図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
第1実施形態
燃料電池システム1は、例えば燃料電池ハイブリッド車(FCHV)に搭載されて走行用モータへ供給する電力を発電する。また、定置型燃料電池システムとして、電気と熱を同時に取り出して給湯や暖房などを行う。以下では、燃料電池システム1が車両2に搭載されている車両用の燃料電池システム1として利用される場合を例に説明を行う。
燃料電池システム1は、燃料電池セルにおいて、燃料ガスと酸化剤ガスとの化学反応によって、発電を行うシステムである。以下では、燃料ガスとして水素を用い、酸化剤ガスとして酸素を含む空気を用いる場合を例に説明を行う。
図1において、燃料電池システム1は、第1サブシステム10Aと第2サブシステム10Bとの2つのシステムを備えている。ただし、燃料電池システム1を構成するサブシステムの数は2つに限られない。例えば、3つ以上のサブシステムを用いて燃料電池システム1を構成してもよい。以下では、第1サブシステム10Aを構成する各構成要素の符号の末尾にAを付し、第2サブシステム10Bを構成する各構成要素の符号の末尾にBを付している。末尾に付したAまたはB以外の符号が等しい構成要素は、特段の説明のない限り、第1サブシステム10Aと第2サブシステム10Bとで実質的に同様の構成要素である。また、以下では第1サブシステム10Aを中心に構成要素の説明を行う。
第1サブシステム10Aは、第1燃料電池11Aと、第1水素供給部20Aと、第1水素減圧部30Aと、第1空気供給部50Aと、第1FC冷却部60Aとを備えている。第1燃料電池11Aは、燃料電池セルを備えている。燃料電池セルは、水素イオンを透過可能な電解質膜の一方の面に正極を備え、他方の面に負極を備えて構成されている。燃料電池セルは、正極に酸化剤として機能する酸素を含む空気が供給され、負極に還元剤として機能する水素が供給されることで、化学反応によって発電を行う固体高分子形燃料電池である。第1燃料電池11Aは、複数の燃料電池セルがセパレータを介して重なるように構成されている。第1燃料電池11Aは、FCあるいはFCスタックとも呼ばれる。
第1水素供給部20Aは、第1サブシステム10Aにおいて、第1燃料電池11Aに燃料である水素を供給するための部分である。第1水素供給部20Aは、第1水素貯蔵部25Aを備えている。第1水素供給部20Aは、車両2に設けられている充填部21と接続している。充填部21は、水素ステーションから第1サブシステム10Aに水素を充填する際に、水素の入口として機能する開口である充填口を形成している部分である。第1水素貯蔵部25Aは、高圧の水素を貯蔵するための装置である。第1水素貯蔵部25Aは、複数のタンクによって構成されている。
第1水素供給部20Aは、充填部21と第1水素貯蔵部25Aとを接続して、水素の流路部を提供する第1充填流路部29uAを備えている。第1充填流路部29uAは、複数のタンクそれぞれに水素を分配して流入させる第1分配部22Aを備えている。第1分配部22Aには、水素の圧力を計測するための第1充填側圧力センサ22pAが設けられている。
第1水素供給部20Aは、第1水素貯蔵部25Aから第1燃料電池11Aに向かって水素を供給するための流路部の一部を構成する第1高圧流路部29dAを備えている。第1高圧流路部29dAには、第1水素貯蔵部25Aと第1燃料電池11Aとの間での水素の流れを制御するための第1タンク開閉弁26Aが設けられている。第1タンク開閉弁26Aは、開度を電気的に制御可能な電気的駆動弁である。第1タンク開閉弁26Aは、タンクシャットバルブとも呼ばれる。第1高圧流路部29dAは、複数のタンクから第1燃料電池11Aに向かって流出した水素を合流させる第1合流部28Aを備えている。第1合流部28Aには、水素の圧力を計測するための第1高圧センサ28pAが設けられている。
第1水素減圧部30Aは、第1水素供給部20Aと第1燃料電池11Aとの間に設けられている。第1水素減圧部30Aは、第1サブシステム10Aにおいて、第1燃料電池11Aに水素を供給する過程で水素の圧力を減圧するための部分である。第1水素減圧部30Aは、第1レギュレータ31Aと第1インジェクタ35Aとの2つの減圧装置を備えている。
第1レギュレータ31Aは、第1高圧流路部29dAを流れてきた高圧の水素を高圧よりも低い圧力である中圧に減圧する装置である。第1レギュレータ31Aは、第1レギュレータ31Aの上流側と下流側との圧力差を所定の値に保つ機械式の駆動弁である。ただし、第1レギュレータ31Aとして、開度を電気的に制御可能な電気的駆動弁を用いて、上流側と下流側との圧力差を電気的に制御してもよい。
第1高圧流路部29dAにおける第1合流部28Aと第1レギュレータ31Aとの間の部分と、第2高圧流路部29dBにおける第2合流部28Bと第2レギュレータ31Bとの間の部分とは、連結流路部29cによって連結されている。この連結流路部29cを燃料が流れることで、第1水素貯蔵部25Aに貯蔵されている燃料を第2燃料電池11Bに供給することができる。あるいは、第2水素貯蔵部25Bに貯蔵されている燃料を第1燃料電池11Aに供給することができる。これにより、第1水素貯蔵部25Aに貯蔵されている燃料の量と、第2水素貯蔵部25Bに貯蔵されている燃料の量とに大きな偏りがある場合に、燃料の偏りを解消しやすい。
第1インジェクタ35Aは、第1レギュレータ31Aで減圧され、中圧となった水素を中圧よりも低い圧力である低圧に減圧する装置である。第1インジェクタ35Aは、開度を電気的に制御可能な電気的駆動弁を複数並列に配置して構成されている。第1インジェクタ35Aは、例えば3つの電気的駆動弁で構成されている。第1インジェクタ35Aは、第1燃料電池11Aに流す水素の量を制御するための装置として機能する。言い換えると、第1燃料電池11Aで消費する水素の量が少ない場合には、第1インジェクタ35Aを構成する弁のうち、開状態とする弁の数を少なくする。一方、第1燃料電池11Aで消費する水素の量が多い場合には、第1インジェクタ35Aを構成する弁のうち、開状態とする弁の数を多くする。このように、第1インジェクタ35Aを構成する複数の弁のうち、開状態とする弁の数を制御することで第1燃料電池11Aに流す水素の量を制御する。
第1水素減圧部30Aは、第1高圧流路部29dAと第1インジェクタ35Aとを接続して、水素の流路部を提供する第1中圧流路部39uAを備えている。第1レギュレータ31Aは、第1高圧流路部29dAと第1中圧流路部39uAとの境界上に位置することとなる。第1中圧流路部39uAには、水素の圧力を計測するための第1中圧センサ33pAが設けられている。
第1水素減圧部30Aは、第1中圧流路部39uAと第1燃料電池11Aとを接続して、水素の流路部を提供する第1低圧流路部39dAを備えている。第1インジェクタ35Aは、第1中圧流路部39uAと第1低圧流路部39dAとの境界上に位置することとなる。第1低圧流路部39dAには、水素の圧力を計測するための第1低圧センサ36pAが設けられている。
第1サブシステム10Aにおいて、水素は、第1高圧流路部29dA、第1中圧流路部39uA、第1低圧流路部39dAの順に第1燃料電池11Aに向かって流れることで、段階的に圧力が低下することとなる。ただし、水素の圧力は、高圧と中圧と低圧との3段階に低下する場合に限られない。
第1サブシステム10Aは、第1燃料電池11Aでの化学反応に使用されなかった水素を循環させる第1水素循環部を備えている。第1水素循環部は、第1水素ポンプ41Aと第1排水弁43Aとを備えている。第1水素ポンプ41Aは、第1燃料電池11Aから流出した水素を吸い込んで第1低圧流路部39dAに戻すための流体輸送装置である。第1水素ポンプ41Aは、出力の大きさを電気的に制御可能な電動ポンプである。第1排水弁43Aは、第1燃料電池11Aにおいて水素と酸素との化学反応によって生じた水を排水するための装置である。第1排水弁43Aは、水を排水する際に一部の水素も排水と同時に排気することがある。
第1水素循環部は、第1燃料電池11Aと第1水素ポンプ41Aと第1排水弁43Aとを接続して水素などの流体が流れる第1水素循環流路部49Aを備えている。第1水素循環流路部49Aは、第1燃料電池11Aにおける水素と水の流出部分から第1低圧流路部39dAまでを接続して流体の循環する流路部を構成している。
第1空気供給部50Aは、第1サブシステム10Aにおいて、第1燃料電池11Aに酸化剤である酸素を含む空気を供給するための部分である。第1空気供給部50Aは、第1エアクリーナ51Aと第1エアコンプレッサ52Aとを備えている。第1エアクリーナ51Aは、空気に含まれる異物を除去するための装置である。第1エアクリーナ51Aの内部には、フィルタが設けられており、第1エアクリーナ51Aを通過する空気から異物を除去する。第1エアコンプレッサ52Aは、吸い込んだ空気を圧縮して第1燃料電池11Aに送る装置である。第1エアコンプレッサ52Aは、運転制御を電気的に制御可能な電動コンプレッサである。電動コンプレッサである第1エアコンプレッサ52Aに代えて、空気を送風して第1燃料電池11Aに送り出す送風装置を用いてもよい。第1エアコンプレッサ52Aは、第1空気供給装置の一例を提供する。同様に、第2エアコンプレッサ52Bは、第2空気供給装置の一例を提供する。
第1空気供給部50Aは、第1燃料電池11Aと第1エアクリーナ51Aと第1エアコンプレッサ52Aとを接続して空気などの流体が流れる第1空気流路部59Aを備えている。第1空気流路部59Aは、第1燃料電池11Aに空気を供給するまでの流路部と、第1燃料電池11Aを流れた空気を外部に排出するまでの流路部とを備えている。第1空気流路部59Aのうち、第1燃料電池11Aを流れた空気を外部に排出するまでの部分には、第1マフラー58Aが設けられている。第1マフラー58Aは、第1サブシステム10Aの内部から外部に流体を適切に排出するための装置である。
第1空気流路部59Aのうち、第1燃料電池11Aを流れた空気を外部に排出するまでの部分は、第1排水弁43Aと接続している。このため、第1排水弁43Aから排水された水および水素と第1燃料電池11Aを流れた空気とが合流した後に、第1マフラー58Aを通過して外部へと排出されることとなる。
第1空気流路部59Aは、第1燃料電池11Aを経由せずに第1マフラー58Aに空気を流す水素希釈用流路部を備えている。第1空気流路部59Aには、水素希釈用流路部に流す空気の量を制御する第1分流バルブ53Aが設けられている。第1分流バルブ53Aは、第1排水弁43Aから排出される水素の量が多い場合に、水素希釈用流路部に流れる空気の量を多くする。これにより、第1マフラー58Aから外部に排出される水素を希釈して、外部に排出される水素濃度が高くなり過ぎることを抑制している。第1空気流路部59Aには、第1調圧バルブ54Aが設けられている。第1調圧バルブ54Aの開度制御によって、第1燃料電池11Aに供給される空気の量が調整される。第1分流バルブ53Aと第1調圧バルブ54Aとは、開度を電気的に制御可能な電気的駆動弁である。
第1空気流路部59Aには、第1エアコンプレッサ52Aで圧縮される空気である吸気の温度を計測する第1吸気温度センサ55Aが設けられている。第1吸気温度センサ55Aは、第1エアクリーナ51Aよりも空気の流れの上流側に設けられている。第1空気流路部59Aには、吸気の流れる量を計測するための第1エアフロメータ51sAが設けられている。第1エアフロメータ51sAは、第1エアクリーナ51Aと第1エアコンプレッサ52Aとの間に設けられている。第1吸気温度センサ55Aは、吸気温度センサの一例を提供する。同様に、第2吸気温度センサ55Bは、吸気温度センサの一例を提供する。
第1FC冷却部60Aは、第1サブシステム10Aにおいて、発電にともなって発熱する第1燃料電池11Aを冷却するための部分である。第1FC冷却部60Aは、第1冷却水ポンプ61Aと第1ラジエータ64Aと第1送風機66Aとを備えている。第1冷却水ポンプ61Aは、第1燃料電池11Aに冷却水を流すためのポンプである。第1冷却水ポンプ61Aは、出力の大きさを電気的に制御可能な電動ポンプである。冷却水に代えて、気相と液相の間での相変化を利用して第1燃料電池11Aを冷却する冷媒を流してもよい。また、冷却用熱媒体としては、冷却水のような液体に限られず気体を用いてもよい。
第1ラジエータ64Aは、冷却水と空気とを熱交換させて冷却水を冷却するための装置である。第1送風機66Aは、第1ラジエータ64Aを流れる空気の量を制御して、第1ラジエータ64Aにおける冷却水と空気の熱交換量を制御する装置である。第1送風機66Aは、回転数を電気的に制御可能な電動送風機である。第1送風機66Aは、互いに逆向きの回転方向である正回転と逆回転との2つの向きに回転する向きを制御可能である。
第1FC冷却部60Aは、第1燃料電池11Aと第1冷却水ポンプ61Aと第1ラジエータ64Aとを環状に接続している第1冷却流路部69Aを備えている。第1冷却流路部69Aは、第1ラジエータ64Aを経由せずに冷却水を第1燃料電池11Aに循環させるための第1バイパス流路部69iAを備えている。第1バイパス流路部69iAには、第1バイパス流路部69iAに流れる冷却水の量を制御する第1バイパス弁63Aが設けられている。
第1冷却流路部69Aには、第1燃料電池11Aよりも冷却水の流れの下流側であって、第1バイパス弁63Aよりも上流側に第1高温温度センサ62tAが設けられている。第1高温温度センサ62tAは、発熱部品である第1燃料電池11Aとの熱交換によって加熱され、高温になった冷却水の温度を計測するセンサである。第1高温温度センサ62tAで計測した温度から第1燃料電池11Aの温度を推定できる。第1冷却流路部69Aには、第1ラジエータ64Aよりも冷却水の流れの下流側であって、第1冷却流路部69Aにおける第1バイパス流路部69iAとの接続部分よりも上流側に第1低温温度センサ65tAが設けられている。第1低温温度センサ65tAは、第1ラジエータ64Aとの熱交換によって冷却され、低温になった冷却水の温度を計測するセンサである。第1低温温度センサ65tAで計測した温度から第1ラジエータ64Aの温度を推定できる。
図2において、車両2の屋根の車室外側には、収納ケース15が設けられている。収納ケース15と車両2の屋根とによって囲まれる空間は、第1サブシステム10Aと第2サブシステム10Bとを収納する収納空間である。ただし、この収納空間には、第1サブシステム10Aと第2サブシステム10Bとの全体が収納されているのではなく、第1サブシステム10Aと第2サブシステム10Bの少なくとも一部が収納されている。
収納ケース15は、車両2の前後方向および左右方向における略中央に設けられている。ただし、車両2の重量バランスや熱負荷に応じて、車両2の略中央の位置以外に収納ケース15を設けてもよい。例えば、車両2の後方に走行用モータなどの発熱部品が設けられている場合には、収納ケース15の設置位置を車両2の前方に設定することで、走行用モータなどの駆動に伴う排熱が第1燃料電池11Aなどに影響することを低減できる。
図3において、第1サブシステム10Aと第2サブシステム10Bとを構成している一部の要素を省略して図示している。収納ケース15には、前方開口部16と第1吸気口部17Aと第1冷却開口部18Aと第2吸気口部17Bと第2冷却開口部18Bと後方開口部19とが形成されている。各開口部は、収納ケース15の内部と外部とを連通している。
収納ケース15の前方側面には、前方開口部16が形成されている。前方開口部16は、車両2が走行している際の走行風を収納ケース15の外部から内部に取り込むための開口部である。前方開口部16は、車両2の左右方向に3つ並んで設けられている。前方開口部16には、前方開口部16を通過する風の流れを整えるためのルーバーが形成されている。各開口部は、グリルとも呼ばれる。各開口部に設けられているルーバーはグリルシャッタとも呼ばれる。ただし、各開口部には、ルーバーが形成されていなくてもよい。前方開口部16は、連通口部の一例を提供する。
収納ケース15の後方側面には、後方開口部19が形成されている。後方開口部19は、収納ケース15の内部に取り込まれた走行風を外部に吐き出すための開口部である。後方開口部19は、車両2の左右方向に3つ並んで設けられている。後方開口部19には、後方開口部19を通過する風の流れを整えるためのルーバーが形成されている。前方開口部16と後方開口部19とは、車両2の前後方向において互いに対向している。後方開口部19は、連通口部の一例を提供する。
収納ケース15の右方側面には、第1吸気口部17Aと第1冷却開口部18Aとが形成されている。第1吸気口部17Aは、第1空気供給部50Aが収納ケース15の外部から空気を吸い込むための開口部である。第1冷却開口部18Aは、第1送風機66Aによる風が通過する開口部である。第1冷却開口部18Aには、ルーバーが形成されている。第1吸気口部17Aと第1冷却開口部18Aとは、車両2の前後方向に並んで設けられている。第1吸気口部17Aは、第1冷却開口部18Aよりも前方に位置している。第1冷却開口部18Aは、連通口部の一例を提供する。
収納ケース15の左方側面には、第2吸気口部17Bと第2冷却開口部18Bとが形成されている。第2吸気口部17Bは、第2空気供給部50Bが収納ケース15の外部から空気を吸い込むための開口部である。第2冷却開口部18Bは、第2送風機66Bによる風が通過する開口部である。第2冷却開口部18Bには、ルーバーが形成されている。第2吸気口部17Bと第2冷却開口部18Bとは、車両2の前後方向に並んで設けられている。第2吸気口部17Bは、第2冷却開口部18Bよりも後方に位置している。第2冷却開口部18Bは、連通口部の一例を提供する。
収納ケース15の内部には、第1燃料電池11Aと第1空気供給部50Aと第1FC冷却部60Aとが収納されている。ただし、収納ケース15の内部に第1水素供給部20Aや第1水素減圧部30Aを収納してもよい。第1空気流路部59Aの上流側端部は、第1吸気口部17Aに接続されている。第1ラジエータ64Aは、第1冷却開口部18Aと対向した位置に設けられている。第1送風機66Aは、第1ラジエータ64Aおよび第1冷却開口部18Aと対向した位置に設けられている。言い換えると、第1送風機66Aの軸方向に沿う方向に、第1送風機66Aと第1ラジエータ64Aと第1冷却開口部18Aとが並んで設けられている。第1燃料電池11Aは、第1送風機66Aの軸方向において、第1送風機66Aの一部と対向している。第1送風機66Aは、換気装置の一例を提供する。
収納ケース15の内部には、第2燃料電池11Bと第2空気供給部50Bと第2FC冷却部60Bとが収納されている。ただし、収納ケース15の内部に第2水素供給部20Bや第2水素減圧部30Bを収納してもよい。第2空気流路部59Bの上流側端部は、第2吸気口部17Bに接続されている。第2ラジエータ64Bは、第2冷却開口部18Bと対向した位置に設けられている。第2送風機66Bは、第2ラジエータ64Bおよび第2冷却開口部18Bと対向した位置に設けられている。言い換えると、第2送風機66Bの軸方向に沿う方向に、第2送風機66Bと第2ラジエータ64Bと第2冷却開口部18Bとが並んで設けられている。第2燃料電池11Bは、第2送風機66Bの軸方向において、第2送風機66Bの一部と対向している。第2送風機66Bは、換気装置の一例を提供する。
収納ケース15の内部に収納されている第1燃料電池11Aと第2燃料電池11Bとは、発電に伴って熱が発生する発熱部品である。このため、収納ケース15の内部の空気は、第1燃料電池11Aや第2燃料電池11Bの排熱によって加熱されることとなる。したがって、収納ケース15の内部の空気の温度は、外気温度よりも高くなりやすい。
収納ケース15の内部に収納されている第1ラジエータ64Aと第2ラジエータ64Bとは、周りの空気と冷却水とを熱交換して冷却水の温度を低下させる装置である。このため、収納ケース15の内部の空気は、第1ラジエータ64Aや第2ラジエータ64Bを流れる高温の冷却水によって加熱されることとなる。よって、収納ケース15の内部の空気の温度は、外気温度よりも高くなりやすい。
第1冷却開口部18Aや第2冷却開口部18Bから収納ケース15の外部に流出した空気の一部は、第1吸気口部17Aや第2吸気口部17Bから吸い込まれることがある。このため、収納ケース15の内部の空気の温度が高いと、第1吸気口部17Aや第2吸気口部17Bから吸い込まれる空気の温度も高くなりやすい。第1燃料電池11Aや第2燃料電池11Bにおける化学反応では、電解質膜を水素イオンが透過するために電解質膜に水が必要となる。しかしながら、温度の高い空気が正極に供給されると、電解質膜の温度が上昇するなどして電解質膜が乾きやすい。電解質膜が乾いてしまうと、適切に水素イオンが透過できず、発電効率が低下してしまうこととなる。よって、第1吸気口部17Aや第2吸気口部17Bから吸い込む空気の温度が、外気温度よりも高温にならないようにすることが好ましい。
第1燃料電池11Aと第2燃料電池11Bとの発電量が異なる場合には、第1燃料電池11Aの発熱量と第2燃料電池11Bとの発熱量とが異なることになる。このため、例えば、第1燃料電池11Aの発電量が第2燃料電池11Bの発電量よりも少ない場合であっても、第2燃料電池11Bの発電量が多く、発熱量も多い状態となる。この状態で収納ケース15の内部が換気されなければ、第2燃料電池11Bの発熱によって加熱された空気は、収納ケース15の内部にこもった状態となり、収納ケース15の内部全体の空気の温度が外気温度よりも高温になる。言い換えると、第2燃料電池11Bの発熱の影響で温度の上昇した空気を第1エアコンプレッサ52Aが吸い込み、第1燃料電池11Aの発電効率を悪化させることにつながり得る。
収納ケース15の内部における風の流れについて、以下に説明する。車両2が走行している場合など、車両2の前方から後方に向かって風が流れる場合には、前方開口部16から収納ケース15の内部に風が流入する。収納ケース15の内部に流入した風は、後方開口部19に向かって流れ、後方開口部19から収納ケース15の外部へと流出する。このように、走行風を用いて収納ケース15の内部に風を流す換気運転を行うことで、収納ケース15の内部に熱がこもることを抑制できる。
第1送風機66Aと第2送風機66Bとが駆動している場合、第1冷却開口部18Aから収納ケース15の内部に風が流入する。収納ケース15の内部に流入した風は、第2冷却開口部18Bに向かって流れ、第2冷却開口部18Bから収納ケース15の外部へと流出する。ただし、風の流れ方向は、第1冷却開口部18Aを上流、第2冷却開口部18Bを下流とする流れに限られない。第1送風機66Aと第2送風機66Bとの回転方向を制御することで、第2冷却開口部18Bを上流、第1冷却開口部18Aを下流とする風を発生させることができる。あるいは、第1送風機66Aと第2送風機66Bとをともに収納ケース15の内部から外部へと風を送るように回転させてもよい。これによると、前方開口部16と後方開口部19とを上流、第1冷却開口部18Aと第2冷却開口部18Bとを下流とする風を発生させることができる。このように、第1送風機66Aと第2送風機66Bとを用いて、収納ケース15の内部に強制的に風を流す換気運転を行うことで、収納ケース15の内部に熱がこもることを抑制できる。
第1吸気温度センサ55Aは、第1吸気口部17Aから吸い込まれる空気の吸気温度を計測する温度センサである。一方、第2吸気温度センサ55Bは、第2吸気口部17Bから吸い込まれる空気の吸気温度を計測する温度センサである。ここで、第1吸気口部17Aは、第1冷却開口部18Aよりも前方に位置している。言い換えると、第1吸気口部17Aは、第1冷却開口部18Aよりも走行風の流れの上流に位置している。一方、第2吸気口部17Bは、第2冷却開口部18Bよりも後方に位置している。言い換えると、第2吸気口部17Bは、第2冷却開口部18Bよりも走行風の流れの下流に位置している。第2吸気温度センサ55Bは、後部吸気温度センサの一例を提供する。
図4は、制御システムを示す図である。この明細書における制御装置(ECU)は、電子制御装置(Electronic Control Unit)とも呼ばれる場合がある。制御装置は、(a)if-then-else形式と呼ばれる複数の論理としてのアルゴリズム、または(b)機械学習によってチューニングされた学習済みモデル、例えばニューラルネットワークとしてのアルゴリズムによって提供される。
制御装置は、少なくとも1つのコンピュータを含む制御システムによって提供される。制御システムは、データ通信装置によってリンクされた複数のコンピュータを含む場合がある。コンピュータは、ハードウェアのプロセッサである少なくとも1つのハードウェアプロセッサを含む。ハードウェアプロセッサは、以下の(i)、(ii)、または(iii)により提供することができる。
(i)ハードウェアプロセッサは、少なくとも1つのメモリに格納されたプログラムを実行する少なくとも1つのプロセッサコアである場合がある。この場合、コンピュータは、少なくとも1つのメモリと、少なくとも1つのプロセッサコアとによって提供される。プロセッサコアは、CPU:Central Processing Unit、GPU:Graphics Processing Unit、RISC-CPUなどと呼ばれる。メモリは、記憶媒体とも呼ばれる。メモリは、プロセッサによって読み取り可能な「プログラムおよび/またはデータ」を非一時的に格納する非遷移的かつ実体的な記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリ、磁気ディスク、または光学ディスクなどによって提供される。プログラムは、それ単体で、またはプログラムが格納された記憶媒体として流通する場合がある。
(ii)ハードウェアプロセッサは、ハードウェア論理回路である場合がある。この場合、コンピュータは、プログラムされた多数の論理ユニット(ゲート回路)を含むデジタル回路によって提供される。デジタル回路は、ロジック回路アレイ、例えば、ASIC:Application-Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、PGA:Programmable Gate Array、CPLD:Complex Programmable Logic Deviceなどとも呼ばれる。デジタル回路は、プログラムおよび/またはデータを格納したメモリを備える場合がある。コンピュータは、アナログ回路によって提供される場合がある。コンピュータは、デジタル回路とアナログ回路との組み合わせによって提供される場合がある。
(iii)ハードウェアプロセッサは、上記(i)と上記(ii)との組み合わせである場合がある。(i)と(ii)とは、異なるチップの上、または共通のチップの上に配置される。これらの場合、(ii)の部分は、アクセラレータとも呼ばれる。
制御装置と信号源と制御対象物とは、多様な要素を提供する。それらの要素の少なくとも一部は、ブロック、モジュール、またはセクションと呼ぶことができる。さらに、制御システムに含まれる要素は、意図的な場合にのみ、機能的な手段と呼ばれる。
この開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つまたは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。代替的に、この開示に記載の制御部およびその手法は、1つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。代替的に、この開示に記載の制御部およびその手法は、1つまたは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと1つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
図4において、制御部90には、各圧力センサ22pA、22pB、28pA、28pB、33pA、33pB、36p、36pBが接続されている。制御部90は、第1充填側圧力センサ22pAや第2充填側圧力センサ22pBで計測した充填側圧力を取得する。制御部90は、第1高圧センサ28pAや第2高圧センサ28pBで計測した高圧の供給側圧力を取得する。制御部90は、第1中圧センサ33pAや第2中圧センサ33pBで計測した中圧の供給側圧力を取得する。制御部90は、第1低圧センサ36pAや第2低圧センサ36pBで計測した低圧の供給側圧力を取得する。
制御部90には、各温度センサ55A、55B、62tA、62tB、65tA、65tB、エアフロメータ51sA、51sBが接続されている。制御部90は、第1吸気温度センサ55Aや第2吸気温度センサ55Bで計測した吸気温度を取得する。制御部90は、第1高温温度センサ62tAで計測した第1燃料電池11Aを流出した直後の冷却水温度を取得する。制御部90は、第2高温温度センサ62tBで計測した第2燃料電池11Bを流出した直後の冷却水温度を取得する。制御部90は、第1低温温度センサ65tAで計測した第1ラジエータ64Aを流出した直後の冷却水温度を取得する。制御部90は、第2低温温度センサ65tBで計測した第2ラジエータ64Bを流出した直後の冷却水温度を取得する。制御部90は、第1エアフロメータ51sAや第2エアフロメータ51sBで計測した吸気流量を取得する。
制御部90には、各冷却水ポンプ61A、61B、各バイパス弁63A、63B、各送風機66A、66Bが接続されている。制御部90は、第1冷却水ポンプ61Aを制御して第1冷却流路部69Aを流れる冷却水の量を制御する。制御部90は、第2冷却水ポンプ61Bを制御して第2冷却流路部69Bを流れる冷却水の量を制御する。制御部90は、第1バイパス弁63Aの開度を制御して第1バイパス流路部69iAを流れる冷却水の量を制御する。制御部90は、第2バイパス弁63Bの開度を制御して第2バイパス流路部69iBを流れる冷却水の量を制御する。制御部90は、第1送風機66Aを制御して第1ラジエータ64Aの表面を流れる空気の量を制御する。制御部90は、第2送風機66Bを制御して第2ラジエータ64Bの表面を流れる空気の量を制御する。
制御部90には、外気温度センサ81、日射量センサ82、車速センサ83が接続されている。外気温度センサ81は、車両2の外部の温度である外気温度を測定するためのセンサである。制御部90は、外気温度センサ81で計測した外気温を取得する。日射量センサ82は、日射量を測定するためのセンサである。制御部90は、日射量センサ82で計測した日射量を取得する。車速センサ83は、車両2の速度を計測するためのセンサである。制御部90は、車速センサ83で計測した車両2の車速を取得する。
制御部90には、各燃料電池11A、11B、各タンク開閉弁26A、26B、各インジェクタ35A、35B、各水素ポンプ41A、41Bが接続されている。制御部90は、第1燃料電池11Aや第2燃料電池11Bを制御して発電量や発熱量を制御する。制御部90は、第1タンク開閉弁26Aの開度を制御して第1燃料電池11Aに供給する水素の量を制御する。制御部90は、第2タンク開閉弁26Bの開度を制御して第2燃料電池11Bに供給する水素の量を制御する。制御部90は、第1インジェクタ35Aを制御して第1燃料電池11Aに供給する水素の量を制御する。制御部90は、第2インジェクタ35Bを制御して第2燃料電池11Bに供給する水素の量を制御する。制御部90は、第1水素ポンプ41Aを制御して第1水素循環流路部49Aを循環する水素の量を制御する。制御部90は、第2水素ポンプ41Bを制御して第2水素循環流路部49Bを循環する水素の量を制御する。
制御部90には、各エアコンプレッサ52A、52B、各分流バルブ53A、53B、各調圧バルブ54A、54Bが接続されている。制御部90は、第1エアコンプレッサ52Aを制御して第1燃料電池11Aに供給する空気の量を制御する。制御部90は、第2エアコンプレッサ52Bを制御して第2燃料電池11Bに供給する空気の量を制御する。制御部90は、第1分流バルブ53Aを制御して第1燃料電池11Aに供給する空気の量を制御する。制御部90は、第2分流バルブ53Bを制御して第2燃料電池11Bに供給する空気の量を制御する。制御部90は、第1調圧バルブ54Aを制御して第1燃料電池11Aに供給する空気の量を制御する。制御部90は、第2調圧バルブ54Bを制御して第2燃料電池11Bに供給する空気の量を制御する。
燃料電池システム1の換気運転に関する制御の一例を以下に説明する。図5において、燃料電池システム1が駆動を開始すると、ステップS101で供給空気温度を設定する。供給空気温度とは、燃料電池システム1における化学反応に使用する空気である吸気温度のことである。供給空気温度には、第1吸気温度センサ55Aで計測した吸気温度と、第2吸気温度センサ55Bで計測した吸気温度とのうち、より温度の高い吸気温度が設定される。供給空気温度を設定した後、ステップS102に進む。
設定する供給空気温度は、第1吸気温度センサ55Aで計測した吸気温度と、第2吸気温度センサ55Bで計測した吸気温度とのうち、より温度の高い吸気温度に限られない。例えば、第1燃料電池11Aの発電量と第2燃料電池11Bの発電量のうち、発電量の多い方の吸気温度を供給空気温度に設定してもよい。これによると、発電量が多く吸気温度が上昇しやすい方の吸気温度に基づいて換気運転の要否を判定することができる。
ステップS102では、供給空気温度が換気開始温度以上であるか否かを判定する。ここで、換気開始温度は、外気温度に所定温度を加えた温度である。ただし、換気開始温度は、外気温度に所定温度を加えた温度に限られない。例えば、換気開始温度を55℃に設定するなど外気温度によらない一定の温度としてもよい。あるいは、換気開始温度をユーザが任意の値に設定してもよい。供給空気温度が換気開始温度以上であれば、換気運転を実行する必要があると判断してステップS111に進む。一方、供給空気温度が換気開始温度未満であれば、換気運転を実行する必要がないと判断してステップS141に進む。
ステップS111では、換気運転を実行する。より詳細には、第1送風機66Aと第2送風機66Bとを駆動して第1冷却開口部18Aや第2冷却開口部18Bに強制的に風を流す。第1送風機66Aと第2送風機66Bとは、第1送風機66Aや第2送風機66Bの上限回転数で駆動する。ただし、換気運転は、第1冷却開口部18Aと第2冷却開口部18Bとに風が流れればよく、第1送風機66Aや第2送風機66Bを上限回転数で駆動する場合に限られない。例えば、第2送風機66Bを上限回転数で駆動し、第1送風機66Aを駆動しなくてもよい。この場合、前方開口部16と第1冷却開口部18Aと後方開口部19とから収納ケース15の内部に風を取り込み、第2冷却開口部18Bから収納ケース15の外部に風を吐き出すことができる。
換気運転において、第1送風機66Aと第2送風機66Bとを常に上限回転数で回転させなくてもよい。例えば、外気温度が所定温度以上の場合に、第1送風機66Aと第2送風機66Bとを上限回転数で回転させ、外気温度が所定温度未満の場合に、第1送風機66Aと第2送風機66Bとを上限回転数よりも低い回転数で回転させてもよい。言い換えると、外気温度に基づいて第1送風機66Aと第2送風機66Bとの換気能力を変更してもよい。あるいは、外気温度センサ81で取得した外気温度に代えて、日射量センサ82で取得した日射量センサ82が所定日射量以上である場合と、所定日射量未満である場合とで第1送風機66Aと第2送風機66Bとの上限回転数を変更するなどしてもよい。この場合、日射量が所定日射量以上である場合には、外気温度が所定外気温度以上であるとみなしている。
収納ケース15の内部に多くの水素が溜まらないように水素を拡散させる水素拡散送風機を備えている場合には、換気運転において水素拡散送風機を駆動してもよい。これにより、収納ケース15の内部にこもった温度の高い空気を収納ケース15の外部に吐き出すことができる。各連通口部16、18A、18B、19に開閉自在なシャッタが設けられている場合には、換気運転において、全てのシャッタを開くことが好ましい。これにより、収納ケース15の内部と外部と連通する各連通口部16、18A、18B、19を通過する風を多く確保しやすい。換気運転を実行した後、換気運転を継続しながらステップS112に進む。
ステップS112では、供給空気温度を再設定する。換気運転を実行したことで、第1吸気温度センサ55Aと第2吸気温度センサ55Bとで計測する吸気温度が外気温度と同等の温度まで低下していることが期待される。このため、第1吸気温度センサ55Aと第2吸気温度センサ55Bとを用いて最新の吸気温度を取得して、供給空気温度を再設定する。供給空気温度を再設定した後、ステップS113に進む。
ステップS113では、供給空気温度が換気停止温度未満であるか否かを判定する。ここで、換気停止温度は、外気温度に所定温度を加えた温度であって、換気開始温度以下に設定された温度である。ただし、換気停止温度は、外気温度に所定温度を加えた温度に限られない。例えば、換気停止温度を50℃に設定するなど外気温度によらず常に一定の温度としてもよい。あるいは、換気停止温度をユーザが任意の値に設定してもよい。供給空気温度が換気停止温度未満であれば、これ以上換気運転を継続する必要がないと判断して、ステップS141に進む。一方、供給空気温度が換気停止温度以上であれば、ステップS111に戻って換気運転を継続する。
ステップS141では、換気運転を停止する。より詳細には、第1送風機66Aと第2送風機66Bとを停止して第1冷却開口部18Aや第2冷却開口部18Bに強制的には風を流さない状態とする。言い換えると、走行風などを利用して、第1送風機66Aや第2送風機66Bによらない自然な換気を妨げない状態である。ただし、他の目的で第1送風機66Aや第2送風機66Bを駆動する必要がある場合には、第1送風機66Aや第2送風機66Bの駆動を継続する。例えば、第1ラジエータ64Aを流れる冷却水を冷却するために第1送風機66Aを駆動する必要がある場合には、第1送風機66Aを駆動した状態を維持する。換気運転を停止した後、ステップS151に進む。
ステップS151では、システム駆動要求があるか否かを判定する。システム駆動要求とは、燃料電池システム1を駆動する必要がある場合に出力される信号である。燃料電池システム1で化学反応を引き起こして電気や熱を発生させる必要がある場合には、システム駆動要求がある状態となる。例えば、車両2のキースイッチがオフである場合には、システム駆動要求がない状態となり得る。システム駆動要求がオフである場合には、燃料電池システム1の駆動を終了する。一方、システム駆動要求がオンである場合には、再び換気運転が必要になる場合があると判断して、ステップS101に戻って一連の制御を繰り返す。
上述した実施形態によると、燃料電池システム1は、供給空気温度が換気開始温度以上である場合に、第1吸気口部17Aおよび第2吸気口部17Bから吸い込む空気温度を低下させるように換気運転を実行する制御部90を備えている。このため、第1燃料電池11Aや第2燃料電池11Bからの排熱によって収納ケース15内部の温度が上昇している場合であっても、収納ケース15内部を換気することで、収納ケース15内部の温度を外気温度程度の温度に低下させることができる。したがって、換気されずに収納ケース15内部に溜まった温度の高い空気が第1吸気口部17Aや第2吸気口部17Bから吸い込まれることを抑制できる。よって、第1燃料電池11Aや第2燃料電池11Bの電解質膜が外気温度よりも温度の高い空気によって乾いてしまい、発電効率が低下してしまうことを抑制しやすい。以上により、発電効率の低下を抑制しやすい燃料電池システム1を提供できる。
制御部90は、第1吸気口部17Aおよび第2吸気口部17Bから吸い込む空気温度を低下させるように換気運転を実行している。言い換えると、第1吸気口部17Aおよび第2吸気口部17Bの両方に作用するように換気運転を行っている。このため、第1サブシステム10Aの換気運転と第2サブシステム10Bの換気運転とを別々に行う場合に比べて、短い時間で換気運転を完了させやすい。
制御部90は、第1吸気温度センサ55Aで計測した吸気温度と第2吸気温度センサ55Bで計測した吸気温度のうち、より温度の高い吸気温度を供給空気温度に設定している。このため、より温度の高い吸気温度に基づいて換気運転の実行を制御できる。したがって、第1燃料電池11Aと第2燃料電池11Bとのどちらか一方でも換気運転をして発電効率の悪化を防ぐ必要がある場合に、適切に換気運転を実行できる。
制御部90は、換気運転において、第1送風機66Aと第2送風機66Bとを換気装置として駆動している。言い換えると、換気運転を行うための専用部品ではなく、冷却水の冷却に用いる部品である第1送風機66Aと第2送風機66Bとを用いて換気運転を実行している。このため、換気運転を行うための専用部品を省略、あるいは小型化しやすい。したがって、燃料電池システム1を小型かつ軽量に設計しやすい。
制御部90は、換気運転において、第1冷却開口部18Aを通過して収納ケース15の外部から内部に向かって空気を吸い込むように第1送風機66Aを制御している。さらに、制御部90は、換気運転において、第2冷却開口部18Bを通過して収納ケース15の内部から外部に向かって空気を吐き出すように第2送風機66Bを制御している。このため、収納ケース15において、第1冷却開口部18Aを風の入口とし、第2冷却開口部18Bを風の出口とするように風を流すことができる。したがって、収納ケース15内部の全体に風を流しやすい。ここで、風の入口と出口とを逆にしてもよい。あるいは、換気運転において、風の入口と出口が交互に変わるように正回転と逆回転とを変えるように制御してもよい。
第1送風機66Aと対向する位置に第1燃料電池11Aが設けられ、第2送風機66Bと対向する位置に第2燃料電池11Bが設けられている。このため、第1送風機66Aによって発生した風が発熱部品である第1燃料電池11Aを流れやすい。また、第2送風機66Bによって発生した風が発熱部品である第2燃料電池11Bを流れやすい。したがって、発熱部品である第1燃料電池11Aや第2燃料電池11Bの周囲の空間を効果的に換気して、収納ケース15内部に熱がこもった状態を解消しやすい。
制御部90は、換気運転を行う要求がない場合であって、第2ラジエータ64Bを冷却する場合には、第2冷却開口部18Bを通過して収納ケース15の外部から内部に向かって空気を吸い込むように第2送風機66Bを制御する。このため、第2ラジエータ64Bを冷却する場合に、収納ケース15内部の空気を第2ラジエータ64Bの表面に流すのではなく、収納ケース15外部の空気を第2ラジエータ64Bの表面に流すことができる。したがって、第2ラジエータ64Bを素早く冷却しやすい。
第1送風機66Aと第2送風機66Bとは、正回転と逆回転との2つの回転の向きを切り替え可能である。このため、第1送風機66Aと第2送風機66Bとを換気運転の目的で駆動する場合と、第1ラジエータ64Aや第2ラジエータ64Bを冷却する目的で駆動する場合とで、回転方向を簡単に切り替えて使い分けることができる。
制御部90は、換気運転において、外気温度が所定温度以上である場合に、外気温度が所定温度未満である場合に比べて、第1送風機66Aと第2送風機66Bとの回転数を高くしている。言い換えると、制御部90は、換気運転において、外気温度が所定温度以上である場合に、外気温度が所定温度未満である場合に比べて、第1送風機66Aと第2送風機66Bとの出力を大きくしている。このため、外気温度が高く収納ケース15内部の温度が高くなりやすい場合に、第1送風機66Aと第2送風機66Bとの換気性能を高めることができる。したがって、収納ケース15内部の温度が外気温度に比べて高くなり過ぎることを抑制して、収納ケース15内部の熱が吸気温度に与える影響を低減しやすい。
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、車速や燃料電池11A、11Bのインピーダンスに基づいて、換気運転の制御に変更を加えている。
図6において、燃料電池システム1が駆動を開始すると、ステップS201で供給空気温度を設定する。供給空気温度には、第1吸気温度センサ55Aで計測した吸気温度ではなく、第2吸気温度センサ55Bで計測した吸気温度を設定する。
供給空気温度に第2吸気温度センサ55Bで計測した吸気温度を設定する理由について以下に説明する。図3において、第1吸気口部17Aと第1冷却開口部18Aとは、互いに隣り合って設けられている。さらに、第1吸気口部17Aは、第1冷却開口部18Aよりも車両2の進行方向である前方に位置している。言い換えると、車両2の走行風の流れにおいて、第1吸気口部17Aは、第1冷却開口部18Aよりも上流側に位置している。このため、車両2が走行している場合には、第1冷却開口部18Aから吐き出された外気温よりも温度の高い空気を第1吸気口部17Aが吸い込みにくい。したがって、外気温度と同程度の空気を第1燃料電池11Aに供給しやすい。言い換えると、第1吸気温度センサ55Aで計測する吸気温度が、外気温度よりも高くなりにくい。
一方、第2吸気口部17Bと第2冷却開口部18Bとは、互いに隣り合って設けられている。さらに、第2吸気口部17Bは、第2冷却開口部18Bよりも車両2の進行方向とは反対の向きである後方に位置している。言い換えると、車両2の走行風の流れにおいて、第2吸気口部17Bは、第2冷却開口部18Bよりも下流側に位置している。このため、車両2が走行している場合には、第2冷却開口部18Bから吐き出された外気温よりも温度の高い空気を第2吸気口部17Bが吸い込みやすい。したがって、外気温度よりも温度の高い空気を第2燃料電池11Bに供給しやすい。言い換えると、第2吸気温度センサ55Bで計測する吸気温度が、第1吸気温度センサ55Aで計測する吸気温度よりも高くなりやすい。
まとめると、供給空気温度に第2吸気温度センサ55Bで計測した吸気温度を設定することで、第1吸気温度センサ55Aよりも高い温度が計測されやすい第2吸気温度センサ55Bで計測した吸気温度に基づき、換気運転が必要か否かを判断できる。供給空気温度として第2吸気温度センサ55Bで計測した吸気温度を設定した後、ステップS102に進む。
図6のステップS102では、供給空気温度が換気開始温度以上であるか否かを判定する。供給空気温度が換気開始温度以上であれば、ステップS203に進む。一方、供給空気温度が換気開始温度未満であれば、換気運転を実行する必要がないと判断してステップS141に進む。
ステップS203では、車速センサ83を用いて計測した車速を取得する。その後、ステップS204に進む。ステップS204では、車速が換気開始速度未満であるか否かを判定する。車速が換気開始速度未満である場合には、換気運転を実行する必要があると判断して、ステップS111に進む。一方、車速が換気開始速度以上であれば、第1送風機66Aや第2送風機66Bを駆動せずとも、収納ケース15の内部に走行風を取り込むことで換気が可能であると判断できる。よって、換気運転を実行する必要がないと判断してステップS141に進む。
ステップS111では、換気運転を実行する。換気運転において、第1送風機66Aの回転数と第2送風機66Bの回転数とを車速と連動させてもよい。例えば、車速が低くなるほど第1送風機66Aの回転数と第2送風機66Bの回転数とを低くするように制御する。これによると、車速が高く第1送風機66Aや第2送風機66Bで発生した駆動音や振動が乗員に知覚されにくい状況では、第1送風機66Aや第2送風機66Bを高速回転させて、素早く換気を完了させることができる。一方、車速が低く第1送風機66Aや第2送風機66Bで発生した駆動音や振動が乗員に知覚されやすい状況では、第1送風機66Aや第2送風機66Bを低速回転させて、騒音や振動の発生を低減する。このため、第1送風機66Aや第2送風機66Bの駆動音や振動によって車室内の快適性が悪化することを抑制できる。換気運転を実行した後、換気運転を継続しながらステップS112に進む。ステップS112では、供給空気温度を再設定する。供給空気温度を再設定した後、ステップS113に進む。
ステップS113では、供給空気温度が換気停止温度未満であるか否かを判定する。供給空気温度が換気停止温度未満であれば、ステップS221に進む。一方、供給空気温度が換気停止温度以上であれば、ステップS111に戻って供給空気温度が換気停止温度未満になるまで換気運転を継続する。
ステップS221では、第1燃料電池11Aのインピーダンスと第2燃料電池11Bのインピーダンスとを取得する。ここで、インピーダンスとは、発電時に微小な交流を印加することで、印加した電流や電圧の変化から計測される交流抵抗のことである。このインピーダンスが大きな値であるほど、第1燃料電池11Aや第2燃料電池11Bが乾いた状態であり、発電効率が低下していることとなる。インピーダンスの取得後、ステップS222に進む。
ステップS222では、インピーダンスが換気停止インピーダンス未満であるか否かを判定する。第1燃料電池11Aのインピーダンスと第2燃料電池11Bのインピーダンスとの両方が、換気停止インピーダンス未満である場合には、第1燃料電池11Aと第2燃料電池11Bとの両方が適切に発電を行える状態であると判断できる。このため、ステップS141に進む。一方、第1燃料電池11Aのインピーダンスと第2燃料電池11Bのインピーダンスとのどちらか一方でも換気停止インピーダンス以上である場合には、第1燃料電池11Aと第2燃料電池11Bとのどちらかは、発電効率が低下した状態であると判断できる。このため、ステップS111に戻って、第1燃料電池11Aのインピーダンスと第2燃料電池11Bのインピーダンスとの両方が換気停止インピーダンス未満になるまで換気運転を継続する。
ステップS141では、換気運転を停止する。その後、ステップS151に進んで、システム駆動要求があるか否かを判定する。システム駆動要求がオフの場合には、燃料電池システム1の駆動を終了する。一方、システム駆動要求がオンの場合には、再び換気運転が必要になる場合があると判断して、ステップS201に戻って一連の制御を繰り返す。
上述した実施形態によると、制御部90は、後部吸気温度センサである第2吸気温度センサ55Bで計測した吸気温度に基づいて供給空気温度を設定している。ここで、第2吸気口部17Bは、車両2の走行中に前方から後方に向かって流れる外気の流れである走行風の影響により、第2冷却開口部18Bから吐き出された外気温度よりも温度の高い空気を吸い込みやすい。このため、第1サブシステム10Aと第2サブシステム10Bとのうち、吸気温度の高くなりやすい方のシステムにおける吸気温度を基準に換気運転の要否を判定できる。したがって、第1吸気温度センサ55Aで計測した吸気温度と第2吸気温度センサ55Bで計測した吸気温度との比較をする必要がなく、制御フローを簡略化しやすい。また、第2吸気温度センサ55Bよりも吸気温度が低くなりやすい第1吸気温度センサ55Aを省略することができる。このため、燃料電池システム1を小型化しやすい。
車速センサ83で取得した車速が換気開始速度未満、かつ、供給空気温度が換気開始温度以上である場合に換気運転を実行する。このため、車速が換気開始速度以上であって、走行風により収納ケース15内部が十分に換気されている場合に、第1送風機66Aや第2送風機66Bを換気運転の目的で駆動することがない。したがって、第1送風機66Aや第2送風機66Bで消費する電力を低減しやすい。ただし、車速が換気開始速度以上である場合には、車速が換気開始速度未満である場合に比べて第1燃料電池11Aや第2燃料電池11Bでの発電量が多くなりやすい。このため、第1ラジエータ64Aや第2ラジエータ64Bを冷却する目的で第1送風機66Aや第2送風機66Bが駆動している可能性が高い。言い換えると、換気運転以外の目的で第1送風機66Aや第2送風機66Bが駆動していることで、結果として収納ケース15内の換気が行われている状況となりやすい。
制御部90は、換気運転において、供給空気温度が換気停止温度未満、かつ、第1燃料電池11Aのインピーダンスと第2燃料電池11Bのインピーダンスとがともに換気停止インピーダンス未満となるまで換気運転を継続する。このため、換気運転を継続する必要があるか否かを第1燃料電池11Aと第2燃料電池11Bとの乾き具合から判定することができる。したがって、第1燃料電池11Aと第2燃料電池11Bとの発電効率に合わせて換気運転の実行を制御できる。
第3実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、換気運転において高出力モードと低出力モードとを使い分けている。
図7において、燃料電池システム1が駆動を開始すると、ステップS101で供給空気温度を設定する。その後、ステップS102に進み、供給空気温度が換気開始温度以上であるか否かを判定する。供給空気温度が換気開始温度以上であれば、ステップS311に進む。一方、供給空気温度が換気開始温度未満であれば、換気運転を実行する必要がないと判断してステップS341に進む。
ステップS311では、高出力モードで換気運転を実行する。高出力モードにおいては、第1送風機66Aと第2送風機66Bとの回転数を後述する低出力モードにおける回転数以上に制御する。通常の使用態様において、第1送風機66Aと第2送風機66Bとは、回転に伴って発生する振動や騒音が車室内の快適性を大きく損なうことがないように回転数の上限が設定されている。しかしながら、高出力モードにおいては、回転数の上限を仕様上限回転数に設定する。ここで、仕様上限回転数とは、第1送風機66Aや第2送風機66Bの仕様によって決定される回転数である。仕様上限回転数で第1送風機66Aや第2送風機66Bを駆動した場合、安定して回転駆動するが、振動や騒音が乗員に影響を与える可能性がある。このため、高出力モードで換気運転を実行中であることを乗員に対して報知することが好ましい。
高出力モードでの換気運転は、第1送風機66Aと第2送風機66Bとの回転数を仕様上限回転数に設定することに限られない。高出力モードは、少なくとも後述する低出力モードよりも換気能力の高い運転モードであればよい。高出力モードで換気運転を実行した後、換気運転を継続しながらステップS112に進む。ステップS112では、供給空気温度を再設定する。供給空気温度を再設定した後、ステップS113に進む。
ステップS113では、供給空気温度が換気停止温度未満であるか否かを判定する。供給空気温度が換気停止温度未満であれば、ステップS331に進む。一方、供給空気温度が換気停止温度以上であれば、ステップS311に戻って供給空気温度が換気停止温度未満になるまで換気運転を継続する。
ステップS331では、高出力モードを累積で2回以上実行したか否かを判定する。高出力モードの累積実行回数は、燃料電池システム1が駆動を開始してから駆動を終了するまでの間における実行回数である。言い換えると、累積実行回数は、キースイッチをオンして燃料電池システム1が発電可能になった状態から、キースイッチをオフして燃料電池システム1が発電できない状態になるまでの間における累積の実行回数である。夏場など外気温が高い場合には、収納ケース15に熱がこもって供給空気温度が高くなりやすい。このため、一度換気運転を完了した後であっても再び換気運転が必要になり、高出力モードの累積実行回数が2回以上になりやすい。
高出力モードを累積で2回以上実行した場合には、再び換気運転が必要になる可能性が高いと判断し、ステップS340に進む。一方、高出力モードを累積で2回以上実行していない場合には、ステップS341に進む。
ステップS340では、低出力モードで換気運転を継続する。低出力モードにおいては、第1送風機66Aと第2送風機66Bとの回転数を高出力モードにおける回転数未満に制御する。例えば、低出力モードにおいては、第1送風機66Aと第2送風機66Bとを安定して回転可能な範囲で最も低い回転数である下限回転数で駆動する。これにより、高出力モードよりも換気能力は低いが、換気運転を継続することができる。高出力モードは、換気運転の中で許容される換気装置の出力の最大値と最小値のうち、最小値よりも最大値に近い出力で換気を行う運転モードである。一方、低出力モードは、換気運転の中で許容される換気装置の出力の最大値と最小値のうち、最大値よりも最小値に近い出力で換気を行う運転モードである。
低出力モードでの換気運転は、第1送風機66Aと第2送風機66Bとの回転数を下限回転数に設定することに限られない。例えば、低出力モードにおいて、第1送風機66Aと第2送風機66Bとのうち、どちらか一方のみを駆動し、他方を停止させる単独運転を実行してもよい。あるいは、高出力モードにおいては、第1送風機66Aと第2送風機66Bとを連続運転し、低出力モードでは、第1送風機66Aと第2送風機66Bとを間欠運転を実行することで、駆動時間を短くしてもよい。単独運転や間欠運転においては、車室内の快適性が大きく損なわれることのない範囲の回転数で第1送風機66Aと第2送風機66Bとを駆動することが好ましい。低出力モードで換気運転を継続した後、ステップS151に進む。
ステップS341では、換気運転を停止する。言い換えると、換気運転を継続せず第1送風機66Aと第2送風機66Bとの駆動を停止する。換気運転を停止した後、ステップS151に進む。
ステップS151では、システム駆動要求があるか否かを判定する。システム駆動要求がオフの場合には、換気運転が停止していればそのまま換気運転を停止し、低出力モードで換気運転が継続していれば換気運転を停止してから燃料電池システム1の駆動を終了する。一方、システム駆動要求がオンの場合には、再び換気運転が必要になる場合があると判断して、ステップS101に戻って一連の制御を繰り返す。
上述した実施形態によると、制御部90は、高出力モードを2回以上実行済みである場合には、換気完了後も換気運転を停止せず、低出力モードで換気運転を継続する。言い換えると、制御部90は、換気運転の完了後に再び換気運転を実行した場合であって、供給空気温度が換気停止温度未満となった場合に、低出力モードで換気運転を継続する。このため、高出力モードでの換気運転の開始と停止が頻繁にくり返されてしまうことを抑制できる。例えば、外気温度が高い場合や第1燃料電池11Aと第2燃料電池11Bとの発電量が多い場合などには、換気運転が完了した後であっても、すぐに収納ケース15内部の温度が高くなりやすい。言い換えると、供給空気温度が換気停止温度を下回ってから換気開始温度を上回るまでに要する時間が短くなりやすい。したがって、低出力モードでの換気運転を継続することで、高出力モードで換気運転を行う時間を短くしやすい。よって、換気運転において換気装置である第1送風機66Aなどの駆動音や振動などの変動を小さくして、車室内の快適性が大きく損なわれることを抑制しやすい。
第4実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、第1吸気口部417Aと第2吸気口部417Bとが車両2の上下方向に並んで形成されている。
図8において、車両2の運転席の下方には、収納ケース415が配置されている。収納ケース415には、第1吸気口部417Aと第2吸気口部417Bと第1冷却開口部418Aと第2冷却開口部418Bとが形成されている。第1冷却開口部418Aと第2冷却開口部418Bとには、各開口部を通過する風の流れを整えるためのルーバーが形成されている。各開口部は、グリルとも呼ばれ、各開口部に設けられているルーバーはグリルシャッタとも呼ばれる。第1冷却開口部418Aは、連通口部の一例を提供する。第2冷却開口部418Bは、連通口部の一例を提供する。
第1吸気口部417Aと第1冷却開口部418Aとは、互いに前後方向に隣り合って設けられている。第1吸気口部417Aは、第1冷却開口部418Aよりも前方に位置している。第2吸気口部417Bと第2冷却開口部418Bとは、互いに前後方向に隣り合って設けられている。第2吸気口部417Bは、第2冷却開口部418Bよりも前方に位置している。第2吸気口部417Bは、第1吸気口部417Aよりも上方に位置している。第2冷却開口部418Bは、第1冷却開口部418Aよりも上方に位置している。
第1冷却開口部418Aと対向する位置には第1ラジエータ64Aが設けられている。第1冷却開口部418Aの周囲の温度は、第1ラジエータ64Aと熱交換して加熱された空気が溜まりやすく、外気温度よりも温度が高くなりやすい。同様に、第2冷却開口部418Bと対向する位置には第2ラジエータ64Bが設けられている。第2冷却開口部418Bの周囲の温度は、第2ラジエータ64Bと熱交換して加熱された空気が溜まりやすく、外気温度よりも温度が高くなりやすい。
収納ケース415の内部には、第2吸気口部417Bから吸い込まれる空気の温度を計測する上部吸気温度センサ455Bが収納されている。上部吸気温度センサ455Bは、第1吸気口部417Aと第2吸気口部417Bとのうち、より上方に設けられている吸気口部から吸い込まれる空気の温度を計測するセンサである。換気運転において、制御部90は、上部吸気温度センサ455Bの吸気温度を供給空気温度に設定する。
ここで、第1吸気口部417Aは、第2冷却開口部418Bの斜め下方に位置している。一方、第2吸気口部417Bは、第1冷却開口部418Aの斜め上方に位置している。このため、第1吸気口部417Aは、第2冷却開口部418Bから外気温度よりも温度の高い空気が吐き出された場合であっても、この温度の高い空気を吸い込みにくい。一方、第2吸気口部417Bは、第1冷却開口部418Aから外気温度よりも温度の高い空気が吐き出された場合に、この温度の高い空気を吸い込みやすい。まとめると、第1冷却開口部418Aと第2冷却開口部418Bとから外気温度よりも温度の高い空気が吐き出された場合に、第1吸気口部417Aよりも第2吸気口部417Bの方が温度の高い空気を吸い込みやすい。言い換えると、第2吸気口部417Bから吸い込まれる空気の吸気温度は、第1吸気口部417Aから吸い込まれる空気の吸気温度よりも高くなりやすい。
上述した実施形態によると、制御部90は、上部吸気温度センサ455Bで計測した吸気温度を供給空気温度に設定する。このため、第1吸気口部417Aよりも高い温度の空気が吸い込まれやすい第2吸気口部417Bから吸い込まれる空気の温度に基づいて換気運転の要否を判定することができる。したがって、複数の吸気温度を計測して比較する必要がなく、制御フローを簡略化しやすい。また、上部吸気温度センサ455Bの1つの温度センサで吸気温度を計測しているため、吸気温度を計測する温度センサの数を最小にすることができる。よって、燃料電池システム1を小型化しやすい。
他の実施形態
第1空気流路部59Aにおいて、第1エアコンプレッサ52Aと第1燃料電池11Aとの間にインタークーラなどの空気冷却装置を備えてもよい。これによると、第1エアコンプレッサ52Aで圧縮されて温度の上昇した空気を冷却してから第1燃料電池11Aに流すことができる。このため、第1燃料電池11Aの温度上昇を抑制しやすい。したがって、第1燃料電池11Aの劣化を抑制して、発電効率が高い状態を維持しやすい。第2サブシステム10Bについても、第1サブシステム10Aと同様にインタークーラを備えてもよい。
第1バイパス流路部69iAに、イオン交換器を備えてもよい。これによると、第1燃料電池11Aを冷却するための冷却水の絶縁性を安定して確保することができる。したがって、燃料電池システム1の安全性を高めやすい。第2サブシステム10Bについても、第1サブシステム10Aと同様にイオン交換器を備えてもよい。
外気温度が所定温度未満である場合や、日射量が所定日射量未満である場合など、収納ケース15の内部に熱がこもりにくい状況であれば、図5のステップS101を実行する前に、ステップS141に進んで、換気運転を停止してもよい。この場合、供給空気温度に基づいて換気運転の要否を判定することなく、換気運転が不要であると判定できる。したがって、換気運転に関する制御フローを簡略化しやすい。
上述した実施形態では、第1燃料電池11Aと第2燃料電池11Bとして発電能力や体格などが略等しい電池を、異なる位置に設けた場合を例に説明を行ったが、第1燃料電池11Aと第2燃料電池11Bとに、互いに発電能力や体格などが異なる電池を用いてもよい。この場合、水素や空気の供給量や電池の冷却能力を第1燃料電池11Aや第2燃料電池11Bの発電能力に応じて、変更することが好ましい。
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。