上記特許文献1及び2に開示された気化器のように、蛇行形状の伝熱管を有する気化器では、ベンド管の曲がりに合わせた間隔で多数の直管を配置し、この状態でベンド管が直管に溶接される。ベンド管として、例えばショートラジアスベンドのベンド管が用いられる場合には、直管同士の間隔も狭くなる。直管同士の間隔が狭い場合において、ベンド管を溶接する際に、隣の直管が邪魔になることがある。また、溶接部の検査作業においても、隣の直管が邪魔になる虞もある。
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベンドの溶接作業又は溶接部の検査作業において隣の直管が邪魔になることを抑制することにある。
前記の目的を達成するため、本発明に係る気化器は、熱源流体を収容するように構成されたシェルと、前記シェル内に配置されて液化ガスが導入されるように構成された伝熱管と、を備える。前記伝熱管は、複数の直管と複数のベンドとを有する蛇行形状を有する。前記伝熱管は、前記複数のベンドのうちの上下方向に並ぶベンドが、直管の延出方向に交互にずれた構成である。前記上下方向に並ぶベンドのうち出っ張った方のベンドである第1ベンドと直管との溶接部は、前記上下方向に並ぶベンドのうちの引っ込んだ方のベンドである第2ベンドと直管との溶接部よりも、前記直管の延出方向において出っ張った位置に配置されている。
本発明に係る気化器では、直管と第1ベンドとの溶接部が、第2ベンドと直管との溶接部よりも、直管の延出方向において出っ張った位置に配置されている。このため、第1ベンドと直管との溶接部に隣接する空間における第2ベンド側の幅が狭くなることを抑制できる。よって、直管に第1ベンドを溶接する作業又は溶接部の検査作業において、隣の直管が邪魔になることを抑制することができる。
前記気化器において、前記第1ベンドと前記直管との前記溶接部は、前記第2ベンドの内側曲面よりも、前記直管の延出方向において出っ張った位置に配置されていてもよい。
この態様では、前記溶接部に隣接する空間が狭くなることをより一層抑制できるため、直管に第1ベンドを溶接する作業又は溶接部の検査作業において、第2ベンドが溶接される直管が邪魔になることをより抑制することができる。しかも、溶接部が第2ベンドの内側曲面よりも出っ張ったところに位置しているので、第1ベンドの溶接部が第2ベンドの内側曲面よりも出っ張っていない場合に比べ、作業スペースをより確保することができる。
前記気化器において、前記第1ベンドと前記直管との前記溶接部は、前記直管の延出方向において、前記第2ベンドの内側曲面と前記第2ベンドの頂点との間に配置されていてもよい。
この態様では、溶接作業又は検査作業の作業スペースを確保しつつ、第2ベンドの位置に対する第1ベンドの位置ずれが過大になることを抑制することができる。
前記気化器において、前記第1ベンドと前記直管との前記溶接部は、前記直管の延出方向において、前記第2ベンドの頂点よりも更に前記内側曲面から離れた位置に配置されていてもよい。この態様では、溶接作業又は検査作業の作業スペースを確保することができる。
前記気化器において、前記直管の直径に対する、隣り合う直管の中心軸同士の間の距離の比は1.5以下であってもよい。
この態様では、隣り合う直管同士の間の距離が小さくなっているため、配置密度を大きくすることができ、熱交換量を増大させることができる。しかも、直管と第1ベンドとの溶接部の溶接作業が煩わしいものになることを抑制することができる。
前記気化器は、前記シェル内において前記伝熱管に隣接配置されて液化ガスが導入されるように構成された隣接伝熱管を更に備えてもよい。前記隣接伝熱管は、複数の直管と複数のベンドとを有する蛇行形状を有している。前記隣接伝熱管は、前記複数のベンドのうちの上下方向に並ぶ隣接ベンドが、直管の延出方向に交互にずれた構成であってもよい。前記隣接ベンドには、前記第1ベンドに隣接する隣接第1ベンドと、前記第2ベンドに隣接する隣接第2ベンドと、が含まれてもよい。前記隣接第2ベンドと直管との溶接部は、前記隣接第1ベンドと直管との溶接部よりも、前記直管の延出方向において出っ張るとともに、前記第2ベンドと直管との前記溶接部よりも、前記直管の延出方向において出っ張っていてもよい。
この態様では、隣接第2ベンドと直管との溶接部に隣接する空間における隣接第1ベンド側の幅及び第2ベンド側の幅が狭くなることを抑制できる。したがって、直管に隣接第2ベンドを溶接する作業及び当該溶接部の検査作業において、隣接する直管が邪魔になることを抑制することができる。
前記気化器において、前記第1ベンドと前記直管との前記溶接部は、前記隣接第1ベンドと前記直管との前記溶接部よりも、前記直管の延出方向において出っ張るとともに、前記第2ベンドと前記直管との前記溶接部よりも、前記直管の延出方向において出っ張っていてもよい。
この態様では、第1ベンドと直管との溶接部に隣接する空間における隣接第1ベンド側の幅及び第2ベンド側の幅が狭くなることを抑制できる。したがって、直管に第1ベンドを溶接する作業又は当該溶接部の検査作業において、隣接する直管が邪魔になることを抑制することができる。
前記気化器において、前記伝熱管は、前記液化ガスの導入部位を含む部位において、前記熱源流体よりも熱伝導率の低い素材で形成された伝熱抑制部材によって覆われていてもよい。
この態様では、伝熱管のうち液化ガスが液状のまま流れる部位が伝熱抑制部材で覆われている。すなわち、液化ガスが伝熱管内に導入される部位は、伝熱管において最も低温になる部位である。そして、この部位は、熱源流体よりも熱伝導率の低い素材で形成された伝熱抑制部材によって覆われている。このため、伝熱管内の液化ガスの冷熱が伝熱管及び伝熱抑制部材を介して水に伝わるため、液化ガスの冷熱が伝熱管から直接水に伝わる場合に比べ、水への伝熱を抑制することができる。したがって、伝熱管の外面付近において水の流れが生じない場合であっても、伝熱管周囲で水が凍結することを抑制することができる。また、伝熱抑制部材がない場合に熱源流体の凝固が発生すると、氷等の凝固分は厚み方向及び長さ方向に大きく成長し、伝熱管隙間の閉塞が起きやすくなる。これを防止するためには、供給する熱源流体の温度を高くする必要があるが、前記伝熱抑制部材を設けることにより、供給する熱源流体の温度を低くなるように設定しても、熱源流体の凝固による閉塞を抑制することができるようになる。
前記気化器において、前記伝熱抑制部材は、前記液化ガスの前記導入部位から、前記液化ガスが相変化を伴わないで加熱される部位又は前記液化ガスが蒸発し始める部位に亘って配置されていてもよい。
液化ガスが蒸発し始める部位においては、液化ガスが伝熱管から吸熱しやすい。しかしながら、この部位も伝熱抑制部材で覆われていることにより、伝熱管が周囲の熱源流体から吸熱することが抑制される。したがって、伝熱管の外面付近において熱源流体の流れが生じない場合であっても、伝熱管周囲で熱源流体が凝固することを抑制することができる。また、液化ガスが低温の状態で相変化を伴わないで加熱される部位に伝熱抑制部材が設けられていることにより、低温の伝熱管が周囲の熱源流体から吸熱することが抑制される。したがって、伝熱管の外面付近において熱源流体の流れが生じない場合であっても、伝熱管周囲で熱源流体が凝固することを抑制することができる。
本発明は、気化器を構成する伝熱管を組み付ける方法であって、シェル内に伝熱管を固定するためのバッフル板に、先端部及び基端部の何れにもベンドが溶接されていない複数の第1直管を先端部から挿入し、基端部に第2ベンドが溶接されるとともに先端部にベンドが溶接されていない複数の第2直管を先端部から前記バッフル板に挿入し、各第1直管の基端部が前記第2ベンドと前記第2直管との溶接部よりも、前記第1直管の延出方向において出っ張った状態で、前記複数の第1直管のうち隣り合う第1直管の前記基端部に第1ベンドを溶接し、前記複数の第1直管の先端部及び前記複数の第2直管の先端部にベンドを溶接する、伝熱管の組み付け方法である。
本発明では、バッフル板に、ベンドの溶接されていない第1直管を先端部から挿入するとともに、基端部にベンドが溶接された第2直管を先端部から挿入する。そして、第1直管の基端部が、第2ベンドにおける溶接部よりも、第2直管の延出方向において出っ張った状態で、第1直管の基端部に第1ベンドを溶接する。したがって、第1直管の基端部に隣接する空間における第2ベンド側の幅が狭くなることを抑制できる。よって、第1直管に第1ベンドを溶接する作業又は溶接部の検査作業において、第2直管が邪魔になることを抑制することができる。
また本発明は、気化器を構成する伝熱管を組み付ける方法であって、シェル内に伝熱管を固定するためのバッフル板に、複数の直管を挿通し、前記バッフル板に挿通された前記直管のうち、直管の延出方向において隣の直管の端部よりも引っ込んだ位置にある端部であって、互いに隣接する2つの直管の端部に第2ベンドを溶接し、前記第2ベンドの溶接後、前記バッフル板に挿通された前記複数の直管のうち、端部が前記第2ベンドと前記直管との溶接部よりも、直管の延出方向において出っ張った位置にある直管であって、隣り合う前記直管の前記端部に第1ベンドを溶接する、伝熱管の組み付け方法である。
本発明では、ベンドが溶接されていない複数の直管をバッフル板に挿通する。そして、これらの直管のうち、直管の延出方向において隣の直管の端部よりも引っ込んだ位置にある端部であって、互いに隣接する2つの直管の端部に第2ベンドを溶接する。この第2ベンドの溶接後、バッフル板に挿通された直管のうち、端部が第2ベンドと直管との溶接部よりも、直管の延出方向において出っ張った位置にある直管であって、互いに隣接する2つの直管の端部に第1ベンドを溶接する。したがって、第1直管の端部に隣接する空間における第2ベンド側の幅が狭くなることを抑制できる。よって、第1直管に第1ベンドを溶接する作業又は溶接部の検査作業において、第2直管が邪魔になることを抑制することができる。
以上説明したように、本発明によれば、ベンドの溶接作業又は溶接部の検査作業において隣の直管が邪魔になることを抑制することができる。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る気化器は、液化ガスである液化天然ガス(LNG)を、熱源流体である水(海水、工水等)で加熱して気化させるための気化器である。ここでいう液化ガスとは、常温で気体状態となるガスを低温にして液化させたものであるため、気化器は、液化石油ガス(LPG)、液化水素(LH2)等の液化ガスを気化させるために用いられてもよい。
図1に示すように、気化器10は、リターンベンドを組み合わせた複数の伝熱管14からなる管束をシェル12に挿入したトロンボーン式の熱交換器によって構成されている。気化器10は、シェル12と、シェル12内に配設された多数の伝熱管14と、各伝熱管14の一端部同士を接続する流入ヘッダ15と、各伝熱管14の他端部同士を接続する流出ヘッダ16と、を備えている。本実施形態では、液化天然ガスを気化させる構成であるため、流入ヘッダ15は、各伝熱管14における下側の端部に接続され、流出ヘッダ16は、各伝熱管14における上側の端部に接続されている。流入ヘッダ15には、液化天然ガスを外部から流入ヘッダ15に導入させる導入管17が接続され、流出ヘッダ16には、伝熱管14で液化天然ガスから気化した天然ガスを外部に導出させる導出管18が接続されている。
シェル12は、中空状に形成されているとともに、一方向に延びる細長い形状に形成されている。
シェル12には、水(熱源流体)の導入ポート21及び水の導出ポート22が設けられている。水は、導入ポート21を通して外部からシェル12の内側空間ISに導入される。内側空間IS内の水は、導出ポート22を通して外部に導出される。
シェル12は、筒状のシェル本体12aと、シェル本体12aの両端開口を塞ぐ一対のエンドプレート12bと、を備えている。一方のエンドプレート12bは、後述のバッフル板25を支持する。シェル本体12aの両端部にはフランジ部が設けられており、各エンドプレート12bは、このフランジ部に締結される。このため、エンドプレート12bの締結を解除することにより、シェル本体12aの内部(内側空間IS)を露出させることができる。
シェル12には、複数のバッフル板25が設けられている。バッフル板25は、各伝熱管14が挿通された状態で伝熱管14をその中間部位において支持している。バッフル板25は、内側空間IS内で流動する水の流れ方向を制御する。バッフル板25は、シェル12の長手方向に間隔をあけて並んでいる。そして、長手方向に直交する方向において、バッフル板25の一端がシェル本体12aの内面に接触する一方、バッフル板25の他端とシェル本体12aの内面との間に間隙が形成されている。この間隙は、隣同士のバッフル板25において、長手方向に直交する方向において互いに反対側に位置している。つまり、より上側に位置するバッフル板25と、より下側に位置するバッフル板25とが、交互に並んでいる。したがって、内側空間ISにおいて、導入ポート21から導出ポート22まで蛇行した水の流れが生ずる。
各バッフル板25は、スペーサ27を介して結合されている。また、エンドプレート12b側のバッフル板25はタイロッド28によってエンドプレート12bに結合されている。すなわち、バッフル板25は、エンドプレート12b及びシェル本体12aによって支持されている。
各伝熱管14は、ステンレス・スチール、チタン、チタン合金又は鋼等の熱伝導性の良い金属によって構成されている。
各伝熱管14は、複数の直管14aと複数のベンド14bとを有して、蛇行しながら上下方向に延びる蛇行形状を有している。具体的には、水平方向に直線状に延びる姿勢で且つ上下方向に並ぶように配置された複数の直管14aと、直管14aの一端部側において、隣り合う直管14aの端部同士を接続する複数のベンド14bと、直管14aの他端部側において、隣り合う直管14aの端部同士を接続する複数のベンド14bと、を有する。ベンド14bは、図2にも示すように、ガスの流動方向を180度反転できるように、半円周状に湾曲した形状である。そして、ベンド14bの下側の端部が一の直管14aの端部に溶接される一方で、ベンド14bの上側の端部がもう一つの直管14aの端部に溶接されている。なお、ベンド14bは、本実施形態では、ショートラジアスベンドによって構成されているが、ロングラジアスベンドによって構成されていてもよい。
図1及び図3(a)に示すように、直管14aの一端側において上下方向に並ぶベンド14bは、直管14aの延出方向(図1の左右方向)に交互にずれた配置となっている。また、図1に示すように、直管14aの他端部側においても、上下方向に並ぶベンド14bは、直管14aの延出方向(図1の左右方向)に交互にずれた配置となっている。
ここで、1つの伝熱管14における、直管14aの延出方向に出っ張った方のベンド14bである第1ベンド31と、直管14aの延出方向において引っ込んだ方のベンド14bである第2ベンド32とについて、説明する。第1ベンド31及び第2ベンド32は交互に並ぶ。例えば図2に示すように、第1ベンド31の上側に第2ベンド32が隣接しているところにおいて、第1ベンド31の上側端部に接続された直管14aを第1直管35とし、第2ベンド32の下側の端部に接続された直管14aを第2直管36とする。すなわち、第1直管35は、図1において、右端に第1ベンド31が接続された直管14aであり、第2直管36は、右端に第2ベンド32が接続された直管14aである。なお、右端は、後述するように、直管14aをバッフル板25に挿入する工程において、基端側の端部となる。
第1直管35の端部と第1ベンド31とを溶接した溶接部である第1溶接部39は、第2ベンド32と第2直管36との溶接部である第2溶接部40よりも、直管14aの延出方向(図2における左右方向)において第2ベンド32の頂点側(図2における右側)に出っ張った位置に配置されている。また、第1溶接部39は、第2ベンド32の内側曲面32aよりも、直管14aの延出方向において第2ベンド32の頂点側に出っ張った位置に配置されている。そして、第1溶接部39は、直管14aの延出方向において、第2ベンド32の頂点32bの位置に対応する位置に配置されている。すなわち、上下方向に並ぶ複数のベンド14bのうち出っ張った各ベンド14b(第1ベンド31)と直管14aとの溶接部(第1溶接部39)は、当該直管14aの延出方向において、上下方向に並ぶ複数のベンド14bのうちの引っ込んだ各ベンド14b(第2ベンド32)と直管14aとの溶接部(第2溶接部40)よりも第2ベンド32の頂点側にずれた位置に配置されている。なお、第1溶接部39は、直管14aの延出方向において、第2ベンド32の内側曲面32aと第2ベンド32の頂点32bとの間に配置されていてもよく、あるいは、第2ベンド32の頂点32b位置よりもさらに外側(内側曲面32aから離れた側、図2の右側)に位置していてもよい。なお、図1では、1本の伝熱管14が、直管14aの右端において、1つの第1ベンド31と2つの第2ベンド32が配置された構成を示しているが、第1ベンド31及び第2ベンド32の数はこれに限られない。これらの数はシェル本体12aの上下方向の大きさに応じて適宜変更が可能である。要は、上下方向において第1ベンド31と第2ベンド32とが交互に並ぶ構成であればよい。
上下に隣り合う直管14a同士が近くなるように配置されている場合は、伝熱管の集積密度が向上する。例えば、直管14aの直径D1に対する、隣り合う直管14aの中心軸同士の間の距離L1の比は1.5以下であってもよい。この場合、直管14aの配置密度を大きくすることができ、熱交換量を増大させることができる。しかも、直管14aと第1ベンド31との第1溶接部39の溶接作業が煩わしいものになることを抑制することができる。また、L1/D1は、1以上であってもよい。
図3(b)及び図4に示すように、水平方向に並ぶ複数の伝熱管14は、ベンド14bが交互にずれた配置関係となっている。例えば、第1伝熱管41と、第1伝熱管41に隣接する第2伝熱管42と、第2伝熱管42に隣接する第3伝熱管43と、第3伝熱管43に隣接する第4伝熱管44とについて説明する。第1伝熱管41及び第3伝熱管43では、ある高さ位置のベンド14bが直管14aの延出方向において出っ張った位置にあり、第2伝熱管42及び第4伝熱管44では、同じ高さ位置のベンド14bが直管14aの延出方向において引っ込んだ位置にある。したがって、水平方向に見ると、ベンド14bが出っ張った位置にある伝熱管とベンド14bが引っ込んだ位置にある伝熱管とが交互に並んでいる。したがって、第1伝熱管41の第1ベンド31の隣に位置する第2伝熱管42のベンド14b(隣接第1ベンド47)は、引っ込んだ位置に配置される第2ベンド32となる。また、第1伝熱管41の第2ベンド32の隣に位置する第2伝熱管42のベンド14b(隣接第2ベンド48)は、出っ張った位置に配置される第1ベンド31となる。これらの関係は、第2伝熱管42と第3伝熱管43の間の関係でも同様であり、また第3伝熱管43と第4伝熱管44との間の関係でも同様である。第2伝熱管42は、第1伝熱管41に隣接配置されているので、第1伝熱管41に対する隣接伝熱管と言える。一方、第1伝熱管41は、第2伝熱管42に隣接配置されているので、第2伝熱管42に対する隣接伝熱管と言える。
第1伝熱管41の第1ベンド31の上下には、それぞれ第1伝熱管41の第2ベンド32が配置される。この第2ベンド32の隣には、それぞれ第2伝熱管42の第1ベンド31が配置されている。つまり、第1伝熱管41と第2伝熱管42とでは、出っ張ったベンド14bと引っ込んだベンド14bとの位置関係が逆の関係となっている。
第1伝熱管41における第1ベンド31と直管14aとの溶接部(第1管溶接部41a)は、第2伝熱管42における隣接第1ベンド47(第2ベンド32)と直管14aとの溶接部(第2管溶接部42a)よりも、直管14aの延出方向においてベンド14bの頂点側(図3(b)及び図4における右側)に出っ張った位置に配置されている。また、第1管溶接部41aは、第2伝熱管42における隣接第1ベンド47の内側曲面よりも、直管14aの延出方向において当該隣接第1ベンド47の頂点側に出っ張った位置に配置されている。そして、第1管溶接部41aは、直管14aの延出方向において、第2伝熱管42における隣接第1ベンド47の頂点42b位置に対応する位置に配置されている。すなわち、水平方向に並ぶ何れの伝熱管41~44においても、第1ベンド31の溶接部(第1管溶接部41a)は、その隣の伝熱管における第2ベンド32の溶接部(第2管溶接部42a)よりも、直管14aの延出方向においてベンド14bの頂点側に出っ張った位置に配置されている。なお、第1伝熱管41の第1管溶接部41aは、直管14aの延出方向において、第2伝熱管42において引っ込んだ位置にある第2ベンド32の内側曲面と当該ベンド14bの頂点42bとの間に配置されていてもよく、あるいは、当該ベンド14bの頂点42b位置よりもさらに外側(内側曲面から離れた側、図3(b)及び図4の右側)に位置していてもよい。
第2伝熱管42における隣接第2ベンド48は第1ベンド31となっているので、隣接第2ベンド48と直管14aとの溶接部48aは、隣接第1ベンド47と直管14aとの溶接部47aよりも、直管14aの延出方向において出っ張った位置に配置されている。すなわち、上下方向及び水平方向の何れにおいても、出っ張った位置にあるベンド14bと引っ込んだ位置にあるベンド14bとが交互に配置されている。
ここで、図5~図9を参照しつつ、伝熱管の組み付け方法について説明する。
伝熱管14を組み付ける前工程として、図5に示すように、一方のエンドプレート12bにタイロッド28及びスペーサ27を介してバッフル板25を組み付ける。なお、バッフル板25を等間隔に位置決めできれば、エンドプレート12bは伝熱管14を組み付けた後に、タイロッド28及びスペーサ27に連結するようにしてもよい。
次に、バッフル板25に対して一方側から各直管14aを挿通する(直管挿通工程)。図5では、バッフル板25にエンドプレート12bが既に結合された状態を示しているので、直管14aは、エンドプレート12bが配置された側とは反対側のバッフル板25から順にエンドプレート12bに向けてバッフル板25に挿入される。
直管挿通工程では、図6に示すように、基端部14cに第2ベンド32が溶接されるとともに先端部14dにベンド14bが溶接されていない長さの異なる2つの直管14aを、先端部14dからバッフル板25に挿入する。また、基端部14c及び先端部14dの何れにもベンド14bが溶接されていない2つの長さの異なる直管14aをバッフル板25に挿入する。すなわち、エンドプレート12bと反対側(挿入元側、基端部側)に位置する一部のベンド14b(第2ベンド32)については、直管挿通工程に先立ち予め直管14aに溶接しておく(前段溶接工程)。一方、エンドプレート12bと反対側に位置する挿入元側(基端部側)のベンド14bであっても、他のベンド14b(第1ベンド31)については、直管挿通工程の前に直管14aに溶接しておかないようにする。つまり、直管14aの基端部14cにおいて、引っ込んだ位置に配置されることになる各ベンド14b(第2ベンド32)については、予め溶接しておき、出っ張った位置に配置されることになる各ベンド14b(第1ベンド31)については、この時点では未だ溶接されていない。なお、基端部14c及び先端部14dの何れにもベンド14bが溶接されていない直管14aは前述した第1直管35である。基端部14cにベンド14bが溶接される一方で、先端部14dにはベンド14bが溶接されていない直管14aは、第2直管36である。
次に、図7に示すように、バッフル板25に挿入された直管14aを所定の位置に位置決めしつつ、ベンド14bが未だ溶接されていない端部にベンド14bを溶接する(ベンド溶接工程)。このベンド溶接工程では、直管14aの挿入元の基端部14cにおいては、第1直管35に第1ベンド31を溶接する。一方、直管14aの先端部14dにおいては順次ベンド14bを溶接する。このとき、引っ込んだ位置にある第2ベンド32をまず溶接し、その後、出っ張った位置にある第1ベンド31を溶接する。これにより、蛇行形状の伝熱管14が完成する。そして、図8に示すように、伝熱管14の一端部に流入ヘッダ15を溶接するとともに、伝熱管14の他端部に流出ヘッダ16を溶接する。また、流入ヘッダ15に、エンドプレート12bに挿通された導入管17を溶接し、流出ヘッダ16に、エンドプレート12bに挿通された導出管18を溶接する。
以上が、1つの伝熱管14を組み付ける方法である。
図9は、複数の伝熱管14の隣り合う部分について、基端部側のベンド14bを溶接する順番を示している。まず、中央に位置するベンド14b(第2ベンド32)を先ず直管14aに溶接し、その次に、その隣に位置する伝熱管14にベンド14b(第1ベンド31)を溶接する。その次に、第1ベンド31が取り付けられた伝熱管14の隣に位置する伝熱管14にベンド14b(第2ベンド32)を溶接する。このように中央に位置する伝熱管14から端に位置する伝熱管14に向けて、順次ベンド14bを固定していく。なお、先に各第2ベンド32を溶接し、その後、各第1ベンド31を溶接するようにしてもよい。
なお、本実施形態では、直管挿通工程において、基端部側の第2ベンド32が溶接された第2直管36をバッフル板25に挿入する構成としたが、これに限られるものではない。例えば、図10に示すように、直管挿通工程においては、何れの直管14aについても、先端部14d及び基端部14cにベンド14bが溶接されていない状態にしておいてもよい。
そして、その後のベンド溶接工程において、第1ベンド31及び第2ベンド32を直管14aに溶接する。この場合、図11に示すように、まず、複数の直管14aのうち、直管14aの延出方向において隣の直管14aの端部14abよりも引っ込んだ位置にある端部14aaであって、互いに隣接する2つの直管14aの端部14aaに第2ベンド32を溶接する。このとき、図11における左右両側において、引っ込んだ位置にある端部14aaに第2ベンド32を溶接する。
その後、複数の直管14aのうち、直管14aの延出方向において隣の直管14aの端部14aaよりも出っ張った位置にある端部14abであって互いに隣接する2つの直管14aの端部14abに第1ベンド31を溶接する。このとき、図10における左右両側において、出っ張った位置にある端部14abに第1ベンド31を溶接する。つまり、第1ベンド31を溶接する際には、直管14aの端部14abが第2ベンド32と直管14aとの溶接部(第2溶接部)40よりも直管14aの延出方向において出っ張った位置(第2ベンド32の頂点側にずれた位置)にある状態で、直管14aの端部14abに第1ベンド31を溶接する。
なお、直管14aの延出方向において、直管14aの端部の位置を所定の位置に設定した上で第2ベンド32を溶接する必要はない。すなわち、第2ベンド32を直管14aに溶接した上で、直管14aの位置をずらして端部を所定の位置に位置決めし、その後に第1ベンド31を溶接してもよい。
具体的には、直管挿通工程において直管14aをバッフル板25に挿入した時点では、図12に示すように、直管14aは未だ所定の位置に位置決めされていない。この状態で、複数の直管14aの中の複数の隣り合う直管14aのうち、2本おきの直管14aの右端部に、第2ベンド32を溶接する。例えば、図12においては、上から1本目及び2本目の直管14aの右端部に第2ベンド32を溶接する一方、その下の2本の右端部には、第2ベンド32を溶接しない。そして、さらにその下の2本の直管14aの右端部に第2ベンド32を溶接する。
そして、右端部に第2ベンド32が溶接されていない3番目と4番目の直管14aを、第2ベンド32と直管14a(第2直管36)との溶接部(第2溶接部)40よりも直管14aの延出方向に出っ張った位置になるように右側にずらす。このとき、第2ベンド32が溶接されていない2本の直管14aのうちの短い方の直管14aの左端部と、この直管14aに隣接し且つ右端部に第2ベンド32が溶接された直管14aの左端部にベンド14bを溶接する。このベンド14bは第2ベンド32となる。これにより、ベンド14bが溶接されていない直管14aの右端部が、第2ベンド32の溶接部40よりも右側に出っ張る。
また、右端部に第2ベンド32が溶接されていない2本の直管14aのうちの長い方の直管14aの左端部と、この直管14aに隣接し且つ右端部に第2ベンド32が溶接された直管14aの左端部にベンド14bを溶接する。このベンド14bは第1ベンド31となる。これにより、ベンド14bが溶接されていない直管14aの右端部においては、第1ベンド31が溶接できる位置に位置決めされる。したがって、この状態で直管14aの右端部に第1ベンド31を溶接する。このようにして伝熱管14が組み付け方法が完了する。
図13(a)(b)及び図14は、長さの異なる各直管14aを所定の位置に間違いなく配置するための工夫の一例である。各直管14aには、両端に第2ベンド32が溶接される直管14aと、両端に第1ベンド31が溶接される直管14aと、一端に第2ベンド32が溶接される一方で他端に第1ベンド31が溶接さる直管14aと、が含まれる。したがって、長さの異なる直管14aを間違えることなく配置することが必要となる。各直管14aの挿入位置をそれぞれ決める必要があるため、そのアドレスを示すタグ(目印)を各直管14aに付するようにする。例えば、上から順番に1~6、挿入元側から見て左端から順番にA~Fのアドレスが振られる。そして、各直管14aには、どの位置に配置されるかを示すアドレス(例えば、1A、3C等)が示されたタグが付される。作業者はこのタグを見ながら所定の位置に各直管14aを配置することができる。
以上説明したように、第1実施形態では、直管14a及び第1ベンド31を互いに結合する第1溶接部39が、直管14aの延出方向において、第2ベンド32及び直管14aを互いに結合する第2溶接部40よりも第2ベンド32の頂点側にずれた位置に配置されている。このため、第1溶接部39に隣接する空間における第2ベンド32側の幅が狭くなることを抑制できる。よって、直管14aに第1ベンド31を溶接する作業又は第1溶接部39の検査作業において、第2直管36が邪魔になることを抑制することができる。
また、隣接第2ベンド48と直管14aとの溶接部48aが、直管14aの延出方向において、隣接第1ベンド47と直管14aとの溶接部47aよりも隣接第1ベンド47の頂点側にずれた位置に配置されるとともに、第2ベンド32における第2溶接部40よりも第2ベンド32の頂点側にずれた位置に配置されている。このため、隣接第2ベンド48と直管14aとの溶接部48aに隣接する空間における隣接第1ベンド47側の幅及び第2ベンド32側の幅が狭くなることを抑制できる。したがって、直管14aに隣接第2ベンド48を溶接する作業、当該溶接部48aの検査作業において、隣接する直管14aが邪魔になることを抑制することができる。
また、第1実施形態では、バッフル板25に、基端部14cに第1ベンド31が溶接されてない第1直管35を先端部14dから挿通するとともに、基端部14cに第2ベンド32が溶接された第2直管36を先端部14dから挿通する。そして、第1直管35の基端部14cが、直管14aの延出方向において、第2ベンド32における溶接部よりも第2ベンド32の頂点側にずれた位置になる状態で、第1直管35に第1ベンド31を溶接する。したがって、第1直管35の基端部14cに隣接する空間における第2ベンド32側の幅が狭くなることを抑制できる。よって、第1直管35に第1ベンド31を溶接する作業又は溶接部の検査作業において、第2直管36が邪魔になることを抑制することができる。
(第2実施形態)
図15は本発明の第2実施形態を示す。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
第2実施形態では、伝熱管14における最も下側の直管14aに、水よりも熱伝導率の低い素材で形成された伝熱抑制部材50が設けられている。このため、伝熱抑制部材50の熱伝導率は、伝熱管14を構成する素材の熱伝導率よりも低い。
伝熱抑制部材50は、液化ガスが導入される部位から液化ガスが蒸発し始める部位に亘る範囲に配置されている。すなわち、伝熱抑制部材50が設けられている部位には、伝熱管14において、液化ガスが流入ヘッダ15から導入される部位が含まれている。液化ガスが蒸発を開始する部位は、液化ガスの圧力、流量、水の流量及び温度の影響を受けるため、これら圧力、流量及び温度に応じて、伝熱抑制部材50が装着される範囲が調整される。そして、この部位よりも液化ガスの流れ方向における下流側の部位、すなわち、全ての液化ガスが蒸発した後のガスがさらに加温される部位では、伝熱抑制部材50が設けられておらず、伝熱管14は露出している。
液化ガスが超臨界流体の状態で伝熱管14内を流れる場合には、液化ガスが導入される部位から、液化ガスが低温の状態で相変化を伴わないで加熱される部位に亘る範囲に伝熱抑制部材50が設けられる。なお、最も下側のベンド14bには伝熱抑制部材50は装着されている必要はない。ベンド14bにおいては、着氷が生じたとしても、隣り合う直管14a同士の間隙を塞いでしまうようなことが起こらないからである。
したがって、第2実施形態では、伝熱管14のうち液化ガスが液状のまま流れる部位が伝熱抑制部材50で覆われている。すなわち、液化ガスが伝熱管14内に導入される部位は、伝熱管14において最も低温になる部位である。そして、この部位は、熱源流体よりも熱伝導率の低い素材で形成された伝熱抑制部材50によって覆われている。このため、伝熱管14内の液化ガスの冷熱が伝熱管14及び伝熱抑制部材50を介して水に伝わるため、液化ガスの冷熱が伝熱管14から直接水に伝わる場合に比べ、水への伝熱を抑制することができる。したがって、伝熱管14(直管14a)の外面付近において水の流れが生じない場合であっても、伝熱管14(直管14a)周囲で水が凍結することを抑制することができる。また、伝熱抑制部材50がない場合に熱源流体の凝固が発生すると、氷等の凝固分は厚み方向及び長さ方向に大きく成長し、直管14a同士の隙間の閉塞が起きやすくなる。これを防止するためには、供給する熱源流体の温度を高くする必要があるが、伝熱抑制部材50を設けることにより、供給する熱源流体の温度を低くなるように設定しても、熱源流体の凝固による閉塞を抑制することができるようになる。
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、前記第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
(その他の実施形態)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、シェル12が、シェル本体12aとエンドプレート12bが互いに締結された構成としたが、これに限られない。筒状のシェル本体の両側に湾曲状のプレートが締結された構成であってもよい。この場合、両側のプレートに導入管17及び導出管18が接続された構成としてもよい。その場合には、一方のプレートから延びる伝熱管と、他方のプレートから延びる伝熱管とが配置されることになる。
前記実施形態では、流入ヘッダ15及び流出ヘッダ16がシェル12内に配置された構成としたが、これに限られない。流入ヘッダ15及び流出ヘッダ16が省略され、各伝熱管14がエンドプレート12bを貫通する構成であってもよい。
また各図中伝熱管は正四角配列としているが錯列配列であってもよい。