比率は、「1.5」であり、ワイヤ110a4及びワイヤ110a1に発生させる最大張力は、100Nであり、ワイヤ110a2及びワイヤ110a3に発生させる最大張力は、67Nである。ワイヤ110a2及び110a3の張力の入力プロフィールは、図29のワイヤ110a1及び110a4と同様の方法で形成されている。
図30の例において、第1の区間におけるワイヤ110a1の張力をi1(θ)、第2の区間におけるワイヤ110a2の張力をi2(θ)、第3の区間におけるワイヤ110a3の張力をi3(θ)、第4の区間におけるワイヤ110a4の張力をi4(θ)、θを歩行フェーズとして、i4(θ)/i2(θ)=第3の比率、i1(θ)/i3(θ)=第3の比率と定義してもよい。ここで、θは張力付与開始時の歩行フェーズを含まなくてもよい。ここで、θは張力付与終了時の歩行フェーズを含まなくてもよい。
図29及び図30に示すようなワイヤ張力の入力プロフィールは、予め作成され、記憶部125に格納されてもよく、駆動制御部122によって形成されてもよい。
上述のようなアシスト装置100は、左手での物体の把持によって、重力方向下方の負荷をより大きく受ける左脚に、負荷がより小さい右脚よりも大きい伸展のアシスト力を与え、右手での物体の把持によって、重力方向下方の負荷をより大きく受ける右脚に、負荷がより小さい左脚よりも大きい伸展のアシスト力を与える。伸展のアシスト力は、重力方向下方の負荷を受ける脚を補助し、当該脚の負担を軽減する。このため、アシスト装置100は、左脚及び右脚の負担及び疲労を均等な状態で抑えるように、ユーザの歩行をアシストする。これにより、ユーザは、左脚及び右脚の負荷が均等であるように体感しつつ、左脚及び右脚をバランスよく動作させて歩行することができる。また、アシスト装置100は、負荷がより小さい右脚に、負荷がより大きい左脚よりも大きい屈曲のアシスト力を与え、アシスト装置100は、負荷がより小さい左脚に、負荷がより大きい右脚よりも大きい屈曲のアシスト力を与える。このため、アシスト装置100は、ユーザの歩行の進行を容易にし、誘導する。また、アシスト装置100は、より大きいアシスト力を、左脚及び右脚のうちの一方のみではなく、両方に与えることによって、左脚及び右脚をバランスよくアシストする。
また、左手又は右手で物体を把持しつつ歩行するユーザが停止した場合、アシスト装置100は、ユーザへのアシストを変更してもよい。この場合、駆動制御部122は、感圧センサ302又は慣性計測装置303のセンサ値を用いて、ユーザの歩行停止を検出し、さらに、負荷がより大きい脚を特定する。そして、駆動制御部122は、特定結果に基づき、ワイヤ110a4~110a4の張力制御を変更する。
感圧センサ302が用いられる場合、駆動制御部122は、左足の感圧センサ302のセンサ値及び右足の感圧センサ302のセンサ値を取得する。感圧センサ302のセンサ値である電圧値は、圧力センサ値に対応し、足の接地荷重を示す。例えば、感圧センサ302の電圧値は、小さくなる程、大きい接地荷重を示す。駆動制御部122は、左足及び右足の感圧センサ302の電圧値から、左足及び右足の接地荷重を検出し、左脚及び右脚それぞれの負荷の程度を検出する。また、駆動制御部122は、左足及び右足の感圧センサ302から同時に、左足及び右足の接地を示す電圧値を取得すると、ユーザが歩行を停止したと決定する。
また、慣性計測装置303が用いられる場合、駆動制御部122は、慣性計測装置303の加速度センサからセンサ値を取得する。加速度センサのセンサ値は、加速度に対応する。駆動制御部122は、加速度センサのセンサ値から、ユーザの左右方向の加速度を検出し、それにより、ユーザの身体の重心の中立位置からの偏位方向を検出することができる。さらに、駆動制御部122は、慣性計測装置303のジャイロセンサからセンサ値を取得する。慣性計測装置303は、ユーザの上半身に配置されるため、慣性計測装置303のセンサ値は、上半身の角速度に対応する。駆動制御部122は、ジャイロセンサのセンサ値から、ユーザの上半身の前後左右の傾斜量及び左右の回転量を検出することができる。そして、駆動制御部122は、身体の左右方向での重心の偏位方向、並びに、上半身の前後左右の傾斜量及び左右の回転量から、負荷がより大きい脚を特定する。また、駆動制御部122は、加速度センサのセンサ値が、前後方向の加速度が0であることを示すと、ユーザが歩行を停止したと決定する。
負荷がより大きい脚の特定後、駆動制御部122は、左脚の伸展をアシストするワイヤ110a2に張力を連続的に発生させ、及び、右脚の伸展をアシストするワイヤ110a4に張力を連続的に発生させ、左脚の屈曲をアシストするワイヤ110a1に張力を発生させず、右脚の屈曲をアシストするワイヤ110a3に張力を発生させない。ワイヤ110a2の張力は、直立状態で停止するユーザを支持している左脚を補助し、ワイヤ110a4の張力は、直立状態で停止するユーザを支持している右脚を補助する。このとき、駆動制御部122は、負荷がより大きい脚が左脚の場合、ワイヤ110a2に発生させる張力を、負荷がより小さい脚である右脚のワイヤ110a4に発生させる張力よりも大きくし、負荷がより大きい脚が右脚の場合、ワイヤ110a4に発生させる張力を、負荷がより小さい脚である左脚のワイヤ110a2発生させる張力よりも大きくする。
負荷がより大きい脚が左脚の場合、(ワイヤ110a2に発生させる張力)/(ワイヤ110a4に発生させる張力)には第1の比率が適用される。負荷がより大きい脚が右脚の場合、(ワイヤ110a4に発生させる張力)/(ワイヤ110a2に発生させる張力)には第1の比率が適用される。
また、ユーザが停止している状態において、負荷がより大きい脚のワイヤ110a2に発生させる張力は、歩行時に負荷がより大きい脚のワイヤ110a2に発生させる張力よりも小さくされる。ユーザが停止している状態において、負荷がより大きい脚のワイヤ110a4に発生させる張力は、歩行時に負荷がより大きい脚のワイヤ110a4に発生させる張力よりも小さくされる。
さらに、駆動制御部122は、物体を把持している手の接触センサ301a又は301bにかかる荷重がなくなると、アシスト装置100を停止する。つまり、ユーザが物体を手放すと、駆動制御部122は、アシスト装置100を停止する。
例えば、図31には、左手のみで物体を把持しているユーザが歩行を停止し物体を手放すまでのアシスト装置100の動作の例が示されている。図31に示すように、ユーザは、時点P1において、歩行を停止し、時点P2において、左手から物体を手放す。アシスト装置100は、時点P1~時点P2の間の全体において、ワイヤ110a2に60Nの張力を発生させ、ワイヤ110a4に40Nの張力を発生させる。なお、本例での第1の比率は、「1.5」である。そして、アシスト装置100は、時点P2において停止する。ワイヤ110a3のように、時点P1において張力を発生しているが時点P1以降では張力を発生させる必要がないワイヤがある場合、アシスト装置100は、時点P1において当該ワイヤへの張力の発生を停止してもよく、時点P1以降で張力の発生を継続し入力プロフィールに従った所定のタイミングで当該ワイヤへの張力の発生を停止してもよい。所定のタイミングは、ワイヤ110a3の場合、右脚の歩行フェーズの第3の区間が終了するタイミングである。
アシスト装置100は、本変形例のように、第1の条件及び第2の条件が満たされるか否かに基づき、左脚及び右脚のワイヤ張力のバランスを変更する場合、実施の形態及び/又は変形例1における左脚及び右脚のワイヤ張力のバランスの変更を適用してもよく、適用しなくてもよい。適用する場合、アシスト装置100は、片手及び両手で物体を把持するユーザの歩行をアシストすることができる。
[3-3-3.アシスト装置のアシスト動作の変形例3]
アシスト装置100のアシスト動作の変形例3を説明する。変形例2では、アシスト装置100は、第1の条件及び第2の条件に基づき、物体を把持するユーザの手を特定していた。本変形例では、物体を把持するユーザの手は、入力装置140又は端末装置150への入力を介して、ユーザによって指定される。
図3及び図8を参照すると、入力装置140が用いられる場合、ユーザは、左手ボタン145又は右手ボタン146を押すことによって、物体を把持する手を決定する。駆動制御部122は、左手ボタン145又は右手ボタン146が発生する信号を受信することによって、物体を把持する手として左手又は右手を決定する。決定された手が左手の場合、駆動制御部122は、変形例2において第1の条件が満たされる場合と同様に、動作する。決定された手が右手の場合、駆動制御部122は、変形例2において第2の条件が満たされる場合と同様に、動作する。よって、アシスト装置100は、接触センサ301a及び301bの検知結果を必要とせずに、変形例2と同様に、片手で物体を把持するユーザの歩行をアシストする。また、ユーザが歩行を停止した場合、駆動制御部122は、変形例2と同様に動作してもよい。
アシスト装置100は、本変形例のように、物体を把持する手を指定する情報に基づき、左脚及び右脚のワイヤ張力のバランスを変更する場合、実施の形態、変形例1及び/又は変形例2における左脚及び右脚のワイヤ張力のバランスの変更を適用してもよく、適用しなくてもよい。適用する場合、アシスト装置100は、片手で物体を把持するユーザの歩行をアシストすることができ、両手で物体を把持するユーザの歩行をアシストすることができる。また、ユーザが片手で物体を把持する場合、アシスト装置100は、ユーザが把持する手を変更しても、変更に対応してユーザの歩行をアシストすることができる。
[3-3-4.アシスト装置のアシスト動作の変形例4]
アシスト装置100のアシスト動作の変形例4を説明する。本変形例では、アシスト装置100は、物体を把持するユーザの歩行をアシストする際、以下に説明するように動作する。具体的には、アシスト装置100は、ユーザの後部のワイヤ110a2及び110a4を用いたアシストを、図25に示す例よりも増やす。例えば、図32には、物体を把持するユーザの前進歩行をアシストするアシスト装置100の動作の変形例が示されている。図32は、アシスト装置100が、ユーザの左脚及び右脚に対して、屈曲動作及び伸展動作のいずれをもアシストする例を示す。そして、アシスト装置100は、最大張力を100Nとして、ワイヤ張力を変化させながら生み出す。
ユーザの前進歩行における屈曲動作をアシストする場合、アシスト装置100は、左脚及び右脚のワイヤ110a1及び110a3に対して、図25の例と同様に、ワイヤ張力を発生させる。
左脚の伸展動作をアシストする場合、アシスト装置100は、左脚の歩行フェーズの例えば75%以上120%以下の期間である第2の区間の全体において、ワイヤ110a2に張力を連続的に発生させる。そして、アシスト装置100は、第2の区間の少なくとも一部において、第1の閾値以上のワイヤ張力をワイヤ110a2に発生させる。また、アシスト装置100は、左脚の歩行フェーズにおいて、第2の区間以外の期間である第6の区間の全体において、ワイヤ110a2に第4の閾値以上且つ第5の閾値以下の張力を連続的に発生させる。第6の区間でのワイヤ110a2の張力は、左脚の歩行フェーズにおいて、第1の区間以外の期間である第5の区間でのワイヤ110a1の張力よりも大きく、図25の例での第6の区間でのワイヤ110a2の張力よりも大きい。そして、アシスト装置100は、第2の区間の全体において、第6の区間でのワイヤ張力よりも大きい張力をワイヤ110a2に連続的に発生させる。よって、第2の区間及び第6の区間を含む全期間において、アシスト装置100は、ワイヤ110a2に第4の閾値以上の張力を連続的に発生させる。なお、第5の閾値は、ワイヤ張力の最大張力未満の値である。第5の閾値の例は、最大張力×0.6倍である。
右脚の伸展動作をアシストする場合、アシスト装置100は、右脚の歩行フェーズの例えば75%以上120%以下の期間である第4の区間の全体において、ワイヤ110a4に張力を連続的に発生させる。そして、アシスト装置100は、第4の区間の少なくとも一部において、第1の閾値以上のワイヤ張力をワイヤ110a4に発生させる。また、アシスト装置100は、第4の区間以外の期間である第8の区間の全体において、ワイヤ110a4に第4の閾値以上且つ第5の閾値以下の張力を連続的に発生させる。第8の区間でのワイヤ110a4の張力は、第7の区間でのワイヤ110a3の張力よりも大きく、図25の例での第8の区間でのワイヤ110a4の張力よりも大きい。そして、アシスト装置100は、第4の区間の全体において、第8の区間でのワイヤ張力よりも大きい張力をワイヤ110a4に連続的に発生させる。よって、第4の区間及び第8の区間を含む全期間において、アシスト装置100は、ワイヤ110a4に第4の閾値以上の張力を連続的に発生させる。
上述から、ユーザの後部に配置されたワイヤ110a2及び110a4に対して、アシスト装置100がアシストする期間の全体において、第4の閾値以上の張力が発生させられる。よって、ユーザは、歩行中、常に、左右の脚が後方へ引っ張られる作用を受ける。また、ユーザが物体を身体の前部で把持している場合、ユーザの身体の重心は前方に移動する傾向にある。このため、身体の前部で物体を把持するユーザは、ワイヤ110a2及び110a4の張力によって、直立状態の重心位置に身体の重心を維持しつつ前進歩行する作用を受ける。よって、ユーザは安定した姿勢で歩行することができる。これにより、ユーザは、楽な状態で物体を運搬することができる。また、第5の区間では、左脚の屈曲をアシストするワイヤ110a1の張力が小さいため、ワイヤ110a2の張力による上記作用は、ワイヤ110a1の張力からの影響を抑えた状態で実現される。また、第7の区間では、右脚の屈曲をアシストするワイヤ110a3の張力が小さいため、ワイヤ110a4の張力による上記作用は、ワイヤ110a3の張力からの影響を抑えた状態で実現される。
また、アシスト装置100は、ユーザのつまずきを抑えるように本変形例の動作を行ってもよい。つまずきを抑えることによって、アシスト装置100は、ユーザの転倒を抑えることができる。この場合、例えば、アシスト装置100は、左脚の伸展動作をアシストするワイヤ110a2に関して、左脚の歩行フェーズの第6の区間のうち、左脚の遊脚期に相当する期間において、ワイヤ張力を実質的に発生させない、つまり、ワイヤ張力を第4の閾値よりも小さくする。上記期間の例は、左脚の歩行フェーズの60%超かつ左脚の歩行フェーズの75%未満の期間である。同様に、アシスト装置100は、右脚の伸展動作をアシストするワイヤ110a4に関して、右脚の歩行フェーズの第8の区間のうち、右脚の遊脚期に相当する期間において、ワイヤ110a4の張力を第4の閾値よりも小さくする。上記期間の例は、右脚の歩行フェーズの60%超かつ右脚の歩行フェーズの75%未満の期間である。これにより、ユーザは、接地している脚を持ち上げやすくなり、脚を持ち上げる際に足先を地面又は段差等に引っかけることを抑えることができる。
また、例えば、アシスト装置100は、左脚の屈曲動作をアシストするワイヤ110a1に関して、左脚の歩行フェーズの第5の区間の全体において、第4の閾値以上且つ第5の閾値以下のワイヤ張力を連続的に発生させる。第5の区間でのワイヤ110a1の張力は、図25の例での第5の区間でのワイヤ110a1の張力よりも大きい。このため、ユーザは、第1の区間での屈曲動作に移行した際に、左脚を持ち上げやすくなる。また、アシスト装置100は、右脚の屈曲動作をアシストするワイヤ110a3に関して、右脚の歩行フェーズの第7の区間の全体において、第4の閾値以上且つ第5の閾値以下のワイヤ張力を連続的に発生させる。第7の区間でのワイヤ110a3の張力は、図25の例での第7の区間でのワイヤ110a3の張力よりも大きい。このため、ユーザは、第3の区間での屈曲動作に移行した際に、右脚を持ち上げやすくなる。よって、アシスト装置100は、屈曲動作の際にユーザが脚を持ち上げやすくし、ユーザが足先を引っかけてつまずくことを抑えることができる。
上述のようなワイヤ張力の制御においても、アシスト装置100は、ユーザの左手及び右手にかかる荷重の差異に基づき、第1の比率を決定し、第1の比率に基づき、左脚及び右脚のワイヤ張力のバランスを変更してもよい。また、アシスト装置100は、ユーザの利き手情報に基づき、第2の比率を決定し、第2の比率に基づき、左脚及び右脚のワイヤ張力のバランスを変更してもよい。また、アシスト装置100は、第1の条件及び第2の条件に基づき、第3の比率を決定し、第3の比率に基づき、左脚及び右脚のワイヤ張力のバランスを変更してもよい。また、アシスト装置100は、把持する手を指定する情報に基づき、第3の比率を決定し、第3の比率に基づき、左脚及び右脚のワイヤ張力のバランスを変更してもよい。これらの場合、アシスト装置100は、ユーザの後部のワイヤ110a2及び110a4に関して、左脚の歩行フェーズの全体のワイヤ張力と、右脚の歩行フェーズの全体のワイヤ張力とを、バランス変更における変更対象としてもよく、または、左脚の歩行フェーズの一部のワイヤ張力と、右脚の歩行フェーズの一部のワイヤ張力とを変更対象としてもよい。例えば、後者の場合、左脚の歩行フェーズの第2の区間のワイヤ張力と右脚の歩行フェーズの第4の区間のワイヤ張力とが変更対象とされてもよく、左脚の歩行フェーズの第6の区間のワイヤ張力と右脚の歩行フェーズの第8の区間のワイヤ張力とが変更対象とされてもよい。
[3-3-5.アシスト装置のアシスト動作のその他の変形例]
また、アシスト装置100は、物体を把持している状態で前進歩行するユーザをアシストするだけでなく、静止状態のユーザが物体を持ち上げる動作をアシストしてもよい。このとき、アシスト装置100は、左脚及び右脚の屈曲動作をアシストせずに伸展動作をアシストする。ユーザは、前方の物体を持ち上げる際、前屈みになった状態又はしゃがんだ状態から直立状態に移行する。ユーザは、両脚を伸展させるアシスト力をアシスト装置100から受けることによって、上記移行をしやすくなる。
アシストの際、アシスト装置100は、ワイヤ110a2及び110a4に対して、同じタイミングで、第6の閾値よりも大きい張力を発生させる。第6の閾値は、第1の閾値及び第4の閾値よりも大きい値である。第6の閾値の例は、60Nである。ユーザが物体を持ち上げる動作をアシストするワイヤ110a2及び110a4の張力は、物体を把持している状態で前進歩行するユーザをアシストするワイヤ110a2及び110a4の張力の張力よりも大きくてもよい。なお、ワイヤ110a2及び110a4の張力発生タイミングは互いからずれていてもよい。また、同じタイミングとは、複数のタイミングが全く同じであるケースだけでなく、複数のタイミングに差異つまり時間差があるケースも含む。上述のようなアシスト装置100は、物体の持ち上げから物体の運搬にわたるユーザの一連の動作をアシストすることができる。
物体の持ち上げ動作をアシストする場合でも、アシスト装置100は、ユーザの左手及び右手にかかる荷重の差異に基づき、第1の比率を決定し、第1の比率に基づき、左脚の第二ワイヤ110a2及び右脚の第四ワイヤ110a4の張力のバランスを変更してもよい。また、アシスト装置100は、ユーザの利き手情報に基づき、第2の比率を決定し、第2の比率に基づき、ワイヤ110a2及び110a4の張力のバランスを変更してもよい。また、アシスト装置100は、第1の条件及び第2の条件に基づき、第3の比率を決定し、第3の比率に基づき、ワイヤ110a2及び110a4の張力のバランスを変更してもよい。また、アシスト装置100は、把持する手を指定する情報に基づき、第3の比率を決定し、第3の比率に基づき、ワイヤ110a2及び110a4の張力のバランスを変更してもよい。
また、実施の形態及び変形例におけるアシスト装置100の動作において、制御部120は、接触センサ301a及び301bを介して検出されるユーザの左手及び右手の荷重の差異、ユーザの利き手情報、及び/又は、把持する手を指定する情報に基づき、負荷がより大きい脚及び負荷がより小さい脚を特定し、ワイヤの張力のバランスを変更した。左脚及び右脚のうち負荷がより大きい脚を特定する方法は、上記に限定されない。駆動制御部122は、感圧センサ302又は慣性計測装置303のセンサ値を用いて、負荷がより大きい脚を特定してもよい。この場合、駆動制御部122は、変形例2で説明したように、負荷がより大きい脚を特定してもよい。
また、実施の形態及び変形例におけるアシスト装置の各動作において、屈曲及び伸展動作をアシストする際のワイヤ張力の入力プロフィール及び最大張力は、どのワイヤであっても同じとしたが、これに限ったものではない。ユーザによって、股関節のモーメントアーム及び脚の長さが異なるため、同じワイヤに同じ張力を与えた場合でも、股関節が受けるアシストトルクがユーザによって異なる。なお、アシストトルクは、ワイヤ張力×モーメントアームで求められる。従って、ユーザに応じて異なる張力をワイヤに与えてもよい。痩せているユーザよりも太っているユーザの方が、股関節のモーメントアームが大きくなる。このため、例えば、腹囲100cm以上のような太ったユーザの場合、ワイヤの最大張力を60Nとし、腹囲70cm以下のような痩せたユーザの場合、ワイヤの最大張力を120Nとしてもよい。これにより、太ったユーザ及び痩せたユーザが受けるアシストトルクが同等になり得る。
また、ユーザの脚の長さに応じて、ワイヤ張力を変更してもよい。屈曲及び伸展動作のアシストでは、脚が長いユーザの方が、ワイヤの張力の縦方向つまり上下方向の力成分を大きく受けるため、脚が長いユーザに対するワイヤの張力を小さくしてもよい。このように、ユーザ毎の体型及び脚の長さに応じて、ワイヤ張力を調整することで、ユーザに無理のないアシストトルクを与えることが可能となる。
また、ユーザの脚の前後におけるワイヤ張力を同じとしたが、これに限ったものではない。例えば、脚の前側に配置されているワイヤの張力を、脚の後側に配置されているワイヤの張力よりも大きくしてもよい。後側のワイヤはユーザの臀部を経由するため、ユーザの後側のモーメントアームは、前側と比較して大きくなり、これにより、ユーザの後側で股関節に作用するアシストトルクは、ユーザの前側よりも大きくなる。従って、前側のワイヤの張力をより大きくすることで、アシスト装置は、屈曲及び伸展動作のアシストを、ユーザの前後でバランスよく行うことができる。
屈曲及び伸展動作をアシストする際のワイヤ張力の発生期間は、どのワイヤであっても同じとしたが、これに限ったものではない。例えば、図25の例では、同一の脚において、屈曲動作をアシストするワイヤ張力の発生期間と、伸展動作をアシストするワイヤ張力の発生期間とが重複しているが、重複期間が短くなるように、いずれかの発生期間を短くしてもよい。特に、2つの発生期間の間で、第1の閾値以上のワイヤ張力が発生する期間が重複しないように、発生期間が調節されてもよい。図27~図32の例についても同様である。これにより、ユーザが屈曲及び伸展動作のアシストを同時に感じることによる混乱が抑えられる。また、2つの発生期間の関係は、ユーザの屈曲及び伸展動作の能力に応じて、決定されてもよい。
また、図25及び図27~図32では、ワイヤ張力の入力プロフィールの波形は、凸曲線の波形としているが、これに限ったものではない。なお、図25及び図27~図32に示す入力プロフィールの波形は、実験により得られた波形であり、ユーザがアシスト装置100によるアシストの恩恵を効果的且つ快適に感じることができた波形である。ワイヤ張力の入力プロフィールは、例えば、矩形波、台形波、三角波又はガウシアン波形等を用いて、作成されてもよい。矩形波の場合、アシスト装置100は、ワイヤ張力の発生期間全体において、最大張力を連続的に発生する。台形波の場合、アシスト装置100は、ワイヤ張力の発生期間の初期と終期とを除く全体において、最大張力を連続的に発生する。矩形及び台形等の四角形の波形で入力プロフィールを作成した場合、ワイヤ張力の急な立ち上がり又は急な降下が起こることがある。このような張力変化は、ユーザに対してアシストの違和感を与える可能性がある。そこで、例えば、入力プロフィールの波形を三角波とした場合、最大張力までのワイヤ張力の立ち上がりを、徐々に変化する緩やかなものにしてもよい。これにより、アシスト装置100は、ユーザの脚を慎重にアシストすることができ、急なワイヤ張力の変化によるユーザの転倒等の危険性も減らすことができる。
また、実際のヒト歩行において、脚が生み出す屈曲及び伸展トルクは、なめらかに連続的に変化する。このため、入力プロフィールの波形は、ガウシアン波形が適用されてもよい。ガウシアン波形は、例えば、下記の式1に示されるようなガウス関数を用いて、複数のガウス関数を足し合わせる、つまり重ね合わせることで作成した波形であってもよい。このとき、複数のガウス関数の重ね合わせ方法のうち、実際のヒトの歩行時の脚のトルクの波形に最も近い重ね合わせ方法が見つけ出され、入力プロフィールの波形の生成に適用される。このような方法を見つけ出すことは、ガウスフィッティングとも呼ばれる。これにより、ヒトの歩行に近い形でアシストトルクを付与することができるため、より自然なアシストが可能になる。
具体的には、ガウス関数は、μ,σの変数(パラメータとも呼ぶ)のペアを持ち、これらの2つのパラメータによって、ガウス関数の波形が決まる。μにより、ガウス関数の波のピークを示す時間が決まり、σにより、ガウス関数の波の幅が決まる。よって、2つのパラメータの様々な組み合わせにより、様々なガウス関数が生成され得る。
ヒトの歩行時の脚に生じるトルクの振幅をガウス関数に乗じた関数は、横軸を時間(単位:秒)とし、縦軸をトルク(単位:Nm)とする波形を形成する。振幅の例は、ヒトの歩行時の脚の最大トルクであり、例えば20Nm等である。そして、複数のガウス関数を重ね合わせて、実際のヒトの歩行時の脚のトルク及び時間の波形に最も近い重ね合わせ方法が見つけ出される。このとき、様々な2つのパラメータμ,σを有するn個のガウス関数f1(x),f2(x),・・・,fn(x)を用いて、実際のヒトの歩行データに対してガウスフィッティングを行うことによって、ガウス関数が得られる。さらに、得られた複数のガウス関数を重ね合わせることによって、新たなガウス関数が得られる。この新たなガウス関数の2つのパラメータμ,σを調整することで、ワイヤ張力の入力プロフィールを作成することができる。
また、アシスト装置100は、ユーザがアシスト装置100を装着する時期に応じて、ワイヤ110に発生させる最大張力を変更してもよい。例えば、ユーザが薄着である夏期では、ユーザが厚着である冬期と比較して、ユーザのモーメントアームが小さくなる。これにより、アシスト装置100が、ワイヤ110に同一の張力を付与しても、夏期にユーザの脚が受けるトルクは、冬期よりも小さくなる。従って、例えば、アシスト装置100は、冬期と比較して、夏期に各ワイヤ110に付与する張力を、1.2倍等に割り増ししてもよい。
また、図13~図21に示すような変形例に係るアシスト装置200の動作も、実施の形態に係るアシスト装置100と同様である。上述した各動作に関して、アシスト装置200の第一ワイヤ110a1に対するワイヤ張力の制御及び第五ワイヤ110a5に対するワイヤ張力の制御は、アシスト装置100のワイヤ110a1に対するワイヤ張力の制御と同様である。アシスト装置200の第二ワイヤ110a2に対するワイヤ張力の制御及び第六ワイヤ110a6に対するワイヤ張力の制御は、アシスト装置100のワイヤ110a2に対するワイヤ張力の制御と同様である。アシスト装置200の第三ワイヤ110a3に対するワイヤ張力の制御及び第七ワイヤ110a7に対するワイヤ張力の制御は、アシスト装置100のワイヤ110a3に対するワイヤ張力の制御と同様である。アシスト装置200の第四ワイヤ110a4対するワイヤ張力の制御及び第八ワイヤ110a8に対するワイヤ張力の制御は、アシスト装置100のワイヤ110a4に対するワイヤ張力の制御と同様である。
アシスト装置200は、屈曲又は伸展動作をアシストする際、同じ脚の2つのワイヤに同じタイミングで張力を発生させる。このため、アシスト装置200の第一ワイヤ110a1に発生させる最大張力及び第五ワイヤ110a5に発生させる最大張力は、アシスト装置100のワイヤ110a1に発生させる最大張力と異なっていてもよく、例えば、アシスト装置100のワイヤ110a1に発生させる最大張力より小さくてもよい。アシスト装置200の第二ワイヤ110a2に発生させる最大張力及び第六ワイヤ110a6に発生させる最大張力は、アシスト装置100のワイヤ110a2に発生させる最大張力と異なっていてもよく、例えば、アシスト装置100のワイヤ110a2に発生させる最大張力より小さくてもよい。アシスト装置200の第三ワイヤ110a3に発生させる最大張力及び第七ワイヤ110a7に発生させる最大張力は、アシスト装置100のワイヤ110a3に発生させる最大張力と異なっていてもよく、例えば、アシスト装置100のワイヤ110a3に発生させる最大張力より小さくてもよい。アシスト装置200の第四ワイヤ110a4に発生させる最大張力及び第八ワイヤ110a8に発生させる最大張力は、アシスト装置100のワイヤ110a4に発生させる最大張力と異なっていてもよく、例えば、アシスト装置100のワイヤ110a4に発生させる最大張力より小さくてもよい。
アシスト装置200の第一ワイヤ110a1に発生させる最大張力及び第五ワイヤ110a5に発生させる最大張力と、アシスト装置100のワイヤ110a1に発生させる最大張力との関係は、アシスト装置100のワイヤ110a1が延びる方向に対してアシスト装置200の第一ワイヤ110a1が延びる方向がなす角度及びアシスト装置100のワイヤ110a1が延びる方向に対してアシスト装置200の第五ワイヤ110a5が延びる方向がなす角度に応じて変化し、これらの角度に応じて決定することができる。アシスト装置200の第二ワイヤ110a2に発生させる最大張力及び第六ワイヤ110a6に発生させる最大張力と、アシスト装置100のワイヤ110a2に発生させる最大張力との関係は、アシスト装置100のワイヤ110a2が延びる方向に対してアシスト装置200の第二ワイヤ110a2が延びる方向がなす角度及びアシスト装置100のワイヤ110a2が延びる方向に対してアシスト装置200の第六ワイヤ110a6が延びる方向がなす角度に応じて変化し、これらの角度に応じて決定することができる。アシスト装置200の第三ワイヤ110a3に発生させる最大張力及び第七ワイヤ110a7に発生させる最大張力と、アシスト装置100のワイヤ110a3に発生させる最大張力との関係は、アシスト装置100のワイヤ110a3が延びる方向に対してアシスト装置200の第三ワイヤ110a3が延びる方向がなす角度及びアシスト装置100のワイヤ110a3が延びる方向に対してアシスト装置200の第七ワイヤ110a7が延びる方向がなす角度に応じて変化し、これらの角度に応じて決定することができる。アシスト装置200の第四ワイヤ110a4に発生させる最大張力及び第八ワイヤ110a8に発生させる最大張力と、アシスト装置100のワイヤ110a4に発生させる最大張力との関係は、アシスト装置100のワイヤ110a4が延びる方向に対してアシスト装置200の第四ワイヤ110a4が延びる方向がなす角度及びアシスト装置100のワイヤ110a4が延びる方向に対してアシスト装置200の第八ワイヤ110a8が延びる方向がなす角度に応じて変化し、これらの角度に応じて決定することができる。
ここで、同じタイミングとは、複数のタイミングが全く同じであるケースだけでなく、複数のタイミングに差異つまり時間差があるケースも含む。上記差異は、歩行フェーズの値で10%未満であってもよく、5%以内であってもよい。例えば、差異が5%以内である場合の例は、複数のタイミングの歩行フェーズの値の平均値から±5%以内の歩行フェーズの値の範囲内に、全てのタイミングの歩行フェーズの値が含まれることである。
[4.実施例]
実施の形態に係るアシスト装置100を用いたアシスト動作について、ユーザの物体の把持方法と、左脚及び右脚のワイヤ張力のバランスとの関係を比較検証する実験を行った。具体的には、ケース1の物体の把持方法と、ケース2の物体の把持方法とを検証した。ケース1では、ユーザは、図26Bのように、異なる高さ位置で左手及び右手により物体を把持する。ケース2では、図26Cのように、片手で物体を把持する。
ケース1では、実施例1、比較例1及び比較例2のアシスト装置100の動作を検証した。実施例1では、実施の形態と同様に、アシスト装置100は、低い位置で把持する手と同じ側の脚のワイヤ張力を、高い位置で把持する手と同じ側の脚のワイヤ張力の2倍として動作した。例えば、図26Bの場合、左脚のワイヤ張力は、右脚のワイヤ張力の2倍とされる。実施例1では、アシスト装置100は、図28に類似する入力プロフィールに従って、各ワイヤ110の張力を制御した。
比較例1では、アシスト装置100は、左脚及び右脚のワイヤ張力のバランスを、実施例1と逆にして動作した。具体的には、アシスト装置100は、高い位置で把持する手と同じ側の脚のワイヤ張力を、低い位置で把持する手と同じ側の脚のワイヤ張力の2倍として動作した。この場合、アシスト装置100は、実施例1で用いるワイヤ張力の入力プロフィールにおいて左脚及び右脚の間でワイヤ張力の比率を逆にした入力プロフィールに従って、各ワイヤ110の張力を制御した。
比較例2では、アシスト装置100は、低い位置で把持する手と同じ側の脚のワイヤ張力と、高い位置で把持する手と同じ側の脚のワイヤ張力とを同じとして動作した。この場合、アシスト装置100は、図25に示すような入力プロフィールに従って、各ワイヤ110の張力を制御した。
ケース2では、実施例2、比較例3及び比較例4のアシスト装置100の動作を検証した。実施例2では、変形例2と同様に、アシスト装置100は、物体を把持する手と同じ側の脚の伸展をアシストするワイヤ張力を、物体を把持しない手と同じ側の脚の伸展をアシストするワイヤ張力の2倍とし、物体を把持しない手と同じ側の脚の屈曲をアシストするワイヤ張力を、物体を把持する手と同じ側の脚の屈曲をアシストするワイヤ張力の2倍として動作した。例えば、図26Cの場合、左脚の伸展及び右脚の屈曲をアシストするワイヤ張力は、右脚の伸展及び左脚の屈曲をアシストするワイヤ張力の2倍とされる。実施例2では、アシスト装置100は、図29に類似する入力プロフィールに従って、各ワイヤ110の張力を制御した。
比較例3では、アシスト装置100は、左脚及び右脚のワイヤ張力のバランスを、実施例2と逆にして動作した。具体的には、アシスト装置100は、物体を把持しない手と同じ側の脚の伸展をアシストするワイヤ張力を、物体を把持する手と同じ側の脚の伸展をアシストするワイヤ張力の2倍とし、物体を把持する手と同じ側の脚の屈曲をアシストするワイヤ張力を、物体を把持しない手と同じ側の脚の屈曲をアシストするワイヤ張力の2倍として動作した。この場合、アシスト装置100は、実施例2で用いるワイヤ張力の入力プロフィールにおいて、同じ脚の伸展及び屈曲をアシストするワイヤ張力を逆にした入力プロフィールに従って、各ワイヤ110の張力を制御した。
比較例4では、アシスト装置100は、物体を把持する手と同じ側の脚のワイヤ張力と、物体を把持しない手と同じ側の脚のワイヤ張力とを同じとして動作した。この場合、アシスト装置100は、図25に示すような入力プロフィールに従って、各ワイヤ110の張力を制御した。
そして、実施例1及び2、並びに、比較例1~4において、ワイヤ110a1~110a4に発生させ得る最大張力を100Nとした。
A~Dの4人の被験者に対して実験を行った。なお、被験者A、C及びDは、男性であり、被験者Bは、女性であった。アシスト装置100を装着した被験者A~Dの全員は、ケース1の状態で前進歩行する際、実施例1、比較例1及び比較例2による3種類のアシストのそれぞれを受け、ケース2の状態で前進歩行する際、実施例2、比較例3及び比較例4による3種類のアシストのそれぞれを受けた。そして、被験者A~Dは、ケース1及び2それぞれにおいて、最も楽に歩行できた最適な動作を1つ選択した。その選択結果が、下記の表1の通りである。下記の表1から、実施例1及び2が、被験者の歩行を効果的にアシストできるといえる。また、比較例2及び4も、被験者がアシストの効果を体感することができるといえる。
[5.その他]
以上、1つ又は複数の態様に係るアシスト装置等について、実施の形態及び変形例に基づいて説明したが、本開示は、実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態及び変形例に施したものや、異なる実施の形態及び変形例における構成要素を組み合わせて構築される形態も、1つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
例えば、実施の形態及び変形例に係るアシスト装置において、制御部120がモータを動作させてワイヤに張力を発生させるタイミング、及び、張力の入力プロフィールに関する歩行フェーズの数値は、実施の形態及び変形例に記載した数値に限定されない。上記タイミング及び張力の入力プロフィールに関する歩行フェーズの数値は、実施の形態及び変形例に記載した数値に対して差異を有してよく、例えば、歩行フェーズで数%の差異を有していてもよい。
実施の形態及び変形例に係るアシスト装置において、ワイヤのそれぞれにモータが設けられていたが、これに限定されず、1つのモータが複数のワイヤに接続されてもよい。例えば、アシスト装置200において、1つのモータが、ワイヤ110a1及び104a5を引っ張ってもよい。つまり、アシスト装置200は、2つのワイヤに対して1つのモータが設けられるように、例えば、4つのモータを備えてもよい。
実施の形態及び変形例に係るアシスト装置において、上半身ベルト111と膝ベルト112a及び112bとを接続するワイヤの数量は、4つ又は8つであった。つまり、1つの膝ベルトに2つ又は4つのワイヤが接続されていた。しかしながら、1つの膝ベルトに接続されるワイヤの数量は、これらに限定されない。1つの膝ベルトに接続されるワイヤの数量は、2つ以上のいかなる数量であってもよい。例えば、膝ベルとの前部に接続されるワイヤの数量と、後部に接続されるワイヤの数量とが異なっていてもよい。