特許法第30条第2項適用 平成29年12月17日 IEEE発行の「WPMC 2017 The 20th International Symposium on Wireless Personal Multimedia Communications」に発表 平成29年12月18日 IEEE主催の「WPMC 2017 The 20th International Symposium on Wireless Personal Multimedia Communications」において文書をもって発表 平成30年2月5日 http://wfiot.jkjmanagement.com/を通じて発表 平成30年2月7日 IEEE主催の「The 2018 IEEE 4th World Forum on The Internet of Things(WF-IoT 2018)」において文書をもって発表 平成30年5月7日 https://ieeexplore.ieee.org/document/8355216/を通じて発表
以下、本発明の実施の形態の無線通信システムおよび無線通信装置の構成を説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素および処理工程は、同一または相当するものであり、必要でない場合は、その説明は繰り返さない。
なお、以下では、本発明の無線通信装置を説明する一例として、上述したような互いに大きく分離した複数の既存の免許不要帯域(例えば、IoTなどに使用される920MHz帯、無線LANに使用される2.4GHz帯と5GHz帯)において、既存システムと周波数を共用して、コグニティブな無線通信を行うことが可能な無線通信システムにおける送信装置を例とする実施の形態を説明する。
また、以下では、「キャリアセンス」とは、電力検出または受信信号の復号を伴う仮想キャリアセンスにより、対象とする無線チャネルの信号の存在の有無を検出し送信タイミングの判断を行うためのセンシングを意味し、「チャネルセンシング」とは、キャリアセンスとしてのセンシングに加えて、対象チャネルの使用状況を把握するために、通信のモニタなどを実行するセンシングを意味するものとする。
[実施の形態]
以下では、本実施の形態の説明のために、複数の互いに分離した周波数帯域においてそれぞれランダムアクセス制御による通信を行うという構成の場合において、次の送信タイミングをいつにするかを決定するために、対象帯域の多チャネルの同時チャネルセンシングを行う構成について説明する。
ただし、複数の周波数帯を同時に使用して通信を行うことは、本発明にとっては、必ずしも必須ではなく、例えば、複数の周波数帯域のいずれか少なくとも1つで選択的に通信を行うという構成の場合において、次の送信タイミングで、いずれの周波数帯を使用するかを決定するために、対象帯域の多チャネルの同時チャネルセンシングを行う構成にも適用することが可能である。
また、複数の無線チャネルのチャネルセンシングを行うことも、本発明にとっては、必ずしも必須ではなく、例えば、通信を行う周波数帯域を決定するために、1つの無線チャネルのチャネルセンシングを行う構成にも適用することが可能である。また、無線チャネルのチャネルセンシングを行うことも、本発明にとっては、必ずしも必須ではなく、例えば、後述するように、無線チャネルにおけるその他のセンシング(例えば、フレーム誤り率を取得するためのセンシング等)を行ってもよい。
さらに、ランダムアクセス制御を行っている無線チャネルを利用して実体的な通信を行うことも、本発明にとっては、必ずしも必須ではなく、例えば、協調センシングのためにセンシング結果の送信は行うが、実体的な通信は行わない構成にも適用することが可能である。
図1は、自局と相手局との通信におけるチャネルセンシングの概念を示す図である。
自局10は、これから相手局20に対して、送信を行おうとする場合は、まず、使用帯域のうちの複数のチャネルについて、使用状況を確認するためにチャネルセンシングを行う。
ここで、自局10または相手局20の近辺で、使用可能帯域のチャネルのいずれかを使用する他の通信装置30.1~30.4がある場合は、これらは、干渉源となり、干渉波の影響を避けて通信を行うことになるために、自局10は、空いている周波数帯のチャネルを検出し使用して、相手局20と通信を行う。
図2は、複数の互いに分離した周波数帯域における無線チャネルを説明するための概念図である。
図2では、例として、横軸を周波数とし、免許不要帯域として、上述した920MHz帯、2.4GHz帯と5GHz帯を示す。各周波数帯域には、それぞれ、通信において選択的に使用される複数の無線チャネルが含まれる。
ここで、後述する本実施の形態の無線通信装置については、一般的に、互いに分離した複数の周波数帯域を用いて、同一の無線方式または異なる無線方式で同期したタイミングで同時並行的に通信を行う送信装置に適用することが可能である。
図3は、本実施の形態の無線通信システムの構成を説明するための概念図である。
図3を参照して、送信側では、920MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯の3つの周波数帯を使用することを前提に、各帯域で無線チャネルを1つずつ使用するものとして、送信フレームを構成する。
なお、各周波数帯で、複数チャネルを使用することとしてもよいが、以下では、周波数帯ごとに1チャネルを使用するものとして説明する。
本実施の形態では以下の特徴を有する無線アクセス制御を行う。
すなわち、まず、送信側では、後述するような方法で複数周波数帯の利用状況(各無線チャネルの空き状況など)をセンシングして観測する。
続いて、送信側では、あるタイミングで、1つ以上の未使用な周波数帯・無線チャネルで同時に無線パケット(フレーム)を送信する。このとき、送信データを複数帯域にマッピングして送信する。
一方で、受信側では複数帯域を一括受信してデータを統合する。
送受信において、このような構成にすると、帯域間で混雑状況に偏りがあっても送信機会を確保できるため周波数利用効率の向上と伝送遅延の低減が期待でき、またデータの到着順番が入れ替わるような問題も発生しない。
図4は、送信データを複数帯域にマッピングして送信し、受信側で一括受信して統合するための具体例を説明するための図である。
図4に示すように、送信データの系列を使用する各帯域の伝送レートRiに比例するシンボル数ずつ区切って各帯域に、シリアル/パラレル変換により割り当てる。
例えば、(5GHz帯伝送レート:2.4GHz帯伝送レート:920MHz帯伝送レート)=(R1:R2:R3)=(3:2:1)ならば、送信データの系列を6シンボル毎に区切り、5GHz帯(ch1)、2.4GHz帯(ch2)、920MHz帯(ch3)にはその中の3シンボル、2シンボル、1シンボルを割り当てる。なお、送信系列を分割して割り当てる際には、このような場合に限定されず、より一般には、m個の周波数帯を使用する場合は、周波数帯の伝送レートの比を、(R1:R2:…:Rm)(比率は、既約に表現されるとする)とするとき、送信系列を(R1+R2+…+Rm)×n(m,n:自然数)シンボル毎に区切り、各チャネルには、(R1×n)シンボル、(R2×n)シンボル、…、(Rm×n)シンボルを割り当てるものとしてもよい。
そのような割り当ての後に、各帯域ごとに、送信シンボルに対して物理ヘッダをつけて、パケットとし、これらのパケットを同一タイミングで同時並列的に送信する。
送信側で各帯域に割り当てられたシンボル数については、この物理ヘッダ内に情報として格納するか、送信前に制御情報として予め設定される。
受信側では、各帯域上の物理ヘッダを利用して同期と復調処理を行う。復調された各系列を送信側と逆の処理で、パラレル/シリアル変換により結合し、フレームの復号を行う。
[送信装置の構成]
図5は、本実施の形態の送信装置1000の構成を説明するための機能ブロック図である。
図5を参照して、送信装置1000は、送信データの系列に対して、誤り訂正符号化処理を行うための誤り訂正符号化部1110と、誤り訂正符号化後のデータに対してインターリーブ処理を行うインターリーブ部1112と、図4で説明したように各周波数帯域に割り当てる処理をするためのシリアル/パラレル変換(以下、S/P変換)部1010と、S/P変換後のデータに対して、周波数帯域ごとに、マッピング処理や物理ヘッダの付加など、所定の無線通信方式で通信するための無線フレーム(パケット)を形成するデジタル処理を実行するための無線フレーム生成部1020.1~1020.3と、無線フレーム生成部1020.1~1020.3からのデジタル信号に対して、それぞれ、デジタルアナログ変換処理、所定の変調方式への変調処理(例えば、所定の多値変調方式のための直交変調処理)、アップコンバート処理、電力増幅処理などを実行する高周波処理部(RF部)1040.1~1040.3と、RF部1040.1~1040.3の高周波信号をそれぞれ送出するためのアンテナ1050.1~1050.3とを含む。RF部1040.1~1040.3の動作は、これらに共通に設けられた局部発振器1030からのクロックに基づいて制御される。
さらに、送信装置1000は、各周波数帯(各周波数帯の中では1つ以上の無線チャネル)の利用状況(各無線チャネルの空き状況など)を観測するチャネル利用状況観測部1060と、チャネル利用状況観測部1060の観測に基づいて、所定のタイミングでのチャネル利用状況を予測するチャネル利用状況予測部1070と、無線フレーム生成部1020.1~1020.3の処理タイミングおよびRF部1040.1~1040.3での送信タイミングを制御して、制御された同一の送信タイミングにおいて所定の期間につき未使用な周波数帯・無線チャネルで同時に無線パケットを送信するように制御するアクセス制御部1080と、観測された利用状況に応じたセンシング結果を情報収集装置に送信するためのセンシング結果送信部1090と、他の無線通信装置から情報収集装置に送信されるセンシング結果を受信するセンシング結果受信部1092と、自装置での観測(チャネル利用状況観測部1060による観測)に応じたセンシング結果の方が、他の無線通信装置から送信され、センシング結果受信部1092によって受信されたセンシング結果よりも、無線チャネルが利用に適していることを示す適切度が高い場合には、自装置のセンシング結果を送信しないようにセンシング結果送信部1090を制御する送信制御部1094とを含む。なお、送信制御部1094によるセンシング結果の送信、非送信の制御を、以下、「選択的報告」と呼ぶことがある。また、送信制御部1094は、自装置のセンシング結果に関する適切度が低いほど、センシング結果の送信時点がより早くなるように制御する。すなわち、適切度が低いセンシング結果ほど、より早い送信時点(送信タイミング)となり、適切度が高いセンシング結果ほど、より遅い送信時点となるように制御されることになる。そのような送信制御部1094による制御を、以下、「送信時点の制御」と呼ぶことがある。
ここで、チャネル利用状況観測部1060が上述したキャリアセンスおよびチャネルセンシングを実行する構成とする。
ここで、アクセス制御部1080は、送信時に候補となる対象帯域をキャリアセンスした結果に応じて使用可能であると判明したチャネルを選択し使用して、制御された同一の送信タイミングにおいて未使用な周波数帯・無線チャネルで同時に無線パケットを送信することになる。また、アクセス制御部1080は、後述する統合センシング情報に基づいて、送信タイミングの制御を行う。統合センシング情報に基づいてとは、統合センシング情報を用いて決定された1つまたは複数の無線チャネル、または、統合センシング情報によって示される1つまたは複数の無線チャネルにおいて、無線パケットの送信を行うことである。前者の場合には、例えば、無線通信装置において、統合センシング情報に基づいて、無線通信で用いる1つまたは複数の無線チャネルを決定してもよい。
チャネル利用状況予測部1070の詳しい動作の例については後述する。ただし、チャネル利用状況観測部1060の観測結果を直接用いて、現時点で利用可能と判断された周波数帯を用いるように、アクセス制御部1080が送信タイミングを制御する構成としてもよい。
このような構成の送信装置1000により、図4で説明したように、データを複数帯域にマッピングして送信し、受信側では複数帯域を一括受信してデータを統合する。
また、以下では、センシング結果の送信先である情報収集装置がアクセスポイントAPである一例について説明するが、情報収集装置は、それに限定されるものではなく、例えば、センシング結果を収集するための装置であってもよい。情報収集装置は、チャネルセンシングの結果を収集し、統合して各無線通信装置に送信する。情報収集装置によって統合されたセンシング結果である統合センシング情報も、センシング結果受信部1092によって受信される。情報収集装置では、無線チャネルごとに、最も適切度の低いチャネルセンシングの結果が保持される。したがって、情報収集装置は、ある無線チャネルについて、各無線通信装置から報告されたセンシング結果が、以前に報告されたものよりも適切度が低い場合に、保持しているセンシング結果を更新し、各無線通信装置から報告されたセンシング結果が、以前に報告されたものよりも適切度が低くない場合に、保持しているセンシング結果を更新しなくてもよい。なお、時間の経過に応じて保持しているセンシング結果が古くなった場合には、情報収集装置は、センシング結果の内容に関わらず、保持しているセンシング結果を新たに報告されたものに更新してもよい。最新のセンシング結果を保持するためである。そのようにして、センシング結果の統合が行われる。
センシング結果送信部1090は、送信対象のセンシング結果を、送信対象のデータとして誤り訂正符号化部1110に入力する。そして、上記のように変調等が行われ、センシング結果が情報収集装置であるアクセスポイントAPに送信される。なお、その送信は、あらかじめ決められた1つの周波数帯によって送信されてもよい。例えば、アクセスポイントAPと端末との間で2.4GHz帯の制御チャネルを用いて制御信号等の送受信を行うことになっていた場合には、センシング結果は、その2.4GHz帯のみで送信されてもよい。なお、図5では、センシング結果送信部1090が、送信に関する後段の構成、例えば、誤り訂正符号化部1110や無線フレーム生成部、RF部等を含まない場合について示しているが、センシング結果送信部1090は、そのような送信に関する後段の構成の一部または全部を有していてもよい。
センシング結果受信部1092は、他の無線通信装置から送信されたセンシング結果を、後述する誤り訂正部4040から受け取ってもよい。したがって、本発明の無線通信装置は、後述する受信装置の構成をも有していてもよい。他の無線通信装置から送信されたセンシング結果は、その送信元の無線通信装置における観測に応じたセンシング結果である。なお、センシング結果受信部1092についても、受信に関する前段の構成、例えば、後述するRF部やデジタル信号処理部2800、誤り訂正部4040等を含まない場合について示しているが、センシング結果受信部1092は、そのような受信に関する前段の構成の一部または全部を有していてもよい。また、センシング結果が、あらかじめ決められた1つの周波数帯によって送信される場合には、そのセンシング結果も、その1つの周波数帯によって受信されることになる。
図6は、協調センシングについて説明するための概念図である。
効率的な無線通信を行うには、各無線通信装置が自装置の属する無線ネットワークにおける伝搬状況や無線リソースの利用状況を逐次把握して、その結果に基づきアクセス制御することが必要である。しかし、単一の無線通信装置によって無線ネットワークの各位置におけるセンシングを行おうとすることは、コスト等の観点から非現実的である。
協調センシングによれば、複数の無線通信装置間でセンシング情報を交換・共有することによって、一台の無線通信装置がリアルタイムセンシングを行って得られる無線チャネルのセンシング情報よりも多くの無線チャネルのセンシング情報を得ることができる。
ただし、協調センシングで理想的なセンシング(「全ての観測対象の情報を全てのノードで共有している状態」(全ての観測対象は、例えば「全てのノード位置における全チャネル」などに相当))を実現するには全ノード間での情報交換が必要となり、過大な協調コストがかかる。
そこで、理想的なセンシングが行える場合と比較して周波数利用効率の劣化を十分小さく抑えられる範囲に情報交換を削減して、センシングコストを抑えることが必要である。
なお、特には限定されないが、以下では、次のような状況である場合について説明する。
交換する情報は、必ずしもリアルタイムな情報である必要はなく、一定時間内におけるセンシング結果であるものとする。ただし、各無線通信装置は、センシング自体は基本的に常時実施している。
図7は、BSS内で協調センシングを行う場合の概念図である。
ここで、「BSS(Basic Service Set)」とは、無線LANのインフラストラクチャモードで、1つのAPとそのAPの電波の到達範囲内にいる配下の無線LANクライアント端末で構成されるネットワークをいうものとする。
なお、アクセスポイントAPは、後述する無線通信装置STAと同等の無線通信方式での無線通信機能と、協調センシングの分担の決定や管理を実行するためのプロセッサやメモリを備える。プロセッサやメモリの構成は周知であるので、説明は省略する。
図7を参照して、BSS内で情報交換をするプロトコルとしては、以下のような構成とすることができる。
効率的な情報収集とBSS内情報の展開の観点からアクセスポイントAP(情報収集装置)と無線通信装置STA-A~STA-F間でセンシング情報を交換する。
この場合、無線通信装置STA-A~STA-Fがセンシング結果をアクセスポイントAPに報告し、アクセスポイントAPがセンシング情報を集約して、その集約した統合センシング情報を配下の無線通信装置STA-A~STA-Fに展開する。
図8は、従来の分散型センシング方式と、本実施の形態(提案手法)の自律分散型協調センシング方式とを比較するための図である。ここでは、センシング結果がチャネル利用率(COR:Channel Occupancy Ratio)であり、図中の各STA11~15の近傍に記載されている数値が、そのチャネル利用率であるとする。
図8(a)を参照して、従来のセンシング方式では、BSS1に属する5個の無線通信装置STA11~STA15のそれぞれから、センシング結果が送信されることになる。なお、あるBSSにおける無線チャネルの制御では、無線チャネルの利用について、最も悪い値(図8の場合には、STA11のチャネル利用率「60%」)が用いられることになる。したがって、無線通信装置STA12~STA15から送信されるセンシング結果は、冗長な情報であり、その冗長な情報の送信によって無線リソースが不必要に消費され、オーバヘッドの増大を招くことになる。
図8(b)を参照して、本実施の形態による自律分散型協調センシング方式では、各無線通信装置において、他の無線通信装置から送信されたセンシング結果を受信し、そのセンシング結果よりも悪い値のセンシング結果のみをアクセスポイントAP1に送信する。具体的には、送信制御部1094は、自装置での観測、すなわちチャネル利用状況観測部1060による観測に応じたセンシング結果の方が、自装置のセンシング結果の送信時点までに他の無線通信装置から送信されたセンシング結果、すなわち自装置のセンシング結果の送信時点までにセンシング結果受信部1092によって受信されたセンシング結果よりも、無線チャネルが利用に適していることを示す適切度が高い場合には、自装置のセンシング結果を送信しないようにセンシング結果送信部1090を制御する。また、送信制御部1094は、自装置のセンシング結果の方が、自装置のセンシング結果の送信時点までに受信された他装置のセンシング結果よりも適切度が低い場合には、自装置のセンシング結果を送信するようにセンシング結果送信部1090を制御する。なお、自装置のセンシング結果と、他装置のセンシング結果との適切度が同じ場合には、送信制御部1094は、自装置のセンシング結果を送信するように制御してもよく、送信しないように制御してもよいが、無線リソースの消費を抑制する観点からは、送信しないように制御することが好適である。なお、送信制御部1094は、自装置のセンシング結果を、例えば、チャネル利用状況観測部1060から受け取ってもよく、センシング結果送信部1090から受け取ってもよい。
上記のように、センシング結果の選択的な報告が行われたとしても、BSSにおけるセンシング結果の報告順序が不適切である場合には、冗長な情報が送信されることになり、その結果として無線リソースが不必要に消費されることになる。そのことについて、図9を参照して説明する。
図9は、センシング結果の選択的な報告について、送信時点(報告時点)の制御を行う場合と、行わない場合とを比較するための図である。図9では、上向きの矢印によって、センシング結果の送信タイミングと、そのセンシング結果によって示されるチャネル利用率(COR)とを示している。なお、センシング結果がチャネル利用率である場合には、チャネル利用率が高いほど、適切度は低いことになる。また、破線の矢印は、選択的な報告の送信制御によって、センシング結果が結果として送信されなかったことを示している。
図9(a)を参照して、送信時点の制御を行わないセンシング結果の選択的な報告では、BSS内でチャネル利用率の低い順に送信が行われた場合には、センシング結果の送信を適切に抑制できないことになる。具体的には、図9(a)では、1番目から3番目および6番目のセンシング結果の送信が行われることになるため、4番目と5番目のセンシング結果の送信を抑制できる効果しか得られないことになる。
一方、図9(b)では、送信制御部1094は、自装置のセンシング結果に関する適切度が低いほど、センシング結果の送信時点がより早くなるように、センシング結果の送信時点を制御する。したがって、理想的にはチャネル利用率(COR)の大きい順に(すなわち、適切度の低い順に)センシング結果が送信され、図9(b)で示されるように、2番目から6番目のセンシング結果の送信が行われないことになり、センシング結果の送信を効率的に抑制することができるようになる。なお、自装置のセンシング結果に関する適切度が低いほど、センシング結果の送信時点がより早くなるように、センシング結果の送信時点を制御するとは、センシング結果の送信を全体として見た場合に、結果として、適切度の低いセンシング結果ほど、送信時点がより早くなるようになっていることであってもよい。したがって、送信時点の制御は、自装置のセンシング結果に関する適切度が低いほど、センシング結果の送信時点がより早くなる確率が高くなるように、センシング結果の送信時点を制御することであると考えてもよい。例えば、以下に説明するように、適切度に応じた報告時間ウィンドウにおいてランダムに送信時点までの時間を決定する場合には、そのランダム性により、個別のセンシング結果の送信時点については、適切度の高いものが、適切度の低いものよりも早い送信時点となることがあり得るが、BSSの全体としては、適切度の低いセンシング結果ほど、送信時点がより早くなる。
次に、上記のように送信時点を制御する手法について、具体的に説明する。ここでは、送信制御部1094が、自装置での観測に応じたセンシング結果の適切度が低いほどサイズが小さくなる報告時間ウィンドウにおいて、送信時点までの時間をランダムに決定する場合について説明する。まず、デフォルトの報告時間ウィンドウの長さ(サイズ)をRTW0とする。その報告時間ウィンドウは、(0,RTW0)の時間の区間、または(0,RTW0]の時間の区間であってもよい。なお、丸括弧は端点が含まれないことを示しており、角括弧は端点が含まれることを示している。デフォルトの報告時間ウィンドウの長さRTW0は、例えば、固定値であってもよく、または、通信状況に応じて変化する値であってもよい。後者の場合には、例えば、低遅延要求が高くないときに、RTW0がより長くなるようにし、低遅延要求が高いときに、RTW0がより短くなるようにしてもよい。また、その報告時間ウィンドウの長さは、コンテンション・ウィンドウ(CW:Contention Window)のサイズと同程度になるようにしてもよい。これらに限定されるものではないが、デフォルトの報告時間ウィンドウの長さRTW0は、例えば、数ms~数十ms程度であってもよく、数百ms程度であってもよい。次に、適切度に応じた報告時間ウィンドウの長さRTW(適切度)を、次式のように定義する。
RTW(適切度)=適切度×RTW0+base
ここで、適切度は、0から1までの実数となるように規格化されていることが好適である。また、baseは、適切度が0のときに報告時間ウィンドウのサイズが0にならないようにするためのオフセットであり、RTW0と比較して十分小さい正の実数である。センシング結果がチャネル利用率(COR)である場合には、適切度=1-CORとすることができるため、チャネル利用率に応じた報告時間ウィンドウは、(0,RTWCOR)の時間の区間、または、(0,RTWCOR]の時間の区間であってもよい。なお、RTWCORは次式のとおりである。また、0≦COR≦1であるとしている。
RTWCOR=(1-COR)×RTW0+base
この場合には、チャネル利用率が低いほど、報告時間ウィンドウのサイズは大きくなり、チャネル利用率が高いほど、報告時間ウィンドウのサイズは小さくなる。したがって、報告時間ウィンドウのサイズは、チャネル利用率に関して単調減少(すなわち、適切度に関して単調増加)となっている。また、送信制御部1094がそのような報告時間ウィンドウにおいてランダム(例えば、一様ランダム)に送信時点までの時間を決定することによって、自装置での観測に応じたチャネル利用率が高いほど、チャネル利用率の送信時点がより早くなり、自装置での観測に応じたチャネル利用率が小さいほど、チャネル利用率の送信時点がより遅くなるように制御することになる。より一般的に適切度に関して言えば、自装置での観測に応じた適切度が高いほど、センシング結果の送信時点までの時間がより長くなり、自装置での観測に応じた適切度が低いほど、センシング結果の送信時点までの時間がより短くなることになる。図8(b)で示される自律分散型協調センシング方式では、そのような送信時点の制御をも行っているものとする。そのため、図8(b)の各無線通信装置STA11~STA15は、各無線通信装置のセンシング結果(チャネル利用率)に応じた報告時間ウィンドウにおいてランダムに送信時点を決定し、その送信時点までに他の無線通信装置から送信されたセンシング結果の適切度が、自装置のセンシング結果の適切度よりも低い場合には、自装置のセンシング結果を送信せず、自装置のセンシング結果の適切度よりも高い場合には、自装置のセンシング結果を送信する。
図8(b)では、破線で囲んだ範囲内において、他の無線通信装置の送信した情報を互いに受信できるものとする。すなわち、無線通信装置STA11、STA12、STA15の間では、それぞれ他装置が送信したセンシング結果を受信できるものとする。また、無線通信装置STA13,STA14の間では、それぞれ他装置が送信したセンシング結果を受信できるものとする。また、図8(b)では、チャネル利用率の右側に、各チャネル利用率に応じた報告時間ウィンドウのサイズを括弧書きで示している。また、ここでは、報告時間ウィンドウのサイズの小さい順に、すなわち無線通信装置STA11、STA12、STA13、STA14、STA15の順番にアクセスポイントAP1へのセンシング結果の送信が行われるものとする。そのような状況において、まず、無線通信装置STA11は、自装置のセンシング結果(60%)をアクセスポイントAP1に送信する。次に、無線通信装置STA12は、無線通信装置STA11が送信したセンシング結果(60%)を受信し、自装置での観測に応じたセンシング結果が40%であり、すでに送信された結果よりもよい値であるため(すなわち、適切度が高いため)、センシング結果の送信を行わない。一方、無線通信装置STA13は、無線通信装置STA11から送信されたセンシング結果を受信できないため、センシング結果(30%)を送信する。また、無線通信装置STA14は、無線通信装置STA13が送信したセンシング結果(30%)を受信し、自装置での観測に応じたセンシング結果が20%であり、すでに送信された結果よりもよい値であるため、センシング結果の送信を行わない。また同様に、無線通信装置STA15も、自装置のセンシング結果の送信を行わない。その結果、2個の無線通信装置STA11、STA13のみからセンシング結果の送信が行われることになり、従来と比較して、センシング結果の送信回数を低減することができる。したがって、センシング結果の報告に関するオーバヘッドを大幅に低減でき、不必要な無線リソースの消費を抑制することができる。また、センシング結果の送信・非送信の制御を各無線通信装置が自律的に行うため、その制御について余分な通信が発生することもない。また、各無線通信装置が自律的にセンシング結果の送信・非送信の制御を行うため、スケーラビリティを確保できる。
ここで、アクセスポイントAP1(情報収集装置)から各無線通信装置に送信される統合センシング情報について説明する。アクセスポイントAP1では、適切度の最も低いセンシング結果が保持されるため、例えば、図8で示されるようにセンシング結果の報告が行われた場合には、チャネル利用率「60%」に統合され、その統合センシング情報「60%」が各無線通信装置STA11~STA15に送信されてもよい。その送信は、あらかじめ決められた無線チャネルである制御チャネルを用いて行われてもよい。また、複数の無線チャネルについてセンシング結果の送信が行われる場合には、その統合センシング情報は、複数の無線通信装置から送信されたセンシング結果に応じてアクセスポイントAP1において選択された、BSS1の無線通信で用いる1つまたは複数の無線チャネルを示す情報であってもよい。具体的には、無線チャネルch1、ch2、ch3、ch4、ch5について、各無線通信装置から送信されたセンシング結果によって示されるチャネル利用率の最高値がそれぞれ60%、30%、40%、50%、20%である場合には、アクセスポイントAP1は、チャネル利用率の低い順(適切度の高い順)に3個のチャネルを選択し、その選択した無線チャネルch2、ch3、ch5を示す統合センシング情報を、各無線通信装置STAに送信してもよい。そして、各無線通信装置STAでは、その無線チャネルch2、ch3、ch5を用いて、無線通信が行われてもよい。なお、選択する無線チャネルの個数は、あらかじめ決められていてもよく、または、センシング結果に応じて決められてもよい。後者の場合には、例えば、あらかじめ決められた閾値以上の適切度である無線チャネルから、あらかじめ決められた個数以内の無線チャネルが選択されてもよい。具体的には、その閾値がチャネル利用率30%に設定されており、あらかじめ決められた個数が「3個」である場合には、上記の例において、アクセスポイントAP1から、ch2、ch5を示す統合センシング情報が各無線通信装置STAに送信されてもよい。
図10は、周期的なセンシングと、周期的な報告(センシング結果の情報収集装置への送信)との関係の一例を示す概念図である。図10(a)を参照して、各無線通信装置におけるセンシング期間の時間的長さは決まっており、一例として、アクセスポイントAPからの指示に応じて、各無線通信装置におけるセンシングが開始される。したがって、各無線通信装置における各センシング期間の始点と終点は同じとなる。センシング期間における無線チャネルの観測に応じたセンシング結果は、報告期間においてアクセスポイントAPに送信される。報告期間の終了に関する制御(この制御については後述する)を行わない場合には、報告期間の時間的長さは一定となる。なお、センシング期間が終了してから、そのセンシング期間に対応する報告期間が開始されるため、センシング期間が各無線通信装置において同期している場合には、報告期間も各無線通信装置において同期することになる。その送信は、各無線通信装置においてランダムに選択された報告タイミング(送信時点)に応じて行われる。その送信タイミングは、上記のように、送信制御部1094によって決定される。報告時間ウィンドウを用いてランダムに決定された送信時点までの時間は、各報告期間の始点から送信時点までの時間であってもよい。ただし、前記のように、すでに他の無線通信装置から送信されたセンシング結果よりも自装置のセンシング結果の方が悪い場合にのみ、自装置のセンシング結果の報告が行われ、すでに他の無線通信装置から送信されたセンシング結果の方が自装置のセンシング結果よりも悪い場合には、自装置のセンシング結果の報告は行われない。その制御に応じて、センシング結果の報告数が低減されることになる。その報告期間が終了すると、その報告結果に応じて、アクセスポイントAPにおいて生成された統合センシング情報が各無線通信装置に送信される。そして、各無線通信装置とアクセスポイントAPとの間で、その統合センシング情報に応じた無線チャネルを用いた無線通信が行われることになる(通信期間)。その後も、センシング期間、報告期間等が繰り返されることになる。なお、デフォルトの報告時間ウィンドウのサイズは、例えば、報告期間の長さ(後述するように、報告期間は短縮されることがあるため、この報告期間の長さは、報告期間の最大の長さである)と等しくてもよく、報告期間の長さよりも短くてもよい。後者の場合には、例えば、デフォルトの報告時間ウィンドウのサイズは、報告期間の長さからbaseの長さを減算した結果であってもよく、または、それよりも短くてもよい。
なお、図9(b)で示されるように、送信時点の制御を行った場合には、報告期間の早い時期にセンシング結果の報告が行われることもある。そのように、報告期間の早い時期に適切度の低いセンシング結果が報告された場合には、その報告以降の報告期間は、不要な時間待ちを行っていることになる。一方、一律に報告期間を短くすると、BSSにおける各無線通信装置の観測結果の適切度が高い場合に、センシング結果の送信時点が遅くなり、アクセスポイントAPがそのセンシング結果を受信できないおそれがある。
そこで、アクセスポイントAPである情報収集装置は、次のようにして報告期間の終期を決定してもよい。図11は、報告期間の終了に関する制御について説明するための図である。なお、図11では、報告期間の始点を時間「0」としている。図11においても、図8と同様に、各無線通信装置での観測が行われたとする。図11において、時間T1に無線通信装置STA11がセンシング結果であるチャネル利用率「60%」をアクセスポイントAPに送信したとする。すると、アクセスポイントAPは、受信したセンシング結果を用いて、無線通信装置STA11で送信時点の決定に用いられた報告時間ウィンドウの長さを算出することができる。ここでは、その報告時間ウィンドウの長さがT2であったとする。具体的には、上記のRTW(適切度)の式に適切度を代入することや、上記のRTWCORの式にチャネル利用率(COR)を代入することによって、報告時間ウィンドウの長さを算出することができる。報告期間の開始から報告時間ウィンドウの長さだけ経過すると、それ以降に、その報告時間ウィンドウに対応する適切度よりも低い適切度が報告されることはないことになる。なぜなら、適切度が低いほど、報告時間ウィンドウの長さが短いからである。したがって、アクセスポイントAPは、センシング結果を受信するごとに、センシング結果に応じた報告終了時間を算出する。その報告終了時間は、センシング結果に応じた報告時間ウィンドウの長さに相当する期間である。そして、2以上のセンシング結果が受信された場合には、それぞれ算出された2以上の報告終了時間のうち、最も短い報告終了時間である最短報告終了時間を取得する。例えば、図11において、無線通信装置STA11より前に、無線通信装置STA12がセンシング結果をアクセスポイントAPに送信した場合には、そのセンシング結果に応じて、アクセスポイントAPは、報告終了時間「T3」を算出する。この場合には、報告終了時間は1個だけであるため、最短報告終了時間は、「T3」とされる。次に、無線通信装置STA11がセンシング結果を送信すると、アクセスポイントAPは、報告終了時間「T2」を算出する。そして、T2<T3であるため、アクセスポイントAPは、最短報告終了時間を「T2」に更新する。
その後、報告期間の始期からの経過時間がT2となり、最短報告終了時間「T2」が到来すると、アクセスポイントAPは、各無線通信装置に報告期間の終了を通知する。センシング結果受信部1092は、情報収集装置から送信されるセンシング結果の報告期間の終了の通知をも受信する。報告期間の終了の通知が受信された場合には、送信制御部1094は、報告期間を終了する。報告期間を終了するとは、報告期間の終了以降の期間を、報告以外の目的のために使用することであってもよい。例えば、図10(b)で示されるように、報告期間が早期に終了された場合には、それ以降の期間を通信期間としてもよい。そのようにすることで、報告期間が早期に終了された場合には、センシング結果に応じたより適切なチャネルで通信できる期間をより多く確保することができるようになる。なお、報告期間が終了された場合には、未送信のセンシング結果があったとしても、その未送信のセンシング結果は送信されないことになる。また、報告期間の終了後の期間は、例えば、統合センシング情報に応じたチャネル変更の期間として用いられてもよい。その場合は、図10(a)において、通信期間内にチャネル変更を行う場合と比較して、より適切なチャネルで通信を行うことができる時間を増やすことができるようになる。なお、図10の報告期間においても、アクセスポイントAPと無線通信装置との間で通信が行われてもよい。ただし、その通信は、報告に応じたチャネル変更等の制御が行われる前の通信となる。
上記のように、報告期間の終了を通知するアクセスポイントAPである情報収集装置は、例えば、図12で示されるものであってもよい。図12は、情報収集装置5000の情報収集に関する機能を示す機能ブロック図である。図12において、情報収集装置5000は、受信部5010と、取得部5020と、特定部5030と、生成部5040と、送信部5050とを備える。なお、情報収集装置5000が、互いに分離した複数の周波数帯のそれぞれでランダムアクセス制御を行っている複数の無線チャネルを利用して通信を行う場合には、情報収集装置5000は、送信装置1000や、後述する受信装置2000と同様の構成を有していてもよい。また、情報収集装置5000は、アクセスポイントAPとしての処理を行うための構成を有していてもよい。
受信部5010は、ランダムアクセス制御を行っている無線チャネルの利用状況を観測する複数の無線通信装置から、観測された利用状況に応じたセンシング結果を受信する。そのセンシング結果は、センシング結果に対応する無線チャネルが利用に適していることを示す適切度が低いほどサイズが小さくなる報告時間ウィンドウにおいて、ランダムに決定されたセンシング結果の送信時点に送信されたものである。受信部5010は、通常、報告期間において少なくとも1個のセンシング結果を受信する。
取得部5020は、受信部5010によって受信されたセンシング結果に応じた報告終了時間を取得する。取得部5020は、例えば、受信されたセンシング結果に応じた報告時間ウィンドウを用いて報告終了時間を取得してもよい。すなわち、報告終了時間の取得は、例えば、受信されたセンシング結果に応じた報告時間ウィンドウの長さを算出することによって行われてもよい。取得部5020は、通常、受信部5010でセンシング結果が受信されるごとに、報告終了時間を取得する。
特定部5030は、取得部5020によって特定された1以上の報告終了時間に応じて、最も短い報告終了時間である最短報告終了時間を特定する。前述のように、1個の報告終了時間が取得された場合には、それが最短報告終了時間となる。2個以上の報告終了時間が取得された場合には、最も短いものが最短報告終了時間となる。特定部5030は、例えば、取得部5020による報告終了時間の取得ごとに、最短報告終了時間を更新してもよい。なお、新たに取得された報告終了時間の方が、それまでの最短報告終了時間よりも長い場合には更新は行われない。なお、最短報告終了時間は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
生成部5040は、受信部5010によって受信されたセンシング結果を統合した統合センシング情報を生成する。統合センシング情報については、上述のとおりである。生成部5040は、センシング結果が受信されるごとに適切度の最も低いセンシング結果を更新することによって統合センシング情報を生成してもよく、または、すべてのセンシング結果の受信後に統合センシング情報を生成してもよい。なお、統合センシング情報は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。
送信部5050は、最短報告終了時間が到来した場合に、センシング結果の報告期間の終了を複数の無線通信装置に通知する。なお、報告期間の終了を複数の無線通信装置に通知することは、例えば、統合センシング情報の送信による通知でもよく、そうでなくてもよい。前者の場合には、送信部5050は、最短報告終了時間が到来した場合に、報告期間の終了の通知として、統合センシング情報を各無線通信装置に送信する。そして、各無線通信装置は、統合センシング情報を受信した際に、報告期間の終了の通知を受信したと判断してもよい。また、報告期間の終了の通知と、統合センシング情報の送信とが別である場合には、送信部5050は、報告期間の終了の通知とは別に、統合センシング情報をも複数の無線通信装置に送信してもよい。その統合センシング情報の送信は、報告期間の終了の通知の後に行われてもよい。
なお、報告終了時間や最短報告終了時間は、期間を示す情報であってもよい。その場合には、報告期間の始点から、最短報告終了時間に応じた期間が経過した際に、最短報告終了時間が到来したと判断されることになる。また、報告終了時間や最短報告終了時間は、時刻(例えば、18時45分15.025秒など)であってもよい。その場合には、例えば、取得部5020は、報告期間の始点の時刻から、報告時間ウィンドウの長さだけ経過した時点の時刻を報告終了時間としてもよい。
なお、アクセスポイントAPには、最新のセンシング結果が報告されるようになることが好適である。したがって、送信制御部1094は、自装置のセンシング結果の方が、他の無線通信装置の所定の時間以内のセンシング結果よりも、適切度が高い場合には、自装置のセンシング結果を送信しないようにセンシング結果送信部を制御してもよい。すなわち、その所定の時間より以前に送信されたセンシング結果と比較して、自装置のセンシング結果の方が適切度が高かったとしても、その所定の時間以内には、自装置のセンシング結果よりも適切度の低いセンシング結果が他装置から送信されていない場合には、自装置からのセンシング結果の送信が行われることになる。その所定の時間は、例えば、あらかじめ決められた一定の期間であってもよく、または、報告期間に関する、制御時点(比較時点)の直前の切り替わり時点までの期間(報告期間の切り替わり時点から、制御時点までの期間)であってもよい。後者の場合には、自装置と他装置とのセンシング結果の比較の処理が、報告期間ごとにリセットされることになる。上記のようにセンシング結果の送信制御が行われることによって、アクセスポイントAPは、常時、最新のセンシング結果を受信することができるようになる。なお、各無線通信装置は、ランダムアクセス制御によって無線通信を行うため、厳密には、センシング結果を取得してから送信するまでにタイムラグ(待ち時間)が存在することになるが、ここでは、センシング結果の受信時点が、そのセンシング結果の取得時点であるとして判断を行ってもよいものとする。両時点が大きく乖離する可能性は低いと考えられるからである。また、センシング結果に、センシング時点やセンシング結果の取得時点を示す情報が含まれている場合には、その情報を用いて、上記の制御が行われてもよい。
ここで、センシング結果としては、例えば、以下のようなものがある。なお、センシング結果が以下の例示に限定されないことはいうまでもない。
a1)チャネル利用率(チャネル占有率)
a2)フレーム誤り率
a3)干渉源の端末の個数
a4)隠れ端末の個数
センシング結果は、例えば、上記a1)~a4)のいずれかであってもよく、任意の二以上の組み合わせであってもよく、それらを1つ以上用いて生成された値(例えば、上記a1)~a4)のいずれか1つ以上を引数とする関数の値など)であってもよい。また、センシング結果は、上記の適切度であってもよい。チャネル利用率に応じた適切度は、例えば、「1-チャネル利用率」のように算出されてもよい。
チャネル利用率は、観測期間においてビジー状態である期間を、観測期間で除算することによって算出することができる。なお、チャネル利用率に代えて、例えば、観測期間においてアイドル状態である期間を観測期間で除算したアイドル率や、観測期間におけるアイドル状態の期間を、観測期間におけるビジー状態の期間で除算したアイドル/ビジー比率などをセンシング結果としてもよい。また、センシング結果の送信が高い頻度で行われる場合には、センシング結果は、例えば、ビジー状態であるのか、アイドル状態であるのかを示す情報であってもよい。センシング結果がチャネル利用率である場合には、無線チャネルの利用状況の観測は、無線チャネルがビジー状態であるのか、アイドル状態であるのかの観測であってもよい。
フレーム誤り率は、観測によって受信したフレームのうち、正確に復調できなかったものの比率であってもよい。この場合には、無線チャネルの利用状況の観測は、無線信号の受信や復調であってもよい。
干渉源の端末の個数は、他セル(自装置の属するセルとは異なるセル)の無線信号を復調し、MACアドレスなどの端末識別子のユニーク数をカウントすることによって取得することができる。この場合には、無線チャネルの利用状況の観測は、無線信号の受信や復調であってもよい。
隠れ端末の個数は、自装置が受信していないRTS(送信要求)に対して送信されたCTS(送信許可)の受信に応じて取得されてもよく、また、自装置が受信していないデータに対してアクセスポイントAPから送信されたACKの受信に応じて取得されてもよい。例えば、そのようなCTSやACKに含まれる送信先のMACアドレスなどの端末識別子のユニーク数をカウントすることによって、自装置に対する隠れ端末数を取得してもよい。なお、RTS,CTSについては後述する。この場合には、無線チャネルの利用状況の観測は、RTS,CTS、ACKなどの受信や復調であってもよい。
センシング結果がチャネル利用率やフレーム誤り率、干渉源の端末の個数、隠れ端末の個数である場合には、チャネル利用率等が高いほど、適切度は低いことになる。したがって、例えば、送信されるセンシング結果がチャネル利用率である場合には、送信制御部1094は、自装置での観測に応じたチャネル利用率の方が、他の無線通信装置から送信されたチャネル利用率よりも低い場合には、自装置のチャネル利用率を送信しないようにセンシング結果送信部1094を制御する。また、送信制御部1094は、自装置での観測に応じたチャネル利用率が高いほど、そのチャネル利用率の送信時点がより早くなるように制御する。一方、センシング結果がアイドル率である場合には、アイドル率が高いほど、適切度は高いことになる。
なお、上記説明では、1つの無線チャネルについて協調センシングを行う場合について説明したが、複数の無線チャネルについて、同様の協調センシングを行ってもよい。その場合には、例えば、送信制御部1094は、複数の無線チャネルごとに、センシング結果の送信に関する上記制御を行ってもよい。複数の無線チャネルとして無線チャネルch1、ch2およびch3を想定した場合に、図8で示される各無線通信装置STA11~STA15での観測に応じたセンシング結果が、次のようであったとする。なお、センシング結果であるチャネル利用率は、左から順番にch1、ch2、ch3に対応するものとする。
(ch1、ch2、ch3)
STA11:(60%、40%、20%)
STA12:(40%、30%、10%)
STA13:(30%、10%、10%)
STA14:(20%、20%、40%)
STA15:(10%、20%、20%)
この場合には、ch1については、例えば、STA11,STA12,STA13,STA14,STA15の順番となるように送信時点が決定され、ch2については、例えば、STA11,STA12,STA14,STA15,STA13の順番となるように送信時点が決定され、ch3については、例えば、STA14,STA11,STA15,STA12,STA13の順番となるように送信時点が決定されたものとする。また、図10を参照して、例えば、1番目のセンシング期間に無線チャネルch1のセンシングが行われ、次のセンシング期間に無線チャネルch2のセンシングが行われ、その次のセンシング期間に無線チャネルch3のセンシングが行われる場合には、まず、1番目の報告期間において、無線通信装置STA11からch1のセンシング結果が送信される。その後、無線通信装置STA12は、すでに送信されたch1のセンシング結果よりもch1の適切度が高いため、送信を行わない。その後、報告期間の終了が通知されたとすると、無線通信装置STA13~STA15は、報告期間を終了し、センシング結果を送信しないことになる。次の報告期間において、無線通信装置STA11からch2のセンシング結果が送信される。その後、無線通信装置STA12は、すでに送信されたch2のセンシング結果よりもch2の適切度が高いため、送信を行わない。その後、報告期間の終了が通知されたとすると、無線通信装置STA13~STA15は、報告期間を終了し、センシング結果を送信しないことになる。次の報告期間において、無線通信装置STA14からch3のセンシング結果が送信される。その後、報告期間の終了が通知されたとすると、無線通信装置STA11~STA13,STA15は、報告期間を終了し、センシング結果を送信しないことになる。このようにして、複数の無線チャネルごとにセンシング結果の送信を行う場合でも、本実施の形態のように送信制御や、報告期間の早期終了に関する制御を行うことによって、センシング結果の送信数(報告数)を抑制することができる。
なお、複数の無線チャネルについて協調センシングを行う場合に、センシング結果の送信に関する制御を、無線チャネルごとに行わなくてもよい。複数の無線チャネルについて一括して行うようにしてもよい。その場合には、送信制御部1094は、例えば、複数の無線チャネルのセンシング結果のうち、代表値を用いて、送信時点の決定や送信するかどうかの制御を行ってもよく、複数の無線チャネルのセンシング結果の合計値を用いて、送信時点の決定や送信するかどうかの制御を行ってもよい。代表値は、例えば、最も適切度の低い値であってもよく、平均値であってもよく、その他の代表値であってもよい。ここでは、複数の無線チャネルのセンシング結果のうち、最も適切度の低いセンシング結果を用いて、送信制御を行う場合について具体的に説明する。上記STA11~STA15の例において、最も適切度の低いセンシング結果は、次のようになる。
STA11:60%
STA12:40%
STA13:30%
STA14:40%
STA15:20%
したがって、この場合には、例えば、STA11,STA12,STA14,STA13,STA15の順番となるように送信時点が決定され、無線通信装置STA11、STA14がセンシング結果を送信することになる。なお、無線通信装置STA14の送信までに報告期間が終了された場合には、無線通信装置STA14以降のセンシング結果の送信は行われないことになる。この場合には、複数の無線チャネルについて一括して判断を行っているため、センシング結果を送信する際には、複数の無線チャネルのそれぞれのセンシング結果を送信することが好適である。
次に、複数の無線チャネルのセンシング結果のうち、複数の無線チャネルのセンシング結果の合計値を用いて、送信制御を行う場合について具体的に説明する。上記STA11~STA15の例において、センシング結果(チャネル利用率)の無線チャネルごとの合計値は、次のようになる。
STA11:120%
STA12:80%
STA13:50%
STA14:80%
STA15:50%
したがって、この場合には、例えば、STA11,STA12,STA14,STA13,STA15の順番となるように送信時点が決定され、無線通信装置STA11、STA14がセンシング結果を送信することになる。なお、無線通信装置STA14の送信までに報告期間が終了された場合には、無線通信装置STA14からのセンシング結果の送信は行われないことになる。この場合には、複数の無線チャネルについて一括して判断を行っているため、センシング結果を送信する際には、複数の無線チャネルのそれぞれのセンシング結果を送信することが好適である。
なお、例えば、無線通信装置が、あるセンシング期間に複数の無線チャネルについてセンシングを行うことができる場合には、代表値を用いたセンシング結果の送信に関する制御を行い、あるセンシング期間に1個の無線チャネルについてのみセンシングを行うことができる場合には、無線チャネルごとにセンシング結果の送信に関する制御を行うようにしてもよい。
また、上記説明では、各無線通信装置STA11~STA15が、3個の無線チャネルのそれぞれについてセンシング結果を取得するものである場合について説明したが、そうでなくてもよい。複数の無線通信装置のうち、少なくともいずれかは、一部の無線チャネルについてセンシング結果を取得しないものであってもよい。そのような場合であっても、複数の無線通信装置からセンシング結果がアクセスポイントAPに送信されることによって、アクセスポイントAPは、結果として、複数の無線チャネルのそれぞれについて、センシング結果を受信できることが好適である。
図13は、無線通信装置が、自律的な分散型協調センシングによって、センシング結果の送信または非送信を決定するフローを説明するための図である。
図13を参照して、無線通信装置は、まず、無線通信を行う可能性のある複数の対象無線チャネルについてセンシングを行う(S101)。このセンシングは、チャネル利用状況観測部1060による複数の無線チャネルの利用状況の観測によって行われる。そのセンシングは、センシング期間が終了するまで継続して行われる(S102)。なお、あるセルにおける最初のセンシング期間の開始タイミングは、アクセスポイントAPによって指定されてもよい。
センシング期間が終了すると、センシング結果送信部1090は、観測結果に応じてセンシング結果を取得する(S103)。ここでは、そのセンシング結果がチャネル利用率であるとする。なお、センシング結果がチャネル利用率以外である場合には、そのセンシング結果が、観測された利用状況を用いてセンシング結果送信部1090によって取得されてもよい。
続いて、送信制御部1094は、自装置のセンシング結果の適切度が低いほどサイズが小さくなる報告時間ウィンドウを生成し(S104)、その報告時間ウィンドウにおいてセンシング結果を送信するタイミング(送信時点)をランダムに決定する(S105)。
センシング結果送信部1090は、ステップS105で決定されたセンシング結果の送信タイミングが到来したかどうか判断する(S106)。そして、その送信タイミングが到来した場合には、センシング結果をアクセスポイントAPに送信する(S107)。そして、報告期間の終了の通知を待つことになる(S112)。一方、送信タイミングがまだ到来していない場合には、センシング結果受信部1092は、他の無線通信装置が送信したセンシング結果を受信したかどうか判断する(S109)。そして、他の無線通信装置から送信されたセンシング結果が受信された場合には、送信制御部1094は、他の無線通信装置から送信されたセンシング結果の方が、自装置のセンシング結果よりも悪いかどうか、すなわち適切度が低いかどうか判断し、適切度が低い場合には、センシング結果送信部1090によるセンシング結果の送信を取り消す(S110,S111)。そして、報告期間の終了の通知を待つことになる(S112)。なお、両者の適切度が同じである場合にも、センシング結果の送信が取り消されてもよい。一方、他の無線装置から送信されたセンシング結果の方が、自装置のセンシング結果よりも適切度が高い場合や、他の無線通信装置から送信されたセンシング結果の受信が行われていない場合には、ステップS106に戻る(S108)。
また、センシング結果の送信タイミングの到来を待っている際に、または、センシング結果の送信後もしくはセンシング結果の送信の取消後に、センシング結果受信部1092が報告期間の終了の通知を受信した場合には、報告期間は終了されることになる。したがって、その後は、例えば、図10(b)の通信期間において、収集されたセンシング結果に応じて選択されたチャネルを用いた無線通信を行うことができるようになる。なお、各無線通信装置において、センシング結果が送信された際、またはセンシング結果の送信が取り消された際には、報告期間の終了の通知の受信を待たないで、報告期間が終了されてもよい。
ここで、複数の無線通信装置について、報告期間の始点が一致している場合には、ステップS106~S111のようにセンシング結果の送信が行われることによって、自装置と他装置とのセンシング結果の比較の処理が、報告期間ごとにリセットされることになる。例えば、複数の無線通信装置について、ステップS101の対象チャネルのセンシングを開始するタイミングが同期しており、また、センシングを終了するまでのセンシング期間が一致している場合には、その複数の無線通信装置の報告期間の始点が一致することになる。なお、複数の無線通信装置および情報収集装置において報告期間を同期させるため、情報収集装置(アクセスポイントAP)は、例えば、報告期間の開始を示すスタートビーコンを送信してもよい。
なお、図13のフローチャートの処理は、各無線通信装置において繰り返して実行されることになる。また、ステップS110の判断処理は、複数の無線チャネルのそれぞれについて行われてもよい。そして、例えば、いずれかの無線チャネルについて、自装置のセンシング結果の方が、他装置のセンシング結果よりも適切度が低い場合には、ステップS106に戻ってもよい。そのようにしてステップS106に戻った場合には、自装置のセンシング結果の方が、他装置のセンシング結果よりも適切度が低いと判断した無線チャネルについてのみ、それ以降のステップS109に関する判断を行ってもよい。また、ステップS107では、すべての無線チャネルのセンシング結果が送信されてもよく、または、ステップS110において、他装置のセンシング結果の方が、自装置のセンシング結果よりも適切度が低いと判断された無線チャネル以外の無線チャネルに対応するセンシング結果のみが送信されてもよい。また、周期的なセンシングと、周期的なセンシング結果の送信とが並行して実行される場合には、ステップS101~S103のセンシング結果の取得処理と、ステップS104~S112のセンシング結果の送信または送信取消の処理とは、並行して実行されてもよい。
図14は、アクセスポイントAPである情報収集装置5000が、報告期間の終了の通知等を行うフローを説明するための図である。
図14を参照して、情報収集装置5000は、報告期間が開始したかどうか判断する(S201)。例えば、情報収集装置5000が各無線通信装置にセンシング期間の開始タイミングを通知している場合には、その開始タイミングからセンシング期間の長さだけ経過した際に、情報収集装置5000は、報告期間が開始したと判断してもよい。そして、報告期間が開始したと判断すると、受信部5010は、無線通信装置から送信されたセンシング結果を受信したかどうか判断する(S202)。そして、センシング結果を受信した場合には、取得部5020は、そのセンシング結果に応じて報告終了時間を算出し(S203)、特定部5030は、その算出された報告終了時間に応じて最短報告終了時間を更新し(S204)、ステップS202に戻る。
一方、センシング結果が受信されていない場合には、送信部5050は、最短報告終了時間が到来したかどうか判断する(S205)。そして、最短報告終了時間が到来した場合には、送信部5050は、生成部5040によって生成された統合センシング情報を複数の無線通信装置に送信することによって、報告期間の終了を通知する(S206)。そして、ステップS201に戻る。なお、生成部5040は、センシング結果が受信されるごとに統合センシング情報を更新してもよく、または、報告期間が終了した後に統合センシング情報を生成してもよい。また、最短報告終了時間が到来していない場合には、ステップS202に戻る。なお、報告期間が開始されてからセンシング結果が受信されておらず、そのため、報告終了時間の算出や最短報告終了時間の特定が行われていない場合には、送信部5050は、最短報告終了時間が到来していないと判断してもよい。また、統合センシング情報の送信と、報告期間の終了の通知とが別である場合には、送信部5050は、報告期間の終了の通知の後に、統合センシング情報を各無線通信装置に送信してもよい。
次に、選択的な報告において、本実施の形態のように送信時点の制御を行った方が、送信時点の制御を行わない場合と比較して送信タイミングが早くなる可能性が高いことについて説明する。
ここで、センシングを行う無線通信装置x、yは、互いに無線通信を行うことができる範囲に存在するとする。まず、無線通信装置xは、CORに応じたサイズの報告時間ウィンドウ(0,Ra)において送信時点を決定するものとし、他の無線通信装置yは、デフォルトの報告時間ウィンドウ(0,Rb)において送信時点を決定するものとする。
また、送信時点を簡単にするため、送信時点は1から始まる離散的な数字であり、R
aとR
bは、1より大きい整数であるとする。すると、無線通信装置xの送信時点が、無線通信装置yよりも早くなる確率P
CORxEyは、次式のようになる。
次に、無線通信装置xも、デフォルトの報告時間ウィンドウ(0,R
b)において送信時点を決定する場合における、無線通信装置xの送信時点が、無線通信装置yよりも早くなる確率P
UNIxEyは、次式のようになる。
すると、両者の差であるP
DiffxEyは、次式のようになる。
ここで、Rb≧Ra≧0であるため、PDiffxEyは、[0,1/2]の間の値となる。このように、PDiffxEy≧0であるため、送信時点の制御を行わない場合、すなわちデフォルトの報告時間ウィンドウを用いる場合よりも、送信時点の制御を行う場合、すなわちCORに応じたサイズの報告時間ウィンドウを用いる場合の方が、より早期の送信タイミングとなる確率が大きいか、または同じであることが分かる。したがって、送信時点の制御を行うことによって、送信時点の制御を行わない場合よりも、送信時点が確率的に遅くなることはないことが証明されたことになる。
次に、本実施の形態にように報告期間を終了させる制御を行った方が、そうでない場合と比較して報告期間が短くなることについて、シミュレーション結果を用いて説明する。
このシミュレーションでは、5個の無線通信装置STAと、1個のアクセスポイントAP(情報収集装置)とを有する無線LANを用いて評価を行った。無線通信装置STA1~STA5のセンシング結果(COR)はそれぞれ、0.1X,0.3X,0.5X,0.7X,0.9Xに設定した。なお、Xは0.2から1の範囲の値とした。センシング結果の送信時点は、各無線通信装置STAの報告時間ウィンドウRTWにおいてそれぞれランダムに決定した。また、報告時間ウィンドウRTWの式において、RTW0は500msに設定し、baseは20msに設定した。また、シミュレーションを簡単にするため、各無線通信装置STAからの報告は、他の無線通信装置STAからの報告とは独立して行われるようにした。すなわち、選択的報告の制御は行わなかった。
図15は、アクセスポイントAPにおける、Xの値に応じた報告終了時間の変化を、従来例(破線)と、提案手法(実線)とについてそれぞれ示すグラフである。従来例では、報告期間が早期に終了されることはないため、報告終了時間は一定となった。一方、提案手法では、アクセスポイントAPが受信したセンシング結果に応じて最短報告終了時間が取得され、最短報告終了時間が到来すると報告期間が早期に終了されるため、報告終了時間は、Xのすべての範囲について、従来例よりも短くなった。また、Xの値が大きいほどCORが大きくなり、その結果として、アクセスポイントAPに送信されるセンシング結果に応じた報告時間ウィンドウの長さも短くなるため、報告終了時間はより短くなる。図15において、提案手法では、従来例よりも報告終了時間が最大86%低減していた。提案手法では、その報告終了時間の低減に応じて、図10(b)で示されるように、本来、報告期間であった期間を、チャネル変更等の期間として有効に利用することができるようになる。
図16は、X=1とした場合における各無線通信装置STAにおける報告終了時間を、従来例(一点鎖線)と、提案手法(実線)とで比較した結果のグラフである。無線通信装置STA1~STA5がそれぞれ、STA ID1~STA ID5に対応している。なお、本シミュレーションでは、他の無線通信装置STAから送信されたセンシング結果を用いた送信制御は行わなかったため、各無線通信装置STAにおける報告終了時間は、提案手法では、自装置のセンシング結果を送信した時点、および、アクセスポイントAPから報告期間の終了の通知を受信した時点のいずれか早いほうまでの時間とした。また、従来例では、自装置のセンシング結果を送信した時点までの時間を報告終了時間とした。したがって、図16で示されるように、従来例では、CORの値が大きくなるほど(すなわち、STA IDが大きくなるほど)、報告終了時間が短くなった。一方、提案手法では、アクセスポイントAPからの報告期間の終了の通知によっても各無線通信装置STAにおける報告期間が終了されるため、すべての無線通信装置STAにおいて概ね一定となった。図16において、提案手法では、各無線通信装置STAにおける報告終了時間が従来例よりも平均43%低減していた。
以上のように、センシング端末である各無線通信装置が観測したセンシング結果のうち、最大あるいは最小の値が情報収集装置に送信されることになり、低オーバヘッドで協調センシングを実行することが可能である。また、センシング結果の送信タイミングについても制御を行うため、有用な情報が送信されるまでに不必要な送信が行われる事態を低減することができるようになる。また、センシング結果の適切度に応じて送信タイミングを1点に決めた場合には、複数の無線通信装置におけるセンシング結果の適切度が同じであるときにセンシング結果の送信において衝突が発生する恐れがあるが、送信タイミングを報告時間ウィンドウにおいてランダムに決定することにより、そのような衝突を回避することができるようになる。また、本実施の形態による無線通信装置STAや情報収集装置(アクセスポイントAP)では、報告期間を早期に終了することによって、センシング結果の不要な送信を回避することができることになる。例えば、図8において、STA13からのセンシング結果の送信が行われないようにすることができる。その結果、不要な無線リソースの利用を低減することができるようになる。また、情報収集装置からの報告期間の終了の通知によって各無線通信装置STAは報告期間を終了させることができるため、従来であれば報告期間であった期間に、チャネル選択等を行うことができるようになり、期間の有効利用を図ることができるようになる。また、センシング結果に応じて選択されたチャネルを用いた無線通信を、より早期に開始することもできるようになる。また、情報収集装置は、最短報告終了時間が経過した際に報告期間の終了の通知を行うため、BSSにおける適切度が最も低いセンシング結果は受信することができ、報告期間を短縮しても、チャネルの選択等の処理に影響を与えることはない。また、協調センシングの結果を利用し、複数周波数帯のチャネルを柔軟に選択または同時利用することで無線リソースを無駄なく活用して周波数利用効率向上を実現することが可能となる。
なお、本実施の形態では、センシング結果の送信時点までの時間を、適切度に応じたサイズの報告時間ウィンドウにおいて一様ランダムに選択する場合について主に説明したが、それ以外の方法によって、適切度に応じた送信時点となるように送信時点を決定してもよい。そのような送信時点の制御方法のいくつかについて、以下で説明する。
b1)デフォルトの報告時間ウィンドウを用いる場合
適切度に関わらず、デフォルトの報告時間ウィンドウを用いてもよい。その場合には、デフォルトの報告時間ウィンドウにおいて送信時点までの時間をランダムに決定する際に、その送信時点までの時間を、適切度に応じた分布の乱数列を用いてランダムに決定してもよい。適切度に応じた分布の乱数列は、例えば、デフォルトの報告時間ウィンドウの範囲において、適切度に応じたピークを有する乱数列、すなわち、適切度が低いほど、デフォルトの報告時間ウィンドウにおけるピークの時間がより小さくなり、適切度が高いほど、デフォルトの報告時間ウィンドウにおけるピークの時間がより大きくなる乱数列であってもよい。また、適切度に応じた分布の乱数列は、例えば、適切度に応じた平均値を有する乱数列、すなわち、適切度が低いほど平均値が低くなり、適切度が高いほど平均値が高くなる乱数列であってもよい。そのような乱数列としては、例えば、正規分布の乱数列を挙げることができる。複数の平均値にそれぞれ対応した複数の正規分布の乱数列を用意することによって、上記のような送信時点までの時間の決定を行うことができるようになる。なお、正規分布の乱数列の場合には、平均値の変化に応じて乱数列の範囲も変化することになる。したがって、その乱数列のうち、デフォルトの報告時間ウィンドウに含まれる値のみを送信時点の決定に用いるようにしてもよい。具体的には、上記のようなN個の乱数列を用意できる場合には、適切度をN個の範囲に分割し、適切度の範囲と乱数列とを対応付けるようにしてもよい。そして、センシング結果の適切度に対応する乱数列を用いて、デフォルトの報告時間ウィンドウにおいて送信時点までの時間をランダムに決定してもよい。
この場合には、取得部5020は、例えば、無線通信装置と同じ乱数列を用いて、受信されたセンシング結果に応じた送信確率が所定の値(例えば、90%や95%、99%など)となるまでの時間である報告終了時間を取得してもよい。
b2)報告時間ウィンドウの下端も変更する場合
上記説明では、報告時間ウィンドウが、例えば、(0,RTWCOR)の時間の区間である場合、すなわち報告時間ウィンドウの上端が適切度に応じて変化する場合について説明したが、報告時間ウィンドウの下端も、適切度(例えば、チャネル利用率等)に応じて変化してもよい。その場合には、報告時間ウィンドウが、例えば、(RTWmin,RTWmin+WD)となるようにしてもよい。ただし、RTWmin=(1-COR)×RTW0であり、WDは、報告時間ウィンドウの時間的な長さである。なお、報告時間ウィンドウの上端が、デフォルトの報告時間ウィンドウの長さRTW0を超えない方がよい場合には、RTWmin=(1-COR)×(RTW0-WD)としてもよい。また、その報告時間ウィンドウにおける送信時点までの時間は、ランダム(例えば、一様ランダム)に決定してもよい。また、チャネル利用率以外の適切度を用いる場合には、上式において、(1-COR)を、0から1までの値に規格化された適切度に変更してもよい。
b3)適切度の範囲ごとの報告時間ウィンドウを用いる場合
適切度の範囲に対応した報告時間ウィンドウを用いるようにしてもよい。例えば、適切度をB個の範囲に分割し、その範囲ごとに報告時間ウィンドウを設定してもよい。そして、適切度の低い範囲に対応する報告時間ウィンドウは、より小さい時間の範囲となり、適切度の高い範囲に対応する報告時間ウィンドウは、より大きい時間の範囲となるように設定されてもよい。適切度がチャネル利用率であり、B=4である場合には、例えば、次のようにチャネル利用率の範囲と、報告時間ウィンドウとを対応付けてもよい。
0≦COR<1/4:報告時間ウィンドウ(0,RTW0/4)
1/4≦COR<1/2:報告時間ウィンドウ(RTW0/4,RTW0/2)
1/2≦COR<3/4:報告時間ウィンドウ(RTW0/2,3×RTW0/4)
3/4≦COR≦1:報告時間ウィンドウ(3×RTW0/4,RTW0)
なお、上記の設定では、報告時間ウィンドウに重複が存在していないが、隣接する報告時間ウィンドウに一部重複が存在するようにしてもよい。また、その報告時間ウィンドウにおける送信時点までの時間は、ランダム(例えば、一様ランダム)に決定してもよい。また、チャネル利用率以外の適切度を用いる場合には、上記説明において、CORを、「1-適切度」に変更してもよい。なお、適切度は、0から1までの値に規格化されていることが好適である。
b2)、b3)の場合には、取得部5020は、例えば、報告時間ウィンドウの上端(終点)の時間を、報告終了時間として取得してもよい。
上記のように、種々の方法によって、適切度に応じた送信時点となるように送信時点を決定できることが理解できる。
[無線通信装置の詳細な構成]
図17は、送信装置1000のより詳細な構成の例を説明するための機能ブロック図である。
図17に示した機能ブロック図は、一例として、無線通信規格802.11aと同様の無線通信方式に従う送信装置の構成を示す。
すなわち、無線通信規格802.11aは、5GHz帯の無線LAN通信方式であるものの、図17では、2.4GHz、920MHz帯でも、周波数帯が異なるだけで、それ以外は同様の構成の無線通信方式に従う送信部を使用するものとする。
したがって、各周波数帯域において、パケットのプリアンブル部分の構成などは、複数の周波数帯について共通であるものとする。
ただし、必ずしも、各周波数帯の無線通信方式が同様の構成を有していることは必須ではなく、周波数帯ごとに無線通信方式(信号形式、シンボル長やサブキャリア間隔など)が異なっていてもよい。この場合は、少なくとも単一の送信系列を各帯域に分割して同時に送信し、また、周波数帯が異なる以外は、RF部の構成が基本的に同一であればよく、パケットのプリアンブル部分の構成(プリアンブルの長さなど)が、複数の周波数帯ごとに異なっていてもよい。
図17では、5GHz帯の送信に係る構成を代表して例示的に示す。無線通信規格802.11aと同様の無線通信方式を想定しているので、伝送する信号は、OFDM(直交周波数分割多重)変調するものとする。
図17を参照して、無線フレーム生成部1020.3は、S/P変換部1010から分配された送信データを受けて、マッピング処理を実行するためのマッピング部1122と、逆フーリエ変換処理を実行するためのIFFT部1130と、ガードインターバル部分を付加するためのGI付加部1140と、デジタル信号をI成分およびQ成分のアナログ信号に変換するためのデジタルアナログコンバータ(DAC)1150とを含む。図17に示すように、無線フレーム生成部1020.1~1020.3は、ベースバンド処理部ということもできる。また、S/P変換部1010および無線フレーム生成部1020.1~1020.3ではデジタル信号処理が行われるため、それらを総称してデジタル信号処理部と呼ぶ。
高周波処理部1040.3は、DAC1150からの信号を所定の多値変調信号に変調するための直交変調器1210と、直交変調器1210の出力をアップコンバートするアップコンバータ1220と、アップコンバータ1220の出力を電力増幅しアンテナ1050.3から送出するための電力増幅器1230とを含む。
その結果、RF部1040.3により、基底帯域OFDM信号は搬送帯域OFDM信号に変換される。
さらに、高周波処理部1040.3は、局部発振器1030からの参照周波数信号を対応する周波数帯域の基準クロック信号に変換するためのクロック周波数変換部1310と、クロック周波数変換部1310からの基準クロックに基づいて、直交復調器1210での変調処理に使用するクロックを生成するクロック生成部1320と、クロック周波数変換部1310からの基準クロックに基づいて、アップコンバータ1220でのアップコンバート処理に使用するクロックを生成するクロック生成部1340とを含む。
すなわち、局部発振器1030からの参照周波数信号は、このような基底帯域OFDM信号から搬送帯域OFDM信号への変換におけるクロック信号として使用される。なお、より一般に、無線通信方式が異なる場合でも、基本的に、局部発振器1030からの参照周波数信号は、基底帯域信号から搬送帯域信号への変換におけるクロック信号として使用される。
なお、チャネル利用状況観測部1060の構成および動作については、上述した協調センシングの方式で説明したものと同様のものを使用することができる。
チャネル利用状況観測部1060は、自局のセンシング結果および/または分担局のセンシング結果により、各周波数帯の利用状況(例えば各無線チャネルの空き状況やビジー確率等)を観測し、チャネル利用状況予測部1070は、各周波数帯の直近の利用状況を予測し、それに応じて、アクセス制御部1080が送信タイミングの制御を実行する。
[受信装置の構成]
以下では、図4で説明したような無線通信システムで使用される受信装置の構成について説明する。
図18は、本実施の形態の受信装置2000の構成を説明するための機能ブロック図である。
図18を参照して、受信装置2000は、複数の周波数帯域(920MHz帯、2.4GHz帯、5GHz帯)の信号をそれぞれ受信するためのアンテナ2010.1~2010.3と、アンテナ2010.1~2010.3の信号のダウンコンバート処理、復調・復号処理などの受信処理を実行するための受信部2100.1~2100.3と、受信部2100.1~2100.3に対して共通に設けられ、受信部2100.1~2100.3の動作の基準となるクロックである参照周波数信号を生成する局部発振器2020と、受信部2100.1~2100.3からの信号の各系列を送信側と逆の処理で、パラレル/シリアル変換により結合するためのパラレル/シリアル変換部2700とを含む。
パラレル/シリアル(P/S)変換部2700からの統合されたフレームの出力は、上位レイヤーに受け渡される。
受信装置2000は、受信した信号のプリアンブル信号から局部発振器2020の周波数オフセットの検出を行って、局部発振器2020の発振周波数を制御するための信号(発振周波数制御信号)を生成し、搬送波周波数同期処理を行い、また、受信した信号からデジタル信号処理におけるタイミング同期をとるための信号(同期タイミング信号)を生成する同期処理部2600を含む。
受信部2100.1は、アンテナ2010.1からの信号を受けて、低雑音増幅処理、ダウンコンバート処理、所定の変調方式に対する復調処理(例えば、所定の多値変調方式に対する直交復調処理)、アナログデジタル変換処理等を実行するための高周波処理部(RF部)2400.1と、RF部2400.1からのデジタル信号に対して、復調・復号処理等のベースバンド処理を実行するためのベースバンド処理部2500.1を含む。
受信部2100.2も、対応する周波数帯域についての同様の処理を行うための高周波処理部(RF部)2400.2ならびにベースバンド処理部2500.2を含む。また、受信部2100.3も、対応する周波数帯域についての同様の処理を行うための高周波処理部(RF部)2400.3ならびにベースバンド処理部2500.3を含む。
ベースバンド処理部2500.1~2500.3およびパラレル/シリアル(P/S)変換部2700を総称して、デジタル信号処理部2800と呼ぶ。
図19は、図18に示した受信装置2000のより詳細な構成の例を説明するための機能ブロック図である。
図19に示した機能ブロック図でも、一例として、無線通信規格802.11aと同様の無線通信方式に従う受信装置の構成を示す。
したがって、受信装置の構成は、図17に示した送信装置の構成に対応するものである。
図19でも、5GHz帯の受信部2100.3の構成を代表して例示的に示す。
図19を参照して、受信部2100.3のRF部2400.3は、アンテナ2010.3からの受信信号を増幅するための低雑音増幅器3010と、低雑音増幅器3010の出力を周波数変換するためのダウンコンバータ3020と、ダウンコンバータ3020の出力を所定の振幅となるように制御するための自動利得制御器3030と、所定の多値変調信号を復調するための直交復調器3040と、直交復調器3040のI成分出力およびQ成分出力をそれぞれデジタル信号に変換するためのアナログデジタルコンバータ(ADC)3050とを含む。
RF部2400.3は、さらに、局部発振器2020からの参照周波数信号を対応する周波数帯域の基準クロック信号に変換するためのクロック周波数変換部3060と、クロック周波数変換部3060からの基準クロックに基づいて、ダウンコンバータ3020でのダウンコンバート処理に使用するクロックを生成するクロック生成部3070と、クロック周波数変換部3060からの基準クロックに基づいて、直交復調器3040での復調処理に使用するクロックを生成するクロック生成部3080とを含む。
無線通信規格802.11aと同様の無線通信方式を想定しているので、伝送されてきた信号は、OFDM(直交周波数分割多重)変調されている。その結果、RF部2400.3により、搬送帯域OFDM信号は、基底帯域OFDM信号に変換される。
そして、局部発振器2020からの参照周波数信号は、このような搬送帯域OFDM信号から基底帯域OFDM信号への変換における搬送周波数同期に使用される。なお、より一般に、無線通信方式が異なる場合でも、基本的に、局部発振器2020からの参照周波数信号は、搬送帯域信号から基底帯域信号への変換における搬送周波数同期に使用される。
ベースバンド処理部2500.3は、ADC3050からの信号を受けて、ガードインターバル部分を除去するためのGI除去部4010と、ガードインターバルが除去された信号に対して、高速フーリエ変換を実行するためのFFT部4020と、FFT部4020の出力に対して、デマッピング処理を実行するためのデマッピング部4032とを含む。
ベースバンド処理部2500.1~2500.3において、ガードインターバルの除去、FFT処理およびデマッピング処理を実施した後に、受信データについて、P/S変換部2700により各周波数帯の信号を結合した後に、デインターリーブ部4042によるデインターリーブ処理および誤り訂正部4040による誤り訂正処理を実行する。
ここで、同期処理部2600から出力される同期タイミング信号は、OFDMシンボルの始まりを検出するためのシンボルタイミング同期などに使用される。
より一般に、無線通信方式が異なる場合でも、基本的に、同期処理部2600から出力される同期タイミング信号は、ベースバンド処理における同期信号として使用される。
以上のような構成により、複数の互いに分離した周波数帯域で同時並行に通信をする場合に、多チャネルの同時センシングを効率的に実行できる。また、各送信データを複数周波数帯域にマッピングし、送信タイミングを調整してデータ伝送を行うことが可能である。
(予測センシング)
以下では、協調センシングにより得られたチャネルの利用状況の情報に基づき、チャネル利用状況予測部1070により、チャネルのビジー状態またはアイドル状態となる確率を予測する構成について説明する。まず、チャネル利用状況観測部1060およびチャネル利用状況予測部1070の動作を説明する前提として、用語の説明のために、無線LANにおいて、各端末からの送信の衝突を回避する一般的な方法について簡単に説明する。
無線LANでは、お互いに送信を待ち合わせないとパケットが衝突して効率的な通信が成り立たないため、ほかに送信信号がないことを確認してから送信することで複数の端末が同じ回線を共用する「CSMA(Carrier Sense Multiple Access)」と呼ばれる方式が採用されている。送信時には、「待ち時間(DIFS:Distributed access Inter Frame Space)」および「コンテンション・ウィンドウ(CW:Contention Window)」と呼ぶランダム性を有する待ち時間を設け、その後に、ほかに送信信号がないことを確認してから送信する。このような方式を「CA(Collision Avoidance、衝突回避)」と呼ぶ。
また、送信後には、必ず「ACK(ACKnowledgement、到着確認応答)」を待ち、ACKが戻らない場合は衝突などが起きたと判断して再送信を行う。これは無線の場合、送信中に衝突を確実に検出するのが困難なためである。
これ以外にも、無線LAN固有のアクセス制御の仕組みとして、例えば、隠れ端末対策のために考案された「RTS/CTS(Request to Send/Clear to Send)」がある。ここで、隠れ端末とは、自分からは電波圏外だが、通信相手の電波圏内にいる端末のことである。その存在を直接知ることはできないが、干渉を引き起こす。
電波の到達距離をLmと仮定すると、無線端末Aの通信相手B(アクセスポイント)がLm先におり、さらにそのLm先に別の無線端末Cがいるという状況を考える。
このとき、端末Cの電波は端末Aまで届かないため、端末Aがほかの端末が信号を送出しているか調べても(キャリアセンスしても)端末Cの存在がわからないことから、端末Cは端末Aの隠れ端末になる。何も対策をとらないと、端末CがアクセスポイントBに送信中であっても、端末AもアクセスポイントBにデータを送信してしまうことが起きてしまうことになる。これは、アクセスポイントBで衝突を引き起こし、スループットを下げる要因になる。
RTS/CTSとは、無線機器が送信前に「RTS(送信要求)」のパケットを送信し、受信側がRTSを受信した場合には「CTS(受信可能)」で応答する仕組みである。前述の例では、端末CはアクセスポイントBにまずRTSを送信する。ただし、このRTSは、端末Aには届かないとする。
その後、アクセスポイントBは、端末Cに対してCTSを送信することで受信可能なことを通知する。このCTSは、端末Aにも届くため、端末Aは近隣で通信が行なわれることを察知し、送信を延期する。RTS/CTSのパケットには、チャネルの占有予定期間が書かれており、その間これを受信した端末は通信を保留する。この期間を「NAV(Network Allocation Vector、送信禁止期間)」と呼ぶ。
チャネル利用状況観測部1060からチャネル利用状況予測部1070に与えられる所定期間についての観測・計測の結果から、チャネル利用状況予測部1070が算出および予測する各無線チャネルの利用状況統計量としては、以下のようなものがある。
a)ビジー(busy)状態となる確率(時間的利用率)
b)ビジー(busy)状態とアイドル(idle)状態の継続時間の確率分布
c)直前のビジー(busy)/アイドル(idle)状態継続時間に対するアイドル(idle)/ビジー(busy)状態の継続時間の発生確率分布(例えば、確率密度関数(PDF:probability density function)や累積確率(CDF:cumulative distribution function))
d)ビジー(busy)状態とアイドル(idle)状態の発生パターン(周期とduty比 : 背景トラヒックが周期的な場合)
以下では、上記のうち、チャネル利用状況予測部1070が算出する予測情報の具体例を説明する。
1)「アイドル(idle)状態の継続時間の発生確率分布」の算出方法
無線LANのフレーム到来間隔τの確率密度関数(PDF)p(τ)は、以下の式(1)で表されるパレート(Pareto)分布に概ね従うことが知られている(以下の文献1を参照)。
文献1:Dashdorj Yamkhin and Youjip Won, "Modeling and analysis of wireless LAN traffic," Journal of Information Science and Engineering, vol. 25, no. 6, pp. 1783-1801, Nov. 2009.
ここで、aは分布形状を決定する係数、τmは最小フレーム到来間隔である。
また、aとτ
mが与えられた場合、τの平均μと分散σ
2は、a>2では以下の式(2)および(3)で与えられる。
例えばIEEE 802.11 DCF規格の場合、データフレームの最小到来間隔は、上述したDIFS+CW以上であるため、CWの最小値をCWminとしたときτm=DIFS+CWminと設定する。アイドル(idle)状態の継続時間をフレーム到来間隔とし、チャネルセンシング結果からμやσ2を計測すれば、上の式を用いて、チャネル利用状況予測部1070は、aの値を推定できる。
そして、aの値が求まれば、アイドル(idle)状態が、τ時間以上継続する確率C(τ)として、チャネル利用状況予測部1070は、次式で表される発生確率分布を得る。
使用予定の無線チャネルがアイドル(idle)状態となった場合、その時点からt後までアイドル(idle)状態が継続する確率は、C(τ)から求めることができる。
2)センシングの結果、アイドル(idle)継続時間とビジー(busy)継続時間が、それぞれ毎回ほぼ同じ時間であり、チャネル利用状況予測部1070がトラヒックが周期的であると判断した場合は、アイドル(idle)状態の継続時間の発生確率分布として、例えば、アイドル(idle)状態開始時時点からアイドル(idle)状態の継続時間の平均値(中央値や最小値でも良い)までの間のアイドル(idle)継続確率を100%、とし、それ以降は0%とするステップ関数としても良い。
3)一方、使用予定の無線チャネルがビジー(busy)状態の場合、飛来しているパケット(フレーム)の物理ヘッダに記載されているフレーム長や、MACフレームに記載されているNAVの値を復号することで、チャネル利用状況予測部1070は、ビジー(busy)状態の継続時間を取得しビジー状態の継続時間を予測することができる。
なお、チャネル利用状況観測部1060による無線チャネルの利用状況の観測や、チャネル利用状況予測部1070による予測は、統合センシング情報を用いて各無線通信装置において決定された、無線通信に用いる1つまたは複数の無線チャネルについて、または、統合センシング情報によって示される、無線通信に用いる1つまたは複数の無線チャネルについて、それぞれ行われてもよい。
以上説明した無線通信装置STAやアクセスポイントAPならびにそれらにより実行される協調センシングの構成により、低オーバヘッドで協調センシングを行うことができ、不必要な無線リソースの消費を回避することができる。
また、協調センシングの結果を利用し、複数周波数帯のチャネルを柔軟に選択または同時利用することで無線リソースを無駄なく活用して周波数利用効率向上を実現することが可能となる。
なお、上記したように、送信制御部1094による送信の制御は、1つの無線チャネルに関する協調センシングを行う場合に用いられてもよい。そして、そのような1つの無線チャネルに関する協調センシングを行う無線通信装置においては、無線通信で用いる無線チャネルの選択のために、センシング結果が用いられてもよい。その無線チャネルの決定をアクセスポイントAP(情報収集装置)において行う場合には、アクセスポイントAPにおけるセンシング結果の統合や、その統合された統合センシング情報の各無線通信装置STAへの送信は行われなくてもよい。
また、本実施の形態では、無線通信装置が無線LAN端末である場合を想定して説明したが、無線通信装置は、無線LAN端末ではなく、センシング結果を送信するが、それに応じた実体的な通信(すなわち、制御用の無線通信ではなく、文字列や画像等を送受信するための無線通信であり、例えば、アクセスポイントAPを介したインターネット通信など)を行わないものであってもよい。したがって、本実施の形態による無線通信装置は、例えば、センシング結果の収集にのみ用いられる装置であってもよい。
また、本実施の形態では、センシング結果に応じて、無線通信で用いられる無線チャネルが決定される場合について説明したが、そのセンシング結果が、各無線通信装置において、BSSにおける観測結果として用いられてもよい。したがって、予測を行わない場合には、情報収集装置から送信された統合センシング情報に応じて、送信タイミングの制御が行われてもよく、予測を行う場合には、その統合センシング情報に応じて、所定のタイミングでのチャネル利用状況が予測されてもよい。そのように、統合センシング情報が送信タイミングの制御や予測に用いられる場合には、センシング結果は、例えば、各無線チャネルがビジー状態であるのか、アイドル状態であるのかの情報であり、統合センシング情報がアクセスポイントAPから各無線通信装置STAに高い頻度で送信されてもよい。また、そのような場合には、アクセス制御部1080が、統合センシング情報に基づいて送信タイミングを制御するとは、統合センシング情報を間接的に用いることであってもよい。
今回開示された実施の形態は、本発明を具体的に実施するための構成の例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲および均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。