JP7139654B2 - 水まわり装置 - Google Patents
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Description
前記無機系抗菌剤または前記有機系抗菌防カビ剤の溶出速度が、10-9g/cm2/h以上である、水まわり装置である。
本発明の水まわり装置は、機能水を生成する機能水生成手段と、生成された機能水を吐出する機能水吐出手段と、吐出された機能水を受ける樹脂部材と、を有する水まわり装置において、樹脂部材は、有機系抗菌防カビ剤を含むものである。
従って、両者を組み合わせることによって機能水による細胞膜の破壊または変性が起こり、樹脂部材に含まれる有機系抗菌防カビ剤が容易に細胞内へ侵入することが可能となる。このことから有機系抗菌防カビ剤の代謝経路阻害作用が効率的に機能するため、相乗的な効果が期待できる。
抗菌防カビ剤の溶出速度V(g/cm2/h)=樹脂部材から溶出した無機系抗菌剤または有機系抗菌防カビ剤の濃度M(g/ml)×溶媒量L(ml)/(樹脂部材の面積S(cm2)/溶出時間T(h))
図1を用いて、樹脂部材の表面における菌類及びカビ(真菌)の増殖メカニズムを説明するが、以下の説明はあくまで一つの説であり、本発明による効果の作用機序は以下の説明に限定されるものではない。
汚れ付着過程を図1(a)に示す。一般に、樹脂部材1を水まわりで用いる場合、手洗い、洗顔、入浴等の行為により、人体から排出される皮脂や角質(ケラチンタンパク)などの汚れ成分が、石鹸やボディーソープなどに含まれる界面活性剤と共に水で洗い流される。そして、この汚れ成分が樹脂部材1の表面に付着する。付着した汚れ成分の大部分は、流水とともに洗い流される。しかし、図1(a)に示すように、汚れ成分の一部は、汚れ成分を含んだ汚水として樹脂部材1の表面に残存(残水)し、樹脂部材1の表面に汚れ2が付着する。
菌の増殖過程を図1(b)および(c)に示す。樹脂部材1の表面に付着した汚れ2や残水を栄養源として、樹脂部材1の表面に菌類3が増殖する(図1(b))。水まわりに存在する菌類3として、増殖とともに細胞外多糖(EPS)を排出しながら増殖するものがある。例えば、Microbacterium sp.、Methylobacterium sp.、Pseudomonas sp.などである。上記EPSを主体にした成分はバイオフィルムと呼ばれる。菌類3の増殖に伴い、樹脂部材1の表面にバイオフィルム4が形成される(図1(c))。バイオフィルム4は、菌類3の外からの刺激(流水、酸、アルカリ、熱など)に対する防御機構として作用する。また、バイオフィルム4はヌメリとも呼ばれ、樹脂部材1の表面の粘性が高まる。これにより、樹脂部材1の表面に汚れ2の付着や菌類3およびカビ5の成長が促進されると考えられる。
カビ5の増殖過程を図1(d)および(e)に示す。カビ5の増殖は一般に菌類3よりも遅いため、通常の水まわり環境下では、菌類3の増殖とそれに伴うバイオフィルム4の生成後にカビ5の増殖が進むと考えられる。カビ胞子は、樹脂部材1の表面やバイオフィルム4の表面に付着した後、樹脂部材1の表面に付着した汚れ2を栄養に成長する。一部のカビは成長に伴い発色する。具体的なカビとして、例えば、Cladosporium sp.などが挙げられる。
本発明において、機能水生成手段は、機能水を生成するものである。機能水としては、次亜塩素酸、殺菌性金属イオン水、オゾン水などが挙げられる。これらのうち、次亜塩素酸、殺菌性金属イオン水であることが好ましい。殺菌性金属イオン水としては、銀イオン水、銅イオン水、亜鉛イオン水が挙げられる。本発明で用いられる機能水生成手段として、例えば以下のようなものを用いることができる。
H+ +e- → 1/2H2 ↑ ・・・(1)
2OH- → 2e- +H2 O+1/2O2 ↑ ・・・(2)
Cl- → e- +1/2Cl2 ・・・(3)
Cl2 +H2 O → HClO+H+ +Cl- ・・・(4)
機能水吐出手段は、機能水生成手段の下流に設けられている。機能水吐出手段は、機能水を樹脂部材に吐出する。
本発明において、樹脂部材は、有機系抗菌防カビ剤を含む。有機系抗菌防カビ剤は樹脂部材表面に溶出するため、樹脂部材表面に汚れが付着していたとしても、菌の成長をしにくくすることができる。よって、バイオフィルムの生成やカビの発生を抑制することが可能となる。
本発明において、樹脂は、主成分として樹脂部材に含まれている。ここで、主成分とは、樹脂部材において、50質量%以上含むことが好ましく、さらに好ましくは60質量%以上である。これにより、良好な成形性と外観を得ることが可能となる。
本発明において、有機系抗菌防カビ剤とは、防菌防黴剤辞典-原体編-(日本防菌防黴学会誌,1998,Vol.26)に記載されている、細菌および真菌に対してMIC(最小発育阻止濃度)を有している有機系薬剤を意味する。
抗菌防カビ剤の表面濃度N(g/cm2)=抗菌防カビ剤の溶出速度V(g/cm2/h)×溶出時間T(h))
本発明において、抗菌剤は、防菌防黴剤辞典-原体編-(日本防菌防黴学会誌,1998,Vol.26)に記載されている、少なくとも細菌に対してMIC(最小発育阻止濃度)を有している無機系薬剤を意味する。
本発明において、樹脂部材は、シリコーン化合物を含むことが可能である。これにより、樹脂部材表面の撥水性を向上させることができ、残水や汚れの付着を防止することが可能となる。
本発明において、シリコーン化合物として、反応性シリコーンを用いることが可能である。反応性シリコーンとしては、分子鎖の片末端をジメチルビニルシロキサン基、アクリロイル基、メタクリロイル基から選択される一種で封鎖したシリコーン樹脂を用いることができる。具体的には、片末端変性アクリルシリコーン、片末端変性メタクリルシリコーンなどが挙げられる。
本発明において、樹脂部材は、シリコーン化合物として、非反応性シリコーンオイルを含むことが可能である。非反応性シリコーンオイルは、一般式R3 SiO-(R2 SiO)n―SiR3 (ここで、Rは同一または異なっていてもよいアルキル基、好ましくはC1 -6 アルキル基を表す)で表される化合物であることが好ましい。
本発明において、樹脂部材を作製する製造方法は、下記の方法を用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。
抗菌防カビ剤A:チアゾリン系抗菌防カビ剤であるOIT(2‐n‐オクチル‐4‐イソチアゾリン‐3‐オン)をタルクに1:9の割合で担持させたもの
抗菌防カビ剤B:ピリジン系抗菌防カビ剤であるZPT(ジンクピリチオン)をゼオライトに1:4の割合で担持させたもの
抗菌剤A:銀系抗菌剤(銀イオンをガラスに担持させたものであり、銀イオンを0.48重量%含むもの)
反応性シリコーン:PPグラフトシリコーン
非反応性シリコーンオイル:ジメチルシリコーン
ポリプロピレン樹脂を180℃に加熱溶融し作製したペレットを、200℃で射出成形しプレートを作製した。
表1に示す量のポリプロピレン樹脂を180℃にて加熱溶融した。これに表1に示す量の抗菌防カビ剤Bと、反応性シリコーンと、非反応性シリコーンオイルとをコンパウンドしペレットを作製した。この作製したペレットを、200℃にて射出成形し、プレートを作製した。
表1に示すポリプロピレン樹脂を180℃にて加熱溶融した。これに表1に示す量の抗菌剤Aをコンパウンドしペレットを作製した。この作製したペレットを、200℃にて射出成形し、プレートを作製した。
表1に示す量のタルクとポリプロピレン樹脂とを180℃に加熱溶融した。これに、表1に示す量の抗菌防カビ剤Aと、抗菌防カビ剤Bと、反応性シリコーンと、非反応性シリコーンオイルとをコンパウンドし、ペレットを作製した。この作製したペレットを200℃で射出成形し、プレートを作製した。
表1に示す量のポリプロピレン樹脂を180℃にて加熱溶融した。これに表1に示す量の抗菌防カビ剤Aと、抗菌防カビ剤Bと、抗菌剤Aと、反応性シリコーンと、非反応性シリコーンオイルとをコンパウンドしペレットを作製した。この作製したペレットを、200℃にて射出成形し、プレートを作製した。
試験に用いるプレート、備品、試薬はすべて滅菌済みのものを使用した。
35℃で約16時間培養したMicrobacterium sp.を、生理食塩水と菌濃度が約1.0×106cfu/mLになるように混合し、菌液を調製した。
JIS Z 2801(2010)抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果に基づき試験を行った。90%エタノールで清浄化した5×5cm2のプレートに、培養液を400μL滴下した。その後、ポリエチレンフィルム4×4cm2を被せてシャーレに入れ、温度35±1℃、相対湿度90%以上で24時間培養した。培養後、ストマッカー袋内に入れ、SCDLP培地10mLを加えて十分にもみ、試験菌を洗い出した。この洗い出し液を生理食塩水で適宜希釈した。希釈液1mLをSMA(標準寒天培地)にて培養し、プレート上の生菌数(NA)を求めた。
R=log(NB)-log(NA)=log(NB/NA)
プレート1において、次亜塩素酸をプレートに吐出しない場合の抗菌活性値(R)と吐出した場合の抗菌活性値(R)の差(△R)は、0.46であった。プレート2~5において、プレート1よりも△Rが大きなプレートについては、有機系抗菌防カビ剤および/または無機系抗菌剤と機能水による相乗的な効果があると判断した。
ガラス瓶に面積Sが2.3×2.3cm2のプレート、表面積で表せば、表面積S=2.3×2.3×2+2.3×0.1(厚さ)×4=11.4cm2のプレートと超純水30mlを入れた。プレート全体が水中に浸漬した状態のまま、40℃で24時間静置した。その後、プレートをガラス瓶から取り出した。次に、ガラス瓶にヘキサン6ml(LH)を加えてよく撹拌し、水中に溶出したOITをヘキサン中に抽出した。このヘキサン溶液のOITの濃度(MA)をGC/MSにて算出した。
VOIT :プレートから溶出したOITの溶出速度(g/cm2/h)
OS :プレートから溶出したOITの濃度(g/ml)=OA-OB
OA :ヘキサン溶液のOITの濃度(g/ml)
OB :操作ブランクのOITの濃度(g/ml)
LH :ヘキサンの量(6ml)
S :プレート表面積(11.4cm2)
T :溶出時間(24時間)
ポリプロピレン製のボトルに表面積Sが11.4cm2のプレートと44ml(LW)の超純水を入れた。試験片全体が水中に浸漬している状態のまま、40℃で24時間静置した。その後、プレートをボトルから取り出し、硝酸の濃度が5vol%となるように超高純度の硝酸を加えた。この硝酸溶液の亜鉛イオンの濃度(ZnA)および銀イオンの濃度(AgA)をICP-MSにて算出した。
VZn :プレートから溶出した亜鉛イオンの溶出速度(g/cm2/h)
ZnS :プレートから溶出した亜鉛イオンの濃度(g/ml)=ZnA-ZnB
ZnA :硝酸溶液の亜鉛イオンの濃度(g/ml)
ZnB :操作ブランクの亜鉛イオンの濃度(g/ml)
LW :超純水の量(44ml)
S :プレートの表面積(11.4cm2)
T :溶出時間(24時間)
VAg :プレートから溶出した銀イオンの溶出速度(g/cm2/h)
AgS :プレートから溶出した銀イオンの濃度(g/ml)=AgA-AgB
AgA :硝酸溶液の銀イオンの濃度(g/ml)
AgB :操作ブランクの銀イオンの濃度(g/ml)
LW :超純水量(44ml)
S :プレートの表面積(11.4cm2)
T :溶出時間(24時間)
VZPT=VZn/Zn原子量×ZPT分子量
一般家庭から採取したCladosporium sp. の元株から、白金耳を用いて、ポテトデキストロース寒天培地の斜面培地に植次ぎ、7日間培養した。培養したスラントに0.005%のノニオン系界面活性剤を10ml添加した。さらに、スポイトを用いてスラントに空気を吹き込むことによって胞子を懸濁させ、1×106cfu/mL濃度の胞子懸濁液を調整した。この時、血球計算板を用いて、胞子が規定濃度になっていることを確認した。同様に、一般家庭から採取したScolecobasidium sp.、Phoma sp.についても、同じ方法で胞子縣濁液を調整した。
(試験菌液A)
調整した各胞子懸濁液と、ツァペック-ドッグス液体培地を、Cladosporium sp.: Scolecobasidium sp.:Phoma sp.:ツァペック‐ドッグス液体培地=1:1:1:3の割合で混合し、試験菌液Aとした。
(試験菌液B)
試験管に、調整した試験菌液A6mLと、1mg/Lの次亜塩素酸水を2.4mL入れ、試験管内全体の次亜塩素酸濃度を0.3mg/Lとした。ボルテックスでよく混合し、カビ胞子と次亜塩素酸を接触させ、次亜塩素酸水を含む試験菌液Bを調製した。
試験菌液Bと同様の調製方法により、調整した試験菌液A6mLと、10mg/Lの次亜塩素酸水1.2mLを混合して全体の次亜塩素酸濃度を1.7mg/Lとし、次亜塩素酸水を含む試験菌液Cを調製した。
(試験菌液D)
試験管に、調整した試験菌液A2mLと、0.1mg/Lの銀イオン水を4μL入れ、試験管内全体の銀イオン濃度を0.2μg/Lとした。ボルテックスでよく混合し、カビ胞子と銀イオンを接触させ、銀イオン水を含む試験菌液Dを調製した。
試験菌液Dと同様の方法により、調整した試験菌液A2mLと、1mg/Lの銀イオン水10μLを混合して全体の銀イオン濃度を5μg/Lとし、銀イオン水を含む試験菌液Eを調製した。
無機塩寒天培地上に、50mm角に切断したプレートを載せ、プレート上に試験菌液Aを25μLずつ16個滴下した。シャーレのフタをし、温度28±1℃、相対湿度90%以上で2週間培養し、試験を行った。試験菌液B~Eについても、同様の試験を行った。なお、各試験菌液を調整後、10分以内に試験を行った。
培養後、滴下した16個の試験菌液のうち、目視でカビの育成が認められる試験菌液の個数を数えた。この個数を下記式に代入し、カビの抑制率を算出した。なお、カビの育成が認められるものは、菌糸の成長が有るものまたは着色が有るものとした。得られたカビの抑制率を表2に示す。
カビ抑制率(%)=(1-目視でカビが確認できた試験菌液の個数/16個)×100
2:汚れ
3:菌類
4:バイオフィルム
5:カビ
Claims (12)
- 機能水を生成する機能水生成手段と、
生成された機能水を吐出する機能水吐出手段と、
吐出された機能水を受ける樹脂部材と、を有する水まわり装置において、
前記樹脂部材は、有機系抗菌防カビ剤を含み、
前記機能水は、次亜塩素酸水であり、
前記機能水吐出手段は、1.7mg/L以上の濃度の次亜塩素酸水を吐出する、水まわり装置。 - 前記機能水生成手段は、水を電気分解することにより機能水を生成するものである、請求項1に記載の水まわり装置。
- 前記機能水生成手段は5mg/L以下の機能水を生成する、請求項1または2に記載の水まわり装置。
- 前記樹脂部材は、前記有機系抗菌防カビ剤を0.01質量%以上含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の水まわり装置。
- 前記樹脂部材は、無機系抗菌剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の水まわり装置。
- 前記無機系抗菌剤は、銀系抗菌剤である、請求項5に記載の水まわり装置。
- 前記有機系抗菌防カビ剤として、2種以上の有機系抗菌防カビ剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の水まわり装置。
- 前記有機系抗菌防カビ剤が、チアゾリン系抗菌防カビ剤および/またはピリジン系抗菌防カビ剤である、請求項1~7のいずれか一項に記載の水まわり装置。
- 前記無機系抗菌剤または前記有機系抗菌防カビ剤の溶出速度が、10-9g/cm2/h以上である、請求項5に記載の水まわり装置。
- 請求項1~9いずれか1項に記載の水まわり装置を含む、浴室。
- 請求項1~9のいずれか1項に記載の水まわり装置を含む、洗面化粧台。
- 請求項1~9のいずれか1項に記載の水まわり装置を含む、キッチン。
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