JP7135706B2 - 二輪自動車用空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、二輪自動車に使用される空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、ウエット性能を損なうことなく耐摩耗性を改善することを可能にした二輪自動車用空気入りタイヤに関する。
二輪自動車用の空気入りタイヤは、キャンバースラストによる力により旋回するため、四輪自動車用の空気入りタイヤに比べてトレッド部の曲率半径が小さくなるように設計されている(例えば、特許文献1参照)。このような構造を有する二輪自動車用の空気入りタイヤにおいて、ウエット性能を確保するために、トレッド部に形成される溝の配置について種々の提案がなされている(例えば、特許文献2~4参照)。
ところで、一般的な二輪自動車用のリアタイヤは、フロントタイヤと比較して負荷荷重が大きくなる傾向があり、それ故、フロントタイヤと比較して摩耗寿命が短いという問題がある。このような問題の解決策の1つとして、耐摩耗性に優れるトレッドコンパウンドの使用が考えられるが、耐摩耗性に優れるトレッドコンパウンドを使用した場合、ウエット性能が低下するという欠点がある。そのため、トレッドコンパウンドに頼らずに耐摩耗性を改善することが求められている。
特開昭61-27707号公報 特開2016-141225号公報 特開2016-175598号公報 特開2018-39333号公報
本発明の目的は、ウエット性能を損なうことなく耐摩耗性を改善することを可能にした二輪自動車用空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の二輪自動車用空気入りタイヤは、トレッド部のセンター位置からショルダーエッジまでの領域を踏面に沿ってタイヤ幅方向に4等分し、前記トレッド部のセンター側から順に4つの領域a,b,c,dを規定したとき、前記領域aの溝面積比率Xaが8%~14%であり、前記領域bの溝面積比率Xbが26%~32%であり、前記領域cの溝面積比率Xcが27%~33%であり、前記領域dの溝面積比率Xdが5%~16%であり、かつXc>Xb>Xaの関係を満足すると共に、前記トレッド部における溝深さが前記トレッド部のセンター側よりもショルダー側で相対的に浅くなっていることを特徴とするものである。
二輪自動車用空気入りタイヤでは、トレッド部のセンター部が優先的に摩耗する傾向がある。そこで、本発明では、トレッド部のセンター側に位置する領域aの溝面積比率Xaを小さくすることにより、耐摩耗性を改善することができる。更に、トレッド部における溝深さをトレッド部のショルダー側よりもセンター側で相対的に深くすることにより、摩耗寿命を十分に確保することができる。その一方で、領域bの溝面積比率Xb及び領域cの溝面積比率Xcを大きくすることにより、ウエット性能を良好に維持することが可能になる。また、二輪自動車用空気入りタイヤでは、旋回時にキャンバースラストによりトレッド部のショルダー部に大きな力が掛かるが、領域dの溝面積比率Xdを小さくすると共に、トレッド部における溝深さをトレッド部のセンター側よりもショルダー側で相対的に浅くすることにより、トレッド部のショルダー部の剛性を十分に確保し、旋回時のキャンバースラストを十分に得ることができる。
本発明において、トレッド部にジグザグ形状に屈曲しながらタイヤ周方向に延びる4本以上の周方向溝が形成され、該周方向溝の溝幅が前記トレッド部のショルダー側よりもセンター側で相対的に狭くなっており、トレッド部の最もショルダー側に位置する周方向溝からセンター側に向かって延びる複数本の横溝が形成され、トレッド部の最もセンター側に位置する周方向溝のジグザグ形状の周期Aがトレッド部の展開幅TDWに対して0.2≦A/TDW≦0.4の関係を満足し、トレッド部の最もセンター側に位置する一対の周方向溝の相互間にタイヤ周方向に延在するセンター陸部が区画され、該センター陸部のタイヤ幅方向の最小幅Bがトレッド部の展開幅TDWに対して0.1≦B/TDW≦0.3の関係を満足することが好ましい。また、横溝は底上げされた第1横溝と底上げされていない第2横溝を含み、これら第1横溝と第2横溝がタイヤ周方向に沿って交互に配置されていることが好ましい。このようなトレッドパターンを採用することにより、ウエット性能を良好に維持しながら耐摩耗性を効果的に改善することができる。
特に、トレッド部の最もセンター側に位置する周方向溝の溝幅Wiとトレッド部の最もショルダー側に位置する周方向溝の溝幅Woは0.5×Wo≦Wi≦0.8×Woの関係を満足し、トレッド部の最もセンター側に位置する周方向溝の溝深さGiとトレッド部の最もショルダー側に位置する周方向溝の溝深さGoは0.6×Gi≦Go≦0.9×Giの関係を満足することが好ましい。センター側の周方向溝の溝幅Wiを狭くし、ショルダー側の周方向溝の溝幅Woを広くすることにより、ウエット性能を良好に維持しながら耐摩耗性を効果的に改善することができる。また、センター側の周方向溝の溝深さGiを深くし、ショルダー側の周方向溝の溝深さGoを浅くすることにより、摩耗寿命を十分に確保しつつ、トレッド部のショルダー部の剛性を十分に確保することができる。
トレッド部の最もセンター側に位置する周方向溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度αは10°≦α≦25°の範囲にあり、トレッド部の最もショルダー側に位置する周方向溝との連通位置における横溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度βは40°≦β≦70°の範囲にあることが好ましい。傾斜角度α,βを上記範囲に設定することにより、ウエット性能を低下させることなく耐摩耗性を改善することができる。
トレッド部に配置されるトレッドゴム層のJIS硬度は58~63であり、トレッドゴム層の0℃でのtanδは0.4~0.6であることが好ましい。このような物性を有するトレッドコンパウンドを使用することにより、ウエット性能を低下させることなく耐摩耗性を改善することができる。
トレッド部のショルダーエッジの高さSLHはタイヤ断面高さSHに対して0.55≦SLH/SH≦0.80の関係を満足し、トレッド部のセンター部の曲率半径Rはトレッド部の幅TRWに対して0.50≦R/TRW≦0.65の関係を満足することが好ましい。これにより、トレッド部のセンター側の部位又はショルダー側の部位に早期摩耗が生じるのを防止することができる。
本発明は、バイアス構造を有する二輪自動車用空気入りタイヤに適用することが好ましい。バイアス構造を有する二輪自動車用空気入りタイヤは、トレッド部のセンター領域の接地圧が高くなる傾向があるため、耐摩耗性について顕著な効果を発揮する。
本発明において、トレッド部の展開幅TDW、トレッド部のショルダーエッジの高さSLH、タイヤ断面高さSH、トレッド部のセンター部の曲率半径R、トレッド部の幅TRWを含む各種の寸法は、タイヤを正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で測定されるものである。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”である。
本発明の実施形態からなる二輪自動車用空気入りタイヤを示す子午線半断面図である。 図1の二輪自動車用空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図である。 図1の二輪自動車用空気入りタイヤのトレッド部に形成された周方向溝を示す断面図である。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる二輪自動車用空気入りタイヤ(以下、空気入りタイヤとも言う。)を示し、図2はそのトレッドパターンを示し、図3はそのトレッド部に形成された周方向溝を示すものである。
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
一対のビード部3,3間には2層のカーカス層4が装架されている。これらカーカス層4は、タイヤ径方向に対して傾斜しながら延在する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。つまり、この空気入りタイヤはバイアス構造を有している。カーカス層4において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば25°~40°の範囲に設定されている。カーカス層4の補強コードとしては、ナイロンやポリエステル等の有機繊維コードが好ましく使用される。カーカス層4は、各ビード部3に配置されたビードコア5に係止されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
図2に示すように、トレッド部1には、ジグザグ形状に屈曲しながらタイヤ周方向に延びる4本以上の周方向溝10が形成されている。周方向溝10の溝幅はトレッド部1のショルダー側よりもセンター側で相対的に狭くなっている。周方向溝10は、トレッド部1の最もセンター側に位置する周方向溝11と、トレッド部1の最もショルダー側に位置する周方向溝12を含んでいる。また、トレッド部1には、トレッド部1の最もショルダー側に位置する周方向溝12からセンター側に向かって延びる複数本の横溝20が形成されている。横溝20は、底上げされた横溝21(第1横溝)と、底上げされていない横溝22(第2横溝)を含み、これら横溝21,22がタイヤ周方向に沿って交互に配置されている。横溝22は一方の端部がショルダー側の周方向溝12に連通し他方の端部がセンター側の周方向溝11に連通しているのに対して、横溝21は一方の端部がショルダー側の周方向溝12に連通し他方の端部が横溝22の途中に連通している。横溝21,22はいずれも屈曲した構造を有し、トレッド部1のショルダー側からセンター側に向かってタイヤ幅方向に対してタイヤ回転方向T側へ傾斜している。
これにより、トレッド部1の最もセンター側に位置する一対の周方向溝11,11の相互間にはタイヤ周方向に連続的に延在するセンター陸部31が区画され、トレッド部1の最もセンター側に位置する周方向溝11とトレッド部1の最もショルダー側に位置する周方向溝12との間には複数の中間ブロック32が区画され、トレッド部1の最もショルダー側に位置する周方向溝12の外側にはタイヤ周方向に連続的に延在するショルダー陸部33が区画されている。なお、底上げされた横溝21は底上げされていない横溝22よりも溝深さが浅くなっているが、横溝21は底上げされずに横溝22と同じ溝深さであっても良い。また、横溝21は横溝22と同様に他方の端部がセンター側の周方向溝12に連通していても良い。
上記空気入りタイヤにおいて、トレッド部1のセンター位置CLからショルダーエッジEまでの領域を踏面に沿ってタイヤ幅方向に4等分し、トレッド部1のセンター側から順に4つの領域a,b,c,dを規定したとき、領域aの溝面積比率Xaが8%~14%となり、領域bの溝面積比率Xbが26%~32%となり、領域cの溝面積比率Xcが27%~33%となり、領域dの溝面積比率Xdが5%~16%となるように溝が配置されている。溝面積比率Xa~Xdの大小関係は、Xc>Xb>Xa、好ましくは、Xc>Xb>Xa>Xdとなっている。溝面積比率Xa~Xdは、領域a~dの各々の面積に対する溝面積の比率であるが、例えば、トレッド部1の最もセンター側に位置していてジグザグ形状を有する周方向溝11の1周期Aの範囲から算出することができる。溝面積比率Xa~Xdの要件に加えて、トレッド部1における溝深さがトレッド部1のセンター側よりもショルダー側で相対的に浅くなっている。溝深さは、段階的に変化していても良く、或いは、センター位置CLからショルダーエッジEに向かって徐々に変化していても良い。
上述した二輪自動車用空気入りタイヤでは、トレッド部1のセンター側に位置する領域aの溝面積比率Xaを小さくすることにより、耐摩耗性を改善することができる。更に、トレッド部1における溝深さをトレッド部1のショルダー側よりもセンター側で相対的に深くすることにより、摩耗寿命を十分に確保することができる。その一方で、領域bの溝面積比率Xb及び領域cの溝面積比率Xcを大きくすることにより、ウエット性能を良好に維持することが可能になる。また、二輪自動車用空気入りタイヤでは、旋回時にキャンバースラストによりトレッド部1のショルダー部に大きな力が掛かるが、領域dの溝面積比率Xdを小さくすると共に、トレッド部1における溝深さをトレッド部1のセンター側よりもショルダー側で相対的に浅くすることにより、トレッド部1のショルダー部の剛性を十分に確保し、旋回時のキャンバースラストを十分に得ることができる。
ここで、領域aの溝面積比率Xa、領域bの溝面積比率Xb及び領域cの溝面積比率Xcの各々が下限値よりも小さいとウエット性能が低下し、逆に上限値よりも大きいと耐摩耗性が低下する。また、領域dの溝面積比率Xdが小さ過ぎるとウエット性能が低下し、逆に大き過ぎるとトレッド部1のショルダー部の剛性が不足して旋回時のキャンバースラストを十分に得ることができなくなる。
上記空気入りタイヤにおいて、トレッド部1における溝配置は特に限定されるものではないが、上述のようにトレッド部1にジグザグ形状に屈曲しながらタイヤ周方向に延びる4本以上の周方向溝10が形成され、周方向溝10の溝幅がトレッド部1のショルダー側よりもセンター側で相対的に狭くなっており、トレッド部1の最もショルダー側に位置する周方向溝12からセンター側に向かって延びる複数本の横溝20が形成されると共に、トレッド部1の最もセンター側に位置する周方向溝11のジグザグ形状の周期Aがトレッド部1の展開幅TDWに対して0.2≦A/TDW≦0.4の関係を満足し、トレッド部1の最もセンター側に位置する一対の周方向溝11,11の相互間にタイヤ周方向に延在するセンター陸部31が区画され、該センター陸部31のタイヤ幅方向の最小幅Bがトレッド部1の展開幅TDWに対して0.1≦B/TDW≦0.3の関係を満足すると良い。トレッド部1の展開幅TDWは、トレッド部1の踏面に沿って測定されるトレッド部1の幅である。更に、横溝20は底上げされた横溝21と底上げされていない横溝22を含み、これら横溝21,22がタイヤ周方向に沿って交互に配置されていると良い。このようなトレッドパターンを採用することにより、ウエット性能を良好に維持しながら耐摩耗性を効果的に改善することができる。
ここで、トレッド部1の最もセンター側に位置する周方向溝11のジグザグ形状の周期Aについて、比A/TDWが0.2よりも小さいとタイヤ周方向への排水性が悪化することでウエット性能が低下し、逆に0.4よりも大きいとタイヤ幅方向への排水性が悪化することでウエット性能が低下する。また、センター陸部31のタイヤ幅方向の最小幅Bについて、比B/TDWが0.1よりも小さいと接地圧が高いセンター領域で耐摩耗性の改善効果が低下し、逆に0.3よりも大きいと接地領域での溝面積比率が低下し、排水性が低下する。
特に、図3に示すように、トレッド部1の最もセンター側に位置する周方向溝11の溝幅Wiとトレッド部1の最もショルダー側に位置する周方向溝12の溝幅Woは0.5×Wo≦Wi≦0.8×Woの関係を満足し、トレッド部1の最もセンター側に位置する周方向溝11の溝深さGiとトレッド部1の最もショルダー側に位置する周方向溝12の溝深さGoは0.6×Gi≦Go≦0.9×Giの関係を満足すると良い。このように摩耗が早いセンター領域に位置するセンター側の周方向溝11の溝幅Wiを狭くし、センター領域のゴムボリュームを多くすることにより、耐摩耗性を改善することができる。その一方で、ショルダー側の周方向溝12の溝幅Woを広くすることにより、ウエット性能を良好に維持することができる。また、摩耗が早いセンター領域に位置するセンター側の周方向溝11の溝深さGiを深くし、センター領域のゴムボリュームを多くすることにより、耐摩耗性を改善することができる。その一方で、ショルダー側の周方向溝12の溝深さGoを浅くすることにより、、トレッド部1のショルダー部の剛性を十分に確保することができる。
ここで、センター側の周方向溝11の溝幅Wiとショルダー側の周方向溝12の溝幅Woとの比Wi/Woが0.5よりも小さいとウエット性能が低下し、逆に0.8よりも大きいと耐摩耗性の改善効果が低下する。また、センター側の周方向溝11の溝深さGiとショルダー側の周方向溝12の溝深さGoとの比Go/Giが0.6よりも小さいと旋回時におけるウエット性能が低下し、逆に0.9よりも大きいと直進時におけるウエット性能が低下する。
上記空気入りタイヤにおいて、図2に示すように、トレッド部1の最もセンター側に位置する周方向溝11のタイヤ周方向に対する傾斜角度αは10°≦α≦25°の範囲にあり、トレッド部1の最もショルダー側に位置する周方向溝12との連通位置における横溝20のタイヤ周方向に対する傾斜角度βは40°≦β≦70°の範囲にあると良い。傾斜角度α,βを上記範囲に設定することにより、ウエット性能を低下させることなく耐摩耗性を改善することができる。
ここで、センター側の周方向溝11の傾斜角度αが10°より小さいとタイヤ幅方向への排水性が悪化することでウエット性能が低下し、逆に25°よりも大きいとタイヤ周方向への排水性が悪化することでウエット性能が低下する。また、ショルダー側の周方向溝12との連通位置における横溝20の傾斜角度βが40°よりも小さいとタイヤ幅方向への排水性が悪化することでウエット性能が低下し、逆に70°よりも大きいとタイヤ周方向への排水性が悪化することでウエット性能が低下する。
上記空気入りタイヤにおいて、トレッド部1に配置されるトレッドゴム層1AのJIS硬度は58~63であり、トレッドゴム層1Aの0℃でのtanδは0.4~0.6であると良い。このような物性を有するトレッドコンパウンドを使用することにより、耐摩耗性とウエット性能との両立が可能となる。JIS硬度は、JIS-K6253に準拠して、Aタイプのデュロメータを用いて温度23℃の条件にて測定されるデュロメータ硬さである。損失正接(tanδ)は、JIS-K6394に準拠して、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用い、周波数20Hz、初期歪み10%、動歪み±2%、温度0℃の条件にて測定されるものである。
ここで、トレッドゴム層1AのJIS硬度が58よりも低いとウエット性能は向上する傾向にあるが、耐摩耗性の改善効果が低下し、逆に63よりも高いと耐摩耗性に優れるが、tanδが低くなる傾向にあるためウエット性能が低下する。また、トレッドゴム層1Aの0℃でのtanδが0.4よりも小さいとウエット性能が低下し、逆に0.6よりも大きいと耐摩耗性の改善効果が低下する。
上記空気入りタイヤにおいて、トレッド部1のショルダーエッジEの高さSLHはタイヤ断面高さSHに対して0.55≦SLH/SH≦0.80の関係を満足し、トレッド部1のセンター部の曲率半径Rはトレッド部1の幅TRWに対して0.50≦R/TRW≦0.65の関係を満足すると良い。トレッド部1の幅TRWは、タイヤ軸方向と平行に測定されるトレッド部1の幅である。これにより、トレッド部1のセンター側の部位又はショルダー側の部位に早期摩耗が生じるのを防止することができる。
ここで、比SLH/SHが0.55よりも小さいとトレッド部1のセンター側の部位での接地圧が高くなって当該部位に早期摩耗が生じ易くなり、逆に0.80よりも大きいとトレッド部1のショルダー側の部位に早期摩耗が生じ易くなる。また、比R/TRWが0.50よりも小さいとトレッド部1のセンター側の部位での接地圧が高くなって当該部位に早期摩耗が生じ易くなり、逆に0.65よりも大きいとトレッド部1のショルダー側の部位に早期摩耗が生じ易くなる。
タイヤサイズが80/100-14である二輪自動車用空気入りタイヤにおいて、トレッド部のセンター位置からショルダーエッジまでの領域を踏面に沿ってタイヤ幅方向に4等分することで規定される4つの領域a~dの溝面積比率Xa~Xd、及び、トレッド部の溝深さがショルダー側で浅くなる構造の有無を表1及び表2のように種々異ならせた従来例1、比較例1~6及び実施例1~12のタイヤを作製した。
従来例1、比較例1~6及び実施例1~12において、トレッド部にはジグザグ形状に屈曲しながらタイヤ周方向に延びる4本の周方向溝が形成され、トレッド部の最もショルダー側に位置する周方向溝からセンター側に向かって延びる複数本の横溝が形成されている。そして、トレッド部の最もセンター側に位置する周方向溝のジグザグ形状の周期Aとトレッド部の展開幅TDWとの比A/TDW、トレッド部の最もセンター側に位置する一対の周方向溝の相互間に区画されたセンター陸部のタイヤ幅方向の最小幅Bとトレッド部の展開幅TDWとの比B/TDW、トレッド部の最もセンター側に位置する周方向溝の溝幅Wiとトレッド部の最もショルダー側に位置する周方向溝の溝幅Woとの比Wi/Wo、トレッド部の最もセンター側に位置する周方向溝の溝深さGiとトレッド部の最もショルダー側に位置する周方向溝の溝深さGoとの比Go/Gi、トレッド部の最もセンター側に位置する周方向溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度α、トレッド部の最もショルダー側に位置する周方向溝との連通位置における横溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度β、トレッドゴム層のJIS硬度及び0℃でのtanδ、トレッド部のショルダーエッジの高さSLHとタイヤ断面高さSHとの比SLH/SH、トレッド部のセンター部の曲率半径Rとトレッド部の幅TRWとの比R/TRW、及び、カーカス構造(ラジアル又はバイアス)は表1及び表2のように設定した。
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、耐摩耗性及びウエット性能を評価し、その結果を表1及び表2に併せて示した。
耐摩耗性:
各試験タイヤをリム組みして二輪自動車に装着し、空気圧280kPa、荷重148kg(規定荷重の80%)、速度80km/h、走行距離1万kmの条件で実車走行試験を行った後、トレッド部の摩耗量を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例1を100とする指数値にて示した。この指数値が大きいほど耐摩耗性が優れていることを意味する。
ウエット性能:
各試験タイヤをリム組みして二輪自動車に装着し、空気圧280kPa、荷重148kg(規定荷重の80%)の条件で、テストドライバーによるウエット路面での実車走行試験を行い、ウエット性能について官能評価を行った。評価結果は、従来例1を100とする指数値にて示した。この指数値が大きいほどウエット性能が優れていることを意味する。指数値が「97」以上であれば許容範囲内である。
Figure 0007135706000001
Figure 0007135706000002
表1及び表2から明らかなように、実施例1~12のタイヤは、いずれも、ウエット性能を損なうことなく耐摩耗性を改善することが可能であった。一方、比較例1~6は耐摩耗性について改善効果が認められるものの実施例1~12より劣っていた。
1 トレッド部
1A トレッドゴム層
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
10,11,12 周方向溝
20,21,22 横溝
31 センター陸部
32 中間ブロック
33 ショルダー陸部

Claims (8)

  1. トレッド部のセンター位置からショルダーエッジまでの領域を踏面に沿ってタイヤ幅方向に4等分し、前記トレッド部のセンター側から順に4つの領域a,b,c,dを規定したとき、前記領域aの溝面積比率Xaが8%~14%であり、前記領域bの溝面積比率Xbが26%~32%であり、前記領域cの溝面積比率Xcが27%~33%であり、前記領域dの溝面積比率Xdが5%~16%であり、かつXc>Xb>Xaの関係を満足すると共に、前記トレッド部における溝深さが前記トレッド部のセンター側よりもショルダー側で相対的に浅くなっていることを特徴とする二輪自動車用空気入りタイヤ。
  2. 前記トレッド部にジグザグ形状に屈曲しながらタイヤ周方向に延びる4本以上の周方向溝が形成され、該周方向溝の溝幅が前記トレッド部のショルダー側よりもセンター側で相対的に狭くなっており、前記トレッド部の最もショルダー側に位置する周方向溝からセンター側に向かって延びる複数本の横溝が形成され、前記トレッド部の最もセンター側に位置する周方向溝のジグザグ形状の周期Aが前記トレッド部の展開幅TDWに対して0.2≦A/TDW≦0.4の関係を満足し、前記トレッド部の最もセンター側に位置する一対の周方向溝の相互間にタイヤ周方向に延在するセンター陸部が区画され、該センター陸部のタイヤ幅方向の最小幅Bが前記トレッド部の展開幅TDWに対して0.1≦B/TDW≦0.3の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載の二輪自動車用空気入りタイヤ。
  3. 前記横溝は底上げされた第1横溝と底上げされていない第2横溝を含み、これら第1横溝と第2横溝がタイヤ周方向に沿って交互に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の二輪自動車用空気入りタイヤ。
  4. 前記トレッド部の最もセンター側に位置する周方向溝の溝幅Wiと前記トレッド部の最もショルダー側に位置する周方向溝の溝幅Woが0.5×Wo≦Wi≦0.8×Woの関係を満足し、前記トレッド部の最もセンター側に位置する周方向溝の溝深さGiと前記トレッド部の最もショルダー側に位置する周方向溝の溝深さGoが0.6×Gi≦Go≦0.9×Giの関係を満足することを特徴とする請求項2又は3に記載の二輪自動車用空気入りタイヤ。
  5. 前記トレッド部の最もセンター側に位置する周方向溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度αが10°≦α≦25°の範囲にあり、前記トレッド部の最もショルダー側に位置する周方向溝との連通位置における前記横溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度βが40°≦β≦70°の範囲にあることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の二輪自動車用空気入りタイヤ。
  6. 前記トレッド部に配置されるトレッドゴム層のJIS硬度が58~63であり、前記トレッドゴム層の0℃でのtanδが0.4~0.6であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の二輪自動車用空気入りタイヤ。
  7. 前記トレッド部のショルダーエッジの高さSLHがタイヤ断面高さSHに対して0.55≦SLH/SH≦0.80の関係を満足し、前記トレッド部のセンター部の曲率半径Rが前記トレッド部の幅TRWに対して0.50≦R/TRW≦0.65の関係を満足することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の二輪自動車用空気入りタイヤ。
  8. バイアス構造を有することを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の二輪自動車用空気入りタイヤ。
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