JP7137245B1 - 成形体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】経年や熱等による寸法変化が少なく、機械的特性が良好な成形体およびその製造方法を提供すること。【解決手段】第1ポリプロピレン系樹脂、第1エラストマー、および、第1無機充填材、を含有するマスターバッチと、第2ポリプロピレン系樹脂、第2エラストマー、および、第2無機充填材、を含有する主材とを、混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物を加熱溶融して溶融物を得る溶融工程と、前記溶融物を成形し、成形体を得る成形工程と、を有し、前記成形体における前記第1無機充填材と前記第2無機充填材との合計含有率が、25質量%以上35質量%以下であることを特徴とする成形体の製造方法。【選択図】図1

Description

本発明は、成形体の製造方法に関するものである。
タルク等の強化部材が配合されたポリプロピレン系樹脂を主材料とする成形体は、十分な剛性を有するとともに、軽量であるため、自動車部品や電気機器部品等に使用されている。
例えば、特許文献1には、結晶性ポリプロピレン、エラストマーおよびタルクを含有するタルクマスターバッチと、希釈用ポリプロピレンと、の混合物を加熱溶融させた後、射出成形して成形品を得る方法が開示されている。
タルクは、成形品の剛性や耐熱性を高める。また、エラストマーは、タルクの分散性を高めるとともに、タルクとポリプロピレンとの界面剥離を抑制する。したがって、このようなポリプロピレンを主材料とし、タルクやエラストマーを含む成形品は、高剛性なものとなる。
特開2018-135459号公報
特許文献1に記載の成形品には、経年や熱による寸法変化が大きいという課題がある。このような寸法変化は、特に屋外で使用される成形品において、その外観に影響を及ぼす。一方、寸法変化を抑えようとすると、成形品の機械的特性が低下する傾向がある。したがって、成形品では、機械的特性の低下を抑えつつ、経年や熱による寸法変化を抑制することが重要となる。
本発明の適用例に係る成形体の製造方法は、
プロピレン-α-オレフィン共重合体を含む第1ポリプロピレン系樹脂、エチレン-α-オレフィン共重合体を含む第1エラストマー、および、タルクを含む第1無機充填材、を含有するマスターバッチと、第2ポリプロピレン系樹脂、エチレン-α-オレフィン共重合体を含む第2エラストマー、および、タルクを含む第2無機充填材、を含有する主材とを、混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物を加熱溶融して溶融物を得る溶融工程と、
前記溶融物を成形し、成形体を得る成形工程と、
を有し、
前記成形体における前記第1無機充填材と前記第2無機充填材との合計含有率が、25質量%以上35質量%以下であることを特徴とする。
実施形態に係る成形体の製造方法を示すフローチャートである。
以下、本発明の成形体の製造方法および成形体の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
1.成形体の製造方法
図1は、実施形態に係る成形体の製造方法を示すフローチャートである。
本実施形態に係る成形体の製造方法は、混合工程S102と、溶融工程S104と、成形工程S106と、を有する。混合工程S102では、マスターバッチと主材とを混合して混合物を得る。溶融工程S104では、得られた混合物を加熱溶融して溶融物を得る。成形工程S106では、溶融物を成形し、成形体を得る。
このような各工程を有する製造方法によれば、経年や熱による寸法変化が抑制された成形体を効率よく製造することができる。このため、従来、寸法安定化のため、成形体に対して行われていた、アニール処理等の後処理を省略することができる。
以下、各工程について順次説明する。
1.1.混合工程
混合工程S102では、マスターバッチと、主材と、を混合して混合物を得る。
マスターバッチは、(a1)成分である第1ポリプロピレン系樹脂、(b1)成分である第1エラストマー、および、(c1)成分である第1無機充填材を含有する組成物である。
主材は、(a2)成分である第2ポリプロピレン系樹脂、(b2)成分である第2エラストマー、および、(c2)成分である第2無機充填材を含有する組成物である。
1.1.1.マスターバッチ
前述したように、マスターバッチは、(a1)成分である第1ポリプロピレン系樹脂、(b1)成分である第1エラストマー、および、(c1)成分である第1無機充填材を含有する。
1.1.1.1.(a1)成分
(a1)成分である第1ポリプロピレン系樹脂は、後述する溶融工程S104において、マスターバッチの溶融物と、後述する主材の溶融物と、が混じり合って混練されるとき、均一な混練を容易にする。
第1ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。なお、以下の説明では、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体およびプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体を、まとめて「プロピレン-α-オレフィン共重合体」ということがある。
第1ポリプロピレン系樹脂には、プロピレン-α-オレフィン共重合体が好ましく用いられ、特にプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体がより好ましく用いられる。これにより、製造される成形体の剛性や耐衝撃性等の機械的特性を高めることができる。その結果、成形体の機械的特性の低下を抑制しつつ、成形体における第1無機充填材や第2無機充填材の含有率の許容範囲を広げることができる。よって、無機充填材の含有率が高く、経年や熱による寸法変化が抑制されており、かつ、機械的特性が良好な成形体を実現することができる。
プロピレン-α-オレフィン共重合体は、ポリプロピレンを主鎖とし、α-オレフィンをコモノマーとする共重合体である。プロピレン-α-オレフィン共重合体におけるプロピレン含量は、好ましくは60.00質量%以上99.99質量%以下とされ、より好ましくは70.00質量%以上99.00質量%以下とされ、さらに好ましくは90.00質量%以上98.00質量%以下とされる。また、プロピレン-α-オレフィン共重合体は、組成が異なる2種類以上のα-オレフィンが混在した共重合体であってもよい。
プロピレン-α-オレフィン共重合体の具体例としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-ペンテン-1共重合体、プロピレン-ヘキセン-1共重合体、プロピレン-オクテン-1共重合体のような二元共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ヘキセン共重合体のような三元共重合体等が挙げられる。このうち、プロピレン-エチレン共重合体またはプロピレン-エチレン-ブテン-1ブロック共重合体が好ましく用いられる。
プロピレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンの炭素数は、特に限定されないが、2以上8以下であるのが好ましい。
プロピレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、2-メチル-1-プロペン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、エチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、1-オクテン等が挙げられる。
1.1.1.2.(b1)成分
(b1)成分である第1エラストマーは、第1無機充填材の分散性を高めるとともに、第1無機充填材と第1ポリプロピレン系樹脂との界面剥離を抑制する。これにより、成形体において優れた耐衝撃性を確保する。本明細書において、「エラストマー」とは、「ゴム」と同義である。
したがって、第1エラストマーには、各種エラストマーや各種ゴムが用いられる。特に、エチレン構造(-(C)-)を含むゴムであるエチレン重合体が好ましく用いられる。エチレン重合体としては、例えば、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体やエチレン-α-オレフィンブロック共重合体のようなエチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-α-オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体、水素添加ブロック共重合体、その他弾性重合体、これらの混合物等が挙げられる。このうち、エチレン-α-オレフィン共重合体が好ましく用いられる。エチレン-α-オレフィン共重合体は、ポリエチレンを主鎖とし、α-オレフィンをコモノマーとする共重合体である。このようなエチレン-α-オレフィン共重合体を用いることにより、マスターバッチの耐ブロッキング性を高めつつ、成形体の機械的特性を高めることができる。
エチレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンの炭素数は、4以上15以下であるのが好ましく、4以上12以下であるのがより好ましい。
エチレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等が挙げられる。
エチレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンの含有率は、20質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、20質量%以上40質量%以下であるのがより好ましい。これにより、成形体における耐衝撃性と剛性や硬度とのバランスを良好にすることができる。なお、α-オレフィンの含有率が前記下限値を下回ると、成形体の耐衝撃性が低下するおそれがある。一方、α-オレフィンの含有率が前記上限値を上回ると、成形体の剛性や硬度が低下するおそれがある。
また、第1エラストマーは、特に、融点が30℃以上70℃以下のエチレン重合体Aと、エチレン重合体Aよりも融点が高いエチレン重合体Bと、を含有していてもよい。このように融点の異なる2種類のエチレン重合体を用いることにより、マスターバッチの耐ブロッキング性を高めつつ、機械的特性に優れた混練物を得ることができる。その結果、最終的に、無機充填材が良好に分散し、経年や熱による寸法変化が十分に抑制され、かつ、機械的特性が良好な成形体を実現することができる。
エチレン重合体Aは、前述したように、融点が30℃以上70℃以下のエチレン重合体であるが、エチレン重合体Aの融点は好ましくは35℃以上65℃以下とされる。エチレン重合体Bは、前述したように、エチレン重合体Aよりも融点が高いエチレン重合体であるが、エチレン重合体Bの融点は好ましくは90℃以上130℃以下とされる。
1.1.1.3.(c1)成分
(c1)成分である第1無機充填材は、後述する第2無機充填材とともに成形体の膨張、収縮を抑制する。これにより、第1無機充填材を含む成形体では、経年や熱による寸法変化が抑制される。また、第1無機充填材には、成形体の耐熱性や剛性を高める作用もある。
第1無機充填材としては、例えば、シリカ、ケイ藻土、バリウムフェライト、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、軽石、軽石バルーンのような酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウムのような水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、ドーソナイトのような炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウムのような硫酸塩または亜硫酸塩、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスバルーン、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、カオリナイトのような粘土鉱物・ケイ酸塩またはその有機化物、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素中空球のような炭素類や、硫化モリブデン、ボロン繊維、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム、マグネシウムオキシサルフェイト、各種金属繊維等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
このうち、第1無機充填材は、タルクを含んでいるのが好ましい。タルクは、微細な板状をなす形状に粉砕されやすく、(a1)成分や(b1)成分と混合しても成形体の外観を変化させることなく、成形体の膨張や収縮を抑制する。また、タルクは、モース硬度が低いため、混練機や射出成形機を摩耗させにくい。
第1無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、1μm以上10μm以下であるのが好ましく、2μm以上8μm以下であるのがより好ましく、4μm以上6μm以下であるのがさらに好ましい。第1無機充填材の平均粒径が前記範囲内であれば、寸法安定性と機械的特性の双方を高めることができる。また、第1無機充填材の添加に伴う成形体の耐衝撃性の低下を抑制することができる。
なお、第1無機充填材の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された累積質量が50%となるときの粒子径D50のことである。
第1無機充填材の形状としては、例えば、粒状、板状、棒状、繊維状等が挙げられ、特に限定されない。
1.1.1.4.(d1)成分
マスターバッチは、前述した3成分の他に、任意の成分である(d1)成分を含有していてもよい。(d1)成分としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、核剤、難燃剤、各種樹脂等が挙げられる。
1.1.1.5.各成分の配合比
マスターバッチにおける各成分の配合比は、特に限定されないが、例えば(a1)成分100質量部に対し、(c1)成分が20質量部以上900質量部以下であるのが好ましく、100質量部以上600質量部以下であるのがより好ましく、120質量部以上300質量部以下であるのがさらに好ましい。これにより、マスターバッチにおいて(c1)成分である第1無機充填材の分散性を確保することができる。その結果、混合物においても第1無機充填材の分散性を高めることができる。
なお、マスターバッチにおける(c1)成分の比率は、後述する主材における(c2)成分の比率と異なっているのが好ましく、例えば主材における(c2)成分の比率より高く設定されているのが好ましい。これにより、後述する混合工程S102におけるマスターバッチと主材の混合比に基づいて、混合物における第1無機充填材と第2無機充填材の合計含有率を容易に調整することができる。
また、(a1)成分100質量部に対し、(b1)成分が20質量部以上200質量部以下であるのが好ましく、40質量部以上100質量部以下であるのがより好ましく、50質量部以上90質量部以下であるのがさらに好ましい。これにより、マスターバッチにおいて第1無機充填材と第1ポリプロピレン系樹脂との界面剥離をより確実に抑制することができる。
さらに、マスターバッチにおける(d1)成分の含有率は、(d1)成分の合計で10質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以上5.0質量%以下であるのがより好ましい。
1.1.2.主材
前述したように、主材は、(a2)成分である第2ポリプロピレン系樹脂、(b2)成分である第2エラストマー、および、(c2)成分である第2無機充填材を含有する。
1.1.2.1.(a2)成分
(a2)成分である第2ポリプロピレン系樹脂は、主材の主成分である。
第2ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体(結晶性ポリプロピレン)、プロピレンとα-オレフィンとの共重合体、プロピレンとビニルエステルとの共重合体、プロピレンと芳香族ビニル単量体との共重合体、プロピレンとビニルシランとの共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。なお、共重合体は、ブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であっても、グラフト共重合体であってもよい。
α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等が挙げられる。
これらの中でも、第2ポリプロピレン系樹脂としては、結晶性ポリプロピレン部と、プロピレン-エチレンランダム共重合部と、を含有するポリプロピレン樹脂が好ましく用いられる。
結晶性ポリプロピレン部は、プロピレンの単独重合によって得られる。プロピレン-エチレンランダム共重合部は、プロピレンとエチレンのランダム共重合によって得られる。(a2)成分におけるプロピレン-エチレンランダム共重合部の割合は、好ましくは1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
1.1.2.2.(b2)成分
(b2)成分である第2エラストマーは、第2無機充填材の分散性を高めるとともに、第2無機充填材と第2ポリプロピレン系樹脂との界面剥離を抑制する。これにより、成形体において優れた耐衝撃性を確保する。
したがって、第2エラストマーには、各種エラストマーや各種ゴムが用いられる。特に、エチレン構造(-(C)-)を含むゴムであるエチレン重合体が好ましく用いられる。エチレン重合体としては、例えば、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体やエチレン-α-オレフィンブロック共重合体のようなエチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-α-オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体、水素添加ブロック共重合体、その他弾性重合体、これらの混合物等が挙げられる。このうち、エチレン-α-オレフィン共重合体が好ましく用いられる。エチレン-α-オレフィン共重合体は、ポリエチレンを主鎖とし、α-オレフィンをコモノマーとする共重合体である。このようなエチレン-α-オレフィン共重合体を用いることにより、主材の耐ブロッキング性を高めつつ、成形体の機械的特性を高めることができる。
エチレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンの炭素数は、4以上15以下であるのが好ましく、4以上12以下であるのがより好ましい。
エチレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等が挙げられる。
エチレン-α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィンの含有率は、20質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、20質量%以上40質量%以下であるのがより好ましい。これにより、成形体における耐衝撃性と剛性や硬度とのバランスを良好にすることができる。なお、α-オレフィンの含有率が前記下限値を下回ると、成形体の耐衝撃性が低下するおそれがある。一方、α-オレフィンの含有率が前記上限値を上回ると、成形体の剛性や硬度が低下するおそれがある。
1.1.2.3.(c2)成分
(c2)成分である第2無機充填材は、前述した第1無機充填材とともに成形体の膨張、収縮を抑制する。これにより、第2無機充填材を含む成形体では、経年や熱による寸法変化が抑制される。また、第2無機充填材には、成形体の耐熱性や剛性を高める作用もある。
第2無機充填材は、例えば、前述した第1無機充填材として挙げたものの中から、適宜選択される。
このうち、第2無機充填材は、タルクを含んでいるのが好ましい。タルクは、微細な板状をなす形状に粉砕されやすく、(a2)成分や(b2)成分と混合しても成形体の外観を変化させることなく、成形体の膨張や収縮を抑制する。また、タルクは、モース硬度が低いため、混練機や射出成形機を摩耗させにくい。
第2無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、1μm以上10μm以下であるのが好ましく、2μm以上8μm以下であるのがより好ましい。第2無機充填材の平均粒径が前記範囲内であれば、寸法安定性と機械的特性の双方を高めることができる。また、第2無機充填材の添加に伴う成形体の耐衝撃性の低下を抑制することができる。
なお、第2無機充填材の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された累積質量が50%となるときの粒子径D50のことである。
第2無機充填材の形状としては、例えば、粒状、板状、棒状、繊維状等が挙げられ、特に限定されない。
なお、第1無機充填材の平均粒径および第2無機充填材の平均粒径は、互いに同じであってもよいが、互いに異なっていてもよい。後者の場合、第1無機充填材と第2無機充填材とを合わせた混合無機充填材の粒度分布を容易に広くすることができる。つまり、粒度分布が広い混合無機充填材であっても、均一に分散した混合物を容易に調製することができる。その結果、粒度分布が広い混合無機充填材を含む成形体を容易に製造することができる。かかる成形体では、混合無機充填材の含有率が高くても、剛性や耐衝撃性等の機械的特性の低下が抑制され、かつ、寸法変化の抑制が図られる。「平均粒径が互いに異なっている」とは、双方の平均粒径の差が0.5μm以上である状態をいう。
なお、第1無機充填材または第2無機充填材のいずれかが省略された場合、換言すれば、マスターバッチまたは主材のいずれか一方が無機充填材を含有しない場合には、粒度分布が広い無機充填材を混合物中で均一に分散させることが難しくなる。このため、成形体における無機充填材の均一な分散が阻害されることがあり、部分的に寸法変化が大きくなるおそれがある。
これに対し、マスターバッチと主材の双方が無機充填材を含んでいれば、双方の無機充填材の平均粒径を異ならせたとしても、均一な混合が可能になる。これにより、粒度分布が広い無機充填材を混合物中で均一に分散させることが容易になる。
1.1.2.4.(d2)成分
主材は、前述した3成分の他に、任意の成分である(d2)成分を含有していてもよい。(d2)成分としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、核剤、難燃剤、各種樹脂等が挙げられる。
1.1.2.5.各成分の配合比
主材における各成分の配合比は、特に限定されないが、例えば(a2)成分100質量部に対し、(c2)成分が20質量部以上900質量部以下であるのが好ましく、100質量部以上600質量部以下であるのがより好ましく、120質量部以上300質量部以下であるのがさらに好ましい。これにより、主材において(c2)成分である第2無機充填材の分散性を確保することができる。その結果、混合物においても第2無機充填材の分散性を高めることができる。
また、主材における(b2)成分の含有率は、10質量%以上60質量%以下であるのが好ましく、20質量%以上50質量%以下であるのがより好ましく、20質量%以上40質量%以下であるのがさらに好ましい。これにより、主材において第2無機充填材と第2ポリプロピレン系樹脂との界面剥離をより確実に抑制することができる。
さらに、主材における(d2)成分の含有率は、(d2)成分の合計で10質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以上5.0質量%以下であるのがより好ましい。
1.1.3.混合処理
混合工程S102では、以上のようなマスターバッチと主材とを混合する混合処理を行う。混合処理は、マスターバッチのペレットと主材のペレットとをドライブレンドして、均一に混合された混合物とする処理である。混合処理には、例えばタンブラー等が用いられる。なお、混合処理は、後述する射出成形機のホッパーに各ペレットを投入する処理で代替することもできるが、均一な混合を行うためには、あらかじめ混合物としておくのが好ましい。
混合工程S102では、後述する成形体における第1無機充填材と第2無機充填材との合計含有率が、25質量%以上35質量%以下となるように、マスターバッチと主材の混合比を設定する。混合物における無機充填材の含有率は、揮発成分の影響で多少変化するが、通常、そのまま、成形体における無機充填材の含有率となる。このため、混合工程S102では、混合物における第1無機充填材と第2無機充填材との合計含有率が、25質量%以上35質量%以下となるように、マスターバッチと主材の混合比を設定する。
第1無機充填材と第2無機充填材との合計含有率が前記範囲内であれば、経年や熱による成形体の寸法変化が特に小さく抑えられる。このため、従来、寸法安定化のため、成形体に対して行われていた、アニール処理等の後処理を省略することができる。その結果、後処理を行うことなく、寸法安定性に優れた成形体を製造することができる。これにより、成形体の低コスト化を図ることができる。
第1無機充填材と第2無機充填材との合計含有率は、前述したように25質量%以上35質量%以下の範囲内であればよいが、好ましくは25質量%以上33質量%以下とされ、より好ましくは27質量%以上31質量%以下とされる。
なお、第1無機充填材と第2無機充填材との合計含有率が前記下限値を下回ると、経年や熱による成形体の寸法変化が大きくなる。このため、アニール処理等の後処理が必要になる。一方、合計含有率が前記上限値を上回ると、成形体の耐衝撃性が低下したり、外観が悪化したりするおそれがある。
また、アニール処理を省略することにより、アニール処理の温度ムラに伴う寸法バラつきの発生を抑制することができる。これにより、アニール処理を省略することにより、結果的に、寸法精度の高い成形体を得ることができる。
なお、混合工程S102では、それぞれ、ポリプロピレン系樹脂、エラストマーおよび無機充填材を含有する組成物同士を混合し、混合物を得る。このようにしてマスターバッチと主材の双方に無機充填材を含ませることにより、無機充填材を高濃度に配合した成形体であっても、均質性を高めやすい。つまり、混合工程S102によれば、最終的に、無機充填材を高濃度に含有した、均質な成形体を得ることができる。
混合工程S102では、上述したマスターバッチおよび主材以外の成分、例えば色材やその他の成分を含むマスターバッチ等が混合物に追加されていてもよい。
第1無機充填材と第2無機充填材とを混合した後の混合無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、1μm以上10μm以下であるのが好ましく、2μm以上8μm以下であるのがより好ましい。混合無機充填材の平均粒径が前記範囲内であれば、寸法安定性と機械的特性の双方を高めることができる。また、混合無機充填材の添加に伴う成形体の耐衝撃性の低下を抑制することができる。
なお、混合無機充填材の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定された累積質量が50%となるときの粒子径D50のことである。
1.2.溶融工程
溶融工程S104では、得られた混合物を加熱溶融して溶融物を得る。具体的には、混合物を射出成形機のホッパーに投入し、射出成形機のシリンダー内で加熱して混合物の樹脂成分を溶融させる。また、スクリューによって混合物にせん断力を付与し、混練する。これにより、溶融物を得る。
混合物を加熱する温度は、混合物の樹脂成分の組成に応じて設定されるが、一例として180℃以上400℃以下であるのが好ましく、190℃以上350℃以下であるのがより好ましく、200℃以上300℃以下であるのがさらに好ましい。
1.3.成形工程
成形工程S106では、得られた溶融物を成形型に射出する。そして、射出物を冷却することにより、成形体を得る。射出には、射出成形機が用いられる。
成形体には、必要に応じて、バリ取り処理、アニール処理等の後処理を行うようにしてもよい。
ただし、本実施形態で得られる成形体は、前述したように、無機充填材を高濃度に含有している。このため、寸法安定化のために行われるアニール処理等については、省略することが可能である。これにより、工数の削減を図ることができる。
2.成形体
以上のようにして得られた成形体は、ポリプロピレン系樹脂と、エラストマーと、無機充填材と、を含有し、無機充填材の含有率が25質量%以上35質量%以下、というものである。
このような成形体では、経年や熱による成形体の寸法変化が特に小さく抑えられている。このため、従来、寸法安定化のため、成形体に対して行われていた、アニール処理等の後処理を省略することができる。その結果、このような成形体は、後処理を行うことなく、寸法安定性に優れたものとなる。これにより、例えば成形体の形状が非常に微細である場合に、アニール処理における高温環境下で変形が生じるという問題を解消することができる。つまり、本実施形態に係る成形体は、アニール処理を考慮する必要がないため、形状の自由度が高いという点でも有用である。
なお、上記ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、前述した第1ポリプロピレン系樹脂および第2ポリプロピレン系樹脂のいずれか一方または双方の混合物が用いられる。
また、上記エラストマーとしては、例えば、前述した第1エラストマーおよび第2エラストマーのいずれか一方または双方の混合物が用いられる。
さらに、上記無機充填材としては、例えば、前述した第1無機充填材および第2無機充填材のいずれ一方または双方の混合物が用いられる。
以上、本発明の成形体の製造方法および成形体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば本発明の成形体は、前記実施形態に任意の成分が付加されたものであってもよい。
また、本発明の成形体の製造方法は、前記実施形態に任意の目的の工程が付加されたものであってもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
3.成形体の製造
3.1.実施例1
まず、以下の各成分を含有するマスターバッチのペレットおよび主材のペレットを用意し、これらを混合して混合物を得た。マスターバッチと主材の混合比を表1に示す。
次に、得られた混合物を加熱溶融して、溶融物を得た。その後、溶融物を射出成形し、長さ1935.5mm、幅160mmの長尺状の成形体を得た。
3.1.1.マスターバッチが含有する各成分
(a1)成分:プロピレン-エチレン共重合体(30質量部)
(b1)成分:エチレン-1-オクテン共重合体(20質量部)
(c1)成分:タルク(50質量部)
(d1)成分:光安定剤(微量)
なお、マスターバッチに使用したタルクの平均粒径は、5.5μmであった。
3.1.2.主材が含有する各成分
(a2)成分:結晶性ポリプロピレン部(79質量%)と、プロピレン-エチレンランダム共重合部(21質量%)と、を含有するポリプロピレン樹脂(70質量部)
(b2)成分:エチレン-1-オクテン共重合体(15質量部)
(c2)成分:タルク(15質量部)
なお、主材に使用したタルクの平均粒径は、5.0μmであった。
3.2.実施例2~5
成形体の製造条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。
3.3.比較例1、2
成形体の製造条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして成形体を得た。
4.成形体の評価
4.1.温度サイクル試験
各実施例および各比較例で得られた成形体について、温度サイクル試験を行った。温度範囲は、-40℃~+90℃とし、サイクル数は4サイクルとした。
そして、成形体の長さ1000mm当たりの収縮率を算出した。算出結果を表1に示す。
4.2.アイゾット衝撃強さ試験
各実施例および各比較例で得られた成形体から、JIS K 7110:1999に規定された「プラスチック-アイゾット衝撃強さの試験方法」に基づいてノッチ付き試験片を切り出した。続いて、切り出したノッチ付き試験片について、アイゾット衝撃試験を行った。試験温度は23℃とした。そして、測定したアイゾット衝撃強さを以下の評価基準に照らして評価した。
A:アイゾット衝撃強さが大きい
B:アイゾット衝撃強さがやや大きい
C:アイゾット衝撃強さがやや小さい
D:アイゾット衝撃強さが小さい
評価結果を表1に示す。
Figure 0007137245000002
表1から明らかなように、各実施例で得られた成形体では、アニール処理等の追加処理を施すことなく、温度サイクル試験による収縮率が0.50/1000[mm]以下程度の十分に小さい値に抑えられていた。温度サイクル試験による収縮率がこの程度であれば、数十年間の経年による成形体の寸法変更は、アニール処理等の追加処理を施さなくても十分に公差内に抑えられると見込まれる。したがって、本発明によれば、経年や熱による寸法変化が十分に小さい成形品を製造し得ることが明らかとなった。
S102 混合工程
S104 溶融工程
S106 成形工程

Claims (3)

  1. プロピレン-α-オレフィン共重合体を含む第1ポリプロピレン系樹脂、エチレン-α-オレフィン共重合体を含む第1エラストマー、および、タルクを含む第1無機充填材、を含有するマスターバッチと、第2ポリプロピレン系樹脂、エチレン-α-オレフィン共重合体を含む第2エラストマー、および、タルクを含む第2無機充填材、を含有する主材とを、混合して混合物を得る混合工程と、
    前記混合物を加熱溶融して溶融物を得る溶融工程と、
    前記溶融物を成形し、成形体を得る成形工程と、
    を有し、
    前記成形体における前記第1無機充填材と前記第2無機充填材との合計含有率が、25質量%以上35質量%以下であることを特徴とする成形体の製造方法。
  2. 前記マスターバッチにおける前記第1無機充填材の含有率は、前記主材における前記第2無機充填材の含有率より高い請求項1に記載の成形体の製造方法。
  3. 前記第1無機充填材および前記第2無機充填材は、平均粒径が互いに異なる請求項1または2に記載の成形体の製造方法。
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