JP7136580B2 - 隔膜、隔膜の製造方法、電解槽及び水素製造方法 - Google Patents
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Description
多孔構造のイオン透過性隔膜を有する隔膜であり、
該イオン透過性隔膜はイオン透過領域(A)とそれを取り囲むシーリング領域(B)とを有し、
前記イオン透過領域(A)の平均透水孔径が、前記シーリング領域(B)の平均透水孔径よりも大きいことを特徴とする隔膜。
[2]
多孔構造のイオン透過性隔膜を有するアルカリ水電解用隔膜であり、
該イオン透過性隔膜はイオン透過領域(A)とそれを取り囲むシーリング領域(B)とを有し、
前記イオン透過領域(A)の平均透水孔径が、前記シーリング領域(B)の平均透水孔径よりも大きいことを特徴とするアルカリ水電解用隔膜。
[3]
前記イオン透過領域(A)の平均透水孔径が0.1μm~0.8μmの範囲にあり、
前記シーリング領域(B)の平均透水孔径が0.01μm~0.5μmの範囲にあることを特徴とする[1]または[2]に記載の隔膜。
[4]
多孔構造のイオン透過性隔膜を有する隔膜であり、
該イオン透過性隔膜はイオン透過領域(A)とそれを取り囲むシーリング領域(B)とを有し、
前記イオン透過領域(A)の最大孔径が、前記シーリング領域(B)の最大孔径よりも大きいことを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の隔膜。
[5]
前記イオン透過領域(A)の最大孔径が0.8μm~3.0μmの範囲にあり、
前記シーリング領域(B)の最大孔径が0.01~2.0μmの範囲にあることを特徴とする[4]に記載の隔膜。
[6]
多孔構造のイオン透過性隔膜を有する隔膜であり、
該イオン透過性隔膜はイオン透過領域(A)とそれを取り囲むシーリング領域(B)とを有し、
前記イオン透過領域(A)の気孔率が、前記シーリング領域(B)の気孔率よりも高いことを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載の隔膜。
[7]
前記イオン透過領域(A)の気孔率が30%~60%の範囲にあり、
前記シーリング領域(B)の気孔率が0.1~20%の範囲にあることを特徴とする[6]に記載の隔膜。
[8]
多孔構造のイオン透過性隔膜を有する隔膜であり、
該イオン透過性隔膜はイオン透過領域(A)とそれを取り囲むシーリング領域(B)とを有し、
前記イオン透過領域(A)の膜厚が、前記シーリング領域(B)の膜厚よりも大きいことを特徴とする[1]~[7]のいずれかに記載の隔膜。
[9]
前記イオン透過領域(A)の膜厚が300μm~600μmの範囲にあり、
前記シーリング領域(B)の膜厚が50μm~500μmの範囲にあることを特徴とする[8]に記載の隔膜。
[10]
[1]~[9]のいずれかに記載の隔膜と、陰極と陽極とを保持したエレメントとをスタックしてなる電解槽であって、
当該隔膜のシーリング領域(B)とセル枠が接しており、且つ、当該隔膜のイオン透過領域(A)の両面がそれぞれ当該陰極および陽極と接していることを特徴とする電解槽。
[11]
前記隔膜のシーリング領域(B)と前記エレメントとが、さらにガスケットを介してスタックしてなる[10]に記載の電解槽。
[12]
前記ガスケットの弾性率が前記隔膜のシーリング領域(B)の弾性率よりも大きいことを特徴とする[11]に記載の電解槽。
[13]
前記ガスケットの断面の形状がコの字型であり、
前記隔膜を挟み込むスリット部分の幅が0.3~1.0mmであり、
前記隔膜を挟み込むスリット部分の深さが5.0~80mmである
ことを特徴とする[11]又は[12]に記載の電解槽。
[14]
前記ガスケットが前記隔膜を挟み込む構造を特徴とする[11]~[13]のいずれかに記載の電解槽。
[15]
アルカリを含有する水を電解槽により水電解し、水素を製造する水素製造方法であり、
前記電解槽は、隔膜と、陰極と陽極とを保持したエレメントとをスタックしてなり、
ここで、前記隔膜は、多孔構造のイオン透過性隔膜を有し、
前記イオン透過性隔膜は、イオン透過領域(A)とそれを取り囲むシーリング領域(B)とを有し、
前記イオン透過領域(A)の平均透水孔径が、前記シーリング領域(B)の平均透水孔径よりも大きく、
前記隔膜のシーリング領域(B)とセル枠とが接しており、且つ、前記隔膜のイオン透過領域(A)の両面がそれぞれ前記陰極および前記陽極と接している
ことを特徴とする、水素製造方法。
本実施形態のアルカリ水電解用隔膜は、アルカリ水電解用複極式電解槽において陽極と陰極との間に配置される隔膜であり、イオンを含む電解液を透過する一方、電極で発生したガスを遮断する役割を担う。本実施形態の隔膜は、多孔構造を有するイオン透過性隔膜(以下、単に「多孔膜」という場合もある。)であり、イオン透過領域(A)と、それを取り囲むシーリング領域(B)とを有し、イオン透過領域(A)のイオン透過性がシーリング領域(B)のイオン透過性よりも高いことを特徴とする。これにより、イオン透過領域はイオン透過性が高いため、電圧損失が小さくなって高効率となり、セル全体で高効率を達成してセル電圧を低くすることが出来る一方、シーリング領域はイオン透過性が低いため、電解液の漏出も起きずリーク電流も小さくすることが出来る。
上記効果をさらに高める観点から、親水性無機粒子の平均一次粒径は、25nm以上250nm以下であることが好ましく、30nm以上200nm以下であることがより好ましい。
親水性無機粒子は、多孔膜の表面に付着していても良いし、一部が多孔膜を構成する高分子材料に埋没していても良い。また親水性無機粒子が多孔膜の空隙部に内包されると、多孔膜から脱離しにくくなり、多孔膜の性能を長時間維持できる。
0.5μm以上8.0μm以下であることがより好ましい。平均二次粒径は、親水性無機粒子が多孔膜中で形成している二次粒子の状態の平均粒径である。
なお、平均二次粒径は、多孔膜から高分子樹脂を溶解除去して残った親水性無機粒子を測定試料として、レーザー回折・散乱法により、体積分布から平均二次粒径を計測することができる。
平均透水孔径(m)={32ηLμ0/(εP)}0.5
ここで、ηは水の粘度(Pa・s)、Lは多孔膜の厚み(m)、μ0は見かけの流速でありμ0(m/s)=流量(m3/s)/流路面積(m2)である。また、εは気孔率、Pは圧力(Pa)である。
気孔率ε(%)=(ρ1-ρ2)×100
ρ1は、飽水密度(g/cm3)、すなわち、開気孔内が水を含んで飽和した状態のサンプルの密度を表す。ρ2は、乾燥密度(g/cm3)、すなわち、開気孔内から水が十分に除去されて乾燥した状態のサンプルの密度を表す。ρ1及びρ2は、それぞれの状態のサンプルについて、w:重量(g)、d:厚み(cm)、s:厚み方向に垂直な面の面積(cm2)を測定し、ρ=w/(d×s)として求めることができる。
多孔膜サンプルの水接触面が低吸水性であって、サンプルが水を含んだ状態と乾燥状態との間で厚みや面積が有意に変化しない場合には、d及びsは一定値とみなすこともできる。
気孔率εは、具体的に、25℃に設定した室内で次の手順で測定することができる。純水で洗浄した多孔膜を3cm×3cmの大きさで3枚に切出して、シックネスゲージで厚みdを測定する。これら測定サンプルを純水中に24時間浸し、余分な水分を取り除いて重量w1(g)を測定する。続いて、取り出したサンプルを50℃に設定された乾燥機で12時間以上静置して乾燥させて、重量w2(g)を測定する。そして、w1、w2、及びdの値から気孔率を求める。3枚のサンプルについて気孔率を求め、それらの算術平均値を多孔膜の気孔率εとする。
最大孔径は、完全性試験機(ザルトリウス・ステディム・ジャパン社製、「Sartocheck Junior BP-Plus」)を使用して以下の方法で測定することができる。まず、隔膜として使用する多孔膜を芯材も含めて所定の大きさに切り出して、これをサンプルとする。このサンプルを純水で濡らし、多孔膜の孔内に純水を含浸させ、これを測定用の耐圧容器にセットする。次に、耐圧容器を所定温度に設定した恒温槽内で保持し、耐圧容器内部が所定温度になってから測定を開始する。測定が始まると、サンプルの上面側が窒素で加圧されていき、サンプルの下面側から気泡が連続して発生してくるときの窒素圧力を、バブルポイント圧力とする。最大孔径はヤング-ラプラスの式を変形させた下記バブルポイント式から求めることができる。
最大孔径(m)=4γcosθ/P
ここで、γは水の表面張力(N/m)、cosθは多孔膜表面と水の接触角(rad)、Pはバブルポイント圧力(Pa)である。
高分子多孔膜の製法例としては、相転換法(ミクロ相分離法)、抽出法、延伸法、湿式ゲル延伸法等が挙げられる。相転換法(ミクロ相分離法)とは、高分子材料を良溶媒に溶解して得られた溶液により製膜し、これを貧溶媒中で相分離させることで多孔質化する方法(非溶媒誘起相分離法)である。抽出法とは、高分子材料に炭酸カルシウム等の無機粉体を混練して製膜した後に、該無機粉体を溶解抽出して多孔質化する方法である。延伸法とは、所定の結晶構造を有する高分子材料のフィルムを所定の条件で延伸して開孔させる方法である。湿式ゲル延伸法とは、高分子材料を流動パラフィン等の有機溶剤で膨潤させてゲル状シートとし、これを所定の条件で延伸したのち有機溶剤を抽出除去する方法である。
無機多孔膜の製法例としては、焼結法等が挙げられる。焼結法は、プレスや押出しによって得られた成形物を焼き、微細孔を残したまま一体化させる方法である。
不織布の製法例としては、スパンボンド法、電界紡糸(エレクトロスピニング)法等が挙げられる。スパンボンド法とは、溶融したペレットから紡糸された糸を熱ロールで圧着し、シート状に一体化させる方法である。電界紡糸(エレクトロスピニング)法とは、溶融ポリマーの入ったシリンジとコレクター間に高電圧を印加しながら射出することで、細く伸長した繊維をコレクター上に集積させる方法である。
高分子材料としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリビニリデンフロライド、ポリカーボネート、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロスルホン酸、パーフルオロカルボン酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等が挙げられる。これらの中でも、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、であることが好ましく、ポリスルホンであることがより好ましい。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、例えば、非溶媒誘起相分離法等の方法を用いることで、隔膜を一層簡便に製膜することができる。特にポリスルホンであれば、孔径を一層精度よく制御することができる。
隔膜として多孔膜を用いる場合、多孔膜は多孔性支持体と共に用いてよい。好ましくは、多孔膜が多孔性支持体を内在した構造であり、より好ましくは、多孔性支持体の両面に多孔膜を積層した構造である。また、多孔性支持体の両面に対称に多孔膜を積層した構造であってもよい。
隔膜の製造方法は、特に限定されないが、非溶媒誘起相分離法(「湿式相分離法」とも称される)で行うことが好ましい。以下、非溶媒誘起相分離法による製造方法の例を記載する。
非溶媒誘起相分離法による製造方法は、以下の工程を含む:
高分子樹脂と、溶媒と、任意により親水性無機粒子とを含有する溶液を調製する工程、
前記溶液を多孔性支持体の片面又は両面に塗工し、多孔性支持体上に塗膜を形成する工程、
前記多孔性支持体上の塗膜を、前記高分子樹脂の貧溶媒の蒸気を含む気体に晒す工程、
前記多孔性支持体上の塗膜を、前記高分子樹脂の貧溶媒を含む凝固浴に浸漬させ、多孔膜を形成する工程。
なお、多孔膜の表面及び内部の孔径とは、多孔膜の表面及び裏面の平均孔径、表面開口率、平均透水孔径、最大孔径、並びに気孔率等を包含するものとする。
凝固浴の温度は、特に限定されないが、10℃以上60℃以下であることが好ましい。凝固浴の温度は、塗膜の組成、貧溶媒の組成、凝固浴の温度等によって適宜好適な条件を選択できるが、通常、10℃以上60℃以下であれば、得られる多孔膜の表面及び内部の孔径を所望の範囲に制御することができる。
得られた多孔膜にイオン透過領域(A)とシーリング領域(B)を作成する方法は、イオン透過領域(A)の周囲をプレスまたは熱プレス、ガスケットに挿入後にプレス、ガスケットに挿入した状態からセル組立時の圧力で圧縮、などの処理を施す方法が挙げられる。プレスの方法としては、例えば金属板で多孔膜のシーリング領域(B)としたい部分を挟み込みプレスする方法が挙げられる。熱プレスの場合は、金属板を高温にすることで対応できる。熱処理温度は、特に限定されないが、80℃以上210℃以下であることが好ましく、180℃以上210℃以下であることがより好ましい。熱処理温度が80℃以上であれば、水電解における使用温度より高い温度となるため、隔膜とした際に、高分子樹脂の高分子鎖が再び動き始めて多孔膜の構造が不安定となるといった不具合を効果的に抑制できる。熱処理温度が210℃以下であれば、高分子の熱劣化を効果的に抑制できる。熱処理温度が180℃以上であれば、通常汎用される高分子樹脂のガラス転移点温度以上の温度であるため、高分子鎖を結晶化又は固定化して、より優れた耐熱性を有する多孔膜とすることができる。
本実施形態のアルカリ水電解用電解槽は、上述した本発明のアルカリ水電解用隔膜と、陰極と陽極とを保持した複極式エレメントとを積層(スタック)してなる複極式電解槽である。言い換えると、本実施形態のアルカリ水電解用電解槽は、陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との間に配置された上述の本発明によるアルカリ水電解用隔膜との組み合わせ(「電解セル」とも称する)を、複数備える、複極式電解槽である。本発明のアルカリ水電解用隔膜は、イオン透過領域(A)と、それを取り囲むシーリング領域(B)とを有し、イオン透過領域(A)のイオン透過性がシーリング領域(B)のイオン透過性よりも高く構成されている。これにより、イオン透過領域はイオン透過性が高いため、電圧損失が小さくなって高効率となり、セル全体で高効率を達成してセル電圧を低くすることが出来る一方、シーリング領域はイオン透過性が低いため、電解液の漏出も起きずリーク電流も小さくすることが出来る。
図2に、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽の一例のゼロギャップ構造を(A)に示す破線四角枠の部分についての側面図を示す。
図3に、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽の一例の電極室部分についての平面図を示す。
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽は、図1に示すとおり、陽極2aと、陰極2cと、陽極2aと陰極2cとを隔離する隔壁1と、隔壁1を縁取る外枠3とを備える複数の複極式エレメント60が隔膜4を挟んで重ね合わせられている複極式電解槽50である。
一例のアルカリ水電解用複極式電解槽50に用いられる複極式エレメント60は、図2~図3に示すように、陽極2aと陰極2cとを隔離する隔壁1を備え、隔壁を縁取る外枠3を備えている。より具体的には、隔壁1は導電性を有し、外枠3は隔壁1の外縁に沿って隔壁1を取り囲むように設けられている。
図1に示す一例では、複極式電解槽50は、一端からファストヘッド51g、絶縁板51i、陽極ターミナルエレメント51aが順番に並べられ、更に、陽極側ガスケット部分7、隔膜4、陰極側ガスケット部分7、複極式エレメント60が、この順番で並べて配置される。このとき、複極式エレメント60は、陽極ターミナルエレメント51a側に陰極2cを向けるよう配置する。陽極側ガスケット部分7から複極式エレメント60までは、設計生産量に必要な数だけ繰り返し配置される。陽極側ガスケット部分7から複極式エレメント60までを必要数だけ繰り返し配置した後、再度、陽極側ガスケット部分7、隔膜4、陰極側ガスケット部分7を並べて配置し、最後に陰極ターミナルエレメント51c、絶縁板51i、ルーズヘッド51gをこの順番で配置する。複極式電解槽50は、全体をタイロッド51r(図1参照)や油圧シリンダー方式等の締め付け機構で締め付けることによりー体化され、複極式電解槽50となる。
複極式電解槽50を構成する配置は、陽極2a側からでも陰極2c側からでも任意に選択でき、上述の順序に限定されるものではない。
なお、図1~図3に示す複極式電解槽50に取り付けられるヘッダーの配設態様として、代表的には、内部ヘッダー型と外部ヘッダー型とがあるが、本発明では、いずれの型を採用してもよく、特に限定されない。
本発明において、整流板6の数や整流板6の隔壁1に沿う所与の方向D1に垂直な方向についての一定の間隔(ピッチ)は、本発明の効果が得られる限り、適宜定められてよい。ここで、整流板6の間隔は、一定でなくてもよい。
また、本発明において、整流板6の長さ、整流板6と隔壁1とのなす角度、貫通孔の数や貫通孔の隔壁1に沿う所与の方向D1についての一定の間隔(ピッチ)は、本発明の効果が得られる限り、適宜定められてよい。ここで、貫通孔の間隔は、一定でなくてもよい。
本実施形態のアルカリ水分解用電解槽に用いる隔膜4は、上述した本発明のアルカリ水電解用隔膜であり,説明は割愛する。
アルカリ水電解反応では、電源に接続されている電極対(すなわち、陽極及び陰極)を備える電解槽で、アルカリ水を電気分解して、陽極で酸素ガスを発生させ、陰極で水素ガスを発生させる。
以下、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50に含まれる電極2について、詳述する。
なお、本明細書中において、「電極」と称する場合には、陽極2a及び陰極2cのいずれか一方又は両方を意味するものとする。
本実施形態では、陽極2a及び陰極2cのうちのいずれか一方又は両方が、平均孔径50nm以上180nm以下の多孔体電極である。
上記効果をさらに高める観点から、多孔体電極の平均孔径は、80nm以上170nm以下であることがより好ましく、100nm以上160nm以下であることがさらに好ましい。
なお、多孔体電極の平均孔径は、BET法を用いて測定することができる。測定試料を専用セルに入れ、加熱真空排気を行うことにより前処理を行い、細孔表面への吸着物を予め取り除く。その後、-196℃で測定サンプルへのガス吸着の吸脱着等温線を測定する。得られた吸脱着等温線をBET法で解析することにより、平均孔径を求めることができる。より具体的には、後述する実施例に示す方法で測定することができる。
なお、二重層容量は、電気化学インピーダンス法により測定することができる。交流インピーダンス測定により得られた実部と虚部をプロットしたCole-Coleプロットに対して、等価回路フィッティングにより解析することで、二重層容量を算出する。
なお、平織メッシュ型の開口部の形状は、開口部を平面として垂直方向から観察した場合に、一方向に平行な隣接する2本の線材1組と、別方向に平行な隣接する2本の線材1組とが交差して形成される平行四辺形であり、正方形、長方形、菱形のいずれであってもよい。
平織メッシュ型の多孔体電極を用いる場合、寸法は特に制限されないが、電解表面積増加によるガス発生量の増加と、電解により発生するガスの電極表面からの効率的な除去を両立させるために、目開き(A)は、0.1μm以上5.0μm以下とすることができ、0.2μm以上2.5μm以下が好ましく、0.3μm以上2.0μm以下がより好ましい。
ここで、目開き(A)は、図6に示すように、平織メッシュ型の開口部を構成する4本の線材のうち、平行な隣接する2本1組の線材間の垂直距離と、他方の2本1組の線材間の垂直距離との平均値を意味する。1の基材上の開口部間で目開き(A)が異なる場合には、平均値とする。
なお、目開きは、後述する線径及びメッシュ数から下記式で求めることができる。
目開き=(25.4/メッシュ数)-線径
線径は、図6に示すように、平織メッシュ型を構成する線材の直径である。メッシュ数は、1インチ(25.4mm)の中にある目の数であり、下記式で求めることができる。
メッシュ数=25.4/(目開き+線径)。
パンチング型の多孔体電極を用いる場合、寸法は特に制限されないが、電解表面積増加によるガス発生量の増加と、電解により発生するガスの電極表面からの効率的な除去を両立させるため、穴径(D)は0.5mm以上12.0mm以下、穴間ピッチ(P)は0.5mm以上15mm以下とすることができる。好ましくは、穴径(D)が1.0mm以上10.0mm以下、穴間ピッチ(P)が1.0mm以上10.0mm以下であり、より好ましくは、穴径(D)が1.5mm以上8.0mm以下、穴間ピッチ(P)が1.5mm以上8.0mm以下である。
ここで、穴径(D)は、パンチ穴が真円形の場合は直径を意味し、パンチ穴が楕円形の場合には長軸径と短軸径の平均値を意味する。穴間ピッチ(P)は、1のパンチ穴と最近接するパンチ穴との中心間距離を意味する。言い換えると、1のパンチ穴に隣接する複数のパンチ穴の中心から当該1のパンチ穴中心までの距離のうち最短のものを意味する。1の基材上のパンチ穴間で穴径(D)、穴間ピッチ(P)が異なる場合は、平均値とする。
エキスパンド型の多孔体電極を用いる場合、寸法は特に制限されないが、電解表面積増加によるガス発生量の増加と、電解により発生するガスの電極表面からの効率的な除去を両立させるため、メッシュの長目方向の中心間距離(LW)は1.0mm以上10.0mm以下、メッシュの短目方向の中心間距離(SW)は0.5mm以上8.0mm以下とすることができる。好ましくは、LWが2.0mm以上6.0mm以下、SWが1.0mm以上5.0mm以下、より好ましくは、LWが3.0mm以上5.0mm以下、SWが1.0mm以上4.0mm以下である。
ここで、メッシュの長目方向の中心間距離(LW)は、開口部を平面として垂直方向から観察した場合の、隣接するボンド(メッシュ交差部)中心間の最長距離を意味する。メッシュの短目方向の中心間距離(SW)は、開口部を平面として垂直方向から観察した場合の、LWに対し直角方向で隣接するボンド中心間の最短距離を意味する。1の基材上のメッシュ間でLW、SWが異なる場合は、平均値とする。
なお、多孔体電極の表面開口率は、多孔体電極の表面上に占める孔部分の割合を示す。多孔体電極の表面開口率は、測定用サンプルを、電極表面の垂直方向から走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像し、孔が電極表面内を占める割合として求めることができる。
多孔体電極の水接触角は、市販の接触角計を用いて、θ/2法により測定することができる。
多孔体電極が、基材と、基材の表面を被覆する触媒層とを備える場合、多孔体電極について上述する、平均孔径、表面開口率、及び水接触角は、電極触媒層表面についてのものとする。
これらの理由から、触媒層の厚みは、0.2μm以上、1000μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以上、300μm以下である。
なお、触媒層の厚みは、例えば電子顕微鏡にて電極の断面を観察することにより測定できる。
コーティング層は電解によって還元してもよい。
熱分解法では、基材表面に前駆体層を形成する前駆体形成工程と、表面に前駆体層を形成した基材を加熱することで、前駆体を分解し、触媒層を形成させる焼成工程とを備える。
基材には、溶液を塗布するのに先立ち、表面に凹凸を設けるための表面処理を行ってもよい。基材表面に凹凸を設けると、基材と触媒層との密着性が向上する。表面処理の方法は特に限定されず、ブラスト処理や薬液を用いたエッチング等が例示できる。
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、隔膜のシーリング領域(B)と複極式エレメントとが、さらにガスケット7を介してスタックされることが好ましい。
ガスケット7は、複極式エレメント60と隔膜4の間、複極式エレメント60間を電解液と発生ガスに対してシールするために使用され、電解液や発生ガスのセル外への漏れや両極室間におけるガス混合を防ぐことができる。
ゴム材料や樹脂材料としては、具体的には、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、シリコーンゴム(SR)、エチレン-プロピレンゴム(EPT)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FR)、イソブチレン-イソプレンゴム(IIR)、ウレタンゴム(UR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)等のフッ素樹脂材料や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアセタール等の樹脂材料を用いることができる。これらの中でも、弾性率や耐アルカリ性の観点でエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム(FR)が特に好適である。
このような補強材は公知の金属材料、樹脂材料及び炭素材料等が使用でき、具体的には、ニッケル、ステンレス等の金属、ナイロン、ポリプロピレン、PVDF、PTFE、PPS等の樹脂、カーボン粒子や炭素繊維等の炭素材料が挙げられる。
補強材の形状としては、織布、不織布、短繊維、多孔膜等の形状のものが好適である。さらに、ガスケット7の表面に保護層が設けられていてもよい。これにより、ガスケット7とエレメント間の密着性を向上させることや、ガスケット7の耐アルカリ性を向上させることもできる。このような保護層の材質としても、ガスケット7の材質の中から選択できる。
なお、引張応力は、JIS K6251に準拠して、測定することができる。例えば、島津製作所社製のオートグラフAGを用いてよい。
また、ガスケットの弾性率が隔膜のシーリング領域(B)の弾性率よりも大きいことが好ましい。これにより、複極式電解槽50をタイロッド51r(図1参照)や油圧シリンダー方式等の締め付け機構で締め付けることによりー体化して複極式電解槽50とする際に、シーリング領域(B)がガスケットよりも先に変形することでガスケットとシーリング領域(B)間の密閉度が上がり、電解液の漏出を防ぐことが出来る。
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50では、特に限定されないが、図2に示すように、隔膜4が陽極2a及び陰極2cと接触した、いわゆる「ゼロギャップ構造」Zが形成されていることが好ましい。「ゼロギャップ構造」Zは、電極全面にわたり、陽極2aと隔膜4とが互いに接触し、且つ、陰極2cと隔膜4とが互いに接触している状態、又は、電極全面にわたり、極間距離が隔膜の厚みとほぼ同じとなる距離で、陽極2aと隔膜4との間及び陰極2cと隔膜4との間に隙間のほとんど無い状態、に保つことのできる構造である。
アルカリ水電解において、隔膜4と、陽極2aや陰極2cとの間に隙間がある場合、この部分には電解液の他に電解で発生した大量のガスバブルが滞留することで、電気抵抗が非常に高くなる。
一方、ゼロギャップ構造Zを形成すると、発生するガスを電極2の細孔を通して電極2の隔膜4側とは反対側に素早く逃がすことによって、陽極2aと陰極2cの間隔(以下、「極間距離」ともいう。)を低減しつつ、電解液による電圧損失や電極近傍におけるガス溜まりの発生を極力抑え、電解電圧を低く抑制することができる。
なお、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50において、ゼロギャップ構造Zを構成する手段の好ましい実施形態については、後述する。
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽を用いることができる、アルカリ水電解装置の一例を図4に示す。
アルカリ水電解装置70は、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽50に加えて、送液ポンプ71、気液分離タンク72、水補給器73以外にも、整流器74、酸素濃度計75、水素濃度計76、流量計77、圧力計78、熱交換器79、圧力制御弁80などを備えてよい。
本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽を備えたアルカリ水電解装置に電解液を循環させて電解を行うことにより、高密度電流運転や変動電源運転後の場合でも、優れた電解効率及び高い発生ガス純度を維持して、高効率なアルカリ水電解を実施することができる。
アルカリ塩の濃度としては、特に限定されないが、20質量%~50質量%が好ましく、25質量%~40質量%がより好ましい。
中でも、イオン導電率、動粘度、冷温化での凍結の観点から、25質量%~40質量%のKOH水溶液が特に好ましい。
上記温度範囲とすれば、高い電解効率を維持しながら、ガスケット、隔膜等の電解装置の部材が熱により劣化することを効果的に抑制することができる。
電解液の温度は、85℃~125℃であることがさらに好ましく、90℃~115℃であることが特に好ましい。
特に、変動電源を使用する場合には、電流密度の上限を上記範囲にすることが好ましい。
本実施形態の水素製造方法は、アルカリを含有する水を電解槽により水電解し、水素を製造するものであり、本実施形態のアルカリ水電解用複極式電解槽、本実施形態のアルカリ水電解装置、本実施形態のアルカリ水電解方法を用いて実施されてよい。
(陽極)
実施例1の陽極として、下記の手順で作製した電極を使用した。
陽極としては、あらかじめブラスト処理を施したニッケルエキスパンド基材を用い、酸化ニッケルの造粒物をプラズマ溶射法によって導電性基材の両面に吹き付けて製作した。
実施例1の陰極として、下記の手順で作製した電極を使用した。
導電性基材として、直径0.15mmのニッケルの細線を40メッシュに編んだ平織メッシュ型基材上に白金を担持したものを用いた。
実施例1のアルカリ水分解用隔膜として、下記の手順で作製した多孔膜を使用した。
酸化ジルコニウム(「EP酸化ジルコニウム」、第一稀元素化学工業社製)とN-メチル-2-ピロリドン(和光純薬工業社製)を、粒径0.5mmのSUSボールが1kg入った容量1000mLのボールミルポットに投入した。これらを回転数70rpmで25℃雰囲気下において3時間攪拌して、分散させて混合物を得た。得られた混合物を、ステンレス製のざる(網目30メッシュ)により濾過し、混合物からボールを分離した。ボールを分離した混合物にポリスルホン(「ユーデル」、ソルベイアドバンストポリマーズ社製)及びポリビニルピロリドン(重量平均分子量(Mw)900000、和光純薬工業社製)を加え、スリーワンモータを用いて60℃で12時間攪拌して溶解させ、以下の成分組成の塗工液を得た。
ポリスルホン:15質量部
ポリビニルピロリドン:8質量部
N-メチル-2-ピロリドン:55質量部
酸化ジルコニウム:30質量部
この多孔膜表面の平均透水孔径は0.7μmで最大孔径は1.9μmであった。厚みは580μmであった。気孔率は43%であった。
こうして得られた隔膜について、電極の接触部分(すなわち、イオン透過領域(A))より外周部(すなわち、シーリング領域(B))を80℃でプレスすることにより、イオン透過領域(A)の平均透水孔径は0.7μmで最大孔径は1.9μmとしつつ、シーリング領域(B)の平均透水孔径を0.05μm、最大孔径を0.1μm、気孔率を10%とした。
ガスケットは、厚み4.0mm、幅18mmの内寸504mm角の四角形状のもので、内側に隔膜のシーリング領域を挿入することで保持するためのスリット構造を有するものを使用した。スリット構造は、隔膜のシーリング領域を収容するためにガスケット内側に深さ0.5mmの隙間を幅方向に距離14mmに設けた構造とした。このガスケットは、EPDMゴムを材質とし、100%変形時の弾性率が4.0MPaであった。
(隔膜)
実施例2の隔膜として、下記の手順で作製した多孔膜を使用した。
酸化ジルコニウム(「EP酸化ジルコニウム」、第一稀元素化学工業社製)とN-メチル-2-ピロリドン(和光純薬工業社製)を、粒径0.5mmのSUSボールが1kg入った容量1000mLのボールミルポットに投入した。これらを回転数70rpmで25℃雰囲気下において3時間攪拌して、分散させて混合物を得た。得られた混合物を、ステンレス製のざる(網目30メッシュ)により濾過し、混合物からSUSボールを除去した。この混合物にポリスルホン(「ユーデル」、ソルベイアドバンストポリマーズ社製)及びポリビニルピロリドン(重量平均分子量(Mw)900000、和光純薬工業社製)を加え、スリーワンモータを用いて60℃で12時間攪拌して溶解させ、以下の成分組成の塗工液を得た。
ポリスルホン:20質量部
ポリビニルピロリドン:6質量部
N-メチル-2-ピロリドン:80質量部
酸化ジルコニウム:45質量部
この多孔膜は、平均透水孔径が0.3μm、最大孔径が1.1μm、厚みが560μmであった。気孔率は46%であった。
こうして得られた隔膜について、実施例1と同様にプレスすることにより、イオン透過領域(A)の平均透水孔径は0.3μmで最大孔径は1.1μm、気孔率は46%としつつ、シーリング領域(B)の平均透水孔径を0.06μm、最大孔径を0.1μm、気孔率を15%とした。
実施例2の陽極としては、実施例1の陽極と同様に作製した電極を使用した。
(陰極)
実施例2の陰極としては、実施例1の陰極と同様に作製した電極を使用した。
(ガスケット)
実施例2のガスケットとしては、実施例1と同様のガスケットを使用した。
(隔膜)
実施例3の隔膜として、下記の手順で作製した多孔膜を使用した。
酸化ジルコニウム(「EP酸化ジルコニウム」、第一稀元素化学工業社製)とN-メチル-2-ピロリドン(和光純薬工業社製)を、粒径0.5mmのSUSボールが1kg入った容量1000mLのボールミルポットに投入した。これらを回転数70rpmで25℃雰囲気下において3時間攪拌して、分散させて混合物を得た。得られた混合物を、ステンレス製のざる(網目30メッシュ)により濾過し、混合物からボールを分離した。ボールを分離した混合物にポリスルホン(「ユーデル」、ソルベイアドバンストポリマーズ社製)及びポリビニルピロリドン(重量平均分子量(Mw)900000、和光純薬工業社製)を加え、スリーワンモータを用いて60℃で12時間攪拌して溶解させ、以下の成分組成の塗工液を得た。
ポリスルホン:15質量部
ポリビニルピロリドン:8質量部
N-メチル-2-ピロリドン:70質量部
酸化ジルコニウム:45質量部
この多孔膜表面の平均透水孔径は0.2μmで最大孔径は1.1μmであった。厚みは580μmであった。気孔率は43%であった。
こうして得られた隔膜について、実施例1と同様にプレスすることにより、イオン透過領域(A)の平均透水孔径は0.2μmで最大孔径は1.1μm、気孔率は43%としつつ、シーリング領域(B)の平均透水孔径を0.05μm、最大孔径を0.1μm、気孔率を10%とした。
実施例3のガスケットとしては、深さが0.6mm、距離が18mmのガスケットを使用した。
(陽極)
実施例3の陽極としては、実施例1の陽極と同様に作製した電極を使用した。
(陰極)
実施例3の陰極としては、実施例1の陰極と同様に作製した電極を使用した。
(隔膜)
(隔膜)
実施例4の隔膜として、シーリング領域(B)をイオン透過領域(A)と同じ材料で構成した以外は、実施例1の隔膜と同様にして作製した多孔膜を使用した。
こうして得られた隔膜について、実施例1よりプレス条件を緩和することにより、シーリング領域(B)の平均透水孔径を0.5μm、最大孔径を1.2μm、気孔率を35%とした。
(陽極)
実施例4の陽極としては、実施例1の陽極と同様に作製した電極を使用した。
(陰極)
実施例4の陰極としては、実施例1の陰極と同様に作製した電極を使用した。
(ガスケット)
実施例4のガスケットとしては、実施例1のガスケットと同様に作製したガスケットを使用した。
(陽極)
比較例1の陽極としては、実施例2の陽極と同様に作製した電極を使用した。
(陰極)
比較例1の陰極としては、実施例2の陰極と同様に作製した電極を使用した。
(隔膜)
比較例1の隔膜としては、シーリング領域(B)をイオン透過領域(A)と同じ材料で構成した以外は、実施例2の隔膜と同様に作製した多孔膜を使用した。
この多孔膜表面の平均透水孔径は0.3μmで最大孔径は1.1μmであった。厚みは560μmであった。気孔率は46%であった。
(ガスケット)
比較例1のガスケットとしては、実施例2のガスケットと同様に作製したガスケットを使用した。
(隔膜)
比較例2の隔膜としては、シーリング領域(B)をイオン透過領域(A)と同じ材料で構成した以外は、実施例3の隔膜と同様に作製した多孔膜を使用した。
この多孔膜表面の平均透水孔径は0.2μmで最大孔径は1.1μmであった。厚みは580μmであった。気孔率は43%であった。
(陽極)
比較例2の陽極としては、実施例3の陽極と同様に作製した電極を使用した。
(陰極)
比較例2の陰極としては、実施例3の陰極と同様に作製した電極を使用した。
(ガスケット)
比較例2のガスケットとしては、実施例3のガスケットと同様に作製したガスケットを使用した。
陽極ターミナルエレメント、陰極ターミナルエレメント、4個の複極式エレメントから構成される、図1のような、複極式ゼロギャップ構造の電解槽を作製した。各電解槽にはそれぞれの実施例及び比較例の陽極、陰極、及び隔膜が同様に組み込まれている。電解槽のヘッダー管の配設は外部ヘッダー型とした。
導電性弾性体は、線径0.15mmのニッケル製ワイヤーを織ったものを、波高さ5mmになるように波付け加工したものを使用した。厚みは5mmであり、50%圧縮変形時の反発力は150g/cm2、メッシュ数は5メッシュ程度であった。
複極式エレメントは、540mm×620mmの長方形で、陽極及び陰極の面積は500mm×500mmとした。また陽極室の深さ(陽極室深さ)は25mm、陰極室の深さ(陰極室深さ)25mmとし、材質をニッケルとした。高さ25mm、厚み1.5mmのニッケル製の陽極リブと、高さ25mm、厚み1.5mmのニッケル製の陰極リブを溶接により取り付けたニッケル製の隔壁の厚みは2mmとした。
上記複極式電解槽を、図4に示す電解装置70に組み込んでアルカリ水電解に使用した。以下、図4を参照しながら、電解システムの概略を説明する。
気液分離タンク72及び外部ヘッダー型の複極式電解槽50には、電解液として30%KOH水溶液が封入されている。この電解液は、送液ポンプ71により、陽極室と陽極用気液分離タンク(酸素分離タンク72o)との間、陰極室と陰極用気液分離タンク(水素分離タンク72h)との間をそれぞれ循環している。電解液の流量は、流量計77で測定して200L/minに、温度は、熱交換器79によって90℃に調整した。循環流路の電解液接液部には、SGP炭素鋼配管にテフロンライニング内面処理を施した、20Aの配管を用いた。
気液分離タンク72(72h及び72o)は、高さ1400mm、容積1m3のものを使用した。各気液分離タンク72h及び72oの液量は、設計容積の50%程度とした。
整流器74から、各電解セルの陰極及び陽極に対して、所定の電極密度で通電した。
通電開始後のセル内圧力は、圧力計78で測定し、陰極側圧力が50kPa、酸素側圧力が49kPaとなるとように調整した。圧力調整は、圧力計78の下流に圧力制御弁80を設置し、これにより行った。
酸素濃度計75としては、アドバンストインストゥルメンツ社製のGPR-2500を用いた。
水素濃度計76としては、理研計器(株)社製のSD-D58・ACを用いた。
圧力計78としては、横河電機(株)社製のEJA-118Wを用いた。
流量計77、熱交換器79、送液ポンプ71、気液分離タンク72(72h及び72o)、水補給器73等は、いずれも当該技術分野において通常使用されるものを用いた。
以下、対象電極及び隔膜についての物性の測定・評価方法について説明する。
なお、実施例及び比較例で使用した対象電極は、基材上に触媒層を形成したものであるため、表面物性は触媒層に由来する。
隔膜の平均透水孔径は、完全性試験機(ザルトリウス・ステディム・ジャパン社製、「Sartocheck Junior BP-Plus」)を使用して以下の方法の測定で得られる平均透水孔径とした。まず、隔膜を芯材も含めて所定の大きさに切り出して、これをサンプルとした。このサンプルを測定用の耐圧容器(透過部面積12.57cm2)にセットして、容器内を150mLの純水で満たした。次に、耐圧容器を90℃に設定した恒温槽内で保持し、耐圧容器内部が90℃になってから測定を開始した。測定が始まると、サンプルの上面側が窒素で加圧されていき、サンプルの下面側から純水が透過してくるので、圧力及び透過流量の数値を記録した。平均透水孔径は、圧力が10kPaから30kPaの間の圧力と透水流量との勾配を使い、以下のハーゲンポアズイユの式から求めた。
平均透水孔径(m)={32ηLμ0/(εP)}0.5
ここで、ηは水の粘度(Pa・s)、Lは隔膜の厚み(m)、μ0は見かけの流速でありμ0(m/s)=流量(m3/s)/流路面積(m2)である。また、εは気孔率、Pは圧力(Pa)である。
隔膜の最大孔径は、完全性試験機(ザルトリウス・ステディム・ジャパン社製、「Sartocheck Junior BP-Plus」)を使用して以下の方法で測定した。まず、隔膜を芯材も含めて所定の大きさに切り出して、これをサンプルとした。このサンプルを純水で濡らし、膜の孔内に純水を含浸させ、これを測定用の耐圧容器にセットした。次に、耐圧容器を所定温度に設定した恒温槽内で保持し、耐圧容器内部が所定温度になってから測定を開始した。測定が始まると、サンプルの上面側が窒素で加圧されていき、サンプルの下面側から150mL/分の割合で気泡が連続して発生してくるときの窒素圧力を、バブルポイント圧力とした。最大孔径はヤング-ラプラスの式を変形させた下記バブルポイント式から求めた。
最大孔径(m)=4γcosθ/P
ここで、γは水の表面張力(N/m)、cosθは隔膜表面と水との接触角(rad)、Pはバブルポイント圧力(Pa)である。
隔膜の気孔率は、電子天秤を用いて、25℃に保った室内で測定した。
隔膜を3cm×3cmの大きさ(9cm2)で3枚に切出して測定サンプルとし、シックネスゲージで厚みd(cm)を測定した。次いで、測定サンプルを純水中に24時間浸し、余分な水分を取り除いて、重量w1(g)を測定した。続いて、これらを50℃に設定した乾燥機内で12時間以上静置して乾燥させて、重量w2(g)を測定した。
測定対象の隔膜は、水接触面が非常に低吸水性であり、測定サンプルが水を含んだ状態と乾燥状態とで厚み及び面積が有意に変化しなかった。そのため、厚みd及び面積を一定値とみなして、下記式で、w1、w2の値から気孔率を求めた。
気孔率(%)={(w1-w2)/(d×9)}×100
3枚の測定サンプルについてそれぞれ気孔率を求め、それらの算術平均値を隔膜の気孔率εとした。
セルを組み立てた際、シーリング領域からの電解液の漏出があったか、なかったかを評価した。この結果を表1に示す。
実施例1~4及び比較例1、2の電解槽構成で、電流密度10kA/m2の高電流密度下で連続して24時間通電し、アルカリ水電解を行った。
24時間後、各実施例及び比較例ごとに4つの電解セルの対電圧の平均値を算出し、セル電圧(V)として評価した。この結果を表1に示す。
実施例1~4においては、セルからの電解液の漏出が確認出来なかった。また、24時間電解後のセル電圧が2.5V以下であり、低過電圧が維持されていた。
2 電極
2a 陽極
2c 陰極
2e 導電性弾性体
2r 集電体
3 外枠
4 隔膜
5 電極室
5a 陽極室
5c 陰極室
6 整流板(リブ)
7 ガスケット
50 複極式電解槽
51g ファストヘッド、ルーズヘッド
51i 絶縁板
51a 陽極ターミナルエレメント
51c 陰極ターミナルエレメント
51r タイロッド
60 複極式エレメント
65 電解セル
70 電解装置
71 送液ポンプ
72 気液分離タンク
72h 水素分離タンク
72o 酸素分離タンク
73 水補給器
74 整流器
75 酸素濃度計
76 水素濃度計
77 流量計
78 圧力計
79 熱交換器
80 圧力制御弁
D1 隔壁に沿う所与の方向(電解液通過方向)
Z ゼロギャップ構造
SW メッシュの短目方向の中心間距離
LW メッシュの長目方向の中心間距離
C メッシュの目開き
TE メッシュの厚み
B メッシュのボンド長さ
T 板厚
W 送り幅(刻み幅)
A 平織メッシュ型の目開き
d 平織メッシュ型の線径
D パンチング型の穴径
P パンチング型の穴間ピッチ
Claims (14)
- 多孔構造のイオン透過性隔膜を有するアルカリ水電解用隔膜であり、
該イオン透過性隔膜はイオン透過領域(A)とそれを取り囲むシーリング領域(B)とを有し、
前記イオン透過領域(A)の平均透水孔径が、前記シーリング領域(B)の平均透水孔径よりも大きく、
前記イオン透過領域(A)の平均透水孔径が0.1μm~0.8μmの範囲にあり、
前記シーリング領域(B)の平均透水孔径が0.01μm~0.5μmの範囲にあることを特徴とする隔膜。 - 多孔構造のイオン透過性隔膜を有する隔膜であり、
該イオン透過性隔膜はイオン透過領域(A)とそれを取り囲むシーリング領域(B)とを有し、
前記イオン透過領域(A)の最大孔径が、前記シーリング領域(B)の最大孔径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の隔膜。 - 前記イオン透過領域(A)の最大孔径が0.8μm~3.0μmの範囲にあり、
前記シーリング領域(B)の最大孔径が0.01~2.0μmの範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の隔膜。 - 多孔構造のイオン透過性隔膜を有する隔膜であり、
該イオン透過性隔膜はイオン透過領域(A)とそれを取り囲むシーリング領域(B)とを有し、
前記イオン透過領域(A)の気孔率が、前記シーリング領域(B)の気孔率よりも高いことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の隔膜。 - 前記イオン透過領域(A)の気孔率が30%~60%の範囲にあり、
前記シーリング領域(B)の気孔率が0.1~20%の範囲にあることを特徴とする請求項4に記載の隔膜。 - 多孔構造のイオン透過性隔膜を有する隔膜であり、
該イオン透過性隔膜はイオン透過領域(A)とそれを取り囲むシーリング領域(B)とを有し、
前記イオン透過領域(A)の膜厚が、前記シーリング領域(B)の膜厚よりも大きいことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の隔膜。 - 前記イオン透過領域(A)の膜厚が300μm~600μmの範囲にあり、
前記シーリング領域(B)の膜厚が50μm~500μmの範囲にあることを特徴とする請求項6に記載の隔膜。 - 請求項1~7のいずれか一項に記載の隔膜を製造する方法であって、所定の方法で製膜された多孔膜に対して、80℃以上210℃以下の熱処理温度で熱処理を施して前記隔膜を得ることを特徴とする隔膜の製造方法。
- 請求項1~7のいずれか一項に記載の隔膜と、陰極と陽極とを保持したエレメントとをスタックしてなる電解槽であって、
当該隔膜のシーリング領域(B)とセル枠が接しており、且つ、当該隔膜のイオン透過領域(A)の両面がそれぞれ当該陰極および陽極と接していることを特徴とする電解槽。 - 前記隔膜のシーリング領域(B)と前記エレメントとが、さらにガスケットを介してスタックしてなる請求項9に記載の電解槽。
- 前記ガスケットの弾性率が前記隔膜のシーリング領域(B)の弾性率よりも大きいことを特徴とする請求項10に記載の電解槽。
- 前記ガスケットの断面の形状がコの字型であり、
前記隔膜を挟み込むスリット部分の幅が0.3~1.0mmであり、
前記隔膜を挟み込むスリット部分の深さが5.0~80mmである
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の電解槽。 - 前記ガスケットが前記隔膜を挟み込む構造を特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載の電解槽。
- アルカリを含有する水を電解槽により水電解し、水素を製造する水素製造方法であり、
前記電解槽は、アルカリ水電解用隔膜と、陰極と陽極とを保持したエレメントとをスタックしてなり、
ここで、前記隔膜は、多孔構造のイオン透過性隔膜を有し、
前記イオン透過性隔膜は、イオン透過領域(A)とそれを取り囲むシーリング領域(B)とを有し、
前記イオン透過領域(A)の平均透水孔径が、前記シーリング領域(B)の平均透水孔径よりも大きく、
前記イオン透過領域(A)の平均透水孔径が0.1μm~0.8μmの範囲にあり、
前記シーリング領域(B)の平均透水孔径が0.01μm~0.5μmの範囲にあり、
前記隔膜のシーリング領域(B)とセル枠とが接しており、且つ、前記隔膜のイオン透過領域(A)の両面がそれぞれ前記陰極および前記陽極と接している
ことを特徴とする、水素製造方法。
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